IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078034
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】縫合糸送達デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20220517BHJP
   A61B 17/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
A61B17/00 500
A61B17/04
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022015506
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2017562954の分割
【原出願日】2016-02-22
(31)【優先権主張番号】62/120,022
(32)【優先日】2015-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510015338
【氏名又は名称】シルク・ロード・メディカル・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】SILK ROAD MEDICAL, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(72)【発明者】
【氏名】ミチ・イー・ギャリソン
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェール・ケイ・ボス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】頸動脈アクセス部位を閉鎖する縫合のための方法および装置に関する。
【解決手段】縫合系血管閉鎖デバイスは、頸動脈穿刺部位を閉鎖するように構成されている。シースを取り外した後に、縫合糸19両端部を結んだ時に、縫い目によって血管アクセス部位を止血するように、縫合系血管閉鎖デバイスは、上記血管アクセス部位を横切って、1本以上の縫合糸19を配置することができる。動脈切開部を通って処置シースを挿入する前、または動脈切開部から上記シースを取り外した後のいずれかに、縫合糸19を適用することができる。
【選択図】図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈切開部を通って動脈中に挿入されるサイズおよび形状の遠位先端部を有する本体;
該本体内に保持された少なくとも1つの縫合要素;
少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッド;および
該遠位先端部に位置するガイドワイヤルーメン
を含み、
縫合糸捕捉ロッドは縫合要素に連動し、縫合要素が血管壁から伸び、縫合要素を血管壁に貫通させた後、該縫合要素が対向部分間の結び目を画定するように縫合要素を該血管壁に貫通させるように配列され、
該ガイドワイヤルーメンが、遠位先端部の最遠位端に第1の開口部、並びに最遠位端および使用中に血管に対して位置決めする血管壁位置決め装置との間に位置する第2の開口部を形成する、血管壁の開口部を閉鎖するためのデバイス。
【請求項2】
前記本体が第2の開口部を通って前記ルーメンの中への前記ガイドワイヤの通過を可能にし、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメン内に配置する際に第2の開口部外への血流を防止する、前記ガイドワイヤルーメン内に位置する弁を更に含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記遠位先端部は、遠位先端部が動脈内を進む間、遠位先端部を前記ガイドワイヤの湾曲に適合させることが可能であるほど可撓性を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記遠位先端部の可撓性が最遠位端に向かう動きおよび遠位先端部の動きを増大しながら、前記遠位先端部の可撓性が遠位先端部の長さにわたって変化する、請求項3記載のデバイス。
【請求項5】
前記遠位先端部が約3cmの長さを有して、デバイスの挿入可能な部分を約4~5cmに限定し、該挿入可能な部分が動脈切開部を通って挿入するデバイスの一部分である、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記遠位先端部が約5~7cmの長さを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記縫合要素が、前記血管壁位置決め装置の内外に伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記縫合要素が、前記血管壁位置決め装置の少なくとも1つの外側端の内外に伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
ガイドワイヤルーメン全体が、前記遠位先端部を通ってのみ伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記ガイドワイヤルーメンのどの部分も、前記血管壁位置決め装置の近位には配置されていない、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記遠位先端部が、前記ガイドワイヤの可撓性より高い可撓性を有する、請求項3記載のデバイス。
【請求項12】
前記ガイドワイヤが、前記遠位先端部の剛性より高い剛性を有する、請求項3記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権書類への相互参照)
本出願は、発明の名称「Suture Delivery Device」の、2015年2月24日に出願した米国仮特許出願第62/120,022号に対して優先権を主張する。上記出願日に対する優先権を主張し、上記仮出願に記載された全ての記載を援用する。
【0002】
本願の開示は、概して、医療方法および医療機器に関する。特に、本願の開示は、血管を縫合糸で「予備閉鎖(pre-closing)」する、言い換えれば、刺創のための閉鎖用縫合糸を血管内に展開する方法およびデバイスに関し、縫合糸は、シースまたはカニューレにより血管にアクセスする前に適用される。更に、本願の開示は、頸動脈アクセス部位を閉鎖する縫合のための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
血管内動脈アクセスを行うための医療処置は十分に確立され、そして2つの広いカテゴリー:外科的切開および経皮的アクセスに分類される。外科的切開では、皮膚切開が行われ、組織が目的の動脈のレベルまで切り取られる。動脈のサイズおよびアクセス装置のサイズに応じて、刃を用いて血管内まで切開を行うか、または血管をアクセス装置によって直接穿刺する。いくつかの例では、最初に小さなゲージの針によって血管にアクセスし、続いてアクセス装置のサイズまで拡張される微小穿刺技術が用いられる。経皮的アクセスに関しては、皮膚から、皮下組織層を通って、血管まで、および血管自体の中まで穿刺を行う。また、動脈のサイズおよびアクセス装置のサイズに応じて、上記方法は変化し、例えば、Seldinger技術、修正Seldinger技術、または微小穿刺技術を用いる。
【0004】
動脈は高圧血管であるので、血管から上記アクセス装置を取り外した後に止血を達成するために、更なる処置が必要となる可能性がある。外科的切開の場合、縫合糸を、動脈切開部を閉鎖するために使用してもよい。経皮的処置に関しては、手動圧縮または閉鎖デバイスを使用してもよい。手動圧縮は、高い信頼性と低コストを有する代表的な方法であるが、閉鎖デバイスによって、少ない医師の時間と少ない患者の回復時間で済む。また、多くの場合、より大きなアクセス装置を用いる処置のために、および/または抗凝固療法および抗血小板療法の患者のために、閉鎖デバイスが必要となる。閉鎖デバイスの例には、「Abbott Vascular」のデバイスファミリーとしての「Perclose Proglide」または「ProStar」などの縫合系閉鎖デバイスが挙げられる。他の閉鎖デバイスには、「Abbott Vascular」の「Starclose」デバイス、または「Kensey Nash/St.Jude Medical」の「Angioseal」デバイスなどの「プラグ」閉鎖デバイスが挙げられる。
【0005】
いくらかの種類の方法においては、例えば動脈切開部のサイズが大きい場合、動脈切開位置へのアクセスが困難な場合、または不注意でシースを取り外す高いリスクがある場合、動脈切開部を「予備閉鎖する」ことが有利である。用語「縫合糸予備閉鎖」は、血管が処置シースまたはカニューレを使用してアクセスされる前に縫合糸が適用される血管内への刺創のために閉塞縫合糸を展開することを意味する。アクセス部位を迅速に止血制御する能力が重要になる可能性がある。開放外科手術において、縫合糸は時折、血管アクセス前にU字型縫い目、Z字型縫い目、または巾着状パターンで血管壁内に配置される。動脈切開は、この縫い目パターンの中心を通って行われる。縫合糸は、処置中にシースの周囲に張力を加えられてもよく、または縫合糸が緩んだままであってもよい。一般的には、2つの縫合糸の端部が切開部を出て、処置中に、例えば止血鉗子を用いて、固定される。シースを不注意で動脈切開部から取り外される場合、迅速な止血を、縫合糸の両端部に張力を加えることによって達成してもよい。動脈切開部からシースを取り外した後、縫合糸は次いで、永久的な止血を達成するために結ばれる。
【0006】
経皮的処置では、前述のように閉塞縫合糸を挿入することは不可能である。これらの方法では、縫合糸予備閉鎖が所望される場合、経皮的縫合系血管閉鎖デバイスを使用する必要がある。しかし、現在の経皮的縫合系血管閉鎖デバイスは、血管に挿入される初期の針穿刺の予備拡張(拡大)を必要とし、処置シースが動脈切開部の中に挿入された後および動脈切開部から取り外されるいくつかの場合に配置されるように設計されている。このように、拡張は、処置シースおよび拡張器自体によって達成されてきた。そこで、現在の縫合系血管閉鎖デバイスは、動脈切開部の予備閉鎖に使用するための特定の制限を有する。これらのデバイスとの予備閉鎖を達成するために、拡張器または拡張器/シースの組み合わせは、最初に動脈穿刺を拡張するためにガイドワイヤ上で血管内に挿入し、次いで閉鎖デバイスに交換する必要があるが、この交換中に止血を維持するのは困難である。
【0007】
別の制限は、縫合系血管閉鎖デバイスを用いて縫合糸を血管内に配置すると、縫合系血管閉鎖デバイスの取り外しおよび処置シースの挿入中に止血を維持することも同様に困難であることである。同様に、処置シースが取り外されると、最終的に縫合糸の結び目が結ばれる前に、止血を維持することは困難である。或いは、縫合糸が予め結ばれている場合は、結び目を所定の場所に押し進める前に、止血を維持することは困難である。また、現在の縫合系血管閉鎖デバイスは、不注意でシースが取り外される場合に張力を加えるために、縫合糸の両端に迅速にアクセスするために如何なる手段も有さない。
【0008】
特定の処置、例えば頸動脈の介入は、多くの場合、更なる臨床的課題を提供する。内頸動脈および/または頸動脈分岐部の治療への経頸動脈アプローチでは、アクセス部位から治療部位までの距離は通常5~7cmより小さい。従って、プラークゾーンへの侵入のリスクを取り除き、塞栓粒子の発生のリスクを低減するために、上記閉鎖デバイス(実際に動脈に挿入する部分)の挿入部(動脈切開部を通って挿入する部分)、或いは任意の関連付属品(針穿刺、ガイドワイヤ、マイクロイントロデューサ、拡張器またはシース自体)の長さを3~5cmに制限することが望ましい。「Abbott Vascular」の「Proglide」または「ProStar」デバイスの場合には、血管進入装置は、血管内へ約15cmの長さを必要とする。更に、完全な止血を達成するために、閉鎖デバイスの故障の影響が大きい。縫合閉鎖により完全な止血を達成しなかった場合、結果として形成される血腫は、どちらも患者を深刻な危険にさらし、おそらく死をもたらす、気道の損失および/または脳への血液の重大な損失につながる可能性がある。
【0009】
特に頸動脈穿刺部位を閉鎖するように構成された縫合系の血管閉鎖デバイスが開示されている。シースを取り外した後に、縫合糸両端部を結んだ時に、縫い目によって血管アクセス部位を止血するように、上記縫合系血管閉鎖デバイスは、上記血管アクセス部位を横切って、1本以上の縫合糸を配置することができる。動脈切開部を通って処置シースを挿入する前、または動脈切開部から上記シースを取り外した後のいずれかに、上記縫合糸を適用することができる。上記デバイスは、縫合糸を配置した後であるが、処置シースを配置する前および配置中に動脈切開部の一時的な止血を維持することができ、また、処置シースを撤去した後であるが、縫合糸を結ぶ前に一時的な止血を維持することができる。縫合糸閉鎖デバイスの挿入可能部分を、頸動脈アクセス部位に適するように設計する。1つの態様では、縫合系の閉鎖デバイスは、動脈穿刺の拡張を行うことができ、従って、別のデバイスによる、または処置シース拡張器による動脈穿刺の予備拡張を必要としない。この態様では、上記閉鎖デバイスは、処置シースの挿入前に閉鎖用縫合糸を配置するために使用することができる。縫合系の予備閉鎖デバイスは、望ましくは、不注意でシースが取り外される場合に縫合糸の両端の迅速なアクセスおよび制御を提供するだけでなく、アクセス部位の信頼性の高い止血閉鎖を提供することができる。別の態様では、上記閉鎖デバイスを、処置シースを取り外した後に挿入する。
【0010】
1つの態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスが開示されており、上記デバイスは、本体と;本体内に保持された少なくとも1つの縫合要素;および本体内の少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッド;を含み、縫合糸捕捉ロッドは縫合要素に連動し、縫合要素が血管壁から伸びるように縫合要素を該血管壁に貫通させるように配列されており、上記本体の遠位挿入部分は、5cm未満である。この態様の変形例では、本体の遠位先端部は、血管壁の開口部を拡張する拡張器として機能する。
【0011】
別の態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスが開示されており、上記デバイスは、本体と;本体内に保持された少なくとも1つの縫合要素;本体内の少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッド;および上記本体の遠位端に配置されたシース;を含み、上記縫合糸捕捉ロッドは縫合要素に連動し、縫合要素が血管壁から伸び、縫合要素を血管壁に貫通させた後、該縫合要素が対向部分間の結び目を画定するように縫合要素を該血管壁に貫通させるように配列されており、上記シースは、上記シースを血管壁内の開口部を通って配置するように、本体上を遠位に摺動する。
【0012】
別の態様では、動脈にアクセスするのに使用するための装置が開示されており、上記装置は、動脈、近位端、並びに遠位端および近位端の間に延びるルーメンに導入されるのに適合した遠位端を有する遠位シース;ルーメンを有するフローラインへのY字型アーム接続;遠位端、近位端、およびそれらの間のルーメンを有する近位延長部;並びに近位延長部の近位端における止血弁;を含み、上記Y字型アームおよびルーメンを有するフローラインが、上記シースの遠位端に流れ込む血液が上記Y字型アームを通って上記フローラインのルーメン中に流れることができるように上記シースに接続されており、上記近位延長部の遠位端が、各々のルーメンが接触するように、接合部で上記シースの近位端と着脱可能に接続されている。
【0013】
別の態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスのシステムが開示されており、上記システムは、ガイドワイヤルーメンを有する縫合糸配置装置;ガイドワイヤルーメン中に配置されたガイドワイヤ;および、ガイドワイヤ上の第1の拡張可能な要素;を含み、上記拡張可能な要素が、血管壁内の開口部の止血を維持するように構成される。
【0014】
別の態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスのシステムが開示されており、上記システムは、ガイドワイヤルーメンを有する縫合糸配置装置;ガイドワイヤルーメン中に配置されたガイドワイヤ;および、血管に対するガイドワイヤの固定位置を維持するために血管と相互作用するように構成されたガイドワイヤ上の拡張可能なアンカー;を含む。
【0015】
別の態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスのシステムが開示されており、上記システムは、ガイドワイヤルーメンを有する縫合糸配置装置;ガイドワイヤルーメン中に配置されたガイドワイヤ;および、患者にガイドワイヤまたは縫合糸を着脱可能に固定する少なくとも一つのクリップ;を含む。
【0016】
別の態様では、血管壁内の開口部を閉鎖するためのデバイスが開示されており、上記デバイスは、本体;本体内に保持された少なくとも1つの縫合要素;本体内の少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッド;本体上に移動可能に配置されたシール要素;および止血を維持するのにシールを形成するために血管壁内の開口部に向かってシール要素を押すプッシャ;を含み、上記縫合糸捕捉ロッドは縫合要素に連動し、縫合要素の対向部分が血管壁から伸び、縫合要素を血管壁に貫通させた後、上記縫合要素が対向部分間の結び目を画定するように縫合要素を上記血管壁に貫通させるように配列されている。
【0017】
別の態様では、縫合糸送達デバイスの遠位先端部が動脈切開の開口部を動脈内に拡張するように縫合糸送達デバイスを動脈に挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合閉鎖デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;および縫合糸送達デバイスを取り外す工程;を含む動脈に閉塞縫合糸を適用する方法が開示されている。
【0018】
別の態様では、動脈に縫合糸送達デバイスを挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合糸送達デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;予め取り付けられたシースを縫合糸送達デバイスの本体上をおよび動脈内へ進める工程;並びに縫合糸送達デバイスを取り外す工程;を含む動脈に閉塞縫合糸を適用する方法が開示されている。
【0019】
別の態様では、縫合糸送達デバイスをガイドワイヤ上で動脈内に挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合閉鎖デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;所定の位置にガイドワイヤを残したまま、縫合糸送達デバイスを取り外す工程;および処置シースをガイドワイヤ上で動脈内に挿入する工程;を含む処置シースを挿入する前に動脈に閉塞縫合糸を適用する方法が開示されている。
【0020】
別の態様では、縫合糸送達デバイスをガイドワイヤ上で動脈内に挿入する工程;動脈の止血を維持するために、ガイドワイヤ上でシール要素を拡張させる工程;および縫合糸送達デバイスを取り外し、ガイドワイヤ上で別の血管閉鎖デバイスを挿入する工程;を含む、縫合糸配置装置を別の血管閉鎖デバイスに交換する方法が開示されている。
【0021】
別の態様では、縫合糸送達デバイスをガイドワイヤ上で動脈内に挿入する工程;動脈に対するガイドワイヤの位置を維持するために、ガイドワイヤ上でアンカー要素を拡張させる工程;および縫合糸送達デバイスを取り外し、ガイドワイヤ上で別の血管閉鎖デバイスを挿入する工程;を含む、縫合糸配置装置を別の血管閉鎖デバイスに交換する方法が開示されている。
【0022】
別の態様では、ガイドワイヤを、総頸動脈の壁の穿刺を通って、総頸動脈内に挿入する工程;縫合糸送達デバイスの遠位先端部が動脈切開の開口部を動脈内に拡張するように、縫合糸送達デバイスをガイドワイヤ上で総頸動脈内に挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合閉鎖デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;所定の位置にガイドワイヤを残したまま、縫合糸送達デバイスを取り外す工程;処置シースをガイドワイヤ上で総頸動脈内に挿入する工程;治療用機器を、上記シースを通って治療部位へ挿入し、治療処置を実行し、および上記シースから治療用機器を取り外す工程;上記シースを取り外す工程;並びに縫合糸の両端を結んで動脈アクセス部位を閉鎖する工程;を含む、血管または心臓構造で処置を行う方法が開示されている。
【0023】
別の態様では、予め取り付けられたシースを有する縫合糸送達デバイスを、総頸動脈の壁の動脈切開部を通って、総頸動脈内に挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合糸送達デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;縫合糸送達デバイスの本体から縫合糸を分離する工程;動脈切開部を通って予め取り付けられたシースを総頸動脈内に進める工程;縫合糸送達デバイスを取り外す工程;治療用機器を、上記シースを通って治療部位へ挿入し、治療処置を実行し、および上記シースから治療用機器を取り外す工程;上記シースを取り外す工程;並びに縫合糸の両端を結んで動脈アクセス部位を閉鎖する工程;を含む、血管または心臓構造で処置を行う方法が開示されている。
【0024】
別の態様では、処置シースを、総頸動脈の壁の動脈切開部を通って、総頸動脈内に挿入する工程;治療用機器を、上記シースを通って治療部位へ挿入し、治療処置を実行し、および上記シースから治療用機器を取り外す工程;縫合糸送達デバイスを動脈切開部を通って総頸動脈内に挿入する工程;縫合糸を結んで動脈切開部の永久的な閉鎖を形成するまで縫合糸を保持することができるように、縫合糸の少なくとも一端を、縫合糸送達デバイスを用いて患者の身体の外側に引っ張る工程;縫合糸送達デバイスを取り外す工程;並びに縫合糸の両端を結んで動脈アクセス部位を閉鎖する工程;を含む、血管または心臓構造で処置を行う方法が開示されている。
【0025】
他の特徴および利点は、例として、本発明の原理を示す、様々な実施形態の以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1A】~
図1C】血管中の穿孔を横切って縫合糸のループを配置するのに使用することができる縫合系血管閉鎖デバイスまたは縫合糸送達デバイスを示す。
図2A】~
図2B】展開した位置における血管壁位置決め装置を備えた上記閉鎖デバイスの遠位領域のクローズアップ図を示す。
図3A】~
図3B】上記閉鎖デバイスの送達シャフトの図2の線3A‐3Aに沿った断面図を示す。
図4A】~
図4B】血管中の穿孔を横切って縫合糸のループを配置するのに使用することができる縫合糸送達デバイスの遠位部分の別の実施形態のクローズアップ図を示す。
図5】~
図6】動脈切開部を横切って縫合糸が配置された後に上記閉鎖デバイスに沿って進む予め取り付けたシースの2つの実施形態を示す。
図7A】~
図7B】縫合系血管閉鎖デバイスまたは縫合糸送達デバイスの別の実施形態を示す。
図8】~
図9】縫合糸送達デバイスの別の実施形態の部分を示す。
図10A】部分的に展開した縫合糸留めアームを備えた縫合糸送達デバイスの遠位領域の1つの実施形態の斜視図である。
図10B】完全に展開した縫合糸留めアームを備えた縫合糸送達デバイスの遠位領域の1つの実施形態の斜視図である。
図10C】針開口部から延び、縫合糸留めアームに係合している2本の可撓性針を示す。
図11A】~
図13】閉鎖デバイスと共に使用される拡張可能なシール要素の展開を伴うガイドワイヤを示す。
図14】血管内アンカーを有するガイドワイヤの実施形態を示す。
図15】~
図17】ガイドワイヤが、ガイドワイヤを所定の位置に保持するために患者の皮膚に固定することができる1つ以上のクリップに取り付けられる、別のガイドワイヤアンカーの実施形態を示す。
図18A】~
図18C】自己閉鎖材料が、送達シャフトの近位領域に予め装填されている、上記閉鎖デバイスの実施態様を示す。
図19A】~
図19C】処置シースを取り外した後、止血材料が動脈切開位置上に配置されている実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
動脈切開穿刺の拡張を行うことができ、従って別のデバイスによる、または処置シース拡張器による動脈穿刺の予備拡張を必要としない縫合系血管閉鎖デバイスが開示されている。シースを取り外した後に、縫合糸両端部を結んだ時に、縫い目によって血管アクセス部位を止血するように、上記縫合系血管閉鎖デバイスは、上記血管アクセス部位を横切って、1本以上の縫合糸を配置することができる。動脈切開部を通って処置シースを挿入する前、または動脈切開部から上記シースを取り外した後のいずれかに、上記縫合糸を適用することができる。上記デバイスは、縫合糸を配置した後であるが、処置シースを配置する前および配置中に動脈切開部の一時的な止血を維持することができ、また、処置シースを撤去した後であるが、縫合糸を結ぶ前に一時的な止血を維持することができる。縫合系の血管閉鎖デバイスは、望ましくは、不注意でシースが取り外される場合に縫合糸の両端の迅速なアクセスおよび制御を提供するだけでなく、アクセス部位の信頼性の高い止血閉鎖を提供することができる。
【0028】
図1Aには、血管の穿刺を横切る縫合糸ループを位置決めするために使用することができる、縫合系血管閉鎖デバイスまたは縫合糸送達デバイス5を示す。上記縫合糸送達デバイス5は、一般に、可動式駆動ハンドル11および/または駆動レバー13などの制御要素を有する近位ハウジング9に取り付けられた送達シャフト7から構成される本体を含む。上記制御要素のタイプ、数、および形状は変更することができる。1つの実施形態では、上記駆動ハンドル11によって、一対の縫合糸捕捉ロッド15の動きを制御する(図1Cに示されている)。上記駆動レバー13によって、血管壁位置決め装置17の位置決めを制御する(図1Bおよび図1Cに示されている)。上記縫合糸捕捉ロッド15の少なくとも一方は、動脈切開の閉鎖のために動脈切開部を横切って縫合糸のループを配置することを可能にするように、縫合糸19(図2)に連結されている。上記送達デバイス5は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,001,400に記載のように、少なくとも部分的に構成されてもよい。本明細書中で使用されるように、用語「近位」は、使用者により近いことを意味し、用語「遠位」とは、使用者からより遠いことを意味する。
【0029】
図1Aを更に参照すると、上記デバイス5は、上記送達シャフト7の遠位端の遠位に延びる、遠位先端部21を含む。以下に詳細に説明するように、1つの実施形態では、上記遠位先端部21は動脈切開部を拡張するように適合している。上記遠位先端部は、上記デバイス5の遠位領域に、および遠位領域に沿って配置される構造であってもよい。上記遠位先端部は、近位において上記デバイス5に沿って遠位方向に移動する、より広い寸法からより小さな寸法に先細りになっていてもよい。ガイドワイヤルーメンは、遠位先端部21の遠位端から上記送達デバイスの近位出口ポートまで縫合糸送達デバイス5全体にわたって延びている。上記ガイドワイヤルーメンは、上記送達デバイス5全体をガイドワイヤ上に配置することを可能にする。1つの実施形態では、ガイドワイヤは0.025~0.038インチ(0.64~0.97mm)の範囲である。別の実施形態では、ガイドワイヤは0.018~0.025インチ(0.46~0.64mm)の範囲である。上記送達シャフト7の軸は、幾分曲線であってもよいので、直線である必要はない。
【0030】
図1Bを参照すると、足の形の血管壁位置決め装置17は、上記送達シャフト7の遠位端の近くに移動可能に配置されている。上記血管壁位置決め装置17は、(図1Aに示すように)上記血管壁位置決め装置17が上記送達シャフト7の軸に沿って実質的に整列した格納位置、および(図1B図1Cに示すように)上記血管壁位置決め装置17が上記送達シャフト7から横方向に延びる展開位置の間を移動する。上記格納位置においては、上記血管壁位置決め装置17は、展開前に血管壁位置決め装置17に隣接する上記デバイスの断面を最小にするように、上記送達シャフト7の格納場所内に配置することができる。
【0031】
上記血管壁位置決め装置17は、制御ワイヤなどの制御要素によって、ハンドル9上の駆動要素13に連結されている。図1A図1Cに示されるように、駆動要素13の動きによって、上記格納位置および展開位置の間の上記血管壁位置決め装置17の動きを生じる。上記駆動要素13の駆動によって、(送達シャフト7内に収納される)上記制御ワイヤを近位に摺動させて、上記血管壁位置決め装置17を上記格納位置から上記展開位置まで引っ張る。
【0032】
縫合糸捕捉ロッド15(図1C)は、駆動ハンドル11に連結されている。上記駆動ハンドル11の動きによって、上記捕捉ロッド15を、(図1Aおよび図1Bに示すように)上記捕捉ロッド15が上記送達シャフト7中に収納される非展開位置、および(図1Cに示すように)上記捕捉ロッド15が上記送達シャフト7の外に向かって、上記血管壁位置決め装置17に向かって遠位に前進する展開位置の間を移動させる。上記展開位置において、上記捕捉ロッド15の遠位端が、上記血管壁位置決め装置17の外側端に収納された縫合糸捕捉カラーと結合している。
【0033】
上記縫合糸捕捉ロッドの上記展開位置への動きによって、縫合糸の少なくとも一端を上記縫合糸捕捉ロッド15に連結させる。次いで、動脈切開部の周りに縫合糸ループを形成するために、上記縫合糸捕捉ロッド15を、血管壁を介して縫合糸の両端を近位に引っ張るのに用いることができる。処置シースが取り外された後の処置の最後に、縫合糸を結び目で結び、動脈切開部を塞ぐために動脈切開部に対して遠位に固く締める。これは、様々な方法で達成することができ、それらのいくつかは米国特許第7,001,400号明細書に記載されており、その記載の全体を援用する。1つの実施形態では、短い長さの可撓性フィラメント29(図2)は、血管壁位置決め装置17における縫合糸捕捉要素間に実質的に直接延びている。1つの縫合糸捕捉ロッドは、可撓性フィラメントの一端に縫合糸19を取り付ける。このように、可撓性フィラメントは、対向する縫合糸捕捉ロッドに縫合糸19を連結する。上記ロッドは駆動部11を用いて引き戻されるので、上記可撓性フィラメントは、動脈切開部の片側の血管壁を通って、縫合糸19を引っ張り、動脈切開部を横切って、もう一方側へ縫合糸19を引き出す。上記駆動部11が完全に上記縫合糸ロッド15を引き出すと、上記縫合糸19の両端を回収することができる。
【0034】
図2Aおよび図2Bには、上記送達デバイス5の遠位領域のクローズアップ図を示す。図2Aには、の遠位領域の拡大図を示す展開位置における血管壁位置決め装置17を備えた上記デバイスを示す。内部構成要素を説明するために、上記送達デバイス5を部分断面に示す。上記遠位先端部21は、遠位先端部21が拡張器として使用されることを可能にするために、送達シャフト7の直径までスムーズに先細りになっている。前述のように、送達デバイス5が血管に入ると、先細りになった遠位先端部21は、動脈切開部を拡張する。この点に関して、遠位先端部21は、特に、動脈切開部を拡張するのに適合しているという特徴を有する。このような特徴には、具体的に動脈切開部を拡張するのに適合しているサイズ、形状、材料、および/または材料特性を含む。例えば、拡張遠位先端部21は、標準的なシース拡張器の拡張機能を再現する材料および寸法から構成されている。例えば、上記先端部の少なくとも一部は、縫合閉鎖デバイスの長手方向正中軸に対して、3~7°のテーパ角を有していてもよい。1つの実施形態では、遠位先端部は、ポリエチレン材料と同等の剛性および平滑性を有する。1つの実施形態では、遠位先端部21の先細りになった部分は、約1~3cmまたは約1~2cmの長さにわたって延びる。上記先細りになった部分は、遠位先端部21の最遠位の位置から外側に先細りになっていてもよい。上記遠位先端部21が拡張先端部である必要はないと解されるべきである。
【0035】
また、遠位先端部21は、ガイドワイヤルーメン31を含む。図2Aに示すように、ガイドワイヤルーメンは、デバイス全体を通って、または全体の遠位領域および送達シャフト7および近位ハンドル9に対して遠位の出口を通って延びていてもよい。更に別の実施形態において、ガイドワイヤルーメンは、拡張器先端部を通って、血管壁位置決め装置に対して遠位の縫合糸送達デバイスの遠位領域の片側の点まで延びている。後者の場合、ガイドワイヤは、送達シャフトを通ってではなく、縫合糸送達デバイスの遠位領域上のみを乗り越えている。
【0036】
ガイドワイヤルーメン31は、遠位先端部21の遠位端31に、開口部または出口を形成する。上記ガイドワイヤルーメン31の遠位出口は、ガイドワイヤ33にスムーズに移行しており、それで上記デバイスをスムーズにかつ傷つけずにガイドワイヤ上で血管内に挿入することができる。従って、上記ガイドワイヤルーメン31の直径は、拡張先端部を出る時に、ガイドワイヤ自体の直径に近くてもよい。例えば、0.035インチ(0.89mm)または0.038インチ(0.97mm)ガイドワイヤとの適合性のために、上記デバイスの拡張先端部は、上記先端部を出る時に、(デバイスの残りの部分に対してわずかに大きくすることができるが)0.039~0.041インチ(0.99~0.97mm)のガイドワイヤルーメンを有してもよい。別の例では、0.025インチ(0.64mm)ガイドワイヤとの適合性のために、上記デバイスの拡張先端部は、約0.029インチ(約0.74mm)のガイドワイヤルーメンを有することができる。加えて、拡張先端部の前縁部は、例えば半径0.050~0.075インチ(1.27~1.91mm)でアールが形成されていてもよく、そのため、上記デバイスが血管に入る時に急に移行することがない。従って、前述のように、動脈切開部を通って送達デバイス5を展開する前に動脈切開部を拡張するための別の拡張器を必要としない。1つの実施態様では、遠位先端部は、縫い目送達位置を超えて約3cm、つまり血管壁位置決め装置17の約3cm遠位側に配置する。
【0037】
上記送達シャフト7の遠位部分には、血管壁位置決め装置17のすぐ近位の位置確認ポートからハウジング9の位置指示器まで近位に延びる位置確認ルーメンを含んでもよい。上記血管壁位置決め装置17を血管内に適切に配置すると、血圧によって血液が上記位置確認ルーメンを通って、位置確認ポート内に、その後、上記ハウジング9内の位置指示器へと近位に流される。上記位置指示器内に血液が存在することによって、上記血管壁位置決め装置17が血管に入っており、(図1Bのように)「開(open)」位置へと駆動させてよいという指示を行う。上記位置指示器には、血液出口ポート、血液が視認できる透明な容器などを含んでもよい。電気圧力センサ、電解液検出器などの多種多様な位置確認センサを使用してもよいと理解されるべきである。
【0038】
図2Aを更に参照すると、ガイドワイヤ33は、ガイドワイヤルーメン31を通って、上記デバイス5の遠位先端部21の中心部にある開口部を介して摺動可能に延びる。最遠位位置において、上記ガイドワイヤルーメン31を遠位先端部21の中心に配置されている。即ち、上記ガイドワイヤ31は、遠位先端部21の長手方向中央線または中心軸と一直線になっている。上記ガイドワイヤルーメン31は、上記送達シャフト7を通って近位方向に移動する偏芯位置に向かって移行する。即ち、遠位先端部21の最遠位位置の近位位置において、上記ガイドワイヤルーメンは、上記送達シャフト7の長手方向中心軸からオフセットされた位置に移行する。上記血管壁位置決め装置17を、縫合糸配置部位が上記送達シャフト7を中心として配置されるように、上記送達シャフト7上に配置する。従って、上記ガイドワイヤ33が上記送達シャフト7内で偏芯していても、縫合糸は血管穿刺の中央に配置されている。或いは、上記ガイドワイヤルーメンを上記送達シャフトの中心軸に配置してもよく、上記血管壁位置決め装置および縫合糸配置部位は、上記シャフト中心軸からオフセットされた位置を中心として配置される。
【0039】
図2Bにおいて、血管閉鎖デバイスの遠位先端部21は、頸動脈アクセス部位内に配置されたガイドワイヤ上に挿入可能であるように構成されている。この構成では、従来の閉鎖デバイスと同様に、例えば、処置シースを通して上記閉鎖デバイスガイドワイヤ33を挿入し、次いで処置シースを取り外した後に、上記デバイスを処置の最後に使用してもよい。従って、この構成では、遠位先端部21は、シース導入器の拡張先端部の特徴を必要とせず、より可撓性の材料から形成してもよい。上記遠位先端部21は、上記デバイスをガイドワイヤ33上で動脈内へ進行することができるように、ガイドワイヤルーメン31を含む。近位ガイドワイヤ出口ポート34は、上記デバイスの遠位端と、血管の表面(内側表面または外側表面)に対して(例えば、血管の表面と接触して)配置されるサイズおよび形状である細長い構造体である上記血管壁位置決め装置17との間に配置される。従って、1つの実施形態では、全体のガイドワイヤルーメンは、遠位先端部のみを通って延びており、血管壁位置決め装置17の完全に遠位側に配置されている。この実施形態におけるガイドワイヤルーメンは、血管壁位置決め装置17の近位には配置されていない。
【0040】
1つの実施形態では、上記ガイドワイヤルーメン31は、上記デバイスがガイドワイヤ上を動脈内へ導入されている時、ガイドワイヤ33の通過を可能にするように構成された弁を含む。しかしながら、上記弁は、上記デバイスの遠位端が動脈内にあり、上記ガイドワイヤが取り外されると、遠位先端部からガイドワイヤ出口ポート34外への血流を止める。1つの実施形態では、ガイドワイヤ出口ポート34の傾斜路を、傾斜路上および上記出口ポート外のガイドワイヤの移動を容易にするために、より硬い材料の別の挿入体から形成する。
【0041】
血管閉鎖デバイスのガイドワイヤから本体に徐々に移行することができるように、遠位先端部は先細りになっている。1つの実施形態では、遠位先端部が動脈内へ進行する時にガイドワイヤの曲率に適合することを可能にするように、遠位先端部21が可撓性を有し、それによって、遠位先端部により血管壁に生じる可能性外傷を最小化するか、または排除する。本実施形態の変形例では、上記遠位先端部は、上記デバイスの遠位端に向かって可撓性を増加させながら、遠位先端部の長さにわたって様々な可撓性を有してもよい。この変形例は、可撓性を変化させる2つ以上の材料を用いて遠位先端部を形成することによって、および/または遠位先端部の壁厚を変化させることによって達成してもよい。経頸動脈ステント留置術の処置に特に好適な1つの実施形態では、遠位先端部21の長さは約3cmに限定され、それによって閉鎖デバイスの挿入可能部分が約4~5cmに限定される。本実施形態では、遠位先端部は、移植した頸動脈ステントと干渉しない。そのような頸動脈アクセス部位からの頭蓋内処置などの、より遠位の処置に好適な別の実施形態では、挿入部分約6~8cmで、遠位先端部21の長さは5~7cmに限定されてもよい。この実施形態は、遠位端が頸動脈分岐部または近位の内頸動脈まで移動することができる場合に望ましい。1つの実施形態では、上記遠位先端部は、ガイドワイヤの可撓性より高い可撓性を有する。1つの実施形態では、上記ガイドワイヤは、遠位先端部の剛性より高い剛性を有する。
【0042】
図3Aおよび図3Bは、送達シャフト7の図2の線3A-3Aに沿った断面図を示す。一対の導管35が、送達シャフトの外側表面近傍で、送達シャフト7を通って長手方向に延びている。上記導管35の各々は、それぞれの導管35への外部アクセスを提供する溝37と連通している。図3Aにおいて、縫合糸捕捉ロッド15は、各導管35内に配置されている。上記溝は、上記縫合糸捕捉ロッド15を上記導管35内に確実に収納できるようなサイズおよび形状を有する。図3Bにおいて、上記縫合糸捕捉ロッドは近位方向に引っ張られ、それらを用いて縫合糸19が引っ張られ、従ってこの図は、上記縫合糸19が各導管35内に配置されていることを示す。図3Bに示すように、上記縫合糸19を、上記溝37によって、例えば上記溝37から剥離することによって除去することができるように、上記溝は縫合糸19より大きい。
【0043】
図4Aおよび図4Bは、血管の穿刺を横切る縫合糸ループを位置決めするために使用することができる、縫合糸送達デバイス5の遠位部分の別の実施形態の拡大図を示す。同様のデバイスは、米国特許第7,004,952に記載されており、その記載の全体を援用する。図4Aおよび図4Bは、上記デバイス5の特徴を説明するために、切り縮めた上記シャフト7から構成される本体を有する上記デバイス5を示す。上記血管壁位置決め装置は、2本の伸縮性アーム39の形状である。上記実施形態と同様に、上記血管壁位置決め装置を、ロッドまたは他の連結器によって、ハンドル9上の駆動要素13に連結してもよい。上記縫合糸19の両端が上記送達シャフト7の遠位ポート23を出るように、縫合糸19のループを上記送達シャフト7の中心にしっかりと配置する。上記縫合糸19のループの中央25は、上記送達デバイス5の近位端から外に出る。縫合糸ループの各端部を、各伸縮性アーム39の端部に取り付ける。上記実施形態と同様に、上記デバイスには、ガイドワイヤ33用の中央ルーメンを有する遠位先端部を含む。上記遠位先端部は、上記実施形態で前述したように、必要に応じて拡張先端部であってもよい。また、上記実施形態と同様に、ガイドワイヤが、縫合糸送達デバイス5の全長に沿って通り、上記近位端から出ることができるように、または上記近位ハンドル9の遠位の送達シャフト内の点から出てもよいように、上記ガイドワイヤルーメンは、上記送達デバイスの全長に沿って延びてもよい。
【0044】
図4Aは、引っ込めた位置における伸縮性アーム39を備えた上記デバイスを示す。この構成においては、上記送達デバイス5を、動脈穿刺内にガイドワイヤ上で前進させてもよい。上記デバイスを所定の位置に配置すると、上記伸縮性アーム39を、上記デバイスが血管壁に対して正確に位置決めされることを可能にする外向きに伸ばしてもよい。図4Bには、上記縫合糸ループ19の両端も既に外向きに伸びて、伸長位置における上記アーム39を備えた上記デバイスを示す。縫合糸捕捉ロッド15は、既に拡張され、送達シャフト7が配置されている動脈穿刺の両側まで血管壁を穿刺することができる。上記縫合糸捕捉ロッド15は、上記縫合糸捕捉ロッド15は、縫合糸ループ19の各端部を捕捉するように構成されている。上記捕捉ロッド15を引っ込めると、縫合糸のループが完全に血管壁内にあり、縫合糸ループの長さが送達シャフトに残らなくなるまで、上記捕捉ロッドは動脈穿刺を横切って血管壁を通して縫合糸ループ19を引っ張る。動脈穿刺からのデバイスの取り外しを可能にするために、上記伸縮性アーム39をその時に引っ込めてもよい。
【0045】
使用方法においては、上記ガイドワイヤ33を所定の位置にしたまま、縫合糸送達デバイス5を取り外す間、上記縫合糸19の両端を引っ張った状態に保持する。次いで、処置シースおよび拡張器を、ガイドワイヤ上で、予め配置された縫合糸によって血管内に配置する。上記ガイドワイヤおよび拡張器を取り除き、上記処置シースを所定の位置に残す。上記縫合糸は、その後の処置中に緩めてもよい。しかしながら、不注意でシースを取り外した場合に迅速な止血を達成するために、上記縫合糸を掴み、引っ張った状態に保持することができるように、それらをタグ付けするか、またはある程度固定してもよい。上記処置の完了後、上記処置シースを取り外す時に、上記縫合糸を再び引っ張った状態に保持する。永久的な止血を達成するために、上記縫合糸の両端を結び、上記結び目を動脈に押す。
【0046】
図5に示す実施形態では、シース41を(本明細書中に記載の送達デバイスの実施形態のいずれかとすることができる)縫合糸送達デバイス5上に予め取り付ける。上記シース41は、縫合糸送達デバイス5の送達シャフト7を受容するようなサイズのルーメンを有する細長い本体、例えば管状体である。上記予め取り付けられたシース41を最初の内は、上記シース41を上記送達シャフト7の近位端または近位領域に配置している一時的な配置に位置決めする。上記シース41は、縫合糸の配置中に、上記一時的な配置に残ることが可能である。縫合糸が動脈切開部を横切って展開された後、縫合糸の両端を捕捉し、送達シャフト7から剥離する。次いで、上記シース41は、送達デバイス5上を動脈切開部内へ遠位に摺動することができる。図5には、縫合糸19を動脈切開部を横切って配置した後に前進する予め取り付けられたシースを示す。また、予め取り付けられたシース41を前進させる工程により、それが移動すると、上記シース41が縫合糸に物理的に接して縫合糸を剥離させる送達シャフト7からの縫合糸の剥離を容易にしてもよい。予め取り付けられたシースを動脈切開部内に前進させると、次いで、上記送達デバイス5をシース41によって取り外すことができる。
【0047】
1つの実施形態では、予め取り付けられたシース41は、動脈切開部の止血を維持し、次いで、血管内で処置を行うための(後述する動脈アクセスシース605などの)別の処置シースを挿入するための手段を提供する交換シースである。縫合糸を、動脈切開部を横切って展開すると、上記交換シース41を動脈切開部を通って配置し、次いで、縫合糸送達デバイス5を取り外す。上記処置シースを、次いで、交換シース41を通って血管内に挿入する。処置シースが配置されると、交換シース41を取り外すことができる。1つの実施形態では、交換シース41は、剥ぎ取り法で処置シースから取り外すように構成されている。予め取り付けられたシース41は、この交換中の出血を防ぐために、その遠位端にまたはその近位端のいずれかに止血弁を有してもよい。上記止血弁は、スリットまたは交差スリット、或いは他の拡張可能な開口部を有する、閉じた端部または膜の形態であってもよい。上記膜は、通常は閉じており、処置シースの通過を可能にするために開く。
【0048】
別の実施形態では、予め取り付けられたシース41は、処置の間に所定の位置に存続する外側シースである。図6に示すように、外側シース41は、血管内でサイズを増加するように適合して血管を閉塞する、閉塞要素129を含んでもよい。予め取り付けられた外側シース41が血管内に位置決めされると、外側シース41を通して、処置シースを血管内に挿入する。次いで、血管内に1つ以上の介入デバイスを導入するために、処置シースを使用する。1つの実施形態では、上記処置シースは、逆流シャント、例えば、後述の逆流シャントに血管を接続するために使用される(後述の)シース605などのシースである。シース41上の閉塞要素129を、処置中に血管を閉塞するために使用する。血管内閉塞要素には、拡張可能なバルーン、その周りの密封膜である編組、ケージ、または溝付き管などの拡張可能な部材などを含んでもよい。処置シースはまた、展開時に不注意でシースが取り外されるのを防止する拡張可能な構造または拡張可能なワイヤ、ケージ、または関節構造などのシース保持要素を含んでもよい。
【0049】
この二重シース構成によって、予め取り付けられたシースを、処置シースに比べて比較的短くすることを可能にする。介入デバイスをシース内に導入する近位アダプターが、血管アクセス部位が透視診断法領域の近くにある処置において有利である可能性がある、血管アクセス部位から離れた部位にあるように、処置シースは拡張された近位部分を必要とするかもしれない。予め取り付けられたシースを比較的短く保持することにより、送達シャフト7をより短く保持することができる。
【0050】
別の実施形態では、予め取り付けられたシース41は、交換シースまたは外側シースを使用することが必要でないように、処置シース自体である。処置シース41は、処置シースの近位端上などに、止血弁を有してもよい。従って、縫合糸送達デバイス5を取り外すと、止血が維持される。近位拡張部を必要とする処置シース41を使用する場合、縫合糸送達デバイス5を取り外した後、処置シース41の近位端に拡張部を追加することができる。また、上記送達シャフト7は、処置シースおよび近位拡張部の両方を予め取り付けることを可能とする拡張された長さを有してもよい。上記処置シース41は、動脈閉塞を必要とする処置のための血管内閉塞要素を含んでもよい。上記血管内閉塞要素は、拡張可能なバルーン、その周りの密封膜である編組、ケージ、または溝付き管などの拡張可能な部材などを含んでもよい。上記処置シースはまた、展開時に不注意でシースが取り外されるのを防止する拡張可能な構造または拡張可能なワイヤ、ケージ、または関節構造などのシース保持要素を含んでもよい。
【0051】
図1A図1Cの縫合糸送達デバイス5の典型的な使用方法について説明する。血管内部へのアクセスを提供するために、穿刺を血管内に形成する。血管にアクセスした後、ガイドワイヤが皮膚内に、および組織路に沿って組織を通して下に延びるように、ガイドワイヤを挿入する。ガイドワイヤが動脈切開部を通って組織路に沿って血管内に縫合糸送達デバイス5を向かわせるように、縫合糸送達デバイス5が、ガイドワイヤルーメン31(図2)を通ってガイドワイヤ上を前進する。前述のように、送達デバイスの遠位先端部は、侵入を容易にするために、動脈切開部を拡張するように拡張器として作用する。任意の別個の拡張装置を使用することなく動脈切開部を拡張するために、送達デバイスの遠位先端部を使用してもよい。上記送達シャフト7は、位置確認用ルーメンを含む。血管壁位置決め装置17が血管に入ると、血管壁位置決め装置が血管に入ったことを手術者に通知するために、血液が位置確認ルーメンを通って近位インジケータへ流れる。
【0052】
血管壁位置決め装置17を血管の内側に配置すると、ハンドル9上の駆動レバー13を駆動して、血管壁位置決め装置17を血管内の展開位置に移動させる。血管壁位置決め装置17は、送達シャフト7を引っ張ることにより、血管壁に対して引き上げることができるように、展開した血管壁位置決め装置17は、送達シャフト7から横方向に延びている。
【0053】
次いで、駆動ハンドル11を駆動させて、縫合糸捕捉ロッド15を血管壁位置決め装置17に向かって展開させる。上記縫合糸捕捉ロッドは、血管壁位置決め装置17の外側端に収納された可撓性リンク29の端部と結合している。これにより、縫合糸19の少なくとも一方の端部を可撓性リンク29の一端に連結し、縫合糸捕捉ロッド15を上記可撓性リンクのもう一方の端部に連結する。次いで、動脈切開部を横切って縫合糸ループを形成するために、血管壁を通って、可撓性リンク、およびそれを用いて縫合糸19を近位に引っ張るために、上記縫合糸捕捉ロッド15を用いてもよい。あるいは、縫合糸捕捉ロッド15を、血管位置決め装置の横方向の端部に配置された縫合糸19の端部と直接結合する。上記縫合糸捕捉ロッド15は、次いで、動脈切開部を横切る縫合糸ループを形成するために、血管壁を通して縫合糸19の両端を引っ張るのに使用される。上記縫合糸捕捉ロッドは、次いで、使用者によって後で回収されてもよい縫合糸両端を、皮膚上の組織路から引き出す。
【0054】
止血を維持するために、上記縫合糸の両端を引っ張った状態に保持するので、縫合糸送達デバイス5をガイドワイヤ上で取り外し、処置シースと交換する。縫合糸送達デバイス5の処置シースとの交換時に追加の止血制御のために必要であれば、手動圧縮を動脈切開部位上に適用してもよい。
【0055】
処置の終わりに、処置シースを取り外し、予め配置された縫合糸の両端を結び、結び目を、標準的な経皮的縫合閉鎖デバイスと同様に、所定の位置に押す。縫合糸の両端は、結び目が単に所定の位置に押し込まれる場合に、結び目で予め結ばれていてもよい。結んだ縫合糸の両端を、次いで、切り取る。
【0056】
この方法の変形例では、上記縫合糸送達デバイス5を動脈内に挿入し、動脈切開部を横切って縫合糸を配置し、上記縫合糸を、前述のように使用者によって回収される、組織路および皮膚上から引き出す。次いで、上記縫合糸を送達シャフト7から分離する。従来の縫合糸送達デバイスでは、縫合糸を送達シャフトから「剥がす(peel away)」ことはできない。その代わりに、従来のデバイスでは、送達デバイスの近位端を通って、縫合糸を引き出す。本明細書中に開示された送達デバイス5は、縫合糸を、送達シャフト7の側から剥離させる。前述のように、縫合糸および縫合糸捕捉ロッドを、図3Aおよび図3Bに示すように、送達シャフト7中の壁のない導管内に配置する。上記導管は、縫合糸を導管から持ち上げるまたは引き出すことができるような、縫合糸に関連するサイズを有する。上記縫合糸捕捉ロッドは依然として、上記送達デバイス5の近位端を出る。縫合糸捕捉ロッドに取り付けられた縫合糸端部を、フックまたは予め適用したループを用いて、送達シャフト7から引き抜き、上記縫合糸捕捉ロッドから切り離す。他の縫合糸端部は、側方の導管35から簡単に引き出すことができる。上記縫合糸は、従来技術に開示されているように、予め結ばれた結び目を有していてもよい。この構成では、上記結び目は、縫合糸両端が回収された後、縫合糸の両端を結び目より下で掴むことができるように、患者の身体の外側に配置しなければならない。
【0057】
上記縫合糸が送達デバイス5から除去されると、ガイドワイヤ33が血管内に残ったまま、上記送達デバイス5を次いで血管から取り外すことができる。前述のように、送達デバイスを容易にガイドワイヤから取り外すことができるように、ガイドワイヤ導管は送達デバイス5全体を通って延びている。送達デバイス5を取り外す前に、予め取り付けられたシース41を、(上記送達シャフト7の近位端上の)一時的な位置から組織路内へおよび動脈切開部を通って遠位に摺動させる。上記シース41を前方に押す行為によって、縫合糸を導管35および送達シャフト7から押し出すのを支援することができる。前述のように、予め取り付けられたシースは、交換シース、二重シース構成のための外側シース、または処置シースそのものであってもよい。上記シースは、さらに、血管内閉塞要素を含んでいてもよい。
【0058】
別の方法では、処置シースを取り外した後に頸動脈に閉塞縫合糸を挿入するために、縫合糸送達デバイス5が使用される。処置シースを総頸動脈(CCA)の壁に挿入した介入処置の終了時に、シースガイドワイヤを、シースを通って動脈内に挿入する。次いで、処置シースを取り外して、ガイドワイヤを動脈内に保持する。ガイドワイヤが動脈切開部を通って組織路に沿って血管内に縫合糸送達デバイス5を向かわせるように、縫合糸送達デバイス5を、ガイドワイヤルーメン31(図2B)を通って、ガイドワイヤ上を前進させる。前述のように、容易にかつ外傷なしに血管に挿入されるように、送達デバイスの遠位先端部は、可撓性で先細りになっている。送達シャフト7は、位置確認ルーメンを含む。血管壁位置決め装置17が血管に入ると、血管壁位置決め装置が血管に入ったことを手術者に通知するために、血液が位置確認ルーメンを通って近位インジケータへ流れる。
【0059】
血管壁位置決め装置17を血管内部に配置すると、ハンドル9上の駆動レバー13を駆動させて、血管壁位置決め装置17を血管内の展開位置に移動させる。送達シャフト7を引っ張ることにより、血管壁位置決め装置17を血管壁に対して引き上げることができるように、展開した血管壁位置決め装置17は、送達シャフト7から横方向に延びる。
【0060】
次いで、駆動ハンドル11を駆動させて、縫合糸捕捉ロッド15を血管壁位置決め装置17に向かって展開させる。上記縫合糸捕捉ロッドは、血管壁位置決め装置17の外側端に収納された可撓性リンク29の端部と結合している。これにより、縫合糸19の少なくとも一方の端部を可撓性リンク29の一端に連結し、縫合糸捕捉ロッド15を上記可撓性リンクのもう一方の端部に連結する。次いで、動脈切開部を横切って縫合糸ループを形成するために、血管壁を通って、可撓性リンク、およびそれを用いて縫合糸19を近位に引っ張るために、上記縫合糸捕捉ロッド15を用いてもよい。あるいは、縫合糸捕捉ロッド15は、血管位置決め装置の横方向の端部に配置された縫合糸19の端部と直接結合する。上記縫合糸捕捉ロッド15は、次いで、動脈切開部を横切る縫合糸ループを形成するために、血管壁を通して縫合糸19の両端を引っ張るのに使用される。上記縫合糸捕捉ロッドは、次いで、使用者によって後で回収されてもよい縫合糸両端を、皮膚上の組織路から引き出す。
【0061】
止血を維持するために、上記縫合糸の両端を引っ張った状態に保持するので、ガイドワイヤ遠位端を動脈内で維持しながら、縫合糸送達デバイス5をガイドワイヤ上で取り外す。使用者が、別の血管閉鎖デバイスまたはシースを用いて、動脈切開部に再アクセスする能力を維持したい場合、この方法が好ましいかもしれない。あるいは、縫合糸送達デバイスおよびガイドワイヤを一緒に取り外す。予め配置された縫合糸の両端を結び、上記結び目を、標準的な経皮的縫合閉鎖デバイスと同様に、所定の位置に押す。縫合糸の両端は、結び目が単に所定の位置に押し込まれる場合に、結び目で予め結ばれていてもよい。結んだ縫合糸の両端を、次いで、切り取る。
【0062】
この構成のバリエーションは、シース41の最終的な方向と反対方向に縫合糸送達デバイス5を挿入することである。例えば、頸動脈狭窄症の治療への経頸動脈アプローチにおいて、入れてもよい血管の量に解剖学的制約がある場合、この方法を用いてもよい。この逆戻りの送達において、初期ワイヤ穿刺およびその後の縫合糸送達デバイスにより形成された、皮膚から動脈への組織路を、処置シースを用いて反対方向に動脈にアプローチするのに使用してもよいように、送達デバイスをより垂直なアプローチで血管に挿入する。縫合糸が展開され、縫合糸の端部が回収されると、ガイドワイヤを所定の位置に保持したまま、縫合糸送達デバイスを取り外す。ガイドワイヤを、次いで、先端部が現在、反対方向にあるように再配置する。ガイドワイヤは現在、ガイドワイヤ上を前進し、血管内に挿入することができる処置シースをサポートするのに十分に進んでいる。ガイドワイヤの方向の変化の間、ガイドワイヤの位置を失わないために重要であるので、機構、例えば、後述するような拡張可能な要素を、血管から取り外されることを防止するガイドワイヤに追加してもよい。
【0063】
1つの実施形態では、縫合糸送達デバイス5とシース41を、頸動脈狭窄症の治療、或いは急性虚血性脳卒中、脳内動脈狭窄症、脳内動脈瘤の治療などの脳内動脈の処置、または他の神経介入性処置に従って総頸動脈にアクセスするために使用する。別の実施形態では、縫合糸送達デバイス5とシース41を、経大動脈弁置換などの血管または心臓構造の治療に従って総頸動脈にアクセスするために使用する。この特定の実施形態では、シース41は、近位方向または尾側方向に向けられている。1つの実施形態では、総頸動脈への経頸動脈アクセスを、動脈アクセス装置110が挿通される皮膚の切開または穿刺によって経皮的に達成する。しかし、本明細書中に記載された縫合糸送達デバイス、ならびに装置および方法のいずれかは、様々な介入処置と共に使用することができると解されるべきである。
【0064】
別の実施形態では、縫合糸送達デバイスは、血管拡張先端部を有しておらず、予め取り付けられたシースを有していない。むしろ、縫合糸送達デバイスは、例えば、米国特許第7,001,400号明細書に記載されるように構成されている。縫合糸送達デバイスは、経頸動脈アクセスによって総頸動脈で行われる動脈切開部を縫合するために使用される。図7Aおよび図7Bに示される、この実施形態では、縫合糸送達デバイスは、一般に、近位端14および遠位端16を有するシャフト7を有する。近位ハウジング18は、針駆動ハンドル20を支持する。可撓性、非外傷性モノレールガイド本体22が、シャフト12の遠位端16から遠位に延びる。
【0065】
図7Bに示すように、足部17は、シャフト12の遠位端の近くに関節動作可能に取り付けられている。上記足部17は、近位ハウジング18上に配置された足部駆動ハンドル26の駆動時に、足部が(図7Aに示されるように)シャフト12の軸に沿って実質的に整列されている薄型構成と、足部がシャフトから側方に延在する展開位置との間で移動する。図7A図7Bに示される縫合糸送達デバイスは、図1A図1Cの縫合糸送達デバイスが縫合糸を送達するのと同様に縫合糸を送達する。
【0066】
図8には、概して71で示される、血管壁および他の生物学的組織を縫合するための縫合糸送達デバイスの別の実施形態を示す。上記デバイスは、動脈血管壁Wを縫合するのに使用するためのものである。上記デバイス71は、動脈血管壁Wの開口部Oに挿入するための縫合糸導入器ハウジング73を含む。縫合糸留めアーム75、77の形の血管壁位置決め装置71は、挿入時に上記ハウジング内に展開可能に収容され、血管内に挿入した後、上記アームを図8に示す位置に展開する。展開すると、縫合糸留めアームが縫合糸導入器ハウジング73の外周より外側に延びる。各アームは、概して78で示され、概略的に示される、縫合糸19を留めるための少なくとも一つの手段を有する。概して79で示される、針89を有する貫通機構を、血管壁Wを貫通するために設ける。上記機構を、縫合糸導入器ハウジング73、または概して80で示される縫合糸捕捉組立体のいずれかの上に設ける。図8に示すように、上記貫通機構は縫合糸捕捉組立体80の一部である場合、上記貫通機構は、縫合糸19を捕捉し、上記縫合糸留め機構から取り外すための縫合糸留め81も含む。上記縫合糸捕捉組立体は、縫合糸留めに保持された縫合糸を血管壁を通って引っ張るように作用する。上記縫合糸の端部が血管の外側に引っ張られた後、上記導入器ハウジングを取り外し、縫合糸を結んで血管を閉じることができる。
【0067】
図9に示す実施形態では、縫合糸導入器ハウジング73は、千分の数インチ~千分の数十インチの範囲内で、内径と外径が比較的少量だけ変化するように、薄い壁を有する中空の細長い円筒形部材などの、略円筒状で薄壁のハイポチューブである。上記ハウジングの外側表面42は、縫合糸捕捉組立体80(図8)の内側表面上のキーと上記ハウジングを整列させるための(明確にするため誇張した)キー溝82を含む。縫合糸留めアームを展開するためのアーム駆動組立体83は、上記ハウジングの近位端から突出しており、駆動ロッド85は、上記駆動組立体から上記ハウジングを通って縫合糸留めアームに延びている。図8および図9の縫合糸送達デバイスは、米国特許第5,860,990号明細書および米国特許第7,004,952号明細書に記載されており、両方の記載の全体を援用する。
【0068】
図8および図9の縫合糸送達デバイスは、アームが縫合糸送達デバイス内にある第1の位置から、アームが細長い本体から離れて伸びる第2の位置へ、縫合糸送達デバイス上のアームを駆動させることによって概して動作する。上記アームは、縫合糸の一部を保持する。針89の少なくとも一方を、上記アームに向かって、縫合糸送達デバイスの少なくとも一部に沿って遠位方向に近位に前進させると、上記針を動脈の組織を通って前進させる。針の一部を、縫合糸の一部と係合し、上記針を動脈組織を通して縫合糸を引っ張るために、近位方向に遠位に後退させる。
【0069】
図10Aは、部分的に開口部87の外へ展開した縫合糸留めアーム75、77を有する縫合糸送達デバイスの遠位領域の1つの実施形態の斜視図である。図10Bは、完全に展開した縫合糸留めアーム75、77を有する縫合糸送達デバイスの斜視図である。図10Cには、2本の可撓性針89が針開口部91から延び、縫合糸留めアーム75、77に係合していることを示す。図10A図10Cのデバイスは、この開示に基づいて、血管拡張先端部を有して構成してもよいと解されるべきであるが、血管拡張先端部を示していない。
【0070】
縫合糸19の端部には、針89と係合するように構成されたループ92が設けられている。縫合糸留めアーム75、77各々は、縫合糸ループ端部92を保持するための環状凹部93、縫合糸19の長さのためのスリット94、および傾斜端95を含む。可撓性針89の各々は、延長したシャフト、貫通遠位先端部96、および上記遠位先端部96の近くの溝97を含む。上記針溝は、戻り止め機構や縫合糸留めとして作用する。1つの実施形態では、上記溝97は、上記針89の全周の周りに延びる。他の実施形態では、上記溝97は、上記針89の半径方向縁部に沿った部分的外周である。上記ループ92は、直径が、上記針89の溝97にほぼ相当するが、上記針89の下向きの力に応答して直径が拡大するのに十分に弾性である。
【0071】
ここで、縫合糸留めアーム75、77の一般的な使用および操作について記載する。縫合糸19のループ端部92を、縫合糸留めアーム75、77の環状凹部93内に配置する。上記デバイスの遠位端を生体組織内に挿入し、縫合糸留めアーム75、77を、図10Bに示されるように、半径方向外側に展開する。貫通可撓性針89は、図10Cに示すように、縫合される生物学的組織(例えば、動脈組織)を通って遠位方向に通過し、縫合糸留めアーム75、77を係合する。
【0072】
上記遠位先端部96が縫合糸19のループ端部92を通ると、上記ループ端部92が一時的に半径方向外側に曲がる。上記針89は、遠位方向に前進し続けるので、上記ループ端部92が溝97に接触する。上記ループ端部は、半径方向内側に曲がり、針溝97の周りに結ぶ、そして上記針89を近位に引っ張ることによって、縫合糸端部92を上記針89の近位方向への移動に追従して、動脈組織を通って近位に縫合糸を引っ張る。
【0073】
更なる実施形態
別の実施形態では、ガイドワイヤ33は、ガイドワイヤ上に取り付けられた少なくとも1つの拡張可能なシール要素43を含む。図11A図11Cに示される拡張可能な要素43は、例えば処置シースと縫合糸送達デバイス5の交換時、および処置シースの取り外し時に、血管アクセス部位の止血を維持するために、内部血管壁に対して拡張することができる。代わりに、縫合糸送達デバイスが縫合糸を組織内に適切に配置しなかった場合、止血を維持するためにガイドワイヤを使用することができ、上記デバイスを別の血管閉鎖デバイスに交換する必要がある。第2の血管の閉鎖デバイスは、別の縫合糸送達デバイスであっても、または別のタイプの血管閉鎖デバイスのであってもよい。シール要素を有するこのガイドワイヤは、処置シースが配置される前またはシース取り外し後の処置の最後のどちらかに縫合糸が配置される場合、血管閉鎖デバイスを交換するために使用してもよい。
【0074】
上記拡張可能な要素43を、ガイドワイヤの遠位先端部から近位の所定距離に配置することができる。1つの実施形態では、上記拡張可能な要素43を、ガイドワイヤの遠位先端部の約3cm近位に配置する。これによって、ガイドワイヤの遠位先端部を、上記拡張可能な要素43を越えて所定距離だけ挿入することを可能にする。
【0075】
上記縫合糸送達デバイスを血管内に挿入すると、上記拡張可能な要素をすぼませなければならない。縫合糸送達デバイス5の拡張器先端部21は、血液マーク用のインジケータルーメン45を有してもよい。このように、送達デバイス5の拡張器先端部21が血管に入るとすぐに、手術者がガイドワイヤ上で拡張可能な要素43をすぼむまたは収縮することがわかるように、手術者に指示を提供する。拡張可能な要素43は、構造を変化させることができる。例えば、拡張可能な要素43は、バルーン;その周りが密封膜である編組、ケージ、または溝付き管などの拡張可能な部材などであってもよい。
【0076】
図11B図11Cに示すように、拡張可能なシール要素43を使用時に血管の内側に配置してもよい。拡張可能な要素43が血管内に位置決めされると、拡張可能な要素43を血管内壁に対してシールするように、手術者は近位に引き戻すことができる。血管内の動脈血圧は血管内壁に対してシール要素の圧力を加えるのに役立ち、そして、少量の力のみが、もしあれば、止血を維持するために必要とされてもよい。図12に示される別の実施形態では、拡張可能な要素43が血管の外側に配置されている。手術者は、拡張可能な要素43が血管外壁に対して圧力を加えて止血を達成および維持するように、外部血管壁に対して前方に拡張可能な要素を押す。
【0077】
更に別の実施形態において、ガイドワイヤは、図13に示すように、一対の拡張可能なシール要素43aおよび43bを含む。使用時に、血管壁に圧力を加える拡張可能な要素を用いて、血管壁を拡張可能な要素43aおよび43bの間に挟む。これにより、有利に、血管壁の動きに対するガイドワイヤの位置を固定する。拡張可能な要素43aおよび43bは、血管壁への圧力を達成するために、互いに向かってばね付勢されてもよい。複数の拡張可能要素の実施形態の変形例では、拡張可能な要素43は、拡張可能なバルーンである。使用時には、動脈切開部を「予め膨張させる」のに使用する場合を除き、拡張可能部分が動脈切開部のサイズを増加させないように注意する。
【0078】
別の実施形態では、ガイドワイヤには、上記送達デバイス5および/または処置シースの血管内への挿入時に、血管に対するガイドワイヤの位置を維持する血管内アンカーを含む。図14に示すように、上記アンカー47は、例えば、膨張可能なバルーン、拡張可能なケージまたは編組、または血管内壁に固定する他の要素であってもよい。拡張可能または膨張可能なアンカー47の場合には、アンカー47は、アンカー47が所定の位置にアンカー47を固定するために血管壁に対して十分な力を加えるようなサイズに拡張する。
【0079】
1つの実施形態では、拡張可能な要素は、拡張可能なシール要素および血管内アンカーの両方として機能してもよい。例えば、拡張可能な要素がバルーンであった場合、ある直径における膨張は、血管内にガイドワイヤを固定するだけでなく、動脈切開部の周りにシールを形成するのに十分であってもよい。また、拡張可能な要素をある直径に拡張して動脈切開部をシールし、より大きな直径に拡張して血管壁に対して固定する。同様に、機械的に拡張可能な要素を、シールおよび固定の両方を行うために拡張してもよく、またはシールを形成するのに十分な1つの状態に拡張してもよく、血管壁に対して更に固定するためにさらに拡張してもよい。上記デバイスはシール拡張およびアンカー拡張状態の間で再配置する必要があるかもしれない。
【0080】
図15には、ガイドワイヤ33が、ガイドワイヤを所定の位置に保持するために患者の皮膚に固定することができる1つ以上のクリップ51に取り付けられる、別の実施形態が示されている。クリップ51は、接着裏地を含む様々な手段を用いて患者に固定することができる。クリップ51は、様々な構成のいずれかで患者の皮膚上に配置することができる。図15の実施形態では、皮膚へのエントリ位置の近くの1つのクリップ51aおよび更に上記エントリ位置からの別のクリップ51bを含む2つのクリップ51を使用する。上記クリップ51は、常時、所定の位置にガイドワイヤを保持するのに役立つ。クリップ51bを、ワイヤ上に載せた上記送達デバイス5として解放してもよく、次いで再度クリップし、クリップ51aを、皮膚内に挿入し、血管内に配置した上記送達デバイス5として解放する。同様に、上記送達デバイスが取り外されている間、および処置シースが血管内に挿入されている間、ガイドワイヤ33の位置を維持するために、上記クリップを使用してもよい。
【0081】
クリップ51をまた、閉塞縫合糸19の管理のために使用してもよい。上記クリップには、その中へ縫合糸を挿入および保持してもよい、溝などの1つ以上の取付手段を含んでもよい。図16および図17には、縫合糸を予め結ばれていない場合の例(図16)および縫合糸が予め結ばれている場合の例(図17)を示す。縫合糸はまた両方とも、クリップ51の同じ側に配置することができる。例えば、処置シースを配置することができるまで止血を維持するために、縫合糸に張力を維持するために止血が必要とされる時に、クリップ51は、縫合糸に張力を維持するように構成されてもよい。この場合、結び目は予め結ばれていないか、または結ばれているが、皮膚の外側にあり且つ縫い目の両側に張力を維持することができるのに十分に遠くへ戻す。縫合糸は、手動で、または皮膚上のクリップまたはクリートを用いてのいずれかで、張力を維持することができる。この工程を容易にするために、縫合糸の後端部を、タグまたはハンドルに取り付けても、または次いで皮膚に固定されるクリップまたはクリートに予め取付けてもよい。縫合糸は、介入時にこのクリップまたはクリートのいずれかに保持しても、または、それらがじゃまになって取り外し、次いでシースの取り外し後であるが結び目を結ぶ前に再挿入してもよい。或いは、上記縫合糸を手動で張力を維持し、次いでその後すぐに結び目を結んでもよい。或いは、結び目が予め結ばれている場合、結び目を単に所定の位置に押し下げてもよい。
【0082】
図18A図18Cに示される別の実施形態では、自動閉鎖材料53が送達シャフト7の近位領域に予め装填されている。穴が自己閉鎖材料の中心を通って延び、送達シャフト7を上記穴によって位置決めする。上記送達デバイス5が上記穴から引き抜かれる際に、上記穴の上を自動的に閉じるように自動閉鎖材料が構成されている。自動閉鎖材料は、上記デバイス5を引き出すと動脈切開部上を閉鎖する、穴、スリット、交差スリット、ダックビル弁を有するゴム栓または膜、または発泡体などの圧縮性材料、または単なる一対のバネ部材(例えば、ワイヤまたは板バネ)であってもよい。上記自動閉鎖材料は、コラーゲンプラグ、生体吸収性ポリマー、DacronまたはePTFEなどの非生体吸収性ポリマー、または他の適切な生体適合性材料であってもよい。自動閉鎖材料が一時的なものである場合、上記材料は、シリコーンゴム、またはポリウレタンなどの軟質エラストマーであってもよい。
【0083】
図18Aに示すように、動脈切開部から送達デバイス5を取り外す直前に、プッシュロッドまたはプッシュチューブなどの押し要素55を用いて、自動閉鎖材料を動脈切開部上で遠位方向に押す。上記押し要素55は、送達デバイス5と一体であっても、または別個の付属アイテムであってもよい。図18Bに示すように、自動閉鎖材料は、止血を維持するために、動脈切開部の上に圧縮状態に保持される。適切に配置された縫合糸19、ならびに所定の位置に残るガイドワイヤは、自動閉鎖材料の中央開口部を通過する。図18Cに示すように、処置シースは、その後、動脈切開部を通って血管内に、自己閉鎖材料を通ってガイドワイヤ上に配置される。血管壁の外側に対して自己閉鎖材料を圧縮状態に保持するプッシャは、その後緩和してもよい。処置が完了した後、縫合糸の結び目を形成するまで、動脈切開部を圧縮するためにプッシャを再度押してもよい。プッシャが剛性スリーブである場合、プッシャは組織路を通ってデバイス交換を容易にするための導管を提供する手段を兼ねることができる。
【0084】
本実施形態の変形例では、自動閉鎖材料は、処置の終わりに止血材料として作用するように所定の位置に残る。上記材料は送達シャフト上に予め装填され、縫合糸捕捉ロッドは上記送達シャフトの両側への位置を通り抜ける。従って、縫合糸を送達シャフトから引き出す時、それらはまた、自己閉鎖材料の二つの側孔を通って引っ張られる。上記のように、上記材料は、所定の位置に押し込まれ、デバイス交換時の一時的な止血として作用する。しかしながら、処置の最後に、永久的な止血を達成するために縫合糸の端部を結ぶと、上記材料は所定の位置に残る。
【0085】
図19A図19Cに示される別の実施形態においては、処置シースを取り外した後、止血材料57を動脈切開部の位置の上に配置する。縫合糸の結び目が結ばれる前に、または縫合糸の結び目を結ぶ間に、上記止血材料57を縫合糸19上に配置する。上記結び目によって、動脈切開部上の所定位置に止血材料を固定する。あるいは、上記止血材料を、縫合糸の結び目が結ばれた後、動脈切開部の上に挿入し、そして別の結びまたはクリップのいずれかを、動脈切開部に対して止血材料を保持するために使用してもよい。上記止血材料は、例えば、コラーゲンプラグ、生体吸収性ポリマー、DacronまたはePTFEなどの非生体吸収性ポリマー、または他の適切な生体適合性材料であってもよい。上記止血材料は、一時的または永久的な材料であってもよい。その記載の全体を援用する米国特許第5,549,633号明細書には、縫合糸にシール材を結合するための例示的な装置および方法を記載している。
【0086】
本開示を読めば当業者には明らかとなるように、本明細書に記載および例示された個々の実施形態のそれぞれは、本明細書に記載の要件の範囲から逸脱することなく、容易に分離または他のいくつかの任意の特徴と組み合わせることができる個別の構成要素および特徴を有する。如何なる列挙された方法も、列挙された順序で、または論理的に可能な任意の他の順序で実施することができる。
【0087】
様々な方法および装置の実施形態は、特定の解釈を参照して詳細に本明細書に記載されているが、当然のことながら、他の解釈、実施形態、使用方法、およびその組み合わせがまた可能である。従って、添付の特許請求の範囲の意図および範囲は、本明細書に含まれる実施形態の記載に限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0088】
5 … 縫合糸送達デバイス
7 … 送達シャフト
9 … 近位ハンドル(ハウジング)
11 … 可動式駆動ハンドル
12 … シャフト
13 … 駆動レバー(駆動要素)
14 … 近位端
15 … 縫合糸捕捉ロッド
16 … 遠位端
17 … 血管壁位置決め装置
18 … 近位ハウジング
19 … 縫合糸
20 … 針駆動ハンドル
21 … 遠位先端部
23 … 遠位ポート
29 … 可撓性フィラメント(可撓性リンク)
31 … ガイドワイヤルーメン
33 … ガイドワイヤ
34 … 出口ポート
35 … 導管
37 … 溝
39 … 伸縮性アーム
41 … シース
43 … シール要素
45 … インジケータルーメン
47 … アンカー
53 … 自動閉鎖材料
55 … 押し要素
57 … 止血材料
73 … 縫合糸導入器ハウジング
75、77 … 縫合糸留めアーム
79 … 貫通機構
80 … 縫合糸捕捉組立体
81 … 縫合糸留め
82 … キー溝
83 … アーム駆動組立体
85 … 駆動ロッド
87 … 開口部
89 … 針
91 … 針開口部
92 … 縫合糸ループ端部
93 … 環状凹部
94 … スリット
95 … 傾斜端
96 … 貫通遠位先端部
97 … 溝
129 … 閉塞要素
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2022-03-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈切開部を通って動脈中に挿入されるサイズおよび形状の遠位先端部を有する本体;
該本体内に保持された少なくとも1つの縫合要素;
少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッド;
該遠位先端部に位置するガイドワイヤルーメン;および
該ガイドワイヤルーメン内に配置されるガイドワイヤ
を含み、
少なくとも1本の縫合糸捕捉ロッドは少なくとも1つの縫合要素に連動し、少なくとも1つの縫合要素が血管壁から伸び、少なくとも1つの縫合要素を血管壁に貫通させた後、該少なくとも1つの縫合要素が対向部分間の結び目を画定するように少なくとも1つの縫合要素を該血管壁に貫通させるように配列され、
該ガイドワイヤルーメンが、遠位先端部の最遠位端に第1の開口部、並びに遠位先端部の側面に位置し、更に最遠位端および使用中に血管に対して位置決めする血管壁位置決め装置との間に位置する第2の開口部を形成し、
該第2の開口部が、ガイドワイヤルーメンとデバイスの完全に外側の位置との間に通路を形成し、
該ガイドワイヤが、第1の開口部および第2の開口部の両方を通って、遠位先端部から遠位先端部の外側に直接出て、
該遠位先端部が、遠位先端部の最遠位端に先細りになった外側表面を形成し、
該第2の開口部が、先細りになった外側表面の近位に位置し、
該遠位先端部は、遠位先端部が動脈内を進む間、遠位先端部を前記ガイドワイヤの湾曲に適合させることが可能であるほど可撓性を有する、血管壁の開口部を閉鎖するためのデバイス。
【請求項2】
前記本体が第2の開口部を通って前記ルーメンの中への前記ガイドワイヤの通過を可能にし、ガイドワイヤをガイドワイヤルーメン内に配置する際に第2の開口部外への血流を防止する、前記ガイドワイヤルーメン内に位置する弁を更に含む、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記遠位先端部が、直線軸に沿って延びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記遠位先端部の可撓性が最遠位端に向かう動きおよび遠位先端部の動きを増大しながら、前記遠位先端部の可撓性が遠位先端部の長さにわたって変化する、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記遠位先端部が約3cmの長さを有して、デバイスの挿入可能な部分を約4~5cmに限定し、該挿入可能な部分が動脈切開部を通って挿入されるように構成されているデバイスの一部分である、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記遠位先端部が約5~7cmの長さを有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも1つの縫合要素が、前記血管壁位置決め装置の内外に伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも1つの縫合要素が、前記血管壁位置決め装置の少なくとも1つの外側端の内外に伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
ガイドワイヤルーメン全体が、前記遠位先端部を通ってのみ伸びる、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記ガイドワイヤルーメンのどの部分も、前記血管壁位置決め装置の近位には配置されていない、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記遠位先端部が、前記ガイドワイヤの可撓性より高い可撓性を有する、請求項3記載のデバイス。
【請求項12】
前記ガイドワイヤが、前記遠位先端部の剛性より高い剛性を有する、請求項3記載のデバイス。
【請求項13】
前記遠位先端部は、遠位先端部の最遠位端に先細りになった外側表面を形成する円錐部分と、該先細りになった外側表面の近位の円筒部分とを含み、前記第2の開口部は、円筒部分に配置される、請求項1記載のデバイス。
【外国語明細書】