(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077711
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ガスバリア層形成用組成物、これを用いたガスバリア性フィルム、包装フィルム及び包装袋並びにガスバリア性フィルムの製造方法、包装フィルムの製造方法及び包装袋の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 75/04 20060101AFI20220517BHJP
B32B 27/26 20060101ALI20220517BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20220517BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20220517BHJP
B32B 9/04 20060101ALI20220517BHJP
C08L 101/14 20060101ALI20220517BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220517BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20220517BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20220517BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
C08L75/04
B32B27/26
B32B27/40
B32B9/00 A
B32B9/04
C08L101/14
C08L29/04 D
C08K5/54
C08K7/00
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188672
(22)【出願日】2020-11-12
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(72)【発明者】
【氏名】田中 歩実
(72)【発明者】
【氏名】西川 健
(72)【発明者】
【氏名】福上 美季
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E086AB01
3E086AC07
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3E086BA15
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4J002BE022
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4J002GG02
(57)【要約】
【課題】ガスバリア性フィルムに対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができるガスバリア層形成用組成物、これを用いたガスバリア性フィルム、包装フィルム及び包装袋等を提供すること。
【解決手段】ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)を含有する固形分を含み、ポリウレタン樹脂(A)が、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との反応生成物を含み、固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率が45質量%以上75質量%以下であり、固形分中の前記水溶性高分子(B)の含有率が20質量%以上35質量%以下であり、かつ、固形分中の硬化剤(C)の含有率が5質量%以上20質量%以下であり、固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が2質量%未満である、ガスバリア層形成用組成物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)を含有する固形分を含み、
前記ポリウレタン樹脂(A)が、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との反応生成物を含み、
前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)の含有率が45質量%以上75質量%以下であり、
前記固形分中の前記水溶性高分子(B)の含有率が20質量%以上35質量%以下であり、かつ、
前記固形分中の前記硬化剤(C)の含有率が5質量%以上20質量%以下であり、
前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が2質量%未満である、ガスバリア層形成用組成物。
【請求項2】
前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が0質量%であり、かつ、前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)、前記水溶性高分子(B)及び前記硬化剤(C)の合計含有率が100質量%である、請求項1に記載のガスバリア層形成用組成物。
【請求項3】
前記水溶性高分子(B)がポリビニルアルコール樹脂又はその変性体である請求項1又は2に記載のガスバリア層形成用組成物。
【請求項4】
前記硬化剤(C)がエポキシ基を含有する請求項1~3のいずれか一項に記載のガスバリア層形成用組成物。
【請求項5】
樹脂基材と、前記樹脂基材の一面側に設けられ、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成されるガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルム。
【請求項6】
前記ガスバリア層の厚さが150nm以上800nm以下である、請求項5に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項7】
前記樹脂基材と前記ガスバリア層との間に、無機酸化物を含む無機酸化物層をさらに有する、請求項5又は6に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項8】
前記無機酸化物が酸化ケイ素からなる、請求項7に記載のガスバリア性フィルム。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか一項に記載のガスバリア性フィルムと、
前記ガスバリア性フィルムに積層されるシーラント層とを備える包装フィルム。
【請求項10】
請求項9に記載の包装フィルムを用い、前記シーラント層同士を互いに接合させることによって形成された包装袋。
【請求項11】
樹脂基材と、前記樹脂基材の一面側に設けられるガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルムの製造方法であって、
前記樹脂基材の一面側に、請求項1~4のいずれか一項に記載のガスバリア層形成用組成物を硬化させることにより前記ガスバリア層を形成して前記ガスバリア性フィルムを製造するガスバリア層形成工程を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載のガスバリア性フィルムの製造方法によりガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルム製造工程と、
前記ガスバリア性フィルムにシーラント層を積層させて包装フィルムを得るシーラント層積層工程とを含む。包装フィルムの製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の包装フィルムの製造方法により包装フィルムを製造する包装フィルム製造工程と、
前記包装フィルムを用い、前記シーラント層同士を互いに接合させることによって包装袋を製造する包装フィルム接合工程とを含む、包装袋の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスバリア層形成用組成物、これを用いたガスバリア性フィルム、包装フィルム及び包装袋並びにガスバリア性フィルムの製造方法、包装フィルムの製造方法及び包装袋の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品、医薬品等の包装に用いられる包装袋においては、内容物の変質や腐敗などを抑制し、それらの機能や性質を保持するために、水蒸気、酸素、その他の内容物を変質させる気体の進入を遮断するガスバリア性が要求される。そのため、従来、これら包装袋においてはガスバリア性フィルムが用いられている。
【0003】
ガスバリア性フィルムは一般に、樹脂基材の一面側にガスバリア層を備えており、ガスバリア層は、ガスバリア性の機能を付与しうるガスバリア層形成用組成物を樹脂基材の一面側に塗布し硬化させることによって形成される。
【0004】
このようなガスバリア性フィルムとして、従来より、種々のものが開発されている。
【0005】
例えば、下記特許文献1には、ポリウレタン樹脂、水溶性高分子、無機層状鉱物及びシランカップリング剤からなる固形分を含む組成物をガスバリア層形成用組成物として用いてガスバリア層を形成したガスバリア性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載されたガスバリア性フィルムは、以下の課題を有していた。
【0008】
すなわち、上記特許文献1に記載されたガスバリア性フィルムは、耐虐待性、レトルト処理後のラミネート強度及びブルーム抑制効果を同時に満足させる点で改善の余地を有していた。なお、「耐虐待性」とは、ゲルボフレックス試験(ガスバリア性フィルムにねじれを加えながら圧縮する操作を繰り返し行う試験)を行っても酸素バリア性及び水蒸気バリア性の少なくとも一方の低下を抑制できる特性をいう。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができるガスバリア層形成用組成物、これを用いたガスバリア性フィルム、包装フィルム及び包装袋並びにガスバリア性フィルムの製造方法、包装フィルムの製造方法及び包装袋の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するため研究を重ねた結果、ポリウレタン樹脂、水溶性高分子、及び、シランカップリング剤などの硬化剤を含むガスバリア層形成用組成物において、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を付与するために含有されていた無機層状鉱物の含有率を少なくすることで、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、耐虐待性を付与しつつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することが可能となりうるとともに、ブリードアウトを抑制させることができることに気づいた。そこで、本発明者らは、ポリウレタン樹脂、水溶性高分子及び硬化剤の各含有率をも考慮してさらに鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)を含有する固形分を含み、前記ポリウレタン樹脂(A)が、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との反応生成物を含み、前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)の含有率が45質量%以上75質量%以下であり、前記固形分中の前記水溶性高分子(B)の含有率が20質量%以上35質量%以下であり、かつ、前記固形分中の前記硬化剤(C)の含有率が5質量%以上20質量%以下であり、前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が2質量%未満である、ガスバリア層形成用組成物である。
【0012】
本発明のガスバリア層形成用組成物は、この組成物の硬化体で構成されるガスバリア層を樹脂基材の一面側に有するガスバリア性フィルムに対し、硬化により、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。
【0013】
本発明のガスバリア層形成用組成物によって上記効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推察している。
【0014】
すなわち、ガスバリア層形成用組成物中の硬化剤は、ガスバリア層形成用組成物を硬化させる際に、ガスバリア層に隣接する層と結合し得るとともに、ガスバリア層形成用組成物中のポリウレタン樹脂や水溶性高分子との硬化反応によりネットワークを形成し得ると考えられる。そして、固形分中の無機層状鉱物の含有率を低くすることで、ガスバリア層形成用組成物を硬化させる際に、硬化剤が、ガスバリア層に隣接する層とより結合しやすくなるとともに、ガスバリア層形成用組成物中のポリウレタン樹脂や水溶性高分子との硬化反応がより促進され、ネットワークがより形成されやすくなる。このため、ガスバリア層がそれに隣接する層に十分に密着するとともに、優れた耐虐待性を有することとなる。さらに、硬化剤の含有率が大きくなりすぎないようにすることで、硬化剤を組成物中に保持させておくことが可能となる。その結果、本発明のガスバリア層形成用組成物によって上記効果が得られるのではないかと本発明者らは推察する。
【0015】
上記ガスバリア層形成用組成物においては、前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が0質量%であり、かつ、前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)、前記水溶性高分子(B)及び前記硬化剤(C)の合計含有率が100質量%であることが好ましい。
【0016】
この場合、ガスバリア層形成用組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、レトルト処理後でも、より大きなラミネート強度を付与することができる。
【0017】
上記ガスバリア層形成用組成物においては、前記水溶性高分子(B)がポリビニルアルコール又はその変性体であることが好ましい。
【0018】
この組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対してより優れたガスバリア性を付与することができる。また、この組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対しより優れた柔軟性を付与することができ、より優れた耐虐待性を付与することができる。
【0019】
上記ガスバリア層形成用組成物においては、前記硬化剤(C)がエポキシ基を有することが好ましい。
【0020】
この場合、組成物が、硬化により、より優れた熱水耐性を有することが可能となり、ガスバリア性フィルムに対してレトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与することが可能となる。
【0021】
また、本発明は、樹脂基材と、前記樹脂基材の一面側に設けられ、上述したガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成されるガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルムである。
【0022】
このガスバリア性フィルムによれば、樹脂基材の一面側に設けられるガスバリア層が、ガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成され、ガスバリア層形成用組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。このため、本発明のガスバリア性フィルムは、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。
【0023】
上記ガスバリア性フィルムにおいては、前記ガスバリア層の厚さが150nm以上800nm以下であることが好ましい。
【0024】
この場合、ガスバリア層の厚さが150nm未満である場合に比べて、ガスバリア性フィルムのガスバリア性をより向上させることができる。一方、ガスバリア層の厚さが800nmを超える場合に比べて、ガスバリア性フィルムの柔軟性をより向上させることができ、ガスバリア性フィルムの耐虐待性をより向上させることができる。
【0025】
上記ガスバリア性フィルムが、前記樹脂基材と前記ガスバリア層との間に、無機酸化物を含む無機酸化物層をさらに有し、前記無機酸化物が酸化ケイ素からなる無機酸化物を含むことが好ましい。
【0026】
このガスバリア性フィルムは、より優れた水蒸気バリア性を有することが可能となる。
【0027】
上記ガスバリア性フィルムにおいては、前記無機酸化物が酸化ケイ素からなる無機酸化物を含むことが好ましい。
【0028】
このガスバリア性フィルムは、より一層優れた水蒸気バリア性を有することが可能となる。
【0029】
また、本発明は、上述したガスバリア性フィルムと、前記ガスバリアフィルムに積層されるシーラント層とを備える包装フィルムである。
【0030】
この包装フィルムによれば、ガスバリア性フィルムが、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。このため、ガスバリア性フィルムを有する包装フィルムも、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。また、包装フィルムはシーラント層を有するため、シーラント層同士を接合することで封止を確保し得る包装袋を容易に製造できる。
【0031】
さらに、本発明は、上述した包装フィルムを用い、前記シーラント層同士を互いに接合させることによって形成された包装袋である。
【0032】
この包装袋は、包装フィルムを用い、シーラント層同士を互いに接合させることによって形成されたものであり、包装フィルムが、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルムを有する。このため、本発明の包装袋は、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でもデラミネーション(層間剥離)を抑制することができるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。また、包装袋が、シーラント層を有する包装フィルムを用いて形成されるため、包装袋は、十分な封止性を確保することもできる。
【0033】
また、本発明は、樹脂基材と、前記樹脂基材の一面側に設けられるガスバリア層とを備えるガスバリア性フィルムの製造方法であって、前記樹脂基材の一面側に、上述したガスバリア層形成用組成物を硬化させて前記ガスバリア層を形成して前記ガスバリア性フィルムを製造するガスバリア層形成工程を含む、ガスバリア性フィルムの製造方法である。
【0034】
この製造方法によれば、ガスバリア層形成工程において、樹脂基材の一面側に、上述したガスバリア層形成用組成物を硬化させることによってガスバリア層が形成されてガスバリア性フィルムが製造される。このとき、ガスバリア層形成工程において使用されるガスバリア層形成用組成物は、この組成物の硬化体で構成されるガスバリア層を樹脂基材の一面側に有するガスバリア性フィルムに対し、硬化により、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。このため、本発明の製造方法によれば、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能で、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルムを製造できる。
【0035】
また、本発明は、上述したガスバリア性フィルムの製造方法によりガスバリア性フィルムを製造するガスバリア性フィルム製造工程と、前記ガスバリア性フィルムにシーラント層を積層させて包装フィルムを得るシーラント層積層工程とを含む、包装フィルムの製造方法である。
【0036】
この製造方法によれば、ガスバリア性フィルム製造工程において、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルムを製造できる。このため、シーラント層積層工程において、ガスバリア性フィルムの樹脂基材の一面側に配置されるようにシーラント層を積層させると、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装フィルムを製造することが可能となる。また、製造される包装フィルムはシーラント層を有するため、シーラント層同士を接合することで封止を確保し得る包装袋を容易に製造することが可能となる。
【0037】
さらに、本発明は、上述した包装フィルムの製造方法により包装フィルムを製造する包装フィルム製造工程と、前記包装フィルムを用い、前記シーラント層同士を互いに接合させることによって包装袋を製造する包装フィルム接合工程とを含む、包装袋の製造方法である。
【0038】
この製造方法によれば、包装フィルム製造工程において、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装フィルムを製造することが可能となる。このため、包装フィルム接合工程により、包装フィルムを用い、シーラント層同士を互いに接合させると、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でもデラミネーションを抑制できるとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装袋を製造することが可能となる。また、本発明の製造方法により、シーラント層を有する包装フィルムを用いて包装袋が製造されるため、製造される包装袋は、十分な封止性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができるガスバリア層形成用組成物、これを用いたガスバリア性フィルム、包装フィルム及び包装袋並びにガスバリア性フィルムの製造方法、包装フィルムの製造方法及び包装袋の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】本発明の包装フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図3】本発明の包装袋の一実施形態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0042】
<ガスバリア層形成用組成物>
ガスバリア層形成用組成物は、ポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)を含有する固形分を含む。ここで、ポリウレタン樹脂(A)は、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との反応生成物を含む。そして、固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率が45質量%以上75質量%以下であり、固形分中の水溶性高分子(B)の含有率が20質量%以上35質量%以下であり、かつ、固形分中の硬化剤(C)の含有率が5質量%以上20質量%以下であり、固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が2質量%未満である。
【0043】
本発明のガスバリア層形成用組成物によれば、この組成物の硬化体で構成されるガスバリア層を樹脂基材の一面側に有するガスバリア性フィルムに対し、硬化により、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。
【0044】
以下、上記ガスバリア層形成用組成物について詳細に説明する。
【0045】
(A)ポリウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂は、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との反応生成物を含む。この反応生成物は、別言すると、酸基を含有する酸基含有ポリウレタン樹脂と、アミノ基を有するポリアミン化合物との結合体であって、酸含有ポリウレタン樹脂の酸基と、ポリアミン化合物のアミノ基とによって結合が形成されている結合体で構成される。
【0046】
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基は、ポリウレタン樹脂(A)を構成するポリアミン化合物のアミノ基と結合可能なものであればよく、酸基としては、カルボキシ基及びスルホン酸基等が挙げられる。
【0047】
酸基含有ポリウレタン樹脂としては、例えば環状炭化水素を含む構成単位と、鎖状炭化水素を含む構成単位とを有するものが用いられる。
【0048】
酸基含有ポリウレタン樹脂としては、具体的には、カルボン酸変性ポリウレタン樹脂及びスルホン酸変性ポリウレタン樹脂などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
ポリアミン化合物のアミノ基は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、第3級アミノ基のいずれでもよい。
【0050】
ポリアミン化合物の具体例としては、具体的には、アルキレンジアミン類、ポリアルキレンポリアミン類などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
酸基含有ポリウレタン樹脂の酸基とポリアミン化合物のアミノ基との結合は、イオン結合(例えば、カルボキシ基と第3級アミノ基とのイオン結合等)であってもよく、共有結合(例えば、アミド結合等)であってもよい。
【0052】
ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、特に制限されるものではないが、800~1,000,000であることが好ましい。この場合、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が1,000,000を超える場合に比べて、ガスバリア層形成用組成物の粘度をより低下させることができ、ガスバリア層形成用組成物の塗布が容易となる。また、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量が800未満である場合に比べて、ガスバリア性フィルムに対しより優れたガスバリア性を付与できる。ここで、ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算の値である。
【0053】
ポリウレタン樹脂(A)の数平均分子量は、800~200,000であることがより好ましく、800~100,000であることがさらに好ましい。
【0054】
固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率は45質量%以上75質量%以下である。この場合、固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率が45質量%未満である場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、レトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与することができる。一方、固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率が75質量%を超える場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、より優れた耐虐待性を付与することができる。
【0055】
固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率は47質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましい。
【0056】
固形分中のポリウレタン樹脂(A)の含有率は74質量%以下であることが好ましく、72質量%以下であることがより好ましい。
【0057】
(B)水溶性高分子
水溶性高分子(B)は、水に溶解可能な高分子をいう。
【0058】
水溶性高分子(B)の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、その変性体、及び、ポリアクリル酸などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、水溶性高分子(B)としては、ポリビニルアルコール樹脂又はその変性体が好ましい。この場合、この組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対してより優れたガスバリア性を付与することができる。また、この組成物は、硬化されても、ガスバリア性フィルムに対しより優れた柔軟性を付与することができ、より優れた耐虐待性を付与することができる。
【0059】
水溶性高分子(B)が、ポリビニルアルコール樹脂又はその変性体で構成される場合、水溶性高分子(B)の鹸化度は、特に制限されるものではないが、ガスバリア性フィルム10のガスバリア性を向上させる観点からは、95%以上であることが好ましく、100%であってもよい。
【0060】
水溶性高分子(B)の重合度は、特に制限されるものではないが、ガスバリア性フィルム10のガスバリア性を向上させる観点からは、300以上であることが好ましい。水溶性高分子(B)の重合度は、450~2400が好ましい。
【0061】
固形分中の水溶性高分子(B)の含有率は20質量%以上35質量%以下である。この場合、固形分中の水溶性高分子(B)の含有率が20質量%未満である場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、より優れた耐虐待性を付与することができる。一方、固形分中の水溶性高分子(B)の含有率が35質量%を超える場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、レトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与することができる。
【0062】
固形分中の水溶性高分子(B)の含有率は20質量%以上であることが好ましく、21質量%以上であることがより好ましい。
【0063】
固形分中の水溶性高分子(B)の含有率は34質量%以下であることが好ましく、33質量%以下であることがより好ましい。
【0064】
(C)硬化剤
硬化剤(C)は、ガスバリア層形成用組成物を硬化させることが可能な硬化剤であれば限定されず、特に、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、レトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与する観点からは、硬化剤(C)として、シランカップリング剤を使用することが好ましい。
【0065】
シランカップリング剤としては、例えば下記一般式(1)で表される化合物が挙げられる。
Si(OR1)p(R2)3-pR3 …(1)
上記一般式(2)中、R1はメチル基、エチル基等のアルキル基を示し、R2はアルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基で置換されたアルキル基等の1価の有機基を示し、R3は1価の有機官能基を示し、pは1~3の整数を示す。なお、R1又はR2が複数存在する場合、R1同士又はR2同士は同一でも異なっていてもよい。R3で示される1価の有機官能基としては、ビニル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、又は、イソシアネート基を含有する1価の有機官能基が挙げられる。中でも、1価の有機官能基としては、エポキシ基を含有するものが好ましい。この場合、組成物が、硬化によって、より優れた熱水耐性を有することが可能となり、ガスバリア性フィルムに対してレトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与することが可能となる
【0066】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニル基を持つシランカップリング剤;3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン等のエポキシ基を持つシランカップリング剤;3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン等のメルカプト基を持つシランカップリング剤;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を持つシランカップリング剤;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート基を持つシランカップリング剤が挙げられる。これらのシランカップリング剤は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
固形分中の硬化剤(C)の含有率は5質量%以上20質量%以下である。この場合、固形分中の硬化剤(C)の含有率が5質量%未満である場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対し、レトルト処理後でもより大きなラミネート強度を付与することができる。一方、固形分中の硬化剤(C)の含有率が20質量%を超える場合に比べて、硬化剤(C)がブリードアウトしにくくなり、表面を汚染することが抑制される。
【0068】
固形分中の硬化剤(C)の含有率は5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましい。
【0069】
固形分中の硬化剤(C)の含有率は20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。
【0070】
(D)無機層状鉱物
無機層状鉱物(D)は、単位結晶層が重なって1つの層状粒子を形成している無機化合物をいう。
【0071】
無機層状鉱物(D)としては、例えばフィロケイ酸塩鉱物等の含水ケイ酸塩が挙げられる。含水ケイ酸塩としては、具体的には、ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト等のカオリナイト族粘土鉱物;アンチゴライト、クリソタイル等のアンチゴライト族粘土鉱物;モンモリロナイト、バイデライト等のスメクタイト族粘土鉱物;バーミキュライト等のバーミキュライト族粘土鉱物;合成雲母、白雲母、金雲母等の雲母等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率は2質量%未満である。この場合、固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が2質量%以上である場合に比べて、硬化により、ガスバリア性フィルムに対してより大きなラミネート強度を付与することができる。
【0073】
固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率は好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下である。固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率は0質量%であってもよい。
【0074】
(固形分中のその他の成分)
固形分は、ガスバリア層のガスバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤などの公知の添加剤を必要に応じて含んでもよい。
【0075】
(固形分中の成分の合計含有率)
固形分中のポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)、硬化剤(C)及び無機層状鉱物(D)の合計含有率は特に制限されるものではないが、通常は95質量%以上であり、好ましくは97質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0076】
固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が0質量%である場合、固形分中のポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)の合計含有率は100質量%であることが好ましい。
【0077】
この場合、ガスバリア層形成用組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルムに対してより大きなラミネート強度を付与することができる。
【0078】
(液体)
上記固形分を溶解又は分散させる液体としては、通常、水性媒体が用いられる。水性媒体としては、水、親水性の有機溶剤、またはこれらの混合物が挙げられる。親水性の有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;セロソルブ類;カルビトール類;アセトニトリル等のニトリル類等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
水性媒体としては、水のみからなる水性媒体、又は、水を主成分として含む水性媒体が好ましい。水性媒体が水を主成分として含む場合、水性媒体中の水の含有率は70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
【0080】
<ガスバリア性フィルム>
図1は、本発明のガスバリア性フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図1において、ガスバリア性フィルム10は、樹脂基材1と、樹脂基材1の一面側に設けられるガスバリア層4とを備えており、樹脂基材1とガスバリア層4との間に、樹脂基材1側から順次、下地層2及び無機酸化物層3を備えている。ガスバリア層4は、上述したガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成されている。
【0081】
このガスバリア性フィルム10によれば、樹脂基材1の一面側に設けられるガスバリア層4が、ガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成され、ガスバリア層形成用組成物は、硬化により、ガスバリア性フィルム10に対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。このため、ガスバリア性フィルム10は、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。
【0082】
以下、樹脂基材1、下地層2、無機酸化物層3及びガスバリア層4について詳細に説明する。
【0083】
(樹脂基材)
樹脂基材1は、ガスバリア層4の支持体となる基材であり、樹脂を含む。樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂及び天然高分子化合物(セルロースアセテート等)が挙げられる。これらは単独で又は2種以上の混合物で構成されてもよい。
【0084】
中でも、リサイクルの観点からは、ポリオレフィン樹脂が好ましく用いられる。ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン及びポリプロピレンなどが挙げられるが、レトルト処理耐性の観点からは、ポリプロピレンが好ましい。ここで、ポリプロピレンは、ホモポリプロピレンでもプロピレンコポリマーでもよいが、酸素バリア性の観点からは、樹脂基材1のうち少なくともガスバリア層4側の表層を構成するポリプロピレンはポリプロピレン共重合体であることがより好ましい。
【0085】
樹脂基材1は、延伸フィルムでもよいし、非延伸フィルムでもよいが、酸素バリア性の観点からは、延伸フィルムであることが好ましい。ここで、延伸フィルムとしては、一軸延伸フィルム及び二軸延伸フィルムが挙げられるが、二軸延伸フィルムが、耐熱性を向上させることから、好ましい。
【0086】
樹脂基材1の厚さは、特に制限されないが、例えば10μm以上0.1mm以下であればよい。
【0087】
樹脂基材1は、必要に応じて、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0088】
(下地層)
下地層2は、樹脂基材1と無機酸化物層3との密着性をより向上させるための層であり、樹脂基材1と無機酸化物層3とによって挟まれている。
【0089】
下地層2を構成する材料は、樹脂基材1と無機酸化物層3との密着性を向上させることが可能なものであれば特に制限されるものではないが、このような材料としては、オルガノシラン又は有機金属化合物と、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物との反応物を含む。すなわち、下地層2は、ウレタン系接着剤層であるということもできる。オルガノシランは、例えば3官能オルガノシラン、又は3官能オルガノシランの加水分解物である。有機金属化合物は、例えば金属アルコキシド又は金属アルコキシドの加水分解物である。有機金属化合物に含まれる金属元素は、例えばAl、Ti、Zr等である。オルガノシランの加水分解物及び金属アルコキシドの加水分解物はそれぞれ、少なくとも一つの水酸基を有していればよい。透明性の観点から、ポリオール化合物はアクリルポリオールであることが好ましい。イソシアネート化合物は、主に架橋剤又は硬化剤として機能する。ポリオール化合物およびイソシアネート化合物は、モノマーでもよいしポリマーでもよい。
【0090】
下地層2の厚さは樹脂基材1と無機酸化物層3との密着性を向上させることが可能な厚さであれば特に制限されるものではないが、好ましくは30nm以上である。この場合、下地層2の厚さが30nm未満である場合に比べて、樹脂基材1と無機酸化物層3との間で良好な密着性が得られやすくなる。また、下地層2の耐久性がより向上する。下地層2の厚さは30nm以上であることが好ましく、35nm以上であることがより好ましく、40nm以上であることがさらに好ましい。下地層2の厚さを大きくすることにより、延伸等の外力がかかった場合の水蒸気バリア性の低下を一層抑制することができる。下地層2の厚さは200nm未満であることが好ましい。この場合、下地層2の厚さが200nm以上である場合に比べて、下地層2に亀裂が入りにくくなる傾向がある。
【0091】
(無機酸化物層)
無機酸化物層3は、無機酸化物を含む層である。ガスバリア性フィルム10は、無機酸化物層3を有することにより、より優れた水蒸気バリア性を有することが可能となる。
【0092】
無機酸化物としては、Siの酸化物(SiOx)、及び、金属酸化物が挙げられる。金属酸化物を構成する金属としては、Al、Mg、Sn、Ti、及びInからなる群より選択される少なくとも1種の原子が挙げられる。無機酸化物としては、水蒸気バリア性の観点から、SiOx又はAlOxが好ましい。中でも、無機酸化物としては、SiOxが好ましい。この場合、ガスバリア性フィルム10がより優れた水蒸気バリア性を有することが可能となる。
【0093】
無機酸化物層3は単層からなっていてもよく、複数層からなっていてもよい。
【0094】
無機酸化物層3の厚さは特に制限されるものではないが、10nm以上100nm以下であることが好ましい。この場合、無機酸化物層3の厚さが10nm未満である場合に比べて、ガスバリア性フィルム10の水蒸気バリア性が向上しやすくなる。また、無機酸化物層3の厚さが100nmを超える場合に比べて、内部応力の増加によるクラックがより発生しにくくなり、水蒸気バリア性の低下をより抑制できる。
【0095】
無機酸化物層3の厚さは、10nm以上100nm以下であることがより好ましい。
【0096】
(ガスバリア層)
ガスバリア層4は、上述したガスバリア層形成用組成物の硬化体で構成される。
【0097】
ガスバリア層4の厚さは特に制限されるものではないが、150nm以上800nm以下であることが好ましい。
【0098】
この場合、ガスバリア層4の厚さが150nm未満である場合に比べて、ガスバリア層4のガスバリア性をより向上させることができる。一方、ガスバリア層4の厚さが800nmを超える場合に比べて、ガスバリア層4の柔軟性をより向上させることができ、ガスバリア層4の耐虐待性をより向上させることができる。
【0099】
ガスバリア層4の厚さは、ガスバリア性を向上させる観点から、150nm以上であることがより好ましく、180nm以上であることが特に好ましい。
【0100】
ガスバリア層4の厚さは、耐虐待性を向上させる観点からは、800nm以下であることがより好ましく、750nm以下であることが特に好ましい。
【0101】
<ガスバリア性フィルムの製造方法>
次に、ガスバリア性フィルム10の製造方法について説明する。
【0102】
まず樹脂基材1を用意する。
【0103】
次に、樹脂基材1の一面上に下地層2を形成する。
【0104】
具体的には、樹脂基材1の一面上に、例えばオルガノシラン又は有機金属化合物と、ポリオール化合物と、イソシアネート化合物とを含む組成物を塗布し加熱して乾燥させることによって下地層2を形成することができる。このとき、加熱温度は、例えば、50~200℃であり、乾燥時間は、例えば、10秒~10分程度である。
【0105】
次に、下地層2の上に無機酸化物層3を形成する。
【0106】
無機酸化物層3は、例えば真空成膜法により形成することができる。真空成膜法としては、物理気相成長法及び化学気相成長法が挙げられる。物理気相成長法としては、真空蒸着法、スパッタ蒸着法、イオンプレーティング法等を挙げることができる。物理気相成長法としては、真空蒸着法が特に好ましく用いられる。真空蒸着法としては、抵抗加熱式真空蒸着法、EB(Electron Beam)加熱式真空蒸着法、誘導加熱式真空蒸着法が挙げられる。化学気相成長法としては、熱CVD法、プラズマCVD法、光CVD法等を挙げることができる。
【0107】
次に、無機酸化物層3上にガスバリア層4を形成する(ガスバリア層形成工程)。
【0108】
ガスバリア層4は、例えば、無機酸化物層3の下地層2とは反対側の面上にガスバリア層形成用組成物を塗布し、硬化させることによって形成できる。ここで、固形分が硬化するとは、固形分中のポリウレタン樹脂(A)、水溶性高分子(B)及び硬化剤(C)が互いに反応して一体化することをいう。
【0109】
ガスバリア層形成用組成物の塗布方法としては、公知の方法を採用することができる。塗布方法としては、具体的には、グラビアコート法、ディップコート法、リバースコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法等のウェット成膜法が挙げられる。
【0110】
硬化は、例えば加熱などによって行うことができる。
【0111】
硬化を加熱によって行う場合、加熱温度及び加熱時間は、ガスバリア層形成用組成物中の固形分の硬化と水性媒体等の液体の除去を同時に行うことができるように設定すればよい。加熱温度は、例えば80~250℃とすればよく、加熱時間は、例えば3秒~10分とすればよい。
【0112】
以上のようにしてガスバリア性フィルム10の製造が完了する。
【0113】
この製造方法によれば、ガスバリア層形成工程において、樹脂基材1の一面側に、上述したガスバリア層形成用組成物を硬化させることによってガスバリア層4が形成されてガスバリア性フィルム10が製造される。このとき、ガスバリア層形成工程において使用されるガスバリア層形成用組成物は、この組成物の硬化体で構成されるガスバリア層4を樹脂基材1の一面側に有するガスバリア性フィルム10に対し、硬化により、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができる。このため、本発明の製造方法によれば、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能で、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルム10を製造できる。
【0114】
<包装フィルム>
次に、本発明の包装フィルムの実施形態について
図2を参照しながら説明する。なお、
図2において、
図1と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0115】
図2は、本発明の包装フィルムの一実施形態を示す断面図である。
図2に示すように、包装フィルム20は、ガスバリア性フィルム10と、ガスバリア性フィルム10に積層されるシーラント層21とを備えており、シーラント層21は、ガスバリア性フィルム10の樹脂基材1の一面側に配置されている。
図2では、ガスバリア性フィルム10のガスバリア層4とシーラント層21とが接着剤層22によって接着されている。
【0116】
この包装フィルム20によれば、ガスバリア性フィルム10が、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。このため、ガスバリア性フィルム10を有する包装フィルム20も、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有することが可能となるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。また、包装フィルム20はシーラント層21を有するため、シーラント層21同士を接合することで封止を確保し得る包装袋を容易に製造できる。
【0117】
接着剤層22の材料としては、例えば、ポリエステル-イソシアネート系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテル系樹脂などを用いることができる。包装フィルム20をレトルト用途に使用するには、レトルト処理耐性のある2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく用いることができる。
【0118】
(シーラント層)
シーラント層21の材質としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂が挙げられるが、ポリオレフィン樹脂が一般的に使用される。具体的に、ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体などのエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、又はこれらの混合物等を使用することができる。シーラント層21の材質は、上述した熱可塑性樹脂の中から、使用用途やボイル処理、レトルト処理などの温度条件によって適宜選択できる。
【0119】
シーラント層21の厚さは、内容物の質量や、包装袋の形状などにより適宜定められるが、包装フィルム20の柔軟性及び接着性の観点から、30~150μmであることが好ましい。
【0120】
<包装フィルムの製造方法>
次に、包装フィルム20の製造方法について説明する。
【0121】
まず、上述したガスバリア性フィルムの製造方法によりガスバリア性フィルム10を製造する(ガスバリア性フィルム製造工程)。
【0122】
次に、ガスバリア性フィルム10の樹脂基材1の一面側に配置されるように接着剤層22によってシーラント層21を接着し、積層させて包装フィルム20を得る(シーラント層積層工程)。
【0123】
この製造方法によれば、ガスバリア性フィルム製造工程において、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルム10を製造できる。このため、シーラント層積層工程において、ガスバリア性フィルム10の樹脂基材1の一面側に配置されるようにシーラント層21を積層させると、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装フィルム20を製造することが可能となる。また、製造される包装フィルム20はシーラント層21を有するため、製造される包装フィルム20は、シーラント層21同士を接合することで封止を確保し得る包装袋を容易に製造することが可能となる。
【0124】
なお、包装フィルム20は、接着剤層22を有しているが、シーラント層21が上述した熱可塑性樹脂からなり熱融着によってガスバリア性フィルム10のガスバリア層4に接着可能である場合には、接着剤層22は省略されてもよい。この場合、上述したガスバリア性フィルム10を加熱溶融させ、カーテン状に押し出して貼り合わせるエクストルージョンラミネート法等によりシーラント層21を樹脂基材1に貼り合わせることができる。
【0125】
<包装袋>
次に、本発明の包装袋の実施形態について
図3を参照しながら説明する。なお、
図3において、
図1又は
図2と同一の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図3は、本発明の包装袋の一実施形態を示す側面図である。
図3に示すように、包装袋30は、包装フィルム20を用い、シーラント層21同士を互いに接合させることによって形成された包装袋である。
【0126】
この包装袋30は、包装フィルム20を用い、シーラント層21同士を互いに接合させることによって形成されたものであり、包装フィルム20が、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができるガスバリア性フィルム10を有する。このため、包装袋30は、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でもデラミネーション(層間剥離)を抑制することができるとともに、ブリードアウトを抑制することができる。また、包装袋30が、シーラント層21を有する包装フィルム20を用いて形成されるため、包装袋30は、十分な封止性を確保することもできる。
【0127】
<包装袋の製造方法>
次に、包装袋30の製造方法について説明する。
【0128】
まず、上述した包装フィルム20の製造方法により包装フィルム20を製造する(包装フィルム製造工程)。
【0129】
次に、包装フィルム20を用い、開口を形成するようにシーラント層21同士を互いに接合させて接合体を得る。そして、この接合体の開口を通して、食品、医薬品等の内容物を収容した後、接合体の開口を封止して包装袋30を製造する(包装フィルム接合工程)。
【0130】
この製造方法によれば、包装フィルム製造工程において、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を有するとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装フィルム20を製造することが可能となる。このため、包装フィルム接合工程により、包装フィルム20を用い、シーラント層21同士を互いに接合させると、優れた耐虐待性を有し、かつ、レトルト処理後でもデラミネーションを抑制できるとともに、ブリードアウトを抑制することができる包装袋30を製造することが可能となる。また、上記包装袋の製造方法により、シーラント層21を有する包装フィルム20を用いて包装袋30が製造されるため、製造される包装袋30は、十分な封止性を確保することが可能となる。
【0131】
上記包装フィルム接合工程において、上記接合体は、1枚の包装フィルム20をシーラント層21が対向するように折り曲げた後、対向するシーラント層21の周縁部同士を熱融着させる方法、又は、2枚の包装フィルム20をシーラント層21が対向するように重ね合わせた後、対向するシーラント層21の周縁部同士を熱融着させる方法によって形成することができる。
【0132】
なお、上記包装フィルム接合工程においては、必ずしも接合体に内容物を収容しなくてもよい。この場合、開口を有する接合体が包装袋となる。
【0133】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、ガスバリア性フィルム10が、下地層2及び無機酸化物層3を備えているが、下地層2及び無機酸化物層3の少なくとも一方は省略可能である。
【0134】
また、上記実施形態では、包装フィルム20において、シーラント層21が、ガスバリア性フィルム10の樹脂基材1の一面側(ガスバリア層4側)に配置されているが、シーラント層21は、樹脂基材1の他面側(ガスバリア層4と反対側)に配置されていてもよい。
【実施例0135】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0136】
<コーティング液の調製>
実施例又は比較例で用いられるガスバリア層形成用組成物としてのコーティング液1~15を以下のようにして調製した。
【0137】
(コーティング液1)
ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体としてのポリウレタン樹脂(A1)の水性分散体、水溶性高分子(WSP)としてのポリアクリル酸(PAA)を含む水溶液、および、硬化剤(CA)としてのエポキシシランを、固形分であるポリウレタン樹脂(A)としてのポリウレタン樹脂(PU)とPAAとエポキシシランと無機層状鉱物(IM)の質量比(PU:WSP:CA:IM)が60:25:15:0となるように混合し、固形分濃度が5質量%となるように水とイソプロパノールで希釈した。このとき、液体全体中のイソプロパノールの含有率が10質量%となるようにした。こうしてコーティング液1を調製した。
【0138】
(コーティング液2)
PAA水溶液をポリビニルアルコール(PVA)水溶液に変更し、エポキシシランをアミノシランに変更したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液2を調製した。
【0139】
(コーティング液3)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液3を調製した。
【0140】
(コーティング液4)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が75:20:5:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液4を調製した。
【0141】
(コーティング液5)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が45:35:20:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液5を調製した。
【0142】
(コーティング液6)
PAA水溶液およびエポキシシランを使用せず、固形分であるポリウレタン樹脂とPAAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が100:0:0:0となるようにしたこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液6を調製した。
【0143】
(コーティング液7)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、ポリウレタン樹脂の水性分散体及びエポキシシランを使用せず、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が0:100:0:0となるようにしたこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液7を調製した。
【0144】
(コーティング液8)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、エポキシシランを使用せず、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が65:35:0:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液8を調製した。
【0145】
(コーティング液9)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が75:15:10:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液9を調製した。
【0146】
(コーティング液10)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が55:40:5:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液10を調製した。
【0147】
(コーティング液11)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が40:35:25:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液11を調製した。
【0148】
(コーティング液12)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が80:20:0:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液12を調製した。
【0149】
(コーティング液13)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が60:25:10:5となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液13を調製した。
【0150】
(コーティング液14)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が60:25:14:1となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液14を調製した。
【0151】
(コーティング液15)
PAA水溶液をPVA水溶液に変更し、「ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体」を「ポリウレタン樹脂(A1)の水性分散体」から「ポリウレタン樹脂(A2)の水性分散体」に変更し、固形分であるポリウレタン樹脂とPVAとエポキシシランと無機層状鉱物の質量比(PU:WSP:CA:IM)が60:25:10:0となるように混合したこと以外はコーティング液1と同様にしてコーティング液15を調製した。
【0152】
なお、上述したポリウレタン樹脂(A)の水性分散体、水溶性高分子(B)、硬化剤(C)及び無機層状鉱物(D)としては、具体的には以下のものを使用した。
【0153】
(ポリウレタン樹脂(A)の水性分散体)
ポリウレタン樹脂(A1)の水性分散体
固形分(ポリウレタン樹脂(A1))を水からなる水性媒体中に分散させたポリウレタン樹脂の水性分散体(水性ポリウレタンディスパージョン、商品名「タケラック(登録商標)WPB-341」、三井化学株式会社製、固形分濃度:30質量%、ポリウレタン樹脂(A1):酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物との反応生成物)
ポリウレタン樹脂(A2)の水性分散体
固形分(ポリウレタン樹脂(A2))を水からなる水性媒体中に分散させたポリウレタン樹脂の水性分散体(商品名「ハイドランHW350」、DIC株式会社製、固形分濃度:30質量%、ポリウレタン樹脂(A2):酸基含有ポリウレタン樹脂とポリアミン化合物との反応生成物に該当しないポリウレタン樹脂(ポリエステルポリウレタン樹脂))
【0154】
(B)水溶性高分子
(B1)ポリビニルアルコール(PVA)水溶液
鹸化度98~99%、重合度500のポリビニルアルコールの水溶液(商品名「ポバールPVA-124」、株式会社クラレ製、固形分濃度:5質量%)
(B2)ポリアクリル酸(PAA)水溶液
ポリアクリル酸の水溶液(商品名「アロンA-10H」、東亜合成株式会社製、固形分濃度:25質量%)
【0155】
(C)硬化剤
(C1)アミノシラン
N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン(商品名「KBM-603」、信越化学工業株式会社製)
(C2)エポキシシラン
3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)
【0156】
(D)無機層状鉱物
合成雲母(商品名「ソマシフ(登録商標)MEB-3」、片倉コープアグリ株式会社製)
【0157】
<下地層形成用組成物の調製>
下地層形成用組成物は以下のようにして調製した。
アクリルポリオールとトリレンジイソシアネートとを、アクリルポリオールのOH基の数に対してトリレンジイソシアネートのNCO基の数が等量となるように混合し、全固形分(アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量)が5質量%になるよう酢酸エチルで希釈した。希釈後の混合液に、さらにβ-(3,4エポキシシクロヘキシル)トリメトキシシランを、アクリルポリオール及びトリレンジイソシアネートの合計量100質量部に対して5質量部となるように添加し、これらを混合することで下地層形成用組成物(アンカーコート剤)を調製した。
【0158】
<ガスバリア性フィルムの作製>
(実施例1)
ガスバリア性フィルムをロールtoロール方式で以下のように作製した。まず、厚さ20μmの樹脂基材としてのポリプロピレン樹脂層(商品名「U-1」、二軸延伸フィルム、三井化学東セロ株式会社製)を、巻き出し装置、搬送装置、及び巻き取り装置に装着した。
【0159】
次に、搬送中の樹脂基材の一面上に、上記のようにして調製した下地層形成用組成物をグラビアコート法により塗布して塗膜を形成した。そして、塗膜を120℃10秒間加熱し、乾燥させることにより、厚さ40nmの下地層を形成し、積層体を得た。こうして得られた積層体を巻き取り装置で巻き取り、ロール状積層体を得た。
【0160】
次に、ロール状積層体を巻き出し装置、搬送装置、及び巻き取り装置に装着した。そして、ロール状積層体から積層体を繰り出し、搬送中の積層体の下地層上に、膜厚が50nmとなるようにAlOx膜(無機酸化物層)を形成した。このとき、AlOx膜の形成は、電子ビーム加熱方式の真空蒸着装置を用いて、アルミニウムインゴットを電子ビーム加熱によって蒸発させながら、圧力が1.2×10-2Paとなるよう酸素を導入することによって行った。
【0161】
このAlOx膜上にコーティング液1を塗工し、加熱乾燥させて、表1に示すように400nmの厚さを有するガスバリア層を形成した。このとき、加熱は、コーティング液1中の固形分を構成するポリウレタン樹脂とPAAとエポキシシランとが硬化して硬化体を形成しつつ、コーティング液1中の液体を除去するように行った。このとき、具体的に、加熱温度は60℃とした。
【0162】
以上のようにして、樹脂基材、下地層、無機酸化物層、及びガスバリア層がこの順で積層されたガスバリア性フィルムを得た。
【0163】
(実施例2~10及び比較例1~9)
樹脂基材を表1又は表2に示す材料で構成し、無機酸化物層を表1又は表2に示す金属酸化物で構成し、ガスバリア層を形成する際に、表1又は表2に示すコーティング液を用い、ガスバリア層の厚さを表1又は表2に示す通りとしたこと以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを作製した。なお、無機酸化物層をSiOxで構成する場合には、電子ビーム加熱によって蒸発させるアルミニウムインゴットの代わりに、SiO蒸着材料としての二酸化珪素を用いた。また、実施例10では樹脂基材として、厚さ12μmのポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を使用した。
【0164】
<ガスバリア性フィルムの評価>
実施例1~10及び比較例1~9で得られたガスバリア性フィルムについて、以下のようにしてレトルト処理後の酸素バリア性及び水蒸気バリア性、耐虐待性、並びにレトルト処理後のラミネート強度を評価した。
【0165】
(ラミネートフィルムの作製)
まず、これらの評価を行うために、以下のようにしてラミネートフィルムを作製した。
【0166】
すなわち、実施例1~10及び比較例1~9で得られたガスバリア性フィルムの樹脂基材の表面上に、2液型の接着剤(商品名「A-525/A-52」、三井化学株式会社製)を用いて、厚さ60μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、商品名「トレファン ZK207」、東レフィルム加工株式会社製)を貼り付けることによってラミネートフィルムを作製した。
【0167】
(1)レトルト処理後の酸素バリア性及び水蒸気バリア性の評価
(試験サンプルの作製)
レトルト処理後の酸素バリア性及び水蒸気バリア性の評価を行うために、以下のようにして試験サンプルを作製した。
まず、上記のようにして作製したラミネートフィルムを用いて、開口を有する三方パウチを作製した。このとき、三方パウチは、ラミネートフィルムを、未延伸ポリプロピレンフィルム同士が対向するように折り曲げ、未延伸ポリプロピレンフィルム同士を熱融着させることによって形成した。そして、開口から水道水を注入して三方パウチの開口を封止することにより、封止体を用意した。そして、この封止体について、121℃で30分間の加熱処理(レトルト処理)を行った。こうして試験サンプルを作製した。
【0168】
(酸素透過度の測定)
酸素透過度測定装置(製品名「OX-TRAN2/20」、MOCON社製)を用い、上記試験サンプルについて、温度30℃、相対湿度70%の条件で酸素透過度(単位:cc/m2・day・atm)を測定した。このとき、測定は、JIS K-7126-2に準拠して行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例8については、試験サンプルにデラミネーションが見られ、酸素透過度の測定を行うことができなかったため、表2において「測定不可」と表記した。
【0169】
(水蒸気透過度の測定)
水蒸気透過度測定装置(製品名「PERMATRAN3/31」、MOCON社製)を用い、上記試験サンプルについて、温度40℃、相対湿度90%の条件で水蒸気透過度(単位:g/m2・day)を測定した。このとき、測定は、JIS K-7129に準拠して行った。結果を表1及び表2に示す。なお、比較例8については、試験サンプルにデラミネーションが見られ、水蒸気透過度の測定を行うことができなかったため、表2において「測定不可」と表記した。
【0170】
(酸素バリア性の評価)
上記試験サンプルの酸素バリア性は、下記基準にしたがって評価した。結果を表1及び2に示す。
(基準)
〇:酸素透過度が2cc/m2・day・atm未満である。
△:酸素透過度が2cc/m2・day・atm以上3cc/m2・day・atm未満である。
×:酸素透過度が3cc/m2・day・atm以上である。
【0171】
(水蒸気バリア性の評価)
上記試験サンプルの水蒸気バリア性は、下記基準にしたがって評価した。結果を表1及び2に示す。
(基準)
〇:水蒸気透過度が1g/m2・day未満である。
△:水蒸気透過度が1g/m2・day以上2g/m2・day未満である。
×:水蒸気透過度が2g/m2・day以上である。
【0172】
(2)耐虐待性の評価
(ゲルボフレックス試験)
まず、ガスバリア性フィルムの耐虐待性を評価するために、上記のようにして作製したラミネートフィルムについてゲルボフレックス試験を行った。
【0173】
具体的には、上記のようにして作製したラミネートフィルムを直径87.5mm×210mmの円筒状になるようにして円筒体を作製した。そして、ゲルボフレックステスター(製品名「ゲルボフレックステスター」、テスター産業社製)を用意し、固定ヘッドに円筒体を取り付け、円筒体の両端を保持した。そして、初期把持間隔を175mm、ストロークを87.5mmに設定して440度のひねりを加える動作を繰り返し行う往復運動を、速度40回/分で10回行い、円筒体を屈曲させた。こうしてゲルボフレックス試験を行った。
【0174】
そして、ゲルボフレックス試験後のラミネートフィルムについて、レトルト処理後の酸素バリア性及び水蒸気バリア性の評価を行った場合と同様にして酸素透過度及び水蒸気透過度を測定した。結果を表1及び表2に示す。
続いて、酸素透過度及び水蒸気透過度に基づいて、酸素バリア性及び水蒸気バリア性を以下のようにして評価した。
【0175】
(酸素バリア性の評価)
酸素バリア性は、下記基準にしたがって評価した。結果を表1及び2に示す。
(基準)
〇:酸素透過度が10cc/m2・day・atm未満である。
△:酸素透過度が10cc/m2・day・atm以上15cc/m2・day・atm未満である。
×:酸素透過度が15cc/m2・day・atm以上である。
【0176】
(水蒸気バリア性の評価)
水蒸気バリア性は、下記基準にしたがって評価した。結果を表1及び2に示す。
(基準)
〇:水蒸気透過度が1.5g/m2・day未満である。
△:水蒸気透過度が1.5g/m2・day以上2.5g/m2・day未満である。
×:水蒸気透過度が2.5g/m2・day以上である。
【0177】
(耐虐待性の合否判定)
耐虐待性は、ゲルボフレックス試験後のラミネートフィルムについての酸素バリア性及び水蒸気バリア性の少なくとも一方の評価が〇又は△である場合に合格と判定した。
【0178】
(3)レトルト処理後のラミネート強度の評価
(ラミネート強度の測定)
まず、上記試験サンプルについて、以下のようにしてラミネート強度を測定した。
すなわち、上記試験サンプルについて、JIS Z-1707に準拠してラミネート強度を測定した。具体的には、まず上記試験サンプルを幅15mmの短冊状にカットした。次に、短冊状にカットされた試験サンプルのガスバリア性フィルムを、テンシロン引張試験機(製品名「テンシロンRTC-1250」、オリエンテック社製)を用いて、ガスバリア性フィルムとCPPフィルムとが反対側に向かうように(すなわち剥離角度がT型になるように)、300mm/分の剥離速度でCPPフィルムから剥離し、剥離に要した強度(単位:N/15mm)をラミネート強度として測定した。
【0179】
(ラミネート強度の評価)
ラミネート強度は、下記基準にしたがって評価した。結果を表1及び2に示す。
(基準)
〇:ラミネート強度が2N/N/15mm以上である。
△:ラミネート強度が1.5N/15mm以上2N/15mm未満である。
×:ラミネート強度が1.5N/15mm未満である。
【0180】
(ラミネート強度の合否判定)
レジスト処理後のラミネート強度は、評価ランクが〇又は△である場合に合格と判定した。
【0181】
(4)ブリードアウト抑制効果の評価
実施例1~10及び比較例1~9のガスバリア性フィルムの表面を目視および触手にて観察した。そして、ブリードアウト抑制効果について下記基準に従って評価した。ブリードアウト抑制効果については、評価が〇である場合に合格と判定した。
(基準)
〇:ガスバリア性フィルムの表面においてブリードアウトは見られなかった
×:ガスバリア性フィルムの表面に硬化剤のブリードアウトが見られ、タック性も確認された
【0182】
(5)リサイクル性に関する評価
リサイクル性は、上記のようにして得られたラミネートフィルムにおいて下記式に基づいてモノリサイクル比率を算出し、このモノリサイクル比率及び下記基準に基づいて評価した。結果を表1及び表2に示す。
モノリサイクル比率(%)
=100×
(PPからなる樹脂基材の厚さ×比重+CPP層の厚さ×比重)/
(樹脂基材の厚さ×比重
+下地層の厚さ×比重
+金属酸化物層の厚さ×比重
+カスバリア性フィルムの厚さ×比重
+接着剤の厚さ×比重
+CPP層の厚さ×比重)
(基準)
〇:モノリサイクル比率が90%以上
×:モノリサイクル比率が90%未満
【表1】
【表2】
【0183】
表1及び2に示すように、実施例1~10のガスバリア性フィルムはいずれも、耐虐待性、レトルト処理後のラミネート強度及びブリードアウト抑制効果の合格基準を満たすことが分かった。一方、比較例1~9のガスバリア性フィルムは、耐虐待性、レトルト処理後のラミネート強度及びブリードアウトの抑制効果の少なくとも一つの点で合格基準を満たしていなかった。
【0184】
以上のことから、本発明のガスバリア層形成用組成物は、ガスバリア性フィルムに対し、優れた耐虐待性を付与し、かつ、レトルト処理後でも大きなラミネート強度を付与することができるとともに、ブリードアウトを抑制させることができることが確認された。
前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が0質量%であり、かつ、前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)、前記水溶性高分子(B)及び前記硬化剤(C)の合計含有率が100質量%である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。
前記固形分中の無機層状鉱物(D)の含有率が0質量%であり、かつ、前記固形分中の前記ポリウレタン樹脂(A)、前記水溶性高分子(B)及び前記硬化剤(C)の合計含有率が100質量%である、請求項1に記載のガスバリア性フィルム。