(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077810
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】リクライニング装置
(51)【国際特許分類】
B60N 2/22 20060101AFI20220517BHJP
A47C 1/025 20060101ALI20220517BHJP
A47C 1/026 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
B60N2/22
A47C1/025
A47C1/026
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188826
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼永 昇馬
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA20
3B099CA23
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シート幅方向に関して薄型化、小型化、軽量化が実現できるクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング装置10は、シートクッションに対するシートバックの角度調整を行う動力駆動機構Dと、手動駆動機構Mとを備える。動力駆動機構は、第1歯数の第1内歯を有する第一の歯車12と、第1歯数と異なる第2歯数の第1外歯40aを有する第二の歯車18とを含む。手動駆動機構は、第二の歯車の回転をロックするロック位置とロック解除位置との間を移動するロック部材26と、ロック部材の移動動作をガイドするガイド部材28と、第二の歯車に固定されロック状態を形成可能なロック用内歯と、第一の歯車とガイド部材とのいずれか一方の外周部に径方向から溶接可能な形状の平面部50と、平面部の端部から径方向内側に延在し、第一の歯車とガイド部材の他方の軸方向と直交する面と対向する垂直部52とを有する外周リング30とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションに対するシートバックの角度調整を駆動源からの動力によって実行する動力駆動機構と、前記シートバックの角度調整を手動操作可能にするためにロック解除を行う手動駆動機構と、を備え、
前記動力駆動機構は、
第1歯数の第1内歯を有する第一の歯車と、
前記第1内歯と噛合し回転可能に配置される、前記第1歯数と異なる第2歯数の第1外歯を有する第二の歯車と、
を含み、
前記手動駆動機構は、
前記第二の歯車の回転をロック可能なロック歯を有し、ロック位置とロック解除位置との間を移動可能なロック部材と、
前記ロック部材の移動動作をガイドするガイド部材と、
前記第二の歯車に固定され、前記ロック歯と噛合してロック状態を形成可能なロック用内歯と、
前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の外周部に径方向から溶接可能な形状の平面部と、前記平面部の端部から径方向内側に延在し、前記第一の歯車と前記ガイド部材の他方の軸方向と直交する面と対向する垂直部と、を有する外周リングと、
を備える、リクライニング装置。
【請求項2】
前記シートクッションが接続されるクッションフレームと前記シートバックが接続されるバックフレームの一方は、前記第一の歯車に、前記軸方向に第一の距離を離間させて固定され、
前記クッションフレームと前記バックフレームの他方は、前記ガイド部材に、前記軸方向に前記第一の距離と異なる第二の距離を離間させて固定され、
前記第一の距離と前記第二の距離とのうち、大きな距離の中に前記垂直部が配置される、請求項1に記載のリクライニング装置。
【請求項3】
前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の外周部と前記平面部との溶接は、レーザ溶接に対応した形状である、請求項1または請求項2に記載のリクライニング装置。
【請求項4】
前記外周リングの平面部は、前記第一の歯車と前記ガイド部材の他方に対して離間して配置される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリクライニング装置。
【請求項5】
前記平面部の前記垂直部から遠い側の端部は、溶接される前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の前記垂直部から遠い側の面から突出しない、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のリクライニング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リクライニング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、車両(自動車等)に搭載される座席(シート)は、座面であるシートクッションと、背中支持面であるシートバック等で構成されている。車両用のシートの場合、利用者(例えば、搭乗者等)の体格や好み、利用状況等にしたがいシートの姿勢、つまり、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が調整できる調整機構、いわゆる、リクライニング装置を内蔵している場合が多い。例えば、車両運転時には、疲れ難いシートバックの角度を実現するために、角度の微調整ができるように構成されている。この場合、例えば、モータ等の動力源からの動力を用いて角度調整を行うようにしているものがある。一方、シートバックの傾斜角度を大きく速く調整したい場合がある。例えば、休憩等のために、シートバックをフラットに近い角度に調整したい場合や、例えばツードアタイプの車両で後部座席の乗降を行う場合に、シートバックを前方に大きく倒し込みたい場合等である。この場合、シートクッションに対するシートバックのロック機構(係脱機構)を、操作レバー等を操作して解除することで、シートバックの角度が調整できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなリクライニング装置を車両等の座席に適用する場合でも、リクライニング装置の内蔵に起因する座席重量の増加やリクライニング装置の内蔵に起因する座席の大型化は、最小限にとどめることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明の課題の一つは、角度調整の性能や強度の低下を招くことなく、シートの幅方向に関しての薄型化、小型化および軽量化が実現できる、リクライニング装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態にかかるリクライニング装置は、例えば、シートクッションに対するシートバックの角度調整を駆動源からの動力によって実行する動力駆動機構と、前記シートバックの角度調整を手動操作可能にするためにロック解除を行う手動駆動機構と、を備え、前記動力駆動機構は、第1歯数の第1内歯を有する第一の歯車と、前記第1内歯と噛合し回転可能に配置される、前記第1歯数と異なる第2歯数の第1外歯を有する第二の歯車と、を含み、前記手動駆動機構は、前記第二の歯車の回転をロック可能なロック歯を有し、ロック位置とロック解除位置との間を移動可能なロック部材と、前記ロック部材の移動動作をガイドするガイド部材と、前記第二の歯車に固定され、前記ロック歯と噛合してロック状態を形成可能なロック用内歯と、前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の外周部に径方向から溶接可能な形状の平面部と、前記平面部の端部から径方向内側に延在し、前記第一の歯車と前記ガイド部材の他方の軸方向と直交する面と対向する垂直部と、を有する外周リングと、を備える。この構成によれば、外周リングは、例えば、一方側の平面部を外周部に径方向から溶接し、他方側の垂直部のみでガイド部材を保持する構造を実現する。その結果、リクライニング装置の軸方向(厚み方向)に、当該リクライニング装置の組立状態を維持するための部品の介在を最小限とすることが可能になり、リクライニング装置の軸方向の厚み軽減、小型化、軽量化に寄与できる。
【0007】
また、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置の前記シートクッションが接続されるクッションフレームと前記シートバックが接続されるバックフレームの一方は、例えば、前記第一の歯車に、前記軸方向に第一の距離を離間させて固定され、前記クッションフレームと前記バックフレームの他方は、前記ガイド部材に、前記軸方向に前記第一の距離と異なる第二の距離を離間させて固定され、前記第一の距離と前記第二の距離とのうち、大きな距離の中に前記垂直部が配置される。この構成によれば、垂直部を空いているスペースを有効に利用し配置することができる。つまり、垂直部の存在がクッションフレームとバックフレームとの間の距離の増加に影響しないようにすることが可能になり、リクライニング装置の軸方向の厚み軽減に寄与できる。
【0008】
また、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置の前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の外周部と前記平面部との溶接は、レーザ溶接に対応した形状である。この構成によれば、例えば、レーザ溶接を利用することにより、アーク溶接等に比べて溶接痕の突出が少なく、溶接が施された第一の歯車またはガイド部材に接続する他の部品(クッションフレームまたはバックフレーム)を密着させ易くなる。その結果、クッションフレームとバックフレームとの間の距離の短縮化に寄与できる。
【0009】
また、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置の前記外周リングは、例えば、前記外周リングの平面部は、前記第一の歯車と前記ガイド部材の他方に対して離間して配置される。この構成によれば、例えば、第二の歯車とともにガイド部材が偏心回転する際に、溶接が行われていない側の第一の歯車またはガイド部材が、外周リングの平面部に接触することを回避可能となり、リクライニング調整時のリクライニング装置の動作をスムーズに行うことができる。
【0010】
また、本発明の実施形態にかかるリクライニング装置の前記平面部の前記垂直部から遠い側の端部は、例えば、溶接される前記第一の歯車と前記ガイド部材とのいずれか一方の前記垂直部から遠い側の面から突出しない。この構成によれば、外周リングの平面部が、当該平面部が溶接される第一の歯車またはガイド部材に接続される部品(クッションフレームまたはバックフレーム)と干渉することを回避できる。その結果、平面部が溶接される第一の歯車またはガイド部材に接続される部品を密着配置し易くなり、クッションフレームとバックフレームとの間の距離の短縮化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態にかかるリクライニング装置を適用可能な車両用のシート(座席)を示す例示的かつ模式的な側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかるリクライニング装置の例示的かつ模式的な分解斜視図であり、パワー駆動機構側に視点を置いた場合の図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかるリクライニング装置の例示的かつ模式的な分解斜視図であり、
図2の視点とは逆側のマニュアル駆動機構側に視点を置いた場合の図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかるリクライニング装置の組立図の例示的かつ模式的な側面図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかるリクライニング装置をパワー駆動機構側から見た場合の例示的かつ模式的な組立図である。
【
図6】
図6は、実施形態にかかるリクライニング装置をマニュアル駆動機構側から見た場合の例示的かつ模式的な組立図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかるリクライニング装置の例示的かつ模式的な断面図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかるリクライニング装置のパワー駆動機構のウエッジの周辺構造と第1内歯と第1外歯のみが噛合している状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかるリクライニング装置のパワー駆動機構のウエッジの周辺構造と第1内歯と第1外歯および第2内歯と第2外歯が噛合している状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかるリクライニング装置のマニュアル駆動機構のロック状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかるリクライニング装置のマニュアル駆動機構のロック解除状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図12】
図12は、実施形態にかかるリクライニング装置において、ロック調整プレートを備えるマニュアル駆動機構のロック部材によるロック状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図13】
図13は、実施形態にかかるリクライニング装置において、マニュアル駆動機構のロック調整プレートによるロック制限状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図14】
図14は、実施形態にかかるリクライニング装置および当該リクライニング装置に接続されるクッションフレームとバックフレームを示す例示的かつ模式的な斜視図である。
【
図15】
図15は、実施形態にかかるリクライニング装置にクッションフレームとバックフレームを接続した状態を示す例示的かつ模式的な部分断面図である。
【
図16】
図16は、実施形態にかかるリクライニング装置の変形例であり、定常時に第2内歯と第2外歯のみが噛合している状態を示す例示的かつ模式的な図である。
【
図17】
図17は、実施形態にかかるリクライニング装置の外周リングの変形例を示す例示的かつ模式的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の例示的な実施形態が開示される。以下に示される実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用、結果、及び効果は、一例である。本発明は、以下の実施形態に開示される構成以外によっても実現可能であるとともに、基本的な構成に基づく種々の効果や、派生的な効果のうち、少なくとも一つを得ることが可能である。
【0013】
図1は、実施形態にかかるリクライニング装置10を適用可能な車両用のシート(座席)100を示す例示的かつ模式的な側面図である。
図1に示されるように、シート100は、利用者(搭乗者)が着座する座面となるシートクッション102と、シートクッション102に対して矢印A1または矢印A2方向に角度調整可能に接続された、背中支持面となるシートバック104とで構成されている。シートクッション102は、車両の床面であるフロア106に固定されたレール108上を矢印B1または矢印B2方向に移動可能なシートスライダ装置110に固定されている。シートバック104は、車幅方向に延びる回動軸112を支点としてシートクッション102に対して、本実施形態のリクライニング装置10を介して角度調整可能である。リクライニング装置10は、シート100の内部、例えば、回動軸112と同軸に配置されている。
【0014】
シートクッション102の矢印B1方向または矢印B2方向の移動量、及びシートバック104の矢印A1方向または矢印A2方向の角度調整量は、例えば、調整スイッチSWの操作状態に従い駆動するモータ等の駆動源の動力により調整可能である。例えば、調整スイッチSWを矢印B1方向にスライド操作することで、シートクッション102を矢印B1方向の予め設定された位置または所望の位置に移動可能である。同様に、調整スイッチSWを矢印B2方向にスライド操作することで、シートクッション102を矢印B2方向の予め設定された位置または所望の位置に移動可能である。また、スライドレバーLSをロック解除操作することにより、シートクッション102のロック状態を解除し、シートクッション102をB1方向またはB2方向の位置に適宜移動可能である。シートクッション102の移動後、スライドレバーLSをロック操作することにより、シートクッション102を所望の位置で固定することができる。
【0015】
また、調整スイッチSWを矢印A1方向に回動操作することで、リクライニング装置10が動作し、シートバック104を矢印A1方向の予め設定された角度または所望の角度に調整可能である。同様に、調整スイッチSWを矢印A2方向に回動操作することで、リクライニング装置10が動作し、シートバック104を矢印A2方向の予め設定された角度または所望の角度に調整可能である。また、リクライニングロック解除レバーLRを所定方向に回動操作することにより、リクライニング装置10のリクライニングロックを解除し、シートクッション102に対してシートバック104を所望の角度にリクライニングさせることができる。なお、調整スイッチSWの構成は、一例であり、シートクッション102の自動スライド調整とシートバック104の自動リクライニング調整とを別々のスイッチで行ってもよい。また、調整スイッチSWの配置は、適宜変更可能であり、例えば、ダッシュボードに設けてもよいし、ステアリングホイール等に設けてもよい。なお、
図1は、例えば、右ハンドル車両の助手席のシートであり、運転席側のシートでは、調整スイッチSWやリクライニングロック解除レバーLR等は、シート100の逆側に配置されてもよい。
【0016】
図2、
図3は、本実施形態のリクライニング装置10の分解斜視図であり、
図2がパワー駆動機構D側から矢印X1方向を見た場合の図であり、
図3がマニュアル駆動機構M側がら矢印X2方向を見た場合の図である。また、
図4は、リクライニング装置10の組立図の例示的かつ模式的な側面図である。
図5は、リクライニング装置10をパワー駆動機構D側から見た場合の例示的かつ模式的な組立図である。また、
図6は、リクライニング装置10をマニュアル駆動機構M側から見た場合の例示的かつ模式的な組立図である。そして、
図7は、
図5の線分A-Aにおける、リクライニング装置10の例示的かつ模式的な断面図である。
【0017】
リクライニング装置10は、シートクッション102に対するシートバック104の角度調整を駆動源(例えば、電動モータ)からの動力によって実行するパワー駆動機構D(動力駆動機構や調整機構と称する場合もある)と、シートバック104の角度調整を手動操作可能にするためにリクライニングロックの解除を行うマニュアル駆動機構M(手動駆動機構や係脱機構と称する場合もある)と、で構成されている。
【0018】
図2、
図3に示されるように、パワー駆動機構Dは、第一の歯車12、ウエッジ14、ストライカピン16(駆動ピン)、第二の歯車18、ウエッジスプリング20および電動モータ等の駆動軸であるパワー駆動軸DS等で構成されている。
【0019】
また、マニュアル駆動機構Mは、パワー駆動機構Dと共用する共通歯車としての第二の歯車18、カムプレート22、カムリング24(カム部材)、ロック部材26(ポールと称する場合もある)、ロアアーム28(ガイド部材)、外周リング30、ロックスプリング32およびリクライニングロック解除レバーLRに接続されたマニュアル操作軸MS等で構成されている。なお、マニュアル操作軸MSとパワー駆動軸DSは、リクライニング装置10の内部で離間して対向している。また、マニュアル駆動機構Mは、ロック部材26のロック動作を制限するロック調整プレート34が含まれる。なお、マニュアル操作時の所定角度のロック動作の制限が不要な場合、ロック調整プレート34は省略することもできる。以下の説明では、ロック調整プレート34を搭載する例を示す。
【0020】
図2、
図3に示されるウエッジ14、ストライカピン16、第二の歯車18、ウエッジスプリング20、ロック調整プレート34、カムプレート22、カムリング24、ロック部材26等は、第一の歯車12とロアアーム28によって、回転中心軸Oに沿って挟まれて組み立てられる。そして、
図4に示されるように、外周リング30は、ロアアーム28の周縁部と第一の歯車12の外縁部を囲むように配置される。外周リング30が第一の歯車12の外縁部と溶接等の接合手段によって一体化されることにより、リクライニング装置10の組立状態を維持することができる。外周リング30と第一の歯車12との接合の詳細については後述する。
【0021】
図3に示されるように、第一の歯車12は、一方の面である第一の面12Aに、例えば、プレス加工等により回転中心軸Oに直交する径方向に径の異なる2段の第1内歯38aおよび第2内歯38bを備える。
図3の場合、第1内歯38aが第2内歯38bより外径側に形成されている。すなわち、第1内歯38aの径は、前記第2内歯38bの径より大径である。また、
図4に示されるように、第一の歯車12の第一の面12Aの裏側である第二の面12Bには、プレス加工によって第1内歯38aおよび第2内歯38bを形成した結果として突出した径の異なる2段の外歯を備える。そして、
図4、
図5に示されるように、第一の歯車12の第二の面12Bに形成された2段の外歯のうち、例えば外周側の歯部が係合用外歯36として利用可能となり、当該係合用外歯36が外周リング30より矢印X2方向のパワー駆動軸DS側に突出し、例えば、シートバック104を支持するバックフレーム等に接続できるように構成されている。また、
図4、
図6に示されるように、外周リング30に形成された開口部30aからロアアーム28の周縁部より内側の部分が矢印X1方向のマニュアル操作軸MS側に突出し、例えば、シートクッション102を支持するクッションフレーム等に接続できるように構成されている。なお、ロアアーム28の外面には、ロックスプリング32が配置され、一端部32aがロアアーム28の外面に形成された係合用凸部28bに係止され、他端部32bが、マニュアル操作軸MSに係止されている。ロックスプリング32は、マニュアル操作軸MSを所定の方向(例えば、
図6において時計回り方向)に付勢している。つまり、リクライニングロック解除レバーLRに接続されたマニュアル操作軸MSが手動によりロックスプリング32の付勢力に抗して反時計回り方向に回転されると、手動によるロック解除状態を実現される。また、リクライニングロック解除レバーLRから手を離した場合、ロックスプリング32の付勢力によりマニュアル操作軸MSが時計回り方向に回転しロック状態に復帰させる。マニュアル操作軸MSの操作によるロック解除の詳細やリクライニング装置10に対するバックフレームやクッションフレームの接続構造の詳細は後述する。
【0022】
上述のように構成されるリクライニング装置10の詳細を、まず、パワー駆動機構Dについて説明する。
【0023】
第一の歯車12は、板状部材(例えば、鋼板)にプレス加工や切削加工を施して中央部に段部分を形成した、強度を向上させた円盤状の部材である。第一の歯車12は、
図2、
図3に示されるように、段部分に打抜き加工や穴開け加工により、筒状部12aが形成されるとともに、上述したように、第一の面12A側から歯車形状のプレス型を用いたプレス加工を施すことにより、矢印X2方向に凹んだ第1内歯38aと、この第1内歯38aと径が異なる第2内歯38bを容易に形成することができる。また、同時に第二の面12B側に第1内歯38aおよび第2内歯38bと同径の外歯を形成することができる。上述したように、このとき形成される外歯のうち、例えば、第1内歯38aに対応する外歯が、係合用外歯36となる。この係合用外歯36はスプラインとして利用可能で、バックフレーム等に形成されたスプライン溝と噛合させることにより、第一の歯車12(リクライニング装置10)をバックフレーム等に容易かつ強固に接続することができる。
【0024】
同様に、第二の歯車18もまた、例えば、板状部材(例えば、鋼板)にプレス加工や切削加工を施して中央部に段部分を形成した、強度を向上させた円盤状の部材である。第二の歯車18は、
図2、
図3に示されるように、段部分に打抜き加工や穴開け加工により、筒状部18aが形成されるとともに、第一の面18A側から歯車形状のプレス型を用いたプレス加工を施すことにより、第二の面18B側(矢印X2方向)に突出した第1外歯40aと、この第1外歯40aと径が異なる第2外歯40bが形成される。そして、
図7、
図8に示されるように、第二の歯車18の第1外歯40aは第一の歯車12の第1内歯38aと噛合可能であり、第2外歯40bは第2内歯38bと噛合可能である。
【0025】
なお、リクライニング装置10の場合、第一の歯車12の第1内歯38aの第1歯数は例えば31枚で、第二の歯車18の第1外歯40aの第2歯数は、第1内歯38aの第1歯数より少ない、例えば30枚である。そして、第一の歯車12の回転中心に対して第二の歯車18の回転中心を偏心させておき、第二の歯車18を少しずつ偏心させながら回転させることにより、
図1で説明したように、シートクッション102に対してシートバック104の角度を微調整できるように構成している。第二の歯車18の偏心回転の詳細は後述する。
【0026】
ところで、前述したように、第一の歯車12は、シートバック104側に接続される。したがって、例えば、シートバック104に過大な衝撃や荷重がかかった場合、その衝撃や荷重は第一の歯車12と第二の歯車18の噛合部分(接続部分)に作用する。つまり、第一の歯車12と第二の歯車18との結合強度を十分に確保しておくことで歯車部分の破壊を回避することができる。そこで、本実施形態のリクライニング装置10は、第1外歯40aと第1内歯38aとの噛合に加え、必要に応じて第2外歯40bと第2内歯38bとを噛合させることにより、第一の歯車12と第二の歯車18の結合部分に作用する負荷(荷重)を分散させ破壊に至ることを回避する構造を実現している。つまり、2段噛合によりリクライニング装置10の強度を増大できる構造を実現している。
【0027】
本実施形態のリクライニング装置10の場合、
図7、
図8に示されるように、定常時(車両が通常使用されている状態)のリクライニング動作(角度の微調整)を実現するために第二の歯車18が偏心回転する場合、例えば、第一の歯車12の外径側の第1内歯38aと第二の歯車18の外径側の第1外歯40aとが部分的に噛合しながら回転する。ことのとき、第一の歯車12の内径側の第2内歯38bと第二の歯車18の内径側の第2外歯40bとは、いずれの位置においても相互の歯面が僅かな隙間を介して非接触の状態となるように第一の歯車12と第二の歯車18の形状および組付け関係が設定されている。つまり、定常時は、第一の歯車12と第二の歯車18とは、第1内歯38aと第1外歯40aのみを用いて偏心回転している。
【0028】
このような第1内歯38aと第1外歯40aとによる噛合関係において、シートバック104に大きな衝撃や荷重がかかった場合、その衝撃や荷重が第1内歯38aと第1外歯40aとが接触している歯面にかかり、少なくとも一方の歯面の形状が変形する場合がある。第1内歯38aや第1外歯40aの変形により、
図9に示されるように、第2内歯38bと第2外歯40bとの間に設けられていた僅かな隙間が詰まり、第2内歯38bと第2外歯40bとが噛合するようになる。つまり、第1内歯38aと第2外歯40bとの噛合に加え、第2内歯38bと第2外歯40bとの噛合が実現され、第一の歯車12と第二の歯車18との噛合強度を増加させる。
【0029】
この場合、第一の歯車12の第1内歯38aおよび第2内歯38bは第一の歯車12を構成する同一の板状部材上に径を変えてプレス加工によって形成されている。同様に、第二の歯車18の第1外歯40aおよび第2外歯40bも第二の歯車18を構成する同一の板状部材上に径を変えてプレス加工によって形成されている。つまり、第一の歯車12や第二の歯車18を構成する板状部材に2段の歯車を形成しているだけとなる。その結果、定常時に「主」として機能する第1内歯38aと第1外歯40aの噛合構造に、過大な衝撃や荷重がかかった場合に「副」として機能する第1外歯40aと第2外歯40bの噛合構造を追加する場合でも噛合機構の総重量に変化はない。つまり、リクライニング装置10の重量増加を回避しつつ、強度増大を実現することができる。なお、第1内歯38aと第1外歯40aの噛合および第2内歯38bと第2外歯40bの噛合を同時に実行しようとする場合、各歯面の形状を高精度に維持する必要がある。一方、本実施形態のように、第1内歯38aと第1外歯40aの噛合を「主」として利用し、第2内歯38bと第2外歯40bの噛合を「副」として利用することにより、定常時に利用する第1内歯38aおよび第1外歯40aのみを高精度に加工すればよい。一方、補助的に利用する第2内歯38bおよび第2外歯40bの加工精度は第1内歯38aおよび第2外歯40bに比べて低くても実用上問題は生じない。その結果、加工コストの軽減や品質管理の簡略化に寄与することができる。
【0030】
なお、
図8に示すように、第2内歯38bより大径の第1内歯38aは、第2内歯38bより大きな衝撃や荷重に耐得る強度を備える。したがって、定常時に第2内歯38bの径より大径の第1内歯38aを利用することにより、リクライニング装置10の定常時の衝撃や荷重の許容値を向上し、品質向上に寄与することができる。また、歯面を加工する場合に大径の方が高精度を得やすく、第1内歯38aと第1外歯40aとを噛合した場合の滑らかさの向上や接触音の発生の軽減に寄与することができる。
【0031】
続いて、
図2、
図3、
図8等を用いて、パワー駆動機構Dの偏心回転の態様を説明する。
【0032】
図3、
図8に示されるように、略円弧形状の2個のウエッジ14(14a、14b)は、内周面14cが第一の歯車12の筒状部12aの外周面に接触可能に、またウエッジ14(14a,14b)の外周面14dは第二の歯車18の筒状部18aの内周面に接触可能に配置される。このとき、2個のウエッジ14は、略C字形状のウエッジスプリング20の両端のフック20aがスプリング係合部14eに係合して互いに離間する方向に付勢されている。ウエッジスプリング20は、各ウエッジ14は、筒状部12aの外周面と筒状部18aの内周面の間の隙間を埋め、ウエッジ14が、がたつく(振動する)ことを防止している。
【0033】
ストライカピン16は、筒状部16aの周囲にフランジを有する部材である。筒状部16aの一端が第一の歯車12の筒状部12aに挿入され、第一の歯車12に対してスムーズかつ安定的に回転できるように支持されている。ストライカピン16のフランジを含む一部は第二の歯車18の筒状部18aを貫通している。ストライカピン16の筒状部16aは、内周壁に矢印X1、X2方向に沿って延びるスプライン等が形成されている。このスプラインには、自動でリクライニング調整行う電動モータ等の駆動源の駆動軸であるパワー駆動軸DSが挿入されてスプライン嵌め合いにより固定されている。また、ストライカピン16の外周面のフランジの一部には、2個の突起16b(16ba、16bb)が形成され、当該突起16bがそれぞれのウエッジ14の一端に当接可能に構成されている。例えば、
図8において、駆動軸パワー駆動軸DSがシートバック104のリクライニング角度を調整するために正転駆動(例えば時計回り方向に駆動)すると、突起16bbがウエッジスプリング20の付勢力に抗して、ウエッジ14bの一端側を押し、さらに、ウエッジ14aの他端側を押す。その結果、第一の歯車12の筒状部12aと第二の歯車18の筒状部18aとの間に隙間が生じて、ウエッジ14が回転し始める。このとき、第一の歯車12の第1内歯38aの第1歯数と第1外歯40aの第2歯数が一歯分ずれているため、ストライカピン16が一回転する間に第1内歯38aと第1外歯40aとのかみ合わせが一歯分ずれながら、第一の歯車12と第二の歯車18とが偏心回転を開始する。つまり、駆動軸パワー駆動軸DSの正転駆動により、第一の歯車12を正転方向に偏心回転させることができる。同様に、駆動軸パワー駆動軸DSがシートバック104のリクライニング角度を調整するために、逆転駆動(反時計回り方向に駆動)すると突起16baがウエッジスプリング20の付勢力に反して、ウエッジ14aの一端側を押し、さらにウエッジ14bの他端側を押す。つまり、駆動軸パワー駆動軸DSの逆転駆動により、第一の歯車12を逆転方向に偏心回転させることができる。
【0034】
このように、定常時に、第1内歯38aと第1外歯40aのみが噛合している、本実施形態のパワー駆動機構Dによれば、パワー駆動軸DSの一回転の間に第二の歯車18に対して第一の歯車12が一歯分だけ、パワー駆動軸DSの回転方向と同じ方向に回転する。つまり、第一の歯車12に接続されたシートバック104の角度の微調整が可能になる。
【0035】
次に、マニュアル駆動機構Mについて、
図2、
図3及び
図10、
図11を用いて説明する。なお,
図10、
図11は、ロアアーム28を透過させ、マニュアル操作軸MS側から矢印X1方向にロック部材26側が見えている状態の図である。
【0036】
前述したように、マニュアル駆動機構Mでも利用される第二の歯車18において、パワー駆動機構Dで利用する第1外歯40aおよび第2外歯40bを形成する場合に、歯車形状のプレス型によりマニュアル駆動機構M側に凹んだ内歯が形成される。この内歯は、ロック部材26と係合するロック用内歯42aとロック調整プレート34と係合する係合用内歯42bである。つまり、第二の歯車18の第1外歯40aとロック用内歯42aおよび第2外歯40bと係合用内歯42bとは、それぞれ同径で同じ回転中心軸Oを有し、軸方向に対して表裏面に成形され配置されることになる。その結果、第二の歯車18を形成する場合の製造工程の簡略化、効率化、コスト低減に寄与できる。また、第二の歯車18の表裏に、パワー駆動機構Dで利用可能な第1外歯40aおよび第2外歯40bと、マニュアル駆動機構Mで利用可能なロック用内歯42aおよび係合用内歯42bが配置されることにより、複数の歯車を配置する場合の省スペース化が可能となり、第二の歯車18の小型化(小径化)が可能になる。
【0037】
図10は、マニュアル駆動機構Mのロック部材26と第二の歯車18のロック用内歯42aとの噛合状態を説明する例示的かつ模式的な図である。また、
図11は、マニュアル駆動機構Mのロック部材26とロック用内歯42aとの非噛合状態(ロック解除状態)を説明する例示的かつ模式的な図である。
【0038】
マニュアル駆動機構Mは、手動でシートバック104の角度調整を行う場合に、シートバック104がシートクッション102に対して自由に傾くことができるように、シートクッション102に対するシートバック104のロックを解除状態にする機構である。また、マニュアル駆動機構Mは、パワー駆動機構Dによりシートバック104の角度調整を自動で行う場合、及びシートクッション102に対するシートバック104の調整角度状態を維持する場合に第二の歯車18をロック状態にする機構である。
【0039】
本実施形態のリクライニング装置10の場合、第二の歯車18のロック用内歯42aとロック部材26を噛合させることによりロック状態を形成し、非噛合させることでロック解除状態を形成する。
【0040】
ロック部材26は、
図2、
図3、
図10等に示されるように、第二の歯車18のロック用内歯42aより内周側に、例えば等間隔で、外径方向および内径方向に移動可能に配置されている。本実施形態の場合、90°間隔で4個のロック部材26が配置されているが、実際に第二の歯車18の回転をロックしているのは、対向配置された2個のロック部材26である。シートクッション102に対するシートバック104のロック状態が維持できる強度が確保できれば、ロック部材26の数は適宜変更可能である。
【0041】
ロック部材26は、略直方体形状のブロック形状の部材で、リクライニング装置10の場合、定常時にロック動作を行うメインロック部材26Aと、高荷重がかかったときに補助的にロック動作を行うサブロック部材26Bが周方向に交互に配置されている。なお、メインロック部材26Aは、略六角形状のカムチップ26Cを備える構造である。
【0042】
各ロック部材26は、リクライニング装置10が組み立てられた状態で、ロアアーム28において、パワー駆動機構D側に突出したガイド部48の一部で、径方向に延びるガイド壁48aによって径方向に摺動可能に支持(ガイド)されている。ロアアーム28は、中央部にマニュアル操作軸MSが挿通可能な開口部28aが形成され、その周囲に等間隔(例えば、90°間隔)で、ガイド部48が形成されている。したがって、各ロック部材26は、隣接するガイド部48のガイド壁48aによって挟まれる状態で摺動する。なお、メインロック部材26Aとカムチップ26Cとは別部品で構成され、
図10に示されるように、ガイド壁48aの間に遊嵌状態で配置される。
【0043】
各ロック部材26は、カムプレート22のカム溝44に挿入されるダボ47aと、カムリング24の山部46と当接する脚部47bと、第二の歯車18のロック用内歯42aと係合するロック歯47cとを備える。
【0044】
カムプレート22は、カム溝44を備えるリング状の部品で、中央部に開口部22aが形成され、当該開口部22aの外周側に、ロック部材26の数に対応する数のカム溝44が打ち抜き形成されている。カム溝44は、
図3や
図10に示されるように、カムプレート22の略周方向に延びる溝で、当該溝の外周側のカム面が内径側に盛り上がった傾斜部44aを形成している。
【0045】
カムプレート22には、連結孔22bが例えば2つ形成され、カムリング24の開口部24aの外周側で、連結孔22bに対応する位置に形成された連結突起24bが挿入されることで、カムプレート22とカムリング24とが一体化される。カムリング24の開口部24aには、マニュアル操作軸MSが挿入固定されている。したがって、リクライニングロック解除レバーLRが操作されマニュアル操作軸MSが回動した場合、カムリング24と共にカムプレート22が一体的に回転するように構成されている。カムリング24は、外周部にロック部材26の脚部47bと当接可能な複数の山部46を備えるとともに、隣接する山部46の間に、脚部47bとカムチップ26Cを受け入れ可能な谷部46aを備える。
【0046】
なお、
図7に示されるように、リクライニング装置10の内部で、第二の歯車18の筒状部18aを貫通しているストライカピン16のフランジを含む一部は、パワー駆動軸DS(マニュアル操作軸MS)の軸方向において、カムプレート22と離間して対向している。この時、ストライカピン16とカムプレート22の軸方向の離間距離hを、カムリング24の連結突起24bの軸方向の長さより短くすることで、カムプレート22がカムリング24から軸方向に離脱する力が働いても、ストライカピン16によってカムプレート22がカムリング24から離脱(脱落)してしまうことを抑制できる。
【0047】
このように構成されるマニュアル駆動機構Mにおいて、リクライニングロック解除レバーLRが操作されていない場合、つまり、マニュアル操作軸MSがロックスプリング32の付勢力によりロック姿勢に復帰している場合である。この場合、
図10に示されるように、カムリング24の山部46がメインロック部材26Aの脚部47bとは接触せず、カムチップ26Cの脚部26Caに接触し、カムチップ26Cをガイド壁48aに接触させる。そして、メインロック部材26Aおよびカムチップ26Cを外径方向に摺動させる。その結果、メインロック部材26Aは、カムチップ26Cによるくさび効果により、ガイド壁48aの間でがたつくことなく、スムーズにロック位置に移動する。つまり、メインロック部材26Aのロック歯47cが第二の歯車18のロック用内歯42aと噛合し、ロック状態が確立する。なお、本実施形態の場合、第二の歯車18のロック用内歯42aの歯数は、30枚なので、12°ごとにシートバック104の角度をロックすることができる。
【0048】
この場合、サブロック部材26Bも同様に脚部47bがカムリング24の山部46によって外径方向に押圧され、ロック位置に移動するが、カムリング24とサブロック部材26Bとの間には隙間が設けられている。したがってサブロック部材26Bは、自由状態でロック位置に移動する。このように、サブロック部材26Bを自由移動できる構成にすることで、カムチップ26Cによるメインロック部材26Aのがたつき防止を良好に実現するとともに、スムーズにロック位置に移動させることができる。具体的には、カムリング24の山部46は、まず、対角位置に存在するメインロック部材26Aの脚部47bを押圧し、次に、カムチップ26Cの脚部26Caを押圧して、メインロック部材26Aをロック位置に移動させる。最後に、カムリング24の山部46は、メインロック部材26Aの脚部47bから離間し、カムチップ26Cの脚部26Caを押圧して、ロック状態を完成させる。その結果、
図10に示されるように、メインロック部材26Aを偏り無く、ロック位置にスムーズに移動させることができる。なお、サブロック部材26Bは、シートバック104に衝撃や荷重がかかったときに、補助的にロック用内歯42aと噛合して、荷重を受けることができる。
【0049】
一方、リクライニングロック解除レバーLRが操作された場合、つまり、マニュアル操作軸MSがロックスプリング32の付勢力に抗してロック解除姿勢に操作された場合である。この場合、
図11に示されるように、カムリング24の山部46はメインロック部材26Aの脚部47bとの対向関係から外れ、当該脚部47bは谷部46aに納まる。また、隣接する山部46はカムチップ26Cの脚部26Caから外れ、当該脚部26Caは谷部46aに納まる。また、このとき、カムリング24とともにカムプレート22が回転するため、メインロック部材26Aのダボ47aに対してカム溝44が移動してダボ47aが傾斜部44aを登り始める。その結果、メインロック部材26Aは、内径方向に引き上げられロック解除位置に移動する。つまり、メインロック部材26Aのロック歯47cがロック用内歯42aから外れ、ロック解除状態が確立する。
【0050】
なお、この場合もサブロック部材26Bのダボ47aもカムプレート22の回転に伴いカム溝44の傾斜部44aを登る。その結果、サブロック部材26Bもロック解除位置に移動する。
【0051】
このように、リクライニングロック解除レバーLRの操作によってロック部材26がロック解除位置に移動することにより、第二の歯車18は自由に回転可能となる。つまり、第1外歯40aと第1内歯38aを介して第二の歯車18に結合している第一の歯車12がロアアーム28に対して自由に回転可能となる。その結果、第一の歯車12に接続されたシートバック104は、ロアアーム28に接続されたシートクッション102に対して自由に揺動(リクライニング)することができる。例えば、シートバック104を手で押すことにより自由にリクライニングさせることができる。また、リクライニングロック解除レバーLRから手を離せば、各ロック部材26がカムリング24の山部46に押圧され、
図10に示すロック位置に移動するため、第二の歯車18の回転が規制され、第一の歯車12の回転も規制される。その結果、シートクッション102に対してシートバック104の角度が固定される。
【0052】
ところで、
図11の構成の場合、シートバック104のリクライニング角度を手動で調整する場合、リクライニングロック解除レバーLRを操作し続ける必要がある。そこで、本実施形態のリクライニング装置10のマニュアル駆動機構Mは、第二の歯車18が所定の角度に回転した場合にロック部材26がロック位置に移動することを制限するロック調整プレート34を備えている。
【0053】
図3、
図12、
図13等に示されるように、ロック調整プレート34は、板状の環状部34aの内周部にサブロック部材26Bのダボ47aと当接してサブロック部材26Bのロック位置への移動を制限するロック制限部34bを備える。また、ロック調整プレート34は、環状部34aの外周部に第二の歯車18の係合用内歯42bと噛合する係合歯34c(外歯)を備える。
図12の場合、ロック制限部34bは等間隔で10個の突起として設けられている。また、係合歯34cは、環状部34aの一部に、例えば4個が係合用内歯42bのピッチに対応して密集した状態で形成されている。
図12の場合、密集した係合歯34cが、180°対向する位置に2箇所形成されている。係合歯34cの数は、ロック調整プレート34を第二の歯車18に固定できれば、適宜変更可能であり、例えば、ロック調整プレート34の全周に設けてもよい。
【0054】
ロック調整プレート34は、係合歯34cが第二の歯車18の係合用内歯42bと噛合しているため、シートバック104がマニュアルで角度調整される場合に第二の歯車18とともに回転する。また、ロック調整プレート34は、カムプレート22に隣接して配置され、カムプレート22のカム溝44に挿入されているサブロック部材26Bのダボ47aは、カム溝44を貫通しロック制限部34bの内径側と接触する(載る)ようにサブロック部材26Bからの突出長さが設定されている。つまり、サブロック部材26Bは、ダボ47aが、カムプレート22のカム溝44の傾斜部44aに登った場合およびロック制限部34bに載った場合にロック解除位置に保持される。なお、カム溝44の傾斜部44aの内径方向の高さ(ダボ47aが移動する位置の内径方向の高さ)は、ロック制限部34bの内径方向の高さより高く設定されている。この設定により、傾斜部44aによってロック解除位置にダボ47aが移動している状態で、シートバック104の角度調整のために第二の歯車18が回転した場合、ロック制限部34bの内周側にダボ47aをスムーズに載せて、ロック制限部34bによるロック解除状態の維持を行うことができる。
【0055】
なお、メインロック部材26Aのダボ47aは、カム溝44のみに挿入され、ロック制限部34bの内径側には接触しない(載らない)ようにメインロック部材26Aからの突出長さが設定されている。つまり、ロック調整プレート34によって、ロック状態が制限されるのは、サブロック部材26Bのみとなる。
【0056】
図12は、ロック調整プレート34を備えるマニュアル駆動機構Mのロック部材26がロック位置に移動したロック状態を示す例示的かつ模式的な図である。この場合、各ロック部材26は、
図10で説明したように、カムリング24の山部46によって脚部47b(脚部26Ca)が外径方向に押圧され、ロック歯47cと第二の歯車18のロック用内歯42aと噛合し、ロック状態を確立している。前述したように、第二の歯車18のロック用内歯42aの歯数は、30枚なので、ロック調整プレート34が存在しない場合、第二の歯車18(シートバック104)は、12°間隔で角度がロックされる。一方、ロック調整プレート34が存在する場合、ダボ47aは、シートバック104(第二の歯車18)の角度の角度調整が行われ、隣接するロック制限部34bの間の谷部がダボ47aの位置に来たときのみ、ロック位置に移動できる。ロック制限部34bは環状部34aに等間隔で10個形成されているので、第二の歯車18(シートバック104)は、36°間隔で角度がロックされることになる。
【0057】
図13は、ロック調整プレート34を備えるマニュアル駆動機構Mのロック部材26がロック解除位置に移動したロック解除状態を示す例示的かつ模式的な図である。なお、
図13の場合、メインロック部材26A(カムチップ26C)およびサブロック部材26Bは、それぞれ一つのみ図示されている。この場合、各ロック部材26は、
図11で説明したように、リクライニングロック解除レバーLRの操作によりカムリング24が回転し、山部46がカムチップ26Cの脚部26Caから外れる。また、カムプレート22のカム溝44の傾斜部44aをロック部材26のダボ47aが登ることにより、ロック部材26を内径方向に引き上げ、第二の歯車18のロック用内歯42aとロック歯47cとの噛合を外し、ロック解除状態に移行させる。つまり、第二の歯車18が自由に回転可能になり、シートバック104の手動によるリクライニングを可能にする。この場合、リクライニングロック解除レバーLRを操作し続ければ、シートバック104の角度調整は自由にできる。また、この状態で、リクライニングロック解除レバーLRから手を離した場合、36°間隔のリクライニング調整が完了するまで、ロック制限部34bによってダボ47aの外径方向への移動が制限されるため、サブロック部材26Bの位置がロック解除位置に維持される。つまり、マニュアル駆動機構Mは、リクライニングロック解除レバーLRから手を離した場合でも、36°間隔でシートバック104の角度調整が実現できる構造を提供することができる。
【0058】
このように、パワー駆動機構Dは、詳細な角度調整を実現する機構であるのに対し、ロック調整プレート34は、パワー駆動機構Dよりは粗い角度調整を実現する機構である。また、ロック調整プレート34は、ロック制限部34bの数を適宜設定することにより、マニュアル駆動機構Mによるシートバック104の調整角度を設定することができる。例えば、6個のロック制限部34bを等間隔配置すれば、リクライニングロック解除レバーLRから手を離した場合でも、60°間隔でシートバック104の角度調整を行うことができる。
【0059】
上述のような構成の組み立てられたリクライニング装置10は、
図14に示されるように、第一の歯車12(パワー駆動機構D)側に、シートバック104が接続されるバックフレーム54が固定され、ロアアーム28(マニュアル駆動機構M)側に、シートクッション102が接続されるクッションフレーム56が固定される。
【0060】
バックフレーム54は、鋼板等で形成される板状の部品で、第一の歯車12の第1内歯38a、第2内歯38bをプレス加工する際に第二の面12B側に突出した係合用外歯36(
図4参照)と噛合可能なスプライン溝54a(被係合歯部)が形成されている。また、バックフレーム54には、第一の歯車12の第二の面12Bの一部と溶接等により接合するための溶接用開口54bが形成されている。第一の歯車12の第二の面12Bは、例えば、溶接用開口54bの溶接部位AYにアーク溶接等により接合される。第一の歯車12とバックフレーム54との接続を、第1内歯38aの形成に伴い形成される係合用外歯36を活用しスプライン溝54aとスプライン接合することにより、リクライニング装置10とバックフレーム54との固定および接合を強固かつ容易に行うことができる。なお、溶接をスプライン溝54aの位置ではなく、スプライン溝54aより外径方向に離れた位置の溶接用開口54bで行うことにより、係合用外歯36に溶接時の熱が伝わり難くすることができる。また、係合用外歯36とスプライン溝54aとによるスプライン接合により接合強度を十分に確保できるため、溶接部位AYにおける溶接長さを短くして、溶接時の発生熱量を少なくすることができる。その結果、係合用外歯36の裏側に存在する第1内歯38aが熱変形したり、軟化したりすることを回避し易くなり、第一の歯車12と第二の歯車18の偏心回転に悪影響を与え難くすることできる。
【0061】
クッションフレーム56もまた鋼板等で形成される板状の部品で、大径の係合穴56aの周囲に、ロアアーム28に突出形成された係合用凸部28cと係合可能な溝部56aaが形成されている。係合用凸部28cと溝部56aaを係合させ、係合用凸部28bの例えば外径側縁部で溶接することにより、リクライニング装置10とクッションフレーム56との固定および接合を強固かつ容易に行うことができる。
【0062】
図15は、リクライニング装置10にバックフレーム54とクッションフレーム56とを接続固定した状態を示す例示的かつ模式的な部分断面図である。ここで、シートバック104が接続されるバックフレーム54のクッションフレーム56側を向くフレーム面54sは、第一の歯車12に回転中心軸Oに沿う方向に第一の距離K1を離間させて固定される。
図15の場合、第一の距離K1は、例えば、「0」とされ、実質的に密着している。また、クッションフレーム56のバックフレーム54側を向くフレーム面56sは、ロアアーム28に、回転中心軸Oに沿う方向に第一の距離K1と異なる第二の距離K2を離間させて固定される。なお、本実施形態の場合、フレーム面54sとフレーム面56sとの間の距離を「ピッチ距離K」と称する。このピッチ距離Kが小さいほどリクライニング装置10をシート100に装着する際に必要となる装着スペースを少なくできて、製品価値を向上することができる。
【0063】
図3で説明したように、リクライニング装置10を組み立てる場合、各部品を組み付けた後、第一の歯車12とロアアーム28とによって挟持し、外周リング30を装着することにより、組立状態が維持される。本実施形態の場合、外周リング30は、第一の歯車12の外周部に内径方向に向かい溶接可能な形状の平面部50と、当該平面部50の端部から内径方向に延在し、ロアアーム28の回転中心軸Oと直交する面と対向する垂直部52とを備える、断面形状が略L字状の部品である。
【0064】
外周リング30は、
図2に示されるように、ロアアーム28の端面を露出可能な開口部30aを有する環状の部品で、
図15に示されるように、マニュアル操作軸MS側からロアアーム28を覆うように装着することができる。そして、垂直部52がロアアーム28の外周部を覆い、平面部50がロアアーム28の外縁部を跨ぎ第一の歯車12の外縁部に到達するように構成されている。この部分で、第一の歯車12の外縁部と平面部50とを溶接することで、リクライニング装置10の組立状態を維持する。また、このとき、平面部50の端部50aは、第一の歯車12の第二の面12B(垂直部52から遠い側の面)から突出させないように、平面部50の長さを設定することで、バックフレーム54を第一の歯車12(第二の面12B)の最外周部分に配置することができる。また、平面部50を第一の歯車12の外縁部SYに溶接する際に、レーザ溶接を利用することにより、溶接の方向や場所といった汎用性を向上することができる。アーク溶接等の場合、平面部50の端部50aで溶接するしかなく、場所が限定されるうえに溶接痕によってはピッチ距離Kに影響(増加)してしまう恐れがある。一方、レーザ溶接はアーク溶接等に比べて溶接痕の突出を少なくすることができる。その結果、バックフレーム54を第一の歯車12(第二の面12B)に密着させることができる。その結果、ピッチ距離Kの短縮化に寄与できる。
【0065】
また、外周リング30の断面形状を略L字形状にすることで、一方側(端部50a側)のみに溶接を施し、他方側(垂直部52)は曲げによりロアアーム28を保持する構造が実現できる。その結果、外周リング30の小型化や軽量化、また溶接箇所の削減等に寄与できる。
【0066】
また、本実施形態の場合、バックフレーム54のフレーム面54sを第一の歯車12に固定する場合、第一の距離K1を離間させて固定し、クッションフレーム56のフレーム面56sをロアアーム28に固定する場合、第二の距離K2を離間させて固定している。そして、断面形状が略L字形状の外周リング30を用いる場合、第一の距離K1と第二の距離K2とのうち、大きな距離である第二の距離K2の中に垂直部52が配置されるように配置することができる。その結果、垂直部52を空いているスペースを有効に利用し配置することができる。つまり、垂直部52の存在がピッチ距離Kに影響しないようにすることが可能となる。
【0067】
また、断面形状が略L字形状の外周リング30を用いる場合、平面部50は対向するロアアーム28の外周部の面28s2に対して離間して配置される。つまり、第一の歯車12の第一の外径R1をロアアーム28の第二の外径R2より大きく設定する。その結果、第二の歯車18とともにロアアーム28が偏心回転する際に、外周リング30とロアアーム28が接触することを回避することが可能で、リクライニング調整時のリクライニング装置10の動作をスムーズに行うことができる。なお、垂直部52は対向するロアアームの面28s1と全面接触してもよいし、極めて小さい隙を設けて対向してもよいし、垂直部52から面28s1方向に突出した複数の突起で接触する関係にしてもよい。
【0068】
図16は、リクライニング装置10の変形例であり、第一の歯車12に対して偏心回転する第二の歯車18の定常時の噛合を第一の歯車12の第2内歯38bと第二の歯車18の第2外歯40bによって行う例示的かつ模式的な図である。
【0069】
図8で説明した構成の場合、定常時に第1内歯38aと第1外歯40aとを噛合させている。この場合、第2内歯38bと第2外歯40bとを噛合させた場合に比べ、外径側で噛合する分、入力される衝撃や荷重に対して強度が向上する。その反面、第1内歯38aと第1外歯40aとを噛合させた場合の、偏心回転時の第二の歯車18の偏心量が、より小径の第2内歯38bと第2外歯40bとを噛合させた場合の偏心回転時の第二の歯車18の偏心量より大きくなってしまう。したがって、第一の歯車12や第二の歯車18の材料の変更や形状の変更等により第2内歯38bと第2外歯40bとを噛合させた場合の強度が許容できる値の場合、第2内歯38bと第2外歯40bとを噛合させて「主」の噛合として利用する。その結果、定常時のパワー駆動で偏心量の少ないシートバック104の角度調整を実現できるリクライニング装置10が提供できる。つまり、偏心回転による違和感を、より感じ難いリクライニング装置10が提供できる。
【0070】
また、リクライニング装置10の場合、第二の歯車18の第1外歯40aの形成時に形成されるロック用内歯42aは、ロック部材26のロック歯47cと噛合する。一般的にプレス成形により、板材の表裏面に歯面を形成する場合、一面側の精度は出しやすいが、他面側の精度は出しにくい。そこで、
図16で示すように、定常時に利用する第2外歯40bを高精度に加工し、第2内歯38bと噛合させ、スムーズなパワー駆動を実現する。一方、定常時に利用しない第1外歯40aについては、裏面側のロック用内歯42aの加工精度を高める。その結果、マニュアル駆動時のロック部材26との歯面の接離をスムーズに行うことが可能となり、ロック動作およびロック解除動作をよりスムーズに行うことができる。
【0071】
このように、第2内歯38bと第2外歯40bとの噛合を主として利用した場合の強度が保証できる場合、パワー駆動時およびマニュアル駆動時のいずれにおいてもスムーズなリクライニング装置10の動作を実現することができる。なお、第2内歯38bと第2外歯40bの噛合を主として利用した場合に、過大な衝撃や荷重がリクライニング装置10に付与された場合でも、第2内歯38bと第2外歯40bの噛合による強度に加え、第1内歯38aと第1外歯40aの噛合による強度で、衝撃や荷重を受けることができる。その結果、リクライニング装置10の品質の保証は、第1内歯38aと第1外歯40aの噛合を主として利用する場合と同様に得ることができる。
【0072】
図17は、リクライニング装置10に装着可能な外周リングの変形例を示す例示的かつ模式的な平面図である。
図17に示す外周リング30Aは、ロアアーム28側に溶接される構成である。外周リング30Aは、第一の歯車12の端面を露出可能な開口部を有する環状の部品で、
図17に示されるように、パワー駆動軸DS側から第一の歯車12を覆うように装着することができる。そして、垂直部52が第一の歯車12の第二の面12Bの外周部の面12s1を覆い、平面部50が第一の歯車12の外縁部の面12s2を跨ぎロアアーム28の外縁部に到達する。この部分で、ロアアーム28の外縁部と平面部50の端部(垂直部52から遠い側の端部)とを溶接することで、
図15で示した構造と同様に、リクライニング装置10の組立状態を維持することができる。
【0073】
このような外周リング30Aを利用する場合も、
図15に示す場合と同様に、バックフレーム54を装着する場合、バックフレーム54のクッションフレーム56側を向くフレーム面54sは、第一の歯車12の面P1に第一の距離K1を離間させて固定される。また、クッションフレーム56は、バックフレーム54側を向くフレーム面56sが、ロアアーム28の面P2に第一の距離K1と異なる第二の距離K2を離間させて固定される。なお、外周リング30Aを利用する場合は、K1>K2となり、第二の距離K2は、例えば、「0」とされ、クッションフレーム56がロアアーム28に実質的に密着する。つまり、外周リング30Aを利用する場合も第一の距離K1と第二の距離K2とのうち、大きな距離である第一の距離K1の中に垂直部52が配置されるように配置する。その結果、垂直部52を空いているスペースを有効に利用し配置することができる。そして、垂直部52の存在がピッチ距離Kに影響しないようにすることができる。
【0074】
また、このとき、外周リング30Aは、垂直部52と対向する面12s1および、当該面12s1と連設された第一の歯車12の外周部の面12s2に対して離間して配置される。この場合、第一の歯車12の第一の外径R1(
図15参照)をロアアーム28の第二の外径より小さく設定する。その結果、第二の歯車18とともにロアアーム28が偏心回転する際に、外周リング30Aと第一の歯車12とが接触することが回避され、リクライニング調整時のリクライニング装置10の動作をスムーズに行うことができる。
【0075】
また、このとき、平面部50の端部は、ロアアーム28の面P2(垂直部52から遠い側の面)から突出させないように、平面部50の長さを設定することで、クッションフレーム56をロアアーム28の最外周部分に配置することができる。また、平面部50をロアアーム28の外縁部SYに溶接する際に、レーザ溶接を利用することにより、アーク溶接等に比べて溶接痕の突出が少なく、ロアアーム28にクッションフレーム56(フレーム面56s)を、密着させることができる。その結果、ピッチ距離Kの短縮化に寄与できる。
【0076】
なお、
図14、
図15では、第一の歯車12(パワー駆動機構D)側に、シートバック104が接続されるバックフレーム54が固定され、ロアアーム28(マニュアル駆動機構M)側に、シートクッション102が接続されるクッションフレーム56が固定される例を示した。別の実施形態では、第一の歯車12側に、シートクッション102が接続されるクッションフレーム56が固定され、ロアアーム28側に、シートバック104が接続されるバックフレーム54が固定されてもよく、同様の効果を得ることができる。この場合、バックフレーム54に
図14に示すクッションフレーム56の溝部56aaを備える係合穴56aと同様な構成が形成され、クッションフレーム56に、
図14に示すバックフレーム54のスプライン溝54aや溶接用開口54bと同じ構成が形成される。
【0077】
なお、上述した実施形態では、車両用のリクライニング可能なシートに適用するリクライニング装置10を示したが、車両用のシートに限定されるものではない。例えば、飛行機用のシート、船舶用のシート、各種アトラクションで用いられるシート等、駆動源による動力を用いてリクライニングさせることができるシートであれば、本実施形態のリクライニング装置10が適用可能であり、同様の効果を得ることができる。
【0078】
本発明の実施形態及び変形例を説明したが、これらの実施形態及び変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10…リクライニング装置、12…第一の歯車、16…ストライカピン(駆動ピン)、18…第二の歯車、18A…第一の面、18B…第二の面、22…カムプレート、24…カムリング(カム部材)、26…ロック部材、26A…メインロック部材、26B…サブロック部材、26C…カムチップ、26Ca…脚部、28…ロアアーム(ガイド部材)、30,30A…外周リング、34…ロック調整プレート、34b…ロック制限部、34c…係合歯、36…係合用外歯、38a…第1内歯、38b…第2内歯、40a…第1外歯、40b…第2外歯、42a…ロック用内歯、42b…係合用内歯、44…カム溝、44a…傾斜部、46…山部、46a…谷部、47a…ダボ、47b…脚部、47c…ロック歯、50…平面部、52…垂直部、54…バックフレーム、56…クッションフレーム、100…シート、102…シートクッション、104…シートバック、D…パワー駆動機構、DS…パワー駆動軸、LR…リクライニングロック解除レバー、M…マニュアル駆動機構、MS…マニュアル操作軸。