(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007797
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】工業排気中のCO2回収方法および装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20220105BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20220105BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20220105BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20220105BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20220105BHJP
【FI】
B01D53/18 120
B01D53/14 210
B01D53/14 220
B01D53/62 ZAB
B01D53/78
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020110974
(22)【出願日】2020-06-26
(71)【出願人】
【識別番号】592205610
【氏名又は名称】木村 健
(71)【出願人】
【識別番号】599038547
【氏名又は名称】木村 紀子
(71)【出願人】
【識別番号】599038569
【氏名又は名称】佐藤 淳子
(71)【出願人】
【識別番号】599038558
【氏名又は名称】木村 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100070183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100131303
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 徳人
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC05
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA02
4D002CA05
4D002DA31
4D002EA08
4D002FA01
4D002GA01
4D002GB03
4D002GB11
4D020AA03
4D020BA16
4D020BB03
4D020BC01
4D020CB05
4D020CC10
4D020CD01
4D020DA03
4D020DB02
4D020DB06
4G146JA02
4G146JB07
4G146JB09
4G146JC28
4G146JC39
(57)【要約】
【課題】排煙中のCO
2を吸収するための吸収剤としてアミンを用いる場合に、使用するアミンを効率的に再生可能とする。
【解決手段】排煙の排出口に接続した横型水平回転円筒式吸収装置内で排煙と接触させつつCO
2の吸収をおこなうCO
2吸収剤としてアミンを用いるとともに、上記横型水平回転円筒式吸収装置内から取り出したアミンを、110℃~130℃まで加熱してCO
2を吸収・回収した後、40℃~50℃までに冷却し、冷却したアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に繰り返し循環使用する。これによりアミンの使用量を減少させて低コスト化をはかる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横型水平回転円筒式吸収装置を40℃~50℃の範囲に冷却した排煙の排出口に接続するとともに、CO2吸収剤としてアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に排煙と接触させて用いるようにした処理装置において、横型水平回転円筒式吸収装置から取り出されたアミンをアミン再生部に導き、アミン再生部における加熱部でアミンを110℃~130℃まで加熱してCO2を回収した後、40℃~50℃までに冷却し、冷却したアミンを横型水平回転円筒式吸収装置に循環させて使用するようにした工業排気中のCO2回収装置。
【請求項2】
横型水平回転円筒式吸収装置を40℃~50℃の範囲に冷却した排煙の排出口に接続するとともに、CO2吸収剤としてアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に排煙と接触させて用いるようにした処理装置において、横型水平回転円筒式吸収装置から取り出されたアミンをアミン再生部に導き、アミン再生部における加熱部でアミンを110℃~130℃まで加熱してCO2を回収した後、40℃~50℃までに冷却し、冷却したアミンを横型水平回転円筒式吸収装置に循環させて使用するようにした工業排気中のCO2回収方法。
【請求項3】
生石灰焼成炉を横型水平回転円筒式吸収装置の前段に接続してポルトランドセメントクリンカーを焼成するに際し、生石灰焼成炉からの排ガス横型水平回転円筒式吸収装置を40℃~50℃の範囲に冷却した排煙の排出口に接続するとともに、CO2吸収剤としてアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に排煙と接触させて用いるようにした処理装置において、横型水平回転円筒式吸収装置から取り出されたアミンをアミン再生部に導き、アミン再生部における加熱部でアミンを110℃~130℃まで加熱してCO2を回収した後、40℃~50℃までに冷却し、冷却したアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に循環させて使用するようにしたことを特徴とするポルトランドセメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉などの鉄鋼、あるいは電力、セメント製造プラント、さらには石油プラント等の比較的規模の大きな工業的排気源からの排煙中よりCO2を回収除去するための吸収剤の効率的な再生方法およびその装置に関する。
【0002】
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、地球温暖化の主な要因は、人為的に発生するCO2の増加および拡散であり、これを阻止するためには、より炭素の少ないエネルギーへの変換、あるいは再生エネルギーへの転換とともに、CO2の回収ないし貯留技術(CCS)の向上が必要である。CCSは電力、鉄鋼、セメント工場、製油所などのCO2の集中排出源からCO2を分離回収してこれを液化炭酸とし、これを望ましくは深海水底や深地底中に隔離することが必要であるが、未だに満足できる技術が確立しているとは言えない段階にある。
【背景技術】
【0003】
最近の地球環境に関する各種の報告や報道によれば、CO2排出規制についての問題は危急に解決しなければならない大きな課題であり、全世界的に協調して解決をしなければならない段階に達していることはいうまでもない。
【0004】
本発明者はかつて、表面に孔を有しない円筒を水平状態にて回転可能に配し、この回転円筒にはその両端に環状エンド・プレートを設けるとともに、その一端に被処理ガス入口を、他端にはその出口を設け、かつ回転円筒の一端に脱硫剤スラリーの供給手段を、また他端にはその排出口を設け、この回転円筒の内部空間を全断面にわたって均一に、その表面又は内部に空隙あるいは空孔を有する多数の独立した充填物を充填し、しかも円筒の内壁には円筒底部に貯留され、一端から他端方向に向けて流れる脱硫剤スラリーを汲み上げるための多数の略U字形状のリフターを、軸方向にそれぞれ平行に、上記充填物の充填範囲にわたって取り付けるようにした排煙脱硫装置を考案した(実公昭53-19171号公報)。
【0005】
この排煙脱硫装置は、その後、(旧)日本セメント・大阪工場で採用されて2基設置され、また(旧)第一セメント川崎工場でも採用・設置され、合計3基の設置をみるにいたり、旧型の竪型吸収塔に比べると、明らかに効率のよい運転実績を示している。本発明者らは、この排煙脱硫装置を「ロータリースクラバー」と称して賞賛し、さらにその後改良を加えて米国特許も出願した(US Application Pub No.US2013/0309139 A1)。
とくにアルカノールアミンによるCO2化学吸収法は、発電所をはじめとする大規模なCO2排出源におけるCO2排出削減手段として現在においても最も有効な手段として位置づけられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭53-19171号公報
【特許文献2】US Application Pub No.US2013/0309139 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般にアミンによりCO2を化学的に回収する場合の化学反応としては、
R―NH2+CO2+H2O -(40℃~50℃)→ RNH3HCO3 (1)
R-NH3HCO3 -(110℃~130℃)→ R-NH2+CO2+H2O (2)
が知られている。
一方三菱重工や関西電力グループの報告によれば、CO2化学吸収液の利用効率として、竪型吸収塔を用いた場合には0.63~0.72mol CO2/アミン化合物、と報告されている。
【0008】
上記の化学反応式より考えれば、この報告された数字は、機能的に満足できる数値として、本来は1.00となるべきものであるが、報告された数字はCO2の化学物質吸収手段としては十分に満足できるものではないことになる。その原因は、吸収装置が排ガスに同伴されてアミンが失われてしまうからである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで本発明者は、さらに研究の結果、工業的排煙中のCO2を、より効率的に回収するために、従前のような竪型吸収塔ではなく、本発明者が開発したロータリースクラバー、つまり気液接触の良好な横型の回転円筒型吸収装置の使用を基本とし、さらにCO2の化学物質吸収手段としてアミンを用いるとともに、該アミンを迅速に繰り返し使用できるようにして著しいコストの低減化をはかるようにしたものである。さらに横型の回転円筒型吸収装置内を循環して排出されたCO2を含有するアミンを、CO2の回収手段として迅速に繰り返し使用できるようにするために、吸収塔内を循環して排出された使用済のアミンに対して、これを繰り返し再使用できるように加熱と冷却手段とを備えるようにしたものである。
【0010】
本発明者が開発したロータリースクラバーによれば、排煙脱硫の実験において、通常の燃焼ガスを処理する場合には、脱硫生成物としては亜硫酸カルシウムがあるために、これを石膏化するための酸化装置を必要とするが、空気を過剰に加えたガスを処理する場合には、
通常のガスにおける排煙脱硫生成物: CaSO3 ・ 1/2H2O
空気を過剰に加えた場合の生成物: CaSO4 ・ 2 H2O
となることを確認した。
【0011】
このことは竪型円筒状の排煙処理設備に比して、横型円筒状のロータリースクラバーの気・液接触設備のほうが遥かにCO2回収効率に優れていることを示すものである。その結果ロータリースクラバーは、汎用されてきた排煙脱硫装置と異なり酸化装置を必要としない、という大きなメリットがある。
例えばセメント産業に炭酸ガス回収装置を取り入れる場合を考慮すると、以下の二つの方法が考えられる。
一つは、SP付キルンの排ガス最終段にCO2回収装置を取り付ける方法であり、
またもう一つは、生石灰焼成法と組み合わせる方法である。
【0012】
本発明者の経験上、後者の生石灰焼成法と組み合わせる方法の方が優れていることが豊富な経験と実験結果から明らかである。つまりCO2回収装置としては大別すると、
A.セメント製造様式では最も省エネ効率が高いとされる余熱装置を有した乾式プロセスの最後の排ガスにてCO2回収をおこなうNSP方式
B.石灰石焼成炉を別に設けて、石灰石焼成炉排ガスのCO2回収を行うようにした方式
C.石灰石焼成炉と、ロータリーキルン排ガスの双方にCO2回収プロセスを組み込む方式
以上の3方式が考えられる。
【0013】
ここで、上記のA方式は普通に考えられる方式であり、またB方式はCO2濃度の高いガスに適用できるところからA方式よりは優れている。またC方式は運転コストはかかるものの、CO2回収率が大きく、上記3つの方式の中では地球環境に優しい方式である。しかし、運転コストとCO2回収率の高さとの費用対効果の面から考えると上記した3つの方式における相関関係では、B>C>Aと順序づけられる。
【0014】
一方CO2の濃度と、その回収コストの関係を検討してみると、CO2濃度が
10%と15%の排ガスを処理する場合のCO2回収装置の大きさの差を考慮
した場合に、
10,000Nm3/h の排ガスを処理する場合、回収すべきCO2の量は、
CO2の濃度が、10%の場合では、 1,000Nm3/CO2/h
15%の場合では、 1,500Nm3/CO2/h
20%の場合では、 2,000Nm3/CO2/h
ということになる。
【0015】
これを逆に考えると、CO2濃度20%に相当する2,000Nm3/hのCO2を回収する場合には、CO2濃度10%の排ガス処理装置を2基設置する必要がある場合も有り得る。しかしこの場合に装置産業界の常識としてCO2濃度10%の排ガス処理装置を2基設置する案ではコスト高となるのを免れない。また、一般論としてもCO2濃度の低い排ガスを扱うほうがコスト高となってしまうことは明らかである。
【0016】
またCO2を吸収するためのアミンの補充量についても、三菱重工―関西電力グループのレポートでは、0.63~0.72mol CO2/アミン化合物とされており、しかも吸収剤の消耗量が大きいために必然的にコスト高となってしまう。このことから本発明者の横型回転吸収装置を基本構成とするロータリースクラバーによる場合の効率については少なくとも0.95程度以上であると効率が良いことが分かっているため、ここではロータリースクラバーの使用を基本とし、ロータリースクラバーの回転吸収筒内を循環し、排出されたアミンを、高温加熱してCO2成分を気化して分離除去するとともに、その後排出されたアミンを冷却して再使用が可能としたものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記したように、本発明者が開発したロータリースクラバーの横型水平回転円筒式吸収装置を用いることを基本とするために、横型の回転円筒型吸収装置の内部を循環して十分にCO2を吸収して排出されたアミンに対し、これを110℃~130℃まで加熱した後、40℃~50℃に冷却することにより吸収されているCO2が効率よく回収される。この場合のアミン化合物の高いCO2吸収効率については少なくとも0.95mol CO2/アミン化合物であるために、在来の竪型吸収装置でのアミンを用いたCO2吸収率:0.63~0.72mol CO2/アミン化合物に比して、CO2の回収効率が格段に向上することが明らかとなった。
【0018】
またCO2が取り除かれたアミンは直ちに再度横型水平回転円筒式吸収装置内に戻されてCO2回収剤として繰り返し使用することができるために、少ないアミンの量で効率よくCO2を繰り返し回収して使用することができるところから、CO2吸収剤用のアミン化合物として少ない量で充分なCO2吸収を可能とし、コストの著しい低減をはかることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明におけるロータリースクラバー、つまり気液接触の良好な横型の回転円筒型吸収装置と、そこから取り出されたCO
2を十分に吸収したアミンを加熱することによりCO
2を回収し、その後冷却して再生したアミンを上記したロータリースクラバー内に循環させるシステムの全体を表した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下において本発明の具体的な内容を説明する。
図1において、1は横型の回転円筒型吸収装置を構成するCO
2回収装置部分の全体をあらわしており、該装置において2は固定ダクトを示している。固定ダクト2は、片側に排ガス吸入口3を、また反対側には排気口4を、それぞれ有しており、これらの排ガス吸入口3および排気口4を除いては、その全体が外壁により覆われている。なおこの場合に、固定ダクト2の長さを短縮した構造とすることにより回転円筒5の部分を軸方向に長くすることもでき、これによってCO
2回収効率をより一層向上させることもできる。
【0021】
また回転円筒型のCO2吸収装置を構成するCO2回収装置部分1の排ガス吸入口3に導入する排ガスについては、排気直後のガスについて予熱利用を十分に行い、排気ガスを予め40℃~50℃程度に冷却してからCO2吸収装置部分1内に導入すると、CO2の吸収効率がより一層向上する。
さらに外壁に囲まれた固定ダクト2の内部には排ガス流路方向に向けて水平に設置される回転円筒5が取り付けられており、さらに該回転円筒5はその筒体中心を貫通する回転軸7によって固定ダクト2の内部に取り付けられている。
【0022】
また、回転円筒5を支承する回転軸7は、排ガス吸入口3から排気口4に向けた方向に、両端を軸受6aと6cとによって支承されて排ガスの流路方向に沿って水平に保持されているとともに、該回転軸7の長さ方向中央寄りの部分にも軸受6bによって固定され、回転自在に取り付けられている。
【0023】
さらに固定ダクト2の底部にはCO2吸収のためのアミン吸収液貯留タンク8が形成されており、さらにアミン吸収液貯留タンク8内にはアミン吸収液の流れ方向に向けて回転円筒の出口側付近に略ドーナツ状をした回転円筒の出口側ドーナツ板9が設けられている。なお、回転円筒5の大きさについては、排ガスからのアミンによるCO2吸収であっても、アミンにより捕捉された状態のCO2であってもミストとして同伴されることが考えられる。
【0024】
このような場合には排ガスからのCO2吸収装置の性能が損なわれることがあるため、排ガスの通過速度についてはあまり早い速度にすることはできない。そのため、排ガスからのCO2吸引装置の設計にあたっては、ミストの発生についてもある程度は勘案する必要がある。つまり、このような場合においては加熱部14からの排気中にミストセパレータを設置し、回収したミストを既述した、吸収液貯留タンク8内に還元するようにすることも有効である。
【0025】
この場合に一例を示すと、ミストの発生を少なくするために、排ガスの流速を低く抑えて、回転円筒5の直径を10mとするとともに、排ガスの流速を1m/secとした場合には、円筒断面積は
0.785×100 = 78.5m2
78.5×60×60 = 28万2千6百Nm3/h
ということになる。
さらに回転円筒5の直径を20mとした場合では
28.26 × 4 = 113万04百Nm3/h
また回転円筒の直径を30mとした場合では
28.26 × 9 = 254万3千4百Nm3/h
ということになる。
【0026】
上記したように、回転円筒5の直径と排ガス処理量との関係をみると、ロータ
リースクラバーによる排ガス処理において、回転円筒の直径を上記した範囲内に設計するのが実用的であることが理解できる。一方回転円筒5の長さについては、排煙脱硫装置の例を参考に考えると、せいぜい10m以下程度が実用的と考えてよい。またこのようにすることにより回転円筒5内に充填される充填物の充填範囲を短縮することも可能となる。
【0027】
なお、回転円筒5内に装入使用される充填物については、回転円筒5の内部空間を全断面にわたって均一に、その表面又は内部に空隙あるいは空孔を有する多数の独立した充填物を充填して使用するものとする。また本発明において用いられるロータリースクラバーの使用材質についても、腐食がないところから、ステンレスや他の高級材質のものを使用する必要もないことも大きなメリットである。さらに、上記したように回転円筒5の内部には気液接触を促進させるための多数の充填物(図示省略)が装入されており、この場合に装入される充填物の形状や構造、さらに大きさについても適宜選択して使用することにより、ミストの発生を減少ないし防止することも可能である。
【0028】
なお図においてMは回転軸7を一定速度にて回転させるための駆動モーターであり、回転筒5を概ね4rpm程度の速さで回転させる。既述した通り固定ダクト2の底部には吸収液貯留タンク8が設けられており、また一方で回転円筒5の上方からは回転筒5の内周面に沿って設けられたリフタ(図示省略)により、回転円筒5の回転に伴って、上方から逐次補充して滴下散布された吸収液10が液膜を形成しつつ回転円筒5内を流下し、回転円筒5の回転により回転円筒5の内部全領域にわたって流れ落ち、内部の充填物を介して排煙ガスと十分に接触してCO2を、アミンを含んだ吸収液中に吸収しつつ固定ダクト2の底部に設けられている吸収剤貯留タンク8内にオーバーフローして落下する。
【0029】
一方、CO2を吸収した吸収液は回転円筒5の下部より固定ダクト2の底部に形成した吸収液貯留タンク8内において撹拌されつつ出口側(ポンプP1方向)に向けて押し流され、回転円筒の出口側ドーナツ板9を乗り越えて順次排気口4側に移動してゆき、吸収液は回転円筒の出口側ドーナツ板9を乗り越え(オーバーフロー)したところでポンプP2により取出し管11を通じてアミン再生部12内へと送り込まれる。なお、本実施例においては吸収液貯留タンク8内に落下した吸収液は回転円筒の出口側ドーナツ板9を乗り越え、ポンプP1およびポンプP2によって取出し管11を介してアミン再生部12に送り込まれるようにしたが、ポンプP1およびポンプP2は、比較的小さなポンプを用いることを前提に2つ使用するようにしたものであるが、吸引力が大きめのポンプを用いる場合においてはポンプP1およびポンプP2のいずれか1つを備える構成としてもよい。
【0030】
アミン再生部12は内部中央部に垂直方向に向けて再生部12内の比較的上方位置にまで達する隔壁13を有し、隔壁13の上方部にはスリット13aが形成されている。既述した固定ダクト2の底部に設けられた吸収剤貯留タンク8からポンプP1により取り出されたところの、CO2を吸収した吸収液は、取出し管11を介して、先ずアミン再生部12の加熱部14へと送り込まれる。加熱部14内に運び込まれたアミンに対する加熱手段18については格別種類の如何を問わないが、一般的にはボイラー式のものが採用しやすい。さらに加熱部14内のアミンに対する加熱温度については110℃未満ではCO2の気化が少なく、また逆に130℃を超えてもCO2の気化の程度は殆ど変わらないため、加熱効率の観点から110℃~130℃の範囲が望ましいといえる。
【0031】
加熱部14内においてアミンが110℃~130℃の範囲の高温に加熱されると、アミン中に含まれるCO2が気化されてCO2吸収ルート16からCO2吸収貯留タンク(図示省略)に貯留される。高温加熱によりCO2が気化して除去されたアミンは、アミン再生部12内においてオーバーフローし、スリット13aから隣の冷却部15内に送り込まれて冷却される。この場合の冷却手段Cとしては、冷却部15内に放置しただけでも冷却は可能であるがより効率的には冷却部を水冷方式(図示省略)により冷却する。冷却する温度範囲については、50℃以上ではCO2吸収剤として不適格であり、また40℃程度まで冷却すれば十分に再使用が可能となることから、40℃~50℃の範囲が適当である。
【0032】
冷却されたアミン再生液は必要に応じてポンプP3により冷却部15の下部に取り付けられた再生アミンの供給管17を通じて固定ダクト2の上部から回転円筒5の上方内10aへと供給される。なお再生液が次第に消耗して減少した場合には、新しい吸収液を固定ダクト2の上部から回転円筒5の上方内10bへと補給される。
上記したように、ロータリースクラバーの横型水平回転円筒式吸収装置を用いることを基本とし、この横型の回転円筒型吸収装置内を内部循環して十分にCO2を吸収して排出されたCO2を吸収し、排出されたアミンを110℃~130℃まで加熱するとともに、その後40℃~50℃に冷却することによりCO2が効率よく回収される。
【0033】
CO2が回収されたアミンを回転円筒5内に繰り返し供給することにより少ない量のアミンにより低コストにて効率よく繰り返しCO2の回収をおこなうことができる。またここで使用されるポンプP3は、再生アミンの移送用としてのみ稼働すればよいために、スプレーする場合のように大きなエネルギーを必要としない特徴がある。
【0034】
また、上記した排気中のCO2回収方法および装置をポルトランドセメントの製造に適用することも可能である。すなわち、生石灰焼成炉を横型水平回転円筒式吸収装置の前段に接続してポルトランドセメントクリンカーを焼成することが可能であり、この場合に、生石灰焼成炉からの排ガス横型水平回転円筒式吸収装置を40℃~50℃の範囲に冷却した排煙の排出口に接続するとともに、CO2吸収剤としてアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に排煙と接触させて用いるようにした処理装置において、横型水平回転円筒式吸収装置から取り出されたアミンをアミン再生部に導き、アミン再生部における加熱部でアミンを110℃~130℃まで加熱してCO2を回収した後、40℃~50℃までに冷却し、冷却したアミンを横型水平回転円筒式吸収装置内に循環させて使用するようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 CO2吸収装置部分
2 固定ダクト
3 排ガス吸入口
4 排気口
5 回転円筒
6a 軸受
6b 軸受
6c 軸受
7 回転軸
8 吸収剤貯留タンク
9 回転円筒の出口側ドーナツ板
10 吸収液
10a アミン再生液
10b 補充用吸収剤
11 吸収液取出し管
12 アミン再生部
13 隔壁
13a スリット
14 加熱部
15 冷却部
16 CO2排出ルート
17 再生アミンの供給管
18 加熱部用蒸気管
19 冷却部用冷水管
P1 ポンプ
P2 ポンプ
P3 ポンプ
M モーター