(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078140
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】工作機械装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20220517BHJP
B23Q 41/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
B23Q41/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022026250
(22)【出願日】2022-02-23
(62)【分割の表示】P 2019549032の分割
【原出願日】2017-10-17
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】古川 和也
(72)【発明者】
【氏名】長戸 一義
(72)【発明者】
【氏名】鈴山 惠史
(57)【要約】
【課題】複数の作業機モジュールで行われた一連の加工関連作業のトレーサビリティを、個別情報付与装置でワークに付与された個別情報によって可能とする工作機械装置を提供することを課題とする。
【解決手段】
工作機械装置は、ワークに対して一連の加工関連作業を順次行う複数の作業機モジュールと、複数の作業機モジュールの間で前記ワークの搬送を行うロボットと、複数の作業機モジュールに搬入されて加工関連作業が行われた前記ワークに対して後続する加工関連作業で加工対象外となる表面に個別情報をマーク加工する個別情報付与装置と、ロボットに配設されており、個別情報付与装置でマーク加工された個別情報を読み取るリーダと、記憶装置と、個別情報付与装置で個別情報がマーク加工されたワークに対して複数の作業機モジュールが行った加工関連作業の加工履歴情報を、リーダにより読み取られた個別情報に対応付けて記憶装置に記憶させる制御装置と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して一連の加工関連作業を順次行う複数の作業機モジュールと、
前記複数の作業機モジュールの間で前記ワークの搬送を行うロボットと、
前記複数の作業機モジュールに搬入されて加工関連作業が行われた前記ワークに対して後続する加工関連作業で加工対象外となる表面に個別情報をマーク加工する個別情報付与装置と、
前記ロボットに配設されており、前記個別情報付与装置でマーク加工された前記個別情報を読み取るリーダと、
記憶装置と、
個別情報付与装置で前記個別情報がマーク加工された前記ワークに対して前記複数の作業機モジュールが行った加工関連作業の加工履歴情報を、前記リーダにより読み取られた個別情報に対応付けて前記記憶装置に記憶させる制御装置と、を備えた工作機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トレーサビリティが可能な工作機械装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トレーサビリティが可能な工作機械装置に関し、種々の技術が提案されている。
【0003】
例えば、下記特許文献1に記載の技術は、データ収集装置によって、ワークIDと、加工ステーションが有する加工処理装置(即ち、ホーニング装置)の装置動作データと、を収集し、かつ、ワークIDと装置動作データと、を紐付ける装置動作データの収集方法であって、加工ステーションにおいて、ホーニング装置による任意のワークの加工処理が完了した旨を示す加工完了信号の発信時を基準として、加工完了信号の発信時から予め設定した一定時間の間に、データ収集装置によって、ワークIDと装置動作データと、を紐付ける装置動作データ紐付け工程を備えるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、上記特許文献1に記載の技術では、ワークIDを介したトレーサビリティが、一つの加工処理装置(即ち、ホーニング装置)に関して行うことが可能である。しかしながら、加工ステーションが有する複数の加工処理装置において、一連の加工やワークIDの付与が行われる場合があり、そのような場合に対応した新たなトレーサビリティの確保が求められていた。
【0006】
そこで、本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、複数の作業機モジュールで行われた一連の加工関連作業のトレーサビリティを、個別情報付与装置でワークに付与された個別情報によって可能とする工作機械装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書は、ワークに対して一連の加工関連作業を順次行う複数の作業機モジュールと、複数の作業機モジュールの間でワークの搬送を行うロボットと、複数の作業機モジュールに搬入されて加工関連作業が行われた前記ワークに対して後続する加工関連作業で加工対象外となる表面に個別情報をマーク加工する個別情報付与装置と、ロボットに配設されており、個別情報付与装置でマーク加工された個別情報を読み取るリーダと、記憶装置と、個別情報付与装置で個別情報がマーク加工されたワークに対して複数の作業機モジュールが行った加工関連作業の加工履歴情報を、リーダにより読み取られた個別情報に対応付けて記憶装置に記憶させる制御装置と、を備えた工作機械装置を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、工作機械装置は、複数の作業機モジュールで行われた一連の加工関連作業のトレーサビリティを、個別情報付与装置でワークに付与された個別情報によって可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る工作機械装置1の外観正面図である。
【
図2】
図2は、ベースユニット2Bの内部構造を示した図である。
【
図3】
図3は、アーム21の動作態様の一例を示した図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る工作機械装置1を示したブロック図である。
【
図5】
図5は、アーム21の再搬入動作の制御プログラムを示したフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る工作機械装置1の全体構成について、
図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る工作機械装置1の外観正面図である。
【0011】
(工作機械装置の全体構成)
本実施形態に係る工作機械装置1は、
図1に示すように、複数(
図1では5つ)のベースユニット2A~2Eからなるベース3と、ベース3に対して配列された複数(
図1では9つ)の作業機モジュール4A~4Iとを備えている。基本的には、1つのベースユニットに対して2つの作業機モジュールが配置されるが、1つのベースユニットに対して1つの作業機モジュールのみ或いは3以上の作業機モジュールが配置されても良い。更に、ベース3と独立して作業機モジュールが配置されても良い。例えば、
図1に示す例では、最も左側に配置されたベースユニット2Aには1つの作業機モジュール4Aが配置され、他のベースユニット2B~2Eには各2つの作業機モジュール4B~4Iが配置されている。尚、以下の説明において、前後、左右、上下は、
図1の工作機械装置1の正面側から見た場合における前後、左右、上下として説明する。即ち、作業機モジュール4A~4Iが配列されている方向は左右方向であり、作業機モジュール4A~4Iの配列方向と交差する工作機械装置1の奥行き方向が前後方向である。
【0012】
また、複数の作業機モジュール4A~4Iは、1つの加工ラインとなるように左右方向に一列に配列されている。更に、各作業機モジュール4A~4Iは、等間隔で且つ互いの側壁が近接するように配列されている。尚、作業機モジュール4A~4Iには、後述するようにワークに対する作業内容が異なる複数種類のモジュールが存在する。但し、作業機モジュール4A~4Iは、種類に関わらず基本的に同一寸法で同一外観を有している。その結果、本実施形態に係る工作機械装置1は、見た目に統一感のあるものとなっている。
【0013】
また、作業機モジュール4A~4Iでは、左右方向の寸法が、前後方向の寸法に対して相当に小さくされている。これに対して、ベースユニット2A~2Eは、上方に載置される作業機モジュール4A~4Iに対応した寸法を有している。例えば、ベースユニット2Aでは、左右方向の寸法が、1つの作業機モジュールが載置された状態における作業機モジュールの左右方向の寸法とほぼ等しくされている。ベースユニット2B~2Eでは、左右方向の寸法が、2つの作業機モジュールが載置された状態における作業機モジュールの左右方向の寸法とほぼ等しくされている。即ち、ベース3は、左右方向において、9つの作業機モジュール4A~4Iが丁度載置される大きさのものとされている。以上のような構成から、本実施形態に係る工作機械装置1は、9つの作業機モジュール4A~4Iが配列されているにも拘わらず、配列方向における当該装置全体の長さが比較的短いものとすることができる。
【0014】
また、ベース3を構成する各ベースユニット2A~2Eは、それぞれ互いに固定されて1つのベースを構成している。上述したように、ベース3において、ベースユニット2Aを除くベースユニット2B~2Eの各々は、2つの作業機モジュール4B~4Iを載置させることが可能となっている。それら4つのベースユニット2B~2Eでは、各々が規格化されており、互いに同じ形状、寸法、構造のものとされている。従って、ベース3を構成するベースユニットの数は、適宜増減することが可能である。それに伴って、配列する作業機モジュールの数についても、自由に変更することが可能となる。尚、本実施形態では、ベース3は、複数のベースユニット2A~2Eから構成されているが、ベース3をベースユニット2A~2Eに分割せずに単体で構成されても良い。
【0015】
次に、ベースユニット2A~2Eの内部構造について説明する。
図2は、ベースユニット2Bの内部構造を示した図である。尚、ベースユニット2A~2Eは、載置される作業機モジュールの数が異なるのみで、基本的に同一の構成を有している。そこで、以下は、ベースユニット2Bについて説明し、他のベースユニット2A、2C~2Eの説明は省略する。
【0016】
図2に示すように、ベースユニット2Bには、上部に載置される作業機モジュールの数に応じた数のレール11が設けられている。本実施形態では、ベースユニット2Bにおいて、2つの作業機モジュール4B、4Cが載置されるので、2対のレール11が、前後方向に並んで設けられている。レール11は、作業機モジュールの引き出しの際の作業機モジュールが移動する軌道を画定するものとなっている。これに対して、作業機モジュール4B、4Cのベース3に接する面には、レール11と対応する車輪が設けられている。そして、ユーザは、レール11上で車輪を移動させることによって、作業機モジュール4B、4Cをベースユニット2Bに対して容易に前後方向に移動させることが可能である。
【0017】
更に、ユーザは、作業機モジュール4B、4Cを、ベースユニット2Bから離脱可能な位置まで移動させることが可能である。その結果、ユーザは、ベース3上に配列された各作業機モジュール4A~4Iの一部の入れ替えや並べ替えを容易に行うことが可能となる。
【0018】
また、作業機モジュール4A~4Iの正面側の側壁には、コントローラ5が配置されている。コントローラ5は、情報の表示装置としての液晶ディスプレイや、ユーザの操作を受け付ける操作受付装置としての各種操作ボタンを備えている。これによって、コントローラ5は、工作機械装置1に関する各種操作を受け付けたり、工作機械装置1の現在の作動状況や設定状況等を表示する。また、液晶ディスプレイの前面には、タッチパネルが配置されている。これによって、コントローラ5は、タッチパネルを用いた操作についても可能に構成されている。また、コントローラ5は、工作機械装置1のアームの姿勢を教示する為の各種パラメータを入力する場合においても用いられる。
図1に示す例では、コントローラ5は、一部の作業機モジュール4B~4Hのみに配置されているが、全ての作業機モジュール4A~4Iに配置されても良い。
【0019】
(作業機モジュールの構成)
上述した工作機械装置1は、製造物であるワークに対して、各種のツール等による一連の加工関連作業等を行って、最終的な製品を製造するものである。具体的には、加工ラインに対して配列された各作業機モジュール4A~4Iが、1つのワークに対して順次作業を行う。
【0020】
ここで、作業機モジュール4A~4Iは、複数種類あって、種類毎に作業内容が決められている。例えば、本実施形態では、工作機械装置1内にワークが投入される搬入モジュール、旋削加工が行われる旋盤モジュール、ドリルによる穴あけやミーリング加工等が行われるドリルモジュール、ワークに対して所定項目の測定が行われる測定モジュールがある。更に、ワークに対してワークID(Identification)のマーク加工が行われるIDモジュール、ワークのボブ加工が行われるボブモジュール、ワークのバリ取り加工が行われるバリ取りモジュール、ワークの洗浄が行われる洗浄モジュール、ワークの仮置きが行われる仮置きモジュール、工作機械装置1内からワークが排出される搬出モジュールがある。
【0021】
尚、ベース3に対してどの種類の作業機モジュールが配置されるかは、ワークに対する作業内容によって異なる。また、ベース3に対して配置される作業機モジュールの数も、ワークに対する作業内容によって異なる。また、作業機モジュールの並び順については、一部の作業機モジュールを除いて、作業内容に応じてユーザ側で任意に変更可能である。
【0022】
例えば、作業機モジュールの配置の一例として、
図1に示す例では、ベース3の最も左側の作業機モジュール4Aとして、ワークの投入と仮置きが行われる搬入兼仮置きモジュールが配置され、ベース3の最も右側の作業機モジュール4Iとして、ワークの排出と仮置きが行われる搬出兼仮置きモジュールが配置されている。そして、搬入兼仮置きモジュールと搬出兼仮置きモジュールの間には、作業機モジュール4B~4Hとして、左側から順に、旋盤モジュール、測定モジュール、ドリルモジュール、ID兼仮置きモジュール、ボブモジュール、バリ取りモジュール、洗浄モジュールが、それぞれ配置されている。尚、本実施形態において、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)では、ドリルによるミーリング加工が行われる。ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)では、ワークのマーク加工と仮置きが行われる。
【0023】
また、工作機械装置1は、ワークを作業機モジュール4A~4Iの配列方向に移送するワークの搬送装置、ワークの反転装置、作業位置へのワークの装着装置、作業位置からのワークの離脱装置として、アーム21を備えている。尚、工作機械装置1が備えているアーム21の数は、ベースユニット2A~2Eの数に比例する。基本的には、2台の作業機モジュールが配置された2つのベースユニット(即ち4台の作業機モジュール)に対して、1つのアーム21が配置される。例えば、本実施形態では、ベース3は、搬入モジュールが載置されたベースユニット2Aを除くと、4つのベースユニット2B~2Eからなる。従って、アーム21は、ベース3に2本配置されることとなる。
【0024】
ここで、アーム21は、ベース3と略同じ高さのテーブル24上に配置されており、ベース3の側面に設けられたレールに沿って、テーブル24とともに作業機モジュール4A~4Iの配列方向である左右方向に移動可能に構成されている。即ち、アーム21は、ベース3と作業機モジュール4A~4Iの外壁とによって形成された作業空間前を、左右方向に移動することが可能とされている。また、アーム21の先端部には、ワークを保持する保持具として、チャック25が設けられている。そして、アーム21は、作業機モジュール4A~4Iの作業空間内において、ワークを保持した状態のチャック25を移動させることが可能とされている。これらによって、複数の作業機モジュール4A~4I間において、ワークの搬送が可能である。
【0025】
また、アーム21は、
図2に示すように多関節型のアームであり、アーム21の姿勢を制御可能とする複数の関節部を有している。具体的には、アーム21は、テーブル24と第1アーム26との接続部分にある第1関節部27と、第1アーム26と第2アーム28との接続部分にある第2関節部29と、第2アーム28とチャック25との接続部分にある第3関節部30を備えている。また、アーム21は、各関節部において、アーム21の角度を変位させる駆動軸を有している。従って、ユーザは、第1関節部27の駆動軸(以下、第1駆動軸31という)を駆動させることによって、テーブル24に対する第1アーム26の角度を変位させることが可能である。また、ユーザは、第2関節部29の駆動軸(以下、第2駆動軸32という)を駆動させることによって、第1アーム26に対する第2アーム28の角度を変位させることが可能である。また、ユーザは、第3関節部30の駆動軸(以下、第3駆動軸33という)を駆動させることによって、第2アーム28に対するチャック25の角度を変位させることが可能である。尚、各駆動軸31~33の駆動源には、例えば、サーボモータ等が使用される。
【0026】
従って、アーム21は、各駆動軸31~33の駆動によって、アーム21の姿勢を自由に制御することが可能となっている。例えば、アーム21は、
図3に示すように、アーム21を折り畳んだり、アーム21を伸ばすことによって、チャック25で保持したワーク40を空間内で自由に移動させることが可能となる。更に、アーム21は、第3駆動軸33の回転駆動によって、ワーク40を180度反転させることも可能である。また、上下方向をRY軸、前後方向をRZ軸とすると、アーム21は、各駆動軸31~33の駆動によって、ワーク40のRY値を維持した状態でRZ値を変位させる(即ち、ワーク40を水平方向に移動させる)ことも可能である。同じく、アーム21は、ワーク40のRZ値を維持した状態でRY値を変位させる(即ち、ワーク40を鉛直方向に移動させる)ことも可能である。その結果、アーム21は、そのアーム21を作業機モジュール4A~4Iの作業位置まで伸ばし、チャック25によって、作業位置にワーク40を装着させることや、作業位置からワーク40を離脱させること等も可能である。
【0027】
また、テーブル24の下方には、アーム回転装置41が設けられている。アーム回転装置41は、テーブル24を水平方向に回転させることで、テーブル24上にあるアーム21についても回転させ、アーム21全体の向きを制御することが可能である。
【0028】
そして、工作機械装置1では、最も左側の搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)に投入されたワーク40が、アーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Aの右側に隣接する旋盤モジュール(作業機モジュール4B)に搬送される。旋盤モジュール(作業機モジュール4B)では、ワーク40の表面全体が旋削される。その後、ワーク40は、アーム21によって右方向へ移動され、加工ラインの略中央に位置するID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)に搬送される。
【0029】
ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)では、ワーク40の表面にワークIDがマーク加工される。その後、ワーク40は、これまでの搬送方向(右方向)とは反対の左方向へアーム21によって移動され、測定モジュール(作業機モジュール4C)に搬送される。測定モジュール(作業機モジュール4C)では、ワーク40に対して所定項目の測定が行われる。その後、ワーク40は、直前の搬送方向(左方向)とは反対の右方向へアーム21によって移動され、作業機モジュール4Cの右側に隣接するドリルモジュール(作業機モジュール4D)に搬送される。
【0030】
ドリルモジュール(作業機モジュール4D)では、ワーク40に対してミーリング加工が行われる。その後、ワーク40は、アーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Dの右側に隣接するID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)に搬送される。ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)では、ワーク40が仮置きされる。その後、ワーク40は、これまでのアーム21とは別のアーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Eの右側に隣接するボブモジュール(作業機モジュール4F)に搬送される。
【0031】
ボブモジュール(作業機モジュール4F)では、ワーク40に対してボブ加工が行われる。その後、ワーク40は、アーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Fの右側に隣接するバリ取りモジュール(作業機モジュール4G)に搬送される。バリ取りモジュール(作業機モジュール4G)では、ワーク40に対して、バリ取り加工が行われる。その後、ワーク40は、アーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Gの右側に隣接する洗浄モジュール(作業機モジュール4H)に搬送される。
【0032】
洗浄モジュール(作業機モジュール4H)では、ワーク40の洗浄が行われる。その後、ワーク40は、アーム21によって右方向へ移動され、作業機モジュール4Hの右側に隣接する搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)に搬送される。搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)では、ワーク40が排出される。
【0033】
このようにして、各作業機モジュール4A~4Iにおいて、一連の加工関連作業が行われる。従って、旋盤モジュール(作業機モジュール4B)の旋削加工の作業は、所定の加工関連作業に相当する。また、測定モジュール(作業機モジュール4C)の測定作業、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)のミーリング加工の作業、ボブモジュール(作業機モジュール4F)のボブ加工の作業、バリ取りモジュール(作業機モジュール4G)のバリ取り加工の作業、及び洗浄モジュール(作業機モジュール4H)の洗浄作業は、所定の加工関連作業に後続する加工関連作業に相当する。
【0034】
また、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)では、ワーク40の表面のうち、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)のミーリング加工、ボブモジュール(作業機モジュール4F)のボブ加工、及びバリ取りモジュール(作業機モジュール4G)のバリ取り加工のいずれも行われない領域(つまり、加工対象外の表面)に対して、ワークIDがマーク加工される。ワークIDは、2次元コード(例えば、スタック型又はマトリックス型のコード)であって、ワーク40を識別するための個別情報である。尚、ワークIDは、1次元コード(例えば、バーコード)等であっても良い。
【0035】
また、ユーザは、測定モジュール(作業機モジュール4C)、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)、ボブモジュール(作業機モジュール4F)、バリ取りモジュール(作業機モジュール4G)、又は洗浄モジュール(作業機モジュール4H)のいずれかの作業機モジュールで作業が終了したワーク40に対して目視検査を行う場合には、コントローラ5で第1所定の操作を行う。これによって、作業機モジュール4A~4Iにおける一連の加工関連作業が中断され、ワーク40が、アーム21によって、搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、又は搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)のいずれかの作業機モジュールに仮置きされる。仮置きされたワーク40は、ユーザによって、作業機モジュール4A、4E、4Iから取り出され、目視検査される。
【0036】
目視検査されたワーク40は、ユーザによって、搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、又は搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)のいずれかの作業機モジュールに仮置きされる。更に、ユーザがコントローラ5で第2所定の操作を行うと、仮置きされたワーク40が、アーム21によって、目視検査の直前に終了した作業に続く作業が行われる作業機モジュールに搬送される。これによって、作業機モジュール4A~4Iにおける一連の加工関連作業が再開される。尚、このようなアーム21の動作(以下、アーム21の再搬入動作という)は、後述する
図5のフローチャートで示された制御プログラムに従って行われる。
【0037】
(工作機械装置の制御構成)
次に、本実施形態に係る工作機械装置1の制御構成について、
図4を用いて説明する。
図4は、本実施形態に係る工作機械装置1を示したブロック図である。
【0038】
図4に示すように、本実施形態に係る工作機械装置1は、工作機械装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである制御回路部51と、ユーザの操作を受け付けるとともに情報の表示を行うコントローラ5と、LAN(Local Area Network)等を介して接続された上述した作業機モジュール4A~4Iと、アーム21と、カメラ71等を基本的に有している。尚、作業機モジュール4A~4Iやアーム21の数は、上述したように、ベースユニットの数に応じた数となる。
【0039】
ここで、コントローラ5は、工作機械装置1の現在の作動状況や設定状況等を表示する液晶ディスプレイ52と、ユーザの操作を受け付ける操作受付装置として操作部53とを備えている。尚、操作部53は、ハードボタンであっても良いし、液晶ディスプレイ52の前面に配置されたタッチパネルであっても良い。そして、ユーザは、液晶ディスプレイ52の表示内容を確認するとともに、操作部53を操作することによって、工作機械装置1に対する各種操作を行う。
【0040】
制御回路部51は、演算装置及び制御装置としてのCPU61を備えており、更にCPU61が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるRAM62、ROM63、ROM63から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ64等の内部記憶装置を備えている。
【0041】
また、フラッシュメモリ64は、CPU61が行う処理に必要な情報、例えば、制御プログラム72等が記憶されている。尚、制御プログラム72には、工作機械装置1の加工制御プログラム、後述する
図5のフローチャートで示された制御プログラム等がある。更に、後述のデータベース73が設けられている。
【0042】
そして、制御回路部51は、フラッシュメモリ64から制御プログラムを読み出し、読み出した制御プログラムに従って、作業機モジュール4A~4Iやアーム21やカメラ71等に対して制御信号を出力することによって、工作機械装置1の制御を行う。そして、制御信号を受け取った作業機モジュール4A~4Iやアーム21やカメラ71は、受け取った制御信号に従って、各駆動源の駆動等を行う。
【0043】
例えば、アーム21は、第1関節部27の第1駆動軸31を回転駆動する為の第1関節モータ65と、第2関節部29の第2駆動軸32を回転駆動する為の第2関節モータ66と、第3関節部30の第3駆動軸33を回転駆動する為の第3関節モータ67と、アーム回転装置41を回転駆動させる為の回転駆動モータ68とを備えている。更に、アーム21は、アーム21を作業機モジュール4A~4Iの配列方向である左右方向に移動する為の搬送駆動モータ69を備えている。各モータ65~69は、例えば、サーボモータ等からなる。そして、工作機械装置1では、制御回路部51から出力された制御信号に従って、各モータ65~69が駆動することによって、アーム21を任意の位置で任意の姿勢に制御することが可能となる。
【0044】
但し、本実施形態では、アーム21は、制御回路部51と同様な構成を有する制御回路部70によって、アーム21の全体の制御を行っている。そのため、制御回路部51は、アーム21の制御回路部70を介して、アーム21を制御することが可能である。また、作業機モジュール4A~4Iは、制御回路部51と同様な構成の制御回路部6A~6Iを個別に備えている。作業機モジュール4A~4Iは、制御回路部6A~6Iによって、作業機モジュール4A~4Iの全体の制御を個別に行っている。そのため、制御回路部51は、作業機モジュール4A~4Iの制御回路部6A~6Iを介して、作業機モジュール4A~4Iを制御することが可能である。
【0045】
また、フラッシュメモリ64に記憶された加工制御プログラムは、工作機械装置1で実施される加工関連作業に応じたものである。つまり、複数の作業機モジュール4A~4Iで実施される一連の加工関連作業に従った加工制御プログラムが、フラッシュメモリ64に格納されている。尚、工作機械装置1が一連の加工関連作業を複数種類実施可能である場合には、実施可能な一連の加工関連作業毎に対応する加工制御プログラムが、フラッシュメモリ64に格納されている。そして、工作機械装置1では、加工制御プログラムに従った順序で、各作業機モジュール4A~4Iにおいて、ワークに対する加工が行われる。
【0046】
また、制御回路部51は、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)からワーク40を取り出すアーム21に対して、そのワーク40にID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)でマーク加工させたワークID81の情報(以下、ワークID81という)を出力する。
【0047】
そして、ワークID81を受け取ったアーム21は、測定モジュール(作業機モジュール4C)にワーク40を移動させた際に、その受け取ったワークID81を測定モジュール(作業機モジュール4C)に出力する。その後、測定モジュール(作業機モジュール4C)は、測定モジュール(作業機モジュール4C)からワーク40を取り出すアーム21に対して、その受け取ったワークID81を出力する。
【0048】
このようにして、アーム21は、測定モジュール(作業機モジュール4C)、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、ボブモジュール(作業機モジュール4F)、バリ取りモジュール(作業機モジュール4G)、及び洗浄モジュール(作業機モジュール4H)との間において、ワークID81の送受信を行う。
【0049】
更に、測定モジュール(作業機モジュール4C)、ドリルモジュール(作業機モジュール4D)、ボブモジュール(作業機モジュール4F)、バリ取りモジュール(作業機モジュール4G)、及び洗浄モジュール(作業機モジュール4H)では、それぞれの加工関連作業に関する加工履歴情報82を、アーム21から受け取ったワークID81と一緒に制御回路部51に出力する。
【0050】
そして、制御回路部51は、作業機モジュール4C~4Hから受け取った加工履歴情報82を、その加工履歴情報82と一緒に受け取ったワークID81に対応付けて、フラッシュメモリ64のデータベース73に記憶する。加工履歴情報82には、例えば、作業機モジュールのID、使用された工具のID、加工開始時間、加工終了時間等で構成される。
【0051】
尚、制御回路部51は、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)から受け取った加工履歴情報82を、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)でワーク40にマーク加工させたワークID81に対応付けて、フラッシュメモリ64のデータベース73に記憶させても良い。更に、制御回路部51は、旋盤モジュール(作業機モジュール4B)から受け取った加工履歴情報82を、その旋盤モジュール(作業機モジュール4B)からID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)に搬送されたワーク40にマーク加工されるワークID81に対応付けて、フラッシュメモリ64のデータベース73に記憶させても良い。
【0052】
更に、制御回路部51は、例えば、洗浄モジュール(作業機モジュール4H)から加工履歴情報82を受け取ったことを契機にして、その加工履歴情報82と一緒に受け取ったワークID81に対応付けてデータベース73に記憶されている全ての加工履歴情報82を、制御回路部51とLAN等を介して接続されている上位コンピュータ等の外部へ、そのワークID81と一緒に出力する。尚、このような外部出力は、搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)からワーク40が排出されたことに応じて送信される信号を、制御回路部51が受け取ったことを契機にして行われても良い。
【0053】
以上より、本実施形態の工作機械装置1は、複数の作業機モジュール4B~4Hで行われた一連の加工関連作業のトレーサビリティを、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)でワーク40にマーク加工されたワークID81によって可能とする。
【0054】
カメラ71は、搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、及び搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)に設けられている。カメラ71は、制御回路部51から受け取った制御信号に従って、作業機モジュール4A、4E、4Iで仮置きされたワーク40のワークID81を撮像する。カメラ71で撮像されたワークID81は、制御回路部51へ出力される。
【0055】
(アームによる再搬入動作)
次に、アーム21の再搬入動作の制御プログラムについて、
図5のフローチャートを用いて説明する。
図5のフローチャートに示された制御プログラムは、制御回路部51が備えているフラッシュメモリ64に記憶されており、ユーザがコントローラ5で第2所定の操作を行うと、CPU61により実行される。
【0056】
先ず、CPU61は、ワークID81の認識処理(ステップS10)を行う。この処理では、CPU61は、作業機モジュール4A、4E、4Iのうち、ワーク40が仮置きされた作業機モジュールのカメラ71に対して制御信号を送信する。これによって、カメラ71は、仮置きされたワーク40のワークID81を撮像し、その撮像データを制御回路部51へ送信する。CPU61は、その撮像データを制御回路部51で画像処理することによって、ワークID81を認識する。尚、ワーク40が仮置きされた作業機モジュールの特定は、例えば、ワーク40を仮置きしたアーム21からの送信信号、ワーク40が仮置きされた作業機モジュール4A、4E、4I内のセンサからの検知信号、又はコントローラ5による第2所定の操作等によって行われる。
【0057】
次に、CPU61は、加工履歴情報82の取得処理(ステップS12)を行う。この処理では、CPU61は、上記ステップS10で認識したワークID81に対応付けられている全ての加工履歴情報82を、フラッシュメモリ64のデータベース73から取得する。
【0058】
次に、CPU61は、搬送先モジュールの決定処理を行う。この処理では、CPU61は、上記ステップS12で取得した全ての加工履歴情報82に基づいて、仮置きされたワーク40の搬送先モジュールを決定する。具体的には、CPU61は、作業機モジュール4C、4D、4F、4G、4Hのうち、上記ステップS12で取得できなかった加工履歴情報82の作業機モジュールを特定し、その特定された作業機モジュールの中から、最初に作業が行われる作業機モジュールを搬送先モジュールとして決定する。
【0059】
次に、CPU61は、ワーク40の搬送処理を行う(ステップS16)。この処理では、CPU61は、作業機モジュール4A、4E、4Iに仮置きされたワーク40を、上記ステップS14で搬送先モジュールとして決定された作業機モジュールに搬送するため、アーム21に対して制御信号を送信する。以上より、仮置きされたワーク40が、アーム21によって、搬送先モジュールの作業機モジュールに搬送される。
【0060】
ちなみに、本実施形態において、特許請求の範囲の用語との対応関係は以下の通りである。アーム21は、ロボットの一例である。ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)は、個別情報付与装置の一例である。ワークID81は、個別情報の一例である。フラッシュメモリ64は、記憶装置の一例である。CPU61は、制御装置の一例である。カメラ71は、リーダの一例である。
【0061】
(変更例)
尚、本開示は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、本実施形態では、搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、又は搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)は、ベース3上に配置されているが、ベース3と独立して配置されても良い。
【0062】
また、本実施形態では、カメラ71は、搬入兼仮置きモジュール(作業機モジュール4A)、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)、及び搬出兼仮置きモジュール(作業機モジュール4I)に設けられているが、アーム21に設けられても良いし、或いは、作業機モジュール4A~4Iの作業空間前を左右方向に移動するアーム21の移動空間に設けられても良い。
【0063】
また、本実施形態では、ワークID81は、ワーク40に埋め込まれたRFID(Radio Frequency Identification)でも良い。そのような場合には、カメラ71に代えて、RFIDの個別情報を読み取るためのリーダが使用される。更に、ID兼仮置きモジュール(作業機モジュール4E)では、RFIDの個別情報を書き込むためのライタが使用される。しかしながら、ライタは、RFIDに個別情報が予め書き込まれている場合には、不要である。
【0064】
また、本実施形態では、アーム21は制御回路部70で制御され、作業機モジュール4A~4Iは制御回路部6A~6Iで個別に制御されているが、制御回路部51のみによって、アーム21及び作業機モジュール4A~4Iが制御されても良い。
【0065】
また、本実施形態では、作業機モジュール4A~4Iは、基本的に1つのベースユニットに対して2台ずつ設置されているが、1つのベースユニットに対して1台又は3台以上設置されても良い。
【0066】
また、本実施形態では、作業機モジュールの種類として、工作機械装置1内にワークが投入される搬入モジュール、旋削加工が行われる旋盤モジュール、ドリルによる穴あけやミーリング加工等が行われるドリルモジュール、ワークに対して所定項目の測定が行われる測定モジュールを例に挙げて説明している。更に、ワークに対してワークIDのマーク加工が行われるIDモジュール、ワークのボブ加工が行われるボブモジュール、ワークのバリ取り加工が行われるバリ取りモジュール、ワークの洗浄が行われる洗浄モジュール、ワークの仮置きが行われる仮置きモジュール、工作機械装置1内からワークが排出される搬出モジュールを例に挙げて説明しているが、上記以外の種類の作業機モジュールでも良い。
【0067】
また、本実施形態では、アーム21は、その駆動軸として、第1駆動軸31、第2駆動軸32、第3駆動軸33を有しているが、アーム21の駆動軸の数は、いくつであっても良い。
【0068】
また、本実施形態では、アーム21の姿勢を教示する為のパラメータとして、アーム先端部の位置座標を用いているが、その他のパラメータを用いても良い。例えば、第1駆動軸31の角度値、第2駆動軸32の角度値、第3駆動軸33の角度値、又は第1関節部27や第2関節部29の位置座標であっても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 工作機械装置
4A~4I 作業機モジュール
21 アーム
61 CPU
64 フラッシュメモリ
71 カメラ
81 ワークID
82 個別情報