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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077894
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02P 29/028 20160101AFI20220517BHJP
【FI】
H02P29/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188956
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 悠貴
【テーマコード(参考)】
5H501
【Fターム(参考)】
5H501AA20
5H501DD08
5H501EE08
5H501GG01
5H501HA20
5H501HB07
5H501HB16
5H501JJ03
5H501JJ12
5H501JJ17
5H501JJ18
5H501JJ25
5H501KK06
5H501LL22
5H501LL35
5H501LL52
5H501MM09
5H501MM11
(57)【要約】
【課題】装置に所望の機能を発揮させるように制御部で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を実現できる制御装置を提供する。
【解決手段】操舵制御装置30は、EPSの動作を制御する。操舵制御装置30は、異なる周波数を有する各クロックCL1,CL2のいずれかを用いてEPSの動作を制御する制御部72を備えている。制御部72は、機能演算部88と、機能演算部選択部87とを有するように構成されている。機能演算部88は、EPSに対して操舵制御機能を発揮させるべく動作を制御するために必要なモータ制御信号Smを演算するように動作する機能演算部を複数有している。機能演算部選択部87は、モータ制御信号Smを演算する際に制御部72で用いる各クロックCL1,CL2に応じた各機能演算部のいずれかを動作させるべく選択するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の機能を発揮する装置の動作を制御する制御装置であって、
異なる周波数を有する複数のクロックのうちのいずれかのクロックを用いて前記装置の動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
前記クロックを用いて前記装置に対して前記所望の機能を発揮させるべく動作を制御するために必要な情報を演算するように動作する複数の機能演算部と、
前記情報を演算する際に前記制御部で用いる前記クロックが有する周波数に適した前記機能演算部を動作させるべく、前記制御部で用いる前記クロックが有する周波数に基づいて、前記複数の機能演算部のなかから動作させる前記機能演算部を選択する機能演算部選択部と、を有するように構成されている制御装置。
【請求項2】
前記複数のクロックは、第1クロックと、第2クロックとを含み、
前記制御部は、前記クロックの状態を監視するクロック監視部と、
前記クロック監視部の監視結果に基づいて、前記制御部が用いる前記クロックとして複数のクロックのうちのいずれかを設定するクロック設定部と、をさらに有し、
前記クロック設定部は、前記クロック監視部の監視結果として、前記第1クロックが異常でない場合に前記第1クロックをメインクロックとして前記制御部が用いるように設定する一方、前記クロック監視部の監視結果として、前記第1クロックが異常である場合に前記第2クロックをバックアップクロックとして前記制御部が用いるように設定するように構成されている請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記制御部に対して外部に設けられた発振器から入力されるクロックに基づき前記メインクロックを生成するメインクロック生成部と、
前記制御部に対して内部に設けられた発振回路から入力されるクロックに基づき前記バックアップクロックを生成するバックアップクロック生成部と、をさらに有するように構成されている請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記バックアップクロックが有する周波数は、前記メインクロックが有する周波数と比較して低く設定されている請求項3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記装置は、車両に搭載されて当該車両に設けられたステアリングホイール及び転舵輪の少なくともいずれかを動作させるべく機能する操舵装置であり、
前記制御部は、前記操舵装置の動作を制御するべく当該操舵装置に設けられたモータの動作を制御するように構成されている請求項1~4のうちいずれか一項に記載の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、モータの制御を実行するべく動作する第1のマイクロコントローラ(以下、「マイコン」という。)と第2のマイコンとを備えたモータ制御装置が開示されている。このモータ制御装置では、第1のマイコンが演算した情報の一部を第2のマイコンに出力する等してモータの制御が実行される。そして、第1のマイコンは、モータの制御を実行するべく情報を演算するために必要とするクロックが正しく供給されない場合であっても、第2のマイコンから供給されるバックアップクロックを用いた情報の演算を可能にしてモータの制御の継続を可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-201260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、第1のマイコンでは、第2のマイコンから供給されるバックアップクロックを用いて情報の演算を可能にする場合、元々用いていたクロックと、バックアップクロックとの間でクロックの周波数が異なることが考えられる。この場合、第1のマイコンでは、モータに所望の機能を発揮させるように第1のマイコンで用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更が必要である。これは、上記モータ制御装置に限らず、モータ以外を制御対象にするとともに当該制御対象の制御を実行するべく情報を演算するためにクロックを必要とする制御装置において同様に生じる課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する制御装置は、所望の機能を発揮する装置の動作を制御する制御装置であって、異なる周波数を有する複数のクロックのうちのいずれかのクロックを用いて前記装置の動作を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記クロックを用いて前記装置に対して前記所望の機能を発揮させるべく動作を制御するために必要な情報を演算するように動作する複数の機能演算部と、前記情報を演算する際に前記制御部で用いる前記クロックが有する周波数に適した前記機能演算部を動作させるべく、前記制御部で用いる前記クロックが有する周波数に基づいて、前記複数の機能演算部のなかから動作させる前記機能演算部を選択する機能演算部選択部と、を有するように構成されている。
【0006】
上記構成によれば、制御部で用いるクロックとして複数のクロックを有している場合であっても、それぞれの場合で用いるクロックの周波数に適した機能演算部を動作させることができるように、複数の機能演算部のなかから動作させる機能演算部が選択される。この場合、制御部では、装置に所望の機能を発揮させるように制御部で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を、機能演算部を選択するといった機能演算部選択部の機能を通じて実現できる。
【0007】
上記制御装置において、前記複数のクロックは、第1クロックと、第2クロックとを含み、前記制御部は、前記クロック監視部の監視結果に基づいて、前記制御部が用いる前記クロックとして複数のクロックのうちのいずれかを設定するクロック設定部と、をさらに有し、前記クロック設定部は、前記クロック監視部の監視結果として、前記第1クロックが異常でない場合に前記第1クロックをメインクロックとして前記制御部が用いるように設定する一方、前記クロック監視部の監視結果として、前記第1クロックが異常である場合に前記第2クロックをバックアップクロックとして前記制御部が用いるように設定するように構成されていることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、メインクロックが異常であるか否かに応じてメインクロックと、バックアップクロックとのいずれを制御部で用いるのか設定可能であることで、制御部で用いるクロックについての冗長化を実現できる。このように制御部で用いるクロックについての冗長化を図るにしても、メインクロックが異常であるか否かに関係なく、それぞれの場合で用いるクロックの周波数に適した機能演算部を動作させることができる。つまり、制御部は、メインクロックが異常であるか否かに関係なく、それぞれの場合で装置に所望の機能を発揮させられる。
【0009】
上記制御装置において、前記制御部は、前記制御部に対して外部に設けられた発振器から入力されるクロックに基づき前記メインクロックを生成するメインクロック生成部と、前記制御部に対して内部に設けられた発振回路から入力されるクロックに基づき前記バックアップクロックを生成するバックアップクロック生成部と、をさらに有するように構成されていることが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、バックアップクロックについては、例えば、一般的に中央処理装置と組み合わせてマイコンの内部に設けられた発振回路を流用できる。この場合、制御装置にバックアップクロックの構成を追加するための変更規模が抑えられる。
【0011】
ここで、バックアップクロックについては、上述のように、制御部に対して内部に設けられた発振回路から入力されるクロックに基づき生成するように構成する場合、発振回路が発熱して制御装置の機能の低下に繋がることが懸念される。
【0012】
そこで、上記制御装置において、前記バックアップクロックが有する周波数は、前記メインクロックが有する周波数と比較して低く設定されていることが好ましい。
上記構成によれば、バックアップクロックが有する周波数については、あくまでメインクロックの機能の失陥をバックアップする位置付けであることを考慮すれば、メインクロックが有する周波数と比較して低く設定できる。この場合、制御部に対して内部に設けられた発振回路から入力されるクロックに基づきバックアップクロックを生成するとして、発振回路が発熱するにしてもその程度が比較的に小さくなり、制御装置の機能の低下が抑えられる。
【0013】
上記制御装置において、前記装置は、車両に搭載されて当該車両に設けられたステアリングホイール及び転舵輪の少なくともいずれかを動作させるべく機能する操舵装置であり、前記制御部は、前記操舵装置の動作を制御するべく当該操舵装置に設けられたモータの動作を制御するように構成されていることが好ましい。
【0014】
上記構成のように、上述の制御装置を採用した操舵装置では、操舵装置に所望の機能を発揮させるように制御部で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を実現できる。これは、操舵装置の商品性の向上を図るのに効果的である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の制御装置によれば、装置に所望の機能を発揮させるように制御部で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の電動パワーステアリング装置の概略構成図。
図2】第1実施形態の操舵制御装置の概略構成を示すブロック図。
図3】第1実施形態の機能演算部の機能を示すブロック図。
図4】第1実施形態の第1機能演算部について第1-1周辺機能部の機能を示すブロック図。
図5】第1実施形態の第2機能演算部について第2-1周辺機能部の機能を示すブロック図。
図6】第1実施形態の第1機能演算部について第1-1周辺機能部の操舵制御機能を示すブロック図。
図7】第2実施形態の第2機能演算部について第2-1周辺機能部の操舵制御機能を示すブロック図。
図8】第3実施形態の第1機能演算部について第1-1周辺機能部の操舵制御機能を示すブロック図。
図9】第3実施形態の第2機能演算部について第2-1周辺機能部の操舵制御機能を示すブロック図。
図10】第3実施形態の第1機能演算部について第1-1周辺機能部の機能を示すブロック図。
図11】変形例の機能演算部の機能を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
以下、制御装置を電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)に適用した第1実施形態を図面に従って説明する。
【0018】
図1に示すように、EPS1は、運転者のステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪15を転舵させる操舵機構2と、運転者のステアリング操作を補助するアシスト機構3と、アシスト機構3を制御する制御装置としての操舵制御装置30とを備えている。
【0019】
操舵機構2は、ステアリングホイール10と、ステアリングホイール10と固定されたステアリング軸11とを備えている。ステアリング軸11は、ステアリングホイール10と一体回転する。ステアリング軸11は、ステアリングホイール10と連結されたコラム軸11aと、コラム軸11aの下端部に連結された中間軸11bと、中間軸11bの下端部に連結されたピニオン軸11cとを有している。ピニオン軸11cの下端部は、ラックアンドピニオン機構13を介してラック軸12に連結されている。なお、ラック軸12は、ラックハウジング16に支持されている。ラック軸12の両端には、タイロッド14を介して、左右の転舵輪15が連結されている。したがって、ステアリングホイール10、すなわちステアリング軸11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構13を介してラック軸12の軸方向の往復直線運動に変換される。ラック軸12の往復直線運動は、ラック軸12の両端にそれぞれ連結されたタイロッド14を介して左右の転舵輪15にそれぞれ伝達されることにより、転舵輪15の転舵角が変化し、車両の進行方向が変更される。
【0020】
ラック軸12の周囲には、アシスト機構3を構成する要素として、操舵機構2に対して付与するアシスト力の発生源であるモータ20が設けられている。例えば、モータ20は、U、V、W相の三相の駆動電力に基づいて回転する三相ブラシレスモータである。モータ20は、ラックハウジング16に対してその外部から取り付けられている。また、ラックハウジング16の内部には、アシスト機構3を構成する要素として、ラック軸12の周囲に一体的に取り付けられたボールねじ機構21と、モータ20の回転軸20aの回転力をボールねじ機構21に伝達するベルト式減速機構22とが設けられている。モータ20の回転軸20aの回転力は、ベルト式減速機構22及びボールねじ機構21を介して、ラック軸12を軸方向に往復直線運動させる力に変換される。このラック軸12に付与される軸方向の力がアシスト力となり、転舵輪15の転舵角を変化させる。
【0021】
操舵制御装置30には、車両に設けられた各種のセンサが接続されている。操舵制御装置30は、各種センサの検出信号に基づいてモータ20を制御する。各種センサとしては、例えばトルクセンサ40と、回転角センサ41と、車速センサ42とが設けられている。トルクセンサ40は、ピニオン軸11cに設けられている。トルクセンサ40は、運転者のステアリング操作に伴いステアリング軸11に付与される操舵トルクThを検出する。トルクセンサ40は、ピニオン軸11cの途中に設けられたトーションバーの捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。回転角センサ41は、モータ20に設けられている。回転角センサ41は、モータ20の回転軸20aの回転角θを360度の範囲内の相対角で検出する。車速センサ42は、車両の走行速度を示す情報として設定される車速値Vを検出する。
【0022】
操舵制御装置30には、CAN等の車載ネットワーク50を介して自動運転制御装置60が接続されている。自動運転制御装置60は、操舵制御装置30とは別に車両に設けられている。自動運転制御装置60は、車両の快適性をより向上させるための様々な運転支援あるいは運転を代替する自動運転機能を発揮するべく操舵機構2、すなわちEPS1の動作を制御するものである。自動運転制御装置60は、その時々の車両の状態に基づき最適な制御方法を求める。自動運転制御装置60は、求められる制御方法に応じて操舵制御装置30を含む各種の車載制御装置に対して個別の制御を指令する。自動運転制御装置60は、自動運転機能を車両の快適性の高さの異なる複数段階に分類し、段階に応じた制御を指令する。
【0023】
本実施形態において、自動運転機能は、例えば、運転者によるステアリング操作を必要とするなかで運転支援をする快適性が低い低段階、特定の場所での運転を代替する快適性が中程度の中段階、場所に関係なく運転を代替する快適性が高程度の高段階の3段階に分類されている。低段階の自動運転機能は、例えば、車両の車線逸脱を防止する機能である。中段階の自動運転機能は、例えば、高速道路に限り運転を代替する機能である。高段階の自動運転機能は、例えば、高速道路等、道路に関係なく運転を代替する機能である。
【0024】
そして、自動運転制御装置60は、段階に応じた自動運転機能を実現するための制御量として角度で定義される自動運転制御量θxを生成する。自動運転制御量θxは、いずれの段階に応じた自動運転機能を実現するのかについての情報も併せ持つものである。自動運転制御装置60には、車両の状態を把握するための、図示しないが、例えば、車速センサ42及び車線認識用のカメラを含む各種の検出装置が接続されている。自動運転制御装置60では、上記検出装置を通じて検出された車両の状態に基づいて、実現する段階に応じた自動運転機能についての角度の次元を有する値として自動運転制御量θxが演算される。こうして得られた自動運転制御量θxは、操舵制御装置30に出力される。
【0025】
次に、操舵制御装置30の電気的構成について説明する。
図2に示すように、操舵制御装置30は、外部発振子71と、制御部72と、電流センサ73と、駆動回路74とを有している。
【0026】
外部発振子71としては、例えば水晶素子等が採用されている。外部発振子71は、操舵制御装置30の構成の一部として、制御部72とは別に設けられている。外部発振子71は、基本周波数のクロックCLaを生成するクロック源である。
【0027】
制御部72は、図示しない中央処理装置(以下、「CPU」という。)やメモリを備えた、所謂、マイクロコントローラである。制御部72では、所定の演算周期ごとにメモリに記憶されたプログラムをCPUが実行することにより、各種の処理が実行される。制御部72には、クロックCLaと、操舵トルクThと、回転角θと、車速値Vと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとが入力される。実電流値Iは、駆動回路74とモータ20との間の各相の給電線に設けられている電流センサ73により検出される。なお、図2では、説明の便宜上、各相の給電線及び各相の電流センサを1つにまとめて図示している。制御部72は、クロックCLaと、操舵トルクThと、回転角θと、車速値Vと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとに基づきモータ制御信号Smを演算する。なお、制御部72は、モータ制御信号Smを演算する際、内部的に実行する後述の各種の演算処理の結果も合わせて用いる。
【0028】
駆動回路74には、複数のスイッチング素子を有する周知のPWMインバータが採用されている。駆動回路74は、モータ制御信号Smに応じて各スイッチング素子がオンオフして、モータ20の各相のモータコイルへの通電パターンが切り替わることにより、3相の駆動電力をモータ20に出力する。モータ制御信号Smは、それぞれ各スイッチング素子のオンオフ状態を規定するゲートオンオフ信号となっている。
【0029】
次に、制御部72の構成について詳しく説明する。
制御部72は、メインクロック生成部81と、内部発振回路82と、バックアップクロック生成部83と、クロック監視部84と、クロック設定部85と、分周器86と、機能演算部選択部87と、機能演算部88とを有している。
【0030】
メインクロック生成部81には、クロックCLaが入力される。メインクロック生成部81は、基本周波数のクロックCLaを所定の倍数で逓倍することにより、クロックCLaの周波数を逓倍した周波数を有するメインクロックCL1を生成する。メインクロック生成部81は、クロックCLaを所定の倍数で逓倍する機能を有する、所謂、位相同期回路である。こうして得られたメインクロックCL1は、クロック監視部84及びクロック設定部85に出力される。本実施形態において、メインクロックCL1は第1クロックに相当する。
【0031】
内部発振回路82は、制御部72の構成の一部として、外部発振子71とは別に設けられている。内部発振回路82は、基本周波数のクロックCLbを生成するクロック源である。内部発振回路82が生成するクロックCLbが有する周波数は、外部発振子71が生成するクロックCLaが有する周波数と比較して低く設定されている。内部発振回路82としては、例えば、抵抗及びコンデンサにより構成されたRC発振回路が採用される。
【0032】
バックアップクロック生成部83には、クロックCLbが入力される。バックアップクロック生成部83は、基本周波数のクロックCLbを所定の倍数で逓倍することにより、クロックCLbを逓倍した周波数を有するバックアップクロックCL2を生成する。つまり、バックアップクロックCL2が有する周波数は、メインクロックCL1が有する周波数と比較して低く設定されている。バックアップクロック生成部83は、メインクロック生成部81と同様の機能を有する、所謂、位相同期回路である。こうして得られたバックアップクロックCL2は、クロック設定部85に出力される。本実施形態において、バックアップクロックCL2は第2クロックに相当する。
【0033】
クロック監視部84は、メインクロックCL1の状態を監視する。クロック監視部84は、外部発振子71が故障したり、外部発振子71が動作するのに必要な電力が不足したりする等して、メインクロックCL1が正しく供給されないクロック異常であるか否かのクロックの状態を監視する。クロック監視部84は、メインクロックCL1が途切れたり、メインクロックCL1の周波数が異常値になったりする場合にクロック異常であることを検出する。
【0034】
そして、クロック監視部84は、クロック異常を検出する場合、クロック異常を検出したことを示す情報として、エラーフラグF_errを生成する。こうして得られたエラーフラグF_errは、クロック設定部85及び機能演算部選択部87に出力される。一方、クロック監視部84は、クロック異常を検出しない場合、エラーフラグF_errを生成しない。つまり、本実施形態では、クロック監視部84がエラーフラグF_errを生成しない場合、クロック異常が検出されていないことを示す。
【0035】
クロック設定部85には、メインクロックCL1と、バックアップクロックCL2と、エラーフラグF_errとが入力される。メインクロックCL1はクロック設定部85の第1入力N1に入力されるとともに、バックアップクロックCL2はクロック設定部85の第2入力N2に入力される。クロック設定部85は、エラーフラグF_errが入力されていない場合、第1入力N1に入力されるメインクロックCL1を、制御部72が各種センサから検出信号を入力する等、各種の演算処理を実行する演算タイミングを規定するクロックとして用いるように設定する。この場合、クロック設定部85は、分周器86を介して機能演算部88にメインクロックCL1を出力する出力状態を設定する。一方、クロック設定部85は、エラーフラグF_errが入力される場合、第2入力N2に入力されるバックアップクロックCL2を、制御部72が各種センサから検出信号を入力する等、各種の演算処理を実行する演算タイミングを規定するクロックとして用いるように設定する。この場合、クロック設定部85は、分周器86を介して機能演算部88にバックアップクロックCL2を出力する出力状態を設定する。なお、クロック監視部84は、例えば、クロック異常を検出しない場合、クロック異常を検出していないことを示す情報として、正常フラグを生成してクロック設定部85に出力するようにしてもよい。この場合、クロック設定部85は、正常フラグが入力されている間、第1入力N1に入力されるメインクロックCL1を機能演算部88に出力する出力状態を設定するようにしてもよい。
【0036】
こうして適切な値として選択されるクロックは、クロック異常が検出されていない間、外部発振子71に基づき生成されたメインクロックCL1が機能演算部88に出力される。また、適切な値として選択されるクロックは、クロック異常が検出される間、外部発振子71に基づき生成されたメインクロックCL1ではなく、内部発振回路82に基づき生成されたバックアップクロックCL2が機能演算部88に出力される。
【0037】
つまり、制御部72は、クロック異常が検出されない、すなわちメインクロックCL1を正しく供給できる間、外部発振子71を基にしたメインクロックCL1を用いて、各種センサから検出信号を入力する等、各種の演算処理を実行する演算タイミングを規定する通常制御を実行する。一方、制御部72は、クロック異常が検出される、すなわちメインクロックCL1を正しく供給できない間、内部発振回路82を基にしたバックアップクロックCL2を用いて、各種センサから検出信号を入力する等、各種の演算処理を実行する演算タイミングを規定するバックアップ制御を実行する。
【0038】
なお、分周器86は、クロック設定部85を通じて得られるクロックを所定の分周比で分周したクロックを機能演算部88に出力する。本実施形態では、例えば、分周器86を削除して、クロック設定部85を通じて得られるクロックをそのまま機能演算部88に出力するようにしてもよい。
【0039】
機能演算部選択部87には、エラーフラグF_errが入力される。機能演算部選択部87は、エラーフラグF_errが入力されていない場合、制御部72がメインクロックCL1を用いた通常制御を実行することを示す情報として、通常制御フラグF_f1を生成する。一方、機能演算部選択部87は、エラーフラグF_errが入力されている場合、制御部72がバックアップクロックCL2を用いたバックアップ制御を実行することを示す情報として、バックアップ制御フラグF_f2を生成する。こうして得られた各制御フラグF_f1,F_f2は、機能演算部88に出力される。つまり、本実施形態において、機能演算部選択部87は、通常制御フラグF_f1を生成する場合、通常制御及びバックアップ制御のうちの、メインクロックCL1を用いた通常制御を実行するように機能演算部88の機能を選択することを示す。また、機能演算部選択部87は、バックアップ制御フラグF_f2を生成する場合、通常制御及びバックアップ制御のうちの、バックアップクロックCL2を用いたバックアップ制御を実行するように機能演算部88の機能を選択することを示す。
【0040】
機能演算部88には、クロック設定部85を通じて得られる各クロックCL1,CL2と、機能演算部選択部87を通じて得られる各制御フラグF_f1,F_f2と、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとが入力される。
【0041】
ここで、機能演算部88の機能について詳しく説明する。
図3に示すように、機能演算部88は、第1機能演算部89と、第2機能演算部90とを有している。
【0042】
第1機能演算部89は、例えば、第1-1周辺機能部891、第1-2周辺機能部892、第1-3周辺機能部893、・・・第1-N周辺機能部89nを含む、図3中でn個等の複数の機能を有している。なお、各周辺機能部891~89nは、各種の機能を実現するべく構築されたプログラムのことである。つまり、第1機能演算部89は、プログラムとして、各周辺機能部891~89nのプログラムを実行するように構築されている。これは、第2機能演算部90についても同様であり、各周辺機能部891~89nに対応する機能として、例えば、第2-1周辺機能部901、第2-2周辺機能部902、第2-3周辺機能部903、・・・第2-N周辺機能部90nを含む、図3中でn個等の複数の機能を有している。
【0043】
第1機能演算部89は、通常制御を実行するべく動作するように機能設計されている。つまり、第1機能演算部89において、各周辺機能部891~89nは、メインクロックCL1が有する周波数で動作することでEPS1に対して所望の機能を発揮させるべく動作を制御するために必要な情報を演算する動作が可能に機能設計されている。
【0044】
第2機能演算部90は、バックアップ制御を実行するべく動作するように機能設計されている。つまり、第2機能演算部90において、各周辺機能部901~90nは、バックアップクロックCL2が有する周波数で動作することでEPS1に対して所望の機能を発揮させるべく動作を制御するために必要な情報を演算する動作が可能に機能設計されている。
【0045】
そして、第1機能演算部89は、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いるなかで、第2機能演算部90の動作と比較して単位時間あたりでより多くの処理を実行し、各周辺機能部891~89nの機能を通じてより高性能な制御として通常制御を実行可能に機能設計されている。
【0046】
例えば、第1-1周辺機能部891は、EPS1を動作させるために必要な情報を演算するための各種の演算処理を実行する機能を実現するものである。第1-2周辺機能部892は、車載ネットワーク50との間で各種の情報を通信するための通信処理を実行する機能を実現するものである。第1-3周辺機能部893は、例えば、モータ制御信号Smの演算及び各スイッチング素子がオンオフするタイミングの基となるタイマのカウンタを管理するタイマ処理を実行する機能を実現するものである。
【0047】
そして、機能演算部88には、各制御フラグF_f1,F_f2のうちのいずれかが入力されるとともに、各クロックCL1,CL2のうちのいずれかが入力される。
具体的には、第1機能演算部89には、各制御フラグF_f1,F_f2のうちの通常制御フラグF_f1が入力される。第1機能演算部89は、通常制御フラグF_f1が入力される場合、各種の処理を実行するように動作する。この場合、クロック設定部85は、メインクロックCL1を出力する出力状態を設定している。つまり、第1機能演算部89には、クロック設定部85を通じて得られる各クロックCL1,CL2のうちのメインクロックCL1が入力されるとともに、メインクロックCL1に基づき動作するなかで、例えば、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとを含む各種の情報が入力される。メインクロックCL1は、各周辺機能部891~89nにそれぞれ入力されることで、各種の機能の実現に用いられる。操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとは、例えば、第1-1周辺機能部891に入力されることで、操舵制御機能の実現に用いられる。なお、第1機能演算部89は、通常制御フラグF_f1が入力されない場合、各種の処理を実行しない、すなわち停止する。
【0048】
一方、第2機能演算部90には、各制御フラグF_f1,F_f2のうちのバックアップ制御フラグF_f2が入力される。第2機能演算部90は、バックアップ制御フラグF_f2が入力される場合、各種の処理を実行するように動作する。この場合、クロック設定部85は、バックアップクロックCL2を出力する出力状態を設定している。つまり、第2機能演算部90には、クロック設定部85を通じて得られる各クロックCL1,CL2のうちのバックアップクロックCL2が入力されるとともに、バックアップクロックCL2に基づき動作するなかで、例えば、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとを含む各種の情報が入力される。バックアップクロックCL2は、各周辺機能部901~90nにそれぞれ入力されることで、各種の機能の実現に用いられる。操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとは、例えば、第2-1周辺機能部901に入力されることで、操舵制御機能の実現に用いられる。なお、第2機能演算部90は、バックアップ制御フラグF_f2が入力されない場合、各種の処理を実行しない、すなわち停止する。
【0049】
このように、機能演算部88は、通常制御及びバックアップ制御のうちのいずれかの制御、すなわち第1機能演算部89及び第2機能演算部90のうちのいずれかの機能を通じて、モータ制御信号Smを演算したり、車載ネットワーク50に対して情報を出力したりする。こうして得られたモータ制御信号Smは、駆動回路74に出力される。
【0050】
次に、第1-1周辺機能部891及び第2-1周辺機能部901の機能について詳しく説明する。
図4及び図5に示すように、各周辺機能部891,901は、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、実電流値Iと、自動運転制御量θxとに基づいて、モータ制御信号Smを演算する操舵制御機能を実現する。
【0051】
例えば、図6に示すように、第1-1周辺機能部891は、基本制御量演算部101と、目標角度演算部102と、機能制限部103と、角度演算部104と、角度フィードバック制御部(以下、「角度F/B制御部」という。)105と、通電制御部106とを有している。
【0052】
基本制御量演算部101には、操舵トルクThと、車速値Vとが入力される。基本制御量演算部101は、操舵トルクThと、車速値Vとに基づいて、基本制御量Ta1*を演算する。基本制御量演算部101は、操舵トルクThと基本制御量Ta1*との関係を車速値Vに応じて規定する三次元マップを使用して、基本制御量Ta1*を演算する。基本制御量演算部101は、操舵トルクThの変化に対する基本制御量Ta1*の変化率である接線の傾きで表されるアシスト勾配を考慮して、操舵トルクThの絶対値が大きいほど、また車速値Vが小さいほど、より大きな絶対値となる基本制御量Ta1*を演算する。こうして得られた基本制御量Ta1*は、目標角度演算部102及び加算器107に出力される。
【0053】
目標角度演算部102には、基本制御量Ta1*と、操舵トルクThとが入力される。目標角度演算部102は、基本制御量Ta1*と操舵トルクThとを加算して得られる値を基本駆動トルクとするとき、基本駆動トルクに基づいて理想的な転舵輪15の転舵角に対応する状態変数であるピニオン角θpを定める理想モデルを有している。理想モデルは、基本駆動トルクに応じた理想的な転舵角に対応するピニオン角θpを予め実験等によりモデル化したものである。目標角度演算部102は、基本制御量Ta1*と操舵トルクThとを加算して基本駆動トルクを求め、この求められた基本駆動トルクから理想モデルに基づいて転舵角、すなわちピニオン角θpの目標値として目標ピニオン角θp*´を演算する。なお、目標角度演算部102には、さらに車速値Vが入力される。そして、目標角度演算部102は、目標ピニオン角θp*´を演算する際に車速値Vを加味する。こうして得られた目標ピニオン角θp*´は、機能制限部103に出力される。
【0054】
機能制限部103には、目標ピニオン角θp*´と、自動運転制御量θxとが入力される。機能制限部103は、目標ピニオン角θp*´と自動運転制御量θxとを加算して得られる値を最終的な目標ピニオン角θp*として演算する。こうして最終的に得られた目標ピニオン角θp*は、角度F/B制御部105に出力される。
【0055】
角度演算部104には、回転角θが入力される。角度演算部104は、回転角θに基づいて、例えば、車両が直進しているときのラック軸12の位置であるラック中立位置からのモータ20の回転数をカウントすることにより、360°を超える範囲を含む積算角に換算する。角度演算部104は、換算して得られた積算角に、ベルト式減速機構22の回転速度比と、ボールねじ機構21のリードと、ラックアンドピニオン機構13の回転速度比とに基づく換算係数を乗算することで、ピニオン軸11cの実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。なお、ピニオン角θpは、ラック中立位置よりも、例えば右側の角度である場合に正、左側の角度である場合に負とする。モータ20と、ピニオン軸11cとは、ベルト式減速機構22と、ボールねじ機構21と、ラックアンドピニオン機構13とを介して連動する。このため、モータ20の回転角θと、ピニオン角θpとの間には相関関係がある。この相関関係を利用してモータ20の回転角θからピニオン角θpを求めることができる。こうして得られたピニオン角θpは、角度F/B制御部105に出力される。
【0056】
角度F/B制御部105には、目標ピニオン角θp*と、ピニオン角θpとが入力される。角度F/B制御部105は、ピニオン角θpが目標ピニオン角θp*に追従するように、ピニオン角のフィードバック制御としてPID制御を行う。すなわち、角度F/B制御部105は、目標ピニオン角θp*とピニオン角θpとの偏差を求め、当該偏差を無くすように角度制御量Ta2*を演算する。こうして得られる角度制御量Ta2*は、基本制御量Ta1*に加算して加算器107を通じて得られるトルク制御量T*として通電制御部106に出力される。角度F/B制御部105は、操舵制御機能として、トルク制御量T*に角度制御量Ta2*を反映させることで微小な振動を抑える振動抑制機能を有している。
【0057】
通電制御部106には、トルク制御量T*と、実電流値Iと、回転角θとが入力される。トルク制御量T*は、ステアリングホイール10に付与すべきモータ20のトルクを示す値である。通電制御部106は、トルク制御量T*と、回転角θとに基づいて、モータ20へ供給すべき電流の目標値である電流目標値を演算する。通電制御部106は、電流目標値と実電流値Iとの偏差を演算し、当該偏差を無くすようにモータ20に対する給電を制御するためのモータ制御信号Smを演算する。こうして得られたモータ制御信号Smは、駆動回路74に出力される。これにより、モータ20は、トルク制御量T*に応じたトルクを発生する。
【0058】
本実施形態において、第2-1周辺機能部901は、第1-1周辺機能部891と同様、EPS1を動作させるために必要な情報を演算するための各種の演算処理を実行する機能を実現するべく、第1-1周辺機能部891に対応する構成を有している。すなわち、第2-1周辺機能部901は、基本制御量演算部101と、目標角度演算部102と、機能制限部103と、角度演算部104と、角度F/B制御部105と、通電制御部106とに対応する構成を有している。つまり、図6中に括弧で示すように、第2-1周辺機能部901は、基本制御量演算部201と、目標角度演算部202と、機能制限部203と、角度演算部204と、角度F/B制御部205と、通電制御部206と、加算器207とを有している。
【0059】
ただし、通常制御を実行するように機能する第1-1周辺機能部891とバックアップ制御を実行するように機能する第2-1周辺機能部901との間では、機能制限部103と機能制限部203との機能が異なるように構成されている。
【0060】
具体的には、図4に示すように、第1-1周辺機能部891が有する機能制限部103は、自動運転制御量θxを入力する場合、特定できる自動運転機能がいずれの段階であるかに関係なく、入力した自動運転制御量θxを目標ピニオン角θp*に反映させるように機能する。これにより、第1-1周辺機能部891は、機能制限部103の機能を通じて、自動運転制御装置60の指示に従っていずれの段階の自動運転機能についても制限することなく実現できるように機能する。つまり、機能演算部88は、操舵制御機能として通常制御を実行するなかで、いずれの段階の自動運転機能についても実現できるように動作する。
【0061】
これに対して、図5に示すように、第2-1周辺機能部901が有する機能制限部203は、自動運転制御量θxを入力する場合、特定できる自動運転機能がいずれの段階であるかに応じて、入力した自動運転制御量θxを目標ピニオン角θp*に反映させるか否かを判断するように機能する。この場合、機能制限部203は、特定できる自動運転機能が低段階であれば、入力した自動運転制御量θxを目標ピニオン角θp*に反映させるように機能する。一方、機能制限部203は、特定できる自動運転機能が中段階及び高段階であれば、入力した自動運転制御量θxを、例えば、当該自動運転制御量θxを無効化する等して、目標ピニオン角θp*に反映させないように機能する。これにより、第2-1周辺機能部901は、機能制限部203の機能を通じて、自動運転制御装置60の指示に従って低段階の自動運転機能についてのみに制限して実現できるように機能する。つまり、機能演算部88は、操舵制御機能としてバックアップ制御を実行するなかで、低段階の自動運転機能についてのみ制限して実現できるように動作する。なお、自動運転制御量θxを目標ピニオン角θp*に反映させるか否かの機能は、特定できる自動運転機能が中段階及び高段階であれば、第2機能演算部90又は第2-1周辺機能部901がそもそも車載ネットワーク50を介しての自動運転制御量θxの入力自体を無効化するようにしてもよい。
【0062】
以下、第1実施形態の作用を説明する。
本実施形態によれば、制御部72で用いるクロックとしてメインクロックCL1とバックアップクロックCL2とを有している場合であっても、それぞれの場合で用いるクロックの周波数に適した各機能演算部89,90のいずれかを動作させることができるように、機能演算部88の機能として各機能演算部89,90のいずれかが選択される。
【0063】
すなわち、機能演算部88において、機能演算部選択部87は、メインクロックCL1を用いて通常制御を実行する場合、メインクロックCL1の周波数に適して機能設計された第1機能演算部89を動作させるように選択するべく通常制御フラグF_f1を生成する。この場合、第1機能演算部89は、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いるなかで、第2機能演算部90と比較して単位時間あたりで実行できる処理が多くなる。このように、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いる場合、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、中段階及び高段階での自動運転機能を実現でき、EPS1に車両の快適性をより高めた機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0064】
また、機能演算部88において、機能演算部選択部87は、バックアップクロックCL2を用いてバックアップ制御を実行する場合、バックアップクロックCL2の周波数に適して機能設計された第2機能演算部90を動作させるように選択するべくバックアップ制御フラグF_f2を生成する。この場合、第2機能演算部90は、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いるなかで、第1機能演算部89と比較して単位時間あたりで実行できる処理が少なくなる。このように、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いる場合であっても、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、低段階の自動運転機能を実現でき、EPS1に車両の快適性を最低限は確保する機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0065】
以下、第1実施形態の効果を説明する。
(1-1)制御部72では、EPS1に所望の機能を発揮させるように制御部72で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を、各機能演算部89,90のいずれかを選択するといった機能演算部選択部87の機能を通じて実現できる。
【0066】
(1-2)メインクロックCL1が異常であるか否かに応じてメインクロックCL1と、バックアップクロックCL2とのいずれを制御部72で用いるのか設定可能であることで、制御部72で用いるクロックについての冗長化を実現できる。このように制御部72で用いるクロックについての冗長化を図るにしても、メインクロックCL1が異常であるか否かに関係なく、それぞれの場合で用いるクロックの周波数に適した各機能演算部89,90のいずれかを動作させることができる。つまり、制御部72は、メインクロックCL1が異常であるか否かに関係なく、それぞれの場合でEPS1に所望の機能を発揮させられる。
【0067】
(1-3)バックアップクロックCL2については、例えば、一般的にCPUと組み合わせてマイコンの内部に設けられた内部発振回路82を流用できる。この場合、操舵制御装置30にバックアップクロックCL2の構成を追加するための変更規模が抑えられる。
【0068】
(1-4)ここで、バックアップクロックCL2については、制御部72に対して内部に設けられた内部発振回路82から入力されるクロックCLbに基づき生成するように構成する場合、内部発振回路82が発熱して操舵制御装置30の機能の低下に繋がることが懸念される。
【0069】
そこで、本実施形態では、バックアップクロックCL2が有する周波数を、メインクロックCL1が有する周波数と比較して低く設定するようにしている。本実施形態において、バックアップクロックCL2が有する周波数については、あくまでメインクロックCL1の機能の失陥をバックアップする位置付けであることを考慮すれば、メインクロックCL1が有する周波数と比較して低く設定できる。この場合、制御部72に対して内部に設けられた内部発振回路82から入力されるクロックCLbに基づきバックアップクロックCL2を生成するとして、内部発振回路82が発熱するにしてもその程度が比較的に小さくなり、操舵制御装置30の機能の低下が抑えられる。
【0070】
(1-5)上述の操舵制御装置30を採用したEPS1では、EPS1に所望の機能を発揮させるように制御部72で用いるクロックの周波数の変化を考慮した設定の変更を実現できる。これは、EPS1の商品性の向上を図るのに効果的である。
【0071】
<第2実施形態>
以下、制御装置の第2実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0072】
本実施形態では、第2-1周辺機能部901について、目標角度演算部202と、角度演算部204と、角度F/B制御部205との機能、すなわちピニオン角θpを目標ピニオン角θp*にフィードバック制御するために必要な機能を削除するようにしている点が、上記第1実施形態と異なる。また、本実施形態では、第2-1周辺機能部901について、自動運転機能を削除するべく、機能制限部203を削除するようにしている点が、上記第1実施形態と異なる。
【0073】
具体的には、図7に示すように、第2-1周辺機能部901は、基本制御量演算部301と、通電制御部302とを有している。
基本制御量演算部301は、図6に示した各基本制御量演算部101,201と同様の機能を有しており、基本制御量Ta1*としてトルク制御量T*を演算する。こうして得られたトルク制御量T*は、通電制御部302に出力される。
【0074】
通電制御部302は、図6に示した通電制御部206と同様の機能を有している。通電制御部302を通じて得られたモータ制御信号Smは、駆動回路74に出力される。
つまり、第2-1周辺機能演算部901は、第1-1周辺機能演算部891が角度F/B制御部105を通じたフィードバック制御で得られる角度制御量Ta2*が反映されていないトルク制御量T*を演算することになる。この場合、第2-1周辺機能演算部901は、トルク制御量T*を演算する際に、第1-1周辺機能演算部891がフィードバック制御を実行するのに対して、フィードフォワード制御を実行することになる。
【0075】
本実施形態によれば、第1機能演算部89は、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いるなかで、第2機能演算部90と比較して単位時間あたりで実行できる処理が多くなる。このように、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いる場合、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、トルク制御量T*に角度制御量Ta2*を反映させることで微小な振動を抑える振動抑制機能を実現でき、EPS1に車両の快適性をより高めた機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0076】
また、第2機能演算部90は、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いるなかで、第1機能演算部89と比較して単位時間あたりで実行できる処理が少なくなる。このように、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いる場合であっても、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、振動抑制機能を実現することはできないもののアシスト力を付与する機能を実現でき、EPS1に車両の快適性を最低限は確保する機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0077】
こうした本実施形態によれば、上記第1実施形態に準じた作用及び効果を奏する。
<第3実施形態>
以下、制御装置の第3実施形態について説明する。なお、既に説明した実施形態と同一構成等は、同一の符号を付す等して、その重複する説明を省略する。
【0078】
本実施形態では、図8及び図9に示すように、第1-1周辺機能部891について、基本制御量Ta1*を補償するための各種補償量を演算する機能を付加するように構成されている一方、第2-1周辺機能部901について、基本制御量Ta1*を補償するための各種補償量を演算する機能を付加しないように構成されている。本実施形態において、各種補償量は、例えば、戻り補償量と、ヒステリシス補償量と、ダンピング補償量と、慣性補償量とを含んでいる。戻り補償量は、ラック中立位置に対応するステアリング軸11の操舵中立位置に戻すステアリングホイール10の戻り動作を補償するためのものである。ヒステリシス補償量は、ステアリングホイール10の動作時の摩擦によるヒステリシス特性を最適化するように補償するためのものである。ダンピング補償量は、ステアリングホイール10に生じる微振動を低減するように補償するためのものである。慣性補償量は、ステアリングホイール10の操舵し始め時の引っ掛かり感や操舵終わり時の流れ感を抑制するように補償するためのものである。各種補償量は、基本制御量Ta1*に基づき実現されるステアリングホイール10の動作が所望の特性を示すように補償するための補償量である。
【0079】
具体的には、図10に示すように、第1-1周辺機能部891は、補償量演算部111を有している。
補償量演算部111には、補償用状態変数Dが入力される。本実施形態において、補償用状態変数Dは、例えば、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θとのことである。補償量演算部111は、補償用状態変数Dに基づいて、各種補償量Td*を演算する。例えば、補償量演算部111は、補償用状態変数Dのうちの、操舵トルクThと、車速値Vと、回転角θと、当該回転角θを微分して得られる回転速度ωとに基づいて、戻り補償量を演算する。また、補償量演算部111は、補償用状態変数Dのうちの、車速値Vと、回転角θとに基づいて、ヒステリシス補償量を演算する。また、補償量演算部111は、補償用状態変数Dのうちの、車速値Vと、回転速度ωとに基づいて、ダンピング補償量を演算する。また、補償量演算部111は、補償用状態変数Dのうちの、車速値Vと、回転速度ωを微分して得られる回転加速度αとに基づいて、慣性補償量を演算する。そして、補償量演算部111は、戻り補償量、ヒステリシス補償量、ダンピング補償量、及び慣性補償量を加算して各種補償量Td*を演算する。こうして得られた各種補償量Td*は、基本制御量演算部101を通じて得られた基本制御量Ta1*´に加算されて加算器112を通じて得られる最終的な基本制御量Ta1*として目標角度演算部102及び加算器107に出力される。
【0080】
つまり、第1-1周辺機能演算部891は、補償量演算部111を通じた各種補償量Td*が反映されているトルク制御量T*を演算することになる。一方、第2-1周辺機能演算部901は、第1-1周辺機能演算部891が補償量演算部111を通じた各種補償量Td*が反映されているトルク制御量T*を演算するのに対して、各種補償量Td*が反映されていないトルク制御量T*を演算することになる。
【0081】
本実施形態によれば、第1機能演算部89は、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いるなかで、第2機能演算部90と比較して単位時間あたりで実行できる処理が多くなる。このように、バックアップクロックCL2と比較して高い周波数を有するメインクロックCL1を用いる場合、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、ステアリングホイール10の動作が所望の特性を示すように補償する補償機能を実現でき、EPS1に車両の快適性をより高めた機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0082】
また、第2機能演算部90は、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いるなかで、第1機能演算部89と比較して単位時間あたりで実行できる処理が少なくなる。このように、メインクロックCL1と比較して低い周波数を有するバックアップクロックCL2を用いる場合であっても、制御部72では、例えば、操舵制御機能として、補償機能を実現することはできないもののアシスト力を付与する機能を実現でき、EPS1に車両の快適性を最低限は確保する機能を発揮させられるように設定を変更できる。
【0083】
こうした本実施形態によれば、上記第1実施形態に準じた作用及び効果を奏する。
上記各実施形態は次のように変更してもよい。また、上記各実施形態及び以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0084】
図11に示すように、機能演算部88において、動作させる各機能演算部89,90を変更する上記各実施形態の方法に代えて、制御部72、すなわちマイコンの、例えば、タイマ処理の機能により管理される単位時間の指標である絶対時間等のコンフィグレーションである各種の設定を変更する方法を採用してもよい。例えば、機能演算部88は、上記各実施形態の第1機能演算部89と同一の機能を有するように構成されていればよい。また、機能演算部88は、上記コンフィグレーションとして、メインクロックCL1が有する周波数で動作する際のコンフィグレーションを示す第1設定と、バックアップクロックCL2が有する周波数で動作する際のコンフィグレーションを示す第2設定とを、各制御フラグF_f1,F_f2に基づき選択するように構成されていればよい。この場合、機能演算部88は、コンフィグレーションとして第1設定のもとで動作することで、メインクロックCL1が有する周波数に適した機能演算部として動作する。また、機能演算部88は、コンフィグレーションとして第2設定のもとで動作することで、バックアップクロックCL2が有する周波数に適した機能演算部として動作する。本変形例では、機能演算部88が各クロックCL1,CL2のいずれを用いて動作したとしても、例えば、同等の操舵制御機能を実行する機能を実現できる。これは、操舵制御機能に限らず、例えば、各周辺機能部892,902の車載ネットワーク50との間で各種の情報を通信するための通信処理を実行する機能等、他の機能についても同様である。その他、本変形例において、機能演算部88について、上記各実施形態と同様に各機能演算部89,90に対応する構成を有するように構成してもよい。この場合、機能演算部88において、コンフィグレーションとして第1設定のもとで第1機能演算部89が動作するとともに、コンフィグレーションとして第2設定のもとで第2機能演算部90が動作するように構成されていればよい。
【0085】
・上記各実施形態において、操舵制御装置30では、外部発振子71と、内部発振回路82とは別のクロック源を追加して設けるようにしてもよい。この場合、追加するクロック源の基本周波数は、外部発振子71又は内部発振回路82のいずれかと同一であったり、外部発振子71及び内部発振回路82のいずれとも異なっていたりしてもよい。例えば、外部発振子71と追加するクロック源との基本周波数を同一にする場合、これらクロック源が生成するクロックがメインクロック生成部81に入力されるように構成し、クロックの状態に応じて選択状態を切り替えられるように構成すればよい。また、外部発振子71、内部発振回路82、及び追加するクロック源の基本周波数のいずれも異ならせる場合、制御部72では、各クロック生成部81,83に対応し、追加するクロック源が生成するクロックが入力される各クロック生成部81,83に対応する構成を追加すればよい。
【0086】
・上記各実施形態において、機能演算部88は、第1機能演算部89と第2機能演算部90とを含む3つ以上の機能演算部を有するように構成してもよい。この場合、機能演算部の数に応じて用いるクロックの数を3つ以上としてもよいし、用いるクロックの数を機能演算部の数よりも少なくしてもよい。なお、用いるクロックの数が機能演算部の数よりも少ない場合、1つのクロックに応じて機能演算部が冗長的に設けられることになる。
【0087】
・上記各実施形態において、バックアップクロックCL2は、内部発振回路82が生成するクロックCLbの代わりに、外部発振子71とは別の外部発振子が生成するクロックに基づき生成されるようにしてもよい。この場合、上記各実施形態のように内部発振回路82の発熱を考慮する必要が無くなり、バックアップクロックCL2が有する周波数を、メインクロックCL1が有する周波数に近付けたり高く設定したりできる。また、各機能演算部89,90は、各クロックCL1,CL2が有する周波数に適して機能設計されるように構成したり、選択される機能演算部の位置付けを入れ替えるように構成したりすればよい。また、バックアップクロックCL2が有する周波数を、メインクロックCL1が有する周波数と比較して高く設定する場合、第2機能演算部90では、第1機能演算部89が実行する制御によりEPS1にて実現される機能の快適性をさらに高められるような制御を実行できるように構成することができる。
【0088】
・上記各実施形態では、内部発振回路82として、例えば、抵抗、コイル、及びコンデンサにより構成されたRLC発振回路を採用してもよいし、コイル及びコンデンサにより構成されたLC発振回路を採用してもよい。
【0089】
・上記各実施形態において、クロック監視部84は、メインクロックCL1の状態に加えて、バックアップクロックCL2の状態についてもクロック異常であるか否かを監視することもできる。この場合、クロック監視部84は、例えば、メインクロックCL1についてのクロック異常を検出すると、バックアップクロックCL2についてのクロック異常を検出しないことを条件として、エラーフラグF_errを生成するように構成できる。なお、クロック監視部84は、メインクロックCL1についてのクロック異常を検出すると、バックアップクロックCL2についてのクロック異常を検出することを条件として、制御部72、すなわち操舵制御装置30の動作を停止させることを示す情報として、フェールフラグを生成するように構成することもできる。こうしたフェールフラグが生成された後、機能演算部88では、例えば、操舵制御装置30の動作を停止させるべく所定のフェール処理を実行するように構成すればよい。
【0090】
・上記各実施形態において、各クロックCL1,CL2のいずれを制御部72で用いるのかクロック設定部85が設定する際の条件は、例えば、単位時間あたりで実行できる処理の多少である機能演算部88として必要な性能に応じることを条件とする等、適宜変更可能である。こうした条件として、上記第1実施形態であれば自動運転機能の段階を条件とすることができる。つまり、クロック設定部85は、自動運転機能が低段階の際にバックアップクロックCL2を出力する出力状態を設定することとし、自動運転機能が中段階及び高段階の際にメインクロックCL1を出力する出力状態を設定するようにすればよい。この場合、制御部72では、クロック監視部84の代わりに、自動運転制御量θxを入力として自動運転機能の段階を示す情報として、自動運転フラグを生成してクロック設定部85に対して出力する構成を追加すればよい。これは、上記第2、第3実施形態についても同様であり、上記第2実施形態であれば振動抑制機能の必要の有無を条件とし、上記第3実施形態であれば補償機能の必要の有無を条件とすることができる。
【0091】
・上記各実施形態において、各機能演算部89,90は、対応する各制御フラグF_f1,F_f2が入力されない場合、適したクロックを用いることはできないが各種の処理を実行して動作することもできる。この場合、各制御フラグF_f1,F_f2が入力されない各機能演算部89,90では、モータ制御信号Smを駆動回路74に出力しないようにするための構成を追加すればよい。
【0092】
・上記第1実施形態において、第2-1周辺機能部901では、特定できる自動運転機能が中段階であるときに自動運転機能を実現できるように構成することもできる。これは、内部発振回路82が生成する基本周波数を、中段階の自動運転機能を実現するのに支障のない周波数まで高めることで実現することができる。
【0093】
・上記第1実施形態において、第1-1周辺機能部891では、機能制限部103を削除してもよい。また、第2-1周辺機能部901では、例えば、自動運転機能を削除するのであれば、機能制限部203を削除できる。
【0094】
・上記第1実施形態において、自動運転制御装置60は、角度での次元を有する値として自動運転制御量θxを生成したが、これに限らず、例えば、トルクの次元を有する自動運転制御量を生成してもよい。この場合、トルクの次元を有する自動運転制御量は、角度の次元を有する値に変換された後、各機能制限部103,203にて、目標ピニオン角θp*´から差し引かれて得られる最終的な目標ピニオン角θp*として各角度F/B制御部105,205に出力されるようにすればよい。これは、上記第1実施形態以外の実施形態についても同様である。
【0095】
・上記第1実施形態において、自動運転制御量θxを演算する機能は、操舵制御装置30、すなわち制御部72であったり、各機能演算部89,90であったりの機能として設定してもよい。
【0096】
・上記第2実施形態において、第1-1周辺機能部891では、自動運転機能を削除してもよい。
・上記第2実施形態において、第2-1周辺機能部901では、自動運転機能を有するように構成してもよい。この場合、例えば、第2-1周辺機能部901では、自動運転制御量θxをトルクの次元に換算して得られる制御量を基本制御量Ta1*に加算する構成を追加すればよい。ただし、第2-1周辺機能部901では、バックアップクロックCL2を用いることに変わりはないので、自動運転機能については、第1実施形態と同様、低段階の自動運転機能のみの実現に制限することが好ましい。
【0097】
・上記第2実施形態において、各周辺機能部891,901の機能の違いは、例えば、モータ制御信号Smを演算するために用いるパラメータの多少を異ならせることとする等、適宜変更可能である。こうした機能の違いとして、第2-1周辺機能部901の基本制御量演算部201で車速値Vをパラメータとして用いないようにすることができる。
【0098】
・上記第2実施形態では、各周辺機能部891,901について、これらが互いに対応する構成を有するように、第2-1周辺機能部901がフィードバック制御を実行する構成を有していてもよい。この場合、第2-1周辺機能部901では、上記第1実施形態で自動運転機能を制限することに代えて、フィードバック制御を実行することを制限するように機能する機能制限部を設けるようにすればよい。
【0099】
・上記第3実施形態において、各周辺機能部891,901では、自動運転機能を削除してもよいし、各周辺機能部891,901のうちの第2-1周辺機能部901では、自動運転機能を削除してもよい。
【0100】
・上記第3実施形態では、各周辺機能部891,901について、これらが互いに対応する構成を有するように、第2-1周辺機能部901が補償機能を有するように構成してもよい。この場合、第2-1周辺機能部901では、上記第1実施形態で自動運転機能を制限することに代えて、補償機能を制限するように機能する機能制限部を設けるようにすればよい。こうした補償機能の制限としては、各種補償量の全て又は一部の補償を制限することができる。
【0101】
・上記第3実施形態において、補償量演算部111では、戻り補償量、ヒステリシス補償量、ダンピング補償量、慣性補償量の少なくともいずれかを演算する機能を有するように構成されていればよい。また、補償量演算部111では、例えば、操舵トルクThを微分して得られるトルク微分値を考慮して当該操舵トルクThを補償するためのトルク補償量等、上記第3実施形態で例示した各種補償量とは別の補償量を演算する機能を有するように構成してもよい。
【0102】
・上記各実施形態において、基本制御量演算部101,201,301は、基本制御量Ta1*を演算する際に、ステアリングホイール10の動作に関わる状態変数を少なくとも用いていればよく、車速値Vを用いなくてもよいし、他の要素を組み合わせて用いてもよい。ステアリングホイール10の動作に関わる状態変数としては、上記各実施形態で例示した操舵トルクThの代わりに、ステアリングホイール10の回転角である操舵角等の他の要素を用いてもよい。
【0103】
・上記各実施形態において、モータ20は、ラック軸12の同軸上にモータ20を配置するものや、減速機を介してステアリング軸11に連結するものや、ラックアンドピニオン機構を介してラック軸12に連結するものを採用してもよい。
【0104】
・上記各実施形態において、操舵制御装置30は、ステアリングホイール10に連結される操舵部と、当該操舵部に入力される操舵に応じてラック軸12が動作することで転舵輪15を転舵させる転舵部との間の動力伝達が分離したステアバイワイヤ式の操舵装置を制御対象としてもよい。
【0105】
・制御部72は、1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又は3)それらの組み合わせ、を含む処理回路によって構成してもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわち非一時的なコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。これは、自動運転制御装置60についても同様である。
【0106】
・上記各実施形態は、操舵制御装置30の機能として実現することに限らず、例えば、エアバッグ装置の制御装置、ブレーキ装置の制御装置、無人搬送車や電気自動車における走行用駆動源となるモータの制御装置であってもよい。なお、上記の実現例としては、車両以外を搭載先とする装置の制御装置でもよい。
【符号の説明】
【0107】
1…EPS
10…ステアリングホイール
20…モータ
30…操舵制御装置
72…制御部
81…メインクロック生成部
83…バックアップクロック生成部
82…内部発振回路
84…クロック監視部
85…クロック設定部
87…機能演算部選択部
88…機能演算部
89…第1機能演算部
90…第2機能演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11