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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077765
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】人体加熱装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/10 20060101AFI20220517BHJP
   F24H 1/18 20220101ALI20220517BHJP
   F24H 15/212 20220101ALI20220517BHJP
【FI】
A61H33/10 A
F24H1/18 A
F24H1/18 302E
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188753
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】520443376
【氏名又は名称】小泉 正太
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小泉 正太
【テーマコード(参考)】
3L122
4C094
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA34
3L122AA61
3L122AB12
3L122AB22
3L122AB42
3L122BB06
3L122EA47
4C094AA01
4C094BA18
4C094BA25
4C094DD08
4C094DD35
4C094EE03
4C094EE13
4C094EE20
4C094GG03
(57)【要約】
【課題】従来よりも装置構成が簡単であり、容易に施工することのできる人体加熱装置を提供する。
【解決手段】人体加熱装置10は、上方側が開放された貯湯容器100と、貯湯容器100を上方側から覆う板状の部材であって、その上面に使用者の体が載置される床部材230と、を備える。この人体加熱装置10は、貯湯容器100に貯留された湯の熱により、床部材20が加熱されるように構成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方側が開放された貯湯容器と、
前記貯湯容器を上方側から覆う板状の部材であって、その上面に使用者の体が載置される床部材と、を備え、
前記貯湯容器に貯留された湯の熱により、前記床部材が加熱されるように構成された人体加熱装置。
【請求項2】
前記床部材が通気性を有している、請求項1に記載の人体加熱装置。
【請求項3】
前記床部材が溶岩により形成されている、請求項2に記載の人体加熱装置。
【請求項4】
前記貯湯容器に貯留された湯の水位を、所定水位に維持する水位維持部を更に備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の人体加熱装置。
【請求項5】
前記所定水位は、前記床部材の下端位置よりも高く、且つ、前記床部材の上端位置よりも低い、請求項4に記載の人体加熱装置。
【請求項6】
前記水位維持部には、
前記所定水位において開口が形成されたオーバーフロー配管が含まれる、請求項4又は5に記載の人体加熱装置。
【請求項7】
前記貯湯容器に貯留された湯の温度を調整する湯温調整部を更に備える、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の人体加熱装置。
【請求項8】
前記湯温調整部には、
前記貯湯容器から湯を引き込んで加熱し、加熱後の湯を前記貯湯容器に供給するように構成された給湯装置が含まれる、請求項7に記載の人体加熱装置。
【請求項9】
前記湯温調整部は、
前記貯湯容器と前記給湯装置との間で湯を循環させながら、前記貯湯容器に貯留された湯の温度を調整する、請求項8に記載の人体加熱装置。
【請求項10】
前記貯湯容器の内側には、
前記貯湯容器から前記給湯装置に湯を引き込むための引込配管の端部、である第1端部と、
前記給湯装置から前記貯湯容器に湯を供給するための供給配管の端部、である第2端部と、がそれぞれ配置されている、請求項9に記載の人体加熱装置。
【請求項11】
前記第1端部は、前記貯湯容器の長手方向に沿った一方側の壁面近傍となる位置に配置されており、
前記第2端部は、前記貯湯容器の長手方向に沿った他方側の壁面近傍となる位置に配置されている、請求項10に記載の人体加熱装置。
【請求項12】
前記第1端部へと湯が引き込まれる方向は、前記貯湯容器の長手方向に沿った前記一方側の壁面、に対して傾斜した方向である、請求項11に記載の人体加熱装置。
【請求項13】
前記第2端部から湯が供給される方向は、前記貯湯容器の長手方向に沿った前記他方側の壁面、に対して傾斜した方向である、請求項11又は12に記載の人体加熱装置。
【請求項14】
前記湯温調整部は、前記貯湯容器に貯留された湯の温度を所定の目標湯温度となるように調整する、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の人体加熱装置。
【請求項15】
前記目標湯温度を、使用者の操作に基づいて設定する湯温設定部、を更に備える、請求項14に記載の人体加熱装置。
【請求項16】
前記湯温調整部は、前記床部材の温度が所定の目標床温度となるように、前記貯湯容器に貯留された湯の温度を調整する、請求項7乃至13のいずれか1項に記載の人体加熱装置。
【請求項17】
前記目標床温度を、使用者の操作に基づいて設定する床温設定部、を更に備える、請求項16に記載の人体加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、人体を加熱する人体加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
岩盤から発せられる遠赤外線を用いることで人体を加熱する、所謂「岩盤浴」と称される入浴方法が知られている。このような岩盤浴を可能とするための設備は、一部の入浴施設等において既に設置されているが、近年の健康志向の高まりから、今後も広く普及して行くものと考えられる。
【0003】
本発明者らは、一般の住宅用家屋を含む多くの施設においても、岩盤浴と同様の人体加熱を可能とするために、人体加熱装置の研究開発に鋭意取り組んできた。このような人体加熱装置としては、例えば、下記特許文献1に記載されているミネラル蒸気生成装置が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-27220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の装置では、例えば溶岩のような天然石からなる重し板を備えており、当該重し板の上面に、使用者の体、すなわち加熱対象である人体が載置される。重し板の下方側には、鉱物層、給水管、ヒーター等が設けられている。当該装置では、給水管の穴から漏出した水を、ヒーターにより加熱することで水蒸気を発生させる。発生した水蒸気は、上方側にある重し板を加熱するとともに、重し板に形成された気孔を通じて人体の周囲に供給される。重し板から発せられる遠赤外線や水蒸気により、使用者の体内深部温度が上昇する。その結果、疲労回復、代謝の改善、肝機能の改善等、様々な効果を得ることができる。
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の装置では、重し板の下方側に給水管やヒーター等を設置する必要があり、更には、水蒸気を各部で均等に生じさせるための調整等をも行う必要がある。このため、建物への施工には特別な技術やノウハウが必要であり、限られた作業者しか施工作業を行うことができなかった。このように、従来の人体加熱装置では、装置構成を簡単なものとすることや、施工を容易なものとすることに関し、更なる改良の余地があった。
【0007】
本開示は、従来よりも装置構成が簡単であり、容易に施工することのできる人体加熱装置、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る人体加熱装置は、上方側が開放された貯湯容器と、貯湯容器を上方側から覆う板状の部材であって、その上面に使用者の体が載置される床部材と、を備える。この人体加熱装置は、貯湯容器に貯留された湯の熱により、床部材が加熱されるように構成されている。
【0009】
このような構成の人体加熱装置では、貯湯容器の上方側を床部材で覆うという簡単な構成としながら、床部材の上に載置された人体を遠赤外線によって加熱し、先に述べた疲労回復等の様々な効果を得ることができる。また、このような人体加熱装置を建物に施工する際には、浴槽を設置する際と同様のノウハウや技術をそのまま用いることができる。つまり、上記構成の人体加熱装置を施工するにあたっては、特別なノウハウや技術は必要とされないので、例えば水道工事店の作業員等が容易に施工することができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、従来よりも装置構成が簡単であり、容易に施工することのできる人体加熱装置、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、第1実施形態に係る人体加熱装置が施工された部屋の構成を示す図である。
図2図2は、人体加熱装置を上方側から見て描いた図である。
図3図3は、人体加熱装置が備える床部材の構成を示す図である。
図4図4は、図2のIV-IV断面を表す図である。
図5図5は、人体加熱装置の内部構成を示す図である。
図6図6は、人体加熱装置が備える石受枠の構成を示す斜視図である。
図7図7は、第2実施形態に係る人体加熱装置の構成について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0013】
第1実施形態について説明する。本実施形態に係る人体加熱装置10は、例えば一般的な住宅家屋に設置され、当該住宅家屋の浴室等において、岩盤浴による人体の加熱を可能とするものである。図1には、人体加熱装置10が施工された部屋SRの構成例が示されている。この例において、部屋SRは、周囲を壁13で囲まれた空間であり、人体加熱装置10を設置するための専用の部屋として設けられている。図1において符号11が付されているのは、部屋SRの入口として設けられた扉である。以下においては、当該扉のことを「扉11」とも表記する。
【0014】
部屋SRには、扉11の近傍における床12から一段高くなった水平面として、台面14が設けられている。台面14には、上面視で長方形の開口が形成されており、当該開口を塞ぐように、人体加熱装置10の一部である床部材20が複数配置されている。それぞれの床部材20は、例えば溶岩板のような通気性を有する岩盤を加工したものである。複数並べられた床部材20の上面が、使用者が横たわる部分、すなわち、加熱対象である人体が載置される部分となっている。それぞれの床部材20は、その外形において互いに同一である。
【0015】
人体加熱装置10では、後に説明する機構によって床部材20が加熱される。このとき、床部材20から発せられる遠赤外線や水蒸気によって、床部材20に載置された人体の深部体温が上昇する。これにより、疲労回復、代謝の改善、肝機能の改善等、様々な効果を得ることができる。
【0016】
部屋SRの壁13には、人体加熱装置10の一部である操作部30が取り付けられている。操作部30は、例えば床部材20の温度を変更するなどの目的で、使用者によって操作されるリモコンである。操作部30によって設定される項目については後に説明する。
【0017】
図2は、部屋SRに設置された状態の人体加熱装置10を、上方側から見て描いた図である。同図には、人体加熱装置10の周囲に配置された複数の板材60も示されている。それぞれの板材60の上面が、先に述べた台面14となっている。複数の板材60のうち、扉11の近傍において床部材20と隣り合う位置に配置された板材60のことを、以下では特に「板材61」とも表記する。板材61には、これを上下方向に沿って貫通するように、後述の点検穴62が2つ形成されている。通常時においては、点検穴62は不図示の蓋によって塞がれた状態となっている。
【0018】
複数の板材60の内側に形成された長方形の開口には、先に述べたように、床部材20が複数配置されている。図3には、1枚の床部材20が斜視図として示されている。床部材20は、上面視において正方形となるように形成された板状部材である。本実施形態では、図2に示されるように、10枚の床部材20が2行×5列に並ぶように配置されている。床部材20の枚数や配置は、部屋SRの形状や広さに合わせて適宜変更してもよい。
【0019】
本実施形態では、互いに材料の異なる2種類の床部材20が用いられている。図1図2において、符号21が付されている床部材20は、岩密度が低く空隙率が高い岩盤を用いて形成されている。符号21が付されている床部材20のことを、以下では「床部材21」とも表記する。
【0020】
図1等において、符号22が付されている床部材20は、上記の床部材21の材料に比べて、岩密度が高く空隙率が低い岩盤を用いて形成されている。符号22が付されている床部材20のことを、以下では「床部材22」とも表記する。
【0021】
床部材21及び床部材22は、人体加熱装置10において交互に並ぶように配置されている。床部材20として、岩密度や空隙率が相対的に異なる二種類の部材が用いられていることの理由については、後に説明する。
【0022】
図4には、図2のIV-IV断面が模式的に示されている。同図に示されるように、人体加熱装置10は、床部材20に加えて、貯湯容器100と、石受枠200と、架台300と、を備えている。
【0023】
貯湯容器100は、上方側が開放されたステンレス製の容器であって、床部材20の下方側において湯を貯留しておくためのものである。図4に示されるように、貯湯容器100は、複数の床部材20及び板材61によって上方側から覆われている。また、貯湯容器100の側面及び底面は、断熱材120によって外側から覆われている。
【0024】
図5には、貯湯容器100が上面視で描かれている。同図に示されるように、貯湯容器100のうち湯が貯留される部分の上面視における外形は、図2のように並べられた全ての床部材20及び板材61の外形と概ね等しい。
【0025】
図4及び図5に示されるように、貯湯容器100の内側面には、全周に亘って伸びるように支持部110が固定されている。支持部110は、L字形状の断面を有するステンレス製の板状部材であって、そのうちの一部が貯湯容器100の内側面に対し溶接されている。支持部110のうち残りの部分は、上記のように貯湯容器100の内側面に溶接された部分の上端から、水平面に沿って内側へと伸びている。当該部分は、所定の高さ位置において、次に述べる石受枠200を下方から支える部分となっている。
【0026】
石受枠200は、上記の支持部110の上に載置されるものであり、複数の床部材20を下方側から支持するための部材である。図6には、石受枠200が上面視で描かれている。同図に示されるように、石受枠200の上面視における外形は、図2のように並べられた全ての床部材20及び板材61の外形と概ね等しい。
【0027】
石受枠200は、ステンレス製の角パイプ210と、同じくステンレス製の支持柱211と、を複数組み合わせることにより形成されている。支持柱211は、図4に示されるように、L字形状もしくはT字形状の断面を有する板状部材である。
【0028】
角パイプ210は、図2のように並べられた全ての床部材20及び板材61の外形、に概ね沿うように配置されている。支持柱211は、互いに隣り合う床部材20の境界、及び、床部材と板材61との境界に沿って、角パイプ210の内側に配置されている。
【0029】
石受枠200を図6のように上方側から見た場合には、石受枠200には、複数の開口201及び開口202が形成されている。開口201は、それぞれの床部材20と対応する位置に形成された矩形の開口である。開口202は、板材61と対応する位置に形成された矩形の開口である。
【0030】
それぞれの床部材20は、角パイプ210及び支持柱211によってその4辺を下方から支持された状態で、開口201を上方側から塞ぐように設けられる。このため、それぞれの床部材20は、貯湯容器100に貯留されている湯に対し、開口201を通じて直接触れた状態となっている。
【0031】
図4に示されるように、板材61は、支持部材220を介して下方側から支持されている。支持部材220は、ステンレス鋼を曲げ加工することにより形成された上面視矩形の部材である。支持部材220は、角パイプ210及び支持柱211によってその4辺を下方から支持された状態で、石受枠200の開口202を上方側から塞ぐように設けられる。
【0032】
板材61は、支持部材220を更に上方側から覆うように設けられる。支持部材220の厚さは、床部材20の厚さと概ね等しい。従って、上記のように配置された板材61の下端面の高さは、床部材20の上面の高さと概ね等しい。支持部材220のうち、板材61に形成された点検穴62の直下となる位置のそれぞれには、上下方向に貫通する貫通穴221が形成されている。
【0033】
架台300は、部屋SRの床12上において、貯湯容器100を下方から支持するためのものである。図4に示されるように、貯湯容器100の外周側には鍔部103が形成されており、鍔部103が架台300によって下方側から支持されている。
【0034】
架台300には、下方側に向けて突出するように複数の脚310が設けられており、それぞれの脚310の下端が床12に当接している。それぞれの脚310は、その長さを不図示の螺子により調節することができる。これにより、貯湯容器100の上端面を水平面に沿わせた状態とすることが可能となっている。
【0035】
人体加熱装置10が備えるその他の構成について説明する。図5に示されるように、人体加熱装置10は、給湯器40と、引込配管410と、供給配管420と、を更に備えている。
【0036】
給湯器40は、貯湯容器100から湯を引き込んで加熱し、当該湯を貯湯容器100に供給することで、貯湯容器100に貯留されている湯の温度を所定温度に保つための装置である。給湯器40としては、例えば一般的なガス給湯器等を用いることができる。給湯器40は、人体加熱装置10のための専用の給湯装置として設けられてもよいのであるが、例えば台所等と兼用の給湯装置として設けられてもよい。いずれの場合でも、給湯器40は部屋SRの外側に設置される。ただし、板材60の下方側の空間において空きスペースを確保できる場合には、当該スペースに給湯器40が設置されることとしてもよい。
【0037】
引込配管410は、貯湯容器100から給湯器40へと湯を引き込むために設けられた配管である。引込配管410の一端側は給湯器40に接続されている。引込配管410の他端側は、貯湯容器100の底面のうち、長手方向に沿った一端側の端部近傍となる位置に接続されている。
【0038】
引込配管410のうち、上記のように貯湯容器100に接続されている方の端部のことを、以下では「第1端部411」とも表記する。第1端部411は、貯湯容器100の底面から貯湯容器100の内側に向けて突出しており、その先端には、貯湯容器100から引き込まれる湯の入口となる開口412が形成されている。このように、引込配管410の第1端部411は貯湯容器100の内側に配置されている。
【0039】
貯湯容器100のうち、その長手方向に沿った一方側の側壁面、具体的には、上記の第1端部411が近くに配置されている方の短辺側の側壁面のことを、以下では「壁面101」とも表記する。図5においては、第1端部411の開口412に湯が引きまれる方向が、矢印AR1で示されている。当該方向は、壁面101の法線方向に対し上面視で45度傾斜した方向であり、且つ、第1端部411が近くに配置されている方の長辺側に向かう方向となっている。
【0040】
供給配管420は、給湯器40から貯湯容器100へと湯を供給するために設けられた配管である。供給配管420の一端側は給湯器40に接続されている。供給配管420の他端側は、貯湯容器100の底面のうち、長手方向に沿った一端側の端部近傍となる位置、具体的には、第1端部411が配置されている方とは反対側の端部近傍となる位置に接続されている。
【0041】
供給配管420のうち、上記のように貯湯容器100に接続されている方の端部のことを、以下では「第2端部421」とも表記する。第2端部421は、貯湯容器100の底面から貯湯容器100の内側に向けて突出しており、その先端には、貯湯容器100へと供給される湯の出口となる開口422が形成されている。このように、供給配管420の第2端部421は貯湯容器100の内側に配置されている。
【0042】
貯湯容器100のうち、その長手方向に沿った一方側の側壁面、具体的には、上記の第2端部421が近くに配置されている方の短辺側の側壁面のことを、以下では「壁面102」とも表記する。図5においては、第2端部421の開口422から湯が供給される方向が、矢印AR2で示されている。当該方向は、壁面102の法線方向に対し上面視で45度傾斜した方向であり、且つ、第2端部421が近くに配置されている方の長辺側から遠ざかる方向となっている。
【0043】
人体加熱装置10は、排水配管510と、オーバーフロー配管520と、を更に備えている。
【0044】
排水配管510は、貯湯容器100に貯留されている湯を、外部に排出するための配管である。排水配管510の一端は、貯湯容器100の底に形成された排水穴512に対し、下方側から接続されている。排水配管510の他端は、建物に設けられた不図示の排水管へと接続されている。排水配管510の途中には、電磁弁513が設けられている。電磁弁513は、外部からの信号に応じてその開閉を切り換えることのできる弁である。電磁弁513は、人体加熱装置10が使用されている通常時においては閉状態とされる。電磁弁513の開閉動作は、後述の制御装置50により制御される。
【0045】
オーバーフロー配管520は、貯湯容器100に貯留された湯の水位が所定水位を超えることの無いように、余剰分の湯を外部に排出するための配管である。図4に示されるように、オーバーフロー配管520は、貯湯容器100の底から上方側に向かって伸びるように配置されており、その上端には、上方側に向けられた開口521が形成されている。開口521が配置されている高さ位置は、床部材20の下端位置よりも高く、且つ、床部材20の上端位置よりも低い位置である。オーバーフロー配管520は2本設けられている。それぞれのオーバーフロー配管520の開口521は、板材61に形成された点検穴62の直下となる位置に配置されている。貯湯容器100よりも下方側の部分において、それぞれのオーバーフロー配管520は、排水配管510のうち、電磁弁513よりも下流側となる部分に接続されている。
【0046】
図4において符号「WS」が付されているのは、貯湯容器100に貯留された湯の水面を示している。貯湯容器100に貯留された湯の水位(つまり水面WSの高さ)が、開口521を超えると、湯の一部が開口521からオーバーフロー配管520に流入する。このため、湯の水位は、常に開口521の高さ位置と同じ水位に維持される。一対のオーバーフロー配管520、及びこれらに繋がる排水配管510は、貯湯容器100に貯留された湯の水位を、所定水位に維持するための「水位維持部」に該当する。オーバーフロー配管520は、上記の所定水位において開口521が形成された配管、ということができる。
【0047】
図5に示されるように、人体加熱装置10は制御装置50を更に備えている。制御装置50は、人体加熱装置10の全体の動作を制御するためのコンピュータシステムであって、例えば、部屋SRの外側に配置されている。制御装置50は、操作部30に対し行われた使用者の操作に基づいて、給湯器40や電磁弁513等の動作を制御する。
【0048】
人体加熱装置10の動作について説明する。使用者が、人体加熱装置10の動作を開始させるための操作を操作部30に対して行うと、制御装置50は、給湯器40を動作させることにより貯湯容器100への湯張りを行う。給湯器40は、制御装置50からの信号に基づいて、供給配管420から貯湯容器100へと湯を供給する。
【0049】
このとき、給湯器40から供給される湯の温度は、制御装置50から給湯器40へと送信される目標湯温度とされる。当該目標湯温度は、使用者が予め操作部30を操作することにより設定していた所望の温度である。目標湯温度は、床部材20の温度が例えば43~45℃の範囲となるように設定されることが好ましい。
【0050】
貯湯容器100への湯張りが完了し、貯湯容器100が上記の所定水位(開口521の高さ)まで到達した以降は、人体加熱装置10の使用が可能な状態となる。使用者は、床部材20の上面に横になることで岩盤浴を行うことができる。
【0051】
先に述べたように、本実施形態では、貯湯容器100における湯の水位(所定水位)が、床部材20の下端位置よりも高く、且つ、床部材20の上端位置よりも低い位置となるように、オーバーフロー配管520の開口521の位置が調整されている。それぞれの床部材20は、下方側部分が湯に浸された状態となるので、湯によって直接加熱されその温度を上昇させる。床部材20に載置された人体は、床部材20からの熱伝導によって加熱されるほか、床部材20から発せられる遠赤外線によっても加熱される。これにより、人体の深部体温が効率よく上昇する。
【0052】
このように、人体加熱装置10は、貯湯容器100に貯留された湯の熱により、床部材20が加熱されるように構成されている。このような人体加熱装置10では、貯湯容器100の上方側を床部材20で覆うという簡単な構成としながら、床部材20の上に載置された人体を遠赤外線等によって加熱し、疲労回復等の様々な効果を得ることができる。また、このような構成の人体加熱装置10を建物に施工する際には、一般的な浴槽を施工する際と同様のノウハウや技術をそのまま用いることができる。つまり、本実施形態に係る人体加熱装置10を施工するにあたっては、特別なノウハウや技術は必要とされないので、例えば水道工事店の作業員等が容易に施工することができる。
【0053】
それぞれの床部材20は、通気性を有する溶岩により形成されている。このため、それぞれの床部材20に形成された無数の気孔を通じて、水蒸気が上方側へと放出される。この水蒸気によっても人体が加熱される。加えて、部屋SRの気温及び湿度が上昇するので、使用者をリラックスさせる効果も得られる。
【0054】
先に述べたように、本実施形態では、床部材20として、岩密度や空隙率が相対的に異なる二種類の部材が用いられている。岩密度が低く空隙率が高い床部材21の部分では、より多くの水蒸気が上方側へと放出される。一方、岩密度が高く空隙率が低い床部材22の部分では、水蒸気の放出量は抑えられるのであるが、その分、床部材22の温度が上昇しやすくなっている。このように、本実施形態に係る人体加熱装置10では、水蒸気の放出量が多くなる床部材21と、温度が上昇しやすくなる床部材22と、のそれぞれを交互に配置することで、人体の加熱量と水蒸気量とのバランスが調整されている。
【0055】
貯湯容器100への湯張りが完了した時点以降においては、引き続き供給配管420から湯が供されると共に、引込配管410からの湯の引込が開始される。このような動作の切り換えは、制御装置50から給湯器40へと送信される制御信号に基づいて行われる。給湯器40は、貯湯容器100から引込配管410を介して引き込まれた湯を、上記の目標湯温度まで加熱した後、当該湯を供給配管420から貯湯容器100へと供給する。
【0056】
つまり、制御装置50は、貯湯容器100と給湯器40との間で湯を循環させながら、貯湯容器100に貯留された湯の温度を調整し目標湯温度に保つ。給湯器40及び制御装置50は、貯湯容器100に貯留された湯の温度を調整するための「湯温調整部」に該当する。湯の温度が目標湯温度に保たれるので、床部材20の温度が時間と共に低下してしまうことは無く、使用者は長時間に亘って岩盤浴を楽しむことができる。尚、本実施形態では、湯張りの際に湯を供給するための配管と、湯張りが完了した後に湯を供給するための配管とが、一つの供給配管420で兼用されている。このような態様に替えて、湯張りの際に湯を供給するための専用の配管が、供給配管420とは別に設けられていてもよい。
【0057】
湯温調整部に含まれる制御装置50及び給湯器40は、上記のように、貯湯容器100に貯留された湯の温度を所定の目標湯温度となるように調整する。この目標湯温度は、操作部30に対し行われた使用者の操作に基づいて、制御装置50により設定されたものである。操作部30及び制御装置50は、本実施形態における「湯温設定部」に該当する。使用者は、目標湯温度を好みに応じて変更することで、湯の温度を変化させ、その結果として床部材20の温度を変化させることができる。
【0058】
尚、給湯器40による湯の温度の調整を可能とするために、例えば引込配管410の途中や給湯器40の内部に、湯の温度を測定するための温度センサを設けることとしてもよい。この場合、給湯器40は、引込配管410を流れる湯の温度が目標湯温度に一致するように、湯に対する加熱量を調整することとなる。
【0059】
本実施形態では、引込配管410の第1端部411が、貯湯容器100の長手方向に沿った一方側の壁面101の近傍となる位置に配置されている。また、供給配管420の第2端部421が、貯湯容器100の長手方向に沿った他方側の壁面102の近傍となる位置に配置されている。
【0060】
更に本実施形態では、第1端部411へと湯が引き込まれる方向が、図5の矢印AR1で示されるように、壁面101に対して傾斜した方向となっている。また、第2端部421から湯が供給される方向が、図5の矢印AR2で示されるように、壁面102に対して傾斜した方向となっている。
【0061】
このような構成においては、第2端部421の開口422から貯湯容器100に供給された湯は、貯湯容器100の略全体を、上面視で時計回り方向に旋回しながら流れた後に、第1端部411の開口412から排出されることとなる。これにより、貯湯容器100に貯留された湯において温度ムラが生じることが防止されるので、複数の床部材20の全体を概ね均等に加熱することができる。
【0062】
岩盤浴が終了すると、使用者は、操作部30を操作することにより給湯器40の動作を停止させる。制御装置50は、操作部30に対し行われた更なる捜査に基づいて、電磁弁513を開状態とし、貯湯容器100から湯を排出させる。
【0063】
図4を参照しながら先に説明したように、オーバーフロー配管520の開口521は、板材61に形成された点検穴62の直下となる位置に配置されている。使用者は、点検穴62を上方から覗き込むことで、開口521の周囲の状況を視認することができる。これにより、使用者は、貯湯容器100の内部に湯が存在しているか否かの確認や、電磁弁513が正常に動作しているか否かの確認等を行うことができる。
【0064】
第2実施形態について説明する。本実施形態では、一部の床部材20の構成、及び、制御装置50によって行われる処理の内容において第1実施形態と異なっている。以下では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と共通する点については適宜説明を省略する。
【0065】
図7に示されるように、本実施形態においては、複数の床部材20の一枚に凹部23が形成されており、凹部23の内側に温度センサ24が取り付けられている。温度センサ24は、床部材20の温度を測定するためのセンサであって、例えばサーミスタである。温度センサ24によって測定された温度を示す信号は、制御装置50へと入力される。
【0066】
凹部23は、上面視において床部材20の中央となる位置に形成されている。また、凹部23の深さは、床部材20の厚さの1/2である。従って、温度センサ24によって測定されるのは、床部材20の中心となる位置の温度である。
【0067】
本実施形態では、使用者が操作部30を操作することにより、床部材20の温度についての目標値、である目標床温度を設定することができるように構成されている。目標床温度は、例えば43~45℃の範囲で設定されることが好ましい。人体加熱装置10の動作中において、制御装置50は、温度センサ24によって測定される床部材20の温度が目標床温度となるように、給湯器40の動作を制御し、貯湯容器100に貯留された湯の温度を調整する。例えば、温度センサ24によって測定される床部材20の温度が、目標床温度よりも低い場合には、給湯器40から供給配管420を通じて供給される湯の温度を、それまでよりも高くする。逆に、温度センサ24によって測定される床部材20の温度が、目標床温度よりも高い場合には、給湯器40から供給配管420を通じて供給される湯の温度を、それまでよりも低くする。給湯器40からの湯の供給を一時的に停止させることとしてもよい。
【0068】
目標床温度は、操作部30に対し行われた使用者の操作に基づいて、制御装置50により設定されたものである。操作部30及び制御装置50は、本実施形態における「床温設定部」に該当する。本実施形態でも、使用者は、目標床温度を好みに応じて変更することで、湯の温度を変化させ、その結果として床部材20の温度を変化させることができる。本実施形態では、床部材20の温度についての目標値を使用者が直接設定するので、より快適な岩盤浴を使用者に提供することができる。
【0069】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【符号の説明】
【0070】
10:人体加熱装置
20:床部材
30:操作部
40:給湯器
50:制御装置
100:貯湯容器
200:石受枠
300:架台
410:引込配管
411:第1端部
420:供給配管
421:第2端部
520:オーバーフロー配管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7