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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077920
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/32 20060101AFI20220517BHJP
【FI】
F16H61/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189006
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】荻野 淳人
(72)【発明者】
【氏名】内田 豊
(72)【発明者】
【氏名】石川 康太
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA01
3J067AA21
3J067AB23
3J067CA31
3J067DA52
3J067DB32
3J067FB45
3J067FB78
3J067GA01
(57)【要約】
【課題】位置決め部材に過大な負荷をかけることなく、位置決め部材をシフト切替部材の谷部の底に到達させるモータの回転角度を補正することが可能なシフト装置を提供する。
【解決手段】このシフト装置100は、シフト切替部材21と、シフト切替部材21を駆動する、ロータ111とステータ112とを含むモータ11と、駆動力伝達機構部14と、ロータ回転角度センサ12と、出力軸回転角度センサ13とを備える。シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて検出される駆動力伝達機構部14に含まれるガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心Cpからのずれを補正するように構成されている。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるシフト装置であって、
シフト位置に対応するように設けられた複数の谷部を含むシフト切替部材と、
前記シフト切替部材の前記複数の谷部のいずれかに嵌まり込んだ状態で前記シフト位置を成立させるための位置決め部材と、
前記シフト切替部材を駆動する、ロータとステータとを含むモータと、
前記モータから前記シフト切替部材に駆動力を伝達する駆動力伝達機構部と、
前記ロータの回転角度を検出するロータ回転角度センサと、
前記シフト切替部材の回転角度を検出する出力軸回転角度センサとを備え、
シフト切替動作の際、前記出力軸回転角度センサの出力値と前記ロータ回転角度センサの出力値とに基づいて検出される前記駆動力伝達機構部に含まれるガタ幅が、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている、シフト装置。
【請求項2】
シフト切替動作の際、前記シフト切替部材の前記複数の谷部の谷底の位置と、前記予め設定されたガタの中心とのずれに基づいて、前記予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
初期のガタ幅に対する前記ガタ幅の増加量に基づいて、前記予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている、請求項1または2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記初期のガタ幅に対する前記ガタ幅の増加量に基づいて、前記予め設定されたガタの中心からのずれとして前記ガタ幅の増加量だけ、前記予め設定されたガタの中心をオフセットするように構成されている、請求項3に記載のシフト装置。
【請求項5】
前記シフト切替部材を第1の方向に回転させた際と、前記第1の方向とは反対の第2の方向に回転させた際との、前記位置決め部材が前記シフト切替部材の前記谷部の前記谷底から山部の頂部に移動するまでの移動区間における前記出力軸回転角度センサの出力値と前記ロータ回転角度センサの出力値とに基づいて、前記ガタ幅を取得するとともに、取得された前記ガタ幅の中央の値を補正した新たなガタの中心として取得するように構成されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のシフト装置。
【請求項6】
前記駆動力伝達機構部は、前記モータ側から伝達される回転速度を減速した状態で前記シフト切替部材を回動させるとともに、前記ガタ幅を含む減速機構部を含んでおり、
シフト切替動作の際、前記出力軸回転角度センサの出力値と前記ロータ回転角度センサの出力値とに基づいて検出される前記減速機構部に含まれる前記ガタ幅が、前記所定値以上である場合に、前記予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている、請求項1~5のいずれか1項に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト装置に関し、特に、複数の谷部を含むシフト切替部材を備えるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の谷部を含むシフト切替部材を備えるシフト装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、複数(2つ)の谷部を含むディテントプレートを備えるシフトレンジ切替装置が開示されている。シフトレンジ切替装置は、ディテントスプリングと、P-ECUと、アクチュエータと、シフト制御機構とを備えている。ディテントプレートは、アクチュエータにより駆動されてシフトレンジを切り替えるシフト切替手段である。ディテントスプリングは、ディテントプレートのシフトレンジを固定するように構成されている。P-ECUは、シフトレンジをPレンジと、非Pレンジとの間で切り替えるために、シフト制御機構を駆動するアクチュエータの動作を制御するように構成されている。ここで、Pレンジとは、ディテントプレートの2つの谷部の一方側の谷部に、ディテントスプリングが切り替えられた状態である。また、非Pレンジとは、ディテントプレートの2つの谷部の他方側の谷部に、ディテントスプリングが切り替えられた状態である。
【0004】
上記特許文献1のディテントプレートは、一方側の谷部と他方側の谷部との間に設けられた山部と、一方の側の谷部における山部側とは逆側に設けられたP壁と、他方の側の谷部における山部側とは逆側に設けられた非P壁とを含んでいる。P壁および非P壁の各々は、ディテントスプリングと接触することにより、ディテントプレートの回転を規制するように構成されている。
【0005】
上記特許文献1のP-ECUは、P壁位置を検出するとともに、検出したP壁位置を基準位置として設定するように構成されている。すなわち、P-ECUは、ディテントスプリングをP壁に押し付けてディテントプレートの回転が所定時間停止したことに基づいて、基準位置としてのP壁位置を取得する制御を行うように構成されている。これにより、P-ECUは、予め設定されていた基準位置としてのP壁位置を補正する制御を行うように構成されている。そして、P-ECUは、ディテントスプリングとP壁とが衝突することなくディテントプレートの一方側の谷部の谷底に到達するアクチュエータの目標回転位置を補正する制御を行うように構成されている。
【0006】
また、上記特許文献1のP-ECUは、非P壁位置を検出するとともに、検出した非P壁位置を基準位置として設定するように構成されている。すなわち、P-ECUは、ディテントスプリングを非P壁に押し付けてディテントプレートの回転が所定時間停止したことに基づいて、基準位置としての非P壁位置を取得する制御を行うように構成されている。これにより、P-ECUは、予め設定されていた基準位置としての非P壁位置を補正する制御を行うように構成されている。P-ECUは、ディテントスプリングと非P壁とが衝突することなくディテントプレートの他方側の谷部の谷底に到達するアクチュエータの目標回転位置を補正する制御を行うように構成されている。
【0007】
上記特許文献1のP-ECUでは、シフト装置内の摩耗によるガタ量の増加に起因してP壁位置および非P壁位置のずれが生じた場合に、P壁位置検出および非P壁検出を行うことにより、アクチュエータの目標回転位置を補正することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-69406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1のシフト装置では、P壁位置を取得するために、ディテントスプリングをP壁に所定時間押し付ける必要がある。また、非P壁位置を取得するために、ディテントスプリングを非P壁に所定時間押し付ける必要がある。これらにより、上記特許文献1のシフト装置では、ディテントスプリング(位置決め部材)に過大な負荷をかけなければ、ディテントスプリング(位置決め部材)をディテントプレート(シフト切替部材)の谷部の谷底に到達させるアクチュエータ(モータ)の目標回転位置(回転角度)を補正することができないという問題点がある。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、位置決め部材に過大な負荷をかけることなく、位置決め部材をシフト切替部材の谷部の谷底に到達させるモータの回転角度を補正することが可能なシフト装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面におけるシフト装置は、車両に搭載されるシフト装置であって、シフト位置に対応するように設けられた複数の谷部を含むシフト切替部材と、シフト切替部材の複数の谷部のいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させるための位置決め部材と、シフト切替部材を駆動する、ロータとステータとを含むモータと、モータからシフト切替部材に駆動力を伝達する駆動力伝達機構部と、ロータの回度を検出するロータ回転角度センサと、シフト切替部材の回転角度を検出する出力軸回転角度センサとを備え、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサの出力値とロータ回転角度センサの出力値とに基づいて検出される駆動力伝達機構部に含まれるガタ幅が、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている。
【0012】
この発明の一の局面によるシフト装置では、上記のように、シフト位置に対応するように設けられた複数の谷部を含むシフト切替部材と、シフト切替部材の複数の谷部のいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させるための位置決め部材とを設ける。シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサの出力値とロータ回転角度センサの出力値とに基づいて検出される駆動力伝達機構部に含まれるガタ幅が、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成する。これにより、予め設定されたガタの中心からのずれを補正することにより、位置決め部材をシフト切替部材の壁に押し付けることなく、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置に対応するガタの中心の位置を補正することができるので、補正したガタの中心の位置に対応するモータの回転角度を取得することができる。その結果、位置決め部材に過大な負荷をかけることなく、位置決め部材をシフト切替部材の谷部の谷底に到達させるモータの回転角度を補正することができる。また、シフト切替動作の際、予め設定されたガタの中心からのずれを補正することにより、経年摩耗により拡大する駆動力伝達機構部に含まれるガタ幅に起因してずれるガタの中心に合わせて、予め設定されたガタの中心を補正することができるので、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とが一致した状態を維持することができる。その結果、シフト切替動作の際の位置決め部材の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0013】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、シフト切替動作の際、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置と、予め設定されたガタの中心とのずれに基づいて、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている。
【0014】
このように構成すれば、予め設定されたガタの中心からのずれを補正することにより、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とを正確に一致させることができるので、シフト切替動作の際の位置決め部材の位置制御を正確に行うことができるとともに、シフト位置の判定精度の低下を抑制することができる。
【0015】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、初期のガタ幅に対するガタ幅の増加量に基づいて、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている。
【0016】
このように構成すれば、駆動力伝達機構部のガタの摩耗によるガタ幅の増加に起因するガタの中心のずれを補正することができるので、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とが一致した状態を維持することができる。その結果、シフト切替動作の際の位置決め部材の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0017】
この場合、好ましくは、初期のガタ幅に対するガタ幅の増加量に基づいて、予め設定されたガタの中心からのずれとしてガタ幅の増加量だけ、予め設定されたガタの中心をオフセットするように構成されている。
【0018】
このように構成すれば、駆動力伝達機構部のガタの摩耗に起因するガタ幅の増加量に合わせて、予め設定されたガタの中心をオフセットすることにより、予め設定されたガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とのずれを埋め合わせることができる。その結果、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とが一致した状態を維持することができるので、シフト切替動作の際の位置決め部材の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0019】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、シフト切替部材を第1の方向に回転させた際と、第1の方向とは反対の第2の方向に回転させた際との、位置決め部材がシフト切替部材の谷部の谷底から山部の頂部に移動するまでの移動区間における出力軸回転角度センサの出力値とロータ回転角度センサの出力値とに基づいて、ガタ幅を取得するとともに、取得されたガタ幅の中央の値を補正した新たなガタの中心として取得するように構成されている。
【0020】
このように構成すれば、線形近似などを用いてガタ幅を推定することなく、出力軸回転角度センサの出力値およびロータ回転角度センサの出力値に基づいて新たなガタの中心を取得することができるので、新たなガタの中心を容易に取得することができる。
【0021】
上記一の局面によるシフト装置において、好ましくは、駆動力伝達機構部は、モータ側から伝達される回転速度を減速した状態でシフト切替部材を回動させるとともに、ガタ幅を含む減速機構部を含んでおり、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサの出力値とロータ回転角度センサの出力値とに基づいて検出される減速機構部に含まれるガタ幅が、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている。
【0022】
このように構成すれば、少なくとも減速機構部に含まれるガタ幅に起因する予め設定されたガタの中心からのずれを補正することにより、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とを正確に一致させることができるので、シフト切替動作の際の位置決め部材の位置制御を正確に行うことができる。
【0023】
なお、上記一の局面によるシフト装置において、以下のような構成も考えられる。
【0024】
(付記項1)
すなわち、上記第1の方向および第2の方向に回転するシフト切替部材を備えるシフト装置において、シフト切替部材を第1の方向に回転させた際の所定のシフト位置の谷部の谷底に対応するロータ回転角度センサにより測定されたロータの第1回転角度と、シフト切替部材を第2の方向に回転させた際の所定のシフト位置の谷部の谷底に対応するロータ回転角度センサにより測定されたロータの第2回転角度との差に基づいて、ガタ幅を取得するとともに、取得されたガタ幅の中央の値を補正した新たなガタの中心として取得するように構成されている。
【0025】
このように構成すれば、第1回転角度および第2回転角度の両方を用いてガタ幅を取得することにより、より正確にガタ幅を取得することができるので、より正確に新たなガタの中心を取得することができる。
【0026】
(付記項2)
この場合、シフト切替部材を第1の方向に回転させた際の所定のシフト位置の谷部の谷底に対応するロータ回転角度センサにより測定されたロータの初期の回転角度と、第1回転角度との差がしきい値以上である場合に、第1回転角度と、第2回転角度との差に基づいて、ガタ幅を取得するとともに、取得されたガタ幅の中央の値を補正した新たなガタの中心として取得するように構成されている。
【0027】
このように構成すれば、初期の回転角度と第1回転角度との差がしきい値以上である場合に、ガタ幅を取得することにより、ガタ幅を常に取得する場合と比較して、ガタ幅を取得する処理を効率的に行うことができるとともに、ガタ幅を取得する処理の制御負荷を軽減することができる。
【0028】
(付記項3)
上記一の局面によるシフト装置において、シフト切替動作が行われるたびに、出力軸回転角度センサの出力値とロータ回転角度センサの出力値とに基づいてガタ幅を取得するとともに、ガタ幅が、所定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されている。
【0029】
このように構成すれば、摩耗に起因する駆動力伝達機構部のガタ幅の増加を早期に検知することができるので、ガタの中心と、シフト切替部材の複数の谷部の谷底の位置とのずれの補正を早期に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】一実施形態によるシフト装置の制御構成を示したブロック図である。
図2】一実施形態によるシフト装置の全体構成を概略的に示した斜視図である。
図3】一実施形態によるシフト装置を構成するディテントプレートの構造を示した図である。
図4】一実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットを示した断面図である。
図5】一実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、本体部からギヤハウジングを取り外した状態での減速機構部の内部構造を示した図である。
図6】一実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、中間ギヤの係合状態(駆動力伝達可能状態)を示した図である。
図7】一実施形態によるシフト装置を構成するアクチュエータユニットにおいて、中間ギヤの係合状態(駆動力非伝達状態)を示した図である。
図8】一実施形態によるシフト装置における、出力軸回転角度センサの出力値(出力電圧)と、ロータ回転角度センサの出力値(モータ回転角度)と、モータの回転回数との関係を示す図である。
図9】一実施形態によるシフト装置のローラ部がR位置からN位置に向かって移動したときの状態を示した模式図である。
図10】一実施形態によるシフト装置のローラ部がN位置からR位置に向かって移動したときの状態を示した模式図である。
図11】一実施形態によるシフト装置における、第1推定値と、第2推定値と、ガタの中心との関係を示す図である。
図12】一実施形態によるシフト装置の駆動力伝達機構部のガタの中心のずれについて説明した説明図である。
図13】一実施形態によるシフト装置において、ガタの中心のずれを補正しなかった場合のディテントスプリングの移動について説明した説明図である。
図14】一実施形態によるシフト装置の第1回転角度の測定について示した図である。
図15】一実施形態によるシフト装置の現在のガタ幅の測定について示した図である。
図16】一実施形態によるシフト装置のガタの中心の補正について示した図である。
図17】一実施形態によるシフト装置におけるガタ中心位置補正処理について示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1図16を参照して、シフト装置100の構成について説明する。なお、本願明細書において、「モータの回転角度」と「ロータの回転角度」とは、同じ意味を表す。
【0033】
シフト装置100は、自動車などの車両に搭載されている。図1に示すように、車両は、乗員(運転者)がシフトレバー(またはシフトスイッチ)などの操作部を介してシフトの切替操作を行った場合に、変速機構部3に対する電気的なシフト切替制御が行われる。すなわち、操作部に設けられたシフトセンサ101を介してシフトレバーの位置がシフト装置100側に入力される。そして、シフト装置100に設けられた専用のECU15から送信される制御信号に基づいて、乗員のシフト操作に対応したP(パーキング)位置、R(リバース)位置、N(ニュートラル)位置およびD(ドライブ)位置のいずれかのシフト位置に変速機構部3が切り替えらえる。このようなシフト切替制御は、シフトバイワイヤ(SBW)と呼ばれる。
【0034】
シフト装置100は、アクチュエータユニット1と、アクチュエータユニット1により駆動されるシフト切替機構部2とを備えている。また、シフト切替機構部2は、変速機構部3内の油圧制御回路部3aにおける油圧バルブボディのマニュアルスプール弁(図示せず)とパーキング機構部3bとに機械的に接続されている。そして、シフト切替機構部2が駆動されることによって変速機のシフト状態(P位置、R位置、N位置およびD位置)が機械的に切り替えられるように構成されている。
【0035】
アクチュエータユニット1は、モータ11と、ロータ回転角度センサ12と、出力軸回転角度センサ13と、駆動力伝達機構部14と、ECU(Electronic Control Unit)15とを備えている。なお、図2に示すように、ECU15は、基板に電子部品が実装された基板部品である。また、これらの基板部品は、変速機構部3のケースに固定された箱状の本体部に収容されている。また、アクチュエータユニット1は、減速機構部14aの出力側に接続された出力軸17を備えている。
【0036】
シフト切替機構部2は、図2に示すように、ディテントプレート21(特許請求の範囲の「シフト切替部材」の一例)と、ディテントスプリング22(特許請求の範囲の「位置決め部材」の一例)とを含んでいる。ディテントスプリング22は、P位置、R位置、N位置およびD位置のそれぞれに対応する回動角度位置でディテントプレート21を保持するように構成されている
【0037】
ディテントプレート21は、図3に示すように、シフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)に対応するように設けられた4つの谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを有している。また、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dによって、ディテントプレート21には連続的な起伏形状を有するカム面Caが形成されている。また、互いに隣接する谷部同士(たとえば、谷部21aおよび谷部21b、谷部21bおよび谷部21cなど)は、1つの頂部Tを有する山部Mにより隔てられている。ディテントスプリング22は、基端部(図2参照)が変速機構部3のケーシング(図2参照)に固定されるとともに、自由端(図2参照)側にローラ部22aが取り付けられている。そして、ディテントスプリング22は、ローラ部22aが、常時、カム面Ca(谷部21a、谷部21b、谷部21c、谷部21dまたは山部Mのいずれかの位置)を押圧している。そして、ディテントスプリング22は、複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させる。
【0038】
また、図3に示すように、最も端部側に配置される谷部21aには、ディテントスプリング22が谷部21aを超えて移動するのを抑制するための壁部121aが設けられている。最も端部側に配置される谷部21dには、ディテントスプリング22が谷部21dを超えて移動するのを抑制するための壁部121dが設けられている。具体的には、ディテントプレート21の矢印A方向(特許請求の範囲の「第1の方向」の一例)の端部に配置される谷部21aに壁部121aが設けられている。また、ディテントプレート21の矢印B方向(特許請求の範囲の「第2の方向」の一例)の端部に配置される谷部21dに壁部121dが設けられている。
【0039】
また、ディテントプレート21は、図2に示すように、出力軸17の下端部(Z2側)に固定されており、ディテントプレート21は、出力軸17と一体的に回動軸C1まわりに回動される。これにより、ディテントスプリング22は、ディテントプレート21の矢印A方向または矢印B方向への正逆回動(揺動)に伴ってローラ部22aがカム面Caに沿って摺動することにより、ディテントスプリング22の付勢力によりローラ部22aが谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに嵌合するように構成されている。また、ディテントスプリング22は、ローラ部22aがディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに選択的に嵌合することにより、それぞれ、P位置、R位置、N位置またはD位置に対応する回動角度位置でディテントプレート21が保持されるように構成されている。これにより、P位置、R位置、N位置またはD位置が個々に成立される。
【0040】
また、図1に示すように、シフト装置100は、不揮発性の記憶部16を備えている。不揮発性の記憶部16は、アクチュエータユニット1の内部に設けられている。
【0041】
次に、アクチュエータユニット1の詳細な構成について説明する。
【0042】
図4に示すように、モータ11は、モータハウジングに対して回転可能に支持されたロータ111と、ロータ111の周囲に磁気的間隙を有して対向するように配置されたステータ112とによって構成されている。また、モータ11は、ディテントプレート21を駆動するように構成されている。
【0043】
また、モータ11として、永久磁石をロータ111の表面に組み込んだ表面磁石型(SPM)の三相モータが用いられる。具体的には、ロータ111は、シャフトピニオン111aと、ロータコア111bとを有している。
【0044】
ロータ111のシャフトピニオン111aと出力軸17とは、同じ回動軸C1まわりに回転される。また、シャフトピニオン111aには、中央部から下端部(Z2側)にかけた外周領域に、ギヤ溝がヘリカル状に形成されたギヤ部141が一体的に形成されている。
【0045】
ステータ112は、モータハウジングのモータ室内に固定されたステータコア112aと、通電により磁力を発生する複数相(U相、V相およびW相)の励磁コイル(図示せず)とを有している。
【0046】
ロータ回転角度センサ12は、モータ11の回転角度を検出するように構成されている。たとえば、ロータ回転角度センサ12は、MRセンサ(Magneto Resistive Sensor)から構成されている。
【0047】
出力軸回転角度センサ13は、ディテントプレート21(出力軸17)の回転角度を検出するように構成されている。たとえば、出力軸回転角度センサ13は、ホール素子により構成されている。なお、出力軸17の回転位置(出力角)は、連続的な電圧値として検出される。
【0048】
図4および図5に示すように、駆動力伝達機構部14は、減速機構部14aを含んでいる。減速機構部14aは、モータ11側から伝達される回転速度を減速した状態でディテントプレート21を回動させるように構成されている。具体的には、減速機構部14aは、ロータ111のギヤ部141と、ギヤ部141に噛合するギヤ部142aを有する中間ギヤ142と、中間ギヤ142と同じ軸心で下面側(Z2側)配置されるとともに中間ギヤ142と係合する中間ギヤ143と、中間ギヤ143のギヤ部143aに噛合するギヤ部144aを有する最終ギヤ144とを含む。
【0049】
また、図6および図7に示すように、中間ギヤ142には、回転中心部と外周部(ギヤ部142a)との間に、長径が周方向に沿って延びる複数(6個)の長孔142bが形成されている。複数の長孔142bは、周方向に互いに60°間隔で配置されている。また、中間ギヤ143は、ギヤ部143aが設けられた楕円形状の本体部143bを有しており、本体部143bのギヤ部143aとは反対側の上面(Z1側)から上方に突出する複数(2個)の円柱状の係合凸部143cが設けられている。係合凸部143cは、本体部143bにおける長径方向の両側の周縁部に配置されている。そして、中間ギヤ142に下方から上方(Z1側)に向かって中間ギヤ143が隣接配置された状態で、互いに180°間隔で配置された係合凸部143cの各々が、対応する中間ギヤ142の2つの長孔142bにそれぞれ挿入(係合)されるように構成されている。
【0050】
なお、係合凸部143cは、中間ギヤ142の長孔142bに対して所定の大きさ(周方向の長さ)からなるガタBaを有して嵌め合わされる。すなわち、互いに嵌め合わされた係合凸部143cと長孔142bとに生じる円周方向のガタBaの分(所定角度幅)だけ、中間ギヤ142と中間ギヤ143との間の相対的な自由回動(自由回転)が許容されるように構成されている。なお、図6は、中間ギヤ142から中間ギヤ143へ駆動力が伝達可能な状態を示しており、図7は、中間ギヤ142から中間ギヤ143へ駆動力が伝達不可能な状態を示している。
【0051】
次に、シフト位置の移動と、出力軸回転角度センサ13の出力値およびロータ回転角度センサ12の出力値との関係について説明する。
【0052】
図8に示すように、モータ11の回転回数(0回、1回、2回、・・・、7回)の増加に伴って、シフト位置が、P位置、R位置、N位置およびD位置の順に変化するように、出力軸17に接続されたディテントプレート21が回動する。この際、ディテントスプリング22は、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの順に嵌まり込む。そして、出力軸回転角度センサ13の出力値は、モータ11の回転回数が増加するのに伴って増加する。
【0053】
たとえば、図8および図9に示すように、現在、ローラ部22aが、谷部21b(R位置)に嵌まり込んでいたとする(区間1)。モータ11(図1参照)が駆動されることにより減速機構部14a(図1参照)を介してディテントプレート21が矢印A方向に回動される。なお、中間ギヤ142と中間ギヤ143との間に所定量のガタBa(図7参照)が設けられている。このため、ローラ部22aが谷部21bの谷底Vに完全に嵌まり込んだ状態では、ロータ111の回転とともに中間ギヤ142が回動されるにもかかわらず、長孔142bの内部において係合凸部143cがガタBaを利用して駆動力伝達不可能に係合されているので、中間ギヤ143は回動されない。この結果、区間1では、ロータ回転角度センサ12(図1参照)により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に増加する一方、出力軸回転角度センサ13(図1参照)により検出される出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルは、一定である。
【0054】
その後、区間2において、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部が中間ギヤ143の係合凸部143cに駆動力伝達可能に係合されるので、モータ11の駆動力がギヤ部141、中間ギヤ142、中間ギヤ143および最終ギヤ144(図4参照)を介して出力軸17(図2参照)に伝達される。この際、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部と、中間ギヤ143の係合凸部143cとが当接することにより、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部が摩耗する。そして、ディテントプレート21の矢印A方向への回動とともに、ローラ部22aは、谷部21b(R位置)の谷部21c(N位置)側の斜面を山部Mに向けて登るように移動する。なお、区間2において、ロータ回転角度センサ12(図1参照)により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に増加する。また、出力軸回転角度センサ13(図1参照)により検出される出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルが一定の割合で増加する。
【0055】
そして、区間3において、ローラ部22aが谷部21b(R位置)と谷部21c(N位置)との境の山部Mを乗り越えた後、ディテントプレート21は、モータ11(中間ギヤ142)よりも先行して回動される。すなわち、ディテントプレート21は、常にローラ部22aにより谷部21bに向かって付勢されているので、この付勢力によって、ディテントプレート21は、長孔142bのガタBaの大きさの範囲内でモータ11よりも先行して回動される。この際、中間ギヤ142の長孔142bの他方側端部と、中間ギヤ143の係合凸部143cとが当接することにより、中間ギヤ142の長孔142bの他方側端部が摩耗する。そして、ローラ部22aは、谷部21bの谷底Vに向けて落とし込まれる(図9の区間3参照)。この際、モータ11の回転角度は増加する一方、出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルは、ローラ部22aの谷底Vへの落ち込み(吸込み)とともに急激に増加する。
【0056】
なお、シフト位置のP位置からR位置への移動の動作、N位置からD位置への移動の動作は、上記のR位置からN位置への移動の動作と同様である。
【0057】
また、図8および図10に示すように、モータ11は、回転方向が反転されることにより、シフト位置がN位置(区間4)、区間5、および、区間6を介して、R位置に移動される。
【0058】
なお、N位置(区間4)の動作は、上記区間1の動作と同様である。つまり、ロータ回転角度センサ12(図1参照)により検出されるモータ11の回転角度(rad)は、線形的に減少する一方、出力軸回転角度センサ13(図1参照)により検出される出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルは、一定である。
【0059】
また、区間5の動作は、上記区間2の動作と同様である。つまり、区間5において、モータ11の回転角度は、線形的に減少するとともに、出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルが一定の割合で減少する。この際、中間ギヤ142の長孔142bの他方側端部と、中間ギヤ143の係合凸部143cとが当接することにより、中間ギヤ142の長孔142bの他方側端部が摩耗する。
【0060】
また、区間6の動作は、上記区間3の動作と同様である。つまり、モータ11の回転角度は減少する一方、出力軸17の回転角度に対応する電圧レベルは、ローラ部22aの谷底Vへの落ち込み(吸込み)とともに急激に減少する。この際、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部と、中間ギヤ143の係合凸部143cとが当接することにより、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部が摩耗する。
【0061】
ここで、図11に示すように、シフト装置100では、たとえば、工場出荷時に、シフト装置100ごとに、谷底Vに対応するモータ11(ロータ111)の回転角度が取得(学習)される。図11に示すグラフは、横軸を、出力軸回転角度センサ13の出力値(電圧)として、縦軸を、ロータ回転角度センサ12の出力値(回転角度)として、電圧(V)と回転角度(rad)との関係を示したグラフである。なお、実際には、縦軸は、モータ11の回転角度の積算値(つまり、2π×モータ11の回転回数+回転角度)を表している。
【0062】
以下に、複数のシフト位置(P位置、R位置、N位置およびD位置)の各々における、谷底V(ガタBaの中心Cp)に対応するモータ11(ロータ111)の回転角度の取得(学習)について説明する。なお、谷底Vに対応するモータ11の回転角度の取得は、たとえば、ECU15によって行われる。
【0063】
すなわち、ディテントスプリング22(ローラ部22a)が、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを連続して通過するように移動される。そして、ディテントスプリング22が移動される間における、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて、減速機構部14aに含まれるガタ幅Wが検出される。
【0064】
具体的には、ディテントスプリング22が、P位置、R位置、N位置、D位置、N位置、R位置、および、P位置の順に連続して移動される。ディテントスプリング22が、P位置、R位置、N位置およびD位置の順に移動する往路において検出された、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とは、図11の直線L1上の太線で表されている。また、ディテントスプリング22が、D位置、N位置、R位置およびP位置の順に移動する復路において検出された、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とは、図11の直線L2上の太線で表されている。
【0065】
そして、ECU15は、移動区間(区間1、区間2および区間5)における、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて、減速機構部14aに含まれるガタBaのガタ幅Wを検出する。
【0066】
ここで、移動区間とは、ディテントスプリング22が、ディテントプレート21の複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vと、山部Mの頂部Tとを移動する区間を意味する。移動区間では、中間ギヤ142と中間ギヤ143との間のガタBaが詰められた状態であり、中間ギヤ142の回動に伴って中間ギヤ143が回動する区間である。
【0067】
また、ガタ幅Wとは、ガタBaが詰められた状態(中間ギヤ142から中間ギヤ143へ駆動力が伝達可能な状態)における、係合凸部143cと長孔142bとの間のガタ幅W(図6参照)を意味する。
【0068】
区間2は、ディテントスプリング22が、P位置からR位置に移動する際の区間2、R位置からN位置に移動する際の区間2、N位置からD位置に移動する際の区間2を含んでいる。また、区間5は、ディテントスプリング22が、D位置からN位置に移動する際の区間2、N位置からR位置に移動する際の区間2、R位置からP位置に移動する際の区間5を含んでいる。
【0069】
ECU15は、モータ11を矢印A方向に回転させた際における、複数の移動区間(3つの区間2、図11の直線L1上の太線)における出力軸回転角度センサ13の出力値に対するロータ回転角度センサ12の出力値を線形近似することにより、直線L1を取得する制御を行うように構成されている。つまり、直線L1の、傾きa1と、切片b1とが算出される。
【0070】
ECU15は、モータ11を矢印B方向に回転させた際における、複数の移動区間(3つの区間5、図11の直線L2上の太線)における出力軸回転角度センサ13の出力値に対するロータ回転角度センサ12の出力値を線形近似することにより、直線L2を取得する制御を行うように構成されている。つまり、直線L2の、傾きa2と、切片b2とが算出される。
【0071】
ECU15は、線形近似により取得された直線L1と、線形近似により取得された直線L2との間の幅を、ガタ幅Wとして検出する。すなわち、中間ギヤ142と中間ギヤ143との間には、所定量のガタBaが予め設けられているので、同一の出力軸回転角度センサ13の出力値(横軸)であっても、モータ11の回転角度(縦軸)に差異が生じる。そして、この差異をガタ幅Wとして捉えることが可能である。
【0072】
ECU15は、検出されたガタ幅Wに基づいてガタBaの中心Cpに対応するモータ11の回転角度を取得する制御を行うように構成されている。具体的には、ECU15は、直線L1と、直線L2との間の中央を通る、ガタBaの中心Cpとしての直線L3が、ガタBaの中心Cpに対応するモータ11の回転角度として、取得する制御を行うように構成されている。つまり、直線L3の、傾き(以下、a3という)と、切片(以下、b3という)とが算出される。
【0073】
そして、算出されたガタBaの中心Cpに対応するモータ11の回転角度と、谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかの谷底Vに対応する出力軸回転角度センサ13の出力値との関連付けに基づいて、ガタBaの中心Cpに対応するモータ11の回転角度を取得する。具体的には、モータ11を矢印A方向に回転させた際の、複数の区間1(P位置、R位置、N位置、および、D位置に対応する区間1)における、出力軸回転角度センサ13の出力値が取得される。なお、複数の区間1の各々において、出力軸回転角度センサ13の出力値は、一定値となる。具体的には、P位置、R位置、N位置、および、D位置の各々に対応する出力軸回転角度センサ13の出力値は、それぞれ、出力値E1、出力値E2、出力値E3および出力値E4である。
【0074】
また、モータ11を矢印B方向に回転させた際の、複数の区間4(D位置、N位置、R位置、および、P位置に対応する区間4)における、出力軸回転角度センサ13の出力値が取得される。なお、複数の区間4の各々において、出力軸回転角度センサ13の出力値は、一定値となる。具体的には、D位置、N位置、R位置、および、P位置の各々に対応する出力軸回転角度センサ13の出力値は、それぞれ、出力値E4、出力値E3、出力値E2および出力値E1である。すなわち、同じシフト位置における、区間1の出力軸回転角度センサ13の出力値と、区間4の出力軸回転角度センサ13の出力値とは、略同一である。
【0075】
そして、直線L3において、区間1(または区間4)に対応する、モータ11の回転角度が取得される。具体的には、出力軸回転角度センサ13の出力値E1、出力値E2、出力値E3および出力値E4の各々に対応するモータ11の回転角度θ1、回転角度θ2、回転角度θ3および回転角度θ4が取得される。その結果、P位置、R位置、N位置、および、D位置の各々の谷底V(ガタBaの中心Cp)に対応する、モータ11の回転角度θ1、回転角度θ2、回転角度θ3および回転角度θ4が取得される。ここで、モータ11の回転角度θ1、回転角度θ2、回転角度θ3および回転角度θ4は、それぞれ、ディテントスプリング22をディテントプレート21の谷部21aの谷底V、谷部21bの谷底V、谷部21cの谷底Vおよび谷部21dの谷底Vに到達させるモータ11の回転角度である。
【0076】
そして、直線L1、直線L2および直線L3の各々の、傾き(a1、a2およびa3)および切片(b1、b2およびb3)と、P位置、R位置、N位置、および、D位置の各々の谷底V(ガタBaの中心Cp)に対応する、出力軸回転角度センサ13の出力値(E1、E2、E3およびE4)およびモータ11の回転角度(θ1、θ2、θ3およびθ4)とが記憶部16に記憶される。
【0077】
(シフト位置に対応する谷底位置の補正)
図12図16に示すように、本実施形態のECU15は、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて検出される減速機構部14aに含まれる現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。すなわち、ECU15は、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部および他方側端部の少なくともいずれかの摩耗(経年摩耗)によるガタ幅W(初期のガタ幅Wi)の拡大に起因する、初期の(予め設定された)P位置、R位置、N位置、および、D位置の各々の谷底Vに対応するガタBaの中心Cpと、現在のP位置、R位置、N位置、および、D位置の各々の谷底Vに対応するガタBaの中心CrとのずれGaを補正する制御を行うように構成されている。
【0078】
具体的には、ECU15は、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて検出される減速機構部14aに含まれる現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。
【0079】
以下において、初期のガタ幅Wiの拡大についての説明を行うが、説明の簡略化のために、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部のみが摩耗した場合を一例として説明する。実際には、中間ギヤ142の長孔142bの他方側端部も摩耗する。
【0080】
図12および図13に示すように、中間ギヤ142の長孔142bの幅は、中間ギヤ143の係合凸部143cとの当接に起因する経年摩耗により、増大する。すなわち、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部の位置が、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部の初期位置よりも離れた位置になる。これにより、中間ギヤ142の長孔142bの現在のガタ幅Wpは、中間ギヤ142の長孔142bの初期のガタ幅Wiよりも増大する。この結果、初期のガタBaの中心CPと、経年摩耗後のガタBaの中心Crとの間には、ずれGaが生じる。また、初期のガタ幅Wiが増大することにより、以下に説明するようなことが生じる場合がある。
【0081】
たとえば、R位置からN位置に切り替える場合、ECU15では、ローラ部22aが谷部21b(R位置)から谷部21c(N位置)に向かう移動するために必要な分だけ、ロータ111を回転させる制御が行われる。ここで、区間3において、ローラ部22aが谷部21b(R位置)と谷部21c(N位置)との境の山部Mを乗り越える位置までロータ111が回転するが、ガタ幅Wが増大したことに起因して、実際には、ローラ部22aが谷部21b(R位置)と谷部21c(N位置)との境の山部Mを乗り越える位置まで移動しない場合がある。
【0082】
この場合、ローラ部22aが、ローラ部22aが谷部21bの谷底Vまで落ち込むことなく、ローラ部22aが谷部21cの途中で止まってしまう。この結果、出力軸17を谷底Vまで移動させることができないので、シフト位置の位置制御の精度が低下してしまう。
【0083】
そこで、ECU15は、シフト切替動作の際、シフト切替部材の谷部21bの谷底Vの位置と、予め設定されたガタBaの中心CpとのずれGaに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。すなわち、ECU15は、ガタ幅Wの拡大によるガタ幅Wの増加量Amを測定するとともに、増加量Amの分だけ、初期のP位置、R位置、N位置、および、D位置の各々の谷底Vに対応するガタBaの中心Cpの位置をオフセットする制御を行うように構成されている。
【0084】
図14図16を参照して、一例として、R位置におけるガタ幅Wの増加量Amの測定について説明する。また、この例においても、説明の簡略化のために、中間ギヤ142の長孔142bの一方側端部のみが摩耗した場合を想定している。なお、ガタ幅Wの増加量Amの測定は、R位置だけでなく、P位置、N位置およびD位置においても同様の方法により行うことができる。
【0085】
図14に示すように、ECU15は、ディテントプレート21をA方向に回転させた際に、R位置(所定のシフト位置)におけるモータ11の回転角度である第1回転角度θaを取得する制御を行うように構成されている。ここで、所定のシフト位置とは、第1回転角度θaを取得したときのシフト位置を示す。
【0086】
そして、ECU15は、ディテントプレート21をA方向に回転させた際のR位置の谷部21bの谷底Vに対応するロータ回転角度センサ12により測定されたロータ111の初期の回転角度θ2と、第1回転角度θaとの差Diがしきい値以上か否かを判断する制御を行うように構成されている。ECU15は、ロータ111の初期の回転角度θ2と、第1回転角度θaとの差Diがしきい値以上であることに基づいて、記憶部16に第1回転角度θaを記憶する制御を行うように構成されている。また、ECU15は、ロータ111の初期の回転角度θ2と、第1回転角度θaとの差Diがしきい値以上であることを、記憶部16に記憶する制御を行うように構成されている。
【0087】
図15に示すように、ECU15は、ディテントプレート21をA方向に回転させた際と、A方向とは反対のB方向にディテントプレート21を回転させた際との、ディテントスプリング22がシフト切替部材の谷部21bの谷底Vから山部Mの頂部Tに移動するまでの移動区間における出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて、現在のガタ幅Wpを取得する制御を行うように構成されている。
【0088】
詳細には、ECU15は、B方向にディテントプレート21を回転させた際、ロータ111の初期の回転角度θ2と、第1回転角度θaとの差がしきい値以上である場合に、R位置(所定のシフト位置)におけるロータ回転角度である第2回転角度θbを取得する制御を行うように構成されている。
【0089】
また、ECU15は、第1回転角度θaと第2回転角度θbとの差に基づいて、現在のガタ幅Wpを取得する制御を行うように構成されている。すなわち、ECU15は、ディテントプレート21をA方向に回転させた際のR位置(所定のシフト位置)の谷部21bの谷底Vに対応するロータ回転角度センサ12により測定されたロータ111の第1回転角度θaと、シフト切替部材をB方向に回転させた際のR位置(所定のシフト位置)の谷部21bの谷底Vに対応するロータ回転角度センサ12により測定されたロータ111の第2回転角度θbとの差に基づいて、現在のガタ幅Wpを取得する制御を行うように構成されている。
【0090】
ECU15は、現在のガタ幅Wpが所定値以上であることに基づいて、記憶部16に記憶された直線L3を補正する制御を行うように構成されている。すなわち、ECU15は、初期のガタ幅Wiと、現在のガタ幅Wpとの差に基づいて、ガタ幅Wの増加量Amを取得する制御を行うように構成されている。ここで、ECU15は、記憶部16に記憶されている直線L1、直線L2および出力軸回転角度センサ13の出力値E2に基づいて、R位置の初期のガタ幅Wiを取得する制御を行うように構成されている。
【0091】
図16に示すように、ECU15は、初期のガタ幅Wiに対する現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。すなわち、ECU15は、初期のガタ幅Wiに対する現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。詳細には、ECU15は、初期のガタ幅Wiに対する現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaとして現在のガタ幅Wpの増加量Amだけ、予め設定されたガタBaの中心Cpをオフセットするように構成されている。この場合、予め設定されたガタBaの中心Cpに対応するモータ11の回転角度θ2が、現在のガタ幅Wpの増加量Amの分だけ小さくなる。そして、ECU15は、増加量Am分だけオフセットして取得された現在のガタ幅Wpの中央の値を、補正した新たなガタBaの中心Crとして取得する制御を行うように構成されている。
【0092】
すなわち、ECU15は、現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、直線L3を補正する制御を行うように構成されている。詳細には、ECU15は、現在のガタ幅Wpの増加量Am分だけ、直線L3の傾きa3を維持した状態で、直線L3の切片b3をオフセットする制御を行うように構成されている。この場合、直線L3の切片b3の値が、小さくなる。これにより、直線L3が、現在のガタ幅Wpの増加量Am分だけ移動する。
【0093】
このように、ECU15は、ディテントプレート21をA方向に回転させた際の所定のシフト位置の谷部21bの谷底Vに対応するロータ回転角度センサ12により測定されたロータ111の初期の回転角度θ2と、第1回転角度θaとの差Diがしきい値以上である場合に、第1回転角度θaと、第2回転角度θbとの差に基づいて、現在のガタ幅Wpを取得するとともに、取得された現在のガタ幅Wpの中央の値を補正した新たなガタBaの中心Crとして取得するように構成されている。
【0094】
このような初期のガタ幅Wiの中央の値を補正する制御は、シフト位置切替動作のたびに行われる。すなわち、ECU15は、シフト切替動作が行われるたびに、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて現在のガタ幅Wpを取得するとともに、現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている。
【0095】
(ガタ中心位置補正処理)
以下に、図17を参照して、ECU15によりガタ中心位置補正処理について説明する。ガタ中心位置補正処理は、ガタ幅Wの増加に合わせて、ガタBaの中心位置を適切な位置に補正する処理である。
【0096】
ステップS1において、ECU15では、ディテントプレート21をA方向またはB方向のいずれかに回転させることにより、シフト位置が切り替えられたか否かが判断される。すなわち、ECU15では、シフト位置が、P位置、R位置、N位置およびD位置のいずれかの所定のシフト位置に切り替えられたか否かが判断される。シフト位置が切り替えられた場合にはステップS2に進み、シフト位置が切り替えられていない場合にはステップS1を繰り返す。
【0097】
ステップS2において、ECU15では、上記所定のシフト位置におけるロータ111の第1回転角度θaが取得される。ステップS3において、ECU15では、取得された第1回転角度θaと、上記所定のシフト位置に対応する初期の回転角度θ1、回転角度θ2、回転角度θ3および回転角度θ4のいずれかとの差Diが取得される。ステップS4において、ECU15では、差Diがしきい値以上か否かが判断される。差Diがしきい値以上である場合にはステップS5に進み、差Diがしきい値未満である場合にはステップS1に戻る。
【0098】
ステップS5において、ECU15では、第1回転角度θaが記憶部16に記憶されるとともに、上記所定のシフト位置において差Diがしきい値以上であったことが記憶される。ステップS6において、ECU15では、ディテントプレート21をステップS1における回転方向とは逆方向に回転させることにより、上記所定のシフト位置に切り替えられたか否かが判断される。そして、上記所定のシフト位置に切り替えられた場合にはステップS7に進み、上記所定のシフト位置に切り替えられていない場合にはステップS6を繰り返す。
【0099】
ステップS7において、ECU15では、上記所定のシフト位置におけるロータ111回転角度として第2回転角度θbが取得される。ステップS8において、ECU15では、第1回転角度θaと、第2回転角度θbとの差に基づいて、現在のガタ幅Wpが取得される。ステップS9において、ECU15では、初期のガタ幅Wiと、現在のガタ幅Wpとの差に基づいて、現在のガタ幅Wpの増加量Amが取得される。ステップS10において、ECU15では、現在のガタ幅Wpの増加量Am分だけガタBaの中心Cpがオフセットされる。すなわち、ECU15では、現在のガタ幅Wpの増加量Amの分だけ直線L3の切片b3がオフセットされる。そして、ステップS10の後、ガタ中心位置補正処理が終了する。
【0100】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0101】
本実施形態では、上記のように、シフト装置100に、シフト位置に対応するように設けられた谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dを含むディテントプレート21と、ディテントプレート21の複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかに嵌まり込んだ状態でシフト位置を成立させるためのディテントスプリング22とを設ける。ECU15を、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて検出される駆動力伝達機構部14に含まれる現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成する。これにより、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正することにより、ディテントスプリング22をディテントプレート21の壁に押し付けることなく、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置に対応するガタBaの中心Cpの位置を補正することができるので、補正したガタBaの中心Crの位置に対応するモータ11の回転角度を取得することができる。この結果、ディテントスプリング22に過大な負荷をかけることなく、ディテントスプリング22をディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vに到達させるモータ11の回転角度を補正することができる。また、シフト切替動作の際、予め設定されたガタBaの中心Cpからのずれを補正することにより、経年摩耗により拡大する駆動力伝達機構部14に含まれるガタ幅Wrに起因してずれるガタBaの中心Crに合わせて、予め設定されたガタBaの中心Cpを補正することができるので、ガタBaの中心Crと、ディテントプレート21の複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置とが一致した状態を維持することができる。この結果、シフト切替動作の際のディテントスプリング22の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0102】
また、本実施形態では、上記のように、ECU15を、シフト切替動作の際、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかの谷底Vの位置と、予め設定されたガタBaの中心CpとのずれGaに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成する。これにより、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正することにより、ガタBaの中心Crと、ディテントプレート21の複数の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置とを正確に一致させることができるので、シフト切替動作の際のディテントスプリング22の位置制御を正確に行うことができるとともに、シフト位置の判定精度の低下を抑制することができる。
【0103】
また、本実施形態では、上記のように、ECU15を、初期のガタ幅Wiに対する現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成する。これにより、駆動力伝達機構部14のガタBaの摩耗によるガタ幅Wの増加に起因するずれGaを補正することができるので、ガタBaの中心Crと、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置とが一致した状態を維持することができる。この結果、シフト切替動作の際のディテントスプリング22の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0104】
また、本実施形態では、上記のように、ECU15を、初期のガタ幅Wiに対する現在のガタ幅Wpの増加量Amに基づいて、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaとしてガタ幅Wの増加量Amだけ、予め設定されたガタBaの中心Cpをオフセットするように構成する。これにより、駆動力伝達機構部14のガタBaの摩耗に起因する現在のガタ幅Wpの増加量Amに合わせて、予め設定されたガタBaの中心Cpをオフセットすることにより、予め設定されたガタBaの中心Cpと、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置とのずれGaを埋め合わせることができる。この結果、ガタBaの中心Crと、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの谷底Vの位置とが一致した状態を維持することができるので、シフト切替動作の際のディテントスプリング22の位置制御の精度の低下を抑制することができる。
【0105】
また、本実施形態では、上記のように、ECU15を、ディテントプレート21をA方向に回転させた際と、A方向とは反対のB方向に回転させた際との、ディテントスプリング22がディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dのいずれかの谷底Vから山部Mの頂部Tに移動するまでの移動区間における出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて、現在のガタ幅Wpを取得するとともに、取得されたガ現在のガタ幅Wpの中央の値を補正した新たなガタBaの中心Crとして取得するように構成する。これにより、線形近似などを用いて現在のガタ幅Wpを推定することなく、出力軸回転角度センサ13の出力値およびロータ回転角度センサ12の出力値に基づいて新たなガタBaの中心Crを取得することができるので、新たなガタBaの中心Crを容易に取得することができる。
【0106】
また、本実施形態では、上記のように、駆動力伝達機構部14に、モータ11側から伝達される回転速度を減速した状態でディテントプレート21を回動させるとともに、ガタ幅Wを含む減速機構部14aを設ける。ECU15を、シフト切替動作の際、出力軸回転角度センサ13の出力値とロータ回転角度センサ12の出力値とに基づいて検出される減速機構部14aに含まれる現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成する。これにより、少なくとも減速機構部14aに含まれる現在のガタ幅Wpに起因する予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正することにより、ガタBaの中心Crと、ディテントプレート21の谷部21a、谷部21b、谷部21cおよび谷部21dの各々の谷底Vの位置とを正確に一致させることができるので、シフト切替動作の際のディテントスプリング22の位置制御を正確に行うことができる。
【0107】
[変形例]
今回開示された上記実施形態は、全ての点で例示であり制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更(変形例)が含まれる。
【0108】
たとえば、上記実施形態では、シフト位置切替動作ごとに、ガタ幅Wの中央の値を補正する制御が行われている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シフト位置切替動作ごとではなく、所定の切り替え回数ごとに定期的にガタ幅の中央の値を補正する制御が行われてもよい。
【0109】
また、上記実施形態では、ガタ幅Wが、減速機構部14aのガタ幅Wである例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ガタ幅は、駆動力伝達機構部における減速機構部以外の他のガタ幅を含んでいてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、シフト位置が4つ(P、R、NおよびD)である例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、4つ以外の数を有するシフト装置に本発明が適用されてもよい。
【0111】
また、上記実施形態では、本発明のシフト装置100を、自動車用のシフト装置100に適用する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シフト装置は、たとえば、電車など、自動車用以外のシフト装置に適用されてもよい。
【0112】
また、上記実施形態では、ECU15は、現在のガタ幅Wpが、所定値以上である場合に、予め設定されたガタBaの中心CpからのずれGaを補正するように構成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ECUは、現在のガタ幅の増加量が、規定値以上である場合に、予め設定されたガタの中心からのずれを補正するように構成されていてもよい。
【0113】
また、上記実施形態では、説明の便宜上、ECU15の制御処理を、処理フローに沿って順番に処理を行うフロー駆動型のフローチャートを用いて説明した例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ECUの制御処理を、イベント単位で処理を実行するイベント駆動型(イベントドリブン型)の処理により行ってもよい。この場合、完全なイベント駆動型で行ってもよいし、イベント駆動およびフロー駆動を組み合わせて行ってもよい。
【符号の説明】
【0114】
11 モータ
14 駆動力伝達機構部
14a 減速機構部
21 ディテントプレート(シフト切替部材)
21a、21b、21c、21d 谷部
22 ディテントスプリング(位置決め部材)
30 ロータ回転角度センサ
40 出力軸回転角度センサ
100 シフト装置
111 ロータ
112 ステータ
Am (ガタ幅の)増加量
Cp (予め設定された)ガタの中心
Cr (新たな)ガタの中心
W (減速機構部に含まれる)ガタ幅
Wi (初期の)ガタ幅
Wp (現在の)ガタ幅
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