(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077518
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】薄膜バッテリ用の印刷可能な紫外線発光ダイオード硬化性電解質
(51)【国際特許分類】
H01M 6/06 20060101AFI20220516BHJP
H01M 6/12 20060101ALI20220516BHJP
H01M 6/40 20060101ALI20220516BHJP
H01M 4/06 20060101ALI20220516BHJP
H01B 1/06 20060101ALI20220516BHJP
【FI】
H01M6/06 A
H01M6/12 Z
H01M6/40
H01M4/06 C
H01M4/06 R
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183115
(22)【出願日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】17/095,681
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セロテープ
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ナヴィーン・チョプラ
(72)【発明者】
【氏名】ビビー・エスター・アブラハム
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・マクガイア
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ブラック
(72)【発明者】
【氏名】アレクシス・ラフォルグ
【テーマコード(参考)】
5G301
5H024
5H025
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CD01
5H024AA03
5H024AA14
5H024CC04
5H024FF03
5H024GG01
5H024HH01
5H025AA10
5H025BB18
5H025CC16
5H050AA19
5H050BA03
5H050CA09
5H050CB13
5H050GA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】印刷された薄膜バッテリ用電解質、電解質を伴うバッテリ、及び電解質を用いてバッテリを製造するための方法を提供する。
【解決手段】電解質を形成するための組成物は、水、酸、1種以上の光開始剤を伴うホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、及び中和剤を含む紫外線(UV)硬化性混合物を含む。バッテリは、カソード層と、アノード層と、前記カソード層及び前記アノード層に結合された電解質層であって、架橋ポリマー及びホスフィンオキシドを含む、前記電解質層と、を含む。方法であって、電極層を印刷することと、電解質層前駆体組成物を前記電極層の上に分配することであって、前記電解質層前駆体組成物が、水、酸、ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、中和剤、及び架橋剤を含む、分配することと、前記電解質層前駆体組成物を空気の存在下で紫外線硬化させて、電解質層を形成することと、を含む、方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
水、酸、ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、及び中和剤を含む、紫外線(UV)硬化性混合物を含む、組成物。
【請求項2】
トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)を含む架橋剤を更に含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記架橋剤が、前記UV硬化性混合物の総重量の2重量%~4重量%を構成する、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記水混和性ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記PEOが、10重量パーセント(10重量%)の600,000モル体積のPEO、5重量%の4,000,000モル体積のPEO、又は12重量%の4,000,000モル体積のPEOのうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記水が、前記UV硬化性混合物の総重量の31重量%~37重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸が、前記UV硬化性混合物の総重量の8重量%~11重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ホスフィンオキシドが、1つ以上の光開始剤を含み、ビスシルホスフィンオキシド(BAPO)又はモノアシルホスフォンオキシド(MAPO)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記ホスフィンオキシドが、前記UV硬化性混合物の総重量の7重量%~15重量%の量のBAPOを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記水混和性ポリマーが、前記UV硬化性混合物の総重量の20重量%~25重量%を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記塩が、前記UV硬化性混合物の総重量の2重量%~20重量%の量の塩化アンモニウム(NH4Cl)塩を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記中和剤が、前記UV硬化性混合物の総重量の6重量%~9重量%の量の水酸化カリウム(KOH)を構成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
バッテリであって、
カソード層と、
アノード層と、
前記カソード層及び前記アノード層に結合された電解質層であって、架橋ポリマー及びホスフィンオキシドを含む、前記電解質層と、を含む、バッテリ。
【請求項14】
前記電解質層が、前記カソード層と前記アノード層との間に位置する、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項15】
前記カソード層及び前記アノード層が、前記電解質層上に並んで位置付けられる、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項16】
前記架橋ポリマーが、前記電解質層を形成するためにUV光下で硬化中に消費される、水、酸、1種以上の光開始剤を伴う前記ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、中和剤、及び架橋剤の混合物から形成される、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項17】
前記ホスフィンオキシドが、ビスシルホスフィンオキシド(BAPO)又はモノアシルホスフォンオキシド(MAPO)を含む、請求項13に記載のバッテリ。
【請求項18】
方法であって、
電極層を印刷することと、
電解質層前駆体組成物を前記電極層の上に分配することであって、前記電解質層前駆体組成物が、水、酸、ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、中和剤、及び架橋剤を含む、分配することと、
前記電解質層前駆体組成物を空気の存在下で紫外線硬化させて、電解質層を形成することと、を含む、方法。
【請求項19】
前記電極層が、印刷されるカソード層又はアノード層を含み、前記アノード層が、前記電極層の上に積層される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記電極層が、印刷されるカソード層を含み、印刷されるアノード層が、前記カソード層に結合される前記電解質層の同じ側で前記電解質層に結合される、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、印刷された薄膜バッテリに関し、より具体的には、薄膜バッテリ用の印刷可能な紫外線(UV)発光ダイオード(LED)硬化性電解質に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリは、携帯機器に電力を供給するために使用される。バッテリは、一般に、カソード、アノード、及び液体電解質を含む。バッテリは、様々な形状、サイズ、及び電圧であり得る。
【0003】
薄膜バッテリは、バッテリ技術における最近の開発である。薄膜バッテリは、高い忠実度及び精度で堆積される一連の層を使用する。印刷可能な薄膜バッテリは、例えば、モノのインターネット(IoT)、ウェアラブル、及びセンサなどの用途のための新しいフォームファクタ及び電源を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書に示される態様によれば、印刷された薄膜バッテリ用の電解質、電解質を伴うバッテリ、及び電解質を用いてバッテリを製造するための方法が提供される。実施形態の1つの開示される特徴は、水、酸、1種以上の光開始剤を伴うホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、及び中和剤の紫外線(UV)硬化性混合物を含む組成物である。
【0005】
実施形態の別の開示された特徴は、バッテリである。バッテリは、カソード層、アノード層、及びカソード層及びアノード層に結合された電解質層を含み、電解質層は、架橋ポリマー及びホスフィンオキシドを含む。
【0006】
実施形態の別の開示特徴は、方法である。本方法は、カソード層を印刷することと、電解質層前駆体組成物をカソード層の上に分配することであって、電解質層前駆体組成物は、水、酸、1種以上の光開始剤を伴うホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、中和剤、及び架橋剤を含む、分配することと、電解質層前駆体組成物を空気の存在下で紫外線硬化させて、電解質層を形成することと、アノード層を印刷することと、アノード層を電解質層に結合することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の教示は、以下の添付図面と併せて以下の発明を実施するための形態を考慮することによって容易に理解することができる。
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の例示的な薄膜バッテリのブロック図を示す。
【0009】
【
図2】
図2は、本開示の薄膜バッテリの別の例のブロック図を示す。
【0010】
【
図3】
図3は、本開示の例示的な電解質を配合するために使用される例示的な化合物を示す。
【0011】
【
図4】
図4は、本開示の電解質を用いて薄膜バッテリを製造する例示的なプロセスフロー図を示す。
【0012】
【
図5】
図5は、本開示の電解質を用いて薄膜バッテリを製造するための例示的な方法のフローチャートを示す。
【0013】
理解を容易にするために、可能な限り、同一の参照番号は、図面に共通している同一の要素を示すために使用されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、薄膜バッテリ用の印刷可能なUV LED硬化性電解質、及びそれを製造するための方法を広く開示する。上述のように、薄膜バッテリは、バッテリ技術における最近の開発である。薄膜バッテリは、高い忠実度及び精度で堆積される一連の層を使用する。いくつかの薄膜バッテリは、電解質層としての液体電解質に浸漬された紙層を使用する。しかしながら、これは、総印刷されたバッテリを作製する際に、複雑さ及び更なる課題をもたらし得る。漏れ、可撓性の低減、及び封止性の低下は、溶体系電解質層上の問題である。
【0015】
本開示は、硬化性ゲル電解質層のための配合物を提供する。印刷可能なUV LED硬化性電解質層は、上記の溶体系電解質層に関連する漏れ、可撓性の低減、及び封止性の低下に関連する問題を排除し得るゲル形態である。更に、硬化した電解質の固体ゲル形態は、液体電解質が使用されるときの物理的セパレータの必要性を排除し得る。
【0016】
いくつかのUV硬化性材料は、硬化中に酸素阻害を被る。酸素阻害は、硬化の有効性を制限することがあり、不活性なブランケット雰囲気(例えば、窒素ガス(N2)ブランケット)などのより複雑なシステムが必要とされ得る。本開示のUV LED硬化性電解質層の配合物は、空気中で硬化させることができる。したがって、不活性環境の必要性は、排除される。
【0017】
更に、本開示のUV LED硬化性電解質層は、他の電解質層配合物よりもはるかに速く硬化し得る。例えば、本開示のUV LED硬化性電解質層は、数分ではなく数秒以内に硬化し得る。これにより、製造プロセスの速度も改善され得る。
【0018】
図1は、本開示の例示的な薄膜印刷されたバッテリ100(本明細書ではバッテリ100とも称される)を示す。一実施形態では、バッテリ100の各層は、印刷され得る(例えば、3次元(3D)プリンタを介して)。バッテリ100は、バッテリ100が可撓性であることを可能にする材料、又は寸法で作製され得る。
【0019】
一実施形態では、バッテリ100は、カソード集電体102、カソード層104、本開示の電解質層106、アノード層108、及びアノード集電体110を含み得る。一実施形態では、電解質層106は、カソード層104とアノード層108との間に位置し得る。別の言い方をすれば、バッテリ100は、電解質層106がカソード層104の上に形成され、アノード層108が電解質層106の上部に形成されるか、又はその逆に形成されるように製造され得る。
【0020】
一実施形態では、カソード集電体102及びアノード集電体110は、3D印刷用の材料としても使用することができる導電性金属から製造され得る。例えば、カソード集電体102及びアノード集電体110は、銀(Ag)から製造され得る。
【0021】
一実施形態では、カソード層104及びアノード層108はまた、3Dプリンタに適合する材料又は化合物を使用して印刷され得る。例えば、カソード層104は、酸化マンガン(MnO2)を使用して製造され得、アノード層108は、亜鉛(Zn)を使用して製造され得る。
【0022】
一実施形態では、電解質層106は、硬化性ゲル電解質層を形成することができる配合物を用いて印刷され得る。配合物は、空気の存在下で印刷可能であり、UV硬化性であり得る。換言すれば、電解質層106の配合物は、酸素又は周囲条件の存在下で硬化することができる。別の言い方をすれば、電解質層106の配合物は、酸素阻害に対して感受性がない場合があるか、又は不活性なブランケット雰囲気(例えば、窒素(N2)ガス、アルゴン、ヘリウムなど)の存在を必要としない場合がある。
【0023】
加えて、電解質層106の配合物は、以前の電解質配合物よりもはるかに速く硬化し得る。例えば、電解質層106の配合物は、数分で硬化する他の電解質配合物と対比して、数秒以内に硬化し得る。電解質層106の配合物の例を
図3に示し、以下で更に詳細に説明する。
【0024】
図2は、本開示の例示的な薄膜印刷されたバッテリ200(本明細書ではバッテリ200とも称される)の別の実施形態を示す。一実施形態では、バッテリ200の各層は、印刷され得る(例えば、3Dプリンタを介して)。バッテリ200は、バッテリ200が可撓性であることを可能にする材料、又は寸法で作製され得る。
【0025】
一実施形態では、バッテリ200は、カソード集電体202、カソード層204、本開示の電解質層206、アノード層208、及びアノード集電体210を含み得る。一実施形態では、カソード層204及びアノード層208は、並列に位置付けられ得る。例えば、電解質層206は、カソード層204及びアノード層208の両方の上部に位置し得る。別の言い方をすれば、カソード層204及びアノード層208は、電解質層206の同じ側で結合され、並列に、又は互いに隣接して位置付けられ得る。
【0026】
一実施形態では、カソード集電体202及びアノード集電体210は、3D印刷用の材料としても使用することができる導電性金属から製造され得る。例えば、カソード集電体202及びアノード集電体210は、銀(Ag)を使用して製造され得る。
【0027】
一実施形態では、カソード層204及びアノード層208はまた、3Dプリンタに適合する材料又は化合物を使用して印刷され得る。例えば、カソード層204は、酸化マンガン(MnO2)を使用して製造され得、アノード層208は、亜鉛(Zn)を使用して製造され得る。
【0028】
一実施形態では、電解質層206は、硬化性ゲル電解質層を形成することができる配合物を用いて印刷され得る。配合物は、空気の存在下で印刷可能であり、UV硬化性であってもよい。換言すれば、電解質層206のための配合物は、酸素又は周囲条件の存在下で硬化され得る。別の言い方をすれば、電解質層206の配合物は、酸素阻害に対して感受性がない場合があるか、又は不活性なブランケット雰囲気(例えば、窒素(N2)ガス、アルゴン、ヘリウムなど)の存在を必要としない場合がある。
【0029】
加えて、電解質層206の配合物は、以前の電解質配合物よりもはるかに速く硬化し得る。例えば、電解質層206の配合物は、数分で硬化する他の電解質配合物と対比して、数秒以内に硬化し得る。電解質層206のための配合物の例を
図3に示し、以下で更に詳細に説明する。
【0030】
一実施形態では、電解質層206は、電解質層前駆体組成物から形成され得る。電解質層前駆体組成物は、水、酸、ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、及び中和剤のUV硬化性混合物を含み得る。一実施形態では、配合物300はまた、架橋剤を含み得る。
【0031】
一実施形態では、水混和性ポリマーとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミド、ポリ(2-アルキル-2-オキサゾリン)、及びポリリン酸塩が挙げられ得る。使用される水混和性ポリマーは、多量の酸素を伴う良好なイオン輸送などの特定の特性を有するべきである。
【0032】
一実施形態では、塩は、任意のタイプのイオン性塩であってもよい。一実施形態では、イオン性塩としては、塩素塩又は臭素酸塩が挙げられ得る。例えば、塩としては、塩化アンモニウム(NH4Cl)、塩化カリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化アンモニウム、臭化カリウム、臭化ナトリウム、及び臭化リチウムが挙げられ得る。
【0033】
一実施形態では、中和剤としては、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ピリジン、トリメチルアミン等が挙げられ得る。中和剤は、酸の塩を生成する塩基であってもよい。例えば、酸がアクリル酸であり、中和剤が水酸化カリウムである場合、中和剤は、アクリル酸のカリウム塩を生成し得る。
【0034】
図3は、本開示の電解質層106及び206を形成するために使用することができる電解質層前駆体組成物の例示的な配合物300を示す。一実施形態では、配合物300は、水、アクリル酸304、1種以上の光開始剤を伴うホスフィンオキシド306、ポリエチレンオキシド(PEO)312、塩化アンモニウム(NH
4Cl)塩308、水酸化カリウム(KOH)310、及び架橋剤314を含み得る。
【0035】
一実施形態では、架橋剤314は、トリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)であってもよい。一実施形態では、配合物300に応じて、PEO312の異なる変形が使用され得る。例えば、10重量パーセント(10重量%)の600,000モル体積のPEO、5重量%の4,000,000モル体積のPEO、又は12重量%の4,000,000モル体積が配合物300において使用され得る。
【0036】
一実施形態では、ホスフィンオキシド306は、典型的には酸素に対して感受性があり、それ自体で良好な表面硬化を呈さない長波長UV吸収光開始剤であってもよい。しかしながら、本開示の配合物300は、ホスフィンオキシド306を伴う追加の化合物を含み、それにより、配合物300は、表面阻害なしで、UV発光ダイオード(例えば、約395ナノメートル(nm)~405nmの波長)下で、速やかに(例えば、数秒以内に)硬化することができる。
【0037】
一実施形態では、ホスフィンオキシド306は、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)又はモノアシルホスフィンオキシド(MAPO)であってもよい。BAPO306の例は、その商標名Omnirad819又はIrgacure819によって識別される化合物であってもよい。MAPOは、Lucrin TPO(トリメチルベンゾイルホスフィンオキシドCAS番号75980-60-8)、Lucrin TPO-L(エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートCAS番号84434-11-7)などであってもよい。
【0038】
一実施形態では、配合物300は、水302、アクリル酸304、BAPO306、PEO312、NH4Cl塩308、KOH310、及び架橋剤314の量を変動させ得る。バッテリ100又は200の電解質層106として分配される配合物300は、約16グラム(g)~100gの重量で変動し得る。一実施形態では、水302は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の31重量%~37重量%を構成し得る。一実施形態では、アクリル酸304は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の約8重量%~11重量%を構成し得る。一実施形態では、BAPO306は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の7重量%~15重量%を構成し得る。一実施形態では、NH4Cl塩308は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の2重量%~20重量%を構成し得る。一実施形態では、KOH310は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の6重量%~9重量%を構成し得る。一実施形態では、PEO312は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の20重量%~25重量%を構成し得る。一実施形態では、架橋剤314は、UV硬化性混合物又は配合物300の総重量の2重量%~4重量%を構成し得る。
【0039】
配合物300の例示的な組成物を以下に提供する。例は、ガラスバイアル内の試薬を磁気攪拌しながら混合することによって調製した。PEO312は、添加前に水302に予め溶解させた。混合物を一晩撹拌し、使用前にN2ガスの流れで15分間脱気した。
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
図4は、本開示のバッテリ100を製造するための例示的なプロセスフロー400を示す。しかしながら、バッテリ200は、カソード層204及びアノード層208を電解質層206の上で平行に印刷することによって同様に製造され得ることに留意されたい。プロセスフロー400は、中央制御装置又はプロセッサの制御下で、製造環境において様々な機器によって実行され得る。例えば、プロセスフロー400は、プロセスフロー400の様々なブロックを実行するために、3Dプリンタ、UV LED硬化機器、及び他の装置を使用し得る。
【0048】
ブロック402において、カソード集電体102は、印刷され得る。カソード集電体102は、3Dプリンタを使用して、Agなどの導電性金属から印刷され得る。
【0049】
ブロック404において、一実施形態では、カソード層104は、カソード集電体102の上に印刷され得る。カソード集電体104は、3Dプリンタを使用して、MnO2から印刷され得る。
【0050】
ブロック406において、配合物300は、カソード層104の上に分配され得る。一実施形態では、配合物300は、カソード層104の所望の位置に3Dプリンタを介して分配され得る。一実施形態では、ウェル420が、カソード層104の所望の位置に配合物300を含有するように、カソード層104の上に配置(又は形成)され得る。ウェル420は、カソード層104の周囲に締結されたガラススペーサから構成され得る。次いで、ウェル420がセロテープで被覆され得る。
【0051】
一実施形態では、ウェル420は、ステンシルであり得るか、又は特定の形状で製造され得る。矩形のウェル420が
図4に示されているが、ウェル420は、バッテリの形状に応じて任意の所望の形状を有し得ることに留意されたい。
【0052】
一実施形態では、ウェル420の代わりに、スクリーン422が使用され得る。配合物300は、スクリーン422の上に注がれ、スクイージーによって平坦化され得る。スクリーン422は、配合物300をカソード層104の所望の位置に方向付けることができる。
【0053】
ブロック408において、電解質層106は、ウェル420又はスクリーン422を介して、ブロック406で堆積される配合物300を硬化させることによって形成され得る。配合物300は、UV LED450を使用して硬化され得る。一実施形態では、14ワット(W)395nmのLED光源を使用して、配合物300を硬化させ得る。配合物は、ウェル420を用いて例示的なUV LED光源を使用して30秒以内に、又はスクリーン422を使用して1秒以内に硬化することができる。一実施形態では、ブロック408は、複数回の通過のために繰り返して、配合物300を硬化させ得る。
【0054】
ブロック410において、アノード層108は、電解質層106の上に印刷され得る。アノード層108は、3Dプリンタを使用して、Znから印刷され得る。
【0055】
ブロック412において、アノード集電体110は、印刷され得る。アノード集電体110は、3Dプリンタを使用して、Agなどの導電性材料から印刷され得る。
【0056】
プロセスフロー400は、特定の順序を示しているが、プロセスフロー400は、異なる順序で実行され得ることに留意されたい。例えば、アノード集電体110を最初に印刷し、続いてアノード層108を印刷し、次いでブロック406及び408を実行し得る。次いで、カソード層104が印刷され、続いてカソード集電体102が印刷され得る。
【0057】
図5は、本開示の電解質を伴う薄膜バッテリを製造するための例示的な方法500のフローチャートを示す。一実施形態では、方法500の1つ以上のブロックは、中央制御装置又はプロセッサの制御下で様々なツール又は機器によって実行され得る。
【0058】
ブロック502において、方法500が始まる。ブロック504において、方法500は、電極層を印刷する。電極層は、カソード層又はアノード層であってもよい。一実施形態では、カソード層は、二酸化マンガン(MnO2)から印刷され得る。例えば、3Dプンタは、Agなどの導電性金属から印刷されるカソード集電体の上にカソード層を印刷し得る。任意のタイプの追加の印刷プロセス又は3Dプリンタが使用され得る。例えば、溶融堆積モデリング(fused deposition modeling、FDM)、選択的レーザ焼結(selective laser sintering、SLS)、選択的レーザ溶融(selective laser melting、SLM)、結合剤噴射などの任意のタイプの3D印刷プロセスを使用することができる。
【0059】
一実施形態では、アノード層は、亜鉛(Zn)で印刷され得る。例えば、3Dプリンタは、Agなどの導電性金属から印刷されたアノード集電体の上にアノード層を印刷し得る。
【0060】
ブロック506において、方法500は、電解質層前駆体組成物を基材の上に分配する。一実施形態では、電解質層前駆体組成物は、水、酸、ホスフィンオキシド、水混和性ポリマー、塩、中和剤、及び架橋剤を含み得る。一実施形態では、電解質前駆体組成物は、水、アクリル酸、ビスアシルホスフィンオキシド(BAPO)、ポリエチレンオキシド(PEO)、塩化アンモニウム(NH4Cl)塩、水酸化カリウム(KOH)、及びトリエチレングリコールジビニルエーテル(TEGDVE)の混合物を含み得る。一実施形態では、配合物300に応じて、PEOの異なる変形が使用され得る。例えば、10重量パーセント(10重量%)の600,000モル体積のPEO、5重量%の4,000,000モル体積のPEO、又は12重量%の4,000,000モル体積がUV硬化性混合物において使用され得る。
【0061】
一実施形態では、BAPOは、典型的には酸素に対して感受性であり、それ自体で良好な表面硬化を呈さない長波長UV吸収光開始剤であってもよい。しかしながら、本開示のUV硬化性混合物は、BAPOを伴う追加の化合物を含み、それにより、UV硬化性混合物は、表面阻害なしで、UV発光ダイオード(例えば、約395ナノメートル(nm)の波長)下で、速やかに(例えば、数秒以内に)硬化することができる。加えて、酸素阻害現象を克服するためのBAPOの十分な装填が存在し得る。BAPOの例は、その商標名Omnirad819又はIrgacure819によって識別される化合物であってもよい。
【0062】
一実施形態では、UV硬化性混合物は、水、アクリル酸、BAPO、PEO、NH4Cl塩、KOH、及び架橋剤の量を変動させ得る。UV硬化性混合物は、約16グラム(g)~100gの重量で変化し得る。一実施形態では、水は、UV硬化性混合物の総重量の31重量%~37重量%を構成し得る。一実施形態では、アクリル酸は、UV硬化性混合物の総重量の約8重量%~11重量%を構成し得る。一実施形態では、BAPOは、UV硬化性混合物の総重量の7重量%~15重量%を構成し得る。一実施形態では、NH4Cl塩は、UV硬化性混合物の総重量の2重量%~20重量%を構成し得る。一実施形態では、KOHは、UV硬化性混合物の総重量の6重量%~9重量%を構成し得る。一実施形態では、PEOは、UV硬化性混合物の総重量の20重量%~25重量%を構成し得る。一実施形態では、架橋剤は、UV硬化性混合物の総重量の2重量%~4重量%を構成し得る。異なる混合物の例は、上記の実施例1~7に提供される。
【0063】
ブロック508において、方法500は、空気の存在下で電解質層前駆体組成物を紫外線(UV)硬化する。例えば、14ワット(W)395nmのLED光源を使用して、電解質層を硬化させることができる。加えて、電解質層は、空気又は酸素の存在下で、周囲条件で硬化され得る。換言すれば、硬化は、酸素阻害又は不活性N2ガスの存在下での硬化を使用しない。結果として、硬化作業を簡易化され得る。
【0064】
加えて、電解質層を形成する混合物は、比較的迅速に(例えば、数秒以内、30秒以内、又は1分未満に)硬化し得る。その結果、製造速度も改善され得る。
【0065】
一実施形態では、UV光はまた、酸(例えば、アクリル酸)の重合に寄与し得る。酸(例えば、アクリル酸)のモノマーは、電解質層前駆体組成物中に存在し、次いで、重合されて、UV硬化中に酸ポリマー(例えば、ポリアクリル酸)を形成し得る。
【0066】
電解質層が形成された後、アノード層及びカソード層は、電解質層に結合され得る。例えば、電極層は、カソード層であってもよく、アノード層は、カソード層に結合されてもよく、又はその逆であってもよい。例えば、アノード層は、電解質層がアノード層とカソード層(例えば、バッテリ100)との間に位置するように、電解質層の上部に結合され得る。
【0067】
一実施形態では、アノード層は、カソード層が電解質層に結合されるのと同じ側で電解質層に結合され得る。換言すれば、アノード層は、カソード層(例えば、バッテリ200)と並列方式で電解質層に結合され得る。ブロック510において、方法500は、終了する。
【0068】
上記で開示されたものの変形、並びに他の特徴及び機能、又はこれらの代替物が、多くの他の異なるシステム又は用途に組み合わされ得ることは、理解されるであろう。様々な現在予期されていない、又は先行例のない代替物、修正、変形、又は改善が、その後に当業者によってなされ得、それらも以下の特許請求の範囲によって包含されることを意図している。