IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サノフィ・バイオテクノロジーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078191
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】ヒト化抗IL-1R3抗体
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20220517BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220517BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K45/00 101
C12N15/13 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022032317
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2019510473の分割
【原出願日】2017-05-08
(31)【優先権主張番号】16168617.5
(32)【優先日】2016-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515337475
【氏名又は名称】サノフィ・バイオテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ブラント,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】カザンジアン,ヴェロニック リンダ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】IL-1R3に高い親和性および特異性があり、強力なIL-1R3中和活性があり、安定性が改善されたヒト化IL-1R3抗体を提供する。
【解決手段】IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体、またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含有し、IL-1R3に誘導されるNFkB活性を阻害するその断片もしくは誘導体。前記抗体は、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36に刺激されるNFkB活性を阻害してよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体であって、
a)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む相補性決定領域を含む重鎖可変領域(VH)であって、
CDR-H1領域が配列番号69~85の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-H2領域が配列番号86~102の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-H3領域が配列番号103~119の群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、ならびに
b)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(VL)であって、
CDR-L1領域が配列番号120~136の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-L2領域が配列番号137~153の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-L3領域が配列番号154~170および配列番号175の群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、ヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体。
【請求項2】
IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体であって、抗体が、配列番号1~34および173の重鎖可変(VH)領域からなる群から選択されるVH領域と少なくとも90%同一であるVH領域を含む、ヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体。
【請求項3】
IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体であって、抗体が、配列番号35~68および配列番号174の軽鎖可変(VL)領域からなる群から選択されるVL領域と少なくとも90%同一であるVL領域を含む、ヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体。
【請求項4】
抗体が、配列番号1~34および173の群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む、請求項2に記載のIL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体。
【請求項5】
抗体が、配列番号35~68および174の群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項3に記載のIL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体。
【請求項6】
MAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149、MAB-16-150からなる群から選択される抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域をそれぞれ含むVH領域およびVL領域を含む、IL-1R3に特異的に結合する請求項1から5のいずれかに記載のヒト化抗体、またはその断片もしくは誘導体。
【請求項7】
IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体、またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な抗体の少なくとも一部を含有し、IL-1R3に誘導されるNFkB活性を阻害するその断片もしくは誘導体。
【請求項8】
前記抗体が、抗体MAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149、MAB-16-150の群から選択される抗体と同じエピトープに結合する、請求項1~7のいずれかに記載のヒト化抗体、またはその断片もしくは誘導体。
【請求項9】
前記抗体が、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36に刺激されるNFkB活性を阻害する、請求項1~8のいずれかに記載のヒト化抗体。
【請求項10】
前記抗体が、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP IL-33/ST2/IL-1RAcP、および/またはIL-36/Il-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFkB活性を阻害する、請求項1~9のいずれかに記載のヒト化抗体。
【請求項11】
A549-NFkB-RE-Luc細胞溶解物において、前記抗体が、10μg/mlの濃度で、0.1ng/mlのヒトIL-1アルファ、ヒトIL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36で刺激したNFkB発現を、本発明による前記抗体を含まない同じアッセイに対して50%以上、好ましくは60%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害する、請求項1~10のいずれかに記載のヒト化IgG1LALA抗体。
【請求項12】
前記抗体が、NF-kBレポーター遺伝子の制御下にあるルシフェラーゼをトランスフェクトしたHEK293T/17細胞においてIL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36それぞれに刺激されるルシフェラーゼ活性を阻害する、請求項1~11のいずれかに記載のヒト化抗体。
【請求項13】
前記抗体が、ヒトIgG1 Fc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4 Fc領域のS228PおよびL235Eで少なくともアミノ酸置換を含む、請求項1~12のいずれかに記載のヒト化抗体。
【請求項14】
IL-1R3に媒介される疾患を処置するのに使用するための、請求項1~13のいずれかに記載のヒト化抗体。
【請求項15】
IL-1R3に媒介される疾患が、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃部がん、大腸がん、乳がんまたは子宮がんからなる群から選択される、請求項14に記載のヒト化抗体。
【請求項16】
薬学的に許容される担体および治療有効量の請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体を含む、医薬組成物。
【請求項17】
IL-1R3に媒介される疾患を処置するのに使用するための、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
IL-1R3に媒介される疾患が、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃部がん、大腸がん、乳がんまたは子宮がんからなる群から選択される、請求項16または17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
1つもしくは複数の細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん化合物と組み合わせたがんの処置に使用するための、請求項1から15のいずれか一項に記載のヒト化抗体または請求項16から18のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト化抗IL-1R3抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
インターロイキン1受容体アクセサリータンパク質(IL1RAP)(IL1R3とも呼ばれる)は、1型インターロイキン1受容体(IL1R1)の補助受容体であり、IL-1シグナル伝達の伝達に不可欠である。IL-1の結合により、IL-1R1は、IL-1RAcPと会合して機能的シグナル伝達受容体複合体を形成し、その複合体がNFkB活性を刺激する。
【0003】
IL-33、その受容体ST2およびIL-1RAcPも、NFkB活性化に対してIL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体と類似の活性を持つ複合体(IL-33/ST2/IL-1RAcP)を形成する。IL-36(IL-36α[IL-1F6]、IL-36β[IL-1F8]およびIL-36γ[IL-1F9])、それらの受容体IL-36RおよびIL-1RAcPも、NFkB活性化に対してIL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP複合体と類似の活性を持つ複合体(IL-36/Il-36R/IL-1RAcP)を形成する。
【0004】
ヒトNF-kBは、炎症、免疫応答およびアポトーシスに関係するいくつかの遺伝子の発現の重要な調節因子である。したがって、NFkBの機能不全は、自己免疫疾患、神経変性疾患、炎症およびがんを含めた様々な疾患の病理に関係する。例えば、骨関節炎(OA)の処置において、NF-kB経路は、重要な標的である。したがって、ヒトIL-1R1/IL-1RAcP複合体のシグナル伝達活性を阻害することによってヒトNFkB経路を調節する薬剤は、様々なヒト疾患に対する処置の可能性を示している。特に、高親和性中和抗体は、優れた治療的薬剤になろう。
【0005】
15年以上前から、ヒトIL1RAcPに対する機能的モノクローナル抗体を生成する試みが行われてきた。しかしながら、多くの試みは失敗し、既存の抗体は様々な欠点を今なお呈している。WO199623067は、マウスIL-1受容体アクセサリータンパク質に特異的に結合するIL-1RAcP抗体に関する。実施例15および16は、IL-1生物活性を中和する抗ヒトIL-1RAcP抗体を生成する試みについて記述している。しかしながら、そのような抗体は、WO199623067および実施例16によって提供されず、IL-1に誘導されるIL-6のアッセイが、仮定的なだけであることを記述している。J.Immunol.1998;160:3170~3179においてDo-Young Yoon D-YおよびCharles A.Dinarello CAは、IL-1ベータ活性を阻害するが、結合を阻害しないマウスIL-1RAcPのドメインIIおよびIIIに対するポリクローナル抗体について記述している。しかしながら、より高濃度のIL-1ベータ(1000pg/ml)で、このポリクローナル抗血清は、D10S細胞の増殖を遮断しなかった。(D10Sは、有糸分裂誘発因子の非存在下で、フェムトモル未満(アトモル)の濃度のIL-1ベータまたはアルファで増殖するマウスD10.G4.1ヘルパーT細胞のサブクローンである、参照Orencole SFおよびDinarello CA;Cytokine 1(1989)14~22)。Jaras M.ら、PNAS 107(2010)16280~16285は、CML幹細胞を死滅させるためのウサギポリクローナル抗IL1RAcP抗体KMT-1の使用について記述している。この抗体は、そのウサギFc部分によって引き起こされるIL1RAcP非依存的様式でADCCを誘導する。Jarasらは、「潜在的な今後の治療的IL1RAP-標的化抗体は、正常な造血細胞に対して低い毒性を示すと予想される」と
予想している。マウスIL-1RAcPに対するポリクローナルウサギ抗体についても、Do-Young YoonおよびCharles A.Dinarello、Journal of Biochemistry and Molecular Biology、第40巻、4号、2007年7月、562~570に言及された。
【0006】
WO2002064630は、IL-1RAcPおよびその使用にも関し、IL-1RAcPに対する抗体については全く記述されていない。WO2004022718およびWO2009120903は、CSF1R、IL13RA1、IL1RAP、IFNAR1、IL5R、INSR、IL1RL1、LTKおよびTACSTD1に対する抗体が、最先端技術によって生成され得ると理論的に述べている。しかしながら、ここでも、IL-1RAcPに対する抗体については、全く記述されていない。WO2011021014およびWO2012098407(US20140017167)は、ポリクローナルウサギ抗ヒトIL-1RAcP抗血清KMT-1およびその使用に関する(Jarasら2010を参照のこと)。WO2014100772は、IL-1RAcPに結合する抗IL-1RAcP抗体に関する。しかしながら、NFkB活性を刺激するいかなる機能的シグナル伝達受容体複合体(IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcPなど)の阻害に関しても、活性は全く記述されていない。US6280955は、IL-1RAcPおよびその使用に関するが、またIL-1RAcPに対する抗体については全く記述されていない。US7390880は、IL1RAcPのN末端断片について言及しているが、またIL-1RAcPに対する抗体については全く記述していない。
【0007】
WO2004100987は、新生内膜過形成を処置するための医薬の調製におけるインターロイキン-l(IL-1)アンタゴニストの使用および新生内膜過形成を処置するためのIL-1アンタゴニストの使用に関する。そのようなアンタゴニストとして抗IL-1RAcP抗体が示唆されるが、さらに記述されていない。US2003026806は、IL-1に結合する抗体に関する。WO2002064630は、IL-1アンタゴニストおよびIL-1RAcPタンパク質にも関する。IL-1RAcPアンタゴニストをスクリーニングするためのIL-1RAcPの使用について言及されているが、そのような方法またはアンタゴニストは開示されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これは、IL-1R3に対して高い親和性、高い特異性および強力な中和活性を持つモノクローナル抗体を同定することが非常に困難であったことを示す。本発明は、IL-1R3に高い親和性および特異性があり、強力なIL-1R3中和活性があり、安定性が改善されたヒト化IL-1R3抗体を包含する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化IgG1LALA抗体もしくはその断片もしくは誘導体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するポリペプチドに関する。前記抗体は、IL-1R3に誘導されるNFkB活性を阻害する。それは、IL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36に刺激されるNFkB活性も阻害する。
【0010】
本発明はさらに、IL-1R3に媒介される疾患を処置するのに使用するための本発明による抗体に関する。
【0011】
本発明は、患者に前記抗体の薬学的に有効な量を投与する工程を含む、患者においてIL-1R3に媒介される疾患を処置する方法をさらに包含する。
【0012】
本発明は、薬学的に許容される担体および治療有効量の前記抗体を含む医薬組成物も含む。
【0013】
定義
本発明による用語「ウサギ」は、分類学上ウサギ目(taxonomic order)のメンバーの動物を意味し、それはファミリー(ノウサギおよびウサギ)およびナキウサギ科(Ochotonidae)(ナキウサギ)、好ましくはアナウサギ属(Oryctolagus)を含む。
【0014】
用語「抗体」は、全抗体および本発明による特性を示す限り、抗体断片を含むがそれに限定されない様々な形態の抗体構造を包含する。
【0015】
本発明による用語「ウサギモノクローナル抗体」は、ウサギを免疫することによって産生され、前記ウサギの抗原産生細胞から単離されるモノクローナル抗体、ならびに本発明による特徴的な特性が保持される限り、さらに修飾されるような抗体、好ましくはヒト化抗体、キメラ抗体、その断片、またはさらに遺伝子操作および組換え産生された抗体を意味する。好ましくは、抗体は、前記ウサギのB細胞またはウサギハイブリドーマ細胞由来である。本発明による用語「抗体産生細胞」は、抗体を産生するウサギB細胞、好ましくはB細胞またはウサギハイブリドーマ細胞を意味する。
【0016】
「天然の抗体」は、2つの同一の軽鎖(L)および2つの同一の重鎖(H)で構成される通常ヘテロ四量体の糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結され、一方でジスルフィド連結の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変化する。各重鎖および軽鎖は、規則正しく間隔を置いて配置されている鎖内ジスルフィド架橋も有する。各重鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VH)、続いていくつかの定常ドメインを有する。各軽鎖は、一方の末端に可変ドメイン(VL)および他方の末端に定常ドメインを有する。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインと整列される。特定のアミノ酸残基が、軽鎖と重鎖可変ドメインとの間にインターフェイスを形成すると考えられている。
【0017】
ペプチドまたはポリペプチド配列に関して「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列を整列させ、必要に応じて最大のパーセント配列同一性を達成するためにギャップを導入した後に、配列同一性の一部としていかなる保存的置換も考慮しない、特定のペプチドまたはポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージと定義される。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するための整列化は、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの一般公開されているコンピューターソフトウェアを使用して、当業者の範囲内にある様々な方法で達成され得る。
【0018】
用語「VL(またはVH)領域」は、VL(またはVH)ドメインと同じ意味を有する。
【0019】
本発明による用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合するヒト受容体を指す。FcRは、IgG抗体に結合し、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体の対立遺伝子バリアントならびに選択的スプライシング形態を含めた受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体Fc
γRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,M、Annu.Rev.Immunol.15:203~234(1997)の総説を参照のこと)。FcRIIIA(CD16a)は、ADCCを媒介する。FcRについては、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457~92(1991);Capelら、Immunomethods 4:25~34(1994);およびde Haasら、J.Lab.CHn.Med.126:330~41(1995)に概説されている。これらおよび他の全てのFcRは、本明細書において用語「FcR」に包含される。この用語は、胎児への母体IgGの移動に関与し(Guyerら、J.Immunol.117:587(1976)およびKimら、J.Immunol.24:249(1994))、より遅い異化、したがってより長い半減期を媒介する新生児受容体、FcRnも含む。
【0020】
本明細書では用語「抗体エフェクター機能」または「エフェクター機能」とは、IgGのFcエフェクタードメイン(例えば、免疫グロブリンのFc領域)によって付与される機能を指す。そのような機能は、例えば、食細胞もしくは溶解活性を持つ免疫細胞のFc受容体へのFcエフェクタードメインの結合または補体系の成分へのFcエフェクタードメインの結合によって生じ得る。典型的なエフェクター機能は、ADCC、ADCPおよびCDCである。
【0021】
「抗体断片」とは、インタクトな抗体の一部を含み、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、それだけには限らないがFv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv);および抗体断片から形成される多重特異性抗体がある。
【0022】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」とは、競合アッセイにおいてその抗原への参照抗体の結合を50%以上遮断する、逆に言えば、競合アッセイにおいて参照抗体が、その抗原への抗体の結合を50%以上遮断する抗体を指す。例示的な競合アッセイが、本明細書に提供される。
【0023】
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」および「ADCC」とは、FcRを発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球およびマクロファージ)が、標的細胞に結合している抗体を認識し、その後標的細胞の溶解を引き起こす細胞に媒介される反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIだけを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。
【0024】
用語「抗体依存性細胞食作用」および「ADCP」とは、抗体被覆細胞が、免疫グロブリンFc領域に結合する食免疫細胞(例えば、マクロファージ、好中球および樹状細胞)によって全体または一部のいずれかが内部移行される過程を指す。
【0025】
「C1q」は、免疫グロブリンのFc領域に対する結合部位を含むポリペプチドである。C1qは、2つのセリンプロテアーゼであるC1rおよびC1sと一緒に補体依存性細胞傷害(CDC)経路の第1成分である複合体C1を形成する。ヒトC1qは、例えばQuidel、San Diego、 Califから商業的に購入することができる。
【0026】
抗体の「クラス」とは、重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。5つの大きな抗体のクラス:IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMが存在し、これらのうちいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)例えば、IgGi、IgG、IgG、IgG、IgAiおよびIgAにさらに分けることができる。免疫グロブ
リンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれa、δ、ε、γおよびμと呼ばれる。
【0027】
薬剤、例えば、医薬製剤の「有効量」とは、必要な投薬量および期間で、所望の治療的または予防的結果を達成するために有効な量を指す。
【0028】
用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために本明細書において使用される。用語は、天然配列のFc領域およびバリアントFc領域を含む。本明細書において特に明記しない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes
of Health、Bethesda、MD(1991)に記載のEUインデックスとも呼ばれるEU付番方式にしたがう。
【0029】
「バリアントFc領域」は、本明細書において定義した「アミノ酸修飾」の少なくとも1つによって「天然」または「野生型」配列のFc領域と異なるアミノ酸配列を含む。本明細書では用語「Fcバリアント」は、Fcドメインに修飾を含むポリペプチドを指す。本発明のFcバリアントは、それらを構成するアミノ酸修飾により定義される。したがって、例えば、P329Gは、親Fcポリペプチドと比較して329位にグリシンによるプロリンの置換があるFcバリアントであり、番号付けはEUインデックスにしたがう。野生型アミノ酸の同一性が、明らかでない可能性があり、その場合上述したバリアントは、P329Gとして呼ばれる。本発明で述べられる全ての位置について、番号付けは、EUインデックスにしたがう。EUインデックスまたはKabatもしくはEU番号付けスキームとしてのEUインデックスとは、EU抗体の番号付けを指す(Edelmanら、Proc Natl Acad Sci USA 63(1969)78~85、参照により全体を本明細書に組み込む)。修飾は、付加、欠失または置換であり得る。置換は、天然に存在するアミノ酸および天然に存在しないアミノ酸を含み得る。バリアントは、非天然のアミノ酸を含み得る。例には、米国特許第6,586,207号;WO98/48032;WO03/073238;US2004/0214988(Al)号;WO05/35727 A2;WO05/74524 A2;Chin,J.W.ら、Journal of the American Chemical Society 124(2002)9026~9027;Chin,J.W.、およびSchultz,P.G.、ChemBioChem 11(2002)1135~1137;Chin,J.W.ら、PICAS United States of America 99(2002)11020~11024;およびWang,L.、およびSchultz,P.G.、Chem.(2002)1~10があり、全体を参照により組み込む。
【0030】
用語「Fc領域含有ポリペプチド」とは、Fc領域を含む抗体またはイムノアドヘシン(下の定義を参照のこと)などのポリペプチドを指す。
【0031】
用語「Fc受容体」または「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体について記述するために使用される。IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するFcRは、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体の対立遺伝子バリアントならびに選択的スプライシング形態を含めた受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)およびFcγRIIB(「阻害性受容体」)を含み、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害性受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシンベースの阻害性モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,M.、Annu.Rev
.Immunol.15(1997)203~234の総説を参照のこと)。FcRについては、RavetchおよびKinet、Annu.Rev.Immunol 9(1991)457~492;Capelら、Immunomethods 4(1994)25~34;およびHaasら、J.Lab.Clin.Med.126(1995)330~41に概説されている。将来に同定されるものを含めて、他のFcRは、本明細書において用語「FcR」に包含される。用語は、胎児への母体IgGの移動に関与する新生児受容体、FcRnも含む(Guyerら、J.Immunol.117(1976)587およびKimら、J.Immunol.24(1994)249)。
【0032】
本明細書では、「IgG Fcリガンド」とは、IgG抗体のFc領域に結合して、Fc/Fcリガンド複合体を形成するあらゆる生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。Fcリガンドには、それだけには限らないが、FcγR、FcγR、FcγR、FcRn、Clq、C3、マンナン結合レクチン、マンノース受容体、ブドウ球菌プロテインA、連鎖球菌プロテインG、およびウイルスFcγRがある。Fcリガンドは、FcγRに相同なFc受容体のファミリーであるFc受容体ホモログ(FcRH)も含む。(Davisら、Immunological Reviews 190(2002)123~136、全体を参照により組み込む)。Fcリガンドは、Fcに結合する未発見の分子を含み得る。特定のIgG Fcリガンドは、FcRnおよびFcガンマ受容体である。本明細書では、「Fcリガンド」とは、抗体のFc領域に結合して、Fc/Fcリガンド複合体を形成するあらゆる生物由来の分子、好ましくはポリペプチドを意味する。
【0033】
本明細書では、「Fcガンマ受容体」、「FcγR」または「FcgammaR」とは、IgG抗体Fc領域に結合し、FcγR遺伝子によってコードされているタンパク質ファミリーの任意のメンバーを意味する。ヒトにおいてこのファミリーは、アイソフォームFcγRIA、FcγRIBおよびFcγRICを含めたFcγRI(CD64);アイソフォームFcγRIIA(アロタイプH131およびR131を含む)、FcγRIIB(FcγRIIB-1およびFcγRIIB-2を含む)、およびFcγRIIcを含めたFcγRII(CD32);ならびにアイソフォームFcγRIIIA(アロタイプVI58およびF158を含む)およびFcγRIIIb(アロタイプFcγRIIB-NA1およびFcγRIIB-NA2を含む)を含めたFcγRIII(CD16)(Jefferisら、Immunol Lett 82(2002)57~65、全体を参照により組み込む)、加えて未発見のあらゆるヒトFcγRもしくはFcγRアイソフォームまたはアロタイプを含むが、これに限定されない。FcγRは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含むがこれに限定されない任意の生物由来であり得る。マウスFcγRは、それだけには限らないが、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)、FcγRIII(CD16)およびFcγRIII-2(CD16-2)、ならびに未発見のあらゆるマウスFcγRもしくはFcγRアイソフォームまたはアロタイプを含む。
【0034】
本明細書では、「FcRn」または「新生児Fc受容体」とは、IgG抗体Fc領域に結合し、FcRn遺伝子によって少なくとも一部コードされているタンパク質を意味する。FcRnは、ヒト、マウス、ラット、ウサギおよびサルを含むがこれに限定されない任意の生物由来であり得る。当技術分野で公知のように、機能的FcRnタンパク質は、しばしば重鎖および軽鎖と呼ばれる2つのポリペプチドを含む。軽鎖はベータ2-ミクログロブリンであり、重鎖はFcRn遺伝子によってコードされる。特に明記しない限り本明細書において、FcRnまたはFcRnタンパク質とは、ベータ2-ミクログロブリンとFcRn重鎖の複合体を指す。
【0035】
「イムノコンジュゲート」は、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素、別の抗体または放射性同位元素など、1つまたは複数の細胞傷害性薬剤にコンジュゲートされた抗体を意
味する。
【0036】
「抗体断片」は、完全長抗体の一部、好ましくはその可変領域または少なくともその抗原結合部位を含む。抗体断片の例には、ダイアボディ、Fab断片および一本鎖抗体分子がある。scFv抗体は、例えば、Huston,J.S.、Methods in Enzymol.203(1991)46~88に記述されている。
【0037】
本明細書では用語「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」とは、単一のアミノ酸組成の抗体分子の調製物を指す。
【0038】
用語「ヒト化抗体」または「抗体のヒト化バージョン」とは、ヒト可変領域が、本発明による抗体のCDRを含むように修飾された抗体を指す。好ましい実施形態において、VHおよびVLのCDRをヒト抗体のフレームワーク領域に移植して、「ヒト化抗体」を調製する。例えば、Riechmann,L.ら、Nature 332(1988)323~327;Neuberger,M.S.ら、Nature 314(1985)268~270を参照のこと。重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、同じまたは異なるヒト抗体配列に由来し得る。ヒト抗体配列は、天然に存在するヒト抗体の配列であり得る。ヒト重鎖および軽鎖可変フレームワーク領域は、例えば、Lefranc、M.-P.Current Protocols in Immunology(2000)補遺IP A.1P.1~A.1P.37に挙げられており、IMGT、international ImMunoGeneTics information system(登録商標)(http://imgt.cines.fr)またはhttp://vbase.mrc-cpe.cam.ac.ukを通してアクセスできる。
【0039】
本明細書では用語「標的に対して特異的に結合する、または抗標的抗体」とは、ELISAによって測定されるそれぞれの抗原(標的)への抗体の結合を指し、前記ELISAは、固体支持体にそれぞれの抗原をコーティングすること、それぞれの抗原またはタンパク質と免疫複合体を形成できる条件下で前記抗体を添加すること、本発明による抗体に結合する二次抗体およびペルオキシダーゼに媒介される発色を使用して光学密度値(OD)を測定することにより前記免疫複合体を検出することとを好ましくは含む。
【0040】
本発明による用語「抗原」とは、免疫化に使用される抗原またはそのタンパク質配列の一部として前記抗原を含むタンパク質のことを指す。例えば、免疫化の場合、タンパク質の細胞外ドメインの断片(例えば最初の20アミノ酸)を使用することができ、検出/アッセイなどの場合、タンパク質または完全長タンパク質の細胞外ドメインを使用することができる。
【0041】
本明細書において用語「特異的に結合する」または「特異的に認識される」は、抗体が、抗原にかなりの親和性を呈し、好ましくは、有意な交差反応性を呈しないことを意味する。
【0042】
「かなりの」結合親和性は、少なくとも10exp7M-1、特に少なくとも10exp8M-1、さらに特に少なくとも10exp9M-1またはよりさらに特に少なくとも10exp10M-1の親和性による結合を含む。
【0043】
「有意な交差反応性を呈しない」抗体は、望ましくない他のタンパク質に目に見えて結合することがない抗体である。本発明によるエピトープに特異的な抗体は、例えば、IL-1R3上の他のエピトープと有意に交差反応することがない。特異的結合は、そのような結合を決定するための当業者に認識されている任意の手段、例えば競合結合アッセイ(例えばELISA)により決定することができる。
【0044】
本明細書では全てのタンパク質用語は、ヒトタンパク質を指す。別の種由来のタンパク質を意味する場合、これは明確に言及される。
【0045】
本明細書では用語「IL-1アルファ」とは、ヒトIL-1を指す(UniProtKB P01583)。本明細書では用語「IL-1ベータ」とは、ヒトIL-1ベータを指す(UniProtKB P01584)。IL-1は、IL-2放出、B細胞成熟および増殖ならびに線維芽細胞増殖因子活性を誘導することによって胸腺細胞増殖を刺激する。IL-1タンパク質は、炎症応答に関係し、内因性発熱物質として同定されている(UniProtKB)。
【0046】
本明細書では用語「IL-33」とは、ヒトIL-33(UniProtKB O95760)、IL1RL1/ST2受容体に結合し、それを通して、標的細胞においてNFカッパBおよびMAPKシグナル伝達経路を次々に活性化するシグナル伝達するサイトカインのことを指す(UniProtKB)。
【0047】
本明細書では用語「IL-36」とは、ヒトIL-36アルファ(UniProtKB
Q9UHA7、IL-36ベータ(UniProtKB Q9NZH7)および/またはIL-36ガンマ(UniProtKB Q9NZH8)を指す。IL-36は、IL1RL2/IL-36R受容体に結合し、それを通して、炎症誘発性応答に関係する標的細胞においてNFカッパBおよびMAPKシグナル伝達経路を次々に活性化するシグナル伝達するサイトカインである。IL-36は、ケラチノサイト、樹状細胞ならびに間接的にT細胞に作用することによって皮膚炎症応答に関係して、組織浸潤、細胞成熟および細胞増殖を駆動すると思われる(UniProtKB)。
【0048】
本明細書では用語「NFkB」とは、ヒト核因子NFカッパBのことを指し、それは、p105サブユニット(P19838)およびp100サブユニット(Q00653)からなる。
【0049】
「NFkBの阻害」は、ヒト細胞においてNFkB依存的ルシフェラーゼ遺伝子発現の阻害として本発明によって測定される。そのような方法は、例えばWindheim M.ら、Mol.Cell.Biol.28(2008)1783~1791;Huang
J.らPNAS USA 94(1997)12829~12832;Xiaoxia
L.ら、Mol.Cell、Biol.19(1999)4643~4652に記述されている。本明細書においてマウスNFkBを意味する場合、そのことは明確に言及される。
【0050】
本明細書では「本発明による抗体の可変領域(またはドメイン)」(軽鎖の可変領域[VL]、重鎖の可変領域[VH])は、抗体が抗原に結合するのに直接関係する軽および重鎖領域の対の各々を意味する。可変軽および重鎖領域は同じ全体構造を有し、各領域は、配列が広く保存され、3つの相補性決定領域、CDRによって接続されている4つのフレームワーク(FR)領域を含む。本発明による抗体は、VH領域およびVL領域またはそれらの部分を含み、それらは、両方合わせてそれぞれの抗原への特異的結合に十分である。
【0051】
本明細書において使用される場合、用語「抗体の抗原結合部分」とは、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を指す。抗体の抗原結合部分は、「相補性決定領域」または「CDR」由来のアミノ酸残基を好ましくは含む。CDR配列は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National In
stitutes of Health、Bethesda、MD(1991)にしたがって定義される。この付番方式を使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変領域のFRもしくはCDRの短縮または挿入に対応してより少ないもしくは追加のアミノ酸を含有することができる。
【0052】
本明細書では句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、腸内および局所投与以外の投与の様式を意味し、通常注射により、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外および胸骨内注射ならびに注入を含むが、これに限定されない。
【0053】
本明細書では用語「がん」は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん(stomach cancer)、胃部がん(gastric cancer)、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、上皮小体のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、膀胱のがん、腎臓もしくは尿管のがん、腎細胞癌、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性神経膠芽細胞腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮細胞癌腫、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病、上記がんのいずれかの難治性バージョン、または上記がんの1つまたは複数の組合せを含むものであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1】後段で詳述。
図2】後段で詳述。
図3】後段で詳述。
図4】後段で詳述。
図5】後段で詳述。
図6】後段で詳述。
図7】後段で詳述。
図8】後段で詳述。
図9】後段で詳述。
図10】後段で詳述。
図11】後段で詳述。
図12】後段で詳述。
図13】後段で詳述。
図14】後段で詳述。
図15】後段で詳述。
図16】後段で詳述。
【発明を実施するための形態】
【0055】
免疫化した哺乳動物に由来する抗体のヒト化は、ヒト治療薬として使用するための前記抗体を意味する場合、開発における品質特性として必要である。ヒト化の目的は、抗体の元の特徴(結合特異性、活性)をできるだけ保つ一方、ヒトに他の生物由来の非ヒト化抗体を導入する際に起こり得る免疫学的副作用を低減させることである。本発明は、CDR移植の公知のヒト化戦略に基づく。ここで、多数の活性ヒト化抗体が並行して産生され、最上の候補がさらなるアセスメントのために選択された。
【0056】
本出願の導入において概説したとおり、IL-1R3に対して高親和性、高特異性および強力な中和活性を持つモノクローナル抗体を同定することは非常に困難である。本発明
は、IL-1R3に高い親和性および特異性があり、強力なIL-1R3中和活性があり、安定性が改善されたヒト化IL-1R3抗体を包含する。
【0057】
特に、本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体であって、
a)CDR-H1、CDR-H2およびCDR-H3を含む相補性決定領域を含む重鎖可変領域(VH)であって、
CDR-H1領域が配列番号69~85の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-H2領域が配列番号86~102の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-H3領域が配列番号103~119の群から選択されるアミノ酸配列を含む、重鎖可変領域(VH)、ならびに
b)CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3を含む相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(VL)であって、
CDR-L1領域が配列番号120~136の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-L2領域が配列番号137~153の群から選択されるアミノ酸配列を含み、
CDR-L3領域が配列番号154~170および175の群から選択されるアミノ酸配列を含む、軽鎖可変領域(VL)
を含む、ヒト化抗体またはその断片もしくは誘導体に関する。
【0058】
一実施形態において、本発明の抗体は、CDR-L3の2位に置換を含む。前記置換は、システインからセリンへの置換であり得る。
【0059】
さらに、本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体を包含し、抗体は、配列番号1~34および配列番号173のVH領域からなる群から選択されるVH領域と少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一である重鎖可変領域(VH)を含む。
【0060】
一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、本発明によるVH配列の群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する重鎖可変領域(VH)配列を含む。
【0061】
ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有するVH配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有し、それによって、抗体は、本発明により、それぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。
【0062】
本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体にも関し、抗体は、配列番号35~68および174のVL領域からなる群から選択されるVL領域と少なくとも60%同一、好ましくは少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも80%同一、より好ましくは少なくとも90%同一である軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0063】
別の実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしく
は誘導体は、本発明によるVL配列のアミノ酸配列と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を有する軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0064】
ある特定の実施形態において、少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一性を有するVL配列は、参照配列と比較して置換(例えば、保存的置換)、挿入または欠失を含有し、それによって、抗体は、それぞれの抗原に特異的に結合する能力を保持する。
【0065】
ある特定の実施形態において、合計1~10アミノ酸が、前記VL配列において置換、挿入および/または欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域(即ち、FR)において起こる。本発明は、当業者に公知の方法によって産生され得る親和性成熟された抗体も含む。Marksら、Bio/Technology 10:779~783(1992)は、VHおよびVLドメインシャフリングによる親和性成熟について記述している。CDRおよび/またはフレームワーク残基のランダムな突然変異誘発については:Barbasら、Proc Nat.Acad.Sci、USA 91:3809~3813(1994);Schierら、Gene 169:147~155(1995);Yeltonら、J.Immunol.1 55:1994~2004(1995);Jacksonら、J.Immunol.1 54(7):3310~9(1995);ならびにHawkinsら、J.Mol.Biol.226:889~896(1992)、およびWO2010108127に記述されている。
【0066】
ある特定の実施形態において、合計1~10アミノ酸が、前記VHまたはVL配列の各々において置換、挿入および/または欠失されている。一実施形態において、本発明の抗体は、VHまたはVL配列の90位に置換を含む。90位のアミノ酸は、セリンによって置換されることが好ましい。この置換は、好ましくは軽鎖可変領域(VL)の90位である。好ましい実施形態において、配列番号62の90位のシステインは、セリンによって置換される。しかしながら、本発明の抗体は、90位のアミノ酸置換に限定されず、本発明の抗体の特性を保有する機能的抗体を生じる任意の置換、欠失または挿入を含み得る。したがって、本発明の抗体のVLおよびVH配列は、異なる位置にさらなる突然変異を含み得る。
【0067】
ある特定の実施形態において、置換、挿入または欠失は、CDRの外側の領域(即ち、FR)において起こる。
【0068】
他の実施形態において、置換、挿入または欠失は、CDR内の領域に起こる。好ましい一実施形態において、本発明の抗体は、CDR-L3の2位に置換を含む。この置換は、システインからセリンであることが好ましい。一実施形態において、前記置換は、配列番号164にある。
【0069】
本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体も包含し、抗体は、配列番号1~34および173の群から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。
【0070】
好ましくは、重鎖可変領域(VH)配列は、配列番号1であり、あるいは、配列番号2、または配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号
20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、配列番号24、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、または配列番号29、配列番号30、配列番号31、配列番号32、配列番号33、あるいは配列番号34または173である。
【0071】
さらに、本発明は、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体に関し、抗体は、配列番号35~68および174の群から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0072】
さらにより好ましくは、軽鎖可変領域(VL)配列は、配列番号35、または配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、配列番号45、配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、配列番号55、配列番号56、配列番号57、配列番号58、配列番号59、配列番号60、配列番号61、配列番号62、配列番号63、配列番号64、配列番号65、配列番号66、配列番号67、あるいは、配列番号68または174である。
【0073】
IL-1R3に特異的に結合する本発明によるヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、MAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149、MAB-16-0150からなる群から選択される抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域をそれぞれ含むVH領域およびVL領域も含む。
【0074】
一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、配列番号1および35または配列番号2および36を含む。本発明による抗体は、配列番号3および37、または配列番号4および38、または配列番号5および39、または配列番号6および40、または配列番号7および41、または配列番号8および42、または配列番号9および43、または配列番号10および44、または配列番号11および45、または配列番号12および46を含み得る。別法として本発明による抗体は、配列番号13および47、または配列番号14および48、または配列番号15および49、または配列番号16および50、または配列番号17および51、または配列番号18および52、または配列番号19および53、または配列番号20および54、または配列番号21および55、または配列番号22および56、または配列番号23および57、または配列番号24および58、または配列番号25および59、または配列番号26および60、または配列番号27および61を含む。
【0075】
別法として、本発明による抗体は、配列番号28および62、または配列番号29および63、または配列番号30および64、または配列番号31および65、または配列番
号32および66、または配列番号33および67、または配列番号34および68を含む。
【0076】
最も好ましくは、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、定常領域配列CR-H(配列番号172)およびCR-L(配列番号171)ならびに配列番号1~34および173の群から選択されるVH領域および配列番号35~68および174の群から選択されるVL領域を含む。
【0077】
IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、定常領域配列CR-H(配列番号172)およびCR-L(配列番号171)ならびにMAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149およびMAB-16-150からなる群から選択される抗体のCDR1、CDR2およびCDR3領域をそれぞれ含むVH領域およびVL領域も含む。
【0078】
本発明による抗体の好ましい治療適用によると、本発明の抗体のエフェクター機能(ADCCなど)は、低減または欠如している。先行技術の他の抗体、CAN04(例えばWO2015/132602(A1))などとは対照的に、本発明の抗体は、エフェクター機能の増大を呈さず、ADCCを含まない。
【0079】
好ましくは、本発明によるヒト化抗体は、Fcγ-受容体シグナル伝達の低減を示すまたは全くない。
【0080】
したがって、本発明は、ヒト化抗体にも関し、前記抗体は、ヒトIgG1 Fc領域のL234AおよびL235AまたはヒトIgG4 Fc領域のS228PおよびL235Eで少なくともアミノ酸置換を含む。
【0081】
本発明による一実施形態において、抗体はヒト化IgG1LALA抗体である。
【0082】
本発明による一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、IL-1R3に誘導されるNFkB活性を阻害する。
【0083】
別の実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、抗体MAB-15-0139、MAB-15-0106、MAB-15-0108、MAB-15-0110、MAB-15-0117、MAB-15-0121、MAB-15-0140、MAB-15-0115、MAB-15-0125、MAB-15-0119、MAB-15-0109、MAB-15-0097、MAB-15-0
135、MAB-15-0133、MAB-15-0107、MAB-15-0128、MAB-15-0116、MAB-16-0004、MAB-16-0009、MAB-16-0028、MAB-16-0031、MAB-16-0043、MAB-16-0049、MAB-16-0045、MAB-16-0040、MAB-16-0036、MAB-16-0046、MAB-16-0030、MAB-16-0021、MAB-16-0019、MAB-16-0015、MAB-16-0027、MAB-16-0048、MAB-16-0041、MAB-16-0149およびMAB-16-150の群から選択される抗体と同じエピトープに結合する。
【0084】
本発明による抗体は、標的に対する結合に関しては、非常に強力な利点を有する。それらは、それらの抗原、IL1R3に強い結合能力を呈するが、他の受容体には呈しない。抗体の結合特性が、生化学的酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)および細胞結合分析(フローサイトメトリー)において研究され、図2、6および7に例示される。
【0085】
本発明による好ましい抗体は、30ng/ml未満、好ましくは20ng/ml未満の最大半数有効濃度(EC50)を示す。他の実施形態において、それらは、15ng/ml未満、10ng/mlまたは5ng/ml未満のEC50を示す。本発明による好ましい抗体は、生化学的ELISA実験において、16.3ng/mlのEC50を示す(参照、図7)。
【0086】
本発明による抗体はまた、異なる細胞株においてヒトIL1R3が発現される実験において、それらの抗原に対して非常に強い結合を示す一方、その抗体は、ヒトIL1R3を発現していない細胞株に結合しない(例えばNIH-3T3、参照、図5)。
【0087】
IL1R3高発現細胞株SK-MEL-30(参照、図6、実施例8)において、抗体は、好ましくは400ng/ml未満、より好ましくは350ng/ml未満、または310ng/ml未満のEC50を呈する。
【0088】
本発明によって包含される好ましい一実施形態において、本発明による抗体は、IL-1アルファおよび/またはIL-1ベータに刺激されるNFkB活性を阻害する。図3、4および8は、本発明による抗体の強い阻害活性を例示する。
【0089】
一実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、IL-1アルファに刺激されるNFkB活性を阻害する。
【0090】
別の実施形態において、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体は、IL-1ベータに刺激されるNFkB活性を阻害する。
【0091】
本発明による抗体は、HEK293T/17-FR細胞において100ng/ml未満、好ましくは95ng/ml未満、85ng/ml、75ng/ml、65ng/ml、55ng/ml、45ng/ml、35ng/ml、25ng/ml、20ng/mlおよび最も好ましくは15ng/ml未満のEC50でIL-1ベータに刺激されるNFkB活性を阻害することが好ましい(例えば、参照、図3)。
【0092】
本発明による抗体は、A549-NFkB-RE-Luc細胞において1000ng/ml未満、好ましくは500ng/ml未満、300ng/ml、200ng/mlおよび最も好ましくは100ng/ml未満のEC50でIL-1アルファに刺激されるNFkB活性を阻害することがさらに好ましい(例えば、参照、図8)。
【0093】
本発明による抗体は、A549-NFkB-RE-Luc細胞において700ng/ml未満、好ましくは600ng/ml未満、300ng/ml、200ng/ml、100ng/mlおよび最も好ましくは50ng/ml未満のEC50でIL-1ベータに刺激されるNFkB活性を阻害することがさらに好ましい(例えば、参照、図8)。
【0094】
本発明は、ヒト化抗体も包含し、前記抗体は、IL-1β/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-1α/IL-1R1/IL-1RAcP、IL-33/ST2/IL-1RAcPおよび/またはIL-36/Il-36R/IL-1RAcPからなる群から選択される複合体によって刺激されるNFkB活性を阻害する。
【0095】
さらに、A549-NFkB-RE-Luc細胞溶解物において、本発明によるヒト化抗体は、10μg/ml(ウサギIgGアイソタイプは、分子量150KDを有する)の濃度で、0.1ng/mlヒトIL-1アルファ、ヒトIL-1ベータ、IL-33および/もしくはIL-36(分子量は、UniProtKB/Swiss-Protを参照のこと)で刺激したNFkB発現を、本発明による前記抗体を含まない同じアッセイに対して50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害する(Steady-Glo(商標)Luciferase Assay System;Promega;カタログ番号E2510)。
【0096】
一実施形態において、本発明によるヒト化抗体は、HEK 293T/17細胞(NF-kBレポーター遺伝子の制御下にあるルシフェラーゼをトランスフェクトしたHEK 293T/17-FR細胞)、HEK-Blue-IL33(商標)細胞(Invivogen)またはHEK-293/17-IF細胞においてIL-1アルファ、IL-1ベータ、IL-33および/またはIL-36それぞれに刺激されるルシフェラーゼ活性を阻害する。
【0097】
好ましくは、前記IL-1アルファに刺激されるルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-1アルファに刺激されるルシフェラーゼ活性は、95%阻害される。
【0098】
好ましくは、前記IL-1ベータに刺激されるルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-1ベータに刺激されるルシフェラーゼ活性は、95%阻害される。
【0099】
好ましくは、前記IL-33に刺激されるルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-33に刺激されるルシフェラーゼ活性は、95%阻害される。
【0100】
好ましくは、前記IL-36に刺激されるルシフェラーゼ活性は、50%以上、好ましくは70%以上、好ましくは80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上阻害される。好ましくは、前記IL-36に刺激されるルシフェラーゼ活性は、95%阻害される。
【0101】
さらに、本発明による抗体は、ヒトIL-1aおよびIL-1bに媒介されるIL-6放出を阻害し、ポリクローナル抗体より優れている。この強力な阻害活性は、図9に示され、例示される。これらの実験において、EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG
1-LALA抗体が、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)より優れていることを実証する。本発明の好ましい実施形態において、抗体は、2500ng/ml未満、好ましくは1500ng/ml未満、1000ng/ml未満、600ng/ml未満、400ng/ml未満または300ng/ml未満のEC50でヒトIL-aに媒介されるIL-6放出を阻害する。本発明の抗体は、500ng/ml未満、好ましくは400ng/ml未満、300ng/ml未満、200ng/ml未満または150ng/ml未満のEC50でヒトIL-1bに媒介されるIL-6放出を阻害することが好ましい。
【0102】
本発明による別の実施形態において、抗体は、ヒトIL-33に媒介されるNfkBシグナル伝達を阻害する。図10は、HEK-Blue-IL33(商標)細胞における本発明により選択された抗体の阻害活性を例示し、ポリクローナル抗体に対する優位性を実証する。本発明の好ましい実施形態において、抗体は、20000ng/ml未満、好ましくは18000ng/ml未満、3000ng/ml未満、1000ng/ml未満、500ng/ml未満、または400ng/ml未満のEC50でヒトIL-33に媒介されるNfkBシグナル伝達を阻害する。
【0103】
本発明の抗体は、ヒトIL-36に媒介されるNfkBシグナル伝達も阻害し得る(図11)。好ましくは、それらは、100ng/ml未満、好ましくは50ng/ml未満、40ng/ml未満、30ng/ml未満、20ng/ml未満または15ng/mL未満のEC50でヒトIL-36に媒介されるNfkBシグナル伝達を阻害する。
【0104】
際立って、本発明者らは、本発明による抗体が、異なる様々な刺激に媒介されるサイトカイン放出を阻害することを見出した。例えば、抗体はIL-1a、IL-33およびIL-36aに媒介されるサイトカイン放出を阻害する。選択された抗体の結果は、図12に示される。例えば、抗体MAB-16-0030は、3つ全ての刺激に媒介されるサイトカイン放出を阻害し、一方でIL-1Raは、IL-1aに媒介されるサイトカイン放出だけに影響を及ぼす。
【0105】
急性または慢性炎症に関連する疾患は、同時もしくは連続的いずれかの複数のサイトカインの作用によって維持されまたは確立する。IL-1aおよびIL-33など初期の「アラーミン」は、IL-1bおよびIL-36を含めた他のサイトカインを起動して、強い炎症性環境を確立することができる。したがって、複数のサイトカインに媒介されるシグナル伝達の同時阻害は、炎症過程の有効な制御を与える。IL1R3受容体の遮断によって複数のサイトカインシグナル伝達を阻害することが、本発明の抗体の鍵となる態様である。
【0106】
免疫細胞への抗体の結合は、例えばアポトーシスシグナル伝達経路の直接的な誘導、過剰なサイトカイン放出または抗体エフェクター機能に媒介される抗体依存性細胞傷害抗体(ADCC)の刺激による細胞枯渇および有害効果をもたらし得る。
【0107】
したがって、本発明の抗体が、アポトーシスシグナル伝達経路の直接的な誘導、過剰なサイトカイン放出または抗体エフェクター機能に媒介される抗体依存性細胞傷害の刺激に媒介される免疫細胞枯渇を誘導しないことが、本発明の抗体のさらなる一態様である。
【0108】
重要なことに、本発明による抗体は、免疫細胞の生存率に影響を及ぼさない。例えば、本発明による抗体は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)の生存率に影響を及ぼさず、PBMCにおけるIL-6放出を誘導しない(参照、図13)。
【0109】
本発明による抗体は、上記の異なる細胞株においてだけでなくドナー由来のPMBCま
たは全血細胞においてもサイトカイン放出の機能的活性化を阻害する。本発明による抗体は、異なる特定または複合刺激に媒介されるサイトカイン放出を阻害する。例えば、本発明による抗体は、LPS、熱不活化カンジダアルビカンス(Candida albicans)、IL-12/IL-33または抗CD3/CD28抗体で刺激されるPBMCの活性化を阻害する(参照、図14および15)。
【0110】
また、一実施形態において、本発明によるヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、混合リンパ球反応においてIFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17およびIL-10の放出を阻害することができる(参照、図16)。
【0111】
さらに、本発明による抗体は、標的、IL1R3の異常調節が根本的な理由である疾患の処置に特に有用である。
【0112】
したがって、本発明はさらに、IL-1R3に媒介される疾患を処置するのに使用するための、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体に関する。
【0113】
本発明は、患者に本発明による抗体またはその誘導体もしくは断片の薬学的に有効な量を投与する工程を含む、患者においてIL-1R3に媒介される疾患を処置する方法も包含する。
【0114】
本発明は、本発明による、薬学的に許容される担体、および治療有効量の、IL-1R3に特異的に結合するヒト化抗体またはIL-1R3結合特異性を付与するのに十分な前記抗体の少なくとも一部を含有するその断片もしくは誘導体を含む医薬組成物にも関する。
【0115】
本明細書では、「医薬用担体」は、生理的に適合性がある溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、等のいずれか及び全てを含む。好ましくは、担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば注射または注入による)に適している。
【0116】
本発明の組成物は、当業者に公知の様々な方法によって投与され得る。当業者に認識されるであろうように、投与の経路および/または様式は、所望の結果によって変化することになる。特定の投与経路によって本発明の化合物を投与するために、化合物を、不活化を防止する材料でコーティングする、または化合物を、その材料と同時投与する必要がある場合がある。例えば、化合物は、適当な担体、例えば、リポソームまたは希釈剤中で対象に投与され得る。薬学的に許容される希釈剤には、生理食塩水および水性緩衝液がある。医薬用担体は、無菌の注射可能な溶液または分散液の即時調製用の滅菌水溶液もしくは分散液および無菌粉末を含む。薬学的に活性な物質に対するそのような媒質および薬剤の使用は、当業者に公知である。
【0117】
本明細書では句「非経口投与」および「非経口的に投与される」は、腸内および局所投与以外の投与の様式を意味し、通常注射により、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、真皮内、腹膜内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外および胸骨内注射ならびに注入を含むが、これに限定されない。
【0118】
これらの組成物は、防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含有することができる。微生物の存在の防止は、上記殺菌手順と様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることの両方
によって確実にできる。組成物に例えば糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることが望ましい場合もある。加えて、注射可能な医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなど吸収を遅延させる薬剤を含めることによってもたらすことができる。選択される投与経路に関係なく、適切な水和形態で使用され得る本発明の化合物および/または本発明の医薬組成物は、当業技術者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される剤形に製剤化される。本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬量レベルは、患者にとって有毒であることなく、特定の患者、組成物および投与の様式に関して所望の治療応答を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変化させることができる。選択される投薬量レベルは、用いられる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与の時間、用いられる特定の化合物の排出率、処置期間、用いられる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または材料、年齢、性別、体重、症状、全体的な健康および処置される患者の以前の病歴、ならびに医術において周知の因子などを含めた様々な薬物動態学的因子に依存することになる。
【0119】
本発明の一態様は、本出願において定義される、がんの処置に使用するための本発明による医薬組成物である。
【0120】
本発明の別の態様は、患者に本発明による医薬組成物を投与する工程を含む、患者においてIL-1R3に媒介される疾患を処置する方法である。
【0121】
そのようなIL-1R3に媒介される疾患には、がんを挙げることができる。がんにおける否定的な予後および進行が、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36レベルの増大および/またはIL-1R3発現の増大と関連することが、文献に記述されている。
【0122】
本明細書では用語「がん」は、例えば、肺がん、非小細胞肺(NSCL)がん、細気管支肺胞細胞肺がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭頸部のがん、皮膚もしくは眼内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門部のがん、胃がん、胃部がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、頸部の癌腫、膣の癌腫、外陰部の癌腫、ホジキン病、食道のがん、小腸のがん、内分泌系のがん、甲状腺のがん、上皮小体のがん、副腎のがん、軟部組織の肉腫、尿道のがん、陰茎のがん、前立腺がん、膀胱のがん、腎臓もしくは尿管のがん、腎細胞がん、腎盂の癌腫、中皮腫、肝細胞がん、胆道がん、中枢神経系(CNS)の新生物、脊髄軸腫瘍、脳幹グリオーマ、多形性神経膠芽細胞腫、星状細胞腫、神経鞘腫、上衣細胞腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、扁平上皮細胞癌腫、下垂体腺腫、リンパ腫、リンパ性白血病、上記がんのいずれかの難治性バージョン、または上記がんの1つもしくは複数の組合せを含むものであり得る。好ましくはそのようながんは、白血病、乳がん、大腸がん、肺がんまたは膵臓がんである。最も好ましくは、がんは白血病である。
【0123】
一実施形態において、IL-1R3に媒介される疾患は、白血病、乳がん、大腸がん、肺がん、膵臓がん、肝臓がん、非小細胞肺がん、結腸直腸がん、胃がん、胃部がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、頭頸部扁平上皮細胞癌腫、中皮腫、胆嚢がん、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、甲状腺がん、ホジキン病、MALTリンパ腫、唾液腺がんまたは黒色腫からなる群から選択される。
【0124】
いくつかの腫瘍は、IL-1α、IL-1β、IL-33、IL-36などの炎症性サイトカインを分泌する腫瘍微小環境細胞によって引き起こされるまたは促進される。いくつかの例において、そのようなサイトカインの発現は、腫瘍抵抗性の形成をもたらす。サイトカイン阻害剤と抗がん化合物の併用は、そのような処置の奏効率を有意に改善する、または腫瘍抵抗性を打破することができる。これは、サイトカインに誘導されるシグナル
伝達の阻害の広域スペクトルが達成されるので、本発明によって提供される。がん徴候におけるそのような活性は、がん細胞の直接的な枯渇活性によって達成されるものではないが、IL1R3シグナル伝達経路をモジュレートすることによってがん関連炎症を阻害する。本発明の抗体は、がん関連慢性炎症の有効な阻害を可能にするので非常に好ましい活性プロファイルを提供し、同時に、抗体エフェクター機能を呈さず、したがってIL-1R3を発現する標的細胞の生存率に影響を及ぼさないので望ましくない副作用を回避する。
【0125】
したがって、本発明の一実施形態において、抗体または医薬組成物は、患者の処置に使用され、患者は、固形腫瘍などの腫瘍を含み、細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化/免疫治療に不十分な応答または腫瘍抵抗性を示す。
【0126】
本発明の一態様において、発明によるヒト化抗体および/または医薬組成物は、1つもしくは複数の細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん化合物と組み合わせたがんの処置に使用するためのものを意味する。サイトカイン阻害剤および細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん化合物の使用は、そのような処置の奏効率を有意に改善する、または腫瘍抵抗性を打破することができる。
【0127】
本発明のそのような態様において、がんは、膵臓がん、肝臓がん、肺がん(アスベスト、感染症、喫煙、二酸化ケイ素によって引き起こされる炎症に関連する)、非小細胞肺がん、結腸直腸がん/大腸炎関連がん(炎症性腸疾患に関連する)、胃がん、胃部がん、慢性胃炎関連胃部がん、エストロゲン受容体陽性乳がん、頭頸部扁平上皮細胞癌腫、中皮腫、胆嚢がん(胆嚢結石関連慢性胆嚢炎関連)、卵巣がん、膀胱がん、前立腺がん、大腸菌(E.coli)感染症関連前立腺がん、甲状腺がん、ホジキン病、MALTリンパ腫、唾液腺がん、黒色腫、子宮内膜症関連子宮内膜癌腫、バレット食道炎に関連する食道がんからなる群から好ましくは選択される。
【0128】
本発明の方法の一態様において、本発明によるIL1R3抗体または医薬組成物は、1つもしくは複数の細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん剤と同時に投与される。別の態様において、抗体または医薬組成物は、1つもしくは複数の細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん剤と共に順次投与される。
【0129】
後者の場合、抗体は、1つもしくは複数の細胞傷害性、細胞増殖抑制または標的化抗がん薬剤による処置後に投与されることが好ましい。
【0130】
本発明による細胞傷害性または細胞増殖抑制剤は、タキサン、アントラサイクリン、アルキル化剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、トポイソメラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、ヌクレオチド類似体、ペプチド抗生物質、プラチナ製剤およびチェックポイント阻害剤であり得る。
【0131】
好ましくは、標的化抗がん剤は、セツキシマブ、ゲフィチニブ、エルロチニブ、ラパチニブ、パニツムマブなどの抗EGFR化合物およびトラスツズマブ、ado-トラスツズマブエムタンシン、ペルツズマブなどの抗HER2化合物のうちの1つ、またはその組合せから選択した。
【0132】
標的化抗がん剤は、チェックポイント阻害剤であることがさらに好ましい。これらは、それだけには限らないが:ペムブロリズマブおよびニボルマブなどの抗PD1化合物、およびアテゾリズマブ、アベルマブおよびデュルバルマブなどの抗PDL1化合物、ならびにイピリムマブおよびトレメリムマブなどの抗CTLA-4化合物であり得る。
【0133】
実施例
以下の実施例を図表と組み合わせて使用して、本発明を例証する。
【実施例0134】
B細胞上清におけるP013_03(ヒトIL-1R3)特異的抗体の決定
アッセイ原理:
NUNC Maxisorp 384ウェルマイクロタイタープレートを、P013_03でコーティングする。ブロッキング過程後、B細胞上清由来特異的抗体は、抗原に結合し、次いで、POD標識抗体によって検出される。サンプルを、1:2希釈で試験する。
【0135】
材料:
プレート:384ウェルNunc Maxisorpプレート;カタログ番号464718
タンパク質:P013-03(濃度1.5mg/ml;アッセイ濃度0.5μg/ml)
標準Ab:P013-02(濃度1mg/ml;開始アッセイ濃度2μg/ml)
検出Ab:抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに連結された種特異的全抗体(ロバ由来)(ECL);GE;カタログ番号NA9340;アッセイ希釈:1:5000
PBS:Buffers in a Box,Premixed PBS Buffer;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA:ウシ血清由来ウシ血清アルブミン画分V;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween20:Tween20;Carl Roth;カタログ番号9127.2
TMB:TMB溶液;Life Technologies;カタログ番号SB02
HCl:1M Titripur塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISA緩衝液:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween
洗浄緩衝液:PBS、0.1%Tween
ブロッキング緩衝液:PBS、2%BSA、0.05%Tween
サンプル:Elisa緩衝液中に1:2希釈
【0136】
手順:
1.384ウェルNUNC MaxisorpプレートにPBS中のP013-03(0.5μg/ml) 12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
2.洗浄緩衝液90μlで3回洗浄する。
3.各ウェルにブロッキング緩衝液90μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
4.洗浄緩衝液で3回洗浄する。
5.Elisa緩衝液に1:2希釈の標準抗体または1:2希釈したサンプル12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
6.洗浄緩衝液で3回洗浄する。
7.Elisa緩衝液中の1:5000 POD抗体12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
8.洗浄緩衝液で6回洗浄する。
9.TMB 15μLを添加する。
10.十分な発色後にHCl 15μLを添加する。
11.450nm/620nmで、吸光度を読み取る。
【実施例0137】
ルシフェラーゼレポーター実験による、P013-受容体を阻害するP013特異的抗体の同定
アッセイ原理:
NF-kB-REホタルルシフェラーゼレポーターを発現する293T/17-FR細胞を、ポリ-D-リジン-細胞培養プレートに播種する。P013の刺激後、293T/17-FR溶解物を、Steady-Glo Luciferase Assay Kitを使用して、活性化されたNF-kBについて試験する。機能的抗体を含む上清は、P013に結合し、NF-kB活性化を阻害し、それは低いシグナルで示される。サンプルを、P013溶液中に1:2希釈で試験する。
【0138】
材料:
プレート:細胞プレート:384ウェルPDL Costar細胞培養プレート;カタログ番号3844
アッセイプレート:384ウェルlumitrac白色プレート;Corning;カタログ番号3572
細胞:293T/17-FR;アッセイ濃度250,000個細胞/ml
細胞継代がより高いほど、シグナルはより低い!
タンパク質:P013_05(濃度0.03mg/ml;アッセイ濃度115pg/ml;作業濃度230pg/ml)
標準Ab:P013_06(濃度0.2mg/ml;開始作業濃度6μg/ml)
キット:Steady-Glo Luciferase Assay System;Promega;カタログ番号E2510
細胞培地:DMEM培地;PAN Biotech;カタログ番号P04-04510
FCS:ウシ胎仔血清、HyClone;Thermo;カタログ番号St30070.03
293T/17-FR培地:DMEM培地、10%FCS、(+20μg/mlハイグロマイシンB、培養のためのみ)
馴化B細胞培地(MAB Discovery)
サンプル:DMEM培地+10%FCS中にP013_05を含む1:2希釈
【0139】
手順:
1.細胞培養手順:毎月曜日(播種:5×10個細胞/T175フラスコ)および金曜日(播種:3×10個細胞/T175フラスコ)にトリプシン/EDTAを使用して(室温で30秒間のみインキュベートする)コンフルエント293T/17-FR細胞を分割する。
2.384ウェルPDLプレート(Corning カタログ#3844)にDMEM+10%FCS 25μL中の細胞(0.25×10個細胞/ml)を播種し、37℃および5%COで終夜インキュベートする。
3.培地を吸引し、馴化培地中に1:3希釈のサンプルもしくはP013_06を12.5μl添加し、または馴化培地のみを添加し、37℃および5%COで30分間インキュベートする(プログラム:3 Aspiration and sample transfer)
4.DMEM+10%FCS中のP013_05 12.5μlを添加し、37℃および5%COで5時間インキュベートする(プログラム:4_Add P013_05)。
5.培養細胞を10分間室温に平衡化する。
6.Steady-Glo試薬25μlを添加し、ピペットで数回混合する(プログラム:6_Steady Glo)
7.384ウェルlumitrac白色プレート(Corningカタログ#3572
)に、上清45μlを移動する前に5分間待つ(プログラム:7_Transfer 45μl)
8.Tecan Readerで発光を測定する:積分時間:0.5秒
【実施例0140】
B細胞上清中のhuIL1RaP、msIL1RaP、CD134およびCD137特異的抗体の決定
アッセイ原理:
NUNC Maxisorp 384ウェルマイクロタイタープレートを、標的タンパク質でコーティングする。ブロッキング過程後、B細胞上清由来特異的抗体は、標的に結合し、次いで、POD標識抗体によって検出される。
【0141】
材料:
プレート:384ウェルNunc Maxisorpプレート;カタログ番号464718
タンパク質:
切断したhuIL1RaP(P026_12;濃度0.96mg/mL;アッセイ濃度0.25μg/mL)
切断したmuIL1RaP(P026_13;濃度0.93mg/mL;アッセイ濃度0.25μg/mL)
切断したCD134(P026_14;濃度0.51mg/mL;アッセイ濃度0.25μg/mL)
切断したCD137(P026_15;バッチ2;濃度1.1mg/mL;アッセイ濃度1μg/mL)
標準Ab:
ヒトIL-1 RAcP/IL-1 R3抗体(P013_6/P026_08;濃度0.2mg/mLまたは0.399mg/mL;開始アッセイ濃度2μg/mL;huIL1RaPおよびmsIL1RaPに使用される)
MAB-14-0283(濃度0.6mg/mL;開始アッセイ濃度2μg/mL;CD134に使用される)
MAB-14-0285(濃度1mg/mL;開始アッセイ濃度2μg/mL;CD137に使用される)
検出Ab:
サンプル:抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに連結された種特異的Fab断片(ロバ由来)(ECL);GE;カタログ番号NA9340;アッセイ希釈:ELISA緩衝液中に1:5000
MAb-14-0283およびMAb-0285の場合:抗ヒトIgG、ペルオキシダーゼに連結された種特異的Fab断片(ヤギ由来)(HRP);AbD Serotec;カタログ番号STAR126P;アッセイ希釈:ELISA緩衝液中に1:5000
huIL1RaPおよびmsIL1RaPの場合:ペルオキシダーゼコンジュゲートされたAffiniPureロバ抗ヤギIgG(H+L);Jackson Immuno Research;カタログ番号705-035-003;アッセイ希釈:ELISA緩衝液中に1:5000
PBS:Buffers in a Box,Premixed PBS Buffer,10x;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA:ウシ血清由来ウシ血清アルブミン画分V;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween20:Tween20;Carl Roth;カタログ番号9127.2
TMB:TMB溶液;Invitrogen;カタログ番号SB02
HCl:1M Titripur塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISA緩衝液:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween
洗浄緩衝液:PBS、0.1%Tween
ブロッキング緩衝液:PBS、2% BSA、0.05%Tween
サンプル:ELISA緩衝液中に1:4希釈
【0142】
手順:
1.384ウェルNUNC Maxisorpプレートに、PBS中に希釈した0.25μg/mLまたは1μg/mLタンパク質12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
2.洗浄緩衝液90μLで3回洗浄する。
3.各ウェルにブロッキング緩衝液90μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
4.洗浄緩衝液90μLで3回洗浄する。プレートは、アルミホイルで密閉した乾燥状態で、-20℃で6週間まで保存することができる。
5.1:2希釈工程の標準抗体またはサンプル(ELISA緩衝液に希釈した)12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
6.洗浄緩衝液90μLで3回洗浄する。
7.ELISA緩衝液中の1:5000 POD抗体12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
8.洗浄緩衝液90μLで6回洗浄する。
9.TMB 15μLを添加する。
10.15分間の発色後にHCl 15μLを添加する。
11.450nm/620nmで、吸光度を読み取る。
【実施例0143】
IL-1(α/β)による刺激後のA549-NFκB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞のNFκB発現の阻害
アッセイ原理:
A549-NFκB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞(Signosis)を、384ウェルプレートにピペットで移し、終夜インキュベートする。2日目に、抗IL1R3抗体を、A549-NFkB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞に結合させ、次いで、その細胞を、IL-1(αまたはβ)の添加によって刺激する。これは、NFκBシグナル伝達経路の活性化によるルシフェラーゼ遺伝子の転写をもたらし、細胞溶解およびルシフェリンの添加によって測定することができる。抗体が、NFkB経路の活性化を阻害し、したがって発光シグナルを低下させ得るかどうかを試験する。
【0144】
材料:
プレート:384ウェルローフランジ白色平底ポリスチレンTC処理無菌マイクロプレート;Corning;カタログ番号3570
タンパク質:
IL-1α(P026_09);組換えヒトIL-1アルファ/IL-1F1;10μg/mL;R&D Systems;カタログ番号200-LA-002
IL-1β(P026_10);組換えヒトIL-1ベータ/IL-1F2;25μg/mL;R&D Systems;カタログ番号200-LB-005
標準Ab:MAB-15-0115;MAB Discovery GmbH;2.51mg/ml;作業濃度10μg/ml
細胞:A549-NFκB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞;Signosis;カタログ番号SL-0014
培地:DMEM;PAN;カタログ番号P04-04510
FCS:ウシ胎仔血清South Africa Low IgG;Pan;カタログ番号1552-P120909
Pen/Strep:10,000Uペニシリン/ml;10mgストレプトマイシン/ml;PAN Biotech;カタログ番号P06-07100
剥離剤:トリプシン-EDTA 1x;Pan;カタログ番号P10-023100(T175の場合4mL/T75の場合2mL;およそ8分37℃)
細胞培地:DMEM、10%FCS、1%Pen/Strep
検出キット:Steady-Glo(商標)Luciferase Assay System;Promega;カタログ番号E2510
【0145】
手順:
1.細胞培地中でA549-NFκB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞を培養する(1.7E+04個細胞/cmで3日間;2.28E+04個細胞/cmで2日間)。継代10回を超えない!
2.ウェル当たり培地25μL中のA549-NFκB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞40000個(濃度=1.6×10個細胞/mL)を、白色の細胞培養処理された平底384ウェルプレートに播く。37℃/5%COで終夜インキュベートする。
3.CyBioピペット操作ロボット(プログラム:フォルダP026/NFkB内の「Medium removal and sample transfer」)を使用して、プレートから培地を吸引し、培地中のサンプルまたは標準10μLをプレートに添加する。37℃/5%COで1時間インキュベートする。
4.CyBioピペット操作ロボット(プログラム:フォルダP026/NFκB内にある「Transfer from reservoir」)を使用して、培地中のIL-1(αまたはβ)(作業濃度0.2ng/mL;アッセイ濃度0.1ng/mL)10μLをプレートに添加し、37℃/5%COで5時間インキュベートする。
工程4を実行する前に、Steady-GloプロトコールにしたがってSteady-Glo緩衝液にSteady-Glo基質を溶解し、この溶液およびアッセイプレートを室温に平衡化する。
5.Steady-Gloミックス20μLを添加し、十分に混合して、適当な細胞溶解を保証する。室温で10分インキュベートする。
6.積分時間500msに設定したマイクロプレートリーダー(プログラム:Lumineszenz-384)を使用して、各ウェルの相対的発光単位を決定する。
【実施例0146】
IL-1(α/β)による刺激後のA549細胞のIL-6分泌
アッセイ原理:
A549細胞を、384ウェルプレート中にピペットで移し、抗IL1R3抗体とインキュベートする。その後、細胞を、IL-1(αまたはβ)で刺激し、アッセイ培地中にIL-6を分泌させる。IL-6の量を、IL-6 ELISAによって測定する。
【0147】
材料:
アッセイキット:DuoSet ELISAヒトIL-6;カタログ番号DY206-05(R&D Systems);DuoSetは、ヒトIL-6捕捉抗体(パーツ840113)、ヒトIL-6検出抗体(パーツ840114)、ヒトIL-6(パーツ840115)およびストレプトアビジン-HRP(パーツ8939755)からなる
プレート:384ウェル透明細胞培養処理プレート;Corning;カタログ番号3
701 384ウェルMaxisorpプレート;Nunc;カタログ番号464718
PP-プレート:120μL 384ディープウェル「ダイヤモンド」プレート、透明;Axygen(Corning);カタログ番号P-384-120SQ-C
タンパク質:
IL-1α;組換えヒトIL-1アルファ/IL-1F1;R&D Systems;カタログ番号200-LA-002
IL-1β;組換えヒトIL-1ベータ/IL-1F2;R&D Systems;カタログ番号200-LB-005
rhIL1-ra/IL-1F3;R&D Systems;カタログ番号280-RA-010
標準Ab:ヒトIL-1RAcP/IL-1R3抗体;R&D Systems;カタログ番号AF676またはAF676-SP
培地:DMEM;PAN;カタログ番号P04-04510
FCS:ウシ胎仔血清South Africa Low IgG;Pan;カタログ番号1552-P120909
Pen/Strep:10,000Uペニシリン/ml;10mgストレプトマイシン/ml;PAN Biotech;カタログ番号P06-07100
PBS:Buffers in a Box,Premixed PBS Buffer,10x;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA:ウシ血清由来ウシ血清アルブミン画分V;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween20:Tween20;Carl Roth;カタログ番号9127.2
TMB:TMB溶液;Invitrogen;カタログ番号SB02
HCl:1M Titripur塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISA緩衝液:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween
洗浄緩衝液:PBS、0.1%Tween
ブロッキング緩衝液:PBS、2%BSA、0.05%Tween
細胞培地:DMEM、10%FCS、1%Pen/Strep
【0148】
手順:
細胞刺激
1.ウェル当たり培地25μL中のA549細胞6,000個(濃度=2.4×10個細胞/mL)を、細胞培養プレートに播く。37℃/5%COで終夜インキュベートする。
2. プレートから培地を吸引し、培地中のサンプルまたは標準12.5μLをプレートに添加する。37℃/5%COで3時間インキュベートする。
3.IL-1(αまたはβ)12.5μLをプレートに添加し(作業濃度0.2ng/mL;アッセイ濃度0.1ng/mL)、37℃/5%COで48時間インキュベートする。
4.培地を吸引し、コーティングおよびブロッキングされたElisaプレートに移動させる(工程9)。別法として、上清を、PP-プレート中で、-80℃で1週間まで保存することができる。
【0149】
Elisaプレート調製
5.捕捉抗体をPBS中に2μg/mLの濃度に希釈する。1ウェル当たり12.5μLの希釈した捕捉抗体で384ウェルMaxisorpプレートを直ちにコーティングする。プレートを密閉し、室温で1時間インキュベートする。
6.各ウェルを吸引し、洗浄緩衝液で洗浄し、その過程を2回繰り返して、合計3回洗
浄する。自動洗浄機を使用して各ウェルを洗浄緩衝液(90μL)で満たすことにより洗浄する。各工程において液体を完全に除去することが、優れた成績のために必須である。最後の洗浄後、プレートを吸引することによってまたは逆さにし、きれいな紙タオルに吸い取らせることによって少しの残りの洗浄緩衝液も除去する。
7.各ウェルにブロッキング緩衝液90μLを添加することによってプレートをブロッキングする。室温で最低1時間インキュベートする。
8.工程6のように吸引/洗浄を繰り返す。これでプレートは、サンプル添加の用意ができている。コーティングし、ブロッキングしたプレートは、乾燥状態で、-20℃で1か月間まで保存することができる。
【0150】
アッセイ手順
9.ウェル当たり、ELISA緩衝液(EB)に希釈した高純度サンプルまたはIL-6標準12.5μLを添加する。カバーをかけ、室温で1時間インキュベートする。
10.Elisaプレート調製の工程6のように吸引/洗浄を繰り返す。
11.各ウェルにEBに希釈した検出抗体12.5μLを添加する。カバーをかけ、室温で1時間インキュベートする。
12.Elisaプレート調製の工程6のように吸引/洗浄を繰り返す。
13.各ウェルへElisa緩衝液に1:40希釈したストレプトアビジン-HRP 12.5μLを添加する。プレートにカバーをし、室温で20分間インキュベートする。直射光にプレートを置くことを避ける。
14.Elisaプレート調製の工程6のように吸引/洗浄を繰り返す。
15.各ウェルに基質溶液(TMB)15μLを添加する。室温で20分間インキュベートする。
16.各ウェルに停止溶液(HCl、1M)15μLを添加する。プレートを穏やかにたたいて、完全な混合を確実にする。
17.450nmに設定したマイクロプレートリーダーを使用して各ウェルの光学密度を直ちに決定する。波長修正が利用可能な場合、540nmまたは570nmに設定する(プログラム:TMB stop 384 Cytokine)。修正せずに450nmで直接行った読み取りは、より高いおよびより低い精度になり得る。
【実施例0151】
競合アッセイによるhuIL1RaP特異的抗体の結合特徴の決定
アッセイ原理:
NUNC Maxisorp 384ウェルマイクロタイタープレートを、参照抗体Can04でコーティングする。この時間の間に、Hisタグ標的タンパク質を、試験する二次抗体および抗HIS-POD抗体とプレインキュベートする。その後、このプレインキュベーションミックスを、アッセイプレートに添加し、十分な発色時間後に、450nm/620nmで吸光度を測定する。
【0152】
材料:
プレート:384ウェルNunc Maxisorpプレート;カタログ番号464718
コーティングAb:Can04(Mab Discovery GmbH;CEP Ab番号184;濃度1mg/ml;アッセイ濃度100ng/ml)
タンパク質:huIL1RaP-Hisタンパク質(P026_01;Fusion_1_Chain_Aホモ二量体huIL1RaP-Hisタグ;GeneArt;濃度3mg/ml;アッセイ濃度62.5ng/ml)
標準Ab:Can04(参照:「コーティングAb」;開始作業濃度3μg/ml)
陰性対照:Her2抗体(Lifespan;カタログ番号LS-C95808/26358;濃度225μg/mL;開始作業濃度3μg/ml)
検出Ab:抗His POD抗体(モノクローナル抗ポリヒスチジンペルオキシダーゼコンジュゲート;Sigma;カタログ番号A7058;濃度7.5mg/ml;アッセイ濃度:3.33μg/ml)
PBS:Buffers in a Box,Premixed PBS Buffer,10x;Roche Applied Sciences;カタログ番号11666789001
BSA:ウシ血清由来ウシ血清アルブミン画分V;Roche Applied Sciences;カタログ番号10735086001
Tween20:Tween20;Sigma-Aldrich;カタログ番号P1379
TMB:TMB溶液;Merck;カタログ番号CL07
HCl:1M Titripur塩酸;Merck;カタログ番号1090571000
ELISA緩衝液:PBS、0.5%BSA、0.05%Tween
洗浄緩衝液:PBS、0.05%Tween
ブロッキング緩衝液:PBS、2%BSA、0.05%Tween
【0153】
手順:
12.プレインキュベーションミックスを調製し、室温で2時間インキュベートする。
a.プレインキュベーション(384ウェルプレート中)
i.ELISA緩衝液中の二次抗体希釈系列(希釈1:2;開始作業濃度3μg/ml)またはブランク10μlを、
ii.Hisタグタンパク質(アッセイ濃度62.5ng/ml)10μl、および
iii.抗His POD抗体(アッセイ濃度3.33μg/ml)10μlと混合し、室温で1時間インキュベートする。
13.その間に、PBS中のコーティング抗体(Can04;アッセイ濃度100ng/ml)20μLでNunc Maxisorpプレートをコーティングし、室温で1時間インキュベートする。
14.洗浄緩衝液90μlで3回洗浄する。
15.ブロッキング緩衝液90μlにより室温で1時間ブロッキングする。
16.洗浄緩衝液で3回洗浄する。
17.ELISA緩衝液中のプレインキュベーションミックス20μlを室温で1時間添加する。
18.洗浄緩衝液で6回洗浄する。
19.TMB 25μLを添加する。
20.十分な発色後HCl 25μLを添加する。
21.450nm/620nmで吸光度を読み取る。
【実施例0154】
IL12カウンタースクリーン
アッセイ原理:
IL12結合を、カウンタースクリーンとして使用する。HERタンパク質を、IL12タンパク質のようにリンカー、huFcおよびHisでタグ付けする(HER1は、His-Tagを持たない)。タグに結合する抗体は、両方のアッセイにおいて陽性であるが、抗原特異的抗体は、HERタンパク質にだけ結合し、IL12に結合しない。
【0155】
材料:
プレート:384ウェルNunc Maxisorpプレート;カタログ番号464718
タンパク質:組換えヒトIL-12 Rβ1 Fcキメラ;R&D Systems;カタログ番号839-B1;アッセイ濃度0.5μg/mL
標準Ab:IL-12Rベータ1抗体;GeneTex;カタログ番号GTX103917;1mg/mL;開始アッセイ濃度500ng/mL(その後1:2希釈)
検出Ab:抗ウサギIgG、ペルオキシダーゼに連結された種特異的Fab断片(ロバ由来)(ECL);GE;カタログ番号NA9340;アッセイ希釈:1:5000
サンプル:ELISA緩衝液中の希釈は、計画によって決まる(高濃縮されたIgGの場合、1:2希釈が推奨される)
【0156】
手順:
1.384ウェルNUNC MaxisorpプレートにPBS中の0.5μg/mL
HERタンパク質12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
2.洗浄緩衝液で3回洗浄する。
3.各ウェルにブロッキング緩衝液90μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
4.洗浄緩衝液で3回洗浄する。プレートを、アルミホイルで密閉して-20℃で数週間凍結できる。
5.ELISA緩衝液に1:2希釈の標準抗体または希釈したサンプル12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。(凍結プレートは、サンプル適用の直前に解凍されるべきである)。
6.洗浄緩衝液で3回洗浄する。
7.ELISA緩衝液中の1:5000 POD抗体12.5μLを添加し、室温で1時間インキュベートする。
8.洗浄緩衝液で6回洗浄する。
9.TMB 15μLを添加する。
10.十分な発色後にHCl 15μLを添加する(計画よって決まる;他のアッセイより短くないIL12アッセイ)。
11.450nm/620nmで、吸光度を読み取る。
【実施例0157】
細胞結合分析
A549およびNIH-3T3細胞を、DMEM+10% FCS中で培養した。HEK-293細胞を、DMEM+15%FCS中でおよびSK-MEL-30をRPMI+10%FBS中で培養した。細胞を、Accumax(Sigma)を使用して採取し、PBSで洗浄し、染色緩衝液(BD Pharmingen)に再懸濁した。染色緩衝液中で抗IL-1R3抗体を、濃度10μg/ml、4℃で30分間、細胞とインキュベートした。SK-MEL-30細胞結合分析のEC50のために、細胞を、20μg/mlで開始する1:2希釈系列とインキュベートした。細胞を、染色緩衝液で洗浄し、Alexa-488標識したヤギ抗ヒト二次抗体(Dianova)と4℃で30分間インキュベートした。細胞を、染色緩衝液で洗浄し、1:100希釈したDRAQ7(Abcam)死細胞染色を含有する緩衝液に再懸濁した。細胞を、BD Accuri C6 Samplerフローサイトメーターを使用して分析した。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0158】
生化学的ヒト-IL-1R3 ELISA
Nunc 384ウェルMaxisorpプレートを、PBS中に0.25μg/mlの濃度の組換えFcタグ付きhIL-1R3(Ser21-Glu359)で、室温で60分間コーティングした。プレートを、洗浄緩衝液(PBS、0.1%Tween)で3
回洗浄し、PBS、0.2%BSA、0.05%Tweenで、室温で60分間ブロッキングした。洗浄緩衝液で3回洗浄した後、抗体を、6~0.03μg/mlの範囲(1:3希釈系列)の濃度でELISA緩衝液(PBS、0.5%BSA、0.05%Tween)に添加し、室温で60分間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝液で3回洗浄し、続いてELISA緩衝液中に1:5000希釈した抗ヒトIgGペルオキシダーゼ連結、種特異的F(ab)2断片(ヤギ、AbD Serotec)と室温で60分間インキュベーションした。TMB基質溶液(Invitrogen、15μl/ウェル)を添加する前に、プレートを洗浄緩衝液で6回洗浄した。5分間インキュベーションした後、停止溶液(1M HCl、15μl/ウェル)を添加し、吸光度(450nm/620nm)を、Tecan M1000プレートリーダーを使用して測定した。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0159】
IL-1αおよびIL-1β機能的中和アッセイ
A-549-NFκB-RE-Luc(Signosis)を、培地25μL中に40,000個細胞/ウェルの細胞密度で384ウェル白色平底ポリスチレン組織培養処理マイクロプレート(Corning)に播種する前に、DMEM、10%FCS、1%Pen/Strep中で5日間培養した。細胞を、37℃/5%COで終夜インキュベートした。培地を、吸引によって除去し、モノクローナルまたはポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を、培地10μl容積中に様々な濃度で添加し、37℃/5%COで60分間インキュベートした。組換えヒトIL-1αまたはIL-1β(R&D Systems)タンパク質を、0.1ng/mlの終濃度になるように培地10μlに添加し、プレートを、37℃/5%COで5時間インキュベートした。Steady-Glo(商標)(Promega)溶液20μlを、各ウェルに添加し、十分に混合し、プレートを、Tecan M1000プレートリーダーを使用して発光を測定する前に室温で10分間インキュベートした。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0160】
IL-1αおよびIL-1β機能的中和アッセイ-A-549 IL6-放出アッセイ
A549細胞を、DMEM、10%FCS、1%Pen/Strepの培地25μL中に6000個細胞/ウェルの密度で384ウェル透明細胞培養処理プレート(Corning)に播種した。細胞を、37℃/5%COで終夜インキュベートした。培地を、吸引によって除去し、モノクローナルまたはポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を、培地12.5μl容積中に様々な濃度で添加し、37℃/5%COで3時間インキュベートした。組換えヒトIL-1αまたはIL-1β(R&D Systems)タンパク質を、0.1ng/mlの終濃度になるように培地12.5μlに添加し、プレートを、37℃/5%COで48時間インキュベートした。細胞上清中の分泌されたヒトIL-6レベルを、製造業者の説明書にしたがってDuoSetヒトIL-6 ELISAキット(R&D Systems、カタログ番号DY206-05)を使用して測定した。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0161】
IL-33機能的中和アッセイ
HEK-Blue(商標)IL-33細胞(InvivoGen)を、培地15μl中に25,000個細胞/ウェルの細胞密度で384ウェル透明、平底、細胞培養処理マイクロプレート(Corning)に播種する前に、DMEM、10% FCS中で5日間
培養した。様々な濃度のモノクローナルまたはポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を、培地5μl容積に添加し、プレートを、37℃/5%COで60分間インキュベートした。組換えヒトIL-33(R&D Systems)タンパク質を、5ng/mlの終濃度になるように培地5μlに添加し、プレートを、37℃/5%COで終夜インキュベートした。細胞上清5μlを、2xQUANTI-Blue試薬(InvivoGen)20μlを含有する透明、平底ポリスチレンNBS(商標)マイクロプレート(Corning)に移した。プレートを、37℃で45分間インキュベートし、Tecan M1000プレートリーダーを使用して655nmで光学密度を測定した。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0162】
IL-36機能的中和アッセイ
HEK293/17-IF細胞(MAB Discovery GmbH)を、培地20μl中に30,000個細胞/ウェルの細胞密度で384ウェル白色、平底、細胞培養処理プレート(Corning)に播種する前に、DMEM、10% FCS、20μg/mlハイグロマイシン中で5日間培養した。細胞を、37℃/5%COで終夜インキュベートした。培地を吸引によって除去し、様々な濃度のモノクローナルまたはポリクローナル(ヤギ抗ヒトIL-1R3、AF676、R&D Systems)抗体を、培地10μl容積中に添加した。プレートを、37℃/5%COで60分間インキュベートした。組換えヒトIL-36g(R&D Systems)タンパク質を、15ng/mlの終濃度になるように培地10μlに添加し、プレートを、37℃/5%COで5時間インキュベートした。Steady-Glo(商標)(Promega)溶液20μlを、各ウェルに添加し、十分に混合し、プレートを、Tecan M1000プレートリーダーを使用して発光を読み取る前に室温で10分間インキュベートした。フィッティング曲線およびEC50算出を、Excel(Microsoft)およびXLfit(IDBS)を使用して行った。
【実施例0163】
IL-1α、IL-33およびIL-36αの中和
抗IL-1R3抗体の機能を、IL-1α、IL-33またはIL-36αのいずれかを用いて異なる3つの細胞株において試験して、シグナル伝達に関してIL-1R3に依存的な3つのIL-1受容体(IL-1R1、R4またはR6)に関係するシグナル伝達経路に対する影響を決定した。
【0164】
ヒト上皮肺細胞株A549を、自己炎症性疾患などIL-1依存的疾患のモデルとしてIL-1αで刺激した。細胞株を、完全F-12K培地(10% FCS、1%Pen/Strep)中で、T75フラスコ(37℃、5%CO)で培養し、平均2回/週分割した(アッセイ前に継代15回を超えない)。A549細胞を、96平底プレートに播種し(50,000個/ウェル)、MAB-16-0030(20μg/mL~1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)と1時間プレインキュベートする前に、3時間休ませた。次いで、上清を採取する前に、細胞を、組換えヒトIL-1α(50pg/mL、PeproTech)で24時間刺激し、IL-6産生についてアッセイした(Duoset ELISA、RnD Systems)。
【0165】
ヒト肥満細胞株(HMC-1)を、IL-8産生のIL-33依存的誘導について調査した。細胞株を、完全イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM、10%FCS、1%Pen/Strep)中で、T75フラスコ(37℃、5%CO)で培養し、平均3回/週分割した(2×10個/mLを上回る細胞密度を有さず、アッセイ前に継代15回を超えない)。HMC-1細胞を、96平底プレートに播種し(30,000個/ウェル)、
MAB-16-0030(20μg/mL~1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)と1時間プレインキュベートする前に、3時間休ませた。次いで、上清を採取する前に、細胞を、組換えヒトIL-33(20ng/mL、RnD Systems)で24時間刺激し、IL-8産生についてアッセイした(Duoset ELISA、RnD Systems)。
【0166】
IL-36シグナル伝達に対する影響を、ヒトケラチノサイト細胞株(HaCaT)を使用して調査した。細胞株を、完全DMEM(10%FCS、1%Pen/Strep)中で、T75フラスコ(37℃、5%CO)で培養し、平均3回/週分割し、アッセイ前に継代15回を超えない。HaCaT細胞を、96平底プレートに播種し(50,000個/ウェル)、MAB-16-0030(20μg/mL~1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)と1時間プレインキュベートする前に、3時間休ませた。次いで、上清を採取する前に、細胞を、組換えヒトIL-36α(50ng/mL、RnD
Systems)で24時間刺激し、IL-8産生についてアッセイした(Duoset ELISA、RnD Systems)。
【実施例0167】
PBMCの生存率およびIL-6放出
健康なドナー3名の刺激していないPBMC(500,000個/ウェル)の生存率に対する抗hIL-1R3抗体MAB-16-0030の影響を、従来通りのMTT低減アッセイを使用して試験した。簡潔には、PBMC(200μL)を、培地単独またはMAB-16-0030(20μg/mL)のいずれかとインキュベートした。24時間、3日間および5日間の後に、PBMCを、ELISAリーダーで、570nMで吸光度を測定する前に、MTT(20μL)と2時間インキュベートした。吸光度とMTTを変換する生存可能な細胞との間の公知の直線性を使用して、生存可能な細胞の数を、培地単独を100%に設定した対照として使用して算出した。MTT分析と同日に、同じ条件下でインキュベートした同一ドナー由来のPBMCの上清を採取し、その後IL-6産生についてアッセイして(Duoset ELISA、RnD Systems)、MAB-16-0030単独のあらゆる可能性がある刺激効果を評価した。
【実施例0168】
PBMCの機能的遮断
健康なドナーから新たに単離したPBMCを使用して、多様な抗原で刺激したヒト細胞に対するMAB-16-0030の影響を評価した。全ての刺激について、実験を、50,0000個PBMC/ウェルを使用して実施し、合計容積200μLで刺激した。細胞を播種し、刺激前に培地単独、MAB-16-0030(20~0.1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)のいずれかと1時間インキュベートした。以下の刺激を使用した;LPS(10ng/mL、24時間、RPMI FCSを含まない)、抗ヒトCD3/CD28(1.25μg/mL;0.5μg/mL(eBioscience)3日間、RPMI 10%FCS)、IL-12/-33(2ng/mL;20ng/mL(PeproTech;RnD Systems))、3日間、RPMI 10% FCS)、または熱不活化カンジダアルビカンス(0.5×10個/mL、5日間、RPMI 10%FCS)。刺激後に上清を採取し、製造業者のプロトコールにしたがってDuoset ELISA(RnD Systems)を使用してサイトカイン産生についてアッセイした。
【実施例0169】
全血における免疫細胞の機能的遮断
熱不活化カンジダアルビカンスを使用して、全血を刺激した。健康なドナーから新たに採取した血液(EDTAチューブ)を、微量遠心チューブに分注し(250μL/チュー
ブ)、カンジダアルビカンス(0.5×10個/mL)による刺激の前に、最終容量1mLになるように培地単独(RPMI、FCSを含まない)、MAB-16-0030(20~0.1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)のいずれかと1時間プレインキュベートした。インキュベーション(37℃、5%CO)24時間後に上清を採取し、ELISA(Duoset、RnD Systems)によってサイトカイン産生についてアッセイした。
【実施例0170】
混合リンパ球反応(MLR)
健康な、適合しないドナー由来のPBMCを、培地単独、MAB-16-0030(20~1μg/mL)またはIL-1Ra(10μg/mL)のいずれかと比1:1に混合し(250,000個/ドナー)、5日間インキュベートした(RPMI、10%FCS)。サイトカイン産生を、製造業者のプロトコールにしたがってQuansysマルチプレックスプラットホームを使用してアッセイした。
【0171】
[図面の簡単な説明]
【0172】
図1]配列(1文字コードのアミノ酸)
可変領域(VR)の完全な配列:
重鎖:完全なVH:配列番号1~34および配列番号173
軽鎖:完全なVL:配列番号35~68および配列番号174
相補性決定領域(CDR):
重鎖:
CDRH1:配列番号69~85
CDRH2:配列番号86~102
CDRH3:配列番号103~119
軽鎖:
CDRL1:配列番号120~136
CDRL2:配列番号137~153
CDRL3:配列番号154~170および175
定常領域(CR):
軽鎖:CR-L:配列番号171
重鎖:CR-H:配列番号172
以下の図において、AF676は、以下のリンクから購入した市販のポリクローナル抗体調製物である:
https://www.rndsystems.com/products/human-il-1-racp-il-1-r3-antibody_af676
【0173】
図2]ヒトIL-1R3 ELISA
384マイクロタイタープレートを、IL-1R3のヒト細胞外ドメインを表すヒトIl-1R3タンパク質でコーティングした(0.5mg/ml、少なくとも1時間)。徹底的な洗浄工程に続くブロッキング工程の後、抗体を添加し(ウェル当たり12.5μl)、室温で1時間インキュベートした。結合していない抗体を、徹底的に洗い流した。結合している抗体の量を、ペルオキシダーゼ標識した抗ヒト検出抗体と共にマイクロタイタープレートをインキュベートする(室温で1時間)ことによって同定した。ペルオキシダーゼ反応を、TMBを添加することによって開始し、450nm/620nmで吸光度を測定した。
ヒトIL-1R3に特異的な結合を確実にするために、同一の特徴を持つIL12タンパク質を使用するカウンタースクリーンを並行して実行した。アッセイの設定は、上記と同一であった。ヒトIL-1R3に結合するが、IL12に結合しないB細胞上清は、活性であると考えられてきた。
【0174】
図3]HEK293レポーターアッセイ
HEK293T/17-FR細胞に、pGL4.32[luc2P/NF-κB-RE/Hygro]ベクター(Promega)を安定にトランスフェクトし、384ウェルPDL Costar Cell Cultureプレートに播種し、続いて抗体と30分インキュベーションした。次いで、NF-kB活性を製造業者のプロトコールにしたがってSteady-Glo Luciferase Assay Kit(Promega)を使用して決定する前に、細胞を、IL-1βで5時間刺激した。
【0175】
図4]A549安定細胞株を使用するNFκBルシフェラーゼレポーターアッセイ
A549-NFkB-RE-Lucを安定にトランスフェクトした細胞(Signosisから購入した)を、3日間培養した(1.7E+04細胞/cm)。384ウェルローフランジ白色平底ポリスチレンTC処理マイクロタイタープレート(Corning)を、ウェル当たり4×10個細胞で満たした。10時間の培養期間後に、細胞を抗体と1時間インキュベートし、その後細胞をIL-1β 10μlでさらに5時間刺激した。NFkBモジュレーションを、Steady-Glo(商標)Luciferase Assay System(Promega)で、刺激していない細胞に対する各ウェルの相対的発光単位を決定することによって測定した。
【0176】
図5]細胞結合分析:IL-1R3発現細胞に対する結合
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体を、フローサイトメトリーを使用して異なるIL-1R3受容体密度を持つ細胞株への結合について試験した。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、IL-1R3低および高発現細胞株に結合する。抗体は、マウスNIH-3T3細胞に結合しない。実験は、実施例8に記述される方法にしたがって実施した。
【0177】
図6]細胞結合分析:ヒトIL-1R3高発現細胞株SK-MEL-30に対する細胞結合
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体のEC50細胞結合値を、フローサイトメトリーを使用してIL-1R3高発現細胞株SK-MEL-30への結合によって決定した。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体MAB-16-0030およびMAB-16-0149は、それぞれ307および306ng/mlの細胞結合を示す。実験は、実施例8に記述される方法にしたがって実施した。
【0178】
図7]ヒト-IL-1R3生化学的ELISA
組換えヒトIL-1R3タンパク質に対するヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体の結合を、生化学的ELISAで試験した。例示した抗体は、それぞれ16.3ng/mlおよび29.1ng/mlのEC50結合値を示す。実験は、実施例9に記述される方法にしたがって実施した。
【0179】
図8]A549-NFkB-RE-Luc細胞におけるヒトIL-1aおよびIL-1bに媒介されるNfKBシグナル伝達の阻害
IL-1aおよびIL-1bの機能的中和を、それぞれ0.1ng/ml IL-1aおよびIL-1bで刺激したA549-NFkB-RE-Luc細胞を使用して細胞ベースの遺伝子レポーターアッセイで試験した。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)のものより優れたEC50値を示す。実験は、実施例10に記述される方法にしたがって実施した。
【0180】
図9]IL-1αおよびIL-1β機能的中和アッセイ-A-549細胞による、
ヒトIL-1aおよびIL-1bに媒介されるIL-6放出の阻害
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体による、IL-1aおよびIL-1bに媒介されるIL-6の細胞放出の中和を、A-549細胞を使用して試験した。EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)のものより優れていることを実証する。実験は、実施例11に記述される方法にしたがって実施した。
【0181】
図10]IL-33機能的中和アッセイ-HEK-Blue-IL33(商標)細胞におけるヒトIL-33に媒介されるNfkB-シグナル伝達の阻害
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体による、IL-33に媒介される細胞シグナル伝達の中和を、IL-33に刺激される遺伝子レポーターHEK-Blue-IL33(商標)細胞(InvivoGen)を使用して試験した。EC50値は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)のものより優れていることを実証する。実験は、実施例12に記述される方法にしたがって実施した。
【0182】
図11]IL-36機能的中和アッセイ-HEK-293/17-IF細胞におけるヒトIL-36に媒介されるNfkB-シグナル伝達の阻害
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体による、IL-36に媒介される細胞シグナル伝達の中和を、IL-36gに刺激される遺伝子レポーターHEK-293/17-IF細胞を使用して試験した。典型的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、ヤギ抗ヒトIL1-R3ポリクローナル抗体AF676(R&D Systems)のものより優れたEC50値を示す。実験は、実施例13に記述される方法にしたがって実施した。
【0183】
図12]IL-1a、IL-33およびIL-36aに媒介される細胞のサイトカイン放出の中和
IL-1a、IL-33およびIL-36aに媒介される細胞のサイトカイン放出の中和を、特定のIL-1a、IL-33およびIL-36a依存的な細胞系を使用して試験した。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)によるサイトカイン放出の阻害を試験し、IL-1Raと比較した。本発明による抗体は、3つ全ての刺激に媒介されるサイトカイン放出を阻害し得るが、IL-1Raは、IL-1aに媒介されるサイトカイン放出にのみ影響を及ぼした。実験は、実施例14に記述される方法にしたがって実施した。
【0184】
図13]ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体で処理した刺激していないPBMCの生存率およびIL-6放出
免疫細胞への抗体の結合は、例えばアポトーシスシグナル伝達経路の直接的な誘導、過剰なサイトカイン放出の刺激または抗体依存性細胞傷害(ADCC)による細胞枯渇および有害効果をもたらし得る。ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、PBMCの生存率に直接影響を及ぼすことを排除するために、3名のドナーのPBMCの生存率およびIL-6放出を、異なる濃度の本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体(MAB-16-0030)と1、3および5日間インキュベーションした後に、調査した。生存率もIL-6放出も、MAB-16-0030による影響を受けなかった。これらの結果は、ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、付随的な細胞枯渇および細胞有害効果を誘導することなく免疫細胞に対するIL-1R3機能を遮断することを支持する。実験は、実施例15に記述される方法にしたがって実施した。
【0185】
図14]異なる刺激で活性化されるPBMCの機能的遮断
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、特定または複合刺激で刺激されたPBMCの活性化を阻害するかどうか試験するために、10名のドナーのPBMCを、LPS、熱不活化カンジダアルビカンス、IL-12/IL-33または抗CD3/CD28抗体で刺激した。本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、試験した全ての刺激によって媒介されるサイトカイン放出を阻害することができた。実験は、実施例16に記述される方法にしたがって実施した。
【0186】
図15]カンジダアルビカンスで活性化した全血における免疫細胞の機能的遮断
ヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体が、全血における免疫細胞の活性化を阻害するかどうか試験するために、8名のドナーの全血を、熱不活化カンジダアルビカンスで刺激した。図に示した本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、カンジダに誘導されるIL-6サイトカイン放出を阻害することができた。実験は、実施例17に記述される方法にしたがって実施した。
【0187】
図16]混合リンパ球反応(MLR)におけるサイトカイン放出の遮断
多様なサイトカインの放出を遮断するヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体の能力を、健康な、適合しないドナーのPBMCを使用して混合リンパ球反応(MLR)で試験した。図に示した本発明による代表的なヒト化抗IL-1R3 IgG1-LALA抗体は、IFNg、IL-6、TNF-a、IL-13、IL-17およびIL-10の放出を阻害することができた。実験は、実施例18に記述される方法にしたがって実施した。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図1-8】
図2
図3-1】
図3-2】
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15
図16-1】
図16-2】
図16-3】
図16-4】
【配列表】
2022078191000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【外国語明細書】