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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007758
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】磁性流体、動作機構および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/91 20060101AFI20220105BHJP
   H01F 1/44 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
G01N21/91 B
H01F1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110881
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】319003611
【氏名又は名称】株式会社フェローテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】根本 孝二
(72)【発明者】
【氏名】石出 圭一
(72)【発明者】
【氏名】廣田 泰丈
【テーマコード(参考)】
2G051
5E041
【Fターム(参考)】
2G051AB04
2G051AB06
2G051AB07
2G051BA05
2G051GB02
2G051GC18
2G051GE01
5E041AB11
5E041BB06
5E041BD07
5E041CA10
5E041NN02
5E041NN04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】意図する色の外観とすることができる磁性流体を提供する。
【解決手段】磁性流体は、光透過性のオイル系の材料からなる分散媒と、分散媒中に分散された磁性粒子と、分散媒中に分散された蛍光染料と、からなる。分散媒に分散される磁性流体および蛍光染料は、それぞれ磁性流体中に10%以上の濃度、1%以上の濃度で分散されている。例えば、磁性粒子は10~20%の濃度で分散させ、蛍光染料は1%以上の濃度で分散させたものとすればよい。また、磁性粒子を20%超40%未満の濃度で分散させ、蛍光染料を2%以上の濃度で分散させたものとしてもよい。また、磁性粒子を40%以上の濃度で分散させ、蛍光染料を5%以上の濃度で分散させたものとしてもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒と、
前記分散媒中に分散された磁性粒子と、
前記分散媒中に分散された蛍光染料と、からなり、
前記蛍光染料は、1%以上の濃度で分散されている、
磁性流体。
【請求項2】
前記磁性粒子は、10%~20%の濃度で分散されている、
請求項1に記載の磁性流体。
【請求項3】
前記磁性粒子は、20%超40%未満の濃度で分散されており、
前記蛍光染料は、2%以上の濃度で分散されている、
請求項1に記載の磁性流体。
【請求項4】
前記磁性粒子は、40%以上の濃度で分散されており、
前記蛍光染料は、5%以上の濃度で分散されている、
請求項1に記載の磁性流体。
【請求項5】
筒状または柱状の躯体と、該躯体における筒状の内周面に沿うまたは柱状を取り囲むように配置された柱状または筒状の動作部と、前記躯体および前記動作部の間に介在する磁性流体と、からなり、該磁性流体を介して前記躯体から前記動作部に至る磁気回路が形成される動作機構であって、
前記磁性流体として請求項1から4のいずれか一項に記載された磁性流体が用いられている、
ことを特徴とする動作機構。
【請求項6】
板状の検査対象物における表裏いずれか一方の面に規定された被検査領域に、請求項1から4のいずれか一項に記載された磁性流体を滞留させる滞留手順と、
前記検査対象物における表裏いずれか他方の面のうち、前記被検査領域に対応する領域である対応領域に磁石を接近させることにより、前記被検査領域から前記対応領域に向けて前記磁性流体を引き付ける引付手順と、
前記検査対象物における前記対応領域に紫外線を照射することにより、前記検査対象物を表裏方向に貫通する隙間が形成されている場合に、該隙間から前記対応領域にまで引き付けられた前記磁性流体を識別可能に発光させる識別発光手順と、
を備える検査方法。
【請求項7】
板状の検査対象物における表裏いずれか一方の面に規定された被検査領域に、請求項1から4のいずれか一項に記載された磁性流体を滞留させる滞留手順と、
前記検査対象物における表裏いずれか他方の面のうち、前記被検査領域に対応する領域である対応領域に磁石を接近させることにより、前記被検査領域から前記対応領域に向けて前記磁性流体を引き付ける引付手順と、
前記検査対象物における前記被検査領域に紫外線を照射することにより、該被検査領域に凹部が形成されている場合に、該凹部内にまで引き付けられた前記磁性流体を識別可能に発光させる識別発光手順と、
を備える検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散媒中に磁性粒子を分散させてなる磁性流体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁性流体は、オイル系や水系の材料からなる光透過性の分散媒中に、黒色の磁性体粒子が所定の濃度で分散されていることから、それ自体は黒色の外観を呈するものとなっている。この種の磁性流体としては、緑色や青色の顔料を添加することで劣化による変色を防止することなども提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開04-335502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した磁性流体では、顔料の添加により黒色からの変色を防止しているが、これは、顔料を添加しても、顔料とは異なる黒色が維持される結果になるという点で、磁性流体を意図する色の外観とすることの難しさを示唆している。磁性流体を意図する色の外観とすることができれば、磁性流体のディスプレイとしての用途に適用する道が拓かれるものの、そのような外観の磁性流体とすることは実現できていない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、意図する色の外観とすることができる磁性流体を提供し、ディスプレイとしての用途に適用する道を拓くことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1局面は、分散媒と、前記分散媒中に分散された磁性粒子と、前記分散媒中に分散された蛍光染料と、からなり、前記蛍光染料は、1%以上の濃度で分散されている、磁性流体である。
【0007】
また、この局面では、以下に示す第2局面、第3局面または第4局面のようにしてもよい。
第2局面において、前記磁性粒子は、10%~20%の濃度で分散されている。
【0008】
第3局面において、前記磁性粒子は、20%超40%未満の濃度で分散されており、前記蛍光染料は、2%以上の濃度で分散されている。
【0009】
第4局面において、前記磁性粒子は、40%以上の濃度で分散されており、前記蛍光染料は、5%以上の濃度で分散されている。
【0010】
本願出願人は、磁性流体を意図的な色からなる外観とするために、磁性流体を紫外線により発光させることに着目して開発を進めた結果、磁性流体中に所定濃度で蛍光染料を分散させることで、蛍光染料の特性に応じた色で紫外線を受けて発光することを見出している。ここで、磁性流体における磁性粒子の濃度が高いと、紫外線が蛍光染料に到達しにくくなることに加え、紫外線により発光した光が磁性流体の外部に到達しにくくなることから、磁性粒子の濃度に応じて蛍光染料の濃度を高めることが視認可能に発光させるために有効であることも見出している。
【0011】
そのため、上記各局面における磁性流体であれば、蛍光染料として意図する色のものを採用することで、紫外線を受けて意図する色で発光する磁性流体とすることができる。こうして、磁性流体を意図する色の外観とすることができれば、磁性流体のディスプレイとしての用途に適用する道を拓くことができる。
【0012】
また、上記課題を解決するための第5局面は、筒状または柱状の躯体と、該躯体における筒状の内周面に沿うまたは柱状を取り囲むように配置された柱状または筒状の動作部と、前記躯体および前記動作部の間に介在する磁性流体と、からなり、該磁性流体を介して前記躯体から前記動作部に至る磁気回路が形成される動作機構であって、前記磁性流体として上記いずれか局面の磁性流体が用いられている、ことを特徴とする動作機構である。
【0013】
この局面に係る動作機構であれば、躯体と動作部との間に介在する磁性流体に紫外線を照射して発光させることにより、その動作状態や磁性流体が適切に介在しているか否かを意図する色で識別可能に確認することができるようになる。こうして、動作機構の動作状態や磁性流体が適切に介在しているか否かを識別可能に表示する、といったディスプレイとしての用途に磁性流体を適用することができる。
【0014】
また、上記課題を解決するための第6局面は、板状の検査対象物における表裏いずれか一方の面に規定された被検査領域に、第1から第4のいずれか局面における磁性流体を滞留させる滞留手順と、前記検査対象物における表裏いずれか他方の面のうち、前記被検査領域に対応する領域である対応領域に磁石を接近させることにより、前記被検査領域から前記対応領域に向けて前記磁性流体を引き付ける引付手順と、前記検査対象物における前記対応領域に紫外線を照射することにより、前記検査対象物を表裏方向に貫通する隙間が形成されている場合に、該隙間から前記対応領域にまで引き付けられた前記磁性流体を識別可能に発光させる識別発光手順と、を備える検査方法である。
【0015】
また、上記課題を解決するための第7局面は、板状の検査対象物における表裏いずれか一方の面に規定された被検査領域に、第1から第4のいずれか局面における磁性流体を滞留させる滞留手順と、前記検査対象物における表裏いずれか他方の面のうち、前記被検査領域に対応する領域である対応領域に磁石を接近させることにより、前記被検査領域から前記対応領域に向けて前記磁性流体を引き付ける引付手順と、前記検査対象物における前記被検査領域に紫外線を照射することにより、該被検査領域に凹部が形成されている場合に、該凹部内にまで引き付けられた前記磁性流体を識別可能に発光させる識別発光手順と、を備える検査方法である。
【0016】
これら局面に係る検査方法であれば、被検査領域に引き付けられた磁性流体に紫外線を照射して発光させることにより、ここに隙間や溝が形成されてしまっている場合に、その内部にまで到達させた磁性流体を意図する色により識別可能に確認することができるようになる。こうして、動作機構の動作状態や磁性流体が適切に介在しているか否かを識別可能に表示する、といったディスプレイとしての用途に磁性流体を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1A】動作機構を示す断面図(1)
図1B】動作機構を示す断面図(2)
図1C】動作機構を示す断面図(3)
図2】動作機構であるスピーカの構造を示す断面図
図3】動作機構であるフォーカス機構の構造を示す断面図
図4】動作機構であるモータの構造を示す断面図
図5】検査方法の手順を示す検査対象物の断面図(1)
図6】検査方法の手順を示す検査対象物の断面図(2)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
(1)全体構成
【0019】
磁性流体は、光透過性のオイル系の材料からなる分散媒と、分散媒中に分散された磁性粒子と、分散媒中に分散された蛍光染料と、からなる。なお、分散媒には水系の材料からなるものを用いてもよい。
【0020】
分散媒には、極性キャリア液体として区分される分散媒として、例えば、水溶液類である水、アルコール類、グリコール類、エーテル・ケトン類など、極性有機溶剤類である塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリルなど、エステル系油類であるジエステル、ポリオールエステル、コンプレックスエステルなど、樹脂・プラスチック系単量体・ダイマーである塩化ビニルモノマー、エポキシモノマー、アクリルモノマーなどを採用することができる。また、無極性キャリア液体として区分される分散媒として、炭化水素系溶剤類であるケロシン、ヘプタンなど、炭化水素芳香族系溶剤類であるトルエン、キシレン、スチレンなど、非極性有機溶剤類であるクロロホルム、酢酸エチル、ジエチルエーテルなど、炭化水素系油類であるポリαオレフィン、アルキルナフタレン、ポリエーテルなど、フッ素系溶剤・潤滑剤類であるPFPE、HFCなど、樹脂・プラスチック系単量体・ダイマーであるエチレン、プロピレンなど、シリコーンオイルであるジアルキルシリコーンなどを採用することができる。
【0021】
磁性粒子は、分散媒中に複数が分散され、それぞれの表面が界面活性剤で覆われている。この磁性粒子は、酸化鉄系の粒子が用いられているが、その他、フェロ磁性を示す粒子、反フェロ磁性を示す粒子、常磁性または超常磁性を示す粒子のうちの1種類以上の粒子からなるもの、より具体的には、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、カルボニル鉄、鉄合金、酸化鉄、窒化鉄、炭化鉄、低炭素鋼、希土類、これらの混合物、または、これら1種類以上の合金を材料とするものを用いることもできる。
【0022】
蛍光染料は、所望の色で発光する材料からなるものであり、例えば、セントラルテクノ株式会社製のE-420(赤色系の蛍光染料)や、Tracer Products, a Division of Spintronics Corporation製のTP-3400(緑色系の蛍光染料)などを採用することが考えられる。
【0023】
分散媒に分散される磁性粒子および蛍光染料は、それぞれ磁性流体中に10%以上の濃度、1%以上の濃度で分散されている。
【0024】
例えば、磁性粒子は10~20%の濃度で分散させ、蛍光染料は1%以上の濃度で分散させたものとすればよい。また、磁性粒子を20%超40%未満の濃度で分散させ、蛍光染料を2%以上の濃度で分散させたものとしてもよい。また、磁性粒子を40%以上の濃度で分散させ、蛍光染料を5%以上の濃度で分散させたものとしてもよい。
【0025】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
【0026】
(2)評価試験
本願出願人は、本発明の磁性流体を評価すべく、磁性粒子および蛍光染料の濃度を異ならせた複数の磁性流体それぞれが紫外線を受けて発光するか否かを試験した。
【0027】
まず、評価対象の磁性流体として、磁性粒子および蛍光染料の濃度を異ならせた複数の磁性流体を作製した。ここでは、赤色系の蛍光染料(セントラルテクノ株式会社製のE-420)、および、緑色系の蛍光染料(Tracer Products, a Division of Spintronics Corporation製のTP-3400)それぞれについて、表1に示すように、磁性粒子の濃度が10%、20%、30%、40%それぞれとなり、蛍光染料の濃度が1%、2%、5%、10%、20%それぞれとなるよう、蛍光染料、磁性粒子および分散媒の重量(g)を調整して合計40種類(赤色系の蛍光染料20種類、緑色系の蛍光染料20種類)の磁性流体を作製している。各磁性流体は5gずつ作製した。
【表1】
【0028】
なお、各磁性流体の飽和磁化は、磁性粒子の濃度および蛍光染料の濃度に応じて以下のようになるよう調製している。具体的な飽和磁化の値は、表2、表3に示す。
【0029】
磁性粒子の濃度10%:7.2mT~7.8mT
磁性粒子の濃度20%:15.8mT~17.2mT
磁性粒子の濃度30%:26.6mT~28.7mT
磁性粒子の濃度40%:40.0mT~44.5mT
【表2】
【0030】
【表3】
【0031】
上記のように作製した磁性流体に対しては、それぞれを暗室内に設置したアルミシャーレ上に所定量(具体的には10μL)だけ滴下し、ここに紫外線を照射することにより、紫外線を受けて発光したか否かを官能的に評価する試験を実施した。
【0032】
少なくともアルミシャーレにおいて磁性流体が滴下される表面領域には、株式会社フロロテクノロジーのフロロサーフFS-1610TH-2.0を用いてフッ素コーディングを施している。
【0033】
また、紫外線は、アルミシャーレにおいて磁性流体が滴下された領域の11cm上方から紫外線ランプにて照射した。紫外線ランプには、株式会社井内盛栄堂製Iuchi Handy UV Lump LUV-16(UV波長365nm、距離50mmで1820μW/cm2)を用いている。
【0034】
そして、紫外線を受けて発光したか否かは、被験者5名が確認し、以下の評価基準で評価した。その結果を表4に示す。
【0035】
評価「A」 紫外線を照射した時点で発光状態が視認できた
評価「B」 紫外線を照射して5秒以内に発光状態が視認できた
評価「C」 紫外線を照射して5秒以内に発光状態が視認できなかった
【表4】
【0036】
なお、これら評価基準のうち、評価「A」「B」は、紫外線を受けて発光したことが確認されたものとし、評価「C」は、紫外線を受けても発光しなかったことが確認されたものとした。
【0037】
この試験結果について、表5に示すように、発光を確認した人数で整理し、その数が過半数(3人以上)となった磁性流体を「紫外線を受けて視認可能に発光する」もの規定すると、上記評価試験からは以下の事項が確認できる。
【表5】
【0038】
・蛍光染料が1%以上の濃度で分散されていれば、磁性流体が紫外線を受けて視認可能に
発光する
【0039】
・蛍光染料が1%以上の濃度で分散された磁性流体は、磁性粒子が10%~20%の濃度で分散されていることが望ましい(被験者全員が発光を確認しているため)
【0040】
・磁性粒子が20%超40%未満の濃度(評価試験では30%の濃度)で分散された磁性流体は、蛍光染料が2%以上の濃度で分散されていることが望ましい(被験者全員が発光を確認しているため)
【0041】
・磁性粒子が40%以上の濃度で分散されている磁性流体は、蛍光染料が分散媒中に5%以上の濃度で分散されていることが望ましい(被験者全員が発光を確認しているため)
【0042】
(3)動作機構への適用
上述した磁性流体は、筒状または柱状の躯体と、躯体における筒状の内周面に沿うまたは柱状を取り囲むように配置された柱状または筒状の動作部と、からなる動作機構に適用することができる。
【0043】
具体的には、図1に示すように、筒状の躯体10と、躯体10の外周面を取り囲んだ(図1A,C)または躯体10における筒状の内周面に沿った(図1B,C)状態で躯体10を基準として筒状の長さ方向(図1における上下方向)に沿って所定範囲で往復動作可能な動作部20と、躯体10および動作部20の間に介在する磁性流体30と、からなり、磁性流体30を介して躯体10から動作部20に至る磁気回路が形成される、といった構成の動作機構1である。磁気回路は、躯体10側または動作部20側に配置される磁石により形成される。
【0044】
より具体的な例として、例えば、図2に示すように、本発明の動作機構1をスピーカ2に適用し、躯体10として、柱状のセンターポール11と、センターポール11の下方および側方を包囲するヨーク13と、センターポール11の下方とヨーク13との間に配置された磁石15と、を有するものとし、センターポール11における外周面に沿って動作部20であるボイスコイルを配置した構成が考えられる。
【0045】
また、図3に示すように、本発明の動作機構1をカメラのフォーカス機構3に適用し、躯体10として、筒状のヨーク13と、ヨーク13における筒状の内周面に沿って配置された磁石15と、を有するものとし、ヨーク13の内周面に沿うようにして動作部20であるレンズ群(を保持するケース)を配置した構成とすることも考えられる。
【0046】
また、図4に示すように、本発明の動作機構1をモータ4に適用し、躯体10として、上下方向に貫通する孔が形成された2枚の板材17と、この板材17の孔を取り囲むように板材17間に配置された磁石15と、を有するものとし、板材17の孔を上下方向に貫通した位置関係で回転する柱状の動作部20である軸体を配置した構成とすることも考えられる。
【0047】
その他、記録ディスク読取用のピックアップ、洗濯機の洗濯槽、車両の車輪などにおけるダンパー機構など、躯体と動作部と支持部材とを有する他の動作機構にも適用できることはいうまでもない。
【0048】
(3)検査方法への適用
上述した磁性流体は、板状の検査対象物に、表裏方向に貫通する隙間(ピンホール、クラックなど)や凹部(引っかき傷や凸凹状の溝など)の有無を検査する検査方法に適用することができる。
【0049】
具体的には、隙間の有無を検査する方法として、例えば、図5に示すように、板状の検査対象物100における表裏いずれか一方の面に規定された被検査領域110に上述した磁性流体120を滞留させる滞留手順と、表裏いずれか他方の面において被検査領域110に対応する対応領域130に磁石140を接近させて検査領域110に磁性流体120を引き付ける引付手順と、検査対象物100における対応領域130に紫外線を照射して磁性流体120を識別可能に発光させる識別発光手順と、を備えた検査方法とすることが考えられる。
【0050】
これら手順のうち、滞留手順では、検査対象物100において隙間150の有無を検査するために被検査領域110を規定したうえで、この被検査領域110に沿って滞留するように磁性流体120を載せる。また、引付手順では、対応領域130に磁石140を接近させることにより、被検査領域110から対応領域130に向けて磁性流体120を引き付ける(同図における矢印参照)。また、識別発光手順では、検査対象物100における対応領域130に紫外線を照射することにより、検査対象物100を表裏方向に貫通する隙間150が形成されている場合に、この隙間150から対応領域130にまで引き付けられた磁性流体120を識別可能に発光させる。
【0051】
また、凹部の有無を検査する方法として、図6に示すように、上記と同様の滞留手順および引付手順に加え、識別発光手順として、検査対象物100における被検査領域110に紫外線を照射して磁性流体120を識別可能に発光させる、といった検査方法とすることが考えられる。また、識別発光手順では、検査対象物100における被検査領域110に紫外線を照射することにより、被検査領域110に凹部160が形成されている場合に、この凹部160内にまで引き付けられた磁性流体120と、凹部160周辺に滞留する磁性流体120との発光状態の違いによって、この凹部160内にまで引き付けられた磁性流体120を識別可能となる。
【0052】
上記各検査方法のうち、識別発光手順における紫外線の照射は、上述したのと同様の紫外線ランプを用いることが考えられる。また、識別発光手順における「識別」は、検査者が視覚的に確認するものであってもよいし、画像処理により識別するものであってもよい。
【0053】
(4)作用,効果
本願出願人は、磁性流体を意図的な色からなる外観とするために、磁性流体を紫外線により発光させることに着目して開発を進めた結果、上記のように、磁性流体中に所定濃度で蛍光染料を分散させることで、蛍光染料の特性に応じた色で紫外線を受けて発光することを見出した。その過程では、磁性流体における磁性粒子の濃度が高いと、紫外線が蛍光染料に到達しにくくなることに加え、紫外線により発光した光が磁性流体の外部に到達しにくくなることから、磁性粒子の濃度に応じて蛍光染料の濃度を高めることが視認可能に発光させるために有効であることも見出されている。
【0054】
そのため、上記磁性流体であれば、蛍光染料として意図する色のものを採用することで、紫外線を受けて意図する色で発光する磁性流体とすることができる。こうして、磁性流体を意図する色の外観とすることができれば、磁性流体のディスプレイとしての用途に適用する道を拓くことができる。
【0055】
また、上記動作機構1では、躯体10と動作部20との間に介在する磁性流体30に紫外線を照射して発光させることにより、その動作状態や磁性流体が適切に介在しているか否かを意図する色で識別可能に確認(または画像として確認するための処理を実施)することができるようになる。こうして、動作機構の動作状態や磁性流体が適切に介在してい
るか否かを識別可能に表示する、といったディスプレイとしての用途に磁性流体を適用することができる。
【0056】
また、上記検査方法であれば、被検査領域110に引き付けられた磁性流体120に紫外線を照射して発光させることにより、ここに隙間150や凹部160が形成されてしまっている場合に、その内部にまで到達させた磁性流体120(図5図6における矢印参照)を意図する色により識別可能に確認することができるようになる。こうして、動作機構の動作状態や磁性流体が適切に介在しているか否かを識別可能に表示する、といったディスプレイとしての用途に磁性流体120を適用することができる。
【0057】
また、上記検査方法における引付手順では、磁石140により被検査領域110に磁性流体120を引き付けることができるため、ここに形成されている隙間150や凹部160の内部に積極的に磁性流体を移動させることにより、検査自体に要する時間を短縮することが可能となる。これは、隙間150や凹部160が検査対象物100の厚さ方向に長いまたは深いほど顕著な効果となる。
【符号の説明】
【0058】
1…動作機構、2…スピーカ、3…フォーカス機構、4…モータ、10…躯体、11…センターポール、13…ヨーク、15…磁石、17…板材、20…動作部、30…磁性流体、100…検査対象物、110…被検査領域、120…磁性流体、130…対応領域、140…磁石、150…隙間、160…凹部。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6