(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077904
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ゴム組成物の分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 23/2258 20180101AFI20220517BHJP
G01N 33/44 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G01N23/2258
G01N33/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020188972
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【弁理士】
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 幸雄
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA03
2G001BA07
2G001CA03
2G001EA03
2G001HA13
2G001KA01
2G001LA05
2G001NA03
2G001NA13
2G001NA17
2G001NA18
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法を提供する。
【解決手段】加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm
2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、酸素の検出強度を光学画像上に表示する工程と、酸化亜鉛の検出強度を光学画像上に表示する工程とを有する、ゴム組成物の分析方法とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、
酸素の検出強度を光学画像上に表示する工程と、
酸化亜鉛の検出強度を光学画像上に表示する工程とを有する、ゴム組成物の分析方法。
【請求項2】
加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、
硫黄の検出強度を光学画像上に表示する工程と、
硫化亜鉛の検出強度を光学画像上に表示する工程とを有する、ゴム組成物の分析方法。
【請求項3】
加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、
前記加硫ゴムに含まれる炭素に対する酸素の検出強度比を光学画像上に表示する工程と、
前記加硫ゴムに含まれる炭素に対する酸化亜鉛の検出強度比を光学画像上に表示する工程とを有する、ゴム組成物の分析方法。
【請求項4】
加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、
前記加硫ゴムに含まれる炭素に対する硫黄の検出強度比を光学画像上に表示する工程と、
前記加硫ゴムに含まれる炭素に対する硫化亜鉛の検出強度比を光学画像上に表示する工程とを有する、ゴム組成物の分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物の分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴム組成物の物性は、補強性充填材や加硫剤などの添加剤の分散性に影響を受ける。そのため、ゴム組成物中の補強性充填材や加硫剤などの添加剤の分散状態を分析する方法が求められている。
【0003】
引用文献1には、小角X線散乱法又は小角中性子散乱法により、架橋ゴムの架橋疎密を評価する方法が記載されている。
【0004】
引用文献2には、加硫系材料を含む高分子複合材料に高輝度X線を照射し、X線エネルギーを変えながら該高分子複合材料の微小領域におけるX線吸収量を測定することにより、加硫系材料の分散状態や化学状態を観察、分析できる加硫系材料分析方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6367758号公報
【特許文献2】特開2017-201252号公報
【特許文献3】特開2018-141750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、分析精度についてさらなる改善が求められており、例えば、酸素原子の分散状態を分析する場合、その酸素原子が、酸化したゴム成分由来なのか、酸化亜鉛由来なのかや、硫黄原子の分散状態を分析する場合、その硫黄原子が、ゴム成分の架橋構造由来なのか、架橋反応によって酸化亜鉛から生じた硫化亜鉛由来なのかを分析することが求められている。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法を提供することを目的とする。
【0008】
なお、引用文献3には、イメージング質量分析法による異物の混入時期判別方法が記載されているが、飲食品中に混入していた異物を分析対象としており、ゴム組成物の分析方法に関するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物の分析方法は、加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、酸素の検出強度を光学画像上に表示する工程と、酸化亜鉛の検出強度を光学画像上に表示する工程とを有するものとする。
【0010】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物の分析方法は、加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、硫黄の検出強度を光学画像上に表示する工程と、硫化亜鉛の検出強度を光学画像上に表示する工程とを有するものとする。
【0011】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物の分析方法は、加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、上記加硫ゴムに含まれる炭素に対する酸素の検出強度比を光学画像上に表示する工程と、上記加硫ゴムに含まれる炭素に対する酸化亜鉛の検出強度比を光学画像上に表示する工程とを有するものとする。
【0012】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物の分析方法は、加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析する、ゴム組成物の分析方法であって、上記加硫ゴムに含まれる炭素に対する硫黄の検出強度比を光学画像上に表示する工程と、上記加硫ゴムに含まれる炭素に対する硫化亜鉛の検出強度比を光学画像上に表示する工程とを有するものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の分析方法において用いる測定装置の模式図。
【
図2】実施例1の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する酸素の含有比率を示すイメージング画像。
【
図3】実施例1の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する酸化亜鉛の含有比率を示すイメージング画像。
【
図4】実施例2の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する酸素の含有比率を示すイメージング画像。
【
図5】実施例2の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する酸化亜鉛の含有比率を示すイメージング画像。
【
図6】実施例3の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する硫黄の含有比率を示すイメージング画像。
【
図7】実施例3の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する硫化亜鉛の含有比率を示すイメージング画像。
【
図8】実施例4の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する硫黄の含有比率を示すイメージング画像。
【
図9】実施例4の加硫ゴムサンプルにおける炭素に対する硫化亜鉛の含有比率を示すイメージング画像。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0016】
本実施形態に係るゴム組成物の分析方法は、加硫ゴムに、一次イオンビームをビームスポット0.25μm2以下で照射し、発生した二次イオンを測定することにより、ゴム組成物中に含まれる元素の分散状態を分析するものである。
【0017】
このような分析方法としては、二次イオン質量分析法(Secondary Ion Mass Spectrometry:SIMS)が知られている。特にダイナミックSIMSであることが好ましく、真空中にて化学的に活性な一次イオンの連続ビームを試料表面に照射することにより、当該表面付近の原子や化合物を二次イオンとして飛び出させ、飛び出した二次イオンを分析することにより標的元素や標的化合物の含有量を判定することができる。
【0018】
一次イオンビームに用いられるイオン種としては、酸素、セシウムなどを用いることができる。
【0019】
一次イオンビームの照射量は、特に限定されないが、30ions/cm2以上であることが好ましい。
【0020】
一次イオンビームのビームスポットは0.25μm2以下であり、好ましくは、0.1μm2以下である。ビームスポットが0.25μm2以下である場合、空間分解能が高く、従来の測定方法より高い精度で測定結果が得られる。
【0021】
質量分析は、サンプル上の所定領域内を走査することにより行うことができ、質量分析の結果得られた標的元素や標的化合物の検出強度とその測定位置を試料の光学画像上に表示することで、加硫ゴム中に含まれる元素や化合物の分散状態をイメージングすることができる。このようなイメージングは、質量分析装置に内蔵された解析用ソフトウェア、あるいは、MALDIVision(登録商標)(株式会社ネットウエル)、BioMap(ノバルティス)、MATLAB(登録商標)(MathWorks)、ImageJ等の解析用ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0022】
質量分析の結果得られた標的元素や標的化合物の検出強度とその測定位置を試料の光学画像上に表示する際、標的元素や標的化合物の検出強度を光学画像上に表示してもよいが、他の元素(好ましくは炭素)に対する標的元素や標的化合物の検出強度比(含有比率)を光学画像上に表示するものであってもよい。ここで、標的元素の検出強度は、標的元素の同位体のうち、天然存在比の高いものに相当する二次イオンを抽出すればよく、標的化合物の検出強度は、標的化合物の効率的な検出のために、標的化合物を標準物質として予め測定し、これに相当する二次イオンのみを抽出すればよい。
【0023】
標的元素としては、酸素や硫黄などが挙げられる。酸素の分散状態を分析する場合、同時に標的化合物として酸化亜鉛の分散状態を分析するのが好ましい。例えば、酸素の検出強度を表示した光学画像と、酸化亜鉛の検出強度を表示した光学画像とを対比することで、酸素原子が分散する領域のうち、酸化亜鉛由来の酸素を特定することができ、それ以外の酸素は、例えば、酸化されたゴム成分由来の酸素などであると推測することができる。また、硫黄の分散状態を分析する場合、同時に標的化合物として硫化亜鉛の分散状態を分析するのが好ましい。例えば、硫黄の検出強度を表示した光学画像と、硫化亜鉛の検出強度を表示した光学画像とを対比することで、硫黄が分散する領域のうち、硫化亜鉛由来の硫黄を特定することができ、それ以外の硫黄は、例えば、ゴム成分の架橋構造由来の硫黄などであると推測することができる。
【0024】
より分析精度を高める観点から、酸化亜鉛や硫化亜鉛以外にも、標的元素を含有する無機金属化合物の分散状態について同時に測定するものであってもよい。このような無機金属化合物としては、添加剤そのものや2種類以上の添加剤が反応して生成したものが挙げられ、具体的には、硫酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、ナフテン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ロジン酸コバルト、バーサチック酸コバルト、トール油酸コバルト、ホウ酸ネオデカン酸コバルト、アセチルアセトナートコバルト、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化鉛などが挙げられる。
【0025】
測定装置の構成は、特に限定されないが、例えば、
図1に示すように、試料導入室1と、イオン源2と、分析室3と、エネルギーアナライザ4と、質量分析計5と、検出器6とを有するものとすることができる。測定試料は、試料導入室1に導入された後、不図示の試料移動機構により、分析室3へと運ばれる。分析室3は不図示の真空ポンプにより、真空状態となっている。そして、イオン源2から分析室3の試料へと一次イオンビームが照射される。一次イオンビームの照射により試料表面から発生した二次イオンは、エネルギーアナライザ4、及び質量分析計5を介して検出器6へと運ばれる。
【0026】
質量分析計5としては、例えば、四重極型質量分析計やセクター磁場型質量分析計、飛行時間型質量分析計(TOF-MS)などを用いることができる。質量分析計5は、磁場により、元素の質量とイオン電荷とに基づき、標的元素を検出器6へと送り届けることができる。
【0027】
このような測定装置としては、特に限定されないが、CAMECA株式会社製「NanoSIMS 50L」を用いることができる。
【0028】
分析に用いる加硫ゴムサンプルの厚さは500μm以下であることが好ましく、より好ましくは、300μm以下である。加硫ゴムサンプルの厚さが500μm以下である場合、一次イオンビームの照射を行ってもサンプルの振動を抑えることができ、イメージング画像のぶれを抑制することができる。
【0029】
本明細書において加硫ゴムサンプルの「厚さ」とは、シックネスゲージにて測定した値とする。
【0030】
分析に用いる加硫ゴムサンプルの面の算術平均高さは1.5μm以下であることが好ましく、より好ましくは1.0μm以下である。ここで、面の算術平均高さとは、線の算術平均高さ(Ra)を面に拡張した面粗さを表すパラメータであり、表面の平均面に対して、各点の高さの差の絶対値の平均を示す。面の算術平均高さは1.5μm以下であることにより、より鮮明な元素の分布画像が得られやすい。
【0031】
本明細書において「面の算術平均高さ」は、例えば、キーエンス株式会社製「形状解析レーザ顕微鏡VK-X150/X160」を用いて測定することができる。
【0032】
加硫ゴムサンプルの面の算術平均高さは、サンプルを調製する際に使用するモールドの表面粗さを調整することにより調整できる。具体的には、例えば、所定の表面粗さを有する2枚の金属板をモールドとして用いてゴム組成物を挟み、所定の厚さになるように厚さ方向に加圧しながら加硫することで、サンプルを調製することができる。
【0033】
加硫ゴムサンプルは、測定前に、溶媒で抽出し、揮発性低分子を除いておくのが望ましい。測定装置の分析室3内は高真空となっているため、揮発性分子がサンプル中に含まれていると、真空度を保てず、測定できないおそれがある。
【0034】
抽出に用いる溶媒量は、特に限定されないが、加硫ゴムサンプル1mgに対して0.1mL以上であることが好ましい。また、抽出方法としては、40℃以下の温度において12時間以上加硫ゴムサンプルを溶媒に浸漬することが好ましい。抽出後に行う乾燥としては、40℃以下、2000Pa以下の条件において、8時間以上加硫ゴムサンプルを乾燥することが好ましい。ここでは、加硫ゴムサンプルを溶媒に浸漬する方法について説明したが、これに限定されず、ソックスレーや高速溶媒抽出などの抽出方法も適用可能である。
【0035】
上記溶媒としては、特に限定されないが、トルエン、アセトン、クロロホルム、ベンゼン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどが挙げられる。
【0036】
測定に用いるゴム組成物としては、特に限定されず、通常のゴム工業で使用されているカーボンブラックやシリカなどの補強性充填材、プロセスオイル、酸化亜鉛、ステアリン酸、軟化剤、可塑剤、ワックス、老化防止剤、加硫剤、加硫促進剤などの配合薬品類を通常の範囲内で適宜配合することができるが、揮発性低分子は含まないのが望ましい。
【0037】
ゴム成分としては、例えば、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合体ゴム、またはこれらの末端や主鎖の一部を変性した変性ゴムなどをさらに含有するものであってもよい。
【0038】
ゴム組成物は、通常用いられるバンバリーミキサーやニーダー、ロール等の混合機を用いて、常法に従い混練して作製することができる。すなわち、第1工程(ノンプロ練り工程)で、ゴム成分に対し、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を添加混合し、得られた混合物に、最終工程(プロ練り工程)で加硫剤及び加硫促進剤を添加し、混合してゴム組成物を調製することができる。
【0039】
加硫条件としては、特に限定されないが、例えば、140~180℃において、5~120分間加硫するものであってもよい。
【実施例0040】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0041】
表1に示す配合(質量部)に従い、ノンプロ練り工程において、ゴム成分に対して、酸化亜鉛、ステアリン酸を添加混合し(排出温度=150℃)、プロ練り工程で、硫黄、及び加硫促進剤を添加混合して(排出温度=90℃)、実施例1~4で用いるゴム組成物を調製した。
【0042】
上記各成分の詳細は以下の通りである。
・イソプレンゴム:JSR(株)製「IR2200」
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3号」
・ステアリン酸:花王(株)製「ルナックS-20」
・硫黄:鶴見化学工業(株)製「粉末硫黄」
・加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製「ノクセラー CZ-G」
【0043】
標準物質として用いた化合物の詳細は以下の通りである。
・酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製「酸化亜鉛3号」
・硫化亜鉛:シグマアルドリッチ社製
【0044】
【0045】
得られたゴム組成物について、金属板をモールドとして用いて、所定厚さになるように厚さ方向に加圧しながら160℃で加硫し、6cm×4cmの加硫ゴムサンプルを作成した。加硫時間は、JIS K6300-2に記載の90%加硫時間(t90)を適用した。
【0046】
次いで、得られた各加硫ゴムサンプルを40℃以下のトルエンに12時間以上浸漬した後、サンプルをシリコンウエハ上に載置し、40℃以下、2000Pa以下で8時間以上乾燥させた。次いで、加硫ゴムサンプル表面に金を蒸着させた。
【0047】
CAMECA株式会社製「NanoSIMS 50L」を用い、加硫ゴムサンプルの任意の測定範囲(8μm×8μm)において、次の測定条件で、炭素、酸素、硫黄について測定し、炭素に対する酸素の含有比率、及び炭素に対する硫黄の含有比率を示すイメージング画像を作成した。
[測定条件]
一次イオン種:セシウムイオン(Cs+)
ビームスポット:0.1μm2
積算回数:20回
1ピクセルのビーム照射時間:1msec
【0048】
炭素に対する酸素の含有比率の測定結果は、
図2,4のイメージング画像に示す通りであり、酸素の濃度の濃淡が色の濃淡で示されており、酸素の濃度が高いところほど淡い色で、酸素の濃度が低いところほど濃い色で示されている。
【0049】
炭素に対する酸化亜鉛の含有比率の測定結果は、
図3,5のイメージング画像に示す通りであり、酸化亜鉛の濃度の濃淡が色の濃淡で示されており、酸化亜鉛の濃度が高いところほど淡い色で、酸化亜鉛の濃度が低いところほど濃い色で示されている。
【0050】
実施例1における、
図2のイメージング画像で示された酸素原子が分散する領域のうち、
図3のイメージング画像で示された酸化亜鉛が分散する領域と重複する箇所は、酸素原子が酸化亜鉛として分散しており、それ以外の領域における酸素原子は、ゴム成分の酸化部分などとして分散しているものと推測できる。
【0051】
実施例2でも同様に、
図4のイメージング画像で示された酸素原子が分散する領域のうち、
図5のイメージング画像で示された酸化亜鉛が分散する領域と重複する箇所は、酸素原子が酸化亜鉛として分散しており、それ以外の領域における酸素原子は、ゴム成分の酸化部分などとして分散しているものと推測できる。
【0052】
炭素に対する硫黄の含有比率の測定結果は、
図6,8のイメージング画像に示す通りであり、硫黄の濃度の濃淡が色の濃淡で示されており、硫黄の濃度が高いところほど淡い色で、硫黄の濃度が低いところほど濃い色で示されている。
【0053】
炭素に対する硫化亜鉛の含有比率の測定結果は、
図7,9のイメージング画像に示す通りであり、硫化亜鉛の濃度の濃淡が色の濃淡で示されており、硫化亜鉛の濃度が高いところほど淡い色で、硫化亜鉛の濃度が低いところほど濃い色で示されている。
【0054】
実施例3における、
図6のイメージング画像で示された硫黄原子が分布する領域のうち、
図7のイメージング画像で示された硫化亜鉛が分布する領域と重複する箇所は、硫黄原子が硫化亜鉛として分散しており、それ以外の領域における硫黄原子は、ゴム成分の架橋構造などとして分散しているものと推測できる。
【0055】
実施例4でも同様に、
図8のイメージング画像で示された硫黄原子が分布する領域のうち、
図9のイメージング画像で示された硫化亜鉛が分布する領域と重複する箇所は、硫黄原子が硫化亜鉛として分散しており、それ以外の領域における硫黄原子は、ゴム成分の架橋構造などとして分散しているものと推測できる。