(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077502
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】低熱インピーダンスの横方向励起されたフィルムバルク音響共振器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20220516BHJP
H03H 9/145 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H03H9/25 C
H03H9/145 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021175220
(22)【出願日】2021-10-27
(31)【優先権主張番号】63/112,395
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/217,923
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514326649
【氏名又は名称】レゾナント インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】RESONANT INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ダイヤー グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】オブライアン クリス
(72)【発明者】
【氏名】フェンツィ ニール オー.
(72)【発明者】
【氏名】コスタ ジェームズ アール.
【テーマコード(参考)】
5J097
【Fターム(参考)】
5J097AA19
5J097BB15
5J097CC05
5J097DD19
5J097EE08
5J097FF04
5J097GG04
5J097GG07
5J097KK09
5J097KK10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非常に高い電気機械結合と高周波機能を有する横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)を提供する。
【解決手段】低熱インピーダンスのフィルムバルク音響共振器100は、基板120と、結合酸化物(BOX)層122を介して基板の上面に取り付けられた背面を有する単結晶の圧電プレート110と、を有する。プレートの前面に形成されたインターデジタル変換器(IDT)130は、ダイアフラム115に配置されたインターリーブされたフィンガー136を備える。圧電プレートとBOX層は、導体パターンと基板の間の熱抵抗を低くするために、フィルタデバイスの表面積の少なくとも一部分から除去される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有する基板と、
前面及び背面を有する単結晶圧電プレートであって、前記基板のキャビティにまたがるダイアフラムを形成する前記圧電プレートの一部を除いて、前記背面が結合酸化物(BOX)層を介して前記基板の表面に取り付けられる、単結晶圧電プレートと、
インターデジタル変換器(IDT)を含み、前記IDTのインターリーブされたフィンガーがダイアフラムに配置されるように、前記単結晶圧電プレートの前面に形成された導体パターンと、
を含む、熱インピーダンスが低い音響共振器デバイスであって、
前記圧電プレート及び前記BOX層は、前記導体パターンと前記基板との間で、より低い熱抵抗を提供するために、前記音響共振器デバイスの表面積の少なくとも一部から除去される、音響共振器デバイス。
【請求項2】
除去される前記圧電プレート及び前記BOX層は、前記導体パターンと前記基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、前記音響共振器デバイスの前記基板の前記表面の選択された場所から除去される結合層及び圧電層の所定の領域である、請求項1に記載の音響共振器デバイス。
【請求項3】
前記基板の上部と、
前記結合層の側面と、
前記圧電層の側面及び上面の一部と、
前記IDTの側面及び上面の一部と、
に取り付けられる第二の金属層をさらに備える、請求項2に記載の音響共振器デバイス。
【請求項4】
前記インターリーブされたフィンガーには、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられたバスバーをさらに備え、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記基板上にあり、
前記第二の金属層は、前記フィンガーの上部ではなく、前記バスバーの上部に取り付けられる、請求項3に記載の音響共振器デバイス。
【請求項5】
除去される前記圧電プレート及び前記BOX層は、前記結合層、プレート、及びIDTの周囲に延在し、島を形成する、請求項4に記載の音響共振器デバイス。
【請求項6】
前記BOX層及び前記圧電プレートは、前記キャビティの周囲を超えて一定長さ延びる過剰部分を除外する、請求項1に記載の音響共振器デバイス。
【請求項7】
前記キャビティが周囲を有し、前記過剰部分は、
前記キャビティの前記周囲の長さと幅を超えて2~25%以上延びる前記キャビティにまたがる前記圧電材料の周囲の長さと幅である、請求項8に記載の音響共振器デバイス。
【請求項8】
前記基板がSiであり、前記結合層がSiO2であり、前記IDTが金属であり、インターリーブされた前記フィンガーの重なり合う距離が前記共振器デバイスの開口部を規定し、前記圧電プレートがニオブ酸又は酸リチウムのいずれかである、請求項1に記載の音響共振器デバイス。
【請求項9】
前記IDTに適用されるそれぞれの無線周波数信号は、前記キャビティ上の前記圧電プレートで一次剪断音響モードを励起し、前記ダイアフラムの厚さは、前記圧電プレートで前記一次剪断音響モードを調整するように選択され、RFフィルタの入力と出力を形成する、前記IDTへの接続をさらに含む、請求項1に記載の音響共振器デバイス。
【請求項10】
キャビティを有する基板と、
前記基板上に形成され、前記キャビティにまたがる圧電プレートであって、前記キャビティにまたがる部分でダイアフラムを形成する圧電プレートと、
前記圧電プレートと前記基板との間の結合酸化物(BOX)層と、
前記圧電プレートの前面上で、前記キャビティ上にインターリーブされたフィンガーを有するインターデジタル変換器(IDT)と、
を備える、フィルタデバイスであって、
前記キャビティは周囲を有し、
前記BOX層及び前記圧電プレートは、導体パターンと前記基板との間で、より低い熱抵抗を提供するために、前記周囲を延長した範囲を超えて除去され、前記フィルタデバイスの表面領域から過剰部分を除外する、フィルタデバイス。
【請求項11】
前記基板がSiであり、前記結合層がSiO2であり、前記IDTが金属であり、前記圧電プレートがニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項10に記載のフィルタデバイス。
【請求項12】
除去される前記圧電プレート及び前記BOX層は、前記導体パターンと前記基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、前記フィルタデバイスの前記基板の前記表面の選択された場所から除去される前記結合層及び前記圧電層の所定の領域である、請求項10に記載のフィルタデバイス。
【請求項13】
前記基板の上部と、
前記結合層の側面と、
前記圧電層の側面及び上面の一部と、
前記IDTの側面及び上面の一部と、
に取り付けられる第二の金属層をさらに備える、請求項12に記載のフィルタデバイス。
【請求項14】
前記インターリーブされたフィンガーには、2セットのフィンガーであり、前記IDTは、前記2セットのフィンガーのそれぞれに取り付けられたバスバーをさらに備え、
前記バスバーの少なくとも一部は、前記基板上にあり、
前記第二の金属層は、前記フィンガーの上部ではなく、前記バスバーの上部に取り付けられる、請求項13に記載のフィルタデバイス。
【請求項15】
前記IDTに適用される無線周波数信号は、前記キャビティ上の前記圧電プレートで一次剪断音響モードを励起する、請求項10に記載のフィルタデバイス。
【請求項16】
前記圧電プレートの厚さが、前記圧電プレートで前記一次剪断音響モードを調整するように選択される、請求項15に記載のフィルタデバイス。
【請求項17】
キャビティを有する基板と、
前記基板上に形成され、前記キャビティにまたがる圧電プレートであって、前記キャビティにまたがる部分でダイアフラムを形成する圧電プレートと、
前記圧電プレートと前記基板との間の結合酸化物(BOX)層と、
前記圧電プレートの前面上で、前記キャビティ上にインターリーブされたフィンガーを有するインターデジタル変換器(IDT)と、
を備える、フィルタデバイスであって、
前記圧電プレート及び前記BOX層は、導体パターンと前記基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、前記フィルタデバイスの前記基板の前記表面の選択された場所から除去される、フィルタデバイス。
【請求項18】
前記圧電プレート及び前記BOX層は、前記キャビティの周囲を超えて一定長さ延びる過剰部分を除外する、請求項17に記載のフィルタデバイス。
【請求項19】
前記基板がSiであり、前記結合層がSiO2であり、前記IDTが金属であり、前記圧電プレートがニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項17に記載のフィルタデバイス。
【請求項20】
前記IDTに適用される無線周波数信号は、前記キャビティ上の前記圧電プレートで一次剪断音響モードを励起し、前記圧電プレートの厚さが、前記圧電プレートで前記一次剪断音響モードを調整するように選択される、請求項17に記載のフィルタデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許文書の公開部分に著作権保護の対象となる資料が含まれている。この特許文書の開示の一部は、著作権保護の対象となる資料を含む。この特許文書は、所有者のトレードドレスである、又はその可能性がある事項を図示及び/又は説明することがある。著作権及びトレードドレスの所有者は、特許商標庁の特許ファイル又は記録に記載されている本特許開示がいかなる者によって複製されることに異議を唱えないが、それ以外の場合は、すべての著作権及びトレードドレスの権利を留保する。
【0002】
(関連出願情報)
本特許出願は、2020年11月11日に出願された「XBAR WITH LOW THERMALIMPEDANCE」と題する同時係属中の米国仮特許出願第63/112,395号の優先権を主張するものである。
【0003】
本開示は、音響波共振器を使用する無線周波数フィルタに関し、特に通信機器で使用するためのフィルタに関する。
【背景技術】
【0004】
無線周波数(RF)フィルタは、一部の周波数を通過させ、他の周波数を阻止させるように構成された2ポートデバイスであり、「通過」は比較的低い信号損失で送信することを意味し、「阻止」はブロック又は大幅に減衰させることを意味する。フィルタを通過する周波数の範囲は、フィルタの「通過帯域」と呼ばれる。このようなフィルタによって停止される周波数の範囲は、フィルタの「阻止帯域」と呼ばれる。典型的なRFフィルタは、少なくとも1つの通過帯域と、少なくとも1つの阻止帯域を有する。通過帯域又は阻止帯域の特定の要件は、特定のアプリケーションに依存する。例えば、「通過帯域」は、フィルタの挿入損失が1dB、2dB、又は3dBなどの定義された値よりも優れている周波数範囲として定義され得る。「阻止帯域」は、フィルタの拒否がアプリケーションに応じて20dB、30dB、40dB、又はそれ以上などの定義された値よりも大きい周波数範囲として定義され得る。
【0005】
RFフィルタは、情報が無線リンクを介して送信される通信システムで使用される。例えば、RFフィルタは、セルラーベースステーション、携帯電話及びコンピューティングデバイス、衛星トランシーバー及び地上局、IoT(Internet of Things)デバイス、ラップトップコンピューター及びタブレット、固定ポイント無線リンク、及び他の通信システムのRFフロントエンドで見られる。RFフィルタは、レーダー、電子及び情報戦システムでも使用される。
【0006】
RFフィルタは通常、特定のアプリケーションごとに、挿入損失、拒否、絶縁、電力処理、直線性、サイズ及びコストなどの性能パラメータ間の最良の妥協点を実現するために多くの設計上のトレードオフを必要とする。特定の設計及び製造方法と機能強化は、これらの要件の1つ又は複数を同時に実現できる。
【0007】
無線システムにおけるRFフィルタの性能の向上は、システム性能に幅広い影響を与える可能性がある。RFフィルタの改善を活用して、セルサイズの拡大、バッテリ寿命の延長、データレートの向上、ネットワーク容量の拡大、コストの削減、セキュリティの強化、信頼性の向上などのシステム性能の改善を実現できる。これらの改善は、無線システムの多くのレベルで、例えば、RFモジュール、RFトランシーバー、モバイル又は固定サブシステム、又はネットワークレベルなど、個別に又は組み合わせて実現できる。
【0008】
現在の通信システム用の高性能RFフィルタは、一般に、弾性表面波(SAW)共振器、バルク音響波(BAW)共振器、フィルムバルク音響波共振器(FBAR)、及びその他のタイプの音響共振器を含む音響波共振器を組み込んでいる。ただし、これらの既存のテクノロジーは、将来の通信ネットワークで提案されているより高い周波数での使用には適していない。
【0009】
より広い通信チャネル帯域幅への欲求は、必然的により高い周波数の通信帯域の使用へとつながる。携帯電話ネットワークの無線アクセス技術は、3GPP(第三世代パートナーシッププロジェクト)(登録商標)によって標準化されている。第五世代モバイルネットワークの無線アクセス技術は、5G NR(新しい無線)規格で定義されている。5G NR規格は、いくつかの新しい通信帯域を定義している。これらの新しい通信帯域の2つは、3300MHz~4200MHzの周波数範囲を使用するn77と、4400MHz~5000MHzの周波数範囲を使用するn79である。帯域n77と帯域n79の両方が時分割複信(TDD)を使用するため、帯域n77及び/又は帯域n79で動作する通信デバイスは、アップリンクとダウンリンクの両方の送信に同じ周波数を使用する。帯域n77及びn79のバンドパスフィルタは、通信デバイスの送信電力を処理できる必要がある。5GHzと6GHzのWiFi帯域にも、高周波と広い帯域幅が必要である。5G NR規格では、周波数が24.25GHz~40GHzのミリ波通信帯域も定義されている。
【0010】
横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタで使用するための音響共振器構造である。XBARは、「横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器」と題する特許文献1に記載されている。XBAR共振器は、単結晶圧電材料の薄い浮遊層又はダイアフラム上に形成されたインターデジタル変換器(IDT)で構成されている。IDTは、第一のバスバーから延びる第一のセットの平行なフィンガーと、第二のバスバーから延びる第二のセットの平行なフィンガーとを含む。第一と第二のセットの平行なフィンガーは、インターリーブされている。IDTに適用されたマイクロ波信号は、圧電ダイアフラムで剪断一次音波を励起する。XBAR共振器は、非常に高い電気機械結合と高周波機能を提供する。XBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、マルチプレクサなど、様々なRFフィルタで使用できる。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第10,491,291号明細書
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)の概略的平面図及び2つの概略的断面図を含む。
【
図2】
図1のXBARの一部の概略的拡大断面図である。
【
図3B】XBARにおける関心のある一次音響モードの図解である。
【
図3C】XBARを使用する高周波バンドパスフィルタの概略的回路図及びレイアウトである。
【
図4A】選択された場所から結合酸化物層(BOX)及び圧電層の所定の領域を除去する場合と除去しない場合のXBARデバイスの設計パラメータを用いた計算の例を示す表である。
【
図4B】選択された場所からBOX及び圧電層の所定の領域を除去することなく、XBARデバイスの一般化された断面及び熱回路をそれぞれ示すブロック図である。
【
図4C】選択された場所からBOX及び圧電層の所定の領域を除去することなく、XBARデバイスの一般化された断面及び熱回路をそれぞれ示す流れ図である。
【
図5A】選択された場所から除去された結合層及び圧電層の所定の領域を有するXBARデバイスの概略的断面図である。
【
図5B】選択された場所から除去された結合層及び圧電層の3つの所定の領域を有するXBARデバイスの概略的断面図である。
【
図5C】選択された場所に薄くされた結合層を有するXBARデバイスの概略的断面図である。
【
図5D】選択された場所に前面エッチングされたキャビティ及び薄くされた結合層を有するXBARデバイスの概略的断面図である。
【
図5E】サーマルビアを有し、選択された場所に前面エッチングされたキャビティ及び薄くされた結合層を有するXBARデバイスの概略的断面図である。
【
図6】導電体と基板との間の熱インピーダンスが低いXBARを作製するためのプロセスを示す簡略化されたフローチャートである。
【0013】
この説明全体を通して、図に表示される要素には、3桁又は4桁の参照指定子が割り当てられる。ここで、下2桁は要素に固有であり、上1桁又は上2桁は要素が最初に導入された図番号である。図と併せて説明されていない要素は、同じ参照指定子を有する前述の要素と同じ特性及び機能を有すると推定され得る。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(装置の説明)
横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)は、マイクロ波フィルタで使用するための音響共振器構造である。XBARは、「横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器」と題する特許文献1に記載されている。XBAR共振器は、圧電材料の薄い浮遊層又はダイアフラム上に形成されたインターデジタル変換器(IDT)を有する導体パターンで構成される。IDTには2つのバスバーがあり、そのそれぞれが1セットのフィンガーに取り付けられており、2セットのフィンガーは、共振器が取り付けられている基板に形成されたキャビティの上のダイアフラムにインターリーブされている。ダイアフラムは、キャビティにまたがっており、前面及び/又は背面誘電体層を含むことがある。IDTに適用されたマイクロ波信号は、圧電ダイアフラム内の剪断一次音波を励起し、その結果、音響エネルギーがIDTによって生成された電界の方向に直交する層又は横方向になる層の表面に実質的に垂直に流れるようになる。XBAR共振器は、非常に高い電気機械結合と高周波機能を提供する。
【0015】
XBARダイアフラムから熱を除去するための主要なメカニズムは、IDTフィンガーを介して基板に伝導することである。ダイアフラムからの熱は、フィンガーを介して導体パターンの他の部分に伝導され、次いで、基板に伝導されることがある。しかしながら、IDTバスバー及び導体パターンの他の導体は、典型的には、圧電層と結合酸化物(BOX)の層によって基板から分離される。圧電層とBOXの熱伝導率が低いことは、効率的な熱除去に対する実質的な障壁となっている。
【0016】
以下では、IDT又はバスバーから基板に熱を効率的に伝導するXBAR共振器のための改良されたXBAR共振器、フィルタ、及び製造技術を説明する。これは、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面の選択された位置から結合層(例えば、BOX)及び/又は圧電層の所定の領域を除去することによって、行うことができる。
【0017】
図1は、横方向に励起されたフィルムバルク音響共振器(XBAR)100の簡略化された概略的上面図及び直交断面図を示す。共振器100などのXBAR共振器は、バンドリジェクトフィルタ、バンドパスフィルタ、デュプレクサ、及びマルチプレクサを含む様々なRFフィルタで使用し得る。XBARは、周波数が3GHzを超える通信帯域のフィルタでの使用に特に適している。
【0018】
XBAR100は、それぞれ平行な前面112及び背面114を有する圧電プレート110の表面上に形成された薄膜導体パターンから構成される。圧電プレートは、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム、ケイ酸ランタンガリウム、窒化ガリウム、又は窒化アルミニウムなどの圧電材料の薄い単結晶層である。圧電プレートは、前面と背面に対するX、Y、Z結晶軸の方向が既知で一貫しているようにカットされる。この特許で提示されている例では、圧電プレートはZカットされている。つまり、Z軸は表面に垂直である。ただし、XBARは、他の結晶学的配向を有する圧電プレート上に製造され得る。
【0019】
圧電プレート110の背面114は、圧電プレート110に機械的支持を提供する基板120に取り付けられている。基板120は、例えば、シリコン、サファイア、石英、又は他のいくつかの材料であり得る。基板は、シリコン熱酸化物(TOX)及び結晶シリコンの層を有し得る。圧電プレート110の背面114は、ウェーハボンディングプロセスを用いて基板120に接合するか、又は基板120上に成長させるか、又は他の何らかの方法で基板に取り付け得る。圧電プレートは、基板に直接取り付けられるか、あるいはSiO2、又はAl2O3などの別の酸化物の結合酸化物(BOX)層などの結合酸化物層122、介して基板に取り付けてもよい。
図1に示すように、ダイアフラム115は、キャビティ1の周囲145のすべての周りで圧電プレート110の残りの部分と隣接している。この文脈において、「隣接する」は、「介在物なしで連続的に接続される」ことを意味する。しかしながら、結合酸化物層(BOX)は、プレート110を基板120に結合することが可能である。BOX層は、周囲145の周りのプレートと基板との間に存在し得、周囲自体の内部よりもキャビティからさらに離れて延びることができる。それを除去するプロセス(すなわち、本発明)がない場合、BOXは、圧電プレートと基板との間のいたるところにある。BOXは、典型的には、キャビティを形成する一部としてダイアフラム115の背面から取り外される。
【0020】
XBAR100の導体パターンは、インターデジタル変換器(IDT)130を含む。IDT130は、第一のバスバー132から延びるフィンガー136などの第一の複数の平行なフィンガーと、第二のバスバー134から延びる第二の複数のフィンガーとを含む。第一及び第二の複数の平行なフィンガーがインターリーブされる。インターリーブされたフィンガー136は、一般にIDTの「アパーチャ」と呼ばれる距離APでオーバーラップする。IDT130の最も外側のフィンガー間の中心間距離Lは、IDTの「長さ」である。
【0021】
第一及び第二のバスバー132、134は、XBAR100の端子又は電極として機能する。IDT130の2つのバスバー132、134の間に適用された無線周波数又はマイクロ波信号は、圧電プレート110内で一次音響モードを励起する。さらに詳細に論じられるように、励起された一次音響モードは、音響エネルギーが圧電プレート110の表面に対して法線方向に沿って伝播するバルク剪断モードであり、これはまた、IDTフィンガーによって生成された電界の方向に垂直又は横方向である。したがって、XBARは、横方向に励起されたフィルムバルク波共振器と見なされる。
【0022】
IDT130を含む圧電プレート110の部分115が、基板120に接触することなくキャビティ140上に、又はキャビティの底部に懸架されるように、キャビティ140が基板120内に形成される。「キャビティ」とは、「固体内の空の空間」という従来の意味を有する。キャビティには、ガス、空気、又は真空が含まれている場合がある。場合によっては、プレート110の上にキャビティ(図示せず)を有する第二の基板、パッケージ、又は他の材料もあり、これは、基板120及びキャビティ140の鏡像であり得る。プレート110の上のキャビティは、キャビティ140よりも深さが深い空の空間を有し得る。フィンガーは、キャビティ(又はキャビティの間)の上に延びる(及びバスバーの一部も、任意選択で上に延びることができる)。キャビティ140は、基板120を完全に貫通する穴(
図1の断面A-A及び断面B-Bに示されるように)又は基板120内のくぼみ(続いて
図3Aに示されるように)であり得る。キャビティ140は、例えば、圧電プレート110及び基板120が取り付けられる前又は後に、基板120を選択的にエッチングすることによって形成され得る。
図1に示すように、キャビティ140は、IDT130のアパーチャAP及び長さLよりも広い拡がりを有する長方形の形状を有する。XBARのキャビティは、規則的なポリゴンや不規則なポリゴンなど、様々な形状をしていてよい。XBARのキャビティは、辺の数が4より多い場合と少ない場合があり、それらの辺は、直線であっても、あるいは曲線であってもよい。
【0023】
キャビティ140上に懸架された圧電プレートの部分115は、マイクロフォンのダイアフラムに物理的に類似しているため、本明細書では「ダイアフラム」(より良い用語がないため)と呼ばれる。ダイアフラムは、キャビティ140の周囲全体、又はほぼ周囲全体の圧電プレート110の残りの部分に連続的かつシームレスに接続することができる。この文脈において、「隣接する」とは、「介在物なしで連続的に接続される」ことを意味する。場合によっては、BOX層は、プレート110を周囲の基板120に結合することができる。
【0024】
図1の提示を容易にするために、IDTフィンガーの幾何学的ピッチ及び幅は、XBARの長さ(寸法L)及びアパーチャ(寸法AP)に関して大幅に誇張されている。典型的なXBARは、IDT110に10を超える平行なフィンガーを有する。XBARは、IDT110に数百、場合によっては数千の平行フィンガーを有し得る。同様に、断面図のフィンガーの太さも、大幅に誇張されている。
【0025】
図2は、
図1のXBAR100の詳細な概略的断面図を示す。断面図は、IDTのフィンガーを含むXBAR100の一部であり得る。圧電プレート110は、厚さtsを有する圧電材料の単結晶層である。tsは、例えば、100nm~1500nmであり得る。3.4GHz~6GHzのLTE
TM帯域(例えば、帯域42、43、46)のフィルタで使用する場合、厚さtsは、例えば、200nm~1000nmであり得る。
【0026】
前面誘電体層214は、圧電プレート110の前面に任意選択で形成し得る。XBARの「前面」は、定義上、基板とは反対側を向いている表面である。前面誘電体層214は、厚さtfdを有する。前面誘電体層214は、IDTフィンガー238の間に形成される。
図2には示されていないが、前面誘電体層214は、IDTフィンガー238上に堆積されてもよい。背面誘電体層216は、圧電プレート110の背面に任意選択で形成され得る。背面誘電体層は、BOX層であるか、又はBOX層を含み得る。背面誘電体層216は、厚さtbdを有する。前面及び背面誘電体層214、216は、二酸化ケイ素又は窒化ケイ素などの非圧電誘電体材料であってもよい。tfd及びtbdは、例えば、0~500nmであり得る。tfd及びtbdは、典型的には、圧電プレートの厚さtsよりも小さい。tfd及びtbdは、必ずしも等しくなく、前面及び背面誘電体層214、216は、必ずしも同じ材料である必要はない。前面及び背面誘電体層214、216のいずれか又は両方は、2つ以上の材料の複数の層から形成され得る。
【0027】
前面誘電体層214は、フィルタ内のXBARデバイスのいくつか(例えば、選択されたもの)のIDT上に形成され得る。前面誘電体214は、いくつかのXBARデバイスのIDTフィンガーの間に形成され、それを覆うことができるが、他のXBARデバイスでは形成されない。例えば、前面周波数設定誘電体層をシャント共振器のIDT上に形成して、前面誘電体がより薄いか、又は全くない直列共振器の共振周波数に対してシャント共振器の共振周波数を下げることができる。一部のフィルタには、様々な共振器上に2つ以上の異なる厚さの前面誘電体が含まれている場合がある。共振器の共振周波数は、前面の誘電体の厚さを選択することによって、少なくとも部分的に共振器を「調整」するように設定することができる。
【0028】
さらに、不動態化層は、XBARデバイスの外部の回路に電気接続が行われる接触パッドを除いて、XBARデバイス100の表面全体にわたって形成され得る。不働態化層は、XBARデバイスがパッケージに組み込まれている間、XBARデバイスの表面をシール及び保護することを意図した薄い誘電体層である。前面誘電体層及び/又は不働態化層は、SiO2、Si3N4、Al2O3、他の誘電体材料、又はこれらの材料の組み合わせであり得る。
【0029】
不動態化層の厚さは、圧電プレート及び金属導体を水及び化学的腐食から保護するように、特に電力耐久性の目的で選択することができる。その厚さは、10~100nmの範囲であり得る。不動態化材料は、SiO2及びSi3N4材料などの複数の酸化物及び/又は窒化物コーティングで構成されている場合がある。
【0030】
IDTフィンガー238は、アルミニウム又は実質的にアルミニウム合金、銅又は実質的に銅合金、ベリリウム、タングステン、モリブデン、金、又は他のいくつかの導電性材料からなる1つ又は複数の層であり得る。フィンガーと圧電プレート110との間の接着を改善するために、及び/又はフィンガーを不動態化又はカプセル化するために、クロム又はチタンなどの他の金属の薄い(導体の総厚に対して)層をフィンガーの下及び/又は上に形成し得る。IDTのバスバー(
図1の132、134)は、フィンガーと同じ材料又は異なる材料で作り得る。
【0031】
寸法pは、IDTフィンガーの中心間の間隔又は「ピッチ」であり、これはIDTのピッチ及び/又はXBARのピッチと呼ばれる場合がある。寸法wは、IDTフィンガーの幅又は「マーク」である。XBARのIDTは、表面音響波(SAW)共振器で使用されるIDTとは大幅に異なる。SAW共振器では、IDTのピッチは、共振周波数での音響波長の半分である。さらに、SAW共振器IDTのマーク対ピッチ比は、典型的には、0.5に近い(つまり、マーク又はフィンガーの幅は、共振時の音響波長の約4分の1である)。XBARでは、IDTのピッチpは、典型的には、フィンガーの幅wの2~20倍である。さらに、IDTのピッチpは、典型的には、圧電スラブ212の厚さtsの2~20倍である。XBARのIDTフィンガーの幅は、共振時の音響波長の4分の1に制限されていない。例えば、XBARのIDTフィンガーの幅は500nm以上であり得るので、IDTは光学リソグラフィーを使用して製造することができる。IDTフィンガーの厚さtmは、100nmから幅wにほぼ等しい値まであり得る。IDTのバスバー(
図1の132、134)の厚さは、IDTフィンガーの厚さtmと同じであっても、それより大きくてもよい。
【0032】
図3Aは、
図1で定義された断面A-Aに沿ったXBARデバイス300の代替の断面図を示す。
図3Aでは、圧電プレート310が基板320に取り付けられている。圧電プレート310の一部は、基板のキャビティ340にまたがるダイアフラム315を形成する。基板320を完全には貫通しないキャビティ340が、XBARのIDTを含む圧電プレート310の部分の下の基板に形成される。IDTのフィンガー336などのフィンガーは、ダイアフラム315上に配置される。プレート310、ダイアフラム315、及びフィンガー336は、プレート110、ダイアフラム115、及びフィンガー136であり得る。キャビティ340は、例えば、圧電プレート310を取り付ける前に基板320をエッチングすることによって形成され得る。あるいは、キャビティ340は、圧電プレート310に設けられた1つ又は複数の開口部を通って基板に到達する選択的エッチャントで基板320をエッチングすることによって形成され得る。ダイアフラム315は、キャビティ340の周囲345の大部分の周りで圧電プレート310の残りの部分と隣接していてもよい。例えば、ダイアフラム315は、キャビティ340の周囲の少なくとも50%の周りで圧電プレート310の残りの部分と隣接していてもよい。
【0033】
1つ又は複数の中間材料層322は、プレート310と基板320との間に取り付けられ得る。中間層は、プレート310及び基板320に取り付けられているか、又は結合されている結合層、BOX層、エッチング停止層、シーリング層、接着剤層、又は他の材料の層であり得るか、又はそれらを含み得る。層322は、これらの層の1つ又は複数、あるいはこれらの層の組み合わせであり得る。
【0034】
キャビティ340は断面で示されているが、キャビティの横方向の拡がりは、図面の平面に垂直な方向でキャビティ340を取り囲み、サイズを定義する基板320の連続した閉じたバンド領域であることを理解すべきである。キャビティ340の横方向(すなわち、図に示されるように左右)の拡がりは、横方向エッジ基板320によって定義される。キャビティ340の垂直方向(すなわち、図に示されるようにプレート310から下向き)の拡がり又は基板への深さ。この場合、キャビティ340は、長方形の側面断面、又はほぼ長方形の断面を有する。
【0035】
図3Aに示されるXBAR300は、本明細書では「前面エッチング」構成と呼ばれるが、その理由は、(圧電プレート310を取り付ける前又は後に)キャビティ340が基板320の前面からエッチングされるからである。
図1のXBAR100は、本明細書では「背面エッチング」構成と呼ばれるが、その理由は、圧電プレート110を取り付けた後、キャビティ140が基板120の背面からエッチングされるからである。XBAR300は、キャビティ340の左側及び右側で、圧電プレート310に1つ又は複数の開口部342を示している。しかしながら、場合によっては、圧電プレート310の開口部342は、キャビティ340の左側又は右側にのみ存在する。
【0036】
図3Bは、XBARにおける関心のある一次音響モードの図解である。
図3Bは、圧電プレート310及び3つのインターリーブされたIDTフィンガー336を含むXBAR350の小さな部分を示す。XBAR350は、本書の任意のXBARの一部であり得る。インターリーブされたフィンガー336にRF電圧が適用される。この電圧は、フィンガー間に時間とともに変化する電界を生成する。「電界」とラベル付けされた矢印によって示されるように、電界の方向は、圧電プレート310の表面に対して、主として横方向、又は平行である。圧電プレートの誘電率が高いので、電界は、空気に比べてプレートに非常に集中する。横方向電界は、圧電プレート310において剪断変形を導入し、したがって、一次剪断モード音波を強く励起する。この文脈では、「剪断変形」は、材料内の平行な平面が、相互に平行移動している間も、平行のままであり、一定の距離を維持する変形として定義される。「剪断音響モード」は、媒体の剪断変形をもたらす媒体内の音響振動モードとして定義される。XBAR350の剪断変形は、曲線360によって表され、隣接する小さな矢印は、原子運動の方向及び大きさの概略的な表示を提供する。原子運動の程度、及び圧電プレート310の厚さは、視覚化を容易にするために大幅に誇張されている。原子運動は主に横方向(すなわち、
図3Bに示すように水平)であるが、励起された一次剪断音響モードの音響エネルギーの流れの方向は、矢印365が示すように、圧電プレートの前面及び背面に対して、実質的に直交している。
【0037】
剪断音響波共振に基づく音響共振器は、現在の最先端のフィルムバルク音響共振器(FBAR)及び、厚さ方向に電界をかけるしっかりと取り付けられた共振器バルク音響波(SMR BAW)デバイスよりも優れた性能を達成できる。剪断波XBAR共振の圧電結合は、他の音響共振器と比較して高くなる可能性がある(>20%)。したがって、高い圧電結合により、かなりの帯域幅を有するマイクロ波及びミリ波フィルタの設計と実装が可能になる。
【0038】
図3Cは、XBARを使用する高周波バンドパスフィルタ370の概略的回路図及びレイアウトである。フィルタ370は、3つの直列共振器380A、380B、380C及び2つのシャント共振器390A、390Bを含む従来のラダーフィルタアーキテクチャを有する。3つの直列共振器380A、380B、380Cは、第一のポートと第二のポートとの間に直列に接続されている。
図3Cに示すように、第一及び第二のポートは、それぞれ「イン」及び「アウト」とラベル付けされている。しかしながら、フィルタ370は双方向であり、いずれのポートもフィルタの入力又は出力として機能する。2つのシャント共振器390A、390Bは、直列共振器間のノードから接地に接続されている。すべてのシャント共振器及び直列共振器は、単一のダイ上のXBARである。
【0039】
フィルタ370の3つの直列共振器1380A、380B、380C及び2つのシャント共振器390A、390Bは、シリコン基板(図示せず)に結合された圧電材料の単一プレート310上に形成される。各共振器は、それぞれのIDT(図示せず)を含み、IDTの少なくともフィンガーが基板のキャビティ上に配置されている。この文脈及び同様の文脈では、「それぞれ」という用語は、「各モノを各モノに関連付ける」ことを意味する、つまり、一対一の対応である。
図3Cでは、キャビティは、破線の長方形(長方形345など)として概略的に示されている。この例では、各IDTはそれぞれのキャビティ上に配置されている。他のフィルタでは、2つ以上の共振器のIDTが単一のキャビティ上に配置され得る。
【0040】
図4Aは、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面の選択された場所から結合酸化物層(BOX)及び圧電層の所定の領域を除去する場合と除去しない場合のXBARデバイスの設計パラメータを用いた計算の例を示す表400である。表400は、BOX及びLN圧電層プレート110がXBAR熱伝導に及ぼす影響のスプレッドシートによる推定値であってもよい。
【0041】
表400の第一の行は、表の列のデータラベルの凡例を示している。第二と第三の行は、その列に、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面の選択された場所から結合酸化物層(BOX)及び圧電層の所定の領域を除去する場合と除去しない場合(それぞれ)のXBARデバイスのシミュレーションの値を示す。表中の「バンプ」への言及は、デバイス(たとえば、導体層又はバスバー)と外部回路との間の接続を行うためのボンディングパッド、金又ははんだバンプ、又は他の手段であり得る。
【0042】
表400は、以下の順に示す9つの列を有する。それらは、次の列に示されている6つのバンプの熱抵抗の合計値(ケルビン/ワット(K/W))として「R_node」、バンプの数としての「#バンプ」、一連の「接触熱抵抗」を含む各バンプのK/W単位の熱抵抗としての「R_node」、各バンプの直径である「バンプ直径」、BOX素材の層の厚さである「T_Box」、LN又は圧電材料の層の厚さである「T_LN」、バンプ材料の厚さである「T_bump」である。列8と列9は、このシミュレーションでBOX材料に使用されるSiO2のこのシミュレーションの圧電プレート材料であるニオブ酸リチウム(LN)、このシミュレーションのバンプ材料である金(Au)、及び、このシミュレーションのIDT材料であるアルミニウム(Al)の既知の熱伝導率を示す。このシミュレーションは、また、
図4Bのブロック
図402及び
図4Cの流れ
図404を使用することができる。表400の代表的な例は、
図4Cの流れ
図404の474及び475からの熱抵抗への寄与を明示的に決定している。
【0043】
接点、バンプ、IDT、共振器ダイアフラム、回路基板、又はXBARデバイスの他の構成要素などの熱抵抗は、K/Wでシミュレート又は測定することができる。熱流が平面に直交する平面材料の場合、Rt=L/kAであり、ここで、Rtは熱抵抗で、LはBOXの層及び/又は圧電プレート材料などの平面の厚さで、kは材料の熱伝導率で、AはBOXの層及び/又は圧電プレート材料の層などの平面の面積である。平面の面積Aは、平面内の熱輸送からの寄与を推定するために、異なる物理的面積を有する平面材料の接合部での物理的な平面の面積よりも大きい「有効面積」である場合もある。
【0044】
表400は、金属IDTとシリコン基板との間の結合酸化物及びLNの「熱接触抵抗」が、ダイからの熱伝導に関して重要であることを示している。表400は、第三の行のBOXとLNプレートがない場合と比較して、第二の行のBOXとLNプレート110がある場合のバンプあたりの熱抵抗が4倍を超える可能性を示すスプレッドシート計算のバージョンを示している。BOXなしでシミュレートされた19K/Wの熱抵抗の減少は、デバイスの熱抵抗全体のかなりの部分になる可能性がある。19K/Wは、熱抵抗全体の10%~30%の間である可能性がある。熱抵抗の減少により、連続波RF動作中のXBARフィルタの温度上昇が10%~30%低下する。XBARフィルタの動作温度を下げることの主な利点は、フィルタの最高周波数チャネルで、動作寿命が延び、出力電力が向上することである。
【0045】
図4B及び
図4Cは、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面の選択された場所から結合酸化物層(BOX)及び圧電層の所定の領域を除去することなく、XBARデバイスの一般化された断面及び熱回路をそれぞれ示すブロック
図402及び流れ
図404である。
【0046】
ブロック
図402及び流れ
図404は、対応する基板熱抵抗「R_Si」422を有するシリコン基板420を示す。基板の上部に取り付けられ、基板のキャビティ440上に懸架されているのは、LN圧電プレート510である。BOXの層は、キャビティの周囲の周りの基板420にプレートを取り付ける。キャビティ440の上を含むプレート510の上部に取り付けられて延びるのは、金属層M1 430である。プレート510及び層M1は、熱抵抗「R_membrane」412を有する共振器を形成する。層M1 430の最上部に取り付けられているのは、対応するM2熱抵抗「R_contact」475を有する接触金属層M2 470である。層M2に取り付けられているのは、対応するバンプ熱抵抗「R_bump」474を有する金バンプ472である。バンプ472の反対側の端に取り付けられているのは、対応する熱抵抗「R_carrier」452を有する対応するPCB熱抵抗を有するプリント回路基板(PCB)450である。
【0047】
「P_res」462及び「P_die」463は、それぞれ、使用中にこの経路を通って伝導される、共振器によって生成される熱及びフィルタ内の追加の加熱を表す。これらの追加の損失には、ブロック
図402及びフロー
図404に明示的に示されていない共振器によって生成される熱、電気配線からの寄生散逸、及びより一般的には非理想的な導体及び誘電体材料に起因する他の損失を含むことがある。この熱は、温度T_0のヒートシンク460に伝導される。定常状態の共振器温度は、回路理論からT_res=T_0+P_res*(R_membrane+R_contact)+(P_res+P_die)*(R_Si+R_contact+R_bump+R_carrier)として導出される。したがって、BOXの熱抵抗「R_contact」475は、フィルタで散逸されるすべての熱がこの層を介して伝導されるため、ボトルネック又は「チョークポイント」として機能する。
【0048】
PCB450は、アルミナ(例えば、Al2O3)及び/又はタングステン(W)であり得るか、又はそれらを含み得る。それは、信号ルーティング(例えば、ビア、トレース、及び接触パッド)を備えた高温同時焼成セラミック(HTCC)によって形成され得る。場合によっては、PCB450は銅(Cu)を使用したPCBラミネートである。これは、既知のPCBプロセスによって形成され、既知の信号ルーティングを有することがある。層M1及び層M2の材料は、IDT130について記載されているように、金属又は導体であり得る。それらは、同じ材料であってもよい。それらは異なる材料であってもよい。それらは、1つ又は複数の異なる処理ステップの間に形成され得る。これらのステップは、IDTを形成するためのステップとは異なることがある。
【0049】
「バンプ」の下に除去されたBOXがある場合と、ない場合とのデバイスのそれぞれの場合についての表400からの熱抵抗のシミュレーションは、関係R_node=R_contact+R_bumpによって
図404に関連している。この関係から、BOXの除去によって、R_nodeが4分の1削減のデバイスの重要性が推定される。共振器の温度上昇の約半分であるT_res-T_0は、
図404のR_Si422、R_contact475、R_bump474、及びR_carrier452に関連付けられる。さらに、R_node自体が共振器の温度上昇の20%~40%を構成する場合がある。したがって、BOXを除去すると、フィルタとその共振器の特定の属性に応じて、共振器全体の熱抵抗が10%~30%減少すると予想される。
【0050】
IDT又はバスバーから基板に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器及びフィルタを製造することを目的として、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、結合層(例えば、BOX)及び/又は圧電層の所定の領域を、デバイスの基板の表面の選択された場所から除去することができる。選択された場所から除去された所定の領域は、それらの除去がフィルタによって通過されるフィルタリング性能(例えば、通過する周波数範囲)に影響を与えたり変化させたりしないために除去される過剰なBOX及び圧電材料として説明され得る。場合によっては、除去すると、周波数範囲及び/又は波の通過振幅の5%未満だけ性能が変化する可能性がある。場合によっては、10%未満変化する。3%未満の変化であってもよい。
【0051】
場合によっては、フィルタ100又は370(又は部分115の周り)のキャビティのキャビティ周囲145又は345を越えて一定距離延びる過剰なBOX及び圧電材料が除去された改良されたXBAR共振器及びフィルタを製造するために、BOXの部分又は領域(例えば、層322、522又は582)及びプレート又は層の圧電材料(例えば、層110、310、410又は510)を除去することができる。この除去には、a)キャビティの周囲を超えて長さ方向にキャビティの長さの2~25%長く伸び、b)キャビティの周囲を越えて幅方向にキャビティの幅より2~25%長く伸びるBOX及び圧電材料の除去が含まれる場合がある。この除去は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、過剰なBOX及び圧電材料を除去することを含み得る。この除去は、接触層に直接隣接する(例えば、接触する)場所から、及び/又は接触バンプの下の場所から、余分なBOX及び圧電材料を除去することを含み得る。これには、XBAR共振器又はRFフィルタのダイアフラムの外側から、たとえば、共振器又はダイアフラムがまたがる(例えば、懸架されている、又は伸びている)キャビティの横の場所から、BOX及び圧電材料を除去することが含まれる場合がある。
【0052】
図5Aは、IDTパターン536と基板520との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された場所から除去された結合層522(例えば、BOX層)及び圧電層510を有するXBARデバイス500の概略的断面図である。デバイス500は、デバイス100及び/又は300を表すことができる。
図5Aは、
図1の断面A-A、
図1の断面B-B、及び/又は
図3Aの平面A-Aにあるフィルタデバイスの図であり得る。
図5Aは、キャビティ540を有する基板520を備えるフィルタデバイス500を示す。BOX層522は、基板上に形成され、キャビティ540にまたがる。圧電プレート510は、結合層522に結合され、キャビティ540にまたがる。場合によっては、結合層522は、キャビティ540上には存在せず、プレートが基板に取り付けられている場所の間にのみ存在する。
【0053】
圧電プレート510の前面に形成されたインターデジタル変換器(IDT)530は、バスバー532及び534と、インターリーブされたフィンガー536とを有する。各バスバーは、インターリーブされたフィンガー536を形成する1セットのフィンガーに取り付けられている。フィンガー536は、キャビティ540にまたがるか、又はキャビティ540上にある場合がある。場合によっては、IDTのバスバーの一部もキャビティの上にある。他の場合では、キャビティの上にはなく、すべてのバスバーは基板520の上にある。バスバーの少なくとも一部は、IDTで生成された熱をより適切に基板に伝導するために、(例えば、キャビティの上にはなく)基板上にある。
【0054】
デバイス500は、キャビティ540の幅WCと、層522及び510の幅WPと、IDT530の幅WIDTとを有する。また、
図1~
図3Bに記載されているように、これらの幅に関連するキャビティ、層、及びIDTの長さも有する。幅及び対応する長さは、キャビティ、層(例えば、ダイアフラム)及びIDTの周囲を定義することができる。
【0055】
M2材料の第二の金属層570及び571は、基板520の上部と、結合層522の側面と、圧電層510の側面及び上面の一部と、フィンガー536の上部ではなく、バスバーの上部などのIDT536の側面及び上面の一部に取り付けられている。場合によっては、第二の金属層570及び571は、結合層522、プレート510及びIDT530の周囲に延在する単一の金属層であって、それらの島を形成する。
【0056】
図5A~5Eの基板、結合層、圧電プレート/層、IDT、フィンガー、バスバー、導体パターンに使用できる材料は、
図1~
図4について説明した材料と同じであり得る。
図5A~5Eの層M1及び層M2の材料は、
図1~
図4について説明した材料と同じであり得る。結合層522は、二酸化ケイ素、Al2O3、窒化ケイ素、炭化ケイ素、SiOC、窒化アルミニウム、金属酸化物、別の酸化物又は別の適切な結合材料などのBOXであり得る。それは、そのような材料の1つ又は複数からなる複数の層である可能性がある。
【0057】
フィルタリング中にダイアフラム510内又はダイアフラム510によって生成された熱は、フィンガー536を介して、IDT530のバスバー532及び534に、次いで、基板520に伝導され得る。しかしながら、IDTのバスバー及び他のパーツは、圧電層及び結合酸化物(BOX)層によって基板から分離されている。
【0058】
したがって、フィンガー536及びバスバー532、534から基板520に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器500は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイス500の基板の表面の選択された場所から結合層522及び圧電層510の所定の領域(例えば、過剰量)WR1及びWR2を除去することによって形成される。除去は、共振器の周囲の層522及び510を除去して、キャビティ540上に層522、510及びIDT530の島を残すアイランドエッチングの概念によって行うことができる。この場合、領域WR1及びWR2は、結合層522、プレート510及びIDT530の周囲に延在する単一の領域であり、それらの島を形成する。
【0059】
複数のデバイス500が、各島を分離する領域WR1及びWR2を有する基板520上の島として存在し得ると考えられる。ここでは、層570は、各島の間に部分的に延びることができる。他の場合には、それはすべての島の間で完全に延びることもある。
【0060】
所定の領域WR1及びWR2を除去すると、「接触熱抵抗」が所定の量だけ低減する。導体パターンと基板との間の熱抵抗の低減における所定の量は、熱抵抗の2分の1、3分の1、5分の1、又は10分の1の低減であり得る。場合によっては、その低減は、3分の1になる。他の場合は、その低減は、10分の1になる。領域WR1及びWR2の領域サイズは、所望の低減の所定の量に基づいて選択又は事前決定され得る。WR1とWR2の範囲は1μm~200μmで、最大の拡がりは共振器から共振器、又は共振器からバンプオフセットによって決定される。WR1とWR2とは互いに同一である必要はないが、同一であることも除外されない。
【0061】
選択された場所は、結合層522及び圧電層510の除去が行われる所定の領域WR1及びWR2である。例えば、結合層522及び圧電層510は、キャビティにまたがり、キャビティの周囲を越えて一定長さを延びる過剰部分を有する。過剰部分は、キャビティの長さと幅(WC)の周囲を超えて、一定の長さと幅の距離(WR1とWR2)に伸びることがある。過剰部分は、キャビティの周囲を越えて長さ及び幅が、キャビティの長さ距離と幅距離のa)5、10又は20%を超えて延びる、又はb)2~25%延びる結合層及び圧電層の周囲であり得る。除去される領域WR1及びWR2は、共振器間又は共振器とバンプとの間の金属ルーティングによってカバーされる領域の一部又は全部に対応する。
【0062】
IDT及び第二の金属導体は、金属又は別の適切な導電性材料であり得る。基板は、シリコン又は別の適切な基板半導体材料であり得る。結合層は、二酸化ケイ素又は別の適切な結合材料などのBOXであり得る。
【0063】
圧電層510は、層510を除去するが、層522のいずれも除去しない選択的エッチング技術又は化学を使用して、領域WR1及びWR2で層510上から離れてエッチングされ得る。ここでは、層522は、エッチング層510のためのエッチング停止層であり得る。
【0064】
結合層522は、層522を除去するが、基板120のいかなる厚さ又は機能的に関連する厚さも除去しない選択的エッチング技術又は化学を使用して、領域WR1及びWR2で基板520上から離れてエッチングされ得る。ここでは、基板12は、エッチング層522のためのエッチング停止層であり得る。
【0065】
場合によっては、結合層522及び圧電層510の両方が、両方の層を除去するが、基板120のいかなる厚さ又は機能的に関連する厚さを除去しない選択的エッチング技術又は化学を使用して、領域WR1及びWR2で基板520上から離れてエッチングされる。ここでは、基板520は、両方の層をエッチングするためのエッチング停止層であり得る。
【0066】
BOX及びLN層510、522の領域を除去することは、IDTの電気的絶縁経路に影響を与えない可能性がある。なぜなら、BOX+LNが領域WR1及びWR2から除去された場合、M2層とSi基板層520との間に静電容量がないからである。例えば、領域WR1及びWR2で基板520の表面上に形成された高い電気抵抗を有するトラップリッチ層は、電気的絶縁経路を確保するのに十分である可能性が高い。場合によっては、酸化されたTi層などの領域WR1及びWR2で基板520の表面上に形成されたバリア層で高い抵抗を維持することが望ましいであろう。このような層は、寄生熱抵抗の寄与を最小限に抑えるために、0nm~20nmの厚さになる。
【0067】
図5Bは、IDTパターン536と基板520との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された場所から除去された結合層522及び圧電層510の3つの所定の領域を有するXBARデバイス502の概略的断面図である。デバイス502は、層522、510の幅WP1及び別の幅WP2、領域WR1及びWR2の除去と同様の理由で除去される、層522、510の第三の領域の幅WR3を含むデバイス500の代替構成を表すことができる。また、デバイス502は、図示されたように、層571に取り付けられたバンプ572も有する。バンプ572は、バンプ472で説明することができる。
【0068】
幅WP2及びWR3は、
図1~3B及び
図5Aに記載されているように、幅に関連する長さを有し得る。幅と対応する長さは、層と領域の周囲を定義する場合がある。
【0069】
デバイス502の場合、M2材料の第二の金属層573が、WP2で結合層522の側面に、WP2で圧電層510の側面及び上面に、上面層571に取り付けられている。また、WR3で基板520の上部に、層573の側面に取り付けられたM2材料の第二の金属層574を、その上面に取り付けられたバンプ572とともに有する。場合によっては、第二の金属層573及び574は、共振器又は層571の横の結合層522及びプレート510に形成されたトレンチを通って延びる別個の金属層である。トラップリッチなSi又は高抵抗金属膜では十分な電気的絶縁が得られない領域で、さらに電気的絶縁を提供するために、長さWP2にわたってBOX522とLN510を残してもよい。しかしながら、WR2とWR3が直接隣接するように、WP2もゼロになる場合がある。
【0070】
したがって、フィンガー536及びバスバー532、534から基板520に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器502は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイス502の基板の表面の選択された場所から結合層522及び圧電層510の所定の領域(例えば、過剰量)WR1、WR2及びWR3を除去することによって形成される。除去は、
図5について説明した層522、510及びIDT530の島とは別に、又はそれに加えて、共振器の周囲の横にあるトレンチ内の層522及び510を除去するトレンチエッチングの概念によって行うことができる。WR3の最小サイズはバンプ572の直径であり、典型的には、5μm~100μmの範囲である。WR3も、WR2まで延びることができ、最大200μmまで延びることができる。
【0071】
デバイス502の選択された場所及び所定の量は、デバイス500の場合と同じであり得る。WR領域で基板520上から離れて結合層522及び圧電層510をエッチングすることは、デバイス502において、デバイス500の場合と同じであり得る。
【0072】
図5Cは、IDTパターン536と基板520との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された場所に薄くされた結合層582を有するXBARデバイス504の概略的断面図である。デバイス504は、領域WR1及びWR2に層582及び510を含むデバイス500の代替構成を表すことができる。場合によっては、結合層582は、キャビティ540上に存在せず、プレートが基板に取り付けられている場所の間にのみ存在する。
【0073】
デバイス504の場合、M2材料の第二の金属層580及び581は、フィンガー536の上部ではなくバスバーのなど、IDT530の側面及び上面に、また圧電層510の上面に取り付けられている。
【0074】
場合によっては、第二の金属層580及び581は、IDT530の周囲に延在する単一の金属層であり、IDT530の島を形成する。
図5Aについて説明したように、複数の島として複数のデバイスが存在する場合もある。
【0075】
したがって、フィンガー536及びバスバー532、534から基板520に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器504は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイス504の基板の表面上の選択された場所でWR1及びWR2に薄くされた結合層582を有することによって形成される。
【0076】
層582は、50~500nmの間の厚さを有する。厚さは100~400nmの間であってもよい。場合によっては、70~130nmである。
【0077】
層582は、層522の材料のより薄い層を堆積することによって、及び/又は層522を層582の厚さに研磨することによって形成され得る。それは、薄いBOXの概念に従って、BOXのより厚い層から形成され得る。
【0078】
一例では、層522の2μmの厚さの層は、IDT530と基板520との間の熱抵抗の80%にするか、又は80%である。しかしながら、層582の100nmの厚さの層を使用すると、この熱抵抗の80%が少なくとも4分の1か5分の1に減少する。
【0079】
より薄い層582を使用することにより、キャビティ540を、
図3Aについて説明したような前面エッチング技術によって形成することも可能になる。例えば、
図5Dは、IDTパターン536と基板520との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された場所に前面エッチングキャビティ590及び薄くされた結合層582を有するXBARデバイス506の概略的断面図である。デバイス506は、デバイス500の代替構成を表すことができ、領域WIDT内にIDT530及び層510と、領域WR1及びWR2内に層582及び510とを含む。結合層582は、前面キャビティエッチング中にエッチング除去されており、したがって、キャビティ590上には存在せず、プレートが基板に取り付けられている場所の間にのみ存在する。他の場合には、結合層582は、前面エッチング中に除去されず、キャビティ590上にも存在する。キャビティ590は、キャビティ340と同様であり得る。
【0080】
キャビティ590は、基板520を完全には貫通せず、IDTを含む圧電プレート510の部分の下の基板に形成される。キャビティ590は、層582及び510を基板に取り付ける前に、基板520をエッチングすることによって形成することができる。別の場合において、キャビティ590は、層510を層582に取り付けてキャビティ上に層510のダイアフラムを形成する前に、基板520及び層582をエッチングすることによって形成される。あるいは、キャビティ590は、圧電プレート510に設けられた1つ又は複数の開口部542を通って基板に到達する選択的エッチャントで基板520をエッチングすることによって形成され得る。開口部542は、開口部342と同様であり得る。開口部542以外では、プレート510のダイアフラムは、キャビティ590の周囲の大部分の周りに隣接し得る。例えば、層510のダイアフラムは、キャビティ590の周囲の少なくとも50%の周りに隣接し得る。デバイス506の場合、M2材料の第二の金属層580及び581は、また、層510の開口部542の場所をカバーしている。
【0081】
したがって、フィンガー536及びバスバー532、534から基板520に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器506は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイス506の基板の表面上の選択された場所WR1及びWR2に、前面エッチングされたキャビティ590、及び薄くされた結合層582を有することによって形成される。
【0082】
層582は、前面エッチングの概念を備えた薄いBOXを使用して、キャビティ590の前面エッチングの前に形成され得る。キャビティ590を形成するためのエッチングは、パターン化された「タブ」を使用してキャビティを定義することができ、これは、キャビティ領域の下及び中の基板層520のSi材料にエッチングされる。基板520のタブ領域は、事前にパターン化され、犠牲層で満たされ、Si材料のエッチングの前にタブ材料を再平面化するために化学機械研磨(CMP)を受けることができる。
【0083】
図5Cについて述べたように、薄層582は、パターン化されていないウェーハ形成キャビティに必要とされる可能性があるより厚い層などのより厚い層522よりも熱抵抗が低い。
【0084】
キャビティ590は、エッチング中に層510のパターン化されていないLNから開かれた穴542を有する空気キャビティとして形成され得る。Si基板は、エッチングキャビティを規定するために選択的エッチング停止機能で事前にパターン化されても、あるいはキャビティサイズがエッチャントのタイプ及び露出によって制御されるようにパターン化されていなくてもよい。次に、金属580及び581が、下の空気キャビティに入ることなく、層510、開口部542、及びIDT530の一部の上に形成される。
【0085】
薄い層582を使用することにより、共振器周囲の周囲の場所で層510及び582を通してサーマルビアをエッチングして、IDT530と基板520との間の熱抵抗をさらに低減することもできる。例えば、
図5Eは、IDTパターン536と基板520との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された場所に、サーマルビア528、前面エッチングキャビティ590及び薄くされた結合層582を有するXBARデバイス508の概略的断面図である。デバイス508は、サーマルビア528を含むデバイス506の代替構成を表すことができる。結合層582は、キャビティ590上に存在しない。他の場合には、結合層582は、キャビティ590上に存在する。サーマルビア528は、直径又は幅が2μm~100μmの範囲であり得る。それらの断面は、円形、正方形、楕円形、又は長方形であり得る。Si基板520へのサーマルビアの範囲は、Si基板の厚さの0.5%~50%の範囲であり得る。その場合、典型的な寸法は、200μmのSi基板520に対して1μm~100μmである。サーマルビアは、Au、Cu、Al、Si、Ti、Niなどの導電性金属、これらの材料の合金から構成され得、又はこれらの材料を相加的に重ねることによって構成され得る。
【0086】
サーマルビア528は、層510、582内の金属又はポリシリコン領域を追加して、層520の上面又は厚さを通して蒸着することによって形成され、IDTから基板への熱伝導率を増加させるヒートシンクを作成することができる。領域528の材料は、IDTバスバー534、532からシリコン層520に熱を伝達する熱特性を有するように選択された金属又はポリシリコン材料であり得る。領域は、開口部542を形成するときに、層510、582及び任意選択で520を通して形成することができ、それは、ビア528の場所でそれらの層を通してエッチングも行い、次いで、層580及び581を堆積するときなど、それらの領域に金属又はポリシリコンを堆積することによって行われる。ビア528は、共振器プレート510で生じた熱を均一に基板に伝導するために、キャビティ590の周りにリングを形成することができる。
図5Aで説明したように、複数のデバイスの島の複数のキャビティの周りに複数のリングが存在する場合がある。
【0087】
高熱抵抗層510及び582を通る低熱抵抗ビア528を追加することによって、層580/581から基板に流れる熱に対して、層510及び582を通る経路よりも低い熱抵抗のビア528を作成することによって、IDTから、層580/581を通り、基板520に至る経路の熱抵抗が低減する。これは、所与の入力熱負荷に対する所与のプレート共振器の温度上昇を低減する。
【0088】
したがって、フィンガー536及びバスバー532、534から基板520に熱を効率的に伝導する改良されたXBAR共振器508は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、デバイスの基板の表面上の選択された位置WR1及びWR2に、サーマルビア528、前面エッチングされたキャビティ590、及び薄くされた結合層582を有することによって形成される。
【0089】
サーマルビア528は、サーマルビアの概念を備えた薄いBOXの前面エッチングを使用して、開口部542及び/又はキャビティ590の前面エッチングの前又は最中に形成することができる。キャビティに湿式エッチングを使用し、ビア開口部に乾式エッチングを使用するなどして、ビアとは異なるエッチャントをキャビティに使用することができる。エッチングには、複数のフォトリソグラフィー処理ステップが必要になることがある。別の場合には、ビア材料の堆積前のビア開口部のパターン化中に、キャビティ開口部のより複雑な「被覆」を使用することができる。
【0090】
ビア528を使用することの1つの利点は、IDTと基板との間の熱抵抗を下げるために、追加の金属を流すなどの追加のフォトリソグラフィー処理ステップを行うよりも、熱ビアを定義する方が簡単であることである。
【0091】
また、
図5A~5Cのキャビティ540の背面エッチングの場合、キャビティがエッチングされるときに層510がエッチングされないように、背面エッチングストップとして1~3μmの厚いSiO2層522が必要となり得ることに留意されたい。一方、
図5D~5Eのキャビティ590の前面エッチングのために、より薄い層582は、200nm~400nmのBOX材料の薄い酸化物であってもよい。
【0092】
(方法の説明)
図6は、間の熱インピーダンスが低く、したがって、IDT又はバスバーから基板に熱を効率的に伝導するXBAR音響共振器を作製するためのプロセス600を示す簡略化されたフローチャートである。プロセス600は、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、a)BOX及び/又は圧電層510及び522の所定の領域を基板の表面の選択された場所から除去すること、BOX材料のより薄い層582を使用すること、及び/又はサーマルビア528を使用することを含む。
【0093】
プロセス600は、605で基板及び圧電材料のプレートから開始し、695で
図5A~5Eに示すような完成したXBAR又はフィルタで終了する。後述するように、圧電プレートは、犠牲基板上に取り付けられてもよく、圧電材料のウェーハの一部であってもよい。
図6のフローチャートには主要なプロセスステップのみが含まれる。様々な従来のプロセスステップ(例えば、表面処理、化学的機械的処理(CMP)、洗浄、検査、堆積、フォトリソグラフィー、ベーキング、アニーリング、モニタリング、テストなど)は、
図6に示されているステップの前、間、後、及び最中に実行できる。
【0094】
図6のフローチャートは、基板にキャビティが形成される時期と方法が異なるXBARを製造するためのプロセス600の3つの変形例を捉えている。キャビティは、ステップ610A、610B、又は610Cで形成され得る。プロセス600の3つの変形例のそれぞれにおいて、これらのステップのうちの1つだけが実行される。
【0095】
図6のフローチャートも、
図5A~5Cに示すように、結合層及び圧電材料が所定の領域から除去される時期及び方法が異なるXBARを作製するためのプロセス600の2つの変形例を捉えている。例えば、過剰なBOX及び圧電材料は、ステップ625A又は625Bで除去され得る。プロセス600のこれらの2つの変形例のそれぞれにおいて、これらのステップのうちの1つのみが実行される。別の変形例では、過剰なBOX及び圧電材料のいくつかは、ステップ625Aで除去され得、それらのより多くは、ステップ625Bで除去される。
【0096】
圧電プレートは、例えば、Zカット、回転Zカット、又は回転Yカットのニオブ酸リチウム又はタンタル酸リチウムであり得る。圧電プレートは、プレート110について前述したように、他の材料及び/又は他のカットであり得る。基板は、シリコンであり得る。基板は、エッチング又は他の処理によって深いキャビティの形成を可能にする何らかの他の材料であり得る。
【0097】
プロセス600の1つの変形例では、620で圧電プレートが基板に結合される前に、1つ又は複数のキャビティが610Aで基板に形成される。フィルタデバイス内で、各共振器に対して別個のキャビティを形成することができる。1つ又は複数のキャビティは、従来のフォトリソグラフィー及びエッチング技術を使用して形成することができる。これらの技術は、等方性であっても、異方性であってもよく、深掘り反応性イオンエッチング(DRIE)を使用してもよい。典型的には、610Aで形成されたキャビティは基板を貫通せず、結果として生じる共振器デバイスは、
図3Aに示すような断面を有することになる。
【0098】
620で、圧電プレートが基板に結合される。圧電プレートと基板は、ウェーハ結合プロセスによって結合することができる。典型的には、基板と圧電プレートの合わせ面は、高度に研磨されている。酸化物などの中間結合材料の1つ又は複数の層が、圧電プレート及び基板の一方又は両方の合わせ面上に形成又は堆積される。一方又は両方の合わせ面は、例えば、プラズマプロセスを使用して活性化することができる。次に、合わせ面をかなりの力で一緒に押して、圧電プレートと基板又は中間材料層との間に分子結合を確立することができる。
【0099】
620の第一の変形例では、圧電プレートは、最初に犠牲基板上に取り付けられる。圧電プレートと基板が結合層を使用して結合された後、犠牲基板、及び介在する層が除去されて、圧電プレートの表面(以前に犠牲基板に面していた表面)が露出する。犠牲基板は、例えば、材料に依存する湿式若しくは乾式エッチング、又は他の何らかのプロセスによって除去することができる。
【0100】
620の第二の変形例では、単結晶圧電ウェーハから開始する。イオンは、圧電ウェーハの表面の下の制御された深さまで注入される(
図6には図示せず)。イオン注入の表面から深さまでのウェーハの部分は、薄い圧電プレートであり、(又は、になり)、ウェーハの残りは、事実上犠牲基板である。圧電ウェーハの注入された表面とデバイス基板が結合された後、圧電ウェーハは、注入されたイオンの平面で分割され(例えば、熱衝撃を使用して)、圧電材料の薄いプレートが露出されて基板に結合されたままで残り得る。薄い圧電材料の厚さは、注入されたイオンのエネルギー(したがって深さ)によって決まる。イオン注入とそれに続く薄いプレートの分離のプロセスは、一般に「イオンスライシング」と呼ばれる。圧電ウェーハが分割された後、薄い圧電プレートの露出面を研磨又は平坦化することができる。
【0101】
プロセス600のいずれかの変形例において、結合層522又は582は、
図5A~5Eについて説明したように、プレートを基板に結合するために使用される。層582を使用することは、
図5D~5Eについて説明したように、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために、BOX材料のより薄い層582を使用することになる。BOX材料のより薄い層582は、プロセス600の任意の1つ又は複数のプロセス中に形成されたサーマルビア528と共に使用すること、及び/又は
図5Eについて説明したように、導体パターンと基板との間で所定の量の熱抵抗を低減するために使用することができる。
【0102】
プロセス600の1つの変形例では、625Aで、
図5A~5Cについて説明したように、BOX及び圧電プレートの所定の領域が除去される。これは、620で圧電プレートが基板に結合された後、630で導体パターンが形成される前に、所定の領域を除去し得る。所定の領域は、パターン化及びエッチングによって除去され得る。ここでは、基板層520は、圧電材料の所定の領域を除去するために、エッチングストップとして使用することができる。625Aでの除去は、また、ビア528を形成するためのプレート、BOX、及び任意選択で基板の領域を除去することを含み得る。
【0103】
1つ又は複数のXBARデバイスを規定する導体パターン及び誘電体層は、630で圧電プレートの表面上に形成される。典型的には、フィルタデバイスは、順次堆積及びパターン化される2つ以上の導体層を有する。導体層は、ボンディングパッド、金又ははんだバンプ、又はデバイスと外部回路との間の接続を行うための他の手段を含み得る。導体層は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、モリブデン、タングステン、ベリリウム、金、又は他の導電性金属であり得る。任意選択で、他の材料の1つ又は複数の層を、導体層の下(すなわち、導体層と圧電プレートとの間)及び/又は導体層の上に配置することができる。例えば、チタン、クロム、又は他の金属の薄膜を使用して、導体層と圧電プレートとの間の接着を改善することができる。導体層は、ボンディングパッド、金又ははんだバンプ、又はデバイスと外部回路との間の接続を行うための他の手段を含み得る。
【0104】
導体パターンは、圧電プレートの表面上に導体層を堆積させ、パターン化されたフォトレジストを通してエッチングすることによって余分な金属を除去することによって、630で形成することができる。あるいは、導体パターンは、リフトオフプロセスを使用して630で形成することができる。フォトレジストを圧電プレート上に堆積させ、パターン化して導体パターンを定義することができる。導体層は、圧電プレートの表面上に順番に堆積させることができる。次に、フォトレジストを除去することができ、これにより、余分な材料が除去され、導体パターンが残る。場合によっては、630での形成は、プレートを基板に結合する前にIDTが形成される場合など、620での結合の前に発生する。
【0105】
プロセス600の別の変形例では、625Bで、BOX及び圧電プレートの所定の領域が除去されるが、これは、630で導体パターンが形成された後で、640で前面誘電体が任意選択で形成される前である。所定の領域は、
図5A~5Cで述べたように、除去され得る。所定の領域は、パターン化及びエッチングによって除去され得る。625Bでの除去は、また、ビア528を形成するためのプレート、BOX、及び任意選択で基板の領域を除去することを含み得る。
【0106】
640において、1つ又は複数の前面誘電体層は、IDT又はXBARデバイスの1つ又は複数の所望の導体パターン上に、圧電プレートの前面に誘電体材料の1つ又は複数の層を堆積することによって形成され得る。1つ又は複数の誘電体層は、スパッタリング、蒸着、又は化学蒸着などの従来の蒸着技術を使用して蒸着することができる。1つ又は複数の誘電体層は、導体パターンの上を含む、圧電プレートの表面全体にわたって堆積され得る。あるいは、1つ又は複数のリソグラフィプロセス(フォトマスクを使用)を使用して、誘電体層の堆積を、IDTのインターリーブされたフィンガーの間など、圧電プレートの選択された領域に制限することができる。マスクを使用して、圧電プレートの異なる部分に異なる厚さの誘電体材料を堆積させることもできる。場合によっては、640での堆積には、選択したIDTの前面に少なくとも1つの誘電体層の第一の厚さを堆積することを含むが、他のIDT上に誘電体がないこと、あるいは少なくとも1つの誘電体の第一の厚さよりも薄い第二の厚さを堆積することを含む。別の方法は、これらの誘電体層がIDTのインターリーブされたフィンガーの間にある場合である。
【0107】
1つ又は複数の誘電体層は、例えば、米国特許第10,491,192号に記載されているように、直列共振器の共振周波数に対してシャント共振器の共振周波数をシフトするために、シャント共振器のIDT上に選択的に形成される誘電体層を含み得る。1つ又は複数の誘電体層は、デバイスの全体又は実質的な部分の上に堆積されたカプセル化/不動態化層を含み得る。
【0108】
これらの誘電体層の異なる厚さにより、選択されたXBARは、他のXBARと比較して異なる周波数に調整される。例えば、フィルタ内のXBARの共振周波数は、一部のXBARで異なる前面誘電体層の厚さを使用して調整できる。
【0109】
tfd=0を有するXBAR(すなわち、誘電体層を有さないXBAR)のアドミタンスと比較して、tfd=30nmの誘電体層を有するXBARのアドミタンスは、誘電体層を有さないXBARと比較して、共振周波数を約145mL低減させる。tfd=60nmの誘電体層を有するXBARのアドミタンスは、誘電体層を有さないXBARと比較して、共振周波数を約305MHz低減させる。tfd=90nmの誘電体層を有するXBARのアドミタンスは、誘電体層を有さないXBARと比較して、共振周波数を約475MHz低減させる。重要なことに、様々な厚さの誘電体層が存在しても、圧電結合に、ほとんど、又は全く影響を与えない。
【0110】
プロセス600の第二の変形例では、すべての導体パターン及び誘電体層が630で形成された後、610Bで基板の裏側に1つ又は複数のキャビティが形成される。フィルタデバイス内で、各共振器に対して別個のキャビティを形成することができる。1つ又は複数のキャビティは、異方性又は配向依存の乾式又は湿式エッチングを使用して形成され、基板の裏側を通って圧電プレートに穴を開けることができる。この場合、結果として得られる共振器デバイスは、
図1及び
図5A~5Cに示されるような断面を有することになる。
【0111】
プロセス600の第三の変形例では、基板層320の窪みの形態の1つ又は複数のキャビティは、圧電プレートの開口部を通して導入されたエッチャントを使用して、基板の前面に形成された犠牲層をエッチングすることによって610Cで形成され得る。フィルタデバイス内で、各共振器に対して別個のキャビティを形成することができる。圧電プレートの穴を通過し、基板の前面のくぼみに形成された犠牲層をエッチングする等方性又は非配向依存の乾式エッチングを使用して、1つ又は複数のキャビティを形成することができる。610Cで形成された1つ又は複数のキャビティは、基板層320を完全には貫通せず、結果として得られる共振器デバイスは、
図3A及び
図5D~5Eに示されるような断面を有することになる。
【0112】
プロセス600のすべての変形例において、フィルタデバイス又はXBARデバイスは、660で完了する。660で起こり得るアクションは、
図5A~5Eのように、層570、571、573、574、580、及び581などの金属層M2を堆積することを含む。それらのアクションは、また、ビア528の材料を堆積させることを含み得る。
【0113】
660で起こり得るアクションには、デバイスの全部又は一部に、SiO
2又はSi
3O
4などのカプセル化/不動態化層を堆積すること、デバイスと外部回路との間を接続するためのボンディングパッド又ははんだバンプ又は他の手段を形成すること、複数のデバイスを含むウェーハから個々のデバイスを切り出すこと、その他のパッケージング手順、及びテストも含まれる。660で起こり得る別のアクションは、デバイスの前面から金属又は誘電体の材料を追加又は除去することにより、フィルタデバイス内の共振器の共振周波数を調整することである。フィルタデバイスが完了した後、プロセスは695で終了する。
図1~
図3C及び
図5A~5Eは、660で完了した後のXBARデバイス又は共振器の例を示している場合がある。
【0114】
(結言)
この説明全体を通して、示される実施形態及び実施例は、開示又は特許請求される装置及び手順に対する制限ではなく、模範と見なされるべきである。本明細書に提示される例の多くは、方法動作又はシステム要素の特定の組み合わせを含むが、それらの行為及びそれらの要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることができることを理解されたい。フローチャートに関しては、追加のステップを入れることも、より少ないステップで行うこともでき、示されているステップを組み合わせて、又はさらに改良して、本明細書に記載の方法を達成することができる。一実施形態に関連してのみ論じられる動作、要素、及び特徴は、他の実施形態における同様の役割から除外されることを意図するものではない。
【0115】
本明細書で使用される場合、「複数」は2つ以上を意味する。本明細書で使用される場合、アイテムの「セット」は、そのようなアイテムの1つ又は複数を含み得る。本明細書で使用される場合、書面による説明又は特許請求の範囲において、「備える」、「含む」、「携える」、「有する」、「含有する」、「関与する」などの用語は、オープンであると理解されるべきであり、つまり、含むが、これに限定されない。クレームに関して、それぞれ「からなる」及び「本質的にからなる」の移行句のみが、閉じた又は半分閉じた移行句である。クレーム要素を変更するためのクレームでの「第一」、「第二」、「第三」などの序数用語の使用は、それ自体では、いかなる又はあるクレーム要素の別のクレーム要素に対する優先順位、優位性、順序、又は方法の動作が実行される時間的な順序を意味するものではなく、ただし、クレーム要素を区別するために、特定の名前を持つ1つのクレーム要素を同じ名前を持つ別の要素から区別するためのラベルとしてのみ使用される(ただし、序数の用語を使用するため)。本明細書で使用される場合、「及び/又は」は、列挙されたアイテムが代替形態であることを意味するが、これらの代替形態も、列挙されたアイテムの任意の組み合わせを含む。
【外国語明細書】