(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078162
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】sRAGEを分泌する幹細胞を含むアルツハイマー病の予防または治療用薬学組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20220517BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20220517BHJP
A61K 35/28 20150101ALI20220517BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20220517BHJP
A61K 38/46 20060101ALI20220517BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220517BHJP
C12N 5/0735 20100101ALN20220517BHJP
C12N 5/074 20100101ALN20220517BHJP
C07K 14/705 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
A61K35/28
A61K38/17
A61K38/46
A61P25/28
C12N5/0735
C12N5/074
C07K14/705
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030552
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2020509405の分割
【原出願日】2018-04-26
(31)【優先権主張番号】10-2017-0053922
(32)【優先日】2017-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】519382422
【氏名又は名称】エヌセイジ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,ボンヒ
(72)【発明者】
【氏名】ビュン,キョン ヒ
(72)【発明者】
【氏名】バヤルサイカン,デルガー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェソク
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ミョンジュ
(72)【発明者】
【氏名】セイドガセム,ホッセイニサルカデー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】アルツハイマー病の予防又は治療用薬学組成物を提供する。
【解決手段】幹細胞を含む、アルツハイマー病の予防又は治療用薬学組成物であって、可溶性の最終糖化産物受容体(RAGE)をコードする遺伝子が、遺伝子編集技術により前記幹細胞のゲノムにおけるセーフハーバー部位に挿入されており、且つ、前記幹細胞がsRAGEを分泌し、前記幹細胞が、間葉系幹細胞であり、前記遺伝子編集技術が、Cas9タンパク質びガイドRNAにより行われる、薬学組成物である。
【選択図】
図2g
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可溶性(soluble)の最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)(sRAGE)をコードする遺伝子を含み、sRAGEを分泌する、幹細胞。
【請求項2】
前記幹細胞は、胚性幹細胞(embryonic stem cells)、成体幹細胞(adult stem cells)、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS cells)、および前駆細胞(progenitor cells)からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の幹細胞。
【請求項3】
前記幹細胞は、誘導万能幹細胞または間葉系幹細胞である、請求項1に記載の幹細胞。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項の幹細胞を含むアルツハイマー病の予防または治療用薬学組成物。
【請求項5】
前記薬学組成物は、アルツハイマー病患者で以下のうちの一つ以上の活性を有するものである、請求項4に記載の薬学組成物:
アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制、
RAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制、または
RAGE媒介神経細胞死滅または炎症の抑制。
【請求項6】
請求項1~3のうちのいずれか一項の幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)またはベータサイトAPP切断酵素(BACE1)の発現抑制用薬学組成物。
【請求項7】
請求項1~3のうちのいずれか一項の幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制用薬学組成物。
【請求項8】
前記RAGEリガンドは、AGE(Advanced Glycation End products)、HMGB1(High mobility group box 1)、およびS100βからなる群より選択される1種以上である、請求項7に記載の薬学組成物。
【請求項9】
請求項1~3のうちのいずれか一項の幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅または炎症の抑制用薬学組成物。
【請求項10】
請求項1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病の予防または治療方法。
【請求項11】
請求項1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)またはベータサイトAPP切断酵素(BACE1)の発現抑制方法。
【請求項12】
請求項1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制方法。
【請求項13】
請求項1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅または炎症抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
sRAGE-分泌幹細胞(sRAGE-secreting stem cell)およびそのアルツハイマー病の予防および/または治療のための医薬用途が提供される。
【背景技術】
【0002】
アルツハイマー病(Alzheimer’s disease;AD)は最も多く発生する神経退行性疾患であり、後期疾病段階では他の症状が優勢であるが、主に認知症の症状を示す。AD患者の脳の主な神経病理学的な特徴は、細胞内神経原線維のもつれ(intracellular neurofibrillary tangles)およびベータアミロイド(Aβ)からなる細胞外アミロイドプラークの存在である。Aβはアミロイド前駆体タンパク質の切断に由来し、約39~43個アミノ酸長さのポリペプチドである。Aβ1-40は体液(biological fluids)内の主要可溶性Aβ種類(soluble Aβ species)であり、Aβ1-42(少数の可溶性種類)はAβ1-40よりfibrillogenicでありADの発病機構に重要な役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本明細書で、Aβ1-42注入されたADラットモデルでの、RAGE発現抑制を通じた、遺伝子編集技術によって製造されたsRAGEを分泌する幹細胞およびそのAβ1-42注入されたアルツハイマー病(AD)ラットモデルでのRAGE発現抑制効果およびこれを通じたアルツハイマー病治療用途が提案される。
【0004】
一例は、可溶性(soluble)の最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)(sRAGE)を分泌する幹細胞を提供する。前記幹細胞は、sRAGEコード遺伝子を含む幹細胞であってもよく、例えば、遺伝子編集技術によってsRAGEコード遺伝子が形質導入された幹細胞であってもよい。
【0005】
他の例は、幹細胞にsRAGEコード遺伝子を導入させる段階を含む、sRAGEを分泌する幹細胞の製造方法を提供する。前記製造方法は、前記導入させる段階以後に、sRAGEコード遺伝子が導入された幹細胞を培養してsRAGEを(前記幹細胞の内で)発現および/または(前記幹細胞の外に)分泌させる段階を追加的に含むことができる。
【0006】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含むアルツハイマー病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病の予防および/または治療に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病の予防および/または治療を必要とする患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含むアルツハイマー病の予防および/または治療方法を提供する。前記アルツハイマー病の予防および/または治療方法は、前記投与する段階以前に、アルツハイマー病の予防および/または治療を必要とする患者を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0007】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制方法を提供する。
【0008】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症の抑制用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症抑制に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症の抑制方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アルツハイマー病(AD)は最も多く発生する神経退行性疾患であり、ベータアミロイド(Aβ)の蓄積による神経細胞損失(neuronal loss)およびシナプス機能障害(synaptic dysfunction)を誘発する。Aβは、活性化小膠細胞(microglial cells)の活性化によって最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)リガンドの合成および分泌を促進し、ADマウスモデルで神経細胞死滅を誘発する。一方、可溶性RAGE(soluble RAGE;sRAGE)は、炎症を減らし小膠細胞活性化およびAβ沈着(Aβ deposition)を減少させて、ニューロンの死滅を減少させる。しかし、sRAGEタンパク質の半減期は治療目的で使用するには過度に短い。本明細書で、Aβ沈着を抑制しAβ1-42誘導ADモデルでRAGEリガンドの合成と分泌を減少させるsRAGE-分泌幹細胞(sRAGE-secreting MSCs)を提供する。また、sRAGE-分泌幹細胞は、Aβ1-42誘導ADモデルでRAGE/RAGEリガンド結合を抑制することによって改善された生体内(in vivo)生存率および向上した保護効果を示した。このような結果はsRAGE-分泌幹細胞がアルツハイマー病でニューロンを保護する効果的な手段であるのを示し、このような保護効果はRAGEが媒介する細胞死滅や炎症の抑制に起因したものであるのを提案する。
【0010】
一例は、可溶性(soluble)の最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)(sRAGE)を分泌する幹細胞を提供する。前記幹細胞は、sRAGEコード遺伝子を含む幹細胞であってもよく、例えば、遺伝子編集技術(例えば、遺伝子はさみなど)によってsRAGEコード遺伝子が形質導入された幹細胞であってもよい。前記sRAGEコード遺伝子は前記幹細胞のゲノム内のセーフハーバー(safe harbor)遺伝子部位に挿入でき、このために、前記遺伝子編集技術は前記セーフハーバー遺伝子を標的化してその部位を切断するように設計されたものであってもよい。
【0011】
他の例は、幹細胞にsRAGEコード遺伝子を導入させる段階を含む、sRAGEを分泌する幹細胞の製造方法を提供する。前記製造方法は、前記導入させる段階以後に、sRAGEコード遺伝子が導入された幹細胞を培養してsRAGEを(前記幹細胞の内で)発現および/または(前記幹細胞の外に)分泌させる段階を追加的に含むことができる。前記sRAGEコード遺伝子を導入させる段階は遺伝子編集技術(例えば、遺伝子はさみなど)によって行うことができ、先に説明したように、前記遺伝子編集技術はセーフハーバー遺伝子を標的化してその部位を切断するように設計されたものであってもよい。
【0012】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞または前記幹細胞の培養物を含むアルツハイマー病の予防および/または治療用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞または前記幹細胞の培養物のアルツハイマー病の予防および/または治療に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病の予防および/または治療を必要とする患者にsRAGEを分泌する幹細胞または前記幹細胞の培養物を投与する段階を含むアルツハイマー病の予防および/または治療方法を提供する。前記アルツハイマー病の予防および/または治療方法は、前記投与する段階以前に、アルツハイマー病の予防および/または治療を必要とする患者を確認する段階を追加的に含むことができる。
【0013】
前記sRAGEを分泌する幹細胞(または前記幹細胞の培養物)またはこれを含む薬学組成物は、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)および/またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制、RAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制、および/またはRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症の抑制活性を有することを特徴とする。
【0014】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)および/またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)および/またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)および/またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制方法を提供する。
【0015】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドおよび/または炎症性タンパク質の発現抑制方法を提供する。前記RAGEリガンドはAGE(Advanced Glycation End products)、HMGB1(High mobility group box 1)、S100βなどからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるのではない。
【0016】
他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症の抑制用薬学組成物を提供する。他の例は、sRAGEを分泌する幹細胞のアルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症抑制に使用するための用途を提供する。他の例は、アルツハイマー病患者にsRAGEを分泌する幹細胞を投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅および/または炎症の抑制方法を提供する。
【0017】
以下、本発明をより詳しく説明する:
前記患者は、アルツハイマーを患っている人間、猿などの霊長類、ラット、マウスなどのげっ歯類を含む哺乳動物または前記哺乳動物から分離された細胞(脳細胞)または組織(脳組織)またはこれらの培養物の中から選択でき、例えば、アルツハイマー病を患っている人間またはこれから分離された脳細胞、脳組織またはこれらの培養物の中から選択できる。
【0018】
本明細書で提供される有効成分であるsRAGEを分泌する幹細胞またはこれを含む薬学組成物は経口投与または非経口投与の多様な投与経路で投与対象に投与でき、例えば、アルツハイマー病患者の病変部位(例えば、脳)に注射(injection)、輸血(transfusion)、挿入(implantation)または移植(transplantation)のような、任意の便利な方式で投与されるか、血管投与(静脈投与または動脈投与)、などの投与経路で投与できるが、これに制限されるのではない。
【0019】
本明細書で提供される薬学組成物は、通常の方法によって剤形化された、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアゾールなどの経口型剤形、または懸濁剤、油剤、凍結乾燥製剤、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液、移植用製剤などの非経口用剤形などに剤形化して使用できる。
【0020】
本発明の組成物使用量は治療対象の年齢、性別、体重によって異にすることができ、何よりも、治療対象個体の状態、治療対象癌の特定のカテゴリーまたは種類、投与経路、使用される治療剤の属性、および前記特定の治療剤に対する感受性に依存的であり、これを考慮して適切に処方できる。例えば、前記幹細胞はアルツハイマー病患者の体重1kg当り1×103~1×109個、例えば、1×104~1×108個または1×105~1×107個の量で投与できるが、これに制限されるのではない。
【0021】
前記sRAGEは、人間、猿などの霊長類、ラット、マウスなどのげっ歯類などを含む哺乳動物由来のsRAGEであってもよく、一例で、人間sRAGEタンパク質(GenBank Accession Nos.NP_001127.1(遺伝子:NM_001136.4)[Q15109-1]、NP_001193858.1(遺伝子:NM_001206929.1)[Q15109-6]、NP_001193861.1(遺伝子:NM_001206932.1)[Q15109-7]、NP_001193863.1(遺伝子:NM_001206934.1)[Q15109-4]、NP_001193865.1(遺伝子:NM_001206936.1)[Q15109-9]、NP_001193869.1(遺伝子:NM_001206940.1)[Q15109-3]、NP_001193883.1(遺伝子:NM_001206954.1)[Q15109-8]、NP_001193895.1(遺伝子:NM_001206966.1)[Q15109-3]、NP_751947.1(遺伝子:NM_172197.2)[Q15109-2]など)などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるのではない。
【0022】
前記幹細胞は胚性幹細胞(embryonic stem cells)、成体幹細胞(adult stem cells)、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS cells)、および前駆細胞(progenitor cells)を全て包括する意味として使用でき、例えば、前記幹細胞は胚性幹細胞、成体幹細胞、誘導万能幹細胞、および前駆細胞らからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0023】
胚性幹細胞(embryonic stem cells)は受精卵に由来する幹細胞であって、全ての組織の細胞に分化できる特性を有する幹細胞である。
【0024】
誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS cells)は逆分化幹細胞とも呼ばれ、分化が終わった体細胞に細胞分化関連遺伝子を注入して分化以前の細胞段階に戻すことによって、胚性幹細胞のように万能性を誘導した細胞を意味する。
【0025】
前駆細胞(progenitor cells)は幹細胞と同様に特定類型の細胞に分化できる能力を有するが、幹細胞より特異的であり標的化されており、幹細胞とは異なり分裂回数が有限である。前記前駆細胞は間葉系由来の前駆細胞であってもよいが、これに制限されるのではない。本明細書で前駆細胞は幹細胞範疇に含まれ、特別な言及がない限り‘幹細胞’は前駆細胞も含む概念として解釈される。
【0026】
成体幹細胞(adult stem cell)は臍帯(へその緒)、臍帯血(へその緒血液)または成人の骨髄、血液、神経などから抽出した幹細胞であって、具体的臓器の細胞に分化する直前の原始細胞を意味する。前記成体幹細胞は、造血幹細胞(hematopoietic stem cell)、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)、神経幹細胞(neural stem cell)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。成体幹細胞は、増殖が難しくて容易に分化される傾向が強いが、その代わり様々な種類の成体幹細胞を使用して実際医学で必要とする多様な臓器再生をすることができるだけでなく、移植された後に各臓器の特性に合うように分化できる特性を有していて、難治の病/不治の病の治療に有利に適用できる。
【0027】
一例で、前記成体幹細胞は、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell;MSC)であってもよい。間葉系幹細胞は間葉系基質細胞(mesenchymal stromal cell;MSC)とも呼ばれ、骨芽細胞(osteoblasts)、軟骨芽細胞(chondrocytes)、筋肉細胞(myocytes)、脂肪細胞(adipocytes)などのような多様な形態の細胞に分化できる多能性細胞(multipotent stromal cell)を意味する。間葉系幹細胞は、胎盤(placenta)、臍帯(umbilical cord)、臍帯血(umbilical cord blood)、脂肪組織(adipose tissue)、成体筋肉(adult muscle)、角膜基質(corneal stroma)、乳歯の歯髄(dental pulp)などのような非骨髄組織(non-marrow tissues)などに由来する多能性細胞の中から選択されたものであってもよい。
【0028】
前記幹細胞は、人間由来の幹細胞であってもよい。
【0029】
前記sRAGEを分泌する幹細胞(以下、sRAGE-分泌幹細胞)は、人間由来のsRAGE-分泌間葉系幹細胞(以下、人間sRAGE-分泌間葉系幹細胞(MSC))、人間由来のsRAGE-分泌誘導万能幹細胞(以下、人間sRAGE-分泌誘導万能幹細胞(iPSC))などからなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0030】
前記sRAGE-分泌幹細胞は、sRAGEコード遺伝子が幹細胞のゲノムに挿入された幹細胞、例えば間葉系幹細胞または誘導万能幹細胞であってもよい。
【0031】
一例で、前記sRAGEコード遺伝子は、前記幹細胞のゲノム中のセーフハーバー(safe harbor)遺伝子部位に挿入されたものであってもよい。セーフハーバー遺伝子はこの部分のDNAが損傷(切断、および/またはヌクレオチドの欠失、置換、または挿入など)されても細胞損傷を誘発しない安全な遺伝子部位を意味するものであって、例えば、AAVS1(Adeno-associated virus integration site;例えば、人間染色体19(19q13)に位置するAAVS1など)などであってもよいが、これに制限されるのではない。
【0032】
前記sRAGEコード遺伝子の幹細胞ゲノム内への挿入(導入)は、動物細胞のゲノム内への遺伝子導入に通常使用される全ての遺伝子操作技術を通じて行うことができる。一例で、前記遺伝子操作技術は、標的特異的ヌクレアーゼを使用するものであってもよい。前記標的特異的ヌクレアーゼは、先に説明したようなセーフハーバー(safe harbor)遺伝子部位を標的にするものであってもよい。
【0033】
本明細書に使用されたものとして、標的特異的ヌクレアーゼは、遺伝子はさみ(programmable nuclease)とも呼ばれ、目的とするゲノムDNA上の特定位置を認識して切断(単一鎖切断または二重鎖切断)することができる全ての形態のヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)をひっくるめて称する。前記標的特異的ヌクレアーゼは、微生物から分離されたものまたは組換え的方法または合成的方法で非自然的生産されたもの(non-naturally occurring)であってもよい。前記標的特異的ヌクレアーゼは、真核細胞の核内伝達のために通常使用される要素(例えば、核局在化シグナル(nuclear localization signal;NLS)など)を追加的に含むものであってもよいが、これに制限されるのではない。前記標的特異的ヌクレアーゼは精製されたタンパク質形態で使用されるか、これをコードするDNA、または前記DNAを含む組換えベクターの形態で使用できる。
【0034】
例えば、前記標的特異的ヌクレアーゼは、
ゲノム上の特定標的配列を認識するドメインである植物病原性遺伝子に由来したTALエフェクター(transcription activator-like effector)ドメインと切断ドメインが融合されたTALEN(transcription activator-like effector nuclease);
ジンクフィンガーヌクレアーゼ(zinc-finger nuclease);
メガヌクレアーゼ(meganuclease);
微生物免疫機構であるCRISPRに由来したRGEN(RNA-guided engineered nuclease;例えば、Casタンパク質(例えば、Cas9など)、Cpf1、など);
AGOホモログ(Ago homolog、DNA-guided endonuclease)
などからなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されるのではない。
【0035】
前記標的特異的ヌクレアーゼは、原核細胞、および/または人間細胞をはじめとする動植物細胞(例えば、真核細胞)のゲノムで特定塩基配列を認識して二重鎖切断(double strand break、DSB)を起こすことができる。前記二重鎖切断はDNAの二重鎖を切断して、平滑末端(blunt end)または粘着末端(cohesiveend)を生成させることができる。DSBは細胞内で相同組換え(homologous recombination)または非相同末端結合(non-homologousend-joining、NHEJ)機構によって効率的に修復でき、この過程に所望の変異を標的位置に導入することができる。
【0036】
前記メガヌクレアーゼは、これに制限されるのではないが、自然発生メガヌクレアーゼであってもよく、これらは15~40個の塩基対の切断部位を認識し、これは通常4個のファミリーに分類される:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー、およびHNHファミリー。例示的なメガヌクレアーゼは、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-SceI、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevIIおよびI-TevIIIを含む。
【0037】
自然発生メガヌクレアーゼ、主にLAGLIDADGファミリーに由来するDNA結合ドメインを用いて植物、酵母、ショウジョウバエ(Drosophila)、哺乳動物細胞およびマウスで位置特異的ゲノム変形が促進されたが、このような接近法はメガヌクレアーゼ標的配列が保存された相同性遺伝子の変形(Monet et al.(1999)Biochem.Biophysics.Res.Common.255:88-93)であって、標的配列が導入される事前操作されたゲノムの変形には限界があった。したがって、医学的にも生命工学的にも関連する部位で新規な結合特異性を示すようにメガヌクレアーゼを操作しようとする試みがあった。また、メガヌクレアーゼに由来する自然発生されたまたは操作されたDNA結合ドメインが異種性ヌクレアーゼ(例、FokI)に由来する切断ドメインに作動可能に連結された。
【0038】
前記ZFNは、選択された遺伝子、および切断ドメインまたは切断ハーフドメインの標的部位に結合するように操作されたジンクフィンガータンパク質を含む。前記ZFNは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインおよびDNA切断ドメインを含む人工的な制限酵素であってもよい。ここで、ジンクフィンガーDNA結合ドメインは、選択された配列に結合するように操作されたものであってもよい。例えば、Beerli et al.(2002)Nature Biotechnol.20:135-141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313-340;Isalan et al、(2001)Nature Biotechnol.19:656-660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632-637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411-416が本明細書参考資料として含まれ得る。自然発生されたジンクフィンガータンパク質と比較して、操作されたジンクフィンガー結合ドメインは新規な結合特異性を有することができる。操作方法は合理的設計および多様なタイプの選択を含むが、これに限定されない。合理的設計は、例えば三重(または四重)ヌクレオチド配列、および個別ジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの利用を含み、この時、各三重または四重ヌクレオチド配列は特定三重または四重配列に結合するジンクフィンガーの一つ以上の配列と連合される。
【0039】
標的配列の選択、融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構成は当業者に公知されており、参考資料として米国特許出願公開2005/0064474および2006/0188987の全文に詳しく説明され、前記公開特許の全文が本発明の参考資料として本明細書に含まれる。また、このような参考文献および当業界の他の文献に開示されている通り、ジンクフィンガードメインおよび/または多重フィンガージンクフィンガータンパク質が任意の適切なリンカー配列、例えば5個以上のアミノ酸長さのリンカーを含むリンカーによって共に連結できる。6個以上のアミノ酸長さのリンカー配列の例は米国登録特許6,479,626;6,903,185;7,153,949を参照する。ここに説明されたタンパク質はタンパク質の各ジンクフィンガーの間に適切なリンカーの任意の組み合わせを含むことができる。
【0040】
また、ZFNのようなヌクレアーゼは、ヌクレアーゼ活性部分(切断ドメイン、切断ハーフドメイン)を含む。周知された通り、例えばジンクフィンガーDNA結合ドメインと異なるヌクレアーゼからの切断ドメインのように、切断ドメインはDNA結合ドメインに異種性であってもよい。異種性切断ドメインは、任意のエンドヌクレアーゼやエクソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが由来できる例示的なエンドヌクレアーゼは制限エンドヌクレアーゼおよびメガヌクレアーゼを含むが、これに限定されない。
【0041】
同様に、切断ハーフドメインは、前記提示されたように、切断活性のために二量体化を必要とする任意のヌクレアーゼまたはそれの一部に由来できる。融合タンパク質が切断ハーフドメインを含む場合、一般に2個の融合タンパク質が切断に必要である。代案として、2個の切断ハーフドメインを含む単一タンパク質が用いられてもよい。2個の切断ハーフドメインは同一なエンドヌクレアーゼ(またはそれの機能的断片)に由来することも可能であり、または各切断ハーフドメインが異なるエンドヌクレアーゼ(またはそれの機能的断片)に由来することも可能である。また、2個の融合タンパク質の標的部位は、2個の融合タンパク質とその各標的部位の結合によって切断ハーフドメインが互いに対して空間的に配向されて位置することによって、切断ハーフドメインが、例えば二量体化によって機能性切断ドメインを形成することができるようにする関係で配置されるのが好ましい。したがって、一実施形態で、3~8個のヌクレオチドまたは14~18個のヌクレオチドによって標的部位の隣接の縁が分離される。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が2個の標的部位の間に介されてもよい(例、2~50個のヌクレオチド対またはそれ以上)。一般に、切断部位は標的部位の間に置かれる。
【0042】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合して(標的部位で)、直ちに結合部位やその近所でDNAを切断することができる。ある制限酵素(例、Type IIS)は認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合と切断可能なドメインを有する。例えば、Type IIS酵素FokIは一本鎖上の認識部位から9個のヌクレオチドで、そして残りの一本鎖上の認識部位から13個のヌクレオチドでDNAの二重鎖切断を触媒する。したがって、一実施形態で、融合タンパク質は少なくとも1個のType IIS制限酵素からの切断ドメイン(または切断ハーフドメイン)と一つ以上の亜鉛フィンガー結合ドメイン(操作されてもよく、そうでなくてもよい)を含む。
【0043】
“TALEN”は、DNAのターゲット領域を認識および切断することができるヌクレアーゼを示す。TALENは、TALEドメインおよびヌクレオチド切断ドメインを含む融合タンパク質を示す。本発明で、“TALエフェクターヌクレアーゼ”および“TALEN”という用語は互換が可能である。TALエフェクターはキサントモナス(Xanthomonas)バクテリアが多様な植物種に感染する時にこれらのタイプIII分泌システムを通じて分泌されるタンパク質として知られている。前記タンパク質は、宿主植物内のプロモーター配列と結合してバクテリア感染を助ける植物遺伝子の発現を活性化させることができる。前記タンパク質は、34個以下の多様な数のアミノ酸反復で構成された中心反復ドメインを通じて植物DNA配列を認識する。したがって、TALEは、ゲノムエンジニアリングのツールのための新規プラットフォームになり得るとされる。但し、ゲノム編集活性を有する機能TALENを製作するために次のように現在まで知られなかった少数の主要媒介変数が定義されなければならない。i)TALEの最小DNA-結合ドメイン、ii)一つのターゲット領域を構成する2個の半分-位置の間のスペーサの長さ、およびiii)FokIヌクレアーゼドメインをdTALEに連結するリンカーまたは融合接合(fusion junction)。
【0044】
本発明のTALEドメインは、一つ以上のTALE反復モジュールを通じて配列特異的方式でヌクレオチドに結合するタンパク質ドメインを指す。前記TALEドメインは少なくとも一つのTALE反復モジュール、より具体的には1~30個のTALE反復モジュールを含むが、これに限定されない。本発明で、“TALエフェクタードメイン”および“TALEドメイン”という用語は互換可能である。前記TALEドメインは、TALE反復モジュールの半分を含むことができる。前記TALENに関連して国際公開特許WO/2012/093833号または米国公開特許2013-0217131号に開示された内容全文が本明細書に参考資料として含まれる。
【0045】
一例で、前記sRAGEコード遺伝子の幹細胞ゲノム内への挿入(導入)は、標的特異的ヌクレアーゼ(CRISPRに由来したRGEN)を使用して行うことができる。前記標的特異的ヌクレアーゼは、
(1)RNAガイドヌクレアーゼ(またはそのコーディングDNA、または前記コーディングDNAを含む組換えベクター)、および
(2)標的遺伝子(例えば、AAVS1のようなセーフハーバー(safe harbor)位置)の標的部位(例えば、AAVS1のようなセーフハーバー(safe harbor)遺伝子内の連続する15~30、17~23、または18~22個のヌクレオチド長さの核酸部位)と混成化可能な(または相補的核酸配列を有する)ガイドRNAまたはそのコーディングDNA(またはコーディングDNAを含む組換えベクター)
を含むものであってもよい。
【0046】
前記標的特異的ヌクレアーゼは、標的遺伝子の特定配列を認識しヌクレオチド切断活性を有し標的遺伝子でインデル(insertion and/or deletion、Indel)を引き起こすことができる全てのヌクレアーゼより選択された1種以上であってもよい。
【0047】
一具体例で、前記標的特異的ヌクレアーゼは、Casタンパク質(例えば、Cas9タンパク質(CRISPR(Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)associated protein 9))、Cpf1タンパク質(CRISPR from Prevotella and Francisella 1)などのようなタイプIIおよび/またはタイプVのCRISPRシステムに伴うヌクレアーゼ(例えば、エンドヌクレアーゼ)などからなる群より選択された1種以上であってもよい。この場合、前記標的特異的ヌクレアーゼは、ゲノムDNAの標的部位に案内するための標的DNA特異的ガイドRNAを追加的に含む。前記ガイドRNAは、生体外(in vitro)で転写された(transcribed)ものであってもよく、例えば、オリゴヌクレオチド二重鎖またはプラスミド鋳型から転写されたものであってもよいが、これに制限されない。前記標的特異的ヌクレアーゼは、生体(細胞)外でまたは生体(細胞)内伝達後、ガイドRNAに結合されたリボ核酸-タンパク質複合体を形成(RNA-Guided Engineered Nuclease)してリボ核酸タンパク質(RNP)形態で作用できる。
【0048】
Casタンパク質はCRISPR/Casシステムの主要タンパク質構成要素であって、活性化されたエンドヌクレアーゼまたはニッカーゼ(nickase)を形成することができるタンパク質である。
【0049】
Casタンパク質または遺伝子情報は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のGenBankのような公知のデータベースから得ることができる。例えば、前記Casタンパク質は、
ストレプトコッカスsp.(Streptococcus sp.)、例えば、ストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCasタンパク質、例えば、Cas9タンパク質(例えば、SwissProt Accession number Q99ZW2(NP_269215.1));
カンピロバクター属、例えば、カンピロバクタージェジュニ(Campylobacter jejuni)由来のCasタンパク質、例えば、Cas9タンパク質;
ストレプトコッカス属、例えば、ストレプトコッカスサーモフィルス(Streptococcus thermophiles)またはストレプトコッカスアウレウス(Streptocuccus aureus)由来のCasタンパク質、例えば、Cas9タンパク質;
ナイセリアメニンギチジス(Neisseria meningitidis)由来のCasタンパク質、例えば、Cas9タンパク質;
パスツレラ(Pasteurella)属、例えば、パスツレラムルトシダ(Pasteurella multocida)由来のCasタンパク質、例えばCas9タンパク質;
フランシセラ(Francisella)属、例えば、フランシセラノビシダ(Francisella novicida)由来のCasタンパク質、例えばCas9タンパク質
などからなる群より選択された一つ以上であってもよいが、これに制限されるのではない。
【0050】
Cpf1タンパク質は、前記CRISPR/Casシステムとは区別される新たなCRISPRシステムのエンドヌクレアーゼであって、Cas9に比べて相対的に大きさが小さくてtracrRNAが必要なく、単一ガイドRNAによって作用できる。また、チミン(thymine)が豊富なPAM(protospacer-adjacent motif)配列を認識しDNAの二重鎖を切断して粘着末端(cohesive end;cohesive double-strand break)を生成する。
【0051】
例えば、前記Cpf1タンパク質は、カンジダツス(Candidatus)属、ラクノスピラ(Lachnospira)属、ブチリビブリオ(Butyrivibrio)属、ペレグリニバクテリア(Peregrinibacteria)、アシドミノコッカス(Acido minococcus)属、ポルフィロモナス(Porphyromonas)属、プレボテラ(Prevotella)属、フランシセラ(Francisella)属、カンジダツスメタノプラズマ(Candidatus Methanoplasma)、またはユバクテリウム(Eubacterium)属由来のものであってもよく、例えば、Parcubacteria bacterium(GWC2011_GWC2_44_17)、Lachnospiraceae bacterium(MC2017)、Butyrivibrio proteoclasiicus、Peregrinibacteria bacterium(GW2011_GWA_33_10)、Acidaminococcus sp.(BV3L6)、Porphyromonas macacae、Lachnospiraceae bacterium(ND2006)、Porphyromonas crevioricanis、Prevotella disiens、Moraxella bovoculi(237)、Smiihella sp.(SC_KO8D17)、Leptospira inadai、Lachnospiraceae bacterium(MA2020)、Francisella novicida(U112)、Candidatus Methanoplasma termitum、Candidatus Paceibacter、Eubacterium eligensなどの微生物由来のものであってもよいが、これに制限されるのではない。
【0052】
前記標的特異的ヌクレアーゼは、微生物から分離されたものまたは組換え的方法または合成的方法などのように人為的または非自然的生産されたもの(non-naturally occurring)であってもよい。前記標的特異的ヌクレアーゼは、in vitroで予め転写されたmRNAまたは予め生産されたタンパク質形態、または標的細胞または生体内で発現するために組換えベクターに含まれた形態で使用できる。一例で、前記標的特異的ヌクレアーゼ(例えば、Cas9、Cpf1、など)は、組換えDNA(Recombinant DNA;rDNA)によって作られた組換えタンパク質であってもよい。組換えDANは、多様な有機体から得られた異種または同種遺伝物質を含むために分子クローニングのような遺伝子組換え方法によって人工的に作られたDNA分子を意味する。例えば、組換えDNAを適切な有機体で発現させて標的特異的ヌクレアーゼを生産(in vivoまたはin vitro)する場合、組換えDNAは、製造しようとするタンパク質をコーディングするコドンの中から前記有機体に発現するに最適化されたコドンを選択して再構成されたヌクレオチド配列を有するものであってもよい。
【0053】
本明細書で使用された前記標的特異的ヌクレアーゼは、変異された形態の変異標的特異的ヌクレアーゼであってもよい。前記変異標的特異的ヌクレアーゼはDNA二重鎖を切断するエンドヌクレアーゼ活性を喪失するように変異されたものを意味することができ、例えば、エンドヌクレアーゼ活性を喪失しニッカーゼ活性を有するように変異された変異標的特異的ヌクレアーゼおよびエンドヌクレアーゼ活性とニッカーゼ活性を全て喪失するように変異された変異標的特異的ヌクレアーゼの中から選択された1種以上であってもよい。このような標的特異的ヌクレアーゼの変異(例えば、アミノ酸置換など)は、少なくともヌクレアーゼの触媒活性ドメイン(例えば、Cas9の場合、RuvC触媒ドメイン)で起こることであってもよい。一例で、前記標的特異的ヌクレアーゼがストレプトコッカスピオゲネス由来Cas9タンパク質(SwissProt Accession number Q99ZW2(NP_269215.1);配列番号4)である場合、前記変異は、触媒活性を有するアスパラギン酸残基(catalytic aspartate residue;例えば、配列番号4の場合、10番目位置のアスパラギン酸(D10)など)、配列番号4の762番目位置のグルタミン酸(E762)、840番目位置のヒスチジン(H840)、854番目位置のアスパラギン(N854)、863番目位置のアスパラギン(N863)、986番目位置のアスパラギン酸(D986)などからなる群より選択された一つ以上任意の他のアミノ酸で置換された突然変異を含むことができる。この時、置換される任意の他のアミノ酸はアラニン(alanine)であってもよいが、これに制限されない。
【0054】
他の例で、前記変異標的特異的ヌクレアーゼは、野生型Cas9タンパク質と異なるPAM配列を認識するように変異されたものであってもよい。例えば、前記変異標的特異的ヌクレアーゼは、ストレプトコッカスピオゲネス由来Cas9タンパク質の1135番目位置のアスパラギン酸(D1135)、1335番目位置のアルギニン(R1335)、および1337番目位置のトレオニン(T1337)のうちの一つ以上、例えば、3個が全て他のアミノ酸で置換されて、野生型Cas9のPAM配列(NGG)と異なるNGA(NはA、T、G、およびCの中から選択された任意の塩基である)を認識するように変異されたものであってもよい。
【0055】
一例で、前記変異標的特異的ヌクレアーゼは、ストレプトコッカスピオゲネス由来Cas9タンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)中、
(1)D10、H840、またはD10+H840;
(2)D1135、R1335、T1337、またはD1135+R1335+T1337;または
(3)(1)と(2)残基全て
でアミノ酸置換が起こったものであってもよい。
【0056】
本明細書に使用されたものとして、前記‘他のアミノ酸’は、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、バリン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、ヒスチジン、ライシン、前記アミノ酸の公知された全ての変形体のうち、野生型タンパク質が元来変異位置に有するアミノ酸を除いたアミノ酸の中から選択されたアミノ酸を意味する。一例で、前記‘他のアミノ酸’は、アラニン、バリン、グルタミン、またはアルギニンであってもよい。
【0057】
本発明で、用語“ガイドRNA(guide RNA)”は、標的遺伝子内の標的部位内の特異的な塩基配列(標的配列)に混成化可能な標的化配列を含むRNAを意味し、生体外(in vitro)または生体(または細胞)内でCasタンパク質、Cpf1などのようなヌクレアーゼと結合してこれを標的遺伝子(または標的部位)に導く役割を果たす。
【0058】
前記ガイドRNAは、複合体を形成するヌクレアーゼの種類および/またはその由来微生物によって適切に選択できる。
【0059】
例えば、前記ガイドRNAは、
標的配列と混成化可能な部位(標的化配列)を含むCRISPR RNA(crRNA);
Casタンパク質、Cpf1などのようなヌクレアーゼと相互作用する部位を含むtrans-activating crRNA(tracrRNA);および
前記crRNAおよびtracrRNAの主要部位(例えば、標的化配列を含むcrRNA部位およびヌクレアーゼと相互作用するtracrRNAの部位)が融合された形態の単一ガイドRNA(single guide RNA;sgRNA)
からなる群より選択された1種以上であってもよく、
具体的に、CRISPR RNA(crRNA)およびtrans-activating crRNA(tracrRNA)を含む二重RNA(dual RNA)、またはcrRNAおよびtracrRNAの主要部位を含む単一ガイドRNA(sgRNA)であってもよい。
【0060】
前記sgRNAは、標的遺伝子(標的部位)内の標的配列と相補的な配列(標的化配列)を有する部分(これをSpacer region、Target DNA recognition sequence、base pairing regionなどとも命名する)およびCasタンパク質結合のためのヘアピン(hairpin)構造を含むことができる。より具体的に、標的遺伝子内の標的配列と相補的な配列(標的化配列)を含む部分、Casタンパク質結合のためのhairpin構造、およびTerminator配列を含むことができる。前述の構造は5’から3’の順に順次に存在するものであってもよいが、これに制限されるのではない。前記ガイドRNAがcrRNAおよびtracrRNAの主要部分および標的DNAの相補的な部分を含む場合であれば、いかなる形態のガイドRNAも本発明で使用できる。
【0061】
例えば、Cas9タンパク質は標的遺伝子編集のために二つのガイドRNA、即ち、標的遺伝子の標的部位と混成化可能なヌクレオチド配列を有するCRISPR RNA(crRNA)とCas9タンパク質と相互作用するtrans-activating crRNA(tracrRNA;Cas9タンパク質と相互作用する)を必要とし、これらcrRNAとtracrRNAは互いに結合された二重鎖crRNA:tracrRNA複合体形態、またはリンカーを通じて連結されて単一ガイドRNA(single guide RNA;sgRNA)形態で使用できる。一例で、ストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質を使用する場合、sgRNAは少なくとも前記crRNAの混成化可能なヌクレオチド配列を含むcrRNA一部または全部と前記Cas9のtracrRNAのCas9タンパク質と相互作用する部位を少なくとも含むtracrRNA一部または全部がヌクレオチドリンカーを通じてヘアピン構造(stem-loop構造)を形成するものであってもよい(この時、ヌクレオチドリンカーがループ構造に該当するものであり得る)。
【0062】
前記ガイドRNA、具体的にcrRNAまたはsgRNAは標的遺伝子内標的配列と相補的な配列(標的化配列)を含み、crRNAまたはsgRNAのアップストリーム部位、具体的にsgRNAまたはdualRNAのcrRNAの5’末端に一つ以上、例えば、1~10個、1~5個、または1~3個の追加のヌクレオチドを含むことができる。前記追加のヌクレオチドはグアニン(guanine、G)であってもよいが、これに制限されるのではない。
【0063】
他の例で、前記ヌクレアーゼがCpf1である場合、前記ガイドRNAはcrRNAを含むものであってもよく、複合体を形成するCpf1タンパク質種類および/またはその由来微生物によって適切に選択できる。
【0064】
前記ガイドRNAの具体的配列はヌクレアーゼ(Cas9またはCpf1)の種類(即ち、由来微生物)によって適切に選択することができ、これはこの発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に分かる事項である。
【0065】
一例で、標的特異的ヌクレアーゼとしてストレプトコッカスピオゲネス(Streptococcus pyogenes)由来のCas9タンパク質を使用する場合、crRNAは次の一般式1で表現できる:
5’-(Ncas9)l-(GUUUUAGAGCUA)-(Xcas9)m-3’(一般式1)
上記一般式1で、
Ncas9は標的化配列、即ち、標的遺伝子(target gene)の標的部位(target site)の配列によって決定される部位(標的部位の標的配列と混成化可能)であり、lは前記標的化配列に含まれているヌクレオチド数を示すものであって、15~30、17~23、または18~22の整数、例えば20であってもよく、
前記標的化配列の3’方向に隣接して位置する連続する12個のヌクレオチド(GUUUUAGAGCUA)(配列番号1)を含む部位はcrRNAの必須的部分であり、
Xcas9はcrRNAの3’末端側に位置する(即ち、前記crRNAの必須的部分の3’方向に隣接して位置する)m個のヌクレオチドを含む部位であって、mは8~12の整数、例えば、11であってもよく、前記m個のヌクレオチドは互いに同一であるか異なってもよく、それぞれ独立してA、U、CおよびGからなる群より選択できる。
【0066】
一例で、前記Xcas9はUGCUGUUUUG(配列番号2)を含むことができるが、これに制限されない。
【0067】
また、前記tracrRNAは、次の一般式2で表現できる:
5’-(Ycas9)p-(UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC)-3’(一般式2)
上記一般式2で、
60個のヌクレオチド(UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC)(配列番号3)で表された部位は、tracrRNAの必須的部分であり、
Ycas9は前記tracrRNAの必須的部分の5’末端に隣接して位置するp個のヌクレオチドを含む部位であって、pは6~20の整数、例えば、8~19の整数であってもよく、前記p個のヌクレオチドは互いに同一であるか異なってもよく、A、U、CおよびGからなる群よりそれぞれ独立して選択できる。
【0068】
また、sgRNAは、前記crRNAの標的化配列と必須的部位を含むcrRNA部分と前記tracrRNAの必須的部分(60個ヌクレオチド)を含むtracrRNA部分がオリゴヌクレオチドリンカーを通じてヘアピン構造(stem-loop構造)を形成するものであってもよい(この時、オリゴヌクレオチドリンカーがループ構造に該当する)。より具体的に、前記sgRNAは、crRNAの標的化配列と必須的部分を含むcrRNA部分とtracrRNAの必須的部分を含むtracrRNA部分が互いに結合された二重鎖RNA分子で、crRNA部位の3’末端とtracrRNA部位の5’末端がオリゴヌクレオチドリンカーを通じて連結されたヘアピン構造を有するものであってもよい。
【0069】
一例で、sgRNAは、次の一般式3で表現できる:
5’-(Ncas9)l-(GUUUUAGAGCUA)-(オリゴヌクレオチドリンカー)-(UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC)-3’(一般式3)
上記一般式3で、(Ncas9)lは標的化配列であって、先に一般式1で説明したとおりである。
【0070】
前記sgRNAに含まれるオリゴヌクレオチドリンカーは3~5個、例えば4個のヌクレオチドを含むものであってもよく、前記ヌクレオチドは互いに同一であるか異なってもよく、A、U、CおよびGからなる群よりそれぞれ独立して選択できる。
【0071】
前記crRNAまたはsgRNAは、5’末端(即ち、crRNAのターゲッティング配列部位の5’末端)に1~3個のグアニン(G)を追加的に含むことができる。
【0072】
前記tracrRNAまたはsgRNAは、tracrRNAの必須的部分(60nt)の3’末端に5個~7個のウラシル(U)を含む終結部位を追加的に含むことができる。
【0073】
前記ガイドRNAの標的配列は、標的DNA上のPAM(Protospacer Adjacent Motif配列(S.pyogenes Cas9の場合、5’-NGG-3’(NはA、T、G、またはCである))の5’に隣接して位置する約17個~約23個または約18個~約22個、例えば20個の連続する核酸配列であってもよい。
【0074】
前記ガイドRNAの標的配列と混成化可能なガイドRNAの標的化配列は、前記標的配列が位置するDNA鎖(即ち、PAM配列(5’-NGG-3’(NはA、T、G、またはCである)が位置するDNA鎖)またはその相補的な鎖のヌクレオチド配列と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有するヌクレオチド配列を意味するものであって、前記相補的鎖のヌクレオチド配列と相補的結合が可能である。
【0075】
他の例で、標的特異的ヌクレアーゼがCpf1システムである場合、ガイドRNA(crRNA)は次の一般式4で表現できる:
5’-n1-n2-A-U-n3-U-C-U-A-C-U-n4-n5-n6-n7-G-U-A-G-A-U-(Ncpf1)q-3’(一般式4)。
【0076】
上記一般式4で、
n1は存在しないか、U、A、またはGであり、n2はAまたはGであり、n3はU、A、またはCであり、n4は存在しないかG、C、またはAであり、n5はA、U、C、G、または存在せず、n6はU、GまたはCであり、n7はUまたはGであり、
Ncpf1は遺伝子標的部位と混成化可能なヌクレオチド配列を含むターゲッティング配列であって標的遺伝子の標的配列によって決定され、qは含まれているヌクレオチド数を示すものであって、15~30の整数であってもよい。前記標的遺伝子の標的配列(crRNAと混成化する配列)はPAM配列(5’-TTN-3’または5’-TTTN-3’;Nは任意のヌクレオチドであって、A、T、G、またはCの塩基を有するヌクレオチドである)の3’方向に隣接して位置する(例えば、連続する)15~30個の標的遺伝子の標的部位のヌクレオチド配列である。
【0077】
前記一般式4で、5’末端からカウンティングして6番目から10番目までの5個のヌクレオチド(5’末端ステム部位)と15番目(n4が存在する場合、16番目)から19番目(n4が存在する場合、20番目)までの5個ヌクレオチド(3’末端ステム部位)は互いに逆平行(antiparallel)なように相補的ヌクレオチドからなって二重鎖構造(ステム構造)を形成し、前記5’末端ステム部位と3’末端ステム部位の間の3~5個ヌクレオチドがループ構造を形成することができる。
【0078】
前記Cpf1タンパク質のcrRNA(例えば、一般式4で表現される)は、5’末端に1~3個のグアニン(G)を追加的に含むことができる。
【0079】
Cpf1由来微生物によって使用可能なCpf1タンパク質のcrRNA配列の5’末端部位配列(ターゲッティング配列部位除いた部分)を表1に例示的に記載した:
【表1】
【0080】
本明細書で、遺伝子標的部位と混成化可能なヌクレオチド配列は、遺伝子標的部位のヌクレオチド配列(標的配列)と50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上、または100%の配列相補性を有するヌクレオチド配列を意味する(以下、特別な言及がない限り、同一な意味として使用され、前記配列相同性は通常の配列比較手段(例えば、BLAST)を使用して確認できる)。
【0081】
RAGEおよびそのリガンドは、アルツハイマー病に係る炎症において重要な標的である。可溶性RAGE(sRAGE)はRAGEの細胞外部位であって、RAGEとそのリガンド間の細胞外結合を遮断することができる。
【0082】
しかし、生体内(in vivo)でのsRAGEによるRAGEの遮断は制限的である:(1)sRAGEの生体内半減期が短い。例えば、sRAGEタンパク質をアルツハイマー病(AD)患者の脳内に注入すれば、sRAGEは急速に分解される。(2)また、sRAGEはADでRAGE-依存性炎症を抑制するが、ADの一部炎症媒介体はsRAGEを使用して阻害させることができる。(3)間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cells;MSCs)の移植によるアルツハイマー病治療が試みられている。MSCsは多様な細胞親和性因子(cytotropic factor)を分泌するため、細胞成長を促進し細胞死滅を減少させ自食現象(autophagy)を増加させる。また、MSC移植は活性化された小膠細胞と関連された神経炎症を調節してAβ沈着を減少させる。しかし、移植されたMSCも細胞表面にRAGEを発現し、これはリガンド結合後にRAGE連鎖反応(RAGE cascade)を誘発する。
【0083】
本明細書の一実施形態では、sRAGEタンパク質の短い半減期問題を克服するために、sRAGE-分泌MSCs(sRAGE-MSCs)またはsRAGE-分泌iPSCs(sRAGE-iPSCs)を製作し、代表的にsRAGE-分泌MSCsその効能を見るために、Aβ
1-42注入されたラットの脳での効能を試験した。その結果、Aβ
1-42注入されたラットの脳で、MSC処理後と比較して、sRAGE-MSC処理後に、注入されたMSCの生存率増加、およびAβ沈着、炎症および神経細胞死滅減少を示した(
図2a、3a、3bおよび6参照)。
【0084】
sRAGE-MSC処理によって細胞当り0.011pgのsRAGEが分泌され、これは処理されたsRAGEタンパク質の濃度に比べては低い水準であった(
図1g)。また、sRAGE処理時と比較して、sRAGE-MSCs処理時に一層効果的であったが、その理由はsRAGE-MSCが数代にわたってsRAGEを持続的に分泌するためである(
図8aおよび8b参照)。さらに、sRAGEを用いた人間MSCの遺伝的変形は幹細胞特性(stemness characteristics)を変化させなかった(
図1h)。分泌されたsRAGEはRAGE発現を減少させることによって細胞死滅からMSCを保護し(
図1d~1g)、Aβ
1-42注入されたラットの脳で、MSC処理時と比較して、sRAGE-MSCの処理時にsRAGE-MSCの生存期間がさらに長かった(
図1bおよび1c)。このような結果は、sRAGEがAβ
1-42注入されたラットの脳でMSCsに対するRAGE-リガンド結合を抑制することによって、Aβ
1-42誘導された環境のニッチコントローラー(niche controller)として作用する可能性を示す。
【0085】
AGE(Advanced Glycation End products;RAGEリガンド)は小膠細胞によるAβ合成を増加させ、AGE水準は、BACE1水準を上向調節することによってADを悪化させる陽性フィードバックループによって維持され、Aβ生産を増加させる。本実施形態で免疫蛍光法と免疫ブロッティングを通じてsRAGE-MSCがAβ
1-42注入されたラットの脳でBACE1(Beta-secretase 1)水準とAβ蓄積を減少させるのを確認した(
図3a~3e)。Aβ
1-42露出は小膠細胞の活性化を増加させて活性化された小膠細胞はRAGEリガンドを発現する。本実施形態の結果は、sRAGE-MSC注入によってAβ
1-42注入されたラットの脳で活性化された小膠細胞の数が減少するのを示す(
図4aおよび4b)。小膠細胞の活性化だけでなく、発現されたRAGEリガンドの水準も、sRAGEまたはMSCを処理した場合と比較して、sRAGE-MSCを処理した場合により減少した(
図4e)。RAGEリガンドのsourceを決定するために、Aβ
1-42露出されたSH-SY5Yニューロン培地(CM)を投与して人間小膠細胞株(HMO6)を活性化させた。sRAGEタンパク質、MSC培地、およびsRAGE培地を前記CM処理したHMO6細胞に投与した。sRAGE-MSCから分泌されたsRAGEは上清液、細胞溶解物、および動物組織(
図4cおよび4d)でのRAGEリガンドの発現を弱化させるだけでなく、RAGEとそのリガンド間の相互作用も減少させた(
図5b~5d)。
【0086】
AGE、HMGB1(High mobility group box 1)、およびS100β(優勢なRAGEリガンド)はニューロン疾患に関与し、これらの相互作用は炎症および神経細胞死滅(neuronal apoptosis)と関連するRAGE cascadeを誘導した。sRAGE-MSCによって分泌されたsRAGEは、Aβ
1-42注入されたラットの脳でRAGEとそのリガンドの間の結合、RAGE関連炎症の水準、およびpSAPK/JNK(phosphorylated stress-activated protein kinase/c-Jun N-terminal kinase)のような細胞死滅関連分子の水準を顕著に減少させた。また、sRAGEタンパク質またはMSCと比較して、sRAGE-MSCによって分泌されたsRAGEはAβ
1-42注入されたラットの脳でcaspase 3、caspase 8、caspase 9およびNF(nuclear factors)も顕著に減少させた(
図4c、5および6)。細胞内ストレス後、細胞内カルシウム過負荷によって誘導されたSAPK/JNKのようなタンパク質キナーゼ活性化はアポトーシス細胞死(apoptotic cell death)を誘発することがある。本実施形態で、Aβ
1-42がAβ
1-42注入されたラットの脳での細胞死滅、SAPK/JNK、およびcaspasesに及ぼす影響を確認した。その結果、sRAGE-MSCがSAPK/JNK-Caspase pathwayの不活性化によって促進されるニューロン細胞死滅に対して保護活性を有するのを確認した(
図5bおよび
図6)。最後に、Aβ
1-42注入されたラットの脳で、sRAGE-MSCsは、sRAGEまたはMSCsと比較して、ニューロン細胞死滅を防止する効果が優れているのを確認した(
図6)。
【発明の効果】
【0087】
本明細書に提供されているように、アルツハイマー病動物モデルの脳に対して、sRAGE分泌MSCを有効成分として使用することによって、sRAGEまたはMSCを使用した場合と比較して、Aβ沈着と活性化された小膠細胞数値を効果的に減少させることができる。また、sRAGE分泌MSCを使用することによって、sRAGEまたはMSCを使用した場合と比較して、活性化された小膠細胞でのRAGEリガンド水準および活性化された小膠細胞でのRAGEとRAGEリガンド間の相互作用を顕著に減少させることができる。また、sRAGE-MSCsはsRAGEを持続的に分泌することによってアルツハイマー病モデル(例えば、Aβ1-42注入されたラット)の脳で神経細胞保護効果を示すことができる。したがって、sRAGE分泌MSCは、アルツハイマー病の予防および/または治療に効果的に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【
図1a】
図1は、sRAGE分泌MSCの特性を例示的に示すものである。
図1aは、CRISPR媒介sRAGE分泌MSC(sRAGE-MSC)の生産に使用可能な発現ベクターの開裂地図である。
【
図1b】sRAGE特異的核酸配列を使用するjunction PCRによって決定されたsRAGE-MSCから分泌されたsRAGEのgDNA(ゲノムDNA)水準を示す。
【
図1c】ELISAによって決定された1.5×10
6sRAGE-MSC条件培地(conditioned medium;CM)でsRAGE水準を示すグラフである。
【
図1e】条件培地(d)および細胞溶解物(e)でのsRAGE接合Flag発現水準を示す免疫ブロッティング結果である。
【
図1f】DAPI染色された核が青色で示されたsRAGE接合されたFlag(Flag、red)および幹細胞マーカー(Endoglin、緑色)の発現を示す二重染色共焦点顕微鏡イメージである(Scale bar=100μm、倍率=200x)。
【
図1g】前記
図1fの代表的な共焦点顕微鏡イメージでのFlag強さを示すグラフである(**、<0.01 versus MSC、***、<0.001 versus MSC)。
【
図1h】sRAGE-MSCの陽性幹細胞マーカー(CD44、CD73)および陰性マーカー(CD34)の発現水準を示すグラフである。
【
図2a】
図2は、RAGE誘導細胞死滅の遮断を通じたsRAGE-MSCの生存率増加を示すものである(MSCおよびsRAGE-MSCのAβ
1-42注入されたラットの脳内の移植を最終注入後、4週目に免疫蛍光およびqRT-PCR分析によって確認した)。
図2aは、CD44陽性細胞(赤色)の分布を免疫蛍光分析で確認した免疫蛍光イメージである。
【
図2b】CD44陽性細胞の数を示すグラフである。
【
図2c】人間特異的幹細胞マーカー(CD44遺伝子)の発現水準をqRT-PCR分析で確認した結果を示すグラフであって((*、<0.05 versus MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)、各遺伝子マーカーの発現水準はラットGADPH遺伝子の発現水準を1にしてこれに対する倍数で示した相対値である。
【
図2d】人間特異的幹細胞マーカー(CD90遺伝子)の発現水準をqRT-PCR分析で確認した結果を示すグラフであって((*、<0.05 versus MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)、各遺伝子マーカーの発現水準はラットGADPH遺伝子の発現水準を1にしてこれに対する倍数で示した相対値である。
【
図2e】人間特異的幹細胞マーカー(CD117遺伝子)の発現水準をqRT-PCR分析で確認した結果を示すグラフであって((*、<0.05 versus MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)、各遺伝子マーカーの発現水準はラットGADPH遺伝子の発現水準を1にしてこれに対する倍数で示した相対値である。
【
図2f】96時間1uM Aβ
1-42またはPBS処理後、免疫蛍光法で確認したMSCおよびsRAGE-MSCでのRAGE発現(緑色)を示す蛍光イメージである。
【
図2g】前記
図2fで得られた免疫蛍光の強度を定量して示すグラフである。
【
図2h】TUNEL分析によって確認されたMSCおよびsRAGE-MSCのapoptosis(赤色)を示す蛍光イメージである。
【
図2i】全体細胞に対するapoptotic細胞比率(%)を示すグラフである(
図2で、scale bar=100μm、*、<0.05、***、<0.001、versus MSC group。DAPI stained nuclei are blue colored)。
【
図3a】
図3は、Aβ
1-42注入されたラット脳でのsRAGE-MSC処理によるAPP(Amyloid precursor protein)およびBACE1(Beta-secretase 1)発現水準の減少を示すものである。
図3aは、APP発現(緑色)を共焦点顕微鏡で観察した蛍光イメージである(Scale bar=100μm)。
【
図3b】
図3aで観察された各細胞で得られたAPP発現(緑色)蛍光強度を定量して平均値を示すグラフであって、MSC処理されたAβ
1-42注入ラットの脳とsRAGE-MSC処理されたAβ
1-42注入ラットの脳の間に統計的に有意差がないのを示す。
【
図3c】BACE1の発現(緑色)を共焦点顕微鏡で観察した蛍光イメージである(Scale bar=100μm)。
【
図3d】
図3cで観察された各細胞から得られたBACE1発現(緑色)蛍光強度を定量して平均値を示したグラフであって、MSC処理されたAβ
1-42注入ラットの脳とsRAGEタンパク質処理されたAβ
1-42注入ラットの脳の間には統計的差がないのを示す。
【
図3e】Aβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラットの脳でのAPPおよびBACE1タンパク質水準を示す免疫ブロッティング分析結果である(
図3で、§§§、<0.001、versus naive controls、***、<0.001、versus Aβ
1-42 injected rat brains、##<0.01、###、<0.001、versus sRAGE-MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)。
【
図4a】
図4は、in vivoおよびin vitroでsRAGE-MSC処理による小膠細胞活性化およびRAGEリガンドを含む炎症関連タンパク質発現の減少を示すものである。
図4aは、Aβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳での活性化された小膠細胞(Iba1;緑色)分布を示す共焦点顕微鏡イメージである(核はDAPI染色されて青色で表示される)(Scale bar=100μm)。
【
図4b】発現された全体細胞に対するIba1陽性細胞の比率を示すグラフであり(<0.001、versus naive controls、***、<0.001、versus Aβ
1-42 injected rat brains、###、<0.001、versus sRAGE-MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)、sRAGEタンパク質処理されたAβ
1-42注入ラットとMSC処理されたAβ
1-42注入ラットの脳の間には大きな差がないのを示す。
【
図4c】Aβ
1-42注入されたラットの脳でのIL-1βおよびNFκBを含む炎症タンパク質の発現水準を示す免疫ブロッティング結果であり、M1およびM2マーカーに対してiNOSおよびArg1がそれぞれ使用された。
【
図4d】24時間CM、sRAGEタンパク質、MSC培地(MSC med)、またはsRAGE-MSC培地(sRAGE-MSC med)でそれぞれ処理後のHMO6細胞溶解物でのRAGEリガンドであるAGE、HMGB1およびS100βの水準をELISAで測定した結果を示すグラフである。
【
図4e】Aβ
1-42注入ラットの脳組織でのAGE、HMGB1およびS100β水準を示すグラフである(
図4dおよび4eで、§、<0.05、versus naive controls、*、<0.05、versus Aβ1-42 injected rat brains、#<0.05、versus sRAGE-MSC treated Aβ1-42 injected rat brains)。
【
図5a】
図5は、Aβ
1-42注入ラット脳でsRAGE-MSC処理によるRAGE関連細胞死滅経路およびRAGE発現の減少を示すものである。
図5aは、Aβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳でのRAGE発現(緑色)を示す共焦点顕微鏡イメージである(核はDAPI染色されて青色で表示される)(Scale bar=100μm)。
【
図5b】Aβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳でのSAPK/JNK、pSAPK/JNK、Caspase 3、Caspase 8、およびCaspase 9の水準を測定した免疫ブロッティング分析結果を示す。
【
図6a】
図6は、Aβ
1-42注入ラット脳でsRAGE-MSC処理によるRAGE媒介神経細胞死滅の改善を示すものである。
図6aは、Aβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラットの脳の共焦点顕微鏡写真であって(Scale bar=100μm)、TUNEL陽性細胞が赤色で表示される。
【
図6b】image J softwareを使用して計数したTUNEL陽性細胞数を示すグラフである。
【
図6c】neuronal populationsを示すCresyl violet染色イメージである(Scale bar=200μm)。
【
図6d】image J softwareを使用して計数された染色された細胞の数を示すグラフである(§、<0.05、versus naive controls、*、<0.05、versus Aβ
1-42 injected rat brains、#<0.05、versus sRAGE-MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)。
【
図7a】sRAGE-MSCからの生成されたsRAGEの配列整列結果を示す。
【
図8a】
図8は、MSC、バックボーンベクターpZD/MSC、およびsRAGE-MSCでのsRAGE接合されたFlagの発現を示したものである。
図8aは、MSC、pZD-MSC、および継代培養sRAGE-MSC(S1、S2、およびS3)でsRAGE接合Flag(赤色)、核(DAPI、青色)、およびMSC特異的マーカー(Endoglin、緑色)によって得られた共焦点顕微鏡イメージである。
【
図8b】
図8aの代表的な結果からFlag発現を定量したグラフである(pZD/MSC;pZDonor-AAVS1 backbone vector transfected MSC、S1;first cell subculture、S2;second cell subculture、S3;third cell subculture Scale bar=100μm、Data are means ± Standard Deviation、***、significantly different(P<0.001)、NS;Not Significant)。
【
図9a】
図9は、sRAGEを分泌するiPSCの特性を示すものである。
図9aは、sRAGEコード遺伝子挿入されたpZDonor-AAVS1ベクターで形質感染されたiPSCのPCR結果を示す電気泳動イメージである。
【
図9b】sRAGEの発現および分泌水準をウェスタンブロットおよびELISAで確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0089】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明しようとするが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのではない。以下に記載された実施例は発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形できるのは当業者において自明である。
【実施例0090】
参考例
1.MSCs、HMO6細胞、およびSH-SY5Y細胞の培養
人間臍帯由来間葉系幹細胞(MSCs)は、CEFObio(Seoul、Korea)で購入した。sRAGEを発現する間葉系幹細胞(sRAGE-MSCs)は、MSC(CEFObio)にsRAGE(cat.RD172116100、Biovendor;配列番号6)を含むドナーベクター(
図1a参照)を導入させて準備した(参考例2参照)。paracrine効果検証(in vitro)に使用するために、前記MSCsとsRAGE-MSCsをそれぞれMSC培地(MSC med;DMEM、Gibco(登録商標)Life Technologies Corp.)またはsRAGE-MSC培地(sRAGE-MSC med;sRAGE分泌MSCsの培養時使用、DMEM、Gibco(登録商標)Life Technologies Corp.)で2日間培養した。タンパク質分解を防止するために、前記二つの培地全てにプロティナーゼ阻害剤(proteinase inhibitor)およびホスファターゼ阻害剤(phosphatase inhibitor)(TAKARA、Tokyo、Japan)を添加した。MSC培地およびsRAGE-MSC培地をそれぞれのcentrifugal filter unit(Millipore、Merck Millipore、Germany)に収集し、4℃で50分間3,220xgで遠心分離した。このように得られた濃縮培養液は使用時まで-80℃で保管した。
【0091】
SH-SY5Y細胞(ヒト神経芽細胞腫細胞株;ATCC CRL-2266)およびHMO6細胞(小膠細胞株)を使用して神経細胞試験を行った。SH-SY5Y細胞は最小必須栄養培地(Hyclone、South Logan、UT)で培養し、HMO6細胞はDulbecco’s modified Eagle’s medium(Hyclone)で培養した。二つの培地は全て10% heat-inactivated fetal bovine serum(Hyclone)および1% penicillin streptomycin(Hyclone)を含んでいる。SH-SY5Y細胞(at 70% confluence)を96時間1uMベータアミロイド(Aβ1-42;Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)を含有する新鮮な培養培地で96時間培養した。このように得られたSH-SY5Y conditioned medium(CM)を収集し、先にMSC medおよびsRAGE-MSC medについて説明した方法によって濃縮した。活性化された小膠細胞からRAGEリガンドが合成および分泌されるのを確認するために、HMO6細胞をsRAGEタンパク質、濃縮MSC med、またはsRAGE-MSC medで24時間処理した後、CMで24時間処理した。以下、実施例で使用された全ての細胞は37℃の5% CO2培養器で維持させた。
【0092】
2.CRISPR/Cas9を用いたsRAGE MSCsの製作
sRAGEを分泌するMSC(sRAGE MSCs)を製作するために、AAVS1(adeno-associated virus integration site 1)のsafe harbor sitesを標的化するmRNA CRISPR/Cas9(ToolGen、Inc;Cas9:Streptococcus pyogenes由来(配列番号4)、およびsgRNAのAAVS1標的部位:5’-gtcaccaatcctgtccctag-3’(配列番号7))をAAVS1に形質感染させた。
【0093】
前記sgRNAは、次のヌクレオチド配列を有する:
5’-(標的配列)-(GUUUUAGAGCUA;配列番号1)-(ヌクレオチドリンカー)-(UAGCAAGUUAAAAUAAGGCUAGUCCGUUAUCAACUUGAAAAAGUGGCACCGAGUCGGUGC;配列番号3)-3’
(前記標的配列は配列番号7のAAVS1標的部位配列で“T”を“U”に変換した配列であり、前記ヌクレオチドリンカーはGAAAのヌクレオチド配列を有する)。
【0094】
ここに、10μlのsRAGE配列(
図1aのドナーベクター形態で使用される)および形質感染基質(transfect substrates)を使用して次の条件下でNucleofectionを行った;1050 volts、pulse width 30、pulse number 2、NEON Microporator(Thermo Fisher Scientific、Waltham、MA)使用。10
6細胞を60mm培養皿(BD Biosciences、San Jose、CA)に接種した後、注射前7日間37℃の5% CO2培養器で安定化させた。培地は毎日交替した。
【0095】
3.試料準備
3.1.Frozen block tissue slide
脳試料を収集するために、ラットを麻酔させ、18℃で食塩水200mLで経心腔的灌流(transcardial perfusion)させた後、4%パラホルムアルデヒドを含有する0.1Mリン酸緩衝食塩水(PBS)200mLで経心腔的灌流させた。抽出した脳を4℃で4時間固定液(fixative solution)に浸漬した後、20%スクロース(Sigma-Aldrich)を含有する氷冷却された0.1M PBSに移した。このように準備された脳はcryotomeを使用して10または30μmで冠状に切断して使用時まで-20℃で保管した。
【0096】
3.2.タンパク質分離
in vivoおよびin vitroでタンパク質発現水準を決定するために、EzRIPA lysis kit(ATTO、Tokyo)を使用して収集された脳または細胞を溶解させた。その後、内嗅皮質(Entorhinal cortices;ENT)を均質化し4℃で13,000xgで20分間遠心分離した。上清液を新しいチューブに移し、Bicinchoninic acid assay kit(Thermo Fisher Scientific)を使用してタンパク質含量を測定した。
【0097】
3.3.RNA分離
Trizol reagent(Thermo Fisher Scientific)を使用して製造社の使用説明によってラット脳脂肪内の総RNAを分離した。簡略に説明すれば、ENTをクロロホルム(Amresco、Solon、OH)0.2mLと混合した前記Trizol reagent 1mLで均質化させ、4℃で12,000xgで15分間遠心分離した。上澄み液を新しいチューブに入れて100%イソプロパノール0.5mLと混合し10分間12,000xgで遠心分離した。このように得られたRNAペレットを70%エタノールで洗浄し7,500xgで5分間遠心分離し、乾燥させたペレットをdiethylpyrocarbonate(DEPC) water 30μlに溶解させてNanodrop2000(Thermo Fisher Scientific)を使用して定量した。
【0098】
4.MSCsによるsRAGE分泌を確認するためのJunction PCR
MSCsでsRAGE発現を確認するために、GeneJET genomic DNA purification kit(Thermo Fisher Scientific)を使用してMSCおよびsRAGE分泌MSC(sRAGE-MSC)のgDNA(ゲノムDNA)を抽出した。その後、Nanodrop 2000を使用してgDNAの濃度を測定した。同量のgDNAを次の条件でPCR増幅させた:15 cycles of denaturation(30 sec at 90℃)and annealing(90 sec at 68℃)and 20 cycles of denaturation(30 sec at 95℃)、annealing(30 sec at 58℃)and synthesis(90 sec at 72℃)、followed by a primer extension(5 mins at 72℃)。前記PCRに使用されたプライマー配列を表2に整理した。
【0099】
【0100】
5.免疫ブロッティング(Immunoblotting)
タンパク質発現水準を測定するために、同量のタンパク質を10% SDS-PAGE(sodium dodecylsulfate-polyacrylamide gel electrophoresis)で分離し、Semi-Dry transfer system(ATTO)を使用して25Vで10分間ポリフッ化ビニリデン(PVDF)メンブレンに移した。その後、メンブレンを0.1% Tween-20(TBST)を含有するTris-緩衝食塩水(TBS)(pH7.6)に含まれている5%(w/v)skimmed milkで2時間遮断し、洗浄し、ブロッキング溶液(blocking solution)(normal horse serum、Vector laboratories)で一次抗体と共に4℃で一晩インキュベーティングした後にTBSTで洗浄し、適当な2次抗体と共にインキュベーティングし洗浄した。目的タンパク質はImageQuant LAS-4000(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)上でEzWestLumiおよびluminol substrate(ATTO)を使用して検出した。前記分析に使用された抗体を表3に整理した:
【表3】
【0101】
6.免疫蛍光分析法(Immunofluorescence)
冷凍された脳組織切片(10μm)を1%正常血清で培養して非特異的抗原と抗体結合を遮断した後、抗体(表3参照)を4℃で一晩インキュベーティングした。脳切片を1時間蛍光接合された2次抗体と共に1時間インキュベーティングし、PBSで再び洗浄した。核はDAPI(4’6-diamino-2-phenylindole;Sigma-Aldrich)で室温で5分間対照染色し、発生する蛍光信号を共焦点顕微鏡(LSM 710、Carl Zeiss、Oberkochen、Germany)で検出した。前記検出された蛍光信号の分析は、Image J software(NIH、Bethesda、MD)を使用して行った。
【0102】
7.ELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)およびSandwich ELISA
MSCおよびsRAGE-MSCからのsRAGE分泌を測定するために、使用される全てのELISA試薬、working standards、および試料は製造者(Aviscera Bioscience、Santa Clara、CA)指針書によって準備した。試料を抗体が予備コーティングされたマイクロプレートのウェルに添加した。その次に、表3に記載された抗体接合体を各ウェルに添加してインキュベーティングした後、マイクロプレート判読機を使用して450nmで光学密度(optical densities)を測定した。in vivoおよびin vitroでRAGEリガンドの発現およびRAGEとそのリガンドの間の相互作用を測定するために、96-ウェルマイクロプレートのウェルを100mM carbonate/bicarbonate buffer(pH9.6)に含まれているAGE、HMGB1、およびS100β抗体で4℃で一晩コーティングした。0.1% triton x-100(TPBS)を含有するPBSでウェルを洗浄した後、室温で2時間5% skim milkを添加して残っているタンパク質結合部位を遮断した。PBSで洗浄した後、他の組織抽出物、細胞溶解物、または上澄み液試料を前記ウェルに添加して4℃で一晩インキュベーティングした。TPBSで洗浄した後、RAGE抗体を添加して室温で2時間放置した。プレートをTPBSで洗浄した後、試料をペルオキシダーゼ接合2次抗体と共に室温で2時間インキュベーティングした。その次に、TMB基質溶液を添加し、5~10分間インキュベーティングした後、同一な体積の停止液(2N H2SO4)を添加した。光学密度は450nmで測定した。使用された抗体濃度は前記表3に記載されている。
【0103】
8.FACS(Fluorescence-activated cell sorting)
FACSを使用してMSCマーカーのCD44(陽性)、CD73(陽性)、およびCD34(陰性)を検査してMSCsおよびsRAGE-MSCsを同定した。細胞はfluorescein isothiocyanate(FITC)で標識された一次抗体と共に暗条件で1時間インキュベーティングした後、PBSで3回洗浄した。染色後、106個のMSCまたはsRAGE-MSCに対してFACS(Calibur、BD Bioscience)分析を実施した。
【0104】
9.試験動物の準備
下記の実施例に7週齢Sprague Dawley(SD)ラットを使用した。動物は個別的に収容し、標準食べ物と水を自由に摂取することができるようにしながら12時間の明暗周期条件の温度調節式(24℃)施設で維持させた。動物試験は嘉泉大学校のInstitutional Animal Care and Use Committee(AAALAC International)で承認された国際指針によって行った。
【0105】
10.試薬
人間Aβタンパク質断片1-42(Aβ1-42;DAEFRHDSGY EVHHQKLVFF AEDVGSNKGA IIGLMVGGVV IA;配列番号5;Sigma-Aldrich;cat.A9810)はジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)(DMSO)に4mMの濃度で溶解して準備した。人間sRAGEタンパク質(UniProtKB acc.no.Q15109)はBiovendor(cat.RD172116100、Brno、Czech Republic;配列番号6(Total 339 AA.MW:36.5 kDa.UniProtKB accession no.Q15109.N-Terminal His-tag 14 AA))から購入して、アセテート緩衝液(pH4)に0.5mg/ml濃度で溶解させた。前記準備されたAβ1-42ペプチドとsRAGEは、使用時まで-80℃で保管した。使用前に、Aβ1-42ペプチドおよびsRAGEをPBSを使用してそれぞれ200nMまたは6.7nMに希釈した。
【0106】
11.アルツハイマー病(AD)動物モデル
外科的手術前にSDラット(参考例9)をZoletil 50(50mg/kg)およびRompun(10mg/kg)で麻酔させた。Aβ1-42ペプチドまたはsRAGEをそれぞれ200uMまたは6.7nMの濃度でリン酸緩衝食塩水(PBS)に溶解させた。頭皮正中線切開後、頭蓋骨のbregmaから後方8.3mmおよび側方5.4mm地点を生物学的電気ドリルで穴をあけた。その後、5μl Hamilton注射器の針(30ゲージ)を標的領域(深さ、4.5mm)に到達するまで垂直に下ろした。stereotaxic guidance下でENTに試薬と細胞を次のように注入した:200uM Aβ1-42溶液 5μl、6.7nM sRAGEタンパク質 3μl、106個のsRAGE-MSCまたは106個のMSC 5μl。
【0107】
標的領域にAβ1-42溶液を先に注射した後、数分後にsRAGEタンパク質、MSC、またはsRAGE-MSCを注射した。試薬の逆流を防止するために、試薬を分当り1μlの速度で徐々に注射した。注射後、針を徐々に抜き、手術部位をwound clipで縫合した。
【0108】
対照群としてAβ1-42溶液を注入されない正常の健康なラットを使用した。
【0109】
12.qRT-PCR(Quantitative polymerase chain reaction)
PrimeScript 1st strand cDNA Synthesis Kit(TAKARA)を使用して分離された脳RNAからcDNA(Complementary DNA)を合成した。qRT-PCRはCFX386 touch(Bio-rad、Hercules、CA)を使用して行い、反応効率および閾値サイクル(threshold cycle)数はCFX386 softwareを使用して決定した。使用された全てのプライマーは人間特異的な配列を使用して設計され、前記配列は表2に示したとおりである。
【0110】
13.TUNEL(TdT-mediated dUTP-X nick end labeling)
PBSで洗浄された冷凍脳切片にIn Situ Cell Death Detection Kit(TUNEL;Roche Applied Science、Burgess Hill、UK)を使用してTUNELを行った。簡略に説明すれば、組織切片を透過性化溶液(permeabilization solution;0.1%(w/v) Triton X-100含有0.1%(w/v) sodium citrate溶液)で氷で2分間インキュベーティングし、PBSで洗浄した後、TUNEL反応混合物で処理し、humidified chamber atmosphereで2時間インキュベーティングした(37℃および暗条件)。その後、切片をPBSで3回洗浄し、Vectashield mounting medium(Vector Laboratories、Burlingame、CA)を使用してglass slideの上に置いてcoverslipを覆った。Image J(NIH)softwareを使用して細胞自殺死(Apoptotic)細胞比率を決定した。
【0111】
14.Cresyl violet染色およびニューロンカウンティング
先に準備された冷凍されたラット脳組織スライドを室温で5分間乾燥させ、PBSで10分間洗浄した後、graded ethanol series(100%(v/v)エタノール:3分、90%エタノール:3分、80%エタノール:3分、70%エタノール:5分)でインキュベーティングし蒸留水で洗浄した後、glacial acetic acid含有0.1% Cresyl violet染色溶液(Sigma-Aldrich)で20分間染色し、蒸留水、70%エタノールで1分、80%エタノールで30秒、90%エタノールで20秒、100%エタノールで20秒、最後にキシレン(xylene)で5分間洗浄した。組織学的分析(BBC biochemical、Mt Vernon、WA)のために前記切片をOpticMount mounting mediumを使用してマウンティングし、前記分析は光学顕微鏡(Carl Zeiss)を使用して行った。Image J software(NIH)を使用してニューロンを計数した。
【0112】
15.統計的分析
小さな試料の大きさを勘案して、non-parametric分析を使用した。IBM SPSS statistics 23 software(SPSS、Inc.、Armonk、NY)でMann-Whitney testを使用してグループ間比較を行った(Null hypotheses of no difference were rejected when p-values were<0.05)。結果は、独立的な三回の試験から得られた値を平均して表わした。
【0113】
実施例1.sRAGE-MSCsの特性試験(normal MSC特徴を有する)
参考例で製作したsRAGE分泌MSC(sRAGE-MSC)の特性を試験して、正常的なMSCの特徴を示すのを確認した。
【0114】
まず、先に説明したように、MSCがsRAGEを分泌するように誘導するのにCRISPR/Cas9システムを使用し、sRAGEはFlagで標識して使用した(
図1a参照)。配列分析を通じて内因性および人為的に生成されたsRAGE(
図7a~cおよび7e~f)の配列相同性を評価し、sRAGE-MSCのゲノムDNAをjunction PCRによって確認してその結果を
図1bに示した。
図1bに示されているように、RAGE発現が確認された。
【0115】
sRAGE-MSCsの細胞内および細胞外のsRAGE発現(存在)をELISA、免疫ブロッティング、および免疫蛍光分析で確認してその結果を
図1c~
図1gに示した。
【0116】
図1cはsRAGE-MSCsおよびMSCsで分泌されたsRAGEの量をELISAによって分析した結果であり、sRAGE-MSCsによって分泌されたsRAGEの量がMSCsによって分泌される量より892.80倍さらに多いのを示す。
【0117】
図1dおよび1eは、sRAGE-MSC上澄み液(d)および細胞溶解物(e)でのsRAGE-接合Flag発現水準を示す免疫ブロッティング結果である。
【0118】
図1fは、sRAGE接合されたFlag(Flag、red)および幹細胞マーカー(Endoglin、緑色)の発現を示す二重染色共焦点顕微鏡イメージである(Scale bar=100μm、倍率=200x;核はDAPI染色されて青色で示される)。
図1fのように、MSCとsRAGE-MSCはMSCマーカーであるEndoglinを発現し、sRAGE-MSCsによって合成されたsRAGEが細胞質MSCで観察され、分泌されたsRAGEは凝集して小さくて赤色の粒子を形成した。
【0119】
図1gは前記
図1fの代表的な共焦点顕微鏡イメージでのFlag強さを示すグラフである(**、<0.01 versus MSC、***、<0.001 versus MSC)。
図1gで確認されるように、sRAGE-MSCのFlag発現強度はMSCでの強度より5.02倍さらに高かった。
【0120】
図8aはMSC、pZD-MSC、および継代培養sRAGE-MSC(S1、S2、およびS3)でsRAGE接合Flag(赤色)、核(DAPI、青色)、およびMSC特異的マーカー(Endoglin、緑色)を確認した共焦点顕微鏡イメージであり、
図8bは
図8aの代表的な結果からFlag発現を定量したグラフである。
図8aおよび8bに示されているように、細胞培養プレートでsRAGE-MSCが増殖する間、局所的に発現されたFlagの水準は継続して減少したが、Flag強度は高く維持された(
図8aおよび8b)。
【0121】
図1hは、sRAGE-MSCの陽性幹細胞マーカー(CD44、CD73)および陰性マーカー(CD34)の発現水準を示すグラフである。
図1hに示されているように、遺伝子変形にもかかわらず、sRAGE-MSCsはよく知られたMSC特異マーカーを発現した。
図1hのFlow cytometry結果は、CD44とCD73を含む陽性マーカーがsRAGE-MSCsとMSCsの全てで発現され、陰性マーカーであるCD34は二つの細胞株全てで発現されないのを示す。
【0122】
実施例2.sRAGEの効果試験1-sRAGEはRAGE発現を減少させることによって移植された細胞の生存率を増加させる
sRAGE-MSCsまたはMSCsをAβ
1-42注射されたラットの脳に移植して、sRAGE-MSCsの効果を試験した。人間特異的抗体(表3参照)およびプライマー(表2参照)を使用して免疫蛍光法およびqRT-PCRを行って、移植されたsRAGE-MSCとMSCの移植後4週目の蛍光イメージを得て生存率を測定し、その結果を
図2a~2eに示した。
【0123】
図2aはCD44陽性細胞(赤色)の分布を免疫蛍光分析で確認した免疫蛍光イメージであり、
図2bはCD44陽性細胞の数を示すグラフである。
図2c~2eは人間特異的幹細胞マーカー(CD44遺伝子(2c)、CD90遺伝子(2d)、およびCD117遺伝子(2e))の発現水準をqRT-PCR分析で確認した結果を示すグラフである((*、<0.05 versus MSC treated Aβ
1-42 injected rat brains)。
図2a~2eに示されているように、人間特異的CD44を発現するMSC(CD44-positive cell)の個数はMSCを移植した場合よりsRAGE-MSCを移植した場合に1.43倍さらに多く(
図2aおよびb)、CD44、CD90およびCD117 mRNAの発現水準もsRAGE-MSCでそれぞれ2.31倍、2.77倍、および4.08倍高く示された(
図2c-e)。このような結果は、同一容量でsRAGE-MSC生存率がMSCより高いということを示す。
【0124】
図2fは96時間1uM Aβ
1-42またはPBS処理後に免疫蛍光法で確認したMSCおよびsRAGE-MSCでのRAGE発現(緑色)を示す蛍光イメージであり、
図2gは前記
図2fで得られた免疫蛍光の強度を定量して示したグラフである。
図2fおよび2gに示されているように、MSCとsRAGE-MSCの生存率を比較するために、MSCsとsRAGE-MSCでRAGE発現を確認し、in vitroでRAGE関連細胞死滅を調査した。MSCsとsRAGE-MSCを1uMのAβ
1-42で96時間処理した後、MSCsでのRAGE発現強度はPBS処理に比べて64.97倍増加したが、sRAGE-MSCsでのRAGE発現強度は25.78倍増加して、MSCsに比べて2.52倍低い水準を示した。
【0125】
図2hはTUNEL分析によって確認されたMSCおよびsRAGE-MSCのapoptosis(赤色)を示す蛍光イメージであり、
図2iは全体細胞に対するapoptotic細胞比率(%)を示すグラフである。
図2hおよび2iに示されているように、同じ条件で、Aβ1-42処理後、apoptotic MSCsの比率は79.00%まで増加したが、apoptotic sRAGE-MSCsの比率はMSCsと比較して1.83倍減少した43.19%であった。このような結果は、分泌されたsRAGEによるRAGE遮断がAβ
1-42注射されたラットの脳でのsRAGE-MSCの生存率を増加させるのを示す。
【0126】
実施例3.sRAGEの効果試験2-sRAGE-MSCsはAβ1-42注入ラット脳でAPPおよびBACE1の発現を減少させる
アルツハイマー病ラットモデルを作るためにAβ1-42をラットのENT領域に注射した。Aβ1-42注射はアミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)およびベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の水準を増加させることが観察された。
【0127】
APPおよびBACE1の発現水準は、免疫蛍光法で測定して、その結果を
図3a~3dに示した。
【0128】
図3aはAPP発現(緑色)を共焦点顕微鏡で観察した蛍光イメージであり(Scale bar=100μm)、
図3bは
図3aで観察された各細胞から得られたAPP発現(緑色)蛍光強度を定量して平均値を示したグラフである。
図3aおよび3bに示されているように、Aβ
1-42注射後、APP強度(発現水準)はAβ
1-42注射後、Aβ
1-42注射前と比較して、4.46倍増加した反面、Aβ
1-42とsRAGEタンパク質を処理した場合には、Aβ1-42注射した場合に比べて、1.13倍減少した。また、Aβ1-42注射した場合と比較して、Aβ
1-42とMSCを処理した場合のAPP強度は1.96倍減少し、Aβ1-42とsRAGE-MSC処理の強度水準は1.88倍減少した。
【0129】
図3cはBACE1の発現(緑色)を共焦点顕微鏡で観察した蛍光イメージであり(Scale bar=100μm)、
図3dは
図3cで観察された各細胞から得られたBACE1発現(緑色)蛍光強度を定量して平均値を示したグラフである。
図3cおよび3dで示されるように、BACE1発現変化はsRAGE-MSC処理後のAPP発現結果と類似していた。BACE1強度は、Aβ
1-42注射後に注射前と比較して12.10倍増加した反面、Aβ
1-42とsRAGEタンパク質処理後にはAβ
1-42注射後と比較して1.57倍減少し、Aβ
1-42とMSC処理後にはAβ
1-42注射後と比較して1.87倍減少し、Aβ
1-42とsRAGE-MSC処理後にはAβ
1-42注射後と比較して2.61倍減少した。BACE1タンパク質水準はAβ
1-42注射されたラットの脳で増加し、sRAGE-MSC処理によるBACE1タンパク質水準減少効果はsRAGEタンパク質またはMSC処理時より効果的であった。
【0130】
図3eはAβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳でのAPPおよびBACE1タンパク質水準を示す免疫ブロッティング分析結果である。
図3eで示されるように、Aβ
1-42処理時と比較して、Aβ
1-42とsRAGE-MSCを処理した場合、APPおよびBACE1の発現が顕著に減少した。
図3eで観察された発現変化は先に免疫蛍光法で測定された結果と類似していた。
【0131】
実施例4.sRAGEの効果試験3-sRAGE-MSCsは小膠細胞の活性化およびRAGEリガンドと炎症性タンパク質の発現を減少させる
Aβ
1-42注射されたラットの脳で炎症性タンパク質と活性化された小膠細胞間の関連性を調査するために、Iba1(activated macrophage marker)陽性細胞をカウンティングして活性化された小膠細胞の分布を調査して、その結果を
図4aおよび4bに示した。
図4aはAβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳での活性化された小膠細胞(Iba1;緑色)分布を示す共焦点顕微鏡イメージであり、
図4bは発現された全体細胞に対するIba1陽性細胞の比率を示すグラフである。
図4aおよび4bで示されるように、Iba1陽性細胞の数はAβ
1-42注射されたラットの脳でnaive controlsより2.02倍多く、Aβ
1-42とsRAGEタンパク質またはMSCを処理した場合には若干減少した。しかし、Aβ
1-42とsRAGE-MSCを処理した場合にはIba1陽性細胞数がAβ
1-42注射した場合と比較して有意的に低く示された(3.08倍さらに低い)。
【0132】
IL-1βおよびNFκBのような炎症性タンパク質の水準を測定して
図4cに示した。
図4cはAβ
1-42注入されたラットの脳でのIL-1βおよびNFκBを含む炎症タンパク質の発現水準を示す免疫ブロッティング結果を示す。
図4cに示されているように、IL-1βおよびNFκBのような炎症性タンパク質の水準はAβ
1-42注射されたラットの脳で増加したが、Aβ
1-42注射された場合と比較して、Aβ
1-42とsRAGE-MSCが処理されたラットの脳では確実に減少した。興味深いことに、sRAGE-MSCはAβ1-42注射されたラットの脳でM1またはM2小膠細胞をmodulatingすることができる。Aβ
1-42とsRAGE-MSCが処理後、M1小膠細胞マーカーであるiNOSの水準は減少し、M2小膠細胞マーカーであるArg1の水準は増加した。
【0133】
図4dは24時間CM、sRAGEタンパク質、MSC培地(MSC med)、またはsRAGE-MSC培地(sRAGE-MSC med)でそれぞれ処理後のHMO6細胞溶解物でのRAGEリガンドであるAGE、HMGB1およびS100βの水準をELISAで測定した結果を示すグラフであり、
図4eはAβ
1-42注入ラットの脳組織でのAGE、HMGB1およびS100β水準を示すグラフである。
図4dおよび4eに示されているように、炎症性タンパク質と小膠細胞modulatingだけでなく、sRAGE-MSCは活性化された小膠細胞でRAGEリガンドであるAGE、HMGB1およびS100βの発現水準(in vivoおよびin vitroでELISAで測定)を減少させた。in vitro試験で、96時間1uMのAβ
1-42が処理されたSH-SY5Y(neuronal cells)によって誘導された活性化されたHMO6からRAGEリガンドを合成した。HMO6細胞をsRAGE-MSCのCM(条件培地)と共に処理した場合、sRAGEタンパク質またはMSC培地を処理した場合と比較してRAGEリガンドの発現水準が顕著に減少された(
図4d)。脳組織でAβ
1-42とsRAGE-MSC処理された場合のRAGEリガンド水準はsRAGEタンパク質やMSC処理時より効果的に減少し(
図4e)、このような結果はin vitro結果と類似している。
【0134】
実施例5.sRAGE-MSCsの効果試験4-Aβ
1-42注射されたラット脳でのRAGE媒介神経細胞死滅に対して保護活性
RAGE媒介神経細胞死滅に対するsRAGE-MSCsの保護効果を試験するために、免疫蛍光法でAβ
1-42注射されたラットの脳でのRAGE発現を確認した。
図5aはAβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳でのRAGE発現(緑色)を示す共焦点顕微鏡イメージである。
図5aに示されているように、RAGEの発現を示す蛍光強さは、Aβ
1-42注射によって増加した反面、Aβ
1-42とsRAGE-MSCと共に処理した場合にはAβ
1-42注射した場合と比較して減少した。また、
図5bはAβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラット脳でのSAPK/JNK、pSAPK/JNK、Caspase 3、Caspase 8、およびCaspase 9の水準を測定した免疫ブロッティング分析結果を示す。
図5bに示されているように、SAPK/JNK、Caspase 3、Caspase 8およびCaspase 9のようなRAGE媒介神経細胞死滅関連タンパク質の発現水準は、Aβ1-42注射されたラットの脳と比較して、Aβ1-42とsRAGE-MSC処理されたラットの脳で有意に低く示された(
図5b)。
【0135】
Aβ
1-42注射されたラットの脳でRAGEとRAGE関連細胞死滅タンパク質の発現増加がRAGE媒介神経細胞死滅と関連あるのを試験して
図6aおよび6bに示した。
図6aはAβ
1-42注入、Aβ
1-42注入およびsRAGEタンパク質処理、Aβ
1-42注入およびMSC処理、またはAβ
1-42注入およびsRAGE-MSC処理されたラットの脳の共焦点顕微鏡写真であり、
図6bはimage J softwareを使用して計数したTUNEL陽性細胞数を示すグラフである。
図6aおよび6bに示したように、TUNEL分析によって、Aβ
1-42注射ラットの脳でのTUNEL陽性細胞比率(%)はAβ
1-42処理しない対照群よりさらに高く示されるのを確認した。Aβ
1-42注射されたラットの脳にsRAGE-MSC処理時、sRAGEタンパク質またはMSC処理時と比較して、TUNEL陽性細胞数が顕著に減少した。
【0136】
最後に、sRAGE-MSCによって分泌されたsRAGEがAβ
1-42注射されたラットの脳でニューロンの生存を向上させるか確認するために、Cresyl violet染色法を行った。前記Cresyl violet染色から得られたイメージを
図6cに示し、これを定量した結果を
図6dに示した。
図6cおよび6dで示されるように、Aβ
1-42注射されたラットの脳では生きているニューロンの数が対照群(Aβ
1-42未処理群)より低く示された反面、Aβ
1-42注射されたラットの脳にsRAGEタンパク質、MSC、またはsRAGE-MSCを処理した場合には処理前と比較してニューロン細胞の数が顕著に増加した。また、Aβ
1-42注射されたラットの脳にsRAGE-MSC処理時、生きているニューロンの数がsRAGEタンパク質またはMSCsを処理した場合に比べて1.55倍と1.15倍増加した。
【0137】
実施例6.sRAGE-iPSCの製造および特性試験
sRAGEを分泌するiPSCを生成するために、pZDonorベクター(Sigma-Aldrich)に人間EF1-αプロモーター、sRAGEコーディング配列、およびpoly A tailをクローニング方法で挿入して製作したsRAGEドナーベクター(
図1a参照)およびCRISPR/CAS9 RNPシステムを使用してiPSCの形質感染(Transfection)を行った。ガイドRNAは19番染色体でAAVS1と知られたsafe harbor siteを標的にするように設計した(Cas9:Streptococcus pyogenes由来(配列番号4)、sgRNAの標的部位:gtcaccaatcctgtccctag(配列番号7))。形質感染は4D nucleofector system((Lonza)を使用して行った。形質感染条件はウェブサイト上のLonzaプロトコル(cell type ‘hES/H9’)に提供されている条件に従った。P3 primary cell 4D nucleofector X kit L(Lonza、V4XP-3024)を使用してelectroporationを行った。2×10^5個の人間iPSC(Korean National Stem Cell Bank)をcas9タンパク質15ug、gRNA20ugおよびsRAGEドナーベクター1ugで形質感染させて、sRAGEを分泌するiPSCを製造した。
【0138】
形質感染3日後に、形質感染されたiPSCからゲノムDNAを分離して、iPSCのゲノムDNAでsRAGEのKI(knock-in)有無を決定した。PCRプライマーはAAVS1 Fwd(iPSC自体配列)およびPuro rev(挿入配列)(AAVS1 FWD primer:CGG AAC TCT GCC CTC TAA CG;Puro Rev primer:TGA GGA AGA GTT CTT GCA GCT)で準備した。
【0139】
PCRは56℃および30cycles条件で行い、電気泳動後、UV光下でバンドを観察した。前記得られた結果を
図9aに示した。
図9aはsRAGEの遺伝子が成功的にAAVS1サイトに統合されたのを示す。
【0140】
sRAGEの発現および分泌水準を免疫ブロッティングおよびELISAで確認した。
【0141】
まず、免疫ブロッティングは次のように行った:全体細胞溶解物をRIPA(radio immunoprecipitation assay)lysis buffer(ATTA、WSE7420)およびprotease inhibitor cocktail(ATTA、WSE7420)で準備した後、超音波処理した。前記準備された細胞溶解物を4℃で20分間17,000xgで遠心分離し、上澄み液を収集した。10%ポリアクリルアミドゲル上で同量(30μg)のタンパク質を分離し200mAで2時間ニトロセルロースメンブレン(Millipore)に移した。5% non-fat skim milkを使用して室温で1時間非特異的抗体結合を遮断した。前記準備されたメンブレンを1次タンパク質特異的抗体(Sigma、F-7425)およびb-アクチン(Abcam、ab8227)と共に4℃で一晩インキュベーティングし、2次抗体と共に室温で1時間インキュベーティングした。数回洗浄後、enhanced chemiluminescence(ECL)を使用してタンパク質を検出した。
【0142】
ELISAは次のように行った:human sRAGE(soluble receptor advanced glycation End products)ELISA kit(Aviscera Bioscience、SK00112-02)を使用して全体分泌された溶解性RAGEを定量した。人間sRAGE抗体が予めコーティングされており希釈緩衝液100μlが含まれている96-ウェルマイクロプレートに試料と標準溶液100μl(serial dilutionの逆順に)を添加した。その後、プレートを密封剤(seal)で覆って室温でマイクロプレートシェーカー上で2時間インキュベーティングした。インキュベーション後、溶液を全て吸引し洗浄液で4回洗浄した。working solutionに希釈された検出抗体100μlを各ウェルに添加した後、プレートを密封剤で覆って室温でマイクロプレートシェーカー上で2時間インキュベーティングした後、吸引および洗浄段階を繰り返して行った。HRP(Horse Radish Peroxidase)接合された2次抗体100μlを各ウェルに添加し、光が遮断された室温条件でマイクロプレートシェーカー上で1時間インキュベーティングした後、吸引および洗浄段階を繰り返して行った。最後に、基質溶液100μlを各ウェルに添加して5~8分間反応させた後、停止溶液100μlを加えて反応を終了させた。450nmに設定されたマイクロプレート判読機を使用して光学密度を測定した。
【0143】
前記免疫ブロッティング(western blot)およびELISAを行って得られた結果を
図9bに示した。
図9bのウェスタンブロット結果から確認できるように、pzDonorベクターが形質感染されたsRAGE-iPSCでFlagの発現が観察された。
図9cの培地で全体sRAGEの分泌水準を示すELISA結果に示されているように、sRAGE-iPSCの培養培地で15.6ng/mlのsRAGEが検出され、これはmock-iPSCの培地で0.8ng/mlのsRAGEが検出されたのと比較して、顕著に高い水準である。
幹細胞を含む、アルツハイマー病の予防又は治療用薬学組成物であって、可溶性(soluble)の最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)(sRAGE)をコードする遺伝子が、遺伝子編集技術により前記幹細胞のゲノムにおけるセーフハーバー(safe harbor)部位に挿入されており、且つ、前記幹細胞がsRAGEを分泌し、
前記幹細胞が、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell)であり、
前記遺伝子編集技術が、Cas9タンパク質及びガイドRNAにより行われる、
前記薬学組成物。
前記RAGEリガンドが、AGE(Advanced Glycation End products)、HMGB1(High mobility group box 1)及びS100βから成る群より選択される少なくとも1つである、請求項3記載の薬学組成物。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明しようとするが、これは例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を制限しようとするのではない。以下に記載された実施例は発明の本質的な要旨を逸脱しない範囲で変形できるのは当業者において自明である。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.可溶性(soluble)の最終糖化産物受容体(Receptor for Advanced Glycation End products;RAGE)(sRAGE)をコードする遺伝子を含み、sRAGEを分泌する、幹細胞。
2.前記幹細胞は、胚性幹細胞(embryonic stem cells)、成体幹細胞(adult stem cells)、誘導万能幹細胞(induced pluripotent stem cells;iPS cells)、および前駆細胞(progenitor cells)からなる群より選択された1種以上である、上記1に記載の幹細胞。
3.前記幹細胞は、誘導万能幹細胞または間葉系幹細胞である、上記1に記載の幹細胞。
4.上記1~3のうちのいずれかの幹細胞を含むアルツハイマー病の予防または治療用薬学組成物。
5.前記薬学組成物は、アルツハイマー病患者で以下のうちの一つ以上の活性を有するものである、上記4に記載の薬学組成物:
アミロイド前駆体タンパク質(amyloid precursor protein;APP)またはベータサイトAPP切断酵素(beta-site APP cleaving enzyme 1;BACE1)の発現抑制、
RAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制、または
RAGE媒介神経細胞死滅または炎症の抑制。
6.上記1~3のうちのいずれかの幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)またはベータサイトAPP切断酵素(BACE1)の発現抑制用薬学組成物。
7.上記1~3のうちのいずれかの幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制用薬学組成物。
8.前記RAGEリガンドは、AGE(Advanced Glycation End products)、HMGB1(High mobility group box 1)、およびS100βからなる群より選択される1種以上である、上記7に記載の薬学組成物。
9.上記1~3のうちのいずれかの幹細胞を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅または炎症の抑制用薬学組成物。
10.上記1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病の予防または治療方法。
11.上記1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのアミロイド前駆体タンパク質(APP)またはベータサイトAPP切断酵素(BACE1)の発現抑制方法。
12.上記1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGEリガンドまたは炎症性タンパク質の発現抑制方法。
13.上記1の幹細胞をアルツハイマー病患者に投与する段階を含む、アルツハイマー病患者でのRAGE媒介神経細胞死滅または炎症抑制方法。