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特開2022-78099ナチュラルキラー細胞を生成させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078099
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ナチュラルキラー細胞を生成させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0783 20100101AFI20220517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20220517BHJP
【FI】
C12N5/0783
A61P35/00
A61P35/02
A61K35/17 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022021708
(22)【出願日】2022-02-16
(62)【分割の表示】P 2020014338の分割
【原出願日】2011-07-13
(31)【優先権主張番号】61/363,981
(32)【優先日】2010-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/497,897
(32)【優先日】2011-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ジップロック
(71)【出願人】
【識別番号】520169074
【氏名又は名称】セルラリティ インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト ジェイ.ハリリ
(72)【発明者】
【氏名】モハムマド エイ.ヘイダラン
(72)【発明者】
【氏名】ステプヘン ジャスコ
(72)【発明者】
【氏名】リン カング
(72)【発明者】
【氏名】エリク ラウ
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ パル
(72)【発明者】
【氏名】ブハバニ ストウト
(72)【発明者】
【氏名】バネスサ ボスキナリアン‐ベルセ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレウ ゼイトリン
(72)【発明者】
【氏名】クイアオクイ ズハング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】二工程の拡大及び分化方法を用いてナチュラルキラー細胞を産生する方法を提供する。
【解決手段】活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法であって:(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、インターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞の集団を産生することを含む、前記方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法であって:
(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細
胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、イ
ンターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7
)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確
定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに
(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活
性化NK細胞の集団を産生すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する二工程方法であって、該方法の第一
の工程が、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン-7(IL-7)、及びインターロイキン-15(IL-
15)のうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大す
ることを含み、ここで、該SCF、IL-7、及びIL-15が該培地の不確定成分に含まれず、かつ
ここで、該拡大することの間に、該造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞
又は前駆細胞がNK細胞に分化し;かつ
該方法の第二の工程が、該第一の工程由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第
二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を産生すること
を含む、前記方法。
【請求項3】
前記第一の培地が、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、トロンボポエチン(Tpo
)、インターロイキン-2(IL-2)、又はヘパリンのうちの1つ又は複数を更に含む、請求項1
記載の方法。
【請求項4】
前記第一の培地が、胎仔ウシ血清又はヒト血清を更に含む、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記SCFが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、請求項3記載の方
法。
【請求項6】
前記Flt3-Lが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、請求項3記載の
方法。
【請求項7】
前記IL-2が、前記第一の培地中、約50~約1500IU/mLの濃度で存在する、請求項3記載の
方法。
【請求項8】
前記IL-7が、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、請求項3記載の方
法。
【請求項9】
前記IL-15が、前記第一の培地中、1~約150ng/mLの濃度で存在する、請求項3記載の方
法。
【請求項10】
前記Tpoが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、請求項3記載の方
法。
【請求項11】
前記ヘパリンが、前記第一の培地中、約0.1~約30U/mLの濃度で存在する、請求項3記載
の方法。
【請求項12】
前記第二の工程における前記IL-2が、前記第二の培地中、50~約1500IU/mLの濃度で存
在する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
該第二の培地が、胎仔ウシ血清(FCS)、トランスフェリン、インスリン、エタノールア
ミン、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びフィト
ヘマグルチニンのうちの1つ又は複数を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記造血幹細胞又は前駆細胞がCD34+である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記造血幹細胞又は前駆細胞が、ヒト胎盤灌流液由来の造血幹細胞又は前駆細胞、及び
臍帯由来の造血幹細胞又は前駆細胞を含み、ここで、該胎盤灌流液及び該臍帯血が同じ胎
盤に由来するものである、請求項1記載の方法。
【請求項16】
工程(b)のフィーダー細胞が、マイトマイシンC処理した末梢血単核細胞(PBMC)、K562細
胞、又は組織培養物接着性幹細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記NK細胞が、CD3-CD56+CD16-である、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記NK細胞が更にCD94+CD117+である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記NK細胞が更にCD161-である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記NK細胞が更にNKG2D+である、請求項17記載の方法。
【請求項21】
前記NK細胞が更にNKp46+である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
前記NK細胞が更にCD226+である、請求項17記載の方法。
【請求項23】
(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細
胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、イ
ンターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7
)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確
定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに
(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活
性化NK細胞の集団を産生すること:
を含む方法によって得られる活性化NK細胞の集団。
【請求項24】
腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、該腫瘍細胞を複数のCD94+CD117+ NK細胞と接
触させることを含み、ここで、該NK細胞が、請求項1記載の方法によって産生されたもの
である、前記方法。
【請求項25】
前記腫瘍細胞が、原発性腺管癌細胞、膠芽腫細胞、白血病細胞、急性T細胞白血病細胞
、慢性骨髄リンパ腫(CML)細胞、急性骨髄性白血病細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、肺
癌細胞、結腸腺癌細胞、組織球性リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、結腸直腸癌細胞、結
腸直腸腺癌細胞、前立腺癌細胞、又は網膜芽腫細胞である、請求項24記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(1.関連出願)
本出願は、その開示がその全体として引用により本明細書中に組み込まれている、2010
年7月13日に出願された米国仮特許出願第61/363,981号、及び2011年6月16日に出願された
米国仮特許出願第61/497,897号の恩典を主張する。
【0002】
(2.分野)
ナチュラルキラー細胞、例えば、胎盤に由来する、例えば、胎盤灌流液(例えば、ヒト
胎盤灌流液)に由来するナチュラルキラー細胞、例えば、胎盤由来中間ナチュラルキラー
細胞、又は他の組織、例えば、臍帯血もしくは末梢血に由来するナチュラルキラー細胞の
集団を産生する方法が本明細書で提供される。本明細書で提示された方法によって産生さ
れる拡大されたナチュラルキラー細胞集団も本明細書で提供される。胎盤灌流液、及びそ
れに由来するナチュラルキラー細胞を用いて、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法が本明細書
で更に提供される。ある実施態様では、該ナチュラルキラー細胞を、1以上の免疫調節化
合物、例えば、IMiDs(商標)と呼ばれる免疫調節化合物と併用するか、又は該免疫調節化
合物で処理する。
【背景技術】
【0003】
(3.背景)
ナチュラルキラー(NK)細胞は、自然免疫系の主要な構成要素となる細胞傷害性リンパ球
である。NK細胞は、T細胞抗原受容体(TCR)も、CD3も、表面免疫グロブリン(Ig)B細胞受容
体も発現していない。NK細胞は、ヒトでは通常、表面マーカーCD16(FcγRIII)及びCD56を
発現するが、あるサブクラスのヒトNK細胞はCD16-である。NK細胞は細胞傷害性であり;そ
の細胞質中の小顆粒は、パーフォリン、及びグランザイムとして知られるプロテアーゼな
どの特殊なタンパク質を含有している。死滅させる標的となった細胞のすぐ近くに放出さ
れると、パーフォリンは、標的細胞の細胞膜に孔を形成し、そこからグランザイム及び関
連分子が進入可能になり、アポトーシスが誘導される。1つのグランザイム、グランザイ
ムB(グランザイム2及び細胞傷害性Tリンパ球関連セリンエステラーゼ1としても知られて
いる)は、細胞性免疫応答において標的細胞アポトーシスの迅速な誘導に重要なセリンプ
ロテアーゼである。
【0004】
NK細胞は、インターフェロン又はマクロファージ由来サイトカインに応答して活性化さ
れる。活性化されたNK細胞は、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞と呼ばれる。NK細胞
は、細胞の細胞傷害活性を制御する、「活性化受容体」及び「抑制性受容体」と呼ばれる
、2種類の表面受容体を有している。
【0005】
他の活性の中でも、NK細胞は、宿主による腫瘍の拒絶において役割を果たす。癌細胞は
、クラスI MHCの発現が低下しているか、又はクラスI MHCを発現しないため、それらは、
NK細胞の標的になり得る。蓄積しつつある臨床データは、末梢血単核細胞(PBMC)又は骨髄
から単離されたヒトNK細胞のハプロタイプ一致性移植が、検出可能な移植片対宿主病(GVH
D)を生じることなく、強力な抗白血病効果を媒介することを示唆している。Ruggeriらの
文献(Science 295:2097-2100(2002))を参照されたい。ナチュラルキラー細胞は、主要組
織適合性複合体(MHC)タンパク質を欠如しているか、又はそのレベルの低下を示す細胞に
よって活性化され得る。更に、NK細胞上に発現される活性化受容体は、活性化受容体に対
するリガンドを発現し、それゆえ、NK細胞の活性化を誘発する「ストレスを受けた」又は
形質転換された細胞の検出を媒介することが知られている。例えば、NCR1(NKp46)は、ウ
イルス血球凝集素に結合する。NKG2Dリガンドとしては、CMV UL16結合タンパク質1(ULB1)
、ULB2、ULB3、並びにMHC-クラス-I-ポリペプチド関連配列A(MICA)及びMICBタンパク質が
挙げられる。NKタンパク質2B4はCD48に結合し、DNAM-1は、ポリオウイルス受容体(PVR)及
びNectin-2に結合し、両者とも、急性骨髄性白血病(AML)で常に検出される。Pendaらの文
献(Blood 105:2066-2073(2004))を参照されたい。更に、AMLの溶解は、主に、自然細胞傷
害性受容体(NCR)依存的であると記載されている。Fauriatらの文献(Blood 109:323-330(2
007))を参照されたい。末梢血由来の活性化され、拡大されたNK細胞及びLAK細胞は、進行
癌を有する患者のエクスビボ療法とインビボ治療の両方で使用されており、白血病などの
骨髄関連疾患;乳癌;ある種のリンパ腫に対してある程度の成功を収めている。LAK細胞治
療では、患者にまずIL-2を投与し、次に白血球除去療法を施し、その後、回収された自己
血液細胞を、IL-2の存在下で数日間、エクスビボでインキュベートし、培養することが必
要とされる。治療を終了するためには、LAK細胞を比較的高用量のIL-2と一緒に再注入し
なければならない。このパージ治療(purging treatment)は高価であり、重篤な副作用を
引き起こすことがある。これらの副作用には、体液貯留、肺水腫、血圧低下、及び高熱が
含まれる。
【0006】
腫瘍細胞及びウイルス感染細胞を死滅させる上でのNK細胞の有利な特性にもかかわらず
、NK細胞は、その腫瘍標的能力及び殺腫瘍能力を培養及び拡大の間に維持するのが難しい
ことが主な理由で、取扱い及び免疫療法での適用が依然として難しい。従って、当技術分
野では、殺腫瘍機能を保持するナチュラルキラー細胞を産生し、それを拡大する効率的な
方法を開発することが必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
(4.概要)
細胞、例えば、造血細胞、例えば、造血幹細胞、例えば、CD34+造血幹細胞を拡大し、
ナチュラルキラー細胞に分化させる方法が本明細書で提供される。一態様では、ナチュラ
ルキラー(NK)細胞を産生する方法であって、造血幹細胞又は前駆細胞、例えば、CD34+
細胞又は前駆細胞を第一の培地中で培養して、拡大され、分化した細胞を産生すること、
及びその後、該拡大された細胞を、該細胞を更に拡大し、ナチュラルキラー細胞に分化さ
せる第二の培地中で培養することを含む、方法が本明細書で提供される。第一の工程及び
第二の工程は、該細胞を独特な組合せの細胞因子を含む培地中で培養することを含む。あ
る実施態様では、該細胞因子(例えば、サイトカイン)は、該培地の不確定成分(例えば、
血清)に含まれず、例えば、該細胞因子(例えば、サイトカイン)は、該培地の不確定成分(
例えば、血清)にとって外因性のものである。ある実施態様では、該方法は二工程方法で
ある。ある実施態様では、該方法は、該細胞を接触させる第三の工程又は中間工程を含ま
ない。具体的な実施態様では、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法で
あって:(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血
幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように
、インターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(
IL-7)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の
不確定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)第一の工程
由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞の
集団を産生することを含む、方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される方法(
例えば、二工程方法)によって産生されるナチュラルキラー細胞は、本明細書では、TSNK
細胞と呼ばれる。
【0008】
ある実施態様では、該第一の培地は、ヒト血清(例えば、ヒト血清AB)、胎仔ウシ血清(f
etal bovine serum)(FBS)、もしくは胎仔ウシ血清(fetal calf serum)(FCS)、例えば、5
%~20%v/v、幹細胞因子(SCF)、例えば、1ng/mL~50ng/mL、FMS様チロシンキナーゼ-3リ
ガンド(Flt-3リガンド)、例えば、1ng/ml~20ng/mL;インターロイキン-7(IL-7)、例えば
、1ng/mL~50ng/mL;トロンボポエチン(TPO)、例えば、1ng/mL~50ng/mL;インターロイキ
ン-2(IL-2)、例えば、50IU/mL~500IU/mL;インターロイキン-15(IL-15)、例えば、1ng/mL
~50ng/mL;及び/又はヘパリン、例えば、0.1IU/mL~10IU/mLのうちの1つ又は複数を含む
培地を含む。具体的な実施態様では、該第一の培地は、幹細胞因子(SCF)、インターロイ
キン-7(IL-7)、及びインターロイキン-15(IL-15)を含む。別の具体的な実施態様では、該
第一の培地は、成長培地、ヒト血清(例えば、ヒト血清AB)、FBS、FCS、SCF、IL-7、及びI
L-15を含む。別の具体的な実施態様では、該第一の培地は更に、Flt-3リガンド(Flt3-L)
、TPO、IL-2、及び/又はヘパリンを含む。別の具体的な実施態様では、該第一の培地は、
成長培地、10%のヒト血清又は胎仔ウシ血清、20ng/mLのSCF、10ng/mlのFlt3-L、20ng/mL
のIL-7、20ng/mLのTPO、200IU/mLのIL-2、10ng/mLのIL-15、及び1.5IU/mLのヘパリンを含
む。別の具体的な実施態様では、該第一の培地は、IL-2を含まない。別の具体的な実施態
様では、該第一の培地中で該培養することは、フィーダー細胞、例えば、K562細胞、例え
ば、マイトマイシンC処理したK562細胞、末梢血単核細胞(PBMC)、例えば、マイトマイシ
ンC処理したPBMC、又は組織培養物接着性幹細胞、例えば、マイトマイシンC処理した組織
培養物接着性幹細胞を用いて培養することを含む。
【0009】
ある実施態様では、該第一の培地は、GBGM(登録商標)、AIM-V(登録商標)、X-VIVO(商標
)10、X-VIVO(商標)15、OPTMIZER、STEMSPAN(登録商標)H3000、CELLGRO COMPLETE(商標)、
及び/又はDMEM:F12であるか、又はこれらを含む。ある実施態様では、該培地は、O-アセ
チル-カルニチン(アセチルカルニチン、O-アセチル-L-カルニチン、又はOACとも呼ばれる
)、例えば、約0.5mM~10mMを含む。一実施態様では、該培地は、Stemspan(登録商標)H300
0、及び/又はDMEM:F12、及び例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mM
のOACを含む。具体的な実施態様では、該培地は、GBGM(登録商標)を含む。別の具体的な
実施態様では、該培地は、DMEM:F12及び約5mMのOACを含む。別の具体的な実施態様では、
該培地は、Stemspan(登録商標)H3000及び約5mMのOACを含む。
【0010】
ある実施態様では、該第二の培地は:ヒト血清(例えば、ヒト血清AB)、胎仔ウシ血清(fe
tal bovine serum)(FBS)、もしくは胎仔ウシ血清(fetal calf serum)(FCS)、例えば、5%
~15%FCS v/v;IL-2、例えば、10IU/mL~1000IU/mL;トランスフェリン、例えば、10μg/m
L~50μg/mL;インスリン、例えば、5μg/mL~20μg/mL;エタノールアミン、例えば、5×1
0-4~5×10-5M;オレイン酸、例えば、0.1μg/mL~5μg/mL;リノール酸、例えば、0.1μg/
mL~5μg/mL;パルミチン酸、例えば、0.05μg/mL~2μg/mL;ウシ血清アルブミン(BSA)、
例えば、1μg/mL~5μg/mL;及び/又はフィトヘマグルチニン、例えば、0.01μg/mL~1μg
/mLのうちの1つ又は複数を含む細胞成長培地を含む。具体的な実施態様では、該第二の培
地はIL-2を含む。より具体的な実施態様では、該第二の培地は、ヒト血清、FBS、もしく
はFCS、例えば、10%v/v、IL-2、トランスフェリン、インスリン、エタノールアミン、オ
レイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、及び/又はフィトヘマ
グルチニンを含む細胞成長培地を含む。より具体的な実施態様では、該第二の培地は、イ
スコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、10%のヒト血清、FBS、もしくはFCS、400IUのIL-2、3
5μg/mLのトランスフェリン、5μg/mLのインスリン、2×10-5Mのエタノールアミン、1μg
/mLのオレイン酸、1μg/mLのリノール酸、0.2μg/mLのパルミチン酸、2.5μg/mLのBSA、
及び0.1μg/mLのフィトヘマグルチニンを含む。別の具体的な実施態様では、該第二の培
地中で該培養することは、例えば、該第二の培地中で、フィーダー細胞、例えば、K562細
胞(例えば、マイトマイシンC処理したK562細胞)又はPBMC(例えば、マイトマイシンC処理
したPBMC)を起こしたとき、その1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日後に、該細胞を用
いて培養することを含む。ある実施態様では、該培地は、GBGM(登録商標)、AIM-V(登録商
標)、X-VIVO(商標)10、X-VIVO(商標)15、OPTMIZER、STEMSPAN(登録商標)H3000、CELLGRO
COMPLETE(商標)、及び/又はDMEM:F12を含む。ある実施態様では、該培地は、O-アセチル-
カルニチン(アセチルカルニチン、O-アセチル-L-カルニチン、もしくはOACとも呼ばれる)
、又はミトコンドリアでのアセチル-CoA循環に影響を及ぼす化合物、チアゾビビン、Y-27
632、ピインテグリン(pyintegrin)、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、カスパーゼ阻害剤、もし
くは他の抗アポトーシス化合物/ペプチド、NOVA-RS(Sheffield Bio-Science)、又は他の
小分子成長促進剤のうちの1つ又は複数を含む。ある実施態様では、該培地は、ニコチン
アミドを含む。ある実施態様では、該培地は、約0.5mM~10mMのOACを含む。一実施態様で
は、該培地は、Stemspan(登録商標)H3000、及び/又はDMEM:F12、及び例えば、約0.5、1、
2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10mMのOACを含む。具体的な実施態様では、該培地はG
BGM(登録商標)を含む。別の具体的な実施態様では、該培地は、DMEM:F12及び約5mMのOAC
を含む。別の具体的な実施態様では、該培地は、Stemspan(登録商標)H3000及び約5mMのOA
Cを含む。
【0011】
別の具体的な実施態様では、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法で
あって:(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血
幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように
、インターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(
IL-7)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の
不確定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)工程(a)由
来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞の集
団を産生することを含む、方法が本明細書で提供される。
【0012】
別の具体的な実施態様では、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する二工程
方法であって、該方法の第一の工程が、SCF、IL-7、及びIL-15のうちの1つ又は複数を含
む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大することを含み、該SCF、IL-7
、及びIL-15が該培地の不確定成分(例えば、血清)に含まれず、該拡大することの間に、
造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化し;か
つ該方法の第二の工程が、該第一の工程由来の細胞をIL-2を含む第二の培地中で拡大して
、活性化NK細胞を産生することを含む、方法が本明細書で提供される。別の具体的な実施
態様では、該第一の培地は更に、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、トロンボポ
エチン(Tpo)、インターロイキン-2(IL-2)、及び/又はヘパリンのうちの1つ又は複数を含
む。別の具体的な実施態様では、該第一の培地は更に、約5%~20%の胎仔ウシ血清又は
ヒト血清を含む。別の具体的な実施態様では、該SCFは、該第一の培地中、約1~約150ng/
mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該Flt3-Lは、該第一の培地中、約1~
約150ng/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該IL-2は、該第一の培地中、
約50~約1500IU/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該IL-7は、該第一の
培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該IL-15は、該
第一の培地中、1~約150ng/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該Tpoは、
該第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様では、該ヘ
パリンは、該第一の培地中、約0.1~約30U/mLの濃度で存在する。別の具体的な実施態様
では、該第二の工程のIL-2は、該第二の培地中、50~約1500IU/mLの濃度で存在する。別
の具体的な実施態様では、該第二の培地は更に、胎仔ウシ血清(FCS)、トランスフェリン
、インスリン、エタノールアミン、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ウシ血清ア
ルブミン(BSA)、及びフィトヘマグルチニンのうちの1つ又は複数を含む。
【0013】
ある具体的な実施態様では、該造血幹細胞又は前駆細胞を、該第二の培地中で該培養す
ることの前に、該第一の培地中で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15
、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28日間培養する。ある他の具
体的な実施態様では、該細胞を、該第二の培地中で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28日間培
養する。より具体的な実施態様では、該造血幹細胞又は前駆細胞を、該第一の培地中で、
21日間培養し、その後、該第二の培地中で、21日間培養する。
【0014】
本明細書でTSNK細胞と呼ばれる、上記の二工程方法によって産生されるナチュラルキラ
ー細胞の集団が本明細書で更に提供される。具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、T
SNK細胞)はCD3-CD56+である。具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、TSNK細胞)はCD3
-CD56+CD16-である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、TSNK細胞)は更にCD9
4+CD117+である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、TSNK細胞)は更にCD161-
である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、TSNK細胞)は更にNKG2D+である。
別の具体的な実施態様では、該NK細胞は更にNKp46+である。別の具体的な実施態様では、
該該NK細胞は更にCD226+である。
【0015】
ある実施態様では、該TSNK細胞の90%、92%、94%、96%、又は98%超は、CD56+及びC
D16-である。いくつかの実施態様では、該TSNK細胞の少なくとも80%、82%、84%、86%
、88%、又は90%は、CD3-及びCD56+である。該TSNK細胞の90%、92%、94%、96%、又
は98%超は、CD56+、CD16-、及びCD3-である。他の実施態様では、該TSNK細胞の少なくと
も50%、52%、54%、56%、58%、又は60%はNKG2D+である。他の実施態様では、該TSNK
細胞の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%未満はNKB1+である。ある他の実施
態様では、該TSNK細胞の10%、8%、6%、4%、又は2%未満はNKAT2+である。ある他の実
施態様では、該TSNK細胞の10%、8%、6%、4%、又は2%未満は、CD56+及びCD16+である
。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも50%、55%、60%、
65%、又は70%はNKp46+である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細
胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%はCD117+である。
他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも20%、25%、30%
、35%、40%、又は45%はCD94+である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+
TSNK細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%はCD161-
である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞少なくとも10%、12%
、14%、16%、18%、又は20%はCD226+である。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD
56+ TSNK細胞の少なくとも20%、25%、30%、35%、又は40%はCD7+である。より具体的
な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、
55%、又は60%はCD5+である。
【0016】
別の態様では、腫瘍細胞増殖を抑制するか、ウイルス感染を治療するか、又は癌、例え
ば、血液癌及び固形腫瘍を治療するためのTSNK細胞の使用が本明細書で提供される。ある
実施態様では、該TSNK細胞を、免疫調節化合物、例えば、下の第6.2.1節に記載の免疫調
節化合物、もしくはサリドマイドと接触させるか、又は該免疫調節化合物もしくはサリド
マイドと併用する。
【0017】
具体的な実施態様では、該癌は固形腫瘍である。別の実施態様では、該癌は血液癌であ
る。具体的な実施態様では、該癌は、膠芽腫、原発性腺管癌、白血病、急性T細胞白血病
、慢性骨髄リンパ腫(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、肺癌、結
腸腺癌、組織球性リンパ腫、結腸直腸癌、結腸直腸腺癌、前立腺癌、多発性骨髄腫、又は
網膜芽腫である。
【0018】
別の具体的な実施態様では、TSNK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又は
前駆細胞は、胎盤灌流液、臍帯血、又は末梢血から得られる。別の具体的な実施態様では
、TSNK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又は前駆細胞は、胎盤灌流液及び
臍帯血、例えば、該灌流液と同じ胎盤由来の臍帯血に由来する組み合わされた細胞である
。別の具体的な実施態様では、該臍帯血は、該胎盤灌流液が得られる胎盤以外の胎盤から
単離される。ある実施態様では、該組み合わされた細胞は、該臍帯血及び胎盤灌流液をプ
ールするか、又はこれらを組み合わせることによって得られる。ある実施態様では、該臍
帯血及び胎盤灌流液を、容積で100:1、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:3
5、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5
:95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40
:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1
:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:9
5、1:100などの比率で組み合わせて、該組み合わされた細胞を得る。具体的な実施態様で
は、該臍帯血及び胎盤灌流液を、10:1~1:10、5:1~1:5、又は3:1~1:3の比率で組み合わ
せる。別の具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、10:1、5:1、3:1、1:1、1
:3、1:5、又は1:10の比率で組み合わせる。より具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎
盤灌流液を、8.5:1.5(85%:15%)の比率で組み合わせる。
【0019】
ある実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、全有核細胞(TNC)含有量で100:1、95:5
、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35
:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5:95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:
1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1
、5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:6
0、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100などの比率で組み合わせて、該組
み合わされた細胞を得る。具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、10:1~1:
10、5:1~1:5、又は3:1~1:3の比率で組み合わせる。別の具体的な実施態様では、該臍帯
血及び胎盤灌流液を、10:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5、又は1:10の比率で組み合わせる
【0020】
一実施態様では、それゆえ、癌又はウイルス感染を有する個体を治療する方法であって
、該個体に有効量の単離されたTSNK細胞を投与することを含む、方法が本明細書で提供さ
れる。
【0021】
具体的な実施態様では、該単離されたTSNK細胞は、該投与の前に、免疫調節化合物、例
えば、下の第6.2.1節に記載の免疫調節化合物、又はサリドマイドで処理されたものであ
る。別の具体的な実施態様では、該方法は、該個体に、(1)有効量の単離されたTSNK細胞;
及び(2)有効量の免疫調節化合物又はサリドマイドを投与することを含む。この文脈での
「有効量」は、TSNK細胞、及び任意に免疫調節化合物又はサリドマイドを投与されていな
い該癌又は該感染を有する個体と比較して、該癌又は該感染の1以上の症状の検出可能な
改善をもたらす、該TSNK細胞、及び任意に免疫調節化合物又はサリドマイドの量を意味す
る。具体的な実施態様では、該免疫調節化合物は、レナリドミド又はポマリドミドである
。別の実施態様では、該方法は更に、該個体に、抗癌化合物、例えば、下の第6.8.3節に
記載の抗癌化合物のうちの1つ又は複数を投与することを含む。
【0022】
別の実施態様では、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、該腫瘍細胞を治療的有効
量のTSNK細胞と接触させることを含む、方法が本明細書で提供される。
【0023】
具体的な実施態様では、該単離されたTSNK細胞は、該接触させることの前に、免疫調節
化合物、例えば、下の第6.2.1節に記載の免疫調節化合物、又はサリドマイドで処理され
たものである。別の具体的な実施態様では、該腫瘍細胞を更に、有効量の免疫調節化合物
、例えば、下の第6.2.1節に記載の免疫調節化合物、又はサリドマイドと接触させる。こ
の文脈での「有効量」は、TSNK細胞、及び任意に免疫調節化合物又はサリドマイドと接触
させていない同等数の腫瘍細胞と比較して、該腫瘍細胞の検出可能な抑制をもたらす、該
TSNK細胞、及び任意に免疫調節化合物又はサリドマイドの量を意味する。別の具体的な実
施態様では、該方法は更に、該腫瘍細胞を、有効量の抗癌化合物、例えば、下の第6.8.3
節に記載の抗癌化合物と接触させることを含む。
【0024】
本方法の具体的な実施態様では、該腫瘍細胞は血液癌細胞である。別の具体的な実施態
様では、該腫瘍細胞は固形腫瘍細胞である。別の実施態様では、該腫瘍細胞は、原発性腺
管癌細胞、白血病細胞、急性T細胞白血病細胞、慢性骨髄リンパ腫(CML)細胞、急性骨髄性
白血病細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、膠芽腫細胞、肺癌細胞、結腸腺癌細胞、組織
球性リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、網膜芽腫細胞、結腸直腸癌細胞、前立腺癌細胞、
又は結腸直腸腺癌細胞である。別の具体的な実施態様では、該接触させることはインビト
ロで生じる。別の具体的な実施態様では、該接触させることはインビボで生じる。より具
体的な実施態様では、該インビボで接触させることはヒトで生じる。
【0025】
別の態様では、多発性骨髄腫を有する個体を治療する方法であって、該個体に、(1)レ
ナリドミド;(2)メルファラン;及び(3)拡大されたNK細胞を投与することを含み、ここで、
該NK細胞が、該個体で多発性骨髄腫を治療するのに有効である、方法が本明細書で提供さ
れる。具体的な実施態様では、該NK細胞は、臍帯血NK細胞、又は臍帯血造血細胞、例えば
、造血幹細胞から産生されるNK細胞である。別の実施態様では、該NK細胞は、NK細胞を産
生するための、例えば、TSNK細胞を産生するための、本明細書に記載の方法のいずれかに
よって産生されたものである。別の実施態様では、該NK細胞は、該投与することの前に拡
大されたものである。別の実施態様では、該レナリドミド、メルファラン、及び/又はNK
細胞は、互いに別々に投与される。多発性骨髄腫を有する個体を治療する方法のある具体
的な実施形態では、該NK細胞は、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する二工
程方法であって、該方法の第一の工程が、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン-7(IL-7)
、及びインターロイキン-15(IL-15)のうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹
細胞又は前駆細胞の集団を拡大することを含み、該SCF、IL-7、及びIL-15が該培地の不確
定成分に含まれず、かつ該拡大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数
の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化し;かつ該方法の第二の工程が、該第一の工程
由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を
産生することを含む、方法によって産生される。
【0026】
多発性骨髄腫を有する個体を治療する方法の他の具体的な実施形態では、該NK細胞は:(
a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細胞又
は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、インタ
ーロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7)の
うちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確定
成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)工程(a)由来の細
胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞の集団を産
生することを含む方法によって産生される。
【0027】
別の態様では、慢性リンパ球性白血病(CLL)を有する個体を治療する方法であって、該
個体に、治療的有効量の(1)レナリドミド;(2)メルファラン;(3)フルダラビン;及び(4)拡
大されたNK細胞、例えば、TSNK細胞を投与することを含み、ここで、該NK細胞が、該個体
で該CLLを治療するのに有効である、方法が本明細書で提供される。具体的な実施態様で
は、該NK細胞は、臍帯血NK細胞、又は臍帯血造血細胞、例えば、造血幹細胞から産生され
るNK細胞である。別の実施態様では、該NK細胞は、NK細胞を産生するための、例えば、TS
NK細胞を産生するための、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生されたものであ
る。上記の方法のいずれかの具体的な実施態様では、該NK細胞は、該投与することの前に
少なくとも10日間拡大されたものである。上記の方法のいずれかの具体的な実施態様では
、該レナリドミド、メルファラン、フルダラビン、及び拡大されたNK細胞は、該個体に別
々に投与される。CLLを有する個体を治療する方法のある具体的な実施形態では、該NK細
胞は、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する二工程方法であって、該方法の
第一の工程が、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン-7(IL-7)、及びインターロイキン-15
(IL-15)のうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡
大することを含み、該SCF、IL-7、及びIL-15が該培地の不確定成分に含まれず、かつ該拡
大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞が
NK細胞に分化し;かつ該方法の第二の工程が、該第一の工程由来の細胞をインターロイキ
ン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を産生することを含む、方法に
よって産生される。
【0028】
CLLを有する個体を治療する方法の他の具体的な実施形態では、該NK細胞は:(a)造血幹
細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細胞又は前駆細
胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、インターロイキ
ン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7)のうちの1つ
又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確定成分に含ま
れない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)工程(a)由来の細胞をインタ
ーロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞の集団を産生すること
を含む方法によって産生される。
【0029】
一態様では、NK細胞、例えば、TSNK細胞の集団を凍結保存する方法が本明細書で提供さ
れる。一実施態様では、該方法は:(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡
大することの間に、該造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞
がNK細胞に分化するように、インターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF
)及びインターロイキン-7(IL-7)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任
意のSCF及びIL-7が該培地の不確定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種す
ること;(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大し
て、活性化NK細胞の集団を産生すること、並びに(c)工程(b)由来のNK細胞を凍結保存培地
中で凍結保存することを含む。具体的な実施態様では、該工程(c)は更に、(1)細胞懸濁溶
液を調製すること;(2)凍結保存培地を工程(1)由来の細胞懸濁溶液に添加して、凍結保存
細胞懸濁液を得ること;(3)工程(3)由来の凍結保存細胞懸濁液を冷却して、凍結保存試料
を得ること;及び(4)該凍結保存試料を-80℃未満で保存することを含む。ある実施態様で
は、該方法は、工程(a)と(b)の間、及び工程(b)と(c)の間の中間工程を含まない。
【0030】
別の実施態様では、該NK細胞、例えば、TSNK細胞の集団を凍結保存する方法は:(a)幹細
胞因子(SCF)、IL-2、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、及びヘ
パリンのうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡
大すること、ここで、該SCF、IL-2、IL-7、及びIL-15は該培地の不確定成分に含まれず、
かつここで、該拡大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細
胞又は前駆細胞はNK細胞に分化する;(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)
を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を産生すること;並びに(c)工程(b)由来のN
K細胞を凍結保存培地中で凍結保存することを含む。具体的な実施態様では、該工程(c)は
更に、(1)細胞懸濁溶液を調製すること;(2)凍結保存培地を工程(1)由来の細胞懸濁溶液に
添加して、凍結保存細胞懸濁液を得ること;(3)工程(3)由来の凍結保存細胞懸濁液を冷却
して、凍結保存試料を得ること;及び(4)該凍結保存試料を-80℃未満で保存することを含
む。ある実施態様では、該方法は、工程(a)と(b)の間、及び工程(b)と(c)の間の中間工程
を含まず、かつ/又は工程(a)の前の追加の培養工程を含まない。
【0031】
別の具体的な実施態様では、TSNK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又は
前駆細胞は、例えば、定量的リアルタイムPCR(qRT-PCR)で測定した場合、マイクロRNAのh
sa-miR-380、hsa-miR-512、hsa-miR-517、hsa-miR-518c、hsa-miR-519b、及びhsa-miR-52
0aのうちの1つ又は複数を、末梢血ナチュラルキラー細胞よりも検出可能な程度に高いレ
ベルで発現する。
【0032】
上記の方法の別の具体的な実施態様では、該TSNK細胞を、該ナチュラルキラー細胞が、
免疫調節化合物又はサリドマイドと接触させていない、同等数のナチュラルキラー細胞、
例えば、TSNK細胞よりも検出可能な程度に多くのグランザイムB又はパーフォリンを発現
するのに十分な量及び時間で、該免疫調節化合物又はサリドマイドと接触させる。別の具
体的な実施態様では、該TSNK細胞を、該細胞が、免疫調節化合物、例えば、レナリドミド
もしくはポマリドミドと、又はサリドマイドと接触させていない、同等数のナチュラルキ
ラー細胞、例えば、TSNK細胞よりも検出可能な程度に大きい該腫瘍細胞に対する細胞傷害
性を示すのに十分な量及び時間で、該免疫調節化合物又はサリドマイドと接触させる。別
の具体的な実施態様では、該TSNK細胞は、該免疫調節化合物又はサリドマイドと接触させ
ていない、同等数のナチュラルキラー細胞、例えば、TSNK細胞よりも高いレベルで、BAX
、CCL5、CCR5、CSF2、FAS、GUSB、IL2RA、又はTNFRSF18のうちの1つ又は複数を発現する
。別の具体的な実施態様では、該TSNK細胞は、該免疫調節化合物又はサリドマイドと接触
させていない、同等数のナチュラルキラー細胞、例えば、TSNK細胞よりも高いレベルで、
ACTB、BAX、CCL2、CCL3、CCL5、CCR5、CSF1、CSF2、ECE1、FAS、GNLY、GUSB、GZMB、IL1A
、IL2RA、IL8、IL10、LTA、PRF1、PTGS2、SKI、及び/又はTBX21のうちの1つ又は複数を発
現する。
【0033】
上記の治療又は腫瘍抑制の方法のある実施態様では、TSNK細胞を、他のナチュラルキラ
ー細胞、例えば、胎盤灌流液、臍帯血、もしくは末梢血から単離されたか、又は異なる方
法によって造血細胞から産生されたナチュラルキラー細胞と組み合わさせる。具体的な実
施態様では、TSNK細胞は、別の供給源に由来するか、又は異なる方法によって作製された
ナチュラルキラー細胞と、約100:1、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35
、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5:
95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:
1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:
30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95
、1:100などの比率で組み合わせる。
【0034】
別の態様では、単離されたTSNK細胞を含む組成物が本明細書で提供される。具体的な実
施態様では、該TSNK細胞は、造血細胞、例えば、胎盤灌流液、臍帯血、及び/又は末梢血
から単離された造血幹細胞又は前駆細胞から産生される。別の具体的な実施態様では、該
TSNK細胞は、該組成物中の細胞の少なくとも50%を含む。別の具体的な実施態様では、該
TSNK細胞は、該組成物中の細胞の少なくとも80%、85%、90%、95%、98%、又は99%を
含む。ある実施態様では、該組成物中のTSNK細胞の90%、92%、94%、96%、又は98%超
は、CD56+及びCD16-である。他の実施態様では、該組成物中のTSNK細胞の少なくとも80%
、82%、84%、86%、88%、又は90%は、CD3-及びCD56+である。他の実施態様では、該
細胞の少なくとも50%、52%、54%、56%、58%、又は60%はNKG2D+である。他の実施態
様では、該細胞の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、又は3%未満はNKB1+である。あ
る他の実施態様では、該TSNK細胞の10%、8%、6%、4%、又は2%未満はNKAT2+である。
ある他の実施態様では、該TSNK細胞の10%、8%、6%、4%、又は2%未満は、CD56+及びC
D16+である。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも50%、55
%、60%、65%、又は70%はNKp46+である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD
56+ TSNK細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%はCD11
7+である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも20%、
25%、30%、35%、40%、又は45%はCD94+である。他のより具体的な実施態様では、該C
D3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも10%、12%、14%、16%、18%、又は20%はCD226+
ある。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも20%、25%、30
%、35%、又は40%は、CD7+である。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細
胞の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60%はCD5+である。
【0035】
別の具体的な実施態様では、該単離されたCD56+、CD16-TSNK細胞は、単一の個体に由来
するものである。より具体的な実施態様では、該単離されたCD56+、CD16-TSNK細胞は、少
なくとも2人の異なる個体由来のナチュラルキラー細胞を含む。別の具体的な実施態様で
は、該TSNK細胞は、該TSNK細胞が、免疫調節化合物又はサリドマイドと接触させていない
、同等数のナチュラルキラー細胞、すなわち、TSNK細胞よりも検出可能な程度に多くのグ
ランザイムB又はパーフォリンを発現するのに十分な量及び時間で、該免疫調節化合物又
はサリドマイドと接触させたものである。別の具体的な実施態様では、該組成物は更に、
免疫調節化合物又はサリドマイドを含む。ある実施態様では、免疫調節化合物は、下の第
6.2.1節に記載の化合物、例えば、アミノ置換イソインドリン化合物である。
【0036】
別の具体的な実施態様では、該組成物は更に、1以上の抗癌化合物、例えば、下の第6.8
.2節に記載の抗癌化合物のうちの1つ又は複数を含む。
【0037】
より具体的な実施態様では、該組成物は、TSNK細胞、及び別の供給源に由来するか、又
は別の方法によって作製されたナチュラルキラー細胞を含む。具体的な実施態様では、該
他の供給源は、胎盤血及び/又は臍帯血である。別の具体的な実施態様では、該他の供給
源は、末梢血である。より具体的な実施態様では、TSNK細胞を、別の供給源に由来するか
、又は別の方法によって作製されたナチュラルキラー細胞と、約100:1、95:5、90:10、85
:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35:65、30:70
、25:75、20:80、15:85、10:90、5:95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、6
5:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1
、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1
:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100などの比率で組み合わせる。
【0038】
別の具体的な実施態様では、該組成物は、TSNK細胞、及び単離された胎盤灌流液又は単
離された胎盤灌流液細胞のいずれかを含む。より具体的な実施態様では、該胎盤灌流液は
、該TSNK細胞と同じ個体に由来するものである。別のより具体的な実施態様では、該胎盤
灌流液は、該TSNK細胞とは異なる個体に由来する胎盤灌流液を含む。別の具体的な実施態
様では、該胎盤灌流液中の細胞の全て、又は実質的に全て(例えば、90%、95%、98%、
もしくは99%超)は胎児細胞である。別の具体的な実施態様では、該胎盤灌流液又は胎盤
灌流液細胞は、胎児細胞及び母親細胞を含む。より具体的な実施態様では、該胎盤灌流液
中の胎児細胞は、該灌流液中の細胞の約90%、80%、70%、60%、又は50%未満を含む。
別の具体的な実施態様では、該灌流液は、0.9%NaCl溶液を胎盤血管系に通すことによっ
て得られる。別の具体的な実施態様では、該灌流液は培養培地を含む。別の具体的な実施
態様では、該灌流液は、赤血球を除去するように処理されたものである。別の具体的な実
施態様では、該組成物は、免疫調節化合物、例えば、下の第5.2.1.1節に記載の免疫調節
化合物、例えば、アミノ置換イソインドリン化合物を含む。別の具体的な実施態様では、
該組成物は更に、1以上の抗癌化合物、例えば、下の第6.8.2節に記載の抗癌化合物のうち
の1つ又は複数を含む。
【0039】
別の具体的な実施態様では、該組成物は、TSNK細胞及び胎盤灌流液細胞を含む。より具
体的な実施態様では、該胎盤灌流液細胞は、該TSNK細胞と同じ個体に由来するものである
。別のより具体的な実施態様では、該胎盤灌流液細胞は、該TSNK細胞とは異なる個体に由
来するものである。別の具体的な実施態様では、該組成物は、単離された胎盤灌流液及び
単離された胎盤灌流液細胞を含み、ここで、該単離された灌流液及び該単離された胎盤灌
流液細胞は、異なる個体に由来するものである。胎盤灌流液を含む上記の実施態様のいず
れかの別のより具体的な実施態様では、該胎盤灌流液は、少なくとも2人の個体由来の胎
盤灌流液を含む。胎盤灌流液細胞を含む上記の実施態様のいずれかの別のより具体的な実
施態様では、該単離された胎盤灌流液細胞は、少なくとも2人の個体に由来するものであ
る。別の具体的な実施態様では、該組成物は免疫調節化合物を含む。別の具体的な実施態
様では、該組成物は更に、1以上の抗癌化合物、例えば、下の第6.8.2節に記載の抗癌化合
物のうちの1つ又は複数を含む。
【0040】
(4.1.定義)
本明細書で使用されるように、用語「免疫調節化合物」及び「IMiD(商標)」は、サリド
マイドを包含しない。
【0041】
本明細書で使用されるように、「レナリドミド」は、3-(4'アミノイソインドリン-1'-
オン)-1-ピペリジン-2,6-ジオン(ケミカル・アブストラクツ・サービス名)、又は2,6-ピ
ペリジンジオン,3-(4-アミノ-1,3-ジヒドロ-1-オキソ-2H-イソインドール-2-イル)-(国際
純正応用化学連合(IUPAC)名)を意味する。本明細書で使用されるように、「ポマリドミド
」は、4-アミノ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1,3-ジオンを意味
する。
【0042】
本明細書で使用されるように、細胞に言及する場合の「寡能性(multipotent)」は、該
細胞が別の細胞型の細胞に分化する能力を有することを意味する。ある実施態様では、「
寡能性細胞」は、哺乳動物の体の約260種の細胞型の任意のサブセットに成長する能力を
有する細胞である。多能性(pluripotent)細胞とは異なり、寡能性細胞は、該細胞型の全
てを形成する能力を有するわけではない。
【0043】
本明細書で使用されるように、「フィーダー細胞」は、第二のタイプの細胞が維持され
、おそらくは増殖することができる環境を提供するために、該第二のタイプの細胞と共培
養されるあるタイプの細胞を指す。任意の理論に束縛されるものではないが、フィーダー
細胞は、標的細胞に対して、例えば、ペプチド、ポリペプチド、電気信号、有機分子(例
えば、ステロイド)、核酸分子、成長因子(例えば、bFGF)、他の因子(例えば、サイトカイ
ン)、及び代謝栄養素を提供することができる。ある実施態様では、フィーダー細胞は、
単層で成長する。
【0044】
本明細書で使用されるように、更なる修飾のない「ナチュラルキラー細胞」又は「NK細
胞」には、任意の組織源由来のナチュラルキラー細胞が含まれる。
【0045】
本明細書で使用されるように、「TSNK」及び「TSNK細胞」は、本明細書に開示された培
養/拡大方法(例えば、二工程方法)で産生されるナチュラルキラー細胞を指す。
【0046】
本明細書で使用されるように、「胎盤灌流液」は、胎盤、例えば、ヒト胎盤の少なくと
も一部に通した、例えば、胎盤血管系に通した灌流溶液を意味し、これは、胎盤に通す間
に、該灌流溶液によって回収される複数の細胞を含む。
【0047】
本明細書で使用されるように、「胎盤灌流液細胞」は、胎盤灌流液から単離されるか、
又は単離可能である、有核細胞、例えば、全有核細胞を意味する。
【0048】
本明細書で使用されるように、「腫瘍細胞抑制」、「腫瘍細胞増殖の抑制」などは、例
えば、腫瘍細胞の集団を、例えば、TSNK細胞又はTSNK細胞を含む細胞の集団と接触させる
ことよって、例えば、該腫瘍細胞の集団内の腫瘍細胞の1つ又は複数を死滅させることに
より、腫瘍細胞の集団の成長を遅延させることを含む。
【0049】
本明細書で使用されるように、用語「造血細胞」は、造血幹細胞及び造血前駆細胞を含
む。
【0050】
本明細書で使用されるように、「不確定成分」は、その構成成分が、通常は、提供も定
量もされない成分を指す培養培地分野の専門用語である。「不確定成分」の例としては、
限定するものではないが、ヒト血清(例えば、ヒト血清AB)、及び胎仔血清(例えば、胎仔
ウシ血清(fetal bovine serum)又は胎仔ウシ血清(fetal calf serum))が挙げられる。
【0051】
本明細書で使用されるように、「+」は、特定の細胞マーカーの存在を示すために用い
られる場合、該細胞マーカーが、蛍光活性化細胞選別で、アイソタイプ対照と比べて検出
可能な程度に存在すること;又は定量的もしくは半定量的RT-PCRで、バックグラウンドを
上回って検出可能であることを意味する。
【0052】
本明細書で使用されるように、「-」は、特定の細胞マーカーの存在を示すために用い
られる場合、該細胞マーカーが、蛍光活性化細胞選別で、アイソタイプ対照と比べて検出
可能な程度には存在しないこと;又は定量的もしくは半定量的RT-PCRで、バックグラウン
ドを上回るほど検出可能ではないことを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
(5.図面の簡単な説明)
図1】様々な培地製剤を用いて造血幹細胞(HSC)から分化させたNK細胞の拡大倍率。エラーバーは、3人のドナーからの標準偏差を表す。X軸:培養の日数(D)。Y軸:0日(培養の開始)と比較した拡大倍率。
【0054】
図2】NK2A培地を用いた培養NK細胞の表現型の特徴付け。細胞をPE-抗CD56、FITC-抗CD3、PerCP-抗CD16で三重標識した。横線、縦線:バックグラウンドを有意に上回る蛍光標識のレベル。
【0055】
図3】NK2A(FF)、NK2A(フィーダー細胞としての胎盤幹細胞)、NK2A(フィーダー細胞としてのMSC)、又は二段階NK培地を用いて培養されたNK細胞の拡大倍率。X軸:培養の日数(D)。Y軸:0日(培養の開始)と比較した拡大倍率。
【0056】
図4】培養開始45日後の、NK2A(フィーダー細胞なし)、二段階NK培地;フィーダー細胞としてのCD34-、CD10+、CD105+、CD200+組織培養プラスチック接着性胎盤幹細胞(PSC)を含むNK2A、フィーダー細胞としての骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を含むNK2Aを用いて培養されたNK細胞の細胞傷害性。3人のドナーからの代表的なデータを図4に示す。
【0057】
図5】培養41日目(D41)のNK細胞の表現型の特徴付け。3人の個々のドナーからの代表的なデータを示す。X軸:CD3-CD56+、CD16-CD56+、もしくはCD16+CD56+であるか;又はNKB1、NKG2D、NKp46、CD94、CD117、CD226、CD7、もしくはCD5を発現する、二段階法によって産生されたNK細胞のパーセンテージ。培養開始後41日(D41)で、細胞を、NK2A(フィーダー細胞なし)、二段階NK培地;フィーダー細胞としてのCD34-、CD10+、CD105+、CD200+組織培養プラスチック接着性胎盤幹細胞(PSC)を含むNK2A、フィーダー細胞としての骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)を含むNK2A中で培養した。
【0058】
図6】NK2A培地中でのNK培養の間のCD56+CD3- NK細胞集団におけるCD94及びCD117の発現。CD56+CD94+CD117+細胞の主要な集団を、胚性幹細胞(ESC)由来NK細胞(CD56+CD94+CD117low/-)と区別可能であるNK2A培地中の培養NK細胞から同定した。3人のドナーからの代表的なデータを図6に示す。X軸:フィコエリスリン(PE)標識抗CD94由来の蛍光。Y軸:APC標識抗CD117由来の蛍光。横線、縦線:バックグラウンドを有意に上回る蛍光標識のレベル。D13、D20、D28、D35:CD34+細胞培養開始後13日、20日、28日、及び35日。
【0059】
図7】MSC及びNK2A培地のみと比較した培養NK細胞に対する胎盤幹細胞の効果。X軸:フィーダー層(FF)なしでNK2A培地中で培養されたNK細胞;フィーダー層としての骨髄由来間葉系幹細胞(MCS)とともにNK2A培地中で培養されたNK細胞;又はフィーダー層としてのCD10+、CD34-、CD105+、CD200+組織培養プラスチック接着性胎盤幹細胞(PDAC)とともにNK2A培地中で培養されたNK細胞。Y軸(左):残存する腫瘍細胞のパーセンテージとして表された、細胞傷害性(1.0=100%);細胞傷害性は、白塗りの四角で表示されている。Y軸(右):二工程方法を用いたNK細胞の拡大倍率;拡大倍率は、アステリスクとして表されている。
【0060】
図8】8A~8B:解凍後CD34+細胞の純度に対する臍帯血(UCB)とヒト胎盤灌流液(HPP)の相対比率の効果。図8A:CD34+Lin-純度に対するHPP容積含有量(vol%)の効果。X軸:プールされたUCB及びHPP(組合せ(Combo))中のHPPの容積割合。Y軸:CD34+Lin-細胞のパーセンテージ。図8B.CD34+Lin-純度に対するHPP TNC含有量(TNC%)の効果。Y軸:CD34+Lin-細胞のパーセンテージ。
【発明を実施するための形態】
【0061】
(6.詳細な説明)
造血細胞、例えば、造血幹細胞又は前駆細胞からNK細胞を産生し、それを拡大する新規
の方法が本明細書で提供される。NK細胞を産生するために用いられる造血細胞を、任意の
供給源、例えば、限定するものではないが、胎盤、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、又は
肝臓から単離してもよい。ある実施態様では、NK細胞を、拡大された造血細胞、例えば、
造血幹細胞及び/又は造血前駆細胞から産生する。一実施態様では、造血細胞を、そのよ
うな細胞の供給源、例えば、胎盤灌流液、臍帯血、胎盤血、末梢血、脾臓、肝臓、及び/
又は骨髄から回収する。具体的な実施態様では、造血細胞を、フィーダー細胞を用いない
で、第一の培地中で、連続的に拡大し、分化させる。その後、該細胞を、フィーダー細胞
の存在下、第二の培地中で培養する。そのような単離、拡大、及び分化は、中心施設で実
施することができ、それにより、使用地点、例えば、病院、軍事基地、軍部の前線などで
の分散的な拡大及び分化のための輸送用の拡大された造血細胞が提供される。
【0062】
(6.1.造血細胞)
本明細書に開示された方法において有用な造血細胞は、NK細胞に分化することができる
任意の造血細胞、例えば、前駆細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞などであることができる
。造血細胞は、例えば、骨髄、臍帯血、胎盤血、末梢血、肝臓など、又はそれらの組合せ
などの組織源から得ることができる。造血細胞は、胎盤から得ることができる。具体的な
実施態様では、造血細胞は、胎盤灌流液から得られる。胎盤灌流液由来の造血細胞は、胎
児造血細胞と母親造血細胞の混合物、例えば、母親細胞が造血細胞の総数の5%超を含む
混合物を含むことができる。好ましくは、胎盤灌流液由来の造血細胞は、少なくとも約90
%、95%、98%、99%、又は99.5%の胎児細胞を含む。
【0063】
別の具体的な実施態様では、TSNK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又は
前駆細胞を、胎盤灌流液、臍帯血、又は末梢血から得る。別の具体的な実施態様では、TS
NK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又は前駆細胞は、胎盤灌流液及び臍帯
血、例えば、該灌流液と同じ胎盤由来の臍帯血に由来する組み合わされた細胞である。別
の具体的な実施態様では、該臍帯血を、該胎盤灌流液が得られる胎盤以外の胎盤から単離
する。ある実施態様では、該組み合わされた細胞は、該臍帯血及び胎盤灌流液をプールす
るか又は組み合わせることによって得ることができる。ある実施態様では、該臍帯血及び
胎盤灌流液を、容積で100:1、95:5、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40
、55:45:50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5:95、100
:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1
、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:3
5、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100
などの比率で組み合わせて、該組み合わされた細胞を得る。具体的な実施態様では、該臍
帯血及び胎盤灌流液を、10:1~1:10、5:1~1:5、又は3:1~1:3の比率で組み合わせる。別
の具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、10:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5
、又は1:10の比率で組み合わせる。より具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液
を、8.5:1.5(85%:15%)の比率で組み合わせる。
【0064】
ある実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、全有核細胞(TNC)含有量で100:1、95:5
、90:10、85:15、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35
:65、30:70、25:75、20:80、15:85、10:90、5:95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:
1、70:1、65:1、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1
、5:1、1:1、1:5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:6
0、1:65、1:70、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、1:100などの比率で組み合わせて、該組
み合わされた細胞を得る。具体的な実施態様では、該臍帯血及び胎盤灌流液を、10:1~1:
10、5:1~1:5、又は3:1~1:3の比率で組み合わせる。別の具体的な実施態様では、該臍帯
血及び胎盤灌流液を、10:1、5:1、3:1、1:1、1:3、1:5、又は1:10の比率で組み合わせる
【0065】
別の具体的な実施態様では、該TSNK細胞が産生される造血細胞、例えば、造血幹細胞又
は前駆細胞は、臍帯血と胎盤灌流液の両方に由来するものであるが、その場合、該臍帯血
は、該胎盤灌流液が得られる胎盤以外の胎盤から単離される。
【0066】
ある実施態様では、造血細胞はCD34+細胞である。具体的な実施態様では、本明細書に
開示された方法において有用な造血細胞は、CD34+CD38+又はCD34+CD38-である。より具体
的な実施態様では、該造血細胞は、CD34+CD38-Lin-である。別の具体的な実施態様では、
該造血細胞は、CD2-、CD3-、CD11b-、CD11c-、CD14-、CD16-、CD19-、CD24-、CD56-、CD6
6b-、及び/又はグリコフォリンA-のうちの1つ又は複数である。別の具体的な実施態様で
は、該造血細胞は、CD2-、CD3-、CD11b-、CD11c-、CD14-、CD16-、CD19-、CD24-、CD56-
、CD66b-、及びグリコフォリンA-である。別のより具体的な実施態様では、該造血細胞は
、CD34+CD38-CD33-CD117-である。別のより具体的な実施態様では、該造血細胞は、CD34+
CD38-CD33-CD117-CD235-CD36-である。
【0067】
別の実施態様では、該造血細胞はCD45+である。別の具体的な実施態様では、該造血細
胞はCD34+CD45+である。別の実施態様では、該造血細胞はThy-1+である。具体的な実施態
様では、該造血細胞はCD34+Thy-1+である。別の実施態様では、該造血細胞はCD133+であ
る。具体的な実施態様では、該造血細胞は、CD34+CD133+又はCD133+Thy-1+である。別の
具体的な実施態様では、該CD34+造血細胞はCXCR4+である。別の具体的な実施態様では、
該CD34+造血細胞はCXCR4-である。別の実施態様では、該造血細胞は、KDR(血管成長因子
受容体2)が陽性である。具体的な実施態様では、該造血細胞は、CD34+KDR+、CD133+KDR+
、又はThy-1+KDR+である。ある他の実施態様では、該造血細胞は、アルデヒドデヒドロゲ
ナーゼが陽性(ALDH+)であり、例えば、該細胞はCD34+ALDH+である。
【0068】
ある他の実施態様では、該CD34+細胞はCD45-である。具体的な実施態様では、該CD34+
細胞、例えば、CD34+、CD45-細胞は、miRNAのhsa-miR-380、hsa-miR-512、hsa-miR-517、
hsa-miR-518c、hsa-miR-519b、及び/又はhsa-miR-520aのうちの1つもしくは複数、又は全
てを発現する。
【0069】
ある実施態様では、該造血細胞はCD34-である。
【0070】
該造血細胞はまた、系譜の確定(lineage commitment)又は発生的な未感作性(developme
ntal naivete)の欠如を示す特定のマーカーを欠如していてもよい。例えば、別の実施態
様では、該造血細胞はHLA-DR-である。具体的な実施態様では、該造血細胞は、CD34+HLA-
DR-、CD133+HLA-DR-、Thy-1+HLA-DR-、又はALDH+HLA-DR-である。別の実施態様では、該
造血細胞は、系譜マーカーCD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、CD19、CD24、CD56、CD
66b、及びグリコフォリンAのうちの1つ又は複数、好ましくは、その全てが陰性である。
【0071】
従って、造血細胞は、未分化状態を示すマーカーの存在に基づくか、又は少なくともい
くつかの系譜分化が起こったことを示す系譜マーカーの不在に基づいて、本明細書に開示
された方法での使用のために選択することができる。特定のマーカーの存在又は不在に基
づいて、造血細胞を含む細胞を単離する方法は、例えば、下の第6.1.2節で詳細に論じら
れている。
【0072】
本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞は、実質的に均一な集団、例えば、単
一の組織源由来の少なくとも約95%、少なくとも約98%、もしくは少なくとも約99%の造
血細胞を含む集団、又は同じ造血細胞関連細胞マーカーを示す造血細胞を含む集団である
ことができる。例えば、様々な実施態様では、該造血細胞は、骨髄、臍帯血、胎盤血、末
梢血、又は胎盤、例えば、胎盤灌流液由来の少なくとも約95%、98%、又は99%の造血細
胞を含むことができる。
【0073】
本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞を、単一の個体から、例えば、単一の
胎盤から、又は複数の個体から得ることができ、例えば、プールすることができる。該造
血細胞を複数の個体から得て、プールする場合、該造血細胞を同じ組織源から得てもよい
。従って、様々な実施態様では、プールされた造血細胞は全て、胎盤、例えば、胎盤灌流
液由来のもの、全て胎盤血由来のもの、全て臍帯血由来のもの、全て末梢血由来のものな
どである。
【0074】
本明細書に開示された方法で用いられる造血細胞は、ある実施態様では、2以上の組織
源由来の造血細胞を含むことができる。例えば、ある実施態様では、2以上の源由来の造
血細胞を本明細書中の方法での使用のために組み合わせる場合、TSNK細胞を産生するため
に用いられる複数の造血細胞は、胎盤、例えば、胎盤灌流液由来の造血細胞を含む。様々
な実施態様では、TSNK細胞を産生するために用いられる造血細胞は、胎盤由来及び臍帯血
由来の;胎盤及び末梢血由来の;胎盤及び胎盤血由来の、又は胎盤及び骨髄由来の造血細胞
を含む。好ましい実施態様では、該造血細胞は、臍帯血由来の造血細胞と組み合わせた胎
盤灌流液由来の造血細胞を含み、ここで、該臍帯血及び胎盤は、同じ個体に由来するもの
であり、すなわち、該灌流液及び臍帯血はマッチしている。造血細胞が2つの組織源由来
の造血細胞を含む実施態様では、該源由来の造血細胞は、例えば、1:10、2:9、3:8、4:7:
、5:6、6:5、7:4、8:3、9:2、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:
1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、又は9:1の比率で組み合わせることができる。
【0075】
(6.1.1.胎盤造血幹細胞)
ある実施態様では、本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞は胎盤造血細胞で
ある。本明細書で使用されるように、「胎盤造血細胞」は、胎盤それ自体から得られる造
血細胞であって、胎盤血からも臍帯血からも得られないものを意味する。一実施態様では
、胎盤造血細胞はCD34+である。具体的な実施態様では、該胎盤造血細胞は、主に(例えば
、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98
%)CD34+CD38-細胞である。別の具体的な実施態様では、該胎盤造血細胞は、主に(例えば
、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98
%)CD34+CD38+細胞である。胎盤造血細胞は、当業者に公知の任意の手段によって、例え
ば、灌流によって、分娩後の哺乳動物(例えば、ヒト)胎盤から得ることができる。
【0076】
別の実施態様では、該胎盤造血細胞はCD45-である。具体的な実施態様では、該造血細
胞はCD34+CD45-である。別の具体的な実施態様では、該胎盤造血細胞はCD34+CD45+である
【0077】
(6.2.ナチュラルキラー細胞の産生)
本方法によるNK細胞の産生は、造血細胞の集団を拡大することを含む。細胞拡大の間に
、該造血細胞集団内の複数の造血細胞はNK細胞に分化する。
【0078】
一実施態様では、活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法であって:(a)
造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細胞又は
前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、インター
ロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7)のう
ちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確定成
分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに(b)工程(a)由来の細胞
をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活性化NKの集団を産生する
ことを含む、方法が本明細書で提供される。
【0079】
別の実施態様では、本明細書で提供されるNK細胞は、NK細胞の拡大/分化及び成熟の二
工程プロセスによって産生される。第一の工程及び第二の工程は、該細胞を独特な組合せ
の細胞因子を含む培地中で培養することを含む。ある実施態様では、該プロセスは、(a)
造血細胞の集団を、該造血細胞集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化す
る、第一の培地中で培養し、拡大すること;及び(b)工程(a)由来のNK細胞を、該NK細胞が
更に拡大され、分化し、かつ該NK細胞が成熟する(例えば、活性化されるか、又は別の方
法で細胞傷害活性を有する)、第二の培地中で拡大することを含む。ある実施態様では、
該方法は、工程(a)と(b)の間の中間工程、工程(a)の前の追加の培養工程、及び/又は工程
(b)の後の追加の工程(例えば、成熟工程)を含まない。
【0080】
(6.2.1.第一の培養工程)
ある実施態様では、本明細書で提供される方法は、造血細胞の集団を、該造血細胞集団
内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化する、第一の培地中で培養し、拡大す
る第一の工程を含む。
【0081】
任意のパラメータ、メカニズム、又は理論に束縛されることを望まないが、本明細書で
提供されるような造血細胞の培養は、該造血細胞の連続的拡大及び該細胞からのNK細胞の
分化をもたらす。ある実施態様では、本明細書で提供される方法で用いられる造血細胞、
例えば、幹細胞又は前駆細胞を、フィーダー層を用いて、第一の工程で拡大し、分化させ
る。他の実施態様では、造血細胞、例えば、幹細胞又は前駆細胞を、フィーダー層を用い
ないで、第一の工程で拡大し、分化させる。
【0082】
造血細胞のフィーダー細胞非依存的な拡大及び分化は、細胞の培養及び拡大と適合する
任意の容器、例えば、フラスコ、チューブ、ビーカー、ディッシュ、マルチウェルプレー
ト、バッグなどの中で生じることができる。具体的な実施態様では、造血細胞のフィーダ
ー細胞非依存的な拡大は、バッグ、例えば、可撓性で、ガス透過性のフルオロカーボン培
養バッグ(例えば、American Fluoroseal製)の中で生じる。具体的な実施態様では、造血
細胞を拡大する容器は、例えば、拡大されたNK細胞を更に拡大し、分化させる、病院又は
軍事区域などの場所への輸送に好適である。
【0083】
ある実施態様では、造血細胞を、例えば、第一の培養培地中で、連続的な様式で、拡大
し、分化させる。一実施態様では、該第一の培養培地は、動物成分不含培地である。本明
細書で提供される方法において有用な例示的な動物成分不含培地としては、イーグル基本
培地(BME)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、グラスゴー最小必須培地(GMEM)、ダル
ベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F-12ハム(DMEM/F-12)、最小必須培地(MEM)、イスコ
フ改変ダルベッコ培地(IMDM)、栄養混合物F-10ハム(ハムF-10)、栄養混合物F-12ハム(ハ
ムF-12)、RPMI-1640培地、ウィリアム培地E、STEMSPAN(登録商標)(カタログ番号Stem Cel
l Technologies, Vancouver, Canada)、Glycostem基本成長培地(GBGM(登録商標))、AIM-V
(登録商標)培地(Invitrogen)、X-VIVO(商標)10(Lonza)、X-VIVO(商標)15(Lonza)、OPTMIZ
ER(Invitrogen)、STEMSPAN(登録商標)H3000(STEMCELL Technologies)、CELLGRO COMPLETE
(商標)(Mediatech)、もしくは任意の改変型変種、又はそれらの組合せが挙げられるが、
これらに限定されない。
【0084】
好ましい実施態様では、第一の培養培地は、培地添加物(例えば、栄養、サイトカイン
、及び/又は因子)のうちの1つ又は複数を含む。本明細書で提供される方法での使用に好
適な培地添加物としては、例えば、限定するものではないが、血清、例えば、ヒト血清AB
、胎仔ウシ血清(fetal bovine serum)(FBS)、もしくは胎仔ウシ血清(fetal calf serum)(
FCS)、ビタミン、ウシ血清アルブミン(BSA)、アミノ酸(例えば、L-グルタミン)、脂肪酸(
例えば、オレイン酸、リノール酸、もしくはパルミチン酸)、インスリン(例えば、組換え
ヒトインスリン)、トランスフェリン(鉄飽和ヒトトランスフェリン)、β-メルカプトエタ
ノール、幹細胞因子(SCF)、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、サイトカイン、
例えば、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(
IL-15)、トロンボポエチン(Tpo)、ヘパリン、又はO-アセチル-カルニチン(アセチルカル
ニチン、O-アセチル-L-カルニチン、もしくはOACとも呼ばれる)が挙げられる。具体的な
実施態様では、本明細書で用いられる培地は、ヒト血清ABを含む。別の具体的な実施態様
では、本明細書で用いられる培地は、FBSを含む。別の具体的な実施態様では、本明細書
で用いられる培地は、OACを含む。
【0085】
ある実施態様では、第一の培地は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロフ
ァージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、マクロファージ炎症性タ
ンパク質1α(MIP1α)、又は白血病抑制因子(LIF)のうちの1つ又は複数を含まない。
【0086】
従って、一態様では、NK細胞を産生する二工程方法が本明細書で提供され、ここで、該
第一の工程は、フィーダー細胞の非存在下、第一の培養培地中で、造血細胞の集団を拡大
し、分化させることを含み、該造血細胞の集団内の複数の造血細胞は、該拡大することの
間にNK細胞に分化し、該培地は、約1~約150ng/mLの濃度のSCF、約50~約1500IU/mLの濃
度のIL-2、約1~約150ng/mLの濃度のIL-7、1~約150ng/mLの濃度のIL-15 、及び約0.1~
約30IU/mLの濃度のヘパリンを含み、該SCF、IL-2、IL-7、IL-15、及びヘパリンは、該培
地の不確定成分(例えば、血清)に含まれない。ある実施態様では、該培地は、O-アセチル
-カルニチン(アセチルカルニチン、O-アセチル-L-カルニチン、もしくはOACとも呼ばれる
)、又はミトコンドリアでアセチル-CoA循環に影響を及ぼす化合物、チアゾビビン、Y-276
32、ピインテグリン、Rhoキナーゼ(ROCK)阻害剤、カスパーゼ阻害剤、もしくは他の抗ア
ポトーシス化合物/ペプチド、NOVA-RS(Sheffield Bio-Science)、又は他の小分子成長促
進剤のうちの1つ又は複数を含む。ある実施態様では、該培地は、ニコチンアミドを含む
。ある実施態様では、該培地は、約0.5mM~10mMのOACを含む。一実施態様では、該培地は
、Stemspan(登録商標)H3000、及び/又はDMEM:F12、及び約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8
、9、又は10mMのOACを含む。該方法の具体的な実施態様では、該培地は、GBGM(登録商標)
である。別の具体的な実施態様では、該培地は、Stemspan(登録商標)H3000及び約5mMのOA
Cを含む。別の具体的な実施態様では、該培地は、DMEM:F12及び約5mMのOACを含む。該OAC
は、本明細書で提供される培養方法の間、いつでも添加することができる。ある実施態様
では、該OACは、第一の培地に及び/又は第一の培養工程の間に添加される。いくつかの実
施態様では、該OACは、培養0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、1
6、17、18、19、20、21日目に、第一の培地に添加される。具体的な実施態様では、該OAC
は、第一の培養工程の7日目に、第一の培地に添加される。より具体的な実施態様では、
該OACは、培養の7日目に、第一の培地に添加され、第一の培養工程及び第二の培養工程の
間中、存在する。ある実施態様では、該OACは、第二の培地に及び/又は第二の培養工程の
間に添加される。いくつかの実施態様では、該OACは、培養22、23、24、25、26、27、28
、29、30、31、32、33、34、35日目に、第二の培地に添加される。
【0087】
別の具体的な実施態様では、該培地は、約5~20%のBSA、約1~10μg/mLの組換えヒト
インスリン、約10~50μg/mLの鉄飽和ヒトトランスフェリン、及び約10~50μMのβ-メル
カプトエタノールが補充されたIMDMである。別の具体的な実施態様では、該培地は、IL-1
1、IL-3、ホメオボックス-B4(HoxB4)、及び/もしくはメチルセルロースのうちの1つもし
くは複数、又はそのいずれをも含まない。
【0088】
他の具体的な実施態様では、該培地は、約0.1~約500ng/mL;約5~約100ng/mL;又は約20
ng/mLの濃度のSCFを含む。他の具体的な実施態様では、該培地は、約10~約2000IU/mL;又
は約100~約500IU/mL;又は約200IU/mLの濃度のIL-2を含む。他の具体的な実施態様では、
該培地は、約0.1~約500ng/mL;約5~約100ng/mL;又は約20ng/mLの濃度のIL-7を含む。他
の具体的な実施態様では、該培地は、約0.1~約500ng/mL;約5~約100ng/mL;又は約10ng/m
Lの濃度のIL-15を含む。他の具体的な実施態様では、該培地は、約0.05~約100U/mL;又は
約0.5~約20U/ml;又は約1.5U/mLの濃度のヘパリンを含む。
【0089】
該方法の更に他の具体的な実施態様では、該培地は更に、約1~約150ng/mLの濃度のFms
様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt-3L)、約1~約150ng/mLの濃度のトロンボポエチン(Tpo
)、又は両方の組合せを含む。他の具体的な実施態様では、該培地は、約0.1~約500ng/mL
;約5~約100ng/mL;又は約20ng/mLの濃度のFlt-3Lを含む。他の具体的な実施態様では、該
培地は、約0.1~約500ng/mL;約5~約100ng/mL;又は約20ng/mLの濃度のTpoを含む。
【0090】
該方法のより具体的な実施態様では、第一の培養培地は、約20ng/mLのSCF、約20ng/mL
のIL-7、約10ng/mLのIL-15を含むGBGM(登録商標)である。該方法の別のより具体的な実施
態様では、第一の培養培地は、約20ng/mLのSCF、約20ng/mLのFlt3-L、約200IU/mLのIL-2
、約20ng/mLのIL-7、約10ng/mLのIL-15、約20ng/mLのTpo、及び約1.5U/mLのヘパリンを含
むGBGM(登録商標)である。別の具体的な実施態様では、該第一の培養培地は更に、10%の
ヒト血清(例えば、ヒト血清AB)又は胎仔血清(例えば、FBS)を含む。
【0091】
別の実施態様では、造血細胞を、免疫調節化合物と接触させていない同等数の造血細胞
と比較して、所与の時間にわたる該造血細胞の増殖の検出可能な増加をもたらすのに十分
な時間及び量で、例えば、該第一の培地中で、免疫調節化合物、例えば、TNF-α阻害化合
物と接触させて培養することによって、該細胞を拡大する。例えば、米国特許出願公開第
2003/0235909号を参照されたく、その開示は、その全体が引用により本明細書に組み込ま
れる。ある実施態様では、免疫調節化合物は、アミノ置換イソインドリンである。好まし
い実施態様では、免疫調節化合物は、3-(4-アミノ-1-オキソ-1,3-ジヒドロイソインドー
ル-2-イル)-ピペリジン-2,6-ジオン;3-(4'アミノイソリンドリン-1'-オン)-1-ピペリジン
-2,6-ジオン;4-(アミノ)-2-(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン;
又は4-アミノ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1,3-ジオンである。
別の好ましい実施態様では、免疫調節化合物は、ポマリドミド、又はレナリドミドである
。別の実施態様では、該免疫調節化合物は、以下の構造を有する化合物、又は医薬として
許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、包摂化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー
、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物であり、
【化1】
式中、X及びYのうちの一方はC=Oであり、X及びYのうちのもう一方は、C=O又はCH2であり
、R2は、水素もしくは低級アルキルである。別の実施態様では、該免疫調節化合物は、以
下の構造を有する化合物、又は医薬として許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、包摂化
合物、エナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物
であり、
【化2】
式中、X及びYのうちの一方はC=Oであり、X及びYのうちのもう一方は、CH2又はC=Oであり;
R1は、H、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)ア
ルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、(C0-C
4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、C(O)R3、C(S)R3、C(O)OR4、(C1-C8)アルキル-N(R6)
2、(C1-C8)アルキル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、C(O)NHR3、C(S)NHR3、C(O)NR3R3'
、C(S)NR3R3'、又は(C1-C8)アルキル-O(CO)R5であり;
R2は、H、F、ベンジル、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、又は(C2-C8)アルキニ
ルであり;
R3及びR3'は、独立に、(C1-C8)アルキル、(C3-C7)シクロアルキル、(C2-C8)アルケニル
、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアル
キル、(C0-C4)アルキル-(C2-C5)ヘテロアリール、(C0-C8)アルキル-N(R6)2、(C1-C8)アル
キル-OR5、(C1-C8)アルキル-C(O)OR5、(C1-C8)アルキル-O(CO)R5、又はC(O)OR5であり;
R4は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、(C1-C4)アルキル-O
R5、ベンジル、アリール、(C0-C4)アルキル-(C1-C6)ヘテロシクロアルキル、又は(C0-C4)
アルキル-(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R5は、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキニル、ベンジル、アリー
ル、又は(C2-C5)ヘテロアリールであり;
R6の各々の出現は、独立に、H、(C1-C8)アルキル、(C2-C8)アルケニル、(C2-C8)アルキ
ニル、ベンジル、アリール、(C2-C5)ヘテロアリール、もしくは(C0-C8)アルキル-C(O)O-R
5であるか、又はR6基は結合して、ヘテロシクロアルキル基を形成することができ;
nは0又は1であり;かつ
*は、キラル炭素中心を表す。
別の実施態様では、該免疫調節化合物は、以下の構造を有する化合物、又は医薬として
許容し得るその塩、水和物、溶媒和物、包摂化合物、エナンチオマー、ジアステレオマー
、ラセミ化合物、もしくは立体異性体の混合物であり、
【化3】
式中:
X及びYのうちの一方はC=Oであり、もう一方は、CH2又はC=Oであり;
Rは、H又はCH2OCOR'であり;
(i)R1、R2、R3、もしくはR4の各々は、他のものとは独立に、ハロ、炭素原子1~4個の
アルキル、もしくは炭素原子1~4個のアルコキシであるか、又は(ii)R1、R2、R3、もしく
はR4のうちの1つは、ニトロもしくは-NHR5であり、かつR1、R2、R3、もしくはR4のうちの
残りは水素であり;
R5は、水素又は炭素1~8個のアルキルであり
R6は、水素、炭素原子1~8個のアルキル、ベンゾ、クロロ、又はフルオロであり;
R'はR7-CHR10-N(R8R9)であり;
R7は、m-フェニレン又はp-フェニレン又は-(CnH2n)-であり、ここで、nは0~4の値を有
し;
R8及びR9の各々は、他方とは独立に、水素もしくは炭素原子1~8個のアルキルであるか
、又はR8及びR9は一緒になって、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、も
しくは-CH2CH2X1CH2CH2-であり、ここで、X1は、-O-、-S-、もしくは-NH-であり;
R10は、水素、炭素原子~8個のアルキル、又はフェニルであり;かつ
*は、キラル炭素中心を表す。
【0092】
具体的な実施態様では、造血細胞の拡大は、20%BITS(ウシ血清アルブミン、組換えヒ
トインスリン、及びトランスフェリン)、SCF、Flt-3リガンド、IL-3、及び4-(アミノ)-2-
(2,6-ジオキソ(3-ピペリジル))-イソインドリン-1,3-ジオン(0.05%DMSO中、10μM)が補
充されたIMDM中で行なわれる。より具体的な実施態様では、約5×107個の造血細胞、例え
ば、CD34+細胞を、該培地中で、約5×1010細胞~約5×1012細胞まで拡大し、これを100mL
のIMDMに再懸濁して、拡大された造血細胞の集団を産生する。拡大された造血細胞の集団
は、輸送しやすくするために凍結保存されることが好ましい。
【0093】
様々な具体的な実施態様では、造血細胞の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、
75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、又は99%をNK細胞に分化させる。
【0094】
ある実施態様では、本明細書に記載されているような、造血細胞の拡大及び分化の方法
は、該造血細胞を含む細胞集団を、拡大及び分化の間、1ミリリットル当たり約2×104
約2×105細胞で維持することを含む。ある他の実施態様では、本明細書に記載されている
ような、造血細胞の拡大及び分化の方法は、該造血細胞を含む細胞集団を1ミリリットル
当たり約1×105細胞以下で維持することを含む。
【0095】
造血細胞の拡大、及びNK細胞への分化にかかる時間は、例えば、約3日~約120日であり
得る。一実施態様では、分化時間は、約7日~約75日である。別の実施態様では、分化時
間は、約14日~約50日である。具体的な実施態様では、分化時間は、約21日~約28日であ
る。
【0096】
(6.2.2.第二の工程)
本明細書で提供される方法では、造血細胞、例えば、幹細胞又は前駆細胞、及び第一の
工程から得られる、ナチュラルキラー細胞を、例えば、フィーダー層を用いないで、又は
フィーダー細胞の存在下、第二の工程で更に拡大し、分化させる。本明細書で提供されて
いるような細胞の培養は、第一の工程由来のNK細胞の連続的な拡大、分化、及び成熟をも
たらす。第二の工程では、該NK細胞を、例えば、該第一の培地とは異なるサイトカイン及
び/又は生体活性分子を含む第二の培養培地中で、連続的な様式で、拡大し、分化させ、
かつ成熟させる。ある実施態様では、第二の培養培地は、動物成分不含培地である。例示
的な動物成分不含細胞培養培地は、上の第6.2.1節に記載されている。
【0097】
従って、一態様では、NK細胞を産生する方法であって、上記の第一の工程由来のNK細胞
を、フィーダー細胞の存在下で、かつインターロイキン-2(IL-2)と接触させて、第二の培
地中で拡大することを含む、方法が本明細書で提供される。具体的な実施態様では、該第
二の培地は、IL-2、例えば、10IU/mL~1000IU/mL、及びヒト血清(例えば、ヒト血清AB)、
胎仔ウシ血清(fetal bovine serum)(FBS)、もしくは胎仔ウシ血清(fetal calf serum)(FC
S)、例えば、5%~15%FCS v/v;トランスフェリン、例えば、10μg/mL~50μg/mL;インス
リン、例えば、5μg/mL~20μg/mL;エタノールアミン、例えば、5×10-4~5×10-5M;オレ
イン酸、例えば、0.1μg/mL~5μg/mL;リノール酸、例えば、0.1μg/mL~5μg/mL;パルミ
チン酸、例えば、0.05μg/mL~2μg/mL;ウシ血清アルブミン(BSA)、例えば、1μg/mL~5
μg/mL;及び/又はフィトヘマグルチニン、例えば、0.01μg/mL~1μg/mL:のうちの1つ又
は複数を含む細胞成長培地を含む。より具体的な実施態様では、該第二の培地は、FBS又
はFCS、例えば、10%FCS v/v、IL-2、トランスフェリン、インスリン、エタノールアミン
、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びフィトヘマ
グルチニンを含む細胞成長培地を含む。より具体的な実施態様では、該第二の培地は、イ
スコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、10%のFBS又はFCS、400IUのIL-2、35μg/mLのトラン
スフェリン、5μg/mLのインスリン、2×10-5Mのエタノールアミン、1μg/mLのオレイン酸
、1μg/mLのリノール酸(Sigma-Aldrich)、0.2μg/mLのパルミチン酸(Sigma-Aldrich)、2.
5μg/mLのBSA(Sigma-Aldrich)、及び0.1μg/mLのフィトヘマグルチニンを含む。
【0098】
ある実施態様では、第二の培地は、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球/マクロフ
ァージコロニー刺激因子(GM-CSF)、インターロイキン-6(IL-6)、マクロファージ炎症性タ
ンパク質1α(MIP1α)、又は白血病抑制因子(LIF)のうちの1つ又は複数を含まない。
【0099】
該方法に加えて、組成物としての上記の培地のいずれかが本明細書で提供される。
【0100】
フィーダー細胞は、使用するときに、様々な細胞型から樹立することができる。これら
の細胞型の例としては、限定するものではないが、線維芽細胞、幹細胞(例えば、組織培
養物接着性胎盤幹細胞)、血液細胞(例えば、末梢血単核細胞(PBMC))、及び癌細胞(例えば
、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、例えば、K562)が挙げられる。具体的な実施態様では、該
第二の培地中で該培養することは、例えば、フィーダー細胞、例えば、K562細胞及び/又
は末梢血単核細胞(PBMC)を、該第二の培地中で起こしたとき、その1、2、3、4、5、6、7
、8、9、又は10日後に、該細胞を用いて培養することを含む。ある実施態様では、フィー
ダー細胞は、任意に、それらが支持している細胞と異なる種に由来するものである。例え
ば、ヒトNK細胞は、(初代培養物又はテロメア化された株由来の)マウス胚性線維芽細胞に
よって支持することができる。
【0101】
ある実施態様では、フィーダー細胞を、任意に、放射線照射(例えば、γ線照射)又は抗
有糸分裂剤、例えば、マイトマイシンCによる処理によって不活化し、それらが支持して
いる細胞よりもそれらが成長するのを防ぐが、NK細胞を支持する重要な因子の合成は可能
にする。例えば、細胞に、増殖を阻害するが、ヒト胚性幹(hES)細胞を支持する重要な因
子の合成を可能にする用量で放射線照射する(約4000ラドのγ線照射)。
【0102】
第二の工程のためのNK細胞の培養は、細胞の培養及び拡大と適合する任意の容器、例え
ば、フラスコ、チューブ、ビーカー、ディッシュ、マルチウェルプレート、バッグなどの
中で生じることができる。具体的な実施態様では、NK細胞のフィーダー細胞依存的な培養
は、バッグ、例えば、可撓性で、ガス透過性のフルオロカーボン培養バッグ(例えば、Ame
rican Fluoroseal製)の中で生じる。具体的な実施態様では、NK細胞を培養する容器は、
例えば、拡大されたNK細胞を更に拡大し、分化させ、かつ成熟させる、病院又は軍事区域
などの場所への輸送に好適である。
【0103】
工程1由来の細胞のTSNK細胞への分化は、例えば、フローサイトメトリーによって、NK
細胞特異的マーカーを検出することによって評価することができる。NK細胞特異的マーカ
ーとしては、CD56、CD94、CD117、及びNKp46が挙げられるが、これらに限定されない。分
化は、NK細胞の形態的特徴、例えば、大きいサイズ、数多くの小胞体(ER)における高いタ
ンパク質合成活性、及び/又は予め形成された顆粒によって評価することもできる。
【0104】
工程1由来の細胞の拡大、及びTSNK細胞への分化にかかる時間は、例えば、約3日~約12
0日であり得る。一実施態様では、分化時間は、約7日~約75日である。別の実施態様では
、分化時間は、約14日~約50日である。具体的な実施態様では、分化時間は、約10日~約
21日である。
【0105】
造血細胞のNK細胞への分化は、例えば、フローサイトメトリーによって、マーカー、例
えば、CD56、CD94、CD117、NKG2D、DNAM-1、及びNKp46を検出することによって評価する
ことができる。分化は、NK細胞の形態的特徴、例えば、大きいサイズ、数多くの小胞体(E
R)における高いタンパク質合成活性、及び/又は予め形成された顆粒によって評価するこ
ともできる。NK細胞(例えば、TSNK細胞)の成熟は、1以上の機能的に関連のあるマーカー
、例えば、CD94、CD161、NKp44、DNAM-1、2B4、NKp46、CD94、KIR、及びNKG2ファミリー
の活性化受容体(例えば、NKG2D)を検出することによって評価することができる。NK細胞(
例えば、TSNK細胞)の成熟は、異なる発生段階の間に特異的なマーカーを検出することに
よって評価することもできる。例えば、一実施態様では、プロ-NK細胞は、CD34+、CD45RA
+、CD10+、CD117-、及び/又はCD161-である。別の実施態様では、プレ-NK細胞は、CD34+
、CD45RA+、CD10-、CD117+、及び/又はCD161-である。別の実施態様では、未成熟NK細胞
は、CD34-、CD117+、CD161+、NKp46-、及び/又はCD94/NKG2A-である。別の実施態様では
、CD56bright NK細胞は、CD117+、NKp46+、CD94/NKG2A+、CD16-、及び/又はKIR+/-である
。別の実施態様では、CD56dim NK細胞は、CD117-、NKp46+、CD94/NKG2A+/-、CD16+、及び
/又はKIR+である。具体的な実施態様では、NK細胞(例えば、TSNK細胞)の成熟は、CD161-
、CD94+、及び/又はNKp46+であるNK細胞(例えば、TSNK細胞)のパーセンテージによって決
定される。より具体的な実施態様では、成熟NK細胞(例えば、TSNK細胞)の少なくとも10%
、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、65%、又は70%はNKp46+である。
別のより具体的な実施態様では、成熟NK細胞(例えば、TSNK細胞)の少なくとも10%、20%
、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%はCD94+である。別のより具体的な実施態様
では、成熟NK細胞(例えば、TSNK細胞)の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%
、45%、又は50%はCD161-である。
【0106】
ある実施態様では、造血細胞のNK細胞への分化を、例えば、CD3、CD7もしくはCD127、C
D10、CD14、CD15、CD16、CD33、CD34、CD56、CD94、CD117、CD161、NKp44、NKp46、NKG2D
、DNAM-1、2B4、又はTO-PRO-3の発現レベルを、例えば、これらの細胞マーカーのうちの1
つ又は複数に対する抗体を用いて検出することによって評価する。そのような抗体は、例
えば、蛍光標識、例えば、FITC、R-PE、PerCP、PerCP-Cy5.5、APC、APC-Cy7、又はAPC-H7
のような、検出可能な標識にコンジュゲートすることができる。
【0107】
(6.3.TSNK細胞の単離)
ナチュラルキラー細胞を単離する方法は当技術分野で公知であり、該方法を用いて、TS
NK細胞を単離することができる。ナチュラルキラー細胞は、組織源、例えば、末梢血由来
の細胞をCD56及びCD3に対する抗体で染色し、かつCD56+CD3-細胞を選択することによって
単離又は濃縮することができる。TSNK細胞は、市販のキット、例えば、NK細胞単離キット
(Miltenyi Biotec)を用いて単離することができる。TSNK細胞は、該TSNK細胞を含む細胞
の集団内のNK細胞以外の細胞の除去によって単離又は濃縮することもできる。例えば、TS
NK細胞は、例えば、CD3、CD4、CD14、CD19、CD20、CD36、CD66b、CD123、HLA DR、及び/
又はCD235a(グリコフォリンA)のうちの1つ又は複数に対する抗体を用いた非NK細胞マーカ
ーを示す細胞の除去によって単離又は濃縮することができる。陰性単離は、市販のキット
、例えば、NK細胞陰性単離キット(Dynal Biotech)を用いて実行することができる。これ
らの方法によって単離される細胞を更に選別して、例えば、CD16+及びCD16-細胞を分離す
ることができる。
【0108】
細胞分離を、例えば、フローサイトメトリー、蛍光活性化細胞選別(FACS)、又は好まし
くは、特異的抗体とコンジュゲートされたマイクロビーズを用いる磁気細胞選別によって
達成することができる。該細胞は、例えば、1以上の特異的抗体、例えば、抗CD56抗体を
含む磁気ビーズ(例えば、約0.5~100μmの直径)に結合するその能力に基づいて粒子を分
離する方法である、磁気活性化細胞選別(MACS)技術を用いて単離することができる。磁気
細胞分離は、例えば、AUTOMACS(商標)セパレーター(Miltenyi)を用いて実施し、自動化す
ることができる。特定の細胞表面分子又はハプテンを特異的に認識する抗体の共有結合的
付加を含む、種々の有用な修飾を、磁気マイクロスフェアに対して行なうことができる。
その後、ビーズを該細胞と混合し、結合させておく。その後、細胞を磁場に通して、特定
の細胞表面マーカーを有する細胞を完全に分離する。一実施態様では、その後、これらの
細胞を単離し、更なる細胞表面マーカーに対する抗体と結合した磁気ビーズと再び混合す
ることができる。該細胞を再び磁場に通して、両方の抗体に結合した細胞を単離する。そ
の後、そのような細胞を希釈して、別々のディッシュ、例えば、クローン単離用のマイク
ロタイターディッシュに入れることができる。
【0109】
(6.4.胎盤灌流液)
TSNK細胞は、任意の供給源、例えば、胎盤組織、胎盤灌流液、臍帯血、胎盤血、末梢血
、脾臓、肝臓などに由来する造血細胞、例えば、造血幹又は前駆細胞から産生することが
できる。ある実施態様では、該造血幹細胞は、胎盤灌流液由来及び該胎盤灌流液を生成さ
せるために用いられる同じ胎盤に由来する臍帯血由来の組み合わされた造血幹細胞である
。例えば、その開示がその全体として引用により本明細書中に組み込まれる、米国特許第
7,045,148号及び第7,468,276号に開示された方法によって得ることができる胎盤灌流液細
胞を含む胎盤灌流液。
【0110】
(6.4.1.細胞回収組成物)
例えば、本明細書で提供されるような、TSNK細胞と組み合わせて、造血幹もしくは前駆
細胞をそこから単離し得るか、或いは腫瘍抑制、又は腫瘍細胞、癌、もしくはウイルス感
染を有する個体の治療において有用な、胎盤灌流液及び灌流液細胞は、胎盤細胞回収組成
物を用いる、哺乳動物、例えば、ヒトの分娩後胎盤の灌流によって回収することができる
。灌流液は、任意の生理的に許容し得る溶液、例えば、生理食塩水溶液、培養培地、又は
より複雑な細胞回収組成物を用いる胎盤の灌流によって、胎盤から回収することができる
。胎盤の灌流に、並びに灌流液細胞の回収及び保存に好適な細胞回収組成物は、その全体
が引用により本明細書中に組み込まれている、関連米国特許出願公開第2007/0190042号に
詳細に記載されている。
【0111】
細胞回収組成物は、幹細胞の回収及び/又は培養に好適な任意の生理的に許容し得る溶
液、例えば、生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水、クレブス溶液、改変クレ
ブス溶液、イーグル溶液、0.9%NaClなど)、培養培地(例えば、DMEM、H.DMEMなど)などを
含むことができる。
【0112】
細胞回収組成物は、回収の時点から培養の時点まで、胎盤細胞を保存する、すなわち、
胎盤細胞の死を防止するか、又は胎盤細胞の死を遅延させるか、死滅する細胞の集団内の
胎盤細胞の数を低下させるなどの傾向がある1以上の成分を含むことができる。そのよう
な成分は、例えば、アポトーシス阻害剤(例えば、カスパーゼ阻害剤もしくはJNK阻害剤);
血管拡張剤(例えば、硫酸マグネシウム、抗高血圧薬、心房性ナトリウム利尿ペプチド(AN
P)、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、ニトロプルシドナトリ
ウム、ヒドララジン、アデノシン三リン酸、アデノシン、インドメタシン、もしくは硫酸
マグネシウム、ホスホジエステラーゼ阻害剤など);壊死阻害剤(例えば、2-(1H-インドー
ル-3-イル)-3-ペンチルアミノ-マレイミド、ピロリジンジチオカルバメート、もしくはク
ロナゼパム);TNF-α阻害剤;及び/又は酸素担持ペルフルオロカーボン(例えば、臭化ペル
フルオロオクチル、臭化ペルフルオロデシルなど)であることができる。
【0113】
細胞回収組成物は、1以上の組織分解酵素、例えば、メタロプロテアーゼ、セリンプロ
テアーゼ、中性プロテアーゼ、ヒアルロニダーゼ、RNアーゼ、又はDNアーゼなどを含むこ
とができる。そのような酵素としては、コラゲナーゼ(例えば、コラゲナーゼI、II、III
、又はIV、クロストリジウム・ヒストリチカム(Clostridium histolyticum)に由来するコ
ラゲナーゼなど);ディスパーゼ、サーモリシン、エラスターゼ、トリプシン、LIBERASE、
ヒアルロニダーゼなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
細胞回収組成物は、殺菌又は静菌有効量の抗生物質を含むことができる。ある非制限的
な実施態様では、抗生物質は、マクロライド(例えば、トブラマイシン)、セファロスポリ
ン(例えば、セファレキシン、セフラジン、セフロキシム、セフプロジル、セファクロル
、セフィキシム、もしくはセファドロキシル)、クラリスロマイシン、エリスロマイシン
、ペニシリン(例えば、ペニシリンV)、又はキノロン(例えば、オフロキサシン、シプロフ
ロキサシン、もしくはノルフロキサシン)、テトラサイクリン、ストレプトマイシンなど
である。特定の実施態様では、抗生物質は、グラム(+)及び/又はグラム(-)細菌、例えば
、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)などに対
して活性がある。
【0115】
細胞回収組成物は、以下の化合物のうち1つ又は複数を含むこともできる:アデノシン(
約1mM~約50mM);D-グルコース(約20mM~約100mM);マグネシウムイオン(約1mM~約50mM);
一実施態様では、内皮の完全性及び細胞の生存能力を維持するのに十分な量で存在する、
分子量20,000ダルトン超の巨大分子(例えば、約25g/l~約100g/l、もしくは約40g/l~約6
0g/lで存在する、合成もしくは天然のコロイド、デキストランなどの多糖類、もしくはポ
リエチレングリコール);酸化防止剤(例えば、約25μM~約100μMで存在するブチル化ヒド
ロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、グルタチオン、ビタミンC、もしくは
ビタミンE);還元剤(例えば、約0.1mM~約5mMで存在するN-アセチルシステイン);細胞内へ
のカルシウム進入を防止する薬剤(例えば、約2μM~約25μMで存在するベラパミル);ニト
ログリセリン(例えば、約0.05g/L~約0.2g/L);一実施態様では、残留血液の凝固の防止を
助けるのに十分な量で存在する抗凝血剤(例えば、約1000ユニット/l~約100,000ユニット
/lの濃度で存在するヘパリンもしくはヒルジン);又はアミロライド含有化合物(例えば、
約1.0μM~約5μMで存在するアミロライド、エチルイソプロピルアミロライド、ヘキサメ
チレンアミロライド、ジメチルアミロライド、もしくはイソブチルアミロライド)。
【0116】
(6.4.2.胎盤の回収及び取扱い)
通常、ヒトの胎盤を、出産後のその娩出後すぐに回収する。好ましい実施態様では、イ
ンフォームドコンセント後、及び患者の全病歴を取得して、該胎盤と関連付けた後、胎盤
を患者から回収する。好ましくは、この病歴は分娩後も続く。
【0117】
灌流液の回収前に、臍帯血及び胎盤血を除去する。ある実施態様では、分娩後、胎盤内
の臍帯血を回収する。胎盤は、従来の臍帯血の回収プロセスに供することができる。通常
、針又はカニューレを用い、重力の助けを借りて、胎盤を放血させる(例えば、Anderson
の米国特許第5,372,581号:Hesselらの米国特許第5,415,665号を参照されたい)。針又はカ
ニューレを、通常、臍帯静脈内に留置し、胎盤を穏やかにマッサージして、胎盤からの臍
帯血の排出を助けることができる。そのような臍帯血の回収は、商業的に、例えば、Life
Bank Inc.、Cedar Knolls, N.J.、ViaCord、Cord Blood Registry、及びCryoCellにより
行なわれてもよい。好ましくは、臍帯血を回収する間の組織破壊を最小限に抑えるために
、胎盤を、それ以上操作することなく、重力排出させる。
【0118】
通常、臍帯血の回収及び灌流液の回収のために、胎盤を、分娩室又は出産室から別の場
所、例えば、実験室まで輸送する。例えば、胎盤を、近位臍帯をクランプしたまま、滅菌
されたジップロック式プラスチックバッグの中に入れ、その後、このプラスチックバッグ
を断熱容器内に入れることによって、胎盤を(胎盤の温度を20~28℃に維持する)滅菌され
た断熱輸送装置に入れて輸送することが好ましい。別の実施態様では、米国特許第7,147,
626号に実質的に記載されているように、胎盤を臍帯血回収キットに入れて輸送する。好
ましくは、胎盤を、分娩から4~24時間後に、実験室に移送する。ある実施態様では、臍
帯血の回収前に、近位臍帯を、好ましくは、胎盤への挿入部から4~5cm(センチメートル)
以内のところでクランプする。他の実施態様では、臍帯血の回収後、しかし、それ以上の
胎盤の処理前に、近位臍帯をクランプする。
【0119】
胎盤を、灌流液の回収前に、滅菌条件下、かつ室温又は5~25℃の温度(摂氏)のいずれ
かで保存することができる。胎盤を灌流して残留臍帯血を除去する前に、胎盤を、48時間
よりも長い時間、好ましくは4~24時間、保存してもよい。胎盤は、5~25℃の温度(摂氏)
で、抗凝血剤溶液に入れて保存することが好ましい。好適な抗凝血剤溶液は当技術分野で
周知である。例えば、ヘパリン又はワルファリンナトリウム溶液を用いることができる。
好ましい実施態様では、抗凝血剤溶液は、ヘパリン溶液(例えば、1:1000溶液中に1%w/w)
を含む。放血された胎盤は、胎盤灌流液を回収する前に、36時間を超えない時間、保存す
ることが好ましい。
【0120】
(6.4.3.胎盤灌流)
哺乳動物の胎盤を灌流する方法及び胎盤灌流液を得る方法は、例えば、その各々の開示
が、その全体として引用により本明細書中に組み込まれている、Haririの米国特許第7,04
5,148号及び第7,255,879号、並びに米国特許出願公開第2007/0190042号及び第2007027536
2号に開示されている。
【0121】
灌流液を、灌流溶液、例えば、生理食塩水溶液、培養培地、又は上記の細胞回収組成物
を、胎盤血管系に通すことによって得ることができる。一実施態様では、哺乳動物の胎盤
を、灌流溶液を臍帯動脈と臍帯静脈のどちらか又は両方に通すことによって灌流する。胎
盤を通る灌流溶液の流れを、例えば、胎盤の中への重力流を用いて達成することができる
。好ましくは、灌流溶液を、ポンプ、例えば、蠕動ポンプを用いて、胎盤に強制的に通す
。臍帯静脈に、例えば、滅菌チューブなどの滅菌された接続装置に接続されている、カニ
ューレ、例えば、TEFLON(登録商標)又はプラスチックカニューレを挿入することができる
。この滅菌された接続装置は、灌流マニフォールドに接続されている。
【0122】
灌流に備えて、臍帯動脈及び臍帯静脈が胎盤の最も高い地点に位置するような形で、胎
盤を配置することが好ましい。灌流溶液を胎盤血管系に通すか、又は胎盤血管系及び周辺
組織に通すことによって、胎盤を灌流することができる。一実施態様では、臍帯動脈及び
臍帯静脈を、可撓性コネクタを介して灌流溶液のリザーバに接続されているピペットに同
時に接続する。灌流溶液を臍帯静脈及び臍帯動脈に通す。灌流溶液は、血管壁から滲出し
、かつ/又は血管壁を通って胎盤の周辺組織に入り、妊娠中に母体の子宮に付着していた
胎盤表面から好適な開放容器に回収される。灌流溶液を、臍帯開口部を介して導入し、母
体子宮壁と接触していた胎盤壁の開口部から流出又は浸出させることもできる。別の実施
態様では、灌流溶液を、臍帯静脈に通し、臍帯動脈から回収するか、又は臍帯動脈に通し
、臍帯静脈から回収する、すなわち、胎盤血管系(胎児組織)のみに通す。
【0123】
一実施態様では、例えば、臍帯動脈及び臍帯静脈を、例えば、可撓性コネクタを介して
灌流溶液のリザーバに接続されているピペットに同時に接続する。灌流溶液を臍帯静脈及
び臍帯動脈に通す。灌流溶液は、血管壁から滲出し、かつ/又は血管壁を通って胎盤の周
辺組織に入り、妊娠中に母体の子宮に付着していた胎盤表面から好適な開放容器に回収さ
れる。灌流溶液を、臍帯開口部を介して導入し、母体子宮壁と接触していた胎盤壁の開口
部から流出又は浸出させることもできる。「受け皿(pan)」法と呼ぶことができるこの方
法によって回収される胎盤細胞は、通常、胎児細胞と母親細胞の混合物である。
【0124】
別の実施態様では、灌流溶液を臍帯静脈に通し、臍帯動脈から回収するか、又は臍帯動
脈に通し、臍帯静脈から回収する。「閉回路」法と呼ぶことができるこの方法によって回
収される胎盤細胞は、通常、ほとんど胎児のものしかない。
【0125】
閉回路灌流法を、一実施態様では、次のように実施することができる。分娩後胎盤を、
出産後、約48時間以内に得る。臍帯をクランプし、クランプの上方で切断する。臍帯は、
廃棄することができるか、又は例えば、臍帯幹細胞を回収するために、及び/もしくは生
体材料の産生用に臍帯膜を処理するために、処理することができる。羊膜を灌流中保持す
ることができるか、又は例えば、指を用いる鈍的剥離を用いて、絨毛膜から分離すること
ができる。羊膜を灌流前に絨毛膜から分離する場合、それを、例えば、廃棄するか、又は
例えば、酵素的消化によって幹細胞を得るために、もしくは例えば、羊膜生体材料、例え
ば、米国特許出願公開第2004/0048796号に記載されている生体材料を産生するために、処
理することができる。例えば、滅菌ガーゼを用いて、全ての目に見える血の塊及び残留血
液を胎盤から除去した後、例えば、臍帯膜を一部切断して、臍帯の断面を露出させること
により、臍帯血管を露出させる。血管を確認し、それを、例えば、閉じたアリゲーターク
ランプを各々の血管の切断端に通して前進させることによって広げる。その後、装置、例
えば、灌流装置又は蠕動ポンプに接続されたプラスチックチューブを胎盤動脈の各々に挿
入する。ポンプは、この目的に好適な任意のポンプ、例えば、蠕動ポンプであることがで
きる。その後、滅菌された回収リザーバ、例えば、250mL回収バッグなどの血液バッグに
接続されたプラスチックチューブを胎盤静脈に挿入する。或いは、ポンプに接続されたチ
ューブを胎盤静脈に挿入し、回収リザーバ(複数可)に接続されたチューブを胎盤動脈の一
方又は両方に挿入する。その後、胎盤を、一定の容積の灌流溶液、例えば、約750mlの灌
流溶液で灌流する。その後、灌流液中の細胞を、例えば、遠心分離によって回収する。
【0126】
一実施態様では、灌流中、近位臍帯をクランプし、より好ましくは、胎盤への臍帯挿入
部から4~5cm(センチメートル)以内のところで、近位臍帯をクランプする。
【0127】
放血プロセスの間の哺乳動物の胎盤からの灌流液の最初の回収物は、通常、臍帯血及び
/又は胎盤血の残留赤血球のために色が付いている。該灌流液は、灌流が進み、残留臍帯
血細胞が胎盤から洗い流されるにつれて、より無色になっていく。通常、最初に胎盤から
血液を洗い流すためには、30~100mLの灌流液で十分であるが、観察された結果次第で、
より多くの又はより少ない灌流液を用いることができる。
【0128】
胎盤を灌流するために用いられる灌流液の容積は、回収しようとする胎盤細胞の数、胎
盤の大きさ、単一の胎盤から行なわれる回収の回数などによって異なり得る。様々な実施
態様では、灌流液の容積は、50mL~5000mL、50mL~4000mL、50mL~3000mL、100mL~2000m
L、250mL~2000mL、500mL~2000mL、又は750mL~2000mLであることができる。通常、放血
後、胎盤を700~800mLの灌流液で灌流する。
【0129】
胎盤を、数時間又は数日間かけて、複数回灌流することができる。胎盤を複数回灌流し
ようとする場合、それを、容器(container)又は他の好適な容器(vessel)中、無菌条件下
で維持又は培養し、細胞回収組成物、或いは標準的な灌流溶液(例えば、抗凝血剤(例えば
、ヘパリン、ワルファリンナトリウム、クマリン、ビスヒドロキシクマリン)を含むかも
しくは含まない、及び/又は抗微生物剤(例えば、β-メルカプトエタノール(0.1mM):スト
レプトマイシン(例えば、40~100μg/ml)、ペニシリン(例えば、40U/ml)、アンフォテリ
シンB(例えば、0.5μg/ml)などの抗生物質を含むかもしくは含まない生理食塩水溶液、例
えば、リン酸緩衝生理食塩水(「PBS」))で灌流することができる。一実施態様では、単離
された胎盤を、灌流及び灌流液の回収前に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、1
3、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、もしくは24時間、又は2もしくは3日間、
又はそれより長い間、維持又は培養するように、該胎盤を、灌流液を回収しないで、しば
らくの間、維持又は培養する。灌流された胎盤を、更にもう1回以上、例えば、1、2、3、
4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24時間
、又はそれより長い時間、維持し、例えば、700~800mLの灌流液で再び灌流することがで
きる。胎盤を、1、2、3、4、5回、又はそれより多く、例えば、1、2、3、4、5、又は6時
間に1回、灌流することができる。好ましい実施態様では、回収された有核細胞の数が100
細胞/mlを下回るまで、胎盤の灌流、及び灌流溶液、例えば、胎盤細胞回収組成物の回収
を繰り返す。異なる時点の灌流液を更に個別に処理して、細胞、例えば、全有核細胞の時
間依存的な集団を回収することができる。異なる時点からの灌流液をプールすることもで
きる。
【0130】
(6.4.4.胎盤灌流液及び胎盤灌流液細胞)
通常、単回の胎盤灌流由来の胎盤灌流液は、約1億~約5億個の有核細胞を含み、これに
は、本明細書に開示された方法によってTSNK細胞を産生し得る造血細胞が含まれる。ある
実施態様では、該胎盤灌流液又は灌流液細胞は、CD34+細胞、例えば、造血幹細胞又は前
駆細胞を含む。そのような細胞は、より具体的な実施態様では、CD34+CD45-幹細胞もしく
は前駆細胞、CD34+CD45+幹細胞もしくは前駆細胞、又は同様の細胞を含むことができる。
ある実施態様では、該灌流液又は灌流液細胞は、それから造血細胞を単離する前に凍結保
存される。ある他の実施態様では、該胎盤灌流液は、胎児細胞のみ、もしくは胎児細胞と
母親細胞の組合せを含むか、又は該灌流液細胞は、胎児細胞のみ、もしくは胎児細胞と母
親細胞の組合せを含む。
【0131】
(6.5.TSNK細胞)
一態様では、TSNK細胞、本明細書に記載の方法(例えば、二工程方法)によって産生され
るNK細胞が本明細書で提供される。本明細書に記載の方法(例えば、二工程方法)によって
産生されるTSNK細胞を含む細胞の集団が本明細書で更に提供される。具体的な実施態様で
は、該NK細胞(例えば、TSNK細胞)はCD3-CD56+である。具体的な実施態様では、該NK細胞(
例えば、TSNK細胞)はCD3-CD56+CD16-である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例え
ば、TSNK細胞)は更にCD94+CD117+である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば
、TSNK細胞)は更にCD161-である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞(例えば、TSNK細
胞)は更にNKG2D+である。別の具体的な実施態様では、該NK細胞は更にNKp46+である。別
の具体的な実施態様では、該該NK細胞は更にCD226+である。
【0132】
ある実施態様では、該TSNK細胞の50%、60%、70%、80%、90%、92%、94%、96%、
98%超は、CD56+及びCD16-である。他の実施態様では、該TSNK細胞の少なくとも50%、60
%、70%、80%、82%、84%、86%、88%、又は90%は、CD3-及びCD56+である。他の実
施態様では、該TSNK細胞の少なくとも50%、52%、54%、56%、58%、又は60%はNKG2D+
である。他の実施態様では、該細胞の30%、20%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%
、又は3%未満はNKB1+である。ある他の実施態様では、該TSNK細胞の30%、20%、10%、
8%、6%、4%、又は2%未満はNKAT2+である。ある他の実施態様では、該TSNK細胞の30%
、20%、10%、8%、6%、4%、又は2%未満は、CD56+及びCD16+である。より具体的な実
施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%
、50%、55%、60%、65%、又は70%はNKp46+である。他のより具体的な実施態様では、
該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%
、60%、65%、70%、75%、80%、又は85%はCD117+である。他のより具体的な実施態様
では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%
、又は50%はCD94+である。他のより具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の
少なくとも10%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、又は50%はCD161-である。他の
より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞少なくとも10%、12%、14%、16%
、18%、又は20%はCD226+である。より具体的な実施態様では、該CD3-、CD56+ TSNK細胞
の少なくとも20%、25%、30%、35%、又は40%はCD7+である。より具体的な実施態様で
は、該CD3-、CD56+ TSNK細胞の少なくとも30%、35%、40%、45%、50%、55%、又は60
%はCD5+である。
【0133】
様々な他の実施態様では、TSNK細胞を、例えば、組織源から単離されているが、拡大さ
れていないNK細胞;組織源から単離され、拡大されたNK細胞、又は異なる方法によって産
生されたNK細胞、例えば、CD56+CD16+ナチュラルキラー細胞と、例えば、約1:10、2:9、3
:8、4:7:、5:6、6:5、7:4、8:3、9:2、1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2
、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、又は約9:1の比率で、組み合わせることが
できる。この文脈で使用される場合、「単離された」は、細胞がその通常の組織環境から
取り出されていることを意味する。
【0134】
TSNK細胞は、胎児の遺伝子型又は母親の遺伝子型を有することができる。例えば、TSNK
細胞を産生するのに好適な造血細胞の供給源としての分娩後胎盤は、胎児由来の組織及び
細胞並びに母親由来の組織及び細胞を含むので、胎盤灌流液は、胎児細胞のみ、もしくは
胎児細胞の実質的大部分(例えば、約90%、95%、98%、もしくは99%超)を含むことがで
きるか、又は胎児細胞と母親細胞の混合物(例えば、該胎児細胞は、該灌流液の全有核細
胞の約90%、80%、70%、60%、もしくは50%未満を含む)を含むことができる。一実施
態様では、TSNK細胞は、胎児胎盤造血細胞、例えば、胎盤の閉回路灌流から得られる細胞
のみに由来しており、ここで、該灌流は、胎児胎盤造血細胞の実質的大部分、又は胎児胎
盤造血細胞のみを含む灌流液を生じさせる。別の実施態様では、TSNK細胞は、胎児細胞及
び母親細胞、例えば、受け皿法(上記参照)による灌流によって得られる細胞に由来してお
り、ここで、該灌流は、胎児細胞と母親胎盤細胞の混合物を含む灌流液を生じさせる。従
って、一実施態様では、胎盤由来中間ナチュラルキラー細胞の集団が本明細書で提供され
、その実質的大部分は、胎児の遺伝子型を有する。別の実施態様では、胎児の遺伝子型を
有するナチュラルキラー細胞及び母親の表現型を有するナチュラルキラー細胞を含む胎盤
由来中間ナチュラルキラー細胞の集団が本明細書で提供される。
【0135】
本明細書に記載の方法によって産生されないナチュラルキラー細胞を含むTSNK細胞の集
団も本明細書で提供される。例えば、一実施態様では、臍帯血、末梢血、骨髄、もしくは
前述のもののうちの2つ以上の組合せから単離されたナチュラルキラー細胞も含むTSNK細
胞、又は本明細書に記載の方法以外の方法によって拡大されたNK細胞の集団が本明細書で
提供される。そのようなTSNK細胞の集団は、TSNK細胞及び他のNK細胞を、例えば、約1:10
、2:9、3:8、4:7:、5:6、6:5、7:4、8:3、9:2、10:1、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1
:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、100:1、95:5、90:10、85:15
、80:20、75:25、70:30、65:35、60:40、55:45:50:50、45:55、40:60、35:65、30:70、25
:75、20:80、15:85、10:90、5:95、100:1、95:1、90:1、85:1、80:1、75:1、70:1、65:1
、60:1、55:1、50:1、45:1、40:1、35:1、30:1、25:1、20:1、15:1、10:1、5:1、1:1、1:
5、1:10、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:70
、1:75、1:80、1:85、1:90、1:95、又は約1:100などの比率で含むことができる。
【0136】
ある実施態様では、単離されたナチュラルキラー細胞(例えば、TSNK細胞)又はナチュラ
ルキラー細胞(例えば、TSNK細胞)が濃縮された集団は、1以上の機能的に関連するマーカ
ー、例えば、CD94、CD161、NKp44、DNAM-1、2B4、NKp46、CD94、KIR、及びNKG2ファミリ
ーの活性化受容体(例えば、NKG2D)を検出することによって評価することができる。いく
つかの実施態様では、単離された又は濃縮されたナチュラルキラー細胞の純度は、CD56、
CD3、及びCD16のうちの1つ又は複数を検出することによって確認することができる。
【0137】
任意に、単離された又は濃縮されたナチュラルキラー細胞の細胞傷害活性は、例えば、
腫瘍細胞、例えば、培養されたK562、LN-18、U937、WERI-RB-1、U-118MG、HT-29、HCC221
8、KG-1、又はU266腫瘍細胞などの細胞を標的細胞として用いる細胞傷害性アッセイで評
価することができる。
【0138】
(6.6.胎盤灌流液と組み合わせたTSNK細胞)
例えば、腫瘍細胞又は複数の腫瘍細胞の増殖の抑制で用いるための、胎盤灌流液、胎盤
灌流液細胞、及び/又は接着性胎盤細胞と組み合わせたTSNK細胞を含む組成物が本明細書
で更に提供される。
【0139】
(6.6.1.TSNK細胞と灌流液又は灌流液細胞の組合せ)
TSNK細胞と胎盤灌流液及び/又は胎盤灌流液細胞の組合せを含む組成物が本明細書で更
に提供される。一実施態様では、例えば、TSNK細胞が補充された、一定の容積の胎盤灌流
液が本明細書で提供される。具体的な実施態様では、例えば、胎盤灌流液の各ミリリット
ルに、約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108
5×108個、又はそれより多くのTSNK細胞を補充する。別の実施態様では、胎盤灌流液細胞
にTSNK細胞を補充する。ある他の実施態様では、胎盤灌流液細胞をTSNK細胞と組み合わせ
る場合、該胎盤灌流液細胞は、通常、細胞の総数の約50%、45%、40%、35%、30%、25
%、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、もしくは1%超、又は細胞の総数の約50%
、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、もしくは1
%未満を含む。ある他の実施態様では、TSNK細胞を複数の胎盤灌流液細胞及び/又は組み
合わされたナチュラルキラー細胞と組み合わせる場合、該NK細胞は、通常、細胞の総数の
約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、もし
くは1%超、又は細胞の総数の約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10
%、8%、6%、4%、2%、もしくは1%未満を含む。ある他の実施態様では、TSNK細胞を
用いて胎盤灌流液を補充する場合、細胞を懸濁する溶液(例えば、生理食塩水溶液又は培
養培地など)の容積は、灌流液+細胞の全容積の約50%、45%、40%、35%、30%、25%
、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、もしくは1%超、又は灌流液+細胞の全容積
の約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、8%、6%、4%、2%、も
しくは1%未満を含み、その場合、TSNK細胞は、補充前の1ミリリットル当たり約1×104
5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108個、又はそ
れより多くの細胞になるように懸濁される。
【0140】
他の実施態様では、細胞の上記の組合せのいずれかを更に、臍帯血又は臍帯血由来の有
核細胞と組み合わせる。
【0141】
2以上の供給源、例えば、2以上の胎盤から得られ、混合された、例えば、プールされた
、プール胎盤灌流液が本明細書で更に提供される。そのようなプール灌流液は、各々の供
給源に由来するほぼ等容積の灌流液を含むことができるか、又は各々の供給源に由来する
異なる容積を含むことができる。各々の供給源に由来する相対的な容積は、無作為に選択
することができるか、或いは例えば、1以上の細胞因子、例えば、サイトカイン、成長因
子、ホルモンなどの濃度もしくは量;各々の供給源に由来する灌流液中の胎盤細胞の数;又
は各々の供給源に由来する灌流液の他の特徴に基づくことができる。同じ胎盤の複数回の
灌流に由来する灌流液を同様にプールすることができる。
【0142】
同様に、2以上の供給源、例えば、2以上の胎盤から得られ、プールされた胎盤灌流液細
胞及び胎盤由来中間ナチュラルキラー細胞が本明細書で提供される。そのようなプール細
胞は、2以上の供給源に由来するほぼ同等数の細胞を含むことができるか、又はプール供
給源のうちの1つ又は複数に由来する異なる数の細胞を含むことができる。各々の供給源
に由来する細胞の相対的な数は、例えば、プールされるべき細胞における1以上の特定細
胞型の数、例えば、CD34+細胞の数などに基づいて選択することができる。
【0143】
検定し、例えば、所与の数のTSNK細胞、又は所与の容積の灌流液から期待される腫瘍抑
制(すなわち、効力)の程度又は量を決定した、TSNK細胞、及びTSNK細胞と胎盤灌流液及び
/又は胎盤灌流液細胞との組合せが本明細書で更に提供される。例えば、アリコート又は
サンプル数の細胞を、そうでなければ腫瘍細胞が増殖するであろう条件下で既知数の腫瘍
細胞と接触させ、胎盤灌流液、灌流液細胞、胎盤ナチュラルキラー細胞、又はそれらの組
合せの存在下における経時的な(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10週、又
はそれより長い間の)腫瘍細胞の増殖速度を、灌流液、灌流液細胞、胎盤ナチュラルキラ
ー細胞、又はそれらの組合せの非存在下における同等数の腫瘍細胞の増殖と比較する。該
細胞の効力は、例えば、腫瘍細胞成長を、例えば、約10%、15%、20%、25%、30%、35
%、40%、45%、50%、又は同様の程度を抑制するために必要とされる細胞の数又は溶液
の容積として表すことができる。
【0144】
ある実施態様では、TSNK細胞は、医薬品等級の投与可能なユニットとして提供される。
そのようなユニットは、個別の容積、15mL、20mL、25mL、30nL、35mL、40mL、45mL、50mL
、55mL、60mL、65mL、70mL、75mL、80mL、85mL、90mL、95mL、100mL、150mL、200mL、250
mL、300mL、350mL、400mL、450mL、500mLなどで提供することができる。そのようなユニ
ットは、指定された数の細胞、例えば、1ミリリットル当たり1×104、5×104、1×105、5
×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108個、もしくはそれより多くの
細胞、又は1ユニット当たり1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107
、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、もしくは
それより多くの細胞の、例えば、TSNK細胞のみ、又は他のNK細胞もしくは灌流液細胞と組
み合わせたTSNK細胞を含むように提供することができる。具体的な実施態様では、該ユニ
ットは、1ミリリットル当たり約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×104、5×104、1
×105、5×105、1×106、5×106個、もしくはそれより多くのTSNK細胞、又は1ユニット当
たり約、少なくとも約、もしくは多くとも約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106
5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×101
1個、もしくはそれより多くの細胞を含むことができる。そのようなユニットは、指定さ
れた数のTSNK細胞、及び/又は他の細胞のうちのいずれかを含むように提供することがで
きる。
【0145】
上記の実施態様では、TSNK細胞、又はTSNK細胞と他のNK細胞、灌流液細胞、もしくは灌
流液との組合せは、レシピエントにとって自己のもの(すなわち、該レシピエントから得
られたもの)であることができるか、又はレシピエントにとって同種異系(すなわち、少な
くとも1人の該レシピエント以外の他の個体から得られたもの)であることができる。
【0146】
ある実施態様では、各々のユニットの細胞に表示を付けて、容積、細胞の数、細胞のタ
イプ、該ユニットが特定のタイプの細胞について濃縮されているかどうか、及び/又は該
ユニット中の所与の細胞数、もしくは該ユニットの所与のミリリットル数の効力、すなわ
ち、該ユニット中の細胞が、特定のタイプ(単数もしくは複数)の腫瘍細胞の増殖の測定可
能な抑制を引き起こすかどうかを明記する。
【0147】
(6.6.2.TSNK細胞と接着性胎盤幹細胞の組合せ)
他の実施態様では、単独の又は胎盤灌流液もしくは胎盤灌流液細胞と組み合わせたTSNK
細胞に、例えば、その開示がその全体として引用により本明細書中に組み込まれている、
Haririらの米国特許第7,045,148号及び第7,255,879号、並びに米国特許出願公開第2007/0
275362号に記載されているような、単離された接着性胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞及び
胎盤寡能性細胞を補充する。「接着性胎盤細胞」は、該細胞が、組織培養物表面、例えば
、組織培養プラスチックに接着することを意味する。本明細書に開示された組成物及び方
法において有用な接着性胎盤細胞は、栄養芽細胞でも、胚性生殖細胞でも、胚性幹細胞で
もない。ある実施態様では、接着性胎盤幹細胞を、上記のようなプロセス(例えば、二工
程方法)でフィーダー細胞として用いる。
【0148】
単独の又は胎盤灌流液もしくは胎盤灌流液細胞と組み合わせたTSNK細胞に、例えば、1
ミリリットル当たり1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107
、1×108、5×108個、もしくはそれより多くの接着性胎盤細胞、又は1×104、5×104、1
×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1
×1010、5×1010、1×1011個、もしくはそれより多くの接着性胎盤細胞を補充することが
できる。該組合せ中の接着性胎盤細胞は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12
、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、もしくは40回の集団倍加、又
はそれより長い間、培養された、例えば、接着性胎盤細胞であることができる。
【0149】
単離された接着性胎盤細胞は、初代培養で培養するか又は細胞培養で拡大したとき、組
織培養基材、例えば、組織培養容器表面(例えば、組織培養プラスチック)に接着する。培
養下の接着性胎盤細胞は、通常、線維芽細胞のような星状の外観をしており、いくつかの
細胞質突起が中央の細胞体から伸びている。しかしながら、接着性胎盤細胞は、線維芽細
胞が示すよりも多くのそのような突起を示すので、接着性胎盤細胞は、同じ条件下で培養
された線維芽細胞と形態的に区別することができる。形態的には、接着性胎盤細胞は、造
血幹細胞からも区別することができ、造血幹細胞は、通常、培養下では、より丸みを帯び
た、又は敷石状の形態をとる。
【0150】
本明細書で提供される組成物及び方法において有用な、単離された接着性胎盤細胞、及
び接着性胎盤細胞の集団は、該接着性胎盤細胞を含む細胞、又は該接着性胎盤細胞を含む
細胞の集団を同定及び/又は単離するために用いることができる複数のマーカーを発現す
る。本明細書で提供される組成物及び方法において有用な、接着性胎盤細胞、及び接着性
胎盤細胞集団には、胎盤、又は任意のその部分(例えば、羊膜、絨毛膜、羊膜-絨毛膜板、
胎盤葉、臍帯など)から直接的に得られる接着性胎盤細胞及び接着性胎盤細胞含有細胞集
団が含まれる。接着性胎盤幹細胞集団は、一実施態様では、培養下の接着性胎盤幹細胞の
集団(すなわち、2個以上の接着性胎盤幹細胞)、例えば、容器、例えば、バッグの中の集
団である。
【0151】
接着性胎盤細胞は、通常、マーカーCD73、CD105、及びCD200、並びに/又はOCT-4を発現
し、かつCD34も、CD38も、CD45も発現しない。接着性胎盤幹細胞は、HLA-ABC(MHC-1)及び
HLA-DRを発現することもできる。これらのマーカーを用いて、接着性胎盤細胞を同定し、
かつ該接着性胎盤細胞を他の細胞型と区別することができる。接着性胎盤細胞は、CD73及
びCD105を発現することができるので、それらは、間葉系幹細胞様の特徴を有することが
できる。CD34、CD38、及び/又はCD45の発現の欠如により、接着性胎盤幹細胞は非造血幹
細胞とみなされる。
【0152】
ある実施態様では、本明細書に記載の単離された接着性胎盤細胞は、癌細胞増殖又は腫
瘍成長を検出可能な程度に抑制する。
【0153】
ある実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、単離された胎盤幹細胞である。ある
他の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、単離された胎盤寡能性細胞である。具
体的な実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、フローサイトメトリーで検出した場
合、CD34-、CD10+、及びCD105+である。より具体的な実施態様では、該単離されたCD34-
、CD10+、CD105+接着性胎盤細胞は、胎盤幹細胞である。別のより具体的な実施態様では
、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は、寡能性接着性胎盤細胞である。別の具
体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は、神経表現型の細胞
、骨形成表現型の細胞、又は軟骨形成表現型の細胞に分化する潜在能力を有する。より具
体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+接着性胎盤細胞は更に、CD200+
である。別のより具体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+接着性胎盤
細胞は更に、フローサイトメトリーで検出した場合、CD90+又はCD45-である。別のより具
体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+接着性胎盤細胞は更に、フロー
サイトメトリーで検出した場合、CD90+又はCD45-である。より具体的な実施態様では、該
CD34-、CD10+、CD105+、CD200+接着性胎盤細胞は更に、フローサイトメトリーで検出した
場合、CD90+又はCD45-である。別のより具体的な実施態様では、該CD34-、CD10+、CD105+
、CD200+接着性胎盤細胞は、フローサイトメトリーで検出した場合、CD90+及びCD45-であ
る。別のより具体的な実施態様では、該CD34-、CD10+、CD105+、CD200+、CD90+、CD45-
着性胎盤細胞は更に、フローサイトメトリーで検出した場合、CD80-及びCD86-である。
【0154】
一実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD200+、HLA-G+である。具体的な実施
態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD73+及びCD105+である。別の具体的な
実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、又はCD45-である。
より具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、CD45-
、CD73+、及びCD105+である。別の実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞は、胚様
体様体の形成を可能にする条件下で培養したときに、1以上の胚様体様体を産生する。
【0155】
別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD73+、CD105+、CD200+である。該
集団の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、HLA-G+である。別の
具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、又はCD45-
である。別の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-
、及びCD45-である。より具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、C
D34-、CD38-、CD45-、及びHLA-G+である。別の具体的な実施態様では、該単離された接着
性胎盤細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したときに、1以上の胚様体
様体を産生する。
【0156】
別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD200+、OCT-4+である。具体的な実
施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD73+及びCD105+である。別の具体的
な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、HLA-G+である。別の具体的な実施
態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、及びCD45-である。より
具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、CD45-、CD7
3+、CD105+、及びHLA-G+である。別の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細
胞はまた、胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したときに、1以上の胚様体様体
を産生する。
【0157】
別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD73+、CD105+、及びHLA-G+である
。具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、又はCD45
-である。別の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38
-、及びCD45-である。別の具体的な実施態様では、該接着性幹細胞はまた、OCT-4+である
。別の具体的な実施態様では、該接着性幹細胞はまた、CD200+である。より具体的な実施
態様では、該接着性幹細胞はまた、CD34-、CD38-、CD45-、OCT-4+、及びCD200+である。
【0158】
別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD73+、CD105+幹細胞であり、ここ
で、該細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で1以上の胚様体様体を産生する。
具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、又はCD45-
である。別の具体的な実施態様では、単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-
及びCD45-である。別の具体的な実施態様では、単離された接着性胎盤細胞はまた、OCT-4
+である。より具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、OCT-4+、CD3
4-、CD38-、及びCD45-である。
【0159】
別の実施態様では、接着性胎盤幹細胞は、OCT-4+幹細胞であり、ここで、該接着性胎盤
幹細胞は、胚様体様体の形成を可能にする条件下で1以上の胚様体様体を産生し、かつ該
幹細胞は、癌細胞増殖又は腫瘍成長を検出可能な程度に抑制するとみなされている。
【0160】
様々な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞の少なくとも10%、少なくとも20%
、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%
、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%は、OCT-4+である。上記の集団
の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD73+及びCD105+である
。別の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD34-、CD38-、又は
CD45-である。別の具体的な実施態様では、該幹細胞はCD200+である。より具体的な実施
態様では、該単離された接着性胎盤細胞はまた、CD73+、CD105+、CD200+、CD34-、CD38-
、及びCD45-である。別の具体的な実施態様では、該単離された接着性胎盤細胞は、拡大
されたもの、例えば、少なくとも1回、少なくとも3回、少なくとも5回、少なくとも10回
、少なくとも15回、又は少なくとも20回継代されたものである。
【0161】
上記の実施態様のいずれかのより具体的な実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は
、ABC-p(胎盤特異的ABC輸送体タンパク質;例えば、Allikmetsらの文献(Cancer Res. 58(2
3):5337-9(1998))を参照されたい)を発現する。
【0162】
別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、CD29+、CD44+、CD73+、CD90+、CD10
5+、CD200+、CD34-、及びCD133-である。別の実施態様では、単離された接着性胎盤細胞
は、IL-6、IL-8、及び単球走化性タンパク質(MCP-1)を構成的に分泌する。
【0163】
上で参照されている単離された接着性胎盤細胞の各々は、哺乳動物胎盤から直接得られ
、単離された細胞、又は培養され、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14
、16、18、20、25、30回、もしくはそれより多くの回数、継代された細胞、又はそれらの
組合せを含むことができる。腫瘍細胞抑制性の複数の上記の単離された接着性胎盤細胞は
、約、少なくとも、又は高々1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108
、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、又はそれより多くの単離さ
れた接着性胎盤細胞を含むことができる。
【0164】
(6.6.3.接着性胎盤細胞馴化培地を含む組成物)
TSNK細胞及び更に馴化培地を含む組成物であって、腫瘍抑制性であるか、又は癌もしく
はウイルス感染の治療において効果がある、組成物の使用も本明細書で提供される。上の
第6.6.2節に記載されているような接着性胎盤細胞を用いて、腫瘍細胞抑制性、抗癌性、
又は抗ウイルス性である馴化培地、すなわち、検出可能な腫瘍細胞抑制効果、抗癌効果、
又は抗ウイルス効果を有する細胞によって分泌又は排出される1以上の生体分子を含む培
地を産生することができる。様々な実施態様では、馴化培地は、該細胞が、少なくとも1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14日、又はそれより長い間、その中で増殖
した(すなわち、培養された)培地を含む。他の実施態様では、馴化培地は、そのような細
胞が、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%コンフルエンス、又は100
%コンフルエンスにまでその中で成長した培地を含む。そのような馴化培地を用いて、細
胞、例えば、胎盤細胞、又は別の種類の細胞の別々の集団の培養を支援することができる
。別の実施態様では、本明細書で提供される馴化培地は、単離された接着性胎盤細胞、例
えば、単離された接着性胎盤幹細胞又は単離された接着性胎盤寡能性細胞、及び単離され
た接着性胎盤細胞以外の細胞、例えば、非胎盤幹細胞又は寡能性細胞がその中で培養され
た培地を含む。
【0165】
そのような馴化培地を、TSNK細胞、胎盤灌流液、胎盤灌流液細胞のいずれか、又はTSNK
細胞、胎盤灌流液、胎盤灌流液細胞の任意の組合せと組み合わせて、腫瘍細胞抑制性、抗
癌性、又は抗ウイルス性である組成物を形成させることができる。ある実施態様では、該
組成物は、容積で半分未満の、例えば、容積で約50%、45%、40%、35%、30%、25%、
20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%、又は約50%、45%、40%、35%
、30%、25%、20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%未満の馴化培地を
含む。
【0166】
従って、一実施態様では、TSNK細胞及び単離された接着性胎盤細胞の培養物由来の培養
培地を含む組成物であって、該単離された接着性胎盤細胞が、(a)基材に接着し;かつ(b)C
D34-、CD10+、及びCD105+であり;腫瘍細胞の成長もしくは増殖を検出可能な程度に抑制す
るか、又は抗癌性もしくは抗ウイルス性である、組成物が本明細書で提供される。具体的
な実施態様では、単離された接着性胎盤細胞は、フローサイトメトリーで検出した場合、
CD34-、CD10+、及びCD105+である。より具体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD1
0+、CD105+接着性胎盤細胞は、胎盤幹細胞である。別のより具体的な実施態様では、該単
離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は、寡能性接着性胎盤細胞である。別の具体的な
実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は、神経表現型の細胞、骨形
成表現型の細胞、又は軟骨形成表現型の細胞に分化する潜在能力を有する。より具体的な
実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+ 接着性胎盤細胞は更に、CD200+であ
る。別のより具体的な実施態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は更に
、フローサイトメトリーで検出した場合、CD90+又はCD45-である。別のより具体的な実施
態様では、該単離されたCD34-、CD10+、CD105+胎盤細胞は更に、フローサイトメトリーで
検出した場合、CD90+又はCD45-である。より具体的な実施態様では、該CD34-、CD10+、CD
105+、CD200+接着性胎盤細胞は更に、フローサイトメトリーで検出した場合、CD90+又はC
D45-である。別のより具体的な実施態様では、該CD34-、CD10+、CD105+、CD200+接着性胎
盤細胞は更に、フローサイトメトリーで検出した場合、CD90+及びCD45-である。別のより
具体的な実施態様では、該CD34-、CD10+、CD105+、CD200+、CD90+、CD45-接着性胎盤細胞
は更に、フローサイトメトリーで検出した場合、CD80-及びCD86-である。
【0167】
別の実施態様では、TSNK細胞及び単離された接着性胎盤細胞の培養物由来の培養培地を
含む組成物であって、該単離された接着性胎盤細胞が、(a)基材に接着し;かつ(b)CD200及
びHLA-Gを発現するか、又はCD73、CD105、及びCD200を発現するか、又はCD200及びOCT-4
を発現するか、又はCD73、CD105、及びHLA-Gを発現するか、又はCD73及びCD105を発現し
、かつ胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養し
たときに、該集団内の1以上の胚様体様体の形成を促進するか、又はOCT-4を発現し、かつ
胎盤幹細胞を含む胎盤細胞の集団を胚様体様体の形成を可能にする条件下で培養したとき
に、該集団内の1以上の胚様体様体の形成を促進し;腫瘍細胞の成長もしくは増殖を検出可
能な程度に抑制するか、又は抗癌性もしくは抗ウイルス性である、組成物が本明細書で提
供される。具体的な実施態様では、該組成物は更に、複数の該単離された胎盤接着性細胞
を含む。別の具体的な実施態様では、該組成物は、複数の非胎盤細胞を含む。より具体的
な実施態様では、該非胎盤細胞はCD34+細胞、例えば、造血前駆細胞、例えば、末梢血造
血前駆細胞、臍帯血造血前駆細胞、又は胎盤血造血前駆細胞を含む。該非胎盤細胞は、幹
細胞、例えば、間葉系幹細胞、例えば、骨髄由来間葉系幹細胞を含むこともできる。該非
胎盤細胞は、1種類以上の成体細胞又は細胞株であることもできる。別の具体的な実施態
様では、該組成物は、抗増殖剤、例えば、抗MIP-1α又は抗MIP-1β抗体を含む。
【0168】
具体的な実施態様では、上記の細胞又は細胞組合せのうちの1つによって馴化された培
養培地は、約1:1、約2:1、約3:1、約4:1、又は約5:1の単離された接着性胎盤細胞対腫瘍
細胞の比率で複数の腫瘍細胞と共培養した複数の単離された接着性胎盤細胞から得られる
。例えば、馴化された培養培地又は上清は、約1×105個の単離された接着性胎盤細胞、約
1×106個の単離された接着性胎盤細胞、約1×107個の単離された接着性胎盤細胞、もしく
は約1×108個の単離された接着性胎盤細胞、又はそれより多くのものを含む培養物から得
ることができる。別の具体的な実施態様では、馴化された培養培地又は上清は、約1×105
~約5×105個の単離された接着性胎盤細胞及び約1×105個の腫瘍細胞;約1×106~約5×10
6個の単離された接着性胎盤細胞及び約1×106個の腫瘍細胞;約1×107~約5×107個の単離
された接着性胎盤細胞及び約1×107個の腫瘍細胞;又は約1×108~約5×108個の単離され
た接着性胎盤細胞及び約1×108個の腫瘍細胞を含む共培養物から得られる。
【0169】
(6.7.細胞の保存)
細胞、例えば、TSNK細胞、又は造血幹細胞もしくは前駆細胞を含む胎盤灌流液細胞を保
存する、すなわち、長期保存を可能にする条件下、又は例えば、アポトーシスもしくは壊
死による細胞死を阻害する条件下に置くことができる。
【0170】
胎盤灌流液は、細胞回収組成物を、胎盤の少なくとも一部に、例えば、胎盤血管系に通
すことによって産生することができる。細胞回収組成物は、灌流液内に含まれている細胞
を保存するように作用する1以上の化合物を含む。そのような胎盤細胞回収組成物は、そ
の開示がその全体として引用により本明細書中に組み込まれている、関連米国特許出願公
開第20070190042号に記載されているような、アポトーシス阻害剤、壊死阻害剤、及び/又
は酸素担持ペルフルオロカーボンを含むことができる。
【0171】
一実施態様では、灌流液又は胎盤細胞の集団は、該灌流液又は該細胞の集団を、アポト
ーシスの阻害剤及び酸素担持ペルフルオロカーボンを含む細胞回収組成物と接触させるこ
とにより、哺乳動物、例えば、ヒトの分娩後胎盤から回収され、ここで、該アポトーシス
の阻害剤は、該アポトーシスの阻害剤と接触させていない細胞の集団と比較して、胎盤細
胞、例えば、接着性胎盤細胞、例えば、胎盤幹細胞又は胎盤寡能性細胞の集団におけるア
ポトーシスを低下させるか又は防止するのに十分な量及び時間で存在する。例えば、該胎
盤を該細胞回収組成物で灌流することができ、胎盤細胞、例えば、全有核胎盤細胞をそれ
から単離する。具体的な実施態様では、該アポトーシスの阻害剤は、カスパーゼ阻害剤で
ある。別の具体的な実施態様では、該アポトーシスの阻害剤は、JNK阻害剤である。より
具体的な実施態様では、該JNK阻害剤は、接着性胎盤細胞、例えば、接着性胎盤幹細胞又
は接着性胎盤寡能性細胞の分化も増殖も調節しない。別の実施態様では、該細胞回収組成
物は、分離相中に該アポトーシスの阻害剤及び該酸素担持ペルフルオロカーボンを含む。
別の実施態様では、該細胞回収組成物は、エマルジョン中に該アポトーシスの阻害剤及び
該酸素担持ペルフルオロカーボンを含む。別の実施態様では、該細胞回収組成物は更に、
乳化剤、例えば、レシチンを含む。別の実施態様では、該アポトーシス阻害剤及び該ペル
フルオロカーボンは、該胎盤細胞と接触させるときに、約0℃~約25℃である。別のより
具体的な実施態様では、該アポトーシス阻害剤及び該ペルフルオロカーボンは、該胎盤細
胞と接触させるときに、約2℃~10℃、又は約2℃~約5℃である。別のより具体的な実施
態様では、該接触させることは、該細胞の集団の輸送の間に行なわれる。別のより具体的
な実施態様では、該接触させることは、該細胞の集団の凍結及び解凍の間に行なわれる。
【0172】
別の実施態様では、胎盤灌流液及び/又は胎盤細胞を、該灌流液及び/又は細胞をアポト
ーシスの阻害剤及び臓器保存化合物と接触させる方法によって回収及び保存することがで
き、ここで、該アポトーシスの阻害剤は、該アポトーシスの阻害剤と接触させていない灌
流液又は胎盤細胞と比較したとき、該細胞のアポトーシスを低下させるか又は防止するの
に十分な量及び時間で存在する。具体的な実施態様では、臓器保存化合物は、UW溶液(米
国特許第4,798,824号に記載されており;VIASPAN(商標)としても知られているもの;South
ardらの文献(Transplantation 49(2):251-257(1990))も参照されたい)、又はSternらの米
国特許第5,552,267号に記載されている溶液であり、これらの文献の開示は、その全体が
引用により本明細書中に組み込まれる。別の実施態様では、該臓器保存化合物は、ヒドロ
キシエチルスターチ、ラクトビオン酸、ラフィノース、又はそれらの組合せである。別の
実施態様では、胎盤細胞回収組成物は更に、2相状態にあるか又はエマルジョンとしてか
のいずれかの、酸素担持ペルフルオロカーボンを含む。
【0173】
本方法の別の実施態様では、胎盤細胞を、灌流の間、アポトーシス阻害剤及び酸素担持
ペルフルオロカーボン、臓器保存化合物、又はそれらの組合せを含む細胞回収組成物と接
触させる。別の実施態様では、胎盤細胞を、灌流による回収の後に、該細胞回収化合物と
接触させる。
【0174】
通常、胎盤細胞の回収、濃縮、及び単離時に、低酸素及び機械的ストレスによる細胞ス
トレスを最小限に抑えるか、又はそれらを排除することが好ましい。本方法の別の実施態
様では、それゆえ、胎盤灌流液、又は胎盤細胞の集団は、回収、濃縮、又は単離時に、該
保存時に6時間未満の間、低酸素状態に曝され、ここで、低酸素状態は、正常な血中酸素
濃度を下回る酸素濃度である。より具体的な実施態様では、該灌流液又は胎盤細胞の集団
は、該保存時に2時間未満の間、該低酸素状態に曝される。別のより具体的な実施態様で
は、該胎盤細胞の集団は、回収、濃縮、又は単離時に、1時間未満、もしくは30分未満の
間、該低酸素状態に曝されるか、又は低酸素状態に曝されない。別の具体的な実施態様で
は、該胎盤細胞の集団は、回収、濃縮、又は単離時に、剪断ストレスに曝されない。
【0175】
細胞、例えば、胎盤灌流液細胞、造血細胞、例えば、CD34+造血幹細胞;NK細胞、例えば
、TSNK細胞;本明細書で提供される単離された接着性胎盤細胞を、例えば、小型の容器、
例えば、アンプル又はセプタムバイアル中の凍結保存培地に入れて凍結保存することがで
きる。ある実施態様では、本明細書で提供される細胞を、1mL当たり約1×104~5×108
胞の濃度で凍結保存する。具体的な実施態様では、本明細書で提供される細胞を、1mL当
たり約1×106~1.5×107細胞の濃度で凍結保存する。より具体的な実施態様では、本明細
書で提供される細胞を、1mL当たり約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106
、1×107、1.5×107細胞の濃度で凍結保存する。
【0176】
好適な凍結保存培地としては、生理食塩水、例えば、成長培地を含む培養培地、又は細
胞凍結培地、例えば、市販の細胞凍結培地、例えば、C2695、C2639、もしくはC6039(Sigm
a);CryoStor(登録商標)CS2、CryoStor(登録商標)CS5、もしくはCryoStor(登録商標)CS10(
BioLife Solutions)が挙げられるが、これらに限定されない。凍結保存培地は、好ましく
は、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10%(v/v)の濃度のDMSO(ジメチルスル
ホキシド)を含む。凍結保存培地は、追加の薬剤、例えば、メチルセルロース、デキスト
ラン、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)、トレハロース、及び/又はグリセロー
ルを含んでいてもよい。ある実施態様では、凍結保存培地は、約1%~10%のDMSO、約25
%~75%のデキストラン、及び/又は約20~60%のヒト血清アルブミン(HSA)を含む。ある
実施態様では、凍結保存培地は、約1%~10%のDMSO、約25%~75%のトレハロース、及
び/又は約20~60%のヒトHSAを含む。具体的な実施態様では、凍結保存培地は、5%のDMS
O、55%のデキストラン、及び40%のHSAを含む。より具体的な実施態様では、凍結保存培
地は、5%のDMSO、55%のデキストラン(生理食塩水中、10%w/v)、及び40%のHSAを含む
。別の具体的な実施態様では、凍結保存培地は、5%のDMSO、55%のトレハロース、及び4
0%のHSAを含む。より具体的な実施態様では、凍結保存培地は、5%のDMSO、55%のトレ
ハロース(生理食塩水中、10%w/v)、及び40%のHSAを含む。別の具体的な実施態様では、
凍結保存培地は、CryoStor(登録商標)CS5を含む。別の具体的な実施態様では、凍結保存
培地は、CryoStor(登録商標)CS10を含む。
【0177】
本明細書で提供される細胞は、種々の方法のいずれかによって、かつ細胞の培養、拡大
、又は分化のいずれかの段階で凍結保存することができる。例えば、本明細書で提供され
る細胞は、もとの組織もしくは器官、例えば、胎盤灌流液もしくは臍帯血から単離した直
後、又は上で概説した方法の第一の工程もしくは第二の工程のいずれかにおいて、又は該
第一の工程もしくは第二の工程のいずれかの後に、凍結保存することができる。ある実施
態様では、造血細胞、例えば、造血幹細胞又は前駆細胞は、該もとの組織もしくは器官か
らの単離後、約1、5、10、15、20、30、45分以内に、又は約1、2、4、6、10、12、18、20
、もしくは24時間以内に凍結保存される。ある実施態様では、該細胞は、該もとの組織も
しくは器官からの単離後、1、2、又は3日以内に凍結保存される。ある実施態様では、該
細胞は、上の第6.2.1節に記載されているように、第一の培地中で培養された後、約1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、又は28日間、凍結保存される。いくつかの実施態様では、該細胞は、上
の第6.2.1節に記載されているように、第一の培地中で培養された後、約1、2、3、4、5、
6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、
27、又は28日間、及び上の第6.2.1節に記載されているように、第二の培地中で、約1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、又は28日間、凍結保存される。
【0178】
一態様では、NK細胞、例えば、TSNK細胞の集団を凍結保存する方法が本明細書で提供さ
れる。一実施態様では、該方法は:(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡
大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞が
NK細胞に分化するように、インターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)
及びインターロイキン-7(IL-7)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意
のSCF及びIL-7が該培地の不確定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種する
こと;(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して
、活性化NK細胞の集団を産生すること、並びに(c)工程(b)由来のNK細胞を凍結保存培地中
で凍結保存することを含む。具体的な実施態様では、該工程(c)は更に、(1)細胞懸濁溶液
を調製すること;(2)凍結保存培地を工程(1)由来の細胞懸濁溶液に添加して、凍結保存細
胞懸濁液を得ること;(3)工程(3)由来の凍結保存細胞懸濁液を冷却して、凍結保存試料を
得ること;及び(4)該凍結保存試料を-80℃未満で保存することを含む。ある実施態様では
、該方法は、工程(a)と(b)の間、及び工程(b)と(c)の間の中間工程を含まず、かつ/又は
工程(a)の前の追加の培養工程を含まない。
【0179】
別の実施態様では、NK細胞、例えば、TSNK細胞の集団を凍結保存する該方法は:(a)幹細
胞因子(SCF)、IL-2、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、及びヘ
パリンのうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡
大すること、ここで、該SCF、IL-2、IL-7、及びIL-15は該培地の不確定成分に含まれず、
かつここで、該拡大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細
胞又は前駆細胞はNK細胞に分化する;(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)
を含む第二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を産生すること;並びに(c)工程(b)由来のN
K細胞を凍結保存培地中で凍結保存することを含む。具体的な実施態様では、該工程(c)は
更に、(1)細胞懸濁溶液を調製すること;(2)凍結保存培地を工程(1)由来の細胞懸濁溶液に
添加して、凍結保存細胞懸濁液を得ること;(3)工程(3)由来の凍結保存細胞懸濁液を冷却
して、凍結保存試料を得ること;及び(4)該凍結保存試料を-80℃未満で保存することを含
む。ある実施態様では、該方法は、工程(a)と(b)の間、及び工程(b)と(c)の間の中間工程
を含まない。
【0180】
本明細書で提供される細胞を、速度制御フリーザーで、例えば、凍結保存時に、約0.1
、0.3、0.5、又は1℃/分で冷却することが好ましい。好ましい凍結保存温度は、約-80℃
~約-180℃、好ましくは約-125℃~約-140℃である。凍結保存した細胞を液体窒素に移し
た後、使用のために解凍することができる。いくつかの実施態様では、例えば、アンプル
が約-90℃に達したら、それを液体窒素保存領域に移す。凍結保存した細胞を、約25℃~
約40℃の温度で、好ましくは約37℃の温度にして解凍することが好ましい。ある実施態様
では、凍結保存した細胞を、約1、2、4、6、10、12、18、20、もしくは24時間、又は約1
、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23
、24、25、26、27、もしくは28日間凍結保存した後に解凍する。ある実施態様では、凍結
保存した細胞を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18
、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28カ月間凍結保存した後に解凍する。ある
実施態様では、凍結保存した細胞を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10年間凍結保
存した後に解凍する。
【0181】
好適な解凍培地としては、生理食塩水、例えば、成長培地、例えば、RPMI培地を含む、
プラズマライト(plasmalyte)培養培地が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい
実施態様では、解凍培地は、培地添加物(例えば、栄養素、サイトカイン、及び/又は因子
)のうちの1つ又は複数を含む。本明細書で提供される細胞を解凍するのに好適な培地添加
物としては、例えば、限定するものではないが、血清、例えば、ヒト血清AB、胎仔ウシ血
清(fetal bovine serum)(FBS)、もしくは胎仔ウシ血清(fetal calf serum)(FCS)、ビタミ
ン、ヒト血清アルブミン(HSA)、ウシ血清アルブミン(BSA)、アミノ酸(例えば、L-グルタ
ミン)、脂肪酸(例えば、オレイン酸、リノール酸、もしくはパルミチン酸)、インスリン(
例えば、組換えヒトインスリン)、トランスフェリン(鉄飽和ヒトトランスフェリン)、β-
メルカプトエタノール、幹細胞因子(SCF)、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、
サイトカイン、例えば、インターロイキン-2(IL-2)、インターロイキン-7(IL-7)、インタ
ーロイキン-15(IL-15)、トロンボポエチン(Tpo)、又はヘパリンが挙げられる。具体的な
実施態様では、本明細書で提供される方法において有用な解凍培地は、RPMIを含む。別の
具体的な実施態様では、該解凍培地は、プラズマライトを含む。別の具体的な実施態様で
は、該解凍培地は、約0.5~20%のFBSを含む。別の具体的な実施態様では、該解凍培地は
、約1、2、5、10、15、又は20%のFBSを含む。別の具体的な実施態様では、該解凍培地は
、約0.5%~20%のHSAを含む。別の具体的な実施態様では、該解凍培地は、約1、2.5、5
、10、15、又は20%のHSAを含む。より具体的な実施態様では、該解凍培地は、RPMI及び
約10%のFBSを含む。別のより具体的な実施態様では、該解凍培地は、プラズマライト及
び約5%のHSAを含む。
【0182】
本明細書で提供される凍結保存法を、長期保存を可能にするか、又は例えば、アポトー
シスもしくは壊死による細胞死を阻害する条件下となるように最適化することができる。
一実施態様では、解凍後細胞は、例えば、自動細胞カウンター又はトリパンブルー法で測
定した場合に、生細胞の60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は98%超
を含む。別の実施態様では、解凍後細胞は、死細胞の約0.5、1、5、10、15、20、又は25
%を含む。別の実施態様では、解凍後細胞は、初期アポトーシス細胞の約0.5、1、5、10
、15、20、又は25%を含む。別の実施態様では、解凍後細胞の約0.5、1、5、10、15、又
は20%は、例えば、アポトーシスアッセイ(例えば、TO-PRO3又はAnnV/PIアポトーシスア
ッセイキット)で測定した場合、解凍されてから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12
、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、又は28日後に、アポ
トーシスを経る。ある実施態様では、解凍後細胞を、本明細書で提供される方法を用いて
、培養するか、拡大するか、又は分化させた後に、再び凍結保存する。
【0183】
(6.8.TSNK細胞の使用)
本明細書で提供されるTSNK細胞は、癌を有する個体、例えば、固形腫瘍細胞及び/もし
くは血液癌細胞を有する個体、又はウイルス感染を有する人を治療する方法で用いること
ができる。本明細書で提供されるTSNK細胞は、腫瘍細胞の増殖を抑制する方法で用いるこ
ともできる。
【0184】
(6.8.1. 癌を有する個体の治療)
一実施態様では、癌、例えば、血液癌又は固形腫瘍を有する個体を治療する方法であっ
て、該個体に、治療的有効量のTSNK細胞を投与することを含む、方法が本明細書で提供さ
れる。ある実施態様では、該個体は、ナチュラルキラー細胞の欠損、例えば、該個体の癌
に対して活性があるNK細胞の欠損を有する。具体的な実施態様では、該方法は更に、該個
体に、単離された胎盤灌流液又は単離された胎盤灌流液細胞、例えば、治療的有効量の胎
盤灌流液又は単離された胎盤灌流液細胞を投与することを含む。別の具体的な実施態様で
は、該方法は更に、該個体に、有効量の免疫調節化合物、例えば、上の第6.2.1節に記載
の免疫調節化合物、又はサリドマイドを投与することを含む。本明細書で使用されるよう
に、「有効量」は、例えば、該個体が罹患している癌の1以上の症状の検出可能な改善、
該症状の進行の軽減、又は該症状の消失をもたらす量である。
【0185】
具体的な実施態様では、癌は、血液癌、例えば、白血病又はリンパ腫である。より具体
的な実施態様では、癌は、急性白血病、例えば、急性T細胞白血病、急性骨髄性白血病(AM
L)、急性前骨髄球性白血病、急性骨髄芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、前駆B急性
リンパ芽球性白血病、前駆T急性リンパ芽球性白血病、バーキット白血病(バーキットリン
パ腫)、もしくは急性混合型白血病;慢性白血病、例えば、慢性骨髄リンパ腫、慢性骨髄性
白血病(CML)、慢性単球性白血病、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫、
もしくはB細胞前リンパ球性白血病;有毛細胞リンパ腫;T細胞前リンパ球性白血病;又はリ
ンパ腫、例えば、組織球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫(例えば、ワルデンシュ
トレームマクログロブリン血症)、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞新生物(例えば、形質細胞
性骨髄腫、形質細胞腫、単クローン性免疫グロブリン沈着症、もしくは重鎖病)、節外辺
縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)、節辺縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)、濾胞性リンパ腫、マ
ントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ
腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出液リンパ腫、T細胞大型顆粒リンパ球性白
血病、侵攻性NK細胞白血病、成人T細胞白血病/リンパ腫、鼻型の節外NK/T細胞リンパ腫、
腸症型T細胞リンパ腫、肝脾T細胞リンパ腫、芽球性NK細胞リンパ腫、菌状息肉腫(セザリ
ー症候群)、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性障害(例えば、原発性皮膚未分化大細
胞リンパ腫もしくはリンパ腫様丘疹症)、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、非特定型の末梢
T細胞リンパ腫、未分化大細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、もしくは結節性リンパ球優
位型ホジキンリンパ腫である。別の具体的な実施態様では、癌は、多発性骨髄腫又は骨髄
異形成症候群である。
【0186】
ある他の具体的な実施態様では、癌は、固形腫瘍、例えば、癌、例えば、腺癌、副腎皮
質癌、結腸腺癌、結腸直腸腺癌、結腸直腸癌、腺管癌、肺癌、甲状腺癌、上咽頭癌、黒色
腫(例えば、悪性黒色腫)、非黒色腫皮膚癌、又は詳細不明の癌;類腱腫;線維形成性小円形
細胞腫瘍;内分泌腫瘍;ユーイング肉腫;胚細胞腫瘍(例えば、精巣癌、卵巣癌、絨毛癌、内
胚葉洞腫瘍、胚細胞腫など);肝芽腫;肝細胞癌;神経芽腫;非横紋筋肉腫軟部組織肉腫;骨肉
腫;網膜芽腫;横紋筋肉腫;又はウィルムス腫瘍である。別の実施態様では、固形腫瘍は、
膵癌又は乳癌である。他の実施態様では、固形腫瘍は、聴神経腫;星状細胞腫(例えば、グ
レードIの毛様細胞性星状細胞腫、グレードIIの低悪性度星状細胞腫;グレードIIIの未分
化星状細胞腫;もしくはグレードIVの多形性膠芽腫);脊索腫;頭蓋咽頭腫;神経膠腫(例えば
、脳幹神経膠腫;上衣腫;混合性神経膠腫;視神経神経膠腫;もしくは上衣下腫);膠芽腫;髄
芽腫;髄膜腫;転移性脳腫瘍;乏突起膠腫;松果体芽腫;下垂体部腫瘍;未分化神経外胚葉性腫
瘍;又は神経鞘腫である。別の実施態様では、癌は前立腺癌である。
【0187】
ある実施態様では、癌、例えば、血液癌又は固形腫瘍を有する個体、例えば、ナチュラ
ルキラー細胞の欠損を有する個体は、該投与することの前に骨髄移植を受けた個体である
。ある実施態様では、該骨髄移植は、該癌の治療でのものであった。ある他の実施態様で
は、該骨髄移植は、該癌以外の状態の治療でのものであった。ある実施態様では、個体は
、該骨髄移植に加えて、免疫抑制剤を受容した。ある実施態様では、骨髄移植を受けた個
体は、該投与のときに、移植片対宿主病(GVHD)の1以上の症状を示している。ある他の実
施態様では、骨髄移植を受けた個体に、移植片対宿主病(GVHD)の症状が現われる前に、該
細胞を投与する。
【0188】
ある具体的な実施態様では、癌、例えば、血液癌を有する個体は、該投与することの前
に、少なくとも1用量のTNFα阻害剤、例えば、ETANERCEPT(登録商標)(Enbrel)を受容した
。具体的な実施態様では、該個体は、該癌の診断から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、1
1、又は12カ月以内に、該用量のTNFα阻害剤を受容した。具体的な実施態様では、一定用
量のTNFα阻害剤を受容した個体は、急性骨髄性白血病を示している。より具体的な実施
態様では、一定用量のTNFα阻害剤を受容し、かつ急性骨髄性白血病を示している個体は
更に、血液細胞の第5番染色体の長腕の欠失を示す。別の実施態様では、癌、例えば、血
液癌を有する個体は、フィラデルフィア染色体を示す。
【0189】
ある他の実施態様では、該個体の癌、例えば、血液癌又は固形腫瘍は、1以上の抗癌薬
に不応性である。具体的な実施態様では、癌は、GLEEVEC(登録商標)(メシル酸イマチニブ
)に不応性である。
【0190】
ある実施態様では、該個体の癌、例えば、血液癌は、少なくとも1つの抗癌薬に応答し;
この実施態様では、胎盤灌流液、単離された胎盤灌流液細胞、単離されたナチュラルキラ
ー細胞、例えば、胎盤ナチュラルキラー細胞、例えば、胎盤由来中間ナチュラルキラー細
胞、単離され、組み合わされたナチュラルキラー細胞、及び/又はそれらの組合せ、並び
に任意に免疫調節化合物を、補助治療として又は該抗癌薬との併用療法として追加する。
ある他の実施態様では、癌、例えば、血液癌を有する個体は、少なくとも1つの抗癌薬で
治療されたことがあり、かつ該投与することの前に、再発している。
【0191】
一態様では、多発性骨髄腫を有する個体を治療する方法であって、該個体に、(1)レナ
リドミド;(2)メルファラン;及び(3)拡大されたNK細胞を投与することを含み、ここで、該
NK細胞が、該個体の多発性骨髄腫を治療するのに有効である、方法が本明細書で提供され
る。具体的な実施態様では、該NK細胞は、臍帯血NK細胞、又は臍帯血造血細胞、例えば、
造血幹細胞から産生されるNK細胞である。別の実施態様では、該NK細胞は、NK細胞を産生
するための、例えば、TSNK細胞を産生するための、本明細書に記載の方法のいずれかによ
って産生されたものである。別の実施態様では、該NK細胞は、該投与することの前に拡大
されたものである。別の実施態様では、該レナリドミド、メルファラン、及び/又はNK細
胞は、互いに別々に投与される。多発性骨髄腫を有する個体を治療する方法のある具体的
な実施形態では、該NK細胞は、幹細胞因子(SCF)、IL-2、インターロイキン-7(IL-7)、イ
ンターロイキン-15(IL-15)、及びヘパリンのうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、
造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大すること、ここで、該SCF、IL-2、IL-7、及びIL-15
は該培地の不確定成分に含まれず、かつここで、該拡大することの間に、造血幹細胞又は
前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞はNK細胞に分化する;並びに工程(a)由
来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大すること:を含む、方法
によって産生される。
【0192】
別の態様では、慢性リンパ球性白血病(CLL)を有する個体を治療する方法であって、該
個体に、治療的有効量の(1)レナリドミド;(2)メルファラン;(3)フルダラビン;及び(4)拡
大されたNK細胞、例えば、TSNK細胞を投与することを含み、ここで、該NK細胞が、該個体
で該CLLを治療するのに有効である、方法が本明細書で提供される。具体的な実施態様で
は、該NK細胞は、臍帯血NK細胞、又は臍帯血造血幹細胞から産生されたNK細胞である。別
の実施態様では、該NK細胞は、NK細胞を産生するための、例えば、TSNK細胞を産生するた
めの、本明細書に記載の方法のいずれかによって産生されたものである。上記の方法のい
ずれかの具体的な実施態様では、該NK細胞は、該投与することの前に少なくとも10日間拡
大されたものである。上記の方法のいずれかの具体的な実施態様では、該レナリドミド、
メルファラン、フルダラビン、及び拡大されたNK細胞は、該個体に別々に投与される。CL
Lを有する個体を治療する方法のある具体的な実施形態では、該NK細胞は、幹細胞因子(SC
F)、IL-2、インターロイキン-7(IL-7)、インターロイキン-15(IL-15)、及びヘパリンのう
ちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大すること
、ここで、該SCF、IL-2、IL-7、及びIL-15は該培地の不確定成分に含まれず、かつここで
、該拡大することの間に、造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆
細胞はNK細胞に分化する;並びに工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第
二の培地中で拡大して、活性化NKを産生すること:を含む、方法によって産生される。
【0193】
(6.8.2.腫瘍細胞増殖の抑制)
腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、該腫瘍細胞をTSNK細胞と接触させることを含
む、方法が本明細書で更に提供される。任意に、該腫瘍細胞及び/又はTSNK細胞を、単離
された胎盤灌流液又は単離された胎盤灌流液細胞と接触させる。別の具体的な実施態様で
は、該腫瘍細胞及び/又はTSNK細胞を、該腫瘍細胞の増殖が、TSNK細胞と接触させていな
い同じタイプの腫瘍細胞と比較して、検出可能な程度に低下するように、免疫調節化合物
、例えば、上の第6.2.1節に記載の免疫調節化合物、又はサリドマイドと更に接触させる
。任意に、免疫調節化合物と接触させた腫瘍細胞及び/又はTSNK細胞を、単離された胎盤
灌流液又は単離された胎盤灌流液細胞と接触させる。
【0194】
本明細書で使用されるように、細胞に関連して、「接触させること」は、一実施態様で
は、胎盤灌流液、胎盤灌流液細胞、ナチュラルキラー細胞、例えば、TSNK細胞、及び/又
は単離され、組み合わされたナチュラルキラー細胞と腫瘍細胞との直接的で物理的な、例
えば、細胞間の接触を包含する。別の実施態様では、「接触させること」は、同じ物理的
空間内での存在を包含し、例えば、胎盤灌流液、胎盤灌流液細胞、ナチュラルキラー細胞
、例えば、胎盤中間ナチュラルキラー細胞、及び/又は単離され、組み合わされたナチュ
ラルキラー細胞は、腫瘍細胞と同じ容器、例えば、培養ディッシュ、マルチウェルプレー
ト)に入れられる。別の実施態様では、胎盤灌流液、胎盤灌流液細胞、組み合わされたナ
チュラルキラー細胞、又は胎盤中間ナチュラルキラー細胞と腫瘍細胞とを「接触させるこ
と」は、例えば、該胎盤灌流液、又は細胞、例えば、胎盤灌流液細胞、組み合わされたナ
チュラルキラー細胞、もしくはナチュラルキラー細胞、例えば、胎盤中間ナチュラルキラ
ー細胞を、個体、例えば、腫瘍細胞を含むヒト、例えば、癌患者に注射又は注入すること
によって達成される。免疫調節化合物及び/又はサリドマイドとの関連における「接触さ
せること」は、例えば、細胞と免疫調節化合物及び/又はサリドマイドとを、互いに直接
的に物理的に接触させるか、又は同じ物理的容積(例えば、細胞培養容器もしくは個体)内
に入れることを意味する。
【0195】
具体的な実施態様では、腫瘍細胞は、血液癌細胞、例えば、白血病細胞又はリンパ腫細
胞である。より具体的な実施態様では、癌は、急性白血病、例えば、急性T細胞白血病細
胞、急性骨髄性白血病(AML)細胞、急性前骨髄球性白血病細胞、急性骨髄芽球性白血病細
胞、急性巨核芽球性白血病細胞、前駆B急性リンパ芽球性白血病細胞、前駆T急性リンパ芽
球性白血病細胞、バーキット白血病(バーキットリンパ腫)細胞、もしくは急性混合型白血
病細胞;慢性白血病細胞、例えば、慢性骨髄リンパ腫細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、
慢性単球性白血病細胞、慢性リンパ球性白血病(CLL)/小リンパ球性リンパ腫細胞、もしく
はB細胞前リンパ球性白血病細胞;有毛細胞リンパ腫細胞;T細胞前リンパ球性白血病細胞;
又はリンパ腫細胞、例えば、組織球性リンパ腫細胞、リンパ形質細胞性リンパ腫細胞(例
えば、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症細胞)、脾辺縁帯リンパ腫細胞、形質
細胞新生物細胞(例えば、形質細胞性骨髄腫細胞、形質細胞腫細胞、単クローン性免疫グ
ロブリン沈着症、もしくは重鎖病)、節外辺縁帯B細胞リンパ腫(MALTリンパ腫)細胞、節辺
縁帯B細胞リンパ腫(NMZL)細胞、濾胞性リンパ腫細胞、マントル細胞リンパ腫細胞、びま
ん性大細胞型B細胞リンパ腫細胞、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫細胞、血管内大細胞
型B細胞リンパ腫細胞、原発性滲出液リンパ腫細胞、T細胞大型顆粒リンパ球性白血病細胞
、侵攻性NK細胞白血病細胞、成人T細胞白血病/リンパ腫細胞、節外NK/T細胞リンパ腫-鼻
型細胞、腸症型T細胞リンパ腫細胞、肝脾T細胞リンパ腫細胞、芽球性NK細胞リンパ腫細胞
、菌状息肉腫(セザリー症候群)、原発性皮膚CD30陽性T細胞リンパ増殖性障害(例えば、原
発性皮膚未分化大細胞リンパ腫もしくはリンパ腫様丘疹症)細胞、血管免疫芽球性T細胞リ
ンパ腫細胞、末梢T細胞リンパ腫-非特定型細胞、未分化大細胞リンパ腫細胞、ホジキンリ
ンパ腫細胞もしくは結節性リンパ球優位型ホジキンリンパ腫細胞である。別の具体的な実
施態様では、腫瘍細胞は、多発性骨髄腫細胞又は骨髄異形成症候群細胞である
【0196】
具体的な実施態様では、腫瘍細胞は、固形腫瘍細胞、例えば、癌細胞、例えば、腺癌細
胞、副腎皮質癌細胞、結腸腺癌細胞、結腸直腸腺癌細胞、結腸直腸癌細胞、腺管癌細胞、
肺癌細胞、甲状腺癌細胞、上咽頭癌細胞、黒色腫細胞(例えば、悪性黒色腫細胞)、非黒色
腫皮膚癌細胞、もしくは詳細不明の癌細胞;類腱腫細胞;線維形成性小円形細胞腫瘍細胞;
内分泌腫瘍細胞;ユーイング肉腫細胞;胚細胞腫瘍細胞(例えば、精巣癌細胞、卵巣癌細胞
、絨毛癌細胞、内胚葉洞腫瘍細胞、胚細胞腫細胞など);肝芽腫細胞;肝細胞癌細胞;神経芽
腫細胞;非横紋筋肉腫軟部組織肉腫細胞;骨肉腫細胞;網膜芽腫細胞;横紋筋肉腫細胞;又は
ウィルムス腫瘍細胞である。別の実施態様では、腫瘍細胞は、膵癌細胞又は乳癌細胞であ
る。他の実施態様では、固形腫瘍細胞は、聴神経腫細胞;星状細胞腫細胞(例えば、グレー
ドIの毛様細胞性星状細胞腫細胞、グレードIIの低悪性度星状細胞腫細胞;グレードIIIの
未分化星状細胞腫細胞;もしくはグレードIVの多形性膠芽腫細胞);脊索腫細胞;頭蓋咽頭腫
細胞;神経膠腫細胞(例えば、脳幹神経膠腫細胞;上衣腫細胞;混合性神経膠腫細胞;視神経
神経膠腫細胞;もしくは上衣下腫細胞);膠芽腫細胞;髄芽腫細胞;髄膜腫細胞;転移性脳腫瘍
細胞;乏突起膠腫細胞;松果体芽腫細胞;下垂体部腫瘍細胞;未分化神経外胚葉性腫瘍細胞;
又は神経鞘腫細胞である。別の実施態様では、腫瘍細胞は、前立腺癌細胞である。
【0197】
本明細書で使用されるように、「治療的に有益な」及び「治療的利益」には、例えば、
腫瘍のサイズの低下;腫瘍の拡大の軽減又は停止;単位容積当たりの、組織試料、例えば、
血液試料中の癌細胞の数の低下;該個体が有する特定の癌又は腫瘍の任意の症状の臨床的
改善、該個体が有する特定の癌の任意の症状の悪化の軽減又は停止などが含まれるが、こ
れらに限定されない。
【0198】
(6.8.3.TSNK細胞及び他の抗癌剤を用いた癌の治療)
本明細書に記載のTSNKを用いた、癌を有する個体の治療は、1以上の他の抗癌剤を含む
抗癌治療レジメンの一部であることができる。そのような抗癌剤は当技術分野で周知であ
る。TSNK細胞、及び任意に灌流液、灌流液細胞、TSNK細胞以外のナチュラルキラー細胞に
加えて、癌を有する個体、例えば、腫瘍細胞を有する個体に投与し得る具体的な抗癌剤と
しては、限定するものではないが:アシビシン;アクラルビシン;塩酸アコダゾール;アクロ
ニン;アドゼレシン;アドルシル;アルデスロイキン;アルトレタミン;アンボマイシン;酢酸
アメタントロン;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;
アスペルリン;アバスチン(ベバシズマブ);アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン;バチ
マスタット;ベンゾデパ;ビカルタミド;塩酸ビサントレン;ジメシル酸ビスナフィド;ビゼ
レシン;硫酸ブレオマイシン;ブレキナルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カクチ
ノマイシン;カルステロン;カラセミド;カルベチマー;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸
カルビシン;カルゼレシン;セデフィンゴール;セレコキシブ(COX-2阻害剤);クロラムブシ
ル;シロレマイシン;シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスフ
ァミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デ
キソルマプラチン;デザグアニン;メシル酸デザグアニン;ジアジコン;ドセタキセル;ドキ
ソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン;クエン酸ドロロキシフェン;プロピオ
ン酸ドロモスタノロン;デュアゾマイシン;エダトレキセート;塩酸エフロミチン;エルサミ
トルシン;エンロプラチン;エンプロメート;エピプロピジン;塩酸エピルビシン;エルブロ
ゾール;塩酸エソルビシン;エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニ
ダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;エトプリン;塩酸ファドロゾール;ファザラビン;
フェンレチニド;フロクスウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビ
ン;ホスキドン;フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキ
シ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン;イプロプラチン;イリノテカン;
塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール
;ロメトレキソールナトリウム;ロムスチン;塩酸ロソキサントロン;マソプロコール;メイ
タンシン;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラ
ン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキセート;メトトレキセートナトリウム;メト
プリン;メツレデパ;ミチンドミド;マイトカルシン;マイトクロミン;マイトギリン;マイト
マルシン;マイトマイシン;マイトスペル;ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノー
ル酸;ノコダゾール;ノガラマイシン;オルマプラチン;オキシスラン;パクリタキセル;ペガ
スパルガーゼ;ペリオマイシン;ペンタムスチン;硫酸ペプロマイシン;ペルホスファミド;
ピポブロマン;ピポスルファン;塩酸ピロキサントロン;プリカマイシン;プロメスタン;ポ
ルフィマーナトリウム;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン;塩酸プロカルバジン;ピュ
ーロマイシン;塩酸ピューロマイシン;ピラゾフリン;リボプリン;サフィンゴール;塩酸サ
フィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム;スパルソマイシン;
塩酸スピロゲルマニウム;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプ
トゾシン;スロフェヌル;タリソマイシン;テコガランナトリウム;タキソテール;テガフー
ル;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チ
アミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;クエン酸トレミフェン;
酢酸トレストロン;リン酸トリシリビン;トリメトレキセート;グルクロン酸トリメトレキ
セート;トリプトレリン;塩酸ツブロゾール;ウラシルマスタード;ウレデパ;バプレオチド;
ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン
;硫酸ビネピジン;硫酸ビングリシネート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸
ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;及び塩酸ゾル
ビシンが含まれる。
【0199】
他の抗癌薬としては、限定するものではないが:20-epi-1,25ジヒドロキシビタミンD3;5
-エチニルウラシル;アビラテロン;アクラルビシン;アシルフルベン;アデシペノール;アド
ゼレシン;アルデスロイキン;ALL-TKアンタゴニスト;アルトレタミン;アンバムスチン;ア
ミドックス;アミホスチン;アミノレブリン酸;アムルビシン;アムサクリン;アナグレリド;
アナストロゾール;アンドログラフォリド;血管形成阻害剤;アンタゴニストD;アンタゴニ
ストG;アンタレリクス;抗背方化形態形成タンパク質-1;抗アンドロゲン、前立腺癌;抗エ
ストロゲン剤;アンチネオプラストン;アンチセンスオリゴヌクレオチド;アフィジコリン
グリシネート;アポトーシス遺伝子調節物質;アポトーシス調節因子;アプリン酸;ara-CDP-
DL-PTBA;アルギニンデアミナーゼ;アスラクリン;アタメスタン;アトリムスチン;アキシナ
スタチン1;アキシナスタチン2;アキシナスタチン3;アザセトロン;アザトキシン;アザチロ
シン;バッカチンIII誘導体;バラノール;バチマスタット;BCR/ABLアンタゴニスト;ベンゾ
クロリン;ベンゾイルスタウロスポリン;βラクタム誘導体;β-アレチン;βクラマイシンB
;ベツリン酸;bFGF阻害剤;ビカルタミド;ビサントレン;ビスアジリジニルスペルミン;ビス
ナフィド;ビストラテンA;ビセレシン;ブレフレート;ブロピリミン;ブドチタン;ブチオニ
ンスルホキシミン;カルシポトリオール;カルホスチンC;カンプトサール(カンプトとも呼
ばれる;イリノテカン)カンプトテシン誘導体;カペシタビン;カルボキサミド-アミノ-トリ
アゾール;カルボキシアミドトリアゾール;CaRest M3;CARN700;軟骨由来阻害剤;カルゼレ
シン;カゼインキナーゼ阻害剤(ICOS);カスタノスペルミン;セクロピンB;セトロレリクス;
クロルルン(chlorln);クロロキノキサリンスルホンアミド;シカプロスト;シス-ポルフィ
リン;クラドリビン;クロミフェン類似体;クロトリマゾール;コリスマイシンA;コリスマイ
シンB;コンブレタスタチンA4;コンブレタスタチン類似体;コナゲニン;クラムベスシジン8
16;クリスナトール;クリプトフィシン8;クリプトフィシンA誘導体;クラシンA;シクロペン
タントラキノン;シクロプラタム;シペマイシン;シタラビンオクホスフェート;細胞溶解因
子;サイトスタチン;ダクリキシマブ;デシタビン;デヒドロジデンミンB;デスロレリン;デ
キサメタゾン;デキシホスファミド;デクスラゾキサン;デクスベラパミル;ジアジコン;ジ
デムニンB;ジドックス;ジエチルノルスペルミン;ジヒドロ-5-アザシチジン;ジヒドロタキ
ソール、9-;ジオキサマイシン;ジフェニルスピロムスチン;ドセタキセル;ドコサノール;
ドラセトロン;ドキシフルリジン;ドキソルビシン;ドロロキシフェン;ドロナビノール;デ
ュオカルマイシンSA;エブセレン;エコムスチン;エデルホシン;エドレコロマブ;エフロル
ニチン;エレメン;エミテフル;エピルビシン;エプリステリド;エストラムスチン類似体;エ
ストロゲンアゴニスト;エストロゲンアンタゴニスト;エタニダゾール;リン酸エトポシド;
エキセメスタン;ファドロゾール;ファザラビン;フェンレチニド;フィルグラスチム;フィ
ナステリド;フラボピリドール;フレゼラスチン;フルアステロン;フルダラビン;塩酸フル
オロダウノルニシン;フォルフェニメックス;フォルメスタン;フォストリエシン;フォテム
スチン;ガドリニウムテキサフィリン;硝酸ガリウム;ガロシタビン;ガニレリクス;ゼラチ
ナーゼ阻害剤;ゲムシタビン;グルタチオン阻害剤;ヘプスルファム;ヘレグリン;ヘキサメ
チレンビスアセトアミド;ヒペリシン;イバンドロン酸;イダルビシン;イドキシフェン;イ
ドラマントン;イルモホシン;イロマスタット;イマチニブ(例えば、GLEEVEC(登録商標))、
イミキモド;免疫刺激性ペプチド;インスリン様成長因子-1受容体阻害剤;インターフェロ
ンアゴニスト;インターフェロン;インターロイキン;イオベングアン;ヨードドキソルビシ
ン;イポメアノール、4-;イロプラクト;イルソグラジン;イソベンガゾール;イソホモハリ
コンドリンB;イタセトロン;ジャスプラキノリド;カハラリドF;ラメラリン-Nトリアセテー
ト;ランレオチド;レイナマイシン;レノグラスチム;硫酸レンチナン;レプトルスタチン;レ
トロゾール;白血病阻害因子;白血球αインターフェロン;ロイプロリド+エストロゲン+
プロゲステロン;リュープロレリン;レバミソール;リアロゾール;直鎖ポリアミン類似体;
脂溶性二糖ペプチド;脂溶性白金化合物;リッソクリナミド7;ロバプラチン;ロンブリシン;
ロメトレキソール;ロニダミン;ロソキサントロン;ロキソリビン;ルルトテカン;ルテチウ
ムテキサフィリン;リソフィリン;溶解性ペプチド;マイタンシン;マンノスタチンA;マリマ
スタット;マソプロコール;マスピン;マトリライシン阻害剤;マトリックスメタロプロテイ
ナーゼ阻害剤;メノガリル;メルバロン;メテレリン;メチオニナーゼ;メトクロプラミド;MI
F阻害剤;ミフェプリストン;ミルテホシン;ミリモスチム;マイトグアゾン;マイトラクトー
ル;マイトマイシン類似体;ミトナフィド;マイトトキシン線維芽細胞成長因子-サポリン;
ミトキサントロン;モファロテン;モルグラモスチム;Erbitux(セツキシマブ)、ヒト絨毛性
性腺刺激ホルモン;モノホスホリル脂質A+ミオバクテリウム細胞壁sk;モピダモール;マス
タード抗癌剤;ミカペルオキシドB;マイコバクテリア細胞壁抽出物;ミリアポロン;N-アセ
チルジナリン;N-置換ベンズアミド;ナファレリン;ナグレスチップ;ナロキソン+ペンタゾ
シン;ナパビン;ナフテルピン;ナルトグラスチム;ネダプラチン;ネモルビシン;ネリドロン
酸;ニルタミド;ニサマイシン;一酸化窒素調節物質;窒素酸化物酸化防止剤;ニトルリン;オ
ブリメルセン(GENASENSE(登録商標));O6-ベンジルグアニン;オクトレオチド;オキセノン;
オリゴヌクレオチド;オナプリストン;オンダンセトロン;オンダンセトロン;オラシン;経
口サイトカイン誘導因子;オルマプラチン;オサテロン;オキサリプラチン(例えば、Floxat
in);オキサウノマイシン;パクリタキセル;パクリタキセル類似体;パクリタキセル誘導体;
パラウアミン;パルミトイルリゾキシン;パミドロン酸;パナキシトリオール;パノミフェン
;パラバクチン;パゼリプチン;ペガスパルガーゼ;ペルデシン;ペントサンポリ硫酸ナトリ
ウム;ペントスタチン;ペントロゾール;ペルフルブロン;ペルホスファミド;ペリリルアル
コール;フェナジノマイシン;酢酸フェニル;ホスファターゼ阻害剤;ピシバニール;塩酸ピ
ロカルピン;ピラルビシン;ピリトレキシム;プラセチンA;プラセチンB;プラスミノーゲン
活性化因子阻害剤;白金錯体;白金化合物;白金トリアミン錯体;ポルフィマーナトリウム;
ポルフィロマイシン;プレドニゾン;プロピルビス-アクリドン;プロスタグランジンJ2;プ
ロテアソーム阻害剤;プロテインAに基づく免疫調節物質;タンパク質キナーゼC阻害剤;タ
ンパク質キナーゼC阻害剤、微細藻類性;タンパク質チロシンホスファターゼ阻害剤;プリ
ンヌクレオシドホスホリラーゼ阻害剤;プルプリン;ピラゾロアクリジン;ピリドキシル化
ヘモグロビンポリオキシエチレン抱合体;rafアンタゴニスト;ラルチトレキセド;ラモセト
ロン;rasファルネシルタンパク質トランスフェラーゼ阻害剤;ras阻害剤;ras-GAP阻害剤;
脱メチル化レテリプチン;レニウムRe 186エチドロネート;リゾキシン;リボザイム;RIIレ
チナミド;ロヒツキン;ロムルチド;ロキニメックス;ルビギノンB1;ルボキシル;サフィンゴ
ール;サイントピン;SarCNU;サルコフィトールA;サルグラモスチム;Sdi 1模倣剤;セムスチ
ン;老化誘導阻害剤1;センスオリゴヌクレオチド;シグナル伝達阻害剤;シゾフィラン;ソブ
ゾキサン;ナトリウムボロカプテイト;酢酸フェニルナトリウム;ソルベロール;ソマトメジ
ン結合タンパク質;ソネルミン;スパルホス酸;スピカマイシンD;スピロムスチン;スプレノ
ペンチン;スポンギスタチン1;スクアラミン;スチピアミド;ストロメライシン阻害剤;スル
フィノシン;超活性血管作用性小腸ペプチドアンタゴニスト;スラジスタ;スラミン;スワイ
ンソニン;タリムスチン;タモキシフェンメチオジド;タウロムスチン;タザロテン;テコガ
ランナトリウム;テガフール;テルラピリリウム;テロメラーゼ阻害剤;テモポルフィン;テ
ニポシド;テトラクロロデカオキシド;テトラゾミン;タリブラスチン;チオコラリン;トロ
ンボポイエチン;トロンボポイエチン模倣剤;チマルファシン;チモポイエチン受容体アゴ
ニスト;チモトリナン;甲状腺刺激ホルモン;スズエチルエチオプルプリン;チラパザミン;
二塩化チタノセン;トプセンチン;トレミフェン;翻訳阻害剤;トレチノイン;トリアセチル
ウリジン;トリシリビン;トリメトレキセート;トリプトレリン;トロピセトロン;ツロステ
リド;チロシンキナーゼ阻害剤;チルホスチン;UBC阻害剤;ウベニメクス;尿生殖洞由来成長
阻害因子;ウロキナーゼ受容体アンタゴニスト;バプレオチド;バリオリンB;Vectibix(パニ
ツムマブ)ベラレソール;ベラミン;ベルジン;ベルテポルフィン;ビノレルビン;ビンキサル
チン;ビタキシン;ボロゾール;Welcovorin(ロイコボリン);Xeloda(カペシタビン);ザノテ
ロン;ゼニプラチン;ジラスコルブ;及びジノスタチンスチマラマーが挙げられる。
【0200】
(6.8.4.ウイルス感染の治療)
別の実施態様では、ウイルス感染を有する個体を治療する方法であって、該個体に、治
療的有効量のTSNK細胞を投与することを含む、方法が本明細書で提供される。ある実施態
様では、該個体は、ナチュラルキラー細胞の欠損、例えば、該個体のウイルス感染に対し
て活性があるNK細胞の欠損を有する。ある具体的な実施態様では、該投与することは、該
個体に、単離された胎盤灌流液、単離された胎盤灌流液細胞、単離されたナチュラルキラ
ー細胞、例えば、胎盤ナチュラルキラー細胞、例えば、胎盤由来中間ナチュラルキラー細
胞、単離され、組み合わされたナチュラルキラー細胞、及び/又はそれらの組合せのうち
の1つ又は複数を投与することを更に含む。ある具体的な実施態様では、該投与すること
の前に、該TSNK細胞を、免疫調節化合物、例えば、上の第6.2.1節に記載の免疫調節化合
物、又はサリドマイドと接触させる。ある他の具体的な実施態様では、該投与することは
、該TSNK細胞に加えて、免疫調節化合物、例えば、上の第6.2.1節に記載の免疫調節化合
物、又はサリドマイドを、該個体に投与することを含み、ここで、該量は、例えば、該ウ
イルス感染の1以上の症状の検出可能な改善、該症状の進行の軽減、又は該症状の消失を
もたらす量である。具体的な実施態様では、ウイルス感染は、アデノウイルス科、ピコル
ナウイルス科、ヘルペスウイルス科、ヘパドナウイルス科、フラビウイルス科、レトロウ
イルス科、オルトミクソウイルス科、パラミクソウイルス科、パピローマウイルス科、ラ
ブドウイルス科、又はトガウイルス科ファミリーのウイルスによる感染である。より具体
的な実施態様では、該ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、コクサッキーウイルス
、A型肝炎ウイルス(HAV)、ポリオウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、単純ヘ
ルペスウイルス1型(HSV1)、単純ヘルペスウイルス2型(HSV2)、ヒトサイトメガロウイルス
(CMV)、ヒトヘルペスウイルス8型(HHV8)、帯状疱疹(herpes zoster)ウイルス(水痘帯状疱
疹ウイルス(VZV)もしくは帯状疱疹(shingles)ウイルス)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝
炎ウイルス(HCV)、D型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、インフルエンザウイ
ルス(例えば、A型インフルエンザウイルス、B型インフルエンザウイルス、C型インフルエ
ンザウイルス、もしくはトゴトウイルス)、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パ
ラインフルエンザウイルス、パピローマウイルス、狂犬病ウイルス、又は風疹ウイルスで
ある。
【0201】
他のより具体的な実施態様では、該ウイルスは、アデノウイルス種A、血清型12、18、
もしくは31;アデノウイルス種B、血清型3、7、11、14、16、34、35、もしくは50;アデノ
ウイルス種C、血清型1、2、5、もしくは6;種D、血清型8、9、10、13、15、17、19、20、2
2、23、24、25、26、27、28、29、30、32、33、36、37、38、39、42、43、44、45、46、4
7、48、49、もしくは51;種E、血清型4;又は種F、血清型40もしくは41である。
【0202】
ある他のより具体的な実施態様では、該ウイルスは、アポイウイルス(APOIV)、アロア
ウイルス(AROAV)、バガザウイルス(BAGV)、バンジウイルス(BANV)、ブブイウイルス(BOUV
)、カシパコレウイルス(CPCV)、カレイ島ウイルス(CIV)、カウボーンリッジウイルス(CRV
)、デングウイルス(DENV)、エッジヒルウイルス(EHV)、ガジェッツガリーウイルス(GGYV)
、イルヘウスウイルス(ILHV)、イスラエルターキー髄膜脳脊髄炎ウイルス(ITV)、日本脳
炎ウイルス(JEV)、ジュグラウイルス(JUGV)、ジュチアパウイルス(JUTV)、カダムウイル
ス(KADV)、ケドゥグウイルス(KEDV)、ココベラウイルス(KOKV)、コウタンゴウイルス(KOU
V)、キャサヌル森林病ウイルス(KFDV)、ランガトウイルス(LGTV)、メアバンウイルス(MEA
V)、モドックウイルス(MODV)、モンタナ筋炎白質脳炎ウイルスウイルス(MMLV)、マレー渓
谷脳炎ウイルス(MVEV)、ウンタヤウイルス(NTAV)、オムスク出血熱ウイルス(OHFV)、ポワ
サンウイルス(POWV)、リオブラボーウイルス(RBV)、ロイヤルファームウイルス(RFV)、サ
ボヤウイルス(SABV)、セントルイス脳炎ウイルス(SLEV)、サルビエハウイルス(SVV)、サ
ンペルリタウイルス(SPV)、ソーマレズリーフウイルス(SREV)、セピックウイルス(SEPV)
、テンブスウイルス(TMUV)、ダニ媒介型脳炎ウイルス(TBEV)、チュレニーウイルス(TYUV)
、ウガンダSウイルス(UGSV)、ウスツウイルス(USUV)、ウェセルスブロンウイルス(WESSV)
、西ナイルウイルス(WNV)、ヤウンデウイルス(YAOV)、黄熱病ウイルス(YFV)、ヨコセウイ
ルス(YOKV)、又はジカウイルス(ZIKV)である。
【0203】
他の実施態様では、TSNK細胞、及び任意に胎盤灌流液及び/又は灌流液細胞を、ウイル
ス感染を有する個体に、1以上の他の抗ウイルス剤を含む抗ウイルス治療レジメンの一部
として投与する。ウイルス感染を有する個体に投与し得る具体的な抗ウイルス剤としては
: イミキモド、ポドフィロックス、ポドフィリン、インターフェロンアルファ(IFNα)、
レチコロス、ノノキシノール-9、アシクロビル、ファムシクロビル、バラシクロビル、ガ
ンシクロビル、シドフォビル;アマンタジン、リマンタジン;リバビリン;ザナマビル及び
オセルタミビル;プロテアーゼ阻害剤、例えば、インジナビル、ネルフィナビル、リトナ
ビル、もしくはサキナビル;ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、例えば、ジダノシン、ラミ
ブジン、スタブジン、ザルシタビン;又はジドブジン;並びに非ヌクレオシド逆転写酵素阻
害剤、例えば、ネビラピンもしくはエファビレンツが挙げられるが、これらに限定されな
い。
【0204】
(6.8.5.投与)
細胞、例えば、胎盤灌流液細胞、例えば、胎盤灌流液由来の有核細胞、組み合わされた
ナチュラルキラー細胞、及び/又は単離されたナチュラルキラー細胞、例えば、TSNK細胞
の数の決定、並びに免疫調節化合物、例えば、上の第6.2.1節の免疫調節化合物、又はサ
リドマイドの量の決定は、互いに独立に行なうことができる。
【0205】
(6.8.5.1.細胞の投与)
ある実施態様では、TSNK細胞を、ウイルス感染、癌、又は腫瘍細胞を有する個体、例え
ば、腫瘍細胞、固形腫瘍、又は血液癌を有する個体、例えば、癌患者に対して検出可能な
治療的利益をもたらす任意の量又は数、例えば、有効量で、該個体に用いる、例えば、投
与する。そのような細胞を、そのような個体に、細胞の絶対数で投与することができ、例
えば、該個体に、約、少なくとも約、又は多くとも約1×105、5×105、1×106、5×106
1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、又は1×1011
のTSNK細胞で投与することができる。他の実施態様では、TSNK細胞を、そのような個体に
、細胞の相対数で投与することができ、例えば、該個体に、該個体のキログラム当たり約
、少なくとも約、又は多くとも約1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1
×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、又は1×1011個のTSNK細胞で投与す
ることができる。TSNK細胞を、いくつかのTSNK細胞、並びに任意にTSNK細胞以外の胎盤灌
流液細胞及び/又はナチュラルキラー細胞と、該個体内のいくつかの腫瘍細胞(例えば、推
定数)との近似比率に従って、そのような個体に投与することができる。例えば、TSNK細
胞を、個体内の腫瘍細胞の数に対して約、少なくとも約、又は多くとも約1:1、1:1、3:1
、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、
50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1、又は100:1の比率で、
該個体に投与することができる。そのような個体内の腫瘍細胞の数は、例えば、該個体由
来の組織の試料、例えば、血液試料、生検などにおける腫瘍細胞の数を計数することによ
って推定することができる。例えば、固形腫瘍についての具体的な実施態様では、該計数
することを、腫瘍(単数又は複数)のイメージングと組み合わせて行ない、おおよその腫瘍
容積を得る。具体的な実施態様では、TSNK細胞、任意にTSNK細胞以外の胎盤灌流液細胞及
び/又はナチュラルキラー細胞に加えて、免疫調節化合物又はサリドマイド、例えば、有
効量の免疫調節化合物又はサリドマイドを個体に投与する。
【0206】
ある実施態様では、例えば、個体内の腫瘍細胞の増殖を抑制する方法;個体のナチュラ
ルキラー細胞の欠損を有する個体の治療;又はウイルス感染を有する個体の治療;又は癌を
有する個体、例えば、腫瘍細胞、血液癌、もしくは固形腫瘍を有する個体の治療は、該腫
瘍細胞を、TSNK細胞と胎盤灌流液及び/もしくは胎盤灌流液細胞のうちの1つもしくは複数
の組合せと接触させること、又は該個体に、TSNK細胞と胎盤灌流液及び/もしくは胎盤灌
流液細胞のうちの1つもしくは複数の組合せを投与することを含む。具体的な実施態様で
は、該方法は更に、腫瘍細胞を免疫調節化合物もしくはサリドマイドと接触させること、
又は該個体に免疫調節化合物もしくはサリドマイドを投与することを含む。
【0207】
具体的な実施態様では、例えば、個体のナチュラルキラー細胞の欠損(例えば、NK細胞
の数の欠損、又は癌、腫瘍、もしくはウイルス感染細胞に対するNK細胞の反応性の欠損)
を有する個体の治療;或いは癌又はウイルス感染を有する個体の治療、或いは腫瘍細胞増
殖の抑制は、該腫瘍細胞を、単離された胎盤灌流液細胞もしくは胎盤灌流液が補充された
TSNK細胞と接触させること、又は該個体に、単離された胎盤灌流液細胞もしくは胎盤灌流
液が補充されたTSNK細胞を投与することを含む。具体的な実施態様では、1ミリリットル
当たり約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108
5×108個、もしくはそれより多くのTSNK細胞、又は1×104、5×104、1×105、5×105、1
×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010
、1×1011個、もしくはそれより多くのTSNK細胞に、1ミリリットル当たり約、又は少なく
とも約1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5
×108個、もしくはそれより多くの単離された胎盤灌流液細胞、又は1×104、5×104、1×
105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×
1010、5×1010、1×1011個、もしくはそれより多くの単離された胎盤灌流液細胞を補充す
る。他のより具体的な実施態様では、1ミリリットル当たり約1×104、5×104、1×105、5
×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108個、もしくはそれより多くのT
SNK細胞、又は1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×
108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、もしくはそれより多くの
TSNK細胞に、約、もしくは少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、3
0、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、150、200、250、300、
350、400、450、500、550、600、650、700、750、800、850、900、950、もしくは1000mL
の灌流液、又は約1ユニットの灌流液を補充する。
【0208】
別の具体的な実施態様では、個体のナチュラルキラー細胞の欠損を有する個体の治療;
癌を有する個体の治療;ウイルス感染を有する個体の治療、又は腫瘍細胞増殖の抑制は、
該腫瘍細胞をTSNK細胞と接触させること、又は該個体にTSNK細胞を投与することを含み、
ここで、該細胞には、接着性胎盤細胞、例えば、接着性胎盤幹細胞又は寡能性細胞、例え
ば、CD34-、CD10+、CD105+、CD200+組織培養プラスチック接着性胎盤細胞が補充される。
具体的な実施態様では、TSNK細胞に、1ミリリットル当たり約1×104、5×104、1×105、5
×105、1×106、5×106、1×107、5×107、1×108、5×108個、もしくはそれより多くの
接着性胎盤幹細胞、又は1×104、5×104、1×105、5×105、1×106、5×106、1×107、5
×107、1×108、5×108、1×109、5×109、1×1010、5×1010、1×1011個、もしくはそれ
より多くの接着性胎盤細胞、例えば、接着性胎盤幹細胞もしくは寡能性細胞を補充する。
【0209】
別の具体的な実施態様では、個体のナチュラルキラー細胞の欠損を有する個体の治療;
癌を有する個体の治療;ウイルス感染を有する個体の治療、又は腫瘍細胞増殖の抑制を、T
SNK細胞と組み合わせた免疫調節化合物又はサリドマイドを用いて行ない、ここで、該細
胞には、馴化培地、例えば、CD34-、CD10+、CD105+、CD200+組織培養プラスチック接着性
胎盤細胞で馴化された培地、例えば、灌流液1ユニット当たり、又は104、105、106、107
、108、109、1010、もしくは1011個のTSNK細胞当たり、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、
0.1、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10mLの幹細胞馴化培養培地が補充される。
ある実施態様では、該組織培養プラスチック接着性胎盤細胞は、その開示がその全体とし
て引用により本明細書中に組み込まれている、米国特許第7,468,276号及び米国特許出願
公開第2007/0275362号に記載の寡能性接着性胎盤細胞である。別の具体的な実施態様では
、該方法は更に、該腫瘍細胞を免疫調節化合物もしくはサリドマイドと接触させるか、又
は該個体に免疫調節化合物もしくはサリドマイドを投与することを含む。
【0210】
別の具体的な実施態様では、該TSNK細胞に胎盤灌流液細胞が補充される、個体のナチュ
ラルキラー細胞の欠損を有する個体の治療;癌を有する個体の治療;ウイルス感染を有する
個体の治療、又は腫瘍細胞増殖の抑制では、該灌流液細胞を、該接触させることの前に、
一定期間、インターロイキン-2(IL-2)と接触させる。ある実施態様では、該一定期間は、
該接触させることの前の約、少なくとも、又は多くとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10
、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、又は48
時間である。
【0211】
TSNK細胞、及び任意に灌流液又は灌流液細胞を、一連の抗癌療法の間に1回、ウイルス
感染を有する個体、癌を有する個体、もしくは腫瘍細胞を有する個体に投与することがで
きるか;或いは治療の間に複数回、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13
、14、15、16、17、18、19、20、21、22、もしくは23時間に1回、又は1、2、3、4、5、6
、もしくは7日に1回、又は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、24、36週間、もしくはそれ
より長い期間に1回投与することができる。細胞及び免疫調節化合物又はサリドマイドを
用いる実施態様では、該免疫調節化合物又はサリドマイド、及び細胞又は灌流液を、該個
体に、一緒に、例えば、同じ製剤中で;別々に、例えば、別々の製剤中で、ほぼ同時に投
与することができるか;又は別々に、例えば、異なる投与スケジュールで、もしくは1日の
異なる時間に投与することができる。同様に、細胞及び抗ウイルス化合物もしくは抗癌化
合物を用いる実施態様では、該抗ウイルス化合物又は抗癌化合物、及び細胞又は灌流液を
、個体に、一緒に、例えば、同じ製剤中で;別々に、例えば、別々の製剤中で、ほぼ同時
に投与することができるか;又は別々に、例えば、異なる投与スケジュールで、もしくは1
日の異なる時間に投与することができる。TSNK細胞、及び灌流液又は灌流液細胞を、TSNK
細胞、灌流液、又は灌流液細胞が過去に該個体に投与されたことがあるかどうかというこ
とには関係なく、投与することができる。
【実施例0212】
(7.実施例)
(7.1.実施例1:ヒト胎盤灌流液及び臍帯血からの造血幹細胞の回収)
ヒト胎盤灌流液(HPP)及び臍帯血(UCB)細胞を、通常、Ficoll又は塩化アンモニウムのい
ずれかを用いて精製し、全有核細胞(TNC)を得た。その後、TNCを陽性選択手順で用い、製
造業者のプロトコル(StemCell Technologies, Inc.)に従って抗CD34ビーズ及びRoboSepを
用いて、CD34+細胞を単離した。この実験では、CD34+細胞を90%を超える純度で単離した
。或いは、EasySep(登録商標)ヒト前駆細胞濃縮キット(StemCell Technologies, Inc.)を
陰性選択手順で用い、以下のヒト細胞表面抗原:CD2、CD3、CD11b、CD11c、CD14、CD16、C
D19、CD24、CD56、CD66b、及びグリコフォリンAに対するモノクローナル抗体を含むヒト
前駆細胞濃縮カクテルを用いることによって、系譜が確定した(lineage committed)細胞
を除去した。陰性選択を用いて、90%のCD34+細胞を原材料から回収した。回収されたHSC
の細胞組成を表1にまとめた。
【表1】
【0213】
(7.2.実施例2:フィーダー細胞を含まない造血幹細胞の拡大及びナチュラルキラー細胞へ
の分化)
CD34+細胞を以下の培地製剤中で最大48日間培養し、細胞のアリコートを、細胞数、細
胞生存率の評価(assessment)、ナチュラルキラー細胞分化の特徴付け、及び機能的評価(e
valuation)のために採取した。
【0214】
(NK1培地):pen/strep(カタログ# 15140, Gibco)、20ng/mL SCF(カタログ# 255-SC, R&D S
ystems)、10ng/mL Flt-3リガンド(カタログ# 308-FK, R&D system)、20ng/mL TPO(カタロ
グ# 288-TP, R&D system)、20ng/mL IL-7(カタログ# 207-IL, R&D Systems)、200IU/mL I
L-2(カタログ# 202-IL, R&D Systems)、及び10ng/mL IL-15(カタログ# 247-IL, R&D Syst
ems)が補充されたGBGM(Glycostem Based Growth Medium, Glycostem カタログ# CCT-SCB5
00, Clear cell technology)。
【0215】
(NK2培地):2mM L-グルタミン(カタログ# 25030, Invitrogen)、1%pen/strep、20%ヒト
血清AB(カタログ# 100-512, Gemcell)、5ng/mL亜セレン酸ナトリウム(カタログ# S9133,
Sigma)、50μMエタノールアミン(カタログ# E0135, Sigma)、25μM β-メルカプトエタノ
ール(カタログ# 21985, Invitrogen)、20mg/mLアスコルビン酸(カタログ# 47863, Sigma)
、5ng/mL IL-3(カタログ# 203-IL, R&D Systems)、20ng/mL SCF、10ng/mL Flt-3リガンド
、20ng/mL IL-7、及び10ng/mL IL-15が1:2で補充されたDMEM(カタログ# MT-10-013-CV, F
isher):ハムF12(カタログ# BW12-615F, Fisher)。
【0216】
(NK3培地):pen/strep、10%ヒト血清AB(カタログ# 100-512, Gemcell)、及び500IU/mL IL
-2が補充されたX-vivo 20(カタログ# BW04-448Q, Fisher)。
【0217】
(NK2A培地):10%ヒト血清AB、1%pen/strep、20ng/mL SCF、10ng/mL Flt-3リガンド、20n
g/mL TPO、20ng/mL IL-7、200IU/mL IL-2、10ng/mL IL-15、及び1.5IU/mL ヘパリン(カタ
ログ# H3149, Sigma)が補充されたGBGM。
【0218】
(NK2B1培地):2mM L-グルタミン、1%pen/strep、20%ヒト血清AB、5ng/mL亜セレン酸ナト
リウム、50μMエタノールアミン、25μM β-メルカプトエタノール、20μg/mLアスコルビ
ン酸、5ng/mL IL-3、20ng/mL SCF、10ng/mL Flt-3リガンド、20ng/mL IL-7、及び10ng/mL
IL-15が1:2で補充されたDMEM:ハムF12。
【0219】
(NK2B2培地):2mM L-グルタミン、1%pen/strep、20%ヒト血清AB、5ng/mL亜セレン酸ナト
リウム、50μMエタノールアミン、25μM β-メルカプトエタノール、20μg/mLアスコルビ
ン酸、200IU/mL IL-2、20ng/mL SCF、10ng/mL Flt-3リガンド、20ng/mL IL-7、及び10ng/
mL IL-15が1:2で補充されたDMEM:ハムF12。
【0220】
(NK2C培地):10%FBS(カタログ# SH30070.03, Hyclone)、2mM L-グルタミン、1%pen/stre
p、50ng/mL SCF、50ng/mL Flt-3リガンド、100IU/mL IL-2、20ng/mL IL-7、及び20ng/mL
IL-15が補充されたRPMI 1640(カタログ# 22400105, Invitrogen)。
【0221】
(NK2D培地):1μM合成グルココルチコイドデキサメトゾン(Dex, カタログ# D4902, Sigma,
St Louis, MO)、40ng/mLインスリン様成長因子1(IGF-1、カタログ# 291-G1-250, R&D Sy
stems, Minneapolis, MN)、100ng/mL SCF、40μg/mL脂質(コレステロールを多く含む脂質
混合物;カタログ# C7305-1G, Sigma, St Louis, MO)、5ng/mL IL-3、200IU/mL IL-2、20n
g/mL IL-7、及び20ng/mL IL-15が補充された無血清培地(StemSpan, カタログ# 09650, St
em Cell Technologies, Vancouver, Canada)。
【0222】
異なる時点で回収された細胞をRPMI1640(フェノール不含)及び5%FBSで2回洗浄し、蛍
光コンジュゲート抗体(表2及び3)で4℃で15分間標識し、フローサイトメトリー(FACSCant
o, BD)及びFlowJoサイトメトリーソフトウェア(Tree Star)で解析した。
【表2】
【表3】
【0223】
PKH26/TO-PRO-3標識を用いた細胞傷害性アッセイ。標的腫瘍細胞を、その親油性脂肪族
残基を介して細胞形質膜に挿入する色素であるPKH26(カタログ#PKH26GL, Sigma-Aldrich)
で標識し、その後、96ウェルのU底組織培養プレートに入れ、10%FBSが補充された200μl
のRPMI 1640中で、様々なエフェクター-標的(E:T)比率で、拡大されたNK細胞とともにイ
ンキュベートした。培養物を、37℃、5%CO2で、4時間インキュベートした。インキュベ
ーション後、細胞を回収し、膜不透過性DNA染料であるTO-PRO-3(Invitrogen カタログ# T
3605)を培養物に添加し(1μMの最終濃度)、その後、FACS解析を行なった。細胞傷害性を
、全PKH26+標的腫瘍細胞内の死細胞(PKH26+TO-PRO-3+)のパーセンテージとして表した。
【0224】
CD34+細胞の拡大及びNK細胞への分化の最適化。試験した培地製剤NK1、NK2、及びNK3の
中で、NK1培地は、21日目(D21)に500倍の拡大を示した。NK2培地もNK3培地も、細胞増殖
も分化も維持しなかった。更なる培地最適化をNK1培地について行ない、後継培地をNK2A
、NK2B、NK2C、及びNK2Dと命名した。NK2A培地を用いて培養されたCD34+細胞は、55日目(
D55)に105倍の拡大を示した。NK1、NK2、及びNK3培地からの拡大倍率、分化、及び細胞傷
害性の結果に基づいて、第二のバッチのNK2A、NK2B、NK2C、及びNK2D培地の調剤を行ない
、D55に、105倍の拡大が達成された(図1に示す)。NK2B培地は、約3×104倍の拡大を示し
た。NK2C培地中での培養は、21日で3×102倍の拡大をもたらし、その後、細胞生存率を低
下させた。NK2D培地は、実験期間の最初から最後まで、細胞を維持しなかった。
【0225】
48日目(D48)に、NK2A培地中NK細胞の約90%は、CD56+CD3-であった。CD56+CD3-集団内
で、細胞の98%超はCD56+CD16-であったが(図2に示す)、58%は活性化受容体NKG2Dを発現
し、68%はNKp46+であり、17%はCD226+であった(表4A及び4Bに示す)。
【表4】
【0226】
更に、NK2A培地中で培養された細胞の97.8%、及びNK2B培地中で培養された細胞の93.1
%は、培養21日でCD56+CD16-であった。
【0227】
(7.3.実施例3:CNK培地中でのNK細胞の培養はNK細胞の拡大及び細胞傷害性を増強する)
27日目(D27)に、NK2A培地中で培養されたCD34+細胞を、以下の培地のうちの1つの中で
更に培養した:
・CNK培地及び維持培地を含む、二段階培地。CNK培地は、10%のFCS(Hyclone)、200IU/mL
のIL-2(R&D Systems)、35μg/mLのトランスフェリン(Sigma-Aldrich)、5μg/mLのインス
リン(Sigma-Aldrich)、2×10-5Mのエタノールアミン(Sigma-Aldrich)、1μg/mLのオレイ
ン酸(Sigma-Aldrich)、1μg/mLのリノール酸(Sigma-Aldrich)、0.2μg/mLのパルミチン酸
(Sigma-Aldrich)、2.5μg/mLのBSA(Sigma-Aldrich)、及び0.1μg/mLのフィトヘマグルチ
ニン(PHA-P、Sigma-Aldrich)が補充されたIMDM(Invitrogen)である。NK2A培地中で培養さ
れたCD56+CD3- NK細胞を、細胞培養液で処理した24ウェルプレートもしくはT字フラスコ
中のCNK培地に2.5×105個の生細胞/mLで再懸濁した。マイトマイシンC処理した同種異系P
BMC及びK562細胞(慢性骨髄性白血病細胞株)を両方とも、フィーダー細胞として、1mL当た
り1×106個の最終濃度になるようCNK培地に添加した。NK細胞を、37℃、5%CO2で、5~6
日間培養した。5~6日後、及びその後は3~4日毎に、等容積の維持培地(10%FCS、2%ヒ
トAB血清、抗生物質、L-グルタミン、及び1mL当たり400ユニットのIL-2を含むIMDM)を該
培養物に添加した。
・フィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理したCD34-、CD10+、CD105+、CD200+組織
培養プラスチック接着性胎盤幹細胞を含むNK2A(PDAC)培地;
・フィーダー細胞としてのマイトマイシンC処理した間葉系幹細胞(MSC)を含むNK2A(MSC)
培地;又は
・対照としてのフィーダー不含NK2A(FF)培地。
【0228】
二段階培地は、特に、27日(D27)から48日(D48)の間に、NK2A(FF)、NK2A(PDAC)、及びNK
2A(MSC)と比較して、CD34+細胞の拡大倍率を高めた。図3を参照されたい。
【0229】
35日目までに、CD34+細胞の割合は、既に、約4%にまで減少していたが、CD56+CD3-
割合は、二段階培地中で約80%にまで増加していた。45日目(D45)に、二段階培地中で培
養された細胞は、NK2A(FF)、NK2A(PDAC)、及びNK2A(MSC)中で培養されたNK細胞と比較し
て、最も高い細胞傷害性を示した(図3に示す)。41日での表現型の特徴付け(図5に示す)は
、細胞内でのNKp46及びCD226の発現の増加を示し、細胞傷害性の増強についての考えられ
る説明を示した。D41では、CD226+細胞の割合は、NK2A培地中0.9%±0.8%から二段階培
地中13%±4%に増加し;NKp46+細胞の割合は、NK2A培地中55.4%±8.7%から二段階培地
中80%±7.85%に増加した。D48では、CD226+細胞の割合は、NK2A培地中17.3%±14.3%
から二段階培地中52.3%±11.64%に増加し;NKp46+細胞の割合は、NK2A培地中67.9%±5.
4%から二段階培地中86%±4%に増加した。試験した条件間で、NKG2D発現の有意差はな
かった。CD226及びNKp46の発現の変化を下の表5に示す。
【表5】
【0230】
(7.4.実施例4:二段階培地で培養されたナチュラルキラー細胞と胚性幹細胞(ESC)に由来す
るナチュラルキラー細胞の比較)
二段階培地中で培養されたNK細胞を、Wollらの文献(Blood 113(4):6094-6101(2009))の
方法によって産生される、胚性幹細胞(ESC)由来のNK細胞と比較した。具体的には、両方
の該細胞型の培養のプロセスの間、CD94及びCD117の発現レベルの違いを観察した。図6
、CD117の発現が、7日(D7)から35日(D35)まで、二段階NK細胞で高いか、又は「+」であっ
たのに対し、CD94の発現が徐々に増加したことを示している。35日目(D35)に、CD56+CD3-
(二工程)細胞の約44%はCD94+CD117+細胞であり、CD56+CD3-細胞の37.6%はCD94-CD117+
であり、該CD56+CD3-細胞の14.7%はCD94+CD117-であった。従って、二工程方法によって
産生されるNK細胞は、ESC由来のNK細胞と区別可能であり、該ESC由来のNK細胞の78%は、
培養14日~35日までCD117low/-のままであった。下の実施例6に記載するように、CD117+
NK細胞は、様々な組織由来の腫瘍細胞株に対して細胞傷害性であるので、このCD117発現
の違いは有用である。
【0231】
これらの結果は、TSNK細胞の分化の経過がESC由来NK細胞とは異なること、及びTSNK細
胞がESC由来NK細胞と区別可能であることを示唆している。
【0232】
(7.5.実施例5:PDACは、NK2A培地中で培養ナチュラルキラー細胞の拡大倍率を高める)
造血幹細胞(HSC)のナチュラルキラー細胞への分化に対するCD10+、CD34-、CD105+、CD2
00+組織培養プラスチック接着性胎盤幹細胞(この実施例ではPDACと呼ぶ)の効果を評価す
るために、HSCを、0日目及び21日目に、10:1のPDAC/MSC:HSCの比率で、マイトマイシンC
処理したPDAC又は骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)で刺激し、一方、フィーダー不含培養物を
対照として用いた。NK2A培地を培養培地として用いた。PDACは、培地のみと比較して、培
養NK細胞の拡大倍率を高めることが分かった。しかしながら、フィーダー層ありで成長し
た細胞又はフィーダー層なしで成長した細胞の間で細胞傷害性の有意な差は見られなかっ
た。図7に示すように、MSCで処理された細胞は、最も高い拡大倍率を示したが、最も低い
細胞傷害性を示した。
【0233】
(7.6.実施例6:二段階培地を用いて拡大されたNK細胞の細胞傷害活性)
この実施例は、上記の二段階プロセスを用いて拡大し、分化させたCD34+細胞から産生
されるNK細胞が、腫瘍細胞株にとって細胞傷害性であることを示す。
【0234】
乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセイ。LDH放出アッセイをCYTOTOX 96(登録商標)非放射性
細胞傷害性アッセイキット(Promega, カタログ# G1780)を用いて行なった。このアッセイ
では、ドナーとマッチするヒト胎盤灌流液(HPP)と臍帯血のユニット(組合せユニット)に
由来する培養NK細胞をエフェクター細胞として用い、一方、特定の腫瘍細胞株細胞を標的
細胞として用いた。この試験で用いた3つのユニットから、HPP細胞のパーセンテージは56
.6%±28.3%であった。エフェクター細胞及び標的細胞を96ウェルのU底組織培養プレー
トに入れ、2%ヒトAB血清(Gemini, カタログ# 100-512)が補充された100μlのフェノール
レッド不含RPMI 1640(Invitrogen, カタログ# 11835-030)中で、様々なエフェクター-標
的(E:T)比率でインキュベートした。培養物を、37℃、5%CO2で、4時間インキュベートし
た。インキュベーション後、50μlの上清を酵素アッセイプレートに移し、LDH活性を、製
造業者によって提供されているように検出し、吸収を、ELISAリーダー(Synergy HT, Biot
ek)中で、490nmで測定した。細胞傷害性を以下の方程式に従って計算した:%細胞傷害性
=(試料-エフェクター自然-標的自然)/(標的最大-標的自然)*100、ここで、「エフェクタ
ー自然」は、エフェクター細胞からのLDHの自然な放出の対照であり;「標的自然」は、標
的細胞からのLDHの自然な放出の対照であり;かつ「標的最大」は、本質的に100%の細胞
が溶解されたときの最大LDH放出の対照である。
【0235】
ヒト胎盤灌流液(HPP)CD34+細胞及び臍帯血(UCB)CD34+細胞の単離。HPP細胞及びUCB細胞
を、Ficoll又は塩化アンモニウムのいずれかを用いて精製し、全有核細胞(TNC)を得た。
その後、TNCを陽性選択手順で用いて、製造業者(StemCell Technologies, Inc.)によって
提供されているプロトコルに従って抗CD34ビーズ及びRoboSepを用いて、CD34+細胞を単離
した。この実験では、CD34+細胞を90%を超える純度で単離した。
【0236】
培養二段階NK細胞に対する腫瘍細胞感受性の研究。ヒト乳癌(HCC2218)、ヒト結腸直腸
腺癌(HT-29)、ヒト慢性骨髄性白血病(CML)、ヒト急性骨髄性白血病(AML)、ヒト膠芽腫(LN
-18及びU-118MG)、ヒト多発性骨髄腫(U266)、ヒト組織球性リンパ腫(U937)、並びにヒト
網膜芽腫(WERI-RB-1)を含む、腫瘍細胞株(表1)を二段階NK細胞と共培養した。二段階培養
NK細胞には、NK2A培地中で21日間培養され、その後、CNK培地中で21日間培養されたNK細
胞と、NK2A培地中で28日間培養され、その後、CNK培地中で14日間培養されたNK細胞とが
含まれた。NK細胞の細胞傷害性を、4時間の共培養後に、乳酸脱水素酵素(LDH)放出アッセ
イで測定した。10:1のエフェクター対標的(E:T)比率で、後者は、通常、前者よりも高い
細胞傷害性を示した(表6)。腫瘍細胞株のうち、LN-18が、NK媒介性の死滅に対して最も感
受性が高く、K562、U937、WERI-RB-1、U-118MG、HT-29、HCC2218、KG-1、及びU266がそれ
に続いた。
【0237】
従って、TSNK細胞は、様々な癌細胞株に対して顕著な細胞傷害性を示した。更に、NK細
胞傷害性は、NK2A培地中での培養期間を21日から28日に延長することによって改善するこ
とができるように思われる。
【表6】
ヒト胎盤灌流液(HPP)CD34+細胞及び臍帯血(UCB)CD34+細胞のマイクロRNAプロファイリ
ング。ドナーとマッチする純化されたHPP CD34+細胞及びUCB CD34+細胞を、MIRVANA(商標
) miRNA単離キット(Ambion, カタログ# 1560)を用いるマイクロRNA(miRNA)調製に供した
。CD34+細胞(0.5~1.5×106細胞)を変性溶解バッファー中で破壊した。その後、この試料
を酸-フェノール+クロロホルム抽出に供して、低分子RNA種が高度に濃縮されたRNAを単
離した。100%エタノールを添加して、該試料を25%エタノールにした。このライセート/
エタノール混合物をガラス繊維フィルターに通すと、高分子RNA種は固相化され、低分子R
NA種は濾液中に回収された。その後、該濾液のエタノール濃度を55%に増大させ、該混合
物を、第二のガラス繊維フィルターに通し、その中で、低分子RNAが固相化されるように
なった。このRNAを数回洗浄し、低イオン強度溶液中で溶出させた。回収された低分子RNA
の濃度及び純度を、260nm及び280nmでのその吸光度を測定することによって決定した。試
験した全てのドナー(n=3)のHPP CD34+細胞に特有であることが分かったmiRNAには、hsa-m
iR-380、hsa-miR-512、hsa-miR-517、hsa-miR-518c、hsa-miR-519b、及びhsa-miR-520aが
含まれた。
【0238】
(7.7.実施例7:プールされたUCB及びHPPからのCD34+細胞の単離)
この実施例は、プールされた臍帯血(UCB)及びヒト胎盤灌流液(HPP)(組合せ)からのCD34
+細胞の単離を示す。UCB:HPPプール比率を評価するために、3つの異なるプール比率の並
列比較を以下のように行なった:(1)最大プール:1×UCB(最大容積)+1×HPP(最大容積);(2)
HPPの部分プール(33%):1×UCB(最大容積)+0.33×HPP(HPP容積の1/3);及び(3)HPPの部分
プール(10%):1×UCB(最大容積)+0.10×HPP(HPP容積の1/10)。合計N=3の実験反復を実施
した。初期のTNC及び容積を記録した。その後、プール試料をCD34+細胞について純化し、
CD34+純度を解凍後に決定した。その後、最適プール比率を、解凍後のCD34+純度対容積又
は細胞カウント(TNC)比率(組合せの%として)プロットからグラフによって決定した。図8
に示すように、終点CD34+純度は、HPP容積含有量とはよく相関するが、HPP TNC含有量と
はそれほど相関しない。全体としては、UCB 85%v/v、HPP 15%v/vが、80%以上の純度の
CD34+細胞を得るための最適プール比率であることが分かった。
【0239】
(7.8.実施例8:GBGM(登録商標)ベースの培地を用いるNK細胞培養の比較)
この実施例は、2つのGBGMベースの培地を用いるNK細胞培養プロセス(三段階プロセス及
び二段階プロセス)の比較を示す。この2つのプロセスを表10にまとめる。両プロセスとも
、胎盤起源のNK細胞及びCD34+細胞の分化のための基本培地としてGBGMを利用した。
【表7】
【0240】
実験パラメータを以下のように概説する:
【0241】
(ドナーロット):
(1)新鮮なUCB由来のCD34+細胞:N=6
(2)新鮮な「組合せ」由来のCD34+細胞:N=2
(3)凍結保存された「組合せ」由来のCD34+:N=8
【0242】
(規模):
マルチウェルディッシュからT-25、最大で複数のT-75フラスコまで、1~80mLの培養容
【0243】
(プロセス法):
(1)二段階プロセス
(2)三段階プロセス
【0244】
(フィーダーの使用):
(1)フィーダーなし
(2)不活化したK562及びPBMCフィーダーを21日目に培養物に添加
【0245】
(播種密度):
20000~50000細胞/mL
【0246】
新鮮なUCB又は新鮮な組合せのいずれかに由来するCD34+細胞を生成させ、実施例7、10
、及び11に記載の方法で凍結保存した。培養物を、37℃、>90%湿度、及び5%CO2のイン
キュベーター中で維持した。細胞成長を最初から最後までモニタリングし(細胞カウント)
、培地交換を週に2回行なって、細胞濃度を1mL当たり5×104~1×106個の範囲内に維持し
た。分化を21日目及び35日目に表現型解析でモニタリングした。フィーダーを用いる場合
、NK培養の21日目に、新鮮な3日培養K562及び解凍後アロPBMCをマイトマイシン-C(16μg/
mL、2時間、37℃)で不活化し、1mL当たり1×106個で二段階プロセス条件に添加した。分
化途中のNKを1mL当たり0.5×106個になるよう規格化した。35日目に、最後の細胞カウン
トを行なった後、新たに培養し、PKH標識したK562細胞(10:1のE:T比、4時間、37℃)を用
いるフローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイを行なって、NKの機能性を評価し
た。
【0247】
(結果)
【0248】
2つのプロセスを用いて新鮮なUCBから得られるCD34+細胞のTNC拡大倍率の中央値は、35
日で同程度であった。二段階プロセスは、新鮮な組合せから得られるCD34+細胞について
、三段階プロセスよりも高いTNC拡大倍率を生じさせるように思われた。全体的なTNC拡大
倍率は、両プロセスを用いて解凍後の組合せから得られるCD34+細胞について同程度であ
ったが、新鮮なUCB又は新鮮な組合せから得られるCD34+細胞よりも有意に少なかった。ま
とめると、三段階プロセスと二段階プロセスは両方とも、培養の最後に同様の細胞収率を
もたらした。
【0249】
21日では、UCB又は組合せから生じた細胞に表現型の顕著な違いはなかった。二段階プ
ロセスは、三段階プロセス(平均6.1%)よりも高いパーセンテージのCD56+CD3- NK細胞(平
均14.7%)を生じさせた。分化度(例えば、CD56+CD3-レベル)は、ドナー依存的であるよう
に見えた。CD3+CD56-(T細胞)集団とCD3+CD56+(NKT様細胞)集団の両方のパーセンテージは
、全ての場合においてごくわずかであった。
【0250】
35日では、両プロセスは、高い終点CD56+CD3-純度レベル(二段階プロセス及び三段階プ
ロセスについて、それぞれ、87.2%及び90.1%)から明らかなように、NK細胞を分化させ
るのに効果的であることが分かった。二段階プロセスにおけるフィーダーの添加は、NK表
現型の純度を高めるように見えたが(フィーダーなしで75.3%;フィーダーありで87.2%)
、三段階プロセスの場合、NK純度に対するフィーダーの観察可能な利益は見られなかった
(フィーダーなしで90.1%;フィーダーありで84.7%)。
【0251】
培養NK細胞は、そのCD16-表現型をずっと維持した。二段階プロセスは、フィーダーの
非存在下で(平均11.2%)、他の条件(<2%)よりもわずかに多いCD56+CD3+細胞を生じさせ
るように見えた。両プロセスにおけるPBMCフィーダー及びK562フィーダーの存在は、NK細
胞集団上の特定のNK機能マーカー(NKp46、DNAM-1、CD94)を有意に上方調節/活性化した。
全体としては、NK純度及び機能マーカー発現プロファイルは、フィーダー条件が同一であ
るとき、2つのプロセス間で同程度であることが分かった。
【0252】
4時間のインビトロのK562細胞傷害性アッセイで決定した場合の、培養NK細胞の機能性
は、フィーダー条件が同一であるとき、2つのプロセス間で同程度であることが分かった
。フィーダーによって活性化されたNK細胞は、インビトロでK562細胞を死滅させるのに極
めて効果的であり、平均比溶解は、二段階プロセス及び三段階プロセスについて、それぞ
れ、93.2%及び93.6%比溶解であった。
【0253】
まとめると、二段階プロセス及び三段階プロセスは、同じフィーダー条件を用いたとき
、NK細胞について、同程度の成長、表現型(純度及び活性化マーカー)、並びにインビトロ
機能性を生じさせることが分かった。二段階プロセスは、三段階プロセスと比較して、NK
細胞の培養の簡便性及び利便性を提供する。
【0254】
(7.9.実施例9:様々な基本培地を用いるNK細胞培養の比較)
この研究は、異なる基本培地を用いてCD34+由来NK細胞の分化及び拡大を評価すること
を目的としている。
【0255】
実験条件を表11にまとめる。細胞を実施例11に記載の通りに培養した。実験は全て、マ
ルチウェルディッシュ/T-フラスコの規模で準備し、37℃、>90%湿度、及び5%CO2のイ
ンキュベーター中で維持した。細胞成長を最初から最後までモニタリングし(細胞カウン
ト)、培地交換を週に2回行なって、細胞濃度を1mL当たり5×104~1×106個の範囲内に維
持した。分化を21日及び35日での表現型解析によりモニタリングした。21日で、新鮮な3
日間培養K562及び解凍後アロPBMCを不活化し、成長途中のNK細胞培養物に1mL当たり1×10
6個で添加した。NK細胞を1mL当たり0.5×106個になるよう規格化した。35日で、最後の細
胞カウントを行なった後、新たに培養し、PKH標識したK562細胞(10:1のE:T比率、4時間、
37℃)を用いるフローサイトメトリーベースの細胞傷害性アッセイを行なって、NKの機能
性を評価した。
【表8】
【0256】
(成長収率)
【0257】
Stemspan H3000及びOpTmizerは、35日でGBGMと同程度の成長収率(TNC拡大倍率)を示し
た。Cellgro、X-VIVO 15、AIM-V、X-VIVO 10、DMEM:F12、5mMのOACを含むDMEM:F12は、GB
GMよりも低い成長収率を示した。
【0258】
(表現型解析)
【0259】
35日(終点)で、GBGMは、約80%の純度のCD56+CD3-細胞を生じさせた。OpTmizer及びSte
mspan H3000は、約50%の純度のCD56+CD3-細胞を生じさせた。DMEM:F12は、約35%の純度
のCD56+CD3-細胞を生じさせた。AIM-V、X-VIVO 10、X-VIVO 15、及びCellgro培地は、約3
0%未満の純度のCD56+CD3-細胞を生じさせた。培養時のDMEM:F12基本培地へのOACの添加
は、終点NK純度を大いに高めることが分かり;培養35日でのCD56+CD3-のパーセンテージは
、35%から72%に増大した。
【0260】
(細胞傷害性/機能性)
【0261】
培養時のDMEM:F12基本培地への5mMのOACの添加は、NK細胞の活性化状態及びインビトロ
機能性を大いに高めることが分かった。OACの添加はまた、NK活性化マーカーNKp46、NKG2
D、DNAM-1、及びCD94のレベルを有意に増大させた。35日のNK細胞のインビトロ機能性(K5
62細胞傷害性)も同様に、21.4%から97.1%に大幅に増大した。
【0262】
全体として、NK細胞特性は、5mMのOACの添加によって有意に強化された。
【0263】
(7.10実施例10:NK細胞の保存及び凍結保存)
この実施例は、NK細胞を保存及び凍結保存する方法を示す。ヒト胎盤灌流液(HPP)及び
臍帯血細胞から単離されたCD34+造血幹細胞を、先の実施例に記載されたプロトコルを用
いて拡大し、NK細胞に分化させた。細胞を、HPP及び臍帯血から単離された直後(0日目)に
、又はNK細胞の最初の成長期の間(単離9日、14日、21日、又は35日後)に凍結保存した。
【0264】
該細胞を以下の凍結保存製剤:製剤1-デキストラン凍結培地:5%DMSO(Sigma Aldrich, D
2650)、55%デキストラン(生理食塩水中、10%w/v)(0.9%塩化ナトリウム注射液中の10%
LMD, Hospira)、40%HAS(Octapharma);製剤2-トレハロース凍結培地:5%DMSO、55%トレ
ハロース(生理食塩水中、10%w/v)、40%HSA;製剤3-CryoStor(登録商標)CS2(BioLife Sol
utions);製剤4-CryoStor(登録商標)CS5(BioLife Solutions);製剤5-CryoStor(登録商標)C
S10(BioLife Solutions);製剤6-無血清凍結培地(Sigma-Aldrich, カタログ# 6295);製剤7
-グリセロール凍結培地(Sigma-Aldrich, CAT# C6039);又は製剤8-DMSO及び無血清凍結培
地(Sigma-Aldrich, CAT# 2639)中で凍結保存した。
【0265】
異なる時点で回収された細胞を培養培地又は生理食塩水溶液で数回洗浄した。その後、
該細胞を遠心分離して、細胞ペレットを得た。上清を除去し、細胞ペレットを、1ミリリ
ットル当たり約1×106~1.5×107個又はそれより多くの細胞になるように凍結保存培地で
懸濁した。該細胞懸濁液を1mL又は2mLのセプタムバイアルに分注し、2~8℃で約10分間イ
ンキュベートした。その後、該細胞を、速度制御フリーザー(Thermo)中、0.5℃/分で凍結
させた。凍結バイアルを液体窒素蒸気中での保存のために低温フリーザーに移した。凍結
保存したNK細胞は、目に見える氷が全て融解するまで試料を穏やかに旋回させて、37℃の
水浴中で急速解凍することができる。細胞試料は、予め温めた培養培地で希釈することが
できる。
【0266】
(7.11.実施例11:NK細胞の保存及び凍結保存)
この実施例は、NK細胞を保存及び凍結保存する別の方法を示す。ヒト胎盤灌流液(HPP)
及び臍帯血細胞から単離されたCD34+造血幹細胞を、上記のプロトコルを用いて拡大し、N
K細胞に分化させた。細胞を、HPP及び臍帯血から単離した直後(0日目)に、又はNK細胞の
最初の成長期の間(単離9日、14日、21日、又は35日後)に凍結保存した。
【0267】
細胞懸濁溶液は、デキストラン-40とHSAを60%デキストラン-40 v/v、40%HSA(25%溶
液から)v/v)の比率で組み合わせることにより調製した。
【0268】
2×凍結溶液は、50%デキストラン-40 v/v、40%HSA(25%溶液)v/v、10%DMSO v/vを用
いて調製した。まず、DMSOをデキストラン-40にゆっくりと添加し、よく混合した。その
後、HSAの25%溶液を混合しながら該溶液にゆっくりと添加した。得られた溶液をよく混
合し、室温にした後、使用した。
【0269】
(凍結保存手順)
【0270】
細胞数を推定し、細胞懸濁液として細胞懸濁溶液中15×106個になるよう規格化した。
細胞懸濁液の容積を決定し、等容積の新たに調製した2×凍結溶液をゆっくりと添加し、
混合した。凍結溶液中の最終的な細胞懸濁液容積を記録し、いくつかのバイアルに分配し
た。マイコプラズマ汚染を検出するために、取っておいた培養上清に対してMycoAlert検
査を行なった。解凍後の生存率、細胞回復、及び細胞特徴を決定するために、留保してお
いた1本のバイアルに対して解凍後試験を行なった。
【0271】
(7.12.実施例12:凍結保存/解凍したNK細胞の解析)
生存率アッセイ。実施例10又は11に見られるような様々な製剤中で凍結保存されたNK細
胞を解凍した。細胞を2×106~3×107細胞/mLの密度で凍結させた。解凍したNK細胞を、
新鮮な細胞又は凍結前の細胞と比較して、解凍0日、3日、及び18日後に、Countess(登録
商標)自動細胞カウンター(Invitrogen)を用いて、細胞生存率について評価した。簡潔に
述べると、10μlの細胞試料を10μlのトリパンブルーと混合した。該細胞混合物をピペッ
ティングして、Countess(登録商標)チャンバースライドに入れた。該スライドを装置に挿
入し、細胞をカウントした。凍結-解凍後細胞は、凍結保存製剤の違いによって、約80%
~90%超の生存率の細胞生存率を示した。
【0272】
アポトーシスアッセイ。解凍したNK細胞を、解凍0日、3日、及び18日後に、BD AnnV/PI
アポトーシスアッセイキットを用いて、アポトーシスについても評価した。簡潔に述べる
と、細胞を1×冷PBSで2回洗浄し、1×結合バッファー(BDアネキシンV/PIアポトーシスキ
ット 品番556547、結合バッファー組成物 品番51-66121E、0.1M Hepes/NaOH(pH7.4)、 1.
4M NaCl、25mM CaCl2。1×希釈液の場合、9部の蒸留水に対して1部の10×バッファー)に
再懸濁した。約100,000個の細胞を含む100μLの細胞懸濁液をFACSチューブに移した。100
μLの1×結合バッファー、5μLのAnnV-FITC、及び5μLのPI-PEを該チューブに添加した。
その後、該チューブを軽くボルテックス処理し、暗所で15分間インキュベートした。その
後、400μLの1×結合バッファーを添加した。試料を1時間以内に解析した。象限及びゲー
トを設定するために用いられた対照は、染色していない細胞、AnnV-FITCのみで染色し、P
Iで染色していない細胞、及びPIのみで染色し、AnnVで染色していない細胞であった。ア
ポトーシス細胞を、サイズ散乱(FSC対SSC)プロット上で「細胞」としてゲートをかけた事
象の集団の%として定量した。凍結-解凍後細胞は、凍結保存製剤の違いによって、約5~
25%の死細胞/後期アポトーシス細胞及び10~25%の初期アポトーシス細胞を示した。全
体として、製剤1(5%DMSO、55%デキストラン(生理食塩水中、10%w/v)、40%HAS)、製剤
2(5%DMSO、55%トレハロース(生理食塩水中、10%w/v)、40%HSA)、製剤4-CryoStor(登
録商標)CS5(BioLife Solutions)、及び製剤5(CryoStor(登録商標)CS10(BioLife Solution
s))は、他の製剤と比較して、より高い細胞生存率及びより少ないアポトーシス細胞を示
した。
【0273】
(7.13.実施例13:プロセス内凍結保存細胞バンキングの評価)
この実施例は、プロセス内凍結保存細胞バンキングの評価を示す。HS-AB又はFBSのいず
れかを血清供給源として用い、Spanholtzらの文献(PLoS One. 5(2):e9221(2010))に記載
されているような方法を用い、UCB CD34+細胞を用いて、細胞培養を開始した。細胞濃度
を決定し、調整し、必要に応じて培地を補充した。7日、9日、10日、又は14日で、約106
~3×106個の細胞を細胞培養物から除去し、遠心分離し、凍結保存培地(5.5%v/vデキス
トラン-40、10%v/v HSA、5%v/v DMSO)に再懸濁した。該細胞を速度制御フリーザーで凍
結させ、凍結保存用の液相窒素保存場所に移した。約1mLの細胞の各バイアルを、1mL当た
り106~107個の範囲の濃度で凍結保存した。残りの培養物は、終点(35日)まで持ち越され
、「新鮮(プロセス内凍結保存なし)」と呼ばれた。表現型解析を細胞培養21日目、28日目
、及び35日目に行なった。インビトロ機能性(K562細胞傷害性、10:1のE:T)を培養35日(終
点)で評価した。
【0274】
プロセス内凍結保存した培養物試料(9日及び14日)の解凍後性能を以下のように評価し
た。細胞バンクバイアルを37℃の水浴中で急速解凍した。その後、該細胞をRPMI-FBS培地
で希釈し、遠心分離し、再懸濁し、培養培地に播種した。その後、培養条件の各々を、培
養過程の開始から累算して35日まで持ち越した。解析(細胞カウント、生存率、表現型解
析、機能性評価)を、その「新鮮」対応物と同じやり方で行なった。
【0275】
(結果)
【0276】
9日、10日、及び14日のプロセス内凍結保存試料は全て、プロセス内時点又は細胞濃度
にかかわらず、優れた解凍後生存率をもたらした(96.2%~97.3%トリパンブルー陰性、8
6.1%~93.2%アネキシン-V陰性/TO-PRO-3陰性)。プロセス内バンキングは、培養終了時(
35日)の収率損失に対して負の影響を及ぼさなかった。HS-AB又はHS-ABのいずれかを血清
供給源とした、解凍9日後又は解凍14日後のいずれかの条件と「新鮮」条件の間の最終的
な細胞収率は、同程度である。
【0277】
21/28/35日の時点での成熟途中のNK細胞の表現型プロファイルは、それぞれ、「新鮮」
培養物と「解凍後」培養物の間で全く同等であることが分かった。表現型純度(CD56+CD3-
)も同じく同等であることが分かった。特定のNK機能マーカー(CD94、NKG2D)の発現は、測
定間のばらつきのために若干異なっていた。
【0278】
K562細胞傷害性アッセイでは、解凍後9/14日の培養NK細胞は、プロセス内凍結保存して
いない培養NK細胞と比較して、約0~20%より低い比K562溶解計測値を出すことが分かっ
た。しかしながら、NK細胞傷害機能に関する表面マーカー(DNAM1、NKp46、NKG2Dなど)の
発現レベルが同時には低下しなかったこと考慮すると、ドナー及びアッセイ反復を追加し
て、その傾向を確認する必要があるであろう。全体として、培養9/14日でのプロセス内凍
結保存は、プロセスの結果にごくわずかな影響しか及ぼさなかった。
【0279】
(7.14.実施例14:NK細胞投与のための解凍後媒体の開発)
この実施例は、動物におけるNK細胞投与のための解凍後媒体の開発を示す。NK細胞の生
存率、細胞傷害性、細胞回復、及び凝集塊形成に対する注射媒体及び細胞密度の効果を試
験した。生存率はトリパンブルー染色により評価し;細胞傷害性はFACS(10:1の比のNK:K56
2)により評価し、凝集塊形成(clump formulation)は顕微鏡アッセイにより評価した。結
果を、様々なタイプの注射媒体及び細胞密度について表9~12に示す。
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【0280】
これらの結果は、プラズマライト+1%HSA注射媒体が、PBS+1%FBS注射媒体よりも良好
な生存率及び細胞傷害性を有するNK細胞を維持することを示した。また、細胞傷害性は、
細胞を注射媒体に懸濁した後、時間とともに減少した。細胞をプラズマライト+1%HSAに
懸濁した場合、生存率及び細胞傷害性に対する細胞密度効果は観察されなかった。また、
NK細胞は、1時間後に、PBS+1%FBS媒体又はプラズマライト+1%HSA媒体中で沈殿したが;
細胞は、凝集しないようであった。最後に、凍結-解凍プロセスから、細胞回復及び生存
率の明らかな損失は観察されなかった。
【0281】
(7.15.実施例16:NK細胞投与のための解凍後媒体の開発)
NK細胞の生存率、細胞傷害性、細胞回復、及び凝集塊形成に対する様々なHSA濃度の効
果も試験した。実施例19から同じ方法を利用した。結果を、様々なタイプの注射媒体及び
細胞密度について表14~16に示す。
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【0282】
これらの結果は、生存率が、試験した3つ全ての注射媒体で、解凍後4時間にわたって十
分に維持されたことを示す。また、細胞傷害性は、3つ全ての注射媒体で時間とともに減
少した。しかしながら、低下のレベルは、より高濃度のHSAでより小さかったのに対し、
プラズマライト+5%HSAは最も高い細胞傷害性を維持した。NK細胞が3つ全ての注射媒体中
で凝集しないことも観察された。全体として、プラズマライトは、PBSよりも良好な注射
媒体候補であるように思われる。
【0283】
(7.16.実施例17:IL-2なしでのNK細胞の培養)
この実施例は、IL-2の非存在下でのNK細胞の培養を示す。細胞培養を実施例11に記載の
二段階プロセスで行なった。第一の培地中の5つの異なる濃度:0、200、500、1000、2000U
/mLのIL-2を試験した。
【0284】
結果は、培養下の発生途中のNK細胞が、成長時にIL-2に応答しないようであったことを
示す。NK細胞の純度は、IL-2に依存しないようであり:NK細胞は、IL-2の非存在下でCD56+
CD3-表現型に分化する。インビトロでのNK細胞発生には、IL-7とIL-15とSCFの組合せで十
分であるように思われた。
【0285】
等価物:
本発明は、本明細書に記載の具体的な実施態様によって範囲が限定されるべきではない
。実際、記載された変更に加えて、本発明の様々な変更が、上の説明及び添付の図面から
当業者に明白となるであろう。そのような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれるこ
とが意図される。
【0286】
本明細書で引用された全ての参考文献は、各々の個々の刊行物、特許、又は特許出願が
、あらゆる目的のために、その全体として引用により具体的かつ個別に組み込まれること
が示される場合と同じ程度に、あらゆる目的のために、その全体として引用により本明細
書中に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示を目的としたものであ
り、本発明が先行発明を理由としてそのような刊行物に先行する資格がないという承認と
解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に実質的に記載された、新規な物、方法及び製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2022-03-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0286
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0286】
本明細書で引用された全ての参考文献は、各々の個々の刊行物、特許、又は特許出願が
、あらゆる目的のために、その全体として引用により具体的かつ個別に組み込まれること
が示される場合と同じ程度に、あらゆる目的のために、その全体として引用により本明細
書中に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日前のその開示を目的としたものであ
り、本発明が先行発明を理由としてそのような刊行物に先行する資格がないという承認と
解釈されるべきではない。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する方法であって:
(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細
胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、イ
ンターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7
)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確
定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに
(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活
性化NK細胞の集団を産生すること
を含む、前記方法。
(構成2)
活性化ナチュラルキラー(NK)細胞の集団を産生する二工程方法であって、該方法の第一
の工程が、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン-7(IL-7)、及びインターロイキン-15(IL-
15)のうちの1つ又は複数を含む第一の培地中で、造血幹細胞又は前駆細胞の集団を拡大す
ることを含み、ここで、該SCF、IL-7、及びIL-15が該培地の不確定成分に含まれず、かつ
ここで、該拡大することの間に、該造血幹細胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞
又は前駆細胞がNK細胞に分化し;かつ
該方法の第二の工程が、該第一の工程由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第
二の培地中で拡大して、活性化NK細胞を産生すること
を含む、前記方法。
(構成3)
前記第一の培地が、Fms様チロシンキナーゼ3リガンド(Flt3-L)、トロンボポエチン(Tpo
)、インターロイキン-2(IL-2)、又はヘパリンのうちの1つ又は複数を更に含む、構成1記
載の方法。
(構成4)
前記第一の培地が、胎仔ウシ血清又はヒト血清を更に含む、構成3記載の方法。
(構成5)
前記SCFが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、構成3記載の方
法。
(構成6)
前記Flt3-Lが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、構成3記載の
方法。
(構成7)
前記IL-2が、前記第一の培地中、約50~約1500IU/mLの濃度で存在する、構成3記載の
方法。
(構成8)
前記IL-7が、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、構成3記載の方
法。
(構成9)
前記IL-15が、前記第一の培地中、1~約150ng/mLの濃度で存在する、構成3記載の方
法。
(構成10)
前記Tpoが、前記第一の培地中、約1~約150ng/mLの濃度で存在する、構成3記載の方
法。
(構成11)
前記ヘパリンが、前記第一の培地中、約0.1~約30U/mLの濃度で存在する、構成3記載
の方法。
(構成12)
前記第二の工程における前記IL-2が、前記第二の培地中、50~約1500IU/mLの濃度で存
在する、構成1記載の方法。
(構成13)
該第二の培地が、胎仔ウシ血清(FCS)、トランスフェリン、インスリン、エタノールア
ミン、オレイン酸、リノール酸、パルミチン酸、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びフィト
ヘマグルチニンのうちの1つ又は複数を更に含む、構成1記載の方法。
(構成14)
前記造血幹細胞又は前駆細胞がCD34 + である、構成1記載の方法。
(構成15)
前記造血幹細胞又は前駆細胞が、ヒト胎盤灌流液由来の造血幹細胞又は前駆細胞、及び
臍帯由来の造血幹細胞又は前駆細胞を含み、ここで、該胎盤灌流液及び該臍帯血が同じ胎
盤に由来するものである、構成1記載の方法。
(構成16)
工程(b)のフィーダー細胞が、マイトマイシンC処理した末梢血単核細胞(PBMC)、K562細
胞、又は組織培養物接着性幹細胞を含む、構成1記載の方法。
(構成17)
前記NK細胞が、CD3 - CD56 + CD16 - である、構成1記載の方法。
(構成18)
前記NK細胞が更にCD94 + CD117 + である、構成17記載の方法。
(構成19)
前記NK細胞が更にCD161 - である、構成17記載の方法。
(構成20)
前記NK細胞が更にNKG2D + である、構成17記載の方法。
(構成21)
前記NK細胞が更にNKp46 + である、構成17記載の方法。
(構成22)
前記NK細胞が更にCD226 + である、構成17記載の方法。
(構成23)
(a)造血幹細胞又は前駆細胞の集団が拡大し、かつ該拡大することの間に、該造血幹細
胞又は前駆細胞の集団内の複数の造血幹細胞又は前駆細胞がNK細胞に分化するように、イ
ンターロイキン-15(IL-15)、並びに任意に幹細胞因子(SCF)及びインターロイキン-7(IL-7
)のうちの1つ又は複数を含み、ここで、該IL-15並びに任意のSCF及びIL-7が該培地の不確
定成分に含まれない、第一の培地中に、該集団を播種すること;並びに
(b)工程(a)由来の細胞をインターロイキン-2(IL-2)を含む第二の培地中で拡大して、活
性化NK細胞の集団を産生すること:
を含む方法によって得られる活性化NK細胞の集団。
(構成24)
腫瘍細胞の増殖を抑制する方法であって、該腫瘍細胞を複数のCD94 + CD117 + NK細胞と接
触させることを含み、ここで、該NK細胞が、構成1記載の方法によって産生されたもの
である、前記方法。
(構成25)
前記腫瘍細胞が、原発性腺管癌細胞、膠芽腫細胞、白血病細胞、急性T細胞白血病細胞
、慢性骨髄リンパ腫(CML)細胞、急性骨髄性白血病細胞、慢性骨髄性白血病(CML)細胞、肺
癌細胞、結腸腺癌細胞、組織球性リンパ腫細胞、多発性骨髄腫細胞、結腸直腸癌細胞、結
腸直腸腺癌細胞、前立腺癌細胞、又は網膜芽腫細胞である、構成24記載の方法。
【外国語明細書】