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2022-78192神経学的症状の治療のためのリン酸化tau及びp38ガンマの使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078192
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】神経学的症状の治療のためのリン酸化tau及びp38ガンマの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/45 20060101AFI20220517BHJP
   A61K 38/17 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220517BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220517BHJP
   C07K 14/47 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/864 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
A61K38/45
A61K38/17 ZNA
A61K48/00
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/00
A61P9/10
A61P43/00 111
A61K35/76
C12N15/12
C07K14/47
C12N15/864 100Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022032525
(22)【出願日】2022-03-03
(62)【分割の表示】P 2018545937の分割
【原出願日】2017-03-01
(31)【優先権主張番号】2016900764
(32)【優先日】2016-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500125504
【氏名又は名称】マックォーリー・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ラース マティアス イットナー
(72)【発明者】
【氏名】アーン アンセルム イットナー
(57)【要約】
【課題】
本発明は、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入するよう対象を治療する、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防する方法に関する。
【解決手段】
本発明はまた、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療するか又は予防するためのベクター、組成物及びキットに関する。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防するための医薬組成物であって、
a.tauの205位でのトレオニン(T205)のリン酸化を促進する剤、当該剤は、p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している、又は対象のニューロンにおいてtauの変異体を発現できる核酸;
を含有し、当該tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記剤が、対象のニューロンにおいてp38γ又はその変異体を発現できる核酸を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
p38γが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項1又は2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記p38γの変異体が、p38γ(配列番号2)のアミノ酸配列に対して少なくとも95% 又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記p38γの変異体が、PDZ相互作用モチーフを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記p38γの変異体が、p38γの構成的活性変異体(p38γCA)であり、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記神経学的状態が、アルツハイマー病、脳卒中及び癲癇からなる群から選択される、請求項1~7のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防するための医薬組成物であって:
p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;
を含有し、当該tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記p38γの変異体が、p38γ(配列番号2)のアミノ酸配列に対して少なくとも95% 又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記p38γの変異体が、PDZ相互作用モチーフを含む、請求項9又は10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記p38γの変異体が、p38γの構成的活性変異体(p38γCA)であり、当該構成的活性変異体が配列番号3を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記神経学的状態が、アルツハイマー病、脳卒中及び癲癇からなる群から選択される、請求項9~13のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療するか又は予防するための医薬組成物であって、ベクターを含有し、当該ベクターが:
a.p38γ又はその変異体をコードする核酸配列、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している;
を含み、当該p38γ又はその変異体又はtauの変異体をコードする核酸配列が、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を発現するための調節配列に操作可能的に連結され、当該tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記ベクターが、ウィルスベクターである、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記ウィルスベクターが、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV9、AAVrh10 又はAAVcy5である、請求項17に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項15~18のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療するか又は予防するための医薬組成物であって、アデノ随伴ウイルスベクターを含有し、当該ベクターが:
a.p38γ又はその変異体をコードする核酸配列、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している;
を含み、当該p38γ又はその変異体、又はtauの変異体をコードする核酸が、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を発現するための調節配列に操作可能的に連結され、当該tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、医薬組成物。
【請求項21】
前記p38γの変異体が、p38γ(配列番号2)のアミノ酸配列に対して少なくとも95% 又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記p38γの変異体が、PDZ相互作用モチーフを含む、請求項20又は21のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記p38γの変異体が、p38γの構成的活性変異体であり、当該構成的活性変異体が配列番号3を含む、請求項20~22のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項20~23のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記神経学的状態が、アルツハイマー病、脳卒中及び癲癇からなる群から選択される、請求項20~24のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ニューロンにおけるPSD-95、tau及びFYNを含むシグナル伝達複合体を破壊するための医薬組成物であって:
a.tauの205位でのトレオニン(T205)のリン酸化を促進する剤、当該剤は、p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している、又は対象のニューロンにおいてtauの変異体を発現できる核酸;
を含有する、医薬組成物。
【請求項27】
前記剤が、ニューロンにおいて、p38γ又はその変異体を発現できる核酸を含む、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
p38γが、配列番号2のアミノ酸配列を含む、請求項26又は27のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記p38γの変異体が、p38γ(配列番号2)のアミノ酸配列に対して少なくとも95% 又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記p38γの変異体が、PDZ相互作用モチーフを含む、請求項26~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記p38γの変異体が、p38γの構成的活性変異体であり、当該p38γの構成的活性変異体(p38γCA)が、p38γの179位でのアラニンへのアスパラギン酸のアミノ酸置換を含む、請求項26~30のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項32】
対象におけるアルツハイマー病の治療のための医薬組成物であって:
a.tauの205位でのトレオニン(T205)のリン酸化を促進する剤、当該剤は、p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している、又は対象のニューロンにおいてtauの変異体を発現できる核酸;
を含有する、医薬組成物。
【請求項33】
対象における脳卒中の治療のための医薬組成物であって:
a.tauの205位でのトレオニン(T205)のリン酸化を促進する剤、当該剤は、p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している、又は対象のニューロンにおいてtauの変異体を発現できる核酸;
を含有する、医薬組成物。
【請求項34】
対象における癲癇の治療のための医薬組成物であって:
a.tauの205位でのトレオニン(T205)のリン酸化を促進する剤、当該剤は、p38γ若しくはその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ若しくはその変異体を発現できる核酸のいずれかを含み、当該p38γの変異体は、T205でtauをリン酸化し、配列番号31(KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL)のアミノ酸配列を含み、p38γのアミノ酸配列(配列番号2)に対し90%以上の配列同一性を有するものである;又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体、当該tauの変異体は、tauの205位のトレオニンがグルタミン酸に置換されている(T205E)点で野生型tauと相違している、又は対象のニューロンにおいてtauの変異体を発現できる核酸;
を含有する、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防方法、そのような神経学的状態の治療又は予防のためのベクター、及びそのような状態の治療のためのベクターを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ニューロンの興奮毒性は、過剰な刺激により損傷されるか又は死滅される。そのような刺激は、グルタミン作動性受容体、例えばNMDA型受容体(NR)が神経伝達物質、例えばグルタミン酸により過剰活性化される場合に起こる。興奮毒性はまた、興奮毒性、例えばアミロイド-β(Aβ)によっても誘発され得る。
【0003】
興奮毒性は、アルツハイマー病(AD)、前頭側頭型痴呆、ハンチントン病、パーキンソン病を含む種々の形の神経変性患者などの神経学的状態において顕著な役割を果たすと考えられている。興奮毒性はまた、癲癇、及び脳卒中後に生じる神経損傷にも関連している。
【0004】
アルツハイマー病(AD)は、痴呆の最も一般的な形であり、そして最も一般的な神経変性疾患である。ADは、60歳以上の成人の1%にも影響を及ぼすと推定される。
【0005】
ADは、脳萎縮、神経喪失、細胞外Aβ斑、及び異常にリン酸化されたtauを含有する細胞内神経原線維変化(NFT)により特徴付けられる。
【0006】
tauは、非病理学的条件下で、微小管安定性及び微小管依存性プロセスを調節する軸索タンパク質である。tauはまた、Aβ誘発興奮毒性及び潜在的に他の興奮毒性を媒介するシナプス後シグナル伝達複合体に存在することが見出されている。ADにおいて、tauは異常にリン酸化され、そしてニューロンの体細胞樹状細胞区画に蓄積し、凝集し、そして最終的に、神経原線維変化(NFT)を形成する。脳全体中へのNFT病変の進行は、アルツハイマー病における疾患の進行と相関する。
【0007】
ADにおける一般的な理論は、Aβがニューロンの機能不全及び死を引起すtauリン酸化を含む毒性事象を引起すことである。たぶん、tauの枯渇は、ADマウス及び細胞培養モデルにおけるAβ毒性を防止する。従って、ADにおけるAβ毒性は、ADの病因におけるリン酸化されたtauにより媒介されることが当核技術分野において考慮されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
AD及び他の神経学的状態を治療する代替方法を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、光核分野の教示とは反対に、特定のアミノ酸残基でのtauのリン酸化がtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し、そして興奮毒性及びAβ誘発毒性を予防するか又は低減することを見出した。
【0010】
第1の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入するよう対象を治療する、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防する方法が提供される。
【0011】
第2の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を投与することを含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防する方法が提供される。
【0012】
別の第2の側面は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防への使用のための、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤、又は対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防のための医薬の製造への、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤の使用が提供される。
【0013】
第3の側面よれば、対象のニューロンにおいて、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤を投与することを含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防方法が提供される。
【0014】
別の第3の側面によれば、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防への使用のための、対象のニューロンにおいて、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤、又は対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態の治療又は予防のための医薬の製造への、対象のニューロンにおいて、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤の使用が提供される。
【0015】
第4の側面によれば、
(a)p38γ又はその変異体をコードする核酸配列;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列を含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療するか又は予防するためのベクターが提供される。
【0016】
第5の側面によれば、
(a)p38γ又はその変異体をコードする核酸配列;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列を含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療するか又は予防するためのアデノ随伴ウィルスベクターが提供される。
【0017】
第6の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤と前記ニューロンとを接触せしめることを含む、ニューロンにおけるPSD-95、tau及びFYNを含むシグナル伝達複合体の破壊、又はその形成の低減方法が提供される。
【0018】
別の第6の側面によれば、ニューロンにおけるpSD-95、tau及びFYNを含むシグナル伝達複合体の破壊、又はその形成の低減への使用のための、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤、又はニューロンにおけるPSD-95、tau及びFYNを含むシグナル伝達複合体の破壊、又はその形成の低減のための医薬の製造のためへの、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤の使用が提供される。
【0019】
第7の側面によれば、
(a)、tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を投与することを含む、対象におけるアルツハイマー病の治療方法が提供される。
【0020】
別の第7の側面によれば、対象におけるアルツハイマー病の治療への使用のための、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤、又は対象におけるアルツハイマー病の治療のための医薬の製造への、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤の使用が提供される。
【0021】
第8の側面によれば、
(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は
(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸を、対象のニューロンに導入することを含む、対象におけるアルツハイマー病の治療方法が提供される。
【0022】
別の第8の側面によれば、対象におけるアルツハイマー病の治療への使用のための、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸、又は対象におけるアルツハイマー病の治療のための医薬の製造への、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸の使用が提供される。
【0023】
第9の側面によれば、
(c)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(d)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を投与することを含む、対象における脳卒中の治療方法が提供される。
【0024】
別の第9の側面によれば、対象における脳卒中の治療への使用のための、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤、又は対象における脳卒中の治療のための医薬の製造への、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤の使用が提供される。
【0025】
第10の側面によれば、
(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は
(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸を、対象のニューロンに導入することを含む、対象における脳卒中の治療方法が提供される。
【0026】
別の第10の側面によれば、対象における脳卒中の治療への使用のための、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸、又は対象における脳卒中の治療のための医薬の製造への、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸の使用が提供される。
【0027】
第11の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を投与することを含む、対象における脳卒中の治療方法が提供される。
【0028】
別の第11の側面によれば、対象における癲癇の治療への使用のための、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤、又は対象における癲癇の治療のための医薬の製造への、(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤の使用が提供される。
【0029】
第12の側面によれば、
(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は
(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸を、対象のニューロンに導入することを含む、対象における癲癇の治療方法が提供される。
【0030】
別の第12の側面によれば、対象における癲癇の治療への使用のための、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸、又は対象における癲癇の治療のための医薬の製造への、(a)p38γ又はその変異体を発現できる核酸;又は(b)tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できる核酸の使用が提供される。
【0031】
第13の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防するための組成物が提供される。
【0032】
第14の側面によれば、本明細書に記載されるベクターを含む組成物が提供される。
【0033】
第15の側面によれば、
(a)tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進し、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起し;又は
(b)対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を導入する剤を含む、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防するためのキットが提供される。
【0034】
第16の側面によれば、本明細書に記載されるベクターを含むキットが提供される。
【0035】
第17の側面によれば、トランスジェニック動物p38γ又はその変異体、又はtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体のニューロンにおいて発現できるトランスジェニック核酸配列を含むトランスジェニックの非ヒト動物が提供される。
【0036】
第18の側面によれば、神経学的状態が、本明細書に記載される方法により治療されるか、又は予防され得るかどうかを評価する方法が提供され、
(a)神経学的状態に罹患しているか、又は神経学的状態のモデルである表現型を示す試験動物を提供し;
(b)試験動物とトランスジェニック動物とを交配させ子孫を得、ここでトランスジェニック動物は、前記動物p38γ又はその変異体、又はtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体のニューロンにおいて発現できるトランスジェニック核酸配列を含み;そして
(c)トランスジェニック核酸配列を発現する子孫における神経学的状態の重篤度又は神経学的状態のモデルである表現型を評価する工程を含む。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1Aは、類似度を示す樹状図を含むp38MAPキナーゼのドメイン構造を示す模式図である。見られるように、p38γは、独特のC末端PDZ相互作用モチーフを有する。図1Bは、p38α、p38β、p38γ 及びp38δについての標的対立遺伝子を有するマウス由来のゲノムDNAに対するポリメラーゼ鎖反応(PCR)の結果を示す。f、フロックスド(floxed)対立遺伝子、-、ノックアウト対立遺伝子、+、野生型対立遺伝子。図1Cは、対照マウス(f/f又は+/+)の皮質抽出物のウェスターンブロットの結果を示し、p38α、p38β及びp38γの発現が確認されたが、脳におけるp38δは確認されなかった。抗体特異性が、個々のノックアウト又はp38MAPKを有するマウスの抽出物をプローブすることにより示された。Δneu、p38αのニューロン特異的ノックアウト。GAPDHは、等しい負荷を示した。BM、骨髄。
【0038】
図2-1】図2Aは、30mg/kgのPTZを注射されたp38γ+/+及びp38γ-/-マウスの低められた発作潜伏期(左)及び線形回帰勾配(右)を示すグラフである。平均発作重症度は、30mg/kgのPTZを注射されたp38γ+/+マウスに比較して、p38γ-/-において顕著に高められた(**P < 0.01; ****P < 0.0001; n=10-12)。
【0039】
図2-2】図2Bは、ニューロン中の前シナプスシナプトフィジン(Syp)ではなく、p38γ及び後シナプスPSD-95(矢印)の共局在を示す写真である。スケールバー、1μm。
【0040】
図2-3】図2Cは、APP23.p38γ+/+(n=62)における早期死亡率がAPP23.p38γ-/-(n=43)マウスにおいてさらに増大され、ところがp38γ+/+(n=49)及びp38γ-/-(n=48)マウスは正常な生存性を提供した(****P < 0.0001、***P < 0.001)ことを示すグラフである。
【0041】
図2-4】図2D-Fは、モリス-水-迷路(Morris-water-maze)(NWM)を用いて、p38γ+/+(n=10)及びp38γ-/-(n=10)マウスに比較して、APP.p38γ+/+(n=10)において空間的作業記憶欠損を示し、そしてAPP23.p38γ-/-(n=8)においてはより強かったことを示す(**P < 0.01; P < 0.05)。図2Dは、代表的MWM経路トレースである。破線の四角形、隠れたプラットフォームの位置。
【0042】
図2-5】図2D-Fは、モリス-水-迷路(Morris-water-maze)(NWM)を用いて、p38γ+/+(n=10)及びp38γ-/-(n=10)マウスに比較して、APP.p38γ+/+(n=10)において空間的作業記憶欠損を示し、そしてAPP23.p38γ-/-(n=8)においてはより強かったことを示す(**P < 0.01; P < 0.05)。図2Eは、逃避潜伏期がAPP23.p38γ+/+マウスにおいて高められ、そしてAPP23.p38γ-/-においてはより高められが、しかしAPP23.p38γ+/+及びp38γ-/-に匹敵することを示すグラフである。
【0043】
図2-6】図2D-Fは、モリス-水-迷路(Morris-water-maze)(NWM)を用いて、p38γ+/+(n=10)及びp38γ-/-(n=10)マウスに比較して、APP.p38γ+/+(n=10)において空間的作業記憶欠損を示し、そしてAPP23.p38γ-/-(n=8)においてはより強かったことを示す(**P < 0.01; P < 0.05)。図2Fは、p38γ+/+、p38γ-/-、APP23.p38γ+/+及びのAPP23.p38γ-/-のMWM試験における象限の時間(秒)を示すグラフである。APP23.p38γ-/-マウスは、APP23.p38γ+/+、p38γ+/+、及びp38γ-/-と比較して、プローブ試験の間、標的化象限(Q1)においてより少ない時間を費やし、そして反対の象限(Q4)においてはより多くの時間を費やした。
【0044】
図2-7】図2Gは、APP23.p38γ+/+、APP23.p38γ-/-、p38γ+/+、及びp38γ-/-マウスの代表的EEGとレースを示し、APP23.p38γ+/+、及びAPP23.p38γ-/-マウスにおいては、ハイパーシンクロシティの発作(緑)を有するが、しかしp38γ+/+マウスにおいては有さない。
【0045】
図2-8】図2Hは、APP23.p38γ+/+マウスに比較して、APP23.p38γ-/-においては著しく高められた数のスパイク列を示すグラフである(n=6-8; **P < 0.01)。p38γ+/+及びp38γ-/-記録においてはスパイク列は検出されなかった。図2Iは、APP23.p38γ+/+マウスに比較して、APP23.p38γ-/-においては、スパイクの数が高められたが、しかしp38γ+/+及びp38γ-/-においては希であることを示すがラフである(n=6-8; ***P < 0.001 、**P < 0.01、 P < 0.05)。
【0046】
図2-9】図2Jは、p38γ+/+及びp38γ-/-マウスに比較して、APP23.p38γ+/+マウスにおける約8Hzの低められたクロス周波数結合(CCFC)を示す、発作間海馬LFP記録において計算された代表的な位相振幅コノドローグラムを示す。約8HzでのCFCは、APP23.p38γ-/-マウスでは実質的に失われた。
【0047】
図2-10】図2Kは、p38γ+/+(n=6)及びp38γ-/-(n=6)マウスに比較して、位相振幅分布において計算された変調指数は、APP23.p38γ+/+(n=8)において低められ、そしてAPP23.p38γ-/-(n=8)においては、より低められたことを示すグラフである(***P < 0.001、**P < 0.01)。
【0048】
図3-1】図3Aは、30mg/kgのPTZの腹腔内投与後のp38γ+/+、p38γ-/-、Alz17.p38γ+/+ 及びAlz17.p38γ-/-マウスにおける発作潜伏期を示すグラフである。30mg/kgのPTZの腹腔内投与に続く発作潜伏期のさらなる低下が、p38γ+/+及びAlz17.p38γ+/+マウスに比較して、p38γ-/-においてすでに低められたそれらの潜伏期に比較して、Alz17.p38γ-/-マウスにおいて観察された(n = 10~12; ** P <0.01; P <0.05; ns、有意ではない)。図3Bは、(3A)における発作潜伏期曲線の線形回帰分析を示すグラフである(n = 10~12; *** P <0.001; ** P <0.01)。図3Cは、p38γ+/+及びAlz 17.p38γ+/+マウスに比較して、Alz17.p38γ-/―マウスに30mg/kgのpTZを投与した後、p38γ-/-においてすでに高められた発作重症度に比較して、さらに増強された平均発作重症度を示すグラフである(n = 10~12; *** P <0.001、** P <0.01、 P <0.05)。
【0049】
図3-2】図3Dは、tau+/+.p38γ+/+マウスに比較して、30mg/kgのPTZの投与後、tau+/+.p38γ-/-において著しく低められ、そしてtau-/-.p38γ+/+及びtau-/―.p38γ-/-マウスの両者において著しく高められたことを示すグラフである(n = 10~12; ** P <0.01; P <0.05)。図3Eは、発作潜伏期曲線の線形回帰分析を示すグラフである(n = 10~12; ** P <0.01; ** P <0.05; ns、有意ではない)。図3Fは、平均発作重症度がtau+/+.p38γ+/+マウスに比較して、tau+/+.p38γ-/-において高められたが、しかし30mg/kgのPTZ注射後、tau-/-.p38γ+/+及びtau-/-.p38γ-/-マウスにおいては同様に低められたことを示すグラフである(n = 10-1; *** P <0.001; ** P <0.01; P <0.05)。
【0050】
図3-3】図3Gは、APP23.p38γ+/+tau-/- 、APP23.p38γ+ / +及びAPP23.p38γ / マウスに比較して、APP23.p38γ-/―.tau-/-マウスの300日間にわたる生存率を示すグラフである。図3Hは、モリス-水迷路(MWM)試験の後、p38 / 、p38 / 、APP23.p38γ+/-、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスの逃避潜伏期を示すグラフである。図3Iは、p38 / 、p38 / 、APP23.p38γ+/-、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスについてのMWM試験中の象限の時間を示すグラフである。
【0051】
図4-1】図4Aは、同等の合計レベルのpSD-95、tau及びFynにもかかわらず、より多くのPSD-95/tau/Fyn複合体が、Alz17.p38γ+/+脳よりもAlz17.p38γ-/-から免疫沈澱されたことを示す写真である。GAPDHは、同等の負荷を確認した。図4Bは、(4A)において検出されるPSD-95に結合されるtau及びFynの定量を示すグラフである(n = 6; *** P <0.001; P <0.05)。
【0052】
図4-2】図4Cは、FLAG-PSD-95、tau及びFynによりトランスフェクトされた細胞からのPSD-95/tau/Fyn複合体の免疫沈澱(IP)の結果を示す写真である。軽減された野生型p38γ(WT)及び構成的活性なp38γ(CA)の同時トランスフェクションは、PSD-95/tau/Fyn、相互作用を無効にした。図4Dは、(C)において検出されたPSD-95に結合されたtau及びFynの定量を示すグラフである(n = 6; *** P <0.001; ** P <0.01; P <0.05)。
【0053】
図4-3】図4Eは、p38γ WT及びCA p38γが、p38阻害剤の存在下で細胞から免疫沈澱されたPSD-95/tau/Fyn複合体を破壊しなかったことを示す。図4Fは、(E)において検出されたPSD-95に結合されたtau及びFynの定量を示すグラフである(n = 6; *** P <0.001; ** P <0.01; P <0.05)。
【0054】
図4-4】図4Gは、一貫してより多くのPSD-95/tau/Fyn複合体が、30mg/kgのPTZの注射の後、0、5及び15分で、p38γ+/+マウスよりも、p38γ-/-マウスの皮質溶解物から免疫沈殿されたことを示す。図4Hは、(4G)において検出されたPSD-95に結合されたtau及びFynの定量を示すグラフである(n = 6; *** P <0.001; ** P <0.01; P <0.05)。
【0055】
図4-5】図4Iは、より多くのtau、Fyn、NMDA受容体サブユニット1(NRI)及び2B(NR2B)が、p38γ+/+マウスよりもp38γ-/-の脳由来のPSD-95を有する複合体において免疫沈澱されたことを示す。これは、APp23.p38γ+/+マウスに比較して、APP23.p38γ-/-においてさらに増強された。しかしながら、APP(22C11)、PSD-95、tau、Fyn、NR1、NR2B及びp38γの合計レベルは、p38γ / 、p38γ / 、APP23.p38γ / 及びAPP23.p38γ / マウスにおいて同等であった。図4Jは、(4I)において検出されたPSD-95に結合されたtau、Fyn、NR1及びNR2Bの定量を示すグラフである(n = 6-8; *** P <0.001; ** P <0.01; P <0.05)。
【0056】
図5-1】図5Aは、野生型(WT)又は構成的活性な(CA)p38γによりトランスフェクトされた細胞が、T205で主にリン酸化され、そしてS199でより低くリン酸化されるが、しかしS396及びS404で実質的にリン酸化されないことを示す。GAPDHは、同等の負荷を示した。
【0057】
図5-2】図5Bは、PSD95、Fyn及び野生型又は突然変異ヒトtau(S199A、S199D、T205A、T205E)により同時トランスフェクトされた細胞由来のPSD95/tau/Fyn複合体の免疫沈澱の結果を示す。結果は、T205(T205E)でのリン酸化の模倣がPSD95、Fyn及びtauの相互作用を定量的に破壊し、ところがtau変異体T205Aはそれを増大したことを示す。S199の突然変異は、PSD-95/tau/Fyn複合体に対して影響を及ぼさなかった。図5Cは、(図5B)において検出されたPSD-95に結合されたtau及びFynの定量を示すグラフである(n = 6; *** P <0.001; P <0.05;ns、有意ではない)。
【0058】
図5-3】図5Dは、p38γCAの有無にかかわらず、PSD95、Fyn、野生型又は変異ヒトtauにより同時トランスフェクトされた細胞由来のPSD95/tau/Fyn複合体の免疫沈澱の結合を示す。p38γCAとのPSD-95、Fyn及びWTtauの同時発現は、PSD-95/tau/Fyn複合体の形成を無効にし、ところがT205Aのトランスフェクションは、PSE-95/T205A tau/Fyn相互作用に対するp38γCAの効果を完全に妨げた。図5Eは、図5Dにおいて検出されたPSD-95に結合されたtau及びFynの定量を示すグラフである(n =4;*** P <0.001; ** P <0.01)。
【0059】
図5-4】図5Fは、海馬ニューロンにおけるLDH放出により決定されるようなAβ-誘発毒性に対するtau変異体の効果を示すグラフである。Aβ(0.05又は0.5μM)-誘発毒性(LDH放出により測定される)は、WT及びT205A tau発現ニューロンに比較して、T205Eにおいて誘発された。H(3μM)により誘発された細胞毒性は、全てのtau変異体で類似した(n =6の独立した実験;** P <0.01; **P <0.05)。
【0060】
図5-5】図5Gは、培養された海馬ニューロンにおけるp38γ及びp38γCAの局在を示す画像である。内在性p38γと同様に、AAV発現WT及び構成的活性(CA)p38γの両者が、培養された海馬ニューロン(β3Tub、β3チューブリン)の樹状突起棘に局在した(図2Bを参照のこと)。対照ニューロンは、AAV18 GFPを発現した。スケールバー、1μm。
【0061】
図5-6】図5Hは、LDH放出により決定された、海馬ニューロンにおいて、Aβ(0.05又は0.5μM)により誘発されたが、しかしH(3μmM)によっては誘発されていない毒性を、p38γWT及びp38γCAの発現が低めたことを示すグラフである(n =6の独立した実験;** P <0.001; **P <0.01)。
【0062】
図5-7】図5Iは、AAV-GFPを受けたマウスに比較して、C57Bl/6脳におけるp38γ及びp38γCAの発現が、PTZ(50mg/kg、腹腔内)の投与の後、発作潜伏期を高めることを示すグラフである(n =8-10;** P <0.01)。図5Jは、図5Iにおける発作潜伏期曲線の線形回帰分析の結果を示すグラフである(n =8-10;*** P <0.001; ** P <0.01)。
【0063】
図5-8】図5Kは、50mg/kgのPTZを注射された個々のマウスにおけるp38γ発現のレベルと正相関したWT及びCA p38γの両者の発現により仲介される発作潜伏期(線形回帰勾配)の改善の程度を示すグラフである(n =8-10;** P <0.05)。
【0064】
図6】50mg/kg体重のペンチレンテトラゾール(PTZ)の腹腔内注射後に誘発された興奮毒性発作に対するp38γ-/-ノックアウトマウス及びp38γ+/+対照マウスの感受性を示すクラブである。発作潜伏期は、50mg/kgのPTZの投与の後、対照(p38γ+/+)マウスに比較して、p38γノックアウト(p38γ-/-)において低められた( P <0.05;n =9-10)。図6Bは、図6Aにおける発作潜伏期曲線の分析の線形回帰の結果を示すグラフである(*** P <0.0001;n =9-10)。図6Cは、50mg/kgのPTZの腹腔内投与に続いてのp38γ+/+及びp38γ-/-マウスにおける平均発作重症度を示すグラフである。平均発作重症度は、p38γ-/-マウスに比較して、p38γ+/+マウスにおいて低められた( P <0.05)。
【0065】
図7】30mg/kg体重のPTZの腹腔内注射後に誘発された興奮毒性発作に対するp38γ-/-ノックアウトAPP23マウス及びp38γ+/+APP23マウスの感受性を示すクラブである。p38γ-/-及びAPP23.p38γ+/+は、PTZ注射の後の非トランスジェニックp38γ+/+マウスに比較して、類似する低められた発作潜伏期を示した。発作潜伏期は、APP28.p38r-/-マウスにおいてさらに低められた(n =10-12;** P <0.01; P <0.05)。図7Bは、図7Aにおける発作潜伏期曲線の線形回帰分析の結果を示すグラフである(n =10-12;** P <0.00.1; P <0.05)。図7Cは、PTZ投与(30mg/kg体重、腹腔内)に続く平均発作重症度と示すグラフである。発作重症度は、非トランスジェニックp38γ+/+マウスに比較して、p38γ-/-及びAPP.p38γ+/+において有意に高められた(n =10-12;** P <0.00.1; P <0.05)。APP23.p38γ-/-マウスは、発作をさらに増強する傾向を示した。
【0066】
図8図8Aは、記憶障害を評価するために、モリス-水-迷路(MWM)におけるp38γ / 、p38γ 、APP23.p38γ / 及びAPP23.p38γ / マウスの水泳経路の長さを示すグラフである。より長い水泳経路は、p38γ+/+及びp38γ-/-マウスにおける正常な学習に比較して、APP23.p38γ+/+マウスにおいて記憶獲得欠損を示し、APp23.p38γ-/-マウスにおいてはより悪かった(** P <0.01; P <0.05;ns、有意でない)。図8Bは、逃避潜伏期を示すグラフであり、そして図8Cは、モリス-水-迷路(MWM)におけるp38γ / 、p38γ 、APP23.p38γ / 及びAPP23.p38γ / マウスの平均速度を示すグラフである。逃避潜伏期及び平均速度は、視覚的及び運動能力を確認し、視覚的に確認されたプラットフォームを用いて類似していた。
【0067】
図9-1】図9Aは、APP23.p38γ+/+及びAPP23.p38γ /-及び非トランスジェニック対照p38γ / 及びp38γ / マウスにおけるシータ(4-12Hz)及びガンマ(25-100Hz)振動、ガンマ振幅エンベロープ及びシータ位相についてのバンドパスフィルタリングされたシグナルの代表的な生発作間脳波(LFP)の図である。
【0068】
図9-2】図9Bは、発作間EEGのスペクトルパワー分析が、p38γ+/+及びp38γ-/-記録(n=6)に比較して、APP23.p38γ+/+及びAPP23.p38γ-/-における低いシータ頻度への移行を示したことを示すグラフである。点線のボックスは、低及び高シータバンドをマークする。図9Cは、p38γ+/+及びp38γ-/-記録に比較して、APP23.p38γ+/+及びAPp23.p38γ-/-(より高い)における低周波数シータ(4-8Hz)のスペクトルパワーの定量化(曲線下の面積、AUC)を示すグラフである(*** P <0.001)。図9Dは、p38γ+/+及びp38γ-/-記録に比較して、図9Bにおける高周波シータパワー(8-12Hz)のスペクトルパワーが低められたことを示すグラフである(*** P <0.001;ns、有意ではない)。APP23マウスにおける高周波イータ(8-12Hz)の異常パワーは、p38γの欠失により影響されなかったことに留意すること。
【0069】
図9-3】図9Eは、APP23.p38γ+/+、APp23.p38γ-/-、p38γ+/+及びp38γ-/-記載(n=6-8)における発作間EEGのガンマスペクトルパワー分析を示すグラフである。点線のボックスは、ガンマバンドを示す。図9Fは、図9Eに示されるグラフの定量化(AUC)を示すグラフである。結果は、p38γ+/+及びp38γ-/-記録に比較して、APp23.p38γ+/+及びAPP23.p38γ-/-におけるガンマ(25-100Hz)の高められたスペクトルパワーを示した(*** P <0.001)。
【0070】
図9-4】図9Gは、p38γ+/+(n=6)及びp38γ-/-(n=6)マウスに比較して、位相振幅カップリング(CFC)のAPP23.p38γ+/+(n=8)における低下及びAPP23.p38γ-/-(n=8)における欠損を示す発作間海馬LFP記録について計算された位相振幅プロットを示すグラフである。
【0071】
図10図10Aは、全長(FL)WT及びCA p38γの両者が、PSD-95及びp38γ変異体によりトランスフェクトされた細胞からPSD-95と共に沈殿したイムノブロットを示す。注目すべきことには、WT及びCA p38γの両者におけるC末端PDZ結合モチーフ(ΔPm)の欠失がPSD-95との相互作用を無効にした。図10Bは、WT及びCA p38γの両者が、V5標識tau及びp38γ変異体によりトランスフェクトされた細胞から、tauと共に沈殿したイムノブロットを示す。GAPDHは、同等の負荷を確認した。図10Cは、PSD-95及びtau(h Tau40)によりトランスフェクトされた細胞からのPSD-95/tau複合体の免疫沈澱(IP)を示す。緩和された野生型p38γ(WT)及び構成的活性なp38γ(CA)の同時トランスフェクションは、PSD-95/tau相互作用を無効にした。GAPDHは、同等の負荷を確認した。図10Cはまた、IPにおいて検出されるようなPSD-95に結合されたtauの定量を示すグラフを示す(n = 5; *** P <0.001; ** P <0.01)。図10Dは、V5標識tau、Fyn及びp38γ変異体によりトランスフェクトされた細胞から、tauと共に沈殿された、Fyn、及びWT及びCA p38γの両者を示すイムノブロットである。GAPDHは、同等の負荷を確認した。
【0072】
図11図11Aは、tauドメイン、及び非-SP/TP及びSP/TP部位を含む主要リン酸化部位の概略図である。N1/N2:エキソン2/3によりコードされるN末端挿入体;Pro:プロリンに富むドメイン;R1-4:微小管結合反復体。図11Bは、アデノシン三リン酸(ATP)の不在(-)又は存在(+)下で、組換えtau及びp38γを用いてのインビトロキナーゼアッセイの結果であり、続いて、p38γ、tau(Tau13)及びリン酸化部位特異的抗体についてのイムノブロティングは、S199、T205、S396及びS404でのtauのリン酸化を示したが、しかしp38γにより試験された他の部位では検出されなかった。図11Cは、p38γによるS199、T205、S396及びS404の部位特異的リン酸化を確認したATPの不在(-)又は存在(+)下でアラニン及びp38γに変異される、示されたセリン/トレオニンを有する組換え野生型tau又は変異体を用いてのインビトロキナーゼアッセイの結果である。
【0073】
図12図12Aは、0.05μMのAβ42又はビークルに暴露されたヒト野生型(WT)、T205A又はT205E変異体tauのアデノ随伴ウィルス(AAV)媒介発現を伴う海馬ニューロンを示す。細胞毒性は、WT及びT205AにおけるEthD1取り込みにより24時間後、検出されるが、しかしT205Etau発現ニューロンでは検出されなかった。スケールバー、10μm。図12Bは、WT、T205A及びT205Etauの類似する発現が海馬ニューロンに観察されたイムノブロットを示す。GAPDHは、同等の負荷を確認した。
【0074】
図13図13は、図5Gに示される細胞の低倍率を示す:内在性p38γ(図1参照)と同時に、AAV発現WT及び構成的活性(CA)なp38γの両者は、培養海馬ニューロン(β3Tub、β3-チューブリン)の樹状突起棘に局在した。対照ニューロンはAAV-GFPを発現した。スケールに、10μm。破線は、図5Gにおいて高倍率で示される光学フィールドを示した。
【0075】
図14図14Aは、AAVコンストラクトにより感染されたマウスの前脳を示す。脳は、GFP又はHA-p38γの広範なAAV媒介性発現を示す。NC、負の対照。スケールバー、250μm。破線はインセットを示す。図14Bは、p38γCAよりも高いp38γ発現を示す、GFP担持AAV、HA標識p38γ又はHA標識p38γCAにより頭蓋内注射されたマウスの皮質溶解物のイムノブロットである。GAPDHは、同等の負荷を確認した。Ctrl、 HA-p38γによりトランスフェクトされた細胞殻の溶解物。
【0076】
図15図15は、平均発作重症度が、GFP発現対照に比較して、PTZ(50mg/kg、腹腔内)を投与された、p38γCAのAAV媒介性発現を伴うC57Bl/6マウスにおいて有意に低められたことを示すグラフである(n = 8~10; P <0.05)。
【0077】
図16図16-18は、モリス-水-迷路(MWM)を用いてのAPP23.AAVGFP、AAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAマウスにおける空間作業記憶欠損を示す。図16Aは、APP23.AAVGFP、AAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAについての代表的MWM経路トレースである。破線の四角は隠れたプラットフォームの位置である。また、APP23.AAVGFPマウスに比較して、逃避潜伏期がAAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAにおいて低められたことを示すグラフもまた示されている。
【0078】
図17図16-18は、モリス-水-迷路(MWM)を用いてのAPP23.AAVGFP、AAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAマウスにおける空間作業記憶欠損を示す。図17は、APP23.AAVGFPマウスに比較して、プローブ試験の間、標的化(Q1)でより長い時間を費やし、そして反対の象限(Q4)でより短い時間を費やしたAAVB38γCAマウスを示すグラフである。
【0079】
図18図16-18は、モリス-水-迷路(MWM)を用いてのAPP23.AAVGFP、AAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAマウスにおける空間作業記憶欠損を示す。図18は、APP23.AAVGFPマウスに比較して、AAVGFP、AAVp38γCA、及びAPP23.AAVp38γCAにおいて3日以上の逃避潜伏期が低められたことを示すグラフである。
【0080】
図19図19は、50mg/kgのPTZの投与によるPTZ誘発性発作の後、(A)発作潜伏期及び発作グレード、(B)((A)の勾配の線形回帰)及び平均発作重症度に対する、tau / マウスにおけるtau野生型(tau / .AAVtauWT)、GFP(tau / .AAV GFP)、tauT205A(tau / .AAVtauT205A)、又はtauT205E(tau / .AAVtauT205E)のAAV媒介発現の効果を示すグラフである。
【0081】
図20図20は、(A)交差周波数カップリング(CFC)の画像であり;そして(B)は、APP23.AAVGFP、AAV GFP、及びAAV.p38γCAに比較して、APP23.p38γCAマウスにおける変調指数を示すグラフである(n=5-6、左)。P<0.05;ns:有意ではない。エラーバーはSEMを示す。
【0082】
図21】(A)は、(B)におけるpPAL試験に使用されたBussey-Saksidaタッチスクリーンオペラントチャンバーにおける差動ペア関連学習(dPAL)タスク(differential paired associate learning task)における刺激画像-位置ペアリング可能性を示す。+は、正しい画像位置ペアリングを示し、そして-は、間違ったペアリングを示す。6つの画像位置ペアリングが試験間で無作為化された;(B)は、タッチスクリーンオペラントチャンバー試験の間、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、p38γ / 及びp38γ / マウスにおける経時的な正しいpPAL試験の数のグラフであり;そして(C)は、(B)における1分当たりの正確な試験の曲線分析下の面積を示すグラフである(n=8-10);*** P <0.001、** P <0.01、 P <0.05、ns:有意ではない;(左)二元配置ANOVA:F(3,941)= 60.90; a = 0.05;Sidak post-hoc; (右)一元配置ANOVA:F(3,41)= 11.43; a = 0.05;Sidak 事後(post-hoc)。
【0083】
図22図22A-Cは、APP23.p38γ-/-マウスにおける識別記憶の軽度の障害を示す、Bussey-Saksidaタッチスクリーンオペラントチャンバーにおけるペアワイズ識別タスクの結果を示す。(A)は、ペアワイズ識別タスクの分析に使用された刺激を示し;(B)は、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、p38γ / 及びp38γ / マウスについての連続試験日についての1分当たりの正しい試験回数のグラフを示し(n = 8; APP23.p38γ / 対p38γ / についてのP <0.05; α= 0.05; F(3,100)= 3.561; Sidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA);そして(C)は、(B)における1分間の曲線当たりの正しい試験の曲線分析下の面積(AUC)を示すグラフである(n = 8; APP23.p38γ / 対p38γ / についてのP <0.05; α= 0.05; F(3,28)= 2.984; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0084】
図23】(A)は、表3に記載される異なる神経病理学的病期(Braak-I-VI)でのヒト対照(Braak 0)及びアルツハイマー病に罹患したヒトからの脳抽出物の代表的ウェスターンブロットの画像であり、(B)は、GAPDHに標準化された(A)におけるウェスターンブロットにおけるp38γのレベルを示すグラフであり、(A)及び(B)の両者とも、ADの進行と共にp38γの著しく低められたレベル、及び早期病期での低減に向かう傾向を示す(n = 4-5/グループ;P <0.05; ns、有意ではない;a=0.05;α= 0.05; F(3,13)= 5.435; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0085】
図24図2は、生後4ヶ月の非トランスジェニック対照p38γ / 及びp38γ / 及びAPP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスにおける代表的EEG(LFP)トレースの画像である。tauの欠失は不在の過敏性活性をもたらすことを注意すること(灰色のボックス)。
【0086】
図25図25は、p38γ / 、p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスにおける過敏性癲癇様活性の数(スパイク/分)を示すグラフである。APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスにおける過敏性癲癇様活性は、非トランスジェニック対照P38γ+/+及びp38γ-/-マウスに見られるレベルみに類似した(n=6-8;***P <0.001; ns、有意ではない;α= 0.05; F(3,223)=45.12; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0087】
図26図26は、(A)APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 、APP23.p38γ / .tau / 、p38γ / 、及びp38γ / 記録の発作間区間におけるシータ周波数(4-12Hz)のスペクトルパワー分析を示すグラフである(n=6-8)。APP23記録における低いシータ周波数(4-8Hz)へのシータシフトは、APP23.p38γ / .tau / 、及びAPP23.p38γ / .tau / におけるtauの欠失の際に逆転されなかったことを留意すること。点線ボックスは、低及び高シータバンドをマークし;そして(B)APP23.p38γ+/+及びより多くのAPP23.p38γ-/-の発作間区間のガンマスペクトルパワー(25-100Hz)は、APP23.p38γ+/+.tau-/―及びAPP23.p38γ-/-.tau-/-において、p38γ+/+及びp38γ-/-記録のレベルに戻った(n=6-8)。点線のボックスは、ガンマバンドを示す。
【0088】
図27図27は、発作間海馬LFP記録の代表的な位相振幅コモドログラムの画像が、p38+/+及びp38γー/-マウスに比較して、それぞれ、APp23.p38γ+/+及びAPP23.p38γ-/-における低められた及び実質的に失われた交差周波数カップリング(約8Hz)を示した画像である。tauの決失は、APP23.p38γ+/+.tau-/-及びAPP23.p38γ-/-.tau-/-記録の両者において、修復された交差周波数カップリングをもたらした(n=6-8)。
【0089】
図28図28は、(A)APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 、APP23.p38γ / .tau / 、p38γ / 、及びp38γ / マウスからの記録におけるシータ相及びガンマ振幅のカップリングのための平均変調指数を示すグラフである(n=6-8;***P <0.001; **P <0.01;ns、有意ではない;α= 0.05; F(5,111)=17.31; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。tauの決失は、APP23.p38γ+/+.tau-/-及びAPP23.p38γ-/-.tau-/-マウスの両者において、修復された及び類似する交差周波数カップリングをもたらし;そして(B)発作間海馬LFPについて計算されたしイータ相を通してのガンマ振幅の関係を示す位相-振幅プロットは、p38γ+/+(n=6)及びp38γ-/-(n=6)マウスに比較して、位相-振幅カップリング(CFC)のAPP23.p38γ+/+(n=8)における低下及びAPP23.p38γ-/-(n=8)における欠失を示す。しかしながら、tauの決失は、APP23.p38γ+/+.tau-/-及びAPP23.p38γ-/-.tau-/-記録の両者においてシータ相を通しての回復されたカップリングをもたらす(α= 0.05; F(5,2790)=0.003418; 相ビン(phase bin)当たりのSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。
【0090】
図29図29A-Cは、モリス-水-迷路パラダイム用いて、生後12ヶ月のp38γ / 、p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / マウスにおける記憶障害に対するtauの遺伝子欠失の効果の詳細を示すグラフである。(A)は、プローブ試験の間、すべての4つの水迷路象限(Q1-4)における時間を示すグラフである(n=6-8;**P <0.01; P <0.05;ns、有意ではない;α= 0.05; F(5,184)=0.002783; Sidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。(B)は、視覚的コンピテンシーを確認する、視覚的な手掛かりプラットフォーム試験の間、逃避潜伏期は類似したことを示すグラフである(n=6-8;**P <0.01(試験1におけるAPP23.p38γ / .tau / 対APP23.p38γ / ); ns、有意ではない(P=0.5092;試験3におけるAPP23.p38γ / .tau / 対APP23.p38γ / );n=6-10;α= 0.05; F(5,145)=7.091; 試験当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。(C)は、平均水泳速度が、運動能力を確認する、MWM試験の間、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / 、APP23.p38γ / .tau / 及びAPP23.p38γ / .tau / 、p38γ / 、及びp38γ / マウス間で類似したことを示すグラフである(n=6-8;α= 0.05; F(5,169)=0.4651;Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0091】
図30図30(A)は、C57Bl/6卵母細胞中への前核注入によるp38γCAマウスの生成のためのトランスジェニックコンストラクトの使用の概略図である。構成的に活性化するD179A天然変異を含むHA標識p38γが、ニューロン特異的ネズミThy1.2(mThy1.2)プロモーターの制御下で発現され、続いてウシ成長ホルモンポリアデニル化(pA)配列が発現された。(B)非トランスジェニック(-)及びp38γCA.3(+)トランスジェニックマウス系の皮質(CTX)、海馬(CH)及び小脳(CB)脳抽出物のイムノブロットは、HA標識p38γCAの発現を確認した。293T細胞において発現されたHA-p38γCAが、正の対照として使用された。(C)非トランスジェニック(-)及びトランスジェニックp38γCAマウスのp38γCA(+)脳からのp38γの免疫沈殿を示す画像は、リン酸化p38に対する抗体により検出されるように、p38γCAサンプルのすべてにおいて活性p38γを示し、このことは、トランスジェニックが活性p38γを発現することを示している。
【0092】
図31図3は、(A)PSD-95及びFynと共に個々のtau変異体を同時発現する、293T細胞におけるPSD-95/tau/Fyn複合体による、突然変異されたtau変異体の同時免疫沈澱の代表的なウェスターンブロットである。T205Etau変異体のみが、PSD-95及びFynとの複合体形成を無効にし;そして(B)は、(A)に示されるような4つの独立した実験の定量を示すグラフである。PSD-95/tau/Fyn複合体形成は、T205Etau変異体の存在下でのみ有意に破壊された(n=4; P <0.05(WT対T205Eについて);ns、有意ではない;α= 0.05;F(18,79)=1.003;Sidakの複数比較試験によるANOVA)。
【0093】
図32図32は、(A)AAV送達WT tau、T205A及びT205E(示されるような)は、出生後0日で頭蓋内に注入された生後4ヶ月のtau/-マウスの皮質において広く発現されることを示す画像である。tauは、AAV GFP(tau/-.AAVGFP)を注入されたtau-/-脳に検出されなかった。DAPI、核。スケールバー、50μm;(B)は、マウスの脳におけるGFP又はHA-p38γの広範なニューロンAAV介在性発現を示すGFP又はHAの染色を示す画像である。スケールバー、25μm。(C)は、出生後0日で、AAV担持のGFP、HA標識p38γ又はHA標識p38γCAにより頭蓋内注射されたマウスの皮質溶解物のイムノブロットである。HA標識p38γは、p38γCAよりも高いp38γの発現を示した。GAPDHは、同等の負荷を確認した。Ctrl、HA-p38γによりトランスフェクトされた細胞からの3つの溶解物。
【0094】
図33図33は、AAV送達p38γCAが、生後0日でAAVを頭蓋内に注射された生後6ヶ月のAPP23マウスのマウス皮質において広く発現されることを示す免疫蛍光画像である。HAについての免疫蛍光染色は、皮質全体にHA標識p38γCAの発現を示した。DAPI、核。スケールバー、50μm。
【0095】
図34図34は、AAV送達GFP又はp38γCAを発現するWT又はAPP23マウスのモリス水迷路試験の結果を示すグラフであり、ここで(A)は、マウスの象限の時間を示すグラフであり、そしてAAV送達p38γCAを発現するAPP23マウス(APP23.AAp38γCA)が、MWMプローブ試験を実施する場合、対照AAVを発現するAPP23(APP23.AAVGFP)と比較して、統合記憶を示すことを示すグラフである。プローブ試験(7日目)の間の4つの全ての水迷路象限(Q1-4)の時間が、APP23.AAVp38γCA、APP23.AAVGFP及び非トランスジェニックAAVGFP、AAVp38γCA対照について示される。APP23.AAVp38γCAマウスは、APP23.AAVGFPマウスに比較して、標的象限Q1において有意に多くの時間を費やす。AAVp38γCAマウスは、AAVGFPマウスと類似する記憶性能を示すことに留意すること(P <0.05(Q1におけるAPP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP;F(3,84)=3.494); n=6-10;α= 0.05;F(3,108)=4.454;象限当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA);(B)は、APP23.AAVp38γCA、APP23.AAVGFP、AAVGFP、AAVp38γCAが、MWMにおける3つの視覚的合図の後、類似する逃避潜伏期を示したことを示し、これは、正常な視覚的機能及び運動協調能力を示す(P <0.05(試験1におけるAPP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP;F(3,84)=3.494); ns、有意ではない(P=0.5092;試験3におけるAPP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP);n=6-10;α= 0.05;F(3,84)=0.07474;試験当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA);そして(C)は、MWM試験の間、平均水泳速度が、APP23.AAVp38γCA、APP23.AAVGFP、AAVGFP及びAAVp38γCAマウス間で類似したことを示し、これは運動能力を確認する(p=0.8389;試験3におけるAPP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP);n=6-10;α= 0.05;F(3,68)=0.2811Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0096】
図35】(A)APP23.AAVGFPマウスに比較して、APP23.AVp38γCAマウスからのEEG記録における低められた自発的スパイク、及びAAVp38γCA又はAAVGFP処理野生型マウスからのEEG記録でのスパイクは生じなかったことを示し(n=5-6;P <0.05;一元配置ANOVA;F(3,68)=301.1; α= 0.05;Sidakの事後試験);そして(B)は、AAV.GFP、AAVp38γCA、APP23.AAV.GFP及びAPP23.AAVp38γCAマウスについてのスパイク/分を示すグラフであり、これは、APP23.AAVGFPマウスに比較して、APP23.AAVp38γCAについての低められたスパイク/分を示す。
【0097】
図36図36は、4-8Hz(B)及び8-12Hz(C)でのAPP23マウスのシータ振動力の変化が、AAVp38γCA発現により影響されず、APP23.AAVp38γCA、及びAPP23.AAVGFP記録におけるレベルに匹敵することを示す(P <0.05; n=5-6;α= 0.05; F(3,47)= 3.038; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0098】
図37図37は、APP23.AAVp38γCAマウスの記録におけるガンマ発信力(25-100Hz)が、APP23.AAVGFPマウス記録に比較して、有意に低められたことを示す(**P <0.01; P <0.05; n=5-6;α= 0.05; F(3,26)= 6.930; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0099】
図38図38は、AAV送達p38γCAが、APP23マウスのEEG記録において正常な交差周波数カップリングをもたらすことを示すグラフである。位相振幅相関は、APP23.AAVp38γCA、及びAAVGFP及びAAVp38γCA記録において、シータ相に沿ったガンマ振幅の強いカップリングを示したが、APP23.AFVGFPマウスからの記録においてはそうではなかった(**P <0.01(APP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP);α= 0.05; F(3,20)= 4.793; 相ビン(phase bin)当たりのSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。
【0100】
図39-1】図39A-Eは、活性ニューロンp38γが、モリス水迷路(MWM)により試験されるように、損傷を受けた記憶機能を発症することからAPP23マウスを保護することを示す。(A)は、MWM試験におけるWT(非標識)、p38γCA.3,APP23及びAPP23.p38γCA.3マウスの水泳経路の代表的トレースであり、APP23.p38γCAマウスが、APP23マウスに比較して、モリス-水-迷路試験(5日目)において短い経路を泳ぎ、それらのマウスにおける障害のない学習/記憶を示している。p38γCA単一トランスジェニックマウスが、非トランスジェニック対照に類似する水泳経路を示しており、これは、活性ニューロンp38γが野生型バックグラウンドでの学習機能に影響を及ぼさないことを示唆している。代表的な水泳経路トレースが示されている(n=6-12)。(B)は、6日間にわたる逃避潜伏期のグラフであり、そしてより短い水泳経路と一致して、APP23.p38γCAマウスにおける逃避潜伏期が、APP23マウスにおいてよりも有意に低く、そしてp38γCA及び非トランスジェニックマウスにおいて見られる逃避潜伏期に類似することを示している(P <0.05; n=6-12;α= 0.05; F(3,168)= 4.454; Sidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。(C)は、象限における時間のグラフであり、そしてAPP23.p38γCAマウスが、APP23マウスよりも、プローブ試験の間、標的象限において有意に多くの時間を費やし、APP23.p38γCAマウスにおいて統合された記憶を示し、APP23マウスにおいてはその記憶を示していないことを示している。APP23.p38γCAマウス、単一トランスジェニックp38γCA及び非トランスジェニックマウスは、標的象限において類似する時間を費やした(P <0.05; n=6-12;α= 0.05; F(3,116)= 7.028; 象限当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。
【0101】
図39-2】図39A-Eは、活性ニューロンp38γが、モリス水迷路(MWM)により試験されるように、損傷を受けた記憶機能を発症することからAPP23マウスを保護することを示す。(D)は、すべての実験グループにおいて、3つの視覚的合図の後、逃避潜伏期が類似するレベルに収束し、APP23.p38γCA、APP23、p38γCA及び非トランスジェニックマウスにおいて正常な視覚-感覚機能及び運動-協調を示すことを示すグラフである(P <0.05(試験1におけるAPP23.p38γCA対APP23;F(3,87)=3.690); ns、有意ではない(P=0.7190;試験3におけるAPP23.p38γCA対APP23);n=6-12;α= 0.05;F(3,87)=0.369;試験当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。(E)は、MWM試験の間、平均水泳速度が、APP23.p38γCA、APP23、p38γCA、及び非トランスジェニックマウスにおいて類似し、運動能力を確認することを示すグラフである(p=0.3221;n=6-12;α= 0.05;F(3,62)=1.187;Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0102】
図40-1】図40は、(A)WT(非標識)、APP23、単一トランスジェニックp38γCA.3及びAPP23.p38γCA.3マウスからのEEG記録は、APP23.p38γCA.3マウスがAPP23記録よりも著しく低い癲癇様活性を示したことを示した(n=4-5)。(B)は、APP23記録に比較して、有意に少ない過敏性癲癇様放電がAPP23.p38γCAマウスからの記録に見出されたことを示すグラフである。単一トランスジェニックp38γCA及び非トランスジェニック対照記録は、過敏性活性を示さなかった(P <0.01;n=4-5;α= 0.05; F(3,22)= 11.38; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。(C及びD)は、APP23の高められたシータ振動力が、APp23.p38γCA記録におけるp38γCA及び非トランスジェニック記録のレベルに低められたことを示すがラフである。特に、APP23パワースペクトルにおける4-8Hzでのスペクトル分布ピークは、APP23.p38γCAスペクトルにおいて有意に低かった(**P <0.01;P <0.05;n=4-5;α= 0.05; F(3,26)=6.930; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0103】
図40-2】(C及びD)は、APP23の高められたシータ振動力が、APp23.p38γCA記録におけるp38γCA及び非トランスジェニック記録のレベルに低められたことを示すがラフである。特に、APP23パワースペクトルにおける4-8Hzでのスペクトル分布ピークは、APP23.p38γCAスペクトルにおいて有意に低かった(**P <0.01;P <0.05;n=4-5;α= 0.05; F(3,26)=6.930; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。(E及びF)は、APP23の高められたガンマ振動力(25-100Hz)が、APP23.p38γCA記録におけるp38γCA及び非トランスジェニック記録のレベルに低められたことを示すグラフである(**P <0.01;P <0.05;n=4-5;α= 0.05; F(3,47)=4.761; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0104】
図41】(A)は、交差周波数カップリングのコモドログラム(comodulogram)分析が、APP23記録とは対照的に、APP23.p38γCAマウスの記録においてガンマ振幅へのシータ振動の影響されていないカップリングを示したことを示す画像である。代表的なコモドログラムが示されている(n=4-5)。(B)は、APP23.p38γCA及びp38γCA、及び非トランスジェニック記録において、位相振幅相関が、シータ相に沿ってガンマ振幅の強いカップリングを示したことを示すグラフである(**P <0.01(APP23.AAVp38γCA対APP23.AAVGFP);n=4-5;α= 0.05;F(3,162)=3.238); 相ビン(phase bin)当たりSidakの複数比較事後試験による二元配置ANOVA)。(C)は、平均変調指数が、APP23記録に比較して、APP23.p38γCA記録において有意に高く、そして単一トランスジェニックp38γCA及び非トランスジェニック対照マウスからの記録と類似するレベルに達したことを示すグラフである(P <0.05;n=4-5;α= 0.05; F(3,9)=6.370; Sidakの複数比較事後試験によるANOVA)。
【0105】
図42図42は、非-PSD画分ではなく、p38γ+/+シナプトソーム調製物のPSD画分においてNR1及びPSD-95により富化されたp38γを示す海馬ニューロンの樹状突起棘からの抽出物のイムノブロットである(α-syn;α-シヌクレイン)。
【0106】
図43図43は、全長ヒト野生型p38γの(A)核酸配列(配列番号1)及び(B)アミノ酸配列(配列番号2)を示す。
【0107】
図44図44は、p38γCAのアミノ酸配列(配列番号3)を示す。DからAへの突然変異(D179A)の位置は、下線が引かれている。
【0108】
図45図45は、全長ヒトtauのアミノ酸配列(配列番号4)(上部)及びtauT205Eのアミノ酸配列(配列番号5)(低部)を示す。tauT205EにおけるTからEへの突然変異の位置は下線が引かれている。
【0109】
図46図46は、野生型p38γコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの地図である。1.位置200-1120、GAG-プロモーター;2. 位置 1176-2372、3xHA-p38γ-wt コード配列; 3. 位置 2395-2970、 WPRE; 4. 位置 3011-3238、bGH PA; 5. 位置 3344-3453、 ITR; 6. 位置 3655-3459、SV40 プロモーター; 7. 位置 3608-3531、SV40 ORI; 8. 位置 4644-4016、ColE1起点; 9. 位置 5455-4796、AmpR; 10. 位置 5723-5695、Ampプロモーター; 11. 位置 6546-6563、SP6。
【0110】
図47図47は、p38γCA(D179A)(p38γの構成敵活性な変異体)のコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの地図である。1.位置200-1120、GAG-プロモーター;2. 位置 1176-2372、3xHA-p38γCAコード配列; 3. 位置 2395-2970、 WPRE; 4. 位置 3011-3238、bGH PA; 5. 位置 3344-3453、 ITR; 6. 位置 3655-3459、SV40 プロモーター; 7. 位置 3608-3531、SV40 ORI; 8. 位置 4644-4016、ColE1起点; 9. 位置 5455-4796、AmpR; 10. 位置 5723-5695、Ampプロモーター; 11. 位置 6546-6563、SP6。
【0111】
図48-1】図48は、野生型p38γコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号6)である。
【0112】
図48-2】図48は、野生型p38γコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号6)である。
【0113】
図48-3】図48は、野生型p38γコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号6)である。
【0114】
図49-1】図49は、p38γCA(D179A)(p38γの構成的活性変異体)のコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号7)である。
【0115】
図49-2】図49は、p38γCA(D179A)(p38γの構成的活性変異体)のコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号7)である。
【0116】
図49-3】図49は、p38γCA(D179A)(p38γの構成的活性変異体)のコード配列を含むアデノ随伴ウィルスベクターpAM-CAGの核酸配列(配列番号7)である。
【発明を実施するための形態】
【0117】
本発明は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態を治療又は予防する方法に関する。本発明者は、tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化の促進(ここで、前記アミノ酸配列残基のリン酸化は、対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す)、又は対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体の導入が、tau依存性シグナル伝達複合体、例えばADにより媒介される神経学的状態を治療又は予防するために使用され得ることを見出している。
【0118】
tau依存性シグナル伝達複合体は、ニューロンにおける興奮毒性を媒介することができる、典型的には、N-メチル-Dアスパラギン酸受容体(NMDA受容体)に関連する後シナプスシグナル伝達複合体である。シグナル伝達複合体は、細胞におけるシグナルの変換に関与するタンパク質の複合体である。tau依存性シグナル伝達複合体は、シグナルを変換するために、tauを必要とする。tau依存性シグナル伝達複合体は、典型的には、複合体中の成分としてtauを含む。
【0119】
興奮毒性は、ニューロンがグルタミン酸作動性受容体、例えばNMDA受容体の過剰刺激により損傷されるか又は死滅され、そして後シナプス空間においてシグナル伝達複合体を介して媒介される工程を言及する。興奮毒性からのニューロン損傷は、多くの神経学的状態に関連している。脳卒中患者のニューロン損傷は、虚血性脳卒中直後に放出される過剰量の細胞外グルタミン酸によるグルタミン作動性受容体及び関連するシグナル伝達複合体の過剰活性化により、少なくとも部分的に引起されると思われる。癲癇におけるニューロン損傷はまた、癲癇発作の間、グルタミン酸の放出に続いてグルタミン作動性受容体及び関連するシグナル伝達複合体により引起される興奮毒性に起因すると思われる。
【0120】
tau依存性シグナル伝達複合体はまた、アルツハイマー病(AD)におけるアミロイド-β(Aβ)毒性を媒介すると考えられている。アルツハイマー病(AD)においては、アミロイド-β(Aβ)は、MMDA受容体、PSD-95、tau及びFYNを含むシグナル伝達複合体を介してニューロンにおいて毒性を誘発することが示されている。
【0121】
tau依存性シグナル伝達複合体は典型的には、tauである。1つの実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体は、PSD-95及びtauを含む。1つの実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体は、PSD-85、FYN及びtauを含む。典型的には、tau依存性シグナル伝達複合体は、NMDA受容体、PSD-95、tau及びFYNを含む。
【0122】
神経学的状態は、tau依存性シグナル伝達複合体により媒介される任意の神経学的状態であり得る。典型的には、神経学的状態は、tau依存性シグナル伝達複合体の過剰活性化からのニューロン損傷により引起される。そのような状態の例は、例えばアルツハイマー病、前頭側頭型痴呆、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、パーキンソン病、脳卒中による神経損傷及び癲癇の神経損傷を包含する。
【0123】
1つの実施形態によれば、神経学的状態は、アルツハイマー病である。
【0124】
1つの実施形態によれば、神経学的状態は、脳卒中である。
【0125】
1つの実施形態によれば、神経学的状態は、癲癇である。
【0126】
1つの実施形態によれば、前記方法は、tauの1又は2以上のアミノ酸残基のリン酸化を促進するために対象を治療することを含み、ここで前記アミノ酸残基のリン酸化は、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す。本明細書において使用される場合、「tau依存性シグナル伝達複合体の破壊」とは、tau依存性シグナル伝達複合体が興奮毒性及びAβ毒性を媒介するのを防止し、そしてシグナル伝達複合体の不安定化、解体又は防止を含む効果をいう。1つの実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すためにリン酸化されるtauの1又は2以上のアミノ酸残基は、MAPキナーゼp38γによりリン酸化される1又は2以上のアミノ酸残基である。1つの実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すためにリン酸化されるtauの1又は2以上のアミノ酸残基は、位置205でのトレオニン(T205)である。1つの実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すためにリン酸化されるtauの1又は2以上のアミノ酸残基は、位置205でのトレオニン(T205)、及び位置199でのセリン(S199)、位置396でのセリン(S396)及び位置404でのセリン(S404)からなる群から選択される1又は2以上のアミノ酸残基である。種々の実施形態によれば、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すためにリン酸化されるtauの1又は2以上のアミノ酸残基は、以下である:(a)T205;(b)T205、S199;(c)T205、S199、S396;(d)T205、S199、S396、S404;(e)T205、S199、S404;(f)T205、S396、S404;(g)T205、S396; 又は(h)T205、S404。
【0127】
1つの実施形態によれば、対象は、1又は2以上のアミノ酸残基でtauのリン酸化を促進するために治療され、ここでアミノ酸残基のリン酸化は、対象の脳のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す。
【0128】
1つの実施形態によれば、対象は、1又は2以上のアミノ酸残基でリン酸化されたtauを高める剤を投与することにより治療され、ここでアミノ酸残基のリン酸化は、対象の脳のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す。
【0129】
前記剤は、例えば核酸配列、核酸類似体、タンパク質、ペプチド又は小分子を含むことができる。典型的には、剤の投与は、対象のニューロン中に剤を導入する。
【0130】
いくつかの実施形態によれば、剤は、対象のニューロン中に導入される核酸配列を含む。次に、その核酸はニューロンにおいて転写され、そして翻訳される。
【0131】
いくつかの実施形態によれば、血液-脳バリアを通過するか、又は血液-脳バリアを横切るように処方され得る。
【0132】
本明細書において使用される場合、「対象(subject)」とは、哺乳類である。哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、ヒツジ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、又はニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体により媒介される神経学的状態に苦しんでいる任意の他の哺乳類であり得る。典型的には、対象はヒトである。
【0133】
1つの実施形態によれば、対象は、対象のニューロンにおいて、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤の投与により治療される。ERK6、SAPK3及びMAPK12としても知られているp38γは、マイトジエン活性化タンパク質キナーゼ(MAPタンパク質)である。1つの実施形態によれば、p38γは哺乳類からである。例えば、p38γは、ヒト、マウス、イヌ、ネコ、ブtauシ、ラット、非ヒト霊長類、ヤギ、ヒツジからであり得る。典型的には、p38γは、ヒトp38γである。野生型p38γは、モチーフTGYにおけるチロシン及びトレオニン残基のリン酸化を通して活性化される。野生型p38γは、活性化に続いてtauをリン酸化する。p38γの活性化は、MAPKキナーゼMAP3Kによるリン酸化に基いて活性化されるMAPキナーゼMKK3及びMKK6により行われる。
【0134】
実施例に記載されるように、本発明者は、p38γによるtauのリン酸化が、アルツハイマー病のマウスモデルの培養されたニューロンにおけるNR/PSD-95/tau/FYN複合体の破壊をもたらし;アルツハイマー病のマウスモデルの培養されたニューロンにおけるAβ-誘発毒性を制限し;そして興奮毒性及び癲癇のマウスモデルにおけるペンチレンテトラゾール(PTZ)誘発発作の重症度を低めることを見出した。本発明者は、マウスのニューロン中へのp38γ、又はp38γの構成的活性変異体を導入することにより、ニューロン中のNR/PSD-95/tau/FYN複合体が破壊され、そしてAβ誘発された興奮毒性がアルツハイマー病のマウスモデルにおいて低められ、そして興奮毒性及び癲癇のマウスモデルにおけるペンチレンテトラゾール(PTZ)誘発性発作の重症度が低められることを示している。
【0135】
ニューロンにおいてp38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤は、(a)
ニューロンにおいて、p38γの量、典型的には活性p38γの量を高め;そして(b)ニューロンにおいて、p38γの変異体の量、典型的には、p38γの活性変異体の量を高め;そして/又はニューロンにおけるp38γ活性化の量を高め;そして/又は(d)変異体が活性変異体でない場合、ニューロンにおけるp38γの変異体の活性化の量を高める剤であり得る。本明細書において使用される場合、「p38γ活性(p38γactivity)」とは、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す、活性化されたp38γの活性である。典型的には、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起す、活性化されたp38γの活性は、T205でのtauのリン酸化であり、そして任意には、例えばS199、S396及びS404から成る群から選択された1又は2以上のアミノ酸残基でのtauのリン酸化である。「p38γの変異体の活性(activity of a variant of p38γ)」とは、p38γ活性と同じか、又は実質的に類似するp38γの変異体の活性を言及する。p38γの変異体は、活性化しないで、p38γ活性を有することができ(例えば、活性変異体、例えば構成的活性変異体)、又は活性化に続いてp38γ活性を示すことができる。p38γ活性は、処置の後、ニューロンにおけるp38γ活性の量が、処置の前のニューロン中のp38γ活性の量と比較して高められる場合、ニューロンにおいて高められる。p38γの変異体は、処置の後、ニューロンにおける変異体の活性の量が、処置の前ニューロン中の変異体の活性の量と比較して高められる場合、ニューロンにおいて高められる。p38γ活性、又はp38γの変異体の活性は、以下を高める剤を投与することにより高められ得る:
(a)内在性p38γの発現(転写及び/又は翻訳)を高めるなどのニューロンにおける内在性p38γの量;及び/又は
(b)ニューロンにおける外因性p38γの量;及び/又は
(c)ニューロンにおけるp38γの変異体の量;及び/又は
(d)ニューロンにおける、内在性p38γ、外因性p38γ及び/又はp38γの変異体の活性化。
【0136】
1つの実施形態によれば、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性は、ニューロンにおいて、外因性p38γ、又はその変異体の量を高める剤を投与することにより増強される。外因性p38γ又はその変異体の量は、ニューロン中にp38γ又はその変異体を導入することにより、又はp38γ又はその変異体を発現できる核酸をニューロン中に導入することにより増強され得る。
【0137】
従って、1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤は、p38γタンパク質又はその変異体、又は対象のニューロンにおいてp38γ又はその変異体を発現できる核酸を含むことができる。本明細書に記載される実施例に使用される、全長野生型ヒトp38γのアミノ酸配列と共に、全長野生型ヒトp38γをコードする核酸配列が、図43に示される。ヒトp38γの天然に存在するイソフォーム及び変異体もまた知られている(例えば、Genbank受託番号 NP_001290181、CR456515)。tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauのアミノ酸残基でリン酸化するp38γの天然のイソフォーム又は変異体が、本明細書に記載される方法に使用され得ることが想定される。
【0138】
1つの実施形態によれば、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤は、p38γ又はその変異体をコードする核酸を含む。当業者は、p38γ又はその変異体のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を決定することができるであろう。例えば、p38γをコードする核酸配列は、ヒトp38γの野生型コード配列(配列番号1)に対して約60%~100%同一の範囲にある核酸配列を含むことができる。例えば、p38γをコードする核酸は、標準パラメーターを用いて、本明細書に記載されるアラインメントプログラムの1つを使用して、p38γの野生型コード配列に対して、少なくとも60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%99% 又は100%の配列同一性を有することができる。当業者は、それらの値が、コドン縮重、リーディングフレーム位置決定などを考慮して、ヌクレオチド配列によりコードされるタンパク質の対応する同一性を決定するために適切に調整され得ることを認識するであろう。
【0139】
1つの実施形態によれば、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤は、p38γの変異体を含む。1つの実施形態によれば、p38γ活性、又はp38γの変異体の活性を高める剤は、p38γの変異体をコードする核酸を含む。本明細書において使用される場合、p38γの変異体は、1又は2以上のアミノ酸の置換、付加又は欠失により野生型ヒトp38γタンパク質とは異なり、そしてtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauのアミノ酸残基をリン酸化できるタンパク質である。典型的には、p38γの変異体は、残基T205で、及び任意には、S199、S396、S404から成る群から選択された1又は2以上の残基でtauをリン酸化する。1つの実施形態によれば、p38γの変異体は、野生型ヒトp38γのアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。1つの実施形態によれば、p38γの変異体は、配列番号2により表されるアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0140】
本明細書において使用される場合、ポリペプチドに関して「%同一性(%identity)」又は「ポリペプチドのアミノ酸配列に対して%同一である(%identical to the amino acid sequence of a polypeptide)」とは、配列比較アルゴリズム又は視覚検査により測定されるように、特定の比較窓にわたって最大の一致のために整列された場合、同じである2つの配列における残基の%を示す。
【0141】
2つのポリペプチド間の%同一性を決定するための配列比較アルゴリズムは、当業界においては知られている。そのようなアルゴリズムの例は、以下である:Myers and Miller (1988)のアルゴリズム;Smith et al. (1981)の局所相同性アルゴリズム;Needleman and Wunsch (1970)の相同性アライメントアルゴリズム;Pearson and Lipman (1988)の類似性検索法;Karlin and Altschul(1993)のように修正されたPearson and Lipman (1988)のアルゴリズム。2つのポリペプチド間の%同一性を決定するためのそれらのアルゴリズムのコンピューター実装は以下を含む:例えばCLUSTAL (Intelligenetics, Mountain View, Calif.) (Pearson et al. (1994)から入手できる; ALIGN program (Version 2.0) and GAP, BESTFIT, BLAST, FASTA, and TFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package, Version 8 (available from Genetics Computer Group (GCG), 575 Science Drive, Madison, Wis., USA)。
【0142】
いくつかの実施形態によれば、p38γの変異体は、p38γの一部を含むことができる。1つの実施形態によれば、p38γの変異体は、PDZ相互作用モチーフを含む。PSD-95はPDZモチーフを含み、そしてp38γは、PDZ相互作用モチーフを通して少なくとも部分的に、PSD-95と相互作用すると考えられている。p38γのPDZ相互作用モチーフは、p38γ分子のC末端部分における短いアミノ酸配列である(図1を参照のこと)。典型的には、PDZ相互作用モチーフは、アミノ酸配列ETPL又はETALを含む。種々の実施形態によれば、p38γの変異体は、以下から成る群から選択されたアミノ酸配列を含む:ETPL (配列番号8)、KETPL (配列番号9)、SKETPL (配列番号10)、VSKETPL (配列番号11)、RVSKETPL (配列番号12)、ARVSKETPL (配列番号13)、GARVSKETPL (配列番号14)、LGARVSKETPL (配列番号15)、QLGARVSKETPL (配列番号16)、RQLGARVSKETPL (配列番号17)、PRQLGARVSKETPL (配列番号18)、PPRQLGARVSKETPL (配列番号19)、KPPRQLGARVSKETPL (配列番号20)、FKPPRQLGARVSKETPL (配列番号21)、SFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号22)、LSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号23)、VLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号24)、EVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号25)、KEVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号26)、YKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL(配列番号27)、TYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号28)、VTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号29)、RVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号30)、KRVTYKEVLSFKPPRQLGARVSKETPL (配列番号31)、ETAL (配列番号32)、KETAL (配列番号33)、PKETAL (配列番号34)、VPKETAL (配列番号35)、RVPKETAL (配列番号36)、ARVPKETAL (配列番号37)、GARVPKETAL (配列番号38)、LGARVPKETAL (配列番号39)、QLGARVPKETAL (配列番号40)、RQLGARVPKETAL (配列番号41)、PRQLGARVPKETAL (配列番号42)、PPRQLGARVPKETAL (配列番号43)、KPPRQLGARVPKETAL (配列番号44)、FKPPRQLGARVPKETAL (配列番号45)、SFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号46)、LSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号47)、VLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号48)、EVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号49)、KEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号50)、YKEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号51)、TYKEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号52)、VTYKEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号53)、RVTYKEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号54)、及びKRVTYKEVLSFKPPRQLGARVPKETAL (配列番号55)。
【0143】
いくつかの実施形態によれば、p38γの変異体はp38γの一部を含むことができるが、しかしそうでなければ、野生型p38γとは異なる。これに関して、本発明者は、p38γの変異体が、p38γのPDZ相互作用モチーフが他のキナーゼ、例えばMAPキナーゼ又は他のセリン/トレオニンキナーゼ、又はそれらの活性を改変するために突然変異を担持する他のキナーゼの変異体のカルボキシ末端に融合されているタンパク質を含むことができることを想定する。例えば、p38γ変異体は、p38γ、p38β及びp38δ、又はそれらの活性を改変するために突然変異を担持するp38γ、p38β及びp38δの変異体から成る群から選択されたキナーゼのカルボキシ末端に融合されたp38γのPDZ相互作用モチーフを含むことができる。
【0144】
1つの実施形態によれば、p38γの変異体は、p38γの活性変異体である。p38γの活性変異体は、p38γ活性を示すために、MAPキナーゼ、キナーゼMKK3及びMKK6による活性化を必要としない変異体である。1つの実施形態によれば、p38γの活性変異体は、p38γの構成的活性変異体である。p38γの構成的活性変異体は、構成的に活性であり、そして従って、MAPキナーゼ、キナーゼMKK3及びMKK6による活性化を必要としないp38γの変異体である。典型的には、構成的活性変異体は、連続活性をもたらす1又は2以上のアミノ酸配列置換を含む。1つの実施形態によれば、p38γの構成的活性変異体は、D179Aのアミノ酸置換を含む。p38γの構成的活性変異体の例のアミノ酸配列は、図44に示される(配列番号3)。別の実施形態によれば、p38γの構成的活性変異体は、F330L/Sのアミノ酸置換を含むことができる。p38γにおけるF330L/Sの置換は、P38α F327L/Sの構成的活性変異体の置換に対応する。
【0145】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、典型的には、p38γの構成的活性変異体を発現する核酸配列を投与することを含む、対象におけるアルツハイマー病の治療方法が提供される。
【0146】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、典型的には、p38γの構成的活性変異体を発現する核酸配列を投与することを含む、対象における脳卒中の治療方法が提供される。
【0147】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、典型的には、p38γの構成的活性変異体を発現する核酸配列を投与することを含む、対象における癲癇の治療方法が提供される。
【0148】
1つの実施形態によれば、対象は、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を、対象のニューロン中に導入する剤を投与することにより治療される。本明細書において使用される場合、「tauの変異体(variant of tau)」とは、全長野生型tauの1又は2以上のアミノ酸置換、挿入又は欠失を含むtauタンパク質であり、ここで前記1又は2以上の欠失は、100個以下の連続アミノ酸であり、典型的には90、80、70、60、50、40、30、20、又は10個以下の連続アミノ酸である。1つの実施形態によれば、tauの変異体は、野生型tauの1又は2以上のアミノ酸置換又は挿入を含む。1つの実施形態によれば、tauの変異体は、野生型tauの1又は2以上のアミノ酸置換を含む。1つの実施形態によれば、tauの変異体は、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauのリン酸化模倣体である。本明細書において使用される場合、tauのリン酸化模倣体は、1又は2以上のアミノ酸置換を含むtauの変異体であり、そしてそれは、特定のアミノ酸での非置換tauのリン酸化の後、非置換tauのリン酸化模倣体と同じか又は実質的に同じ態様で機能する。リン酸化模倣体は、リン酸化模倣置換を含む。
【0149】
実施例に記載されるように、本発明者は、海馬ニューロン中へのtauのT205E変異体の導入が、ニューロンにおけるAβ誘発毒性を低めたことを示した。tauのT205E変異体は、T205でリン酸化されたtauのリン酸化模倣体である。リン酸化模倣置換は、非置換タンパク質のリン酸化後、非置換タンパク質と同じか、又は実質的に同じ態様で機能するタンパク質をもたらすタンパク質におけるアミノ酸置換である。tauのリン酸化模倣置換は、典型的には、tauの部位で、野生型tauのリン酸化の後、野生型tauと同じか、又は実質的に同じ態様で機能するtauのタンパク質をもたらすそのtauの部位でのアミノ酸置換である。
【0150】
1つの実施形態によれば、前記方法は、tau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すか、又はその形成を低めるtauのリン酸化模倣置換を含むtauのリン酸化模倣体を導入するよう対象を処置することを含む。1つの実施形態によれば。1又は2以上のリン酸化模倣置換は、p38γによりリン酸化されるtauタンパク質のアミノ酸残基で存在する。1つの実施形態によれば、tauのリン酸化模倣置換は、tauの205位でのグルタミン酸に対するトレオニン(T205E)であり、アミノ酸番号は、441個のアミノ酸を含む最長のヒトtauイソフォームに基かれている。全長野生型ヒトtau(配列番号4)及びtauT205E(配列番号5)のアミノ酸配列は、図45に示されている。
【0151】
典型的には、tauの変異体は、ヒトtauの変異体である。他の実施形態によれば、tauの変異体は、非ヒト哺乳類からのtauの変異体であり得る。例えば、tauの変異体は、マウス、イヌ、ネコ、ブtauシ、ラット、非ヒト霊長類、ヤギ、ヒツジからのtauの変異体であり得る。
【0152】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、205位でのグルタミンに対するトレオニンのアミノ酸置換(T205E)において野生型tauとは異なるtauを発現する核酸配列を投与することを含む、対象におけるアルツハイマー病の治療方法が提供される。
【0153】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、205位でのグルタミンに対するトレオニンのアミノ酸置換(T205E)において野生型tauとは異なるtauを発現する核酸配列を投与することを含む、対象における脳卒中の治療方法が提供される。
【0154】
1つの実施形態によれば、対象のニューロンにおいて、205位でのグルタミンに対するトレオニンのアミノ酸置換(T205E)において野生型tauとは異なるtauを発現する核酸配列を投与することを含む、対象における癲癇の治療方法が提供される。
【0155】
剤が、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を、対象のニューロンにおいて発現できる核酸を含む実施形態によれば、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体をコードする核酸配列は、対象のニューロンにおいてp38γ又はその変異体、又はtauの変異体の発現を指示するために調節配列に操作可能的に連結される。対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を発現できる核酸は、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体のコード配列を含む発現カセットを含むことができる。発現カセットは、コード配列によりコードされるタンパク質を、細胞において発現するために、一緒に作用するコード配列及び調節配列を含む核酸配列である。「コード配列(cording sequence)」とは、特定のアミノ酸配列をコードするDNA又はRNA配列を言及する。それは、「中断されていないコード配列」、すなわち、例えばcDNAにおいてイントロンを欠く配列を構成するか、又はそれは、適切なスプライスジャンクションにより境界が定められた1又は2以上のイントロンを含むことができる。
【0156】
発現カセットは典型的には、調節配列を含む。「調節配列(regulatary sequence)」とは、コード配列の上流(5′非コード配列)、内部又は下流(3′非コード配列)に位置し、そして関連コード配列の転写、RNAプロセッシング又は安定性、又は翻訳に影響を及ぼすヌクレオチド配列である。調節配列は、当業界において知られており、そして例えば、転写調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、翻訳リーダー配列、イントロン、及びポリアデニル化シグナル配列を含むことができる。コード配列は、典型的には、プロモーターに操作可能的に連結される。プロモーターは、特定の条件下で、RNAポリメラーゼを結合し、そしてプロモーターの下流(3′方向)に通常位置するコード配列の転写を開始できるDNA領域である。コード配列はまた、終結シグナルに操作可能的に連結され得る。発現カセットはまた、コード配列の正しい翻訳のために必要とされる配列も含むことができる。コード配列を含む発現カセットは、キメラであり得る。「キメラ(chimeric)」ベクター又は発現カセットは、本明細書において使用される場合、少なくとも2つの異なった種からの核酸配列を含むベクター又はカセットを意味するか、又は「天然の(native)」又は野生型種には存在しない態様で連結又は会合される同じ種からの核酸配列を有する。発現カセットにおけるコード配列は、構成的プロモーター、又は特定の組織又は細胞型においてのみ又は宿主細胞が何らかの特定の刺激に暴露される場合、転写を開始する調節可能プロモーターの制御下にある。例えば、p38γをコードする核酸を含む発現カセットにおいては、コード配列は、p38γ遺伝子に対して天然ではないプロモーター、例えばニューロンにおいてコード配列を発現するか、又はニューロンにおいて誘発性であるプロモーターに操作可能的に連結され得る。適切な神経プロモーターの例は、シナプシン(SYN)、カルシウム/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMKII)、チューブリンαI(Ta1)、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、血小板由来成長因子ベータ鎖(PDGF)、MfP、dox、GFAP、プレプロケンファリン、ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ(dβH)、プロラクチン、ニワトリβアクチン、プリオンタンパク質、ネズミThy1.2、ミエリン塩基性プロモーター、又はエンハンサーと組合わされた上記のいずれか、例えば部分的なサイトメガロンウィルスプロモーターを包含する。ニューロンにおいて核酸配列を発現するために使用され得る他のプロモーターの例は、以下を包含する:SV40初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター; アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP); 単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV前初期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、合成プロモーター、ハイブリッドプロモーター、及び同様のもの。誘発性又は制御可能なプロモーターは、例えば転写活性が、ミフェプリストン、ドキシサイクリン、テトラサイクリン又はタモキシフェンの存在又は不在下で改変されるプロモーターを包含する。
【0157】
タンパク質(コード配列)をコードする核酸は、細胞におけるそのタンパク質の発現を可能にするために、調節配列に対して配列されている場合、調節配列に操作可能的に連結される。例えば、プロモーターは、そのプロモーターがコード配列の転写の開始を助ける場合、コード配列に操作可能的に連結される。
【0158】
本明細書において使用される場合、核酸配列の「発現(expression)」とは、コード配列によりコードされるポリペプチドを生成するためのコード配列を含む核酸配列の転写及び翻訳を言及する。
【0159】
1つの実施形態によれば、剤はベクターである。そのようなベクターにおいては、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体をコードする核酸配列、又はそのような配列を含む発現カセットは、適切なベクター配列中に挿入される。用語「ベクター(vector)」とは、宿主細胞、例えばニューロン中に遺伝子をトランスファーするために適切な核酸配列を言及する。用語「ベクター」は、プラスミド、コスミド、裸のDNA、ウィルスベクター等を含む。1つの実施形態によれば、ベクターは、プラスミドベクターである。プラスミドベクターは、追加の配列が挿入され得る二本鎖環状DNA分子である。プラスミドは、発現ベクターであり得る。プラスミド及び発現ベクターは、当業界において知られており、そして例えばSambrook et al. Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 4th Ed. Vol. 1-3, Cold Spring Harbor, N.Y. (2012)に記載されている。
【0160】
いくつかの実施形態によれば、ベクターは、ウィルスベクターである。ウィルスベクターは、ウィルスベクターに依存して、ウィルス粒子生成及び宿主細胞ゲノム中への組込み、及び/又はウィルス複製を可能にするウィルス配列を含む。本明細書に記載される方法及び組成物に利用され得るウィルスベクターは、ニューロン、典型的には脳のニューロン中に核酸を導入できる任意のウィルスベクターを含む。ウィルスベクターの例は、アデノウイルスベクター; レンチウイルスベクター; アデノ随伴ウイルスベクター; ラビウスウイルスベクター; 単純ヘルペスウイルスベクター; SV40; ポリオーマウイルスベクター; ポックスウイルスベクターを含む。
【0161】
1つの実施形態によれば、ウィルスベクターは、アデノ随伴ウィルスへのパッケージングするためのアデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターである。1つの実施形態によれば、AAVベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV6.2、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh10、AAVrh20、AAVrh39、AAVrh43及び AAVcy5ベクター又はそれらの変異体から成る群から選択された血清型である。1つの実施形態によれば、ウィルスベクターは、血清型AAV1、AAV9、AAVrh10 又はAAVcy5である。1つの実施形態によれば、AAVベクターの血清型は、AAV1である。別の実施形態によれば、AAVベクターの血清型は、AAV1である。別の実施形態によれば、AAVベクターの血清型は、AAV9である。別の実施形態によれば、AAVベクターの血清型は、AAVrh10である。別の実施形態によれば、AAVベクターの血清型は、AAVcy5である。細胞中に核酸を導入するための組換えAAVの使用は、当業界において知られており、そして例えば、米国特許第20160038613号; Grieger and Samulski (2005) Adeno-associated virus as a gene therapy vector: vector development, production and clinical applications(遺伝子治療ベクターとしてのアデノ随伴ウイルス:ベクターの開発、生産および臨床適用), Advances in Biochemical Engineering/Biotechnology 99: 119-145に記載されており; 組換えAAVの産生のための方法は、当該分野で公知であり、そして例えばHarasta et al (2015) Neuropsychopharmacology 40: 1969-1978に記載されている。ニューロン細胞においてp38γを発現できるアデノ随伴ウィルスベクターの例は、図46及び48(配列番号6)に示されている。。ニューロン細胞においてp38γを発現できるアデノ随伴ウィルスベクターの例は、図47及び49(配列番号7)に示されている。1つの実施形態によれば、ウィルスベクターは、配列番号6又は7を含む。1つの実施形態によれば、ウィルスベクターは、配列番号7を含む。
【0162】
別の実施形態によれば、ウィルスベクターは、レンチウィルスベクターである。レンチウィルスベクターの生成及び使用方法は、当業者において知られており、そして例えば、以下に記載されている:Naldini et al. (1996) In vivo gene delivery and stable transduction of nondividing cells by a lentiviral vector, Science, 272:263-267; Lois et al. (2002) Germline transmission and tissue-specific expression of transgenes delivered by lentiviral vectors, Science,295:868-872; Vogel et al (2004), A single lentivirus vector mediates doxycycline-regulated expression of transgenes in the brain. Hum Gene Ther. 2004;15(2):157-165。
【0163】
アデノウィルスはまた、核酸剤の送達への使用も企画される。従って、別の実施形態によれば、ウィルスベクターは、アデノウィルスベクターである。アデノウィルスベクターは、当業界において知られており、以下に記載されている:Kozarsky and Wilson, Current Opinion in Genetics and Development 3:499-503 (1993); Southgate et al. (2008) Gene transfer into neural cells in vitro using adenoviral vectors(アデノウイルスベクターを用いたインビトロでの神経細胞への遺伝子導入)、Current Protocols in Neuroscience, Unit 4 23, Chapter 4; Akli et al. (1993)Transfer of a foreign gene into the brain using adenovirus vectors(アデノウイルスベクターを用いた外来遺伝子の脳への導入). Nature genetics, 3(3): 224-228。
【0164】
別の側面は、本明細書に記載されるようなベクター、典型的には、本明細書に記載されるようなウィルスベクターを提供する。
【0165】
ウィルスベクターは典型的には、当業界において知られている方法を用いて、ウィルス粒子中にパッケージングされる。次に、ウィルス粒子は、神経細胞系、又は神経組織を含む細胞系を、インビトロ又はインビボでトランスファーするために使用され得る。従って、別の側面は、本明細書に記載されるベクターを含むウィルス粒子を提供する。
【0166】
さらなる側面は、本明細書に記載されるような剤を提供する。
【0167】
本明細書に記載される剤は、医薬組成物として製剤化され得る。従って、別の側面によれば、本明細書に記載される剤を含む医薬組成物が提供される。組成物は、医薬的に許容される担体に剤を含む。医薬的担体と共に剤を製剤化する方法は、当業界において知られており、そして例えば、以下に記載されている:Remington’s Pharmaceutical Science, (17th ed. Mack Publishing Company, Easton, Pa. 1985); Goodman & Gillman’s: The Pharmacological Basis of Therapeutics (11th Edition, McGraw-Hill Professional, 2005)。
【0168】
許容される担体、希釈剤及びアジュバントは、受容体にとって非毒性であり、そして好ましくは、使用される用量及び濃度で不活性であり、そしてリン酸、クエン酸又は他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸のような抗酸化剤;低分子量ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン又は免疫グロブリン;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン; 単糖類、二糖類、およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物; EDTAなどのキレート剤; マンニトールまたはソルビトールのような糖アルコール; ナトリウムのような塩形成対イオン;
及び/又は非イオン性界面活性剤例えばツイーン、プルロニック又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0169】
対象への剤の投与は、頭蓋内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内又は髄腔内注射によってであり得る。頭蓋内、静脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内又は髄腔内使用に適した組成物は、滅菌水溶液又は分散液、及ビ滅菌注射溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末が含まれる。医薬的に許容できる担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒径の維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましいであろう。
【0170】
剤がウィルス粒子にパッケージングされる実施形態によれば、医薬組成物は、剤を有効にする任意の濃度でウィルス粒子を含むことができる。そのような実施形態によれば、医薬組成物は、0.1重量%~99.9重量%の量でウィルス粒子を含むことができる。医薬的に許容できる担体は、水、緩衝された水、生理食塩水、例えば、通常の生理食塩水又は平衡塩類溶液、例えばハンクス又はアールの均衡溶液、グリシン、ヒアルロン酸などを含む。
【0171】
投与されるウィルス粒子の力価は、例えば使用される特定のベクター、投与様式、状態の程度、固体に依存して変化し、そして当業者において標準な方法により決定され得る。
【0172】
本明細書に記載される剤は、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、微粒子衝撃、リポソーム取り込み、ナノ粒子ベースの送達などの非ウイルス法による神経細胞への導入のために処方することができる。
【0173】
1つの実施形態によれば、本明細書に記載される剤は、1又は2以上のリポソーム、リポプレックス又は脂質ナノ粒子において処方され得る。1つの実施形態によれば、本明細書に記載される剤は、リポソームにおいて処方され得る。リポソームは、親油性物質及び水性内部から形成された膜を有する単層又は多層の小胞である。水性部分は、送達されるべき組成物を含む。リポソーム設計は、例えばリポソームの組織への付着を改善するために、又は事象、例えばエンドサイトーシスを活性化するために、オプソニン又はリガンドを含むことができる。
【0174】
リポソームの形成は、以下人存在する:物理化学的特性、例えば剤及びリポソーム成分、脂質小胞が分散されている媒体の性質、作用物質の有効濃度、小胞の適用および/または送達中に関与する任意のさらなるプロセス、最適化サイズ、多分散性および意図された適用のための小胞の貯蔵寿命、及びバッチ間の再現性及び安全かつ効率的なリポソーム生成物の大規模生産の可能性。
【0175】
剤の送達のためのリポソーム及び脂質ナノ粒子の製造方法は、公知であり、そして例えば米国特許第5,264,221号に記載されている。
【0176】
用語「投与する(administering)」とは、治療を必要とする対象に化合物又は剤を提供することを意味すると理解されるべきである。
【0177】
任意の特定の対象についての特定の用量レベル及び投与頻度は、変えられ得、そして以下の種々の要因に依存するであろうことが理解されるであろう:使用される特定の化合物又は剤の活性、の化合物又は剤の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与のモード及び時間、薬物の組み合わせ、特定の状態の重篤度、及び治療を受けている宿主。
【0178】
また、剤を含む容器を含むキットも提供される。容器は、単に、非経口剤形で剤を含むボトルであり、各財形は、剤の単位用量を含む。キットはさらに印刷された説明書を含むであろう。製品は、本方法に従って対象の治療を示すラベル又は同様のものを含むであろう。1つの形で、製品は、非経口投与の形で剤を含む容器であり得る。例えば、剤は、使い捨て容器中の注射液の形であっても良い。
【0179】
本明細書において使用される場合、「治療する(treating)」とは、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得るために対象、組織又は細胞に影響を及ぼすことを意味し、そしてその状態を阻害すること、すなわちその進行を抑制するか、又は状態の効果を軽減するか又は緩和することを包含し、すなわち状態の効果の逆転又は退行を引起す。
【0180】
本明細書において使用される場合、「予防する(preventing)」とは、状態を有する危険性がある可能性がある細胞又は対象において状態の発生を防ぐことを意味するが、しかし状態が最終的に進行しないか、又は対象が最終的に状態を発症しないことを必ずしも意味しない。予防は、細胞又は対象における状態の発症を遅らせることを包含する。
【0181】
本発明者は、p38γ又はtauの変異体が、神経患者が本明細書に記載される方法により治療されるかどうかを評価するためにトランスジェニック動物に使用され得ることを想定する。
【0182】
従って、さらなる側面は、トランスジェニック動物のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体を発現できるトランスジェニック非ヒト動物を提供する。
【0183】
1つの実施形態によれば、トランスジェニック核酸配列は、p38γ又はその変異体を発現できる核酸である。1つの実施形態によれば、トランスジェニック核酸配列は、p38γの活性変異体を発現することができる。1つの実施形態によれば、p38γの活性変異体は、p38γの構成的活性変異体である。1つの実施形態によれば、p38γの構成的活性変異体は、p38γCAである。
【0184】
動物のニューロンにおいてトランスジーンを発現するための調節配列は、上記に記載されている。
【0185】
1つの実施形態によれば、トランスジェニック動物は、マウスである。しかしながら、トランスジェニック動物は、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ又はヤギを含む任意の動物であり得ることが理解されるであろう。
【0186】
別の側面によれば、
(a)神経学的状態に罹患しているか、又は神経学的状態のモデルである表現型を示す試験動物を提供し;
(b)試験動物とトランスジェニック動物とを交配させ子孫を得、ここでトランスジェニック動物は、前記動物p38γ又はその変異体、又はtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体のニューロンにおいて発現できるトランスジェニック核酸配列を含み;そして
(c)トランスジェニック核酸配列を発現する子孫における神経学的状態の重篤度又は神経学的状態のモデルである表現型を評価する工程を含む、神経学的状態が、本明細書に記載される方法により治療されるか、又は予防され得るかどうかを評価する方法が提供される。
【0187】
以下の特許請求の範囲及び本発明の前述の説明においては、文脈が明示的な言語又は必要な示唆のために別途必要とされる場合を除いて、用語「含む(comprise)」又は変形、例えば「含む(comprises)」又は「含む(comprising)」は、包括的な意味で使用され、すなわち記載される特徴の存在を特定するが、しかし本発明の種々の実施形態におけるさらなる特徴の存在又は追加を排除するものではない。
【0188】
本明細書で言及された全ての出版物は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者であれば、広範に記載された本発明の精神または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示すように本発明に対して多数の変形及び/又は修正を行うことができることが理解されるであろう。従って、本実施形態は、すべての点で例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【0189】
発明の性質をより明確に理解できるように本発明の性質を例示するために、以下の非限定的な例が提供される。
【実施例0190】
材料及び方法
マウス:ニューロンにおいてヒトK670N/M671L変異体APPを発現するAPP23マウス(C Sturchler-Pierrat et al., Proc Natl Acad Sci U S A 94, 13287-92 (1997))、ニューロンにおいてヒト非変異体tauを発現するAlz17(A Probst et al., Acta Neuropathol 99, 469-81 (2000))、ニューロン特異的Thy1.2-creトランスジェニックマウス(I Dewachter et al., J Neurosci 22, 3445-53 (2002)), tau-/- (KL Tucker, M Meyer, YA Barde, Nat Neurosci 4, 29-37 (2001))、p38αloxP/loxP(FB Engel et al., Genes Dev 19, 1175-87 (2005))、p38β-/-及びp38γ-/-(AR Pogozelski et al., PLoS One 4, e7934 (2009))、及びp38δ-/-マウス(G Sumara et al., Cell 136, 235-48 (2009))がこれまで記載されている。p38β、p38γ及びp38δについてのノックアウトは、明らかな表現型のない包括的なものであり、ところがp38α欠失は、包括的p38αノックアウトマウスの胚死亡のためにCNSに限定されるべきであった。p38αΔneuマウスを得るために、p38αloxP/loxPを、Thy1.2-cre株と交配した。全ての系統を、C57Bl/6バックグラウンド上で維持した。動物実験は、ニューサウスウェールズ大学の動物倫理委員会により承認された。鋳型として尾生検からのイソプロパノール-沈殿されたDNAを用いて、ポリメラーゼ鎖反応により、マウスを遺伝子型決定した。PCRにより標的化された対立遺伝子及びトランスジーンを遺伝子型決定するためのオリゴヌクレオチドプライマーを、以下の表1に列挙する:
【0191】
【表1】
【0192】
トランスジェニックThy1.2-p38γCAマウスの生成。
D179A突然変異及びN末端ヘマグルチニン(HA)-タグを担持するヒトp38γコード配列を、PCRにより増幅し、そしてGibsonアセンブリー(Gibson, et al. Nat. Methods 6, 343-345 (2009)(Fig. 30A))を用いて、ニューロン発現のためのmThy1.2プロモーターを担持するプラスミドpEX12(Ittner, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 15997-16002) (2008))のXhoI部位中に挿入した。コンストラクトを、制限消化により除去し、そしてトランスジェニック創始マウスを、前核注射によりコンジェニックC57B1/6バックグラウンド上で生成した(Ittner et al. Nat. Protoc. 2, 1206-1215 (2007))。創始マウスからの尾DNAを、ゲノムトランスジーン挿入のためにPCRによりスクリーニング、そして2種の創始系(p38γCA.3及びp38γCA.4系の両者について、正常な生殖能、生存及びメンデリア導入遺伝子伝達が観察された。両系統は、明白な表現型を示さい。トランスジェニックマウス由来の皮質、海馬及び小脳抽出物のイムノブロットは、HAタグ付きp38γCAの発現を確認した(図30B)。
【0193】
発作。
発作を、以前に記載されたように(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))、ペンチレンテトラゾール(PTZ, Sigma-Aldrich)により誘発した。手短に述べると、PTZを、30又は40mg/kg体重で腹腔内注射した。発作を以下のように等級化した:0、発作はない; 1、不動; 2、尾部延長;3、前肢のクローヌス; 4、一般化されたクローヌス; 5、バウンス発作;6、完全な拡張; 7、癲癇重積状態。
【0194】
空間学習/記憶試験。
空間学習/記憶を、モリス水迷路パラダイム(CV Vorhees, MT Williams, Nat Protoc 1, 848-58 (2006))において試験した。手短に述べると、低光間接照明のある部屋において白色非反射性内面を有するマウスモリス水迷路(直径122cm、高さ50cm)用の専用水槽に、希釈された非刺激性白色染料を含む水(19-20℃)により満たした。4つの異なる遠位キューを4つの象限を反映する垂直位置でタンクを取り囲んで配置した。標的象限においては、プラットフォーム(10cm)を、水面下1cmに沈めた。ビデオを、CCDカメラで記録し、そしてAnyMazeソフトウエアを用いて分析した。空間獲得のために、セッションごとに60秒ごとに4回の試験を行った。開始位置は、すべての試験について開始象限の外側エッジに沿って無作為化された。参照メモリを試験するために、プラットフォームなしのプローブ試験を、60秒の試験期間にわたって実施し、そして記録を各象限内で費やした時間について分析した。視覚的に支持された制御獲得(視覚障害を排除するために)のために、マーカーを、プラットフォームの上部に貼り付け、そして1セッション当たり4回の試験(60秒)を行った。すべてのマウスは、年齢及び性別が一致し、そして生後4ヶ月で試験された。連続浮遊行動を示したマウスを排除した。遺伝子型は、スタッフ録音試験及びビデオトラック分析には盲目的であった。泳ぎ経路の追跡を、AnyMaze ソフトウェア(Stolting)を用いて行った。平均遊泳速度を、運動障害を排除するために決定した。
【0195】
タッチスクリーンオペラントチャンバー(Campden Instruments)を、2つ異なるパラダイムと共に、時空間記憶及び学習(差動ペアアソシエート学習、dPAL)又は認識記憶/識別学習(ペアワイズ識別タスク、PD)に対処するために使用した。前に記載されたタッチスクリーンチャンバープロトコルを使用した(Horner et al. Nat. Protoc. 8, 1961-1984 (2013))。dPALスケジュールのマウスは、以下のように事前試験手順及び訓練を受けた:食料不足(初期体重の85-90%まで)及び取扱いへの適応(0日目-4日目)、タッチスクリーンボックスへの適応(4日目)、報酬収集(イチゴミルクシェーク、Nippy’s)(5日目-8日目)、報酬訓練を収集するためにパネルを押す(9日目)、初期刺激依存性タッチ訓練(10日目)、刺激訓練に触れなければならない(11日目-16日目)、トライアルトレーニングを開始しなければならない(17日目-22日目)、誤ったタッチを罰する(23日目-26日目)、続いて、21日間連続してdPAL獲得(2日目-49日目)又は対様識別タスク獲得(27日目-31日目)。セッションの最大時間を、60分に設定した。最大試験回数を、36に設定した。全てで訓練セッションを、次の訓練パラダイムが開始される前、マウスが基準に達するまで、反復した。基準は、60分以内に36回の試験(初期タッチ訓練、訓練に触れなければならない、訓練を開始しなければならない)、又は36回の正しい試験のうち、27回の試験(誤ったタッチを処罰する)として定義された。過剰体重減少のマウスを、このプロトコルから除外した。
【0196】
行動及び運動試験
新規性-誘発された歩行運動及び不安関連行動を、前に記載されたように、オープンフィールド試験パラダイムにおいて評価した(Ke, et al. Acta Neuropathol. 130, 661-678 (2015))。手短に言うと、マウスを、40×40cmのボックスに、個々に薄暗い遮音のエンクロージャ内に配置し、そして動きを15分間、記録した。マウスは、前にオープンフィールドパラダイムにさらされていなかった。ボックスを、記録間で70%エタノールにより拭いた。動きを、AnyMazeソフトウェア(Stolting)を用いて追跡した。分析は、記録期間全体にわたって蓄積されるか、又は1分間のビンに分割された。
【0197】
運動性能を、加速モード(5-60rpm)で、120(高齢)又は180(若い)秒にわたって5輪ローターロッドトレッドミル(Ugo Bosile)上で試験した(van Eersel, et al. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 41, 906-925 (2015))。セッション当たり3回の試みのうち回し車上にとどまった各マウスの最長時間を記録した。グリップ強度を、前述のようにして決定した(Ke et al. (2015))。手短に述べると、マウスを金属線から引き離すのに必要とされる力を、グリップ強度計(Chatillon, AMETEK)を用いて測定した。マウスを、それらが、メーターに取り付けられた細い金属ワイヤー上に二重グリップを有するよう、そしてそれが離れるまで水平方向にメーターから引き離され、そしてピークの力(N)が、マウスが離れる瞬間で記録されるよう配置した。3回の試みから最大の力を記録した。
【0198】
カルシニューリン活性アッセイ
p38γ-/1及びp38γ+/+同腹子の皮質抽出物におけるカルシニューリン活性を、製造業者の説明書(Abcam)に従って決定した。
【0199】
脳波検査
自由に動くマウスにおける海馬EEG記録を、以前に記載されているようにして実施した(AA Ittner, A Gladbach, J Bertz, LS Suh, LM Ittner, Acta Neuropathol Commun 2, 149 (2014))。手短に述べると、遠隔テレメトリトランスミッター(DSI)のフイアEEG電極を、ケタミン/キシラジンにより麻酔されたマウスに移植した。頭を安定フレーム(Kopf instruments)に固定し、そしてブレグマを配置した。骨開口部を、骨マイクロドリル(Fine Science Tools, F.S.T.)を用いて、海馬について以前記載された位置(ブレグマを基準にして、x 2.0、y -2.0、z -2)で穿孔した。電極をこの位置で挿入し、そして参照電極を、小脳上に配置した(ブレグマからx 0、y -6.0、z 0)。電極を、ポリアクリレートにより所定の位置に固定し、続いて創傷閉鎖及び再水和化を行った。手術からの回復の10日後、EEGを、Dataquest A.R.T.記録ソフトウェアを用いて、増幅器マトリックスを備えたDSI無線受信機セットアップ(DSI)により、500Hzのサンプリング速度で記録した(M Weiergraber, M Henry, J Hescheler, N Smyth, T Schneider, Brain Res Brain Res Protoc 14, 154-64 (2005))。EEG記録の完結の2日後、動物を、冷リン緩衝化生理食塩水(PBS)により経心灌流し、そして脳を、生化学的及び組織学的分析のために抽出した。電極の正しい配置を、ヘマトキシリン-エオシンにより染色されたパラフィン包埋脳組織の連続切片により確認した。電極の正しい配置を有するマウスからの記録のみが、さらなる分析に含まれた。
【0200】
【0201】
【化1】
【0202】
変調指数MIは、下記として定義される:
【0203】
【化2】
【0204】
位相-振幅分布及び変調指数を、1記録当たり8つの人工-及び非同期スパイクフリーシーケンスから決定した。
【0205】
シナプトソーム及びシナプス密度の調製
皮質組織からのシナプトソームの精製を、以前に記載されているようにして実施した(Ittner, et al. Cell 142, 387-397 (2010))。手短に説明すると、皮質組織を計量し、そして30mgの組織/mlで氷冷却スクロース緩衝液(0.32Mのスクロース、1mM のNaHCO、1mM のMgCl、0.5mM のCaCl、プロテアーゼ阻害剤(EDTAを含まない、Roche))において、前もって冷却されたダウンスホモジナイザーを用いて均質化した。遠心分離(1,400g、10分、4℃)により均質物を除いた後、ペレットをスクロース緩衝液に再懸濁し、そして再び遠心分離した(1,400g、10分、4℃)。組合わされた上清液を、再び遠心分離し、そして上清液(全脳均質物)を、40℃で10分間、13,800gで回転させた。ペレットを、スクロース緩衝液に再懸濁し、そして5%Ficoll(Sigma)の上に積層し、そして4℃で45分間、45,000gで遠心分離した。界面(シナプトソーム)を回収し、5%Ficollにより希釈し、そして4℃で30分間、45,000gで遠心分離した。上清液(非シナプス)を集め、そしてペレットを、pH8の緩衝液(20mMの Tris pH8、1%Triton-X 100、100mM のNaCl、1mM のEDTA、1mM のEDTA、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、プロテアーゼ阻害剤(EDTAフリー、Roche))に再懸濁した。4℃で30分間、40,000gで遠心分離した後、ペレット(後シナプス密度)を、5%SDSに再懸濁した。上清液は、シナプス非PSD関連タンパク質を構成しtauェスターンブロットのためのサンプルの調製の前、異なる画分についてのタンパク質濃度を決定した。
【0206】
プラスミド。
ラットPSD95(Wei-dong Yaoからの贈り物; Addgene プラスミド #15463)、Fynキナーゼ(Filippo Giancottiからの贈り物; Addgene プラスミド#16032)及びNR2B(Robert Malinowからの贈り物; Addgeneプラスミド #23998)の発現のためのプラスミドを、Addgene寄託機関から入手した。生存細胞蛍光共焦点イメージングのために、PSG-95を、megaprime PCR (Bryksinet al. Biotechniques 48, 463-465 (2010))により、PDZドメイン2と3との間のmCherryに内部標識し、そしてtau変異体を、peGFP-C1 (Clotoch)中へのクローニングによりeGFPにより標識した。ヒトp38α、ヒトp38β及びヒトp38γについてのクローニング配列を、N末端HA標識を有するpcDNA3.1中にクローニングした。ヒトp38δについてのコード配列を、peGFD-C1にクローニングした。活性変異体の生成のためのp38コード配列の突然変異(M Avitzour et al., FEBS J 274, 963-75 (2007))及びPDZモチーフを欠いているp38γ(ΔPDZm)を、Q5部位特異的突然変異誘発キット(NEB)を用いて生成した。ヒトtauのコード配列(441個のアミノ酸)を、pcDNA3.2/V5-DEST(Invitrogen)中にクローニングした。tauのリン酸化部位変異体を、Q5部位特異的突然変異誘発キット(NEB)を用いて生成した。分子クローニングのためのオリゴヌクレオチドプライマーが、表2に列挙されている。
【0207】
【表2】
【0208】
野生型(図46図48(配列番号6))、及び構成的活性(D179A)p38γ(図47図49(配列番号7))又はtauの変異体のニューロン発現(pAM-CAG)についてのアデノ随伴ウィルスベクター(von Jonquieres, et al. PLOS ONE 8, e65646 (2013))を、従来の制限酵素クローニングによりクローニングした。すべてのプラスミドを、E.コリDH5α 又はXL-1blueにおいて増幅した。組換え事象を回避するために、AAVベクターを、E.コリStb13において増殖した。コンストラクトを、配列決定により確認した。
【0209】
アデノ随伴ウィルス。
rAAV1ベクターのパッケージングを、記載されているようにして実施した(AE Harasta et al., Neuropsychopharmacology 40, 1969-78 (2015))。力価を、定量的ポリメラーゼ鎖反応(qPCR)により決定した。AAV-SG1-ShR又はAAV-ctr-shRベクターのいずれか1μl(1×10個のウィルス粒子)を、記載されるようにして、凍結麻酔された新生子マウスの脳内に3箇所ずつ両側に注射した(G von Jonquieres et al., PLoS One 8, e65646 (2013))。
【0210】
細胞培養。
我々の標準プロトコルを用いて、E16.5マウス胚由来の初代海馬ニューロンを培養した(T Fath, YD Ke, P Gunning, J Gotz, LM Ittner, Nat Protoc 4, 78-85 (2009))。細胞毒性を、市販のアッセイ(Promega)を用いて、LDH放出を測定するか、又は4%PFA/PBSによる固定化の5分前、細胞培養培地に添加されるEthD1(Thermo Fisher Scientific)の可視化により決定した。293T細胞を、DMEM / 10%FBS / 1%グルタミン酸/ 1%P / S (Life Technologies)において培養し、そしてカルシウム沈殿によりトランスフェクトした(A Ittner et al., J Exp Med 209, 2229-46 (2012)。初代ニューロンを、AAV感染により形質導入した(AE Harasta et al., Neuropsychopharmacology 40, 1969-78 (2015))。
【0211】
生存細胞焦点イメージング及びFLIM/FRET分析
FLIM/FRET測定を、時間が決められた、倒立共焦点蛍光顕微鏡(Microtime200, PicoQuant GmbH)を用いて実施した。ドナーGFPの励起は、63x水対物レンズ(1.25NA)を用いる単一光子フィーバー結合ピコ秒パルスダイオード473nmレーザー(20MHzの反復率、2msの滞留時間、256×256のピクセルアレイ)を介してであった。蛍光発光を、時間相関単一光子計数(TCSPC)のための高速タイミング・エレクトロニクスにカップリングされた単一光子アバランシェ・ダイオード(SPAD)上に510/32Semrock BrightLineバンドパス発光フィルターを通して収集した。蛍光画像を、SimFCSソフトウェア(Globals Software, USA)を用いて、フェーザープロットにより分析した。手短に説明すると、各画素での減衰曲線のフーリエ変換を行い、そして得られる変換を、2Dヒストグラムとしてプロットした。ドナーのみのフェーザー位置を、受容体の不在下でドナーを測定することにより決定した。FRETサンプルを測定し、そしてクエンチング軌道に沿ったフェーザ位置を、従来のFRET効率計算に従って計算した:
【0212】
【化3】
【0213】
ここで、EはFRET率であり、tは受容体の不在下でのドナーの蛍光寿命であり、そしてtDAは受容体の存在下での蛍光寿命である。
【0214】
細胞免疫蛍光染色及び顕微鏡検査
細胞染色を、前記記載されているようにして実施した(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))。手短に説明すると、細胞を、4%PFAにより10分間、固定し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)により洗浄し、0.02%NP-40により透過性にし、そしてブロッキング緩衝液(PBS中、3%ウマ血清/1%ウシアルブミン)によりブロックした。ブロッキング緩衝液により希釈された一次抗体を、4℃で一晩、又は室温で1時間インキュベートした。PBSによる洗浄の後、細胞核を可視化するためにDAPIを添加しているか、又は添加していないブロッキング緩衝液により希釈された二次抗体を、室温で1時間インキュベートした。次に、細胞を洗浄し、そして抗-フェードマウント培地(Prolong Gold, Life Technologies)を用いてマウントした。使用される二次抗体を、Alexa488、555、568又は647色素(Molecular Probes)にカップリングした。共焦点画像を、Plan-Apochromatic 100× 1.4NA対物レンズを備えたZeiss LSM880Airyscan共焦点顕微鏡又はPlan-Apochromatic 100×1.4NA対物レンズを備えたZeiss LSM780共焦点顕微鏡で、Zenソフトウェア(Zeiss)を用いて獲得した。落射蛍光イメージングをCellsensソフトウェア(Olympus)を用いて、DP70カラーカメラ(Olympus)を備えたBX51明視野/落射蛍光顕微鏡(UPlanFL N lenses [\/0.17/FN26.5]: 10x/0.3, 20x/0.5, 40x/0.75, 60x/1.25oil and 100x/1.3oil)上で行った。
【0215】
ヒト脳サンプル
ヒト嗅内皮質組織サンプルは、ニューサウスウェルズ大学、神経科学研究オーストラリア、及び総合失調症研究所により支援される、ニューサウスウェルズ脳組織リゾースセンター(シドニー大学)及びシドニー脳バンク(神経科学研究オーストラリア)から受領した。凍結組織を、回転ダウンスホモナイザーを用いて、リン酸緩衝生理食塩水(20%w/v)において溶解し、続いて20%パワー(Vibra Cell, Sonics)で5秒間の超音波破壊を行った。溶解物を、4℃で10分間、3,000xgで遠心分離し、そして上清液を分析ために使用した。患者の詳細は、表3に提供されている。ヒト脳サンプルの使用は、ニューサウスウェルズ及びシドニー大学の人間研究倫理委員会によって承認された。
【0216】
【表3】
【0217】
組織学的切片及び染色
マウスを、リン酸緩衝生理食塩水、続いて4%パラホルムアルデヒド(PFA)により経鼻的に灌流し、続いて4%PFAに一晩、固定した。組織を、パラフィン包埋のためにExcelsior組織プロセッサー(Thermo)により処理した。アミロイドプラークを可視化するためのチオフラビンS染色を、標準プロトコルに従って実施した(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))。筋肉断面を、以前に記載されたようにして、ラミニン(Sigma)に対する一次抗体により染色した(Ke, et al. Acta Neuropathol. 130, 661-678 (2015))。AAV注射されたマウスからの脳切片を、ウィルストランスジーン発現を可視化するために、tau(Tau13;Abcom)又はHA-標識(HA-7;Sigma-Aldrich)により染色した。ヒト嗅内皮質サンプルの連続パラフィン切片を、NSW Brain Bankから入手し、そして標準Nisslプロトコルにより、数えるために染色した。神経細胞計数を、凝集眼(U100H6;Olympus)を備えたオリンパスBX51顕微鏡上で行った。切片の単一平面内に見られる核小体、核及び細胞質を有するニューロンを、計数すると考えられた。CAフィールド(CA4-1)に関しては、3つのラングムで重複しない視野を選択した。嗅内皮質に関しては、皮質表面から灰白質物質接合部に伸びる皮質の3つの重複しないストリップを、計数のために印を付けた。次に、続く皮質計数を、皮下表面に垂直に広がる3つの隣接する視学的視野を通して実施した。次に、切片を通しての平均細胞数を、1mm当たりニューロンの細胞密度値に標準化した。すべての組織切片を、DP70カラーカメラ(Olympus)を備えたBX51明視野/落射蛍光顕微鏡(UPlanFL N lenses [\/0.17/FN26.5]: 10x/0.3、20x/0.5、40x/0.75、60x/1.25oil及び 100x/1.3oil)上で画像化した。
【0218】
ウェスターンブロット
ウェスターンブロットを、前に説明されたようにして実施した(A Ittner et al., J Exp Med 209, 2229-46 (2012))。バンドを、X線フィルム又はChemiDoc MP (Biorad)上の化学発光により可視化しtauウェスターンブロットの結果の濃度測定は、ImageJ 2.0.0-rc-49/1.51d (NIH)を用いて実施した。この研究に使用される抗体は、以下である:抗-NR1 (Chemicon)、抗-NR2B (Santa Cruz)、 抗ホスホチロシン1473-NR2B (Affinity BioReagents)、 抗-PSD95 (Millipore)、 抗-Fyn (Santa Cruz)、 抗-ホスホ-Y418 Fyn (Invitrogen)、 抗-ホスホ-Y529 Fyn (Invitrogen)、 抗-APP (22C11)、 抗-Aβ (6E10)、 抗-tau(DAKO)、 抗-tau (tau1、 Millipore)、 抗-tau (tau13、 Abcam)、 抗-ホスホ-セリン199 tau(Abcam)、 抗-抗-ホスホ-セリン202 tau (Abcam)、 抗-ホスホ-トレオニン205 tau (Abcam)、 抗-ホスホ-トレオニン212tau(Abcam)、 抗-ホスホ-セリン214 tau (Millipore)、 抗-ホスホ-トレオニン231 tau (Abcam)、 抗-pホスホ-セリン235 tau (Abcam)、 抗-ホスホ-セリン356 tau (Abcam)、 抗-ホスホ-セリン396 tau (Abcam)、 抗-ホスホ-セリン404 tau (Millipore)、 抗-ホスホ-セリン422 tau (Millipore)、 PHF-1 (ホスホ-セリン396-ホスホ-セリン404 tau; P. Daviesからの贈呈)、 抗-p38α (Cell Signaling)、 抗-p38β (Santa Cruz)、 抗-p38γ(R&D)、 抗-p38δ (R&D)、 抗-ホスホトレオニン180/Tチロシン182-p38 (Cell Signaling Technologies)、 抗-Flag (M2、 Sigma)、 抗-HA7 (Sigma)、 抗-V5 (Invitrogen)、 抗-MAP2 (マウス Abcam)、 抗-MAP2 (chicken: Abcam)、 抗-β3 チュウブリン (Covance)、 抗-NeuN (Abcam)、 抗-Debrin (Sigma)、 抗-シナプトフィジン (Abcam)、 抗-αシヌクレイン (Sigma)、 抗-グリセルアルデヒドデヒドロゲナーゼ (抗-GAPDH、 Millipore)。
【0219】
免疫沈澱
免疫沈澱を、以前に記載されたように、細胞又は組織溶解物から実施した(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))。手短に説明すると、細胞を、氷上でPTNN緩衝液(20mM のTris pH7.4、150mM のNaCl、1mM のEDTA、1mMの NaVO、1mMの NaF、1mM のグリセロホスフェート、2.5mM のNa、1mM のPMSF、プロテアーゼ阻害剤(Complete、 Roche)、1% NP-40代替物(Sigma-Aldrich))に溶解した。溶解物を、遠心分離(16,000xg/10分/4℃)により清澄化した。タンパク質濃度を決定し(DC Protein Assay, BioRad)、そして200μgの溶解物を、抗体(1:400)と共に3時間、4℃でのローター上でインキュベートした。平衡化され、そしてブロックされたタンパク質Gビーズ(Life Technologies)を、4℃でローター上で45分間、溶解物と共にインキュベートした。次に、ビーズを3回、洗浄し、SDS-PAGEの前、95℃で5分間、サンプル緩衝液においてインキュベートした。皮質又は海馬組織を、RIPA緩衝液(20mM のTris pH8.0、150mM のNaCl、1mM のEDTA、1mMの NaVO、1mMの NaF、1mM のグリセロホスフェート、2.5mM のピロリン酸ナトリウム、1mM のPMSF、プロテアーゼ阻害剤(Complete、 Roche)、1% NP-40代替物(Sigma-Aldrich)、SDS、デオキシコール酸ナトリウム)において均質化し、そして上記で概説されたように、免疫沈澱にゆだねた。定量的デンシトメトリー分析を、画像J2.0.0-rc-49/1.5ld (NIH)を用いて実施し、そしてPSD-95/tau/Fyn複合体の免疫沈澱についてのレベルを、免疫沈澱されたPSD-95タンパク質レベルと比較して表した。
【0220】
マイクロスケール熱泳動(MST)
tau変異体を、グルタチオン樹脂(GE Healthcare)を用いて、E. コリBL21DE3pLys (Promega)からのGST融合タンパク質として精製し、続いて、限外濾過回転カラム(10,000分子量カットオブ;Vivaspin, Sartorius)を用いて濃縮及び緩衝液交換を行った。eGFP-PSD-95を、293T細胞において、発現し、そして溶解物を、トランスフェクションの48時間後、TNN緩衝液(20mM のTris pH7.4、150mM のNaCl、1%NP40代替物、オルトバナジウム酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、グリセロリン酸、フッ化ナトリウム、プロテアーゼ阻害剤(Complete; Roche))において調製した。融合タンパク質の濃度を、モル吸光係数を用いて吸光度測定(Nanodrop 2000C; Thermo-Fisher)により決定した。GFP-PSD-95の熱泳動を、Monolith NT115 (Nanotemper technologies)上で、GSTtau(開始濃度9MM)の連続希釈(1:1)で、50%LEDパワー及び20%MSTパワーを用いて、5秒間のプレMST及び30秒のMST時間で決定した。3つの独立した実験からの熱泳動及び温度ジャンプ標準化蛍光曲線を、フルオロフォア標識タンパク質の結合状態の画分として表した(Wienken et al. Nat. Commun. 1, 100 (2010))。熱泳動を、tau濃度の関数としてプロットし、そして実験平衡解離定数(KD)を決定するための非線曲線適合化を、平方和の最小化(sum-of-squares minimization)(Marquardt method; Graphpad Prism 6)を用いて実施した。
【0221】
キナーゼがアッセイ
組換えタンパク質を、以前に記載されたようにして、細菌において発現し、そして精製した(A Ittner et al., J Exp Med 209, 2229-46 (2012))。タンパク質の純度を、SDS-PAGE及びクーマシー染色により評価した。キナーゼアッセイ反応を、以前に記載されたようにして実施した(A Ittner et al., J Exp Med 209, 2229-46 (2012))。手短に説明すれば、0.5μgの組換えp38γを、キナーゼ反応緩衝液(Promega)において1μgの組換えヒトtauを共に混合し、そして30℃で30分間インキュベートした。キナーゼ反応を、サンプル緩衝液の添加及び95℃での5分間のインキュベーションにより停止させた。
【0222】
質量分光測定
インビトロp38γキナーゼ反応の後、tauのホスホ-ペプチドマッピングを、以前に記載されたようにして行った(Dolai, et al. Cancer Res. 76, 2766-2777 (2016), Thingholm, et al. Nat. Protoc. 1, 1929-1935 (2006))。手短に説明すると、キナーゼ処理された、tauを含むタンパク質抽出物を、3mMのトリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP、56℃、10分)により還元し、6mMのヨードアセトアミド(周囲温度、30分)によりアルキル化し、緩衝液交換し、そして100mMの炭酸水素アンモニウム及び3kDa回転フィルター(Amicon Ultra-4 centrifugal filters, Merck KGaA, Darmstadt, Germany)を用いて濃縮し、続いて、トリプシン消化を行った(25:1w/w タンパク質:トリプシン比、16時間、37℃)。材料中のタンパク質を、TiO2回転チップ(GL Sciences, Tokyo, Japan)と共にTitansphere Phos-TiOキットを用いて、製造業者のプロトコルに従って、ホスホペプチドについて富化した。ホスホペプチド富化された及び富化されていないサンプルと、ホスホペプチドの同定を最大にするために、Orbitrap質量分光計(QExactive Plus上にCID及び ETD活性化モード 及びHCDを備えたLTQ-Orbitrap Velos: Thermo Electron, Bremen, Germany)を用いて、LC-MS/MSにより分析した。クロマトグラフィー処理を、オートサンプラーシステム(Dionex, Amsterdam, Netherlands)を備えた+/-LC(Dionex UltiMate 3000 HPLC, Thermo Scientific, Waltham, USA)により実施した。ペプチド(1-7μの注入)を、カラムヒーター(45oC, Sonation GmbH, Germany)内に支持される、C18逆相パッキング(Reprosil-Pur, 1.9 μm, 200 Å, Dr. Maisch GmbH, Ammerbuch-Entringen, Germany)を含むキャピラリーカラム(10cm)に切替えて、C18カートリッジ(Acclaim PepMap 100, 5μm 100 Å, Thermo Scientific Dionex, Waltham, USA)上に最初に捕獲した。ペプチドを、カラム入口で適用される高電圧を伴って、200nL/分で、45%緩衝液B(0.1%のギ酸を含む20:80のHO:CHCN)への緩衝液A(0.1%のギ酸を含む98:2のHO:CHCN)の40分の勾配を用いて溶出した。質量分光計の設定は以下の通りであった:エレクトロスプレー電圧2000V、キャピラリー温度275-300℃、陽性イオンモード、取得されたサーベイスキャンを有するデータ依存性取得モード(m/2 375-1750)、及びMS/MSフラグメンテーション(CIDについて2500以上、、ETDについて500以上、及びHCDについてETDについて5000以上、及びHCDについて8.0×10の強度閾値)のために単離された最大10の多重電荷イオン(電荷状態≧2+)。窒素を、ETDのためのHCD衝突ガス及びフルオランテン陰イオン試薬として使用した。ピークリストを、MASCOT Distiller (Matrix Science, London, England)を用いて生データから生成し、そしてホモサピエンス分類法を用いてMASCOT検索エンジン(バージョン2.5、Matrix Science)及びNCBInrデータベース(24-10-15をダウンロードした)により検索した。検索パラメーターは、CID及びETDについて±4ppmのペプチド耐性及び±0.4DaのMs/MS耐性、又はHCDについて±0.05DaのMS/MS耐性であり、可変修飾は、カルバミドメチルcys、met酸化、ホスホ(ST)及びホスホ(Y)、2+、3+及び4+のペプチド電化、許容できる最大3回までの誤った切断を伴う酵素特異的トリプシンであった。
【0223】
Aβ調製
Aβ42(Bachem)を調製し、そして記載のようにして、100μMの濃度で予備凝集した(MP Lambert et al., Proc Natl Acad Sci U S A 95, 6448-53 (1998))。手短に説明すると、ヘキサフルオロ-2-プロパノール(Sigma)を溶解し、そして蒸発されたAβを、5mMでジメチルスルホキシド(Sigma)において再構成し、そして次に、フェノールレッドを含まないF-12培地(Invitrogen)に希釈し、100μMの最終濃度にし、続いて短時間、ボルテックスし、そして4℃で24時間インキュベートした。さらなる希釈を、培養培地において行った。
【0224】
Aβレベル及び病理
Aβ40及びAβ42レベルを、前に記載されたようにして、ELISAにより決定した(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))。プラーク富化を、前に記載されたようにして決定した(LM Ittner et al., Cell 142, 387-97 (2010))。
【0225】
統計学的分析
統計学的分析を、Graphpad Prizm Version 6.0 (Student’s t test or ANOVA)を用いて実施した。線形回帰及び相関分析は、二乗和の最小化によって行われた。生存データを対数ランクMantel-Cox試験によって分析した。全ての値は、平均±標準誤差(SEM)として示される。
【0226】
結果
ADに対するp38キナーゼの分子的寄与を理解するために、最初に、ADマウスモデルにおける興奮毒性を理解するのに役立つアプローチである、ペンチレンテトラゾール(PTZ)による興奮毒性発作を誘発することにより、p38α、 p38β、 p38γ又は p38δ (Fig. 1)の個々の欠失を有するマウスにチャレンジした(7,8)。結果は、図2A、6A6B及び6Cに示される。驚くべきことには、p38αのニューロン欠失(p38αΔneuも、p38β又はp38δのノックアウトのいずれも、PTZ投与の後、発作潜伏期及び重症度も変えず、このことは、それらが急性興奮毒性において調整的役割を有さないことを示唆する。対照的に、p38γ枯渇(p38γ-/-)は、PTZ誘発性発作に対する感受性を著しく増強した(図2A及び図6、B及びC)。pan-p38阻害は、p38γ-/-における変化と類似して、野生型マウスにおけるPTZ誘発性発作の重症度を高め、そしてその潜伏期を短縮し、このことは、p38γを除いて、p38α/β/δが急性興奮毒性に寄与しないことを示唆する、後シナプスシグナル伝達における役割と一致して、p38γのみが、樹状突起棘、及び培養されたニューロンの後シナプス密度に局在した(図2B)。p38α及びp38βは、体細胞及び樹状突起シャフトに見出されたが、ところが、p38δはニューロンに検出できなかった。まとめると、p38γのみが後シナプス区画に局在し、そしてPTZ誘発性興奮毒性を制限する。
【0227】
PTZ誘発性発作に対するp38γの効果がまた、ADマウスモデルにおけるAβ誘発性障害にも影響を及ぼすかどうかを試験するために、p38γ-/-マウスを、突然変異APP発現APP23マウスと交配させた。それらのAPP23.p38γ-/-マウスを、PTZの投与により発作感受性について評価した。結果は、図7に示される。PTZ誘発性発作に対するAPP23マウスの高められた感受性は、APP23.p38γ-/-マウスにおいて、さらに増大した(図7A-C)。APP23マウスを、早期死亡、記憶障害、癲癇様脳活性を伴う神経回路収縮、及びβプラーク病理により特徴づけた(Ittner et al., Cell 142, 387-397 (2010); ) Ittner, et al., Acta Neuropathol. Commun. 2, 149 (2014); Sturchler-Pierrat et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94, 13287-13292 (1997))。Aβ形成及びプラーク病理は、APP23.p38γ-/- 及び APP23.p38γ+/+マウスの脳において同等であったが、p38γの欠失は、APP23マウスの早期死亡率を悪化させ、そしてAPP23.p38γ-/-マウスの82%が生後8ヶ月までに死亡した(図2C)。p38γ-/-マウスは、正常な生存率を示した(図2C)。APP23.p38γ-/-における記憶障害は、モリス-水迷路パラダイムにおいて(図2D-F、図8A-C)、示差ペア・アソシエート・学習(dPAL)(図21)、及び対様識別タスク(図22)において評価されるように、APP23.p38γ+/+マウスの記憶障害と比較して有意により重症であった。対照的に、p38γ-/-マウスは、野生型様記憶能力及び運動機能を示した。記憶障害は、APP23(14)を含む、APPトランスジェニック系統(10)におけるニューロン回路異常及び過同期性癲癇様脳活性と関連していた。APP23.p38γ-/-の脳波検査(EEG)は、APP23.p38γ+/-記録よりもより頻繁な自発的発作スパイク列及び発作超音速放電を示した(図2G-I)。図2Gから分かるように、スパイク活性は、p38γ-/-及びp38γ+/+マウスにおいては実質的に見られなかった。学習及び記憶に関連する海馬ネットワーク活性の重要な指標であるシータ(4-8hz)及びガンマ(25-100Hz)(18、19)は、APPトランスジェニックマウスにおいて変えられる(14)。従って、シータスペクトルパワーは、APP23.p38γ+/+及びAPP23.pp38γ-/-マウスにおいてより低い周波数(4-8Hz)にシフトされたが、ところがガンマスペクトルパワーは、p38γ-/-及びp38γ+/+マウスに比較して高められた(図9A-G)。ガンマパワーのシータ位相変調(18)を通しての海馬交差周波数カップリング(CFC)は、齧歯動物及びヒトにおいて記憶能力と相関し(20,21)、そしてAPP23マウスでは障害を受ける(14)。発作間EEGトレースは、p38γ+/+及びp38γ-/-マウスにおいて約8Hzで類似する大きさのCFCを示したが、しかしAPP23.p38γ+/+においては顕著な減損及びAPP23.p38γ-/-同腹子においては仮想枯渇1を示し(図2J)、このことは、p38γ枯渇がさらに、APP23マウスにおいて損傷を受けたCFCを悪化させることを示唆する。同様に、p38γ+/+及びp38γ-/-マウスと比較して、APP23.p38γ+/+マウスにおいては、位相振幅分布及びシータ位相の同時性が著しく低められ、そしてAPP23.p38-/-マウスにおいては実質的に不在であった(図9)。結果的に、CFCのロバスト指標である変調指数(21)は、p38γ+/+及びp38γ-/-、又はさらにAPP23.p38γ+/+に比較して、APP23.p38γ-/-記録において有意に低かった(図2K)。アルツハイマー病を有さないヒトの脳(Braak 0)及びBraak IからBraak VI(表3)に及ぶ異なる神経病理学的疾患段階を有するヒトからの抽出物において、p38γレベルを決定した。結果は、図23A及び23Bに示される。図23A及び23Bに見られ得るように、p38γレベルはADが進行するにつれて、ヒトにおいては著しく低められた。
【0228】
要約すると、p38γは、Aβの変化なしに、APP23マウスにおいて興奮毒性、神経回路の同期性、早期死亡及び記憶障害を調節する。さらに、p38γレベルは、APP23マウス、及びADに罹患しているヒトにおいて低められる。
【0229】
tauのレベルがインビボでp38γの興奮毒性制限効果に影響を及ぼすかどうかを決定するために、我々は、PTGでそれらのマウスに挑戦するために、非変異ヒトtau発現Alz17マウス(22)を、p38γ-/1マウスと交配した。結果は、図3A-Cに示される。図3A-Cから見られるように、tau発現は、Alz17.p38γ+/+マウスにおける発作閾値に影響を及ぼさなかったが、p38γ-/-マウスと比較して、Alz17.p38γ-/-マウスは、有意に増強された発作進行及び重症度を提供した(図3A-C)。結果的に、tau欠損tau-/-マウスとp38γ-/-との交配は、tau-/-.p38γ-/-及びtau-/-.p38γ+/+マウスにおいて、PTZ誘発性発作からの類似する保護を示した(図3D-F)。p38γのAβ毒性制限効果がtau依存性であるかどうかを決定するために、AP23.p38γ-/-マウスを、tau-/-マウスと交配し、そして得られる交配を、生存、記憶欠損及びニューロンネットワーク障害について評価した。結果は、図3G-3I、24、25、26A、26B、17、28A及びB、及び29に示されている。APP23マウスの低められた生存率、記憶障害及びニューロンネットワーク機能不全に対するp38γ欠損の悪化の効果はAPP23.p38γ-/-.tau-/-マウスにおいては実質的に消滅した。それらのデータはまた、APP23マウスに比較して、APP23.p38γ-/-動物は加齢と共に持続する記憶障害を悪化させたことも示している。対照的に、上記のように、p38γ-/-マウス(非変異tau発現Alz17マウスとの交配によりもたらされた)におけるtauレベルの上昇は、Alz17.p38γ-/-マウスにおいてPTZ誘発性発作を有意に増強した。逆に、tau-/-..p38γ+/+マウスに比較して、tau-/-.p38γ-/-動物は、PTZ誘発性発作からの類似する保護を示した。まとめると、興奮毒性及びAβ毒性に対するp38γの効果は、tau依存性である。
【0230】
tauは、Aβ誘発性興奮毒性を媒介するFyn及びPSD-95との後シナプスシグナル伝達複合体に存在する(8).Alz17.p38γ-/-脳におけるtau、Fyn及びPSD95の相互作用は、Alz17.p38γ+/+マウスと比較して増強され(図4A、B)、これは、PTZ誘発性発作に対するそれらの増強された感受性と一致する。逆に、PSD-95/tau/Fyn複合体は、tau-/-及びtau-/-.p38γ-/-脳から単離され得なかった。驚くべきことには、高められたp38γレベルは損なわれ、そしてp38γの構成的活性変異体(p38γCA)の発現は、細胞におけるPSD-95/tau/Fyn相互作用を完全に破壊した(図4CA及びD)。Pan-p38阻害は、PSD-95/tau/Fyn複合体のp38γ及びp38γCA誘発性破壊を停止させ、さらに、p38γ活性が必要とされることを示唆した(図4E及びF)。PSD-95は、p38γ+/+脳よりもp38γ-/-からのより多くのtau及びFynを共精製し、p38γの不在下でPSD-95/tau/Fyn複合体形成の上昇を示唆する(図4G及びH)。PTZは、p38γ+/+動物及びさらにp38γ-/-マウスにおいてPSD-95/tau/Fyn複合体形成を一時的に高めた。同様に、PSD-95/tau/Fyn複合体形成は、APP23.p38γ+/+及びp38γ-/-脳に比較して、APP23.p38γ-/-において著しく高められた(図4I及びJ。高められたPSD-95/tau/Fyn複合体形成と一致して、PSD-95及びHB2Bの相互作用を促進するY1472でのNR2BのFyn媒介性リン酸化が、p38γ-/-脳において高められた。同様に、p38γ及びp38γCA発現は、NR2BのY1472-リン酸化を低めた。
【0231】
重要なことには、p38αCA、p38βCA 又はp38δCAは、NR2Bリン酸化を低めず、このことは、PSD-95/tau/Fyn複合体の調節がp38γの非冗長機能であることを示唆する。興味深いことには、p38γ及びp38γCAの両者は、PSD-95と相互作用し(図4C)、前記PSD-95は、p38γ及びp38γCAからのC末端PDZ相互作用モチーフの決失により無効にされた(図10A)。p38γ及びp38γCAの両者はまた、tauと相互作用した(図10B)。p38γ及びそれ以上のp38γCAは、Fyn過剰発現の不在下でpSD-95/tau相互作用を破壊したが(図10C)、しかしtau/Fyn相互作用を破壊しなったので(図10D)、p38γは、pSD-95/tau相互作用のレベルでPSD-95/tau/Fyn複合体を調節するように見える。
【0232】
p38γは、長期インビトロキナーゼアッセイの間、複数のエピトープでtauをリン酸化し、たぶんtauの過剰リン酸化に寄与するが(25)、興奮毒性を含む急性シグナル伝達におけるp38γ誘発性tauリン酸化の一時的なプロファイルは、未知のままであった。短期インビトロキナーゼ反応に関する組換えtauを用いて、我々は、利用可能なリン酸化部位特異的抗体を使用して、一定範囲のSP及びTP部位のリン酸化を試験した(図11A)。tauは、セリン(S)199及びトレオニン(T)205で強くリン酸化され、そしてS396及びS404ではそれにより低くリン酸化されたが、しかし試験された他の部位ではリン酸化されなかった(図11B)。部位特異性は、変異された部位でインビトロでp38γ誘発性tauリン酸化を無効にする、S199,T205、S396及びS404をアラニンに個々に突然変異させることによ確認された(図11C)。キナーゼ反応におけるtauの質量分光分析は、それらの4つの部位、及び追加の14の低濃度部位を確認した。p38γ又はp38γCA及びtauの同時発現は、p38γはT205でtauを優先的にリン酸化し、そしてS199ではそれよりも低い程度であったが、しかし細胞においては、S396及びS404ではほとんどリン酸化しなかったことを示した(図5A)。同様に、T205(及びそれよりも低いS199及びS396)は、p38γCAトランスジェニックマウスにおいてリン酸化された。リン酸化されたT205(pT205)は、p38γ+/+動物のPTZ処置の後、上昇したが、しかしp38γ-/-マウスにおいては実質的に消失し、ところがpS199、pS396及びpS404は、p38γ+/+及びp38γ-/-の両マウスにおいて誘発された。同様に、pT205は、APp23.p38γ+/+マウスに比較して、APP23.p38γ-/-動物においては、著しく低められた。一貫して、初代ニューロンにおけるT205のリン酸化は、pan-p38阻害剤により著しく低められたが、ところがS119リン酸化は影響されないままであった。まとめると、それらのデータは、T205がp38γによるtauリン酸化における主要部位であることを示唆する。
【0233】
S199及びT205でのp38γによるtauリン酸化の機能的関連性を決定するために、我々は、リン酸化模倣(S199D及びT205E)及びtau変異体の防止(S199A及びT205A)を行った。我々はまた、質量分析により同定されたすべての他の部位のリン酸化模倣変異体を調製し、そしてPSD-95、tau及びFynと同時精製する能力についてすべての変異体を評価した。得られる結果は、図5B、5C及び図31に示される。PSD-95は、Fyn、及びT205Eを除くすべての変異体と同時精製した。この点に関して、T205Eは、非変異体及びT205A tauと比較して、PSD-95と有意に低く共沈したが、ところが、すべての他の同定された部位のすべての他のリン酸化模倣変異体は、PSD-95/tau/Fyn相互作用に対する効果は有さなかった。インビトロでのマイクロスケール熱泳動及びグルタチオンS-トランスフェラーゼ-プルダウン、及び生存細胞における蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)-蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)分析は、T205E tauとPSD-95との著しく損なわれた相互作用を確認した。T205突然変異は、tau/Fyn相互作用を妨害しなかった。それらのデータは、T205でのtauのリン酸化が、PSD-95との相互作用を破壊するのに十分であることを示唆している。T205E及びT205A突然変異は、tau/Fyn相互作用を損なわなかった。重要なことには、p38γCAは、非変異体tauの存在下でPSD-95/tau/Fyn複合体を破壊したが、しかしT205Atauが同時発現される場合、効果を有さなかった(図5D及びE)。対照的に、tauのS396又はS404変異体のホスホ模倣及び防止は、PSD-95/tau/Fyn相互作用に対して効果を有さなかった(図5C)。まとめると、これは、p38γが、T205でのtauのリン酸化を介してPSD-95/tau/Fyn複合体を調節することを示唆する。
【0234】
NR/PSD-95/tau/Fyn複合体の破壊は、初代ニューロン及びAPP23マウスにおける興奮毒性及びAβ誘発性毒性を防止した(8)。従って、T205でのtauのリン酸化は、Aβ誘発性神経毒性を緩和又は軽減するはずである。これを試験するために、我々は、初代ニューロンにおいて同様のレベルで野生型、T205A又はT205E tauを発現するためにAAV媒介性遺伝子トランスファーを使用した(図12)。Aβによる挑戦は、野生型及びT205Aにおいて細胞死を誘発したが、しかし高められたLDH放出(図5F)又はEthD1摂取(図12A)により示されるように、T205Eヒトtau発現海馬ニューロンにおいては、実質的ではなかった。H処理は、発現されるtau変異体と無関係に、ニューロンにおいて同じレベルの細胞毒性を発揮した。ニューロンにおけるp38γのレベル又は活性の上昇が同様に、Aβ毒性からの保護を付与するかどうかを試験するために、我々は、初代ニューロンにおいてp38γ、p38γCA又はGFP対照を発現した(図5G及び図13)。発現されたp38γ及びp38γCAの両者は、内在性p38γに類似して、樹状突起棘において富化した。p38γ及びより多くのp38γCAを発現するニューロンは、対照に比較して、Aβ誘発性細胞死に対して有意により耐性であった(図5H)。p38γもp38γCAの発現も、H-誘発性細胞死を制限しなかった。要約すると、T205E tauを模倣するか、又はp38γ活性を高める部位特異的リン酸化の発現は、海馬ニューロンにおけるAβの毒性効果を緩和した。T20SE tau又はp38γCAの存在下での残りのAβ毒性は、たぶん、内在性tau、又は代替経路によるものであった(9)。
【0235】
高められたニューロンp38γレベル及び/又は活性がインビボで興奮毒性を制限するかどうかを決定するために、我々は、新生児野生型マウスの前肢においてp38γ、p38γCA又はGFP対照を発現するためにAAV媒介性遺伝子トランスファーを使用し(図14)、そして生後2ヶ月でPTZによりそれらに挑戦した。インビボでのp38γの発現は、GFPを発現するマウスに比較して、平均発作重症度の低下に向かう傾向を伴って、生後2ヶ月のマウスにおけるPTZ誘発性発作の進行を、中程度ではあるが、有意に低められた(図5I、J及び図15)。p38γCA発現は、PTZ投与に反応して重度の発作を発症する潜伏期を大幅に高め、そして対照マウスに比較して、平均発作重症度を有意に低めた(図5I、J及び図15)。p38γ及びp38γCAの発現レベルは、AAV媒介性遺伝子発現から予想されるようにマウス間で変化し、そしてp38γのレベルはp38γCAのレベルよりも平均して高かった(図14B)。興味あることには、p38γ及びp38γCAの両者のレベル、及び発作潜伏期勾配は、正の線型相関を示し(p38γ: R2 = 0.483、P = 0.0832、 s = 65.23 ± 30.20; p38γCA: R2 = 0.707、P = 0.0023、s = 215.1 ± 48.96)、そしてp38γ発現に対するp38γCAの有意に明白なレベル依存性保護効果を有した(F = 6.8407、P = 0.0214)(図5K)。従って、インビボでの活性p38γキナーゼのレベルは、興奮毒性シグナルに対する感受性を決定する。APP23.AAVp38γCAにおける記憶障害は、モリス-水-迷路パラダイムにおいて評価される場合、AAP23.AAVGFPマウスの記憶障害と比較して、有意に軽度であった(図16-18)。APP23.AAV38γCAマウスは、野生型記憶能力(AAVGFP、AAVp38γCA)に類似する記憶能力を示した。T205E tau又は緑色蛍光タンパク質(GFP)での発現ではなく、tau-/-マウスの前頭葉におけるアデノ随伴ウィルス(AAV)介在性WT及びT20Aの発現は、PTZ誘発性発作を増強した(図19)。対照的に、AAVを用いたWTマウス、又はThy1.2-p38γCAトランスジェニックマウスにおけるp38γCAの発現は、PTZ誘発性発作を低めた。APP23マウスにおけるAAV媒介性p38γCA発現は、記憶障害及びネットワーク異常を救済し(図34-38);同じことが、APP23とThy.1.2-p38γCAトランスジェニックマウスとの交配についても真であった(図39-41)。要約すると、T205での活性p38γキナーゼ及びtauリン酸化のレベルは、興奮毒性及びAβ毒性に対する感受性を決定した。
【0236】
tauは、APPトランスジェニックマウスにおける欠損の重要なメディエーターであり(7,8)、そしてtauは、異常にリン酸化されるようになることによりニューロン中のAβの有害なシグナルを伝達することが示唆されている(4、27)。ここで、我々は、tauが、興奮毒性及びAβ毒性を阻害するためにp38γにより介在されるT205でのリン酸化を含む、固有の分子経路の一部であることを示す。我々は、p38γによりリン酸化されている、さらなる非試験部位を正式に除外することはできないが、T205A/E tauによる我々のデータは、T205でのリン酸化が後シナプスPSD-95/tau/Fyn複合体の調節に重要であることを示唆している。tauは、p38γ枯渇がtau/-.p38γ-/-マウスにおける発作を悪化させなかったので、p38γの毒性制限効果のために必要とされる。他のキナーゼは、疾患において又は生理学的にtauとのT205を標的にするかも知れないが(28―30)、後シナプスでの複合体におけるPSD-95、tau及びp38γの非常に明確な局在化は、シナプスNR活性化の下流のp38γの特異的且つ空間的に区画化された役割を示す。
【0237】
異なる役割が他のp38キナーゼについて特徴づけられて来たが、p38γの機能は依然として支持されてない。ここで、我々の研究は、ADマウスにおけるtau媒介性Aβ毒性、記憶障害及び生存性へのその関与を示すことにより、脳におけるp38γの前例のない機能を示した。後シナプスにおけるその明確な空間的発現、及びニューロン発現されたp38α/βに比較してのユニーク配列特徴は、ニューロンにおけるp38γの非冗長機能に寄与する可能性が高い。p38α/βは、興奮性(11)及びAβ毒性(12、13)の下流のメディエーターとして記載されている。従って及び重用なことには、本明細書において我々が記載する興奮性及びAβ毒性におけるp38γ機能は、p38α/βとは異なり、且つそれとは反対である。
【0238】
要約すると、我々の研究は、T205でのtauのリン酸化がAβ毒性阻害応答の一部であることを示唆している。それは、Aβ毒性の下流のtauリン酸化が純粋に病理学的応答であるという現在の見解に反している(27)。しかしながら、tauが、NRシグナル伝達を含む可能性があるニューロンにおける正常な生理学的シグナル伝達事象に関与するという考えと一致する(9)。最終的に、我々は、tauの部位特異的リン酸化及び後シナプスPSD-95/tau/Fynに複合体の制御によりtau依存性興奮毒性を調節する、前例のないAβ毒性制限因子としてp38γを同定した。これは、早期AD病因に関与する後シナプスプロセスに新なる洞察を提供し、そして未来の薬物開発に寄与することができる。
【0239】
参考文献
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図1
図2-1】
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【配列表】
2022078192000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベクターであって、当該ベクターが:
a.p38γ又はその変異体をコードする核酸配列又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列
を含み、当該核酸配列が、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を発現するための調節配列に操作可能的に連結されている、ベクター
【請求項2】
前記ベクターが、ウィルスベクターである、請求項に記載のベクター
【請求項3】
前記ウィルスベクターが、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターである、請求項に記載のベクター
【請求項4】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV9、AAVrh10 又はAAVcy5である、請求項に記載のベクター
【請求項5】
アデノ随伴ウイルスベクターであって、当該ベクターが:
a.p38γ又はその変異体をコードする核酸配列又は
b.対象のニューロンにおけるtau依存性シグナル伝達複合体の破壊を引起すtauの変異体をコードする核酸配列
を含み、当該p38γ又はその変異体、又はtauの変異体をコードする核酸が、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体、又はtauの変異体を発現するための調節配列に操作可能的に連結されている、ベクター
【請求項6】
前記p38γの変異体が、p38γ(配列番号)のアミノ酸配列に対して少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は99%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のベクター
【請求項7】
前記p38γの変異体が、PDZ相互作用モチーフを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のベクター
【請求項8】
前記p38γの変異体が、p38γの構成的活性変異体であ、請求項1~6のいずれか1項に記載のベクター
【請求項9】
前記p38γの構成的活性変異体が配列番号3を含む、請求項8に記載のベクター。
【請求項10】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項11】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項12】
ベクターであって、p38γの構成的活性変異体をコードする核酸配列を含み、当該核酸配列が、対象のニューロンにおいて、p38γ又はその変異体発現するための調節配列に操作可能的に連結されている、ベクター
【請求項13】
前記ベクターが、ウィルスベクターである、請求項12に記載のベクター
【請求項14】
前記ウィルスベクターが、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターである、請求項13に記載のベクター
【請求項15】
前記AAVベクターが、AAV1、AAV9、AAVrh10又はAAVcy5である、請求項14に記載のベクター
【請求項16】
前記p38γ構成的活性変異体が配列番号3を含む、請求項12~15のいずれか1項に記載のベクター
【請求項17】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95及びtauを含む、請求項12~16のいずれか1項に記載のベクター
【請求項18】
前記tau依存性シグナル伝達複合体が、PSD-95、tau及びFYNを含む、請求項12~16のいずれか1項に記載のベクター
【請求項19】
前記核酸配列が、神経プロモーターにより操作可能的に連結されている、請求項1~18のいずれか1項に記載のベクター。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載のベクターを含む組成物。