(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077526
(43)【公開日】2022-05-23
(54)【発明の名称】多層グラフェンの直接成長方法およびそれを用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20220516BHJP
B82Y 40/00 20110101ALI20220516BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20220516BHJP
【FI】
G03F1/62
B82Y40/00
C01B32/184
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021183857
(22)【出願日】2021-11-11
(31)【優先権主張番号】10-2020-0149813
(32)【優先日】2020-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】503257778
【氏名又は名称】コリア エレクトロニクス テクノロジ インスティチュート
【住所又は居所原語表記】25,Saenari-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13509 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン クン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソル ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ミ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヘ ヨン
【テーマコード(参考)】
2H195
4G146
【Fターム(参考)】
2H195BA10
2H195BC33
2H195BC34
4G146AA01
4G146AB07
4G146AD17
4G146AD28
4G146BA01
4G146BC02
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC33A
4G146BC34A
4G146BC37A
4G146BC42
4G146BC44
4G146BC48
4G146CA02
4G146CB19
4G146CB32
(57)【要約】
【課題】本発明は、極紫外線露光用ペリクルのコア層に使用される多層グラフェンの直接成長方法およびそれを用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法に関する。
【解決手段】本発明は、窒化シリコン基板上に少数層グラフェンを形成する段階と、少数層グラフェン上に金属触媒層を形成する段階と、金属触媒層上に非晶質炭素層を形成する段階と、熱処理を通じて金属触媒層と非晶質炭素層間の層間交換により少数層グラフェンから多層グラフェンを直接成長させる段階と、を含む極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化シリコン基板上に少数層グラフェンを形成する段階と、
前記少数層グラフェン上に金属触媒層を形成する段階と、
前記金属触媒層上に非晶質炭素層を形成する段階と、
前記少数層グラフェンをシード層として熱処理を用いた前記金属触媒層と前記非晶質炭素層間の層間交換により前記非晶質炭素層の炭素が前記金属触媒層を通過して前記少数層グラフェン上に移動して前記少数層グラフェンから多層グラフェンを直接成長させる段階と、を含む極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項2】
前記窒化シリコン基板は、極紫外線露光用ペリクルに使用され、シリコン基板と、前記シリコン基板上に形成された窒化シリコン素材の支持層と、を含み、
前記支持層上に前記少数層グラフェンが形成されることを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項3】
前記少数層グラフェンは、5層以下のグラフェンであることを特徴とする請求項2に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項4】
前記少数層グラフェンを形成する段階で、
前記少数層グラフェンを前記支持層上に転写して形成することを特徴とする請求項3に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項5】
前記金属触媒層の金属が前記シリコン基板に拡散するのを防止する拡散防止層であることを特徴とする請求項3に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項6】
前記金属触媒層の素材は、Ni、Co、RuまたはPtを含むことを特徴とする請求項3に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項7】
前記金属触媒層を形成する段階で、
前記金属触媒層をスパッタリングまたは電子ビーム蒸着法(e-beam evaporation method)で10nm~100nmの厚さで形成することを特徴とする請求項6に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項8】
前記非晶質炭素層を形成する段階で、
前記非晶質炭素層をスパッタリングで10nm~100nmの厚さで形成することを特徴とする請求項3に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項9】
前記多層グラフェンを直接成長させる段階で、
前記熱処理は、水素ガスおよび不活性ガスの雰囲気で500~1100℃で10分~10時間進行され、前記不活性ガスは、窒素、アルゴンおよびヘリウムのうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項10】
前記多層グラフェンを直接成長させる段階後に行われる、
前記多層グラフェン上の前記金属触媒層を除去する段階をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法。
【請求項11】
窒化シリコン基板上に多層グラフェンを直接成長させてコア層を形成する段階と、
前記コア層上にキャッピング層を形成する段階と、
前記コア層下の前記窒化シリコン基板の中心部分を除去して、前記コア層が露出する開放部を形成する段階と、を含み、
前記コア層を形成する段階は、
前記窒化シリコン基板上に少数層グラフェンを形成する段階と、
前記少数層グラフェン上に金属触媒層を形成する段階と、
前記金属触媒層上に非晶質炭素層を形成する段階と、
前記少数層グラフェンをシード層として熱処理を用いた前記金属触媒層と前記非晶質炭素層間の層間交換により前記非晶質炭素層の炭素が前記金属触媒層を通過して前記少数層グラフェン上に移動して前記少数層グラフェンから多層グラフェンを直接成長させる段階と、
前記多層グラフェン上の前記金属触媒層を除去する段階と、を含む多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法。
【請求項12】
前記窒化シリコン基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に形成された窒化シリコン素材の支持層と、を含み、
前記少数層グラフェンを形成する段階で、前記支持層上に前記少数層グラフェンが形成され、
前記開放部を形成する段階で、前記支持層下の前記シリコン基板の中心部分を除去して、前記開放部を形成することを特徴とする請求項11に記載の多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法。
【請求項13】
前記少数層グラフェンは、5層以下のグラフェンであり、前記金属触媒層の金属が前記シリコン基板に拡散するのを防止する拡散防止層であることを特徴とする請求項12に記載の多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法。
【請求項14】
前記キャッピング層の素材は、SiNx、BN、ZrBx(2≦x<16)、ZrBxSiy(x≧2、y≧2)、Si-BNまたはZrを含むことを特徴とする請求項11に記載の多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法。
【請求項15】
前記キャッピング層を形成する段階で、
前記キャッピング層をALD(atomic layer deposition)またはIBSD(ion beam sputtering deposition)工程で前記コア層上に1nm~5nmの厚さで形成することを特徴とする請求項14に記載の多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、より詳細には、極紫外線露光用ペリクルのコア層に使用される多層グラフェンの直接成長方法およびそれを用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業が発達し、半導体素子の集積度が向上するに伴い、電子機器が次第に小型化および軽量化している。半導体素子の集積度を向上させるために、露光技術の高度化が要求されている。
【0003】
現在、光源の波長を減少させて半導体の微細なパターンを具現する方向に技術が発展している。この中で、次世代技術である極紫外線(Extreme Ultraviolet,EUV)露光技術は、1回のレジスト工程で微細パターンを具現できる技術である。
【0004】
半導体工程に使用される極紫外線露光装置は、光源(light source power)、レジスト(resist)、ペリクル(pellicle)およびマスクを含む。ペリクルは、マスクに設置され、露光工程中に発生する異物がマスクに付着するのを防止し、露光装置によって選択的に使用されている。
【0005】
極紫外線露光工程では、クリーンシステムが構築されていて、ペリクルが不要であるという期待が初期に存在した。しかしながら、実際に露光装置の構築後に駆動過程で装置内部の駆動部で発生する異物および光源の発振過程で生成されたスズ粒子と極紫外線感光剤によるマスクの汚染が発生することを確認した。
【0006】
したがって、極紫外線露光工程では、マスクの汚染を防止するために、ペリクルが必須の素材と認識されている。ペリクルを使用する場合、サイズ10,000nm未満の欠陥を無視できる。
【0007】
このような極紫外線露光用ペリクルは、マスクをカバーするために、110mm~144mmのサイズが要求され、光源の損失による生産性の悪化を最小化するために、90%以上の極紫外線透過率が要求されている。極紫外線露光装置の内部における20Gに達する物理的動きにより破損されないレベルの機械的安定性と、5nmのノード(node)を基準として250W以上の熱的荷重に耐えることができる熱的安定性が要求されている。また、極紫外線環境で発生するスソラディカルに反応しない化学的耐久性も要求されている。
【0008】
現在、多数ペリクル開発会社は、多結晶シリコン(p-Si)基盤またはSiN基盤の透過素材を開発中にある。これらの素材は、極紫外線用ペリクルの最も重要な条件である90%以上の透過率を満足しない。これらの素材は、極紫外線露光環境における熱的安定性、機械的安定性、および化学的耐久性に弱点を持っているので、特性補完のための工程開発研究が進行されている。例えば、SiN基盤の素材の問題点を解決するための素材として、Mo、Ru、Zrなどの物質を選別して研究されているが、薄い厚さで製造して形態を維持することが難しいのが実情である。
【0009】
このような問題点を解消するために、グラフェンを基盤とする極紫外線用ペリクルも紹介されている。グラフェンは、極紫外線に対して90%以上の透過率を有する。グラフェンは、基底面が面積方向に同一に配列される場合、非常に高い引張強度を有する物質であるから、高い透過率、熱的安定性、機械的安定性などすべての特性指標を満足させることができる。
【0010】
しかしながら、グラフェンは、製造過程の複雑性と品質制御の困難性などによって、全体サイズ(full size)のメンブレンはまだ具現されていないのが現状である。
【0011】
従来のペリクル用グラフェンを製造する方法としては、ニッケルホイルまたはニッケル薄膜を気相蒸着装置に載置し、水素とメタンを含む雰囲気で熱処理してその表面にグラフェンを成長させ、塩化鉄水溶液などを用いてニッケルをエッチングして分離した薄膜のグラフェンを得る方法がある。
【0012】
このような方法は、グラフェンの成長後に転写過程で支持層としてのPMMAの塗布、金属触媒のエッチングなどの様々な段階を必要とし、PMMAを除去するためにアセトンに浸漬する過程と金属触媒エッチング過程中にフリースタンディンググラフェン薄膜がこわれたり、他の基板に転写することでしわが生じる問題が発生する可能性があるので、大面積および大量生産に限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第10-1878733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の目的は、極紫外線露光用ペリクルのコア層に使用される多層グラフェンの直接成長方法およびそれを用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、多層グラフェンの製造工程を簡素化できる多層グラフェンの直接成長方法およびそれを用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記目的を達成するために、本発明は、窒化シリコン基板上に少数層グラフェンを形成する段階と、前記少数層グラフェン上に金属触媒層を形成する段階と、前記金属触媒層上に非晶質炭素層を形成する段階と、熱処理を通じて前記金属触媒層と前記非晶質炭素層間の層間交換により前記少数層グラフェンから多層グラフェンを直接成長させる段階と、を含む極紫外線露光用ペリクルに使用される多層グラフェンの直接成長方法を提供する。
【0017】
前記窒化シリコン基板は、極紫外線露光用ペリクルに使用され、シリコン基板と、前記シリコン基板上に形成された窒化シリコン素材の支持層と、を含む。
【0018】
前記支持層上に前記少数層グラフェンが形成される。
【0019】
前記少数層グラフェンは、5層以下のグラフェンである。
【0020】
前記少数層グラフェンを形成する段階で、前記少数層グラフェンを前記支持層上に転写して形成してもよい。
【0021】
前記少数層グラフェンは、前記多層グラフェンのシード層であり、前記金属触媒層の金属が前記窒化シリコン基板に拡散するのを防止する拡散防止層である。
【0022】
前記金属触媒層の素材は、Ni、Co、RuまたはPtを含んでもよい。
【0023】
前記金属触媒層を形成する段階で、前記金属触媒層をスパッタリングまたは電子ビーム蒸着法(e-beam evaporation method)で10nm~100nmの厚さで形成してもよい。
【0024】
前記非晶質炭素層を形成する段階で、前記非晶質炭素層をスパッタリングで10nm~100nmの厚さで形成してもよい。
【0025】
前記多層グラフェンを直接成長させる段階で、前記熱処理は、水素ガスおよび不活性ガスの雰囲気で500~1100℃で10分~10時間進めることができる。前記不活性ガスは、窒素、アルゴンおよびヘリウムのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0026】
本発明による多層グラフェンの直接成長方法は、前記多層グラフェンを直接成長させる段階後に行われる、前記多層グラフェン上の前記金属触媒層を除去する段階をさらに含む。
【0027】
本発明は、また、窒化シリコン基板上に前記多層グラフェンを直接成長させてコア層を形成する段階と、前記コア層上にキャッピング層を形成する段階と、前記コア層下の前記窒化シリコン基板の中心部分を除去して、前記コア層が露出する開放部を形成する段階と、を含む多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法を提供する。
【0028】
前記窒化シリコン基板は、シリコン基板と、前記シリコン基板上に形成された窒化シリコン素材の支持層と、を含む。前記少数層グラフェンを形成する段階で、前記支持層上に前記少数層グラフェンが形成される。
【0029】
前記開放部を形成する段階で、前記支持層下の前記シリコン基板の中心部分を除去して、前記開放部を形成する。
【0030】
前記キャッピング層の素材は、SiNx、BN、ZrBx(2≦x<16)、ZrBxSiy(x≧2、y≧2)、Si-BNまたはZrを含んでもよい。
【0031】
また、前記キャッピング層を形成する段階で、前記キャッピング層をALD(atomic layer deposition)またはIBSD(ion beam sputtering deposition)工程で前記コア層上に1nm~5nmの厚さで形成してもよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、窒化シリコン基板の支持層上に形成された少数層グラフェンをシード層(seed layer)として熱処理を用いた層間交換原理を利用して多層グラフェンを支持層上に直接成長させることができる。すなわち、少数層グラフェン上に金属触媒層および非晶質炭素層を順次に形成した後に、熱処理を用いた金属触媒層と非晶質炭素層間の層間交換原理を利用して非晶質炭素層の炭素を少数層グラフェンに移動させて多層グラフェンを直接成長させることができる。
【0033】
熱力学的に層間交換の駆動力(driving force)は、非晶質炭素(amorphous carbon)から結晶質状態(crystalline state)になったとき、ギブズの自由エネルギーが低くなるためである。したがって、少数層グラフェンが金属触媒層の下にあると、少数層グラフェンがシード層として作用するので、従来の多層グラフェンを成長させるための熱処理温度より低い温度で熱処理をしても、全面的な層間交換を円滑に行うことができる。
【0034】
このように支持層上に多層グラフェンを直接成長させることができるので、多層グラフェンの製造工程を簡素化することができる。
【0035】
支持層上に直接成長した多層グラフェンを利用して極紫外線露光用ペリクルを製造することができる。
【0036】
本発明の製造方法で製造された極紫外線露光用ペリクルは、コア層に多層グラフェンを含むので、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、かつ、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供することができる。
【0037】
少数層グラフェンは、熱処理過程で金属触媒層の金属が支持層に拡散するのを防止する拡散防止層として機能するので、支持層上に直接成長する多層グラフェンの品質を高めることができる。
【0038】
本発明の製造方法で製造された多層グラフェンをコア層として、コア層に数ナノメートルの窒化シリコン層をキャッピング層として形成しても、90%以上の極紫外線透過率と、0.0005%の最大反射率を提供することができる。
【0039】
また、キャッピング層は、ALD(atomic layer deposition)またはIBSD(ion beam sputtering deposition)工程で形成することによって、厚さ、物性および化学組成の変更を自由に調節して、最上の透過率を有し、かつ、欠点を最小化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、本発明による直接成長した多層グラフェンを用いた極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明による多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2のコア層を形成する段階を示す詳細フローチャートである。
【
図10】
図10は、実施例によるペリクルの極紫外線透過率を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実施例によるペリクルの極紫外線反射率を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施例によるペリクルの極紫外線最大反射率を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施例による多層グラフェンの熱処理温度別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。
【
図14】
図14は、実施例による多層グラフェンの熱処理温度別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。
【
図15】
図15は、実施例による多層グラフェンを形成する非晶質炭素層の厚さ別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実施例による多層グラフェンを形成する非晶質炭素層の厚さ別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
下記の説明では、本発明の実施例を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で省略されてもよいことを留意しなければならない。
【0042】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用された用語や単語は、通常的であるか、辞書的的な意味に限定して解されるべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念として適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解すべきである。したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明の技術的思想を全部代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解しなければならない。
【0043】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施例をより詳細に説明する。
【0044】
[極紫外線露光用ペリクル]
図1は、本発明による直接成長した多層グラフェンを用いた極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。
【0045】
図1を参照すると、本発明による極紫外線露光用ペリクル100(以下「ペリクル」という)は、中心部分に開放部15が形成された窒化シリコン基板10と、開放部15を覆うように窒化シリコン基板10上に形成されるコア層20およびキャッピング層30を含む。
【0046】
ペリクル100は、半導体およびディスプレイ製造工程中に露光工程でマスクを異物から保護する消耗性素材である。すなわちペリクル100は、マスク上に被覆される薄い薄膜であり、カバーの役割をする。ウェハーに転写される光は、マスクで焦点を合わせて露光を進めるので、一定の距離に離れているペリクル100に異物が入ったも、焦点が合わなくて、ユーザが作製しようとするパターンのサイズに影響を及ぼさないようにして、不良パターンの形成を減らすことができる。
【0047】
これによって、ペリクル100は、露光工程中にマスクの異物から保護すると共に、不良パターンを最小化して、半導体およびディスプレイ製造工程の収率を非常に高めることができる。また、ペリクル100の使用によってマスクの寿命を延ばすことができる。
【0048】
以下、このような本発明によるペリクル100について具体的に説明する。
【0049】
窒化シリコン基板10は、コア層20およびキャッピング層30を支持し、ペリクル100を製造する過程および製造完了後にペリクル100のハンドリングおよび移送を容易にできるようにする。窒化シリコン基板10は、エッチング工程が可能な素材から形成されてもよい。
【0050】
このような窒化シリコン基板10は、シリコン基板11と、シリコン基板11の上部に形成された窒化シリコン素材の支持層13と、を含む。支持層13上にコア層20が形成される。支持層13の素材は、SiNxで表され得る。例えば、支持層13は、Si3N4で形成してもよい。
【0051】
窒化シリコン基板10の中心部分に形成された開放部15は、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)のような微細加工技術を用いて形成してもよい。すなわち支持層13下のシリコン基板10の中心部分を微細加工技術で除去して、開放部15を形成する。開放部15にコア層20下の支持層13が露出する。
【0052】
コア層20は、極紫外線の透過率を決定する層であり、多層グラフェンで形成する。コア層20は、極紫外線に対する90%以上の透過率を有し、熱を効果的に放出して過熱されるのを防止する。コア層20は、下記の支持層13とキャッピング層30の厚さの合計より厚い厚さを有してもよい。
コア層20を形成する多層グラフェンは、支持層13上に形成される少数層グラフェンを基盤として熱処理を用いた層間交換により直接成長させて形成する。本発明による多層グラフェンの直接成長方法については、ペリクル100の製造方法において説明することとする。
【0053】
また、キャッピング層30は、コア層20の極紫外線の透過率の低下を最小化すると共に、コア層20に熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供する。すなわち、キャッピング層30は、コア層20の保護層であり、コア層20から発生した熱を外部に効果的に放出して熱的安定性を提供する。キャッピング層30は、コア層20の機械的強度を補完して機械的安定性を提供する。また、キャッピング層30は、水素ラジカルと酸化からコア層20を保護して化学的耐久性を提供する。
【0054】
このようなキャッピング層30は、SiNx、BN、ZrBx(2≦x<16)、ZrBxSiy(x≧2、y≧2)、Si-BNまたはZrを含んでもよい。キャッピング層30は、CVD(chemical vapor deposition)工程で形成できるが、ALD(atomic layer deposition)またはIBSD(ion beam sputtering deposition)工程で形成して、厚さ、物性および化学組成の変更を自由に調節して、最上の透過率を有し、かつ、欠点を最小化できるように形成する。キャッピング層30は、コア層20上に1nm~5nmの厚さで形成してもよい。好ましくは、コア層20上に3nm~4nmの厚さでキャッピング層30を形成する。
【0055】
[多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法]
以下、このような本発明によるペリクル100の製造方法について
図2および
図3を参照して説明する。ここで、
図2は、本発明による多層グラフェンの直接成長方法を用いた極紫外線露光用ペリクルの製造方法を示すフローチャートである。また、
図3は、
図2のコア層を形成する段階を示す詳細フローチャートである。
【0056】
本発明によるペリクルの製造方法は、窒化シリコン基板上に多層グラフェンを直接成長させてコア層を形成する段階S10と、コア層上にキャッピング層を形成する段階S30と、コア層下の窒化シリコン基板の中心部分を除去して、コア層が露出する開放部を形成する段階S50と、を含む。
【0057】
ここで、段階S10によるコア層を形成する段階は、窒化シリコン基板の支持層上に少数層グラフェンを形成する段階S11と、少数層グラフェン上に金属触媒層を形成する段階S13と、金属触媒層上に非晶質炭素層を形成する段階S15と、熱処理を通じて金属触媒層と非晶質炭素層間の層間交換により少数層グラフェンから多層グラフェンを直接成長させる段階S17と、を含む。また、段階S17の多層グラフェンを直接成長させる段階後に行われる、多層グラフェン上の金属触媒層を除去する段階S19を進める。
【0058】
以下、このような本発明によるペリクルの製造方法による各段階について
図2~
図9を参照して説明する。ここで、
図4~
図9は、
図2の製造方法による各段階を示す図である。
図5~
図8は、
図4のA部分の拡大図である。
【0059】
図4~
図7に示されたように、段階S10で、窒化シリコン基板10上に多層グラフェン23を直接成長させてコア層20を形成する。
【0060】
まず、
図4に示されたように、窒化シリコン基板10を準備する。窒化シリコン基板10は、シリコン基板11と、シリコン基板11上に窒化シリコン素材の支持層13が形成された基板である。支持層13は、Si
3N
4で形成されてもよい。
【0061】
次に、
図5に示されたように、段階S11~S15で、窒化シリコン基板10の支持層13上に順次に積層されるように、少数層グラフェン21、金属触媒層25および非晶質炭素層27を形成する。
【0062】
すなわち、段階S11で、少数層グラフェン21は、支持層13上に形成される。少数層グラフェン21は、5層以下のグラフェンである。少数層グラフェン21は、多層グラフェンのシード層(seed layer)であり、金属触媒層25の金属が窒化シリコン基板10に拡散するのを防止する拡散防止層である。
【0063】
このような少数層グラフェン21は、支持層13上に転写して形成してもよい。すなわち、ニッケル薄膜または銅薄膜上にCVD方法で少数層グラフェン21を成長させた後、成長した少数層グラフェン21を支持層13上に転写して形成してもよい。
【0064】
次に、段階S13で、少数層グラフェン21上に金属触媒層25を形成する。金属触媒層25の素材は、Ni、Co、RuまたはPtを含んでもよい。
【0065】
このような金属触媒層25は、スパッタリングまたは電子ビーム蒸着法(e-beam evaporation method)で10nm~100nmの厚さで形成する。
【0066】
次に、段階S15で、金属触媒層25上に非晶質炭素層27を形成する。すなわち、非晶質炭素層27は、スパッタリングで10nm~100nmの厚さで形成する。
【0067】
次に、
図6に示されたように、段階S17で、熱処理を通じて金属触媒層25と非晶質炭素層27間の層間交換により少数層グラフェン(
図5の21)から多層グラフェン23を直接成長させる。
【0068】
このように窒化シリコン基板10の支持層13上に形成された少数層グラフェン21をシード層として熱処理を用いた層間交換原理を利用して多層グラフェン23を窒化シリコン基板10上に直接成長させることができる。すなわち、少数層グラフェン21上に金属触媒層25および非晶質炭素層27を順次に形成した後に、熱処理を用いた層間交換原理を利用して非晶質炭素層27の炭素が少数層グラフェン21に移動して多層グラフェン23を直接成長させることができる。
【0069】
熱力学的に層間交換の駆動力(driving force)は、非晶質炭素(amorphous carbon)から結晶質状態(crystalline state)がなったとき、ギブズの自由エネルギーが低くなるためである。したがって、少数層グラフェン21が金属触媒層25の下にあると、少数層グラフェン21がシード層として作用するので、従来の多層グラフェンを成長させるための熱処理温度より低い温度で熱処理をしても、全面的な層間交換を円滑に行うことができる。本発明による熱処理は、水素ガスおよび不活性ガスの雰囲気で500~1100℃で10分~10時間進めることができる。不活性ガスは、窒素、アルゴンおよびヘリウムのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0070】
このように窒化シリコン基板10の支持層13上に多層グラフェン23を直接成長させることができるので、ペリクルを製造するに際して、多層グラフェン23の製造工程を簡素化することができる。
【0071】
少数層グラフェン21は、熱処理過程で金属触媒層25の金属が窒化シリコン基板10に拡散するのを防止する拡散防止層として機能するので、窒化シリコン基板10上に直接成長させる多層グラフェン23の品質を高めることができる。
【0072】
次に、
図7に示されたように、段階S19で、多層グラフェン(
図6の23)上の金属触媒層(
図6の25)を除去して、多層グラフェンで形成されたコア層20を形成する。金属触媒層25に対する選択的なエッチングを通じて多層グラフェン23上の金属触媒層25を除去することができる。
【0073】
次に、
図8に示されたように、段階S30で、コア層20上にキャッピング層30を形成する。ここで、キャッピング層30は、ALDまたはIBSD工程でコア層20上に1nm~5nmの厚さで形成する。キャッピング層30は、SiN
x、BN、ZrB
x(2≦x<16)、ZrB
xSi
y(x≧2、y≧2)、Si-BNまたはZrを含んでもよい。
【0074】
また、
図9に示されたように、段階S50で、コア層20下の窒化シリコン基板10の中心部分を除去して、コア層20が露出する開放部15を形成することによって、本発明によるペリクル100を得ることができる。すなわち、支持層13下のシリコン基板11の中心部分を湿式エッチングを通じて除去して、開放部15を形成する。開放部15にコア層20下の支持層13が露出する。
【0075】
このように本発明の製造方法で製造されたペリクル100は、コア層20として多層グラフェン23を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供することができる。
【0076】
本発明の製造方法で製造された多層グラフェン23をコア層20として、コア層20の両面に数ナノメートルの支持層13とキャッピング層30を形成しても、90%以上の極紫外線透過率と、0.0005%の最大反射率を提供することができる。
【0077】
また、キャッピング層30は、ALDまたはIBSD工程で形成することによって、厚さ、物性および化学組成の変更を自由に調節して、最上の透過率を有し、かつ、欠点を最小化することができる。
【実施例0078】
このような本発明によるペリクルの350W以上の極紫外線出力環境における透過率と反射率を確認するために、本発明による製造方法で実施例によるペリクルを製造して、透過率と反射率を測定した。
【0079】
実施例によるペリクルは、シリコン基板上に、Si3N4の窒化シリコン層(支持層)、多層グラフェンのコア層およびSi3N4のキャッピング層が形成された構造を有する。実施例によるペリクルは、Si3N4_C_Si3N4で表示した。
【0080】
図10は、実施例によるペリクルの極紫外線透過率を示すグラフである。
図11は、実施例によるペリクルの極紫外線反射率を示すグラフである。また、
図12は、実施例によるペリクルの極紫外線最大反射率を示すグラフである。
【0081】
ここで、キャッピング層の厚さを0nm、1nm、3nm、5nmに調節しつつ、実施例によるペリクルに対して350Wの極紫外線出力環境における透過率と反射率をシミュレーションした。
【0082】
図10を参照すると、実施例によるペリクルは、キャッピング層の厚さが増加するほど透過率が低下することを確認できる。
【0083】
例えば、実施例によるペリクルが90%以上の極紫外線透過率を有するコア層の厚さは、下記のとおりである。
【0084】
まず、キャッピング層が0nmである場合、すなわち、キャッピング層がなく、コア層のみがある場合、コア層の厚さは16.4nm以下である。
【0085】
キャッピング層が1nmである場合、コア層の厚さは14nm以下である。
【0086】
キャッピング層が3nmである場合、コア層の厚さは8.6nm以下である。
【0087】
また、キャッピング層が5nmである場合、コア層の厚さは2.9nm以下である。
【0088】
したがって、実施例によるペリクルが90%以上の極紫外線透過率を有するように、キャッピング層は、3nm~4nmの厚さで形成する。
【0089】
実施例によるペリクルの反射率は、
図11に示されたように、キャッピング層を1~5nmの厚さで形成し、コア層を50nm以下の厚さで形成する場合、0.0015%以下である。
【0090】
実施例によるペリクルの最大反射率が0.0005%以下に調節するためのキャッピング層の厚さは、
図12に示されたように、2nm~5nmの間になる。この際、コア層の厚さは関係ない。
【0091】
したがって、実施例によるペリクルが90%以上の極紫外線透過率と、最大反射率が0.0005%以下に調節するためのキャッピング層は、3nm~4nmの厚さで形成する。
【0092】
本発明の製造方法で製造された実施例による多層グラフェンにおいて、金属触媒層下に多層グラフェンが形成されているか否かを確認するために、
図13~
図16に示されたように、ラマン分光装置で分析した。ここで、少数層グラフェンとして単一グラフェンを使用した。金属触媒層としてニッケルを使用した。
【0093】
図13および
図14は、実施例による多層グラフェンの熱処理温度別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。ここで、
図13は、金属触媒層から見た多層グラフェンの熱処理温度別ラマン分光装置の分析結果である。
図14は、窒化シリコン層から見た多層グラフェンの熱処理温度別ラマン分光装置の分析結果である。熱処理は700℃、800℃および900℃で行った。また、非晶質炭素層の厚さは30nmである。
【0094】
図13および
図14を参照すると、金属触媒層下に多層グラフェンが成長したことを確認できる。
【0095】
図15および
図16は、実施例による多層グラフェンを形成する非晶質炭素層の厚さ別ラマン分光装置の分析結果を示すグラフである。ここで、
図15は、金属触媒層から見た多層グラフェンの非晶質炭素層の厚さ別ラマン分光装置の分析結果である。
図16は、窒化シリコン層から見た多層グラフェンの非晶質炭素層の厚さ別ラマン分光装置の分析結果である。熱処理は、700℃で行った。また、非晶質炭素層の厚さは、10nm、20nm、30nmである。
【0096】
図15および
図16を参照すると、金属触媒層下に多層グラフェンが成長したことを確認できる。
【0097】
なお、本明細書と図面に開示された実施例は、理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施例以外にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。