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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078206
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】内視鏡を滅菌するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20220517BHJP
   A61L 2/14 20060101ALI20220517BHJP
   A61L 101/22 20060101ALN20220517BHJP
   A61L 101/06 20060101ALN20220517BHJP
   A61L 101/20 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
A61L2/18 102
A61L2/14
A61L101:22
A61L101:06
A61L101:20
【審査請求】有
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022033338
(22)【出願日】2022-03-04
(62)【分割の表示】P 2017127176の分割
【原出願日】2017-06-29
(31)【優先権主張番号】15/198,670
(32)【優先日】2016-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
(71)【出願人】
【識別番号】591286579
【氏名又は名称】エシコン・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ETHICON, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】キーバン・ノウルジ
(72)【発明者】
【氏名】ナビド・オミドバフシュ
(57)【要約】
【課題】 医療機器を滅菌する。
【解決手段】 可撓性内視鏡などの物品を滅菌する方法が滅菌室内で実施される。物品が滅菌室内に格納されている間に、減圧が滅菌室において適用される。次いで滅菌剤が滅菌室の中に導入される。滅菌室内の圧力は、高真空状態から大気圧への段階的な遷移をもたらすように漸増的に増大される。物品はそれによって滅菌される。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡を滅菌する方法であって、
(a)滅菌室内で前記内視鏡を受容することと、
(b)前記滅菌室内の圧力を第1の圧力へと低減するために、前記滅菌室に減圧を適用することであって、前記第1の圧力は約100トルよりも低い、ことと、
(c)前記滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、
(d)第1の期間にわたって前記滅菌室内の前記第1の圧力を維持することと、
(e)前記滅菌室内の前記圧力を第2の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第2の圧力は前記第1の圧力より大きいが、まだ100トルよりも低い、ことと、
(f)第2の期間にわたって前記滅菌室内の前記第2の圧力を維持することと、
(g)前記滅菌室内の前記圧力を第3の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、
(h)第3の期間にわたって前記滅菌室内の前記第3の圧力を維持することと、
(i)前記滅菌室内の前記圧力を大気圧へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、を含む方法。
【請求項2】
(b)~(f)の工程を少なくとも1回繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(b)~(f)の工程を少なくとも2回繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(g)~(h)の工程を少なくとも1回繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(g)~(h)の工程を少なくとも2回繰り返すことをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記滅菌室に前記減圧を適用する前記工程(b)と前記滅菌室の中に前記滅菌剤を導入する前記工程(c)の間に、前記滅菌室にプラズマを適用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記滅菌室に減圧を適用して前記滅菌室内の前記圧力を低下させた後、前記滅菌室を通気する工程(i)の後に前記滅菌室に追加のプラズマを適用することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記滅菌室に前記追加のプラズマを適用した後、前記滅菌室を10トルと大気圧の間の圧力に通気することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも約10トル~約100トル大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも約10トル~約30トル大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の圧力が前記滅菌室の温度に依存しない、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記第3の圧力が前記第2の圧力より大きいが、それでも約100トルよりも低い、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記第2の期間が前記第1の期間より短いか長い、請求項1記載の方法。
【請求項14】
前記滅菌室内の前記圧力を前記第2の圧力に増加させるために前記滅菌室を通気する前記工程(e)の間、または前記滅菌室内の前記圧力を前記第3の圧力に増加させるために前記滅菌室を通気する前記工程(g)の間に前記滅菌室内に追加の滅菌剤を導入することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記滅菌室内で前記内視鏡を受容する前記工程(a)の前に、前記内視鏡内の1つまたはそれ以上の内部空間に液体滅菌剤を適用することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
前記滅菌剤が、過酸化水素、ペルオキシ酸、二酸化塩素、または二酸化窒素からなる群から選択される、請求項1記載の方法。
【請求項17】
工程(b)~(i)の各々は、プロセッサ及びメモリを含むコントローラを用いて自動的に制御される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記滅菌室内の水分レベルを監視しながら、所定の水分レベルに達するまで前記滅菌室内の前記水分レベルを減少させることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
内視鏡を滅菌する方法であって、
(a)滅菌室内で前記内視鏡を受容することと、
(b)前記滅菌室内の圧力を第1の圧力に低減するために、前記滅菌室に減圧を適用することであって、前記第1の圧力は100トルよりも低い、ことと、
(c)前記滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、
(d)第1の期間にわたって前記滅菌室内の前記第1の圧力を維持することと、
(e)前記滅菌室内の前記圧力を第2の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第2の圧力は前記第1の圧力より大きいが、まだ100トルよりも低い、ことと、
(f)第2の期間にわたって前記滅菌室内の前記第2の圧力を維持することと、
(g)前記滅菌室内の前記圧力を第3の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第3の圧力は前記第2の圧力より大きいが、まだ100トルよりも低い、ことと、
(h)第3の期間にわたって前記滅菌室内の前記第3の圧力を維持することと、
(i)前記滅菌室内の前記圧力を第4の圧力に低減するために、前記滅菌室に前記減圧を適用することであって、前記第4の圧力は100トルよりも低い、ことと、
(j)前記滅菌室の中に追加の滅菌ガスを導入することと、
(k)第4の期間にわたって前記滅菌室内の前記第4の圧力を維持することと、
(l)前記滅菌室内の前記圧力を第5の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、を含む方法。
【請求項20】
前記内視鏡は、長さが1メートルから3メートルの間であり、0.5ミリメートルから6ミリメートルの間の直径を有する内腔を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第2の圧力が、前記第1の圧力よりも約10トル~約30トル大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記第5の圧力が大気圧である、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記第5の圧力が前記第4の圧力より大きいが、100トルよりも低い、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記滅菌室に前記減圧を適用する前記工程(b)と前記滅菌室に前記滅菌剤を導入する前記工程(c)の間にプラズマを適用することをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の圧力が約0.2トル~約10トルの間である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記第2の圧力が前記第1の圧力より約10トル~約30トル大きい、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記滅菌剤が過酸化水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の圧力が前記第1の圧力より約10トル~約30トル大きい、請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の圧力が約0.2トル~約10トルの間である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
内視鏡を滅菌する方法であって、
(a)滅菌室内で前記内視鏡を受容することと、
(b)前記滅菌室内の圧力を第1の圧力へと低減するために、前記滅菌室に減圧を適用することであって、前記第1の圧力は約100トルよりも低い、ことと、
(c)前記滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、
(d)第1の期間にわたって前記滅菌室内の前記第1の圧力を維持することと、
(e)前記滅菌室内の前記圧力を第2の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第2の圧力は約10トル~約30トル前記第1の圧力より大きいが、まだ約100トルよりも低い、ことと、
(f)第2の期間にわたって前記滅菌室内の前記第2の圧力を維持することと、
(g)前記滅菌室内の前記圧力を第3の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第3の圧力は前記第2の圧力より大きいが、まだ約100トルよりも低い、ことと、
(h)第3の期間にわたって前記滅菌室内の前記第3の圧力を維持することと、
(i)前記滅菌室内の前記圧力を大気圧へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、を含む方法。
【請求項31】
前記第2の期間は、前記第1の期間よりも短いか又は長い、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
(b)~(f)の工程を少なくとも1回繰り返すことをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
(g)~(h)の工程を少なくとも1回繰り返すことをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
一部の手術器具、内視鏡等の再利用型医療機器は、汚染された機器が患者で使用されることで、患者の感染につながり得る尤度を最小限に抑えるよう、再利用前に滅菌されることがある。ガスプラズマ又はエチレンオキシド(EtO)の有無にかかわらず、蒸気、過酸化水素、過酢酸、及び気相殺菌等の種々の滅菌法を、使用可能である。こうした方法はそれぞれ、滅菌される医療機器上又は医療機器内部への滅菌流体(例えば、ガス)の拡散率にある程度依存し得る。
【0002】
滅菌前、滅菌剤とも称される滅菌流体を伝達可能とするが、とりわけ、滅菌後及び医療従事者が容器を開けるまで、汚染微生物の侵入を防止する半透性のバリアの付いた容器又は袋内に、医療機器を包装する場合がある。滅菌サイクルを生き残った一部の微生物が増殖して医療機器を再汚染する恐れがあるので、滅菌サイクルを効果的にするには容器内の汚染微生物を死滅させなければならない。滅菌サイクルが効果的となり得る尤度が、拡散に制約のある空間によって下がる場合があることにより、こうした拡散が制約された空間のある医療機器の場合、滅菌剤の拡散が、とりわけ問題となり得る。例えば、一部の内視鏡は、滅菌サイクルを成功するのに十分な時間にわたって、滅菌剤が十分な濃度で拡散する必要のある1つ以上の長い狭域ルーメンを備える。
【0003】
医療機器の滅菌は、カリフォルニア州アーバインのAdvanced Sterilization ProductsによるSTERRAD(登録商標)システム等の自動滅菌システムによって実施可能である。自動滅菌システムの例が、参照により、開示が本明細書で援用される2005年9月6日付け発行の「Power System for Sterilization Systems Employing Low Frequency Plasma(低周波数プラズマを使用する滅菌システム用の電力システム)」と題される米国特許第6,939,519号;参照により、開示が本明細書で援用される2005年2月8日付け発行の「Sterilization with Temperature-Controlled Diffusion Path(温度制御された拡散経路による滅菌)」という名称の米国特許第6,852,279号;参照により、開示が本明細書で援用される2005年2月8日付け発行の「Sterilization System Employing a Switching Module Adapter to Pulsate the Low Frequency Power Applied to a Plasma(プラズマに印加された低周波数電力を振動させるための切り替えモジュール・アダプターを使用する滅菌システム)」と題される米国特許第6,852,277号;参照により、開示が本明細書で援用される2002年9月10日付け発行の「Power System for Sterilization Systems Employing Low Frequency Plasma(低周波数プラズマを使用する滅菌システム用の電力システム)」と題される米国特許第6,447,719号;参照により、開示が本明細書で援用される2016年4月1日付けで出願された「System and Method for Sterilizing Medical Devices(医療機器を滅菌するためのシステムと方法)」と題される米国特許出願第62/316,722号において、記載されている。
【0004】
いくつかの滅菌システムは、例えば、気化した化学滅菌剤又は過酸化水素、過酢酸、オゾン、二酸化塩素、二酸化窒素などの化学ガスを使用して医療機器を滅菌し得る。そのようなシステムの例が、「Method of Enhanced Sterilization with Improved Material Compatibility」と題され、2002年4月2日に発行された、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,365,102号、及び、「Apparatus and Process for Concentrating a Liquid Sterilant and Sterilizing Articles Therewith」と題され、2001年12月4日に発行された、その開示内容が参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,325,972号に記載されている。そのようないくつかのシステムは、真空室とプラズマ源とを備える過酸化水素/ガスプラズマ滅菌システムを提供し、滅菌用の過酸化水素の濃度増加をもたらしている。いくつかのそのようなシステムは、いくつかの医療機器のルーメンを、それらの長さが特定の値を超えたときに滅菌することが困難となることがあり、或いは、そのようなシステムの処理時間が依然として、いくつかの用途には十分に高速でないことがある。従って、長尺型及び/又は細型可撓性内視鏡などのいくつかの医療機器は、チャネルの内部に滅菌蒸気が十分に到達しないことが原因で、これらのシステムでは完全に滅菌されないことがある。そのような医療機器は従って、滅菌されることなく単に消毒されるに過ぎないことがある。エチレンオキシドを使用する滅菌システムは、比較的長い(例えば、24時間を超える)処理時間を有することがあり、このことはいくつかの場合において不所望となり得る。
【0005】
操作者の誤解によって、除染されたものと勘違いされた医療装置が業務に戻される恐れがある。滅菌サイクルが効果的であることを確認することは、医療従事者が汚染された医療機器を患者で使用するのを防止する上で一助となり得る。汚染微生物があるか否かについて、滅菌後の医療機器自体を確認しない場合がある。それは、このような行為によって、別の汚染微生物を医療機器にもたらして、医療機器を再度汚染する恐れがでるからである。従って、滅菌インジケータを使って、間接的なチェックを実施することがある。滅菌インジケータは、この滅菌インジケータが医療機器と同じ滅菌サイクルを受けるよう、滅菌サイクルを受ける医療機器と共に、又はその付近に配置可能な装置のことである。例えば、所定量の微生物を含有する生物学的インジケータを、滅菌室内で医療機器と共に配置し、滅菌サイクルを受けさせることが可能である。サイクル完了後、サイクルを生き残った微生物が存在するか否かを判定するために、生物学的インジケータ内の微生物を培養可能である。生物学的インジケータ内の生存する微生物の存在又は非存在は、滅菌サイクルが効果的であるか否かを示す。
【0006】
これまでに、外科医用器具の滅菌用に様々なシステム及び方法が作られ、使用されてきたが、本発明者より以前に、本明細書に記載される技術を作った者又はこれを用いた者は誰もいないと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本発明は、添付の図面と併せて採用した幾つか実施例に関する以下の説明から良好に理解できるものと考えられ、添付の図面では、同様の参照番号が、同じ要素を特定している。
図1】例示的な医療機器用滅菌庫の概略図を示す。
図2図1のシステムの滅菌庫が医療機器を滅菌するために実施し得る工程の例示的なセットの高レベルフローチャートを示す。
図3図2のステップのセット内で滅菌サイクルの一部として実行され得るステップの例示的なセットのフローチャートを示す。
図4図3の滅菌サイクルの実施中の時間にわたる、図1の滅菌庫の滅菌室内の減圧の例示的なプロットを示すグラフを表す。
図5図2のステップのセット内で滅菌サイクルの一部として実行され得るステップの例示的な代替的セットのフローチャートを示す。
図6図5の滅菌サイクルの実施中の時間にわたる、図1の滅菌庫の滅菌室内の減圧の別の例示的なプロットを示すグラフを表す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本技術の特定の実施例に関する以下の説明は、本技術の範囲を限定するために使用されるべきではない。本技術のその他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点は、実例として、本技術を実施するために企図される最良の形態の1つである以下の説明から、当業者には明らかとなろう。理解されるように、本明細書で説明される本技術は、全て本技術から逸脱することなく、その他種々の明白な態様が可能である。従って、図面及び説明を、限定的ではなく、例示的な性質のものとみなすべきである。
【0009】
本明細書に述べられる教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ又は2つ以上のものを、本明細書に述べられる他の教示、表現、実施形態、実施例などの任意の1つ又は2つ以上のものと組み合わせることができる点も更に理解されたい。従って、以下に述べられる教示、表現、実施形態、実施例などは、互いに対して分離して考慮されるべきではない。本明細書の教示に照らして、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な適当な方法が、当業者には明らかとなろう。かかる改変例及び変形例は、特許請求の範囲内に含まれるものとする。
【0010】
I.例示的な滅菌システムの概要
図1は、内視鏡などの医療機器を滅菌するように動作可能である例示的な滅菌庫(150)を示している。本例の滅菌庫(150)は滅菌室(152)を含み、滅菌室(152)は、滅菌のために1つ以上の医療機器を受容するように構成されている。図示されていないものの、滅菌庫(150)はまた、蹴板の作動に応答して滅菌室(152)を開閉する扉を備えている。これにより、操作者は、滅菌室(152)をハンズフリー式に開閉可能である。言うまでもなく、滅菌室への選択的なアクセスをもたらすために、任意の他の好適な機構が用いられてよい。滅菌庫(150)はまた、滅菌室(152)に格納される医療機器を滅菌するために、滅菌剤を滅菌室(152)に分配するように動作可能である滅菌モジュール(156)を含んでいる。本例において、滅菌モジュール(156)は、ある量の滅菌剤を含有する交換式滅菌剤カートリッジ(158)を受容するよう、構成されている。実例目的のみとして、各滅菌剤カートリッジ(158)は、5回の滅菌処理を実行するのに十分な滅菌剤を格納可能である。
【0011】
更に、本例の滅菌庫(150)は、タッチスクリーンディスプレイ(160)も備える。タッチスクリーンディスプレイ(160)は、参照によってその開示内容が本明細書に組み込まれる米国仮特許出願第62/316,722号に記載されているものなど、様々なユーザインターフェースディスプレイスクリーンをレンダリングするように動作可能である。当然のことであるが、タッチスクリーンディスプレイ(160)は、他の種々の画面も同様に表示できる。更に、タッチスクリーンディスプレイ(160)は、従来型タッチスクリーン技術に順じて、ユーザがタッチスクリーンディスプレイ(160)と接触する形態として、ユーザ入力を受信するようにも、構成されている。更に、又は代替として、滅菌庫(150)は、限定されないが、ボタン、キーパッド、キーボード、マウス、トラックボール等を含む、他の種々の種類のユーザ入力機能を備えられる。
【0012】
更に、本例の滅菌庫(150)は、プロセッサ(162)も含み、このプロセッサは、滅菌モジュール(156)とタッチスクリーンディスプレイ(160)と通信する。プロセッサ(162)は、ユーザ入力に従って、滅菌モジュール(156)を駆動する制御アルゴリズムを実行するよう、動作可能である。更に、プロセッサ(162)は、種々のスクリーンをタッチスクリーンディスプレイ(160)上で表示し、更に、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して(及び/又は他のユーザ入力機能を介して)、ユーザから受信した命令を処理する命令を実行するようにも、動作可能である。プロセッサ(162)はまた、滅菌庫(150)の種々の他の構成要素と通信し、これにより、それらの構成要素を駆動し、かつ/又はそれらの構成要素からの入力及び/若しくは他のデータを処理するように動作可能である。本明細書の教示を鑑みて、プロセッサ(162)を形成するのに使用できる種々の適切な構成要素及び構成が、当業者に明らかとなるであろう。
【0013】
更に、本例の滅菌庫(150)は、識別タグリーダー(166)も含み、この識別タグリーダーは、本明細書で記載されるとおり、生物学的インジケータの識別タグを読み取るよう動作可能である。例示のみの目的として、識別タグリーダー(166)は、生物学的インジケータの光学識別タグ(例えば、バーコード、QRコード等)を読み取るよう動作可能な光学リーダーも、含められる。更に、又は代替として、識別タグリーダー(166)は、生物学的インジケータのRFID識別タグ(例えば、バーコード、QRコード等)を読み取るよう動作可能なRFIDリーダーも、含められる。本明細書の教示を鑑みて、識別タグリーダー(166)を形成するのに使用できる種々の適切な構成要素及び構成が、当業者に明らかとなるであろう。識別タグリーダー(166)を通じて受信されたデータは、プロセッサ(162)を介して処理される。
【0014】
更に、本例の滅菌庫(150)は、メモリー(168)も含み、このメモリーは、滅菌モジュール(156)、タッチスクリーンディスプレイ(160)、通信モジュール(154)、及び識別タグリーダー(166)等の構成要素を駆動するために、プロセッサ(162)により実行される制御ロジックと命令を格納するよう動作可能である。更に、メモリー(168)を使用して、滅菌サイクルの設定、負荷条件付けサイクルの性能、滅菌サイクルの性能、及び/又は様々な他の種類の情報に関連する結果を格納できる。本明細書の教示を鑑みて、メモリー(168)が取り得る種々の適切な形態、並びにメモリー(168)が使用できる様々な方法が、当業者に明らかとなるであろう。
【0015】
更に、本例の滅菌庫(150)は、滅菌サイクルの設定、負荷条件付けサイクルの性能、滅菌サイクルの性能、及び/又は様々な他の種類の情報に関連する結果等の情報を印刷するのに動作可能なプリンター(170)も、含む。例示のみの目的として、プリンター(170)は、熱プリンターを含められるが、ただし、当然のこととして、他の適切な種類のプリンターも使用可能である。本明細書の教示を鑑みて、プリンター(170)が取り得る種々の適切な形態、並びにプリンター(170)が使用できる様々な方法が、当業者に明らかとなるであろう。また、プリンター(170)が任意に過ぎず、いくつかの形態では、省かれている場合もあることも理解するものとする。
【0016】
本例の滅菌庫(150)は、真空源(180)と通気弁(182)とを更に含んでいる。真空源(180)は滅菌室(152)と流体連通しており、プロセッサ(162)とも通信している。従って、プロセッサ(162)は、1つ以上の制御アルゴリズムに従って真空源(180)を選択的に作動させるように動作可能である。真空源(180)が作動されているとき、真空源(180)は、以下で更に詳細に説明するように、滅菌室(152)内の圧力を低減するように動作可能である。通気弁(182)はまた、滅菌室(152)とも流体連通している。加えて、通気弁(182)は、プロセッサ(162)が1つ以上の制御アルゴリズムに従って通気弁(182)を選択的に作動させるように動作可能となるように、プロセッサ(162)と通信している。通気弁(182)が作動されているとき、通気弁(182)は、以下で更に詳細に説明するように、滅菌室(152)を大気に通気するように動作可能である。真空源(180)及び通気弁(182)を設けるために使用され得る様々な好適な構成要素が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなろう。
【0017】
上記に加えて、滅菌庫(150)は、参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,939,519号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,852,279号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,852,277号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,447,719号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,365,102号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,325,972号;及び/又は、参照により、開示が本明細書で援用される米国仮特許出願第62/316,722号の教示の少なくとも一部に従って、構成、動作可能である。
【0018】
II.例示的な滅菌プロセスの概要
図2は、内視鏡などの使用済みの医療機器を滅菌するために滅菌庫(150)が実施し得る工程の例示的なセットの高レベルフローチャートを示す。滅菌庫(150)は、1つ以上の滅菌サイクルを実施するように構成されてもよく、種々の滅菌サイクルは、様々なタイプ及び量の医療機器に適切なものである。従って、初期工程として、滅菌庫(150)は、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して1つ以上の利用可能な滅菌サイクルを表示し、次いでユーザから滅菌サイクルの選択を受信(ブロック200)してもよい。
【0019】
滅菌庫(150)はまた、選択された滅菌サイクルで生物学的インジケータが使用されるべきかどうかを示す命令を表示し、生物学的インジケータ識別を受信してもよい(ブロック202)。そのような生物学的識別(ブロック202)は、識別タグリーダ(166)を介して、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して、又は別の方法で与えられてよい。生物学的インジケータは、滅菌サイクルが開始する前に滅菌庫(150)の滅菌室(152)内に配置されてもよく、また滅菌サイクル中に滅菌室内に残存してもよい。かくして、ユーザは、生物学的インジケータを滅菌室に入れる前に、特定の生物学的インジケータを識別可能である(ブロック202)。生物学的インジケータは、特定の滅菌サイクルに反応する微生物を含められる。滅菌サイクルの完了次第、滅菌サイクルの有効性の測度を提供するために、微生物について、生物学的インジケータを試験できる。生物学的インジケータは、全ての滅菌サイクルについて必ずしも必要とされるわけではなく、病院の規則、又は現地の規制に基づいて、要求される場合がある。
【0020】
滅菌サイクルの選択(ブロック200)及び生物学的インジケータの識別(ブロック202)によって、滅菌室(152)内の医療機器の構成及び配置に関する1つ以上の要件が定義され得る。従って、滅菌サイクル(204)の準備を行うために、滅菌サイクルが選択され(ブロック200)、生物学的インジケータが識別されると(ブロック202)、滅菌庫(150)は、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して、適切な医療機器の配置を示す表示を提供し得る。この表示は、滅菌サイクルの選択(ブロック200)に基づいて滅菌庫(150)の滅菌室(152)内に医療機器を(そしておそらくは生物学的インジケータを)ユーザが配置するための視覚的ガイドとして働き得る。ユーザが指図されたとおりに医療機器を(そしておそらくは生物学的インジケータを)滅菌室(152)内に配置することを可能にするために、滅菌室(152)の扉は開放され得る。
【0021】
ユーザがこれらの指図に基づいて滅菌室(152)内に医療機器を配置すると、ユーザは、開始ボタン、又は医療機器の配置が完了したことを示す他のボタンを押すことができる。いくつかの変型形態では、滅菌庫(150)は、適切な医療機器の配置を自動的に確認するように構成される。単に一例として、滅菌庫(150)は、滅菌室(152)内における適切な医療機器の配置を確認するために、光センサー、イメージングデバイス、重量センサー、及び/又は他の構成要素を採用してもよい。しかしながら、滅菌庫(150)のいくつかの変型形態は、滅菌室(152)内における医療機器の適切な配置を自動的に確認する能力を持たない場合があることは理解されるべきである。
【0022】
医療機器の配置が確認され、かつ/又はユーザが別様にサイクルの準備を完了している(ブロック204)場合、滅菌庫(150)は、負荷調整プロセス(ブロック206)を開始し得る。負荷調整プロセス(ブロック206)は、滅菌サイクル中の最適な滅菌に向けて、滅菌室(152)及び滅菌室(152)内の医療機器を準備するものである。調整は、滅菌室(152)の1つ以上の特徴を制御及び最適化することを含み得る。例えば、負荷調整中、滅菌庫(150)は、例えば、滅菌室(152)内の空気を循環させ除湿し、滅菌室(152)内に真空を生じさせ、滅菌室(152)を加熱すること、及び/又は密閉室を除湿するための他の方法によって、水分レベルを低減しながら、滅菌室(152)内の水分レベルを連続的に監視し得る。これは、水分の許容レベルが到達されていると滅菌庫(150)が判断するまで継続し得る。
【0023】
負荷調整サイクル(ブロック206)の一部として、滅菌庫(150)はまた、例えば、加熱空気の対流、滅菌室(152)の内部表面を通じた伝導によって、かつ/又は他の技法を用いて滅菌室(152)を加熱しながら、滅菌室(152)内の温度を継続的に検出してもよい。これは、許容内部温度が到達されていると滅菌庫(150)が判断するまで継続し得る。温度又は湿度を制御することなど、様々な調整動作が、並行して実施されても順次に実施されてもよい。負荷調整サイクル(ブロック206)は、滅菌室が密閉されていることを検証すること、滅菌室の中身を検証すること、内容物の体積、内容物の重量、若しくは他の特徴など、滅菌室の内容物の物理的特徴を確認すること、及び/又は、水分を低減し、温度を上昇させ、且つ/若しくは滅菌サイクル(ブロック208)に対して滅菌室(152)内の医療機器を準備させるための化学処理、プラズマ処理、若しくは他の種類の処理を含み得る1つ以上の調整工程を実施することが可能であることもまた理解されたい。
【0024】
1つ以上の調整動作は、負荷調整サイクル(ブロック206)の一部として実施されているが、滅菌庫(150)は、滅菌サイクル(ブロック208)の実施が開始し得るまでの期間をユーザに示す情報をタッチスクリーンディスプレイ(160)を介して表示し得る。全ての負荷調整基準が正常に満たされると、負荷調整サイクル(ブロック206)は完了し、滅菌サイクル(ブロック208)が次いで実施され得る。従って、滅菌庫(150)は、負荷調整サイクル(ブロック206)が完了するまで滅菌サイクル(ブロック208)が実際には開始されないように構成されていることを理解されたい。また、負荷調整サイクル(ブロック206)は滅菌庫(150)の動作のいくつかの変型形態では省略又は変更されてもよいことを理解されたい。
【0025】
上記のように、滅菌庫(150)は、負荷調整サイクル(ブロック206)が完了した後で、自動的にかつ直ちに滅菌サイクル(ブロック208)を実施し始め得る。滅菌サイクル(ブロック208)は、滅菌室内の医療機器(複数可)を加圧滅菌ガス、更なる熱処理、化学処理、プラズマ処理、真空処理、及び/又は他の種類の滅菌処理に晒すことを、含められる。滅菌サイクル(ブロック208)の実施中、滅菌庫(150)は、滅菌サイクル(ブロック208)の残りの期間、滅菌サイクル(ブロック208)の現在の段階(例えば、プラズマ、真空、注入、加熱、化学処理)、及び/又は他の情報などの情報を、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して表示してもよい。
【0026】
いくつかの変型形態では滅菌サイクル(ブロック208)は、図3に示す例示的なサブステップを含む。具体的には、サイクルは、滅菌室(152)内に減圧を適用する(ブロック310)ことで開始してもよい。そのような減圧をもたらすために、プロセッサ(162)は、制御アルゴリズムに従って真空源(180)を作動させてもよい。プロセッサ(162)は次いで、十分な圧力レベルが滅菌室(152)内で到達されているかどうかを判断する(ブロック312)。単に一例として、プロセッサ(162)は、判断ステップ(ブロック312)の一部として、滅菌室(152)内の1つ以上の圧力センサーからのデータを監視してもよい。それに代わって、プロセッサ(162)は、単純に所定の期間にわたって真空源(180)を作動させ、真空源(180)が作動されている期間に基づいて適切な圧力が滅菌室(152)内で達成されたと仮定してもよい。十分な圧力レベルが滅菌室(152)内で達成されたかどうかをプロセッサ(162)が判断し得る(ブロック312)他の好適な方式が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなろう。適切な圧力レベルが滅菌室(152)内で達成されるまで、真空源(180)は依然として作動されることになる。
【0027】
滅菌室(152)が適切な圧力レベル(例えば、約0.03kPa~約1kPa(約0.2トル~約10トル))に到達すると、プロセッサ(162)は次いで、滅菌モジュール(156)を作動させて滅菌室(152)内に滅菌剤を適用する(ブロック314)。プロセスのこの段階は、「移送フェーズ」と呼ばれることがある。単に一例として、滅菌剤は、過酸化水素、ペルオキシ酸(例えば、過酢酸、過ギ酸など)、オゾン、又はそれらの混合物など、酸化剤の蒸気を含んでもよい。更に、滅菌剤は二酸化塩素を含んでもよい。滅菌剤が取り得る様々な他の好適な形態が本明細書に記載されているが、他の形態も、本明細書の教示に鑑みれば当業者には明らかとなろう。また、いくつかの変型形態では、滅菌剤は上記で説明したようにサイクルのユーザの選択(ブロック200)に基づいて滅菌剤が様々な方式で適用され得る(ブロック314)ことが理解されよう。滅菌剤が滅菌室(152)に適用されると(ブロック314)、プロセッサ(162)は、十分な所定の期間が経過したかどうかを判断するための時間を監視する(ブロック316)。単に一例として、この所定の期間は、数秒間から数分間であってよい。所定の期間が経過するまで、滅菌室(152)は、依然として上記の所定の圧力レベルで密閉状態にあり、適用された滅菌剤は滅菌室(152)内に格納された医療機器に作用する。
【0028】
所定の期間が経過した後、プロセッサ(162)は通気弁(182)を作動させて(ブロック318)滅菌室(152)を大気に通気する。いくつかの変型形態では、滅菌室(152)は、大気圧に到達することが可能であるが、他の変型形態では、滅菌室(152)は単に準大気圧に到達する。プロセスの通気段階は、「拡散フェーズ」と呼ばれることがある。本例では、滅菌サイクルは次いで、拡散フェーズの完了後に完了する(ブロック320)。いくつかの他の例では、減圧が拡散フェーズの完了後に再び滅菌室(152)に適用され、次いでプラズマが滅菌室(152)に適用される。図3に示す全滅菌サイクル(後に減圧が、次いで滅菌が適用される上記の変型形態を含む)は、1度、完了された後に、1回以上、反復されてもよい。換言すれば、医療機器は滅菌室(152)内に残留し、図3に示す全サイクル(後に減圧が、次いで滅菌が適用される上記の変型形態を含む)を2回以上繰り返して経験してもよい。繰り返しの回数は、サイクルの選択(ブロック200)に基づいて異なってもよく、その選択は、滅菌室(152)内で滅菌されている医療機器の特定の種類によって左右され得る。
【0029】
図4は、図3に示し上記で説明した滅菌サイクル(ブロック208)の実施中における滅菌室(152)内の圧力を示す例示的なプロット(400)を示している。図から分かるように、圧力レベルは、真空源(180)が作動されて滅菌室(152)に減圧を適用した(ブロック310)ときに著しく急減に低下している。圧力レベルは次いで、滅菌剤が適用される(ブロック314)間、またその後の所定の期間(ブロック316)、実質的に一定に留まっている。圧力レベルは次いで、通気弁(182)が作動されて(ブロック318)滅菌室(152)が大気に通気されたときに、著しく急激に増大している。従って、一般的に言えば、プロット(400)は、滅菌室(152)内の圧力がどのようにして、単一の比較的高いレベル(すなわち大気圧)と単一の比較的低いレベル(すなわち真空状態)との間で簡潔にトグルするかを示している。例示的で代替的な滅菌サイクルについて、図5~6を参照して以下で更に詳細に説明する。
【0030】
滅菌サイクル(ブロック208)が完了すると、滅菌庫(150)は、滅菌サイクル(ブロック208)の結果をサイクルし得る(ブロック210)。例えば、エラーが原因で或いはユーザの処置によって、滅菌サイクル(ブロック208)がキャンセルされるか或いは完了することができない場合、滅菌庫(150)は依然として密閉され得、またタッチスクリーンディスプレイ(160)を介して、滅菌サイクルキャンセルメッセージ、並びに、日付、時間、構成、経過時間、滅菌サイクル操作者、滅菌サイクルが失敗した段階、及び滅菌サイクルの理由を特定するために用いられ得る他の情報など、滅菌サイクルに関連する様々な詳細を表示してもよい。滅菌サイクル(ブロック208)が正常に完了すると、滅菌庫(150)は、滅菌サイクル(ブロック208)が正常に完了したことを示す通知を、タッチスクリーンディスプレイ(160)を介して表示してもよい。加えて、滅菌庫(150)は、滅菌サイクル識別子、滅菌サイクルタイプ、開始時間、持続時間、操作者、及び他の情報(666)などの情報を表示してもよい。
【0031】
上記に加えて、滅菌庫(150)は、開示が本明細書で援用される米国特許第6,939,519号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,852,279号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,852,277号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,447,719号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,365,102号;参照により、開示が本明細書で援用される米国特許第6,325,972号;及び/又は、参照により、開示が本明細書で援用される米国仮特許出願第62/316,722号の教示の少なくとも一部に従って、滅菌プロセスを実行するように構成可能である。
【0032】
III.例示的で代替的な滅菌サイクル
上記のように、滅菌庫(150)のいくつかの変型形態は、比較的長く狭いルーメンを有する可撓性内視鏡などの医療機器を効果的に滅菌することが困難となり得る。例えば、いくつかの従来の滅菌庫は、約875mmより短いか又はそれに等しく、ルーメン直径が約1mm以上であるルーメンを滅菌することが可能となり得る。従って、1つ以上の比較的長く狭いルーメンを有する医療機器の効果的な滅菌を更に促進する、修正された滅菌サイクル(ブロック208)を提供することが望ましくなり得る。そのような修正された滅菌サイクルの単に説明のための例について、以下で更に詳細に説明する。単に一例として、1つ以上の比較的長く狭いルーメンを有する医療機器は、約1m長~約3m長であり、約0.5mm~約2.0mmの直径を有するルーメンを備える胃腸内視鏡を含み得る。それにもかかわらず、以下で説明するプロセスはまた、少なくとも約500mm又は少なくとも約800mmの長さを有し、約6.0mm未満の直径を有するルーメンを備える内視鏡に対しても実施され得ることを理解されたい。
【0033】
図5は、滅菌庫(150)の滅菌サイクル(ブロック208)を提供するために実施され得るサブステップの例示的で代替的なセットを示している。具体的には、サイクルは、滅菌室(152)内に減圧を施す(ブロック510)ことで開始してもよい。そのような減圧をもたらすために、プロセッサ(162)は、制御アルゴリズムに従って真空源(180)を作動させてもよい。プロセッサ(162)は次いで、十分な圧力レベルが滅菌室(152)内で到達したかどうかを判断する(ブロック512)。単に一例として、プロセッサ(162)は、判断ステップ(ブロック512)の一部として、滅菌室(152)内の1つ以上の圧力センサーからのデータを監視してもよい。それに代わって、プロセッサ(162)は、単純に所定の時間期間にわたって真空源(180)を作動させ、真空源(180)が作動されている期間に基づいて適切な圧力が滅菌室(152)において到達されたと仮定してもよい。十分な圧力レベルが滅菌室(152)内で達成されたかどうかをプロセッサ(162)が判断し得る(ブロック512)他の好適な方式が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなろう。適切な圧力レベルが滅菌室(152)内で達成されるまで、真空源(180)は依然として作動されることになる。
【0034】
滅菌室(152)が適切な圧力レベル(例えば、約0.03kPa~約1kPa(約0.2トル~約10トル))に到達すると、プロセッサ(162)は次いで、滅菌モジュール(156)を作動させて滅菌室(152)内に滅菌剤を適用する(ブロック514)。単に一例として、滅菌剤は、過酸化水素、ペルオキシ酸(例えば、過酢酸、過ギ酸など)、オゾン、又はそれらの混合物など、酸化剤の蒸気を含んでもよい。更に、滅菌剤は二酸化塩素又は二酸化窒素を含んでもよい。滅菌剤が取り得る様々な他の好適な形態が本明細書に記載されているが、他の形態も、本明細書の教示に鑑みれば当業者には明らかとなろう。また、いくつかの変型形態では、滅菌剤は上記で説明したようにサイクルのユーザの選択(ブロック200)に基づいて滅菌剤が様々な方式で適用され得る(ブロック514)ことが理解されよう。滅菌剤が滅菌室(152)に適用されると(ブロック514)、プロセッサ(162)は、十分な所定の期間が経過したかどうかを判断するための時間を監視する(ブロック516)。単に一例として、この所定の期間は、数秒間から数分間であってよい。所定の期間が経過するまで、滅菌室(152)は、依然として上記の所定の圧力レベルで密閉状態にあり、適用された滅菌剤は滅菌室(152)内に格納された医療機器に作用する。プロセスのこの段階は、「移送フェーズ」と呼ばれることがある。
【0035】
所定の期間が経過した後、プロセッサ(162)は通気弁(182)を作動させて(ブロック518)滅菌室(152)を大気に通気する。滅菌室(152)が大気に通気されている状態で(ブロック518)、プロセッサ(162)は、十分な所定の通気(ブロック518)期間が経過したかどうかを判断するための時間を監視する(ブロック520)。所定の通気(ブロック518)期間が経過するまで、滅菌室(152)は依然として通気状態にある。所定の通気(ブロック518)期間が経過した後、プロセッサ(162)は、滅菌サイクルが完了したかどうかを判断する(ブロック522)。この決定(ブロック522)がどのようにしてなされ得るかの例について、以下で更に詳細に説明することにする。本例では、所定の通気(ブロック518)期間は非常に短時間であってよいことを理解されたい。単に一例として、所定の通気(ブロック518)期間は、約1秒間、2秒間、3秒間、4秒間、5秒間、又は任意の他の好適な期間であってよい。
【0036】
滅菌サイクルが完了したとプロセッサ(612)が判断した場合(ブロック522)、滅菌サイクルは実際に完了している(ブロック528)。しかしながら、滅菌サイクルがまだ完了していないとプロセッサ(162)が判断した場合(ブロック522)、プロセッサ(162)は、通気弁(182)を閉鎖して、依然として大気圧未満である圧力レベルで滅菌室(152)を密閉する(ブロック524)。上記のように、通気(ブロック518)期間はこの例では非常に短く、従って、密閉(ブロック524)が適切であることが判断(ブロック520、522)によって確かめられたと仮定して、密閉する(ブロック524)動作は、通気(ブロック518)が開始された後に非常に迅速に生じ得る。
【0037】
滅菌室(152)は、特定の期間にわたって依然として密閉されることになる(ブロック524)。具体的には、滅菌室(152)が密閉されている状態で(ブロック524)、プロセッサ(162)は、十分な所定の密閉(ブロック524)期間が経過したかどうかを判断するための時間を監視する(ブロック526)。所定の密閉(ブロック524)期間が経過するまで、滅菌室(152)は依然として密閉状態にある。所定の密閉(ブロック524)期間が経過した後、プロセッサ(162)は通気弁(182)を再び作動させて(ブロック518)滅菌室(152)を大気に通気する。単に一例として、所定の密閉期間は、約5秒間~5分間、又はより具体的には約10秒間~約2分間、又はより具体的には約20秒間~約2分間であってよい。
【0038】
この時点で、プロセスは、上記で説明したステップ(ブロック518、520、522、524、526)を通じて継続し、それによって、プロセスは、滅菌室(152)の一連の通気(ブロック518)と密閉(ブロック524)を提供して、滅菌室(152)が大気圧又は所定の準大気圧に到達するまで滅菌室(152)内の圧力を段階的な形式で増大させる。ここでも、通気(ブロック518)の各ステップは、この例では非常に短時間であり、そのため、滅菌室(152)内の圧力は、(例えば、約数秒間又は数分間の期間にわたって)密閉する(ブロック524)動作の間、大気圧未満のレベルに保たれる。単に一例として、通気(ブロック518)の最終ステップが達成されるまで、通気(ブロック518)の各ステップは結果として、約1kPa~約13kPa(約10トル~約100トル)、又はより具体的には約1kPa~約4kPa(約10トル~約30トル)だけ、滅菌室(152)内の圧力をそれぞれ増大させることになり得る。本明細書の教示を鑑みれば、他の好適な段階的圧力増大値が当業者には明らかとなろう。滅菌庫(150)がプロセスの最後に到達すると、滅菌室(152)が依然として大気圧に留まるように、通気弁(182)は依然として開放している。プロセスのこの最後の通気ステップ(ブロック518)は、「拡散フェーズ」と呼ばれることがある。
【0039】
いくつかの変型形態では、通気期間(ブロック520)及び/又は密閉期間(ブロック526)は様々となり得る。例えば、通気期間(ブロック520)及び/又は密閉期間(ブロック526)は、サイクルの選択(ブロック200)に基づいて異なってもよく、その選択は、滅菌室(152)内で滅菌されている医療機器の特定の種類によって左右され得る。それに加えて又はそれに代わって、通気期間(ブロック520)及び/又は密閉期間(ブロック526)は、滅菌サイクルがプロセス内のどこに位置するか(すなわち、どの通気(ブロック518)の繰り返し及び/又はどの密閉(ブロック524)の繰り返し)に基づいて変動し得る。通気期間(ブロック520)及び/又は密閉期間(ブロック526)が変動し得る様々な好適な方式、並びに、そのような期間が変動し得る様々な根拠が、本明細書の教示を鑑みれば当業者には明らかとなろう。
【0040】
図6は、図5に示し上記で説明した滅菌サイクル(ブロック208)の実施中における滅菌室(152)内の圧力を示す例示的なプロット(600)を示している。図から分かるように、圧力レベルは、真空源(180)が作動されて滅菌室(152)に減圧を適用した(ブロック510)ときに著しく急減に低下している。圧力レベルは次いで、滅菌剤が適用される(ブロック514)間、またその後の所定の期間(ブロック516)、実質的に一定に留まっている。圧力レベルは次いで、通気弁(182)が作動されて(ブロック518)滅菌室(152)が大気に通気されたときに、わずかに増大しているが、滅菌室(152)が密閉されたとき(ブロック524)、依然として大気圧未満のレベルに留まっている。圧力レベルは、通気弁(182)が再度作動されて(ブロック518)滅菌室(152)が大気に通気されたときに、再びわずかに増大しているが、滅菌室(152)が再び密閉されたとき(ブロック524)、やはり依然として大気圧未満のレベルに留まっている。
【0041】
図6に示す例では、サイクルは、最終的に完全に大気に通気する(ブロック518)前に、短時間の通気(ブロック518)の4回の繰り返しをもたらし、それに密閉(ブロック524)の4回の繰り返しが続いている。従って、一般的に言えば、プロット(600)は、滅菌室(152)内の圧力がどのようにして、実質的に真空の状態から大気圧へと段階的な形式で増大されるかを示している。図6は、短時間の通気と短時間の密閉の4回の繰り返しを示しているが、他のプロセスが、短時間の通気と短時間の密閉の他の任意の好適な回数の繰り返しを用いてよい。単に一例として、各変型形態は、短時間の通気と短時間の密閉の2回の繰り返し~短時間の通気と短時間の密閉の100回の繰り返し、又はより具体的には、短時間の通気と短時間の密閉の2回の繰り返し~短時間の通気と短時間の密閉の10回の繰り返し、又はより具体的には、短時間の通気と短時間の密閉の3回の繰り返し~短時間の通気と短時間の密閉の7回の繰り返しをもたらしてもよい。
【0042】
いくつかの例では、図5~6に示すプロセスは、図3~4に示すプロセスを用いる同じ医療機器の滅菌と比較して、いくつかの医療機器のより効果的な滅菌をもたらし得る。具体的には、理論によって制限されるものではないが、滅菌室(152)の段階的な通気は、滅菌室(152)の内容物の攪拌をもたらし得るが、この攪拌が、医療機器内のルーメン及び/又は他の内部空間の中に滅菌剤を押しやるのを支援し得る。更に、同様に理論によって制限されるものではないが、図5~6に示すプロセスと関連付けられ得る、滅菌室(152)の段階的な通気は、図3~4に示すプロセスと関連付けられる蒸気の単純な拡散物質移動と比較して、医療機器内のルーメン及び/又は他の内部空間の内側における滅菌剤蒸気分子の対流物質移動をもたらし得る。従って、滅菌庫(150)が図5~6に示すプロセスを実施するとき、滅菌庫(150)は、同じ種類の胃腸内視鏡の長く狭いルーメンを滅菌することができない、図3~4に示すプロセスを実施する滅菌庫(150)と比較して、相対的に長い(例えば、最大で長さが約3mであり、最大で約1mmの直径を有するルーメンを備える)胃腸内視鏡を滅菌し得る。
【0043】
また、図5~6に示す全サイクルは、1回完了された後に、1回以上反復され得ることを理解されたい。換言すれば、医療機器は滅菌室(152)内に残留し、図5~6に示す全サイクルを2回以上繰り返す経験をしてもよい。繰り返しの回数は、サイクルの選択(ブロック200)に基づいて異なってもよく、その選択は、滅菌室(152)内で滅菌されている医療機器の特定の種類によって左右され得る。
【0044】
単に一例として、3m長のルーメンを有する内視鏡が滅菌室(152)内に配置されてもよい。減圧が適用されて(ブロック510)、滅菌室(152)内で約0.60kPa(約4.5トル)の圧力レベルが達成され得る。次いで滅菌剤(例えば、59%の濃度の約1mLの過酸化水素蒸気)が適用されて(ブロック514)、約30秒間続く移送フェーズがもたらされ得る。次いで滅菌室(152)が短時間通気されて(ブロック518)、約1.83kPa(約13.7トル)の圧力レベルを達成し得、次いで滅菌室(152)は密閉され得る(ブロック524)。滅菌室(152)は、約150秒間にわたって約1.83kPa(約13.7トル)に維持され得る。次いで滅菌室(152)は短時間、再度通気されて(ブロック518)、約4.01kPa(約30.1トル)の圧力を達成し得、次いで滅菌室(152)は再び密閉され得る(ブロック524)。滅菌室(152)は、約200秒間にわたって約4.01kPa(約30.1トル)に維持され得る。次いで滅菌室(152)は短時間、再度通気されて(ブロック518)、約6.28kPa(約47.1トル)の圧力を達成し得、次いで滅菌室(152)は再び密閉され得る(ブロック524)。滅菌室(152)は、約190秒間にわたって約6.28kPa(約47.1トル)に維持され得る。次いで滅菌室(152)は短時間、再度通気されて(ブロック518)、約101Pa(約760トル)(すなわち大気圧)の圧力レベルを達成し得、それによって拡散フェーズをもたらし得る。当然のことながら、上記は単に説明のための例に過ぎない。
【0045】
いくつかの変型形態では、通気(ブロック518)の最終ステップが達成される前に、更なる滅菌剤が、段階的な通気(ブロック518)の動作のうちの1つ以上の間に滅菌室(152)内に導入される。
【0046】
またいくつかの変型形態では、滅菌室(152)内に格納された医療機器を加熱するために、プレプラズマが滅菌サイクル(ブロック208)において適用されてもよい。単に一例として、プラズマは、減圧の適用(ブロック510)と滅菌剤の適用(ブロック514)との間に適用されてもよい。それに加えて又はそれに代わって、滅菌室(152)内に格納された医療機器の表面に吸収され得る残存滅菌剤を分解するために、ポストプラズマが滅菌サイクル(ブロック208)の最後に適用されてもよい。ポストプラズマを適用する前に、まず減圧が滅菌室(152)に適用されることが必要となることを理解されたい。
【0047】
上記のように、滅菌剤は、滅菌室(152)内で蒸気の形態で適用される(ブロック514)。単に一例として、滅菌モジュール(156)は、蒸発器と凝縮器との組み合わせを備えてもよい。蒸発器は、特定の濃度の滅菌溶液(例えば、公称約59%、又は約58%~約59.6%の濃度の液体過酸化水素溶液)を受容する室を含んでもよく、ここで滅菌溶液は液相から気相へと変化する。凝縮器は、滅菌溶液の凝縮をもたらし得るが、その滅菌溶液の濃度は従って、水蒸気の除去によって(例えば、公称約59%から、公称約83%~公称約95%の間まで)増加され得る。それに代わって、滅菌室(152)内で蒸気の形態で滅菌剤を適用するために、任意の他の好適な方法及び構成要素が用いられてよい。いずれにせよ、蒸気の形態での滅菌剤の適用を補足するために、滅菌剤はまた、医療機器が滅菌室(152)内に配置される前に、医療機器内のルーメン及び/若しくは他の内部空間の内側、並びに/又は医療機器の外側に適用されてもよい。そのような変型形態では、滅菌剤は、減圧が適用されている間に(ブロック510)、更には減圧が適用された後(ブロック510)にも蒸発し得、また、医療機器のうちの浸透範囲のより狭いエリアにより高濃度の滅菌剤を供給し、それによって効果的な滅菌を更に促進し得る。
【0048】
単に一例として、図5に示すプロセスは、滅菌室(152)の壁が約30℃~約56℃、より具体的には約47℃~約56℃、更により具体的には約50℃となり、滅菌室(152)内の医療機器の温度が約5℃~10℃と約40℃~55℃の間となる温度で実行され得る。
【0049】
上記の例は、医療機器を、特に内視鏡を滅菌する状況で説明されているが、本明細書の教示はまた、様々な他の種類の物品を滅菌する状況で容易に適用され得ることを理解されたい。これらの教示は、内視鏡又は他の医療機器に限定されるものではない。本明細書の教示に従って滅菌され得る他の好適な物品が、当業者には明らかとなろう。
【0050】
IV.例示の組み合わせ
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の出願におけるどの時点でも提示され得るいずれの請求項の適用範囲をも限定することを目的としたものではない点は理解されるべきである。一切の放棄を意図するものではない。以下の実施例は単なる例示の目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は他の多くの方法で構成及び適用が可能であると思料される。また、幾つかの変形例では、以下の実施例において言及される特定の要素を省略してもよいことも思料される。従って、本発明者によって、又は本発明者の利益となる継承者によって、後日、そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は要素のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。以下に言及される要素以外の更なる要素を含む請求項が本出願において、又は本出願に関連する後の出願において示される場合、これらの更なる要素は、特許性に関連するいずれの理由によって追加されたものとしても仮定されるべきではない。
【実施例0051】
(実施例1)
物品を滅菌する方法であって、(a)滅菌室内で物品を受容することと、(b)滅菌室内の圧力を第1の圧力へと低減するために、滅菌室に減圧を適用する工程であって、第1の圧力は大気圧よりも低い、ことと、(c)滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、(d)第1の期間にわたって滅菌室内の第1の圧力を維持することと、(e)滅菌室内の圧力を第2の圧力へと増大させるために、滅菌室を通気することであって、第2の圧力は大気圧よりも低い、ことと、(f)第2の期間にわたって滅菌室内の第2の圧力を維持することと、(g)滅菌室内の圧力を第3の圧力へと増大させるために、滅菌室を通気することと、(h)第3の期間にわたって滅菌室内の第3の圧力を維持することと、を含む方法。
【0052】
(実施例2)
物品は医療機器を含む、実施例1に記載の方法。
【0053】
(実施例3)
医療機器は内視鏡を含む、実施例2に記載の方法。
【0054】
(実施例4)
内視鏡はルーメンを画定する、実施例3に記載の方法。
【0055】
(実施例5)
ルーメンは、少なくとも800mmの長さと、6mm未満の内径を有する、実施例4に記載の方法。
【0056】
(実施例6)
第2の期間は第1の期間よりも長い、実施例1~5のいずれか1つに記載の方法。
【0057】
(実施例7)
第1の期間は約5秒間~約5分間である、実施例1~6のいずれか1つに記載の方法。
【0058】
(実施例8)
第1の期間は約20秒間~約2分間である、実施例1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0059】
(実施例9)
第2の圧力は、第1の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、第1の圧力よりも約13kPa(約100トル)高い圧力との間にある、実施例1~8のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
(実施例10)
第2の圧力は、第1の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、第1の圧力よりも約4kPa(約30トル)高い圧力との間にある、実施例1~9のいずれか1つに記載の方法。
【0061】
(実施例11)
第3の圧力は、第2の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、第2の圧力よりも約13kPa(約100トル)高い圧力との間にある、実施例1~10のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
(実施例12)
第3の圧力は約101kPa(約760トル)である、実施例1~11のいずれか1つに記載の方法。
【0063】
(実施例13)
滅菌室にプラズマを適用する工程を更に含む、実施例1~12のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
(実施例14)
プラズマを適用する動作は、滅菌室に減圧を適用する動作と、滅菌室に滅菌剤を導入する動作との間で、滅菌室にプラズマを適用することを含む、実施例13に記載の方法。
【0065】
(実施例15)
プラズマを適用する動作は、(i)滅菌室内の第3の圧力を維持した後で滅菌室を減圧することと、(ii)次いでプラズマを適用することと、を含む、実施例13又は14に記載の方法。
【0066】
(実施例16)
滅菌室内の圧力を第2の圧力に増大させるために、滅菌室を通気する動作の間に、滅菌室の中に更なる滅菌剤を導入することを更に含む、実施例1~15のいずれか1つに記載の方法。
【0067】
(実施例17)
滅菌室内で物品を受容する前に、物品内の1つ以上の内部空間に滅菌剤を適用することを更に含む、実施例1~16のいずれか1つに記載の方法。
【0068】
(実施例18)
滅菌剤は、過酸化水素、ペルオキシ酸、オゾン、又はそれらの混合物からなる群から選択される、実施例1~17のいずれか1つに記載の方法。
【0069】
(実施例19)
物品を滅菌する方法であって、(a)滅菌室内で物品を受容することと、(b)滅菌室内の圧力を大気圧未満に低減するために、滅菌室に減圧を適用することと、(c)滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、(d)大気圧に到達することなく滅菌室内の圧力を漸増的に増大させるために、滅菌室を通気することと、(e)ある期間にわたって滅菌室内の漸増的に増大した圧力を維持することと、(f)ステップ(d)から(e)を少なくとも1度、反復することと、(g)滅菌室内の圧力を大気圧へと増大させるために、滅菌室を通気することと、を含む方法。
【0070】
(実施例20)
(a)医療機器を受容するように構成された滅菌室と、(b)滅菌室と流体連通している真空源と、(c)滅菌室と流体連通している滅菌剤適用モジュールと、(d)滅菌室と流体連通している通気弁であって、滅菌室と大気との間の通気経路を選択的に開閉するために通気弁が動作可能となるように、大気と更に流体連通している通気弁と、(e)真空源と連通している制御モジュールであって、滅菌剤適用モジュールと更に連通しており、通気弁と更に連通しており、滅菌アルゴリズムを実行するように構成された制御ロジックを含み、制御ロジックは、(i)滅菌室に減圧を適用するために真空源を作動させ、(ii)滅菌室に滅菌剤を適用するために滅菌剤適用モジュールを作動させ、(iii)滅菌室内の圧力を大気圧に向かって段階的かつ漸増的に増大させるために通気弁を選択的に作動させるように構成されている、通気弁と、を備える装置。
【0071】
V.その他
本明細書に参照により組み込まれると言及されたいかなる特許、刊行物、又は他の開示内容は、全体的に又は部分的に、組み込まれた内容が現行の定義、見解、又は本開示に記載された他の開示内容とあくまで矛盾しない範囲でのみ本明細書に組み込まれることを認識されたい。それ自体、また必要な範囲で、本明細書に明瞭に記載される開示内容は、参照により本明細書に組み込まれるあらゆる矛盾する記載に優先するものとする。参照により本明細書に組み込まれるものとするが、既存の定義、記載、又は本明細書に記載される他の開示文献と矛盾する任意の文献、又はそれらの部分は、援用文献と既存の開示内容との間に矛盾が生じない範囲においてのみ組み込まれるものとする。
【0072】
以上、本発明の様々な実施形態を図示及び説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者による適切な改変により、本明細書に記載される方法及びシステムの更なる適合化を実現することができる。そのような可能な改変のうちのいくつかについて述べたが、他の改変も当業者には明らかになるであろう。例えば、上記で論じた実施例、実施形態、形状、材料、寸法、比率、工程などは例示的なものであって必須のものではない。従って、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲の観点から考慮されるべきものであり、本明細書及び図面において図示、説明された構造及び動作の細部に限定されないものとして理解されたい。
【0073】
〔実施の態様〕
(1) 物品を滅菌する方法であって、
(a)滅菌室内で前記物品を受容することと、
(b)前記滅菌室内の圧力を第1の圧力へと低減するために、前記滅菌室に減圧を適用することであって、前記第1の圧力は大気圧よりも低い、ことと、
(c)前記滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、
(d)第1の期間にわたって前記滅菌室内の前記第1の圧力を維持することと、
(e)前記滅菌室内の圧力を第2の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することであって、前記第2の圧力は大気圧よりも低い、ことと、
(f)第2の期間にわたって前記滅菌室内の前記第2の圧力を維持することと、
(g)前記滅菌室内の圧力を第3の圧力へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、
(h)第3の期間にわたって前記滅菌室内の前記第3の圧力を維持することと、を含む方法。
(2) 前記物品は医療機器を含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記医療機器は内視鏡を含む、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記内視鏡はルーメンを画定する、実施態様3に記載の方法。
(5) 前記ルーメンは、少なくとも800mmの長さと、6mm未満の内径を有する、実施態様4に記載の方法。
【0074】
(6) 前記第2の期間は前記第1の期間よりも長い、実施態様1に記載の方法。
(7) 前記第1の期間は約5秒間~約5分間である、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記第1の期間は約20秒間~約2分間である、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、前記第1の圧力よりも約13kPa(約100トル)高い圧力との間にある、実施態様1に記載の方法。
(10) 前記第2の圧力は、前記第1の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、前記第1の圧力よりも約4kPa(約30トル)高い圧力との間にある、実施態様1に記載の方法。
【0075】
(11) 前記第3の圧力は、前記第2の圧力よりも約1kPa(約10トル)高い圧力と、前記第2の圧力よりも約13kPa(約100トル)高い圧力との間にある、実施態様1に記載の方法。
(12) 前記第3の圧力は約101kPa(約760トル)である、実施態様1に記載の方法。
(13) 前記滅菌室にプラズマを適用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(14) 前記プラズマを適用する動作は、前記滅菌室に前記減圧を適用する動作と、前記滅菌室に前記滅菌剤を導入する動作との間で、前記滅菌室にプラズマを適用することを含む、実施態様13に記載の方法。
(15) 前記プラズマを適用する動作は、(i)前記滅菌室内の前記第3の圧力を維持した後で前記滅菌室を減圧することと、次いで(ii)プラズマを適用することとを含む、実施態様13に記載の方法。
【0076】
(16) 前記滅菌室内の前記圧力を前記第2の圧力に増大させるために、前記滅菌室を通気する動作の間に、前記滅菌室の中に更なる滅菌剤を導入することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(17) 前記滅菌室内で前記物品を受容する前に、前記物品内の1つ以上の内部空間に滅菌剤を適用することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(18) 前記滅菌剤は、過酸化水素、ペルオキシ酸、オゾン、又はそれらの混合物からなる群から選択される、実施態様1に記載の方法。
(19) 物品を滅菌する方法であって、
(a)滅菌室内で前記物品を受容することと、
(b)前記滅菌室内の圧力を大気圧未満に低減するために、前記滅菌室に減圧を適用することと、
(c)前記滅菌室の中に滅菌剤を導入することと、
(d)大気圧に到達することなく前記滅菌室内の圧力を漸増的に増大させるために、前記滅菌室を通気することと、
(e)ある期間にわたって前記滅菌室内の前記漸増的に増大した圧力を維持することと、
(f)ステップ(d)から(e)を少なくとも1度、反復することと、
(g)前記滅菌室内の前記圧力を大気圧へと増大させるために、前記滅菌室を通気することと、を含む方法。
(20) 装置であって、
(a)医療機器を受容するように構成された滅菌室と、
(b)前記滅菌室と流体連通している真空源と、
(c)前記滅菌室と流体連通している滅菌剤適用モジュールと、
(d)前記滅菌室と流体連通している通気弁であって、前記滅菌室と大気との間の通気経路を選択的に開閉するために前記通気弁が動作可能となるように、大気と更に流体連通している通気弁と、
(e)前記真空源と連通している制御モジュールであって、前記滅菌剤適用モジュールと更に連通しており、前記通気弁と更に連通しており、滅菌アルゴリズムを実行するように構成された制御ロジックを含み、前記制御ロジックは、
(i)前記滅菌室に減圧を適用するために前記真空源を作動させ、
(ii)前記滅菌室に滅菌剤を適用するために前記滅菌剤適用モジュールを作動させ、
(iii)前記滅菌室内の圧力を大気圧に向かって段階的かつ漸増的に増大させるために前記通気弁を選択的に作動させるように構成されている、制御モジュールと、を備える装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6