(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077864
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】リザーブタンク
(51)【国際特許分類】
F01P 11/00 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
F01P11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188915
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】特許業務法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 陽介
(72)【発明者】
【氏名】小瀬 明
(57)【要約】
【課題】冷却液の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができるリザーブタンクを提供する。
【解決手段】リザーブタンク1は、内部空間10Aが形成されたタンク本体10と、タンク本体10の上部の第1領域E1から上向きに突出するように設けられた周壁30と、周壁30の上端に形成された注入口34と、周壁30に装着され、注入口34を閉塞して内部空間10Aを密閉するキャップ40と、キャップ40に設けられ、内部空間10Aにおいて上限値を越えた圧力を逃がす圧力逃がし弁50と、を備える。タンク本体10は、上部における第1領域E1とは異なる第2領域E2において上向きに膨出し、内部空間10Aの一部である緩衝空間20Aを形成する膨出部20を有する。緩衝空間20Aの上端は、注入口34よりも上方に位置する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却液を貯留し、ラジエータに前記冷却液を導出可能、かつ前記ラジエータから前記冷却液を導入可能な内部空間が形成されたタンク本体と、
前記タンク本体の上部の第1領域から上向きに突出するように設けられた周壁と、
前記周壁の上端に形成され、外部に上向きに開口する注入口と、
前記周壁に装着され、前記注入口を閉塞して前記内部空間を密閉するキャップと、
前記キャップに設けられ、前記内部空間において上限値を越えた圧力を逃がす圧力逃がし弁と、を備えた密封式のリザーブタンクであって、
前記タンク本体は、前記上部における前記第1領域とは異なる第2領域において上向きに膨出し、前記内部空間の一部である緩衝空間を形成する膨出部を有し、
前記緩衝空間の上端は、前記注入口よりも上方に位置していることを特徴とするリザーブタンク。
【請求項2】
前記膨出部は、前記周壁と水平方向で対向する膨出側壁を有し、
前記膨出側壁は、前記周壁に装着された前記キャップの外周縁との間に隙間を有しつつ前記外周縁に沿って湾曲している請求項1記載のリザーブタンク。
【請求項3】
前記膨出部は、前記周壁と水平方向で対向する膨出側壁を有し、
前記周壁には、前記圧力逃がし弁が逃がす前記圧力を前記外部に放出するための放出口が設けられ、
前記放出口は、前記膨出側壁に向かって開口している請求項1又は2記載のリザーブタンク。
【請求項4】
前記タンク本体は、前記膨出部に対して前記周壁よりも水平方向で遠い側に位置し、かつ前記膨出部よりも下方に位置する本体側壁を有し、
前記本体側壁の下部には、前記内部空間から前記ラジエータに前記冷却液を導出するための導出口が設けられている請求項1乃至3のいずれか1項記載のリザーブタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリザーブタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来のリザーブタンクの一例が開示されている。このリザーブタンクは密封式であって、タンク本体、周壁、注入口、キャップ及び圧力逃がし弁を備えている。
【0003】
タンク本体には、内部空間が形成されている。内部空間は冷却液を貯留し、ラジエータに冷却液を導出可能、かつラジエータから冷却液を導入可能である。周壁は、タンク本体における水平方向に平坦に延びる上部から上向きに突出するように設けられている。注入口は、周壁の上端に形成され、外部に上向きに開口している。キャップは、注入口に装着され、注入口を閉塞して内部空間を密閉する。圧力逃がし弁は、キャップに設けられている。圧力逃がし弁は、内部空間において上限値を越えた圧力を逃がす。
【0004】
このような構成であるリザーブタンクでは、内部空間に貯留される冷却液の上限水位について、冷却液の温度変化に伴う体積変化を吸収可能な空気溜まりを内部空間の上部に確保できる高さに設定するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来のリザーブタンクでは、ユーザが冷却液を注入口からタンク本体の内部空間に注入するときに、上限水位を越えて注入してしまう場合がある。すると、内部空間の上部に確保される空気溜まりが小さくなる。ユーザが冷却液を周壁内まで注入してしまうと、内部空間の上部に確保される空気溜まりが無くなる。このような場合、内部空間において、冷却液の温度変化に伴う体積変化を吸収することが難しくなる。
【0007】
このため、このリザーブタンクでは、冷却液の高温時の体積増加によって内部空間の圧力が上限値を越え易くなり、圧力逃がし弁がその越えた圧力を逃がすときに冷却液が吹き出して車両のエンジンルーム内に飛散し易くなる。そして、飛散した冷却液は、白化した汚れとなってエンジンルーム内の見映えを悪化させるので、ユーザが不快になったり、不具合を想起して不安になったりする。その結果、このリザーブタンクでは、車両の整備作業において、冷却液の白化した汚れを洗浄する手間を省くことが難しい。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、冷却液の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができるリザーブタンクを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のリザーブタンクは、冷却液を貯留し、ラジエータに前記冷却液を導出可能、かつ前記ラジエータから前記冷却液を導入可能な内部空間が形成されたタンク本体と、
前記タンク本体の上部の第1領域から上向きに突出するように設けられた周壁と、
前記周壁の上端に形成され、外部に上向きに開口する注入口と、
前記周壁に装着され、前記注入口を閉塞して前記内部空間を密閉するキャップと、
前記キャップに設けられ、前記内部空間において上限値を越えた圧力を逃がす圧力逃がし弁と、を備えた密封式のリザーブタンクであって、
前記タンク本体は、前記上部における前記第1領域とは異なる第2領域において上向きに膨出し、前記内部空間の一部である緩衝空間を形成する膨出部を有し、
前記緩衝空間の上端は、前記注入口よりも上方に位置していることを特徴とする。
【0010】
本発明のリザーブタンクでは、膨出部が内部空間の一部である緩衝空間を形成している。緩衝空間は、注入口よりも上方まで内部空間を拡張している。このため、緩衝空間について、冷却液の温度変化に伴う体積変化を吸収可能な空気溜まりを確保する大きさにし易い。
【0011】
これにより、このリザーブタンクでは、ユーザが冷却液を注入口からタンク本体の内部空間に注入するときに、上限水位を越えて注入したり、冷却液を周壁内まで注入したりする場合でも、緩衝空間が一定の大きさを保って空気溜まりとして効果的に作用し、冷却液の体積変化を確実性高く吸収できる。このため、冷却液の高温時の体積増加によっても、内部空間の圧力が上限値を越え難くなり、圧力逃がし弁がその越えた圧力を逃がす動作を行い難くなる。その結果、このリザーブタンクでは、冷却液が吹き出して車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が発生し難い。
【0012】
したがって、本発明のリザーブタンクでは、冷却液の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができる。
【0013】
膨出部は、周壁と水平方向で対向する膨出側壁を有していることが望ましい。そして、膨出側壁は、周壁に装着されたキャップの外周縁との間に隙間を有しつつ外周縁に沿って湾曲していることが望ましい。
【0014】
この場合、キャップを周壁に対して装着及び取り外しするときの作業性の低下を抑制しつつ、緩衝空間を一層大きくできる。その結果、このリザーブタンクでは、吹き出した冷却液が車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が一層発生し難い。
【0015】
膨出部は、周壁と水平方向で対向する膨出側壁を有していることが望ましい。周壁には、圧力逃がし弁が逃がす圧力を外部に放出するための放出口が設けられていることが望ましい。そして、放出口は、膨出側壁に向かって開口していることが望ましい。
【0016】
この場合、圧力逃がし弁が動作して冷却液が放出口から吹き出す場合でも、その放出口から吹き出した冷却液が膨出側壁に遮られて、タンク本体の上部における周壁と膨出側壁との間に溜まる。その結果、このリザーブタンクでは、吹き出した冷却液が車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が一層発生し難い。
【0017】
タンク本体は、膨出部に対して周壁よりも水平方向で遠い側に位置し、かつ膨出部よりも下方に位置する本体側壁を有していることが望ましい。そして、本体側壁の下部には、内部空間からラジエータに冷却液を導出するための導出口が設けられていることが望ましい。
【0018】
この場合、緩衝空間に溜まる空気が導出口から遠く離れているので、内部空間からラジエータに導出される冷却液に空気が混入することを確実性高く抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のリザーブタンクは、冷却液の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1のリザーブタンクが適用されたエンジン冷却装置を示す概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、実施例1のリザーブタンクの断面図である。
【
図3】
図3は、実施例1のリザーブタンクの上面図である。
【
図4】
図4は、実施例2のリザーブタンクの上面図である。
【
図5】
図5は、変形例1のリザーブタンクの上面図である。
【
図6】
図6は、変形例2のリザーブタンクの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した実施例1、2を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
(実施例1)
図1に示すように、実施例1のリザーブタンク1は、本発明のリザーブタンクの具体的態様の一例である。リザーブタンク1は、エンジン8を冷却するエンジン冷却装置9に適用されている。
【0023】
なお、
図1では、リザーブタンク1をエンジン8及びラジエータ3よりも大きく図示しているが、実際には、リザーブタンク1はエンジン8及びラジエータ3よりも小さい。
【0024】
<エンジン冷却装置の概略構成>
エンジン冷却装置9は、リザーブタンク1と共に、ラジエータ3、アッパーホースH1、ロワホースH2、ウォーターポンプ5及びサーモスタット6を備えている。
【0025】
ラジエータ3は、内燃機関であるエンジン8内の冷却通路8Wを通った冷却液C1を冷却風として供給される空気と熱交換して冷却する熱交換器である。ラジエータ3は、エンジン8からの冷却液C1の戻り側となるアッパータンク部3Aと、エンジン8への冷却液C1の供給側となるロワタンク部3Bとを有している。
【0026】
アッパーホースH1がエンジン8の冷却液出口8Bとラジエータ3のアッパータンク部3Aとを接続し、かつロワホースH2がエンジン8の冷却液入口8Aとラジエータ3のロワタンク部3Bとを接続することにより、エンジン8内の冷却通路8Wとラジエータ3内の熱交換通路とが連通している。
【0027】
ウォーターポンプ5はエンジン8に内蔵され、エンジン8からの動力により回転する。ウォーターポンプ5は、エンジン8内の冷却通路8Wと、アッパーホースH1と、ラジエータ3内の熱交換通路と、ロワホースH2とによって構成される循環経路において冷却液C1を循環させる。これにより、エンジン8内からアッパーホースH1を通してラジエータ3に高温の冷却液C1が流入し、ラジエータ3で熱交換により冷却された冷却液C1がロワホースH2を通してエンジン8側に供給される。
【0028】
サーモスタット6は、ウォーターポンプ5の吸入側に配置されている。サーモスタット6は、冷却液C1の温度に応じて開閉する流量調節バルブとして機能することにより、ラジエータ3を通る冷却液C1の流量を調節する。
【0029】
ラジエータ3のアッパータンク部3Aの上部には、ラジエータキャップ3Cが着脱可能に取り付けられている。ラジエータキャップ3Cは、ラジエータ3内の内圧変化に応じて開閉するバルブ機能を有している。
【0030】
<リザーブタンクの詳細構成>
リザーブタンク1は、エンジン8及びラジエータ3と共に車両のエンジンルーム内に搭載されている。
図1~
図3に示すように、リザーブタンク1は密閉式であり、タンク本体10、周壁30、注入口34及びキャップ40を備えている。また、
図2に示すように、リザーブタンク1は、圧力逃がし弁50及び負圧弁59を備えている。
【0031】
タンク本体10は、冷却液C1を貯留する内部空間10Aが形成された中空体である。タンク本体10は、内部空間10Aを区画する壁の一部として、本体側壁16と、本体側壁16に対して水平方向に離れて対向する本体対向側壁17とを有している。
【0032】
本体側壁16の下部には、導出口19が設けられている。本体対向側壁17の上部には、導入口18が設けられている。
【0033】
図1に示すように、導入口18には、接続配管H3の一端が接続されている。導出口19には、接続配管H4の一端が接続されている。リザーブタンク1は、接続配管H3を介して、ラジエータ3のアッパータンク部3Aに接続されている。また、リザーブタンク1は、接続配管H4を介して、エンジン8への冷却液の供給側であるウォーターポンプ5の吸入側に接続されている。
【0034】
内部空間10Aは、エンジン8の運転状況や冷却液の温度上昇等に応じて、導入口18及び接続配管H3を介してラジエータ3から蒸気泡を含み得る冷却液C1を導入可能であるとともに、導出口19、接続配管H4、ウォーターポンプ5、冷却通路8W及びアッパーホースH1を介して、ラジエータ3に冷却液C1を導出可能である。
【0035】
図1~
図3に示すように、タンク本体10の上部を第1領域E1と、第1領域E1とは異なる第2領域E2とに区分けする。本実施例では、タンク本体10の上部における本体側壁16側に位置する部分を第1領域E1とし、タンク本体10の上部における本体側壁16から離れた側に位置する部分を第2領域E2としている。
【0036】
なお、第1領域E1及び第2領域E2は一例であって、例えば、第1領域及び第2領域の一方が島状であって、第1領域及び第2領域の他方に囲まれていてもよい。
【0037】
図2に示すように、周壁30は、タンク本体10の上部の第1領域E1から上向きに突出するように設けられている。周壁30は、下部分に対して上部分が段状に拡径された2段円筒形状である。
【0038】
周壁30の上部分には、放出口35が設けられている。放出口35は、周壁30か水平方向に円筒状に突出し、本体側壁16側に向かって開口している。
【0039】
注入口34は、周壁30の上端に形成されている。注入口34は、外部に上向きに開口している。
【0040】
図1~
図3に示すように、タンク本体10は、膨出部20をさらに有している。膨出部20は、タンク本体10の上部の第2領域E2において上向きに略箱状に膨出している。膨出部20は、内部空間10Aの一部である緩衝空間20Aを形成している。
【0041】
図2に示すように、緩衝空間20Aの上端は、注入口34よりも距離L1だけ上方に位置している。内部空間10Aに貯留される冷却液C1の上限水位「HIGH」は、タンク本体10の上部の第1領域E1よりも下方であって、第1領域E1に近い高さに設定されている。
【0042】
膨出部20は、緩衝空間20Aを区画する壁の一部として、膨出側壁26と、膨出側壁26に対して水平方向に離れて対向する膨出対向側壁27とを有している。膨出側壁26は、周壁30と水平方向で対向している。膨出対向側壁27は、本体対向側壁17の上方に位置して、本体対向側壁17と段差なく接続している。
【0043】
本体側壁16は、膨出部20に対して周壁30よりも水平方向で遠い側に位置し、かつ膨出部20よりも下方に位置している。これにより、本体側壁16の下部に設けられた導出口19は、緩衝空間20Aから遠く離れている。
【0044】
膨出部20を有するタンク本体10と、注入口34が上端に形成された周壁30とは、例えば耐熱性を有する樹脂製であり、ブロー成形によって一体成形されたり、射出成形によって形成された複数の分割体が超音波溶着、レーザ溶着、接着等によって一体化されたりすることにより製造可能である。
【0045】
キャップ40は、周壁30に対して装着及び取り外し可能に設けられている。キャップ40は、周壁30に装着された状態で注入口34を閉塞して内部空間10Aを密閉する。
【0046】
図3に示すように、膨出側壁26は、周壁30に装着されたキャップ40の外周縁40Eとの間に隙間G1を有しつつ直線状に延びている。隙間G1は、ユーザがキャップ40を周壁30に対して装着及び取り外しする動作を阻害し難い程度の大きさに設定されている。
【0047】
図2に示すように、圧力逃がし弁50及び負圧弁59は、キャップ40に設けられており、キャップ40が周壁30に装着された状態で周壁30の内部に配置される。
【0048】
圧力逃がし弁50は弁体及び付勢ばねを有する周知の構成であり、エンジン運転時に冷却液の温度が上昇して内部空間10Aにおいて圧力が上限値を越えた場合に開弁し、その越えた圧力を逃がす。放出口35は、圧力逃がし弁50が逃がす圧力を外部に放出する。
【0049】
負圧弁59も弁体及び付勢ばねを有する周知の構成であり、エンジン停止後に冷却液の温度が低下して内部空間10Aにおいて圧力が下限値よりも低くなった場合に開弁し、外部から放出口35を介して内部空間10A内に空気を導入する。
【0050】
<作用効果>
実施例1のリザーブタンク1では、
図2に示すように、膨出部20が内部空間10Aの一部である緩衝空間20Aを形成している。緩衝空間20Aの上端は、注入口34よりも距離L1だけ上方に位置している。つまり、緩衝空間20Aは、注入口34よりも上方まで内部空間10Aを拡張している。このため、緩衝空間20Aについて、冷却液C1の温度変化に伴う体積変化を吸収可能な空気溜まりを確保する大きさにし易い。
【0051】
これにより、このリザーブタンク1では、ユーザが冷却液C1を注入口34からタンク本体10の内部空間10Aに注入するときに、上限水位「HIGH」を越えて注入したり、冷却液C1を周壁30内まで注入したりする場合でも、緩衝空間20Aが一定の大きさを保って空気溜まりとして効果的に作用し、冷却液C1の体積変化を確実性高く吸収できる。このため、冷却液C1の高温時の体積増加によっても、内部空間10Aの圧力が上限値を越え難くなり、圧力逃がし弁50がその越えた圧力を逃がす動作を行い難くなる。その結果、このリザーブタンク1では、冷却液C1が吹き出して車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が発生し難い。
【0052】
したがって、実施例1のリザーブタンク1では、冷却液C1の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液C1の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができる。
【0053】
また、このリザーブタンク1では、膨出部20に対して周壁30よりも水平方向で遠い側に位置し、かつ膨出部20よりも下方に位置する本体側壁16の下部に、導出口19が設けられている。この構成により、緩衝空間20Aに溜まる空気が導出口19から遠く離れているので、内部空間10Aからラジエータ3に導出される冷却液C1に空気が混入することを確実性高く抑制できる。
【0054】
(実施例2)
図4に示すように、実施例2のリザーブタンクでは、実施例1のリザーブタンク1に係る膨出部20の代わりに膨出部220を採用している。膨出部220は、実施例1に係る膨出部20の膨出側壁26を膨出側壁226に変更しただけである。
【0055】
膨出側壁226は、周壁30と水平方向で対向している。膨出側壁226は、周壁30に装着されたキャップ40の外周縁40Eとの間に隙間G2を有しつつ外周縁40Eに沿って湾曲している。隙間G2は、ユーザがキャップ40を周壁30に対して装着及び取り外しする動作を阻害し難い程度の大きさに設定されている。
【0056】
また、このリザーブタンクでは、放出口35が開口する向きを実施例1から変更し、放出口35が膨出側壁226に向かって開口するようにしている。
【0057】
実施例2のその他の構成は実施例1と同様である。このため、実施例1と同一の構成については同一の符号を付して説明を省略又は簡略する。
【0058】
このような構成である実施例2のリザーブタンクでは、実施例1のリザーブタンク1と同様に、冷却液C1の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液C1の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができる。
【0059】
また、このリザーブタンクでは、膨出部220の膨出側壁226は、周壁30に装着されたキャップ40の外周縁40Eとの間に隙間G2を有しつつ外周縁40Eに沿って湾曲している。この構成により、キャップ40を周壁30に対して装着及び取り外しするときの作業性の低下を抑制しつつ、緩衝空間20Aを一層大きくできる。その結果、このリザーブタンクでは、吹き出した冷却液C1が車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が一層発生し難い。
【0060】
さらに、このリザーブタンクでは、放出口35が膨出側壁226に向かって開口している。この構成により、圧力逃がし弁50が動作して冷却液C1が放出口35から吹き出す場合でも、その放出口35から吹き出した冷却液C1が膨出側壁226に遮られて、タンク本体10の上部における周壁30と膨出側壁226との間に溜まる。その結果、これらのリザーブタンクでは、吹き出した冷却液C1が車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が一層発生し難い。
【0061】
以上において、本発明を実施例1、2に即して説明したが、本発明は上記実施例1、2に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0062】
(変形例1、2)
図5に示す変形例1のリザーブタンクでは、膨出部320の膨出側壁326は、周壁30に装着されたキャップ40の外周縁40Eとの間に隙間を有しつつ外周縁40Eに沿って約180°を若干越える円弧状に湾曲している。また、放出口35が膨出側壁326における周方向の中央に向かって開口している。
【0063】
図6に示す変形例2のリザーブタンクでは、膨出部420の膨出側壁426は、周壁30に装着されたキャップ40の外周縁40Eとの間に隙間を有しつつ外周縁40Eに沿って約90°を若干越える円弧状に湾曲している。また、放出口35が膨出側壁426における周方向の中央に向かって開口している。
【0064】
このような構成である変形例1、2のリザーブタンクでは、実施例1、2のリザーブタンク1と同様に、冷却液C1の吹き出しによるエンジンルーム内の汚れを抑制でき、ひいては、車両の整備作業において冷却液C1の白化した汚れを洗浄する手間を省くことができる。
【0065】
また、これらのリザーブタンクでは、放出口35が膨出側壁326、426における周方向の中央に向かって開口している。この構成により、圧力逃がし弁50が動作して冷却液C1が放出口35から吹き出す場合でも、その放出口35から吹き出した冷却液C1が膨出側壁326、426に遮られて、タンク本体10の上部における周壁30と膨出側壁326、426との間に溜まる。その結果、これらのリザーブタンクでは、吹き出した冷却液C1が車両のエンジンルーム内に飛散する不具合が一層発生し難い。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は例えば、車両のエンジンの冷却装置等に利用可能である。
【符号の説明】
【0067】
1…リザーブタンク
C1…冷却液
3…ラジエータ
10A…内部空間
10…タンク本体
E1…第1領域
30…周壁
34…注入口
40…キャップ
50…圧力逃がし弁
E2…第2領域
20A…緩衝空間
20、220、320、420…膨出部
26、226、326、426…膨出側壁
40E…キャップの外周縁
G1、G2…膨出側壁とキャップの外周縁との隙間
35…放出口
16…本体側壁
19…導出口