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特開2022-77818バタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077818
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】バタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具
(51)【国際特許分類】
   F16K 43/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
F16K43/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188840
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋野 慶介
(72)【発明者】
【氏名】城山 重英
【テーマコード(参考)】
3H066
【Fターム(参考)】
3H066AA02
3H066BA38
(57)【要約】
【課題】配管から取り外さずに、保守作業が可能なバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るバタフライ弁Vの保守方法は、配管Pに流体接続されたバタフライ弁Vの保守方法である。バタフライ弁Vの保守方法は、弁体V1が開放された状態で、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央からそれぞれ突出する第1突出部V11および第2突出部V12を水平面に略平行な支持面111a、112aで鉛直下方から支持するステップと、弁体V1から弁棒V2を取り外すことで、バタフライ弁Vを分解するステップと、第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで支持しながら、弁体V1を回転させるステップと、分解されたバタフライ弁Vに対して保守作業を行うステップとを含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管に流体接続されたバタフライ弁の保守方法であって、
前記バタフライ弁は、
第1面と、前記第1面と反対面である第2面を有し、前記第1面および前記第2面で前記配管内の流路を開閉する弁体と、
前記弁体に取り付けられ、前記弁体に回転軸を中心とする回転力を伝達する弁棒と、
前記回転軸を中心として、前記弁棒を回転可能に支持する弁箱と
を備え、
前記弁体が開放された状態で、前記弁体の前記第1面および前記第2面の略中央からそれぞれ突出する第1突出部および第2突出部を水平面に略平行な支持面で鉛直下方から支持するステップと、
前記弁体から前記弁棒を取り外すことで、前記バタフライ弁を分解するステップと、
前記第1突出部および前記第2突出部を前記支持面で支持しながら、前記弁体を回転させるステップと、
分解された前記バタフライ弁に対して保守作業を行うステップと
を含む、バタフライ弁の保守方法。
【請求項2】
前記第1突出部および前記第2突出部を前記弁体に取り付けるステップをさらに含む、請求項1記載のバタフライ弁の保守方法。
【請求項3】
前記弁体が前記配管の内側面に接触しないように、前記支持面の鉛直方向の位置を調整するステップをさらに含む、請求項1または2記載のバタフライ弁の保守方法。
【請求項4】
前記弁体の回転を所定の範囲内に規制するためのストッパが前記支持面に設けられている、請求項1~3のいずれか1項に記載のバタフライ弁の保守方法。
【請求項5】
第1面と、前記第1面と反対面である第2面を有し、前記第1面および前記第2面で前記配管内の流路を開閉する弁体と、前記弁体に取り付けられ、前記弁体に回転軸を中心とする回転力を伝達する弁棒と、前記回転軸を中心として、前記弁棒を回転可能に支持する弁箱とを備える、配管に流体接続されたバタフライ弁の保守に用いられる弁体支持用治具であって、
水平面に略平行な支持面を有する支持部と、
前記支持面が水平面に略平行となるように前記支持部を保持し、かつ、前記配管内に設置可能な脚部と
を備え、
前記支持面は、前記弁体が開放された状態で、前記弁体の前記第1面および前記第2面の略中央からそれぞれ突出する第1突出部および第2突出部を鉛直下方から支持可能であり、かつ、前記第1突出部および前記第2突出部を前記支持面で支持しながら、前記弁体を回転可能に構成される、弁体支持用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水などの流体の流路を開閉するために、バタフライ弁が用いられている(特許文献1参照)。バタフライ弁は、流路を開閉する弁体と、弁体に回転軸を中心とする回転力を伝達する弁棒と、回転軸を中心として、弁棒を回転可能に支持する弁箱などを備えている。バタフライ弁に対して保守作業を行う際に、弁体、弁棒、および弁箱が一体となった状態では、確認することができない箇所での損傷の有無を確認することもある。この場合には、バタフライ弁を分解する必要がある。また、経年により、弁棒と弁棒を支持する軸受との固着など、弁棒の周囲で何らかの不具合が生じることがある。この場合にも、修理を行うために、バタフライ弁を分解する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7-23879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バタフライ弁を分解するために、弁体から弁棒を取り外すと、弁体が何れにも保持されなくなるので、配管内で弁体が転倒してしまう。配管内での弁体の転倒を回避するために、バタフライ弁を分解して保守作業を行う場合には、通常、バタフライ弁全体を配管から取り外した後に、バタフライ弁を分解している。そのため、バタフライ弁の保守作業が大掛かりになっている。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、配管から取り外さずに、保守作業が可能なバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態に係るバタフライ弁の保守方法は、配管に流体接続されたバタフライ弁の保守方法であって、前記バタフライ弁は、第1面と、前記第1面と反対面である第2面を有し、前記第1面および前記第2面で前記配管内の流路を開閉する弁体と、前記弁体に取り付けられ、前記弁体に回転軸を中心とする回転力を伝達する弁棒と、前記回転軸を中心として、前記弁棒を回転可能に支持する弁箱とを備え、前記弁体が開放された状態で、前記弁体の前記第1面および前記第2面の略中央からそれぞれ突出する第1突出部および第2突出部を水平面に略平行な支持面で鉛直下方から支持するステップと、前記弁体から前記弁棒を取り外すことで、前記バタフライ弁を分解するステップと、前記第1突出部および前記第2突出部を前記支持面で支持しながら、前記弁体を回転させるステップと、分解された前記バタフライ弁に対して保守作業を行うステップとを含む。なお、本明細書において、「流体接続」は、流路をそれぞれ有する2つ以上の物体を接続する際に、流体が各物体の流路間で相互に流れるように接続することを指す。
【0007】
前記第1突出部および前記第2突出部を前記弁体に取り付けるステップをさらに含んでもよい。
【0008】
前記弁体が前記配管の内側面に接触しないように、前記支持面の鉛直方向の位置を調整するステップをさらに含んでもよい。
【0009】
前記弁体の回転を所定の範囲内に規制するためのストッパが前記支持面に設けられていてもよい。
【0010】
本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具は、第1面と、前記第1面と反対面である第2面を有し、前記第1面および前記第2面で前記配管内の流路を開閉する弁体と、前記弁体に取り付けられ、前記弁体に回転軸を中心とする回転力を伝達する弁棒と、前記回転軸を中心として、前記弁棒を回転可能に支持する弁箱とを備える、配管に流体接続されたバタフライ弁の保守に用いられる弁体支持用治具であって、水平面に略平行な支持面を有する支持部と、前記支持面が水平面に略平行となるように前記支持部を保持し、かつ、前記配管内に設置可能な脚部とを備え、前記支持面は、前記弁体が開放された状態で、前記弁体の前記第1面および前記第2面の略中央からそれぞれ突出する第1突出部および第2突出部を鉛直下方から支持可能であり、かつ、前記第1突出部および前記第2突出部を前記支持面で支持しながら、前記弁体を回転可能に構成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一実施形態に係るバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具によれば、配管から取り外さずに、保守作業が可能なバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の一実施形態に係る保守方法の検査対象となるバタフライ弁を示す斜視図(配管の周壁の一部は図示せず)であり、ここでは、バタフライ弁は閉状態となっている。
図1B】本発明の一実施形態に係る保守方法の検査対象となるバタフライ弁を示す斜視図(配管の周壁の一部は図示せず)であり、ここでは、バタフライ弁は開状態となっている。
図2A】本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具によって、バタフライ弁の弁体が支持された状態を示す斜視図(配管の周壁の一部は図示せず)である。
図2B】本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具によって、バタフライ弁の弁体が支持された状態を示す側面図(配管の周壁の一部は図示せず)である。
図2C】本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具によって、バタフライ弁の弁体が支持された状態を示す背面図(図2Aにおいて、紙面の奥側から見た図)である。
図3A】弁体の回転に伴う第1突出部および第2突出部の移動を示す部分拡大図である。
図3B】弁体の回転に伴う第1突出部および第2突出部の移動を示す部分拡大図である。
図3C】弁体の回転に伴う第1突出部および第2突出部の移動を示す部分拡大図である。
図4図2Aに示される状態から、バタフライ弁の弁体をわずかに回転させた状態を示す。
図5図2Aに示される状態から、バタフライ弁の弁体を90°回転させた状態を示す。
図6】本発明の一実施形態に係るバタフライ弁の保守方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具を説明する。なお、以下に示す実施形態は、あくまで一例であり、本発明のバタフライ弁の保守方法および弁体支持用治具は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
(本発明の一実施形態に係る保守方法の検査対象となるバタフライ弁)
図1Aおよび図1Bに示すように、バタフライ弁Vは、配管Pに設けられ、配管P内の流路Cを開閉することで、配管P内の流体の流れを制御する。バタフライ弁Vが設けられる配管Pは、流体を流す配管であれば、特に限定されない。本実施形態では、配管Pは、上下水を流すために用いられる配管であり、配管P内の流路Cは、その延伸方向に対して略垂直な断面が略円形状を有している。バタフライ弁Vは、たとえば地中や上下水設備内に設置される(図示せず)。本実施形態では、作業員が配管Pの内部に入って保守作業に行うので、流路Cの直径は、作業員が流路Cに侵入することができる程度に大きい。具体的には、流路Cの直径は、1000mm以上である。図1Aおよび図1Bに示すように、バタフライ弁Vは、配管P内の流路Cを開閉する弁体V1と、弁体V1に取り付けられ、弁体V1に回転力を伝達する弁棒V2と、弁棒V2を回転可能に支持する弁箱V3とを備えている。
【0015】
弁体V1は、図1Aおよび図1Bに示すように、第1面Vaと、第1面Vaと反対面である第2面Vbを有し、第1面Vaおよび第2面Vbで配管P内の流路Cを開閉する。第1面Vaおよび第2面Vbは、具体的には、流路Cの延伸方向に垂直な断面と略一致する平面形状(図1Aおよび図1Bでは、略円形状)を有している。本実施形態では、図1Aに示すように、第1面Vaおよび第2面Vbが流路Cの延伸方向に対して略垂直となるときに、流路Cは、閉塞され、図1Bに示すように、閉状態から回転軸Zを中心として約90°回転し、第1面Vaおよび第2面Vbが流路Cの延伸方向に対して略平行となるときに、流路Cは開放される。
【0016】
弁体V1には、図2A図2Cに示すように、保守の際に、第1面Vaおよび第2面Vbの略中央からそれぞれ突出する第1突出部V11および第2突出部V12が設けられる(図2Bでは、第1突出部V11のみが示されている)。本実施形態では、第1突出部V11は、後述する弁棒収容部V10の略中央に設けられる。第1突出部V11および第2突出部V12は、後述するように、弁体V1を弁体支持用治具1によって回転可能に支持されるために設けられる。本実施形態では、第1突出部V11および第2突出部V12はそれぞれ、第1面Vaおよび第2面Vbの略中央から垂直に突出する略円柱形状を有している。しかし、第1突出部V11および第2突出部V12の形状はそれぞれ、弁体支持用治具1によって回転可能に支持することができれば、特に限定されず、たとえば、第1面Vaおよび第2面Vbの略中央から垂直に突出する略円錐形状であってもよい。本実施形態では、図1Aおよび図1Bに示すように、弁体V1は、バタフライ弁Vの保守の前には、第1突出部V11および第2突出部V12を有しておらず、図2A図2Cに示すように、保守の際に、第1突出部V11および第2突出部V12は、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央にそれぞれ取り付けられる。しかし、弁体V1は、バタフライ弁Vの保守の前から、第1突出部V11および第2突出部V12を有していてもよい。
【0017】
弁体V1は、本実施形態では、図1Aおよび図1Bに示すように、弁体V1の第1面Vaにおいて、弁棒V2を収容できるように弁体V1の径方向に延びる弁棒収容部V10を有している。本実施形態では、弁棒収容部V10は、弁棒V2を収容する孔である弁棒収容孔Vcを有している。弁棒収容部V10の形状および構造は、弁棒V2を収容することができれば、特に限定されない。本実施形態では、弁棒収容部V10は、弁体V1の径方向に延びる、第1面Vaから突出した細長い箱状に形成されている。弁棒収容孔Vcは、弁棒収容部V10を径方向で貫通するように設けられている。しかし、保守対象となるバタフライ弁Vは、弁棒収容部V10を有する弁体V1に限定されない。たとえば、バタフライ弁Vは、第1面Vaおよび第2面Vbの双方が平坦面であり、弁棒V2が弁体V1から露出した状態で、第1面Vaの表面に取り付けられるものであってもよい。また、バタフライ弁Vは、十分な厚み(第1面Vaと第2面Vbとの間隔)を有し、第1面Vaおよび第2面Vbが弁棒収容部V10を有さない状態で、第1面Vaと第2面Vbとの間に弁棒収容孔Vcを設けているものであってもよい。本実施形態では、弁棒収容部V10は、弁体V1の径方向に延びる、第1面Vaから突出する四角柱形状で設けられているが、円柱形状で設けられてもよく、第1面Vaだけでなく、第2面Vbにも突出するように設けられてもよい。
【0018】
弁棒V2は、弁体V1に回転軸Zを中心とする回転力を伝達する。本実施形態では、弁棒V2は、図1Aおよび図1Bに示すように、回転軸Zに沿って延伸する棒状体である。たとえば、弁棒V2は、一端が弁体V1に接続され、他端が手動ハンドルなどの手動の動力源または電動モータなどの自動の動力源(図示せず)に接続されることで、弁体V1に回転軸Zを中心とする回転力を伝達する。弁棒V2の弁体V1への取り付けは、特に限定されない。本実施形態では、弁棒V2は、弁体V1の弁棒収容孔Vcに収容されることで、弁体V1に取り付けられる。
【0019】
弁箱V3は、図1Aおよび図1Bに示すように、回転軸Zを中心として、弁棒V2を弁棒支持部分V3a、V3bで回転可能に支持する。弁箱V3は、図1Aおよび図1Bでは、弁棒V2の両端を支持するように、バタフライ弁Vの鉛直上方および鉛直下方に、弁棒支持部分V3a、V3bを有している。本実施形態では、弁箱V3は、弁棒V2と接触する軸受V30を有し、軸受V30が、弁棒V2を回転軸Z周りで回転可能かつ摺動可能に支持している。軸受V30は、本実施形態では、潤滑剤を介して弁棒V2を面接触により支持するすべり軸受であるが、ベアリングを介して弁棒V2と点接触して支持する転がり軸受であってもよい。
【0020】
本発明者らは、バタフライ弁Vの保守が大掛かりにならないように、バタフライ弁Vを配管Pから取り外して保守作業を行うのではなく、バタフライ弁Vを配管Pから取り外さずに配管Pの内部から保守作業を行うことを検討した。しかし、バタフライ弁Vを配管Pの内部から保守する場合、弁体V1、弁棒V2、および弁箱V3が組み付けられた状態では、配管Pの内部において、弁体V1の弁棒収容孔Vc、弁棒V2、弁箱V3、および弁箱V3の軸受V30などが露出していない。具体的には、上述のバタフライ弁Vの場合、これらの部位は、弁体V1の弁棒収容部V10によって遮られている。そのため、これらの部位およびその周辺などが損傷しているか否かを作業員の視覚などで確認することができない。バタフライ弁Vの露出していない部位を露出させるために、バタフライ弁Vを分解すると、配管P内で弁体V1が転倒してしまう。弁体V1が一度転倒すると、回転軸Zに対して弁体V1を再度位置合わせするなど、バタフライ弁Vを分解前の元の状態に復元する作業が煩雑になる。本実施形態のように、保守対象となるバタフライ弁Vの弁体V1の直径が1000mm以上である場合、弁体V1は、かなりの重量を有することになる。したがって、弁体V1の転倒は、安全性の観点からも防止されるべきである。本発明者らは、鋭意検討の結果、バタフライ弁Vを分解しても、弁体V1が転倒しない状態で、配管P内で保守作業を行うことが可能な弁体支持用治具およびバタフライ弁Vの保守方法を見出した。以下では、このような弁体支持用治具およびバタフライ弁Vの保守方法について、説明する。
【0021】
(本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具)
次に、本発明の一実施形態に係る弁体支持用治具について、以下に説明する。なお、以下の説明では、図1Aおよび図1Bに示すバタフライ弁Vの保守に際して用いられる弁体支持用治具について説明する。しかし、以下の説明は、あくまで一例であり、本発明の弁体支持用治具は、以下の説明に限定されるものではない。
【0022】
弁体支持用治具1は、図2A図2Cに示すように、配管Pに流体接続されたバタフライ弁Vの保守に用いられる治具である。弁体支持用治具1は、配管Pの内部に設置可能な大きさに形成されている。弁体支持用治具1は、弁体V1を支持する支持部111、112と、配管P内に設置可能な脚部121~124とを備えている。
【0023】
支持部111、112は、図2A図2Cに示すように、弁体V1を鉛直下方から支持するための部位である。本実施形態では、支持部111、112は、図2Aに示すように、弁体V1を第1面Va側で支持する第1支持部111と、弁体V1を第2面Vb側で支持する第2支持部112とを備えている。第1支持部111および第2支持部112の形状は、後述する支持面111a、112aを有すれば、特に限定されない。本実施形態では、第1支持部111および第2支持部112はそれぞれ、弁体V1が開放された状態で、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbに沿う長手方向を有する(配管Pの流路Cに沿って延びる)棒状体によって構成されている。第1支持部111および第2支持部112の長手方向の長さは、後述する弁体V1の所望の回転移動を支持可能であれば、特に限定されない。たとえば、第1支持部111および第2支持部112の長手方向の長さは、弁体V1の支持の安定性を考慮すると、弁体V1の直径に対して4/5以上の長さであることが好ましく、配管Pの内部への設置に手間を考慮すると、弁体V1の直径に対して5/4以下の長さであることが好ましい。図2A図2Cでは、第1支持部111および第2支持部112はそれぞれ、長手方向に略垂直な断面が略H字状である棒状体(たとえば、公知のH形鋼)によって構成されているが、長手方向に垂直な断面が略矩形状である棒状体(たとえば、公知の角形鋼管)などによって構成されてもよい。略H字状や略矩形状の断面を有する棒状体を用いる場合には、安価で、軽量かつ高強度の支持部111、112が得られる。
【0024】
支持部111、112は、図2A図2Cに示すように、水平面に略平行な支持面111a、112aを有している。支持面111a、112aは、弁体V1が開放された状態で、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央からそれぞれ突出する第1突出部V11および第2突出部V12を鉛直下方から支持可能であり、かつ、第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで支持しながら、弁体V1を回転可能に構成されている。本実施形態では、第1支持部111および第2支持部112はそれぞれ、水平面に略平行な第1支持面111aおよび第2支持面112aを鉛直上方に有し、第1支持面111aおよび第2支持面112aが全体として支持面111a、112aを構成する。図2A図2Cでは、第1支持面111aおよび第2支持面112aは、長手方向に略垂直な断面が略H字状である棒状体において、互いに離間する2つの外側面のうちの1つの面である。支持面111a、112aは、全体が水平面に略平行である必要はなく、弁体V1の回転に伴い、第1突出部V11および第2突出部V12が移動することが想定される範囲内で、水平面に略平行であればよい。また、支持面111a、112aは、物理的な「面」である必要はなく、第1突出部V11および第2突出部V12に対する支持部111、112の支持部位が複数の「線」から構成され、複数の「線」を含む1つの「面」を構成することで、支持面111a、112aが形成されてもよい。具体的には、第1支持部111および第2支持部112がそれぞれ、長手方向に略垂直な断面が略H字状である棒状体であって、図2A図2Cに示す状態から長手方向に90°回転させた状態で配管P内に配置され、鉛直上方に突出する4つの稜線のうちの2つの稜線で、第1突出部V11および第2突出部V12を支持してもよい。
【0025】
支持部111、112は、本実施形態では、図2A図2Cに示すように、弁体V1の回転を所定の範囲内に規制するためのストッパ113を支持面111a、112aに備えている。具体的には、ストッパ113は、弁体V1の回転に伴う第1突出部V11および第2突出部V12の支持面111a、112a上の移動を所定の範囲内に規制することで、弁体V1の回転を規制する。ストッパ113は、弁体V1が回転しないように、弁体V1を所定の位置に保持するために用いられてもよい。本実施形態では、ストッパ113は、支持面111a、112aから突出する突出部材として、ボルト・ナットやネジなどの公知の固定部材により、取り外し可能に取り付けられている。しかし、ストッパ113は、支持面111a、112aに取り外し不能に取り付けられてもよい。図2A図2Cでは、ストッパ113は、略円柱形状の第1突出部V11および第2突出部V12の側面(曲面)と当接することで、第1突出部V11および第2突出部V12の移動を規制可能であるように、第1支持部111の第1支持面111aおよび第2支持部112の第2支持面112aに取り外し可能に取り付けられる、略直角に折り曲げられた板状体(たとえば、公知の山形鋼(L字鋼))である。しかし、ストッパ113の形状は、弁体V1の回転を規制可能であれば、特に限定されない。
【0026】
脚部121~124は、図2A図2Cに示すように、弁体支持用治具1を配管P内の流路Cに設置するための部位である。脚部121~124は、支持面111a、112aが水平面に略平行となるように支持部111、112を保持し、かつ、配管P内に設置可能に構成されている。本実施形態では、図2A図2Cに示すように、脚部121~124は、支持部111、112と鉛直下方で連結され、支持部111、112を鉛直下方から保持する鉛直脚部121、122と、鉛直脚部121、122と鉛直下方で連結され、配管P内の流路Cに鉛直下方で設置可能な水平脚部123、124とを備えている。鉛直脚部121、122は、具体的には、第1支持部111および第2支持部112の長手方向の一端側から鉛直下方にそれぞれ延伸する2つの一端側鉛直脚部121と、第1支持部111および第2支持部112の長手方向の他端側から鉛直下方にそれぞれ延伸する2つの他端側鉛直脚部122とを備えている。また、水平脚部123、124は、具体的には、一端側鉛直脚部121と鉛直下方で連結される一端側水平脚部123と、他端側鉛直脚部122と鉛直下方で連結される他端側水平脚部124とを備えている。本実施形態では、脚部121~124は、図2A図2Cに示すように、流路Cの鉛直下方において、一端側水平脚部123および他端側水平脚部124の長手方向が流路Cの延伸方向に対して略垂直となるように、配管P内に設置される。図2A図2Cでは、鉛直脚部121、122および水平脚部123、124はそれぞれ、長手方向に垂直な断面が略矩形状である棒状体(たとえば、公知の角形鋼管)によって構成されているが、長手方向に略垂直な断面が略H字状である棒状体(たとえば、公知のH形鋼)などによって構成されてもよい。略矩形状や略H字状の断面を有する棒状体を用いる場合には、安価で、軽量かつ高強度の脚部121~124が得られる。
【0027】
弁体支持用治具1は、本実施形態では、組立可能に構成されている。換言すると、弁体支持用治具1は、複数の構成部材に分離された状態で配管Pの内部に搬入され、ボルト・ナットやネジなどの公知の固定部材により、配管Pの内部で組立てることが可能に構成されている。具体的には、弁体支持用治具1は、第1支持部111と、第2支持部112と、一端側鉛直脚部121(本実施形態では、2つの一端側鉛直脚部121)と、他端側鉛直脚部122(本実施形態では、2つの他端側鉛直脚部122)と、一端側水平脚部123と、他端側水平脚部124とに分離可能に連結されている。図2A図2Cに示すように、第1支持部111および第2支持部112のそれぞれの長さが、分離された弁体支持用治具1の他の構成部材よりも長い場合には、さらに、第1支持部111および第2支持部112が、長手方向で分離可能に構成されていてもよい。本実施形態では、第1支持部111および第2支持部112はそれぞれ、2つの棒状体によって構成され、2つの棒状体が、それぞれの長手方向の一端に設けられたフランジFで、分離可能に連結されている。しかし、弁体支持用治具1の構成部材の組合せは、弁体支持用治具1の長さ、大きさ、重量などに応じて、適宜変更されてもよい。
【0028】
弁体支持用治具1は、図2A図2Cに示すように、支持部111、112の支持面111a、112aの鉛直方向の位置を調整する鉛直位置調整機構13を備えていてもよい。本実施形態では、鉛直位置調整機構13は、支持部111、112と脚部121~124との間を連結するボルトおよびナットであり、ボルトとナットとの螺合長を調節し、支持部111、112と脚部121~124との間の間隔を変化させることで、支持部111、112の支持面111a、112aの鉛直方向の位置を調整するように構成されている。図2A図2Cでは、鉛直位置調整機構13は、第1支持部111および第2支持部112と一端側鉛直脚部121および他端側鉛直脚部122との間にそれぞれ設けられている(図2A図2Cでは、4つ)。しかし、鉛直位置調整機構13は、鉛直脚部121、122と水平脚部123、124との間に設けられるなど、その他の配置で設けられてもよい。また、鉛直位置調整機構13は、ジャッキなどのその他の部材によって構成されてもよい。鉛直位置調整機構13は、複数対のボルトとナットとの螺合長をそれぞれ独立して調節することで、支持面111a、112aが水平面と略平行となるように調整するために用いることもできる。
【0029】
弁体支持用治具1は、図2A図2Cに示すように、弁体支持用治具1の撓みを矯正する撓み矯正機構14を備えていてもよい。本実施形態では、撓み矯正機構14は、延伸方向に垂直な断面が略円形状である流路Cにおいて、一端側水平脚部123および他端側水平脚部124の長手方向の略中央部の鉛直下方で、配管Pの鉛直下方の内側面に設置される2つのジャッキである。鉛直下方から2つのジャッキにより支持することで、一端側水平脚部123および他端側水平脚部124の鉛直下方への重みによる撓みが矯正される。この場合、弁体支持用治具1の流路Cへの設置が安定し、第1支持面111aおよび第2支持面112aを水平面と略平行に保持しやすくなるので、弁体支持用治具1による弁体V1の支持が安定する。
【0030】
(本発明の一実施形態に係るバタフライ弁の保守方法)
次に、本発明の一実施形態に係る配管に流体接続されたバタフライ弁の保守方法を、図2A図6を参照しながら、以下で説明する。なお、以下の説明では、図1Aおよび図1Bに示すバタフライ弁Vに対して図2A図2Cに示す弁体支持用治具1を用いることで実施されるバタフライ弁Vの保守方法について説明する。しかし、以下の説明は、あくまで一例であり、本発明のバタフライ弁の保守方法は、以下の説明に限定されるものではない。
【0031】
まず、図2A図2Cに示すように、弁体V1が開放された状態で、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央からそれぞれ突出する第1突出部V11および第2突出部V12を水平面に略平行な支持面111a、112aで鉛直下方から支持する(図6のステップS1)。
【0032】
本実施形態では、弁体V1は、バタフライ弁Vの保守の前には、第1突出部V11および第2突出部V12を有していないため、図2A図2Cに示すように、保守の際に、溶接などの公知の方法によって、第1突出部V11および第2突出部V12を弁体V1に取り付ける(図6のステップS11)。具体的には、第1突出部V11および第2突出部V12を弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央にそれぞれ取り付ける。本実施形態では、第1突出部V11は、第1面Vaに設けられる弁棒収容部V10に取り付ける。しかし、弁体V1は、バタフライ弁Vの保守の前から、第1突出部V11および第2突出部V12を有していてもよい。第1突出部V11および第2突出部V12が位置ずれすることなく、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbの略中央にそれぞれ取り付けることで、後述する弁体V1の回転作業の際に、弁体V1と弁箱V3や配管Pなどとの接触による損傷が抑制され、弁体V1に回転力を与えるための外力も小さくて済む。
【0033】
次いで、本実施形態では、図2A図2Cに示すように、弁体V1が開放された状態で、弁体支持用治具1を配管P内の流路Cに設置する(図6のステップS12)。具体的には、複数の構成部材に分離された状態で、弁体支持用治具1を配管Pの内部に搬入し、ボルト・ナットやネジなどの公知の固定部材により、弁体V1が開放された状態で、弁体支持用治具1を配管Pの内部で組み立てる。図2A図2Cに示す例では、たとえば、以下のように、弁体支持用治具1を組み立てることができる。まず、開状態の弁体V1に対して、長手方向が流路Cの延伸方向に対して略垂直となるように、水平脚部123、124を配管Pの鉛直下方の内側面に設置する。より具体的には、弁体V1に対して、一端側水平脚部123を流路Cの延伸方向の一方側に設置し、他端側水平脚部124を流路Cの延伸方向の他方側に設置する。弁体支持用治具1の設置に対して高い安定性が求められる場合には、水平脚部123、124と配管Pの内側面との接触部分を溶接などにより接合してもよい。その後に、水平脚部123、124に鉛直脚部121、122を鉛直上方から連結する。具体的には、2つの一端側鉛直脚部121が弁体V1の第1面Va側および第2面Vb側にそれぞれ配置されるように、一端側鉛直脚部121を鉛直上方から一端側水平脚部123に連結し、2つの他端側鉛直脚部122が弁体V1の第1面Va側および第2面Vb側にそれぞれ配置されるように、他端側鉛直脚部122を鉛直上方から他端側水平脚部124に連結する。最後に、鉛直脚部121、122に第1支持部111および第2支持部112を鉛直上方から連結する。具体的には、第1支持部111を第1面Va側の一端側鉛直脚部121および他端側鉛直脚部122に鉛直上方から連結し、第2支持部112を第2面Vb側の一端側鉛直脚部121および他端側鉛直脚部122に鉛直上方から連結する。本実施形態では、上述したように、鉛直脚部121、122と第1支持部111および第2支持部112とはそれぞれ、鉛直位置調整機構13を介して間接的に連結される。
【0034】
ステップS12またはその後のステップにおいて、弁体支持用治具1が自重などで撓みを生じる場合には、配管Pの鉛直下方の内側面と水平脚部123、124との間に、撓み矯正機構14を設置し、水平脚部123、124を鉛直下方から支持してもよい。本実施形態では、配管Pの鉛直下方の内側面と一端側水平脚部123および他端側水平脚部124との間に撓み矯正機構14をそれぞれ設置し、一端側水平脚部123および他端側水平脚部124の両方を鉛直下方から支持する。この場合、弁体支持用治具1の撓みが抑制される。しかし、一端側水平脚部123および他端側水平脚部124のいずれか一方のみが撓んでいる場合には、その一方のみを支持するように、撓み矯正機構14を1つだけ設置してもよい。
【0035】
次いで、本実施形態では、弁体V1が配管Pの内側面に接触しないように、支持部111、112の支持面111a、112aの鉛直方向の位置を調整する(図6のステップS13)。弁体V1が配管Pの内側面に接触しない場合、後述する弁体V1の回転作業の際に、弁体V1と弁箱V3や配管Pなどとの接触による損傷が抑制され、弁体V1に回転力を与えるための外力も小さくて済む。具体的には、鉛直位置調整機構13のボルトおよびナットの螺合長の調節により、第1支持部111および第2支持部112と一端側鉛直脚部121および他端側鉛直脚部122との間の距離を調整する。弁体支持用治具1の流路Cへの設置が完了した段階で、第1突出部V11および第2突出部V12は、支持面111a、112aによって鉛直下方から支持されていても、支持されていなくてもよい。本実施形態では、第1突出部V11および第2突出部V12はそれぞれ、ステップS13の位置調整によって、支持面111a、112aによって鉛直下方から支持される。ステップS13において、支持面111a、112aが水平面と略平行となるように、支持面111a、112aの位置を調整してもよい。具体的には、第1支持部111および第2支持部112と2つの一端側鉛直脚部121および2つの他端側鉛直脚部122との間の間隔を鉛直位置調整機構13によりそれぞれ調節することで(より具体的には、複数対のボルトおよびナットの螺合長を調節することで)、支持面111a、112aが水平面と略平行となるように、支持面111a、112aの位置を調整する。支持面111a、112aを水平面に対して傾斜させずに水平面と略平行とすることで、弁体V1の自重による意図しない回転が抑制されるとともに、弁体V1に回転力を与えるための外力も小さくて済む。また、支持面111a、112aの鉛直方向の位置を調整する際に、弁体V1の不慮の回転を防止するために、図3Aに示すように、上述のストッパ113が、第1突出部V11および第2突出部V12を両側方から挟持することで移動不能に保持するように、支持面111a、112aに取り外し可能に取り付けられてよい。
【0036】
次に、図2A(図中の二点鎖線参照)に示すように、弁体V1から弁棒V2を取り外すことで、バタフライ弁Vを分離する(図6のステップS2)。本実施形態では、弁棒V2を弁体V1の弁棒収容孔Vc(図1Aおよび図1B参照)および弁箱V3の軸受V30(図1Aおよび図1B参照)から鉛直上方に引き抜くことで、弁体V1、弁棒V2、および弁箱V3にバタフライ弁Vを分離する。
【0037】
次に、図4に示すように、第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで支持しながら、弁体V1を回転させる(図6のステップS3)。ステップS3により、弁体V1の弁棒収容孔Vc、弁棒V2、弁箱V3、および弁箱V3の軸受V30などの、弁体1の回転前に露出していなかった部位が、配管Pの内部で露出することとなる。具体的には、弁体V1の弁棒収容部V10が弁体V1の回転軸Zから外れるようにするために、流路Cの延伸方向に沿うように弁体V1を回転させることで、これらの部位が露出する。本実施形態では、図5に示すように、弁体V1を約90°回転させる(図2B中の二点鎖線も参照)。しかし、後述する保守作業の作業内容に応じて、弁体V1を回転させる角度は、適宜変更されてもよい。弁体V1を回転させる角度は、好ましくは、45°~135°であり、より好ましくは、60°~120°である。弁体V1を所望の範囲以上に回転させないために、図3Bに示すように、上述のストッパ113が、支持面111a、112a上で、弁体V1の所望の回転範囲に対応する第1突出部V11および第2突出部V12の移動位置に取り付けられてもよい。本実施形態では、第1突出部V11および第2突出部V12は、略円筒形状であるので、弁体V1の回転に伴う第1突出部V11および第2突出部V12の移動距離D(m)は、第1突出部V11および第2突出部V12の半径r(m)とし、弁体V1の回転角度θ(°)として、以下の式1によって求めることができる。
D=2πrθ/360 (式1)
したがって、この場合、ストッパ113の取付位置L(m)(第1突出部V11および第2突出部V12の移動位置)は、回転前の弁体V1の重心位置W(図3B中の二点鎖線参照)を起点として、以下の式2によって求めることができる。
L=D+r (式2)
【0038】
図3Bでは、ステップS3において、第1突出部V11および第2突出部V12を両側方から挟持していた一対のストッパ113のうち、弁体V1が移動する方向の一方のみを取り外し、その一方のストッパ113を弁体V1の回転(図3Bでは、弁体V1の回転は90°)に伴う第1突出部V11および第2突出部V12の移動位置に取り付けている。この場合、弁体V1の回転は、0°~θの範囲内(図3Bでは、0°~90°の範囲内)に規制することになる。
【0039】
本実施形態では、弁体V1が相当な重さを有するため、第1突出部V11および第2突出部V12と支持面111a、112aとの間の摩擦力が大きく、支持面111a、112aでの第1突出部V11および第2突出部V12の滑りはそれぞれ、ほとんど発生しない。そのため、ストッパ113の取付位置Lを算出する際に、第1突出部V11および第2突出部V12の滑りをそれぞれ無視することができる。しかし、第1突出部V11および第2突出部V12の滑りが無視できない場合には、第1突出部V11および第2突出部V12と支持面111a、112aとの間の摩擦力を増大させる摩擦面処理を行ってもよい。摩擦面処理は、特に限定されないが、たとえば、第1突出部V11および第2突出部V12の表面、ならびに/または支持面111a、112aへのブラスト加工などの粗面化処理である。また、摩擦面処理に代えて、第1突出部V11および第2突出部V12の表面、ならびに/または支持面111a、112aの表面にゴム製シートを貼付してもよい。この場合にも、第1突出部V11および第2突出部V12と支持面111a、112aとの間の摩擦力を増大させることができる。
【0040】
次に、分離されたバタフライ弁Vに対して保守作業を行う(図6のステップS4)。バタフライ弁Vに対する保守作業は、たとえば、ステップ3の弁体V1の回転によって露出させた部位、および/または露出させた部位の周辺部位などに対して行われる。具体的には、バタフライ弁Vに対する保守作業は、たとえば弁箱V3の軸受V30の交換作業である。しかし、バタフライ弁Vに対する保守作業は、特に限定されるものではなく、弁体V1、弁体V1の弁棒収容孔Vc、弁棒V2、弁箱V3、弁箱V3の軸受V30などの補修作業や清浄作業、弁体V1、弁棒V2などの交換作業などであってもよい。保守作業中の弁体V1の不慮の回転を防止するために、上述のストッパ113が、第1突出部V11および第2突出部V12を両側方から挟持することで、弁体V1の回転後の位置で移動不能に保持するように、支持面111a、112aに取り外し可能に取り付けられてよい。
【0041】
次に、本実施形態では、第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで支持しながら、弁体V1を逆回転させることで、弁体V1を回転させる前の元の位置に戻す(図6のステップS5、図2A図2C参照)。上述したように、本実施形態では、第1突出部V11および第2突出部V12と支持面111a、112aとの間の摩擦力が大きいため、支持面111a、112aでの第1突出部V11および第2突出部V12の滑りがほとんどない。この場合、弁体V1を回転させる前の元の位置に戻せば、弁箱V3の軸受V30の孔の位置と弁体V1の弁棒収容孔Vcの位置が位置合わせすることなく一致するので、後に続くバタフライ弁Vを分解前の元の状態に復元する作業が容易になる。
【0042】
次に、本実施形態では、弁体V1に弁棒V2を取り付けることで、バタフライ弁Vを分解前の状態に復元する(図6のステップS6、図2A図2C参照)。具体的には、弁棒V2を弁体V1の弁棒収容孔Vcおよび弁箱V3の弁棒支持部分V3a、V3bの軸受V30に挿入することで、バタフライ弁Vを再度組立てる。
【0043】
最後に、本実施形態では、弁体支持用治具1を配管P内から撤去する(図6のステップS7、図1B参照)。具体的には、上述したように、弁体支持用治具1を配管Pの内部に搬入する前の複数の構成部材に分離し、配管P内から撤去する。弁体支持用治具1の撤去に際して、第1突出部V11および第2突出部V12は、必要に応じ、弁体V1から取り除かれてもよい。
【0044】
以上のステップを踏む本実施形態に係るバタフライ弁Vの保守方法、およびバタフライ弁Vの保守に用いる弁体支持用治具1によれば、弁体V1の第1面Vaおよび第2面Vbからそれぞれ突出する第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで鉛直下方から支持しながら、弁体V1から弁棒V2を取り外すので、配管P内でバタフライ弁Vを分解して保守作業を行うことができる。そのため、バタフライ弁Vを配管Pから取り外さずに保守作業を行うことができるので、バタフライ弁Vの保守が大掛かりにならない。また、バタフライ弁Vを分解した際に、弁体V1が転倒しないので、バタフライ弁Vを分解前の状態に復元する作業が容易になる。さらに、第1突出部V11および第2突出部V12を支持面111a、112aで支持しながら弁体V1を回転させた後に、バタフライ弁Vに対して保守作業を行うので、弁体V1の回転前に配管P内で露出していなかった部位や、露出していなかった部位の周辺部位など、所望の部位に対する保守作業を行うことができる。
【0045】
弁体V1が第1突出部V11および第2突出部V12を有さない場合には、保守の際に、第1突出部V11および第2突出部V12を弁体V1に取り付ければよい。そのため、本実施形態に係るバタフライ弁Vの保守方法および弁体支持用治具1により、任意のバタフライ弁Vを保守することができる。
【0046】
弁体V1を配管Pの内側面に接触させないために、支持面111a、112aが水平面に略平行となるように、支持面111a、112aの鉛直方向の位置を調整すれば、弁体V1の回転作業の際に、弁体V1に回転力を与えるための外力も小さくて済むので、弁体V1の回転作業が簡単になる。
【0047】
弁体V1の回転を所定の範囲内に規制するためのストッパ113が支持面111a、112aに設ければ、保守作業の作業内容に応じて、弁体V1の回転角度を調整しやすくなる。また、ストッパ113は、弁体V1の回転前や回転後の位置で、第1突出部V11および第2突出部V12を移動不能に保持するために用いられてもよく、これらの場合には、弁体V1の不慮の回転を防止することができる。
【0048】
第1突出部V11および第2突出部V12と支持面111a、112aとの間の摩擦力が大きい場合には、弁体V1を回転させる前の位置まで逆回転させれば、弁箱V3の軸受V30の孔の位置と弁体V1の弁棒収容孔Vcの位置が位置合わせすることなく一致するので、バタフライ弁Vを分解前の状態に復元する作業がさらに容易になる。
【符号の説明】
【0049】
1 弁体支持用治具
111 支持部(第1支持部)
112 支持部(第2支持部)
111a 支持面(第1支持面)
112a 支持面(第2支持面)
113 ストッパ
121 (一端側鉛直)脚部
122 (他端側鉛直)脚部
123 (一端側水平)脚部
124 (他端側水平)脚部
13 鉛直位置調整機構
14 撓み矯正機構
C 流路
D (第1突出部および第2突出部の)移動距離
F フランジ
L (ストッパの)取付位置
P 配管
r 半径
V バタフライ弁
Va 第1面
Vb 第2面
Vc 弁棒収容孔
V1 弁体
V10 弁棒収容部
V11 第1突出部
V12 第2突出部
V2 弁棒
V3 弁箱
V3a、V3b 弁棒支持部分
V30 軸受
W (弁体の)重心位置
Z (弁体の)回転軸
θ (弁体の)回転角度
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6