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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007781
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】車両用駆動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 57/04 20100101AFI20220105BHJP
【FI】
F16H57/04 Q
F16H57/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110943
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】下河辺 友貴
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 隆一
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼塚 祐介
(72)【発明者】
【氏名】早坂 昌也
(72)【発明者】
【氏名】阪口 和幸
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA02
3J063AB12
3J063AC03
3J063BB14
3J063CD42
3J063XD03
3J063XD14
3J063XD22
3J063XD23
3J063XD32
3J063XD43
3J063XD44
3J063XD64
3J063XD72
3J063XD73
3J063XE15
3J063XF14
(57)【要約】
【課題】円筒状の歯車が回転しているときにおける円筒状の歯車の両端部の内周と転がり軸受の外輪との間の摩耗を好適に抑制する車両用駆動装置を提供する。
【解決手段】出力歯車32の内周面32eは、回転軸線C方向において、第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の一方に向かうに連れて内径Dinが大きくなるように形成されているので、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の一方の外輪48b、50bに向かって流れて、オイルLFが外輪48b、50bと出力歯車32の端部32b、32dの内周との間に供給される。また、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが出力歯車32の内周に形成された空間SP内に溜められるので、外輪48b、50bによって堰き止められたオイルLFが外輪48b、50bと出力歯車32の端部32b、32dの内周との間に供給される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部の内周に一対の転がり軸受の外輪が嵌合され前記一対の転がり軸受によって回転軸線まわりに回転可能に支持された円筒状の歯車と、オイルポンプと、を備え、前記オイルポンプから吐出されたオイルの一部が前記歯車の内周に供給される車両用駆動装置であって、
前記円筒状の歯車の内周には、前記歯車の内周に供給されたオイルを前記一対の転がり軸受の外輪によって堰き止めることにより前記歯車の内周にオイルを溜める空間が形成されており、
前記円筒状の歯車の内周面は、前記回転軸線方向において、前記一対の転がり軸受の一方に向かうに連れて内径が大きくなるように形成されている
ことを特徴とする車両用駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端部の内周に一対の転がり軸受の外輪が嵌合され前記一対の転がり軸受によって回転軸線まわりに回転可能に支持された円筒状の歯車を備えた車両用駆動装置に関して、前記円筒状の歯車が回転しているときにおける前記円筒状の歯車の両端部の内周と前記転がり軸受の外輪との間の摩耗を好適に抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
両端部の内周に一対の転がり軸受の外輪が嵌合され前記一対の転がり軸受によって回転軸線まわりに回転可能に支持された円筒状の歯車を備えた車両用駆動装置がよく知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用駆動装置がそれである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-44986号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1の車両用駆動装置では、前記円筒状の歯車を前記回転軸線まわりに回転可能に支持するために、例えば、前記一対の転がり軸受の内輪を非回転部材(トランスアクスルケース)に圧入し、前記一対の転がり軸受の外輪を前記円筒状の歯車の両端部の内周に嵌合する場合がある。この場合には、前記転がり軸受の内輪を前記非回転部材に圧入することによって、前記転がり軸受の外輪と前記円筒状の歯車の両端部の内周との嵌め合いが緩くなり易くなるので、前記円筒状の歯車が前記回転軸線まわりに回転すると、前記転がり軸受の外輪が前記円筒状の歯車の両端部の内周面に対して摺動して、前記転がり軸受の外輪と前記円筒状の歯車の両端部の内周との間が摩耗してしまうという恐れがあった。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、円筒状の歯車が回転しているときにおける円筒状の歯車の両端部の内周と転がり軸受の外輪との間の摩耗を好適に抑制する車両用駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の要旨とするところは、(a)両端部の内周に一対の転がり軸受の外輪が嵌合され前記一対の転がり軸受によって回転軸線まわりに回転可能に支持された円筒状の歯車と、オイルポンプと、を備え、前記オイルポンプから吐出されたオイルの一部が前記歯車の内周に供給される車両用駆動装置であって、(b)前記円筒状の歯車の内周には、前記歯車の内周に供給されたオイルを前記一対の転がり軸受の外輪によって堰き止めることにより前記歯車の内周にオイルを溜める空間が形成されており、(c)前記円筒状の歯車の内周面は、前記回転軸線方向において、前記一対の転がり軸受の一方に向かうに連れて内径が大きくなるように形成されていることにある。
【発明の効果】
【0007】
第1発明の車両用駆動装置によれば、前記円筒状の歯車の内周面は、前記回転軸線方向において、前記一対の転がり軸受の一方に向かうに連れて内径が大きくなるように形成されているので、前記円筒状の歯車の内周に供給されたオイルが前記一対の転がり軸受の一方の外輪に向かって流れて、オイルが前記転がり軸受の外輪と前記円筒状の歯車の端部の内周との間に好適に供給される。また、前記円筒状の歯車の内周に供給されたオイルが前記円筒状の歯車の内周に形成された前記空間内に溜められるので、前記一対の転がり軸受の外輪によって堰き止められたオイルが前記転がり軸受の外輪と前記円筒状の歯車の両端部の内周との間に好適に供給される。このため、前記円筒状の歯車が回転しているときにおいて前記オイルポンプから吐出されたオイルの一部が遠心力により前記転がり軸受の外輪と前記円筒状の歯車の両端部の内周との間に好適に供給されるので、前記円筒状の歯車が回転しているときにおける前記円筒状の歯車の両端部の内周と前記転がり軸受の外輪との間の摩耗が好適に抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例のハイブリッド車両の駆動装置の構成の概略を説明する図である。
図2図1のハイブリッド車両の駆動装置に備えられたトランスアクスルの構成を説明する断面図である。
図3図2の出力歯車の周辺部分を拡大した拡大図である。
図4図2を矢印A方向から見た図である。
図5】本発明の他の実施例の駆動装置に備えられた円筒状の出力歯車の構成を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例0010】
図1は、本発明が適用されたハイブリッド車両(以下車両という)10の駆動装置(車両用駆動装置)12の概略構成を説明する図である。図1に示すように、駆動装置12は、走行用駆動力源としてのエンジン14と、エンジン14の動力を駆動輪16に伝達する動力伝動装置であるトランスアクスル18と、を備えている。なお、トランスアクスル18は、例えば、遊星歯車式の動力分配機構20と、カウンタギヤ機構22と、第1電動機MG1と、第2電動機MG2と、ディファレンシャル装置24と、ドライブシャフト26等と、を備えている。
【0011】
図1に示すように、動力分配機構20は、エンジン14から出力された動力をダンパー28および入力軸30を介して第1電動機MG1および円筒状の出力歯車(円筒状の歯車)32へ分配する。また、カウンタギヤ機構22は、出力歯車32に形成されたカウンタドライブギヤ32aに噛み合うカウンタドリブンギヤ22aとディファレンシャル装置24のデフリングギヤ24aに噛み合うデフドライブギヤ22bとがそれぞれ固定されたカウンタ軸22sを有している。また、第2電動機MG2は、カウンタギヤ機構22のカウンタドリブンギヤ22aに噛み合う出力歯車34を有している。また、ドライブシャフト26は、駆動輪16と共に回転する。なお、動力分配機構20は、図2に示すように、入力軸30の回転軸線Cまわりに回転可能なサンギヤSと、サンギヤSの外周側に配置されたリングギヤRと、それらサンギヤSおよびリングギヤRと噛み合うピニオンギヤPを自転および公転可能に支持するキャリヤCAと、を備えている。サンギヤSは、第1電動機MG1の略円筒状の回転軸36のエンジン14側の端部にスプライン嵌合によって相対回転不能に連結されている。キャリヤCAは、入力軸30から径方向に伸びる鍔部30aに相対回転不能に連結されており、キャリヤCAは、エンジン14及びオイルポンプ駆動軸38に動力伝達可能に連結されている。リングギヤRは、出力歯車32の内周に一体的に形成されており、リングギヤRは、第2電動機MG2およびドライブシャフト26に動力伝達可能に連結されている。なお、図2は、駆動装置12に備えられたトランスアクスル18の構成を説明する断面図である。
【0012】
このように構成されたトランスアクスル18では、ダンパー28及び入力軸30を介して入力されるエンジン14の動力が円筒状の出力歯車32へ伝達され、出力歯車32からカウンタギヤ機構22、ディファレンシャル装置24、一対のドライブシャフト26等を順次介して駆動輪16へ伝達される一方、第2電動機MG2の動力が、カウンタギヤ機構22、ディファレンシャル装置24、一対のドライブシャフト26等を順次介して駆動輪16へ伝達されるようになっている。
【0013】
図2に部分的に示されるトランスアクスル18の容器状のトランスアクスルケース40は、例えば、第1ケース部材40a、第2ケース部材40b、および第3ケース部材40cを備える非回転部材であり、各ケース部材の回転軸線C方向の端面(合わせ面)がボルトによって締結されることで、一つのトランスアクスルケース40として構成されている。
【0014】
図1および図2に示すように、入力軸30のエンジン14側の端部(一端部)は、ダンパー28を介してエンジン14のクランク軸14aに動力伝達可能に連結されており、入力軸30はエンジン14により回転駆動させられる。また、入力軸30のエンジン14側とは反対側の端部(他端部)は、円筒状のオイルポンプ駆動軸38が例えばスプライン嵌合によって相対回転不能に連結されている。このため、エンジン14によって入力軸30が回転駆動されることにより、オイルポンプ駆動軸38を介してトランスアクスル18に備えられたオイルポンプ42が駆動されて、オイルポンプ42からオイルLF(図3参照)が吐出されるようになっている。なお、オイルポンプ42は、図2に示すように、円環状のドリブンギヤ42aとドリブンギヤ42aの内周歯と噛み合う外周歯を有するドライブギヤ42bとが噛み合わされる内接歯車型であり、オイルポンプ駆動軸38のオイルポンプ42側の端部がドライブギヤ42bに相対回転不能に連結されている。
【0015】
図2に示すように、回転軸36には、回転軸36の内部に回転軸線C方向に沿って貫通した軸方向油路36aと、軸方向油路36aから径方向に伸びた第1径方向油路36bおよび第2径方向油路36cと、が形成されている。また、オイルポンプ駆動軸38には、オイルポンプ駆動軸38の内部に回転軸線C方向に沿って貫通した軸方向油路38aと、軸方向油路38aから径方向に伸びた径方向油路38bと、が形成されている。なお、図2に示すように、回転軸36の軸方向油路36a内には、回転軸36の径より小さいオイルポンプ駆動軸38が収容されている。このため、オイルポンプ42がエンジン14によって駆動してオイルポンプ42からオイルポンプ駆動軸38の軸方向油路38a内にオイルLFが吐出されると、軸方向油路38a内に吐出されたオイルLFの一部がオイルポンプ駆動軸38に形成された径方向油路38bから回転軸36の軸方向油路36a内に供給される。そして、回転軸36の軸方向油路36a内に供給されたオイルLFは、回転軸36の遠心力によって回転軸36に形成された第1径方向油路36bおよび第2径方向油路36cを通って、例えば第1電動機MG1のステータ44のコイルエンド44a等を冷却する。
【0016】
また、図2に示すように、入力軸30には、入力軸30の内部に回転軸線C方向に沿って円柱形状に穿設した軸方向油路30bと、軸方向油路30bから径方向に伸びた第1径方向油路30cおよび第2径方向油路30dと、が形成されている。なお、入力軸30に形成された軸方向油路30bは、オイルポンプ駆動軸38の軸方向油路38aと連通している。このため、オイルポンプ42からオイルポンプ駆動軸38の軸方向油路38a内にオイルLFが吐出されると、軸方向油路38a内に吐出されたオイルLFの一部が入力軸30の軸方向油路30b内に吐出され、軸方向油路30b内に吐出されたオイルLFが入力軸30に形成された第1径方向油路30cおよび第2径方向油路30dを通って円筒状の出力歯車32の内周に供給される。なお、第1径方向油路30cを通ったオイルLFは、図3に示す矢印F1に示すように、キャリヤCAの円板部材CAaに固定されたレシーバ46に受け止められるだけではなく、図3に示す矢印F2に示すように、円筒状の出力歯車32の内周にも供給されるようになっている。図3に示す矢印F1、F2は、第1径方向油路30cを通ったオイルLFの流れの一例を示す矢印である。レシーバ46に受け止められたオイルLFの一部は、キャリヤCAの軸部材CAbに形成された供給油路CAcを通ってピニオンギヤPに供給される。レシーバ46は、レシーバ46から溢れ出たオイルLFが後述する第1転がり軸受48の近くに滴下するように配置されている。また、第2径方向油路30dを通ったオイルLFは、図3に示す矢印F3および矢印F4に示すように、円筒状の出力歯車32の内周に供給されるようになっている。図3の矢印F3、F4は、第2径方向油路30dを通ったオイルLFの流れの一例を示す矢印である。なお、図3は、図2の出力歯車32の周辺部を拡大した拡大図である。
【0017】
出力歯車32は、図3に示すように、出力歯車32のエンジン14側の端部32bの外周面にカウンタドライブギヤ32aが外周歯として形成され、出力歯車32の中央部32cの内周面にリングギヤRが内周歯として形成された円筒状の歯車である。また、出力歯車32は、出力歯車32のエンジン14側の端部32bが第1転がり軸受48を介して非回転部材であるトランスアクスルケース40の第1ケース部材40aに形成された支持部40a1に支持され、出力歯車32のエンジン14側とは反対側の端部32dが第2転がり軸受50を介して非回転部材であるトランスアクスルケース40の第2ケース部材40bに形成された支持部40b1に支持されることによって、回転軸線Cまわりに回転可能に支持されている。すなわち、円筒状の出力歯車32は、出力歯車32の両端部32b、32dの内周に嵌合された一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50によって、回転軸線Cまわりに回転可能に支持されている。なお、第1転がり軸受48は、環状の内輪48aと、環状の外輪48bと、球状に形成された複数の転動体48cと、内輪48aと外輪48bとの間において周方向に一列に配列された転動体48cの間隔を一定に保持する保持器48dと、を備えた転がり軸受であり、第2転がり軸受50は、環状の内輪50aと、環状の外輪50bと、球状に形成された複数の転動体50cと、内輪50aと外輪50bとの間において周方向に一列に配列された転動体50cの間隔を一定に保持する保持器50dと、を備えた転がり軸受である。また、第1転がり軸受48は、内輪48aが第1ケース部材40aの支持部40a1に圧入され、外輪48bが出力歯車32のエンジン14側の端部32bの内周に相対的に緩く嵌合されている。また、第2転がり軸受50は、内輪50aが第2ケース部材40bの支持部40b1に圧入され、外輪50bが出力歯車32のエンジン14側とは反対側の端部32dの内周に相対的に緩く嵌合されている。
【0018】
円筒状の出力歯車32の内周面32eには、前述したリングギヤRと、第1嵌合面32fと、第2嵌合面32gと、第1テーパ面32hと、第2テーパ面32iと、がそれぞれ形成されている。なお、リングギヤRは、出力歯車32の中央部32cの内周面32eに形成されている。また、第1嵌合面32fは、第1転がり軸受48の外輪48bを嵌合する、出力歯車32のエンジン14側の端部32bに形成された内周面32eである。また、第2嵌合面32gは、第2転がり軸受50の外輪50bを嵌合する、出力歯車32のエンジン14側とは反対側の端部32dに形成された内周面32eである。また、第1テーパ面32hは、回転軸線C方向においてリングギヤRから第1嵌合面32fに向かうに連れて出力歯車32の内径Dinが大きくなるように形成された、すなわち回転軸線C方向においてリングギヤRから第1転がり軸受48に向かうに連れて内径Dinが大きくなるように形成された、リングギヤRと第1嵌合面32fとの間の内周面32eである。また、第2テーパ面32iは、回転軸線C方向においてリングギヤRから第2嵌合面32gに向かうに連れて内径Dinが大きくなるように形成された、すなわち回転軸線C方向においてリングギヤRから第2転がり軸受50に向かうに連れて内径Dinが大きくなるように形成された、リングギヤRと第2嵌合面32gとの間の内周面32eである。このため、例えば、出力歯車32の第1テーパ面32hにオイルLFが供給されると、第1テーパ面32hに供給されたオイルLFが第1転がり軸受48の外輪48bに向かって流れる。また、例えば、出力歯車32の第2テーパ面32iにオイルLFが供給されると、第2テーパ面32iに供給されたオイルLFが第2転がり軸受50の外輪50bに向かって流れる。
【0019】
図3に示すように、第1転がり軸受48の外輪48bの内径Din1が、出力歯車32に形成された第1テーパ面32hの内径Dinよりも小さくなるように、第1転がり軸受48の外輪48bおよび出力歯車32の第1テーパ面32hの形状が設計されている。また、第2転がり軸受50の外輪50bの内径Din2が、出力歯車32に形成された第2テーパ面32iの内径Dinよりも小さくなるように、第2転がり軸受50の外輪50bおよび出力歯車32の第2テーパ面32iの形状が設計されている。このため、出力歯車32の内周にオイルLFが供給されると、図3に示すように、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが第1転がり軸受48の外輪48bと第2転がり軸受50の外輪50bとによって堰き止められることにより、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが出力歯車32の内周に溜められる。すなわち、出力歯車32の内周には、図3に示すように、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFを一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bによって堰き止めることにより出力歯車32の内周にオイルLFを溜める空間SPが形成されている。なお、出力歯車32には、出力歯車32の内周に溜められたオイルLFの一部を例えばカウンタギヤ機構22のデフドライブギヤ22b等に供給するために径方向に貫通した貫通穴32jが形成されている。
【0020】
図4は、図2に示された例えば出力歯車32、一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50を矢印A方向から見た図である。図4に示すように、出力歯車32の内周に形成されたリングギヤRは、リングギヤRの第1転がり軸受48側の端部よりも第2転がり軸受50側の端部がリングギヤRの回転方向FR側となるように形成された斜歯歯車である。なお、リングギヤRの回転方向FRは、例えば、車両10が前進したときに出力歯車32すなわちリングギヤRが回転軸線Cまわりに回転する回転方向である。このため、図4に示すように、斜歯歯車であるリングギヤRが回転方向FRに回転させられると、出力歯車32の内周に溜められたオイルLFが矢印F5方向へ向かう流れが発生する。すなわち、リングギヤRは、出力歯車32の回転時に出力歯車32の内周に溜まったオイルLFを第1転がり軸受48側へ向かうように流す斜歯歯車である。
【0021】
以上のように構成された駆動装置12では、車両10が前進走行すると、出力歯車32が回転軸線Cまわりに回転するとともに、オイルポンプ42から吐出されたオイルLFの一部が出力歯車32の内周に溜められる。このため、出力歯車32が回転軸線Cまわりに回転しているときにおいて出力歯車32の内周に溜められたオイルLFが、図3の矢印F6に示すように遠心力により第1転がり軸受48の外輪48bと出力歯車32のエンジン14側の端部32bの内周との間や第2転がり軸受50の外輪50bと出力歯車32のエンジン14側とは反対側の端部32dの内周との間に好適に供給される。なお、矢印F6は、出力歯車32が回転しているときにおける出力歯車32の内周に溜められたオイルLFの流れの一例を示す矢印である。
【0022】
上述のように、本実施例の駆動装置12によれば、円筒状の出力歯車32の内周面32eは、回転軸線C方向において、一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の一方に向かうに連れて内径Dinが大きくなるように形成されているので、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の一方の外輪48b、50bに向かって流れて、オイルLFが転がり軸受48、50の外輪48b、50bと出力歯車32の端部32b、32dの内周との間に好適に供給される。また、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFが出力歯車32の内周に形成された空間SP内に溜められるので、一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bによって堰き止められたオイルLFが一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bと出力歯車32の両端部32b、32dの内周との間に好適に供給される。このため、出力歯車32が回転しているときにおいてオイルポンプ42から吐出されたオイルLFの一部が遠心力により一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bと出力歯車32の両端部32b、32dの内周との間に好適に供給されるので、出力歯車32が回転しているときにおける出力歯車32の両端部32b、32dの内周と一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bとの間の摩耗が好適に抑制される。
【0023】
次に、本発明の他の実施例を説明する。尚、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【実施例0024】
図5は、本発明の他の実施例の駆動装置(車両用駆動装置)に備えられた円筒状の出力歯車32の構成を説明する断面図である。本実施例の駆動装置は、出力歯車32に貫通穴32jが設けられていない点で相違しており、その他は実施例1の駆動装置12と略同じである。なお、本実施例の駆動装置では、出力歯車32に貫通穴32jが形成されていないので、出力歯車32の内周に供給されたオイルLFを出力歯車32の内周に捕捉する捕捉量が好適に向上する。このため、出力歯車32が回転しているときにおける出力歯車32の両端部32b、32dの内周と一対の第1転がり軸受48および第2転がり軸受50の外輪48b、50bとの間に供給されるオイルLFの量が好適にアップする。
【0025】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0026】
例えば、前述の実施例では、オイルポンプ42は、エンジン14が入力軸30すなわちオイルポンプ駆動軸38を回転駆動させることによってオイルLFを吐出する機械式オイルポンプであったが、本発明のオイルポンプは、例えば電動式オイルポンプ等であっても良い。すなわち、吐出されたオイルLFが出力歯車32の内周に供給されるのであればどのようなオイルポンプが使用されても良い。
【0027】
また、前述の実施例では、出力歯車32の内周面32eには、一対の第1テーパ面32hおよび第2テーパ面32iがそれぞれ形成されていたが、例えば、出力歯車32の内周面32eに一対の第1テーパ面32hおよび第2テーパ面32iの何れか一方だけを形成させても良い。
【0028】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0029】
12:駆動装置(車両用駆動装置)
32:出力歯車(歯車)
32b、32d:両端部
32e:内周面
42:オイルポンプ
48:第1転がり軸受(転がり軸受)
48b:外輪
50:第2転がり軸受(転がり軸受)
50b:外輪
C:回転軸線
Din:内径
LF:オイル
SP:空間
図1
図2
図3
図4
図5