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  • 特開-塗布膜の乾燥装置及び乾燥方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077626
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】塗布膜の乾燥装置及び乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
F26B13/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188510
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】314017635
【氏名又は名称】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕希
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC48
3L113AC52
3L113AC53
3L113AC65
3L113BA28
3L113CA07
3L113CB24
3L113DA11
(57)【要約】
【課題】隣接する乾燥炉間の気流を自動的に調節し、塗布膜の乾燥工程における面性不良を抑制できる乾燥装置を提供する。
【解決手段】所定の搬送方向に搬送される基材上の塗布膜を乾燥させる乾燥装置であって、搬送方向に沿って配置され、内部を通過する基材を加熱することにより塗布膜を乾燥させる複数の乾燥炉と、隣接する一対の乾燥炉毎に設けられ、隣接する乾燥炉間を流れる気流の風速を検出するセンサと、センサの検出値に基づいて、複数の乾燥炉の内圧が搬送方向に向かって順に減少し、かつ、隣接する乾燥炉間のいずれにおいても風速vがvLS≦v<vLS+1(v:隣接する乾燥炉間の風速(m/s)、vLS:基材の搬送速度(m/s))を満たすように、各乾燥炉の内圧を制御する制御装置とを備える、乾燥装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送方向に搬送される基材上の塗布膜を乾燥させる乾燥装置であって、
前記搬送方向に沿って配置され、内部を通過する前記基材を加熱することにより前記塗布膜を乾燥させる複数の乾燥炉と、
隣接する一対の前記乾燥炉毎に設けられ、隣接する乾燥炉間を流れる気流の風速を検出するセンサと、
前記センサの検出値に基づいて、前記複数の乾燥炉の内圧が前記搬送方向に向かって順に減少し、かつ、隣接する前記乾燥炉間のいずれにおいても風速vが下記条件を満たすように、各乾燥炉の内圧を制御する制御装置とを備える、乾燥装置。
LS≦v<vLS+1
ここで、
v:隣接する乾燥炉間の風速(m/s)、
LS:基材の搬送速度(m/s)
である。
【請求項2】
前記乾燥炉の各々には、前記乾燥炉内の空気を排気するための排気ダクトが接続され、
前記排気ダクトには、排気ファンと、前記乾燥炉と前記排気ファンとの間における空気の流量を調節する風量調節弁とが設けられており、
前記制御装置は、前記排気ファンの回転数または前記風量調節弁の開度を調節することにより各乾燥炉の内圧を制御する、請求項1に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にウェットコーティングされた塗布膜を乾燥させるための乾燥装置及び乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードコートフィルムや反射防止フィルム等の光学フィルムの製造においては、基材上にウェットコーティングにより塗工液の塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥及び硬化させることによって各種の機能層が形成される。塗布膜を乾燥させる乾燥装置は、一般に、基材の搬送方向に直列に配置された複数の乾燥炉を備える(例えば、特許文献1参照)。乾燥炉への給気温度(炉内温度)、乾燥炉内のノズルから排出される空気の流速、乾燥炉の内圧は、乾燥炉毎に制御される。
【0003】
乾燥工程において、塗布膜上の気流が乱れると、塗布膜の乾燥が不均一となり、乾燥ムラ等の面性不良が発生する。この面性不良を解決する方法として、各乾燥炉の内圧に差を設けて内圧の勾配を形成することで、基材の搬送方向に流れる気流を発生させ、塗布膜状の空気を整流化する方法がある。各乾燥炉の内圧は、給気ファン・排気ファンの回転数や、給気ダクト・排気ダクトに設置されるダンパーの開度により調節することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-68404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、各乾燥炉の内圧は、差圧計で検出される炉内外の差圧が所定の値となるように、手動で調節されていた。しかしながら、設定ミス等により乾燥炉の内圧が本来設定すべき値からずれた場合、隣接する乾燥炉間を流れる気流が発生し、気流の程度によっては塗布膜の面性に影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
それ故に、本発明は、隣接する乾燥炉間の気流を自動的に調節し、塗布膜の乾燥工程における面性不良を抑制できる乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る乾燥装置は、所定の搬送方向に搬送される基材上の塗布膜を乾燥させる乾燥装置であって、搬送方向に沿って配置され、内部を通過する基材を加熱することにより塗布膜を乾燥させる複数の乾燥炉と、隣接する一対の乾燥炉毎に設けられ、隣接する乾燥炉間を流れる気流の風速を検出するセンサと、センサの検出値に基づいて、複数の乾燥炉の内圧が搬送方向に向かって順に減少し、かつ、隣接する乾燥炉間のいずれにおいても風速vが下記条件を満たすように、各乾燥炉の内圧を制御する制御装置とを備える。
LS≦v<vLS+1
ここで、
v:隣接する乾燥炉間の風速(m/s)、
LS:基材の搬送速度(m/s)
である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、隣接する乾燥炉間の気流を自動的に調節し、塗布膜の乾燥工程における面性不良を抑制できる乾燥装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る乾燥装置を模式的に示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施形態に係る乾燥装置を模式的に示すブロック図である。図1において、基材の搬送方向を実線の矢印で示し、ダクト内の空気の流れ方向を破線の矢印で示している。
【0011】
乾燥装置1は、ハードコートフィルムや防眩性フィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムの製造設備の一部を構成し、所定方向に搬送される基材5上にウェットコーティングにより形成された塗布膜を乾燥させる装置である。図1に示す乾燥装置1の上流側(基材5が供給される側)には、少なくとも基材5に塗工液を塗工する塗工装置が配置される。また、塗工装置以外の装置として、基材5の端部同士を継ぎ合わせる接合装置や、基材5を一時的に蓄積して、基材5の継ぎ合わせ時に生じる基材5の供給遅延を吸収するアキュムレータ装置、加熱ロールや熱風を用いて基材5の巻き癖等を矯正するアニール装置、基材5の張力及び塗工装置への供給速度を一定とするインフィード装置等が、製造工程等に応じて乾燥装置1の上流側に適宜設けられる。
【0012】
乾燥装置1は、複数の乾燥炉2a~2dと、複数のセンサ3a~3cとを備える。図1には、乾燥装置1が4台の乾燥炉及び3つのセンサを備える例を示しているが、乾燥炉の数が2以上であり、隣接する乾燥炉毎にセンサが設けられていれば、乾燥炉及びセンサの数は特に限定されない。塗工装置が塗工する塗工液には、紫外線硬化性または熱硬化性の化合物と有機溶剤とが含まれており、乾燥装置1は、基材5に塗布された塗工液中の有機溶剤を揮発させることにより塗布膜を乾燥させる。図示を省略しているが、ガイドロールや搬送ロール等を含む機構により構成される基材の搬送路が、乾燥炉2a~2dの内部をそれぞれ通過するように設けられている。
【0013】
乾燥炉2a~2dは、基材の搬送方向に沿ってこの順に配置される。乾燥炉2a~2dは、例えば、搬送路を取り囲む筒形状を有しており、内部を通過する基材を加熱することにより、基材5上の塗布膜に含まれる溶剤を揮発させる。乾燥炉2a~2dのそれぞれの内部には、加熱された空気を排出するためのノズル10が設けられている。隣接する乾燥炉2a及び2bの間、乾燥炉2b及び2cの間、及び、乾燥炉2c及び2dの間は、搬送路を取り囲む筒形状の連結部(図示せず)により覆われている。
【0014】
センサ3a、3b及び3cは、乾燥炉2a及び2bの間、乾燥炉2b及び2cの間、及び、乾燥炉2c及び2dの間のそれぞれを流れる気流の風速を検出するデバイスである。センサ3a~3cは、直接または間接に風速を取得できるものであれば良く、例えば、風速計や隣接する乾燥炉の内圧の差である差圧を風速に変換できる差圧計(「差圧変換器」と呼ばれる場合もある)を利用できる。
【0015】
制御装置4は、CPU及び記憶装置を有するコンピュータを含み、乾燥装置1に設けられた各種センサの検出値に基づいて、乾燥装置1の各部を制御する。制御装置4が行う制御の詳細は後述する。
【0016】
乾燥炉2a~2dはそれぞれ、乾燥炉に空気を供給するための給気ダクト11と、乾燥炉から空気を排気するための排気ダクト12とに接続されている。図1において、給気ダクト11及び排気ダクト12を太線で示す。
【0017】
給気ダクト11の流路には、上流側から下流側へと順に、給気ファン13、循環ファン14、ヒートソース15及びダンパー16が設けられている。給気ファン13は、給気ダクト11内に空気を送り込むためのファンである。循環ファン14は、給気ファン13から送り込まれた空気を、ヒートソース15を通じて乾燥炉内のノズル10に送り込むためのファンである。ヒートソース15は、循環ファン14から送り込まれた空気を加熱するヒーター18と、ヒーター18によって加熱された空気を濾過するフィルター19とを含む。本実施形態では、ヒーター18は、蒸気制御弁17を介して供給される加熱された水蒸気と、循環ファン14から送り込まれた空気との間で熱交換を行う熱交換器である。ただし、ヒーター18は、循環ファン14から送り込まれた空気を加熱することができるものであれば特に限定されず、例えば電気ヒーターであっても良い。ダンパー16は、ヒートソース15とノズル10との間に設けられ、ヒートソース15からノズル10へ流れる空気の流量を調節する風量調節弁である。更に、ヒートソース15とダンパー16との間には、給気ダクト11内の空気の温度を測定する温度計20が設けられている。温度計20は、ヒートソース15とダンパー16との間のダクト内温度ではなく、乾燥炉内の温度を測定するものであっても良い。
【0018】
排気ダクト12の流路には、上流側から下流側へと順に、ダンパー21、排気ファン22及び23が設けられている。ダンパー21は、乾燥炉と排気ファン22との間に設けられ、乾燥炉から排気ファン22に流れる空気の流量を調節する風量調節弁である。排気ファン22及び23は、乾燥炉から外部に空気を排気するためのファンである。尚、最下流の排気ファン23は、必ずしも必要ではなく、省略することが可能である。
【0019】
また、乾燥装置1には、ノズル10の内外の圧力差を測定する差圧計24と、乾燥炉の内外の圧力差を測定する差圧計25とが設けられている。
【0020】
図1では、図示の簡略化のため、乾燥炉2aに設けられたユニットやセンサ等を符号で特定し、乾燥炉2b~2cについての記載を省略しているが、上述した循環ファン14、ヒートソース15、ダンパー16、温度計20、差圧計24及び25、ダンパー21及び排気ファン22は、乾燥炉2a~2dのそれぞれに対して設けられている。また、循環ファン14及び排気ファン22には、回転数を制御するためのインバーター26及び27が設けられている。図示を省略しているが、給気ファン13及び排気ファン23を制御するためのインバーターが設けられていても良く、制御装置4がインバーターの周波数を変更することにより、給気ファン13及び排気ファン23の回転数を制御しても良い。
【0021】
ここで、制御装置4が行う制御を説明する。図1において、制御装置4と各ユニットを接続する信号線を破線で示す。図1では、図示の簡略化のため、制御装置4と乾燥炉2aに設けられたユニットやセンサ等を接続する信号線のみ図示しているが、乾燥炉2b~2cに設けられたユニットやセンサ等も同様に制御装置4と通信可能に接続されている。
【0022】
制御装置4は、乾燥炉2a~2dに供給する空気の温度を調節する機能と、乾燥炉2a~2d内に供給する空気の風速を調節する機能と、乾燥炉2a~2dの内圧を調節する機能とを少なくとも有する。乾燥炉2a~2dに供給する空気の温度と、乾燥炉2a~2d内に供給する空気の風速と、乾燥炉2a~2dの内圧とは相互に影響するパラメータであるので、以下に説明する制御装置4の制御処理はいずれも、所定の制御サイクルで繰り返し行われる。
【0023】
乾燥炉2a~2dに供給する空気の温度は、典型的には、ヒーター18における交換熱量または発熱量を調節することによって制御することができる。本実施形態では、制御装置4は、温度計20により測定される給気ダクト11内の温度もしくは乾燥炉2a~2d内の温度を取得し、取得した温度が設定温度となるように蒸気制御弁17の開度を調節する。ヒーター18が電気ヒーターである場合は、制御装置4は、電気ヒーターの発熱量を調節する。
【0024】
乾燥炉2a~2d内に供給する空気の風速は、循環ファン14の回転数またはダンパー16の開度を調節することにより制御することができる。制御装置4は、差圧計24によって測定されるノズル10の内外の差圧に基づき、ノズル10から排出される空気の風速(「ノズル風速」という)を算出し、算出したノズル風速が設定風速となるように、循環ファン14の回転数またはダンパー16の開度を調節する。循環ファン14の回転数は、制御装置4がインバーター26の出力電流の周波数を制御することにより調節することができる。
【0025】
乾燥炉2a~2dの内圧は、排気ファン22の回転数またはダンパー21の開度を調節することにより制御することができる。制御装置4は、差圧計25によって測定される乾燥炉2a~2dの内外の差圧を取得し、取得した差圧が設定差圧となるように、排気ファン22の回転数またはダンパー21の開度を調節する。排気ファン22の回転数は、制御装置4がインバーター27の出力電流の周波数を制御することにより調節することができる。この際、制御装置4は、排気ファン22より下流の排気ファン23の回転数も合わせて制御することが好ましい。
【0026】
制御装置4は、乾燥炉2a~2dの内圧を調節する際、乾燥炉2a~2dの内圧が搬送方向に向かって順に減少し、かつ、隣接する乾燥炉2a及び2bの間、乾燥炉2b及び2cの間、及び、乾燥炉2c及び2dの間のいずれにおいても風速vが以下の条件(A)を満たすように、乾燥炉2a~2dのそれぞれの内圧を制御する。
LS≦v<vLS+1 ・・・(A)
ここで、
v:隣接する乾燥炉間の風速(m/s)、
LS:基材の搬送速度(m/s)
である。
【0027】
本実施形態のように4台の乾燥炉2a~2dが設けられる場合、具体的に、以下の条件(1)~(4)を同時に満足するように、制御装置4が内圧の制御を行う。
0>P>P>P>P ・・・(1)
LS≦v1,2<vLS+1 ・・・(2)
LS≦v2,3<vLS+1 ・・・(3)
LS≦v3,4<vLS+1 ・・・(4)
ここで、
、P、P、P:それぞれ、乾燥炉2a、2b、2c、2dの内圧(Pa)、
1,2:乾燥炉2a及び2b間の風速(m/s)、
2,3:乾燥炉2b及び2c間の風速(m/s)、
3,4:乾燥炉2c及び2d間の風速(m/s)
である。
【0028】
乾燥炉2a~2dの内圧P~Pが搬送方向に向かって順に減少するように、すなわち、条件(1)を満たすように内圧P~Pを調節することにより、乾燥炉2a~2d内の搬送路に沿って搬送方向に流れる気流を発生させることができる。この条件を満たさない場合、隣接する乾燥炉間に搬送方向と逆方向に流れる気流(逆流)が生じるため、この逆流により塗布膜の上方の気流が乱れ、乾燥ムラに起因する面性不良が生じる可能性がある。
【0029】
この逆流を防止する条件に加え、隣接する乾燥炉間のいずれにおいてもvLS≦v<vLS+1を満たすように、すなわち、条件(2)~(4)を同時に満たすように内圧P~Pを調節することにより、乾燥炉2a~2d内の搬送路に沿って搬送方向に流れる気流により、基材上の塗布膜の上方の空気を整流化することができ、塗布膜の乾燥を均一化し、乾燥ムラに起因する面性不良を抑制することが可能となる。上記の逆流を防止する条件を満たすが、隣接する乾燥炉間の風速v(v1,2、v2,3、v3,4のいずれも)が上記範囲の下限値を下回る場合、乾燥炉間の内圧差で生じた気流の風速が基材5の搬送速度に対して小さいために、搬送される塗布膜上方の空気の整流化作用が弱まり、塗布膜の乾燥を均一化できず、乾燥ムラに起因する面性不良が生じる可能性がある。また、上記の逆流を防止する条件を満たすが、隣接する乾燥炉間の風速v(v1,2、v2,3、v3,4のいずれも)が上記範囲の上限値以上である場合、乾燥炉間の内圧差により生じた気流自体が塗布膜の表面を乱す要因となり、乾燥ムラに起因する面性不良が生じる可能性がある。
【0030】
隣接する乾燥炉間の風速v(v1,2、v2,3、v3,4のいずれも)が基材5の搬送速度と等しい場合、乾燥炉間の内圧差で生じた気流により塗布膜上方の空気を整流化できることに加え、発生した気流と基材との相対速度差がなくなるため、気流による塗布膜の乱れを低減することが可能となるためより好ましい。
【0031】
尚、搬送装置による基材5の搬送速度vLSは、一般的な製造条件である20~100m/minとすることができる。基材5の搬送速度vLSは、塗工液に含まれる溶剤の種類や形成する機能層の種類に応じて、この範囲内で適宜設定される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態に係る乾燥装置1は、基材5の搬送方向に沿って配置される複数の乾燥炉2a~2dと、隣接する乾燥炉間のそれぞれに設けられる複数のセンサ3a~3cとを備え、制御装置4が複数のセンサ3a~3cの検出値に基づいて、乾燥炉2a~2dの内圧が搬送方向に向かって順に減少し、かつ、隣接する乾燥炉間のいずれにおいても風速vが上記条件(A)を満たすように、乾燥炉2a~2dのそれぞれの内圧を制御する。このような制御装置4を設けたことにより、隣接する乾燥炉間の気流を自動的に調節し、塗布膜の乾燥工程における面性不良を抑制することが可能となる。
【0033】
上記の実施形態では、乾燥装置が4台の乾燥炉を備える例を説明したが、乾燥炉の数は2台であっても、5台以上であっても良い。乾燥装置に設けられる乾燥炉の数にかかわらず、隣接する一対の乾燥炉毎に風速を取得可能なセンサを設け、センサを用いて取得した隣接する乾燥炉間の風速に基づいて、隣接する乾燥炉のそれぞれの内圧を制御すれば良い。すなわち、乾燥炉の数が2台の場合は、隣接する2台の乾燥炉間の風速を取得する1つのセンサを設ければ良く、乾燥炉の数がn台(nは3以上の正の整数)の場合は、隣接する一対の乾燥炉毎に(n-1)個のセンサを設ければ良い。
【0034】
また、制御装置が各乾燥炉の内圧を調整する際、搬送路の最上流に配置される乾燥炉の内圧と(上記例におけるP)、最下流に配置される乾燥炉の内圧(上記例におけるP)をそれぞれ調整した後、調整した内圧に対して、最上流の乾燥炉と最下流の乾燥炉との間に配置される乾燥炉の内圧(上記例におけるP及びP)を順次調整しても良い。最上流の乾燥炉及び最下流の乾燥炉の内圧を先に決めることによって、両者の間の乾燥炉の内圧の調整を効率良く行うことができる。また、最上流の乾燥炉の内圧を調整した後、下流側に向かって残りの乾燥炉の内圧を順に調整しても良いし、逆に、最下流の乾燥炉の内圧を調整した後、上流側に向かって残りの乾燥炉の内圧を順に調整しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、画像表示装置等に用いられる光学フィルムの製造に利用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 乾燥装置
2a、2b、2c、2d 乾燥炉
3a、3b、3c センサ
4 制御装置
5 基材
21 ダンパー
22 排気ファン
図1