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特開2022-7796新型コロナウイルス感染症予防・治療剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007796
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】新型コロナウイルス感染症予防・治療剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/525 20060101AFI20220105BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 31/7064 20060101ALI20220105BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20220105BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61K31/525
A61K31/7084
A61K31/7064
A61P31/14
A61K9/08
A61K9/20
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110973
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】516326449
【氏名又は名称】荒木 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100093816
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 邦雄
(72)【発明者】
【氏名】荒木 誠一
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076AA93
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB25
4C076CC35
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB09
4C086EA16
4C086EA18
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA35
4C086MA36
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
【課題】ビタミンB2を含有する新型コロナウイルス感染症予防・治療剤を提供する。
【解決手段】ビタミンB2を含有することを特徴とする、新型コロナウイルス感染症予防・治療剤とし、より具体的には、前記ビタミンB2が、リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム(リボフラビンリン酸エステルナトリウム)、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチド、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビンモノヌクレオチド、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチド、それらの塩化物の内から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンB2を含有することを特徴とする、新型コロナウイルス感染症予防・治療剤。
【請求項2】
前記ビタミンB2が、
リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム(リボフラビンリン酸エステルナトリウム)、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチド、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビンモノヌクレオチド、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチド、それらの塩化物の内から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の新型コロナウイルス感染症予防・治療剤。
【請求項3】
ビタミンB2が、
注射剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、吸入剤、トローチ及びドリンク剤の内から選ばれる何れか1の形態であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の新型コロナウイルス感染症予防・治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビタミンB2を含有する新型コロナウイルス感染症予防・治療剤に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症は、“SARS-CoV2”(以下「新型コロナウイルス」という)よる感染症で、WHOはこの新型コロナウイルスによる感染症のことを“COVID-19”と名付けている。
【0003】
2019年12月以降、中国湖北省武漢市を中心に発生し、短期間で全世界に広がり、パンデミックとなっている。このように新型コロナウイルスは、これまでに全く存在せず、新しく出現した病原体である。
【0004】
新型コロナウイルス感染症の症状は、発熱(37.5℃以上)、喉の痛み、咳、痰などの風邪のような症状を呈し、嗅覚・味覚障害が生じることもあり、なかには4日以上の経過後に高熱、胸部不快感、呼吸困難などが出現し、重症化すれば肺炎へ進展する場合がある。
また、肺炎だけでなく上気道炎や気管支炎など、ほかの呼吸器系器官にも炎症が生じるケースがある。
【0005】
その他、重症化した場合の特徴には”サイトカイン・ストーム”と呼ばれる全身性の炎症があることが指摘されている。サイトカイン・ストームにより全身の血管の炎症が起こる場合があり、重症例では血栓症などの合併症も認められている。
また、新型コロナウイルスによる直接の血管への攻撃からも、血栓症を生じることが報告されている。
【0006】
これらの重症化は高齢者や基礎疾患(心血管疾患、糖尿病、悪性腫瘍、慢性呼吸器疾患など)を有する方で多く見られている。
【0007】
この新型コロナウイル感染症に対する治療薬(特効薬)や予防薬、ワクチンなどは、現在まだ十分に開発されておらず、早急に有効な画期的な予防・治療薬の開発が望まれる。
【0008】
ところで、発明者は、過去にビタミンB2薬品として、リボフラビン及び/またはリボフラビン誘導体より成る特許文献1の「免疫賦活・感染防御剤及びその製造方法」、特許文献2の「ビタミンB2還元体を含む医薬」、特許文献3の「還元型ビタミンB2の製造方法及びその製剤」、特許文献4の「リボフラビン系化合物を含む医薬を開発、公開している。
【0009】
特許文献2によれば、例えば、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビンモノヌクレオチド、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチド、又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分とする免疫賦活・感染防御治療剤(請求項1)、その他、敗血症予防治療剤、敗血症性ショック予防治療剤、マラリア予防治療剤としての用途を見出した。
【0010】
しかしながら、還元型ビタミンB2は、酸化されビタミンB2に戻り、安定して還元型ビタミンB2の状態を保持することはできなかった。
【0011】
また、還元型ビタミンB2の製造では、特許文献2に「本発明におけるリボフラビン還元体及び/又はリボフラビン誘導体の還元体、またはそれらの薬理学的に許容される塩は、通常使用されるハイドロサルファイト又は塩化スズ等の還元剤を添加することにより、容易に製造することができる。」とあるように、人体に使用できない還元剤を用いるため、人体への治療、投与に際して、その還元剤を除去する必要があり、コスト、副作用の点から実用化に至っていない。
【0012】
そこで、発明者は、特許文献3において、還元型ビタミンB2を簡易、低コストで製造し、長期間安定保管、流通でき、さらに安全に投与できる、還元型ビタミンB2を含む製剤、さらに、知られていない還元型ビタミンB2の新たな用途も提供している。具体的には、水素水と、前記水素水に溶解した還元型ビタミンB2を含むことを特徴とするミトコンドリア活性化に起因した血管内皮細胞保護回復用還元型ビタミンB2製剤、同時に本発明は、活性酸素除去剤、酸化ストレス除去剤、過剰サイトカイン抑制剤、疲労回復剤、血球数回復剤、肝・腎障害回復剤、癌疾患或いは認知症の予防又は治療剤としても作用するものでもある。
【0013】
他方、特許文献4によれば、ビタミンB2は、優れたサイトカイン抑制作用を有し、高サイトカイン血症を伴う炎症性疾患の予防又は治療剤として作用した。
【0014】
ここで、新型コロナウイルス感染者の8割は軽症者であり、また2~3週間の入院で、自分の免疫力で回復させれば、退院となる状況にあることが報告されている。一方、無症状感染者も多くいる。また、海外の抗体検査のデータからしても、PCR陽性患者の20倍以上の感染者(自然治癒)がいることが報告されている。
【0015】
これらのことから、免疫力、特に自然免疫力があれば、感染を防げたり、発症しても自然に治癒できたりする者が、大半と考えられる。したがって、この自然免疫力を、上げることができれば、予防及び治療の一つの選択肢として考えられる。
【0016】
免疫には、自然免疫と獲得免疫がある。自然免疫は、好中球、マクロファージ、NK細胞などが、体内に侵入してきた病原体を、最初に非特異的に排除したり、感染細胞を破壊したりする。一方、獲得免疫は、その病原体の特異的な抗体によって、排除し、あるいは細胞性免疫と共同して排除する、ワクチンはこれを利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開平05-201864号公報 「免疫賦活・感染防御剤及びその製造方法」
【特許文献2】国際公開WO2002/074313号公報 「ビタミンB2還元体を含む医薬」
【特許文献3】特開2018-70510号公報 「還元型ビタミンB2の製造方法及びその製剤」
【特許文献4】国際公開WO2003/075935号公報 「リボフラビン系化合物を含む医薬」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
そこで、本発明は、ビタミンB2を含有する新型コロナウイルス感染症予防・治療剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、上記課題を解決するために、
(1)
ビタミンB2を含有することを特徴とする、新型コロナウイルス感染症予防・治療剤
(2)
前記ビタミンB2が、
リボフラビン、リン酸リボフラビンナトリウム(リボフラビンリン酸エステルナトリウム)、リボフラビン酪酸エステル、フラビンモノヌクレオチド及びフラビンアデニンジヌクレオチド、ロイコフラビン、モノハイドロフラビン、ロイコフラビンリン酸エステル、ロイコフラビンモノヌクレオチド、ロイコフラビンアデニンジヌクレオチド、それらの塩化物の内から選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする(1)に記載の新型コロナウイルス感染症予防・治療剤。
(3)
ビタミンB2が、
注射剤、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、吸入剤、トローチ及びドリンク剤の内から選ばれる何れか1の形態であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の新型コロナウイルス感染症予防・治療剤。
の構成とした。
【0020】
ここで、ビタミンB2は、リボフラビン及びその誘導体の別名であり、天然には肝臓、ビール酵母、牛乳、肉、卵、緑色野菜等に多く含まれる物質である。薬物としては口角炎、口唇炎、舌炎、急・慢性湿疹、脂漏性湿疹、ペラグラ等の疾患の予防治療剤として用いられる。
【0021】
ビタミンB2は生体内では結合型すなわち、フラビンモノヌクレオチド(FMN)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)の形で存在し、フラビン蛋白質又はフラビン酵素と呼ばれる酸化還元酵素の補欠分子族として機能し、糖、脂質、アミノ酸の酸化的分解やミトコンドリアやミクロソームの電子伝達において中心的役割を果たしている。
【0022】
本発明においてビタミンB2の投与量は、注射薬としては、体重1kgあたり、0.1mgから100mgであり、好ましくは0.5mgから50mgであり、より好ましくは1mgから25mgである。
ビタミンB2の投与方法は、特に限定されないが、重篤なショック状態の場合は注射剤や吸入剤として投与することが好ましい。症状が軽い場合は経口又は直腸からも投与できる。
【0023】
経口剤としての投与量は、1日量として、30mgから500mgであり、好ましくは50mgから400mgであり、より好ましくは70mgから360mgである。
【発明の効果】
【0024】
ビタミンB2は、これまで免疫賦活剤として、自然免疫を増強することがわかっており、これによって病原体を排除し、かつエンドトキシンショックによる高サイトカイン血症にも効果が認められていることから、メカニズム的に新型コロナウイルス感染症におけるサイトカイン・ストームに対しても有効性が期待できる。
【0025】
これらに、新型コロナウイルス感染症の重症病態では、血栓症を生じるところ、今回、新たにビタミンB2の血栓防止作用も見出して本願発明にいたった。したがって、新型コロナウイルス感染症の軽症および重症のそれぞれの病態の進行に応じた予防・治療薬を提供することができる。
【0026】
ここで、サイトカイン・ストームとは、本来、サイトカインは、病原体の排除に向けられるものが、過剰に産生され、暴走し、高サイトカイン血症になり、サイトカインの嵐の状態になることをいう。この状態では、正常な細胞まで、損傷してしまい、臓器不全を起こし、究極的には死に向かうことになる。
【0027】
軽症者には、経口投与剤で治療し、重症者には、注射や点滴で投与して治療することができる。また、新型コロナウイルス感染が勃発したクラスター患者はもちろん治療するとともに、濃厚接触者にもビタミンB2を投与して、発症を抑制する予防薬としても有用性が極めて高い。
【0028】
ビタミンB2は、安価で、大量供給が可能で、新興国を含め世界での汎用性が高く、安全性が高い薬として、経口投与剤や注射薬として、画期的な治療薬、あるいは、予防薬の一つになり得る。まさに、これまでに存在せず新規に発生した新型コロナウイルスに対して、選択発明としてビタミンB2は、画期的な予防・治療薬といえる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例0030】
新型コロナウイルスの代用としてウイルスを排除できるという効果を得るため、豚仮性狂犬病ウイルス(オーエスキーウイルス)を用い、マウスに133PFUを皮下に接種し、その後の生存率を動物倫理に基づき測定した。
【0031】
マウスはSLC:ICR雄性マウスを用い、1群10匹とした。ビタミンB2としては、リン酸リボフラビンナトリウムを用い、注射用蒸留水に溶解後、0.22μmのフィルターにより滅菌濾過して5w/v%の注射液を得た(以下本試料と称する)。対照試料として注射用蒸留水を用いた。
【0032】
ビタミンB2は、オーエスキーウイルス感染直後、1、2日後の3回、静脈内に注射して治療効果を見た。効果はχ検定により統計学的に比較した。それらの結果を、表1に示した。
【0033】
【表1】
【0034】
表1より、本試料の100mg/kgの投与量をオーエスキーウイルス接種直後、1日、および2日後に投与すると、対照群の生存率が0%であるのに対し、本試料を投与するとビタミンB2群は70%の生存率の有意な上昇を示した。すなわち、ウイルス感染に対する明確な治療効果が認められた。
【実施例0035】
血栓モデルとして、SLC:ICR雄性マウス1群20匹を用い、platelet activating factor(PAF;血小板活性化因子)を2.5μg/kgを静脈内投与し、その5分前にビタミンB2としてリン酸リボフラビンナトリウムを用い上記同様に作成した、リン酸リボフラビンナトリウム20mg/kgを静注して、動物倫理に基づき生存率を測定した。効果はχ検定により統計学的に比較した。それらの結果を、表2に示した。
【0036】
【表2】
【0037】
表2より、試料の20mg/kgの投与量をPAF投与5分前に投与すると、対照群の生存率が0%であるのに対し、本試料を投与するとビタミンB2群は50%の生存率の有意な上昇を示した。血小板活性化因子による凝固作用に対し、血栓の抑制効果を示した。なお、この作用機序については、現在、解明すべく鋭意研究中である。
【0038】
以上の実施例から、ビタミンB2の免疫賦活作用により、病原体を排除し、同時に血栓を防止して、生存せしめる作用を有していることが明白である。
【0039】
さらに、ビタミンB2は、エンドトキシンによる高サイトカイン血症を防止することが知られており(特許文献4)、作用機序的に同様と考えられ、新型コロナウイルスによるサイトカイン・ストームに対しても十分に有用性が期待できる。
【0040】
これらの作用は、新規に出現した新型コロナウイルス感染症の病態に合致した有用性を提供でき、選択的発明として、新型コロナウイルス感染症に対して新しい予防・治療薬を提供することができる。