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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077663
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】仮設足場用方杖
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/16 20060101AFI20220517BHJP
   E04G 1/14 20060101ALI20220517BHJP
   E04G 7/22 20060101ALI20220517BHJP
   E04G 7/32 20060101ALI20220517BHJP
   F16B 21/02 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
E04G5/16 B
E04G1/14 B
E04G7/22 C
E04G7/32 A
F16B21/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188580
(22)【出願日】2020-11-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】520444535
【氏名又は名称】株式会社辻熔工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝治
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA01
3J037CA01
3J037CA06
(57)【要約】
【課題】支柱および布材への架設作業、特に、布材への取付作業をより簡単にかつ迅速に行うことが可能であり、施工性に優れている仮設足場用方杖を提供する。
【解決手段】仮設足場用方杖6Aは、斜め方向にのびる棒状の方杖本体7と、方杖本体7の上端部に設けられかつ布材3に着脱自在に取り付けられる上部取付金具8Aと、方杖本体7の下端部に設けられかつ支柱2に着脱自在に取り付けられる下部取付金具9とを備えている。上部取付金具8Aは、前後に布材3の外径よりも大きい間隔をおいて配置されかつ布材3に互いに左右反対方向から掛け止められる略C形の前後2つのフック部81を有している。両フック部81は、布材3に下方から接近させられて布材3を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられることにより、布材3に掛け止められるようになっている。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後に間隔をおいて立てられた2本の支柱に布材が水平に架設されている仮設足場において、支柱および布材に斜めに架設される方杖であって、
斜め方向にのびる棒状の方杖本体と、方杖本体の上端部に設けられかつ布材に着脱自在に取り付けられる上部取付金具と、方杖本体の下端部に設けられかつ支柱に着脱自在に取り付けられる下部取付金具とを備えており、
上部取付金具は、前後に布材の外径よりも大きい間隔をおいて配置されかつ布材に互いに左右反対方向から掛け止められる略C形の前後2つのフック部を有しており、
両フック部は、布材に下方から接近させられて布材を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられることにより、布材に掛け止められるようになっている、仮設足場用方杖。
【請求項2】
上部取付金具に、布材に掛け止められた両フック部をアンロック可能にロックするロック手段が設けられている、請求項1記載の仮設足場用方杖。
【請求項3】
上部取付金具のロック手段が、上面に両フック部が立ち上がり状に設けられているベース板部と、両フック部が掛け止められた布材の下部に当接離間しうるようにベース板部に上下移動自在に取り付けられた布材受け部材と、布材受け部材とベース板部との間に挿入されて布材受け部材を布材に当接したロック位置に保持するくさび部材とを有している、請求項2記載の仮設足場用方杖。
【請求項4】
上部取付金具のロック手段が、上面に両フック部が立ち上がり状に設けられているベース板部と、両フック部が掛け止められた布材の下部に当接離間しうるようにベース板部に上下移動自在に取り付けられた布材受け部材と、布材受け部材を上向きに付勢して布材に当接したロック位置に保持する付勢部材とを有している、請求項2記載の仮設足場用方杖。
【請求項5】
上部取付金具のロック手段が、少なくとも一方のフック部の下部の一側面に取り付けられている略下方凸円弧板状のロック金具よりなり、
ロック金具は、その一端部がフック部の内周縁下端よりも下方に位置するとともにその他端部がフック部の内側空間に上向きに突出するアンロック位置と、上側縁が布材の下部に当接させられて布材がフック部から外れるのを阻止しうるロック位置との間で揺動可能となされており、
両フック部が布材を左右両側から挟み込むように配置された状態では、ロック金具がその自重によってアンロック位置に保持され、両フック部が前記状態から水平方向に回転させられると、ロック金具の前記一端部が布材の下部に滑り接触して案内されることにより、ロック金具がロック位置まで揺動させられるようになっている、請求項2記載の仮設足場用方杖。
【請求項6】
両フック部が、布材を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられて同方向に叩き込まれることにより、布材と嵌合しうるような内周縁形状を有している、請求項1記載の仮設足場用方杖。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仮設足場の支柱および布材に斜めに架設して、仮設足場の強度を高めるために用いられる仮設足場用方杖に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばくさび緊結式足場等の仮設足場にあっては、支柱および支柱間に水平に架設された布材よりなる基本構造材に加えて、支柱間に筋交が斜めに架設されたり、支柱および布材に方杖が斜めに架設されたりすることによって、仮設足場全体としての強度を高めることが行われている。
【0003】
ここで、仮設足場に用いられる方杖としては、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。
この方杖は、斜め方向にのびかつ上端部が布材に固定状に連結されている方杖本体と、方杖本体の下端部に支柱に設けられかつ支柱に着脱自在に取り付けられる下部取付金具とを備えているものである。
但し、上記の方杖は、布材と分離不能に一体化されているので、嵩張る上、全体重量も大きくなり、保管や運搬の点で問題があった。
【0004】
また、例えば下記特許文献2に記載の通り、布材とは別体に構成された仮設足場用方杖が知られている。
この方杖(足場構築体の強化装置)は、布材の長さ中間位置と支柱における布材よりも下方の高さ位置との間を結ぶように斜め方向にのびるブレース部材と、ブレース部材の上端部を布材に固定する上部固定手段と、ブレース部材の下端部を支柱に固定する下部固定手段とを備えている。上部固定手段は、布材の下側に位置する支持体と、布材の下面を保持する下顎手段および同上面を保持する上顎手段とを備えており、下顎手段および上顎手段の一方により、前記支持体に固定された固定顎部が構成されると共に、同他方により布材に対して進退自在な可動顎部が構成されている。そして、緊結手段のロック片を、可動顎部と支持体の間に挿入することにより、可動顎部を布材に対して圧接するようになされている。
上記の方杖によれば、布材とは別体に構成されているため、保管や運搬を支障なく行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-124541号公報
【特許文献2】特開2013-194461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、仮設足場の妻側に設けられる布材には、足場板が掛け渡されるようになっているため、布材の側方には、通常数cm程度の隙間をあけて足場板の妻側端部が配置されている。そして、上記特許文献2記載のような布材と別体の方杖は、布材に足場板が掛け渡された状態で、支柱および布材に架設されるのが通常である。
そのため、上記特許文献2記載の方杖では、上部固定手段の上顎手段を、布材と足場板との間の狭い隙間に角度を調整しながら下方から通し、可動顎部を布材と係り合わせられるように移動させた上で、緊結手段のロック片を可動顎部および支持体間に挿入する作業が必要となるので、取付手順が煩雑で、位置決め等も容易でないことから、取付作業性の点で改善の余地があった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、支柱および布材への架設作業、特に、布材への取付作業をより簡単にかつ迅速に行うことが可能であり、施工性に優れている仮設足場用方杖を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
なお、この発明を特定するに当たり、「仮設足場」には、例えばビル等の建物の建設工事現場や改修工事現場において、建物の外壁に沿って設置されるくさび緊結式足場や単管足場などが含まれる他、トンネル・橋梁等の土木工事現場や建築現場において、上方荷重または側方荷重を支えるために用いられる支保工が含まれるものとする。
【0009】
1)前後に間隔をおいて立てられた2本の支柱に布材が水平に架設されている仮設足場において、支柱および布材に斜めに架設される方杖であって、
斜め方向にのびる棒状の方杖本体と、方杖本体の上端部に設けられかつ布材に着脱自在に取り付けられる上部取付金具と、方杖本体の下端部に設けられかつ支柱に着脱自在に取り付けられる下部取付金具とを備えており、
上部取付金具は、前後に布材の外径よりも大きい間隔をおいて配置されかつ布材に互いに左右反対方向から掛け止められる略C形の前後2つのフック部を有しており、
両フック部は、布材に下方から接近させられて布材を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられることにより、布材に掛け止められるようになっている、仮設足場用方杖。
【0010】
2)上部取付金具に、布材に掛け止められた両フック部をアンロック可能にロックするロック手段が設けられている、上記1)の仮設足場用方杖。
【0011】
3)上部取付金具のロック手段が、上面に両フック部が立ち上がり状に設けられているベース板部と、両フック部が掛け止められた布材の下部に当接離間しうるようにベース板部に上下移動自在に取り付けられた布材受け部材と、布材受け部材とベース板部との間に挿入されて布材受け部材を布材に当接したロック位置に保持するくさび部材とを有している、上記2)の仮設足場用方杖。
【0012】
4)上部取付金具のロック手段が、上面に両フック部が立ち上がり状に設けられているベース板部と、両フック部が掛け止められた布材の下部に当接離間しうるようにベース板部に上下移動自在に取り付けられた布材受け部材と、布材受け部材を上向きに付勢して布材に当接したロック位置に保持する付勢部材とを有している、上記2)の仮設足場用方杖。
【0013】
5)上部取付金具のロック手段が、少なくとも一方のフック部の下部の一側面に取り付けられている略下方凸円弧板状のロック金具よりなり、
ロック金具は、その一端部がフック部の内周縁下端よりも下方に位置するとともにその他端部がフック部の内側空間に上向きに突出するアンロック位置と、上側縁が布材の下部に当接させられて布材がフック部から外れるのを阻止しうるロック位置との間で揺動可能となされており、
両フック部が布材を左右両側から挟み込むように配置された状態では、ロック金具がその自重によってアンロック位置に保持され、両フック部が前記状態から水平方向に回転させられると、ロック金具の前記一端部が布材の下部に滑り接触して案内されることにより、ロック金具がロック位置まで揺動させられるようになっている、上記2)の仮設足場用方杖。
【0014】
6)両フック部が、布材を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられて同方向に叩き込まれることにより、布材と強制嵌合しうるような内周縁形状を有している、上記1)の仮設足場用方杖。
【発明の効果】
【0015】
上記1)の仮設足場用方杖によれば、上部取付金具の前後2つのフック部を、布材に下方から接近させて布材を左右両側から挟み込むように配置し、この状態から水平方向に回転させることにより、布材に掛け止めることができるので、上記特許文献2記載の方杖と比べて、布材と足場板の妻側端部との間隔の狭さを気にすることなく、布材への取付作業をより簡単にかつ迅速に行うことが可能となり、優れた施工性が得られる。
【0016】
上記2)の仮設足場用方杖によれば、上部取付金具に設けられたロック手段により、布材に掛け止められた両フック部をアンロック可能にロックすることができるので、布材への上部取付金具の取付状態をより確実に保持することができる。
【0017】
上記3)の仮設足場用方杖にあっては、上部取付金具の両フック部が布材に掛け止められた状態で、布材受け部材とベース板部との間にくさび部材を挿入することにより、布材受け部材が布材に当接したロック位置に保持される。また、くさび部材を布材受け部材とベース板部との間から抜けば、布材受け部材が布材から離間してアンロック状態とすることができる。
したがって、上記3)の方杖によれば、ロック手段による両フック部のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0018】
上記4)の仮設足場用方杖にあっては、例えば、上部取付金具を、その両フック部で布材を左右両側から挟み込むように配置して、布材受け部材を布材の下部に当接させておいてから、付勢部材の付勢力に抗して上向きに外力を加えることにより、布材受け部材がベース板部に近づくように上方に移動させ、この状態から水平方向に回転させると、両フック部が布材に掛け止められるとともに、布材受け部材が付勢部材の付勢力によって布材に当接したロック位置に保持される。また、上部取付金具を布材から取り外す際は、上記と逆の操作を行えばよい。
したがって、上記4)の方杖によれば、ロック手段による両フック部のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0019】
上記5)の仮設足場用方杖にあっては、上部取付金具を、その両フック部で布材を左右両側から挟み込むように配置した状態から水平方向に回転させることにより、両フック部が布材に掛け止められるとともに、ロック金具がロック位置まで揺動させられて、その位置に保持される。また、上部取付金具を布材から取り外す際は、上記と逆の操作を行うことで、ロック金具がアンロック位置まで揺動させられる。
したがって、上記5)の方杖によれば、ロック手段のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0020】
上記6)の仮設足場用方杖によれば、上部取付金具の両フック部を、布材を左右両側から挟み込むように配置した状態から、水平方向に回転させて同方向にハンマー等で叩き込むことにより、両フック部が布材と強制嵌合させられるので、別途ロック手段を設けることなく、単純な構成によって、布材への上部取付金具の取付状態をより確実に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】この発明の第1の実施形態に係る仮設足場用方杖を適用した仮設足場の一部を示す正面図である。
図2】同仮設足場の側面図である。
図3図2のIII部を拡大して示す側面図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6】同方杖の上部取付金具を示すものであって、(a)は右側面図、(b)は背面図、(c)は正面図、(d)は(a)のd-d線に沿う断面図である。
図7】同方杖を支柱および布材に架設する工程を順次示すものであって、(a-1)(b-1)(c-1)は右側面であり、(a-2)(b-2)(c-2)は、(a-1)(b-1)(c-1)の各工程における同方杖の上部取付金具および布材を拡大して示す垂直断面図である。
図8】この発明の第2の実施形態に係る方杖の上部取付金具を示すものであって、(a)は右側面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc-c線に沿う断面図である。
図9】同方杖の布材への取付工程を順次示す部分拡大垂直断面図である。
図10】この発明の第3の実施形態に係る方杖の上部取付金具を示すものであって、(a)は右側面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc-c線に沿う断面図である。
図11】同方杖の布材への取付工程を順次示すものであって、(a-1)(b-1)は同方杖の上部取付金具および布材を拡大して示す垂直断面図であり、(a-2)(b-2)は、(a-1)(b-1)の各工程における右側面図である。
図12】この発明の第4の実施形態に係る方杖の上部取付金具を示すものであって、(a)は右側面図、(b)は背面図、(c)は(a)のc-c線に沿う断面図である。
図13】同方杖の布材への取付工程を順次示す部分拡大垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、この発明の実施形態を図1図13を参照して以下に説明する。
なお、以下の説明において、図1の上下左右を「上下左右」と言い、図2の左を「前」と言い、同右を「後」と言うものとする。
【0023】
<第1の実施形態>
図1図7は、この発明の第1の実施形態を示したものである。この実施形態では、この発明による仮設足場用方杖(6A)を、くさび緊結式足場(仮設足場)(1)の構成部材として適用している。但し、この発明による方杖は、下記のくさび緊結式足場(1)に限らず、例えばソケット金具の種類や配置が異なる他のくさび緊結式足場や単管足場、あるいは、支保工等にも適用可能である。
【0024】
くさび緊結式足場(1)においては、所要の複数本の支柱(2)が、間隔をおいて前後2列にかつ列ごとに左右方向に間隔をおいて立てられている。
各支柱(2)の外表面における前後左右それぞれの側部に、平面より見てコ字形の複数のソケット金具(21)が、上下方向に所定間隔おきに溶接固定されている。
そして、前後に並んだ2つの支柱(2)の所定高さ位置において互いに向かい合う前後側部のソケット金具(21)に、布材(3)の前後両端部に垂下状に設けられたインサート金具(31)が上方から挿入されて係り止められ、それによって両支柱(2)に布材(3)が水平に架設されている。
また、左右に隣り合う2つの布材(3)に、足場板(4)の左右妻側端部に設けられたフック(41)が掛け止められ、それによって両布材(3)に足場板(4)が渡し止められており、この足場板(4)がくさび緊結式足場(1)の作業床を構成している。
左右に隣り合う2つの支柱(2)間における足場板(4)の上方領域には、先行手摺(5)が架設されている(図1参照)。先行手摺(5)は、水平な手摺材(51)と、手摺材(51)の左右各端部に設けられかつ左右2本の支柱(2)の左右方向内側部に設けられたソケット金具(21)に挿入されて係り止められる垂下状のインサート部を有する左右2つの上部固定金具(52)と、基端部が各上部固定金具(52)に前後方向にのびる軸を中心として回動自在に連結されている2本の斜材(53)と、各斜材(53)の先端部に設けられかつ両斜材(53)が両支柱(2)間に互いに交差して架設されるように各支柱(2)の所要高さ位置に着脱自在に取り付けられる2つの下部固定金具(54)とを備えている。2本の斜材(53)は、くさび緊結式足場(1)の強度を高めるための筋交として機能するものである。
【0025】
図2図5に示すように、くさび緊結式足場(1)における前後各支柱(2)と布材(3)との交差部の下側には、この発明の第1の実施形態に係る方杖(6A)が斜めに架設されている。
方杖(6A)は、斜め方向にのびる棒状の方杖本体(7)と、方杖本体(7)の上端部に設けられかつ布材(3)に着脱自在に取り付けられる上部取付金具(8A)と、方杖本体(7)の下端部に設けられかつ支柱(2)に着脱自在に取り付けられる下部取付金具(9)とを備えている。
【0026】
方杖本体(7)は、例えば鋼管等の金属管材によって形成されるが、所要の強度が得られるのであれば、その他の棒状材料によって形成されてもよい。
【0027】
下部取付金具(9)は、側面より見て左右方向外方に開口したコ字形をなし、上下の水平部に垂直貫通状の挿入孔(図示略)を有し、かつ両支柱(2)の左右方向内側部の所定高さ位置のソケット金具(21)に嵌め被せられる金具本体(91)と、金具本体(91)の上下水平部の挿入孔およびソケット金具(21)に上方から挿入されて係り止められるくさび部材(92)とを備えている。金具本体(91)の垂直部に、方杖本体(7)の下端部が、例えば溶接等の固定手段によって固定状に取り付けられている。
なお、下部固定金具は、上記態様には限定されず、その他、例えばクランプ等であっても構わない。
【0028】
図6に詳しく示すように、上部取付金具(8A)は、前後に布材(3)の外径よりも大きい間隔をおいて配置されかつ布材(3)に互いに左右反対方向から掛け止められる略C形の前後2つのフック部(81)を有している。両フック部(81)は、布材(3)に下方から接近させられて布材(3)を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられることにより、布材(3)に掛け止められるようになっている。
上部取付金具(8A)には、布材(3)に掛け止められた両フック部(81)をアンロック可能にロックするロック手段(80A)が設けられている。
ロック手段(80A)は、上面に両フック部(81)が立ち上がり状に設けられているベース板部(82)と、両フック部(81)が掛け止められた布材(3)の下部に当接離間しうるようにベース板部(82)に上下移動自在に取り付けられた布材受け部材(83)と、布材受け部材(83)とベース板部(82)との間に挿入されて布材受け部材(83)を布材(3)に当接したロック位置に保持するくさび部材(84)とを有している。
【0029】
ベース板部(82)は、水平壁部(821)と、水平壁部(821)の左右側縁から下方にのびる左右2つの垂下壁部(822)とを有する横断面略逆U形のものである。
水平壁部(821)の中心には、ピン挿通孔(821a)が形成されている。
2つの垂下壁部(822)どうしの間には、方杖本体(7)の上端部が挿入されており、同上端部が、例えば溶接等の固定手段により両垂下壁部(822)に固定状に取り付けられている。
水平壁部(821)の前後各側縁には、前後各フック部(81)の下端が連なって設けられている。
【0030】
各フック部(81)は、正面より見て略C形の垂直板状のものであって、その内周縁の上端位置から側方位置までの円弧状部分が、布材(3)の外面に係合して掛け止められるようになっている。
【0031】
布材受け部材(83)は、正面より見て略V形の横断面を有する折曲板状のものであって、その上面の左右両傾斜部が布材(3)の外周面下部に当接しうるようになっている。布材受け部材(83)の中心部には、下端部に頭部を有しかつベース板部(82)の水平壁部(821)のピン挿通孔(821a)に下方から緩く挿通された連結ピン(85)の上端部が例えば溶接等によって固定状に取り付けられている。この連結ピン(85)により、布材受け部材(83)がベース板部(82)に上下移動自在に連結されている。
【0032】
くさび部材(84)は、左右方向に長い底壁部(841)と、底壁部(841)の前後側縁から立ち上がった前後2つの側壁部(842)と、底壁部(841)の左右端縁から立ち上がった左右2つの端壁部(843)(844)とを有している。
底壁部(841)の幅中央部には、長さ方向に沿ってのびるスリット孔(841a)が形成されており、同スリット孔(841a)に連結ピン(85)が緩く挿通されている。これにより、くさび部材(84)は、ベース板部(82)の水平壁部(821)と布材受け部材(83)との間を左右方向に移動自在となされている。
前後各側壁部(842)は、左右方向外側端部(図6では右端部)が高くなりかつ左右方向内側端部(図6では左端部)が低くなるように、上端縁の長さの一部が斜めに切り欠かれてテーパ状の案内縁部(842a)を構成している。
くさび部材(84)を左右方向に移動させた際、くさび部材(84)の前後側壁部(842)の案内縁部(842a)が、布材受け部材(83)の下面に滑り接触させられることにより、布材受け部材(83)が上下に移動させられるようになっている。
【0033】
上記ロック手段(80A)による両フック部(81)のロック操作は、例えば以下のようにして行うことができる。すなわち、両フック部(81)が布材(3)に掛け止められた状態において、くさび部材(84)が、その案内縁部(842a)の最下部分で布材受け部材(83)下面を受ける緊結解除位置にある時に、布材受け部材が布材から離間させられた最下位のアンロック位置に保持されている(図7(b-2)参照)。そして、くさび部材(84)を、上記緊結解除位置から左右方向内方(挿入方向)に向かって押し込んで、その案内縁部(842a)の最上部分で布材受け部材(83)下面を受ける緊結位置まで移動させると、布材受け部材(83)が、上記アンロック位置から布材(3)に当接させられる最上位のロック位置まで上昇させられる(図6および図7(b-3)参照)。
一方、上記ロック手段(80A)による両フック部(81)のアンロック操作は、上記ロック操作と逆の操作を行えばよい。
【0034】
次に、図7を参照して、上記方杖(6A)を支柱(2)および布材(3)に架設する手順の一例を説明する。
まず、図7(a-1)(b-1)に示すように、方杖(6A)における上部取付金具(8A)の2つのフック部(81)を、布材(3)に下方から接近させて、布材(3)を左右両側から挟み込むように配置する。
この状態から、両フック部(81)を水平方向に約90°回転させて、両フック部(81)を互いに左右反対方向から布材(3)に掛け止める(図7(a-2)(b-2)参照)。この際、上部取付金具(8A)のくさび部材(84)は緊結解除位置に移動させてあり、布材受け部材(83)は布材(3)の下部から離間したアンロック位置にある。
次に、方杖(6A)をその下部取付金具(9)が支柱(2)に接近するようにスライドさせて、下部取付金具(9)を支柱(2)の所要高さ位置のソケット金具(21)に取り付ける。
最後に、上部取付金具(8A)のくさび部材(84)を緊結位置に向けて押し込む(挿入する)と、布材受け部材(83)がロック位置まで上昇させられて、布材(3)の下部に当接させられる(図7(a-3)(b-3)参照)。
こうして、方杖(6A)が、支柱(2)および布材(3)の交差部の下側に斜めに架設される。
また、架設された方杖(6A)を支柱(2)および布材(3)から取り外す際は、上記と逆の操作を行えばよい。
【0035】
上記第1の実施形態の方杖(6A)によれば、従来の方杖と比べて、布材(3)と足場板(4)の妻側端部との間隔の狭さを気にすることなく、布材(3)への取付作業をより簡単にかつ迅速に行うことが可能となり、優れた施工性が得られる。
また、上記方杖(6A)によれば、上部取付金具(8A)に設けられたロック手段(80A)により、布材(3)に掛け止められた両フック部(81)をアンロック可能にロックすることができるので、布材(3)への上部取付金具(8A)の取付状態をより確実に保持することができる。
さらに、上記方杖(6A)によれば、くさび部材(84)を所要方向(挿入方向と抜き取り方向)にスライドさせるだけで、ロック手段(80A)による両フック部(81)のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0036】
<第2の実施形態>
図8および図9は、この発明の第2の実施形態に係る仮設足場用方杖を示したものである。この実施形態の方杖(6B)は、以下の点を除いて、図1図7に示す第1の実施形態の方杖(6A)と実質的に同一である。
すなわち、この実施形態の方杖(6B)では、上部取付金具(8B)のロック手段(80B)が、くさび部材(84)に代えて、布材受け部材(83X)を上向きに付勢して布材(3)に当接したロック位置に保持する付勢部材(86)を有している。
布材受け部材(83X)は、水平壁部(831)および水平壁部(831)の左右側縁から上方にのびる左右2つの立上り壁部(832)を有する横断面略U形のものである。水平壁部(831)には、連結ピン(85)の上部が緩く挿通される挿通孔が形成されている。連結ピン(85)の上端部には、抜け止め用ナットがねじ嵌められている。そして、両立上り壁部(832)の上端縁により、布材(3)の下部が受けられるようになっている。
付勢部材(86)は、圧縮コイルばねよりなる。圧縮コイルばね(86)は、連結ピン(85)の周囲に緩く嵌められた状態で、ベース板部(82)の水平壁部(821)上面と布材受け部材(83)の水平壁部(831)下面との間に介在されている。なお、付勢部材は、図示のような圧縮コイルばね(86)には限定されず、その他の弾性材料、例えば、板ばね、エラストマー、空気ばね等によって構成することも可能である。
【0037】
次に、図9を参照して、上記方杖(6B)を支柱(2)および布材(3)に架設する工程の一例を説明する。
まず、図9(a)に示すように、方杖(6B)の上部取付金具(8B)の2つのフック部(81)を、布材(3)に下方から接近させて、布材(3)を左右両側から挟み込むように配置する。
次いで、布材受け部材(83X)が布材(3)の下部に当接するようにして、上部取付金具(8B)を押し上げると、圧縮コイルばね(付勢部材)(86)が縮んだ状態となる(図9(b)参照)。
そして、この状態から両フック部(81)を水平方向に約90°回転させると、図9(c)に示すように、両フック部(81)が布材(3)に互いに左右反対方向から掛け止められるとともに、布材受け部材(83X)が、圧縮コイルばね(86)のばね弾性力(付勢力)によって押し上げられ、布材(3)に当接したロック位置に保持される。
その後、方杖(6B)をその下部取付金具(9)が支柱(2)に接近するようにスライドさせて、下部取付金具(9)を支柱(2)の所要高さ位置のソケット金具(21)に取り付ける。
こうして、方杖(6B)が、支柱(2)および布材(3)の交差部の下側に斜めに架設される。
また、架設された方杖(6B)を支柱(2)および布材(3)から取り外す際は、上記と逆の操作を行えばよい。
従って、上記第2の実施形態の仮設足場用方杖(6B)によれば、ロック手段(80B)による両フック部(81)のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0038】
<第3の実施形態>
図10および図11は、この発明の第3の実施形態に係る仮設足場用方杖を示したものである。この実施形態の方杖(6C)は、以下の点を除いて、図1図7に示す第1の実施形態の方杖(6A)と実質的に同一である。
すなわち、この実施形態の方杖(6C)では、上部取付金具(8C)のロック手段(80C)が、布材受け部材(83)およびくさび部材(84)を有しておらず、これらに代えて、少なくとも一方のフック部(81)、好ましくは、図示のように両フック部(81)の下部に、同下部の一側面(図では左右方向外側面)に沿うように取り付けられた略下方凸円弧板状のロック金具(87)を有している。
ロック金具(87)は、その一端部がフック部(81)の内周縁下端よりも下方に位置するとともにその他端部がフック部(81)の内側空間に上向きに突出するアンロック位置と、上側縁が布材(3)の下部に当接させられて布材(3)がフック部(81)から外れるのを阻止しうるロック位置との間で揺動可能となされている。より詳細には、ロック金具(87)の一端部に円弧形スリット孔(871)が形成され、同長さ中央部に直線形スリット孔(872)が形成されているとともに、これらのスリット孔(871)(872)に、フック部(81)の左右方向外側面下部に水平突出状に設けられた前後2つの頭部付きピン(88)が緩く挿通されており、それによって、ロック金具(87)が前記アンロック位置とロック位置との間で揺動可能となされている。
ロック金具(87)は、外力が加えられていない状態では、その自重によってアンロック位置に保持されるようになっている。
【0039】
次に、図11を参照して、上記方杖(6C)を支柱(2)および布材(3)に架設する手順の一例を説明する。
まず、図11(a-1)(b-1)に示すように、方杖(6C)の上部取付金具(8C)の2つのフック部(81)を、布材(3)に下方から接近させて、布材(3)を左右両側から挟み込むように配置する。この状態では、ロック金具(87)は、その自重によってアンロック位置に保持されている。
そして、両フック部(81)を水平方向に約90°回転させると、図11(a-2)(b-2)に示すように、両フック部(81)が布材(3)に互いに左右反対方向から掛け止められるとともに、ロック金具(87)の一端部が布材(3)の下部に滑り接触して案内されることにより、ロック金具(87)がロック位置まで揺動させられる。
その後、方杖(6C)をその下部取付金具(9)が支柱(2)に接近するようにスライドさせて、下部取付金具(9)を支柱(2)の所要高さ位置のソケット金具(21)に取り付ける。
こうして、方杖(6C)が、支柱(2)および布材(3)の交差部の下側に斜めに架設される。
また、架設された方杖(6C)を支柱(2)および布材(3)から取り外す際は、上記と逆の操作を行えばよい。
従って、上記第3の実施形態の仮設足場用方杖(6C)によれば、ロック手段(80C)による両フック部(81)のロック操作およびアンロック操作を簡単に行うことができる。
【0040】
<第4の実施形態>
図12および図13は、この発明の第4の実施形態に係る仮設足場用方杖を示したものである。この実施形態の方杖(6D)は、以下の点を除いて、図1図7に示す第1の実施形態の方杖(6A)と実質的に同一である。
すなわち、この実施形態の方杖(6D)では、上部取付金具(8D)が、布材受け部材(83)およびくさび部材(84)を有しておらず、両フック部(81X)およびベース板部(82)のみで構成されている。
そして、両フック部(81X)が、布材(3)を左右両側から挟み込むように配置された状態から水平方向に回転させられて同方向に叩き込まれることにより、布材(3)と強制嵌合しうるような内周縁形状を有するものとなされている。より詳細には、両フック部(81X)の内周縁の下端位置に、布材(3)の外周面下部と係合させられる上向きの係合凸部(811)が形成されている。
【0041】
次に、図13を参照して、上記方杖(6D)を支柱(2)および布材(3)に架設する手順の一例を説明する。
まず、図13(a)に示すように、方杖(6D)の上部取付金具(8D)の2つのフック部(81X)を、布材(3)に下方から接近させて、布材(3)を左右両側から挟み込むように配置する。
この状態から、両フック部(81X)を水平方向に約90°回転させ、それらの嵌合凸部(811)が布材(3)の外周面下部に当接したところで、例えばハンマーを用いて両フック部(81)を叩き込むと、両フック部(81X)が互いに左右反対方向から布材(3)に掛け止められるとともに、両フック部(81X)が布材(3)に強制嵌合させられて、係合凸部(811)が布材(3)の外周面下部と係合させられる。これにより、両フック部(81X)は、布材(3)から不用意に外れないようになされる。
その後、方杖(6D)をその下部取付金具(9)が支柱(2)に接近するようにスライドさせて、下部取付金具(9)を支柱(2)の所要高さ位置のソケット金具(21)に取り付ける。
こうして、方杖(6D)が、支柱(2)および布材(3)の交差部の下側に斜めに架設される。
また、架設された方杖(6D)を支柱(2)および布材(3)から取り外す際は、上記と逆の操作を行えばよい。
従って、上記第4の実施形態の仮設足場用方杖(6D)によれば、別途ロック手段を設けることなく、単純な構成によって、布材(3)への上部取付金具(8D)の取付状態をより確実に保持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この発明は、仮設足場の強度を高めるために支柱および布材に斜めに架設される仮設足場用方杖として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0043】
(1):くさび緊結式足場(仮設足場)
(2):支柱
(3):布材
(6A)(6B)(6C)(6D):方杖
(7):方杖本体
(8A)(8B)(8C)(8D):上部取付金具
(80A)(80B)(80C):ロック手段
(81)(81X):フック部
(82):ベース板部
(83)(83X):布材受け部材
(84):くさび部材
(86):圧縮コイルばね(付勢部材)
(87):ロック金具
(9):下部取付金具
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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