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<図1>
  • 特開-事業評価装置および事業評価方法 図1
  • 特開-事業評価装置および事業評価方法 図2
  • 特開-事業評価装置および事業評価方法 図3
  • 特開-事業評価装置および事業評価方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077772
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】事業評価装置および事業評価方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 90/00 20060101AFI20220517BHJP
   G06Q 10/06 20120101ALI20220517BHJP
【FI】
G06Q90/00
G06Q10/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188761
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】520444797
【氏名又は名称】株式会社Creative Capitalism Japan
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】原 理花子
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】事業の社会的インパクトを少ない労力で評価する事業評価装置及び事業評価方法を提供する。
【解決手段】事業評価装置1は、各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースと、ユーザ入力部と、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成する事業理論作成部11と、ユーザ20が、事業理論で設定された指標を用いて事業の結果および/または成果を入力する結果および/または効果入力部12と、事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、事業の社会的インパクトの評価結果を生成する社会的インパクト評価部13と、事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが事業に関するレポートを作成するレポート作成部14と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の部位(1),(2),(3),(4)を含み、事業をその社会的インパクトによって評価する、事業評価装置。
(1)事業理論作成部:上記事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースとユーザ入力部とを有し、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示する装置。
(2)結果および/または効果入力部:ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力する装置。
(3)社会的インパクト評価部:上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成する装置。
(4)レポート作成部:上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成する装置。
【請求項2】
上記部位(1)において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、任意に上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって更新し、
上記部位(2)において、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上であり、
上記部位(3)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、
上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換し、
上記部位(4)において、レポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る、
請求項1に記載の事業評価装置。
【請求項3】
上記部位(2)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、
上記部位(3)において、金銭代理指標を用いて上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を金銭価値に変換する、
請求項2に記載の事業評価装置。
【請求項4】
以下のステップ(1),(2),(3),(4)を含み、事業をその社会的インパクトによって評価する、事業評価方法。
(1)事業理論作成ステップ:上記事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースとユーザ入力部とを用い、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示するステップ。
(2)結果および/または効果入力ステップ:ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力するステップ。
(3)社会的インパクト評価ステップ:上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成するステップ。
(4)レポート作成ステップ:上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成するステップ。
【請求項5】
上記ステップ(1)において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって任意に更新し、
上記ステップ(2)において、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上であり、
上記ステップ(3)において、上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換し、
上記ステップ(4)において、レポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る、
請求項4に記載の事業評価方法。
【請求項6】
上記ステップ(2)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、
上記ステップ(3)において、金銭代理指標を用いて上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を金銭価値に変換する、
請求項5に記載の事業評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事業をその社会的インパクトによって評価するための装置および方法に関する。ここで「事業」は営利を目的とした市場における企業活動のみならず、非営利で社会に対して行われる様々な活動を含む。例えば、2015年国連サミットで提案された「持続可能な開発のための国際目標(SDGs)」を達成するための、福祉や環境の改善事業も、上記「事業」に含まれる。すなわち、本発明で言う「事業」は、いわゆる商売(Business)だけでなく何らかの目的を持った活動(Activity)も含む。ここで「社会的インパクト」とは、これら様々な事業がもたらす社会状態への影響の全般を対象としており、売上高や株価といった財務指標で評価できる影響や、所得や税収などの中央または地方政府が統計し評価できる影響だけでなく、社会の構成員の行動様式や生活満足度の変化として観察可能な現象も含む。
【背景技術】
【0002】
特にSDGsが提唱されて以来、より公益的で長期持続な事業に対する注目が高まっている。このため、事業の社会的インパクトを客観的に正確に予想し評価することによって、社会にとって有益な事業を選択し支援する方法が求められている。
【0003】
事業をその社会的な影響によって評価する方法として様々な方法が提案されてきた。しかしその多くは財務評価(特許文献1)、立地評価(特許文献2)、エネルギー事業の評価(特許文献3,4,5)、リユース・リサイクル事業の評価(特許文献6)などの、製品やサービスを金銭価値評価する手法が確立している場合に限られており、社会的な行動変容や二次的影響を評価することは難しかった。
【0004】
それまで客観的な評価が難しいとされていた事業や事業者に対する定量的あるいは定性的な評価方法を提案した例として、行政サービスの効果評価システム(特許文献7)、環境負荷改善の評価(特許文献8)、事業者の信用度評価(特許文献9)、クラウドファンディング案件の評価(特許文献10)などが見つかる。しかし、これら評価は、概ね、事業者自身か事業のユーザーが作成した情報に基づいており、事業の提供者、受益者、その他(これらから独立した評価者や、これらと一体ではない協力者)を包含する幅広い社会構成員から得られた情報を用いていない。この意味で、これら先行する事業評価方法では「社会的インパクト」を正確に評価することが難しい。
【0005】
現状では、様々な事業の社会的インパクトを評価するためには、多くの作業員を動員してインタビューや実地調査を行い、得られた結果を評価責任者が評価している。このため、事業の種類によっては、信頼性と正確性を兼ね備えた評価結果に必要な労力は多大であり、しばしばそのような評価作業そのものが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002-149957号公報
【特許文献2】特開2020-112863号公報
【特許文献3】特許第6327684号公報
【特許文献4】特開2018-206027号公報
【特許文献5】特開2014- 2537号公報
【特許文献6】特開2006-209460号公報
【特許文献7】特開2005-332350号公報
【特許文献8】特開2004-272308号公報
【特許文献9】特許第5847915号公報
【特許文献10】特開2019-125046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明者は、人的・時間的負担が大きい事業評価を半自動的に効率よく行う手段を求めた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その結果、本発明者は、広範な事業種に対応するデータベースと、事業の結果や効果を客観的な形式に変換する仕組みを備えた、新規な事業評価装置と事業評価方法を見出した。すなわち本発明は以下のものである。
【0009】
(発明1)以下の部位(1),(2),(3),(4)を含み、事業をその社会的インパクトによって評価する、事業評価装置。
(1)事業理論作成部:上記事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースとユーザ入力部とを有し、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示する装置。
(2)結果および/または効果入力部:ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力する装置。
(3)社会的インパクト評価部:上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成する装置。
(4)レポート作成部:上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成する装置。
【0010】
(発明2)上記部位(1)において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、任意に上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって更新し、
上記部位(2)において、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上であり、
上記部位(3)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換し、
上記部位(4)において、レポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る、
発明1の事業評価装置。
【0011】
(発明3)上記部位(2)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、上記部位(3)において、金銭代理指標を用いて上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を金銭価値に変換する、発明2の事業評価装置。
【0012】
(発明4)以下のステップ(1),(2),(3),(4)を含み、事業をその社会的インパクトによって評価する、事業評価方法。
(1)事業理論作成ステップ:上記事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースとユーザ入力部とを用い、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示するステップ。
(2)結果および/または効果入力ステップ:ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力するステップ。
(3)社会的インパクト評価ステップ:上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成するステップ。
(4)レポート作成ステップ:上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成するステップ。
【0013】
(発明5)上記ステップ(1)において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって任意に更新し、
上記ステップ(2)において、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上であり、
上記ステップ(3)において、上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換し、
上記ステップ(4)において、レポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る、
発明4の事業評価方法。
【0014】
(発明6)上記ステップ(2)において、上記指標がアンケートの回答形式を含み、上記ステップ(3)において、金銭代理指標を用いて上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を金銭価値に変換する、発明5の事業評価方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によって、様々な事業の社会的インパクト評価に要する人的・時間的負担を減らすことができる。また本発明によって、様々な事業の社会的インパクト評価の標準的な手法と評価基準を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の部位(1)およびステップ(1)で生成した事業理論の表示例を模式的に示す。
図2】本発明のステップ(2)でユーザーが用いる結果および/または効果入力の例を模式的に示す。
図3】本発明のステップ(4)で表示されたレポートのテンプレートの例を模式的に示す。
図4】ユーザが本発明の事業評価装置(1)を利用する様子を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[事業評価装置,事業評価方法]
本発明の事業評価装置は、少なくとも4つの部位:(1)事業理論作成部、(2)結果および/または効果作成部、(3)社会的インパクト評価部、(4)レポート作成部を含む装置である。本発明の事業評価方法は、少なくとも4つのステップ:(1)事業理論作成ステップ、(2)結果および/または効果作成ステップ、(3)社会的インパクト評価ステップ、(4)レポート作成ステップを含む方法である。
【0018】
[(1)事業理論作成部,(1)事業理論作成ステップ]
(1)事業理論作成部は、データベースとユーザ入力部とを有し、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示する装置である。上記データベースには、社会的インパクト評価の対象となる事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されている。典型的には、(1)事業理論作成部において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、任意に上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって更新する。
【0019】
(1)事業理論作成ステップは、上記事業を含む各種事業に関する規定の情報が格納されたデータベースとユーザ入力部とを用い、事業理論作成プログラムによって事業理論を生成して表示するステップである。典型的には、上記ステップ(1)において、上記事業理論作成プログラムによって、上記事業の種類に応じて上記データベースから抽出した情報に基づいて事業理論テンプレートを生成し、上記事業理論テンプレートを上記ユーザ入力部で取得された情報によって任意に更新する。
【0020】
上記データベースには、社会的インパクト評価の対象として扱うことができる様々な事業の種類情報が、ある種の階層構造、例えば厚生労働省職業分類に基づいた階層構造で、格納されている。それぞれの事業の種類情報にはそれぞれの事業に関連性が高い事業理論の要素が紐付けされている。上記要素は、例えば、資源(事業の実施に必要な、動産、不動産、金融資産、人など)、活動(事業の目的に合致した、セミナー開催、デモンストレーションなどの、具体的行為)、結果(企業による新しい通信システムの導入、個人による新しい製品の購入などの、上記活動が提供した事象)、成果(新しい通信システムの導入によるリモート会議の実現、新しい素材に関する理解の深まりなどの、上記結果がもたらす社会、環境、意識の変化)を含む。上記成果は、事業の社会的インパクトに直結する要素であるため、好ましくはさらに、初期成果(上記結果が発生した直後の変化)、中期成果(上記初期成果に引き続いて起こった変化)、長期成果(上記中期成果に引き続いて起こった変化)などに細分化される。
【0021】
上記データベースには、各要素別に、様々な類型がテキスト情報として登録されている。上記資源として例えば、「***通信システム」と「インストラクター」などのテキスト情報を登録することができる。上記活動として例えば、「***通信システム利用セミナー」などのテキスト情報を登録することができる。上記結果として例えば、「***通信システムを導入した学校」、「学生の親が***通信システムを理解した」などのテキスト情報を登録することができる。上記初期成果として例えば、「進学説明会を***通信システムで行った」、「オーケストラの演奏会を***通信システムで配信した」などのテキスト情報を登録することができる。上記中期成果として例えば、「***通信システムの利用により進学説明会の参加生徒数が2倍になった」、「演奏会の聴衆が3倍になった」などのテキスト情報を登録することができる。上記長期成果として例えば、「系列学校の全てで***通信システムの利用を開始した」、「**地区の全ての学校で***通信システムの利用を開始した」などのテキスト情報を登録することができる。
【0022】
本発明の事業評価装置には、表示機器やインターネット通信機器、音声機器などを接続することができる。(1)事業理論作成ステップの開始時に、上記表示機器に、初期画面としてユーザー認証画面を表示することができる。認証されたユーザは、ユーザ入力部に誘導され、社会的インパクト評価の対象として選ばれた事業の情報を、テキストや数値の記入や記号・ボタン選択などの形で、入力する。入力された情報は、上記事業理論作成プログラムの照合コマンドセットセットによって、上記データベースに登録された事業情報と照合される。上記照合が完了すると、上記事業理論作成プログラムの抽出コマンドセットによって、ユーザが社会的インパクト評価の対象として選んだ事業に関連性の高い事業情報のセットが抽出される。上記抽出が完了すると、上記事業理論作成プログラムのテンプレート作成コマンドセットによって、事業情報のセットが所定のレイアウトで編集され、事業理論テンプレートを生成する。最終的に、生成した事業理論テンプレートが、表示機器でユーザに提供される。
【0023】
事業理論テンプレートの表示が完了すると、上記事業理論作成プログラムのテンプレート編集コマンドセットが動作し、ユーザは、表示機器あるいは音声機器を介して、上記事業理論テンプレートの確認および/または更新を促される。ユーザは、上記テンプレート編集コマンドセットが有効化する編集機能を用いて、上記事業の情報を、テキストや数値の記入や記号・ボタン選択などの形で、追加、削除、変更入力する。上記追加、削除、変更が完了すると、上記事業理論テンプレートがカスタマイズされ、ユーザーが提供した事業情報に適合した事業理論が生成する。生成した事業理論は(1)事業理論作成部のメモリに格納される。
【0024】
このように、本発明では、(1)事業理論作成部と(1)事業理論作成ステップで、規定の情報を利用した事業理論テンプレートをユーザに提供することによって、ユーザの経験や知識にかかわらず、標準的な観点で、平準な精度ばらつきをもって、社会的インパクト評価の対象となる事業を理論化する。その結果、上記事業の社会的インパクト評価に直接的に用いる事象を適切に選択することができる。
【0025】
[(2)結果および/または効果入力部,(2)結果および/または効果入力ステップ]
上記(1)事業理論作成部における上記(1)事業理論作成ステップが終了すると、ユーザーは(2)結果および/または効果入力部において(2)結果および/または効果入力ステップに進むことができる。
【0026】
(2)結果および/または効果入力部は、ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力する装置である。典型的には、(2)結果および/または効果作成部において、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上である。
【0027】
(2)結果および/または効果入力ステップは、ユーザが、上記事業理論で設定された指標を用いて上記事業の結果および/または成果を入力するステップである。典型的には、上記(2)結果および/または効果入力ステップにおいて、ユーザーが属性の異なる2以上のユーザであって、上記属性が、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者から選ばれる2以上である。
【0028】
(2)結果および/または効果入力ステップでは、結果および/または効果入力プログラムが動作する。(2)結果および/または効果入力ステップでは、典型的には、ユーザーに、表示機器上で結果および/または効果入力画面が提供される。上記結果および/または効果入力プログラムの抽出コマンドセットによって、(1)事業理論作成部のメモリに格納された事業理論から、上記事業の社会的インパクトに関連する結果および/または効果が抽出される。上記抽出が完了すると、上記結果および/または効果入力プログラムの指標設定コマンドセットによって、抽出された結果および/または効果のそれぞれの入力に用いられる指標が登録される。上記事業理論において指標が既に設定されている場合には、上記指標を再登録することができる。上記事業理論において指標が未設定であった場合には、(1)事業理論作成部のデータベースから関連性の高い指標を抽出して登録することができる。典型的には、(2)結果および/または効果入力ステップでは、ユーザの入力に先立ち、表示機器上に、結果および/または効果と指標とが組み合わされた入力項目一覧表をユーザに提供する。
【0029】
例えば、上記事業理論において上記事業の結果および/または成果として、結果:「企業が***通信システムを導入する」と成果:「利用者が***通信システムに満足する」が登録されている場合には、(2)結果および/または効果入力ステップにおいて、入力項目一覧表に、結果:「企業が***通信システムを導入する」と成果:「利用者が***通信システムに満足する」が表示される。ユーザは、結果:「企業が***通信システムを導入する」を指標:「企業数(1,2,3・・・)」で入力し、成果:「利用者が***通信システムに満足する」を指標:「アンケートで満足したと回答するか否か(はい・いいえ)」で入力することができる。この場合、上記事業の実施者から権限を与えられたユーザが、サービス・製品の納入記録に基づいて結果:「企業が***通信システムを導入する」に対して例えば「10」を入力することができ、アンケートに参加した50人のユーザが、成果:「利用者が***通信システムに満足する」に対して「はい」または「いいえ」を入力(もしくは、「はい」または「いいえ」ボタンを選択)することができる。この場合、(2)結果および/または効果入力部と(2)結果および/または効果入力ステップが、上記事業の実施者に属するユーザと、上記事業の受益者に属するユーザとで利用される。
【0030】
上記結果および/または効果を入力するユーザは、評価を専門とする団体や組織(例:NPO、業界誌の発行者)や上記団体や組織の支援者(例:アドバイザー)に帰属していてもよく、これら以外(例:インターネットを通じて回答を取得することができる、SNS上の発言者)であってもよい。
【0031】
本発明の(2)結果および/または効果入力部と(2)結果および/または効果入力ステップでは、上記指標が指定されているため、ユーザは「どのように表現したらよいか」を迷うことがない。具体的には、ユーザーは、上記入力「企業数」、「人数」、「%」などの数値形式や、「はい・いいえ」、「増・減(+・-)」、「有・無」などの選択方式で入力する。上記事業の結果や効果がアンケート回答によってフィードバックされる場合でも、アンケートの回答形式を上記指標として適切に設定することによって、フィードバックされた結果や効果を数値形式で入力された結果や効果と同等に扱うことができる。
【0032】
入力された結果および/または効果は、典型的には、上記入力項目一覧表のデータに紐づけられて(2)結果および/または効果入力部のメモリに保存される。本発明の事業評価方法では、(2)結果および/または効果入力ステップを繰り返すことができる。上記入力項目一覧表には、入力状況に応じて「入力済み」「未入力」「更新可能」「終了」などを入力あるいは表示することができる。ユーザは、入力された結果および/または効果を随時更新することができる。ユーザは、社会的インパクト評価にとって適当な状態まで上記事業の結果および/または効果を収集した時点で、(2)結果および/または効果入力部における(2)結果および/または効果入力ステップを終了することができる。
【0033】
[(3)社会的インパクト評価部, (3)社会的インパクト評価ステップ]
(2)結果および/または効果入力部における(2)結果および/または効果入力ステップが終了すると、収集された上記事業の結果および/または効果が、(3)社会的インパクト評価部における(3)社会的インパクト評価ステップに用いられる。
【0034】
(3)社会的インパクト評価部は、上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成する装置である。典型的には、(3)社会的インパクト評価部において、上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換する。上記変換には、金銭代理指標を用いることができる。
【0035】
(3)社会的インパクト評価ステップは、上記事業の結果および/または成果に基づいて、社会的インパクト評価プログラムが、上記事業の社会的インパクトの評価結果を生成するステップである。典型的には、(3)社会的インパクト評価ステップにおいて、上記社会的インパクト評価プログラムが、上記指標で表された上記事業の結果および/または成果の少なくとも一部を定量的および/または定性的な形式に変換する。上記変換には、金銭代理指標を用いることができる。
【0036】
(3)社会的インパクト評価部における(3)社会的インパクト評価ステップで生成した上記事業の社会的インパクトの評価結果は、(2)結果および/または効果入力部における(2)結果および/または効果入力ステップで収集した上記事業の結果および/または効果を総合評価した結果である。すなわち、(3)社会的インパクト評価部における(3)社会的インパクト評価ステップにおいて、上記事業の結果および/または効果のそれぞれを、事業の種類情報から見て適切な重み付けで累積した結果を、上記事業の社会的インパクトの評価結果として出力することができる。上記適切な重み付けを行う手法が、社会的インパクト評価プログラムである。
【0037】
例えば、社会的インパクト評価プログラムの換算コマンドセットは、上記事業の結果および/または効果を数的に累積に便利な数値に変換する。上記換算コマンドセットが(1)事業理論作成部の上記データベースおよび上記事業理論に紐付けされた換算アルゴリズムを抽出し実行させることで、上記変換を自動的に行うことができる。
【0038】
例えば、入力された販売目標達成度が30%以下の範囲にある場合は数値「1」を生成し、入力された販売目標達成度が30%超60%以下の範囲にある場合は数値「2」を生成し、入力された販売目標達成度が60%超の範囲にある場合は数値「3」を生成する。また例えば、入力されたアンケート回答形式:「はい」を数値「1」に変換し、入力されたアンケート回答形式:「いいえ」を数値「0」に変換する。
【0039】
例えば、社会的インパクト評価プログラムの累積コマンドセットは、このように変換された数値を事業理論に基づく傾斜(重み付け係数)で累積する。上記累積は、単純には、変換された上記数値に上記重み付け係数をかけた値(補正値)を足し合わせる操作である。例えば、結果や効果として、短期的には消費者の意識変化よりも販売数の増加に重点を置き、長期的には販売数の増加よりも消費者の意識変化を生じることに重点を置く事業の場合には、初期成果の評価と、長期成果の評価とで、上記重み付け係数を調整することができる。この場合、初期成果の評価には、販売目標達成度から生成した数に重み付け係数:1.5を適用し、アンケート回答形式から変換した数に重み付け係数:1.0を適用して、初期成果としては販売目標達成度に強く影響された累積値を取得する。この累積値を初期効果のレベルとして扱うことができる。対照的に、長期成果の評価には、販売目標達成度から生成した数に重み付け係数:1.0を適用し、アンケート回答形式から変換した数に重み付け係数:1.5を適用して、長期成果としてはアンケート回答形式に強く影響された累積値を取得する。この累積値を長期効果のレベルとして扱うことができる。
【0040】
上記累積コマンドセットに(1)事業理論作成部の上記データベースおよび上記事業理論に紐付けされた累積アルゴリズムを抽出し実行させることで、上述の傾斜(重み付け係数)、補正値、累積を自動的に行うことができる。
上記換算コマンドセットおよび/または上記累積コマンドセットに、金銭代理指標を用いた数値変換を実行させることもできる。例えば、「製品の再利用」と「再利用の必要性の認知」が事業の効果として設定されている場合には、(2)結果および/または効果入力ステップで入力された「再利用された製品数」および/または「アンケート回答:再利用している」を、製品購入コスト低減度(節約できた金額)として変換し累積することができる。
【0041】
このように、本発明の(3)社会的インパクト評価部における(3)社会的インパクト評価ステップでは、上記事業の社会的インパクトの評価結果が、ポイントやレベル数などの、事業間比較や傾向分析に適した定量的および/または定性的なデータとして生成する。上記事業の社会的インパクトの評価結果は、(3)社会的インパクト評価部のメモリに保存される。
【0042】
[(4)レポート作成部,(4)レポート作成ステップ]
本発明の事業評価装置および事業評価方法では、(3)社会的インパクト評価部における(3)社会的インパクト評価ステップで取得した上記事業の社会的インパクトの評価結果が、(4)レポート作成部と(4)レポート作成ステップで利用される。
【0043】
(4)レポート作成部は、上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成する装置である。典型的には、(4)レポート作成部においてレポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る。
【0044】
(4)レポート作成ステップは、上記事業の社会的インパクトの評価結果を用いてユーザが上記事業に関するレポートを作成するステップである。典型的には、(4)レポート作成ステップにおいてレポート作成プログラムが上記レポートのテンプレートを生成し、上記テンプレートがユーザによって更新され得る。
【0045】
上記レポート作成プログラムは、レポート様式に関するデータを生成する。上記レポート様式は、ユーザが直接作成する帳票の様式を含むことができる。(4)レポート作成ステップの最初に、上記レポート様式の種類をユーザに選択させることもできる。例えば、上記レポートの受取者(政府や許認可団体)、上記事業の実施者、上記事業の受益者、上記事業の評価者、上記評価者の支援者(伴走者)、これら以外の者に向けた各種のレポート様式からユーザが選択することができる。
【0046】
さらに上記レポート作成プログラムは、データベース上の規定情報、上記事業理論、上記入力項目一覧表の1以上を参照して、上記レポートに掲載すべきデータを抽出し、上記レポート様式のデータに割り当てる。また、上記レポート作成プログラムは、(3)社会的インパクト評価部に保存された上記事業の社会的インパクトの評価結果を上記レポート様式のデータに割り当てる。こうして、上記レポートのテンプレートに関するデータが生成する。生成したデータは本発明の事業評価装置に付属する表示機器上にテンプレートとして表示される。ユーザはキーボードやタッチパネル、音声入力などの入力手段によって上記テンプレートの掲載事項を変更したり追加したりして、カスタマイズされたレポートを完成させることができる。
【0047】
本発明では、上記ステップ(1),(2),(3),(4)で生成・表示した事業理論、入力項目一覧表、レポートデータなどに付属したデータセットとして、あるいは、これらから独立して表示できるデータセットとして、インパクトマップのデータセットを生成することができる。上記インパクトマップのデータセットが生成するインパクトマップには、上記結果および/または効果の実際の入力データ、上記結果および/または効果の検出方法(例:手入力,アンケート)、上記指標(例:%、人、個、はい・いいえ)、上記結果および/または効果の目標(例:目標値,目標回答)、上記金銭代理指標の設定情報などが表示される。このようなインパクトマップは、上記事業の社会的インパクト評価の経過を追跡する資料として参照され得る。
【0048】
[装置の分散配置,方法の分散実行]
本発明の事業評価装置あるいは事業評価方法では、(1)事業理論作成部、(2)結果および/または効果入力部、(3)社会的インパクト評価部、(4)レポート作成部をローカル通信および/またはインターネット通信を介して分散して配置することもできる。この場合、(1)事業理論作成部、(2)結果および/または効果入力部、(3)社会的インパクト評価部、(4)レポート作成部のメモリ機能の一部以上をインターネット上のクラウドに配置することもできる。またこの場合、(1)事業理論作成ステップ、(2)結果および/または効果入力ステップ、(3)社会的インパクト評価ステップ、(4)レポート作成ステップを、地理的に異なる複数の地点で分散して実行することもできる。
【0049】
このように事業方法および/または事業評価方法を分散型で行うことで、事業の社会的インパクト評価と得られた評価に基づくレポート作成に要する人的・時間的負担をさらに減らすことができる。
【実施例0050】
図1に、部位(1)およびステップ(1)で生成した事業理論の表示例を模式的に示す。ユーザは作成ボタン(+)を選択して既成あるいは既存の要素に新たな要素を追加することができる。
【0051】
図2に、ステップ(2)でユーザーが用いる結果および/または効果入力の例を模式的に示す。ユーザは予め設定された指標を用いてデータを入力する。「目標値」が表示されている項目については、結果および/または効果の目標値に対する相対値が入力される。
【0052】
図3に、ステップ(4)で表示されたレポートのテンプレートの例を模式的に示す。ユーザが手入力する前に主要部分が自動的に完成している。
【0053】
図4に、ユーザが本発明の事業評価装置(1)を利用する様子を模式的に示す。本発明の事業評価装置(1)は、事業理論作成部(11)、結果および/または効果入力部(12)、社会的インパクト評価部(13)、レポート作成部(14)を含む。事業理論作成部(11)には本発明の事業理論作成ステップを実行するアプリケーションプログラムが実装されている。結果および/または効果入力部(12)には本発明の結果および/または効果入力ステップを実行するアプリケーションプログラムが実装されている。社会的インパクト評価部(13)には本発明の社会的インパクト評価ステップを実行するアプリケーションプログラムが実装されている。レポート作成部(14)には本発明には本発明のレポート作成ステップを実行するアプリケーションプログラムが実装されている。
【0054】
本発明の事業評価装置(1)はインターネット(30)に接続されている。ユーザ(20)は事業の実施者から権限を与えられたユーザ(201)、事業サービスの受益者から権限を与えられたユーザ(202)、上記事業の評価者から権限を与えられたユーザ(203)である。ユーザ(20)はインターネット(3)に接続した端末(2001,202,203)を介して本発明の事業評価装置(1)を利用する。
【0055】
ユーザ(201)は、本発明の事業評価方法の少なくとも上記事業理論作成ステップにおけるデータ入力を担当する。ユーザ(202)は、本発明の事業評価方法の少なくとも上記結果および/または効果入力ステップにおけるデータ入力を担当する。ユーザ(203)は、本発明の事業評価方法の少なくとも上記レポート作成ステップにおけるデータ入力を担当する。レポート作成部(14)で完成したレポートは、適宜設けられた制限条件の下、ユーザ(201,202,203)に配信される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の事業評価装置および事業評価方法によって、様々なプロジェクトや活動の社会的インパクトを、これまでよりも各段位少ない人的・時間的負担で評価することができる。本発明の事業評価装置および事業評価方法によって、信頼性と正確性を兼ね備えた評価結果を作成し利用することができる。故に、本発明の事業評価装置および事業評価方法は経済的に高い価値を有している。本発明の事業評価装置および事業評価方法はコンサルタント産業やソフトウェア市場、金融市場を活性化する可能性がある。よって、SDGsのような社会的目標を達成するための事業を適切に選択・管理・支援することができる。したがって本発明はこのような事業の実施を通して社会資源の活用を促進することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 事業評価装置
11 事業理論作成部
12 結果および/または効果入力部
13 社会的インパクト評価部
14 レポート作成部
20 ユーザ
201 事業の実施者から権限を与えられたユーザ
202 事業サービスの受益者から権限を与えられたユーザ
203 上記事業の評価者から権限を与えられたユーザ
30 インターネット
図1
図2
図3
図4