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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078225
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】操作された腫瘍溶解性ウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220517BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 35/768 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 35/766 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 35/763 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 35/761 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 35/765 20150101ALI20220517BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220517BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/38 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/39 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/47 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/48 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/45 20060101ALN20220517BHJP
   C12N 15/46 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
C12N7/01 ZNA
A61P35/00
A61K35/768
A61K35/76
A61K35/766
A61K35/763
A61K35/761
A61K35/765
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K39/395 T
C12N15/12
C12N15/33
C12N15/38
C12N15/39
C12N15/47
C12N15/48
C12N15/45
C12N15/46
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034569
(22)【出願日】2022-03-07
(62)【分割の表示】P 2018555311の分割
【原出願日】2017-01-09
(31)【優先権主張番号】1600380.8
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1600381.6
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1600382.4
(32)【優先日】2016-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518241528
【氏名又は名称】レプリミュン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コフィン,ロバート
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腫瘍溶解剤、並びに腫瘍溶解剤、抗腫瘍免疫応用、及び免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤を使用するがん治療を提供する。
【解決手段】GM-CSF、及び少なくとも1つの免疫共刺激経路を標的とする分子を発現する腫瘍溶解性ウイルスを提供する。GM-CSFは、炎症腫瘍微小環境の誘導を補助し、樹状細胞を含む抗原提示細胞の増殖及び成熟を刺激し、抗腫瘍免疫応答の誘導を補助する。これらの免疫応答は、腫瘍溶解性ウイルスによっても送達される免疫共刺激経路を活性化する分子を用いる免疫共刺激経路の活性化を通して増幅される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本出願に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍溶解性免疫療法剤、及びがんの処置における腫瘍溶解性免疫療法剤の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ウイルスは、高い効率で細胞に侵入する固有の能力を有する。細胞への侵入後、ウイルス遺伝子が発現され、ウイルスが複製する。これは、通常、感染した細胞の死滅、及び、死滅すると細胞が破裂するため、細胞の抗原成分の放出をもたらす。結果として、ウイルス媒介性の細胞死は、宿主細胞に由来するものとウイルス自体によってコードされるもの若しくはそれに組み込まれたものの両方を含む、宿主による、免疫応答の活性化を支援するいわゆる損傷関連分子パターン(DAMP)の認識のために増大されるこれらの細胞成分に対する免疫応答をもたらす傾向がある。
【0003】
ウイルスはまた、例えば、宿主に対する免疫原性シグナルでもあるインターフェロン応答の活性化及び炎症をもたらす、トール様受容体、及びcGAS/STINGシグナル伝達、及び病原体関連分子パターン(PAMP)の認識を通じたウイルス感染の認識に対する宿主応答の一部として、自然免疫応答の種々のメディエーターと関わる。これらの免疫応答は、腫瘍抗原に対する免疫応答が、微小転移性疾患を含むウイルスに感染していない腫瘍の処置をもたらす全身的な全体的利益を提供し、再発に対するワクチン接種を提供するように、がん患者に免疫原性の利益をもたらし得る。
【0004】
ウイルスの組み合わせた直接的(「腫瘍溶解性」)効果、及び腫瘍抗原(非自己の「ネオ抗原」を含む、すなわち個々の腫瘍における特定の突然変異遺伝子に由来する)に対する免疫応答は、「腫瘍溶解性免疫療法」と呼ばれる。
【0005】
ウイルスはまた、感染細胞中のウイルスゲノムに挿入された異種遺伝子を発現させるための送達ビヒクル(「ベクター」)として使用することができる。これらの特性は、様々なバイオテクノロジー及び医療用途にウイルスを有用なものにする。例えば、異種治療遺伝子を発現するウイルスを遺伝子治療に使用することができる。腫瘍溶解性免疫療法に関連して、送達される遺伝子は、特定の腫瘍抗原をコードする遺伝子、ウイルス複製及び細胞死後に免疫応答を誘導し若しくは放出された抗原の免疫原性を増加させることが意図された遺伝子、生成される免疫応答を形成することが意図される遺伝子、腫瘍の一般的な免疫活性化状態を増加させる遺伝子、又はウイルスの直接腫瘍溶解特性(すなわち、細胞毒性効果)を増加させる遺伝子を含み得る。重要なことに、ウイルスは、全身性抗腫瘍免疫応答を腫瘍に直接的及び選択的に開始、増大又は形成するのを助けることが意図された、コードされた分子を送達する能力を有する。これは、例えば、毒性の減少、又は同じ経路を標的とするこれらの同じ分子の全身投与又は他の分子の全身投与と比較して、正常(すなわち、非がん性)組織におけるオフターゲット効果というよりはむしろ、腫瘍(ウイルスに感染していないものを含む)に有益な効果を集中させるという利益を有し得る。
【0006】
例えば、単純ヘルペスウイルス(HSV)などの多数のウイルスががんの腫瘍溶解処置に有用性を有することが実証されている。がんの腫瘍溶解処置に使用するためのHSVは、もはや病原性ではないが、腫瘍細胞に侵入して死滅させ得るように無効にしなければならない。ICP34.5、ICP6、及び/又はチミジンキナーゼをコードする遺伝子の破壊を含む、HSVに対する多数の無効化突然変異は同定されており、これは、ウイルスが培養中又はインビボで腫瘍組織内で複製することを阻止しないが、正常組織における有意な複製を阻止する。ICP34.5遺伝子のみが破壊されているHSVは、インビトロで多くの腫瘍細胞型において複製し、マウス腫瘍モデルにおいて、腫瘍組織において選択的に複製するが、周辺組織では複製しない。欠失されたICP34.5、又は欠失されたICP34.5及びICP6、HSVの臨床試験はまた、ヒトの腫瘍組織において安全性及び選択的複製を示している。
【0007】
上記で議論したように、HSVなどの腫瘍溶解性ウイルスはまた、がんの処置において治療遺伝子を送達するために使用され得る。ICP47についてさらに欠失され、GM-CSFの異種遺伝子をコードするこのタイプのICP34.5が欠失したウイルスはまた、ヒトにおける安全性及び有効性が示されたメラノーマにおける第3相試験を含む臨床試験において試験されている。GM-CSFは、単球が循環を逃れ、そこで増殖しマクロファージ及び樹状細胞へ成熟する組織へ移動するのを刺激することを含む複数の機能を有する炎症性サイトカインである。GM-CSFは、抗原提示細胞の増殖及び成熟にとって重要であり、その活性は、抗腫瘍免疫応答の活性化に必要である。試験データは、腫瘍の応答が、注射された腫瘍において見られ、注射されていない腫瘍においてはその程度は低いことを実証した。応答は耐久性が高い(数カ月~数年)傾向があり、応答している患者において生存利益が達成されているようであった。これらの各々は、直接腫瘍溶解性効果に加えて、がんの処置における免疫系の関与を示した。しかしながら、腫瘍溶解性ウイルスに関するこのデータ及び他のデータは、一般的に、全ての腫瘍が処置に応答するわけではなく、全ての患者が生存の利点を達成するわけではないことを示した。したがって、腫瘍溶解療法の当該技術に対する改善が明らかに必要とされている。
【0008】
近年、腫瘍溶解性免疫療法は、免疫チェックポイント遮断(すなわち、免疫共阻害経路とも呼ばれる免疫チェックポイント経路の阻害又は「拮抗作用」)と併用して相加的又は相乗的な治療効果をもたらすことができることが示されている。チェックポイント(免疫阻害経路)遮断は、通常、自己免疫の発生を阻止するのに役立つ宿主の免疫阻害機構を遮断することを意図している。しかしながら、がん患者において、これらの機構はまた、腫瘍に誘導される任意の免疫応答の潜在的に有益な効果の誘導を阻害し又は遮断するのに役立ち得る。
【0009】
CTLA-4、PD-1、又はPD-L1を標的とする薬剤によるこれらの経路の全身的な遮断は、メラノーマ及び肺がんを含む、多くの腫瘍タイプに有効性を示している。しかしながら、当然、その作用機序に基づいて、自己免疫の誘導によってオフターゲットの毒性が生じ得る。そうであっても、これらの薬剤は、かなりの臨床的有用性を提供するのに十分に許容できる。薬剤(主に抗体)が開発されている他の免疫共阻害経路及び関連標的には、LAG-3、TIM-3、VISTA、CSF1R、IDO、CEACAM1、CD47が挙げられる。これらの薬剤、例えばPD1、PDL1、LAG-3、TIM-3、VISTA、CSF1R、IDO、CD47、CEACAM1の最適な臨床的活性には、その作用機序(すなわち、免疫エフェクター細胞と腫瘍の接点の標的化、又は腫瘍の/における他の免疫阻害機構を含む)によって、全ての腫瘍における全身的投与又は存在を必要とし得る。幾つかの場合において、例えば幾つかの腫瘍のみにおける、又は幾つかのリンパ節におけるより局所化された存在、例えばCTLA-4を標的とする薬剤もまた、最適に有効であり得る。
【0010】
がん患者において抗腫瘍免疫応答を増加させるための代替的なアプローチは、免疫共刺激経路を標的化(活性化)することであり、すなわち免疫共阻害経路を阻害するのとは対照的である。これらの経路は、T細胞及び他の免疫細胞に活性化シグナルを送り、通常これは抗原提示細胞(APC)における関連リガンドとT細胞及び他の免疫細胞の表面の関連受容体の相互作用から生じる。リガンド/受容体に依存するこれらのシグナルは、特定のサブタイプを含むT細胞及び/又はAPC及び/又はNK細胞及び/又はB細胞の増加した活性化、特定のサブタイプを含むT細胞及び/又はAPC及び/又はNK細胞及び/又はB細胞の増加した分化及び増殖、又は制御性T細胞などのT細胞の免疫阻害活性の抑制をもたらし得る。したがって、これらの経路の活性化は、増大した抗腫瘍免疫応答をもたらすと予測されるが、これらの経路の全身的活性化、すなわち特異的又は選択的な抗腫瘍免疫応答ではなく、全体的な免疫応答の活性化は、非腫瘍組織におけるかなりのオフターゲット毒性をもたらしことが予測され得、このようなオフターゲット毒性の程度は、標的とされる特定の免疫共阻害経路に依存する。それにもかかわらず、免疫共阻害経路を標的とする薬剤(主にアゴニスト抗体、又はそれほど頻繁ではないが問題の受容体に対する可溶性リガンド)、例えばGITR、4-1-BB、OX40、CD40又はICOSを標的とする薬剤であって、全身的な使用(すなわち、静脈内送達)が意図されるものは、臨床的開発されているか、或いは臨床的開発について提案されている。
【0011】
免疫共阻害経路又は共阻害経路を標的とするこれらのアプローチの多くを成功させるためには、腫瘍に対する既存の免疫応答が必要であり、すなわち、それにより、既存の免疫応答が増強され得、又は抗腫瘍免疫応答に対する遮断が軽減され得る。このような進行中の応答を示す、炎症を起こした腫瘍微小環境の存在もまた必要である。腫瘍ネオ抗原に対する既存の免疫応答は、免疫共阻害経路遮断及び関連する薬物の活性にとって特に重要であるようである。幾らかの患者だけが、ネオ抗原及び/又は炎症を起こした腫瘍微小環境を含む、腫瘍抗原に対する進行中の免疫応答を有し得、両者はこれらの薬物の最適な活性のために必要とされる。したがって、ネオ抗原を含む腫瘍抗原に対する免疫応答を誘導することができ、及び/又は炎症を起こした腫瘍微小環境を誘導することができる腫瘍溶解剤は、免疫共阻害経路遮断及び免疫増強薬剤と組み合わせて用いることが魅力的である。これは、これまでに観察されている、マウス及びヒトにおける腫瘍溶解剤及び免疫共阻害経路遮断の有望な組み合わせ抗腫瘍効果を説明すると考えられる。
【0012】
上記の議論は、腫瘍溶解剤、並びに腫瘍溶解剤、抗腫瘍免疫応用、及び免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤を使用するがん治療を改善するための余地が依然として多いことを実証する。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、GM-CSF、及び少なくとも1つの免疫共刺激経路を標的とする分子を発現する腫瘍溶解性ウイルスを提供する。GM-CSFは、炎症腫瘍微小環境の誘導を補助し、樹状細胞を含む抗原提示細胞の増殖及び成熟を刺激し、抗腫瘍免疫応答の誘導を補助する。これらの免疫応答は、腫瘍溶解性ウイルスによっても送達される免疫共刺激経路を活性化する分子を用いる免疫共刺激経路の活性化を通して増幅される。
【0014】
免疫共阻害経路を標的とする分子を腫瘍に送達するための腫瘍溶解性ウイルスの使用は、免疫効果の増幅を抗腫瘍免疫応答に集中させ、非腫瘍抗原への免疫応答の増幅を低減する。したがって、腫瘍及び腫瘍排出リンパ節における免疫細胞は、全体的な免疫細胞ではなく、免疫共刺激経路を活性化する分子によって選択的に関与される。これは、免疫共刺激経路の活性化及び抗腫瘍免疫応答の増幅の増大した効果をもたらし、低減したオフターゲット毒性ももたらし得る。また、全身的免疫共阻害経路遮断及び免疫共刺激経路の活性化の組み合わせの効果を腫瘍に集中させる、すなわち共阻害経路の遮断が放出される増幅した免疫応答が、非腫瘍抗原に対する応答ではなく、抗腫瘍免疫応答となるようにすることも重要である。
【0015】
本発明は、腫瘍溶解性ウイルスによって送達された場合に、免疫共刺激経路及びGM-CSF発現の作用部位が腫瘍及び/又は腫瘍排出リンパ節であるが、そのような活性化の結果が全身的(増幅された全身的抗腫瘍免疫応答)であるという事実を利用する。これは、腫瘍溶解性ウイルスが免疫共刺激経路を標的とする分子及びGM-CSFを送達した腫瘍だけでなく、腫瘍を全体的に標的とする。したがって、本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、改善した腫瘍に集中する免疫応答の生成を介して、改善したがんの処置をもたらす。本発明の腫瘍溶解性ウイルスは、微小転移性病態を含む腫瘍溶解によって破壊されない腫瘍に対する免疫媒介性の効果が増大するように、改善した抗腫瘍免疫刺激効果を提供し、これは、将来の再発を防ぎ、全生存期間を改善する、これらの腫瘍のより効果的な破壊、及びより有効な長期間の抗腫瘍ワクチン接種をもたらす。
【0016】
抗腫瘍効力は、本発明の腫瘍溶解性ウイルスが単一の薬剤として使用される場合、またウイルスが他の抗がんモダリティ、例えば、化学療法、標的化された薬剤による処置、放射線、及び好ましい実施形態では免疫チェックポイント遮断薬(すなわち、免疫共阻害経路のアンタゴニスト)及び/又は免疫共刺激経路のアゴニストと組み合わせて使用される場合に改善される。
したがって、本発明は、(i)GM-CSFをコードする遺伝子、及び(ii)免疫共刺激経路活性化分子又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子を含む腫瘍溶解性ウイルスを提供する。ウイルスは、1を超える免疫共刺激経路活性化分子/遺伝子をコードし得る。
【0017】
免疫共刺激経路活性化分子は、好ましくはGITRL、4-1-BBL、OX40L、ICOSL若しくはCD40L又はそれらのいずれかの改変されたバージョン、又はCTLA-4を介するシグナリングを遮断することができるできるタンパク質、例えばCTLA-4に結合する抗体である。改変されたバージョンの例には、膜結合ではなくむしろ、分泌される共刺激経路のアゴニスト、及び/又はタンパク質の多量体が形成されるように改変されたアゴニストが含まれる。
【0018】
ウイルスは、ウイルスの改変された臨床分離株などの改変された臨床分離株であり得、臨床分離株は、2つ以上の腫瘍細胞株を、同種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりもインビトロで迅速に及び/又は低用量で死滅させる。
【0019】
ウイルスは、好ましくは、HSV1などの単純ヘルペスウイルス(HSV)である。HSVは、典型的には、機能的なICP34.5及び/若しくは機能的なICP47を発現せず、並びに/又は前初期遺伝子としてUS11遺伝子を発現する。
【0020】
本発明はまた、以下を提供する:
- 本発明のウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物、
- 治療によってヒト又は動物の体を処置する方法において使用するための本発明のウイルス、
- がんを処置する方法において使用するための本発明のウイルスであって、方法が、場合により、さらなる抗がん剤を投与することを含む、ウイルス
- 本発明のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物、
- 治療有効量の本発明のウイルス又は医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを処置する方法であって、方法が、さらなる抗がん剤を投与することを、場合により含み、抗がん剤が、場合により、免疫共阻害経路のアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のアゴニストである、方法、
- がんを処置する方法において使用するための医薬の製造における本発明のウイルスの使用であって、方法が、さらなる抗がん剤を投与することを場合により含み、抗がん剤が、場合により、免疫共阻害経路のアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のアゴニストである、使用、
- 治療有効量の腫瘍溶解性ウイルス、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤及び免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のアゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを処置する方法。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、GM-CSFをコードする遺伝子及びCD40Lをコードする遺伝子を含む、本発明の例示的なウイルスの構造を示す図である。
図2図2は、図に示されるようにMOIが0.1、0.01又は0.001である感染から24時間又は48時間後にクリスタルバイオレット染色によって評価した、Fadu、SK-mel-28、A549、HT1080、MIA-PA-CA-2、HT29及びMDA-MB-231ヒト腫瘍細胞株を死滅させる、8種の上位にランク付けされたHSV1臨床分離株の異なる能力を示す図である。各々の細胞株で1番目と2番目にランク付けされたウイルス株が示されている。ウイルスRH018Aは、Fadu、HT1080、MIA-PA-CA-2及びHT29細胞株の各々について1番目にランク付けされ、SK-mel-28、A549及びMDA-MB-231細胞株の各々について2番目にランク付けされた。RH004Aは、HT29細胞株についてRH018A及びRH015Aともに1番目にランク付けされ、SK-mel-28及びA549細胞株について1番目にランク付けされ、Fadu細胞株について2番目にランク付けされた。RH023Aは、MDA-MB-231細胞株について1番目にランク付けされ、HT1080細胞株について2番目にランク付けされた。RH031Aは、MIA-PA-CA-2及びHT29細胞株の各々について2番目にランク付けされた。RH040Aは、HT29細胞株についてともに2番目にランク付けされた。
図3】試験した全ての株のうちで1番目にランク付けされた株であるRH018A株と、スクリーニングからの「平均」株(すなわちRH065A株)との比較を示す図である。SK-mel-28、HT1080、MDA-MB-231、Fadu、MIA-PA-CA-2及びA549細胞株における、MOIが0.1、0.01及び0.001である感染から24又は48時間後のクリスタルバイオレット染色によって示されるように、RH065A株の必要とされたものよりも等しい割合の細胞を死滅させるために必要とされるRH018A株は約10倍少なかった。
図4-1】US11遺伝子がICP457前初期プロモーターの調節下にあり、異種遺伝子をICP34.5遺伝子座に含むように、ICP34.5及びICP47の欠失によって改変されたHSV1ウイルスの構造を示す図である。ウイルスは、図に特に記載がない限り、RH018A株を用いて構築された。
図4-2】図4-1の続きである。
図5-1】US11遺伝子がICP457前初期プロモーターの調節下にあり、異種遺伝子をICP34.5遺伝子座に含むように、ICP34.5及びICP47の欠失によって改変されたHSV1ウイルスの構造を示す図である。ウイルスは、図に特に記載がない限り、RH018A株を用いて構築された。
図5-2】図5-1の続きである。
図5-3】図5-1の続きである。
図5-4】図5-1の続きである。
図5-5】図5-1の続きである。
図5-6】図5-1の続きである。
図5-7】図5-1の続きである。
図5-8】図5-1の続きである。
図5-9】図5-1の続きである。
図5-10】図5-1の続きである。
図6】ウイルス16(mGM-CSF及びGALVR-)、ウイルス17(hGM-CSF及びGALVR-)及びウイルス19(mGM-CSF)に感染させたBHK細胞からの上清中のヒト又はマウスGM-CSFの発現を検出するELISAの結果を示す図である。
図7-1】低倍率で3つの細胞株においてクリスタルバイオレット染色によって決定した場合の、ICP34.5を欠失し、GALVR-及びGFPを発現するRH018A株(ウイルス10)と、GFPのみを発現するウイルス(ウイルス12)の細胞死滅能力の比較を示す図である。
図7-2】図7-1の続きである。
図8-1】4つの細胞株においてクリスタルバイオレット染色によって決定した場合の、ICP34.5及びICP47を欠失し、GALVR-及びGM-CSFを発現するRH018A株(ウイルス17)と、同じ改変を有する従来の株の細胞死滅能力の比較を示す図である。
図8-2】図8-1の続きである。
図9】両側面にA20リンパ腫腫瘍を有するマウスの処置におけるウイルス16(ICP34.5及びICP47を欠失し、GALVR-及びmGM-CSFを発現する)の有効性を示す図である。右側面の腫瘍にウイルス又はビヒクルを注射し、腫瘍サイズに対する効果を30日間観察した。ウイルスは、注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方に対して有効であった。
図10】クリスタルバイオレット染色によって評価した場合の、インビトロでのラット9L細胞に対するウイルス15(ICP34.5及びICP47を欠失し、GALVR-及びGFPを発現する)及びウイルス24(ICP34.5及びICP47を欠失し、GFPを発現する)の効果を実証する図である。GALVを発現するウイルス(ウイルス15)は、GALVを発現しないウイルス(ウイルス24)と比較して、インビトロでのラット9L細胞の死滅の増大を示した。
図11-1】左右の側面にマウスCT26腫瘍を有するBalb/cマウスにおけるウイルス16の抗腫瘍効果を示す図である。次に、10匹のマウスの群を以下で処置した:ビヒクル(1日おきに右側面腫瘍に3回注射)、1日おきに右側面腫瘍に注射された5×106pfuのウイルス16(mRP1)、抗マウスPD1単独(10mg/kg、腹腔内、3日毎に、BioXCellクローンRMP1-14)、抗マウスCTLA-4(3mg/kg、腹腔内、3日毎、BioXCellクローン9D9)、抗マウスPD1と共にウイルス16、抗マウスCTLA4と共にウイルス16、1-メチルトリプトファン(trypotophan)(I-MT、IDO阻害剤(飲料水中5mg/ml))、抗マウスPD1と共に1-メチルトリプトファン、又は抗マウスPD1と共に1-メチルトリプトファン及びウイルス16。腫瘍サイズに対する効果をさらに30日間観察した。ウイルス及びチェックポイント遮断の組み合わせで処置された動物において、単一処置群よりも大きな腫瘍の減少が見られた。図11Aは、ウイルス16及び抗PD1を併用することにより、抗PD1又はウイルス単独のいずれよりも優れた抗腫瘍効果を有することを示す。図11Bは、抗CTLA-4と組み合わせたウイルス16の抗腫瘍効果が、ウイルス16又は抗CTLA-4単独のいずれかの抗腫瘍効果よりも良好であることを示す。図11Cは、ウイルスの非存在下での抗PD1及び1-MT阻害と比較して、ウイルス16と共に抗PD1とIDO阻害の両方を用いて増強された腫瘍の減少が観察されたことを示す。
図11-2】図11-1の続きである。
図11-3】図11-1の続きである。
図12-1】ウイルス単独又はチェックポイント遮断単独(抗PD1)のいずれかと比較して、Balb/cマウスの両側面のマウスA20腫瘍における免疫チェックポイント遮断と組み合わせた、ウイルス16の増強された抗腫瘍活性を示す図である。
図12-2】図12-1の続きである。
図12-3】図12-1の続きである。
図12-4】図12-1の続きである。
図13】GALVR-、GM-CSF及びコドン最適化された抗マウス又は抗ヒトCTLA-4抗体構築物(ヒト又はマウスIgG1 Fc領域に連結した分泌型scFv分子)を発現するICP34.5及びICP47欠失ウイルスの構造を示す図である。scFvは、抗体9D9(US2011044953:マウスバージョン)由来及びイピリムマブ(US20150283234、ヒトバージョン)由来の連結された([G4S]3)軽鎖及び重鎖可変鎖を含有する。得られたCTLA-4阻害剤の構造も示されている。
図14】ヒト異種移植モデル(A549)におけるウイルス16及びウイルス19の抗腫瘍効果を示す図である。3回の異なる用量レベルで1週間にわたって、ウイルス16、ウイルス19又はビヒクルを3回注射した(N=10/群)。使用されるウイルスの用量が示されている。GALVを発現するウイルス16の抗腫瘍効果は、GALVを発現しないウイルス19の抗腫瘍効果よりも良好であった。
図15】Fischer 344ラットの側面での9L細胞におけるGALVR-を発現する本発明のウイルスの効果を示す図である。以下の処置をラットの群(群あたり10匹)に、各々のラットの一側面に3週間、週3回のみ投与した:50μlのビヒクル、50μlの107pfu/mlのウイルス19(mGM-CSFを発現するが、GALV R-を発現しない)、又は50μlの107pfu/mlのウイルス16(マウスGM-CSFとGALV-R-の両方を発現する)。次に、腫瘍増殖に対する効果をさらに30日間観察した。優れた腫瘍制御及び縮小が、GM-CSF単独を発現するウイルスと比較して、GM-CSF及びGALV-R-を発現するウイルスで観察された。
図16】ウイルス16(GALV及びmGM-CSFを発現する)と比較して、各々がmGM-CSF及びGALV-R-も有する、抗mCTLA-4(ウイルス27)、mCD40L(ウイルス32)、mOX4OL(ウイルス35)、m4-2BBL(ウイルス33)を発現するウイルスの抗腫瘍効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
配列表の簡単な説明
配列番号1は、マウスGM-CSFのヌクレオチド配列である。
配列番号2は、マウスGM-CSFのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号3は、ヒトGM-CSFのヌクレオチド配列である。
配列番号4は、ヒトGM-CSFのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号5は、マウスGM-CSFのアミノ酸配列である。
配列番号6は、ヒトGM-CSFのアミノ酸配列である。
配列番号7は、GALV-R-のヌクレオチド配列である。
配列番号8は、GALV-R-のコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である(最初の3つのヌクレオチドは任意である)。
配列番号9は、GALV-R-のアミノ酸配列である。
配列番号10は、CD40Lのヒト膜結合型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号11は、CD40Lのヒト膜結合型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号12は、ヒトCD40Lの多量体分泌型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号13は、ヒトCD40Lの多量体分泌型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号14は、マウスCD40Lの多量体分泌型バージョンのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号15は、マウスCD40Lの多量体分泌型バージョンのアミノ酸配列である。
配列番号16は、野生型ヒトCD40Lのヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンである。
配列番号17は、野生型ヒトCD40Lのアミノ酸配列である。
配列番号18は、野生型マウスCD40Lのヌクレオチド配列のコドン最適化バージョンである。
配列番号19は、野生型マウスCD40Lのアミノ酸配列である。
配列番号20は、マウス4-1BBLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号21は、ヒト4-1BBLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号22は、分泌型マウス4-1BBLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号23は、ヒト分泌型4-1BBLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号24は、マウスGITRLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号25は、ヒトGITRLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号26は、分泌型マウスGITRLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号27は、分泌型ヒトGITRLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号28は、マウスOX40Lのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号29は、ヒトOX40Lのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号30は、分泌型マウスOX40Lのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号31は、分泌型ヒトOX40Lのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号32は、マウスICOSLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号33は、ヒトICOSLのコドン最適化バージョンのヌクレオチド配列である。
配列番号34は、マウスscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。最初の6ヌクレオチド及び最後の8ヌクレオチドは、クローニング目的のために付加された制限部位である。 配列番号35はマウスscFv CTLA-4抗体のヌクレオチド配列である。最初の6ヌクレオチド及び最後の8ヌクレオチドは、クローニング目的のために付加された制限部位である。
配列番号36は、CMVプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号37は、RSVプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号38は、BGHポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号39は、SV40後期ポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号40は、SV40エンハンサープロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号41は、ウサギβ-グロブリン(RBG)ポリAのヌクレオチド配列である。
配列番号42は、GFPのヌクレオチド配列である。
配列番号43は、MoMuLV LTRプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号44は、EF1aプロモーターのヌクレオチド配列である。
配列番号45は、HGHポリAのヌクレオチド配列である。
【0023】
発明の詳細な説明
腫瘍溶解性ウイルス
本発明のウイルスは腫瘍溶解性である。腫瘍溶解性ウイルスは、腫瘍細胞に感染及び複製し、それにより腫瘍細胞を死滅させるウイルスである。したがって、本発明のウイルスは複製可能である。好ましくは、ウイルスは、腫瘍組織において選択的に複製可能である。ウイルスは、非腫瘍組織よりも腫瘍組織においてより効果的に複製する場合、腫瘍組織において選択的に複製可能である。異なる組織タイプで複製するウイルスの能力は、当該技術分野において標準的な技術を用いて決定することができる。
【0024】
本発明のウイルスは、これらの特性を有する任意のウイルス、例えばヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス若しくはレオウイルス、又はこれらのより大きな群内の任意の種若しくは株であり得る。本発明のウイルスは、野生型(すなわち、親ウイルス種から変更されていない)であってもよく、又は遺伝子破壊若しくは遺伝子付加を有してもよい。これらのうちのどちらであるかは、使用されるウイルス種に依存する。好ましくは、ウイルスはヘルペスウイルスの種であり、より好ましくはHSV1及びHSV2の株を含むHSVの株であり、最も好ましくはHSV1の株である。特に好ましい実施形態において、本発明のウイルスは、使用されるウイルス種の臨床分離株に基づく。臨床分離株は、がんの処置のために特に有利な特性を有するものに基づいて選択されている場合がある。
【0025】
臨床分離株は、他の患者から単離された同じウイルスの他の株と比較して、驚くほど良好な抗腫瘍効果を有し得、ここで、患者は試験されるウイルス種を有する個体である。本発明のウイルスを同定するために比較に使用されるウイルス株は、患者又はそうでなければ(すなわち、試験されるウイルス種を有する以外)健常なボランティア、好ましくはそうでなければ健常なボランティアから単離され得る。本発明のウイルスを同定するために使用されるHSV1株は、典型的には、HSV1を有する個体の口唇ヘルペス(cold sore)から、典型的には、例えば、輸送媒体を含有するVirocult(Sigma)ブランドの拭き取り/容器を用いて拭き取りを行うことによって単離され、続いて、さらなる試験に使用するために施設へ輸送される。
【0026】
比較されるウイルスを個体から単離した後、ウイルスのストックは、典型的には、例えば、BHK細胞又はベロ細胞上で、単離されたウイルスを増殖させることによって調製される。好ましくは、これは、さらなる使用のためにウイルスストックを調製するために、試料を採取することと、例えば、BHK又はベロ細胞上で増殖させることとの間に、3サイクル以下の凍結融解後に行われる。より好ましくは、ウイルス試料は、さらなる使用のためのストックの調製前に、2サイクル又は2サイクル未満の凍結融解、より好ましくは1サイクルの凍結融解を受けていて、最も好ましくは凍結融解のサイクルを受けていない。単離後にこのようにして調製されたウイルスに感染した細胞株由来の溶解物は、典型的には、インビトロで腫瘍細胞株を死滅させるウイルスの能力について試験することによって比較される。あるいは、ウイルスストックは、試験前に、適切な条件下、例えば凍結により保存することができる。本発明のウイルスは、他の個体から単離された同じウイルスの他の株と比較して、好ましくは5を超える個体、より好ましくは10を超える他の個体、最も好ましくは20を超える他の個体から単離されたものと比較して、驚くほど良好な抗腫瘍効果を有する。
【0027】
本発明のウイルスを産生するために改変するために同定された(すなわち、それらが比較された他のウイルス株と比較して腫瘍細胞を死滅させるための驚くほど良好な特性を有する)臨床分離株のストックは、改変の前後で、適切な条件下で保存され、必要に応じて、さらなるストックを生成するために使用され得る。
【0028】
臨床分離株は、その天然宿主から単離されたウイルス種の株である。臨床分離株は、好ましくは、所望の特性、本発明のウイルスの場合にはヒト腫瘍細胞を死滅する能力について、臨床分離株とそのウイルス種の他の臨床分離株を試験し、比較する目的で単離されている。また、比較のために使用され得る臨床分離株には、臨床リポジトリーに存在する、すなわち、臨床診断又は他の目的のために以前に回収された、臨床試料由来のものが含まれる。いずれの場合においても、本発明のウイルスの比較及び同定に使用される臨床分離株は、好ましくは、所望の特性について試験される前に、インビトロで最小限の培養を受けていて、好ましくは、比較試験目的のために十分なストックを生成し得るのに十分な培養のみを受けている。このように、本発明のウイルスを同定するために比較に使用されるウイルスはまた、寄託株を含み得、ここで、寄託株は、患者から単離されていて、好ましくは、患者の口唇ヘルペスから単離されたHSV1株である。
【0029】
ウイルスは、改変された臨床分離株であり得、ここで、臨床分離株は、同じ種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりも、インビトロで2つ以上の腫瘍細胞株をより迅速に及び/又はより低用量で死滅させる。典型的には、臨床分離株は、0.1以下の感染多重度(MOI)で、好ましくは0.01以下のMOIで、より好ましくは0.001以下のMOIで、感染の72時間以内、好ましくは48時間以内、より好ましくは24時間以内に2つ以上の腫瘍細胞株を死滅させる。好ましくは、臨床分離株は、広範囲の腫瘍細胞株、例えば、以下のヒト腫瘍細胞株:U87MG(グリオーマ)、HT29(結腸直腸)、LNCaP(前立腺)、MDA-MB-231(乳房)、SK-MEL-28(メラノーマ)、Fadu(扁平上皮癌)、MCF7(乳房)、A549(肺)、MIAPACA-2(膵臓)、CAPAN-1(膵臓)、HT1080(線維肉腫)のうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10個、又は例えば全てを死滅させる。
【0030】
したがって、本発明のウイルスは、2つ以上、例えば3、4、5、6、7つ以上の異なるタイプの腫瘍由来の、例えば、2つ以上、例えば3、4、5、6、7つ以上の固形腫瘍由来の細胞を死滅させることができ、上記細胞には、限定されないが、結腸直腸腫瘍細胞、前立腺腫瘍細胞、乳房腫瘍細胞、卵巣腫瘍細胞、メラノーマ細胞、扁平上皮細胞癌細胞、肺腫瘍細胞、膵臓腫瘍細胞、肉腫細胞及び/又は線維肉腫細胞が含まれる。
【0031】
腫瘍細胞株死滅は、任意の適切な方法によって決定することができる。典型的には、試料は、最初に患者から、好ましくはHSV1の場合には口唇ヘルペスから単離され、BHK細胞、又はベロ細胞などの別の適切な細胞株に感染させるために使用される。陽性試料は、典型的には、感染後24~72時間で、例えば、感染後48時間で、細胞変性効果(CPE)の存在によって同定され、例えば免疫組織化学又はPCRによって標的ウイルス種であることが確認される。次に、ウイルスストックを陽性試料から生成する。ウイルスストックからの試料は、典型的には、試験され、異なる患者からの拭き取りを用いて同様に生成された他の試料と比較される。試験は、ある範囲の感染多重度(MOI)及び感染後の様々な時間点で達成されるCPEのレベルを決定することによって行うことができる。
【0032】
例えば、80%コンフルエントの細胞株を、1、0.1、0.01及び0.001のMOIでウイルス試料に感染させ、二重のプレートを、24及び48時間、37℃、5%CO2でインキュベートし、その後、ウイルス細胞死滅の程度を決定し得る。これは、例えば、グルタルアルデヒドで細胞を固定し、標準的な方法を用いてクリスタルバイオレットで染色することによって決定することができる。次に、細胞溶解のレベルを肉眼観察、顕微鏡(細胞計数)及び写真撮影などの標準的な方法によって評価し得る。この方法は、細胞死滅が決定される前に、より短い期間、例えば8、12若しくは16時間、又はより長い期間、例えば72時間、又は0.0001以下などの追加のMOIで、インキュベートされた細胞を用いて反復され得る。
【0033】
増殖曲線実験はまた、インビトロで腫瘍細胞株において複製する異なる臨床分離株の能力を評価するために実施され得る。例えば、80%コンフルエントな細胞株を1、0.1、0.01及び0.001のMOIでウイルス試料に感染させ、37℃、5%CO2でインキュベートし、典型的には感染の0、8、16、24及び48時間後に凍結/融解により細胞を溶解し、その後、ウイルス細胞死滅の程度を決定する。これは、例えば、標準的なプラークアッセイによってウイルス力価を評価することによって決定され得る。
【0034】
本発明の臨床分離株は、それが比較される他の臨床分離株、好ましくは、同じウイルス種の2、3、4、5若しくは10個又はそれを超える他の臨床分離株よりも、感染した腫瘍細胞株をより迅速に及び/又はより低いMOIで死滅させることができる。本発明の臨床分離株は、典型的には、特定のMOI及び時間点で存在する腫瘍細胞を、同じMOI及び時間点で比較された同じウイルスタイプの少なくとも1個の、好ましくは2、3、4、5若しくは10個又はそれを超える他の臨床分離株よりも10%、25%又は50%大きな割合で死滅させる。本発明の臨床分離株は、典型的には、同じ時間点、典型的には12、24及び/又は48時間での比較のために使用される同じウイルス種の1個以上の、好ましくは2、3、4、5、10若しくは15個又はそれを超える他の臨床分離株が同じ割合の腫瘍細胞を死滅させるMOIの半分又は半分未満であるMOIで、同じ割合又はより大きな割合の腫瘍細胞を死滅させる。好ましくは、本発明の臨床分離株は、典型的には、同じ時間点、典型的には12、24及び/又は48時間での比較のために使用される同じウイルス種の1個以上の、好ましくは2、3、4、5、10若しくは15個又はそれを超える他の臨床分離株が同じ割合の腫瘍細胞を死滅させるMOIよりも5又は10倍低いMOIで、同じ割合又はより大きな割合の腫瘍細胞を死滅させる。本発明のウイルスの改善された腫瘍細胞死滅能力は、典型的には、比較のために使用される、同じウイルス種の少なくとも50%、75%又は90%の他の臨床分離株と比較して達成される。ウイルスは、好ましくは、同じ種の少なくとも4個の他のウイルス株、例えば、他の7、9、19、39又は49個のウイルス株と比較される。
【0035】
単離された株は、例えば、一度に4~8つのウイルス株のバッチで、例えば、一度に4~8つの腫瘍細胞株について試験することができる。実験の各々のバッチに関して、達成される死滅の程度は、その実験において比較されるウイルスについて、最良(すなわち、各々の時間点での最少生存細胞/MOI)から最悪(すなわち、各々の時間点での最多生存細胞/MOI)で各々の細胞株についてランク付けされる。次に、試験された腫瘍細胞株の範囲全体で最良の結果を示す(すなわち、細胞株を死滅させる際に一貫して最良のものの1つとしてランク付けされている)各々の実験からのウイルス株は、他の臨床分離株及び/又は他の腫瘍細胞株を用いたさらなる実験において直接比較され、全体で、例えば20個を超える、サンプリングしたウイルス株において最良のウイルス株を同定し得る。全体として最良のものとしてランク付けされるものは、本発明のウイルスである。
【0036】
好ましい実施形態において、本発明のウイルスは、以下から選択される株である:
仮受託番号ECCAC16121904を有するRH018A株、
仮受託番号ECCAC16121902を有するRH004A株、
仮受託番号ECCAC16121907を有するRH031A株、
仮受託番号ECCAC16121908を有するRH040B株、
仮受託番号ECCAC16121903を有するRH015A株、
仮受託番号ECCAC16121905を有するRH021A株、
仮受託番号ECCAC16121906を有するRH023A株、及び
仮受託番号ECCAC16121909を有するRH047A株。
【0037】
より好ましくは、本発明のウイルスは、以下から選択される株である:
仮受託番号ECCAC16121904を有するRH018A株、
仮受託番号ECCAC16121902を有するRH004A株、
仮受託番号ECCAC16121907を有するRH031A株、
仮受託番号ECCAC16121908を有するRH040B株、及び
仮受託番号ECCAC16121903を有するRH015A株。
【0038】
最も好ましくは、本発明のウイルスは、受託番号EACC16121904を有するRH018A株である。
【0039】
本発明のHSVは、ヒト腫瘍などの腫瘍において選択的に複製することができる。典型的には、HSVは標的腫瘍において効率的に複製するが、非腫瘍組織においては効率的に複製しない。このHSVは、正常組織における複製を阻害するが、依然として腫瘍における複製を可能にする1つ以上のウイルス遺伝子における1つ以上の突然変異を含み得る。突然変異は、例えば、HSVによって、機能性ICP34.5、ICP6及び/又はチミジンキナーゼの発現を阻止する突然変異であり得る。
【0040】
1つの好ましい実施形態において、ICP34.5をコードする遺伝子は、HSVに選択的な腫瘍溶解活性を付与するように突然変異される。機能的ICP34.5の発現を妨げるICP34.5をコードする遺伝子の突然変異は、参照により本明細書に組み込まれるChouら(1990) Science 250:1262-1266、Macleanら(1991) J. Gen. Virol. 72:631-639及びLiuら(2003) Gene Therapy 10:292-303に記載されている。また、ICP6をコードする遺伝子及び/又はチミジンキナーゼをコードする遺伝子は不活性化され得、これは、このような不活性化がウイルスの感染又は腫瘍内での複製を妨げない限り、他の遺伝子と同様である。
【0041】
HSVは、腫瘍におけるHSVの複製を増強するさらなる突然変異を含有し得る。腫瘍におけるウイルス複製の結果として生じる増強は、ウイルスによる直接的な「腫瘍溶解性」腫瘍細胞死滅をもたらすだけでなく、異種(すなわち、ウイルスに挿入される遺伝子であって、本発明のウイルスの場合には、GM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子)遺伝子発現のレベルも増強させ、腫瘍細胞が死滅した場合に放出される腫瘍抗原の量を増加させる。これらの両者はまた、がんの処置のための治療の免疫原性特性を改善し得る。例えば、本発明の好ましい実施形態において、ICP47をコードする遺伝子の発現を通常調節する前初期プロモーターの調節下にUS11遺伝子を置く様式でのICP47をコードする遺伝子の欠失は、腫瘍における複製の増強をもたらす(参照により本明細書に組み込まれる、Liuら, 2003を参照されたい)。
【0042】
ウイルス複製に依存しないプロモーターの調節下に、HSV後期遺伝子であるUS11をコードする配列を置く他の突然変異もまた、本発明のウイルスに導入され得る。このような突然変異は、HSV複製が起こる前にUS11の発現を可能にし、腫瘍におけるウイルス複製を増強する。特に、このような突然変異は、機能的なICP34.5をコードする遺伝子を欠損しているHSVの複製を増強する。
【0043】
したがって、一実施形態において、本発明のHSVは、プロモーターに作動可能に連結されたUS11遺伝子を含み、プロモーターの活性はウイルス複製に依存しない。プロモーターは、哺乳動物の、好ましくはヒトの腫瘍細胞において活性である、前初期(IE)プロモーター又は非HSVプロモーターであり得る。プロモーターは、例えば、哺乳動物、好ましくはヒトのゲノムに由来するプロモーターなどの真核生物プロモーターであり得る。プロモーターは、ユビキタスプロモーター(β-アクチン又はチューブリンのプロモーターなど)又は細胞特異的プロモーター、例えば腫瘍特異的プロモーターであり得る。プロモーターは、Moloneyマウス白血病ウイルスの長い末端反復(MMLV LTR)プロモーター又はヒト若しくはマウスのサイトメガロウイルス(CMV)IEプロモーターなどのウイルスプロモーターであり得る。HSV前初期(IE)プロモーターは当該技術分野において周知である。HSV IEプロモーターは、ICP0、ICP4、ICP22、ICP27又はICP47の発現を駆動するプロモーターであり得る。
【0044】
上記に言及されている遺伝子は、その機能不活性化がウイルスに対して腫瘍選択性の特性を提供し、任意の適切な方法によって、例えば、遺伝子及び/若しくはその遺伝子の調節配列の全部又は一部を欠失又は置換させることよって、あるいは遺伝子及び/若しくはその遺伝子の調節配列中に又はその代わりに1つ以上の核酸を挿入することによって機能的に不活性な状態とすることができる。例えば、当該技術分野において標準的である相同組換法を用いて、本発明のウイルスを作製することができる。あるいは、細菌人工染色体(BAC)ベースのアプローチを使用してもよい。
【0045】
本明細書で使用するとき、用語「遺伝子」は、タンパク質をコードするヌクレオチド配列、すなわち遺伝子のコード配列を意味することが意図される。上記に言及されている種々の遺伝子は、遺伝子それ自体又は遺伝子に隣接する調節配列、例えばプロモーター配列を突然変異させることによって非機能的な状態にすることができる。欠失は、遺伝子の1つ以上の部分、遺伝子全体、又は遺伝子全体及び調節配列の全部又は一部を除去することができる。例えば、フレームシフトをもたらす遺伝子内のただ1つのヌクレオチドの欠失を生じさせ得る。しかしながら、より大きな欠失、例えば、全コード配列及び/又は非コード配列の少なくとも約25%、より好ましくは少なくとも約50%の欠失を生じさせ得る。1つの好ましい実施形態において、機能的に不活性な状態である遺伝子が欠失されている。例えば、遺伝子全体及び場合により隣接配列の一部をウイルスから除去することができる。遺伝子の2つ以上のコピーがウイルスゲノム中に存在する場合、遺伝子の両方のコピーは機能的に不活性な状態にされる。
【0046】
遺伝子は、他の配列を置換することによって、例えば、内因性遺伝子の全部又は一部を異種遺伝子及び場合によりプロモーター配列で置換することによって、不活性化することができる。プロモーター配列が置換されていない場合、異種遺伝子は、非機能的な状態にされた遺伝子のプロモーターによって調節されるように、挿入され得る。本発明のHSVにおいて、ICP34.5をコードする遺伝子は、異種の遺伝子、及びそれに作動可能に連結されるプロモーター配列、及び場合により他の制御エレメント、例えば、ポリアデニル化配列を、ICP34.5をコードする遺伝子座の各々に挿入することによって非機能的な状態にすることが好ましい。
【0047】
本発明のウイルスは、腫瘍においてGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子を発現させるために使用される。これは、典型的には、GM-CSFをコードする異種遺伝子及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする異種遺伝子を、各々の遺伝子がプロモーター配列の調節下にある選択的複製コンピテントウイルスのゲノムに挿入することによって達成される。このようなウイルスの複製が腫瘍組織において選択的に生じるため、ウイルスによるGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子の発現はまた、体の非腫瘍組織と比較して腫瘍組織において増強される。増強された発現は、発現が体の他の組織と比較して腫瘍においてより大きい場合に起こる。腫瘍溶解性ウイルスによって発現されたタンパク質は、腫瘍溶解性ウイルスが感染した腫瘍排出リンパ節に存在することも予想され、これは腫瘍由来の抗原提示細胞中又は上での発現されたタンパク質及びウイルスのトラフィッキング(trafficking)によるものも含まれる。したがって、本発明は、腫瘍溶解性ウイルス複製によって提供される抗腫瘍効果と組み合わせて、腫瘍及び腫瘍排出リンパ節において選択的に、GM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子の両方を発現するという利益を提供する。
【0048】
本発明のウイルスは、GM-CSFを含む。GM-CSFをコードする遺伝子の配列は、変更されていない配列を用いる場合と比べて、標的細胞におけるそれぞれのタンパク質の発現レベルを増加させるようにコドン最適化され得る。
【0049】
本発明のウイルスは、1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子及び/又は免疫共刺激経路活性化をコードする1つ以上の遺伝子を含む。免疫共刺激経路活性化分子としては、タンパク質及び核酸分子(例えば、アプタマー配列)が挙げられる。免疫共刺激経路活性化分子の例としては、CD40リガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、ICOSリガンド、flt3リガンド、TL1A、CD30リガンド、CD70、及びこれらの分子(CD40、GITR、4-1-BB、OX40、ICOS、flt3、DR3、CD30、CD27)に対する各受容体を標的とする一本鎖抗体が挙げられる。CD40L、GITRL、4-1-BBL、OX40L、ICOSL、ft3L、TL1A、CD30L又はCD70Lは、それらのいずれかの改変バージョン、例えば可溶性バージョンであり得る。
【0050】
免疫共刺激経路の活性化因子には、突然変異型又は野生型、可溶性、分泌型及び/又は膜結合型リガンド、並びに一本鎖抗体を含むアゴニスト抗体が含まれる。本発明のウイルスは、好ましくはCD40L、ICOSL、4-1-BBL、GITRL又はOX40Lの1つ以上をコードする。
【0051】
共阻害経路の阻害剤は、CTLA-4阻害剤であってもよい。CTLA-4阻害剤は、典型的には、CTLA-4に結合し、B7による活性化を低減させるなどのCTLA-4によるシグナル伝達を低減若しくは遮断するペプチド又はタンパク質などの分子である。CTLA-4シグナル伝達を低減させることにより、阻害剤は、CTLA-4による免疫刺激経路の遮断を減少させ又は除去する。
【0052】
CTLA-4阻害剤は、好ましくは、抗体又はその抗原結合断片である。本明細書において言及される用語「抗体」には、全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち、「抗原結合部分」)又はそれらの一本鎖が含まれる。抗体とは、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(カッパ)(L)鎖を含む糖タンパク質又はその抗原結合部分を指す。各々の重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略記する)及び重鎖定常領域で構成される。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略記する)及び軽鎖定常域で構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに細分することができる。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的な補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0053】
抗体は、典型的にはモノクローナル抗体である。抗体はキメラ抗体であってもよい。抗体は、好ましくはヒト化抗体であり、より好ましくはヒト抗体である。
【0054】
抗体の「抗原結合断片」という用語は、CTLA-4に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を指す。抗原結合断片はまた、CTLA-4を阻害する能力を保持し、したがって、刺激性免疫応答のCTLA-4遮断を低減又は除去する能力を保持する。適切な断片の例には、Fab断片、F(ab')2断片、Fab'断片、Fd断片、Fv断片、dAb断片及び単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。scFvなどの一本鎖抗体及びVHH及びラクダ抗体などの重鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」という用語に含まれることが意図される。好ましい実施形態において、抗体はscFvである。適切なscFv分子の例は、例えば、参照により本明細書に組み込まれるWO2007/123737及びWO2014/066532に開示されている。scFvは、配列番号34に示されるヌクレオチド配列、配列番号35に示されるヌクレオチド配列によってコードされ得る。
【0055】
本発明のウイルスは、1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子、好ましくは1、2、3又は4つの免疫共刺激経路活性化分子、より好ましくは1又は2つの免疫共刺激経路活性化分子をコードし得る。
【0056】
例えば、ウイルスは、
- CD40L及びICOSL、4-1-BBL、GITRL、OX40L及びCTLA-4阻害剤の1つ以上、
- ICOSL及びCD40L、4-1-BBL、GITRL、OX40L及びCTLA-4阻害剤の1つ以上、
- 4-1-BBL及びCD40L、ICOSL、GITRL、OX40L及びCTLA-4阻害剤の1つ以上、
- GITRL及びCD40L、ICOSL、4-1-BBL、OX40L及びCTLA-4阻害剤の1つ以上、
- OX40L及びCD40L、ICOSL、4-1-BBL、GITRL及びCTLA-4阻害剤の1つ以上、
- CTLA-4阻害剤及びCD40L、ICOSL、4-1-BBL、GITRL及びOX40Lの1つ以上、
をコードする遺伝子を含み得る。
【0057】
免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子の配列は、改変されていない配列が使用される場合と比較して、標的細胞中のそれぞれのタンパク質の発現レベルを増加させるようにコドン最適化され得る。
【0058】
本発明のウイルスは、GM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子に加えて1つ以上のさらなる異種遺伝子、例えば好ましい実施形態では、GALVR-などの融合誘導性タンパク質を含み得る。
【0059】
融合誘導性タンパク質は、本発明のウイルスに感染した細胞の、別の細胞への融合を促進することができる任意の異種タンパク質であり得る。融合誘導性タンパク質、好ましくは野生型又は改変されたウイルス性糖タンパク質(すなわち、その融合誘導特性を高めるように改変されたもの)は、それが発現される細胞の細胞間融合(合胞体(syncitia)形成)を誘導することができるタンパク質である。融合誘導性糖タンパク質の例としては、VSV-G、シンシチン-1(ヒト内因性レトロウイルス-W(HERV-W)由来)又はシンシチン-2(HERVFRDE1由来)、パラミクソウイルスSV5-F、麻疹ウイルス-H、麻疹ウイルス-F、RSV-F、レトロウイルス又はレンチウイルス、例えば、テナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)及びウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)由来の糖タンパク質が挙げられ、これらは、R膜貫通ペプチドが除去されている(R-バージョン)。好ましい実施形態において、融合誘導性タンパク質はGALV由来であり、Rペプチドが除去されている(GALV-R-)。
【0060】
本発明のウイルスは、複数コピーの融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子、好ましくは1又は2コピーを含むことができる。ウイルスは、上記に列挙した融合誘導性タンパク質のいずれかを含む、2つ以上の異なる融合誘導性タンパク質を含み得る。
【0061】
本発明のウイルスによって任意選択的に発現される融合誘導性タンパク質は、天然に存在するタンパク質と同一であってもよく、又は改変されたタンパク質であってもよい。
【0062】
融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子(融合誘導性遺伝子)は、天然に存在する核酸配列又は改変された配列を有し得る。融合誘導性遺伝子の配列は、例えば、コードされたタンパク質の融合誘導特性を高めるために、又はコドン最適化を提供し、したがって、コードされたタンパク質の発現効率を高めるために改変され得る。
【0063】
本発明はまた、少なくとも3つの異種遺伝子を発現する、ポックスウイルス又はHSV、好ましくはHSV1などのウイルスを提供し、3つの異種遺伝子の各々は、CMVプロモーター、RSVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される。ウイルスは、例えば、4つの異種遺伝子を発現し得、4つの異種遺伝子の各々は、CMVプロモーター、RSVプロモーター、EF1aプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される。レトロウイルスLTRは、好ましくは、MoMuLVとしても知られているMMLV(配列番号43)由来である。異種遺伝子は、ポリアデニル化配列によって終結され得る。ポリアデニル化配列は同一であってもよく又は異なっていてもよい。好ましくは、各々の異種遺伝子は、好ましくはBGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される。
【0064】
本発明はまた、少なくとも3つの異種遺伝子を発現するポックスウイルス又はHSV、好ましくはHSV1などのウイルスを提供し、3つの異種遺伝子の各々は、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される。ウイルスは、例えば、それぞれ、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列の各々によって終結される4つの異種遺伝子を発現し得る。
【0065】
ウイルスの産生
本発明のウイルスは、当該技術分野において周知の方法を用いて構築される。例えば、パッケージングされるウイルスゲノムをコードするプラスミド(より小さなウイルス及び単一及び複数のゲノム成分RNAウイルス用)又はBAC(ヘルペスウイルスを含むより大きなDNAウイルス用)は、適切な制御調節下で融合誘導性分子及び免疫刺激分子をコードする遺伝子を含み、標準的な分子生物学技術によって構築され、組換えウイルスを回収することができる許容細胞にトランスフェクトされ得る。
【0066】
あるいは、好ましい実施形態において、意図された挿入部位に隣接するDNA領域を含有するプラスミドを構築し、次に、ウイルスゲノムDNAとともに許容細胞に同時トランスフェクションし得、それにより、プラスミド中の標的挿入部位の隣接領域と親ウイルスの同じ領域との間で相同組換が生じる。次に、組換えウイルスは、例えば、意図された挿入部位での親ウイルスからのGFP又はlacZなどのマーカー遺伝子の挿入又は欠失によるなどの、改変に使用されるプラスミドによって挿入又は欠失された機能の喪失又は付加を介して、選択及び精製することができる。最も好ましい実施形態において、挿入部位はHSVのICP34.5遺伝子座であり、したがって、操作に使用されるプラスミドは、この挿入部位に隣接するHSV配列を含有し、その間にGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする発現カセットがある。この場合、親ウイルスは、ICP34.5の代わりにGFPをコードするカセットを含有し得、組換えウイルスプラークはGFPの発現の消失によって選択される。最も好ましい実施形態において、HSVのUS11遺伝子はまた、IE遺伝子として発現される。これは、ICP47コード領域の欠失を介して、又は他の手段によって達成され得る。
【0067】
GM-CSFをコードする配列及び共刺激経路活性化分子をコードする配列は、適切な制御調節下でウイルスゲノムに挿入される。これは、種及び挿入部位に依存して、又は好ましくは異種プロモーターの調節下で、使用される本発明のウイルス種の天然プロモーターの制御調節下にあり得る。適切な異種プロモーターには、IEF2aプロモーター又はアクチンプロモーターなどの哺乳動物プロモーターが含まれる。CMV IEプロモーター、RSV LTR、MMLV LTR、他のレトロウイルスLTRプロモーター、又はSV40由来のプロモーターなどの強力なウイルスプロモーターがより好ましい。好ましくは、各々の外来遺伝子(すなわち、GM-CSF及び共刺激経路活性化分子をコードする)は、別個のプロモーター調節下にあるが、また、例えば、タンパク質コード配列間に内部リボソーム侵入部位(IRES)を挿入することによって、単一のRNA転写物から発現され得る。各々のプロモーター由来のRNAは、典型的には、ポリアデニル化配列(例えば、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリA配列、合成ポリアデニル化配列、ウサギベータグロビンポリアデニル化配列などの哺乳動物配列、又はSV40初期若しくは後期ポリアデニル化配列などのウイルス配列)を用いて終結される。
【0068】
医薬組成物
本発明は、ウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物を提供する。適切な担体及び希釈剤は、等張性生理食塩水、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水を含む。組成物は、製品の安定性などの特性を改善するために、糖又はタンパク質などの他の成分をさらに含み得る。あるいは、使用前に医薬として許容される担体又は希釈剤中で再構成される凍結乾燥製剤を使用し得る。
【0069】
必要に応じて、担体の選択は、しばしば組成物の送達経路の関数である。本発明の範囲内で、組成物は、任意の適切な経路及び投与手段のために製剤化され得る。医薬として許容される担体又は希釈剤は、腫瘍内投与、静脈内/動脈内投与、脳への投与又は体腔(例えば、膀胱、胸腔又は腹腔内投与)への投与に適した組成物に使用されるものである。組成物は、任意の適切な形態で、好ましくは液体として投与することができる。
【0070】
本発明はまた、本発明のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物を提供する。
【0071】
医療用途/処置の方法
本発明は、特にがんを処置する方法において使用するための、治療によるヒト又は動物の体の処置における使用のための本発明のウイルスを提供する。がんは、典型的には、哺乳動物、好ましくはヒトに存在する。このウイルスは、感染した腫瘍細胞を溶解によって、及び感染した腫瘍細胞を互いに融合させることによって死滅させる。本発明のウイルスはまた、がん細胞も死滅させるGM-CSF及び共刺激経路活性化分子の発現により増強された全身性抗腫瘍免疫応答を誘発する。
【0072】
本発明はまた、治療有効量の本発明のウイルスを、それを必要とする個体に投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。
【0073】
本発明はさらに、がんを処置するための医薬の製造における本発明のウイルスの使用を提供する。
【0074】
本発明のウイルスは、任意の腺癌、癌腫、メラノーマ又は肉腫を含む任意の固形腫瘍の処置に特に有用である。例えば、本発明のウイルスは、頭頸部、前立腺、乳房、卵巣、肺、肝臓、子宮内膜、膀胱、胆嚢、膵臓、結腸、腎臓、胃(stomach)/胃(gastric)、食道又は子宮頚部のがん、中皮腫、メラノーマ又は他の皮膚がん、リンパ腫、神経膠腫若しくは神経系の他のがん、又は軟部肉腫などの肉腫の処置に有用である。
【0075】
本発明のウイルスは、元の腫瘍の部位から転移した腫瘍を含む悪性腫瘍を処置するために使用され得る。この実施形態において、ウイルスは、原発腫瘍又は1つ以上の二次腫瘍に投与され得る。
【0076】
本発明のウイルスは、化学療法、標的化療法、免疫療法(免疫チェックポイント遮断、すなわち免疫共阻害経路の1つ以上のアンタゴニスト及び/又は免疫共刺激経路の1つ以上のアゴニストの投与を含む)を含む他の治療剤と組み合わせて、及び/又は放射線療法と組み合わせて、及び/又はこれらの任意の組み合わせと組み合わせて投与することができる。治療剤は、好ましくは抗がん剤である。
【0077】
本発明のウイルスは、第2の腫瘍溶解性ウイルスなどの第2のウイルスと組み合わせて投与され得る。
【0078】
例えば、治療剤は、腫瘍細胞、特にネオ抗原に対する免疫応答、例えば、細胞性又は体液性の免疫応答をさらに刺激するために、免疫原(このような抗原、あるいはそれがコードされているDNA若しくはRNAとして送達される抗原の組み合わせを含む、組換え又は天然に存在する抗原を含む)を含み得る。治療剤は、サイトカイン、免疫チェックポイント経路を阻害し、若しくは免疫増強経路を刺激することが意図された薬剤、又は制御性T細胞(Tregs)若しくは骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)の活性を阻害する薬剤などの免疫応答を増加又は増強することが意図された薬剤であり得る。
【0079】
治療剤は、既存のがん治療処置における使用が公知である薬剤であり得る。治療剤は、放射線療法剤又は化学療法剤であり得る。治療剤は、シクロホスファミド(cyclophosmamide)、アルキル化様薬剤、例えば、シスプラチン又はメルファラン、植物アルカロイド及びテルペノイド、例えば、ビンクリスチン又はパクリタキセル(タキソール)、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシル、トポイソメラーゼ阻害剤タイプI又はII、例えば、カンプトテシン又はドキソルビシン、細胞傷害性抗生物質、例えば、アクチノマイシン、アントラサイクリン、例えば、エピルビシン、グルココルチコイド、例えば、トリアムシノロン、タンパク質、DNA及び/又はRNA合成の阻害剤、例えば、メトトレキセート及びダカルバキシン、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤、又は任意の他の化学療法剤から選択され得る。
【0080】
治療剤は、以下のうちの1つ又は組み合わせであり得る:免疫療法剤又は免疫調節剤、例えば、TLRアゴニスト;T制御細胞をダウンレギュレートする薬剤、例えば、シクロホスファミド;又は免疫チェックポイントを遮断し又は免疫増強経路を刺激するように設計された薬剤、例えば、限定されないが、モノクローナル抗体、例えば、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、CSF1R阻害剤、IDO阻害剤、CEACAM1阻害剤、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト、ICOSアゴニスト又はCD47阻害剤。好ましい実施形態において、治療剤は、CTLA-4阻害剤、例えば、抗CTLA-4抗体、PD1阻害剤、例えば、抗PD-1抗体、又はPD-L1阻害剤、例えば抗PD-L1抗体である。このような阻害剤、アゴニスト及び抗体は、当該技術分野において公知である標準的な方法によって生成及び試験することができる。
【0081】
免疫療法剤はまた、二重特異性抗体、樹状細胞に基づく細胞に基づく治療、NK細胞又は操作されたT細胞、例えば、CAR-T細胞又は操作されたT細胞受容体を発現するT細胞を含み得る。免疫療法剤はまた、腫瘍において生じる特異的遺伝子突然変異を標的とする薬剤、特定の腫瘍抗原又は腫瘍抗原の組み合わせに対する免疫応答を誘発することが意図された薬剤、例えばネオ抗原、並びに/又はSTING/cGAS経路、TLR又は他の自然免疫応答及び/又は炎症性経路を活性化することが意図された薬剤、例えば腫瘍内薬剤を含む。
【0082】
例えば、本発明のウイルスは、メラノーマを処置するために、ダカルバジン、BRAF阻害剤及び/又はCTLA-4、PD1若しくはPD-L1遮断剤と組み合わせて、乳がんを処置するためにタキソール、ドキソルビシン、ビノレルビン、シクロホスファミド及び/又はゲムシタビンと組み合わせて、結腸直腸がんを処置するために5-フルオロウラシル、並びに場合によりロイコボリン、イリノテカン及び/又はオキサリプラチンと組み合わせて、肺がんを処置するためにタキソール、カルボプラチン、ビノレルビン及び/又はゲムシタビン、PD-1若しくはPD-L1遮断剤と組み合わせて、頭頸部がんを処置するためにシスプラチン及び/又は放射線療法と組み合わせて使用され得る。
【0083】
治療剤は、インドールアミン(idoleamine)2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤であり得る。IDO阻害剤の例には、エプカドスタット(INCB024360)、1-メチル-トリプトファン、インドキシモド(1-メチル-D-トリプトファン)、GDC-0919又はF001287が含まれる。
【0084】
抗腫瘍免疫応答を抑制する際のIDOの作用機序はまた、腫瘍溶解性ウイルス療法後に生じる免疫応答を抑制し得る。IDO発現は、トール様受容体(TLR)活性化及びインターフェロン-γによって誘導され、その両方は腫瘍溶解性ウイルス感染に起因し得る。がん処置のための腫瘍溶解性ウイルス療法の使用の1つの実施形態は、GM-CSF及び/又は融合共刺激経路活性化分子を発現するウイルスを含む腫瘍溶解性ウイルスと、IDO経路の阻害剤と、場合により、CTLA-4、PD-1及び/若しくはPD-L1を標的とするものを含む、免疫共阻害経路の1つ以上のアンタゴニスト、並びに/又は免疫共刺激経路の1つ以上のアゴニストとの組み合わせを含む。
【0085】
本発明はまた、治療有効量の腫瘍溶解性ウイルス、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤及び免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニスト、並びに/又は免疫共刺激経路のアゴニストを、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを処置する方法を提供する。
【0086】
腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくは、改変された臨床分離株である。腫瘍溶解性ウイルスは、好ましくはポックスウイルスであり、より好ましくはHSV、例えば、HSV1並びに/又はICP34.5及び/若しくはICP47に対して機能的に不活性な状態にされたHSVである。腫瘍溶解性ウイルスは、免疫刺激分子、例えばGM-CSF、及び/又は共刺激経路をコードする分子、例えばCD4OL、GITRL、OX4OL、4-I-BBL又はICOSL、及び/又はCTLA-4の阻害剤、及び/又は融合誘導性タンパク質、例えばR配列が突然変異又は欠失されているGALV融合誘導性糖タンパク質を発現し得る。免疫共刺激経路のさらなるアンタゴニストは、好ましくは、CTLA-4のアンタゴニスト、PD1のアンタゴニスト又はPD-L1のアンタゴニストである。例えば、免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニストは、PD1とPD-L1の間の相互作用の阻害剤であり得る。
【0087】
治療剤及び/又は放射線療法が本発明のウイルスとともに使用される場合、ウイルス及び治療剤の投与並びに/又は放射線療法は、同時に行われてもよく、又は時間によって分けられてもよい。本発明の組成物は、治療剤又は放射線療法の前、同時又は後に投与され得る。がんを処置する方法は、本発明のウイルス及び/又は治療薬及び/又は放射線療法の複数回投与を含み得る。好ましい実施形態において、免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤との組み合わせの場合、本発明のウイルスは、その後の免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤の同時投与の前に1回又は複数回投与され、あるいは本発明のウイルスの事前投与なしに、免疫チェックポイント遮断剤又は他の免疫増強剤の投与と同時に投与される。
【0088】
本発明のウイルスは、任意の適切な経路によって対象に投与され得る。典型的には、本発明のウイルスは、直接腫瘍内注射によって投与される。腫瘍内注射には、表皮、皮下又は結節の腫瘍への直接注射、並びに、例えば内臓器官及び他の場所に、沈着物をより深く又はより強固に局在化させるための画像誘導化(CT、MRI又は超音波など)注射を含む。ウイルスは、体腔に、例えば、胸膜腔、膀胱に又は腹腔内投与によって投与され得る。ウイルスは、血管内、好ましくは腫瘍を供給する血管内に注射され得る。
【0089】
本発明のウイルスと組み合わせることができる治療剤は、様々な公知の経路及び技術を用いてインビボでヒト又は動物対象に投与することができる。例えば、組成物は、注射可能な溶液、懸濁液又はエマルジョンとして提供され、従来の針及び注射器を用いて又は液体噴射注射システムを用いて、非経口、皮下、経口、表皮、皮内、筋肉内、動脈内、腹腔内、静脈内注射を介して投与され得る。組成物は、鼻、気管内、腸、舌下、直腸又は膣などの皮膚又は粘膜組織に局所的に投与され得、又は呼吸若しくは肺投与に適した細かく分割された噴霧として提供され得る。好ましい実施形態において、組成物は、静脈内注入によって、経口的に、又は腫瘍に直接的に投与される。
【0090】
ウイルス及び/又は治療剤は、治療的に有効な用量組成物と適合する量で対象に投与され得る。本発明のウイルスの投与は、「治療」目的のためである。本明細書において使用する場合、用語「治療」又は「処置」には、その目的として以下のいずれか1つ以上を含む:任意の転移又は生じるさらなる転移の予防、症状の軽減又は排除、腫瘍若しくはがんの減少又は完全な排除、患者のがんの進行までの時間の増加、処置後の再発までの時間の増加、あるいは生存時間の増加。
【0091】
治療的処置は、ステージI、II、III又はIVのがん、好ましくはステージII、III又はIV、より好ましくはステージIII又はIVに対して、外科的介入の前又は後(すなわち、手術後の腫瘍の再発又は不完全な除去後)、好ましくは任意の外科的介入前(原発性又は再発性/転移性の疾患の切除のいずれかのため)、又は手術後若しくは疾患の不完全な外科的除去後の再発後、すなわち残留腫瘍が残っている間に与えられる。
【0092】
治療的処置は、ウイルス組成物を、腫瘍であり得る標的組織に、体腔に、又は血管に直接注射した後に行うことができる。指針として、投与されるウイルスの量は、HSVの場合、104~1010pfu、好ましくは105~109pfuの範囲である。HSVの場合、最初の低用量(例えば104~107pfu)は、HSVについて血清反応陰性である患者を血清転換するため、及び血清陽性である患者の免疫を高めるために与えられ、続いて、より高用量(例えば106~109pfu)がその後に与えられ得る。典型的には、ウイルス及び医薬として許容される適切な担体又は希釈剤から本質的になる、最大20mlの医薬組成物は、腫瘍に直接注射するために使用され得、又は最大50ml(投与前に、適切な希釈剤中へのさらなる希釈に供されてもよい)は、体腔に投与するために、又は血流に投与するために使用され得る。しかしながら、いくつかの腫瘍溶解療法用途については、腫瘍並びに投与経路及び部位に依存して、より大きい又はより小さい容積もまた使用され得る。
【0093】
記載された投与経路及び投薬量は、熟練した医師が最適な投与経路及び投薬量を容易に決定することができるため、指針としてのみ意図される。用量は、様々なパラメータに従って、特に腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、処置される患者の年齢、体重及び状態、並びに投与経路に従って決定され得る。好ましくは、ウイルスは、腫瘍又は体腔内への直接注射によって投与される。ウイルスはまた、血管内への注射によって投与され得る。最適な投与経路は、腫瘍の位置及び大きさに依存する。複数回の用量は、免疫学的又は臨床的効果を達成するために必要とされ得、これは、必要に応じて、典型的には、2日~12週間の間隔、好ましくは3日~3週間の間隔で投与される。処置されている腫瘍のタイプの応答速度及び特定の患者の応答、また、与えられ得る任意の併用療法に依存して、最大5年以上好ましくは最大1カ月~2年間の反復投与が与えられ得る。
本発明の様々な実施形態を以下に示す。
1.(i)GM-CSFをコードする遺伝子、及び(ii)免疫共刺激経路活性化分子又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子を含む腫瘍溶解性ウイルス。
2.免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CD40リガンド(CD40L)、ICOSリガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、TL1A、CD30リガンド、CD27若しくはflt3リガンド又はこれらのいずれかの改変バージョンをコードする、上記1に記載のウイルス。
3.免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CD40リガンド、GITRリガンド、4-1-BBリガンド、OX40リガンド、ICOSリガンド、又はこれらのいずれかの改変バージョンをコードする、上記1又は2に記載のウイルス。
4.免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、CTLA-4阻害剤をコードする、上記1に記載のウイルス。
5.CTLA-4阻害剤がCTLA-4抗体又はその断片である、上記4に記載のウイルス。
6.融合誘導性タンパク質をコードする遺伝子をさらに含む、上記1~5のいずれかに記載のウイルス。
7.融合誘導性タンパク質が、水疱性口内炎ウイルス(VSV)Gタンパク質、シンシチン-1、シンシチン-2、シミアンウイルス5(SV5)Fタンパク質、麻疹ウイルス(MV)Hタンパク質、MV Fタンパク質、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)Fタンパク質、及びRペプチドが欠失しているテナガザル(gibbon ape)白血病ウイルス(GALV)、マウス白血病ウイルス(MLV)、Mason-Pfizerサルウイルス(MPMV)又はウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)由来の糖タンパク質からなる群から選択される、上記6に記載のウイルス。
8.融合誘導性タンパク質が、テナガザル白血病ウイルス(GALV)由来の糖タンパク質であり、R膜貫通ペプチドが突然変異又は除去されている(GALV-R-)、上記6又は7に記載のウイルス。
9.1つ以上の免疫共刺激経路活性化分子をコードする、上記1~8のいずれかに記載のウイルス。
10.ウイルスの臨床分離株に由来する、上記1~9のいずれかに記載のウイルス。
11.2つ以上の腫瘍細胞株を、同種のウイルスの1つ以上の参照臨床分離株よりも、インビトロで迅速に及び/又は低用量で死滅させる、ウイルスの改変された臨床分離株である、上記1~10のいずれかに記載のウイルス。
12.臨床分離株が
仮受託番号ECCAC16121904を有するRH018A株、
仮受託番号ECCAC16121902を有するRH004A株、
仮受託番号ECCAC16121907を有するRH031A株、
仮受託番号ECCAC16121908を有するRH040B株、
仮受託番号ECCAC16121903を有するRH015A株、
仮受託番号ECCAC16121905を有するRH021A株、
仮受託番号ECCAC16121906を有するRH023A株、又は
仮受託番号ECCAC16121909を有するRH047A株
である、上記10又は11に記載のウイルス。
13.ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、レトロウイルス、ラブドウイルス、パラミクソウイルス及びレオウイルスからなる群から選択される、上記1~11のいずれかに記載のウイルス。
14.単純ヘルペスウイルス(HSV)である、上記1~13のいずれかに記載のウイルス。
15.HSV1である、上記14に記載のウイルス。
16.HSVが、
(a)機能的ICP34.5を発現しない、
(b)機能的ICP47を発現しない、及び/又は
(c)US11遺伝子を前初期遺伝子として発現する、
上記15に記載のウイルス。
17.GM-CSFをコードする遺伝子及び免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子が、それぞれ別々の制御調節下で、互いに関して背中合わせの向きで、挿入、又は部分的な若しくは完全な欠失のいずれかによって、ICP34.5をコードする遺伝子座に挿入されている、上記14~16のいずれかに記載のウイルス。
18.GM-CSFをコードする遺伝子の配列及び/又は免疫共刺激経路活性化分子をコードする遺伝子の配列が、標的細胞における発現レベルを増加させるようにコドン最適化されている、上記1~17のいずれかに記載のウイルス。
19.3つの異種遺伝子を発現するウイルスであって、3つの異種遺伝子の各々が、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター(配列番号)及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターにより駆動されるウイルス。
20.3つの異種遺伝子を発現し、3つの異種遺伝子の各々が、CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターから選択される異なるプロモーターによって駆動される、上記1~19のいずれかに記載のウイルス。
21.CMVプロモーター、RSVプロモーター、SV40プロモーター及びレトロウイルスLTRプロモーターの各々によってそれぞれ駆動される4つの異種遺伝子を発現する、上記19又は20に記載のウイルス。
22.レトロウイルスLTRがMMLV由来である、上記19~21のいずれかに記載のウイルス。
23.3つの異種遺伝子を発現するウイルスであって、3つの異種遺伝子の各々が、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結されるウイルス。
24.3つの異種遺伝子を発現し、3つの異種遺伝子の各々が、BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列から選択される異なるポリアデニル化配列によって終結される、上記1~23のいずれかに記載のウイルス。
25.BGH、SV40、HGH及びRBGポリアデニル化配列の各々によってそれぞれ終結される4つの異種遺伝子を発現する、上記23又は24に記載のウイルス。
26.(a)HSV、
(b)HSV1、又は
(c)ポックスウイルス
である、上記19~25のいずれかに記載のウイルス。
27.上記1~26のいずれかに記載のウイルス及び医薬として許容される担体又は希釈剤を含む医薬組成物。
28.治療によってヒト又は動物の体を処置する方法に使用するための、上記1~26のいずれかに記載のウイルス。
29.がんを処置する方法に使用するための、上記1~26のいずれかに記載のウイルス。
30.方法が、さらなる抗がん剤を投与することを含む、上記29に記載の使用のためのウイルス。
31.さらなる抗がん剤が、免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤、放射線療法及び/又は化学療法、腫瘍において生じる特定の遺伝子突然変異を標的とする薬剤、1つ以上の腫瘍抗原又はネオ抗原に対する免疫応答を誘導することが意図された薬剤、T細胞又はNK細胞に由来する細胞生成物、STING、cGAS、TLR又は他の自然免疫応答及び/若しくは炎症経路を刺激することが意図された薬剤、第2のウイルス、任意選択的に腫瘍溶解性ウイルス、並びにそれらの組み合わせから選択される、上記30に記載の使用のためのウイルス。
32.免疫共阻害経路を標的とする薬剤が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、CSF1R阻害剤、IDO阻害剤、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、CEACAM1阻害剤若しくはCD47阻害剤であり、及び/又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤が、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト若しくはICOSアゴニストである、上記30又は31に記載の使用のためのウイルス。
33.さらなる抗がん剤が抗体である、上記30~32のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
34.方法が、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路の阻害剤及び免疫共阻害経路のさらなるアンタゴニスト、又は免疫共刺激経路のアゴニストを投与することを含む、上記30~33のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
35.ウイルス及びさらなる抗がん剤が別々に投与される、上記29~34のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
36.ウイルス及びさらなる抗がん剤が同時に投与される、上記29~34のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
37.がんが固形腫瘍である、上記29~36のいずれかに記載の使用のためのウイルス。
38.上記1~26のいずれかに記載のウイルスを滅菌バイアル、アンプル又はシリンジ中に含む製造物。
39.治療有効量の上記1~26のいずれかに記載のウイルス又は上記27に記載の医薬組成物を、それを必要とする患者に投与することを含む、がんを処置する方法。
40.治療有効量のさらなる抗がん剤を、それを必要とする患者に投与することをさらに含む、上記39に記載の方法。
41.さらなる抗がん剤が、免疫共阻害経路又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤、放射線療法及び/又は化学療法、腫瘍において生じる特定の遺伝子突然変異を標的とする薬剤、1つ以上の腫瘍抗原又はネオ抗原に対する免疫応答を誘導することが意図された薬剤、T細胞又はNK細胞に由来する細胞生成物、STING、cGAS、TLR又は他の自然免疫応答及び/若しくは炎症経路を刺激することが意図された薬剤、第2のウイルス、任意選択的に腫瘍溶解性ウイルス、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される、上記40に記載の方法。
42.免疫共阻害経路を標的とする薬剤が、CTLA-4阻害剤、PD-1阻害剤、PD-L1阻害剤、LAG-3阻害剤、TIM-3阻害剤、VISTA阻害剤、aCSF1R阻害剤、IDO阻害剤、KIR阻害剤、SLAMF7阻害剤、CEACAM1阻害剤若しくはCD47阻害剤であり、及び/又は免疫共刺激経路を標的とする薬剤が、GITRアゴニスト、4-1-BBアゴニスト、OX40アゴニスト、CD40アゴニスト若しくはICOSアゴニストである、上記41に記載の方法。
43.さらなる抗がん剤が抗体を含む、上記41又は42に記載の方法。
44.ウイルス及びさらなる抗がん剤が別々に投与される、上記40~43のいずれかに記載の方法。
45.ウイルス及びさらなる抗がん剤が同時に投与される、上記40~43のいずれかに記載の方法。
46.がんが固形腫瘍である、上記40~45のいずれかに記載の方法。
47.がんを処置する方法において使用するための医薬の製造における、上記1~26のいずれかに記載のウイルスの使用。
48.方法が、さらなる抗がん剤を投与することを含む、上記47に記載の使用。
【0094】
以下の実施例は、本発明を説明するものである。
【実施例0095】
[実施例1]
本発明のウイルスの構築
本発明を例示するために使用されるウイルス種はHSVであり、具体的にはHSV1である。例示のために使用されるHSV1の株は、ヒト腫瘍由来の細胞株のパネルを死滅させる能力についてのHSV1の20を超える原発の臨床分離株の比較、及び広範囲のこれらを短時間で、及び低用量で死滅させる能力が最も高いウイルス株の選択を通じて同定される。この比較に使用される腫瘍細胞株には、U87MG(グリオーマ)、HT29(結腸直腸)、LNCaP(前立腺)、MDA-MB-231(乳房)、SK-MEL-28(メラノーマ)、Fadu(扁平上皮癌)、MCF7(乳房)、A549(肺)、MIAPACA-2(膵臓)、CAPAN-1(膵臓)、及び/又はHT1080(線維肉腫)が含まれる。
【0096】
具体的には、HSVの各々の原発の臨床分離株は、1、0.1、0.01及び0.001などのMOIでスクリーニングするために使用される細胞株のそれぞれに滴定され、各々の用量で24及び48時間などの時間点での細胞死の程度について評価される。細胞死滅の程度は、例えば、各々の時間点での生存細胞の割合の顕微鏡評価、又は例えば代謝アッセイ、例えばMTTアッセイによって評価され得る。次に、本発明の例示的なウイルスは、その間にGFPをコードする、HSV1ヌクレオチド145300~145582(HSV1ヌクレオチド145300~145582は欠失される配列である;HSV1株17配列GenbankファイルNC 001806.2)に隣接する領域を含むプラスミドによる相同組換を用いてウイルスゲノムからICP47を欠失させることにより構築される。GFP発現ウイルスプラークを選択し、次に、空の隣接領域を用いた相同組換により除去されるGFP、及びGFPを発現しないプラークが選択される。これは、US11が、ここではICP47プロモーターの調節下にあるため、IEタンパク質として発現されるICP47欠失ウイルスをもたらす。次に、ICP34.5は、その間にGFPがコードされる、HSV1ヌクレオチド124953~125727(HSV1ヌクレオチド124953~125727は欠失される配列である;HSV1株17配列GenbankファイルNC 001806.2)に隣接する領域を含むプラスミドによる相同組換を用いて欠失される。GFPを発現するウイルスプラークを再度選択し、次に、同じ隣接領域(ただし、その間に、ここでは、それぞれCMV、RSV及びSV40プロモーターによって駆動されるマウスGM-CSF配列のコドン最適化バージョン及びGALV R-配列のコドン最適化バージョン、及びマウス可溶性多量体CD40Lのコドン最適化バージョンを含む発現カセットがある)を用いた相同組換によってGFPは除去される。GFP非発現プラークを選択する。
【0097】
得られたウイルスの構造を図1に示す。mGM-CSF、CD40L及びGALV-R-配列をそれぞれ配列番号2、14及び8に示す。得られたウイルスの構造を制限消化及びサザンブロットによって確認し、GM-CSF及びCD40L発現をELISAによって確認し、GALV-R-発現をヒトHT1080腫瘍細胞の感染及び合胞体(syncitial)プラークの観察によって確認する。
【0098】
ウイルスはまた、GALVR-又はマウスGM-CSF及びGALVR-、ただしCD40Lを有さないものの遺伝子のみが挿入されている類似の手順を用いて構築される。これらのウイルスの構造も図1に示す。
【0099】
ヒトの使用には、hGM-CSF及びhCD40Lが使用され、そのコドン最適化バージョンの配列は配列番号4及び13に示される。
【0100】
[実施例2]
マウス腫瘍モデルにおける腫瘍溶解性ウイルス由来のGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子を組み合わせた発現の効果
GALV R-タンパク質は、ヒト細胞において細胞間融合を引き起こすが、マウス細胞においては引き起こさない。これは、細胞融合を引き起こすために必要なPiT-1受容体が、マウスにおいて、細胞融合が起こらない配列を有するためである。結果として、ヒトPiT-1を発現するマウス腫瘍細胞が、当該技術分野において標準的な方法を用いて最初に調製される。ヒトPiT-1は、選択マーカー遺伝子も含むレンチウイルスベクターにクローニングされる。ベクターは、標的CT26マウス結腸直腸がん腫瘍細胞にトランスフェクトされ、選択マーカーに耐性のクローンを選択してCT26/PiT-1細胞を生成する。PiT-1発現は、トランスフェクションされていない細胞、及びPiT-1を発現するレンチウイルスでトランスフェクトされた細胞におけるウエスタンブロッティングによって、及びGALV-R-を発現するプラスミドのトランスフェクション及び細胞融合が起こることの確認によって確認される。
【0101】
本発明の有用性は、Balb/cマウスの両側面にCT26/PiT-1細胞を投与し、CT26/PiT-1腫瘍を直径約0.5cmまで増殖させることによって実証される。
【0102】
次に、以下の処置が、マウスの群(群あたり5匹)に、2週間、3回/週だけ、各々のマウスの一側面に投与される:
- 50μlの生理食塩水(1群)、
- GALV-R-のみが挿入されている、50μlの105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlのHSV(3群)、
- マウスGM-CSF及びGALV-R-のみが挿入されている、50μlの105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlのHSV(3群)、
- GALV-R-及びマウスGM-CSFとCD40Lの両方が挿入されている、50μlの105pfu/ml、106pfu/ml、又は107pfu/mlのウイルス(3群)。
【0103】
次に、腫瘍増殖に対する効果が最大1カ月間観察される。他の群と比較して、GM-CSF及びCD40Lを発現するウイルスを用いた注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方における、改善された用量応答曲線を通じるものを含む、優れた腫瘍制御及び縮小が観察される。
【0104】
[実施例3]
マウス腫瘍モデルにおける免疫チェックポイント遮断の治療効果における腫瘍溶解性ウイルス由来のGM-CSF及び免疫共刺激経路活性化分子の組み合わせた発現の効果
上記の実施例2における実験を繰り返すが、マウスは、マウスPD-1を標的とする抗体(10mg/kg;ウイルス投薬と同日にBioxcell RMP-1-14)、又はマウスCTLA-4を標的とする抗体(10mg/kg;ウイルス投薬と同日にBioxcell 9H10)を用いて腹腔内経路により2週間毎に追加投薬される。抗体処置を受けない追加のマウス群が追加される。より具体的には、マウス群は、(1)生理食塩水、(2)実施例2のようにGALV-R-が挿入されたHSV、(3)実施例2のようにGM-CSFとGALV-R-が挿入されたHSV、(4)実施例2のようにGM-CSF、CD40L及びGALV-R-が挿入されたHSV、(5)PD-1抗体、(6)CTLA-4抗体、(7)GALV-R-が挿入されたHSV+PD-1抗体、(8)GALV-R-が挿入されたHSV+CTLA-4抗体、(9)GM-CSFとGALV-R-を伴うHSV及びPD-1抗体、又は(10)GM-CSFとGALV-R-を伴うHSV及びCTLA-4抗体、(11)GM-CSF、CD40L及びGALV-R-を伴うHSV及びPD-1抗体、又は(12)GM-CSF、CD40L及びGALV-R-を伴うHSV及びCTLA-4抗体を受ける。他の群と比較して、GM-CSF及びCD40Lを発現するウイルス、と共に抗PD-1抗体又は抗CTLA-4抗体を用いた注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方における、改善された用量応答曲線を通じるものを含む、優れた腫瘍制御及び縮小が観察される。
【0105】
[実施例4]
臨床分離株の回収
本発明を例示するために使用されるウイルス種はHSVであり、具体的にはHSV1である。本発明を例示するために、再発性口唇ヘルペス(cold sore)を患った181名のボランティアを募集した。これらのボランティアに試料回収キット(Sigma Virovult回収チューブを含む)を与え、これらを用いて、口唇ヘルペスが出現した場合にそれを拭き取り、その後、これらの試料をReplimune(オックスフォード、英国)に出荷した。2015年6月から2016年2月まで、72人のボランティアから拭き取りを受け取った。各々の拭き取りの試料を用いて、BHK細胞を感染させた。これらのうち、36個の生きたウイルス試料は、BHK細胞上に播種し及び増殖させた後に回収された。これらの試料は表1に詳述されている。
【0106】
【表1】
記号表示A、B、Cなどは、同一のボランティア由来の複数の拭き取りを指す。
【0107】
[実施例5]
抗腫瘍効果が改善された臨床分離株の同定
ヒト腫瘍由来の細胞株のパネルを死滅させるためのHSV1の原発の臨床分離株の能力を試験した。この比較のために用いられた腫瘍細胞株は、HT29(結腸直腸)、MDA-MB-231(乳房)、SK-MEL-28(メラノーマ)、Fadu(扁平上皮癌)、MCF7(乳房)、A549(肺)、MIAPACA-2(膵臓)及びHT1080(線維肉腫)であった。細胞株を使用して、原発の臨床分離株の各々について、ある範囲のMOI及び感染後の時間で達成されたCPEレベルを試験した。
【0108】
実験は、同時に5~8種類の新しいウイルス株を用いて並行して行われた。ウイルス株をある範囲のMOI(0.001~1)で2重にして播種し、クリスタルバイオレット染色後のCPEの程度を感染24時間後及び48時間後に評価した。腫瘍細胞株を死滅させる際に最も有効であるウイルス株を採点し、5~8株の各々のスクリーニングから最も効果的な2株又は3株を同定し、さらなる開発のための最上位株を同定するためのさらなる実験で並行して比較した。
【0109】
最初のスクリーニングは、様々な腫瘍細胞株を死滅させる、異なる株の能力の実質的な変動性を実証した。試験した最初の29株のうち、目的とする8株が、さらなる比較のために、最初のスクリーニングにおいて同定された。これらは、RH004A、RH015A、RH018A、RH021A、RH023A、RH31A、RH040A、及びRH047A株であった。
【0110】
さらなる比較のための8株は、腫瘍細胞株のパネルについて並行して試験され、これらの腫瘍細胞株を死滅させるそれらの相対能力は、クリスタルバイオレット染色及びCPEについての観察後に評価された。図2は、観察された標的腫瘍細胞株を死滅するためのウイルスの異なる能力を実証する、各々の細胞株上の各々のウイルスについて、これらのウイルスの代表的な時間点及びMOIを示す。
【0111】
株の間には実質的なバリエーションがあり、特定の株が1つの細胞株を死滅させる際に特に有効である場合もある一方で、他の細胞株も死滅させる際に必ずしも特に有効であるわけではないことが見出され、さらに、異なるタイプの腫瘍細胞を死滅させる、HSVの臨床株の能力における変動性の程度を実証する。
【0112】
図3はまた、いずれのウイルス株が、細胞株の各々を死滅させる際に最良であり、及び次に最良であるのかを示し、ウイルス株が全体として細胞株のパネルを死滅させる、それらの全体の相対的な能力に関して順位付けされることを可能にする。この分析は、RH004A、RH015A、RH018A、RH031A及びRH040A株が他の株よりも相対的に効果的であることを実証し、これらの5株が、腫瘍溶解剤としてのさらなる開発の可能性のために選択された。これらの上位5株のうち、細胞株のパネル全体で死滅させるそれらの能力に基づく相対的な順位は、RH018A>RH004A>RH031A>RH040A>RH015Aであった。
【0113】
より具体的には、これらの実験において、腫瘍細胞株を使用して、感染の日に約80%コンフルエントになるように、マルチウェル組織培養プレートに播種した。各々の腫瘍細胞株由来の代表的なウェルをトリプシン処理し、ウェル中の細胞数を決定した。これらの細胞計数は、MOIが1、0.1、0.01及び0.001になるのに必要とされる各々の臨床分離株の容量を決定するために使用される。腫瘍細胞株の別々のウェルは、これらのMOIで臨床分離株を感染させた。全ての感染は4重にして行われる。2重のウェルを24時間インキュベートし、2重のウェルを48時間インキュベートし、両者は37℃、5%CO2で行われ、その後、細胞をグルタルアルデヒドで固定し、クリスタルバイオレットで染色した。次に、細胞溶解のレベルを肉眼観察、顕微鏡(細胞計数)及び写真撮影によって評価した。
【0114】
RH018A株は、試験された全ての株のうち最初にランク付けされた株であり、スクリーニングからの「平均」株(すなわち、上位8にはないが、最も効果的でなく、腫瘍細胞株のパネルを死滅させなかった一群の株にもなかった株)と比較された。この比較は、RH018A株が、腫瘍細胞株を死滅させる際に、この平均株(RH065A株)よりも約10倍効果的であったことを示した(すなわち、RH018A株の約10分の1がRH065A株について必要されたものよりも等比率の細胞を死滅させるのに必要とされた)。これを図3に示す。
【0115】
[実施例6]
臨床分離株の改変
この実施例において、実施例5で選択された臨床分離株は、その間にGFP及びGALV-R-融合誘導性糖タンパク質をコードする、ICP34.5をコードする遺伝子(ヌクレオチド143680-145300及び145,582-147,083;HSV1株17配列GenbankファイルNC 001806.2)に隣接する領域を含有するプラスミドを用いた相同組換により、ウイルスゲノムからICP34.5を欠失させることによって改変された。このウイルス(ウイルス10)の構造を図4に示す。
【0116】
また、RH018A株に基づく追加のウイルスを構築し、これは、ICP34.5とICP47の両方(ヌクレオチド123464-124953及び125727-126781を含有する隣接している領域を用いる;HSV1株17配列GenbankファイルNC 001806.2)が欠失されていた(US11を、ICP47プロモーターの調節下に置くことになる)。これらのウイルスを構築するために、ICP47の代わりにGFPが発現される、GFP発現ウイルスプラークを最初に選択した。次に、空の隣接領域を用いた相同組換によってGFPを除去し、GFPを発現しないプラークを選択した。これは、ICP47欠失ウイルスをもたらし、これは、US11が、ここでは、ICP47プロモーターの調節下にあるため、IEタンパク質として発現される。次に、ICP34.5は、その間にGFPをコードしている、HSV1(ヌクレオチド143680-145300及び145,582-147,083;HSV1株17配列GenbankファイルNC 001806.2)に隣接している領域を含有するプラスミドを用いた相同組換により欠失された。GFPを発現するウイルスプラークを再度選択し、次に、GFPを同じ隣接領域(ただし、その間に、ここでは、挿入される遺伝子を含む発現カセットが存在する)を用いた相同組換によって除去した。構築されたウイルスを図1、4及び5に示す。これらは、背中合わせの向きで、それぞれCMV IEプロモーター及びRSVプロモーターによって駆動されるマウスGM-CSF配列のコドン最適化バージョン及びGALV R-配列のコドン最適化バージョンを含み、再度、GFPを発現しないウイルスプラークを選択した。このウイルス構築は、当該技術分野において標準的な方法を用いて行われた。
【0117】
mGM-CSF及びGALV-R-配列をそれぞれ配列番号2及び8に示す。得られたウイルスの構造をPCRによって確認し、GM-CSF発現をELISAによって確認し、GALV-R-発現をヒトHT1080腫瘍細胞の感染及び合胞体(syncitia)プラークの観察によって確認した。
【0118】
ヒト使用のために、hGM-CSFが使用され、そのコドン最適化バージョンの配列を配列番号4に示す。このウイルスの構造を図4に示す。ウイルス16、17及び19からのマウス又はヒトGM-CSFの発現を図6に示す。
【0119】
[実施例7]
腫瘍溶解の使用のために改変され、融合誘導性糖タンパク質を発現する本発明のウイルスは、融合誘導性糖タンパク質を発現しないウイルスと比較して、インビトロで増大された腫瘍細胞死滅を示す
ICP34.5が欠失し、GALVR-及びGFPを発現する臨床株RH018Aに基づくウイルス10(図4参照)は、インビトロでGFPのみを発現するウイルス(ウイルス12)と比較された。図7に示されるように、ウイルス10は、ウイルス12と比較して、ヒト腫瘍細胞株のパネルで増大された死滅を示した。
【0120】
[実施例8]
腫瘍溶解の使用ために改変された本発明のウイルスは、本発明ではない同様に改変されたウイルスと比較して、増大された腫瘍細胞死滅を示す
ICP34.5及びICP47が欠失し、GALVR-及びGM-CSFを発現する臨床株RH018Aに基づくウイルス17(図4参照)は、インビトロで、やはりICP34.5及びICP47が欠失しているが、本発明の株由来ではなく、GM-CSFのみを発現する公知のウイルスと比較された。図8に示されように、ウイルス17は、以前のウイルスと比較して、ヒト腫瘍細胞株のパネルで増大された死滅を示した。
【0121】
[実施例9]
腫瘍溶解の使用のために改変された本発明のウイルスは、インビボでマウス腫瘍を効果的に処置する
ウイルス16は、左右の側面にA20リンパ腫腫瘍を有するマウスにおいて試験された。100万個の腫瘍細胞をBalb/cマウスの両側面に最初に移植し、腫瘍を直径0.5~0.7cmまで増殖させた。次に、右側面の腫瘍は、ビヒクル(10匹のマウス)又はウイルス16の5×106pfu(10匹のマウス)のいずれかで3回(1日おき)注射され、腫瘍サイズに対する効果をさらに30日間観察した。これは、注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方がウイルス16で効果的に処置されたことを実証した(図9参照)。
【0122】
[実施例10]
ラット腫瘍モデルにおける本発明の腫瘍溶解性ウイルスからの融合誘導性タンパク質と免疫刺激分子を組み合わせた発現の効果
GALV R-タンパク質は、ヒト細胞において細胞間融合を引き起こすが、マウス細胞においては引き起こさない。しかしながら、GALV R-はラット細胞において融合を引き起こす。
【0123】
本発明の有用性は、Fischer 344ラットの側面に9L細胞を投与し、9L腫瘍を直径約0.5cmまで増殖させることによってさらに実証された。
【0124】
次に、以下の処置が、ラットの群(群あたり10匹)に、3週間、3回/週、各々のラットの一側面のみに投与された:
- 50μlのビヒクル、
- 50μlの107pfu/mlのウイルス19(mGM-CSFを発現するが、GALV R-を発現しない)、
- 50μlの107pfu/mlのウイルス16(マウスGM-CSFとGALV-R-の両方を発現する)。
【0125】
次に、腫瘍増殖に対する効果をさらに~30日間観察した。これは、注射された腫瘍と注射されていない腫瘍の両方において、GALV-R-を発現するウイルスによる優れた腫瘍制御及び縮小を実証し、全身効果の改善を実証した。これを図15に示す。図10は、GALVを発現するウイルス(ウイルス15)はまた、GALVを発現しないウイルス(ウイルス24)と比較して、インビトロでラット9l細胞の増大した死滅を示す。
【0126】
[実施例11]
腫瘍溶解の使用のために改変された本発明のウイルスは、マウス腫瘍モデルにおける免疫チェックポイント遮断と相乗的である
ウイルス16は、左右の側面にCT26腫瘍を有するマウスにおいて試験された。100万個の腫瘍細胞をBalb/cマウスの両側面に最初に移植し、腫瘍を直径0.5~0.6cmまで増殖させた。
【0127】
次に、10匹のマウスの群を以下で処置した:
- ビヒクル(1日おきに右側面の腫瘍に3回注射)、
- 1日おきに右側面の腫瘍に注射される5×106pfuのウイルス16、
- 抗マウスPD1単独(10mg/kg i.p.、3日毎、BioXCellクローンRMP1-14)、
- 抗マウスCTLA-4(3mg/kg i.p.、3日毎、BioXCellクローン9D9)、
- 抗マウスPD1と共にウイルス16、
- 抗マウスCTLA4と共にウイルス16、
- 1-メチルトリプトファン(trypotophan)(IDO阻害剤(飲料水中5mg/ml))、
- 抗マウスPD1と共に1-メチルトリプトファン、
- 抗マウスPD1と共に1-メチルトリプトファン及びウイルス16。
【0128】
腫瘍サイズに対する効果をさらに30日間観察した。単一処置群で処置された動物よりも、ウイルスとチェックポイント遮断の組み合わせを用いて処置された動物においてより大きな腫瘍減少が実証された(図11参照)。ウイルス16と共に抗PD1のみと比較して、ウイルス16と共に抗PD1とIDO阻害の両方による腫瘍減少の増大も実証された(図11参照)。
【0129】
また、免疫チェックポイント遮断と組み合わせたウイルス16の増大された活性はA20腫瘍において見られた(図12)。
【0130】
[実施例12]
免疫不全マウスにおけるヒト異種移植モデルでの本発明の腫瘍溶解性ウイルス由来の融合誘導性タンパク質の発現の効果
GALV R-タンパク質は、ヒト細胞において細胞間融合を引き起こすが、マウス細胞においては引き起こさない。しかしながら、免疫不全マウスにおいて増殖させたヒト異種移植腫瘍を用いて、抗腫瘍効果に対するGALV発現の効果を評価することができる。
【0131】
したがって、本発明の有用性は、A549ヒト肺がん細胞をヌードマウスの側面に投与し、腫瘍を直径約0.5cmまで増殖させることによってさらに実証された。
【0132】
次に、以下の処置が、マウスの群(群あたり10匹)に、1週間にわたって3回、各々のマウスの腫瘍を含有する側面に投与された:
- 50μlのビヒクル、
- 50μlの107pfu/mlのウイルス16(マウスGM-CSFとGALV-R-の両方を発現する)、
- 50μlの106pfu/mlのウイルス16、
- 50μlの105pfu/mlのウイルス16、
- 50μlの107pfu/mlのウイルス19(マウスGM-CSFのみを発現する)、
- 50μlの106pfu/mlのウイルス19、
- 50μlの105pfu/mlのウイルス19。
【0133】
次に、腫瘍増殖に対する効果をさらに~30日間、観察した。この実験は、両方の腫瘍モデルにおいて、GALV-R-を発現するウイルスによる優れた腫瘍制御及び縮小を実証した(図14参照)。
【0134】
[実施例13]
融合誘導性タンパク質を発現するウイルスからの2つの免疫刺激分子の発現
上記されるGALV-R-及びmGM-CSFを発現するウイルス(ウイルス16)に類似するが、CD40L(ウイルス32)、ICOSL(ウイルス36)、OX40L(ウイルス35)、4-1BBL(ウイルス33)及びGITRL(ウイルス34)のマウスバージョンをさらに発現するウイルスを構築した。ここで、ICP34.5隣接領域、並びにCMV及びRSVプロモーターによって駆動されるGM-CSF及びGALV-R-を含む発現カセットを含有するプラスミドを使用する代わりに、ICP34.5隣接領域、並びにそれぞれCMV、RSV及びMMLVプロモーターによって駆動されるGM-CSF、GALV及び追加のタンパク質を含む発現カセットを含有するプラスミドが、ICP34.5に挿入されたGM-CSF、GALV及びGFPを含有するウイルスを用いる組換えに使用された。GFPを発現しないプラークが再度選択された。正確な挿入をPCRによって確認し、発現を追加の挿入遺伝子についてウエスタンブロッティング及び/又はELISAによって確認した。これらのウイルスを図5に示す。同様に、GALV及びmGM-CSFに加えて抗マウス及び抗ヒトCTLA-4を発現するウイルスもまた構築した(図5におけるウイルス27及び31、並びに図13も参照されたい)。インビボでのmGM-CSF及びGALVR-に加えて、抗マウスCTLA-4(ウイルス27)、mCD40L(ウイルス32)、m4-1BBL(ウイルス33)又はmOX40L(ウイルス35)を発現するウイルスの効果を図16に示す。これは、ウイルス16(mGM-CSF及びGALVR-を発現する)と比較して、A20腫瘍において強化された活性を示した。これらの実験において、腫瘍はマウスの両側面に誘導され、ウイルス又はビヒクルは右側面の腫瘍にのみ注射された。使用されたウイルスの用量は、5×104pfu(各々の場合において50μlの1×106pfu/ml)であり、1週間にわたって3回与えられた。この用量レベルのウイルスは、ウイルス16について注射されていない腫瘍に対して治療量以下で、これによって、ウイルス27、32、33及び35によってコードされる追加の分子の送達の利点が明確に見出され得る。
【0135】
寄託情報
以下のHSV1株は、Replimune Limitedによって2016年12月19日に英国ソールズベリーのポートンダウンSP4 0JGにあるECACC, Culture Collections, Public Health Englandに寄託され、指定された仮受託番号が割り当てられた。
RH004A-仮受託番号16121902
RH015A-仮受託番号16121903
RH018A-仮受託番号16121904
RH021A-仮受託番号16121905
RH023A-仮受託番号16121906
RH031A-仮受託番号16121907
RH040B-仮受託番号16121908
RH047A-仮受託番号16121909
図1
図2
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【配列表】
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