(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078224
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】重合油及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
E01C 7/18 20060101AFI20220517BHJP
C08L 95/00 20060101ALI20220517BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20220517BHJP
【FI】
E01C7/18
C08L95/00
C08L91/00
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022034537
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2021003914の分割
【原出願日】2016-02-26
(31)【優先権主張番号】62/126,064
(32)【優先日】2015-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397058666
【氏名又は名称】カーギル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】トッド・カース
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー・スティーバーマー
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン・タバタベー
(72)【発明者】
【氏名】スコット・ニーブンス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】重合油、ならびに再利用の及び劣化した瀝青材料を含有する新アスファルト及び/または舗道の性能を強化するために、油を重合してアスファルトに混合する方法を提供する。
【解決手段】約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び0.001重量%~約8重量%の範囲の硫黄分を含む、重合された、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された重合油を生成する。前記重合油をアスファルト舗装、ルーフィング及びコーティング用途へ取り込む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合された生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油(「重合油」)であって、前記油が、
(a)約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
(b)約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
(c)約0.001重量%~約8重量%の硫黄分、を含む、前記油。
【請求項2】
前記ポリマー分布が約15%~約60%のオリゴマー含有量を有する、請求項1に記載の重合油。
【請求項3】
前記多分散指数が約1.50~約2.05の範囲である、請求項1に記載の重合油。
【請求項4】
前記硫黄分が約6重量%未満である、請求項1に記載の重合油。
【請求項5】
前記硫黄分が約4重量%未満である、請求項1に記載の重合油。
【請求項6】
前記硫黄分が約2重量%未満である、請求項1に記載の重合油。
【請求項7】
約100℃~約400℃の範囲の引火点を有する、請求項1に記載の重合油。
【請求項8】
約200℃~約350℃の範囲の引火点を有する、請求項1に記載の重合油。
【請求項9】
約245℃~約275℃の範囲の引火点を有する、請求項1に記載の重合油。
【請求項10】
前記重合油が、パーム油、ヒマワリ油、コーン油、ダイズ油、キャノーラ油、菜種油、亜麻仁油、きり油、ヒマシ油、トール油、綿実油、落花生油、サフラワー油、コーン蒸留残油及びこれらの組み合わせ、ならびにこれらの粗製流からなる群から選択される出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項11】
前記重合油が、アルキルエステルを含む出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項12】
前記重合油が、メチル、エチル、プロピル及びブチルエステル、ならびにこれらの組み合わせからなる群から選択される出発油材料に由来する、請求項11に記載の重合油。
【請求項13】
前記重合油が、あらかじめ改質された出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項14】
前記重合油が、トリアシルグリセリド、ジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド及びこれらの組み合わせからなる群から選択される出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項15】
前記重合油が、リン脂質を含む出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項16】
前記重合油が、動物脂を含む出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項17】
前記重合油が、回収コーン油を含む出発油材料に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項18】
前記重合油が、遊離脂肪酸を含む出発油に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項19】
前記重合油が、部分硬化油を含む出発油に由来する、請求項1に記載の重合油。
【請求項20】
請求項1に記載の前記重合油を含む、改質アスファルト。
【請求項21】
請求項1に記載の前記重合油を含む、舗装道路用組成物で使用するための改質アスファルト。
【請求項22】
請求項1に記載の前記重合油を含む、ルーフィング材用組成物で使用するための改質アスファルト。
【請求項23】
請求項1に記載の前記重合油を含む、アスファルトに使用するための再生用添加剤。
【請求項24】
請求項1に記載の前記重合油を含む、アスファルトに使用するための性能グレード改質剤。
【請求項25】
請求項1に記載の前記重合油を含む、アスファルトに使用するための相溶化剤。
【請求項26】
熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー、ポリリン酸、耐剥離添加剤、中温化添加剤ならびに繊維からなる群から少なくとも1つを更に含む、請求項1に記載の重合油。
【請求項27】
生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油を重合する方法であって、前記方法が、
(a)生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油を少なくとも100℃まで加熱することと、
(b)硫黄含有化合物を加熱した油に添加することと、
(c)硫黄含有化合物を油と反応させて、重合油を製造することであって、前記重合油が、
i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布と、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数と、
iii.約0.001重量%~約8重量%の硫黄分と、を含む、重合油を製造することと、を含む方法。
【請求項28】
前記工程(c)中、気体含有流を反応混合物に通す工程(d)を更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記気体含有流が、窒素、空気及び不活性気体からなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記油が前記工程(a)で少なくとも115℃まで加熱される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記硫黄含有化合物が固体形態で添加されている、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記硫黄含有化合物が融解形態で添加されている、請求項27に記載の方法。
【請求項33】
前記硫黄含有化合物が硫黄の還元体である、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
前記硫黄含有化合物が、硫黄元素である請求項27に記載の方法。
【請求項35】
前記工程(b)後に促進剤を添加することを更に含む、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
前記オリゴマー含有量が約15~約60重量%の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
前記多分散指数が約1.50~約2.05の範囲である、請求項27に記載の方法。
【請求項38】
前記硫黄分が約6重量%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項39】
前記硫黄分が約4重量%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項40】
前記硫黄分が約2重量%未満である、請求項27に記載の方法。
【請求項41】
前記重合油が約100℃~約400℃の範囲の引火点を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項42】
前記重合油が約200℃~約350℃の範囲の引火点を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項43】
前記重合油が約245℃~約275℃の範囲の引火点を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項44】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、改質アスファルト。
【請求項45】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、舗装道路用組成物で使用するための改質アスファルト。
【請求項46】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、ルーフィング材用組成物で使用するための改質アスファルト。
【請求項47】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、アスファルトに使用するための再生用添加剤。
【請求項48】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、アスファルトに使用するための性能グレード改質剤。
【請求項49】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、アスファルトに使用するための相溶化剤及び膨潤剤。
【請求項50】
請求項27に従って生成された前記重合油を含む、アスファルトに使用するための中温化添加剤。
【請求項51】
改質アスファルトが、
(a)約60~約99.9重量%のアスファルト結合材と、
(b)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分を含む、約0.1~約40重量%の重合油と、を含む前記改質アスファルト。
【請求項52】
前記アスファルト結合材が舗装用途用である、請求項51に記載の改質アスファルト。
【請求項53】
前記アスファルト結合材がルーフィング用途用である、請求項51に記載の改質アスファルト。
【請求項54】
前記アスファルト結合材がコーティング用途用である、請求項51に記載の改質アスファルト。
【請求項55】
熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー、ポリリン酸、耐剥離添加剤、中温化添加剤、乳化剤ならびに繊維からなる群から少なくとも1つを更に含む、請求項51に記載の改質アスファルト。
【請求項56】
改質アスファルトが、
(a)約60~約99.9重量%のアスファルト結合材と、
(b)約0.1~約40重量%の、重合油及び非改質の生物再生可能な油、あらかじめ改質または官能化された油のブレンドを含んでおり、前記重合油が、
i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分を含む、前記改質アスファルト。
【請求項57】
熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー、ポリリン酸、耐剥離添加剤、中温化添加剤、乳化剤ならびに繊維からなる群から少なくとも1つを更に含む、請求項56に記載の改質アスファルト。
【請求項58】
アスファルト用途において重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油をアスファルト結合材に添加して、それによって改質アスファルトを得ることと、を含み、前記重合油の量が前記改質アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、前記方法。
【請求項59】
アスファルト用途において重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油をアスファルト舗装で使用する骨材に添加して、それによって改質アスファルトを得ることと、を含み、前記重合油の量が前記改質アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、前記方法。
【請求項60】
アスファルト用途において重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油をアスファルトルーフィングで使用する骨材に添加して、それによって改質アスファルトを得ることと、を含み、前記重合油の量が前記改質アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、前記方法。
【請求項61】
アスファルト用途に重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油を瀝青の適用前にアスファルトコーティングで使用する骨材に添加して、それによって一旦前記骨材が瀝青と混合されると、改質アスファルトを得ることと、を含み、前記重合油の量が前記改質アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、前記方法。
【請求項62】
アスファルト用途に重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油を添加して、アスファルト舗装で再利用するために再生アスファルト舗装切削材(RAP)を処理して、それによって改質アスファルトを得ることと、を含み、前記重合油の量が前記改質かつ再生アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、前記方法。
【請求項63】
前記処理済み再生アスファルト舗装切削材と瀝青をブレンドすることを更に含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
アスファルト用途に重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)iv.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
v.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
vi.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)前記重合油を、水、乳化剤、瀝青及び熱可塑性ポリマーを含むエマルションに添加することと、を含む方法。
【請求項65】
再生アスファルト舗装切削材(RAP)を前記重合油を含むエマルションで処理することを更に含み、前記処理済みRAPが、アスファルト舗装で再利用される、または既存のアスファルト舗装の表面に加えられ、それによって改質かつ再生アスファルトを得て、前記重合油の量が前記改質かつ再生アスファルトの0.1~40重量%の範囲である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
アスファルト用途に重合油を組み込む方法であって、前記方法が、
(a)i.約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、
ii.約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び
iii.約8重量%未満の硫黄分と、を含む、重合油を得ることと、
(b)中温化添加剤及び/または圧密補助剤として前記重合油をアスファルトに添加して、それによって改質アスファルトを得ることと、を含み、前記中温化添加剤が前記改質アスファルトの約0.1~約2重量%の範囲である、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年2月27日に出願された米国特許出願第62/126,064号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、重合油、ならびに再利用の及び劣化した瀝青材料を含有する新アスファルト及び/または舗道の性能を強化するために、油を重合してアスファルトに混合する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
アスファルト産業に直面する最近の技術的課題は、アスファルト全体の性能向上のための農業系製品の導入の機会をもたらした。このような性能向上は、アスファルトの有用温度域(UTI)を拡大することと、劣化したアスファルトを再生することと、アスファルト中にエラストマー性熱可塑性ポリマーを相溶性化することと、を含むことができる。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載の態様は、約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び0.001重量%~約8重量%の範囲の硫黄分を含む、重合油を提供する。
【0005】
本明細書に記載の他の態様は、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油を少なくとも100℃まで加熱することと、硫黄含有化合物を加熱した油に添加することと、硫黄含有化合物を油と反応させることと、を含む、油を重合する方法を提供して、約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有するポリマー分布、約1.30~約2.20の範囲の多分散指数、及び0.001重量%~約8重量%の範囲の硫黄分を含む、重合油を生成する。
【0006】
本明細書に記載の更に他の態様は、アスファルト舗装、ルーフィング及びコーティング用途への重合油の取り込みを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】減少した荷重振動数の関数として、アスファルトの複素弾性率曲線を示す。
【
図2】減少した荷重振動数の関数として、アスファルトの複素弾性率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
「引火点」または「引火点温度」は、物質が最初にわずかな炎により発火する、最低温度の程度である。それは、クリーブランド開放を用いたASTM D-92法に従って測定されて、摂氏(℃)で報告される。
【0009】
「オリゴマー」は、1000超の数平均分子量(Mn)を有するポリマーとして定義される。モノマーは他のすべてを占めており、モノアシルグリセリド(MAG)、ジアシルグリセリド(DAG)、トリアシルグリセリド(TAG)及び遊離脂肪酸(FFA)を含む。
【0010】
「性能グレード」(PG)は、特定のアスファルト製品が設計される、温度域として定義される。例えば、高温64℃及び低温-22℃に適応するように設計されたアスファルト製品は、64-22のPGを有する。性能グレード規格は、America Association of State Highway and Transportation Officials(AASHTO)及びthe American Society for Testing Materials(ASTM)によって設定される。
【0011】
「多分散指数」(別名「分子量分布」)は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比である。多分散データは、Waters510ポンプ及び410示差屈折計を備える、ゲル透過クロマトグラフィー器具を用いて収集する。試料は、THF溶媒中の約2%の濃度で調製される。1ml/分の流量及び35℃の温度を使用する。カラムは、50、100、1000及び10000オングストロームの、Phenogel5マイクロメートル線形/混合ガードカラムならびに300×7.8mmのPhenogel5マイクロメートルカラム(スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー)からなる。分子量は、以下の標準を使用して決定された。
【0012】
「有用温度域」(UTI)は、特定のアスファルト製品が設計される、最高温度と最低温度の間の間隔として定義される。例えば、高温64℃及び低温-22℃に適応するように設計されたアスファルト製品は、UTI86を有する。道路舗装の用途において、温度の季節的及び地理的両端値は、アスファルト製品が設計されなければならない、UTIを決定する。アスファルトのUTIは、Strategic Highway Research Program(SHRP)(別名「性能グレード」(PG)規格)により開発される、一連のAASHTO及びASTM標準試験によって測定される。
【0013】
アスファルト及び瀝青材料
本発明の目的において、アスファルト、アスファルト結合材及び瀝青は、アスファルト舗装の結合相を意味する。瀝青材料は、アスファルト結合材と他の材料(例えば骨材またはフィラー)の配合物を意味する。本発明で使用する結合材は、アスファルトを生産する精製所、フラックス、精製所の真空塔底部、ピッチ及び真空塔底部処理の他の残留分、ならびに例えば再生アスファルト舗装(RAP)などの再利用された瀝青材料からの酸化及び劣化アスファルト及び再利用アスファルトシングル(RAS)から得た材料であり得る。
【0014】
出発油材料
生物再生可能な油は、出発油材料として使用してよい。生物再生可能な油は、植物、動物及び藻から分離される油を含むことができる。
【0015】
植物系油の例は、ダイズ油、亜麻仁油、キャノーラ油、菜種油、ヒマシ油、トール油、綿実油、ヒマワリ油、パーム油、落花生油、サフラワー油、コーン油、コーン蒸留残油、レシチン(リン脂質)及びこれらの組み合わせ、ならびにこれらの粗製流を含むことができるが、これらに限定されない。
【0016】
動物系油の例は、動物脂(例えば、ラード、獣脂)及びレシチン(リン脂質)ならびにこれらの組み合わせ、ならびにこれらの粗製流を含むことができるが、これらに限定されない。
【0017】
生物再生可能な油は、共役結合による部分硬化油及びスタンド油も含むことができ、そこでヘテロ原子は、例えばジアシルグリセリド、モノアシルグリセリド、遊離脂肪酸、脂肪酸のアルキルエステル(例えば、メチル、エチル、プロピル及びブチルエステル)、ジオール及びトリオールエステル(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリメチロールプロパン)ならびにこれらの混合物に誘導されないが、これらに限定されない。生物再生可能な油の例は、廃棄料理油または他の使用済み油であり得る。
【0018】
あらかじめ改質または官能化された油を、出発油材料として用いることもできる。あらかじめ改質された油の例は、他の重合技術によってあらかじめ加硫または重合(例えば、無水マレイン酸またはアクリル酸改質、水素添加、ジシクロペンタジエン改質、ヨウ素との反応を介した共役、エステル交換、または酸価、ヒドロキシル価もしくは他の特性改質のための処理)したものである。あらかじめ改質された油のいくつかの例は、ポリオールエステル(例えばポリグリセリンエステルもしくはヒマシ油エステル)、またはエストリドである。このような改質油は、非改質の植物系油もしくは動物系油、脂肪酸、グリセリン及び/またはレシチンと混合することができる。官能化された油の例は、ヘテロ原子(酸素、窒素、硫黄及びリン)が誘導されたものである。
【0019】
好ましい態様において、出発油材料は、回収コーン油(通常、コーンをエタノールに変える製造プロセスから生じている残留液体)(別名「コーン蒸留残油」)または他の低コストの廃油である。別の好ましい態様において、出発油材料は遊離脂肪酸を含む。高官能性が要求される場合、より高濃度の不飽和を有する植物系油を使用することが可能であることを、当業者は理解するであろう。
【0020】
油の硫黄架橋
種々の態様において、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油の重合は、硫黄含有化合物を利用した生物再生可能な、あらかじめ改質もしくは官能化された油に含有される、脂肪酸鎖及び/またはトリグリセリド分子のグリセリド留分の架橋によって達成される。硫黄含有化合物の硫黄は、好ましくは還元体である。重合法は、(a)生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油を加熱する工程と、(b)硫黄含有化合物を加熱した油に添加する工程と、(c)硫黄含有化合物を油と反応させる工程と、を含み、所望のポリマー分布(約2~約80重量%のオリゴマー含有量を有する)、多分散指数(約1.30~約2.20)、及び硫黄分(0.001重量%と約8重量%の間)を含む重合油を生成する。
【0021】
第一工程において、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油は、撹拌器を備えた容器で少なくとも100℃まで加熱される。より好ましい態様において、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油(本明細書では一括して「油」とも言われ得る)は、少なくとも115℃まで加熱される。好ましい態様において、硫黄含有化合物は、加熱した生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油に少しずつ加えられて、固体または融解形状で加えられることができるが、硫黄含有化合物は、油の前に、または油と同時に加えられることができると理解される。好ましい態様において、硫黄含有化合物は、硫黄元素でもよいが、そのようなものに限定されない。硫黄と油の間の反応は、油-硫黄混合物の温度を本質的に上昇させて、好ましい態様において、反応は、反応中、約130℃と約250℃の間に、より好ましくは約130℃と約220℃の間に、更により好ましくは約160℃と約200℃の間に維持される。
【0022】
油-硫黄混合物は、油と硫黄の間の重合反応中、気体含有流によって、連続的に散布されることができる。気体含有流は、窒素、空気及び他の気体からなる群から選択されることができる。気体含有流は反応を促進するのを助けることができて、最終製品で、反応と関連した匂い(H2S及び他の硫化物)を減らすことを手助けすることもできる。空気の使用は、硫化プロセスに加えて、それが油の酸化重合をもたらすことができるので、有益であり得る。
【0023】
所望により促進剤は、本反応の速度を上昇させるために用いることができる。促進剤の例は、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、ジチオカルバメートを含むが、これらに限定されない。
【0024】
所望の重合度が後述するように得られるまで、反応は続くことができて、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)及び/または粘性を用いて連続的に監視されることができる。
【0025】
硫黄架橋反応の頑強性、ならびに高遊離脂肪酸分及び残留水分を含有する低コスト原材料の重合のためにそれを使用する能力は、出発物質選択に柔軟性を提供する、他の方法と比較したこの重合方法の利点である。
【0026】
重合特性
約2重量%と約80重量%の間のオリゴマー(20重量%~98重量%のモノマー)、より好ましくは約15重量%~約60重量%の間のオリゴマー(40重量%~85重量%のモノマー)、更により好ましくは約20重量%~約60重量%の間のオリゴマー(40重量%~80重量%のモノマー)を有する、ポリマー分布が得られるまで、硫黄含有化合物と、生物再生可能な、あらかじめ改質または官能化された油の間の反応は引き起こされる。更により好ましい態様において、ポリマー分布は、約50重量%~約75重量%のオリゴマー及び約25重量%~約50重量%のモノマーの範囲である。
【0027】
重合油の多分散指数は、約1.30~約2.20、より好ましくは約1.50~約2.05の範囲である。
【0028】
本明細書に記載の反応の効果は、得られた重合油の低硫黄分である。いくつかの態様において、硫黄分は、重合油の8重量%未満を占める。他の態様において、硫黄分は、重合油の6重量%未満を占める。更に他の態様において、硫黄分は、重合油の4重量%未満を占める。他の態様において、硫黄分は、重合油の2重量%未満を占める。しかし硫黄分は、重合油の少なくとも0.001重量%を含む。
【0029】
クリーブランド開放法を使用して測定されるように、得られた重合油の発火点は、少なくとも約100℃、かつ約400℃以下である。いくつかの態様において、重合油の引火点は約200℃と約350℃の間である。他の態様では、重合油の引火点は約220℃と約300℃の間である。更に他の態様において、重合油の引火点は約245℃と約275℃の間である。本明細書に記載の重合油は、特に他の重合法と比較すると、その出発油材料より高い引火点を有し得る。
【0030】
重合油の粘度は、出発油材料の種類に基づいて変化するが、一般的に100℃で約1cSt~約100cStの範囲である。
【0031】
最終用途
一態様では、本発明は、60重量%~99.9重量%のアスファルト結合材及び0.1重量%~40重量%の重合油のブレンドを含む、改質アスファルトならびにその製造方法を提供し、油の重合は上述のように硫黄架橋により得られる。改質アスファルトは、道路舗装またはルーフィング用途のために使用できる。
【0032】
別の態様では、本発明は、60重量%~99.9重量%のアスファルト結合材及び0.1重量%~40重量%の重合油のブレンドを含む、改質アスファルトならびにその製造方法を提供し、そこで重合油は、上述のとおり硫黄架橋により得られた重合油、ならびに前述した生物再生可能な、あらかじめ改質もしくは官能化された油(例えば非改質植物系油、動物系油、脂肪酸、脂肪酸メチルエステル、ガムまたはレシチン、及び改質油もしくは他の油のガムまたはレシチン、または脂肪酸)のうちの1つ以上のブレンドである。
【0033】
重合油に加えて、他の成分をアスファルト結合材に混合して、改質アスファルトを作成することができ、例えば熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー(スチレン-ブタジエン-スチレン、エチレン酢酸ビニル、官能化ポリオレフィンなど)、ポリリン酸、耐剥離添加剤(アミン系、リン酸塩系など)、中温化混合添加剤、乳化剤及び/または繊維を含むが、これらに限定されない。通常、これらの成分は、約0.1重量%~約10重量%の範囲の分量で、アスファルト結合材/重合油に添加される。
【0034】
アスファルトの改質
瀝青の品質の低下は、アスファルト製品の品質を改善するために、化学改質剤の添加の必要性を高める。石油精製からの重鉱油は、最も一般的に使用されている改質剤である。これらの鉱油は、結合材を「可塑化する」ことによってアスファルト製品の低温限界を拡大するが、これはアスファルトの高温限界を低減する傾向もある。
【0035】
鉱物フラックス油、石油系粗蒸留物及び再精製鉱油は、アスファルトを軟化する試みで使用されてきた。多くの場合、このような材料の使用は、低温を上回る、アスファルトの高温弾性率の低下をもたらして、アスファルトに高温でわだちをつけやすくする。このような効果は、有用温度域(UTI)の減少をもたらす。
【0036】
鉱物フラックス油、石油系粗蒸留物及び再精製鉱油は、多くの場合、舗装施工温度(例えば150~180℃)で揮発留分を有しており、一般的にアスファルトより低い引火点を有し、酸化劣化により性能のより高い喪失の傾向があり得る。
【0037】
本明細書に記載の重合油及びブレンドは、鉱油の実用的な代替物であるだけでなく、アスファルトのUTIを他の性能改質より高い程度まで拡大して、それによってアスファルト製造者に十分な価値を提供することを更に示している。本明細書に記載の重合油を使用したUTIの観察された増加は、他のアスファルト軟化添加材(例えばアスファルトフラックス、重油またはフラッシュオイル)では見られない固有の特性である。一般的に、多くの国で使用するSHRP性能グレード(PG)規格または針入度グレードシステムのいずれかのグレード改善は、アスファルトの重量に対して約2~3重量%の重合油で達成される。例えば、重合油の約3重量%の添加で見られるUTIの増加は、4℃と同程度であり、したがってより広範なPG改変範囲を提供して、その結果、下限温度は上限温度を犠牲にせずに低くなることができる。
【0038】
劣化瀝青材料の再生
アスファルトは、主に酸化及び揮発のメカニズムの組み合わせにより劣化する。劣化はアスファルト弾性率を上昇させて、粘性減衰及び応力緩和を減少させて、低い性能温度で脆性を増加させる。その結果、アスファルトは、亀裂及び損傷蓄積により影響されやすくなる。供給源(再生アスファルト舗装(RAP)及び再利用アスファルトシングル(RAS)など)からの非常に劣化したアスファルト結合材を含む、再利用及び再生瀝青材料の増加する利用は、劣化アスファルトのレオロジー及び破壊特性を、部分的にまたは完全に回復することが可能な「再生用添加剤」の必要性を生み出した。アスファルトの劣化は、更に結合し得る高分子量及び高極性不溶性の「アスファルテン」の含量を増加させることによって、コロイド不安定性及び相の非相溶性を増加させることも示した。本明細書に記載の重合油の使用は、特にRAP及びRAS用途に有用である。本明細書に記載の重合油は、特に劣化及び酸化アスファルト中で、アスファルト留分の相溶化剤として機能して、回復した性能及び耐久性を備えた均整がとれたかつ安定的なアスファルト結合材をもたらす。
【0039】
プラント製造中、アスファルトは高温(通常150~190℃の間)、ならびに軽質留分の著しい酸化及び揮発が生じ得る空気への曝露にさらされて、弾性率の増加及び粘稠挙動をもたらし得る。劣化作用は、ローリング薄膜オーブン(ASTM D2872)を使用してシミュレートされて、そこでアスファルトのローリング薄膜は約163℃で約85分間、加熱空気の噴射にさらされる。レオロジー特性は、劣化後対劣化前の|G*|/sinδの比を使用したASTM D7175に続いて、動的剪断レオメーターを使用した劣化処理の前後に測定され、そこでG*は複素弾性率であり、δは位相角である。劣化後の(|G*|/sinδ)対劣化前の(|G*|/sinδ)の比が大きければ、試験したアスファルトの酸化劣化及び揮発の効果は高くなる。
【0040】
この処理を使用して、本発明に記載の重合油またはそのブレンドで処理したアスファルトは、低い比率を有することが示され、したがって酸化劣化及び揮発の結果としてのレオロジー特性の変化は下降傾向を示す。
【0041】
したがって本明細書に記載の重合油は、劣化アスファルト結合材を回復させることが可能であり、劣化がより少ないアスファルト結合材のレオロジー特性を改質することがわかっている。その結果、少量の重合油を使用して、高含有量の劣化した再利用アスファルト材を舗装及び他の用途に組み入れて、新しい資源の使用の減少による、著しい経済節減及び舗装の自然環境への影響を低下させる可能性もたらすことができる。
【0042】
エラストマー性熱可塑性ポリマーのアスファルトへの相溶化
アスファルトは多くの場合、熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー(スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)など)によって改質されて、高温弾性率及び弾性を増加させ、大量の交通荷重への抵抗を高め、及び反復性荷重による損傷蓄積に対するアスファルト基材の強靱化を高める。このようなポリマーは、通常アスファルトの3~7重量%の分量で使用されて、180℃超の温度でアスファルト内に高剪断ブレンドされて、同程度の温度で「硬化」されて、その間、ポリマーは、連続体積相をアスファルトに得るまで、アスファルトの軽質留分の吸着によって膨潤する。
【0043】
十分に硬化したポリマーの体積相は、アスファルトへのポリマー相溶性の程度及び分散した粒子の細かさの影響を受けて、アスファルトとポリマーの間の境界面の増加による、増加した特定領域及び改善した膨潤特性をもたらす。
【0044】
ポリマーの混入または硬化段階前に、油は加えられて、アスファルト内に混合されるとき、本明細書に記載の重合油は、アスファルトへのエラストマー系ポリマーの更なる相溶性化を可能にすることができることを、示した。エラストマー系ポリマーとあまり相溶性のないアスファルト結合材に、これは特に効果的である。更に、油は、硬化期間中、ポリマーを膨潤する軽質留分に役立つことができる。
【0045】
中温化添加剤とアスファルト
近年、舗装の増加する部分は、「中温化」アスファルト舗装を製造するための一般に「中温化添加剤」と呼ばれるものを使用して製造される。中温化舗装は、より低い製造温度で製造かつ固められることができて、目標混合密度を得るためにより少ない固め作業を必要とし、その結果、プラントから工事現場までのアスファルト混合物の最大運搬距離の増加を可能する低温で、固めるために必要な特性を保持できる。
【0046】
中温化添加剤が利点を提供する異なるメカニズムは、アスファルト混合物の圧密中の骨材の増加した潤滑、製造温度の結合材粘度の低減、ならびに骨材のより良好なコーティング及び湿潤性を含む。したがって様々な範囲の化学物質及び添加剤は、アスファルト混合物に加えられるとき、中温化添加剤に起因する特性のうちの1つ以上を示すことができる。
【0047】
本明細書に記載の重合油は、中温化添加剤から期待される多くの効果を得るために、中温化添加剤及び/または圧密補助剤として使用することができ、その効果は、骨材の潤滑性及び骨材の湿潤性の増加による製造及び施工温度を最少に減少させることを含む。このような用途において、添加剤は、好ましくは瀝青の約0.1と2重量%の間の範囲の分量で使用される。
【実施例0048】
以下の実施例は、本発明を説明し、それを製造及び使用する際に当業者を補助するために存在する。実施例は、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0049】
実験方法
沈降硫黄(6.5g~56.5gの質量範囲)の分量を、650gの植物油を含む1リットル丸底フラスコに加える。それから反応容器は、加熱マントルを使用して、目標温度を5℃以上超えないように注意しながら、目標反応温度まで加熱される。反応混合物は、撹拌軸及びブレードを備えた電動撹拌機を使用して撹拌される。反応は、1時間当たり2~12標準立方フィート(SCFH)で窒素によって連続的に散布される。コンデンサ及び受けフラスコは、あらゆる蒸留液も収集するために使用される。
【0050】
硫黄が油内に溶解するとき、110~115℃くらいで泡状物質を生成することに注意されたい。オリゴマー含有量及び分布を測定するために、反応はGPCを使用して監視されて、粘度はASTM D445を使用して40℃で測定される。所望のオリゴマー含有量が得られたとき、反応は完了したとみなされる。それから反応容器は60℃まで冷却される。
【0051】
実施例1:重合パーム油で改質されたアスファルト#1
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・標準グレードPG64-22(及び「真」グレードPG64.88-24.7)で等級分けされる純(すなわち、非改質)アスファルト結合材97.0重量%。注意:真グレードとは、アスファルトが制御規格値に合致した正確な温度を表し、それは常に対応する標準グレードに合致し、それを上回る(すなわち、真高温グレードは常に標準高温グレードより高く、真低温グレードは常に標準低温グレードより低い)。
・窒素スパージ下160℃で5時間、硫黄元素3重量%と反応させた硫化精製パーム油3.0重量%。これにより、以下を有する改質材を得た。
・オリゴマー31.8%
・100℃で17.2cStの粘度
・多分散指数(PDI)約1.30
【0052】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、4.8℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、0.8℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表1に示す。
1UTI:有用温度域とは、AASHTO M320を使用して測定される、高温性能グレードと低温性能グレードの差。
2O-DSR:ASTM D7175及びAASHTO M320に続いて、動的剪断レオメーター(DSR)を使用して測定される、非劣化(「新しい」)アスファルト結合材の高温性能グレード。
3R-DSR:ASTM D7175及びAASHTO M320に続いて、動的剪断レオメーター(DSR)を使用して測定される、ローリング薄膜オーブン劣化(ASTM D2872後のRTFO)アスファルト結合材の高温性能グレード。
4S-BBR:ASTM D6648及びAASHTO M320に続いて、曲げビームレオメーターを用いて、ローリング薄膜オーブン(ASTM D2872)と加圧劣化試験機(ASTM D6521)の両方を連続使用してアスファルト結合材で測定される、クリープ剛性パラメータ(「S」)によって制御される、低温性能グレード。
5m-BBR:ASTM D6648及びAASHTO M320に続いて、曲げビームレオメーターを用いて、ローリング薄膜オーブン(ASTM D2872)と加圧劣化試験機(ASTM D6521)の両方を連続使用してアスファルト結合材で測定される、クリープ率パラメータ(「m」)によって制御される、低温性能グレード。
【0053】
実施例2:重合したパーム油で改質されたアスファルト#2
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・窒素スパージ下160℃で20.5時間、硫黄元素4重量%と反応させた硫化精製パーム油3.0重量%。これにより、以下を有する改質材を得た。
・オリゴマー56.18%
・100℃で25.0cStの粘度
・PDI約1.50
【0054】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、5.9℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、1.5℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表2に示す。
【0055】
実施例3:硫化回収コーン油で改質されたアスファルト#1
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・窒素スパージ下160℃で7時間、硫黄元素1.5重量%と反応させた硫化回収コーン油(RCO)3.0重量%。これにより、以下を有する改質材を得た。
・オリゴマー16.0%
・PDI約1.50
【0056】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、6.0℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、0.4℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表3に示す。
【0057】
実施例4:硫化回収コーン油で改質されたアスファルト#2
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・窒素スパージ下160℃で6時間、硫黄元素6.0重量%と反応させた硫化回収コーン油(RCO)3.0重量%。これにより、以下を有する改質材を得た。
・オリゴマー50.3%
・40℃における粘度は270cSt
・PDI約2.19
【0058】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、4.4℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、0.7℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表4に示す。
【0059】
実施例5:硫化精製ヒマワリ油ブレンドで改質されたアスファルト#1
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・以下を有する、ブレンド3.0重量%
・窒素スパージ下160℃で19時間、硫黄元素7.0重量%と反応させた硫化精製ヒマワリ油14.5重量%。これにより、オリゴマー70.8%を有する改質材を得た。
・精製ヒマワリ油85.5重量%
・硫化油と非改質油のブレンドは、オリゴマー含有量11.9%、40℃で粘度55cSt、PDIは約1.64。
【0060】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、5.3℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、低温グレードの十分な改善が得られ、有用温度域は変化を示さなかった。詳細を表5に示す。
【0061】
実施例6:硫化精製ヒマワリ油ブレンドで改質されたアスファルト#2
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・以下を有する、ブレンド3.0重量%
・窒素スパージ下160℃で19時間、硫黄元素7.0重量%と反応させた硫化精製ヒマワリ油53.9重量%。これにより、オリゴマー70.8%を有する改質材を得た。
・精製ヒマワリ油46.1重量%
・硫化油と非改質油のブレンドは、オリゴマー含有量42.76%、40℃で粘度177cSt、PDIは約3.16。
【0062】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。改質により、4.8℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、0.1℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表6に示す。
【0063】
実施例7:硫化した精製ヒマワリ油ブレンドで改質されたアスファルト#3
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・以下を有する、ブレンド3.0重量%
・窒素スパージ下160℃で19時間、硫黄元素7.0重量%と反応させた硫化精製ヒマワリ油63.4重量%。これにより、オリゴマー70.8%を有する改質材を得た。
・精製ヒマワリ油36.6重量%
・硫化油と非改質油のブレンドは、オリゴマー含有量48.3%、40℃で粘度254cSt、PDIは約3.55。
【0064】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、5℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、0.8℃改善した有用温度域が得られた。詳細を表7に示す。
【0065】
実施例8:精製ヒマワリ油とパーム油のブレンドで改質されたアスファルト#1
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・以下を有する、ブレンド3.0重量%
・窒素スパージ下160℃で19時間、硫黄元素7.0重量%と反応させた硫化精製ヒマワリ油14.5重量%。これにより、オリゴマー70.8%を有する改質材を得た。
・パーム油84.5重量%
・硫化油とパーム油のブレンドは、オリゴマー含有量約11.9%
・PDIは約1.77
【0066】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、5℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、わずかに0.2℃だけ低下した有用温度域が得られた。詳細を表8に示す。
【0067】
実施例9:硫化精製ヒマワリ油とパーム油のブレンドで改質されたアスファルト#2
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
・以下を有する、ブレンド3.0重量%
・窒素スパージ下160℃で19時間、硫黄元素7.0重量%と反応させた硫化精製ヒマワリ油59.0重量%。これにより、オリゴマー70.8%を有する改質材を得た。
・パーム油41.0重量%
・硫化油と非改質油のブレンドは、オリゴマー含有量約43%、PDIは約2.37。
【0068】
結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、4.2℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、わずかに0.1℃だけ低下した有用温度域が得られた。詳細を表9に示す。
【0069】
実施例10:硫化ダイズ油脂肪酸油(「酸性化石けん素材」)で改質されたアスファルト
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材97.0重量%。
【0070】
窒素スパージ下160℃で8時間、硫黄元素5.0重量%と反応させた硫化精製ダイズ油脂肪酸油3.0重量%。これにより、オリゴマー28.14%、40℃で粘度167cSt、PDIは約2.36を有する改質材を得た。結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混入された。性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。改質により、3.3℃の低温グレードの改善が得られて、純結合材グレードはPG64-22からPG58-28になった。高性能グレードと低性能グレードの純変化により、1.5℃低下した有用温度域が得られた。本実施例は、高温グレードで生じる滴下と比較して低温性能グレードを改善することに、それが著しくより効果的でないので、改質材の性能における遊離脂肪酸分の望ましくない影響の可能性を強調する。詳細を表10に示す。
【0071】
実施例11:相溶化剤として、スチレン-ブタジエン-スチレンと硫化回収コーン油で改質されたアスファルト#1
改質アスファルト結合材は以下を含む。
・PG64-22(真PG64.88-24.7)で等級分けされる純アスファルト結合材92.41重量%。
・直鎖スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)5.5重量%
・元素硫黄0.09重量%(アスファルト結合材中SBS架橋として使用)
・実施例#3に記載のとおり、硫化回収コーン油(RCO)2.0重量%
混合手順:
1.結合材を1時間150℃でアニールした後、改質材はアスファルトに混合された。改質結合材を、ポリマー改質のために約193℃まで加熱した。
2.SBSを添加しながら(1分以内)、高剪断ミキサーのRPMを1000に設定した。ポリマー追加の直後、RPMは、約10分間3000rpmまで短時間で増やされて、SBSペレットの十分な粉砕を確実にして、その後、剪断レベルは1000rpmまで下げられた。
3.ポリマーの混合は、合計2時間1000rpmで続けられた。
4.温度は150rpmで約182℃まで下げられて、そこで、硫黄架橋剤を加えた。
5.混合は、2時間182℃かつ150rpmで続けられた。
6.重合結合剤は、約12~15時間(一晩)150℃でオーブンに置かれて、ポリマーの十分な膨潤を得た。
【0072】
性能グレード試験をAASHTO M320に従って実施した。複数の応力クリープ及び回収試験は、AASHTO T350に従って、76℃の未劣化結合材及び64℃のRTFO残留物で実施された。弾性率の低下にもかかわらず、結合材回収の平均パーセントは、改質材を含有する結合材において増加したことを、結果は示しており、SBSの相容化剤としての改質剤の効果を示し、改質剤及びしたがってより効率的な弾性ネットワークを含有しない結合材と比較して、同一質量のエラストマー系ポリマーの良好な分布をもたらした。詳細を表11に示す。
【0073】
実施例12:実施例#3の油を使用した、非常に劣化したスファルト結合材の再生
図1に示す例は、ASTM D7175に続いて動的剪断レオメーター(DSR)を使用して測定した、減少した荷重振動数の関数としてのアスファルトの複素弾性率(G
*)曲線を示す。測定は、3つのレベルに実験室劣化した後、実施例#3で使用したアスファルト結合材(PG64-22)の試料を測定した。
・劣化レベル1:163℃のローリング薄膜オーブンで85分の酸化劣化(ASTM D2872に続いて)。
・劣化レベル2:加圧劣化試験機を用いて100℃で2.1MPaの空気圧で、それを20時間の酸化劣化させることによる、劣化レベル1後の試料の連続的劣化(ASTM D6521に続いて)。性能グレード規格に従って、20時間のPAV劣化は、通常アスファルト舗装の性能寿命中に発生する、模擬劣化を促進する。
・劣化レベル3:合計40時間のPAV劣化のために、加圧劣化試験機(PAV)を用いて、それを更に20時間の酸化劣化させることによる、劣化レベル1及び2後の試料の連続的劣化であり、著しく劣化した舗装からの結合材の劣化レベルを表す。
【0074】
レベル1~レベル2及びレベル2~レベル3への更なる劣化は、減少した振動数スペクトルにわたる複素弾性率の著しい増加を生じさせることを、
図1は示す。
【0075】
劣化レベル3のアスファルト結合材は、結合材を1時間の150℃まで加熱して、実施例#3の油の全結合材5重量%を混入することによって「再生した」。
図1の再生した結合材に対応する曲線は、再生が、減少した振動数の全スペクトルにわたって劣化アスファルトのG
*を著しく減少させたことを示し、それは、著しく低級の劣化アスファルト結合材のレオロジー特性を有する結合材をもたらす。
【0076】
実施例13:実施例#4の油を使用した、非常に劣化したスファルト結合材の再生
図1に示す例は、ASTM D7175に続いて動的剪断レオメーター(DSR)を使用して測定した、減少した荷重振動数の関数としてのアスファルトの複素弾性率(G
*)曲線を示す。測定は、前述のとおり実施例12に記載されている3つのレベルに実験室劣化した後、実施例#3で使用したアスファルト結合材(PG64-22)の試料を測定して、それは、更なる劣化が、減少した振動数スペクトルにわたる複素弾性率の著しい増加を生じさせることを示す。
【0077】
劣化レベル3のアスファルト結合材は、結合材を1時間の150℃まで加熱して、実施例#4の油の全結合材5重量%を混入することによって「再生した」。
図2の再生した結合材に対応する曲線は、再生が、減少した振動数の全スペクトルにわたって劣化アスファルトのG
*を減少させたことを示し、それは、低級劣化アスファルト結合材のレオロジー特性を有する結合材をもたらす。
【0078】
実施例14:ガラス転移の硫化油の効果
アスファルトの低温性能は、アスファルトのガラス転移温度の影響を著しく受けることがわかっており、それは、多くの場合冬(約-5~-40℃)に経験する性能温度の範囲で発生する。更にアスファルトの物理的硬化の速度は、最高速度がTgで生じて、アスファルトのガラス転移と密接に関連していることもわかっている。したがって、低いガラス転移温度を有して、アスファルトが性能寿命中、ガラス転移に達する可能性を低減することが望ましい。劣化は、アスファルトのガラス転移温度を高めることは周知であり、したがって、有効な再生用添加剤の望ましい特性は、一旦混合されたら劣化アスファルトのガラス転移を低下させることである。
【0079】
第1の測定は、著しい実験室劣化後の、PG64-22アスファルト結合材の試料について行われた。実験室劣化は、163℃のローリング薄膜オーブン85分(ASTM D2872)、続いて加圧劣化試験機を使用した100℃、2.1Mpa空気圧での40時間の酸化劣化(ASTM D6521に続いて)から構成されて、著しく劣化した舗装からの結合材の劣化レベルを示した。試料は、
図1で「劣化アスファルト」と標示される。
「劣化したアスファルト+重合油」と標示される第2の試料は、以下からなる。
・上述のPG58-28純結合材95重量%
・窒素スパージ下160℃で7時間、硫黄元素1.5重量%と反応させた硫化回収コーン油(RCO)5重量%。これにより、オリゴマー16.0%、PDI約1.50を有する改質材を得た。
重合油を用いた再生の前後の結合材の熱解析は、表12に示すように、改質剤が劣化アスファルトのTgをより低い温度へ大きく変えたことを示す。DSC比熱曲線の比較を
図3に示す。
前記重合油が、パーム油、ヒマワリ油、コーン油、ダイズ油、キャノーラ油、菜種油、亜麻仁油、きり油、ヒマシ油、トール油、綿実油、落花生油、サフラワー油、コーン蒸留残油及びこれらの組み合わせ、ならびにこれらの粗製流からなる群から選択される出発油材料に由来する、請求項1~7のいずれか1記載の方法。
熱可塑性エラストマー性及びプラストマー性ポリマー、ポリリン酸、耐剥離添加剤、中温化添加剤ならびに繊維からなる群からの少なくとも1つを更に含む、請求項10に記載の改質アスファルト。