(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077442
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220516BHJP
A01D 46/04 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
A01B69/00 303P
A01D46/04 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188310
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000177184
【氏名又は名称】三陽機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
(72)【発明者】
【氏名】小郷 学
【テーマコード(参考)】
2B043
2B075
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB07
2B043AB16
2B043AB19
2B043BA02
2B043BA05
2B043BB07
2B043DB17
2B043DB18
2B043DC01
2B043EA22
2B043EA33
2B043ED12
2B043ED15
2B043ED22
2B043ED23
2B075HA05
2B075HD08
2B075HD09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】傾斜地に設けられた圃園であっても、正確な自動走行が可能な新規な圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置の提供。
【解決手段】走行装置21L、21Rは、HST用ポンプ(可変容量油圧ポンプ71)から供給される作動油によって走行駆動されるものであり、且つ走行装置21L、21Rを駆動する走行モータ72L、72Rは、左右別々の油圧回路により作動油が供給されると共に、この各油圧回路には、HST用ポンプ(可変容量油圧ポンプ71)からの作動油の一部を走行モータ72L、72Rに作用させないで短絡する、バイパス回路73L、73Rが設けられ、走行負荷に関係なくバイパス回路73L、73Rに流れる流量を一定に保つための流量調整機構が具えられていることを特徴として成る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のクローラを走行体として適用した走行装置に管理機ユニットを取り付け、畝を跨いで走行しながら、目的とする圃園管理を行う圃園管理装置における走行制御装置であって、
前記各走行装置は、HST用ポンプから供給される作動油によって走行駆動されるものであり、且つ走行装置を駆動する走行モータは、左右別々の油圧回路により作動油が供給されると共に、
この各油圧回路には、HST用ポンプからの作動油の一部を走行モータに作用させないで短絡する、バイパス回路が設けられ、
走行負荷に関係なくバイパス回路に流れる流量を一定に保つための流量調整機構が具えられていることを特徴とする圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項2】
前記流量調整機構は、圧力補償付電磁比例流量調整弁であることを特徴とする請求項1記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項3】
前記バイパス回路を通過する作動油の流量は、センサ信号を検出する制御装置からの制御信号のみで制御できることを特徴とする請求項2記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項4】
前記バイパス回路に設けられた流量調整機構の流路の下流側に逆止弁を設置することを特徴とする請求項1、2または3いずれか記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項5】
前記流量調整機構と前記逆止弁とが一体化されていることを特徴とする請求項4記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項6】
前記流量調整機構が具えられるバイパス回路と並列に、HST用ポンプからの作動油を走行モータに作用させないで短絡するためのバルブが具えられた駐車ブレーキ用バイパス回路が具えられていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5いずれか記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項7】
前記流量調整機構と前記逆止弁及び駐車ブレーキ用バイパス回路に設けられた駐車ブレーキ制御用バルブとが一体化されていることを特徴とする請求項5記載の圃園管理装置における走行制御装置。
【請求項8】
前記請求項1、2、3、4、5、6または7いずれか一項記載の走行制御装置を具えたことを特徴とする圃園管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動操舵型圃園管理装置に関するものであって、特に、傾斜地圃園等、自動操舵にとっては制御が不確実になりがちな圃園における走行状態を安定化することのできる、圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置に係るものである。以下、本明細書中において、茶園、作物を育てる水田や畑、菜園等を総称して圃園と称することとする。
【背景技術】
【0002】
例えば茶園における茶葉の収穫である摘採や、育葉管理のための刈り取り等を自動化する自走式の茶園管理装置が普及をみている。このものの基本構成は茶畝を跨いで走行できるように正面視門型のフレームの一部である脚部フレーム下部に、クローラ装置を適用した走行装置を設け、茶畝面に臨む位置に摘採機等の管理ユニットを搭載し、所望の管理作業を行うものである。
目下の作業実態は、作業者が搭乗して作業管理を行っているが、ほとんどが自動操舵装置を具え、作業者が操舵する場面は畝端のいわゆる枕地での方向転換に限られている。
【0003】
このような自走式の茶園管理装置の走行制御装置7′は
図6に示すように、クローラを駆動する走行モータ72L′、72R′と、HST用ポンプである可変容量油圧ポンプ71′とを含む油圧回路を左右それぞれに具えて、HST(hydro-Static Transmission 静油圧式無段変速機)7L′、7R′が構成されたものである。そしてこのHST7L′、7R′にバイパス回路73L′、73R′を設けることにより、可変容量油圧ポンプ71′から走行モータ72L′、72R′へ供給される作動油の一部をバイパス回路73L′、73R′に逃がして走行モータ72L′、72R′の回転を制御し、茶園管理装置の操舵を行うものである。
そしてこのような制御にあたっては、茶畝に接する板状の茶畝センサを茶園管理装置の下部に回動自在に具え、このものが茶畝に接触している状態(回動状態)を感知し、左右の走行モータ72L′、72R′への作動油の供給状態を制御し、走行装置を茶畝に沿うように走行させているものである。(例えば特許文献1参照)
【0004】
更に本出願人は、このようなコントロールをより正確に行うため、茶畝センサの回動状態に応じたバイパス回路73L′、73R′の開閉を行うように電磁比例バルブ751L′、751R′を用いた手法を開発し、ユーザーに好評裡に受け入れられている(例えば特許文献2参照)。
【0005】
上記技術を
図1、6を用いて説明すると、茶畝跨走型茶園管理装置1′が前進する場合、
図6の電磁比例バルブ751L′、751R′は全閉とされるものであり、この状態で茶畝センサ6R′、6L′、駐車スイッチ25′、傾斜センサ24′及び中立検出センサ28′等の入力値を基に、制御装置C′によって走行装置21L′、21R′の速度が決定され、電磁比例バルブ751L′、751R′の開度が決定される。これによりバイパス回路73L′、73R′を通る作動油の量が制御されるものである。
【0006】
茶畝センサ6L′、6R′の検出値から、茶畝Tが直線的であり、更に茶畝跨走型茶園管理装置1′が茶畝Tに対して適切な距離を保って直進していると制御装置C′によって判断された場合には、HST7L′、7R′共にバイパス回路73L′、73R′に作動油を逃がす必要がないため、電磁比例バルブ751L′、751R′の開度は共に0%(全閉)とされる。
【0007】
一方、茶畝センサ6R′、6L′の検出値から、茶畝Tが曲がっているあるいは茶畝跨走型茶園管理装置1′が茶畝Tに対して片寄っていると制御装置によって判断された場合には、 茶畝跨走型茶園管理装置1′を曲げたい方(ここでは左側とする)の走行モータ72L′の速度を落とすことが行われるものであり、HST7L′におけるバイパス回路73L′に作動油を逃がすために、電磁比例バルブ751L′の開度が決定される(一例として80%)。そして電磁比例バルブ751L′が所望の開度とされると、バイパス回路73L′に作動油が逃がされた分、走行モータ72L′の回転速度が低下し、走行装置21L′の速度が低下するため、茶畝跨走型茶園管理装置1′は左に曲がることとなる。
【0008】
ところで実際の茶園の状況を見ると、必ずしも平坦な圃園ばかりではなく、斜面の傾斜に沿って畝が配置されている茶園も多く存在する。
そこで、茶園管理装置の左右方向の傾斜に関しては、傾斜センサによって検出される傾斜に応じて、茶畝センサのポテンション値を補正し、比例電磁弁の開度が適切なものとすることが行われている。
【0009】
一方、茶園管理装置の前後方向の傾斜に関しては、傾斜地を上昇走行するか、下降走行するかによって走行モータの負荷が異なってくるため、バイパス回路に逃がす作動油の供給量が所望のものとならない事態が発生してしまう。
【0010】
すなわち前記茶畝センサ6L′、6R′の検出値( 茶畝跨走型茶園管理装置1′の曲がり具合等)に基づいて、茶畝跨走型茶園管理装置1′の走行方向を補正するように電磁比例バルブ751L′、751R′の開度が調節されるが、この開度の状態で、例えば上昇走行により走行モータ72L′、72R′の負荷が大きくなった場合には、走行モータ72L′、72R′の前後での作動油の圧力差(P0-P1)が大きくなるため、バイパス回路73L′、73R′に流れる作動油の量が増加してしまい、結果的に走行モータ72L′、72R′に供給される作動油の量が減少して、走行装置21L′、21R′(クローラ)の速度が所望の値よりも低下してしまう。(但し、可変容量油圧ポンプ71′と走行モータ72L′、72R′の入油側との間の作動油の圧力をP0、走行モータ72L′、72R′の出油側から可変容量油圧ポンプ71′との間の作動油の圧力をP1とする。)
一方、下降走行により走行モータ72L′、72R′の負荷が小さくなった場合には、走行モータ72L′、72R′の前後での作動油の圧力差(P0-P1)が小さくなるため、バイパス回路73L′、73R′に流れる作動油の量が減じてしまい、結果的に走行モータ72L′、72R′に供給される作動油の量が増加して、走行装置21L′、21R′(クローラ)の速度が所望の値よりも上昇してしまう。
【0011】
このように傾斜地での上昇、下降それぞれ走行モータの負荷状態の相違は、結果的に過剰制御か過小制御となって補正が不十分となり、茶園管理装置の走行状態が極端な蛇行となったり、甚だしい場合には軌道を逸脱してしまうこともあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9-322628公報
【特許文献2】特開2005-21127公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、傾斜地に設けられた圃園であっても、正確な自動走行が可能な新規な圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置の開発を技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち請求項1記載の圃園管理装置における走行制御装置は、左右一対のクローラを走行体として適用した走行装置に管理機ユニットを取り付け、畝を跨いで走行しながら、目的とする圃園管理を行う圃園管理装置における走行制御装置であって、前記各走行装置は、HST用ポンプから供給される作動油によって走行駆動されるものであり、且つ走行装置を駆動する走行モータは、左右別々の油圧回路により作動油が供給されると共に、この各油圧回路には、HST用ポンプからの作動油の一部を走行モータに作用させないで短絡する、バイパス回路が設けられ、走行負荷に関係なくバイパス回路に流れる流量を一定に保つための流量調整機構が具えられていることを特徴として成るものである。
【0015】
また請求項2記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記要件に加え、前記流量調整機構は、圧力補償付電磁比例流量調整弁であることを特徴として成るものである。
【0016】
更にまた請求項3記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記請求項2記載の要件に加え、前記バイパス回路を通過する作動油の流量は、センサ信号を検出する制御装置からの制御信号のみで制御できることを特徴として成るものである。
【0017】
また請求項4記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記請求項1、2、3いずれか記載の要件に加え、前記バイパス回路に設けられた流量調整機構の流路の下流側に逆止弁を設置することを特徴として成るものである。
【0018】
また請求項5記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記請求項4記載の要件に加え、前記流量調整機構と前記逆止弁とが一体化されていることを特徴として成るものである。
【0019】
更にまた請求項6記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記請求項1、2、3、4、5いずれか記載の要件に加え、前記流量調整機構が具えられるバイパス回路と並列に、HST用ポンプからの作動油を走行モータに作用させないで短絡するためのバルブが具えられた駐車ブレーキ用バイパス回路が具えられていることを特徴として成るものである。
【0020】
更にまた請求項7記載の圃園管理装置における走行制御装置は、前記請求項5記載の要件に加え、前記流量調整機構と前記逆止弁及び駐車ブレーキ用バイパス回路に設けられた駐車ブレーキ制御用バルブとが一体化されていることを特徴として成るものである。
【0021】
更にまた請求項8記載の走行制御装置を具えた圃園管理装置は、前記請求項1、2、3、4、5、6、7いずれか一項記載の走行制御装置を具えたことを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0022】
まず請求項1記載の発明によれば、走行モータにかかる負荷が変動してバイパス回路の前後の圧力が変動した場合でも、走行モータに流れる作動油の流量が一定とされるため、走行装置の速度を所望のものとすることができる。
【0023】
また請求項2記載の発明によれば、圧力補償付電磁比例流量調整弁を用いることによって、応答性良く、バイパス回路の通過流量を、一定にすることができる。また、流量調整機構を具えたバイパス回路を容易に構築することができる。
【0024】
更にまた請求項3記載の発明によれば、制御装置からの制御信号のみでバイパス回路の流量を制御することができるため、自動操舵時の感度調節も容易に行うことができる。また、制御装置からの制御信号を異ならせることで、流量調整機構を他の機体に取り付けることが可能となり、共通使用が可能となる。
【0025】
更にまた請求項4記載の発明によれば、前進にて自動操舵している際に、作業者が後進操作した場合に、作動油が流量調整機構に逆流して後進の妨げになるのを防止することが可能となる。
【0026】
更にまた請求項5記載の発明によれば、油圧回路を構成する部品点数を減じて、コストダウン及び設置スペースの縮小を図ることができる。
【0027】
更にまた請求項6記載の発明によれば、圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)は一方向の制御しかできない為、このような構成とすることで、後進時に駐車ブレーキを効かせることが可能となる。
【0028】
更にまた請求項7記載の発明によれば、油圧回路を構成する部品点数を減じて、コストダウン及び設置スペースの縮小を図ることができる。
【0029】
更にまた請求項8記載の発明によれば、茶園管理装置の自動走行を極めて正確なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の茶畝跨走型茶園管理装置を示す斜視図及び油圧回路を示す回路図である。
【
図2】茶畝センサ周辺を拡大して示す斜視図(a)、並びにカウンターウエイトを示す平面図(b)及び正面図(c)である。
【
図4】走行制御装置の他の実施例を示す回路図である。
【
図5】走行制御装置の他の実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置の最良の形態は、以下の実施例に示すとおりであるが、これらの実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において適宜変更を加えることも可能である。
【実施例0032】
以下、本発明の「圃園管理装置における走行制御装置並びにこれを具えた圃園管理装置」について図示の実施の形態に基づいて説明する。なおこの実施の形態では、圃園管理装置として、作業者が搭乗し運転する乗用型の茶畝跨走型茶園管理装置1を採用して説明するが、この他にも例えば作業者が搭乗することなく無線操縦される装置や、肥料散布機、防除機、耕機などの管理機ユニットを搭載した装置等を採用することもできる。
【0033】
前記茶畝跨走型茶園管理装置1は、一例として
図1に示すように、茶畝Tを跨ぐように走行する走行機ユニット2と、管理機ユニットの一例である茶刈機ユニット3と、この茶刈機ユニット3の後方に設けられ摘採茶葉を収容する収容部4と、茶刈機ユニット3から収容部4まで茶葉を移送する中継移送装置5と、茶畝Tの曲がり具合を検出するための茶畝センサ6と、走行制御装置7と、制御装置Cとを主要部材として具えて成る。
そして茶畝跨走型茶園管理装置1は、前記茶刈機ユニット3を適宜取り替えることによって剪枝作業または摘採作業が選択的に行えるようにしたものであり、剪枝作業を行う際には茶刈機ユニット3として剪枝機ユニットが取り付けられ、一方、摘採作業を行う際には茶刈機ユニット3として摘採機ユニットが取り付けられる。
【0034】
このように本明細書中において茶刈機ユニット3とは、樹形を整え樹勢の回復を図るため枝幹を剪除する剪枝機ユニットと、茶葉の摘採を行う摘採機ユニットとを総称するものとする。また本明細書中において左右の部材を区別する必要がある場合には、それぞれ符号にL、Rを付して区別するものであり、ここでいう左右とは、茶畝跨走型茶園管理装置1の搭乗者の目線での左右を意味するものとする。
以下茶畝跨走型茶園管理装置1を構成する各構成要素について具体的に説明する。
【0035】
まず前記走行機ユニット2について説明すると、このものは、走行方向側から見てほぼ門形を成すフレーム20の下部に、一例としてクローラを適用した走行装置21が設けられ、茶畝Tを跨いで走行することができるように構成されたものである。
前記フレーム20は、畝間のスペース上に立ち上がるように位置する左右の脚部フレーム20Aと、この脚部フレーム20Aの上端を水平に結ぶような上部フレーム20Bと、更に脚部フレーム20Aに対し昇降自在に取り付けられる昇降フレーム20Cとを組み合わせて構成される。
なお前記走行装置21は脚部フレーム20Aの下部に設けられるものである。
【0036】
更に前記上部フレーム20Bの上部には、作業者が座る操縦席23や、操縦ハンドル23A、駐車スイッチ等が具えられる。駐車スイッチ25は、走行中にブレーキをかけ、走行中に走行装置21の停止を行うとともに停止の維持を行うための操作スイッチである。
また操縦席23の側傍には、例えばディーゼルエンジン等を適用した原動機22が搭載されるものであり、一例としてこの原動機22により、HST用ポンプである可変容量油圧ポンプ71を駆動し、この可変容量油圧ポンプ71から供給される作動油により、前記走行装置21を駆動する。また可変容量油圧ポンプ71に付属する油圧ポンプにより茶刈機ユニット3における刈刃30の駆動、更には前記昇降フレーム20Cの昇降シフトのためのシリンダ(図示略)の駆動が行われる。なお走行装置21を駆動させる油圧回路については、後に詳述する。
【0037】
更に茶刈機ユニット3によって刈った茶葉を風送するためのファン26が、前記上部フレーム20B上に設けられるものであって、このものは一例として原動機22の回転により駆動されるものとした。そしてファン26には送風ダクト27が接続されており、この送風ダクト27を通じて圧力風が茶刈機ユニット3側に供給されるように構成されている。
また前記操縦ハンドル23Aは、一例として前後に倒して前進、後退させ、左右に回動させて左右に曲がるように操作するものであり、更に、このように操縦ハンドル23Aが切られていない中立の状態を検出するための中立検出センサ28が設けられている。
【0038】
次に前記茶刈機ユニット3について説明すると、このものは茶葉の摘採や枝幹の剪除を行うものであり、上述したように仕様に応じてロータリーカッター型またはバリカン型の刈刃30を具えた剪枝機ユニットまたは摘採機ユニットが適用される。
そして茶刈機ユニット3は、前記昇降フレーム20Cに対して着脱自在に具えられるとともに昇降動が可能とされ、実質的な刈り取り作用高さが調整可能に構成される。
なお茶刈機ユニット3が着脱自在に取り付けられる昇降フレーム20Cには、脚部フレーム20Aに沿って転接するコロが設けられており、茶刈機ユニット3、収容部4、中継移送装置5が全体的にチェーン等により吊持された状態で昇降動するものである。
【0039】
次に前記収容部4について説明すると、このものは摘採作業時に収穫された茶葉を収容する部位であり、この実施の形態においては上方が開口されたコンテナ41を主要部材として構成される。
【0040】
次に前記中継移送装置5について説明すると、このものは刈り取られた茶葉を茶刈機ユニット3の後方から収容部4の上部まで上昇移送するものであり、
図1に示すように、茶刈機ユニット3から収容部4の上部まで立ち上げられた中継ダクト51を主要部材として構成される。
そしてこの中継ダクト51には前記ファン26による移送風が吹き込まれ、茶葉等を収容部4まで上昇移送するものである。
【0041】
次に茶畝センサ6について説明すると、このものは茶畝Tの両側部位置を検知して茶畝Tの曲がり具合を検出するための装置であって、茶畝Tの側部に対して接触する検知板60の動きに応じた電気信号を出力するいわゆるポテンショメータ等を適用したセンサユニット61を具えて成る。
具体的には
図1、2に示すように左右両側の脚部フレーム20Aに対して、それぞれ左右の茶畝センサ6L、6Rが設けられるものであり、ほぼ鉛直状に具られた回動軸62に対して二本の支持杆63を固定し、更に支持杆63に対して前記検知板60が具えられるものである。
この検知板60は一例として金属板を半円筒形状に形成して成るものであり、適宜半円筒状部の内側に補強材が設けられる。
そして回動軸62には図示しないスプリングの作用によって一定方向の回転力が与えられ、検知板60を常時内側(茶畝T側)に回動するような状態とするものである。
なおこの検知板60の回動は、回動軸62に具えた規制杆64と、脚部フレーム20Aに具えたフック65とが係合状態となることにより、検知板60が必要以上に内側に向かわないように規制されるものである。
【0042】
このように前記検知板60は、走行機ユニット2の下部に水平面内で回動自在に取り付けられ、茶畝Tの側部との接触の度合いに応じて回動するため、茶畝Tの曲がり具合によって左右の検知板60L、60Rの回動角度が異なってくるものであり、この回動角度差をセンサユニット61L、61Rが変動値として出力し、これを利用して茶畝Tの曲がり具合が検出されるものである。
【0043】
そして上述したように構成される茶畝センサ6に対しては、カウンターウェイト66が具えられるものであり、このものは斜面の傾斜に沿って配置された茶畝Tの茶刈作業を行う際に、前記検知板60が受ける重力によって回動軸62に生起する回転力を打ち消すための部材である。
具体的には
図1や
図2に示されるように、前記回動軸62における支持杆63よりも前方の部分に対してウェイト支持杆66Aを接続し、このウェイト支持杆66Aの先端部分にウェイト片66Bを一例として着脱自在に具えるものである。
なお前記ウェイト片66Bの重量は、傾斜面の傾斜角度に応じて適宜選択されるものである。
【0044】
次に前記走行装置21を駆動するための、走行制御装置7について詳述すると、この、走行制御装置7は
図1に示すように、それぞれ独立して形成された右側の走行装置21Rを駆動するHST(Hydro-Static Transmission:静油圧式無段変速機)7Rと、左側の走行装置21Lを駆動するHST7Lとが具えられて成るものである。
具体的に前記走行制御装置7は、原動機22によって回転駆動されるHST用ポンプである可変容量油圧ポンプ71と、この可変容量油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される走行モータ72L、72Rとを管路によって接続してHST7L、7Rが構成されるものである。そしてこれらHST7L、7Rを構成する油圧回路には、可変容量油圧ポンプ71からの作動油の一部または全部を走行モータ72L、72Rに作用させないで短絡するバイパス回路73L、73Rが、走行モータ72L、72Rと並列状に設けられる。
【0045】
そしてこれらバイパス回路73L、73Rには流量調整機構である圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rが具えられている。この圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rは、流量調整部に相当する電磁比例バルブ751L、751Rと、圧力補償機能部に相当する圧力補償バルブ752L、752Rにて構成される。
なお、
図1、
図3中、HST7Lでは半時計回りの方向、HST7Rでは時計回りの方向に作動油が流れたときに、走行モータ72L、72Rは、走行装置21L、21Rを前進させる方向に回転するものであり、一方、HST7Lでは、時計回りの方向、HST7Rでは反時計回りの方向に作動油が流れたときに、走行モータ72L、72Rは、走行装置21L、21Rを後進させる方向に回転するものである。
【0046】
前記圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rの機能としては以下のとおりである。
以下、
図3に示すように、可変容量油圧ポンプ71と走行モータ72L、72Rの入油側との間の作動油の圧力をP0、走行モータ72L、72Rの出油側と可変容量油圧ポンプ71との間の作動油の圧力をP1、電磁比例バルブ751L、751Rと圧力補償バルブ752L、752Rとの間の作動油の圧力をP2として説明する。
圧力補償機能部に相当する圧力補償バルブ752L、752Rは、圧力補償バルブ752L、752Rと電磁比例バルブ751L、751Rとの間に、油圧P2を導くとともに、電磁比例バルブ751L、751Rとは反対側に油圧P0を導いている。そして、電磁比例バルブ751L、751Rの入口及び出口の間の差圧(P0-P2)が一定になるように電磁比例バルブ751L、751Rからの流量管路を操作し、バイパス間の流量を一定に補償している。
【0047】
なおこの実施例では、前記走行モータ72L、72Rを前進させる方向で回転させる場合の、圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rの下流側に逆止弁76L、76Rを設けるようにした。なおこのような逆止弁76L、76Rを設けることにより、後進時に作動油が圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75R側に逆流してしまうのを防止して、後進の妨げになることを防止することができる。
【0048】
また、バイパス回路73L、73Rと並列に設けられた駐車ブレーキ用バイパス回路78L、78Rに、駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rが設けられている。これら駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rは、運転者が駐車スイッチ25を操作した際に作用するものであり、駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rを構成する電磁バルブを全開にして、走行モータ72L、72Rへの作動油の供給を停止するものである。
【0049】
そして前述のように、平坦面を走行する茶畝跨走型茶園管理装置1が、圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rの構成の一部である電磁比例バルブ751Lの開度が80%とされ、電磁比例バルブ751Rの開度が0%とされ、左に曲がりながら傾斜地を上昇する場合を考える。
茶畝跨走型茶園管理装置1が傾斜地を上昇走行すると、走行モータ72L、72Rの負荷が増すため、可変容量油圧ポンプ71と走行モータ72L、72Rの入油側との間の作動油の圧力P0が上昇して圧力差(P0-P1)が大きくなり、バイパス回路73Lに流れる作動油の流量が増す傾向になる。
しかしながら本発明においては、前述の圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75Lの機能の働きにより、圧力P0が上昇すると、圧力補償バルブ752Lにより電磁比例バルブ751Lからの流量管路を小さくして、圧力P0の上昇分だけ圧力P2を上昇させる操作が行われるのである。
このため電磁比例バルブ751Lの前後の圧力差P0-P2の値は変化することがなく、電磁比例バルブ751Lすなわちバイパス回路73Lを流れる作動油の量は所定の値に保たれる。
ここで作動油の量は、〔背景技術〕で述べたように、茶畝センサ6R、6L、駐車スイッチ25、傾斜センサ24及び中立検出センサ28等の入力値から算出される走行装置21L、21Rの速度を基に、制御装置Cによって電磁比例バルブ751L、751Rに送られる制御信号(電流値)により決定される。
この結果、走行モータ72Lに供給される作動油の量が所定値に保たれ、回転数が一定に保たれるため、走行装置21Lの速度が所望の値に保たれることとなる。
【0050】
一方、茶畝跨走型茶園管理装置1が傾斜地を下降走行すると、走行モータ72L、72Rの負荷が減ずるため、可変容量油圧ポンプ71と走行モータ72L、72Rの入油側との間の作動油の圧力P0が低下して圧力差(P0-P1)が小さくなり、バイパス回路73Lに流れる作動油の流量が減ずる傾向になる。
しかしながら本発明においては、圧力P0が低下すると、前述の圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75Lの機能の働きにより、圧力補償バルブ752Lにより電磁比例バルブ751Lからの流量管路を大きくして、圧力P0の圧力低下分だけ圧力P2を低下させる操作が行われる。
このため電磁比例バルブ751Lの前後の圧力差P0-P2の値は変化することがなく、電磁比例バルブ751Lすなわちバイパス回路73Lを流れる作動油の量は所定の値に保たれる。
この結果、走行モータ72Lに供給される作動油の量が所定値に保たれ、回転数が一定に保たれるため、走行装置21Lの速度が所望の値に保たれることとなる。
【0051】
なお前記HST7Rにおいては、電磁比例バルブ751Rの開度が0%でありバイパス回路73Rに作動油が流れないため、茶畝跨走型茶園管理装置1が、傾斜地を上昇走行または下降走行した場合であっても、走行モータ72Rの回転数は変化しない。
【0052】
また茶園管理装置の左右方向の傾斜に関しては、前述の傾斜センサ24によって傾き度合いが検出され、その傾き度合いに応じて電磁比例バルブ751L、751Rの開度が補正されるものである。
【0053】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、本発明の技術的思想の範囲内で、例えば以下に示すような実施例を採ることができる。
まず上述した基本となる実施例では、圧力補償付流量調整弁の例として、圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオィティバルブ)75L、75Rの例を示したが、圧力補償用弁部を有し、流路絞り部を調整する公知のいわゆる圧力補償付流量調整弁によっても、走行負荷に関係なくバイパス回路73L、73Rに流れる流量を一定に保つことが可能である。但しこの場合には、バイパス部を流れる作動油の量の調整が制御信号による流量制御はできないが、圧力補償付流量調整弁の下流に直列に電磁バルブを配置し、HST7L及びHST7Rに配置された電磁バルブの一方のみのバルブの開閉を行い、走行モータの回転数を低下させることで自動操舵が可能である。
【0054】
また、
図3に示したバイパス回路73L、73Rと並列に設けられる電磁バルブ(駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771R)の代わりに、
図4に示すように圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)77L、77Rを圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75Rとは逆向きに配置する構造としてもよい。この場合の作用としては、運転者が駐車スイッチ25を操作した際には、前進時には電磁比例バルブ751L、751Rを同時に全開にすることで、走行モータ72L,72Rへの作動油の供給が停止され、後進時には電磁比例バルブ771L、771Rを同時に全開にすることで、走行モータ72L、72Rへの作動油の供給が停止されることとなる。このような構成とすることで電磁バルブ(駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771R)の代用機能に加え、前進時に作用する圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオィティバルブ)75L、75Rと同等機能を後進走行時にも有することとなり、後進時にもモータの負荷変動による作動油の変動を回避することが可能となる。
【0055】
また
図5に示すように、圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、75R内の流量調整部に相当する電磁比例バルブ751L、751Rにて、駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rの機能を持たせて駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rを廃止させる構造も可能である。この場合の駐車ブレーキ機能は公知技術である駐車ブレーキ制御(特開2005-021127〔0033〕参照)にて対応することになるが、制御バルブ類の省スペース化を図る等の効果がある。
【0056】
また、
図5のように、走行制御装置7を低コストにて構築するためには、前記流量調整機構としての圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオィティバルブ)75L、75Rと、その下流に配置される前記逆止弁76L、76Rとを同一ケーシング内等に一体化させて構成することにより実現することもできる。その場合には、電磁比例バルブ751L,751Rは駐車ブレーキが前進時のみの対応となるため、別途機械式ブレーキ等を設けることで前進側及び後進側の駐車ブレーキ対応が可能である。
【0057】
更に走行制御装置7を低コストで構築するためには、前記圧力補償付電磁比例流量調整弁(電磁比例フロープライオリティバルブ)75L、Rと、前記逆止弁76L、Rとに加え、駐車ブレーキ用制御バルブ771L、771Rを同一ケーシング内等に一体化させて構成することにより実現することもできる。