IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社アミノの特許一覧

特開2022-77738回転電機用のロータの製造方法及び製造装置
<>
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図1
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図2
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図3
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4A
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4B
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4C
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4D
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4E
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4F
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4G
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図4H
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図5
  • 特開-回転電機用のロータの製造方法及び製造装置 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077738
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】回転電機用のロータの製造方法及び製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/28 20060101AFI20220517BHJP
   H02K 15/02 20060101ALI20220517BHJP
   H02K 15/16 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H02K1/28 A
H02K15/02 K ZHV
H02K15/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188715
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000126894
【氏名又は名称】株式会社アミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】特許業務法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】安立 毅彦
(72)【発明者】
【氏名】河島 孝明
(72)【発明者】
【氏名】三好 功記
(72)【発明者】
【氏名】牧尾 信平
(72)【発明者】
【氏名】杉田 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】原 豊
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 真梨子
(72)【発明者】
【氏名】寺内 祐二
【テーマコード(参考)】
5H601
5H615
【Fターム(参考)】
5H601AA08
5H601AA12
5H601BB20
5H601CC05
5H601CC15
5H601DD01
5H601DD09
5H601DD11
5H601DD18
5H601DD22
5H601DD32
5H601DD42
5H601DD47
5H601GA02
5H601GA24
5H601HH09
5H601KK14
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB02
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP02
5H615PP06
5H615PP24
5H615SS19
5H615SS55
(57)【要約】
【課題】ハイドロフォーミングの際に、ロータシャフトの軸方向端部におけるシール性を確保しつつ、ロータシャフトの軸方向端部の座屈の可能性を低減する。
【解決手段】回転電機用のロータの製造方法であって、ロータコアと、中空のロータシャフトとを準備する準備工程と、ロータコアとロータシャフトとを製造装置に配置し、製造装置においてロータコアの径方向内側にロータシャフトが位置する状態を形成する配置工程と、配置工程の後に、製造装置の軸方向両側のシャフト支持部材間の軸方向距離を小さくすることで、ロータシャフトの中空部を外部に対してシールするシール工程と、シール工程の後に、距離が、あらかじめ規定された所定距離よりも小さくならないように製造装置のストッパ部を機械的に機能させつつ、ロータシャフトの中空部の内圧を高めることで、ロータシャフトとロータコアとを締結する締結工程とを含む、製造方法が開示される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機用のロータの製造方法であって、
ロータコアと、中空のロータシャフトとを準備する準備工程と、
前記ロータコアと前記ロータシャフトとを製造装置に配置し、前記製造装置において前記ロータコアの径方向内側に前記ロータシャフトが位置する状態を形成する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記製造装置の軸方向両側のシャフト支持部材間の軸方向距離を小さくすることで、前記ロータシャフトの中空部を外部に対してシールするシール工程と、
前記シール工程の後に、前記距離が、あらかじめ規定された所定距離よりも小さくならないように前記製造装置のストッパ部を機械的に機能させつつ、前記ロータシャフトの中空部の内圧を高めることで、前記ロータシャフトと前記ロータコアとを締結する締結工程とを含む、製造方法。
【請求項2】
前記締結工程は、前記軸方向両側のシャフト支持部材のうちの少なくとも一方が前記ストッパ部から軸方向の反力を受けるように、前記製造装置の荷重発生装置により軸方向の荷重を発生させることを含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記締結工程において、前記荷重発生装置により発生される前記軸方向の荷重は、前記ロータシャフトの軸方向端部が座屈するときの座屈荷重以上である、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
回転電機用のロータを製造する製造装置であって、
互いに対して軸方向に相対移動可能であり、ロータコアの径方向内側に中空のロータシャフトが位置する状態で、前記ロータシャフトの軸方向両側から互いに対する軸方向距離を小さくすることで前記ロータシャフトの中空部を外部に対してシールするシャフト支持部材と、
前記距離が、あらかじめ規定された所定距離よりも小さくならないように機械的に機能するストッパ部と、
前記距離が小さくなるように軸方向の荷重を発生させる荷重発生装置と、
前記ロータシャフトの中空部の内圧を高める液圧発生装置と備える、製造装置。
【請求項5】
前記荷重発生装置は、前記液圧発生装置により前記ロータシャフトの中空部の内圧を高める際に、前記軸方向両側のシャフト支持部材のうちの少なくとも一方が前記ストッパ部から軸方向の反力を受けるように軸方向の荷重を発生させる、請求項4に記載の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転電機用のロータの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータシャフトとロータコアとを係合状態とした後に、ロータシャフトにおけるロータコアとの係合部分よりも軸方向外側に、凸部をハイドロフォーミングで形成することで、ロータシャフトに対するロータコアの軸方向の抜け止めを実現する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-268858号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ハイドロフォーミングではロータシャフトの内圧が高められるので、成形型(製造装置の一要素)によりロータシャフトの軸方向端部を適切にシールすることが難しい。シール性を高めるために、ロータシャフトの軸方向端部に過大な軸方向の力を付与すると、ロータシャフトの軸方向端部が座屈等するおそれがある。
【0005】
そこで、1つの側面では、ハイドロフォーミングの際に、ロータシャフトの軸方向端部におけるシール性を確保しつつ、ロータシャフトの軸方向端部の座屈の可能性を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、回転電機用のロータの製造方法であって、
ロータコアと、中空のロータシャフトとを準備する準備工程と、
前記ロータコアと前記ロータシャフトとを製造装置に配置し、前記製造装置において前記ロータコアの径方向内側に前記ロータシャフトが位置する状態を形成する配置工程と、
前記配置工程の後に、前記製造装置の軸方向両側のシャフト支持部材間の軸方向距離を小さくすることで、前記ロータシャフトの中空部を外部に対してシールするシール工程と、
前記シール工程の後に、前記距離が、あらかじめ規定された所定距離よりも小さくならないように前記製造装置のストッパ部を機械的に機能させつつ、前記ロータシャフトの中空部の内圧を高めることで、前記ロータシャフトと前記ロータコアとを締結する締結工程とを含む、製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
1つの側面では、ハイドロフォーミングの際に、ロータシャフトの軸方向端部におけるシール性を確保しつつ、ロータシャフトの軸方向端部の座屈の可能性を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施例によるモータの断面構造を概略的に示す断面図である。
図2】一実施例による製造装置を概略的に示す断面図である。
図3】ロータの製造方法の流れを示す概略フローチャートである。
図4A図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その1)である。
図4B図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その2)である。
図4C図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その3)である。
図4D図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その4)である。
図4E図4Dに係る工程を概略的に示す別の断面図である。
図4F図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その5)である。
図4G図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その6)である。
図4H図3に示す工程における製造途中の製品状態を概略的に示す断面図(その7)である。
図5】比較例による製造装置による締結工程の状態を示す図である。
図6】他の実施例による製造装置による締結工程の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。例えば、図面上、隙間がない部材間であってもわずかな隙間(例えば必要なクリアランス分の隙間)が形成される場合がありえ、また、図面上、隙間がある部材間であっても隙間がない場合もありえる。
【0010】
図1は、一実施例によるモータ1の断面構造を概略的に示す断面図である。
【0011】
図1には、モータ1の回転軸Iが図示されている。以下の説明において、軸方向とは、モータ1の回転軸(回転中心)Iが延在する方向を指し、径方向とは、回転軸Iを中心とした径方向を指す。従って、径方向外側とは、回転軸Iから離れる側を指し、径方向内側とは、回転軸Iに向かう側を指す。また、周方向とは、回転軸Iまわりの回転方向に対応する。
【0012】
モータ1は、例えばハイブリッド車両や電気自動車で使用される車両駆動用のモータであってよい。ただし、モータ1は、他の任意の用途に使用されるものであってもよい。
【0013】
モータ1は、インナロータタイプであり、ステータ21がロータ30の径方向外側を囲繞するように設けられる。ステータ21は、径方向外側がモータハウジング10に固定される。ステータ21は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなるステータコアを含み、ステータコアの内周部には、コイル22が巻回される複数のスロット(図示せず)が形成される。
【0014】
ロータ30は、ステータ21の径方向内側に配置される。ロータ30は、ロータコア32と、ロータシャフト34とを備える。ロータコア32は、ロータシャフト34の径方向外側に固定され、ロータシャフト34と一体となって回転する。ロータシャフト34は、モータハウジング10にベアリング14a、14bを介して回転可能に支持される。なお、ロータシャフト34は、モータ1の回転軸Iを画成する。また、本実施例では、ロータシャフト34は、円形の断面形状であるが、断面形状は任意である。
【0015】
ロータシャフト34は、車輪に動力を伝達する動力伝達機構60に連結される。すなわち、ロータシャフト34には、モータ1の回転トルクを車軸(図示せず)に伝達するための動力伝達機構60が接続される。図1には、当該動力伝達機構60の一部を形成する軸部材61が図示されている。なお、動力伝達機構60は、減速機構や、差動歯車機構、クラッチ、変速機等を含んでよい。図1に示す例では、軸部材61は、ロータシャフト34の径方向外側にスプライン結合される。この場合、ロータシャフト34の端部の径方向外側の周面には、スプライン結合部(複数の軸方向の凸条からなる歯車部)を形成する動力伝達部345を有することになる。なお、軸部材61は、ロータシャフト34の径方向内側にスプライン結合されてもよい。
【0016】
ロータコア32は、例えば円環状の磁性体の積層鋼板からなる。ロータコア32の内部には、永久磁石321が埋め込まれてよい。あるいは、永久磁石321は、ロータコア32の外周面に埋め込まれてもよい。なお、永久磁石321が設けられる場合、永久磁石321の配列等は任意である。
【0017】
ロータコア32の軸方向の両側には、エンドプレート35A、35Bが取り付けられる。エンドプレート35A、35Bは、ロータコア32を支持する支持機能の他、ロータ30のアンバランスの調整機能(切削等されることでアンバランスを無くす機能)を有してよい。
【0018】
ロータシャフト34は、図1に示すように、中空部343を有する。中空部343は、ロータシャフト34の軸方向の全長にわたり延在する。
【0019】
ロータシャフト34は、図1に示すように、軸方向で、ロータコア32が設けられる区間SC1の部位と、ベアリング14a、14bが設けられる区間SC2の部位と、後述する第1噴出孔341及び第2噴出孔342が設けられる区間SC3の部位とを含む。区間SC2は、軸方向の両端部にそれぞれ延在し、区間SC3は、軸方向で区間SC1と区間SC2との間に延在する。
【0020】
本実施例では、一例として、ロータシャフト34は、区間SC2において、外周面が径方向内側に凹む形態である。ロータシャフト34は、大径部34Aと、大径部34Aよりも外径が小さい小径部34Bとを含む。小径部34Bは、図1に示すように、軸方向で大径部34Aの両側に形成される。ベアリング14a、14bは、小径部34Bに設けられる。なお、大径部34Aと小径部34Bとの間の径方向の段差は、回転軸Iに対して略直角に形成されてもよいし、テーパ状に形成されてもよい。本実施例では、一例として、大径部34Aと小径部34Bとの間の径方向の段差は、一端側(図の右側)では、回転軸Iに対して略直角に形成され、他端側(図の右側)では、テーパ状に形成されている。
【0021】
また、ロータシャフト34は、軸方向のベアリング支持面34a、34bを有する。軸方向のベアリング支持面34a、34bは、ベアリング14a、14bのインナレースの軸方向の端面に軸方向に当接することで、ベアリング14a、14bを支持する。軸方向のベアリング支持面34a、34bは、ロータシャフト34の小径部34Bにおいて外周面が径方向内側に凹むことで形成される。軸方向のベアリング支持面34a、34bは、ロータシャフト34の周方向の全周にわたり形成されてよい。
【0022】
ロータシャフト34は、径方向内側に凸となる凸部の形態の厚肉部347を周方向に沿って有する。厚肉部347は、ロータシャフト34の軸方向の略中心位置(区間SC1における軸方向の略中心位置)に形成される。ただし、変形例では、厚肉部347は、ロータシャフト34の軸方向の中心位置に対して軸方向でわずかにオフセットされてもよいし、形成されなくてもよい。厚肉部347は、例えば鋳造やフローフォーミング、摩擦圧接等により形成されてもよい。フローフォーミングによる厚肉部347の形成方法は、後述する。なお、摩擦圧接の場合、ロータシャフト34は、当該中心位置で軸方向に分割される2ピースにより形成されてもよい。なお、ロータシャフト34が厚肉部347を備える場合、区間SC1のうちの中央部の剛性が端部の剛性よりも高くなる。
【0023】
ロータシャフト34は、第1噴出孔341を有する。第1噴出孔341は、中空部343から外部へと径方向に貫通する。すなわち、第1噴出孔341は、中空部343に開口する開口341aと、コイル22のコイルエンド22Aに対向する開口341bとを有し、開口341a及び開口341b間に延在する。第1噴出孔341の開口341bは、コイル22のコイルエンド22Aに対向する態様で、ロータコア32に対し軸方向にずれた位置に配置される。なお、第1噴出孔341は、周方向に複数個形成されてもよい。
【0024】
ロータシャフト34は、更に、第1噴出孔341とは異なる軸方向の位置に、第2噴出孔342を有する。第2噴出孔342は、中空部343から外部へと径方向に貫通する。すなわち、第2噴出孔342は、中空部343に開口する開口342aと、コイル22のコイルエンド22Bに対向する開口342bとを有し、開口342a及び開口342b間に延在する。第2噴出孔342の開口342bは、コイル22のコイルエンド22Bに対向する態様で、ロータコア32に対し軸方向にずれた位置に配置される。なお、第2噴出孔342は、周方向に複数個形成されてもよい。
【0025】
ロータシャフト34内は、油供給源90に接続される。油供給源90は、ポンプ94を含んでよい。この場合、ポンプ94の種類や駆動態様は任意である。例えば、ポンプ94は、モータ1の回転トルクにより動作するギアポンプであってもよい。ロータシャフト34内には、ロータシャフト34の一端(図の右側の端部)側から油が供給される。なお、ポンプ94は、モータハウジング10に隣接するハウジング(図示せず)であって、動力伝達機構60を収容するハウジング内に配置されてよい。
【0026】
図1では、一例として、油供給源90は、管路部材92と、管路部材92の一端(図の右側の端部)側に接続されるポンプ94とを含む。
【0027】
管路部材92は、中空に形成され、内部が油路801を画成する。すなわち、管路部材92は、油路801として機能する中空部92Aを有する。中空部92Aは、管路部材92の軸方向の全長にわたり延在する。ただし、中空部92Aは、一端側(図の左側の端部であって、ポンプ94側とは逆側の端部)は開口しない。すなわち、管路部材92は、一端(図の左側の端部)が閉塞される。
【0028】
管路部材92は、ロータシャフト34の内周面340に対して径方向で隙間を有する態様でロータシャフト34内に延在する。具体的には、管路部材92は、外径r4を有する。外径r4は、ロータシャフト34の内周面340の、区間SC1、SC3での内径r1、r3よりも有意に小さい(なお、図1では、区間SC1、SC3での内径r1、r3は同じである)。外径r4は、例えばロータシャフト34の内周面340の、区間SC2での内径r2と略等しい。
【0029】
管路部材92は、内部から外部へと径方向に貫通する吐出孔93を備える。吐出孔93は、ロータコア32の軸方向の略中心位置に対応する軸方向の位置と、その両側とに設けられる。なお、吐出孔93の軸方向の位置や数等は任意である。
【0030】
次に、図1に示す矢印R1~R6を参照して、油供給源90からの油の流れについて概説する。図1には、油の流れが矢印R1~R6で模式的に示されている。
【0031】
油供給源90から供給される油は、管路部材92の中空部92Aを通って軸方向に流れ(矢印R1参照)、吐出孔93から径方向外側へと吐出される(矢印R2参照)。吐出孔93から径方向外側へと吐出された油は、ロータシャフト34の内周面340に当たり、ロータシャフト34の内周面340を伝って第1噴出孔341及び第2噴出孔342へと軸方向に流れる(矢印R3、R4参照)。なお、この場合、ロータシャフト34の内周面340を伝って軸方向外側へと流れる油は、区間SC1においてロータコア32の径方向内側から熱を奪うことができ、ロータコア32を効率的に冷却できる。
【0032】
ここで、本実施例では、厚肉部347が設けられるので、吐出孔93から径方向外側へと吐出された油は、第1噴出孔341及び第2噴出孔342のそれぞれへと略均等に分配される。これにより、コイルエンド22A、22Bへと分配して導かれる油の均等化を図ることができる。この結果、ロータコア32を径方向内側から、軸方向に沿って均一に冷却できるとともに、第1噴出孔341及び第2噴出孔342を介してコイルエンド22A、22Bをそれぞれ同様に冷却できる。ただし、変形例では、吐出孔93の軸方向の位置と厚肉部347の軸方向の位置とにズレを設けること等によって、第1噴出孔341及び第2噴出孔342のそれぞれへと流れる油の流量の間に、差(すなわち分配量に関する差)を積極的に設定することも可能である。
【0033】
また、本実施例では、厚肉部347が設けられるので、吐出孔93から径方向外側へと吐出された油は、ある程度の厚みを有しつつ、ロータシャフト34の内周面340を伝うことができる。すなわち、厚肉部347が堰部として機能し、ロータシャフト34の内周面340における油の溜まりが促進される。
【0034】
ロータシャフト34の内周面340を伝って軸方向外側へと流れた油は、モータ1の回転時の遠心力の作用により、第1噴出孔341を通って径方向外側へと吐出される(矢印R5参照)。第1噴出孔341の開口341bは、上述のようにコイルエンド22Aに径方向で対向する。従って、第1噴出孔341を通って径方向外側へと吐出された油は、コイルエンド22Aに当たり、コイルエンド22Aを効率的に冷却できる。
【0035】
また、ロータシャフト34の内周面340を伝って軸方向外側へと流れた油は、モータ1の回転時の遠心力の作用により、第2噴出孔342を通って径方向外側へと吐出される(矢印R6参照)。第2噴出孔342の開口342bは、上述のようにコイルエンド22Bに径方向で対向する。従って、第2噴出孔342を通って径方向外側へと吐出された油は、コイルエンド22Bに当たり、コイルエンド22Bを効率的に冷却できる。
【0036】
このように、本実施例では、ロータシャフト34の内周面340を伝う油の流れを促進することが可能となる。この結果、ロータシャフト34の内周面340を伝う油によりロータコア32を径方向内側から効率的に冷却できるとともに、第1噴出孔341及び第2噴出孔342を介してコイルエンド22A、22Bを効率的に冷却できる。
【0037】
特に、本実施例では、ロータシャフト34の内周面340は、区間SC1での内径r1が、区間SC2での内径r2よりも有意に大きい。すなわち、ロータシャフト34の内周面340は、ロータコア32が設けられる区間SC1において拡径されている。これにより、ロータシャフト34の軽量化が図られるとともに、ロータシャフト34の内周面340と永久磁石321との間の径方向の距離を小さくでき(内径r1≒内径r2の場合に比べて小さくでき)、磁石冷却性能を効果的に高めることができる。
【0038】
なお、図1では、特定の構造のモータ1が示されるが、モータ1の構造は、中空部343を有するロータシャフト34にロータコア32が締結される限り、任意である。従って、例えば管路部材92等は、省略されてもよい。例えば、管路部材92が省略される場合、軸部材61の中空部から油が供給されてもよい。この場合、軸部材61は、ロータシャフト34の径方向内側に嵌合されてもよい。
【0039】
また、図1では、特定の冷却方法が開示されているが、モータ1の冷却方法は任意である。従って、例えば、ロータコア32に油路が形成されてもよいし、モータハウジング10内の油路により径方向外側からコイルエンド22A、22Bに向けて油が滴下されてもよい。また、図1では、油供給源90の管路部材92は、モータ1における軸方向で動力伝達機構60と接続される側から、ロータシャフト34内に挿入されるが、モータ1における軸方向で動力伝達機構60と接続される側とは逆側から、ロータシャフト34内に挿入されてもよい。また、油冷に加えて、冷却水を利用した水冷方式が利用されてもよい。
【0040】
次に、図2を参照して、上述した実施例のモータ1におけるロータ30を製造する製造装置200について説明する。
【0041】
図2は、一実施例による製造装置200を概略的に示す断面図であり、基準軸Iを含む平面で切断した際の断面図である。図2には、回転軸Iに平行なZ方向とともに、Z方向に沿ったZ1側とZ2側が定義されている。以下では、説明上、一例として、製造工程中において、Z方向が上下方向に対応し、Z2側が下側であるとする。また、図2には、製造装置200における基準軸Iが示される。基準軸Iは、後述するワークの芯出しの際の中心軸を構成し、上述した回転軸Iに対応する。以下の製造装置200に係る説明において、特に言及しない限り、径方向は、基準軸Iを通りかつ基準軸Iに垂直な径方向を意味し、径方向外側とは、基準軸Iから離れる側であり、径方向内側とは、基準軸Iに近づく側である。
【0042】
製造装置200は、固定的に設置される製造設備の形態であり、以下で説明する各種の治具や型を備える。本実施例では、製造装置200は、固定型201と、シール型202、203と、可動型205と、芯出機構210と、ストッパ部230と、液圧発生装置240と、押圧荷重発生装置250とを含む。なお、固定型201や、シール型202、203、可動型205、ストッパ部230は、実質的に剛体であり、後述する締結工程中に受ける押圧荷重F50(図4F参照)等によって有意に変形しない。
【0043】
固定型201は、固定側の金型であり、例えば床面(製造装置200が設置される施設の床部分)に支持される。固定型201は、基準軸Iを中心とした中空部2011を有する。中空部2011は、後述するように、ワークとしてのロータシャフト34のZ2側を支持する。また、固定型201は、Z1側の表面として支持面2012を有する。支持面2012は、例えばZ方向に垂直に延在する。支持面2012は、後述するように、ワークとしてのロータコア32のZ2側の端面32b(図4A参照)を支持する。また、固定型201は、基準軸Iを中心とした貫通穴2013を有する。貫通穴2013には、シール型202が固定される。
【0044】
また、本実施例では、固定型201には、ストッパ部230が固定される。ストッパ部230は、支持面2012よりも径方向外側に配置される。
【0045】
シール型202、203は、それぞれ、ワークとしてのロータシャフト34の軸方向端部を支持する支持機能と、ロータシャフト34の軸方向端部をシールするシール機能とを有する。また、シール型202、203は、それぞれ、更に、ロータシャフト34を基準軸Iに対して芯出しする機能も有する。なお、シール型202、203の支持機能の一部は、固定型201及び/又は可動型205により実現されてもよい。
【0046】
シール型202は、固定型201に対して固定される。シール型202は、基準軸Iに対して芯出しされている。換言すると、シール型202は、シール型203と協動して、基準軸Iを形成する。シール型202は、後述するように、ワークとしてのロータシャフト34のZ2側の端部をシールする。なお、シール型202は、固定型201と一体的に形成されてもよいし、固定型201とは別体であり、固定型201に対して脱着可能であってよい。あるいは、シール型202は、固定型201に対して基準軸Iに沿って移動可能であってもよい。
【0047】
本実施例では、シール型202は、Z方向に視て、固定型201に重なる外周部2027を有する。シール型202は、固定型201に対して外周部2027を介して軸方向の荷重(Z方向の荷重)の伝達が可能である。なお、シール型202は、複数の部材を一体的に結合して構成されてもよい。例えば、外周部2027に対応する部材は、後述する部位2021を形成する部材とは別に形成されてもよい。
【0048】
シール型203は、可動型205と一体的に移動するように、可動型205に取り付けられる。シール型203は、シール型202に対してZ方向で対向する関係で設けられる。シール型203は、基準軸Iに対して芯出しされている。すなわち、シール型203は、シール型202と同様、基準軸Iに対して芯出しされている。シール型203は、可動型205と一体的に基準軸Iに沿って移動可能である。シール型203は、後述するように、ワークとしてのロータシャフト34のZ1側の端部をシールする。なお、シール型203は、可動型205と一体的に形成されてもよいし、可動型205とは別体であり、可動型205に対して脱着可能であってよい。あるいは、シール型203は、可動型205に対して基準軸Iに沿って移動可能であってもよい。
【0049】
本実施例では、シール型203は、Z方向に視て、可動型205に重なる外周部2037を有する。シール型203は、可動型205に対して外周部2037を介して軸方向の荷重の伝達が可能である。なお、シール型203は、複数の部材を一体的に結合して構成されてもよい。例えば、外周部2037に対応する部材は、後述する部位2031を形成する部材とは別に形成されてもよい。
【0050】
可動型205は、固定型201に対してZ方向で対向する関係で設けられる。可動型205は、上下動(Z方向の移動)が可能である。以下では、可動型205の可動範囲のうちの、最もZ1側の位置を「上死点」とも称し、最もZ2側の位置を「下死点」とも称する。可動型205が下死点に位置するとき、Z方向で可動型205と固定型201との間に、ワーク(後述するロータコア32及びロータシャフト34)が支持される。また、可動型205が下死点に位置するとき、Z方向でシール型202、203の間に、ワーク(後述するロータコア32及びロータシャフト34)が支持かつシールされる。
【0051】
可動型205は、基準軸Iを中心とした中空部2051を有する。中空部2051は、可動型205が下死点に位置するときに、後述するように、ワークとしてのロータシャフト34のZ1側を支持する。また、可動型205は、基準軸Iを中心とした貫通穴2053を有する。貫通穴2053には、シール型203が固定される。なお、シール型203が可動型205に対して軸方向に移動可能な構成の場合は、貫通穴2053の内径は、シール型203の外径よりもわずかに大きくてよい。
【0052】
芯出機構210は、ワークとしてのロータコア32を基準軸Iに対して芯出しする芯出し機能を有する。芯出機構210は、基準軸Iまわりの周方向に沿って複数設けられる。本実施例では、一例として、3つの芯出機構210が設けられ、図2には、3つのうちの1つが示されている。なお、変形例では、芯出機構210は、2つだけ設けられてもよいし、4つ以上設けられてもよい。
【0053】
本実施例では、一例として、芯出機構210は、カム機構220により動作する。具体的には、可動型205のZ2側への移動と一体的にカム機構220の第1カム部材221がZ2側に移動すると、カム機構220の第2カム部材222の第2カム面2221に第1カム面2211が当たる。そして、第1カム部材221がZ2側に更に移動すると、第2カム面2221と第1カム面2211との間に生じる力(径方向の成分を有する力)に起因して、第1カム部材221と一体の芯出機構210の可動部材213が径方向内側へと移動する。このようにして第2カム面2221に第1カム面2211が当接した状態は、カム機構220が機能する状態(又は機能可能な状態)に対応する。第2カム面2221に第1カム面2211が当接した状態では、第1カム面2211及び第2カム面2221の傾斜に起因して、可動型205がZ2側に移動すると可動部材213(及びそれに伴い第1カム部材221)が径方向内側に移動する。可動型205が下死点に至ると、可動部材213は、その可動範囲のうちの、最も径方向内側の位置(以下、「芯出し位置」とも称する)に至る。
【0054】
逆に、可動型205が下死点からZ1側に移動すると、可動型205のZ1側への移動と一体的に第1カム部材221がZ1側に移動する。この場合、芯出機構210のスライド機構214の付勢手段(図示せず)により、第2カム面2221に第1カム面2211が当接した状態が維持される。第2カム面2221に第1カム面2211が当接した状態では、上述した第1カム面2211及び第2カム面2221の傾斜に起因して、可動型205がZ1側に移動すると第1カム部材221が径方向外側に移動する。そして、可動型205及びそれに伴い第1カム部材221がZ1側に更に移動して、第2カム面2221から第1カム面2211が離間すると、可動部材213は、スライド機構214の付勢手段(図示せず)により、可動範囲内の最も径方向外側の位置(退避位置)へと移動される。
【0055】
ストッパ部230は、シール型202、203間の距離(基準軸Iに沿った距離)が、所定距離D1(図4D参照)よりも小さくなることを、機械的に規制するストッパ機能を有する。所定距離D1は、ストッパ部230の高さH1に応じて決まる距離である。本実施例では、ストッパ部230によるストッパ機能は、可動型205が下死点に位置するときに機能可能となる。従って、所定距離D1は、可動型205が下死点に位置するときの、シール型202、203間の距離に対応する。換言すると、ストッパ部230は、可動型205が下死点よりも更にZ2側に移動しないように機能する。なお、シール型202、203間の距離が所定距離D1である状態(すなわち可動型205が下死点に位置する状態)は、Z方向でシール型202、203の間に、ワーク(後述するロータコア32及びロータシャフト34)が支持かつシールされた状態に対応する。
【0056】
本実施例では、ストッパ部230は、上述したストッパ機能を実現できるように、シール型202、203との間で軸方向の荷重を伝達可能に構成される。具体的には、シール型202、203間の距離が所定距離D1である状態において、シール型202、203間の距離を更に小さくする方向の荷重が、後述する押圧荷重発生装置250によりシール型202、203に付与されると、ストッパ部230は、シール型202、203を介して当該荷重を受けることで、シール型202、203間の距離が所定距離D1よりも小さくなることを防止する。
【0057】
ストッパ部230は、例えば図2に示すように、固定型201に固定されてよい。ただし、変形例では、ストッパ部230は、シール型203側の部材に固定されてもよい。この場合、シール型203側の部材は、シール型203が押圧荷重発生装置250から受ける軸方向の荷重(後述する押圧荷重F50)をストッパ部230に伝達できる部材であれば任意であり、シール型203自体であってもよいし、可動型205であってもよい。
【0058】
ストッパ部230は、上述したストッパ機能を実現できる限り、配置位置や、形状、個数等は任意である。ただし、ストッパ部230は、好ましくは、基準軸Iまわりで、均一に上述したストッパ機能を実現できるように、基準軸Iまわりで均一に配置されてもよい。例えば、ストッパ部230は、基準軸Iまわりに延在する円環状の形態であってもよい。この場合、ストッパ部230は、芯出機構210及びカム機構220よりも径方向外側に配置されてもよい。
【0059】
本実施例では、一例として、ストッパ部230は、筒状(例えば円筒状)又は円柱状の形態であり、基準軸Iまわりに周方向で等間隔に配置される。この場合、ストッパ部230は、芯出機構210及びカム機構220よりも径方向外側に配置されてもよいが、本実施例では、一例として、ストッパ部230は、芯出機構210及びカム機構220とは異なる周方向の位置かつ同じ径方向の位置に、配置される。例えば、ストッパ部230は、周方向で120度間隔をおいて3つ配置されてもよい。あるいは、ストッパ部230は、周方向で60度間隔をおいて6つ配置されてもよい。いずれの場合も、ストッパ部230と芯出機構210とを配置しつつ、製造装置200の径方向の体格の低減を図ることができる。
【0060】
また、本実施例では、一例として、ストッパ部230は、Z方向に視て、可動型205に重なる。従って、可動型205が下死点に至ると、可動型205のストッパ当接面2057がストッパ部230のZ1側端面に当接する。この状態では、シール型203とストッパ部230との間は、可動型205を介して軸方向の荷重の伝達が可能である。
【0061】
なお、変形例では、ストッパ部230は、ストッパ部230とシール型203との間の軸方向の荷重の伝達経路を形成できる任意のシール型203側の部材(可動型205とは異なる部材)に対して、Z方向に視て重なってもよい(後述する図6参照)。
【0062】
液圧発生装置240は、ハイドロフォーミング用の液圧を発生する。液圧発生装置240は、例えばシール型203等に連通される。なお、液圧発生装置240は、シール型202、203の双方に連通されてもよい。
【0063】
押圧荷重発生装置250は、シール型202、203間の距離(基準軸Iに沿った距離)が小さくなる向きの荷重を、シール型202、203間に発生させる。押圧荷重発生装置250は、例えば油圧等に基づいて、上述した荷重を発生させてよい。押圧荷重発生装置250は、例えば、シール型203のZ1側の端面に、Z2側に向かうZ方向の荷重を付与するように構成されてもよい。なお、押圧荷重発生装置250は、シール型203に直接的に荷重を作用させてもよいし、他の部材を介して作用させてもよい。
【0064】
なお、本実施例では、上述したように、可動型205にシール型203が一体的に取り付けられているので、シール型203に作用する軸方向の荷重は、可動型205にも同様に作用する。従って、本実施例では、押圧荷重発生装置250は、可動型205を上死点から下死点まで移動させるための駆動力を発生する動力源としても機能できる。すなわち、本実施例では、押圧荷重発生装置250は、可動型205を上死点から下死点まで移動させるための駆動力や、後述する各種の軸方向の荷重(例えば押圧荷重F50等)を発生する機能を有することができる。
【0065】
なお、本実施例とは異なり、可動型205がシール型203に対してZ方向に移動可能な変形例の場合でも、可動型205にシール型203の外周部2037がZ方向に当接することで、シール型203に作用する軸方向の荷重は、可動型205にも同様に作用する。従って、このような変形例の場合も、押圧荷重発生装置250は、可動型205を上死点から下死点まで移動させるための駆動力や、後述する各種の軸方向の荷重(例えば押圧荷重F50等)を発生できる。
【0066】
このように本実施例による製造装置200によれば、シール型202、203に軸方向の荷重を伝達可能なストッパ部230が設けられるので、シール型202、203間の距離が、所定距離D1よりも小さくなることを、機械的に防止できる。これにより、シール型202、203間の距離が、所定距離D1よりも小さくなる場合に生じうる不都合(例えばワークとしてのロータシャフト34の座屈)を防止できる。
【0067】
また、本実施例による製造装置200によれば、ストッパ部230は、上述したように、Z方向で固定型201及び可動型205との間に設けられるので、可動型205が下死点よりもZ2側に移動することを防止できる。すなわち、ストッパ部230は、可動型205が下死点よりもZ2側に移動することを機械的に防止する更なるストッパ機能を果たすことができる。これにより、可動型205が下死点よりもZ2側に移動することを機械的に防止するためのストッパ部と、シール型202、203間の距離が所定距離D1よりも小さくなることを機械的に防止するためのストッパ部とを別々に設ける場合に比べて、効率的な構成を実現できる。
【0068】
また、本実施例による製造装置200によれば、上述したように、可動型205が下死点よりもZ2側に移動することを防止できるので、可動型205が下死点よりもZ2側に移動する場合に生じうる不都合を防止できる。例えば、可動型205が下死点よりもZ2側に移動してしまうと、可動型205とカム機構220を介して連動する芯出機構210による芯出し機能が損なわれるおそれ(例えばロータコア32の外周面に作用する径方向の力が過大となるおそれ等)があるが、本実施例による製造装置200によれば、かかる不都合を防止できる。
【0069】
次に、図3及び図4A図4Hを参照して、図2に示した製造装置200を用いたロータ30の製造方法の例について説明する。なお、以下では、製造装置200における液圧発生装置240や押圧荷重発生装置250の図示は省略されている。
【0070】
図3は、ロータ30の製造方法の流れを示す概略フローチャートであり、図4A図4Gは、図3に示すいくつかの工程におけるロータシャフト34及びロータコア32の状態を概略的に示す断面図である。なお、図4B図4D図4F、及び図4Gは、基準軸Iを含む平面で切断した際の断面図であり、図4Eは、基準軸Iに垂直な平面で切断した際の断面図である。
【0071】
まず、ロータ30の製造方法は、ワークとして、ロータシャフト34及びロータコア32のそれぞれ(互いに結合されていない状態)を、準備する準備工程(ステップS500)を含む。なお、ロータシャフト34の厚肉部347は、フローフォーミング加工又はスピニング加工等により形成されてよい。
【0072】
なお、この段階でのロータシャフト34は、図4Aに示すように、区間SC1に対応する部分の内径r1’が、製品状態の内径r1(図1参照)よりもわずかに小さくてよい。
【0073】
また、ロータシャフト34と同様に、この段階でのロータコア32は、外径が製品状態の外径よりもわずかに小さくてよい。これは、後述する締結工程においてロータコア32は、ロータシャフト34の拡径に伴って径方向外側にわずかに変形するためである。
【0074】
ついで、ロータ30の製造方法は、図4Bに示すように、ロータシャフト34及びロータコア32を、製造装置200に対してセットする配置工程(ステップS502)を含む。固定型201の中空部2011内にロータシャフト34のZ2側の部位が挿入される。なお、変形例では、固定型201の中空部2011内にロータシャフト34のZ1側の部位が挿入されてもよい。
【0075】
このようにして、ロータシャフト34及びロータコア32が、製造装置200の固定型201に対してセットされた状態では、製造装置200の固定型201は、ロータシャフト34及びロータコア32を同時にZ2側から支持し、ロータシャフト34及びロータコア32のZ2側への移動(変位)を拘束する。
【0076】
なお、ロータシャフト34及びロータコア32が、製造装置200の固定型201に対してセットされた状態では、ロータシャフト34の外径r11は、ロータコア32の内径(軸心の孔の径)r12よりもわずかに小さくてもよいし(図4E参照)、略同じであってもよい。
【0077】
また、ロータシャフト34及びロータコア32は、必ずしも同時に製造装置200の固定型201に対してセットされる必要はなく、順に製造装置200の固定型201に対してセットされてもよい。
【0078】
なお、本実施例では、一例として、配置工程(ステップS502)の際に、シール型202はすでに固定型201にセット(固定)されている。従って、本実施例で、ロータシャフト34は、配置工程の際に、中空部343内にZ2側のシール型202の部位2021が挿入されることによって、Z2側で芯出しされる。シール型202の部位2021の中心軸は、基準軸Iに対して正確に一致する。シール型202の部位2021は、ロータシャフト34のZ2側の小径部34Bの内径(図1の内径r2参照)に対応する外径を有する。なお、部位2021は、基準軸Iに垂直な平面で切断した際の断面の外形が円形であり、当該円形の外径は、ロータシャフト34のZ2側の小径部34Bの内径よりもわずかに小さくてよい。これにより、ロータシャフト34は、Z2側において、基準軸Iに対して正確に芯出しされたシール型202の部位2021により、径方向内側からある程度芯出しされる。
【0079】
ついで、配置工程が完了すると、Z方向に沿って可動型205を下死点に向けて移動させることで、Z方向で固定型201と可動型205との間に、ロータコア32及びロータシャフト34を支持する型締め工程(ステップS504)が実行される。
【0080】
本実施例では、一例として、型締め工程と連動して、シャフト芯出し工程(ステップS504A)と、コア芯出し工程(ステップS504B)、及びシール工程(ステップS504C)が実現される。ただし、変形例では、シャフト芯出し工程(ステップS504A)及び/又はコア芯出し工程(ステップS504B)は、型締め工程と連動しない態様で実現されてもよいし、省略されてもよい。
【0081】
シャフト芯出し工程(ステップS504A)は、図4Cに示すように、ロータシャフト34の中心軸I図4A参照)を、基準軸Iに合わせる。すなわち、シャフト芯出し工程は、ロータシャフト34を、製造装置200において規定される基準軸Iに対して芯出しする。
【0082】
本実施例では、図4Cに示すように、シャフト芯出し工程は、製造装置200のシール型203により実現される。具体的には、ロータコア32の芯出しは、シール型203と一体的に移動する可動型205を上死点から下死点よりもZ1側の位置(以下、「中間点」)まで移動させることで実現される。なお、中間点は、上死点と下死点との間であればよく、厳密に真ん中の位置である必要はない。
【0083】
具体的には、可動型205が中間点まで下降すると、それに伴い、Z1側のシール型203は、ロータシャフト34に対してZ1側からZ方向に沿ってZ2側へと移動して、シール型203の部位2031がロータシャフト34の中空部343内に挿入される。シール型203の部位2031の中心軸は、基準軸Iに対して正確に一致する。部位2031は、ロータシャフト34のZ1側の小径部34Bの内径(図1の内径r2参照)に対応する外径を有する。なお、部位2031は、基準軸Iに垂直な平面で切断した際の断面の外形が円形であり、当該円形の外径は、ロータシャフト34のZ1側の小径部34Bの内径よりもわずかに小さくてよい。これにより、ロータシャフト34は、基準軸Iに対して正確に芯出しされたシール型203の部位2031により、径方向内側からある程度芯出しされる。
【0084】
なお、本実施例では、上述したように、Z2側では、すでに、配置工程が完了した段階で、Z2側のシール型202により、ロータシャフト34が基準軸Iに対してある程度芯出しされている。
【0085】
このようにして、シャフト芯出し工程が完了すると、ロータシャフト34は、Z2側及びZ1側の双方において、シール型202、203のそれぞれの部位2021、2031により、径方向内側からある程度芯出しされる。この場合、ロータシャフト34の中心軸Iが基準軸Iに対してずれていると、ロータシャフト34は、シール型202、203のそれぞれの部位2021、2031により、中心軸Iが基準軸Iに一致するように、位置や姿勢がある程度矯正される。
【0086】
コア芯出し工程(ステップS504B)は、図4Dに示すように、ロータコア32の中心軸I図4A参照)を、基準軸Iに合わせる。すなわち、コア芯出し工程は、ロータコア32を、製造装置200において規定される基準軸Iに対して芯出しする工程を含む。
【0087】
本実施例では、図4Dに示すように、ロータコア32の芯出しは、上述した芯出機構210により実現される。具体的には、ロータコア32の芯出しは、芯出機構210とカム機構220を介して連動する可動型205を下死点に向けて更に移動させることで実現される。
【0088】
可動型205が下死点に向かって移動すると、上述したカム機構220が機能し、カム機構220を介して芯出機構210が機能する。すなわち、可動型205が下死点に向かって移動するにつれて、芯出機構210の可動部材213が径方向内側へと移動する。そして、可動型205が下死点まで移動すると、芯出機構210の可動部材213は、上述したように、芯出し位置に至る。可動部材213が芯出し位置に位置するときに、図4Eに示すように、ロータコア32の外周面に、芯出機構210の当接部材212の径方向内側の先端部2121が当接し、当接部材212の径方向内側の先端部2121がロータコア32の外周面を押圧する(図4D及び図4Eの力F30参照)。このようにして、本実施例では、基準軸Iに向かってロータコア32を径方向に押圧する芯出機構210により、ロータコア32を径方向外側から芯出できる。
【0089】
本実施例では、可動型205が下死点に至る過程で、上述したシャフト芯出し工程が実現されるとともに、シール工程(ステップS504C)が実現される。
【0090】
シール工程(ステップS504C)は、シール型202、203によりロータシャフト34の中空部343をロータシャフト34の外部に対してシールする。本実施例では、一例として、可動型205が下死点に至る直前に、Z1側のシール型203が、ロータシャフト34のZ1側の軸方向端部に対してZ方向に当接する。この場合、可動型205が下死点に至る際に、Z1側のシール型203が、ロータシャフト34に対してZ1側からZ方向に沿ってZ2側へと更に移動すると、ロータシャフト34をシール型202、203により良好にシールできる。なお、この場合、可動型205が下死点に至る直前から下死点に至る過程で、押圧荷重発生装置250(図2参照)は、ロータシャフト34を塑性変形させるような軸方向の荷重F40(図4D参照)を発生させる。すなわち、ロータシャフト34は、図4Dに模式的に示すように、シール型202、203から受ける荷重F40により塑性変形する。ただし、変形例では、かかる塑性変形が実現されないシール工程が実現されてもよい。この場合、以下の説明において、ロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42(図4F参照)は0である。
【0091】
本実施例では、可動型205が下死点に至ると、シール工程が完了となる。可動型205が下死点に至ると、シール型202、203間の距離(基準軸Iに沿った距離)が、あらかじめ規定された所定距離D1(図4D参照)に至り、ストッパ部230が機能する直前状態となる。すなわち、可動型205が下死点に至ると、可動型205のストッパ当接面2057がストッパ部230に当接する。可動型205のストッパ当接面2057がストッパ部230に当接すると、可動型205に更にZ2側に向かう荷重を押圧荷重発生装置250により作用させても、可動型205はZ2側に移動できない。すなわち、シール型202、203間の距離(基準軸Iに沿った距離)は、ストッパ部230によるストッパ機能により、所定距離D1よりも小さくならない。従って、可動型205のストッパ当接面2057がストッパ部230に当接した段階で、シール工程が完了となる。なお、シール工程が完了した段階では、押圧荷重発生装置250は、塑性変形したロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42(図4F参照)に釣り合う荷重を発生してよい。すなわち、シール工程が完了した段階では、押圧荷重発生装置250は、塑性変形したロータシャフト34のスプリングバックに抗して、可動型205を下死点に維持する荷重を発生してよい。
【0092】
このようにして、本実施例によれば、可動型205が下死点に至ると、ストッパ部230によって、固定型201に対する可動型205及びシール型203のZ軸方向の位置関係が同時に定まる。この位置関係は、シール工程ごと又はワークごとに変化せず、一定である。また、シール工程が完了した時点では、固定型201に対するワーク(ロータコア32とロータシャフト34)のZ軸方向の位置関係も定まっている。この位置関係も、シール工程ごと又はワークごとに変化せず、略一定である。これにより、ロータコア32とロータシャフト34の締結位置(後述する締結工程によって締結されるロータコア32とロータシャフト34との間の締結範囲であって、軸方向の締結範囲)の管理が容易になる。
【0093】
ついで、ロータ30の製造方法は、ハイドロフォーミングによりロータシャフト34にロータコア32を固定(締結)する締結工程(ステップS506)を含む。締結工程(ステップS506)は、上述したように、型締め工程が、シール工程(ステップS504C)が完了することで終了すると、実行される。なお、締結工程(ステップS506)は、型締め工程から連続して実行されてもよいし、型締め工程の終了後に他の工程を介して実行されてもよい。
【0094】
本実施例では、一例として、締結工程は、押圧工程(ステップS506A)と、ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)とを含む。
【0095】
押圧工程(ステップS506A)は、図4Fに示すように、シール型202、203がストッパ部230からZ方向の反力(図4Fの反力F52、反力F53参照)をシール型202、203が受けるように、シール型202、203に荷重F50(以下、「押圧荷重F50」と称する)を押圧荷重発生装置250により作用させる。なお、押圧荷重発生装置250は、上述したように、シール工程が完了した段階で、可動型205を下死点に維持する荷重を発生させる場合、当該荷重を低下させることなく連続的に押圧荷重F50を発生させてよい。
【0096】
図4Fに示す例では、シール型202、203は、固定型201及び可動型205に、それぞれ、外周部2027、2037で軸方向に当接している。従って、シール型202、203に押圧荷重F50が作用している状態では、シール型202、203は、シール型202、203間の距離を増加する向きの反力F53を、固定型201及び可動型205から受ける。シール型202、203が固定型201及び可動型205から受ける反力F53は、固定型201及び可動型205がストッパ部230から受ける反力F52と実質的に同じである。このようにして、本実施例では、シール型202、203は、固定型201及び可動型205を介して、ストッパ部230から反力F53を受けることができる。
【0097】
押圧荷重F50は、塑性変形したロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42よりも、有意に大きい。押圧荷重F50は、ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)の際に、ロータシャフト34内の内圧(図4GのP31参照)に起因してシール型202、203が受ける軸方向の力F54(図4G参照)と、塑性変形したロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42と、カム機構220の第2カム部材222からの反力F57に係る軸方向の分力F58(図4G参照)との合計よりも有意に大きくなるように、適合される。なお、反力F57は、後述するハイドロフォーミング工程(ステップS506B)においてロータシャフト34が拡径する(図4Gの矢印R70参照)際に生じる。なお、カム機構220が設けられない変形例では、反力F58のような軸方向の力は考慮されなくてよい。
【0098】
ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)は、図4Gに示すように、ハイドロフォーミングによりロータシャフト34にロータコア32を固定(締結)する。例えば、図4Gに模式的に示すように、ロータシャフト34がシール型202、203にZ方向に支持された状態で、液圧発生装置240(図2参照)によってシール型202、203を介して中空部343内に流体が導入される。そして、流体を加圧することで、ロータシャフト34の内周面340に対して内周面340に垂直な力(内圧)を付与する(図4Gの矢印P31参照)。これにより、ロータシャフト34が拡径し(図4Gの矢印R70参照)、ロータシャフト34とロータコア32との間の径方向の締め代が確保される(図4H参照)。すなわち、ロータシャフト34の内径r1’が内径r1へと拡大されるのに伴い、その分だけ外径r11が増加し、締め代が確保される。このようなハイドロフォーミングによれば、圧入のような、ロータシャフト34とロータコア32の嵌合方法で生じうる不都合(例えば圧入の際のロータコア32の倒れ等)を防止できる。
【0099】
本実施例では、ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)は、押圧工程(ステップS506A)において押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50を維持した状態で実行される。すなわち、押圧工程(ステップS506A)は、ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)と並列に実行される。なお、押圧工程とハイドロフォーミング工程とは、実行期間が互いに完全に一致する必要はなく、以下で説明する効果が得られる態様で実行期間が互いにオーバーラップしていればよい。
【0100】
ところで、ハイドロフォーミング工程中に、ロータシャフト34内の内圧(図4Gの矢印P31参照)が上昇すると、内圧による力F54や、カム機構220からの反力F57に係る軸方向の分力F58が増加し、内圧による力F54と、ロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42と、分力F58との合計が大きくなる。この際、仮に、押圧工程による押圧荷重F50が、当該合計よりも有意に小さくなると、シール型202、203間の距離が所定距離D1よりも大きくなり、シール工程で実現した良好なシール性が損なわれるおそれがある。
【0101】
この点、本実施例によりハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、かかる不都合が生じないような大きさに適合される。具体的には、ハイドロフォーミング工程中の押圧荷重F50は、内圧による力F54とカム機構220からの分力F58との合計の取りうる範囲の最大値に応じて、当該最大値に対して適切なマージンを有する態様で設定されてもよい。なお、かかるマージンは、最小限に留める必要はなく、比較的大きいマージンであってよい。これは、押圧工程による押圧荷重F50が、内圧による力F54とロータシャフト34のスプリングバックによる反力F42と、カム機構220からの反力F57に係る軸方向の分力F58との合計よりも有意に大きい場合でも、シール型202、203が固定型201及び可動型205を介してストッパ部230から比較的大きい反力F53を受けるだけであるためである。シール型202、203や固定型201及び可動型205が剛体であるので、シール型202、203が固定型201及び可動型205を介してストッパ部230から比較的大きい反力F53を受けても、耐久性が有意に低下することはない。換言すると、ストッパ部230からの反力F53は、上述したマージンとして機能するので、反力F53が大きいほど、外乱等に対してロバストに良好なシール性を維持できる点で有利となる。ただし、押圧荷重発生装置250により発生させる押圧荷重F50を無駄に高める必要はなく、反力F53の上限値が過大とならないように適合されてよい。
【0102】
本実施例では、一例として、ハイドロフォーミング工程中の押圧荷重F50は、ロータシャフト34の軸方向端部が座屈するときの座屈荷重以上である。このような押圧荷重F50は、ストッパ部230が存在しない場合は、ロータシャフト34の軸方向端部の座屈を引き起こすことから、利用できない。換言すると、本実施例によれば、ストッパ部230が設けられるので、このような比較的大きい押圧荷重F50を利用できる。このような比較的大きい押圧荷重F50を利用することで、ハイドロフォーミング工程(ステップS506B)の際に、ロータシャフト34内の内圧(図4GのP31参照)に起因してシール型202、203が受ける軸方向の力F54や、カム機構220からの分力F58が比較的大きく増加した場合でも、かかる力F54や分力F58の増加に起因して、可動型205が下死点からZ1側に移動してしまうこと(すなわちシール型202、203間の距離が所定距離D1よりも大きくなり、シール工程で実現した良好なシール性が損なわれること)を防止できる。換言すると、ロータシャフト34内の内圧を比較的高くしても、シール工程で実現した良好なシール性を維持できるので、ロータシャフト34の拡径量を増加させてロータシャフト34とロータコア32との間の径方向の締め代を効果的に増加できる。
【0103】
なお、本実施例において、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、ハイドロフォーミング工程中の全期間にわたって一定であってもよい。例えば、ハイドロフォーミング工程中における押圧荷重発生装置250による押圧荷重F50の発生状態は、ハイドロフォーミング工程の開始前から開始され、ロータシャフト34の拡径が完了し、その後、ロータシャフト34内の内圧が完全に低下した後に、解除されてもよい。あるいは、ハイドロフォーミング工程中における押圧荷重発生装置250による押圧荷重F50の発生状態は、ハイドロフォーミング工程の開始前から開始され、ロータシャフト34の拡径が完了した後、ロータシャフト34内の内圧が完全に低下する前に解除されてもよい。
【0104】
この場合、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、上述したような座屈荷重以上の所定の一定値に維持されてもよい。例えば、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50が、上述したような座屈荷重以上の所定の一定値に達すると、ハイドロフォーミング工程が開始されてもよい。そして、ロータシャフト34の拡径が完了した後、ロータシャフト34内の内圧が完全に低下した後又は低下する前に、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50が、低下されてもよい。この場合、制御が複雑化せず、単純な制御を実現でき、また、外乱等によってロータシャフト34内の内圧が急変した場合でも、良好なシール性を維持できる。
【0105】
あるいは、本実施例において、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、ロータシャフト34内の内圧の変化に応じて変化されてもよい。例えば、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、ロータシャフト34内の内圧が増加するにつれて、増加し、ロータシャフト34内の内圧が減少するにつれて、減少するように、制御されてもよい。この場合、ハイドロフォーミング工程中に押圧荷重発生装置250により発生される押圧荷重F50は、上述したストッパ部230からの反力F53(上述したマージン)が略一定になるような態様で、内圧の測定値や反力F53の測定値等に応じてフィードバック制御されてもよい。この場合、押圧荷重発生装置250の動作の効率化を図ることができる。
【0106】
ついで、ロータ30の製造方法は、下死点に位置する可動型205を、上死点まで上昇させる工程(ステップS507)を含む。例えば、押圧荷重発生装置250により発生させる軸方向の荷重を、上述した押圧荷重F50のような比較的大きい値から徐々に低下させていく。可動型205は、例えば、上死点に向けてスプリング等の付勢手段(図示せず)により付勢されてよく、この場合、押圧荷重発生装置250により発生させる軸方向の荷重が徐々に低下すると、当該付勢手段からの付勢力によって可動型205は上死点に向けて徐々に上昇していく。なお、変形例では、可動型205を上死点に向けて移動させる軸方向の荷重を発生させる別の荷重発生装置(押圧荷重発生装置250とは異なる荷重発生装置)が設けられてもよい。
【0107】
なお、可動型205が上死点に位置する状態では、上述したように、可動部材213が退避位置に位置する。従って、固定型201のZ1側の空間が開けるので、締結されたロータシャフト34及びロータコア32の取り出しが容易となる。
【0108】
ついで、ロータ30の製造方法は、ロータシャフト34において第1噴出孔341及び第2噴出孔342に対応する孔を形成する噴出孔形成工程(ステップS508)を含む。なお、噴出孔形成工程は、ロータシャフト34を製造装置200から取り出してから実行されてよい。噴出孔形成工程(ステップS508)が終了すると、最終的なロータシャフト34(ロータコア32が締結された状態での最終的なロータシャフト34)が出来上がる。
【0109】
ついで、ロータ30の製造方法は、その他の仕上げ工程(ステップS510)を含む。その他の仕上げ工程は、回転バランスを調整する工程等を含んでよい。
【0110】
このようにして、図3及び図4A図4Hを参照して説明したロータ30の製造方法によれば、ストッパ部230を設けることで、ロータシャフト34の軸方向端部の座屈を起こすことなく、ハイドロフォーミング工程中に、比較的高い押圧荷重F50を押圧荷重発生装置250により発生させることができる。これにより、ハイドロフォーミング工程において、ロータシャフト34内の内圧を比較的高くすることができ、その結果、ロータコア32とロータシャフト34との締結に係る締め代を適切に確保できる。
【0111】
なお、上述した実施例では、シール型203は、可動型205に固定され、可動型205と一体的に上下動するが、上述したように、シール型203は、可動型205に対して相対的に上下動可能であってもよい。この場合も、シール型202、203間の距離が所定距離D1であるときに、シール型203の外周部2037が可動型205と軸方向に当接するので、ストッパ部230とシール型203とは、可動型205を介して軸方向の荷重が伝達可能となる。従って、シール型203が可動型205に対して相対的に上下動可能な構成であっても、シール工程が完了した後の状態は、同じであり、上述と同様の効果が得られる。
【0112】
次に、図5に示す比較例を参照して、本実施例の効果を補足する。
【0113】
図5は、比較例による製造装置200’による締結工程の状態を示す図である。なお、図5では、図の見易さを考慮して、基準軸Iよりも左側だけに、荷重の伝達態様を模式的に表す力F500、F504に係る矢印が示されている。
【0114】
比較例による製造装置200’は、本実施例による製造装置200に対して、シール型202、203がシール型202’、203’で置換された点が異なる。
【0115】
シール型202’は、本実施例による製造装置200のシール型202とは異なり、ストッパ部230との間で軸方向の荷重を伝達できない。また、シール型203’は、本実施例による製造装置200のシール型203とは異なり、ストッパ部230との間で軸方向の荷重を伝達できない。換言すると、比較例では、ストッパ部230は、可動型205が下死点よりもZ2側に移動することを防止する機能(力F504参照)のみを備え、シール型202’、203’間の軸方向距離を機械的に規制する機能を備えていない。
【0116】
このような比較例では、シール型202’、203’間の軸方向距離を所定距離D1に維持するようにシール型202’、203’に作用させる軸方向の力F502の大きさを制御することが難しい。特に、締結工程中は、ロータシャフト34内の内圧が動的に変化するので、軸方向の力F502をロータシャフト34内の内圧の変化に応答性良くかつ精度良く追従させる複雑な制御が必要となるためである。例えば、締結工程中にロータシャフト34を拡径させるべくロータシャフト34内の内圧が急激に増加したとき、当該急激な増加に軸方向の力F502が応答性良くかつ精度良く追従できないと、シール型202’、203’による良好なシール状態が損なわれるおそれがある。また、締結工程中にロータシャフト34の拡径後にロータシャフト34内の内圧が急激に低下したとき、当該急激な低下に軸方向の力F502が応答性良くかつ精度良く追従できないと、ロータシャフト34の軸方向端部の座屈が生じるおそれがある。
【0117】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、シール型202、203とストッパ部230との間で軸方向の荷重が伝達可能であるので、このような比較例で生じる不都合を効果的に防止できる。すなわち、上述したような比較的簡易な制御態様で押圧荷重F50を発生させるだけで、このような比較例で生じる不都合を効果的に防止できる。
【0118】
また、図5に示す比較例では、シール型203に作用させる軸方向の力F502と、可動型205を下降させるための軸方向の力F500とを、互いに別に発生させる機構が必要となりうる。
【0119】
これに対して、本実施例によれば、上述したように、シール型203とストッパ部230との間の軸方向の荷重は、可動型205を介して伝達可能である。従って、本実施例によれば、押圧荷重発生装置250による荷重を例えばシール型203に作用させれば、可動型205を動かすことができ、このような比較例で生じるこれらの不都合を効果的に防止できる。
【0120】
次に、図6を参照して、他の実施例について説明する。
【0121】
図6は、他の実施例による製造装置200Aによる締結工程の状態を示す図である。なお、図6では、図の見易さを考慮して、基準軸Iよりも右側だけに、荷重の伝達態様を模式的に表す力F600、F602、F604に係る矢印が示されている。
【0122】
他の実施例による製造装置200Aは、上述した実施例による製造装置200に対して、ストッパ部230がストッパ部230Aに置換され、ホルダ260、261が追加された点が主に異なる。
【0123】
他の実施例による製造装置200Aでは、ストッパ部230Aは、Z方向でホルダ260、261間に配置される。例えば、ストッパ部230Aは、ホルダ260に固定されてよい。なお、ストッパ部230Aの形態は、上述した実施例によるストッパ部230と同じであってよい。図6に示す例では、ストッパ部230Aは、円環状の形態で図示されている。
【0124】
ホルダ260は、固定型201に例えばボルト等により固定されてよい。ホルダ260は、固定型201の径方向外側に配置され、固定型201に対して軸方向の力が伝達可能に接続される。具体的には、ホルダ260は、軸方向に視て、固定型201に重なる内周部2601を有し、内周部2601を介して固定型201との間で軸方向の力が伝達可能である。これにより、シール型202とストッパ部230Aとの間では、ホルダ260及び固定型201を介して、軸方向の力が伝達可能である。
【0125】
ホルダ261は、可動型205に例えばボルト等により固定されてよい。ホルダ261は、可動型205とともに上下動する。ホルダ261は、可動型205の径方向外側に配置され、可動型205に対して軸方向の力が伝達可能である。具体的には、ホルダ261は、軸方向に視て、可動型205に重なる内周部2611を有し、内周部2611を介して可動型205との間で軸方向の力が伝達可能である。これにより、シール型203とストッパ部230Aとの間では、ホルダ261及び可動型205を介して、軸方向の力が伝達可能である。
【0126】
このように、他の実施例による製造装置200Aによっても、シール型202、203とストッパ部230Aとの間で軸方向の荷重が伝達可能であるので、上述した実施例による製造装置200と同様の効果が得られる。
【0127】
また、他の実施例による製造装置200Aによれば、ホルダ260、261が固定型201及び可動型205の径方向外側に配置されるので、固定型201及び可動型205の径方向の体格を低減できる。これにより、固定型201及び/又は可動型205の交換や整備がしやすくなる。また、多様な軸方向端部の形状を有しうるロータシャフト34のバリエーションにも、固定型201及び/又は可動型205の交換だけで対応可能となる。すなわち、ホルダ260、261は、多様な軸方向端部の形状を有しうるロータシャフト34のバリエーションに対して共用できる。
【0128】
また、他の実施例による製造装置200Aによれば、固定型201及び可動型205の径方向外側に位置するホルダ260、261の間(Z方向の間)にストッパ部230Aが配置されるので、ストッパ部230Aとワークとの間の径方向のスペースを広くすることができる。これにより、ストッパ部230Aとワークとの間の径方向のスペースに、例えば芯出機構210(図6では図示せず)を配置することも可能となりうる。
【0129】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。また、各実施例の効果のうちの、従属項に係る効果は、上位概念(独立項)とは区別した付加的効果である。
【0130】
例えば、上述した実施例において、ストッパ部230、230Aは、固定型201に固定されるが、脱着が容易な態様で固定型201に固定されてもよい。例えば、ストッパ部230、230Aは、ボルト等により固定型201に固定されてもよい。この場合、ストッパ部230、230Aの交換や整備等が容易となる。
【0131】
また、上述した実施例において、ストッパ部230、230Aは、高さH1が調整可能であってもよいし、高さH1が異なる複数のバリエーションを有してもよい。この場合、ストッパ部230、230Aの高さH1を変更することで、軸方向の長さが異なる多様なロータシャフト34やロータコア32にも適用可能となる。すなわち、シール型202、203間の距離に関する上述した所定距離D1を可変とすることができる。
【0132】
また、上述した実施例では、ロータシャフト34は、軸方向両側で軸方向に開口しているが、軸方向の一方側が開口していない構成であってもよい。この場合、シール型202、203のうちの一方が、軸方向の支持機能のみを備える型となるだけであり、上述したストッパ部230、230Aによる効果は依然として奏される。
【0133】
また、上述した実施例では、シール型202は、固定型201に対して固定されているが、固定型201に対して移動しない他の部材に固定されてもよい。あるいは、シール型202は、少なくとも図3のステップS504A及びステップS506の間だけ、固定型201に対して移動しない状態が実現されてもよい。この場合、シール型202は、固定型201を介してストッパ部230、230Aから軸方向の荷重が伝達されない構成であってもよい。例えば、シール型202は、固定型201とともにZ2側でベース部材(図示せず)又は床面に支持されてもよい。この場合、外周部2027は、省略されてもよい。また、上述した他の実施例による製造装置200Aにおいては、ホルダ260が固定型201とともにZ2側でベース部材(図示せず)又は床面に支持される場合、内周部2601は省略されてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1・・・モータ(回転電機)、30・・・ロータ、32・・・ロータコア、34・・・ロータシャフト、343・・・中空部、200・・・製造装置、202、203・・・シール型(シャフト支持部材)、230、230A・・・ストッパ部、250・・・押圧荷重発生装置(荷重発生装置)、240・・・液圧発生装置
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G
図4H
図5
図6