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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077454
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】ブロー容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/00 20060101AFI20220516BHJP
【FI】
B65D1/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188336
(22)【出願日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】000198802
【氏名又は名称】積水成型工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】金井 繁
(72)【発明者】
【氏名】森口 茂徳
(72)【発明者】
【氏名】田所 淳人
【テーマコード(参考)】
3E033
【Fターム(参考)】
3E033AA07
3E033BA13
3E033BA15
3E033BB01
3E033CA20
3E033DD01
3E033FA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、オレフィン系樹脂よりなり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されおり、内面が平滑でクリーン性の優れたブロー容器の製造方法を提供する。
【解決手段】オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して、直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子を製造し、次いで、オレフィン系樹脂100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、ブロー成型することを特徴とするブロー容器の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して、直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子を製造し、次いで、オレフィン系樹脂100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、ブロー成型することを特徴とするブロー容器の製造方法。
【請求項2】
少なくとも内層と外層を有する多層構造のブロー容器の製造方法であって、内層としてオレフィン系樹脂、及び、外層として、オレフィン系樹脂100重量部と、オレフィン系樹脂100重量部並びにリン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して得られた直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、共押出し、ブロー成型することを特徴とする多層構造のブロー容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼却しても二酸化炭素排出量が小さいブロー容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィン系樹脂は、軽量である、耐食性、耐水性、衛生性、ガスバリアー性、透明性等が優れている、機械的強度が大きく且つ製造が容易である等の特徴を有しており、広い用途に使用されているが、大量に使用されるため廃棄の際に多くの問題が発生するようになってきている。特に、燃焼して処分する際には大量の二酸化炭素が排出され、地球温暖化の原因となっている。
【0003】
焼却際に、二酸化炭素の発生を抑える方法としては、オレフィン系樹脂成形体に、炭酸カルシウム、アルミノケイ酸塩、水酸化カルシウム、ゼオライト、ココナツ中果皮繊維等を添加することが提案されている(例えば、特許文献1、2又は3参照。)。
【0004】
しかしながら、オレフィン系樹脂成形体にこれらの添加物を添加しても二酸化炭素の発生抑止効果は小さく、発生抑止効果を向上させるために多量に添加すると、成形性が低下し成形体の表面性が低下するという欠点があった(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
上記欠点解消し、焼却際に、二酸化炭素の発生を抑止でき、成形性の優れた樹脂組成物として、例えば、「二酸化炭素吸収剤と、ポリオレフィン系樹脂の結晶核剤とを内包するように超臨界逆相蒸発法によって形成されたリポソームをポリオレフィン系樹脂に添加して二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を製造することを特徴とする二酸化炭素排出量削減樹脂組成物の製造方法であって、前記リポソームは、リン脂質に対して互いに等重量の前記二酸化炭素吸収剤と前記ポリオレフィン系樹脂の結晶核剤とからなる総合添加核剤の添加量を3~7%として前記超臨界逆相蒸発法によって形成されており、前記超臨界逆相蒸発法は、前記二酸化炭素吸収剤と前記結晶核剤とイオン交換水との混合物を、温度が臨界温度30.98℃以上で圧力が臨界圧力7.3773MPa以上の超臨界状態にある二酸化炭素と攪拌混合することにより前記リポソーム内に前記二酸化炭素吸収剤と、前記結晶核剤を内包する処理であることを特徴とする二酸化炭素排出量削減樹脂組成物の製造方法。」(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。
【0006】
上記樹脂組成物中におけるリポソームの分散性は、特許文献1、2又は3等に記載の添加物に比較すれば優れているが、容器、特に、ブロー成型によって製造される内表面が平滑でクリーン性の優れた容器の製造には不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008―106171号公報
【特許文献2】特開平7―188487号公報
【特許文献3】特開2006-77058号公報
【特許文献4】特許第6060451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、オレフィン系樹脂よりなり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されており、内面が平滑でクリーン性の優れたブロー容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本発明は、
[1]オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して、直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子を製造し、次いで、オレフィン系樹脂100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、ブロー成型することを特徴とするブロー容器の製造方法、及び、
[2]少なくとも内層と外層を有する多層構造のブロー容器の製造方法であって、内層としてオレフィン系樹脂、及び、外層として、オレフィン系樹脂100重量部と、オレフィン系樹脂100重量部並びにリン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して得られた直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、共押出し、ブロー成型することを特徴とする多層構造のブロー容器の製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブロー容器の製造方法の構成は上述の通りであり、製造は容易であり、得られたブロー容器は、オレフィン系樹脂よりなり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されおり、内面が平滑でクリーン性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のブロー容器の製造方法は、オレフィン系樹脂100重量部と、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して、直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子を製造し、次いで、オレフィン系樹脂100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、ブロー成型することを特徴とする。
【0012】
上記オレフィン系樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、目的の物性に応じて、2種類以上ブレンドしてもよく、柔軟性に富んだ容器を得る場合には、低密度ポリエチレン樹脂や直鎖状低密度ポリエチレン樹脂が好ましく、又、機械的強度の高い容器を得るには高密度ポリエチレン樹脂及びポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0013】
又、上記オレフィン系樹脂には、従来からオレフィン系樹脂の成形の際に一般に使用されている、熱安定剤、耐熱向上剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、衝撃改良剤、防曇剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、顔料等の添加剤が、必要に応じて、添加されてもよい。
【0014】
上記リポソームは、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物からなり超臨界逆相蒸発法により形成される。
【0015】
上記リン脂質は、リポソームにおけるカプセル膜成分であり、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤を内包し得るが、オレフィン系樹脂粉末やペレットと混合し加熱・撹拌すると崩壊して分散剤として働くものであり、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、卵黄レシチン、水添卵黄レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等を挙げられる。
【0016】
上記二酸化炭素吸収剤は、二酸化炭素を化学的または物理的に吸着する物質であればよく、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛等の金属酸化物、非晶質アルミノシリケート、天然ゼオライト、合成ゼオライト等アルミノケイ酸塩、チタン酸バリウム、オルソチタン酸バリウム等のチタン酸化合物、リチウムシリケート、シリカゲル、アルミナ、活性炭等が挙げられる。
【0017】
オレフィン系樹脂の結晶核剤は、オレフィン系樹脂に分散されオレフィン系樹脂の結晶の核となる物質、又は、オレフィン系樹脂の結晶化温度又は融点以上で結晶化し、その結晶がオレフィン系樹脂の結晶の核となる物質であり、例えば、ナトリウム 2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)ホスフェート、アルミニウム ヒドロキシビス[2,2-メチレンビス(4,6-ジーt-ブチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム ビス(4-t-ブチルフェニル)ホスフェート等のリン酸エステル金属塩系の物質、ジベンジリデンソルビトール、ビス(4-メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトール)等のソルビトール系の物質、ヒドロキシージーt-ブチル安息香酸アルミニウム等の安息香酸アルミニウム系の物質等が挙げられる。
【0018】
リポソームは、リン脂質、二酸化炭素吸収剤及び該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤組成物からなり、超臨界逆相蒸発法により形成されるが、超臨界逆相蒸発法は従来公知の超臨界逆相蒸発法が採用されればよく、例えば、前記二酸化炭素吸収剤と前記結晶核剤とイオン交換水との混合物を、温度が臨界温度30.98℃以上で圧力が臨界圧力7.3773MPa以上の超臨界状態にある二酸化炭素と攪拌混合することにより、カプセル膜成分であるリン脂質内に前記二酸化炭素吸収剤と、前記結晶核剤とを内包させることにより、リポソームを形成する。
【0019】
尚、超臨界逆相蒸発法は、再表02/032564号公報、特開2003-119120号公報、特開2005-298407号公報、特開2008-063284号公報等に開示されている。
【0020】
二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の添加量は少なくなると分散効果がなくなり、多くなるとリポソームの粒径が大きくなり、分散効果が低下する。又、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の添加量の比率も同一であるのが最も効果が高く、一方の比率が多くなると効果が低下するので、リポソームは、リン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成される。
【0021】
尚、リポソームの粒径は、オレフィン系樹脂中に均一に分散されるのが好ましいので、小さいほうが好ましいが、超臨界逆相蒸発法により形成するのであるから、一般に、100~300nmである。
【0022】
本発明のブロー容器の製造方法は、先ず、オレフィン系樹脂100重量部と、リポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して、直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子を製造する。
【0023】
オレフィン系樹脂とリポソームからなる樹脂組成物を溶融押出することにより、オレフィン系樹脂を溶融させるとともに撹拌してオレフィン系樹脂中にリポソームを均一に分散させる。この撹拌が行われると、オレフィン系樹脂内においてリポソームが均一に分散し、その後にリポソームのカプセル膜成分であるリン脂質が崩壊して内包されている二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤とが露出分散することにより、相溶性が悪い二酸化炭素吸収剤とポリオレフィン系樹脂の結晶核剤が凝集されずにオレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂内において均一に分散される。
【0024】
オレフィン系樹脂粒子中のリポソームの添加量が少なくなると、ブロー容器を製造した際にブロー容器に含まれるリポソームの含有量が少なくなり、焼却時の二酸化炭素の発生抑止効果が低下し、逆に、多くなりすぎると二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤が製造されたブロー容器の表面に露出し、平滑性及びクリーン性が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部に対し、リポソームは1~10重量部添加される。
【0025】
上記オレフィン系樹脂粒子は次工程でブロー成型されるので、溶融押出した後、粉砕又は切断して、ブロー成型に適した直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子に加工する。
【0026】
本発明のブロー容器の製造方法は、次に、オレフィン系樹脂100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を製造し、得られた二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、ブロー成型して、ブロー容器を製造する。
【0027】
上記オレフィン系樹脂粒子の添加量は少なくなると、ブロー容器を製造した際にブロー容器に含まれるリポソームの含有量が少なくなり、焼却時の二酸化炭素の発生抑止効果が低下し、逆に、多くなりすぎると二酸化炭素吸収剤及びオレフィン系樹脂の結晶核剤が製造されたブロー容器の表面にブリ-ドし、平滑性及びクリーン性が低下するので、オレフィン系樹脂100重量部に対し、1~10重量部添加するのであり、好ましくは2~5重量部である。
【0028】
上記二酸化炭素排出量削減樹脂組成物をブロー成型して、ブロー容器を製造するのであるから、二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を構成するオレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂は、同種のオレフィン系樹脂よりなるのが好ましい。
【0029】
又、オレフィン系樹脂とリポソームからなる樹脂組成物を溶融押出してオレフィン系樹脂粒子を製造する際に、オレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂内においてリポソームが均一に分散し、その後にリポソームのカプセル膜成分であるリン脂質が崩壊して内包されている二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤とが露出分散することにより、相溶性が悪い二酸化炭素吸収剤とポリオレフィン系樹脂の結晶核剤が凝集されずにオレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂内において均一に分散され、更に、このオレフィン系樹脂粒子とオレフィン系樹脂からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬し、ブロー成型する際にオレフィン系樹脂粒子内に分散された二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤とが、再度、ブロー容器を構成するオレフィン系樹脂内に分散されるので、製造されたブロー容器においては、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤はブロー容器を構成するオレフィン系樹脂内においてより均一に分散されており、焼却際における二酸化炭素の発生が抑制されおり、且つ、表面の平滑性及び機械的強度が優れている。
【0030】
従って、二酸化炭素吸収剤とオレフィン系樹脂の結晶核剤の分散性がより向上するように、オレフィン系樹脂粒子を構成するオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)は、二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を構成するオレフィン系樹脂のメルトフローレイト(MFR)より大きいほうが好ましい。
【0031】
ブロー成型は、従来公知のブロー成型方法が採用されてよく、例えば、オレフィン系樹脂とオレフィン系樹脂粒子からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を押出機に供給して溶融し、押出して、溶融状態の二酸化炭素排出量削減樹脂組成物よりなるパリソンを垂下し、ガスをパリソン内に注入しながら成形金型で加圧して成型する方法が挙げられる。
【0032】
パリソンの溶融粘度が低い場合及びパリソンが大きく重い場合は、パリソンが自重で切断してブロー成型できなくなる。従って、大きなブロー容器を成型する際には、オレフィン系樹脂のMFRは小さい方が好ましく、0.01~4.0(g/10分)が好ましい。尚、MFRとは、JIS K 7210に規定されている熱可塑性樹脂の溶融粘度を表す指標である。
【0033】
ブロー成型法により成型することにより、ブロー容器の機械的強度は優れており、内容量が少量のものから200リットル以上の大容量のものまで容易に製造することができる。又、単層だけでなく、2層以上の多層の成形品を容易に製造することができる。
【0034】
本発明の多層構造のブロー容器の製造方法は、少なくとも内層と外層を有する多層構造のブロー容器の製造方法であって、内層としてオレフィン系樹脂、及び、外層として、オレフィン系樹脂100重量部と、オレフィン系樹脂100重量部並びにリン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して得られた直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、共押出し、ブロー成型することを特徴とする。
【0035】
上記多層構造のブロー容器の製造方法は、少なくとも内層と外層を有する多層構造のブロー容器の製造方法である。多層構造のブロー容器とは、内層と外層を有する2層構造のブロー容器及び少なくとも内層と外層を有し、その間に1層以上のオレフィン系樹脂よりなる中間層を有するブロー容器である。
【0036】
上記内層は、オレフィン系樹脂よりなるが、よりクリーン性を向上させるには、オレフィン系樹脂から溶出可能な成分又は分離・脱離可能な添加物を含まないのが好ましく、前記オレフィン系樹脂のみよりなるのが好ましい。
【0037】
上記外層は、前記ブロー容器の製造方法におけるブロー容器と同一である。即ち、内層としてオレフィン系樹脂、及び、外層として、オレフィン系樹脂100重量部と、オレフィン系樹脂100重量部並びにリン脂質93~97重量%及び略同重量の二酸化炭素吸収剤と該オレフィン系樹脂の結晶核剤よりなる添加剤7~3重量%からなる添加剤組成物を超臨界逆相蒸発法により形成したリポソーム1~10重量部からなる樹脂組成物を溶融押出し、粉砕又は切断して得られた直径1~10mmのオレフィン系樹脂粒子1~10重量部からなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物を溶融混錬した後、共押出し、ブロー成型することにより多層構造のブロー容器を製造する。
【0038】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0039】
リポソームの製造
平均粒径10~50nmのアルミノケイ酸ナトリウム粉末0.125重量部、平均粒径10~50nmのナトリウム 2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェイト粉末0.125重量部及びリン脂質であるホスファチジルコリン5重量部をイオン交換水100重量部と共に60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とし、温度と圧力を保ちながら15分間攪拌混合後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻す超臨界処理を行い、リン脂質にアルミノケイ酸ナトリウム及びソジウム 2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)フォスフェイトが内包されたリポソームを含有する水分散液を得た。
【0040】
又、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味する(ただし、もう片方が臨界条件をこえていないものである)。
【0041】
得られたリポソームを含有する水分散液からイオン交換水を除去してリポソームを得た。得られたリポソームの平均粒径を、粒度分布計(Particle Sizing Systems Co.製NICOMP 380ZLS型)を用いて測定したところ、約200nmであった。
【0042】
オレフィン系樹脂粒子の製造
高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.30、密度=0.949g/cm)95重量部と得られたリポソーム5重量部よりなる組成物をスクリュー径70mmの一軸混錬押出機に供給して210℃で溶融混錬押出して直径3mmの線条体を製造し、次に、長さ5mmに切断して太さ3mm、長さ5mmのオレフィン系樹脂粒子を得た。
【0043】
(実施例1、2、比較例1)
高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.03、密度=0.954g/cm)100重量部、無機顔料2,5重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子2重量部(実施例1)、4重量部(実施例2)及び0重量部(比較例1)よりなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物をスクリュー径70mmの一軸混錬押出機に供給し、210℃で溶融混錬押出してパリソンを成形し、次に、パリソンを成形金型でブロー成形することにより、表面にぶつぶつがなく内表面も外表面も滑らかである、容量20リットルの有底円筒状容器を得た。
【0044】
得られた有底円筒状容器の二酸化炭素排出量を測定し、二酸化炭素排出量削減率を計算したところ、実施例1では40.3%であり、実施例2では70.0%だった。
尚、二酸化炭素排出量削減率の測定は以下の通りである。
【0045】
二酸化炭素排出量削減率の測定
得られた有底円筒状容器の側壁を1.5cm×5cmの大きさに切断し、JIS K7127(環状炉燃焼方法)に従って,環状炉燃焼測定器(島津製作所社製、CGT7100)に供給し、400℃で燃焼し二酸化炭素排出量を測定した。二酸化炭素排出量削減率は、比較例1の二酸化炭素排出量を100%とし、実施例1及び2の二酸化炭素排出量を%で示した。
【0046】
(実施例3、4、比較例2)
内層用樹脂組成物として、高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.0
3、密度=0.954g/cm)、外層用樹脂組成物として、高密度ポリエチレン樹脂(ブローグレード、MFR=0.03、密度=0.954g/cm)100重量部と得られたオレフィン系樹脂粒子2重量部(実施例3)、4重量部(実施例4)及び0重量部(比較例2)よりなる二酸化炭素排出量削減樹脂組成物をスクリュー径110mmの一軸混錬押出機に供給し、210℃で溶融混錬し、共押出してパリソンを成形し、次に、パリソンを成形金型でブロー成形することにより、表面にぶつぶつがなく内表面も外表面も滑らかである、容量200リットルの有底円筒状容器を得た。
【0047】
得られた有底円筒状容器の二酸化炭素排出量を実施例1で行ったと同様にして測定し、二酸化炭素排出量削減率を計算したところ、比較例2の二酸化炭素排出量を100%とすると、実施例3では20%であり、実施例4では35%だった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明におけるブロー容器は、製造が容易であり、大容量の容器を製造することが可能である。又、ブロー容器はオレフィン系樹脂よりなり、焼却際に、二酸化炭素の発生が抑制されているので環境への負荷が少ない。更に、ブロー容器の表面は平滑でクリーン性が優れており、特に、多層構造のブロー容器は内表面が平滑で、ブロー容器からの溶出物が脱離、剥離する異物が少なくクリーン性が優れている。従って、本発明におけるブロー容器は、使用後焼却される容器として好適に使用される。又、薬品やホトレジストのような異物が混入・溶出しないことが要求される容器、ホトマスク基板を保存・輸送するためのホトマスク容器等として好適に使用される。