(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078163
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】生産管理システム
(51)【国際特許分類】
H05K 13/08 20060101AFI20220517BHJP
H05K 13/04 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
H05K13/08 B
H05K13/04 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030620
(22)【出願日】2022-03-01
(62)【分割の表示】P 2020140120の分割
【原出願日】2016-07-20
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100098420
【弁理士】
【氏名又は名称】加古 宗男
(72)【発明者】
【氏名】山口 秀行
(57)【要約】 (修正有)
【課題】部品実装機の吸着ノズルを上方からロードセルに押し当てた時の押し当て荷重の測定値を有効活用できるようにする。
【解決手段】部品実装機14は、吸着ノズルを押し当てて押し当て荷重を測定するロードセルを有する。部品実装機14の制御装置は、実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが交換されたときに、当該交換に関する情報を生産管理コンピュータ30に送信するとともに、生産中に所定の測定間隔で、吸着ノズルを上方からロードセルに押し当ててその時の押し当て荷重の測定値を生産管理コンピュータ30に送信する。生産管理コンピュータ30は、部品実装機14から送信された前記交換に関する情報を受信してタイムスタンプ付きで記憶する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィーダから供給される部品を実装ヘッドに保持した吸着ノズルで吸着して回路基板に実装する部品実装機が配列された部品実装ラインと、当該部品実装機とネットワークを介して通信可能な生産管理コンピュータとを備えた生産管理システムであって、
前記部品実装機は、
制御装置と、ロードセルを有し、
前記実装ヘッド及び/又は前記吸着ノズルが交換可能に取り付けられ、
前記制御装置は、前記実装ヘッド及び/又は吸着ノズルが交換されたときに、当該交換に関する情報を前記生産管理コンピュータに送信するとともに、生産中に所定の測定間隔で、前記吸着ノズルを上方から前記ロードセルに押し当て、その時の押し当て荷重の測定値を、前記生産管理コンピュータに送信し、
前記生産管理コンピュータは、前記部品実装機から送信された前記交換に関する情報を受信してタイムスタンプ付きで記憶する、生産管理システム。
【請求項2】
前記交換に関する情報は、交換された前記実装ヘッドのID及び/又は前記吸着ノズルのIDである、請求項1に記載の生産管理システム。
【請求項3】
前記押し当て荷重の測定値に基づいて前記実装ヘッド及び/又は前記吸着ノズルの不良を判定して当該実装ヘッド及び/又は吸着ノズルを使用禁止とし、
使用禁止とされた前記実装ヘッド及び/又は前記吸着ノズルが前記部品実装機に取り付けられたときに当該部品実装機の運転を停止するとともにその旨を表示する、請求項1又は2に記載の生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィーダから供給される部品を吸着ノズルで吸着して回路基板に実装する部品実装機の生産を管理する生産管理システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般に、部品実装機においては、例えば、特許文献1(特開2006-313838号公報)、特許文献2(特開2009-88035号公報)に記載されているように、吸着ノズルで部品を吸着する際や、吸着した部品を基板に実装する際に、衝撃で部品が損傷しないようにするために、ノズルホルダに吸着ノズルを上下動可能に設けると共に、該吸着ノズルをスプリングによって下方に付勢し、部品吸着動作時に吸着ノズルの下端が部品に当接した後や、部品実装動作時に吸着ノズルに吸着した部品が基板に当接した後に、ノズルホルダを保持する実装ヘッドの下降動作が停止するまで、その下降動作に応じて吸着ノズルがスプリングの弾発力に抗して押し込まれることで、部品に加わる衝撃を緩和するようになっている。
【0003】
ところで、ノズルホルダと吸着ノズルとの間の摺動部への異物の噛み込み等により吸着ノズルの摺動性(動き)が悪化して吸着ノズルが固着したり、吸着ノズルの先端側部分が欠けたりすることがあるが、吸着ノズルの固着や欠けは、部品吸着ミスや部品実装ミスを発生させたり、衝撃緩和効果を低下させて部品を傷付ける原因になる。従って、吸着ノズルの固着や欠けが発生したときには、それを早期に検出して部品実装機を停止させて点検する必要がある。
【0004】
そこで、特許文献3(特開2006-108540号公報)に記載されているように、部品実装機に、吸着ノズルの摺動性を測定する手段としてロードセルを設けて、吸着ノズルの摺動性を測定するときに、ロードセルの上方から吸着ノズルを下降させて吸着ノズルの下端をロードセルに押し当てて、その押し当て荷重(吸着ノズルの摺動抵抗)をロードセルで測定して、その測定値から吸着ノズルの固着や欠けの有無を判定するようにしたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-313838号公報
【特許文献2】特開2009-88035号公報
【特許文献3】特開2006-108540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、生産中に吸着ノズルの押し当て荷重の測定を頻繁に行うと、生産効率が低下するため、上記特許文献3では、吸着ノズルの押し当て荷重の測定は、吸着ノズルを交換したときや、所定時間毎(例えば2時間毎)、或は、部品吸着ミスの発生率が所定値を超えたときのみに行うようにしている。このため、吸着ノズルの押し当て荷重の測定結果から吸着ノズルの固着や欠けが検出されても、吸着ノズルの固着や欠けが検出されなかった前回の測定時以降、いつの時点で吸着ノズルの固着や欠けが発生したかどうかまでは不明である。部品実装基板を生産する部品実装ラインは、複数の部品実装機を配列して構成されているため、いずれかの部品実装機で、吸着ノズルの押し当て荷重の測定結果から吸着ノズルの固着や欠けが検出されると、作業者は、前回の測定時以降、吸着ノズルの固着や欠けが検出された部品実装機から下流側の部品実装機へ流れていった回路基板の枚数や存在場所(現在位置)を推定して、それらの回路基板を回収して実装不良(接続不良や部品損傷等)の有無を検査する作業を行わなければならない。
【0007】
しかし、前回の測定時以降、下流側の部品実装機へ流れていった実装不良の可能性がある回路基板の枚数や存在場所を作業者が正確に推定することは困難である。このため、実装不良の可能性がある回路基板の枚数を実際よりも少なく推定して、実装不良の回路基板を見逃してしまったり、反対に、実装不良の可能性がある回路基板の枚数を必要以上に多く推定して、検査作業の時間が必要以上に長くなってしまったり、或は、既に、実装不良の可能性がある回路基板の一部が他の部品実装ラインに流れていってしまって、作業者が実装不良の可能性がある回路基板を探すのに手間取ったりして、作業性も悪い。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フィーダから供給される部品を実装ヘッドに保持した吸着ノズルで吸着して回路基板に実装する部品実装機が配列された部品実装ラインと、当該部品実装機とネットワークを介して通信可能な生産管理コンピュータとを備えた生産管理システムであって、 前記部品実装機は、
制御装置と、ロードセルを有し、
前記実装ヘッド及び/又は前記吸着ノズルが交換可能に取り付けられ、
前記制御装置は、前記実装ヘッド及び/又は吸着ノズルが交換されたときに、当該交換に関する情報を前記生産管理コンピュータに送信するとともに、生産中に所定の測定間隔で、前記吸着ノズルを上方から前記ロードセルに押し当て、その時の押し当て荷重の測定値を、前記生産管理コンピュータに送信し、
前記生産管理コンピュータは、前記部品実装機から送信された前記交換に関する情報を受信してタイムスタンプ付きで記憶することを特徴とする。
【0009】
この場合、吸着ノズルの押し当て荷の測定値は、実装不良の発生原因となる吸着ノズルの固着や欠けの有無を判定するデータとなり、実装不良の早期発見のための実機データとなる。従って、生産中に所定の測定間隔で、吸着ノズルを上方からロードセルに押し当て、その時の押し当て荷重の測定値を生産管理コンピュータに送信して、生産管理コンピュータは、前記部品実装機から送信された前記交換に関する情報を受信してタイムスタンプ付きで記憶するようにすれば、生産中に所定の測定間隔で測定した押し当て荷重の測定値を時系列的に前記交換に関する情報と関連付けて管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における部品実装ラインの構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図2は部品実装機の制御系の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は各部品実装機の制御装置が実行するルーチン(その1)の前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は各部品実装機の制御装置が実行するルーチン(その1)の後半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は各部品実装機の制御装置が実行するルーチン(その2)の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は生産管理コンピュータが実行するルーチンの前半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は生産管理コンピュータが実行するルーチンの後半部の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、
図1に基づいて部品実装ライン10の構成を説明する。
回路基板11を搬送する搬送経路12には、回路基板11に部品を実装する複数の部品実装機14と、部品実装に関連する作業を行う実装関連機が配列されている。ここで、実装関連機は、例えば、半田印刷機13、検査装置15、リフロー装置16、接着剤塗布装置等である。
【0012】
各部品実装機14のフィーダセット台(図示せず)には、それぞれ部品を供給する複数のフィーダ17が交換可能に搭載されている。各部品実装機14に交換可能に搭載された実装ヘッド18には、各フィーダ17から供給される部品を吸着して回路基板11に実装する1本又は複数本の吸着ノズル(図示せず)が交換可能に保持されている。
【0013】
回路基板11の上面のうちの部品実装領域の外側に、基板識別情報(以下「基板ID」という)を記録(記載)又は記憶した基板ID記録部19が設けられている。この基板ID記録部19は、バーコード、2次元コード等のコードを記録したものでも良いし、電子的に記憶する電子タグや、磁気的に記録する磁気テープ等を用いても良い。
【0014】
同様に、実装ヘッド18と吸着ノズルにも、それぞれ識別情報(以下「ID」という)を記録又は記憶したID記録部(図示せず)が設けられている。このID記録部も、バーコード、2次元コード等のコードを記録したものでも良いし、電子的に記憶する電子タグや、磁気的に記録する磁気テープ等を用いても良い。
【0015】
一方、
図2に示すように、各部品実装機14には、キーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置20と、液晶ディスプレイ、CRT等の表示装置21と、吸着ノズルに吸着した部品を撮像して部品の吸着姿勢や吸着位置のずれ量等を画像認識する部品撮像用カメラ22と、回路基板11の基準マーク(図示せず)等を撮像する基板撮像用カメラ23と、回路基板11を搬送するコンベア24と、実装ヘッド18をXY方向(水平方向)に移動させる移動装置25等が設けられている。
【0016】
また、各部品実装機14には、回路基板11の基板ID記録部19から基板IDを読み取るID読取り手段としてリーダ26が設けられている。このリーダ26は、実装ヘッド18のID記録部や、吸着ノズルのID記録部からIDを読み取るID読取り手段を兼用しても良いし、それぞれ別々のID読取り手段を設けるようにしても良い。或は、基板撮像用カメラ23等のカメラで、回路基板11の基板ID記録部19や、実装ヘッド18のID記録部、吸着ノズルのID記録部を撮像して、画像処理により各々のIDを読み取るようにしても良い。
【0017】
更に、各部品実装機14には、生産中に所定の測定間隔で実装不良(接続不良や部品損傷等)の早期発見のための実機データを測定する測定手段としてロードセル27が設けられ、生産中に所定の測定間隔でロードセル27の上方から吸着ノズルを下降させて吸着ノズルの下端をロードセル27に押し当てて、その押し当て荷重(吸着ノズルの摺動抵抗)をロードセル27で測定して、その測定値に基づいて吸着ノズルの固着や欠けの有無を判定するようにしている。
【0018】
尚、半田印刷機13、検査装置15、リフロー装置16等の実装関連機にも、回路基板11の基板ID記録部19から基板IDを読み取るリーダ等のID読取り手段が設けられている。
【0019】
図1に示すように、部品実装ライン10を構成する複数の部品実装機14と半田印刷機13、検査装置15等の実装関連機は、部品実装ライン10の生産を管理する生産管理コンピュータ30とネットワーク31を介して相互に通信可能に接続されている。
【0020】
各部品実装機14の制御装置32は、生産管理コンピュータ30から送信されてくる生産ジョブ(生産プログラム)に従って、実装ヘッド18を部品吸着位置→部品撮像位置→部品実装位置の経路で移動させて、フィーダ17から供給される部品を実装ヘッド18の吸着ノズルで吸着して当該部品を部品撮像用カメラ22で撮像して部品吸着位置のずれ量等を認識して当該部品を回路基板11に実装するという動作を繰り返して、当該回路基板11に所定数の部品を実装して部品実装基板を生産する。
【0021】
部品実装ライン10を構成する複数の部品実装機14、半田印刷機13、検査装置15、リフロー装置16等の実装関連機は、生産中に搬入された回路基板11の基板ID記録部19から基板IDをリーダ26等で読み取って基板IDを特定し、特定した基板IDの情報を生産管理コンピュータ30に送信し、生産管理コンピュータ30は、複数の部品実装機14、半田印刷機13、検査装置15、リフロー装置16等の実装関連機から送信されてくる基板IDを各装置毎にタイムスタンプ付きで書き換え可能な不揮発性の記憶装置33に保存する(つまりタイムスタンプ付きの基板IDを装置名と関連付けて記憶装置33に保存する)。これにより、各部品実装機14で部品を実装した回路基板11の基板IDと時刻を過去に溯って調査できるようにする。
【0022】
更に、複数の部品実装機14は、所定の測定間隔で、ロードセル27の上方から吸着ノズルを下降させて吸着ノズルの下端をロードセル27に押し当てて、その押し当て荷重(吸着ノズルの摺動抵抗)をロードセル27で測定して、その測定結果を生産管理コンピュータ30に送信する。ここで、「所定の測定間隔」とは、例えば、(1) 部品を実装した回路基板11の枚数が所定枚数を超える毎、(2) 所定時間経過毎、(3) 部品吸着ミスの発生率が所定値を超える毎、(4) 検査装置15で実装不良(接続不良や部品損傷等)を検出する毎等のうちのいずれか1つ又は2つ以上の組み合わせを用いれば良い。
【0023】
生産管理コンピュータ30は、各部品実装機14から送信されてくる吸着ノズルの押し当て荷重の測定結果に基づいて吸着ノズルの固着や欠けの有無を判定して、吸着ノズルの固着や欠けによる実装不良(接続不良や部品損傷等)の可能性があるか否かを監視して、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに、記憶装置33に保存されたデータを参照して、前記測定間隔とタイムスタンプ付きの基板IDとに基づいて前回の測定時以降に当該部品実装機14で部品を実装した回路基板11の基板IDを抽出して、当該回路基板11の一覧を「実装不良の可能性がある回路基板の一覧」として各部品実装機14の表示装置21に表示する。
【0024】
この場合、吸着ノズルの押し当て荷重を測定する測定間隔が長くなるほど、実装不良の可能性がある回路基板11が流れていく距離が長くなり、既に、実装不良の可能性がある回路基板11の一部が他の部品実装ラインに流れていってしまった可能性もある。
【0025】
そこで、生産管理コンピュータ30は、各部品実装機14の表示装置21に表示する実装不良の可能性がある回路基板の一覧に、各回路基板11の現在位置の情報も含めるようにしている。前述したように、各部品実装機14と半田印刷機13等の実装関連機から送信されてくる基板IDが各装置毎にタイムスタンプ付きで記憶装置33に保存されているため、その保存データを参照すれば、前回の測定時以降、実装不良の可能性がある回路基板11が流れついた装置名(現在位置の情報)も分かる。
【0026】
このようにして、各部品実装機14の表示装置21に表示する実装不良の可能性がある回路基板の一覧に、各回路基板11の現在位置の情報も含めるようにすれば、作業者が実装不良の可能性がある回路基板11の一覧を見ることで、実装不良の可能性がある回路基板11がどこまで流れているかを作業者が正確に且つ容易に知ることができる。
【0027】
本実施例では、実装不良の早期発見のための実機データとして吸着ノズルの押し当て荷重を測定するようにしたが、吸着ノズルの側面画像をカメラで撮像して、画像処理により吸着ノズルの固着や欠けを測定するようにしても良い。その他、実装不良の早期発見のための実機データは、吸着ノズルの固着や欠けに関するデータに限定されず、例えば、実装不良の発生原因となる機械系の位置決め誤差量等を測定するようにしても良い。
【0028】
更に、生産管理コンピュータ30は、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに、実装不良の可能性がある回路基板11の一覧に含まれる回路基板11が搬入されている部品実装機14に対して運転停止を指示して、当該部品実装機14の運転を停止させるようにしている。このようにすれば、実装不良の回路基板11に部品を実装することを防止できる。
【0029】
また、本実施例では、複数の部品実装機14は、実装ヘッド18と吸着ノズルの両方又は吸着ノズルのみが交換されたときに、実装ヘッド18のID記録部や吸着ノズルのID記録部からIDを読み取って生産管理コンピュータ30に送信する。そして、生産管理コンピュータ30は、各部品実装機14から送信されてくる実装ヘッド18のIDや吸着ノズルのIDを各部品実装機14毎にタイムスタンプ付きで記憶装置33に保存し、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに、当該部品実装機14に取り付けられている実装ヘッド18や吸着ノズルを使用禁止とすると共に、使用禁止とした実装ヘッド18のIDや吸着ノズルのIDを他の部品実装機14に送信し、当該他の部品実装機14は、使用禁止の実装ヘッド18や吸着ノズルが取り付けられたときに、運転を停止すると共に、使用禁止の実装ヘッド18や吸着ノズルが取り付けられていることを表示装置21に表示して、作業者に使用禁止の実装ヘッド18や吸着ノズルを取り替えるように促す。
【0030】
このようにすれば、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに、当該部品実装機14の実装ヘッド18や吸着ノズルを使用禁止として、以後、当該部品実装機14で回路基板11の実装不良が発生することを防止できる。しかも、使用禁止とされた実装ヘッド18のIDや吸着ノズルのIDを他の部品実装機14に送信し、当該他の部品実装機14は、使用禁止とされた実装ヘッド18や吸着ノズルが取り付けられたときに運転を停止するので、使用禁止とされた実装ヘッド18や吸着ノズルが他の部品実装機14に付け替えられたとしても、その使用禁止とされた実装ヘッド18や吸着ノズルを使用して回路基板11に部品を実装することを未然に防止できる。
【0031】
また、部品実装ライン10に配置した検査装置15は、回路基板11に実装した部品の実装精度を検査して、その部品の実装精度の検査結果を生産管理コンピュータ30に送信する。そして、生産管理コンピュータ30は、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに当該部品実装機14で回路基板11に実装した部品の実装位置を実装不良の可能性がある部品の実装位置として抽出し、検査装置15の検査結果に基づいて実装不良の可能性がある部品の実装精度を各部品実装機14の表示装置21に表示する。このようにすれば、実装不良の可能性がある部品の実装精度が許容誤差範囲内であるか否かを作業者が簡単に確認することができる。
【0032】
以上説明した本実施例の部品実装ライン10の生産管理は、各部品実装機14の制御装置32と検査装置15等の実装関連機の制御装置と生産管理コンピュータ30とによって
図3乃至
図7のルーチン等に従って実行される。以下、
図3乃至
図7のルーチンの処理内容を説明する。
【0033】
[部品実装機実行ルーチン(その1)]
図3及び
図4に示す部品実装機実行ルーチン(その1)は、各部品実装機14の制御装置32によって生産中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ101で、次の回路基板11が搬入されたか否かを判定し、次の回路基板11がまだ搬入されていないと判定されれば、ステップ105に進む。
【0034】
一方、上記ステップ101で、次の回路基板11が搬入されたと判定されれば、ステップ102に進み、当該回路基板11の基板IDの読み取り前であるか否かを判定し、基板IDの読み取り前と判定されれば、ステップ103に進み、回路基板11の基板ID記録部19から基板IDをリーダ26で読み取って、次のステップ104で、当該基板IDを生産管理コンピュータ30に送信して、ステップ105に進む。上記ステップ102で、当該回路基板11の基板IDの読み取りが終了していると判定されれば、上記ステップ103と104の処理を行う必要がないため、ステップ105に進む。尚、上記ステップ101~104の処理は、検査装置15等の実装関連機の制御装置でも、同様に実行される。
【0035】
上述したステップ105で、実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが交換されたか否かを判定し、実装ヘッド18と吸着ノズルのどちらも交換されていないと判定されれば、
図4のステップ108へ進む。一方、上記ステップ105で、実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが交換されたと判定されれば、ステップ106に進み、当該実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのID記録部からIDを読み取って、次のステップ107で、読み取ったIDを生産管理コンピュータ30に送信して、
図4のステップ108へ進む。
【0036】
この
図4のステップ108では、生産管理コンピュータ30から送信されてくる使用禁止の実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのIDを受信した後、ステップ109に進み、交換された実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのIDが使用禁止のIDに該当するか否かで、交換された実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが使用禁止とされているか否かを判定する。その結果、交換された実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが使用禁止とされていると判定されれば、ステップ110に進み、当該部品実装機14の運転を停止し、次のステップ111で、使用禁止の実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが取り付けられていることを表示装置21に表示して、作業者に使用禁止の実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルを取り替えるように促して、本ルーチンを終了する。尚、上記ステップ109で、交換された実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルが使用禁止とされていないと判定されれば、そのまま本ルーチンを終了する。
【0037】
[部品実装機実行ルーチン(その2)]
図5に示す部品実装機実行ルーチン(その2)は、各部品実装機14の制御装置32によって生産中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ201で、前回の吸着ノズルの押し当て荷重の測定時から所定期間が経過したか否かで、吸着ノズルの押し当て荷重の測定タイミングであるか否かを判定する。その結果、測定タイミングであると判定されれば、ステップ202に進み、ロードセル27の上方から吸着ノズルを下降させて吸着ノズルの下端をロードセル27に押し当てて、その押し当て荷重をロードセル27で測定して、次のステップ203で、当該吸着ノズルの押し当て荷重の測定結果を生産管理コンピュータ30に送信して、ステップ204に進む。一方、上記ステップ201で、吸着ノズルの押し当て荷重の測定タイミングではないと判定されれば、上記ステップ202と203の処理を行わずに、ステップ204に進む。
【0038】
このステップ204では、生産管理コンピュータ30から実装不良の可能性がある回路基板11の一覧が送信されてきたか否かを判定し、その一覧が送信されてきたと判定されれば、ステップ205に進み、実装不良の可能性がある回路基板11の一覧を表示装置21に表示して、ステップ206に進む。この際、実装不良の可能性がある回路基板11の一覧には、各回路基板11の現在位置の情報と、実装不良の可能性がある部品の実装精度も表示される。一方、上記ステップ204で、生産管理コンピュータ30から実装不良の可能性がある回路基板11の一覧が送信されていないと判定されれば、上記ステップ205の一覧表示を行わずにステップ206に進む。
【0039】
このステップ206では、生産管理コンピュータ30から運転停止の指示があるか否かを判定し、運転停止の指示があると判定されれば、ステップ207に進み、当該部品実装機14の運転を停止し、その旨を表示装置21に表示して、本ルーチンを終了する。尚、上記ステップ206で、運転停止の指示がないと判定されれば、そのまま本ルーチンを終了する。
【0040】
[生産管理コンピュータ実行ルーチン]
図6及び
図7に示す生産管理コンピュータ実行ルーチンは、生産管理コンピュータ30によって生産中に所定周期で繰り返し実行される。本ルーチンが起動されると、まず、ステップ301で、各部品実装機14と検査装置15等の実装関連機から送信されてくる基板IDを各部品実装機14毎にタイムスタンプ付きで記憶装置33に保存する(つまりタイムスタンプ付きの基板IDを装置名と関連付けて記憶装置33に保存する)。
【0041】
この後、ステップ302に進み、各部品実装機14から送信されてくる吸着ノズルの押し当て荷重の測定結果に基づいて吸着ノズルの固着や欠けの有無を判定して、吸着ノズルの固着や欠けによる実装不良の可能性があるか否かを判定する。その結果、実装不良の可能性があると判定されれば、ステップ303からステップ304に進み、記憶装置33に保存されたデータを参照して、測定間隔とタイムスタンプ付きの基板IDとに基づいて前回の測定時以降に当該部品実装機14で部品を実装した回路基板11の基板IDを抽出して、次のステップ305で、当該回路基板11の一覧を「実装不良の可能性がある回路基板の一覧」として各部品実装機14に送信する。そして、次のステップ306で、実装不良の可能性がある回路基板11の一覧に含まれる回路基板11が搬入されている部品実装機14に対して運転停止を指示して、
図7のステップ307へ進む。一方、上記ステップ303で、実装不良の可能性がないと判定されれば、上記ステップ304~306の処理を行わずに
図7のステップ307へ進む。
【0042】
この
図7のステップ307では、各部品実装機14から送信されてくる実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのIDを各部品実装機14毎にタイムスタンプ付きで記憶装置33に保存し、次のステップ308で、上記ステップ303の判定結果から、新たに判明した実装不良の可能性がある部品実装機14が存在するか否かを判定する。その結果、新たに判明した実装不良の可能性がある部品実装機14が存在すると判定されれば、ステップ309に進み、当該部品実装機14に取り付けられている実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのステータスを使用禁止とし、次のステップ310で、使用禁止とした実装ヘッド18及び/又は吸着ノズルのIDを各部品実装機14に送信して、本ルーチンを終了する。尚、上記ステップ308で、新たに判明した実装不良の可能性がある部品実装機14が存在しないと判定されれば、そのまま本ルーチンを終了する。
【0043】
以上説明した本実施例によれば、生産管理コンピュータ30は、複数の部品実装機14から送信されてくる基板IDを各部品実装機14毎にタイムスタンプ付きで保存することで、各部品実装機14で部品を実装した回路基板11の基板IDと時刻を過去に溯って調査できるようにした上で、生産管理コンピュータ30は、いずれかの部品実装機14で実装不良の可能性があると判断したときに、各部品実装機14毎に保存されたタイムスタンプ付きの基板IDの保存データを参照して、前回の測定時以降に当該部品実装機14で部品を実装した回路基板11の基板IDを抽出して、当該回路基板11の一覧を実装不良の可能性がある回路基板の一覧として表示するようにしたので、いずれかの部品実装機14で、今回の測定結果から実装不良の可能性があることが判明した時点で、前回の測定時以降、下流側の部品実装機14へ流れていった実装不良の可能性がある回路基板11の一覧を作業者が正確に且つ容易に知ることができ、作業者が実装不良の可能性がある回路基板11の回収・検査を能率良く行うことができる。
【0044】
尚、本実施例では、実装不良の可能性がある回路基板11の一覧を各部品実装機14の表示装置21に表示するようにしたが、生産管理コンピュータ30の表示装置に表示するようにしても良く、要は、作業者が見やすい位置に設置されている表示装置であれば、どの様な表示装置に実装不良の可能性がある回路基板11の一覧を表示するようにしても良い。
【0045】
また、本実施例では、各部品実装機14にそれぞれリーダ26を設けて、各部品実装機14毎にリーダ26で回路基板11の基板ID記録部19から基板IDを読み取って基板IDを特定するようにしたが、本発明は、この構成に限定されず、例えば、部品実装ライン10の最上流の部品実装機14又はそれよりも上流側にリーダを設けて、このリーダで読み取った基板IDの情報をネットワーク31を介して上流から下流の部品実装機14に送信する等の別の方法で各部品実装機14が基板IDを特定するようにしても良い。
【0046】
その他、本発明は、上述した実施例に限定されず、例えば、部品実装ライン10の構成を変更しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
10…部品実装ライン、11…回路基板、12…搬送経路、14…部品実装機、15…検査装置、17…フィーダ、18…実装ヘッド、21…表示装置、26…リーダ、27…ロードセル、30…生産管理コンピュータ、32…制御装置、33…記憶装置