(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077865
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ノイズ低減装置及びノイズ低減方法
(51)【国際特許分類】
H03M 7/36 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
H03M7/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188916
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】葉山 敦史
【テーマコード(参考)】
5J064
【Fターム(参考)】
5J064AA01
5J064BA03
5J064BB07
5J064BC08
5J064BC10
5J064BC16
(57)【要約】
【課題】 量子化誤差のフィードバックをかけることなく使用帯域内の量子化誤差を低減させてダイナミックレンジの改善を図ることができる。ノイズ低減装置及びノイズ低減方法を提供すること。
【解決手段】 入力信号を遅延させたフィードバック信号を入力信号に加算して第1の出力信号を出力する積分手段と、第1の出力信号を量子化し、量子化の際に発生する量子化誤差を第1の出力信号に加算した第2の出力信号を出力する量子化手段と、第2の出力信号から第2の出力信号を遅延させた信号を減算して第3の出力信号を出力する微分手段とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を遅延させたフィードバック信号を前記入力信号に加算して第1の出力信号を出力する積分手段と、
前記第1の出力信号を量子化して、第2の出力信号を出力する量子化手段と、
前記第2の出力信号から前記第2の出力信号を遅延させた信号を減算して第3の出力信号を出力する微分手段とを有する、
ことを特徴とするノイズ低減装置。
【請求項2】
前記積分手段の前段に前記入力信号の直流成分を除去する直流成分除去手段を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のノイズ低減装置。
【請求項3】
前記積分手段の後段に前記第3の出力信号を構成するデータおよび前記データのビット列の長さを記憶するメモリを有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のノイズ低減装置。
【請求項4】
前記積分手段を構成する第1の遅延回路および前記微分手段を構成する第2の遅延回路に対して遅延処理を初期化するためのリセット信号を出力するリセット信号出力部を有する、
ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のノイズ低減装置。
【請求項5】
積分手段が、入力信号を遅延させたフィードバック信号を前記入力信号に加算して第1の出力信号を出力する工程と、
量子化手段が、前記第1の出力信号を量子化して、第2の出力信号を出力する工程と、
微分手段が、前記第2の出力信号から前記第2の出力信号を遅延させた信号を減算して第3の出力信号を出力する工程とを有する、
ことを特徴とするノイズ低減方法。
【請求項6】
前記積分手段の前段に設けられた直流成分除去手段が前記入力信号の直流成分を除去する工程を有する、
ことを特徴とする請求項5に記載のノイズ低減方法。
【請求項7】
前記積分手段の後段に設けられたメモリが、前記第3の出力信号を構成するデータおよび前記データのビット列の長さを記憶する工程を有する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のノイズ低減方法。
【請求項8】
リセット信号出力部が、前記積分手段を構成する第1の遅延回路および前記微分手段を構成する第2の遅延回路に対して遅延処理を初期化するためのリセット信号を出力する工程を有する、
ことを特徴とする請求項5~7のいずれか一項に記載のノイズ低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノイズ低減装置及びノイズ低減方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アナログデジタル変換器のノイズ低減方法、ノイズ低減装置としては、例えば、デジタル信号等の入力信号の量子化時に発生する量子化誤差あるいはノイズを低減するためのノイズ低減方法、ノイズ低減装置が知られている(以下の「特許文献1」参照)。
特許文献1に開示された測定装置は、
図10に示すように、入力端子101に供給された入力信号が、ノイズシェーピング処理が施されて出力端子102より取り出される。このノイズシェーピング処理は、量子化器104で発生された量子化誤差が減算器105により取り出され、ノイズフィルタ106を介して量子化器104の入力側の加算器103にフィードバックされることによって行われる。
【0003】
加算器103では、入力端子101からの入力信号、ノイズフィルタ106からのフィードバックエラー信号の他に、低域集中ノイズ信号生成部110からの低域側にエネルギーの集中したランダムノイズ信号と低域側にエネルギーを集中させたディザ発生器116からのディザ信号を、加算器114を介し、量子化器115を介して供給される。
【0004】
上記した構成によれば、例えば、入力信号が20ビットのデジタル信号で、出力端子102に出力される出力信号が16ビットであるとき、ビット数を切り捨てることによって発生する量子化誤差のエネルギーに周波数特性を持たせることにより、高域側ではS/N比が落ちるものの、低域側では20ビットのダイナミックレンジを得ている(
図11参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した従来技術では、ノイズシェーピングの効果を上げるために次数を上げる必要があるが、次数を上げるためには例えばノイズシェイパーのフィードバックを幾重にもする必要がある。しかしながら次数を上げすぎるとノイズが発振しやすくなる。また、量子化器に適度にディザ信号を入れないと量子化誤差が相関を持ってしまい高調波歪が発生してしまう。
【0007】
本発明の課題は、量子化誤差のフィードバックをかけることなく使用帯域内の量子化誤差を低減させてダイナミックレンジの改善を図れるノイズ低減装置及びノイズ低減方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るノイズ低減装置の一側面は、入力信号を遅延させたフィードバック信号を入力信号に加算して第1の出力信号を出力する積分手段と、第1の出力信号を量子化して第2の出力信号を出力する量子化手段と、第2の出力信号から第2の出力信号を遅延させた信号を減算して第3の出力信号を出力する微分手段とを有することを特徴とする。
【0009】
したがって、上記した構成によれば、量子化誤差のフィードバックをかけることなくノイズシェーピングが実現できるため、次数を上げることによるノイズの発振を抑制でき、もって使用帯域内の量子化誤差を低減させてダイナミックレンジの改善を図ることができる。
【0010】
また、本発明のノイズ低減装置の他の側面は、積分手段の前段に入力信号の直流成分を除去する直流成分除去手段を有することを特徴とする。したがって、このような構成によれば積分器の前段に直流除去手段を設けているので上記のような積分器の出力が飽和するという状態を回避することができる。
【0011】
また、本発明のノイズ低減装置の他の側面は、積分手段の後段に第3の出力信号を構成するデータおよびデータのビット列の長さを記憶するメモリを有することを特徴とする。したがって、上記した構成によれば、ノイズシェーピングをかけた時と同等の出力信号を得られるので、出力信号に直流成分を含ませたい用途に対して柔軟に対応することができる。また、入力信号の直流成分による積分器の飽和を気にせず信号伝送を行うことが可能であり、直流成分を含めて広帯域にS/N比の向上を図ることができる。
【0012】
また、本発明のノイズ低減装置の他の側面は、積分手段を構成する第1の遅延回路および微分手段を構成する第2の遅延回路に対して遅延処理を初期化するためのリセット信号を出力するリセット信号出力部を有することを特徴とする。したがって、上記した構成によれば、出力信号の統計的情報と長さに基づいてそのデータ量が上限に達する前にリセットがかけられるため上記した統計的データの繰り返し使用により発生する可能性があるスパイクノイズの発生を未然に抑制することができる。また、積分器が直流成分による飽和しそうなタイミングも統計的に予めわかっているときは、そのタイミングでリセットをかけることにより入力信号の直流成分による影響も軽減できるため積分器の飽和を抑制することができる。
【0013】
また、本発明のノイズ低減方法の一側面は、積分手段が、入力信号を遅延させたフィードバック信号を入力信号に加算して第1の出力信号を出力する工程と、量子化手段が、第1の出力信号を量子化して第2の出力信号を出力する工程と、微分手段が、第2の出力信号から第2の出力信号を遅延させた信号を減算して第3の出力信号を出力する工程とを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明のノイズ低減方法の他の側面は、積分手段の前段に設けられた直流成分除去手段が入力信号の直流成分を除去する工程を有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明のノイズ低減方法の他の側面は、積分手段の後段に設けられたメモリが、第3の出力信号を構成するデータおよびデータのビット列の長さを記憶する工程を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明のノイズ低減方法の他の側面は、リセット信号出力部が、積分手段を構成する第1の遅延回路および微分手段を構成する第2の遅延回路に対して遅延処理を初期化するためのリセット信号を出力する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のノイズ低減装置及びノイズ低減方法によれば、量子化誤差のフィードバックをかけることなく使用帯域内の量子化誤差を低減させてダイナミックレンジの改善を図れるノイズ低減装置及びノイズ低減方法を提供することすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係るノイズ低減装置の構成を示した図である。
【
図2】
図1のノイズ低減装置の動作を説明するためのシグナルフロー線図である。
【
図3】従来のノイズ低減装置における1次ΔΣ変調後の出力を示したグラフの一例である。
【
図4】従来のノイズ低減装置における1次ΔΣ変調後の出力を示したグラフの他の例である。
【
図5】
図1に示した1段1次の回路構成を有するノイズ低減装置におけるΔΣ変調後の出力を示したグラフである。
【
図6】本発明の2段2次のノイズ低減装置におけるΔΣ変調器出力を示したグラフである。
【
図7】本発明の第2の実施の形態に係るノイズ低減装置の構成を示した図である。
【
図8】本発明の第3の実施の形態に係るノイズ低減装置の構成を示した図である。
【
図9】本発明の第4の実施の形態に係るノイズ低減装置の構成を示した図である。
【
図10】従来のノイズ低減装置の構成を示した図である。
【
図11】従来のノイズ低減装置におけるノイズシェーピングを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1の実施の形態]
以下に、
図1を参照して本発明に係るノイズ低減装置の第1の実施の形態について説明する。
【0020】
[ノイズ低減装置の構成]
ノイズ低減装置1は、
図1に示すように、入力端子2からの入力信号x(n)を遅延回路9で遅延させたフィードバック信号(帰還信号)x
1(n-1)と入力信号x(n)を加算器7で加算した出力信号x
1(n)を出力する積分器3と、積分器3からの出力信号x
1(n)を量子化し、量子化の際に発生する量子化誤差(量子化ノイズ、量子化歪)q(n)を積分器3からの出力信号x
1(n)に加算した出力信号x
2(n)を出力する量子化器4と、量子化器4からの出力信号x
2(n)と出力信号x
2(n)を遅延させた信号x
2(n-1)との差分(減算)出力である出力信号y(n)を出力する微分器5を備えて構成されている。なお、
図1において量子化器4の構成については、周知であるので本実施の形態ではその説明を省略する。また、積分器3は請求項1の積分手段に対応し、量子化器4は請求項1の量子化手段に対応し、微分器5は請求項1の微分手段に対応する。積分器3からの出力信号x
1(n)は請求項1の第1の出力信号に対応し、量子化器4からの出力信号x
2(n)は請求項1の第2の出力信号に対応し、微分器5からの出力信号y(n)は請求項1の第3の出力信号に対応する。
【0021】
[ノイズ低減装置の動作]
以下に、ノイズ低減装置1の動作について
図2を参照して説明する。
図2は
図1に示すノイズ低減装置1の動作を説明するためのシグナルフロー線図である。
積分器3は、入力端子2からの入力信号x(n)を遅延回路8で遅延させたフィードバック信号x
1(n-1)を加算器7に出力し、そのフィードバック信号x
1(n-1)に入力信号x(n)を加算した出力信号x
1(n)を出力する(以下の数式(1)参照)。
【0022】
【0023】
数式(1)をZ変換すると以下の数式(2)のようになる。
【0024】
【0025】
数式(2)を整理すると、数式(3)を経て数式(4)が導き出される。
【0026】
【0027】
【0028】
量子化器4の量子化の際に発生する量子化誤差q(n)と積分器3からの出力信号x1(n)を加算した出力信号x2(n)は、微分器5に出力される(以下の数式(5)参照)。数式(5)をZ変換すると以下の数式(6)のようになる。
【0029】
【0030】
【0031】
微分器5は、量子化器4からの出力信号x2(n)と遅延回路13で出力信号x2(n)を遅延させた遅延信号x2(n-1)との差分をとった出力信号y(n)を出力する(以下の数式(7)参照)。数式(7)をZ変換すると以下の数式(8)のようになる。数式(8)から数式(9)を導き、X2に上記した数式(6)を代入すると数式(10)が導き出される。
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【数10】
数式(10)を変形させて数式(11)、数式(12)を導き、最終的に数式(13)が導き出される。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
数式(13)に示すように、微分器の出力信号Yは、入力信号(元信号)Xはそのままの状態で量子化誤差q(n)に微分特性を持たせたものとなる。すなわち、周波数軸で一様に分布する量子化誤差を低周波帯域で減少させ、高周波帯域で上昇させるいわゆるノイズシェーピング特性(量子化のスペクトルが6dB/oct)が得られる。
【0040】
[本発明のノイズ低減装置によるΔΣ変調器出力]
以下に、本発明のノイズ低減装置のΔΣ変調器出力について、従来のノイズ低減装置のΔΣ変調器出力と対比して説明する。
【0041】
図3は入力信号である正弦波が入力された積分器の出力に量子化器からの量子化誤差を加算し、その加算された信号を、遅延回路を介して積分器にフィードバックさせる構成を有する従来のノイズ低減装置における1次ΔΣ変調後の出力を示したグラフであり、
図4は、
図3における1次ΔΣ変調器においてさらにディザ信号を量子化器に加えた場合の従来のノイズ低減装置における1次ΔΣ変調後の出力を示したグラフである。
【0042】
従来のノイズ低減装置におけるΔΣ変調後の出力は、
図3に示すように量子化誤差が高調波として現れているが、6dB/octのスペクトルが現れておらずノイズシェーピングが働いていない。従来のノイズ低減装置のディザ信号を加えた場合のΔΣ変調後の出力は、
図4に示すように、ディザリングにより、2kHzの高調波ノイズが低減できていると同時に、量子化ノイズのスペクトルが6dB/octとなっている。ただし、そもそもΔΣ変調は高調波によるディザリングを施しているので、そこにさらにディザリングとしてのノイズを加えることはノイズの低減を図るという本来の趣旨から外れている。
【0043】
図5は
図1に示した回路構成(1段1次)を有する第1の実施の形態に係るノイズ低減装置におけるΔΣ変調後の出力を示したグラフであり、
図6は、例えば
図1のように積分器3、量子化器4および微分器5で構成されたもの(便宜上「第1の回路構成」と呼ぶ。)と同様の回路構成を第2の回路構成として、例えば、それらを前段と後段にそれぞれ配置するよう接続してなる2段2次のノイズ低減装置におけるΔΣ変調器出力を示したグラフである。
【0044】
本発明のノイズ低減装置1における1段1次ΔΣ変調後の出力は、
図5に示すように、従来のノイズ低減装置のディザ信号を加えた場合のΔΣ変調後の出力(
図4参照)と概ね同様の出力が得られる。また、1kHzに対する高調波ノイズ(例えば2kHz)も観測されない。
【0045】
本実施の形態に係るノイズ低減装置1によれば、ディザ信号も加えず、積分器3からの信号と量子化器4の量子化の際に発生する量子化誤差q(n)とを加算し、その加算した出力信号を遅延させた信号に対して微分しただけで、従来のディザ信号を加えた場合の1次ΔΣ変調後の出力と同様の出力特性が得られる。したがって、従来のノイズ低減装置で必要であったディザ信号を発生させるための発生器が不要となり、装置の製造コストの低減が図れる。
【0046】
また、従来ではノイズシェーピングした量子化誤差の周波数特性を変化(例えば高周波帯域の量子化誤差を除去)させるためにフィルタで所定の周波数領域を除去しているが、回路が安定するフィルタ係数を見出すことは困難である。しかし、本実施の形態に係るノイズ低減装置1によれば上記のようなフィルタが不要であるため上記のような回路の安定化のためのフィルタ係数の特定が困難であるという問題は生じない。
【0047】
本発明のノイズ低減装置における2段2次ΔΣ変調後の出力は、
図6に示すように、従来のノイズ低減装置における2段2次ΔΣ変調後の出力(図示せず)と概ね同様の出力が得られる。また、1kHzに対する高調波ノイズ(例えば2kHz)も観測されない。
【0048】
[第2の実施の形態]
以下に、
図7を参照して本発明に係るノイズ低減装置の第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態に係るノイズ低減装置20は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1の積分器3の前段に直流除去手段(DC除去手段)21を設けた点以外は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様であるため以下では異なる点について説明することとする。なお、符号については上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様の部分は同様の符号を用いる。
【0049】
第2の実施の形態に係るノイズ低減装置20は、積分器3の前段に直流除去手段21を設けている点に特徴を有する。積分器3は、入力信号に直流成分が含まれている場合であって正負の電圧が等しくないなどの理由によって出力は一定の傾斜で上昇していき最後には積分器出力が飽和してしまう場合がある。本実施の形態に係るノイズ低減装置20は積分器3の前段に直流除去手段21を設けているので上記のような積分器3の出力が飽和するという状態を回避することができる。なお、直流除去手段21としてアナログ回路で構成されたフィルタを用いてもよいしデジタルフィルタを用いてもよい。
【0050】
[第3の実施の形態]
以下に、
図8を参照して本発明に係るノイズ低減装置の第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態に係るノイズ低減装置30は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1の微分器5の後段に出力信号y(n)の統計的な情報と長さを記憶するメモリ31を設けた点以外は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様であるため以下では異なる点について説明することとする。なお、符号については上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様の部分は同様の符号を用いる。
【0051】
第3の実施の形態に係るノイズ低減装置30は、微分器5の後段に出力信号y(n)の統計的な情報と長さ(データ量)を記憶するメモリ31を設けている点に特徴を有する。以下、メモリ31の動作について説明する。出力信号y(n)の電圧を所望の大きさで出力しようとする場合、出力信号y(n)の情報量が所定のデータ量(ビットで表される)である場合に、出力信号y(n)のデータ量に対応する電圧値の統計的な情報(以下、「統計的情報」と呼ぶ。)は大きく変化するものではないため概ね固定的な情報である。本実施の形態はこの統計的情報の固定的な性質を利用したものである。なお、メモリ31は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM、(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等があげられるが、外部記憶媒体(例えば、外付けハードディスク等)を用いてもよい。
【0052】
メモリ31は、出力信号y(n)のデータ量に対応する統計的情報を所定のタイミングで記憶する。いったんメモリ31に記憶された後は、記憶された出力信号y(n)の所定ビット分の統計的情報を繰り返しメモリ31から出力信号y(n)が出力されるタイミングで読み出し、その読み出された統計的情報に基づく出力信号y(n)が出力される。
【0053】
上記した構成によれば、出力信号y(n)に直流成分を含ませたい場合においてもノイズシェーピングをかけた時と同等の出力信号を得られる。また、入力信号の直流成分による積分器3の飽和を気にせず信号伝送が行われ、直流成分を含めて広帯域にS/N比の向上を図ることができる。
【0054】
[第4の実施の形態]
以下に、
図9を参照して本発明に係るノイズ低減装置の第4の実施の形態について説明する。第4の実施の形態に係るノイズ低減装置40は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1の積分器3を構成する遅延回路9および微分器5を構成する遅延回路13にリセット信号出力端子41からリセット信号を出力する構成以外は上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様であるため以下では異なる点について説明することとする。なお、符号については上記した第1の実施の形態に係るノイズ低減装置1と同様の部分は同様の符号を用いる。
【0055】
第4の実施の形態に係るノイズ低減装置40は、積分器3を構成する遅延回路9および微分器5を構成する遅延回路13にリセット信号出力端子41から出力信号y(n)の出力をリセットするためのリセット信号を出力するように構成されている点に特徴を有する。出力信号y(n)の電圧を所望の大きさで出力しようとする場合、出力信号y(n)の情報量が所定のデータ量(ビットで表される)である場合に、出力信号y(n)はデータ量に対応する電圧値の統計的な情報(以下、「統計的情報」と呼ぶ。)を有する。なお、リセット信号出力端子41は請求項4のリセット信号出力部に対応する。
【0056】
ところが、この統計的情報は出力信号のデータ量に応じて決められた情報を繰り返し出力する場合もあれば、いったんデータ量の上限に達した後はその状態が継続してしまう場合もある。いずれの場合も好ましい状態ではなく特に決められた情報を繰り返し出力する場合には最初に戻るタイミングでスパイク等のノイズが発生する場合がある。
【0057】
そこで、出力信号y(n)の統計的情報と長さ(データ量)に基づいてそのデータ量が上限に達する前にリセットをかけることにより上記したスパイク(ノイズ)の発生を未然に抑制することができる。また、積分器3が直流成分による飽和しそうなタイミングも統計的に予めわかっているときは、そのタイミングでリセットをかけることにより入力信号の直流成分による影響を軽減できるため積分器3の飽和を抑制することができる。
【0058】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1、20、30、40 ノイズ低減装置
2 入力端子
3 積分器
4 量子化器
5 微分器
6 出力端子
7 加算器
8 出力端子
9 遅延回路
10 加算器
11 入力端子
12 減算器
13 遅延回路
21 DC除去手段(フィルタ)
31 メモリ
41 リセット信号出力端子