(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022077926
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】管継手、この管継手を用いるアンダーピーニング工法及びこの継手を備えた構造体
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20220517BHJP
E02D 5/28 20060101ALI20220517BHJP
E02D 27/48 20060101ALI20220517BHJP
F16L 21/00 20060101ALI20220517BHJP
F16L 37/05 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
E02D5/24 103
E02D5/28
E02D27/48
F16L21/00 A
F16L37/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189024
(22)【出願日】2020-11-12
(71)【出願人】
【識別番号】512256454
【氏名又は名称】KSコンサルタント株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】305039699
【氏名又は名称】プラン・ドゥ・ソイル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】皆川 恵三
【テーマコード(参考)】
2D041
3H015
3J106
【Fターム(参考)】
2D041AA02
2D041BA44
2D041CB06
2D041DB02
2D041DB13
3H015AA05
3H015AC03
3J106AA04
3J106BA01
3J106BB01
3J106BC03
3J106DA04
3J106DA19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アンダーピーニング工法において鋼管を連結する際に溶接作業を省略する。
【解決手段】鋼管へ挿入される接続部及び該接続部から外周外方へ膨出する鍔部5を備える鋼管用の管継手であって、鍔部5からの接続部の突出長さL1が鋼管の直径Dの0.5倍以上の長さを備える管継手を準備する。建物の下に設置されている第2鋼管200へ管継手を介して第1鋼管100を継ぎ足して第1鋼管100-継手1-第2鋼管200からなる構造体を形成する。構造体を形成するにあたり溶接は不要である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管と嵌め合いとなる接続部及び該接続部から半径方向へ張り出し、前記鋼管の端面が当接する鍔部を備える鋼管用の管継手であって、
前記鍔部からの前記接続部の突出長さL1が前記鋼管の直径Dの0.3倍以上である、管継手。
【請求項2】
前記突出長さL1は前記鋼管の直径の0.3倍以上、1.5倍以下である、請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
前記接続部と前記鋼管とのクリアランスは1.0~6.0mmである、請求項1又は2に記載の管継手。
【請求項4】
前記接続部と前記鋼管とはともに円筒状であり、前記接続部が前記鋼管より厚い、請求項1~3のいずれかに記載の管継手。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の管継手を準備するステップと、
建物の下に設置されている第2鋼管へ前記管継手を介して第1鋼管を継ぎ足して第1鋼管-管継手-第2鋼管からなる構造体を形成するステップと、を備え、
前記構造体を構成する第1鋼管、管継手、第2鋼管は、無負荷状態で、周方向の回転が自由である、アンダーピーニング工法。
【請求項6】
前記構造体を構成する第1鋼管、管継手、第2鋼管は相互に溶接されていない、請求項5に記載のアンダーピーニング工法。
【請求項7】
請求項1~4のいずれかに記載の管継手と、
前記管継手の第1接続部に嵌め合いとなる第1鋼管と、
前記管継手の第2接続部に嵌め合いとなる第2鋼管と、を備えてなる構造体。
【請求項8】
前記管継手と、前記第1鋼管及び第2鋼管との間は、溶接されていない、請求項7に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は管継手に関する。更に詳しくは、建物の基礎に対して行うアンダーピーニング工法に用いる鋼管用の継手の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
アンダーピーニング工法において建物を支える鋼管杭を増長するため、管継手を用いて鋼管を継ぎ足すことがなされている。
かかる管継手による鋼管杭の増長工事においては、継手の溶接作業に高い技量が要求される。わずかな誤差が鋼管杭の強度や耐久性を低下させるおそれがあるからである。従って、杭用の鋼管と管継手との溶接作業は厳格に品質管理されている。
アンダーピーニング工法は建物の下で行われるため、作業空間に制限が生じる場合があり、溶接の品質を確保するには作業者に過度の負担がかかることがあった。
たとえば、特許文献1に開示の工法では、相互に連結すべき第1鋼管と第2鋼管の相対向する端面にそれぞれ挿入される第1接続部及び第2接続部とを備え、この第1接続部と第2接続部との間に鍔部を設けて、この鍔部を第1鋼管及び第2鋼管よりそれらの外周外方へ突出させた管継手が開示されている。この鍔部の片側面に第1鋼管の端面が当接し、他方の面に第2鋼管の端面が当接する。この鍔部を用いることにより、いわゆるすみ肉溶接が可能となり、もって、アンダーピーニング工法における溶接作業を容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の工法を利用しても、建物下の制限された空間での溶接作業がなくなるものではない。
本発明者らは、そもそも、鋼管を連結する際に、溶接作業を省略することができないか、と検討を進めてきた。
その結果、特許文献1に記載されている第1接続部-鍔部-第2接続部を備えるタイプの管継手において、第1鋼管及び第2鋼管とそれぞれ嵌め合いとなる第1接続部と第2接続部との設計如何によっては、管継手と第1鋼管及び第2鋼管との溶接が不要になることを見出した。
【0005】
管継手において、第1鋼管及び第2鋼管の軸方向の耐力は、第1鋼管と第2鋼管との相対向する端面の間に介在する鍔部の材料を選択することにより解決できる。換言すれば、第1鋼管と第2鋼管と同一若しくは同種の材料と十分な厚さを選択して鍔部を形成すれよい。
他方、第1鋼管及び第2鋼管を管継手で連結したものに半径方向の応力がかかったとき、即ち曲げモーメントがかけられたとき、第1鋼管及び第2鋼管に対して管継手がずれて、第1鋼管-管継手-第2鋼管の構造体が変形するおそれがある。
【0006】
これに対し、本発明者らは、第1鋼管及び第2鋼管へ嵌め合いとなる管継手の第1接続部と第2接続部とに十分な長さを付与すれば、第1鋼管-管継手-第2鋼管の構造体に曲げモーメントがかけられても、第1接続部が第1鋼管の周面に干渉し、また、第2接続部が第2鋼管の周面に干渉して、第1鋼管-管継手-第2鋼管の構造体が維持されて変形することなく、この構造体に十分な曲げモーメント耐力を備えさせられることに気が付いた。
【0007】
第1鋼管-管継手-第2鋼管の構造体に何ら溶接作業を施さなくても、当該構造体に、これを連続した1本の、即ち何ら継ぎ目のない、鋼管と同等の機械的強度を付与することもできる。
もちろん、任意に溶接を施すことを制限するものではない。
【0008】
上記において、第1鋼管及び第2鋼管には円筒状のもの、若しくは角筒(特に矩形筒)を用いることができる。第1接続部及び第2接続部はそれに応じて嵌め合いとなる断面形状を備える。
ここに嵌め合いとは、鋼管に対して接続部を挿入するタイプと、鋼管に対して接続部を外挿するタイプ(即ち、接続部へ鋼管を挿入するタイプ)とがある。
【0009】
この発明の第1の局面は次のように規定される。
鋼管と嵌め合いとなる接続部及び該接続部から半径方向に張り出し、前記鋼管の端面が当接する鍔部を備える鋼管用の管継手であって、
前記鍔部からの前記接続部の突出長さL1が前記鋼管の直径Dの0.3倍以上の長さを備える、管継手。
【0010】
本発明者らの検討によれば、鍔部からの接続部の突出長さ、即ち鍔部から接続部の先端までの長さL1と、鋼管-管継手-鋼管の構造体(以下単に、構造体ということがある)との曲げ耐力
jM
a及び鋼管の曲げ耐力
cMの比との関係は
図1のようになった。
本発明者らの経験によれば、鋼管に要求される曲げ耐力は何ら継ぎ目のない鋼管の曲げ耐力の100%は必要ないことがわかっている。
よって、
図1の関係から、鍔部から接続部の先端までの長さL1を当該接続部が挿入される鋼管の直径Dの0.3倍以上とした。
好ましくは、設計上、発生が予想される曲げモーメントに対応する耐力が得られるように、
図1の結果に基づきL1の長さを決めることができる。
図1の結果から、L1/Dは0.5以上とすることが好ましい。更には、0.75以上とすることが好ましい。
【0011】
ここに、接続部は鋼管に対して、嵌め合い作業に支障が生じない範囲において可及的に隙間なく挿入される外径を備えることが好ましい。本発明者らの検討によれば、鋼管の内径と接続部の外径との間(若しくは、鋼管の外径と接続部の内径との間)に6.0mm以下のクリアランスを設けることが好ましい。これにより、構造体に十分な曲げ耐力が得られる。このクリアランスが6.0mmを超えると、構造体に曲げモーメントがかけられたとき、接続部の先端側が部分的に鋼管の周面に片当たりして、そこに過剰な応力が集中するおそれがあるので好ましくない。
同様な理由により、接続部の突出長さL1が鋼管の直径Dの0.3倍未満になると、鋼管の周面に対する接続部の先端の片当たりが促進されるので、好ましくない。
【0012】
この長さL1が鋼管の直径Dの0.3倍以上になれば、鋼管と管継手とを溶接しなくても、十分な曲げ耐力を確保できる。この長さL1の上限は特に制限されるものではないが、直径Dの1.5倍を超えると曲げ耐力の向上率が飽和する。
既述のとおり、接続部は挿入相手である鋼管の周面に干渉して曲げモーメントに対する耐力を確保するものであるので、この明細書において接続部の突出長さL1はかかる作用に寄与する部分が該当する。例えば、鋼管へ挿入するタイプの接続部において、鋼管に対する挿入を容易にするため、接続部の先端をテーパ面としたとき、当該テーパ面は接続部の長さL1に算入しない。他方、接続部の中腹にテーパ状のものも含めて小径部が設けられていても、接続部がその先端側で鋼管の内周面に干渉して曲げモーメントに対する十分な耐力が確保できれば、接続部の長さL1は当該小径部を超えて、接続部の先端部までの長さとなる。
【0013】
接続部は鋼管の内周面に沿った形状の外周面を備えるものとする。鋼管が円筒状であれば、接続部も円筒状とする。鋼管が角筒状であれば、接続部も角筒状とする。鋼管とこれに嵌め合わされる接続部の断面形状は、既述のクリアランスをもって、相似形とする。全方向からの曲げモーメントに対応するためである。接続部には補強部を設けることができる。かかる補強部として、鋼管に対向する面と反対側の面へ軸方向に連続するリブを設けることができる。また、鋼管へ挿入するタイプの接続部において、その先端部に蓋を設けてもよい。
径の異なる第1鋼管及び第2鋼管の接続に使われる管継手の場合、各鋼管と嵌め合わされる接続部の突出長さが、相手先の鋼管の直径に応じて、上記の関係を維持するように調製される。
【0014】
接続部を円筒状としたとき、その厚さは、構造体に所望の曲げ耐力が確保できれば、特に制限されない。鋼管と同じ材質で継手の接続部を円筒状に形成した場合には、鋼管より接続部を厚くすることが好ましい。実施例では、接続部の厚さを鋼管の厚さの1.2~1.9倍としているが、これに限定されるものではない。
【0015】
接続部を鋼管に挿入するタイプの管継手においては、鍔部はその径が、鋼管の外周の径より大きく、もって、その全周において鋼管より外周外方へ突出していることが好ましい。これにより、第1鋼管の端面の全面を鍔部の一方の面へ、第2鋼管の端面の全面を鍔部の他方の面へそれぞれ確実に当て付けられる。
鍔部の形状は任意に設計できる。例えば、円環状、多角環状とすることができる。
鍔部には外周から複数の切り込みを形成することが好ましい。この切り込みは、鍔部の外周方向から見て、鋼管の外周面と同じかそれよりも深く形成される。棒状の定規を各切り込みに押し入れて、上下の鋼管(同じ外径を備えるものとする)の外周面に沿わせる。これにより、上下の鋼管の芯合わせを行うことができる。
かかる切り込みは、鍔の中心からみて対称に形成してもよいし、非対称に形成してもよい。
【0016】
鋼管へ接続部を挿入するタイプの管継手では、接続部の外径寸法と同じ内径寸法を有する円環状の部材を半径方向に複数(2~4つ)に分割しておいて、分割した部材を筒状の接続部の中央にてその周方向から嵌め合わせて溶接し、もって鍔部とすることができる。分割した各部材の間に隙間を設けることにより、既述の切り込みを設けることができる。
円環状の部材の分割位置は、アンダーカットを生じさせない条件のもと、任意に設計できる。
【0017】
鋼管へ接続部を外挿するタイプの管継手では、上記と同様に、分割したリング状の鍔部を、接続部となる鋼管の内周面へ溶接する。
接続部と鍔部は同一材料であっても、異なる材料であってもよい。
接続部と鍔部が同一材料のとき両者は鋳造品とすることもできる。
【0018】
第1鋼管と第2鋼管は、アンダーピーニング工法に求められる条件によって、その長さ、径、材質は任意に選択できる。
耐久性などの品質を安定するため、第1鋼管、第2鋼管及び管継手は同じ材料(例えば、鋼材、表面はめっき)とすることが好ましい。この発明では、溶接が不要とされているので、全部材に対してめっきを施すことができる。
鋼管の径Dは、実施例ではその外周の径を採用している。鋼管の内周の径、鋼管材料の中心の径を採用しても、
図1の関係から、その効果(十分な曲げ耐力)について実質的な差異は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は構造体の曲げ耐力
jM
c及び鋼管の曲げ耐力
cMの比
jM
c/
cMと接続部の接続部の突出長さL1との関係を示すグラフである。
【
図2】
図2はこの発明の実施形態の管継手の構造を示す模式図である。
【
図3】
図3は曲げ耐力の演算方法を説明するための模式図である。
【
図4】
図4はこの発明の他の実施形態の管継手の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明においては土中に埋設された鋼管にとっての上下を、当該鋼管及び継手における上下とする。
【0021】
図2は本発明の一実施形態の構造体の構成を示した図である。
図2Aは平面図、
図2Bは縦断面図である。
この構造体は第1鋼管100-管継手1-第2鋼管200からなる。
管継手1は、筒状部3とこの筒状部3の軸方向中央の外周面から半径方向外側へ張り出した鍔部5とを備えている。
筒状部3の外周外面において軸方向中央に鍔部5が溶接されている。鍔部5は3つの部材5A、5B及び5Cに分割されており各部材の間以には隙間7が形成されている。
筒状部3と鍔部5とを一体に形成することもできる。
筒状部3において、第1鋼管100に挿入される部分が第1接続部11であり、第1鋼管200に挿入される部分が第2接続部21である。
第1鋼管100の内径と第1接続部11の外径とのクリアランス2t
cは4.0mmとした。
【0022】
同じく、第2鋼管200へ挿入される第2接続部21の外径と、第2鋼管200の内径とのクリアランス2t
cも4.0mmとしている。
鍔部5の幅は、第1接続部11を第1鋼管100へ、第2接続部21を第2鋼管200へそれぞれ挿入したとき、鍔部5の外周が第1鋼管100及び第2鋼管200の各外周よりわずかに外方へ突出するものとする。
図2において、L1は第1接続部11と第2接続部21の突出長さ、L2は鍔部5の厚さ、Lは管継手1の総長さ、Dは第1鋼管100及び第2鋼管200の外径である。
【0023】
以下、この発明の実施例について説明する。
この発明の第1実施例の第1鋼管-管継手-第2鋼管のスペックは次の通りである。
第1鋼管100及び第2鋼管の直径D:89.1mm、鋼厚t:4.2mm
管継手の第1接続部11及び第2接続部の突出長さL1:45.0mm、クリアランス2tc;4.0mm、
ただし、第1接続部11及び第2接続部21の外径Di:76.5mm、鋼厚ti:5.0mm、鍔部5の厚さ:7.0mm、鍔部5の外径;95.0mm。
【0024】
この発明の第2実施例の第1鋼管-管継手-第2鋼管のスペックは次の十である。
第1鋼管100及び第2鋼管の直径D:114.3mm、鋼厚t:6.0mm
管継手の第1接続部11及び第2接続部の突出長さL1:57.0mm、クリアランス2tc;4.0mm。
ただし、第1接続部11及び第2接続部21の外径Di:98.3mm、鋼厚ti:7.0mm、鍔部5の厚さ:11.0mm、鍔部5の外径;120.0mm。
【0025】
この発明の第3実施例の第1鋼管-管継手-第2鋼管のスペックは次の十である。
第1鋼管100及び第2鋼管の直径D:165.2mm、鋼厚t:7.1mm
管継手の第1接続部11及び第2接続部の突出長さL1:83.0mm、クリアランス2tc;4.0mm。
ただし、第1接続部11及び第2接続部21の外径Di:147.0mm、鋼厚tい:10.0mm、鍔部5の厚さ:14.0mm、鍔部5の外径;171.0mm。
【0026】
各実施例の連結構造を構成する要素のスペックを下記の理論式に代入して、圧縮力及び曲げモーメントの検討を行った。
継手部の曲げ耐力は、rM、iM、cMの小さい方とする。
【0027】
てこ反力モーメント
rM:
てこ反力曲げモーメント
rMによる継手反力q
mを
図3のように仮定すると、式(1.1)で表される。
q
m=∫σ
m・cosθ・(D-2
dt)dθ (1.1)
支圧面の有効範囲を±30°と仮定すると、q
mは式(1.2)で表される。
q
m=(D-2
dt)σ
m・sin30° (1.2)
【0028】
てこ反力曲げモーメントは式(1.3)で表される。
rM=qm・c・L1×(L1-c・L1)
=(D-2dt)σm・sin30°・c・L1×(L1-c・L1)
=(D-2dt)σm・sin30°・c(1-c)L1
2 (1.3)
よって、σmは式(1.4)となる。
σm=rM/A1×106 (1.4)
ここで、A1(mm3)は式(1.5)で表される。
A1=(D-2dt)sin30°・c(1-c)L1
2 (1.5)
【0029】
てこ反力によって発生する継手鋼管の円周方向の応力度σtmは式(1.6)で表される。
【0030】
【数1】
式(1.4)と式(1.6)より、σ
tmは式(1.7)で表される。
【0031】
【数2】
ここで、A
2(1/mm
3)は式(1.8)で表される。
【0032】
【0033】
また、継手の曲げモーメントrMによって軸鋼管に発生する軸方向の応力度σoは式(1.9)で表される。
σo=rM/cZ×106 (1.9)
軸鋼管の断面係数cZは式(1.10)で表される。
【0034】
【数4】
ここで、式(1.11)で表すように、軸方向と円周方向の応力の合成値が軸鋼管の許容応力度f
tを下回る必要がある。
【0035】
【0036】
式(1.11)に式(1.8)および式(1.9)を代入して整理すると、式(1.12)となる。
(A2
2+1/cZ2)×rM2-ft
2=0 (1.12)
これより、rMを求めると式(1.13)となる。
【0037】
【0038】
継手モーメントiM:
【0039】
【0040】
軸鋼管の耐力cM:
【0041】
【0042】
ここで、t:鋼管の厚さ(mm)、dt:軸鋼管の腐食代1mm、D:軸鋼管の直径(mm)、r:軸鋼管の半径(mm)、jfc:継手部の圧縮応力度(N/mm2)、fc:軸鋼管の圧縮応力度(N/mm2)、ft:軸鋼管の引張応力度(N/mm2)、c:支圧面の長さ割合0.1(実験結果より)、Di:継手部軸部鋼管の外径(mm)、ti:継手部軸部鋼管の厚さ(mm):jft:継手部の引張応力度(N/mm2)
【0043】
上記より,継手の曲げ耐力
jM
aと軸鋼管の曲げ耐力
cMの比
jM
a/
cMと継手の軸鋼管部と接触する長さL
1の関係は,
図1のように表すことができる。また,これらの関係は5次式で表すことができる。
これらの関係より,本工法の継手は,
jM
a/
cM=0.5以上を確保するものとする。
製品としては、L1=0.5Dと0.75Dが予定されている。
【0044】
各実施例の管継手の曲げ試験を行った。
曲げ試験は、単純梁4点曲げ試験と単純梁3点曲げ試験である。
単純梁4点曲げ試験は、鋼管-継手-鋼管からなる構造体において両端を下から支えて、各鋼管において継手に接続する部分の近傍へ上から荷重をかけた。
単純梁3点試験では、鋼管-継手-鋼管-継手-鋼管からなる構造体において両端を下から支えて、中央の鋼管の中心へ上方から荷重をかけた。
得られた結果が
図1である。
【0045】
図1より、接続部の突出長L1が鋼管の外径Dの0.75倍以上となると、構造体の曲げ耐力
jM
a及び鋼管の曲げ耐力
cMの比が0.5以上になることがわかり、上記理論計算値とほぼ一致している。
接続部の突出長さL1が鋼管の外径Dの1.5倍以上になると、構造体の曲げ耐力
jM
a及び鋼管の曲げ耐力
cMの比が0.9を超える。換言すれば、接続部の突出長さL1を鋼管の外径Dの1.5倍を超えて長くしても、継手の重力が嵩むだけのことになる。
【0046】
図4の他の実施形態の管継手30を示す。
管継手30は、筒状部43とこの筒状部43の軸方向中央の内周面から半径方向中心側へ張り出した鍔部45とを備えている。
筒状部43の内周面において軸方向中央に鍔部45が溶接されている。鍔部45は4つの部材45A~45Dに分割されており各部材の間以には隙間47が形成されている。
筒状部43と鍔部45とを一体に形成することもできる。
この管継手30はその第1接続部41を第1鋼管100へ外挿し、第2接続部42を第2鋼管200へ外挿する。
【0047】
筒状部43において、第1鋼管100に外挿する部分が第1接続部41であり、第2鋼管200に外挿する部分が第2接続部42である。
鍔部45の幅は、第1接続部41を第1鋼管100へ、第2接続部42を第2鋼管200へそれぞれ外挿したとき、鍔部45の内周が第1鋼管100及び第2鋼管200の各内周よりわずかに内側へ突出するものとする。
【0048】
以上のように本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 継手
5 鍔部
100 第1鋼管
200 第2鋼管