(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077541
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】塗装装置及び塗装方法
(51)【国際特許分類】
B05C 13/00 20060101AFI20220517BHJP
B05C 1/02 20060101ALI20220517BHJP
B05D 1/26 20060101ALI20220517BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B05C13/00
B05C1/02 104
B05D1/26 Z
B05D7/14 P
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020187481
(22)【出願日】2020-11-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-16
(71)【出願人】
【識別番号】520242399
【氏名又は名称】九州電力送配電株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150914
【氏名又は名称】株式会社天禄商会
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】栗山 修三
(72)【発明者】
【氏名】古西 直之
(72)【発明者】
【氏名】南里 秀慈
【テーマコード(参考)】
4D075
4F040
4F042
【Fターム(参考)】
4D075AC01
4D075CA23
4D075CA24
4D075DA23
4D075DB02
4D075DC05
4D075EA14
4F040AA01
4F040AA12
4F040AB04
4F040AC02
4F040AC09
4F040BA04
4F040DA05
4F042AA01
4F042AA06
4F042AB00
4F042BA25
4F042DD02
4F042DD08
4F042DD19
4F042DD41
4F042DD45
4F042DF09
4F042DF15
4F042ED01
4F042FA23
(57)【要約】
【課題】同一の断面形状を有する長尺状の物体に対して、定められた形状の塗料の被膜をより容易に形成することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】同一の断面形状を有する長尺状の塗装対象物の塗装面に、対向配設される塗装手段と、塗装対象物に当接し、塗装手段と塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、塗装対象物の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の断面形状を有する長尺状の塗装対象物の塗装面に対向して配設され、前記塗装面に付着された塗料を均一化する塗装手段と、
前記塗装対象物に当接し、前記塗装手段と前記塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、前記塗装対象物の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段と、
を備え、
前記保持手段により前記塗装手段と前記塗装面との間に前記所定間隔が維持され、且つ、前記長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、前記塗装手段が前記塗装面を前記長手方向に塗装すること
を特徴とする塗装装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装装置において、
前記保持手段は、前記塗装面に当接する当接部と、前記塗装対象物における前記当接部が配設された位置と異なる位置に当接して前記塗装対象物のずれを防止する支持部と、を備える
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項3】
請求項1に記載の塗装装置において、
前記塗装対象物は、磁性体からなり、
前記保持手段は、前記塗装対象物の側面に当接し、磁石を有する当接部を備え、
前記磁石は、長尺状であって、前記長手方向に平行に配設される
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の塗装装置において、
前記塗装装置の操作に用いられる絶縁性の操作棒の接続手段を更に備える
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の塗装装置において、
前記保持手段により前記塗装手段と前記塗装面との間に前記所定間隔が維持され、且つ、前記長手方向への平行な摺動移動が支持された状態において、前記塗装手段の前記長手方向への移動に応じて、前記塗装面に付着された塗料を前記塗装装置の移動方向前方、且つ、前記塗装面の方向に送る送り部を更に備える
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の塗装装置において、
前記塗装装置を前記長手方向と垂直な方向から前記塗装対象物に接触させることで、前記保持手段が前記所定間隔を維持する状態に遷移可能である
ことを特徴とする塗装装置。
【請求項7】
前記1ないし6のいずれか1項に記載の塗装装置を用いた塗装方法であって、
同一の断面形状を有し、長尺状の塗装対象物の塗装面に塗料を付着する工程と、
前記塗装装置の保持手段を前記塗装対象物に当接することで、前記塗装装置の塗装手段と前記塗装面との間に所定間隔を設ける工程と、
前記塗装面に前記塗料が付着され、かつ、前記所定間隔が設けられた後で、前記塗装装置を前記塗装対象物の長手方向へ平行に摺動移動させることで、前記塗装面に前記塗料の被膜を形成する工程と、
を含む
ことを特徴とする塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断面が同一形状の長尺状の物体に対する塗装に用いられる塗装装置及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アングル材等の長手方向に沿って同一の断面形状を有する長尺状の物体に塗料の被膜を一定の膜厚で形成するために、人手による刷毛・ヘラ・ローラ等を用いた塗装が行われていた。
また、塗料の被膜を形成する公知の技術には、特許文献1がある。特許文献1には、塗膜の表面を整えると共に、施工面に凸部などが存在していても一定以上の膜厚で塗膜を形成できる塗工器具が開示されている。
【0003】
また、例えば、送電設備において、カラス等の鳥類が運んできた営巣材に含まれる金属(例えば、針金、金属製ハンガー等)により発生する地絡等の事故の防止が求められている。このような事故を防止するための技術には、従来、特許文献2~4があった。特許文献1には、配電線作業において腕金、碍子などの充電部の短絡、地絡を防止するために取り付ける腕金絶縁カバーが開示されている。また、特許文献2には、電柱上部に装着される柱上開閉器あるいは腕金上に鳥類が営巣して配電線事故を誘発することを防止する技術が開示されている。また、特許文献3には、高抵抗地絡事故が発生を防止することができ、電車線路設備や配電線路や地上設備などを高抵抗地絡事故から保護することが可能となる電気鉄道構造物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-118079号公報
【特許文献2】特開2017-200387号広報
【特許文献3】特開2010-88415号広報
【特許文献4】実用新案登録第3135432号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同一の断面形状を有する長尺状の物体に対して、所定の形状の塗料の被膜を形成することが要望される場合がある。例えば、特許文献2~4では送電設備における事故の防止効果が一時的であり、持続的な事故の持続的な防止のために、送電設備における腕金自体へ直接に絶縁性の塗料の被膜を所定の厚みで形成することが要望されていた。
【0006】
特許文献1は、路面等の二次元平面である施工面に塗膜を形成する技術であり、同一の断面形状を有する長尺状の立体形状の物体に対して適用できなかった。また、人手による刷毛・ヘラ・ローラ等を用いた塗装では、精度に限界がある上に、作業者の技能の熟練を要し、要望される膜厚の被膜を正確に形成することが困難であった。
本発明は、同一の断面形状を有する長尺状の物体に対して、所定の膜厚の塗料の被膜をより容易に、より精度よく形成することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の塗装装置は、同一の断面形状を有する長尺状の塗装対象物の塗装面に対向して配設され、前記塗装面に付着された塗料を均一化する塗装手段と、前記塗装対象物に当接し、前記塗装手段と前記塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、前記塗装対象物の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段と、を備え、前記保持手段により前記塗装手段と前記塗装面との間に前記所定間隔が維持され、且つ、前記長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、前記塗装手段が前記塗装面を前記長手方向に塗装するものである。
これにより、本発明の塗装装置は、前記保持手段により前記所定間隔が維持されたまま、前記塗装対象物上を、長手方向に平行移動することで、前記所定間隔を利用して、塗装面に付着された塗料を均し、塗装面に所定の形状の塗料の被膜を形成する。塗装装置を塗装対象物に配置させ、移動させるだけでよいため、刷毛・ヘラ・ローラ等を用いた塗装技能についての作業者の熟練を要することなく、より容易に、且つ、より精度よく塗装面に所定の形状の塗料の被膜を形成できる。
【0008】
また、本発明の塗装装置は、前記保持手段が、前記塗装面に当接する当接部と、前記塗装対象物における前記当接部が配設された位置と異なる位置に当接して前記塗装対象物のずれを防止する支持部と、を備えるものである。
これにより、本発明の塗装装置は、当接部が塗装面に直接当接することでより安定して塗装手段と塗装面との間で所定間隔を維持できる。また、支持部は、塗装面に当接する当接部と異なる位置に当接することで、塗装装置の塗装の邪魔をすることなく、より安定して塗装装置の前記塗装対象物の前記長手方向への平行移動を支持できる。
【0009】
また、本発明の塗装装置は、前記保持手段が、前記塗装対象物の側面に当接し、磁石を有する当接部を備え、前記磁石が、長尺状であって、前記長手方向に平行に配設されるものである。
これにより、本発明の塗装装置は、当接部が備える磁石を介して塗装対象物に吸着することで、より適切に塗装装置のずれを防止し、より適切に塗装対象物の長手方向への平行移動を支持できる。
また、塗装対象物に吸着した当接部の摺動による磁界の変化が最も小さくなるのは、塗装対象物の長手方向へ平行移動する場合となる。すなわち、当接部が塗装対象物の長手方向に平行に摺動するのにかかる力は、他の方向に摺動するのにかかる力よりも小さくなる。そのため、当接部は、他の方向よりも、塗装対象物の長手方向に対して平行に摺動しやすいこととなる。これにより、塗装装置は、当接部が他の方向よりも塗装対象物の長手方向に対して平行に摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置の摺動移動を支持できる。
【0010】
また、本発明の塗装装置は、前記塗装装置の操作に用いられる絶縁性の操作棒の接続手段を更に備えるものである。
これにより、本発明の塗装装置は、送電設備等の感電の可能性がある施設に配置された塗装対象物に対して、絶縁性の操作棒を介した操作により活線時の送電設備か離隔した状態で、より安全に塗装を行うことができる。
【0011】
また、本発明の塗装装置は、前記保持手段により前記塗装手段と前記塗装面との間に前記所定間隔が維持され、且つ、前記長手方向への平行な摺動移動が支持された状態において、前記塗装手段の前記長手方向への移動に応じて、前記塗装面に付着された塗料を前記塗装装置の移動方向前方、且つ、前記塗装面の方向に送る送り部を更に備えるものである。
これにより、本発明の塗装装置は、送り手段を介して、塗装面における付着された塗料が希薄な部分に対して、塗料を送ることで、その部分で塗装が失敗する事態を抑制できる。
【0012】
また、本発明の塗装装置は、前記塗装装置を前記長手方向と垂直な方向から前記塗装対象物に接触させることで、前記保持手段が前記所定間隔を維持する状態に遷移可能であるものである。
これにより、本発明の塗装装置は、塗装対象物の長手方向と垂直な方向から塗装対象物に配置でき、塗装対象物の長手方向の中間の位置からでも塗装を開始できる。
【0013】
また、本発明の塗装装置を用いた塗装方法は、同一の断面形状を有し、長尺状の塗装対象物の塗装面に塗料を付着する工程と、前記塗装装置の保持手段を前記塗装対象物に当接することで、前記塗装装置の塗装手段と前記塗装面との間に所定間隔を設ける工程と、前記塗装面に前記塗料が付着され、かつ、前記所定間隔が設けられた後で、前記塗装装置を前記塗装対象物の長手方向へ平行に摺動移動させることで、前記塗装面に前記塗料の被膜を形成する工程と、を含むものである。
これにより、本発明の塗装方法では、塗装対象物の塗装面に、より容易に、且つ、より精度よく塗料の被膜を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の塗装装置の一例の斜視図である。
【
図2】実施形態1の塗装装置の一例の正面図である。
【
図3】実施形態1の塗装装置の一例の側面図である。
【
図4】実施形態1の塗装対象のアングル材の一例の斜視図である。
【
図5】実施形態1の塗料が付着されたアングル材の一例の斜視図である。
【
図6】実施形態1の塗装装置の配置方法の一例の説明図である。
【
図7】実施形態1の配置状態における塗装装置とアングル材との一例の正面図である。
【
図8】実施形態1の塗装装置の一例の説明図である。
【
図9】実施形態2の塗装装置の一例の斜視図である。
【
図10】実施形態2の塗装装置の一例の正面図である。
【
図11】実施形態2の塗装装置の一例の側面図である。
【
図12】実施形態2の塗料が付着されたアングル材の一例の斜視図である。
【
図13】実施形態2の塗装装置の配置方法の一例の説明図である。
【
図14】実施形態2の配置状態における塗装装置とアングル材との一例の正面図である。
【
図15】実施形態3の塗装装置の一例の斜視図である。
【
図16】実施形態3の塗装装置の一例の正面図である。
【
図17】実施形態3の塗装装置の一例の側面図である。
【
図18】実施形態3のアングル材の一例の斜視図である。
【
図19】実施形態3の塗料が付着されたアングル材の一例の斜視図である。
【
図20】実施形態3の塗装装置の配置方法の一例の説明図である。
【
図21】実施形態3の配置状態における塗装装置とアングル材との一例の正面図である。
【
図22】その他の実施形態の塗装装置の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る塗装装置1を、断面がL字形状の長尺状であり磁性体の金属製のアングル材1000を塗装対象物として、
図1~7に基づいて説明する。
図1に塗装装置1の斜視図、
図2に塗装装置2の正面図、
図3に塗装装置2の側面図を示す。
【0016】
図1~3において本実施形態に係る塗装装置1は、アングル材1000の塗装面に対向して配設され、この塗装面に付着された塗料を均一化する塗装手段10と、アングル材1000に当接し、塗装手段10と塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、アングル材1000の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段20と、操作棒300を操作して塗装装置1をアングル材1000の長手方向に移動させるに際して、塗装装置1の操作に用いられる操作棒300を固定して接続する接続手段30と、を備え、保持手段20により塗装手段10と塗装面との間に所定間隔が維持され、且つ、塗装装置1のアングル材1000における長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、塗装手段10が塗装面を塗装するものである。
【0017】
塗装手段10は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる上方塗装部11と、上方塗装部11と鉤状に組み合わされ、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる側方塗装部12と、側方塗装部12の内側面の下端縁に固着され、塗料のはみ出しを防止する長方形平板状の防止部13と、上方塗装部11の内面に固着され、塗料の押し出しに用いられる長方形平板状の送り部14と、を備えるように構成される。
【0018】
上方塗装部11は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる長方形平板状の上方均平用板部111と、上方均平用板部111と垂直に鉤状に形成される上方板部112と、を備える。
側方塗装部12は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる長方形平板状の側方均平用板部121と、側方均平用板部121と垂直に鉤状に形成される側方板部122と、を備える。
【0019】
上方均平用板部111と側方均平用板部121とは、各端部が直角に当接し固着され、L字形状の平板状部分を形成する。このL字形状の平板状部分は、一側内面をエッジ面10aとして、他側内面をエッジ面10bとしている。また、上方板部112と側方板部122とは、垂直に鉤状に組み合わされている。
【0020】
防止部13は、側方塗装部12の内側面の下端で、この内側面に垂直に且つ移動方向D(
図3参照)に平行に固着されている。移動方向Dは、アングル材1000上で塗装装置1がアングル材1000の長手方向に平行に摺動移動する方向である。
送り部14は、側面視(
図3参照)において移動方向Dに対して前傾となるように、上方塗装部11の内面に固着されており、移動方向D前方、且つ、塗装面の方向に塗料を押し出して送る。
【0021】
保持手段20は、塗装面に当接して上方塗装部11及び側方塗装部12と塗装面との間に所定の間隔を維持し、塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動を支持する長方形平板状の内方当接部21及び外方当接部23と、エッジ面1005に当接し、塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動を支持する長方形平板状の支持部22と、を備える。
【0022】
内方当接部21は、側方板部122の内面に対して垂直に起立し、且つ、移動方向Dに平行に、側方板部122の内面に固着されている。内方当接部21は、正面視(
図2参照)において、エッジ面10bよりも右方向に、塗装面に形成される塗料の被膜の厚さだけ突出している。
内方当接部21は、端縁部を介してアングル材1000の塗装面に当接するため、塗装装置1の移動に応じて、塗装面に当接している端縁部を介して塗装面に付着された塗料を押し退けてしまう。そのため、内方当接部21は、塗装面における内方当接部21が通り過ぎた部分に対して、速やかにその部分の周囲から塗料が補充されるように形成されることが望ましい。そこで、内方当接部21の厚さ(塗装面に当接した状態での、内方当接部21の塗装面における短手方向の幅)は、塗装面に塗装される塗料の粘性、特に固化前のダレによる広がりの度合いに基づき決定された値になるように形成されている。本実施形態では、内方当接部21の厚さは、3mmである。ただし、他の例として、内方当接部21は、内方当接部21の厚さが5mm、4mm等の3mmよりも長い長さ、2mm、1mm等の3mmよりも短い長さ等になるように形成されてもよい。
【0023】
支持部22は、上方均平用板部111と上方板部112とに垂直に、正面視における上方塗装部11の右端部に固着されている。
外方当接部23は、支持部22の内面に平行に、且つ、移動方向Dに平行に、支持部22の内面に固着されている。外方当接部23は、正面視において、エッジ面10aよりも下方向に、塗装面に形成される塗料の被膜の厚さだけ突出している。
【0024】
外方当接部23の厚さ(塗装面に当接した状態での外方当接部23の塗装面における短手方向の幅)は、塗装される塗料の粘性、特に固化前のダレによる広がりの度合いに基づいて決定された値に形成されており、本実施形態では3mmである。ただし、他の例として、外方当接部23は、例えば、5mm、4mm等の3mmよりも大きい厚さ、2mm、1mm等の3mmよりも小さい厚さになるように形成されてもよい。
【0025】
また、外方当接部23は、側面視において、支持部22よりも移動方向D前方に突出している。外方当接部23は、移動方向Dに長いほど塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動をより安定して支持できるため移動方向Dに長い方が望ましい。また、塗装装置1は、操作を容易にするため、コンパクトにすることが望ましい。塗装装置1は、外方当接部23を移動方向Dに支持部22よりも突出するように形成されることで、支持部22のサイズを増大させずに塗装装置1のサイズの増大を防ぎつつ、塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動をより安定して支持できる。
【0026】
接続手段30は、上方板部112への固着に用いられる固着部31と、操作棒300の接続に用いられる接続部32と、固着部31と接続部32とを連結するL字形状のレール状の部材で形成される連結部33と、を備える。
固着部31は、上方から上方板部112を垂直に貫通するボルトと、このボルトを上方板部112の下から締めるナットと、を備え連結部33の端部に固着されている。接続手段30は、固着部31のボルトの中心軸を中心に回動可能である。接続部32は、連結部33の固着部31が固着されている端部と反対の端部に固着されている。
なお、
図2、
図3の例では、接続手段30は、正面視において右向きとなるように姿勢が調整されている。ただし、接続手段30は、
図2、
図3に示す姿勢に限定されず、固着部31の回動により様々な姿勢(例えば、側面視において移動方向D前方向きとなる姿勢等)に調整される。
【0027】
操作棒300は、間接的な塗装装置1の操作に用いられる絶縁性の操作棒であり、接続部32への接続に用いられる接続部310を備える。接続部310は、接続部32との接続に用いられたボルトの中心軸を中心に回動可能である。
塗装装置1は、内方当接部21及び外方当接部23をアングル材1000に接触させた状態で、アングル材1000上を移動する。そのため、接続部32に接続される操作棒300は、内方当接部21、外方当接部23をアングル材1000に押し付けるように、塗装装置1に力を加えることが要望される。そこで、固着部31は、塗装装置1における内方当接部21、又は、外方当接部23の近傍の位置に固着されている。
【0028】
塗装装置1が塗装対象とするアングル材1000について説明する。
図4にアングル材1000の斜視図を示す。
アングル材1000は、L字形状の外側面である表面1001、1002と、L字形状の内側面である表面1003、1004と、L字形状の2つの端縁部であるエッジ面1005、1006と、を備える。塗装装置1の塗装対象の塗装面は、表面1001、1002である。アングル材1000としては、例えば、厚さ4mm×外寸辺50mm、厚さ4mm×外寸辺45mm、厚さ4mm×外寸辺60mm、厚さ5mm×外寸辺60mm、厚さ6mm×外寸辺65mm、厚さ6mm×外寸辺70mm、厚さ6mm×外寸辺75mm、厚さ6mm×外寸辺80mm、厚さ6mm×外寸辺90mm、厚さ7mm×外寸辺90mm、厚さ7mm×外寸辺100mm、厚さ10mm×外寸辺100mm等の寸法の等辺アングル材が適用できる。
【0029】
続いて、塗装装置1を用いて表面1001、1002へ塗料の塗装を行う方法について説明する。ここでは、アングル材1000が送電設備(例えば、鉄塔等)に腕金として設置されている場合を例に説明する。
まず、作業者は、絶縁性の操作棒300の先端に接続されたヘラを用いて表面1001、1002に対して予め定められた塗料1100を付着させる。本実施形態では、塗装対象の塗料1100は、物体に付着された場合に、こぼれずに付着されたままの状態を維持する程度の粘性を有する絶縁性の塗料である。
図5に表面1001、1002に塗料1100が付着されたアングル材1000を示す。
ただし、塗料1100を表面1001、1002に付着させる方法は、ヘラを用いた方法に限定されず、人手で付着させる方法、操作棒300の先端に接続された他の用具を用いて付着させる方法等の他の方法であってもよい。
【0030】
そして、作業者は、塗装装置1が接続された操作棒300を介し、操作棒300と塗装装置1との接続状態を固着部31、接続部32によりA方向、B方向へ回動調節して、塗装装置1をアングル材1000に配置させる。
図6を用いて、塗装装置1をアングル材1000に配置させる方法を説明する。作業者は、アングル材1000の側面側(長手方向に垂直な方向)から、塗装装置1をアングル材1000に接近させ、
図6に示すように、支持部22の内面とエッジ面1005とを平行に当接させる。そして、作業者は、
図6の矢印が示すC方向に塗装装置1を回転させ、内方当接部21と外方当接部23とを表面1002、1001にそれぞれ当接させることで、塗装装置1をアングル材1000に配置させる。
ただし、他の例として、作業者は、この方法以外の方法で、塗装装置1をアングル材1000に配置してもよい。例えば、アングル材1000の長手方向端部が他の部材に接続されていない場合、作業者は、アングル材1000の長手方向の端部から、塗装装置1内の隙間にアングル材1000を通すようにして、塗装装置1をアングル材1000に配置してもよい。
【0031】
図7に、アングル材1000に配置された塗装装置1の状態を示す。
図7の状態において、エッジ面10a、10bと表面1001、1002との間に所定の形状の間隔L1が設けられる。間隔L1は、所定の厚さのL字形の間隔である。本実施形態では、塗装装置1は、形成される塗料の被膜の表面での感電の可能性を定められた水準以下にするように、アングル材1000にかかる電圧と塗料1100の絶縁性能とに基づいて決定された厚さの間隔を間隔L1として設ける。本実施形態では、塗装装置1は、厚さ2.5mmのL字形の間隔を間隔L1として設ける。ただし、塗装装置1は、他の例として、他の厚さ(例えば、1.5mm等の2.5mm未満の厚さ、3mm等の2.5mmよりも大きい厚さ等)の間隔を間隔L1として設けるように形成されてもよい。また、塗料1100の被膜の厚みは、塗料1100の絶縁性能の他に、耐腐食性、耐候性等の条件から決定されてもよい。
【0032】
なお、エッジ面10aの幅は、表面1001の短手方向の幅と表面1002に形成される塗料の被膜の厚さとの合計値以上となるように形成されている。また、エッジ面10bの幅は、表面1002の短手方向の幅と表面1001に形成される塗料の被膜の厚さとの合計値以上となるように形成されている。
【0033】
塗装装置1は、間隔L1が設けられた状態を維持したまま、アングル材1000上を移動方向Dに平行に摺動移動して、この間隔L1を介して表面1001、1002に付着された塗料を均一化することで所定の膜厚の塗料の被膜を塗装面上に形成する。エッジ面10a、10bは、それぞれ表面1001、1002と平行に対向するため、表面1001、1002に形成される被膜は、均一な平面状の表面となる。
【0034】
本実施形態では、塗装装置1の正面図(移動方向Dから塗装装置1を見た図形、
図2参照)は、以下のような特性を有する。
塗装装置1の正面図とアングル材1000の断面形状図形とが同一平面におかれたとする。塗装装置1の正面図は、アングル材1000の断面形状の図形と衝突することなく、その平面内を移動することで配置状態における塗装装置1、及び、アングル材1000の正面図の状態(本実施形態では、
図7の状態)に遷移可能であるという特性を有する。
【0035】
本実施形態では、塗装装置1は、正面図がこのような特性を有するように形成されている。そのため、塗装装置1は、アングル材1000に対して側面側(長手方向に垂直な方向)から配置することができる。このため、塗装装置1は、アングル材1000の長手方向における中間の位置においても、アングル材1000の側面側からアングル材1000に配置できる。これにより、塗装装置1は、アングル材1000の長手方向における中間の位置から塗料の塗装を開始できる。
【0036】
アングル材1000は、長手方向に沿って一定の断面形状を有する。また、表面1001、1002は、それぞれアングル材1000の長手方向に平行な表面である。そのため、塗装装置1は、内方当接部21、外方当接部23をアングル材1000に接触させた状態(間隔L1が生じている状態)を維持したまま移動方向Dに平行に摺動移動できる。
そこで、作業者は、操作棒300を介して、アングル材1000に配置された塗装装置1をアングル材1000上で移動方向Dに平行に摺動移動させる。移動に合わせて、上方塗装部11、側方塗装部12は、間隔L1を介して表面1001、1002に付着された塗料を均一化することで表面1001、1002に所定の膜厚の被膜を形成する。
【0037】
塗装装置1がアングル材1000に配置された状態において、内方当接部21は、表面1002と当接することで、表面1002に垂直な方向における塗装装置1の位置を一定の位置に維持する。また、外方当接部23は、表面1001と当接することで表面1001に垂直な方向における塗装装置1の位置を一定の位置に維持する。すなわち、内方当接部21が表面1002に当接し、且つ、外方当接部23が表面1001に当接している状態は、表面1002に垂直な方向、及び、表面1001に垂直な方向における塗装装置1の位置が固定されている状態となる。
【0038】
そのため、塗装装置1は、この状態において正面視におけるアングル材1000との位置関係が固定され、エッジ面10a、10bと表面1001、1002との間に間隔L1を維持する。また、内方当接部21と外方当接部23とをそれぞれ表面1002、1001に当接させた状態が維持されている場合、塗装装置1は、アングル材1000上においてアングル材1000の長手方向に平行な方向にしか摺動移動できない。すなわち、内方当接部21と外方当接部23とは、それぞれ表面1002、1001に当接することで、塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動を支持できる。
【0039】
また、塗装装置1において、内方当接部21及び外方当接部23が、エッジ面10a、10bよりも移動方向D前方に位置するよう形成されている。これにより、塗装装置1は、内方当接部21及び外方当接部23が表面1001、1002に形成された塗料の被膜を破壊することを防止できる。
【0040】
また、上方板部112は、表面1001上の空間を表面1001と垂直な方向から覆う。これにより、上方板部112は、塗装装置1がアングル材1000上を移動方向Dに移動する際に表面1001と垂直な方向への塗料のはみ出しを防止できる。また、側方板部122は、表面1002上の空間を表面1002と垂直な方向から覆うことで、塗装装置1がアングル材1000上を移動方向Dに移動する際に、表面1002と垂直な方向への塗料のはみ出しを防止できる。
【0041】
また、防止部13は、表面1002上の空間を表面1002の短手方向端部側から覆うことで、塗装装置1がアングル材1000上を移動する際に表面1002の短手方向端部側への塗料のはみ出しを防止できる。これにより、防止部13は、表面1002に形成される被膜が、表面1002の短手方向端部の外側にはみ出すように形成されることを防止できる。
【0042】
また、送り部14は、塗装装置1のアングル材1000上での移動方向Dへの移動の際に、表面1001に付着され、被膜に用いられていない余剰の塗料(正面視における間隔L1の外部に位置する塗料1100)を移動方向D前方、かつ、表面1001の方向へ押し出して送る。例えば、表面1001における塗装装置1よりも移動方向D前方の位置に、付着された塗料が希薄な部分が生じる場合がある。このような場合、塗装装置1は、この塗料が希薄な部分で被膜の形成に失敗する可能性がある。送り部14は、そのような塗料が希薄な部分に対して塗料を送ることで、その部分に塗料を補充して、被膜の形成が失敗する事態を抑制できる。
【0043】
また、支持部22は、エッジ面1005に当接することで、表面1001の短手方向(エッジ面1005の方向)への塗装装置1のずれを防止する。このように、支持部22は、塗装装置1のずれを防止することで、塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動を支持できる。
また、支持部22は、表面1001上の空間を表面1001の短手方向端部側から覆い、塗装装置1がアングル材1000上を移動する際に表面1001の短手方向端部側への塗料のはみ出しを防止できる。これにより、支持部22は、表面1001に形成される被膜が表面1001の短手方向端部の外側にはみ出すように形成されることを防止できる。
【0044】
本実施形態では、作業者は、操作棒300を介して、塗装装置1を移動させるとしたが、他の例として、操作棒300を介さずに手動で直接、塗装装置1を移動させてもよい。
以上が、塗装装置1を用いた表面1001、1002への塗料の塗装方法の一例の詳細である。
【0045】
以上、本実施形態に係る塗装装置1は、塗装手段10と、アングル材1000に当接することで、間隔L1を維持し、且つ、塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動を支持する保持手段20と、を備えることとした。塗装装置1は、間隔L1を維持しつつアングル材1000上を長手方向に平行に摺動移動し、表面1001、1002に付着された塗料1100を均一化することで表面1001、1002に所定の膜厚の塗料の被膜を形成する。
【0046】
作業者は、表面1001、1002に所定の膜厚の塗料の被膜を形成するために、塗装装置1をアングル材1000に配置させ、移動させるだけでよい。すなわち、塗装装置1は、刷毛・ヘラ・ローラ等に関する作業者の技能の熟練を要することなく、より容易に、且つ、より精度よく表面1001、1002に所定の膜厚の塗料の被膜を形成できる。
【0047】
また、塗装装置1は、内方当接部21、外方当接部23、及び、支持部22を介してアングル材1000に当接して、間隔L1の維持と塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動の支持とを実現する。これにより、塗装装置1は、塗装装置の姿勢維持や移動のための設備(姿勢固定用の治具、移動用のレール等)をアングル材1000の外部に設けることなく、所定の膜厚の塗料の被膜を表面1001、1002に形成できる。
【0048】
また、内方当接部21と外方当接部23とが塗装面である表面1002、1001にそれぞれ直接当接することで、塗装装置1は、より安定して間隔L1を維持できる。また、支持部22は、塗装面と異なるエッジ面1005に当接して塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動を支持することで、塗装装置1の塗装面に対する塗装を邪魔することなく塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動をより安定して支持できる。
【0049】
また、作業者は、本実施形態で説明した塗装方法で、送電設備における腕金であるアングル材1000の表面1001、1002に、より容易に、且つ、より精度よく絶縁性の塗料1100の被膜を形成できる。
アングル材1000に絶縁性の塗料の被膜を形成することで、形成した被膜が維持されている限り持続的に、鳥類が運ぶ営巣材に含まれる金属等を原因とした地絡等の事故を防止できる。また、塗装装置1は、絶縁性の操作棒300を介した操作に応じて、送電設備が活線状態の場合であっても、アングル材1000に塗料の被膜を形成できる。
【0050】
本実施形態では、塗装装置1は、
図1~3に示す構成であるとした。ただし、他の例として、塗装装置1は、他の構成であってもよく、例えば、以下に示すような構成であってもよい。
【0051】
本実施形態では、エッジ面10a、10bは、それぞれ、表面1001、1002に平行に対向する表面であるとした。ただし、エッジ面10a、10bのうちの少なくとも1つが、表面1001、又は、表面1002に平行に対向しないような他の形状(例えば、波型形状、アーチ形状等)となるように形成されてもよい。これにより、塗装装置1は、表面が平面状と異なる形状の表面を有する塗料の被膜を形成できる。
例えば、
図8に示すように、上方塗装部11、側方塗装部12は、エッジ面10a、10bが波型形状となるように形成されていてもよい。この場合、塗装装置1は、表面1001、1002に、短手方向に波型模様を有する塗料の被膜を形成できる。
【0052】
また、本実施形態では、内方当接部21は、長方形平板状に形成されているとした。内方当接部21は、更に、塗装装置1に固着される長尺状の面と塗装面に当接する長尺状の面とを2つの磁極とする磁石製として形成されていることとしてもよい。これにより、塗装装置1は、内方当接部21が塗装面に対して吸着することで、間隔L1をより安定して維持できる。
【0053】
また、内方当接部21は、長尺状の端縁部(長尺状の磁極)を介して塗装面に対向し、且つ、移動方向Dに平行に塗装面に吸着したまま、塗装面上を摺動する。ここで、内方当接部21を塗装面上で一定の距離だけいずれかの方向に摺動することを考える。この場合、内方当接部21の摺動による磁界の変化が最も小さくなるのは、移動方向D(内方当接部21の端縁部の長手方向)への平行移動となる。すなわち、内方当接部21が移動方向Dに平行に摺動するのにかかる力は、内方当接部21が他の方向に摺動するのにかかる力よりも小さくなる。そのため、内方当接部21は、他の方向よりも移動方向Dに対して摺動しやすいこととなる。これにより、塗装装置1は、内方当接部21が他の方向よりも移動方向Dに対して摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置1の移動方向Dへの平行な摺動移動を支持できる。
また、内方当接部21は、内方当接部21の移動方向Dの両端の面を2つの磁極とする磁石製として形成されていることとしてもよい。
【0054】
また、外方当接部23についても、同様に、磁石製であることとしてもよい。この場合、塗装装置1は、外方当接部23が塗装面に対して吸着することで、間隔L1をより安定して維持できる。また、塗装装置1は、外方当接部23が他の方向よりも移動方向Dに対して摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置1の移動方向Dへの摺動移動を支持できる。
【0055】
また、本実施形態では、内方当接部21、外方当接部23は、それぞれ長方形平板状であり、端縁部を介して塗装面に当接するとした。ただし、内方当接部21、外方当接部23のうちの少なくとも1つは、正面視において、塗装面に当接する端縁部に対して先細りとなるような形状に形成されてもよい。これにより、塗装装置1は、内方当接部21、外方当接部23のうちの少なくとも1つが塗装面から押し退ける塗料の量を低減できる。
【0056】
また、本実施形態では、外方当接部23は、塗装装置1の他の部分よりも移動方向D前方に突出して形成されていることとした。ただし、外方当接部23は、塗装装置1の他の部分よりも移動方向D前方に突出しないように形成されてもよい。また、内方当接部21についても、外方当接部23と同様に、塗装装置1の他の部分よりも移動方向D前方に突出して形成されてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、上方塗装部11は、上方板部112を介して、表面1001上の空間を覆うように形成されていることとした。ただし、上方塗装部11は、表面1001上の空間を覆わないように形成されていることとしてもよい。例えば、上方塗装部11は、上方板部112の代わりに、接続手段30等の他の要素との連結に用いられるレール状の部材を備えるように形成されてもよい。また、側方塗装部12についても同様に、表面1002上の空間を覆わないように形成されてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、塗装装置1は、送り部14を備えることとしたが、送り部14を備えないこととしてもよい。
また、塗装装置1が送り部14を備えない代わりに、上方均平用板部111が、側面視において移動方向Dに対して前傾となるように形成されることとしてもよい。これにより、上方均平用板部111が、送り部14と同様の役割を果たし、余剰の塗料を移動方向D前方、表面1001の方向へ押し出して送ることで、表面1001に付着された塗料が希薄な部分があった場合でも塗料の被膜の形成が失敗する事態を抑制できる。
【0059】
また、本実施形態では、塗装装置1は、表面1001に対して塗料を送る送り部14を備えることとした。ただし、塗装装置1は、表面1002に対して、余剰の塗料を送る送り部を備えることとしてもよい。例えば、塗装装置1は、側方均平用板部121の内面と側方板部122の内面とに固着される板状の部材を、この送り部として備えることとしてもよい。また、塗装装置1がこのような送り部を備える代わりに、側方均平用板部121が、平面視において移動方向Dに前傾となるように形成されてもよい。
また、本実施形態では、塗装装置1は、塗料のはみ出し防止の役割を担う防止部13を備えることとしたが備えないこととしてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、支持部22は、表面1001上の空間を覆うように形成されることとした。ただし、支持部22は、表面1001上の空間を覆わないように形成されてもよい。例えば、支持部22は、アングル材1000の表面1001上の空間を覆わずに、エッジ面1005と当接し、外方当接部23と上方塗装部11とを連結するレール上の部材として形成されてもよい。また、支持部22は、エッジ面1005と当接しないように形成されてもよい。
【0061】
また、本実施形態では、内方当接部21及び外方当接部23は、2つの表面1001、1002に当接して、塗装装置1の姿勢を保持することとした。ただし、内方当接部21及び外方当接部23は、アングル材1000の側面(長手方向に平行な表面)のうち、互いに平行でない2つの側面であるならば、表面1001、1002と異なる表面に接触するように形成されてもよい。例えば、内方当接部21及び外方当接部23は、表面1003、1004に接触して、塗装装置1の姿勢を保持するよう形成されてもよい。
【0062】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る塗装装置2を、断面L字状のアングル材1000を塗装対象物として、
図9~14に基づいて説明する。
図9に塗装装置2の斜視図、
図10に塗装装置2の正面図、
図11に塗装装置2の底面図を示す。この塗装装置2は、第1の実施形態に係る塗装装置1がアングル材1000の表面側(表面1001、1002)を塗装対象とするのに対して、アングル材1000の裏面側(表面1003、1004)を塗装対象とするものである。
【0063】
図9~11において本実施形態に係る塗装装置2は、アングル材1000の塗装面に対向して配設され、この塗装面に付着された塗料を均一化する塗装手段40と、アングル材1000に当接し、塗装手段40と塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、アングル材1000の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段50と、操作棒300を操作して塗装装置2をアングル材1000の長手方向に移動させるに際して、塗装装置2の操作に用いられる操作棒300を固定して接続する接続手段30と、を備え、保持手段50により塗装手段40と塗装面との間に所定間隔が維持され、且つ、塗装装置2のアングル材1000における長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、塗装手段40が塗装面を塗装するものである。
【0064】
塗装手段40は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる下方塗装部41と、下方塗装部41と鉤状に組み合わされ、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる上方塗装部42と、下方塗装部41の内面に固着され、塗料の押し出しに用いられる長方形平板状の送り部43と、を備えるように構成される。
【0065】
下方塗装部41は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる長方形平板状の下方均平用板部411と、下方均平用板部411と垂直に鉤状に形成される下方板部412と、を備える。
上方塗装部42は、塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる長方形平板状の上方均平用板部421と、上方均平用板部421と垂直に鉤状に形成される上方板部422と、を備える。
【0066】
下方均平用板部411と上方均平用板部421とは、各端部が直角に当接し固着され、L字形状の平板状部分を形成する。このL字形状の平板状部分は、正面視における左端の一側外面をエッジ面40aとして、他側外面をエッジ面40bとしている。また、下方板部412と上方板部422とは、垂直に鉤状に組み合わされている。
送り部43は、底面視(
図11参照)において移動方向E(
図11参照)に対して前傾となるように固着されており、移動方向E前方、且つ、塗装面の方向に塗料を押し出して送る。移動方向Eは、アングル材1000上で塗装装置2がアングル材1000の長手方向に平行に摺動移動する方向である。
【0067】
保持手段50は、塗装面に当接して下方塗装部41及び上方塗装部42と塗装面との間に所定の間隔を維持し、塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動を支持する長方形平板状の上方当接部52及び下方当接部54と、アングル材1000の端縁部(エッジ面)に当接し、塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動を支持する長方形平板状の上方支持部51及び下方支持部53と、を備える。
【0068】
上方支持部51は、上方均平用板部421と上方板部422とに垂直に、正面視(
図10参照)における上方塗装部42の右端部に固着されている。
上方当接部52は、上方支持部51の内面に対して平行に、且つ、移動方向Eに平行に、上方支持部51の内面に固着されている。上方当接部52は、正面視において、エッジ面40bよりも上方向に、塗装面に形成される塗料の被膜の厚さだけ突出している。
【0069】
上方当接部52は、実施形態1の内方当接部21と同様に、端縁部を介してアングル材1000の塗装面に当接するため、塗装装置2の移動に応じて、塗装面に当接している端縁部を介して塗装面に付着された塗料を押し退けてしまう。そこで、実施形態1の内方当接部21と同様に、上方当接部52の厚さ(塗装面に当接した状態での、上方当接部52の塗装面における短手方向の幅)は、塗装される塗料の粘性、特に固化前のダレによる広がりの度合いに基づき決定された値に形成されている。本実施形態では、上方当接部52の厚さは、3mmに形成されている。ただし、他の例として、上方当接部52は、5mm、4mm等の3mmよりも大きい厚さ、2mm、1mm等の3mmよりも小さい厚さになるように形成されてもよい。
【0070】
また、上方当接部52は、底面視において、上方支持部51よりも移動方向E前方に突出している。このように、塗装装置2は、上方当接部52が移動方向Eに上方支持部51よりも突出するように形成されることで、塗装装置2のサイズの増大を防ぎつつ、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動をより安定して支持できる。
【0071】
下方支持部53は、下方均平用板部411と下方板部412とに垂直に、正面視における下方塗装部41の下端部に固着されている。
下方当接部54は、下方支持部53の内面に平行に、且つ、移動方向Eに平行に、下方支持部53の内面に固着されている。下方当接部54は、正面視において、エッジ面40aよりも左方向に、塗装面に形成される塗料の被膜の厚さだけ突出している。
【0072】
下方当接部54の厚さ(塗装面に当接した状態での、下方当接部54の塗装面における短手方向の幅)は、塗装される塗料の粘性、特に固化前のダレによる広がりの度合いに基づいて決定された値に形成されており、本実施形態では3mmである。ただし、他の例として、下方当接部54は、例えば、5mm、4mm等の3mmよりも大きい厚さ、2mm、1mm等の3mmよりも小さい厚さになるように形成されてもよい。
【0073】
また、下方当接部54は、底面視において、下方支持部53よりも移動方向E前方に突出している。このように、塗装装置2は、下方当接部54が移動方向Eに下方支持部53よりも突出するように形成されることで、塗装装置2のサイズの増大を防ぎつつ、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動をより安定して支持できる。
【0074】
接続手段30は、実施形態1と同様に、固着部31と接続部32と連結部33とを備える。ただし、本実施形態の固着部31は、下方板部412に固着されている。
塗装装置2は、上方当接部52及び下方当接部54をアングル材1000に接触させた状態で、アングル材1000上を移動する。そのため、接続部32に接続される操作棒300は、上方当接部52、下方当接部54をアングル材1000に押し付けるように、塗装装置2に力を加えることが要望される。そこで、本実施形態では、固着部31は、塗装装置2における上方当接部52、又は、下方当接部54の近傍の位置に固着されている。
接続手段30は、
図10、
図11に示す姿勢に限定されず、固着部31の回動により様々な姿勢に調整される。
【0075】
続いて、塗装装置2を用いて表面1003、1004へ塗料の塗装を行う方法について説明する。ここでは、実施形態1と同様に、アングル材1000が送電設備に腕金として設置されている場合を例に説明する。
まず、作業者は、絶縁性の操作棒300の先端に接続されたヘラを用いて表面1003、1004に対して塗料1100を付着させる。
図12に表面1003、1004に塗料1100が付着されたアングル材1000を示す。
ただし、塗料1100を表面1003、1004に付着させる方法は、ヘラを用いた方法に限定されず、人手で付着させる方法、操作棒300の先端に接続された他の用具を用いて付着させる方法等の他の方法であってもよい。
【0076】
そして、作業者は、塗装装置2が接続された操作棒300を介し、操作棒300と塗装装置1との接続状態を固着部31、接続部32により回動調節して、塗装装置2をアングル材1000に配置させる。
図13を用いて、塗装装置2をアングル材1000に配置させる方法を説明する。作業者は、
図13に示すように、上方支持部51と表面1004とが平行になり、且つ、下方支持部53と表面1003とが平行になるように、塗装装置2の姿勢を調整する。そして、作業者は、アングル材1000の側面側から塗装装置2をアングル材1000に近づけ、上方当接部52と下方当接部54とを表面1003、1004にそれぞれ当接させることで、塗装装置2をアングル材1000に配置させる。
ただし、他の例として、作業者は、この方法以外の方法で、塗装装置2をアングル材1000に配置してもよい。
【0077】
図14に、アングル材1000に配置された塗装装置2の状態を示す。
図14の状態において、エッジ面40a、40bと表面1003、1004との間に所定の形状の間隔L2が設けられる。塗装装置2は、形成される塗料の被膜の表面での感電の可能性を定められた水準以下にするように、アングル材1000にかかる電圧と塗料1100の絶縁性能とに基づいて決定された厚さの間隔を間隔L2として設ける。本実施形態では、塗装装置2は、厚さ2.5mmのL字形の間隔を間隔L2として設ける。ただし、塗装装置2は、他の例として、他の厚さ(例えば、1.5mm等の2.5mm未満の厚さ、3mm等の2.5mmよりも大きい厚さ等)の間隔を間隔L2として設けるように形成されてもよい。
【0078】
塗装装置2は、間隔L2が設けられた状態を維持したまま、アングル材1000上を移動方向Eに移動して、この間隔L2を介して表面1003、1004に付着された塗料1100を均一化することで所定の膜厚の塗料1100の被膜を塗装面上に形成する。エッジ面40a、40bがそれぞれ表面1004、1003と平行に対向するため、表面1003、1004に形成される被膜は、均一な平面状の表面となる。
【0079】
本実施形態では、塗装装置2の正面図(移動方向Eから塗装装置2を見た図形、
図10参照)は、以下のような特性を有する。
塗装装置2の正面図とアングル材1000の断面形状図形とが同一平面におかれたとする。塗装装置2の正面図は、アングル材1000の断面形状の図形と衝突することなく、その平面内を移動することで配置状態における塗装装置2、及び、アングル材1000の正面図の状態(本実施形態では、
図14の状態)に遷移可能であるという特性を有する。
【0080】
本実施形態では、塗装装置2は、正面図がこのような特性を有するように形成されている。そのため、塗装装置2は、アングル材1000の長手方向における中間の位置において、アングル材1000の側面側からアングル材1000に配置でき、アングル材1000の長手方向における中間の位置から塗料の塗装を開始できる。
【0081】
アングル材1000は、長手方向に沿って一定の断面形状を有する。また、表面1003、1004は、それぞれアングル材1000の長手方向に平行な表面である。そのため、塗装装置2は、上方当接部52、下方当接部54をアングル材1000に接触させた状態(間隔L2が生じている状態)を維持したまま移動方向Eに平行に摺動移動できる。
そこで、作業者は、操作棒300を介して、アングル材1000に配置された塗装装置2をアングル材1000上で移動方向Eに平行に摺動移動させる。移動に合わせて、下方塗装部41、上方塗装部42は、間隔L2を介して表面1003、1004に付着された塗料1100を均一化することで表面1003、1004に所定の膜厚の被膜を形成する。
【0082】
塗装装置2がアングル材1000に配置された状態において、上方当接部52は、表面1003と当接することで、表面1003に垂直な方向における塗装装置2の位置を一定の位置に維持する。また、下方当接部54は、表面1004と当接することで表面1004に垂直な方向における塗装装置2の位置を一定の位置に維持する。すなわち、上方当接部52が表面1003に当接し、且つ、下方当接部54が表面1004に当接している状態は、表面1003に垂直な方向、及び、表面1004に垂直な方向における塗装装置2の位置が固定されている状態となる。
【0083】
そのため、塗装装置2は、この状態において正面視におけるアングル材1000との位置関係が固定され、エッジ面40a、40bと表面1003、1004との間に間隔L2を維持する。また、上方当接部52と下方当接部54とをそれぞれ表面1003、1004に当接させた状態が維持されている状態では、塗装装置2は、アングル材1000上においてアングル材1000の長手方向に平行な方向にしか摺動移動できない。すなわち、上方当接部52と下方当接部54とは、それぞれ表面1003、1004に当接することで、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動を支持できる。
【0084】
なお、エッジ面40aの幅は、表面1004の短手方向の幅から表面1003に形成される塗料の被膜の厚さを引いた値以上となるように形成されている。また、エッジ面40bの幅は、表面1003の短手方向の幅から表面1004に形成される塗料の被膜の厚さを引いた値以上となるように形成されている。
また、塗装装置2において、上方当接部52及び下方当接部54が、エッジ面40a、40bよりも移動方向E前方に位置するよう形成されている。これにより、塗装装置2は、上方当接部52及び下方当接部54が表面1003、1004に形成された塗料の被膜を破壊することを防止できる。
【0085】
また、下方板部412は、表面1004上の空間を表面1004と垂直な方向から覆う。これにより、下方板部412は、塗装装置2がアングル材1000上を移動方向Eに移動する際に表面1004と垂直な方向への塗料のはみ出しを防止できる。また、上方板部422は、表面1003上の空間を表面1003と垂直な方向から覆うことで、塗装装置2がアングル材1000上を移動方向Eに移動する際に、表面1003と垂直な方向への塗料のはみ出しを防止できる。
【0086】
また、送り部43は、塗装装置2のアングル材1000上での移動方向Eへの移動の際に、表面1004に付着され、被膜に用いられていない余剰の塗料(正面視における間隔L2の外部に位置する塗料1100)を移動方向E前方、かつ、表面1004の方向へ押し出して送る。これにより、表面1004における塗装装置2よりも移動方向E前方の位置に塗料が希薄な部分が生じる場合であっても、送り部43は、その部分に対して塗料を送ることで、その部分に塗料を補充して、被膜の形成が失敗する事態を抑制できる。
【0087】
また、上方支持部51は、エッジ面1005に当接することで、表面1003の短手方向(エッジ面1005の方向)への塗装装置2のずれを防止する。このように、上方支持部51は、塗装装置2のずれを防止することで、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動を支持する。
また、上方支持部51は、表面1003上の空間を表面1003の短手方向端部側から覆い、塗装装置2がアングル材1000上を移動する際に表面1003の短手方向端部側への塗料のはみ出しを防止できる。これにより、上方支持部51は、表面1003に形成される被膜が表面1003の短手方向端部の外側にはみ出すように形成されることを防止できる。
【0088】
また、下方支持部53は、エッジ面1006に当接することで、表面1004の短手方向(エッジ面1006の方向)への塗装装置2のずれを防止する。このように、下方支持部53は、塗装装置2のずれを防止することで、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動を支持する。
また、下方支持部53は、表面1004上の空間を表面1004の短手方向端部側から覆い、塗装装置2がアングル材1000上を移動する際に表面1004の短手方向端部側への塗料のはみ出しを防止できる。これにより、下方支持部53は、表面1004に形成される被膜が表面1004の短手方向端部の外側にはみ出すように形成されることを防止できる。
【0089】
本実施形態では、作業者は、操作棒300を介して、塗装装置2を移動させるとしたが、他の例として、操作棒300を介さずに手動で直接、塗装装置2を移動させてもよい。
以上が、塗装装置2を用いた表面1003、1004への塗料の塗装方法の一例の詳細である。
【0090】
以上、本実施形態に係る塗装装置2は、塗装手段40と、アングル材1000に当接し、間隔L2を維持し、且つ、塗装装置2の移動方向Eへの平行な摺動移動を支持する保持手段50と、を備えることとした。塗装装置2は、間隔L2を維持しつつアングル材1000上を長手方向に平行に摺動移動し、表面1003、1004に付着された塗料1100を均一化することで表面1003、1004に所定の膜厚の塗料の被膜を形成する。
【0091】
作業者は、表面1003、1004に所定の膜厚の塗料の被膜を形成するために、塗装装置2をアングル材1000に配置させ、移動させるだけでよい。すなわち、塗装装置2は、刷毛・ヘラ・ローラ等に関する作業者の技能の熟練を要することなく、より容易に、且つ、より精度よく表面1003、1004に所定の膜厚の塗料の被膜を形成できる。
また、塗装装置2は、上方支持部51、上方当接部52、下方支持部53、及び、下方当接部54を介してアングル材1000に当接して、間隔L2の維持と塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動の支持とを実現する。これにより、塗装装置2は、塗装装置の姿勢維持や移動のための設備(姿勢固定用の治具、移動用のレール等)をアングル材1000の外部に設けることなく、所定の膜厚の塗料の被膜を表面1003、1004に形成できる。
【0092】
また、上方当接部52と下方当接部54とが塗装面である表面1003、1004にそれぞれ直接当接することで、塗装装置2は、より安定して間隔L2を維持できる。また、上方支持部51、下方支持部53は、塗装面と異なるエッジ面1005、1006に当接して塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動を支持することで、塗装装置2の塗装面に対する塗装を邪魔することなく塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動をより安定して支持できる。
【0093】
また、作業者は、本実施形態で説明した塗装方法で、送電設備における腕金であるアングル材1000の表面1003、1004に、より容易に、且つ、より精度よく絶縁性の塗料1100の被膜を形成できる。
アングル材1000に絶縁性の塗料の被膜を形成することで、形成した被膜が維持されている限り持続的に、鳥類が運ぶ営巣材に含まれる金属等を原因とした地絡等の事故を防止できる。また、塗装装置2は、絶縁性の操作棒300を介した操作に応じて、送電設備が活線状態の場合であっても、アングル材1000に塗料の被膜を形成できる。
【0094】
本実施形態では、塗装装置2は、
図9~11に示す構成であるとした。ただし、他の例として、塗装装置2は、他の構成であってもよく、例えば、以下に示すような構成であってもよい。
【0095】
本実施形態では、エッジ面40a、40bは、表面1004、1003にそれぞれ平行に対向する表面であるとした。ただし、エッジ面40a、40bのうちの少なくとも1つが、表面1004、又は、表面1003に平行に対向しないような他の形状(例えば、波型形状、アーチ形状等)となるように形成されてもよい。これにより、塗装装置2は、表面が平面状と異なる形状の表面を有する塗料の被膜を形成できる。
【0096】
また、本実施形態では、上方当接部52は、長方形平板状に形成されているとした。更に、上方当接部52は、塗装装置2に固着する長尺状の面と塗装面に当接する長尺状の面とが2つの磁極となる磁石製として形成されていることとしてもよい。これにより、塗装装置2は、上方当接部52が塗装面に対して吸着することで、間隔L2をより安定して維持できる。
【0097】
また、上方当接部52は、長尺状の端縁部(長尺状の磁極)を介して塗装面に対向し、且つ、移動方向Eに平行に塗装面に吸着したまま、塗装面上を摺動する。この場合、長尺状の磁石である上方当接部52は、移動方向Eに平行に配設されることとなる。このため、上方当接部52は、他の方向よりも移動方向Eに対して摺動しやすいこととなる。これにより、塗装装置2は、上方当接部52が他の方向よりも移動方向Eに対して摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動を支持できる。
また、上方当接部52は、上方当接部52の移動方向Eの両端の面を2つの磁極とする磁石製として形成されていることとしてもよい。
【0098】
また、下方当接部54についても、同様に、磁石製であることとしてもよい。この場合、塗装装置2は、下方当接部54が塗装面に対して吸着することで、間隔L2をより安定して維持できる。また、塗装装置2は、下方当接部54が他の方向よりも移動方向Eに対して摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置2の移動方向Eへの摺動移動を支持できる。
【0099】
また、本実施形態では、上方当接部52、下方当接部54は、それぞれ長方形平板状であり、端縁部で塗装面に当接するとした。ただし、上方当接部52、下方当接部54のうちの少なくとも1つは、正面視において、塗装面に当接する端縁部に対して先細りとなるような形状に形成されてもよい。これにより、塗装装置2は、上方当接部52、下方当接部54のうちの少なくとも1つが塗装面から押し退ける塗料の量を低減できる。
【0100】
また、本実施形態では、上方当接部52は、上方支持部51よりも移動方向E前方に突出して形成されていることとした。ただし、上方当接部52は、上方支持部51よりも移動方向E前方に突出しないように形成されてもよい。また、下方当接部は、下方支持部53よりも移動方向E前方に突出して形成されていることとしたが、下方支持部53よりも移動方向E前方に突出しないように形成されてもよい。
【0101】
また、本実施形態では、下方塗装部41は、下方板部412を介して、表面1004上の空間を覆うように形成されていることとした。ただし、下方塗装部41は、表面1004上の空間を覆わないように形成されていることとしてもよい。例えば、下方塗装部41は、下方板部412の代わりに、接続手段30等の他の要素との連結に用いられるレール状の部材を備えるように形成されてもよい。また、上方塗装部42についても同様に、表面1003上の空間を覆わないように形成されてもよい。
【0102】
また、本実施形態では、塗装装置2は、送り部43を備えることとしたが、送り部43を備えないこととしてもよい。
また、塗装装置2が送り部43を備えない代わりに、下方均平用板部411が、底面視において移動方向Eに対して前傾となるように形成されることとしてもよい。これにより、下方均平用板部411が、送り部43と同様の役割を果たし、余剰の塗料を移動方向E前方、表面1004の方向へ押し出して送ることで、表面1004に付着された塗料が希薄な部分があった場合でも塗料の被膜の形成が失敗する事態を抑制できる。
【0103】
また、本実施形態では、塗装装置2は、表面1004に対して塗料を送る送り部43を備えることとした。ただし、塗装装置2は、表面1003に対して、余剰の塗料を送る送り部を備えることとしてもよい。例えば、塗装装置2は、上方均平用板部421の内面と上方板部422の内面とに固着される板状の部材を、この送り部として備えることとしてもよい。また、塗装装置2がこのような送り部を備える代わりに、上方均平用板部421が、側面視において移動方向Eに後傾となるように形成されてもよい。
【0104】
また、本実施形態では、上方支持部51は、表面1003上の空間を覆うように形成されることとした。ただし、上方支持部51は、表面1003上の空間を覆わないように形成されてもよい。例えば、上方支持部51は、アングル材1000の表面1003上の空間を覆わずに、エッジ面1005と当接し、上方当接部52と上方塗装部42とを連結するレール上の部材として形成されてもよい。また、上方支持部51は、エッジ面1005に当接しないように形成されてもよい。
【0105】
また、本実施形態では、下方支持部53は、表面1004上の空間を覆うように形成されることとした。ただし、下方支持部53は、表面1004上の空間を覆わないように形成されてもよい。例えば、下方支持部53は、アングル材1000の表面1004上の空間を覆わずに、エッジ面1006と当接し、下方当接部54と下方塗装部41とを連結するレール上の部材として形成されてもよい。また、下方支持部53は、エッジ面1006に当接しないように形成されてもよい。
【0106】
また、本実施形態では、上方当接部52及び下方当接部54は、2つの表面1003、1004に当接して、塗装装置2の姿勢を保持することとした。ただし、上方当接部52及び下方当接部54は、アングル材1000の側面(長手方向に平行な表面)のうち、互いに平行でない2つの側面であるならば、表面1003、1004と異なる表面に接触するように形成されてもよい。例えば、上方当接部52及び下方当接部54は、表面1001、1002に当接して、塗装装置2の姿勢を保持するよう形成されてもよい。
【0107】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る塗装装置3を、断面L字状のアングル材1000を塗装対象物として、
図15~20に基づいて説明する。
図15に塗装装置3の斜視図、
図16に塗装装置3の正面図、
図17に塗装装置3の側面図を示す。この塗装装置3は、第1の実施形態、第2の実施形態に係る塗装装置1、2がアングル材1000の表面側、裏面側を塗装対象とするのに対して、アングル材1000のエッジ面を塗装対象とするものである。
【0108】
図15~17において、本実施形態に係る塗装装置3は、アングル材1000の塗装面に対向して配設され、この塗装面に付着された塗料を均一化する塗装手段60と、アングル材1000に当接し、塗装手段60と塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、アングル材1000の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段70と、操作棒300を操作して塗装装置3をアングル材1000の長手方向に移動させるに際して、塗装装置3の操作に用いられる操作棒300を固定して接続する接続手段30と、を備え、保持手段70により塗装手段60と塗装面との間に所定間隔が維持され、且つ、塗装装置3のアングル材1000における長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、塗装手段60が塗装面を塗装するものであり、保持手段70がアングル材1000の側面に当接し、長尺状の磁石であって、アングル材1000の長手方向に平行に配設される磁石711,721をそれぞれ含む側方当接部71、上方当接部72を備えるものである。
【0109】
続いて、塗装装置3の構成の詳細について説明する。
塗装手段60は、アングル材1000のエッジ面である塗装面に付着された塗料の均一化に用いられる溝形平板状のエッジ塗装部61と、エッジ塗装部61に固着された、塗料のはみ出しを防止する断面が溝形状の長尺状の溝形防止部62と、溝形防止部62に固着された、塗料のはみ出しを防止する断面がL字形状の長尺状のL字防止部63と、を備える。
【0110】
エッジ塗装部61は、正面視(
図16参照)において溝形状の凹部が左向きとなるように保持手段70に固着されている。また、エッジ塗装部61は、溝形防止部62の長手方向の端部に固着されている。
エッジ塗装部61は、エッジ塗装部61の溝形状の凹部内の空間に導入される、アングル材1000の端縁部(エッジ面)に、付着された塗料を均一化する。エッジ塗装部61の凹部の底面の幅は、塗装面であるアングル材1000の端縁部(エッジ面)の短手方向の幅以上に形成される。
【0111】
溝形防止部62は、正面視において左側に溝形状の凹部が存在するように配設されている。また、溝形防止部62の溝形状の凹部は、正面視においてエッジ塗装部61の溝形状の凹部を包含するように形成される。
L字防止部63は、L字形状の1つの内側面を介して溝形防止部62の上面の短手方向の凹部側の端部に固着されており、L字形状の他の内側面を介してエッジ塗装部61の凹部内の空間に導入されるアングル材1000のエッジ面上の空間の一部を覆うよう形成されている。
【0112】
保持手段70は、アングル材1000の側面に当接してエッジ塗装部61の溝形状の凹部の底面と塗装面との間に所定の間隔を維持し、塗装装置3の移動方向F(
図17参照)への平行な摺動移動を支持する直方体状の長尺状の側方当接部71及び上方当接部72と、側方当接部71及び上方当接部72と他の要素との連結に用いられる、断面L字形状の長尺状のL字連結部73及びレール状のレール連結部74と、を備える。移動方向Fは、アングル材1000上で塗装装置3がアングル材1000の長手方向に平行に摺動移動する方向である。
【0113】
側方当接部71は、L字連結部73の外側面に平行に、且つ、移動方向に平行に、L字連結部73の外側面に固着されている。側方当接部71は、移動方向Fに平行に配設される長尺状の磁石711を含む。磁石711は、塗装面に当接する面と、この面に対向する面と、が2つの磁極となる磁石である。
上方当接部72は、L字連結部73の外側面のうち側方当接部71が固着されていない外側面に平行に、且つ、移動方向に平行に、この外側面に固着されている。上方当接部72は、移動方向Fに対して平行に配設される長尺状の磁石721を含む。磁石721は、塗装面に当接する面と、この面に対向する面と、が2つの磁極となる磁石である。
【0114】
L字連結部73は、側方当接部71、上方当接部72と、レール連結部74と、を連結する。
レール連結部74は、先端にねじ穴を備えるレール状の部材であって、L字連結部73の一の内側面に対して垂直に起立するように、その内側面に固着されている。レール連結部74は、先端のねじ穴部に接続手段30が固着される。なお、エッジ塗装部61は、レール連結部74の上面に対して垂直に起立するように、レール連結部74の上面に固着されている。
【0115】
接続手段30は、実施形態1と同様に、固着部31と接続部32と連結部33とを備える。ただし、本実施形態の固着部31は、レール連結部74の先端に固着されている。
接続手段30は、
図16、
図17に示す姿勢に限定されず、固着部31の回動により様々な姿勢に調整される。
塗装装置3の塗装対象の塗装面は、アングル材1000のエッジ面1005、又は、エッジ面1006である。
【0116】
続いて、塗装装置3を用いてエッジ面1005へ塗料の塗装を行う方法について説明する。ここでは、実施形態1と同様に、アングル材1000が送電設備に腕金として設置されている場合を例に説明する。また、本実施形態では、アングル材1000の表面1001~1004には、実施形態1、2で説明した方法を用いて塗料1100の被膜が形成され、固化しているとする。
図18に、表面1001~1004に塗料1100の被膜が形成されたアングル材1000の斜視図を示す。表面1001~1004それぞれに形成された被膜の表面を、表面1001a~1004aとする。
【0117】
まず、作業者は、絶縁性の操作棒300の先端に接続されたヘラを用いてエッジ面1005に対して塗料1100を付着させる。
図19に、エッジ面1005に塗料1100が付着されたアングル材1000を示す。
ただし、塗料1100をエッジ面1005に付着させる方法は、ヘラを用いた方法に限定されず、人手で付着させる方法、操作棒300の先端に接続された他の用具を用いて付着させる方法等の他の方法であってもよい。
【0118】
そして、作業者は、塗装装置3が接続された操作棒300を介して、操作棒300と塗装装置1との接続状態を固着部31、接続部32により回動調節して、塗装装置3をアングル材1000に配置させる。
図20を用いて、塗装装置3をアングル材1000に配置させる方法を説明する。作業者は、
図20に示すように、エッジ塗装部61の凹部の底面とエッジ面1005とが対向するように塗装装置3の姿勢を調整する。そして、作業者は、アングル材1000の側面側から塗装装置3をアングル材1000に近づけ、側方当接部71と上方当接部72とを表面1004a、1003aにそれぞれ当接させることで、塗装装置3をアングル材1000に配置させる。
ただし、他の例として、作業者は、この方法以外の方法で、塗装装置3をアングル材1000に配置してもよい。
【0119】
図21に、アングル材1000に配置された塗装装置3の状態を示す。
図21の状態において、エッジ塗装部61の凹部の底面とエッジ面1005との間に所定の形状の間隔L3が設けられる。塗装装置3は、形成される塗料の被膜の表面での感電の可能性を定められた水準以下にするように、アングル材1000にかかる電圧と塗料1100の絶縁性能とに基づいて決定された厚さ以上の間隔を間隔L3として設ける。本実施形態では、塗装装置3は、塗装装置3は、厚さ2.5mm以上の略矩形の間隔を間隔L3として設けるとするが、他の例として、他の厚さ(例えば、1.5mm等の2.5mm未満の厚さ、3mm等の2.5mmよりも大きい厚さ等)以上の間隔を間隔L3として設けるように形成されてもよい。
塗装装置3は、間隔L3が設けられた状態を維持したまま、アングル材1000上を移動方向Fに平行に摺動移動して、間隔L3を介してエッジ面1005に付着された塗料1100を均一化することで所定の膜厚の塗料1100の被膜を塗装面上に形成する。エッジ塗装部61の凹部の底面は直線状であるため、エッジ面1005に形成される被膜は、均一の平面状の表面となる。
【0120】
本実施形態では、塗装装置3の正面図(移動方向Fから塗装装置3を見た図形、
図17参照)は、以下のような特性を有する。
塗装装置3の正面図とアングル材1000の断面形状図形とが同一平面におかれたとする。塗装装置3の正面図は、アングル材1000の断面形状の図形と衝突することなく、その平面内を移動することで配置状態における塗装装置3、及び、アングル材1000の正面図の状態(本実施形態では、
図21の状態)に遷移可能であるという特性を有する。
【0121】
本実施形態では、塗装装置3は、正面図がこのような特性を有するように形成されている。そのため、塗装装置3は、アングル材1000の長手方向における中間の位置においても、アングル材1000の側面側からアングル材1000に配置でき、アングル材1000の長手方向における中間の位置から塗料の塗装を開始できる。
【0122】
アングル材1000は、長手方向に沿って一定の断面形状を有する。また、表面1003a、1004aは、それぞれアングル材1000の長手方向に平行な表面である。そのため、塗装装置3は、側方当接部71、上方当接部72をアングル材1000に接触させた状態(間隔L3が生じている状態)を維持したまま移動方向Fに平行に摺動移動できる。
そこで、作業者は、操作棒300を介して、アングル材1000に配置された塗装装置3をアングル材1000上で移動方向Fに平行に摺動移動させる。移動に合わせて、エッジ塗装部61は、間隔L3を介してエッジ面1005に付着された塗料1100を均一化することで、エッジ面1005に所定の膜厚の被膜を形成する。
【0123】
塗装装置3がアングル材1000に配置された状態において、側方当接部71は、表面1004aと当接することで、表面1004aに垂直な方向における塗装装置3の位置を一定の位置に維持する。また、上方当接部72は、表面1003aと接触することで表面1003aに垂直な方向における塗装装置3の位置を一定の位置に維持する。すなわち、側方当接部71が表面1004aに当接し、且つ、上方当接部72が表面1003aに当接している状態は、表面1004aに垂直な方向、及び、表面1003aに垂直な方向における塗装装置3の位置が固定されている状態となる。
【0124】
そのため、塗装装置3は、この状態において正面視におけるアングル材1000との位置関係が固定され、エッジ塗装部61の凹部の底面とエッジ面1005との間に間隔L3を維持する。また、側方当接部71と上方当接部72とをそれぞれ表面1004a、1003aに当接させた状態が維持されている状態では、塗装装置3は、アングル材1000上においてアングル材1000の長手方向に平行な方向にしか摺動移動できない。すなわち、側方当接部71と上方当接部72とは、それぞれ表面1004a、1003aに当接することで、塗装装置3の移動方向Eへの平行な摺動移動を支持できる。
また、エッジ塗装部61は、溝形状の凹部の両側面を介して被膜の形成の際にエッジ面1005の短手方向の両端方向への塗料1100のはみ出しを防止する。これにより、エッジ塗装部61は、エッジ面1005に形成される被膜がエッジ面1005の短手方向端部の外側にはみ出すように形成されることを防止できる。
【0125】
また、側方当接部71、上方当接部72は、磁石711、721をそれぞれ含む。これにより、塗装装置3は、側方当接部71、上方当接部72が塗装面に対して吸着することで、間隔L3をより安定して維持できる。
また、長尺状の磁石711、721は、塗装面に対向し、且つ、それぞれ移動方向Eに平行に配設される。このため、側方当接部71、上方当接部72は、他の方向よりも移動方向Fに対して摺動しやすいこととなる。これにより、塗装装置3は、側方当接部71、上方当接部72が他の方向よりも移動方向Fに対して摺動移動しやすくすることで、より安定して塗装装置3の移動方向Fへの摺動移動を支持できる。
【0126】
また、溝形防止部62は、溝形状の凹部を形成する内側面を介してエッジ面1005上の空間を覆うことで、塗装装置3がアングル材1000上を移動方向Fに移動する際にエッジ面1005の周囲への塗料のはみ出しを防止できる。
また、L字防止部63は、エッジ面1005上の空間を、表面1002aの端部近傍側から覆い、塗装装置3がアングル材1000上を移動する際に表面1002a側への塗料のはみ出しを防止できる。
【0127】
本実施形態では、作業者は、操作棒300を介して、塗装装置3を移動させるとしたが、他の例として、操作棒300を介さずに手動で直接、塗装装置3を移動させてもよい。
以上が、塗装装置3を用いたエッジ面1005への塗料の塗装方法の一例の詳細である。
エッジ面1006に対しても、塗装装置3を用いた同様の方法により塗料1100の被膜を形成できる。
【0128】
以上、本実施形態に係る塗装装置3は、塗装手段60と、アングル材1000に当接し、間隔L3を維持し、且つ、塗装装置3の移動方向Fへの平行な摺動移動を支持する保持手段70と、を備えることとした。塗装装置3は、間隔L3を維持しつつアングル材1000上を長手方向に平行に摺動移動し、エッジ面1005に付着された塗料1100を均一化することでエッジ面1005に所定の膜厚の塗料の被膜を形成する。
【0129】
作業者は、エッジ面1005に所定の膜厚の塗料の被膜を形成するために、塗装装置3をアングル材1000に配置させ、移動させるだけでよい。すなわち、塗装装置3は、刷毛・ヘラ・ローラ等に関する作業者の技能の熟練を要することなく、より容易に、且つ、より精度よくエッジ面1005に所定の膜厚の塗料の被膜を形成できる。
また、塗装装置3は、側方当接部71及び上方当接部72を介してアングル材1000に当接して、間隔L3の維持と塗装装置3の移動方向Fへの摺動移動の支持とを実現する。これにより、塗装装置3は、塗装装置の姿勢維持や移動のための設備(姿勢固定用の治具、移動用のレール等)をアングル材1000の外部に設けることなく、所定の膜厚の塗料の被膜をエッジ面1005に形成できる。
【0130】
また、作業者は、本実施形態で説明した塗装方法で、送電設備における腕金であるアングル材1000のエッジ面1005、1006に、より容易に、且つ、より精度よく絶縁性の塗料1100の被膜を形成できる。
アングル材1000に絶縁性の塗料の被膜を形成することで、形成した被膜が維持されている限り持続的に、鳥類が運ぶ営巣材に含まれる金属等を原因とした地絡等の事故を防止できる。また、塗装装置3は、接続手段30に接続された絶縁性の操作棒300を介した操作に応じて、送電設備が活線状態の場合であっても、アングル材1000に塗料の被膜を形成できる。
実施形態1、2で説明した方法及び本実施形態で説明した方法を用いることで、送電設備における腕金であるアングル材1000の全ての側面に対して、塗料1100の被膜を形成できることとなる。
【0131】
本実施形態では、塗装装置3は、
図15~17に示す構成であるとした。ただし、他の例として、塗装装置3は、他の構成であってもよく、例えば、以下に示すような構成であってもよい。
【0132】
本実施形態では、エッジ塗装部61の凹部の底面は、直線状であるとした。ただし、エッジ塗装部61の凹部の底面は、直線状と異なる形状(例えば、波型形状、アーチ形状等)となるように形成されてもよい。これにより、塗装装置3は、表面が平面状と異なる形状の表面を有する塗料の被膜を形成できる。
【0133】
また、本実施形態では、塗装装置3は、塗料のはみ出しを防止する溝形防止部62を備えることとしたが、溝形防止部62を備えないこととしてもよい。また、本実施形態では、塗装装置3は、塗料のはみ出しを防止するL字防止部63を備えることとしたが、L字防止部63を備えないこととしてもよい。
【0134】
また、本実施形態では、側方当接部71及び上方当接部72は、2つの表面1004a、1003aに当接することで、塗装装置3の姿勢を保持することとした。ただし、側方当接部71及び上方当接部72は、アングル材1000の側面(長手方向に平行な表面)のうち、互いに平行でない2つの側面であるならば、表面1004a、1003aと異なる表面に接触するように形成されてもよい。例えば、上方当接部52及び下方当接部54は、表面1001a、1002aに当接して、塗装装置3の姿勢を保持するよう形成されてもよい。
【0135】
(本発明のその他の実施形態)
実施形態1~3では、塗装対象のアングル材1000が、磁性体である金属製であるとした。ただし、各実施形態の塗装装置は、樹脂等の他の材質製のアングル材に対しても塗装できる。
【0136】
また、実施形態1~3では、塗装対象をアングル材1000とする塗装装置を説明したが、本発明の塗装装置は、同一の断面形状を有する長尺状の物体であれば、アングル材1000と異なる物体(例えば、長尺状の角材、溝形鋼、六角鋼等)を塗装対象として形成されてもよい。
【0137】
図22を用いて、六角鋼を塗装対象とする塗装装置の一例である塗装装置4について説明する。
塗装装置4は、六角鋼1200の長手方向に平行な6つの表面のうちの1つの表面に塗料の被膜を形成する。塗装装置4は、
図22に示すように、塗装面に付着された塗料を均す長方形平板の塗装手段80と、塗装手段80と塗装面との間に所定の間隔を維持し、塗装装置4の六角鋼1200の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段90と、を備える。
【0138】
保持手段90は、六角鋼1200における塗装面の両側の側面にそれぞれ当接する直方体状の当接部91、92と、当接部91、92と塗装手段80との連結に用いられるレール状の連結部93、94と、を備える。
塗装装置4は、当接部91、92を塗装面の両隣の2つの表面に接触させた状態で、六角鋼1200の長手方向に移動する。これにより、塗装装置4は、塗装対象領域の表面に付着された塗料を均一化して、この表面に定められた厚さの塗料の被膜を形成できる。
【0139】
また、実施形態1~3の塗装装置は、操作棒300の接続に用いられる接続手段30を備えることとしたが、接続手段30を備えないこととしてもよい。その場合、塗装装置は、例えば、手動で操作される。
また、実施形態1~3では、接続手段30には操作棒300が接続されることとした。ただし、他の例として、接続手段30には作業ロボットのアーム等の他の操作用具が接続されることとしてもよい。その場合、塗装装置は、例えば、接続手段30に接続された他の操作用具を介した操作に応じて塗装面への塗装を行う。
【0140】
また、実施形態1~3の塗装装置は、アングル材1000の側面側(長手方向に垂直な方向)からアングル材1000に配置できるように形成されているとした。ただし、塗装装置は、アングル材1000の側面(長手方向と垂直な方向)から、アングル材1000に配置不可な形状に形成されてもよい。その場合、例えば、アングル材1000の長手方向の端部から、塗装装置内の隙間にアングル材1000を通すようにして、塗装装置をアングル材1000に配置すればよい。
【0141】
また、実施形態1~3の塗装装置は、塗装面に予め付着された塗料を均一化することで、塗装面に塗料の被膜を形成することとした。ただし、塗装用具は、塗料を塗装面に付着させる機構を備えることとしてもよい。塗装用具は、例えば、塗料を貯蔵し、圧力の印加に応じて塗装対象領域に対して、貯蔵された塗料を放出する貯蔵部を備えることとしてもよい。
そして、作業者は、例えば、塗装用具を塗装対象部材に配置した後で、貯蔵部に接続された操作用具であって、貯蔵部に圧力をかけるための操作用具(例えば、マジックハンド等)を介して、貯蔵部に圧力をかける。これにより、作業者は、塗装用具の配置の後であっても、より容易に塗装対象領域に塗料を付着でき、予め塗料を付着する手間を軽減できる。
【0142】
以上、本発明の実施形態の一例について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態を任意に組み合わせる等してもよい。
【符号の説明】
【0143】
1 塗装装置
2 塗装装置
3 塗装装置
4 塗装装置
10 塗装手段
10a エッジ面
10b エッジ面
11 上方塗装部
111 上方均平用板部
112 上方板部
12 側方塗装部
121 側方均平用板部
122 側方板部
13 防止部
14 送り部
20 保持手段
21 内方当接部
22 支持部
23 外方当接部
30 接続手段
31 固着部
32 接続部
33 連結部
300 操作棒
310 接続部
40 塗装手段
40a エッジ面
40b エッジ面
41 下方塗装部
411 下方均平用板部
412 下方板部
42 上方塗装部
421 上方均平用板部
422 上方板部
43 送り部
50 保持手段
51 上方支持部
52 上方当接部
53 下方支持部
54 下方当接部
60 塗装手段
61 エッジ塗装部
62 溝形防止部
63 L字防止部
70 保持手段
71 側方当接部
711 磁石
72 上方当接部
721 磁石
73 L字連結部
74 レール連結部
80 塗装手段
90 保持手段
91 当接部
92 当接部
93 連結部
94 連結部
1000 アングル材
1001 表面
1002 表面
1003 表面
1004 表面
1005 エッジ面
1006 エッジ面
1100 塗料
1200 六角鋼
【手続補正書】
【提出日】2022-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
L字状の断面形状を有する長尺状の塗装対象物における長手方向に形成されるL字の内側2表面、又は外側2表面のいずれか一方の側面に対向して配設されると共に、他方の側面を開放した状態で、前記一方の側面に付着された塗料を均一化する塗装手段と、
前記塗装対象物の前記一方の側面側を形成する2表面のそれぞれに当接し、前記塗装手段と前記塗装面との間に所定間隔を維持すると共に、前記塗装対象物の長手方向への平行な摺動移動を支持する保持手段と、
を備え、
前記保持手段が前記塗装対象物の一方の側面に押し付けられることで前記保持手段により前記塗装手段と前記塗装面との間に前記所定間隔が維持され、且つ、前記長手方向への平行な摺動移動が支持された状態で、前記塗装手段が前記塗装面を前記長手方向に塗装すること
を特徴とする塗装装置。