(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077569
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】検査装置及び分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20220517BHJP
G01N 29/04 20060101ALI20220517BHJP
G01N 29/265 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/04
G01N29/265
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188401
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】319009222
【氏名又は名称】オングリットホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】森川 歩
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AA07
2G047AA10
2G047AD11
2G047BA04
2G047BC07
2G047CA03
2G047EA16
2G047GA19
2G047GD02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】検体の状態の調査を低コストで効率的に実施するための技術を提供する。
【解決手段】検査装置10aは、検体の叩打で生じた打音を検知する打音検査装置104aと、打音検査装置を保持する保持体と、保持体の姿勢を制御する姿勢制御装置と、保持体を支持する棒状の支持体とを備える。また、前記姿勢制御装置は、前記保持体の姿勢又は位置を検知するセンサと、前記保持体の姿勢又は位置を維持又は変更するための推進装置とを有する。また、前記センサにより検知された前記保持体の姿勢又は位置に応じて、前記推進装置により前記保持体の姿勢又は位置が維持又は変更される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の叩打で生じた打音を検知する打音検査装置と、
前記打音検査装置を保持する保持体と、
前記保持体の姿勢を制御する姿勢制御装置と、
前記保持体を支持する棒状の支持体と、
を備える検査装置。
【請求項2】
前記姿勢制御装置は、前記保持体の姿勢又は位置を検知するセンサと、前記保持体の姿勢又は位置を維持又は変更するための推進装置とを有する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記センサにより検知された前記保持体の姿勢又は位置に応じて、前記推進装置により前記保持体の姿勢又は位置が維持又は変更される、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
ユーザにより前記支持体に対して加えられた圧力に応じて、前記推進装置により前記保持体の姿勢又は位置が変更される、請求項2又は3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記推進装置は、前記検体の叩打に対する反力を生じさせる、請求項2から4のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記推進装置による前記保持体の姿勢又は位置の維持又は変更により、前記検査装置のユーザが感じる重量が低減される、請求項2から5のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記打音検査装置は、振動センサ、音響センサ又は荷重センサを有する、請求項2から6のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記打音検査装置は、前記検体の叩打のための叩打部を有し、
前記保持体は、前記叩打部の位置又は向きを変更するための機構を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記機構による変更後の前記叩打部の位置又は向きは、水平方向又は垂直方向の前記検体を叩打可能な位置又は向きを含む、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記検体を撮像するカメラを備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項11】
前記検体をマーキングするためのマーカを備える、請求項1から10のいずれか一項に記載の検査装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の検査装置の前記打音検査装置により検知された打音のデータを分析する分析部と、
前記分析に基づいて、前記検体の損傷を検出する検出部と
を備える分析装置。
【請求項13】
前記検体の損傷の検出は、前記検体における損傷のない部位の打音データと、前記検体における損傷を有する部位の打音データとの間の関係についての学習済みモデルを使用して行われる、請求項12に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置及び分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物、煙突、トンネル、橋梁、電柱、及び鉄塔など、何らかの構造物の状態を検査する技術が知られている。特許文献1には、検査対象物の表面をハンマーで打撃した際に生じる打音を、マイクを用いて検出し、マイクからの信号に基づいて打音検出波形を生成し、打音検出波形に発生する1周期分の波形の振幅に基づいて検査対象物の状態を評価する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、建造物の高所における状態を検査する場合、足場が必要となったり、吊り下げたゴンドラに乗り込んだ作業員が作業を行なったり、付近を交通規制して高所作業車を使用したりする場合があった。
【0005】
そのため、検査対象物の状態の検査には、足場の組み立て、解体、ゴンドラの設置、又は交通規制の申請など、多大なコストを要する場合があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、検体の状態の調査を低コストで効率的に実施するための技術を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る検査装置は、検体の叩打で生じた打音を検知する打音検査装置と、前記打音検査装置を保持する保持体と、前記保持体の姿勢を制御する姿勢制御装置と、前記保持体を支持する棒状の支持体と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検体の状態の調査を低コストで効率的に実施するための技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態における状態検査システムの概略構成の一例を示す図である。
【
図2】一実施形態における検査装置の外観の一例を示す図である。
【
図3】一実施形態における検査装置の本体の外観の一例を示す図である。
【
図4】一実施形態における検査装置の外観の他の例を示す図である。
【
図5】一実施形態における検査装置の本体の外観の他の例を示す図である。
【
図6】一実施形態における検査装置の本体の外観の他の例を示す図である。
【
図7】一実施形態における打音検査装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】一実施形態における打音検査装置による検査データの収集の一例を説明するための図である。
【
図9】一実施形態における制御装置の構成の一例を説明する図である。
【
図10】一実施形態における状態検査システムによる処理フローの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本実施形態に係る状態検査システムについて説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。即ち、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形し、又は各実施例を組み合わせる等して実施することができる。また、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には同一または類似の符号を付して表している。図面は模式的なものであり、必ずしも実際の寸法や比率等とは一致しない。図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることがある。
【0011】
まず、
図1を参照して、一実施形態における状態検査システムの概略構成の例を説明する。状態検査システム1は、建築物、煙突、トンネル、橋梁、電柱、及び鉄塔など、何らかの構造物を検体として検査し、検体における損傷の有無などの状態を特定するためのシステムである。状態検査システム1は、検査装置10、分析装置20、及び端末装置30を備える。検査装置10、分析装置20、及び端末装置30のそれぞれは、他の装置とネットワークNを介して通信可能なように構成されている。以下に、検査装置10、分析装置20、及び端末装置30のそれぞれの概要を説明する。
【0012】
検査装置10は、ユーザ操作等に応じて、検体の状態検査のためのデータを取得する装置である。例えば、検査装置10は、検体を叩打し、それにより生じた打音データを取得する。また、検査装置10は、検体の状態検査のために、検体を撮像することにより、検体の画像データを得る。検査装置10の構成の詳細については、後述する。
【0013】
分析装置20は、検査装置10から取得した検体に関するデータに基づいて、検体における損傷の有無などの状態を分析し、当該分析の結果を出力する。分析装置20は、パーソナルコンピュータ又はサーバコンピュータなどのコンピュータにより構成されてもよいし、クラウドコンピューティングを利用して実装されてもよい。なお、変形例として、分析装置20が有する機能は、検査装置10又は端末装置30などの他の装置で実装されてもよい。
【0014】
端末装置30は、検体の分析を行うユーザ等により使用される装置である。端末装置30は、分析装置20から出力された検体の状態の分析結果を取得し表示可能に構成されている。また、端末装置30は、検査装置10による検査開始や終了などの検査装置10の動作を操作するためのコントローラとして機能してもよい。
【0015】
図2及び
図3を参照して、検査装置10の具体的な例として、検査装置10aについて説明する。
図2に示すように、検査装置10aは、本体101aと、ポール102aとを備える。ポール102aは、本体101aを支持するための棒状の支持体であり、本体101aの下部に設けられている。ポール102aは、伸縮自在に構成されていてもよい。また、本体101aの側部には、マーカ103aと、打音検査装置104aとが、その端部が本体101aから突出するように設けられている。
【0016】
マーカ103aは、その端部に接触したものに対して印をつけることが可能な部材である。例えば、マーカ103aは、その端部からインクを吐出し、当該端部に接触したものに対して、インクを塗布することが可能である。
【0017】
打音検査装置104aは、叩打部を備え、当該叩打部により検体を叩打し、それにより生じた打音を検知し、打音データを取得する装置である。打音検査装置104aの構成の詳細については、後述する。
【0018】
ユーザは、ポール102aを介して本体101aを検体に近づけることにより、検体を検査し、又は検体にマーキングすることが可能である。例えば、ユーザは、ポール102aの下側端部付近を握持し、ポール102aを動かすことにより、検体にマーカ103aを接触させ、検体にマーキングを行うことができる。また、ユーザは、ポール102aを握持し、動かすことにより、検体に打音検査装置104aを接触させ、検体の叩打により生じる打音を検出することができる。
【0019】
図3は、検査装置10aにおける本体101aの外観を拡大して示した図である。
図3に示すように、本体101aは、マーカ103a及び打音検査装置104aに加えて、プロペラ105a、カメラ106a、回転機構107a、センサ108a、制御装置109a、及び保持体110aを備える。
【0020】
プロペラ105aは、本体101aに推進力を生じさせる。本体101aには、複数のプロペラ105aが、それぞれ異なる位置に設けられている。
図3に示す例では、8つのプロペラ105aが設けられているが、プロペラ105aの数はこれに限定されず、8つ未満であってもよいし、9つ以上であってもよい。複数のプロペラ105aのそれぞれが本体101aの異なる位置に設けられ、プロペラ105aのそれぞれが異なる回転制御を行うことにより、異なる方向の推進力を本体101aに対して生じさせることが可能である。
【0021】
カメラ106aは、本体101aの外部に存在する被写体を撮像する。カメラ106aは、例えば、検体を撮像することにより、検体の表面の画像を取得する。
【0022】
回転機構107aは、本体101aの中心位置における垂直方向を軸として回転可能なリング形状の機構である。カメラ106aは、回転機構107a上に載置される。これにより、回転機構107aの回転に応じて、カメラ106aの視野(撮像範囲)をパン方向に変更することができる。なお、カメラ106aをパン方向以外の方向に回転可能なように回転機構107aを構成し、カメラ106aの視野をパン方向以外の方向に向けられるようにしてもよい。
【0023】
センサ108aは、本体101a(又は保持体110a)の姿勢やその他の状態を検知するセンサである。センサ108aは、例えば、ジャイロセンサを含む。センサ108aは、加速度センサや、高度センサなどのその他のセンサを含んでもよい。
【0024】
プロペラ105a及びセンサ108aは、本体101a(又は保持体110a)の姿勢制御装置として機能する。本実施形態において、姿勢制御装置は、保持体110aの姿勢又は位置を検知するセンサ108aと、保持体110aの姿勢又は位置を維持又は変更するための推進装置(プロペラ105a)とを有する。
【0025】
例えば、センサ108aにより検知された本体101aの傾きなど、本体101aの姿勢に応じて、複数のプロペラ105aのうちいずれかが駆動して推進力を生じさせることにより、本体101aの姿勢が基準姿勢(例えば、打音検査装置104aが検体の表面に対して直角方向から叩打可能な姿勢、又はカメラが水平方向に向けられる姿勢)となるように制御される。すなわち、センサ108aにより検知された保持体110aの姿勢又は位置に応じて、プロペラ105a(推進装置)により保持体110aの姿勢又は位置が維持又は変更される。
【0026】
また、センサ108aにより検知された本体101aの高度に応じて、複数のプロペラ105aのうちいずれかを駆動して本体101aに揚力を生じさせることにより、本体101aの高度を一定に保つことが可能である。これにより、ポール102aを握持するユーザが、検査装置10の重量を感じずに(または、検査装置10の重量が実際よりも軽く感じた状態で)、検体の検査の作業を行うことができる。
【0027】
また、ユーザによりポール102aに対して加えられた圧力に応じて、プロペラ105aにより本体101a(保持体110a)の姿勢又は位置が変更されるように制御されてもよい。詳細には、ポール102aにおけるユーザが握る部分に、ユーザが加えた圧力を検知可能な圧力センサを設け、圧力センサにより検知した圧力に応じて、プロペラ105aの駆動を制御してもよい。これにより、本体101aにプロペラ105aの駆動により生じる推進力がユーザの操作を補助し、ユーザが本体101aを移動させたい位置に、容易に本体101aを移動させることができる。
【0028】
また、センサ108a(例えば、加速度センサ)により検知された本体101aの振動などの動きに応じて、打音検査装置104aによる検体に対する叩打により本体101aに対して生じる力(例えば、本体101aが検体から離れる方向に動く力)の反力をプロペラ105aにより生じさせることができる。すなわち、検体の叩打に対する反力を生じさせることが可能な位置に設けられたプロペラ105aを駆動させる。このように、検体の叩打に対する反力を生じさせることにより、安定した力で検体を叩打することが可能である。
【0029】
制御装置109aは、検査装置10aが備える各構成の動作及び処理を制御する。例えば、制御装置109aは、打音検査装置104a及びカメラ106aにより取得されたデータを分析装置20に送信するように制御する。また、制御装置109aは、ユーザが操作するコントローラから受信した信号に応じて、打音検査装置104a及びカメラ106aの動作及び処理を制御してもよい。上記コントローラは、ポール102aのユーザが握持する付近に設けられていてもよいし、ポール102aとは別体であってもよい。また、端末装置30が上記コントローラとして機能してもよい。制御装置109aの構成については、後述する。
【0030】
保持体110aは、マーカ103a、打音検査装置104a、プロペラ105a、カメラ106a、回転機構107a、センサ108a、及び制御装置109aを保持する保持体として機能する部材である。保持体110aは、プロペラ105aにより生じる推進力、及びカメラ106aの撮像範囲の阻害(遮蔽)を低減する形状で構成される。例えば、保持体110aは、上記の推進力及び撮像範囲の阻害を低減するように、棒状又は板状のフレームがメッシュを形成するように配置され、さらに、保持体110aの全体が略球体形状を形成するように構成されてもよい。また、保持体110aの形状は、略球体形状に限定されず、立方体、や不規則な形状など、任意の形状で形成されてもよい。
【0031】
次に、
図4から
図6を参照して、検査装置10の他の例として、検査装置10bについて説明する。以下の説明において、検査装置10bの構成のうち、検査装置10aと同様の構成については、説明を簡略化、又は省略する場合がある。
【0032】
図4に示すように、検査装置10bは、本体101bと、ポール102bとを備える。ポール102bは、本体101bを支持するための棒状の支持体であり、本体101bの下部に設けられている。
【0033】
図5及び
図6は、検査装置10bにおける本体101bの外観を拡大して示した図である。
図5及び
図6に示すように、本体101bは、マーカ103b、打音検査装置104b、プロペラ105b、カメラ106b、回転機構1071b、回転機構1072b、回転機構1073b、回転機構1074b、アーム1075b、リング1076b、センサ108b、制御装置109b、及び保持体110bを備える。
【0034】
保持体110bは、マーカ103b、打音検査装置104b、プロペラ105b、カメラ106b、回転機構1071b、回転機構1072b、回転機構1073b、回転機構1074b、アーム1075b、リング1076b、センサ108b、及び制御装置109bを保持するように構成されている。
【0035】
リング1076bは、回転機構1073b及び回転機構1074bを介して、保持体110bに取り付けられている。リング1076bは、回転機構1073b及び回転機構1074bが回転することにより、回転機構1073b及び回転機構1074bを結ぶ線を軸として、回転可能である。
【0036】
アーム1075bは、回転機構1071b及び回転機構1072bを介して、リング1076bに取り付けられている。アーム1075bは、回転機構1071b及び回転機構1072bが回転することにより、回転機構1071b及び回転機構1072bを結ぶ線を軸として、回転可能である。
【0037】
マーカ103bは、アーム1075bの長手方向の一端の上面に設けられている。打音検査装置104bは、アーム1075bの長手方向の他端の上面に設けられている。カメラ106bは、アーム1075bの上面における、マーカ103bの設置位置と、打音検査装置104bの設置位置との間に設けられている。4つのプロペラ105bが支持部を介して、アーム1075bの下面に設けられている。なお、プロペラ105bの数は、4つに限定されず、4つ未満でも5つ以上でもよい。
【0038】
マーカ103bは、その端部に接触したものに対して印をつけることが可能な部材である。マーカ103bは、アーム1075b上を移動可能に設けられている。マーカ103bが使用されるとき、マーカ103bは、制御装置109bの制御により、アーム1075b上に沿って、リング1076bの外側方向に移動し、リング1076bの外側に突出した位置で停止する。マーカ103bの使用終了後、マーカ103bは、同様に制御装置109bの制御により、アーム1075b上に沿ってリング1076bの内側方向に移動し、リング1076bの外側に突出しない位置で停止する。なお、マーカ103bの移動の制御は上記に限定されず、その端部に接触したものに対して印をつけるように制御可能であればよい。
【0039】
打音検査装置104bは、叩打部により検体を叩打し、それにより生じた打音を検知し、打音データを取得する装置である。打音検査装置104bは、アーム1075b上を移動可能に設けられている。打音検査装置104bが使用されるとき、打音検査装置104bは、制御装置109bの制御により、アーム1075b上に沿ってリング1076bの外側方向に移動し、リング1076bの外側に突出した位置で停止する。打音検査装置104bの使用終了後、打音検査装置104bは、制御装置109bの制御により、アーム1075b上に沿ってリング1076bの内側方向に移動し、リング1076bの外側に突出しない位置で停止する。なお、打音検査装置104bはアーム1075bの長手方向の他端の上面に設けられていることとしたが、叩打部により検体を叩打し、それにより生じた打音を検知し、打音データを取得可能なように設けられていれば、どのような方法で設けられていてもよい。また、アーム1075b及び上述の回転機構等により、叩打部を任意の位置又は向きに変更可能である。例えば、アーム1075b及び上述の回転機構等による変更後の叩打部の位置又は向きは、水平方向又は垂直方向の検体(例えば、壁面又は天井面)を叩打可能な位置又は向きを含む。
【0040】
プロペラ105bは、本体101bに推進力を生じさせる。カメラ106bは、本体101bの外部に存在する被写体を撮像する。カメラ106bは、例えば、検体を撮像することにより、検体の表面の画像を取得する。なお、カメラ106bは、アーム1075bの上面における、マーカ103bの設置位置と、打音検査装置104bの設置位置との間に設けられていることとしたが、これに限定されず、検体を撮像することが可能なように設けられていればよい。
【0041】
検査装置10bにおいて、マーカ103b、打音検査装置104b、プロペラ105b、カメラ106bの向きは、上述したリング1076bの回転、及び上述したアーム1075bの回転により調整される。例えば、
図6に示すように、本体101bがαの向き又はβの向きに動かされたとき、それに応じて、マーカ103b、打音検査装置104b、プロペラ105b、カメラ106bの向きが水平になるように、アーム1075b及びリング1076bの回転により調整される。アーム1075b及びリング1076bの回転は、センサ108bによる姿勢の検知結果により制御されてもよい。または、重力に応じて、マーカ103b、打音検査装置104b、プロペラ105b、カメラ106bの向きが水平になるように、アーム1075b及びリング1076bの回転がしてもよい。
【0042】
センサ108bは、本体101b(又は保持体110b)の姿勢やその他の状態を検知するセンサである。センサ108bは、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ、高度センサ、又はその他のセンサのうち、少なくとも一つを含みうる。
【0043】
制御装置109bは、検査装置10bが備える各構成の動作及び処理を制御する。例えば、制御装置109bは、打音検査装置104b及びカメラ106bにより取得されたデータを分析装置20に送信するように制御する。また、制御装置109bは、ユーザが操作するコントローラから受信した信号に応じて、打音検査装置104b及びカメラ106bの動作及び処理を制御してもよい。上記コントローラは、ポール102bのユーザが握持する付近に設けられていてもよいし、ポール102bとは別体であってもよい。また、端末装置30が上記コントローラとして機能してもよい。制御装置109bの構成については、後述する。
【0044】
図7を参照して、検査装置10に備える打音検査装置104(例えば、打音検査装置104a又は打音検査装置104b)の構成の一例を概略的に説明する。
図7に示すように、打音検査装置104は、与圧センサ701、ベース702、与圧ばね703、可動鉄芯704、荷重センサ705、弾性体706、ガード707、音響センサ708、振動センサ709、及び駆動源710を備える。
【0045】
ベース702は、検体の叩打により生じる衝撃反力を支える基盤(反力基盤)となる部材である。ベース702における打音検査装置104の内側の面には、与圧ばね703と、与圧センサ(又は密着センサ)701とが設けられている。与圧センサ701は、与圧ばね703に接続され、与圧ばね703が縮んでいる状態と伸びている状態とを検知する。
【0046】
可動鉄芯704は、基準質量で構成された鉄芯である。可動鉄芯704の長手方向の一端には、荷重センサ705と、ガード707が順に積層(結合)して設けられている。ガード707は、打音検査装置104による打音検査において検体を叩打するときに、検体と接触する(検体を叩打する)部材である。荷重センサ705は、ガード707による検体の叩打で生じる荷重(衝撃反力)を測定するセンサである。
【0047】
可動鉄芯704の長手方向の他端は、駆動源710内を通過し、与圧ばね703に密着している。可動鉄芯704は、
図7における左右方向に繰り返し運動するように設けられている。また、可動鉄芯704の動きに連動して、与圧ばね703が伸縮するように、可動鉄芯704は、与圧ばね703に密着している。
【0048】
駆動源710は、可動鉄芯704の駆動源である。駆動源710は、例えば、ソレノイドである。ユーザの操作等により検査装置10に備える打音検査装置104が検体に押し付けられ(又は打音検査装置104の外側からベース702が検体に向かって押圧され)、所定値以上の圧力が生じたときに、与圧センサ701がオン状態になり、駆動源710内に電流が流れ、与圧センサ701内部のプランジャー(図示せず)がa方向に突出し、可動鉄芯704を叩くと、ガード707がa方向の動き、検体を叩打する。検体の叩打は、駆動源710の制御により一定の周期で交互に繰り返してもよいし、ユーザによる操作に応じたタイミングで実施されてもよい。
【0049】
打音検査装置104において、ガード707が突出した面には、弾性体706、音響センサ708、及び振動センサ709が設けられている。弾性体706は、打音検査装置104を検体に接触させたときに、衝撃を吸収する部材である。音響センサ708は、検体の叩打により生じる打音を検出するセンサである。振動センサ709は、検体の叩打により生じる振動を検出するセンサである。
【0050】
図8を参照して、打音検査装置104により収集される検査データについて説明する。打音検査装置104は、上述した方法により可動鉄芯704を運動させ、ガード707を介して検体を叩打する。このとき、可動鉄芯704を所定の重量(基準重量)とし、可動鉄芯704の動きを所定の速度(基準速度)とすることにより、所定の衝撃(基準衝撃)を検体に加える。加えられた基準衝撃に応じた反力(衝撃反力)が荷重センサ705により測定される。また、音響センサ708は、検体に加えられた基準衝撃に応じた反響音周波数を検出する。さらに、振動センサ709は、検体に密着しており、検体に対する基準衝撃に応じて発生する振動の固有周波数を検出する。
【0051】
上記のようにして測定又は検出された衝撃反力、反響音周波数、及び固有振動数のデータは、分析のために打音検査装置104(検査装置10)から分析装置20に送信される。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、検査装置10a(10b)は、検体の叩打で生じた打音を検知する打音検査装置104a(104b)と、打音検査装置104a(104b)を保持する保持体110a(110b)と、保持体110a(110b)の姿勢を制御する姿勢制御装置(プロペラ105a及びセンサ108a(プロペラ105b及びセンサ108b))と、保持体110a(110b)を支持する棒状のポール102a(102b)とを備える。ユーザは、ポール102aを掴み、検査装置10aを持ち上げて、検体に近づけ、検体の打音検査を行うことが可能である。
【0053】
その結果、本実施形態に係る検査装置10によれば、検体の高所における状態を検査する場合であっても、足場の組み立て、解体、ゴンドラの設置、又は交通規制の申請などを必要とせずに、検査を実施可能である。そのため、検体の状態の調査を低コストで効率的に実施することが可能である。
【0054】
次に、
図9を参照して、本実施形態における検査装置10、分析装置20、及び端末装置30などのコンピュータが備える制御装置の例示的な構成について説明する。
図9に示すように、制御装置500は、プロセッサ501、メモリ502、記憶部503、及び入出力部504を備える。制御装置500は、これらの構成のうちの少なくとも一部を備えていなくてもよいし、他の構成をさらに備えてもよい。
【0055】
プロセッサ501は、メモリ502に記憶されているプログラムを実行することにより制御装置500における各種の処理の制御及び実行を行う。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。
【0056】
メモリ502は、プロセッサ501による実行のために、記憶部503から読み込まれ、入出力部504から入力され、又は予め記憶されたプログラムのプログラムコードや、プログラムの実行時に必要となるデータを一時的に記憶する。メモリ502は、例えばRAM(Random Access Memory)等の記憶媒体である。
【0057】
記憶部503は、オペレーティングシステムや、上記各構成を実現するための各種プログラムを記憶するための記憶媒体である。記憶部503は、例えばハードディスクドライブ(HDD)やフラッシュメモリ等の不揮発性の記憶媒体である。
【0058】
入出力部504は、制御装置500の外部との間でデータの入出力を行うためのインタフェースである。入出力部504は、例えば、ネットワーク又は周辺機器と通信を行うための規格に従って構成されたインタフェースである。
【0059】
次に、
図10を参照して、状態検査システム1により実行される検体の状態を特定するための処理のフローを説明する。検査装置10、分析装置20、及び端末装置30のそれぞれが行う処理は、各装置に備える制御装置の制御により実現される。なお、この処理における各処理ステップについて、既に詳細を説明しているものについては、ここでは詳細な説明を省略する。
【0060】
まず、ステップS101において、検査装置10は、ユーザ操作等に応じて、打音検査装置104を起動する。ステップS102において、検査装置10は、ユーザ操作等に応じて、打音検査装置104による検体の叩打のための叩打部の運動を開始する。検査装置10は、例えば、ユーザによりポール102aを介してその位置が動かされ、検体に接触された状態で叩打を行う。また、上述の例では、検査装置10aの本体101a(又は保持体110a)の姿勢は、プロペラ105a及びセンサ108aにより制御される。
【0061】
ステップS103において、検査装置10は、ステップS102で実施された検体の叩打により生じた打音を検出する。打音は、例えば、上述した検体の叩打により生じた衝撃反力、反響音周波数、又は固有振動数のデータをセンサにより取得することで検出される。
【0062】
ステップS104において、検査装置10は、ステップS103で検出された打音のデータを記憶部(例えば、記憶部503)に記憶する。さらに、ステップS105において、検査装置10は、ステップS103で検出された打音のデータを分析装置20に送信する。
【0063】
ステップS106において、分析装置20は、検査装置10から受信した打音データを分析し、検体の状態を特定する。詳細には、検体の状態が良好であるとき(例えば、損傷がないとき)についての打音データ(以下、「基準打音データ」とも称する。)を分析装置20に予め記憶しておき、基準打音データと、検査装置10から受信した打音データとを比較することによって、検体の状態を判断することができる。例えば、基準打音データと、検査装置10から受信した打音データとの間に差異がある場合、検体に損傷があると判断してもよい。また、基準打音データと、検査装置10から受信した打音データとの間の差異がある場合であっても、その差異が小さい(例えば、10%未満である)ときは、検体の状態は良好であると判断し、その差異が大きい(例えば、10%以上である)ときは、検体に損傷があると判断してもよい。
【0064】
検体の状態を機械学習やディープラーニングなどのAI(人工知能)により判断してもよい。例えば、検体の打音データ(例えば、衝撃反力、反響音周波数、又は固有振動数のデータの少なくとも一つ)を入力(説明変数)、検体の状態(例えば、検体の状態が良好である、又は損傷がある)を出力(目的変数)として、入力と出力との間の因果関係を学習し、学習済みモデルを構築する。分析装置20は、当該学習済みモデルを使用して、検査装置10から受信した打音データに基づいて、検体の状態(損傷の有無)を判断することができる。学習済みモデルの構築は、分析装置20が行ってもよいし、分析装置は、他の装置で構築された学習済みモデルのデータを記憶部に記憶してもよい。
【0065】
ステップS107において、分析装置20は、ステップS106の分析の結果を端末装置30へ送信する。ステップS108において、端末装置30は、分析装置20から受信した分析結果を端末装置30の表示部に表示する。
【0066】
検体に損傷があることを分析結果が示した場合、ユーザは、検査装置10を操作して、検体における損傷個所に、例えば、マーカ103aにより印をつけてもよい。
【0067】
以上のように本実施形態に係る状態検査システム1によれば、検体の高所における状態を検査する場合であっても、足場の組み立て、解体、ゴンドラの設置、又は交通規制の申請などを必要とせずに、検査を実施可能である。そのため、検体の状態の調査を低コストで効率的に実施することが可能である。
【0068】
本実施形態において、検査装置10が打音データを取得し、分析装置20が打音データを分析することにより、検体の状態を特定しているが、これに限定されない。変形例として、検査装置10が打音データを分析し、検体の状態を特定してもよい。または、検査装置10から打音データを取得した端末装置30が打音データを分析し、検体の状態を特定してもよい。
【0069】
[変形例]
本実施形態における状態検査システム1、検査装置10、分析装置20、又は端末装置30を実装するためのプログラムは、CD-ROM等の光学ディスク、磁気ディスク、半導体メモリなどの各種の記録媒体を通じて、又は通信ネットワークなどを介してダウンロードすることにより、コンピュータにインストール又はロードすることができる。
【0070】
本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。
【符号の説明】
【0071】
1 状態検査システム
10 検査装置
20 分析装置
30 端末装置
101 本体
102 ポール
103 マーカ
104 打音検査装置
105 プロペラ
106 カメラ
107 回転機構
108 センサ
109 制御装置
110 保持体