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特開2022-7823被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007823
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60J 1/17 20060101AFI20220105BHJP
   C09J 5/00 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B60J1/17 C
C09J5/00
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020124055
(22)【出願日】2020-06-26
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】510022680
【氏名又は名称】リッチコミュニケーションズ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 勝治
【テーマコード(参考)】
3D127
4J040
【Fターム(参考)】
3D127AA19
3D127CB05
3D127CC05
3D127DF26
3D127EE04
4J040JB04
4J040MA05
4J040NA16
(57)【要約】
【課題】湿気硬化型接着剤を用いた被着体接着ガラスの製造をより迅速かつ高エネルギ効率で行える装置及び方法を提供する。
【解決手段】 被着体接着ガラス100の製造装置に、未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材101の一部にガラスホルダ102が仮接着された被着体接着ガラス100の挿入部11が開口されたチャンバ1と、チャンバ1内に配置された過熱水蒸気噴射管12、13、14と、チャンバ1に備えられ、挿入部11を閉じる方向又は開く方向に動作する開閉部材2と、を設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材の一部に被着体が仮接着された被着体接着ガラスの挿入部が開口されたチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記挿入部を通して前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部に過熱水蒸気を噴射する過熱水蒸気噴射部と、
前記チャンバに備えられ、前記挿入部を閉じる方向又は開く方向に動作する開閉部材と、
を備えたことを特徴とする被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項2】
前記挿入部は、箱状に形成された前記チャンバの上面とこれに続く側面の一部とに形成されており、前記チャンバの上方より前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部を受け入れることを特徴とする請求項1に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項3】
前記挿入部は、箱状に形成された前記チャンバの下面とこれに続く側面の一部とに形成されており、前記チャンバの下方より前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部を受け入れることを特徴とする請求項1に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項4】
前記挿入部は、箱状に形成された前記チャンバの一側面とこれに続く上面の一部及び下面の一部とに形成されており、前記チャンバの側方より前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部を受け入れることを特徴とする請求項1に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項5】
前記過熱水蒸気噴射部は、ボイラから供給される水蒸気を前記チャンバ内に噴射する水蒸気噴射管と、水蒸気噴射管から噴射される水蒸気を加熱して過熱水蒸気とするヒータとから構成され、前記水蒸気噴射管は、前記挿入部を通して前記チャンバ内に挿入された前記被着体仮接着部の表面側、裏面側及び端面側に配置されていることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれか1項に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項6】
前記被着体接着ガラスの表面側及び裏面側に配置された前記水蒸気噴射管は、前記被着体仮接着部及びその周辺に向けて過熱水蒸気を噴射するようにノズル孔が形成され、前記被着体接着ガラスの端面側に配置された前記水蒸気噴射管は、前記被着体仮接着部の下方より上方に向けて過熱水蒸気を噴射するようにノズル孔が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項7】
前記開閉部材は、前記挿入部を通して前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスの表面と対向する位置及び裏面と対向する位置にスライド自在に備えられ、動力源を駆動することにより、前記被着体接着ガラスの表面及び裏面に密着する位置と、前記被着体接着ガラスの表面及び裏面から離れる位置と、に移動することを特徴とする請求項1に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項8】
前記開閉部材は、前記挿入部を通して前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスの表面と対向する面及び裏面と対向する面に、前記被着体接着ガラスの表面又は裏面に密着するシール部材を備えていることを特徴とする請求項7に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項9】
前記チャンバの内部に、前記過熱水蒸気噴射部として、前記チャンバ外に備えられた過熱水蒸気発生装置から供給される過熱水蒸気を前記チャンバ内に噴射する過熱水蒸気噴射管を備えたことを特徴とする請求項1に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項10】
前記チャンバの内部に、前記挿入部の上方より前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスを保持するための保持部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項11】
前記保持部材は、前記ガラス材の下辺部を下から保持するものであることを特徴とする請求項10に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項12】
前記保持部材は、前記挿入部の上方より前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスの高さ位置及び前後位置を規制するものであることを特徴とする請求項10に記載の被着体接着ガラスの製造装置。
【請求項13】
未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材の一部に被着体が仮接着された被着体接着ガラスを製造する工程と、
製造された前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部を、挿入部を通してチャンバ内に挿入する工程と、
前記チャンバに備えられた開閉部材を閉方向に駆動して、前記被着体接着ガラスと前記挿入部との間に形成される隙間を閉じる工程と、
前記チャンバ内に過熱水蒸気を噴射して、前記未硬化の湿気硬化型接着剤を硬化する工程と、
前記開閉部材を開方向に駆動して、前記被着体接着ガラスと前記挿入部との間に隙間を開ける工程と、
前記湿気硬化型接着剤が硬化した後の前記被着体接着ガラスを、前記隙間を通して前記チャンバから取り出す工程と、
を有することを特徴とする被着体接着ガラスの製造方法。
【請求項14】
前記チャンバ内に過熱水蒸気を噴射して前記未硬化の湿気硬化型接着剤を硬化した後、前記チャンバ内を加熱して、前記ガラス材の表面及び裏面に付着した凝縮水を乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の被着体接着ガラスの製造方法。
【請求項15】
前記湿気硬化型接着剤が硬化した後の前記被着体接着ガラスを前記チャンバから取り出した後、次の前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部が挿入部を通してチャンバ内に挿入されるまでの間、前記開閉部材を閉方向に駆動して前記挿入部を閉じる工程を含むことを特徴とする請求項13に記載の被着体接着ガラスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス材の一部に被着体を接着してなる被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フロントガラス、リアガラス、ドアガラス、サイドウインドガラス及びサンルーフガラス等の自動車用ガラス製品は、湿気硬化型接着剤を用いてガラス材の所要の部分に所要の部品(被着体)を接着する方法で製造することが検討されている。この方法によれば、ガラス材に対する穴開け等の加工が不要になるので、自動車用ガラス製品の製造工程を効率化でき、自動車用ガラス製品ひいては自動車のコストダウンを図ることができる。また、湿気硬化型接着剤は、硬化時の歪みが小さいため、これを用いることによってガラス材の破損を防止でき、自動車用ガラス製品の歩留まりを高めることができる。
【0003】
なお、湿気硬化型接着剤を用いてガラス材の一部に被着体を接着する方法は、自動車用ガラス製品の製造のみならず、他の技術分野で使用される他種のガラス製品の製造にも適用できる。本明細書では、湿気硬化型接着剤を用いてガラス材の一部に被着体を接着する方法で製造されるガラス製品を「被着体接着ガラス」という。
【0004】
被着体接着ガラスの製造装置としては、従来、自動車用ガラスの縁部を被着体とともに覆うことができる溝部を有する本体と、前記溝部を挟んで前記溝部の両側に設けられ、前記溝部に向かって過熱水蒸気を噴出する過熱水蒸気噴出部と、を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。過熱水蒸気を自動車用ガラスの被着体仮接着部に噴射すると、湿気硬化型接着剤に湿分と熱を効率的に供給できるので、空中に放置する場合よりも湿気硬化型接着剤を速やかに硬化でき、自動車用被着体接着ガラスの製造を効率的に行うことができる。
【0005】
従来の被着体接着ガラスの製造装置は、溝部の両側に設けられた過熱水蒸気噴射部から溝部に向かって過熱水蒸気を噴出するので、自動車用ガラスの表裏両面に被着体を接着することが可能であり、断面がU字形に形成されたガラスホルダの挟持部内に自動車用ガラスの縁部を挿入して接着した自動車用被着体接着ガラスを製造できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6640612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の被着体接着ガラスの製造装置は、自動車用ガラスの縁部及び被着体を覆うための溝部が過熱水蒸気の噴射時に密閉されない構成になっているので、過熱水蒸気が溝部を通って外部に漏れ出しやすい。外部に漏れ出した過熱水蒸気は、湿気硬化型接着剤の硬化に関与しないので、過熱水蒸気が外部に漏れ出すと製造装置のエネルギ効率が悪いものとなる。また、過熱水蒸気が外部に漏れ出すと、自動車用ガラスが広範囲に亘って過熱水蒸気に晒され、自動車用ガラスの広範囲に亘って凝縮水が付着することになるので、凝縮水の除去に多大のエネルギが必要となり、この点からも製造装置のエネルギ効率を高める上で不利となる。さらに、過熱水蒸気が外部に漏れ出すと、ガラスホルダの接着部を所定温度まで昇温するのに長時間を要することになるので、自動車用被着体接着ガラスの製造効率を高めることも困難になる。従って、従来の被着体接着ガラスの製造装置は、これらの点において更なる改善の余地がある。
【0008】
なお、本体の所要の部分にエアカーテン装置や被覆幕を備えれば、本体からの過熱水蒸気の漏れ出しを抑制できるが、製造装置の構成が複雑化及び大型化するので、より簡便な構成で本体からの過熱水蒸気の漏れ出しを抑制可能な製造装置の開発が望まれている。
【0009】
そこで、本発明は、湿気硬化型接着剤を用いた被着体接着ガラスの製造を、より簡便な製造装置を用いてより迅速かつ高エネルギ効率で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するため、被着体接着ガラスの製造装置に関しては、未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材の一部に被着体が仮接着された被着体接着ガラスの挿入部が開口されたチャンバと、前記チャンバ内に配置され、前記挿入部を通して前記チャンバ内に挿入された前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部に過熱水蒸気を噴射する過熱水蒸気噴射部と、前記チャンバに備えられ、前記挿入部を閉じる方向又は開く方向に動作する開閉部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、上記の課題を解決するため、被着体接着ガラスの製造方法に関して、未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材の一部に被着体が仮接着された被着体接着ガラスを製造する工程と、製造された前記被着体接着ガラスの被着体仮接着部を、挿入部を通してチャンバ内に挿入する工程と、前記チャンバに備えられた開閉部材を閉方向に駆動して、前記被着体接着ガラスと前記挿入部との間に形成される隙間を閉じる工程と、前記チャンバ内に過熱水蒸気を噴射して、前記未硬化の湿気硬化型接着剤を硬化する工程と、前記開閉部材を開方向に駆動して、前記被着体接着ガラスと前記挿入部との間に隙間を開ける工程と、前記湿気硬化型接着剤が硬化した後の前記被着体接着ガラスを、前記隙間を通して前記チャンバから取り出す工程と、を有することを特徴とする。
【0012】
被着体接着ガラスの挿入部が開口されたチャンバに、挿入部を開閉可能な開閉部材を備えると、チャンバ内に過熱水蒸気を噴射する以前に開閉部材を用いて挿入部を閉じることにより、チャンバ内に噴射された過熱水蒸気の挿入部からの漏出を防止できる。従って、過熱水蒸気の漏出によるエネルギの無駄を防止できて、エネルギ効率の向上を図ることができる。また、過熱水蒸気がチャンバ外に漏出しないことから、被着体接着ガラスにおける凝縮水の付着範囲をチャンバ内に挿入された部分のみに限定でき、凝縮水の除去に要するエネルギを小さなものにできる。同様に、過熱水蒸気がチャンバ外に漏出しないことから、被着体接着ガラスを構成するガラス材と被着体との接着部を短時間で所定の温度まで昇温でき、被着体接着ガラスの製造効率を高めることができる。さらに、開閉部材はチャンバと一体に構成できるので、エアカーテン装置や被覆幕をチャンバと組み合わせる場合に比べて、被着体接着ガラス製造装置の簡略化と小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、湿気硬化型接着剤を用いた被着体接着ガラスの製造をより簡便な製造装置を用いてより高能率かつ高エネルギ効率で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法により製造される被着体接着ガラスの一例を示す斜視図である。
図2図1に示す被着体接着ガラスの製造に用いられるガラスホルダ(被着体)の側面図である。
図3】実施形態に係る被着体接着ガラス製造装置の斜視図である。
図4】実施形態に係るチャンバ内への被着体接着ガラスの挿入状態を示す図である。
図5】実施形態に係るチャンバの内部構造を示す図である。
図6】実施形態に係る過熱水蒸気噴射管の要部拡大図である。
図7】実施形態に係る保持部材の斜視図である。
図8】実施形態に係る保持部材へのガラスホルダの突き当て状態を示す図である。
図9】実施形態に係る開閉部材の斜視図である。
図10】実施形態に係る開閉部材の挿入部開放状態を示す側面図である。
図11】実施形態に係る開閉部材の挿入部閉鎖状態を示す側面図である。
図12】実施形態に係る被着体接着ガラス製造方法の手順を示す流れ図である。
図13】実施形態に係る保持部材の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係る被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法の説明に先立ち、これにより製造される被着体接着ガラスの一例を、図1及び図2に基づいて説明する。
【0016】
図1に示す被着体接着ガラス100は、自動車のドア内に昇降可能に組み込まれるドアガラスであり、所定形状及び所定サイズに成形されたガラス材101の下辺部に、2つのガラスホルダ102が接着されている。本例においては、ガラスホルダ102がガラス材101に接着される被着体となる。ガラスホルダ102は、自動車のドア内に組み込まれた図示しない昇降装置に連結される。
【0017】
ガラスホルダ102は、図2に示すように、ガラス材101の挟持部110と、昇降装置の連結部120と、から構成されている。ガラスホルダ102は、プラスチック材料を用いて一体に形成される。ガラスホルダ102を形成するプラスチック材料は、適度の強度を有していれば良く、特に制限があるものではないが、成形性が良好で耐久性に優れていることから、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やアクリルブタジエンスチレン(ABS)等のエンジニアリングプラスチックを用いることが特に好ましい。
【0018】
挟持部110は、底板111と、底板111の相対向する二辺から起立されて対向に配置された2つの立壁112、113とをもって、上向きのコの字形に形成されている。立壁112、113は、ガラス材101に対するガラスホルダ102の仮接着を容易かつ確実なものにするため、下辺側(底板111側)から上辺側に至るに従って間隔が狭くなるように内向きに傾斜した形状とすることができる。このようにすると、立壁112、113の間にガラス材101を挿し込んだときに、立壁112、113の上辺側を外向きに弾性変形し、その弾性力によってガラスホルダ102がガラス材101に圧着されるため、ガラス材101に対するガラスホルダ102の仮接着を容易かつ確実なものにできる。
【0019】
なお、ガラス材101の平面形状は、図1に示すものに限定されるものではなく、各種の用途に適用される各種の形状のものを用いることができる。即ち、本発明に係る被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法に適用可能なガラス材101の形状には、特に制限があるものではない。
【0020】
連結部120は、底板111の下面と一体に形成されており、略中央部に昇降装置を連結するための貫通孔121が開設されている。
【0021】
ガラス材101とガラスホルダ102とを接着する接着剤としては、硬化時の歪みが小さいこと及び自動車の組立に多用されていることから、湿気硬化型接着剤が用いられる。湿気硬化型接着剤は、湿気により硬化が促進されるものであれば良く、特に限定されるものではない。即ち、湿気硬化型接着剤としては、アクリル系、エポキシ系、ウレタン系、シリコーン系、変性シリコーン系などの公知の湿気硬化型接着剤が使用できる。また、湿気硬化型接着剤は、一液型であっても、二液型であっても良い。これらの中では、自動車用湿気硬化型接着剤としての実績から、特に一液湿気硬化型ウレタン湿気硬化型接着剤が好ましい。湿気硬化型接着剤には、充填剤、可塑剤、酸化防止剤、顔料、シランカップリング剤、分散剤、溶剤等を配合しても良い。
【0022】
以下、実施形態に係る被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法を図に基づいて説明する。なお、本発明の範囲は、以下に記載する実施形態の範囲に限定されるものではなく、本発明の要旨に反しない範囲で様々な設計変更を加えて実施されるものをも含むことは勿論である。
【0023】
図3に示すように、実施形態に係る被着体接着ガラスの製造装置は、未硬化の湿気硬化型接着剤の硬化処理を行う箱状のチャンバ1と、チャンバ1に備えられた開閉部材2と、から主に構成されている。チャンバ1は、型鋼や板材をもって構成されたフレーム3上に固定されて使用される。フレーム3には、製造装置の起動スイッチ4及び停止スイッチ5が設置されている。
【0024】
チャンバ1は、ステンレス等の金属板を用いて被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部を収納可能な箱状に形成されており、上面の中央部とこれに続く側面の一部とに被着体接着ガラス100の挿入部11が開口されている。従って、図4に示すように、チャンバ1内に挿入されるのは、被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部のみであり、被着体接着ガラス100の他の部分は、チャンバ1の上方及び側方に突出する。
【0025】
チャンバ1内には、図5に示すように、挿入部11を介してその両側部分と挿入部11の下方部分とに、第1乃至第3の水蒸気噴射管12、13、14が収納されている。また、挿入部11を介してその両側部分には、水蒸気噴射管12、13、14から噴射される水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成する1乃至複数(図4の例では片側3本)のヒータ15が収納されている。さらに、第1の水蒸気噴射管12と第2の水蒸気噴射管13との間には、被着体接着ガラス100の保持部材16が設置されている。なお、本明細書においては、チャンバ1内に過熱水蒸気を噴射する機器を総称して、「過熱水蒸気噴射部」ということがある。実施形態に係る製造装置においては、水蒸気噴射管12、13、14とヒータ15との組み合わせで過熱水蒸気噴射部が構成されている。
【0026】
水蒸気噴射管12、13、14は、それぞれ1本の管体を同一面内で複数回折り返してなる波型に形成されている。そして、第1の水蒸気噴射管12及び第2の水蒸気噴射管13は、チャンバ1の前面及び背面に沿って垂直に設置され、第3の水蒸気噴射管14は、チャンバ1の底面に沿って水平に設置される。
【0027】
水蒸気噴射管12、13、14には、図6に示すように、長さ方向に沿って多数のノズル孔17が開設されており、図示しないボイラから供給される水蒸気を、ノズル孔17からチャンバ1内の所要の方向に向けて噴射できるようになっている。即ち、第1の水蒸気噴射管12及び第2の水蒸気噴射管13には、被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部に向けて水蒸気を噴射するように、ノズル孔17が形成される。これに対して、第3の水蒸気噴射管14には、チャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100の下方から上方に向けて水蒸気を噴射するように、ノズル孔17が形成される。
【0028】
ヒータ15は、チャンバ1内に噴射された水蒸気を加熱して100℃以上の過熱水蒸気を生成するもので、例えば赤外線ヒータや温風ヒータを用いることができる。
【0029】
保持部材16は、図7に示すように、長さ方向の両端における直径が大きく、長さ方向の中央における直径が小さい鼓形に形成されている。このように、保持部材16を鼓形に形成すると、チャンバ1内に被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部を挿入し、保持部材16にガラス材101の下辺部が突き当てられたとき、ガラス材101の下辺部が保持部材16の斜面に沿って移動し、図8に示すように、保持部材16の中央部に達する。
【0030】
従って、本例の製造装置によれば、チャンバ1の上方からチャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100のガラス材101を保持部材16に突き当てるだけで、チャンバ1に対する被着体接着ガラス100の高さ位置と前後位置(ガラス材101の厚み方向の位置)を自動的に割り出すことができるので、チャンバ1に対する被着体接着ガラス100の位置決め作業を容易化できる。
【0031】
開閉部材2は、2個を1組としてチャンバ1の外面に取り付けられており、これら2個の開閉部材2を互いに接近する方向又は互いに離隔する方向に駆動することにより、チャンバ1に形成された挿入部11を開閉するようになっている。
【0032】
即ち、実施形態に係る開閉部材2は、図9に示すように、チャンバ1の上面に沿って摺動される横桟部21と、チャンバ1の側面に沿って摺動される縦桟部22と、からなる門型に形成され、その片面にはシール部材23が付設されている。シール部材23は、チャンバ1内に挿入されたガラス材101の表面及び裏面に密着して被着体接着ガラス100を保持するものであり、例えばシリコーンゴム等の耐熱性に優れた柔軟性の素材をもって形成される。
【0033】
開閉部材2は、図3に示すように、ストッパ付きのLM(Linear Motion)ガイド24を介してチャンバ1に取り付けられる。また、開閉部材2には、チャンバ1に連結されたエアシリンダ25のピストンロッド25aが連結される。従って、開閉部材2は、エアシリンダ25へのエアの供給を切り換えてピストンロッド25aを伸縮させることにより、対向に配置された2つのシール部材23が密着する位置と、挿入部11を開放可能な位置との範囲で往復駆動される。
【0034】
なお、水蒸気噴射管12、13、14からの水蒸気の噴射開始及び噴射停止、ヒータ15のオン及びオフ、ピストンロッド25aの伸長及び収縮、並びに、チャンバ1内への被着体接着ガラス100の挿入及びチャンバ1内からの被着体接着ガラス100の取り出しは、シーケンサ等の制御機器を用いて自動的に行うことができる。
【0035】
次に、実施形態に係る製造装置を用いた被着体接着ガラスの製造方法を、図12を用いて説明する。
【0036】
本発明に係る被着体接着ガラスの製造方法は、ガラス材101とガラスホルダ102とを接着する湿気硬化型接着剤の硬化方法に関するものであるので、この製造方法を実施するためには、未硬化の湿気硬化型接着剤を介してガラス材101の所定の位置にガラスホルダ102が接着された被着体接着ガラス100の作製が前提となる。被着体接着ガラス100の製造に際しては、未硬化の湿気硬化型接着剤の液垂れに起因するガラス材101の汚れを防止しやすい等の理由から、挟持部110を上向きにした状態でガラスホルダ102を所定の治具に保持し、次いで、挟持部110内に未硬化の湿気硬化型接着剤を充填した後、ガラスホルダ102の上方から2つの立壁112、113の間にガラス材101の下辺部を差し込んで仮接着するという方法がとられる。
【0037】
本発明に係る被着体接着ガラスの製造方法は、製造装置の起動スイッチ4をオン操作することによって開始される。起動スイッチ4がオン操作される以前においては、チャンバ1内に被着体接着ガラス100は挿入されておらず、開閉部材2はチャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11を閉じる位置にある。また、水蒸気噴射管12、13、14からは水蒸気が噴射されておらず、ヒータ15への通電は停止されている。
【0038】
この状態から起動スイッチ4がオン操作されると(図12のS1)、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射及びヒータ15への通電が開始され、チャンバ1内が所定温度、例えば40℃まで昇温される(図12のS2)。
【0039】
チャンバ1内を所定温度まで昇温した後、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射及びヒータ15への通電を停止する(図12のS3)。また、ピストンロッド25aを収縮する方向にエアシリンダ25を駆動して、図10に示すように、チャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11が開かれる位置まで開閉部材2を移動する(図12のS4)。なお、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射停止タイミング及びヒータ15への通電停止タイミングは、チャンバ1内の温度に基づいて制御することもできるし、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射開始及びヒータ15への通電開始からの経過時間に基づいて制御することもできる。
【0040】
次に、チャンバ1の上方より挿入部11を通して被着体接着ガラス100の被着体仮接着部をチャンバ1内に挿入し、ガラス材101の下辺部をチャンバ1内に備えられた鼓形の保持部材16の中央部に突き当てる(図12のS5)。
【0041】
次に、ピストンロッド25aを伸長する方向にエアシリンダ25を駆動して開閉部材2を閉方向に移動し、図11に示すように、シール部材23を被着体接着ガラス100の表面及び裏面に当接する(図12のS6)。これにより、挿入部11が閉鎖されると共に、チャンバ1に対する被着体接着ガラス100の位置決めがなされる。なお、被着体接着ガラス100の搬送は、図示しないガラス搬送ロボットを用いて行われる。
【0042】
次に、水蒸気噴射管12.13、14からチャンバ1内に水蒸気を噴射すると共にヒータ15に通電してチャンバ1内に過熱水蒸気を発生させ、被着体接着ガラス100の被着体仮接着部を発生した過熱水蒸気で加湿及び加温する(図12のS7)。これにより、未硬化の湿気硬化型接着剤の硬化が促進される。
【0043】
湿気硬化型接着剤が所定の硬度まで硬化された後、水蒸気噴射管12、13、14からの水蒸気の噴射を停止すると共に、ヒータ15への通電を停止する(図12のS8)。
【0044】
なお、実施形態に係る製造装置は、被着体接着ガラス100を立てた状態で保持し、しかもガラスホルダ102の接着部のみをチャンバ1内に挿入する構成であるので、被着体接着ガラス100の表面には過熱水蒸気が凝縮してできる凝縮水が殆ど滞留しない。従って、実施形態に係る製造装置については、凝縮水の処理が不要であるが、何らかの理由によって凝縮水の除去が必要になった場合には、ヒータ15に通電することで対応できる。
【0045】
次に、ピストンロッド25aを収縮する方向にエアシリンダ25を駆動して、開閉部材2を開方向に移動し、チャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11を開く(図12のS9)。
【0046】
次に、図示しないガラス搬送ロボットを駆動してチャンバ1内から被着体接着ガラス100を取り出し、取り出した被着体接着ガラス100を次工程まで搬送する(図12のS10)。
【0047】
チャンバ1内から被着体接着ガラス100を取り出した後は、ピストンロッド25aを伸長する方向にエアシリンダ25を駆動して開閉部材2を閉方向に移動し、チャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11を閉じる。また、水蒸気噴射管14から水蒸気を噴射すると共に、ヒータ15に通電して、チャンバ1内の温度を所定の温度に保持する(図12のS11)。
【0048】
以下、停止スイッチ5が操作されるまで、図9のS3以降のステップを繰り返す。
【0049】
なお、実施形態に係る製造方法においては、起動スイッチ4がオン操作された後、チャンバ1内に被着体接着ガラス100を挿入する前に、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射及びヒータ15への通電を行って、チャンバ1内を所定温度まで昇温したが(図12のS2)、夏季のように外気温が高い場合には、この工程を省略することができる。
【0050】
また、実施形態に係る製造方法においては、チャンバ1内から被着体接着ガラス100を取り出した後に、チャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11を閉じて、水蒸気噴射管14からの水蒸気の噴射及びヒータ15への通電を行ったが(図12のS11)、多数の被着体接着ガラス100を連続的に製造する場合において、前回の被着体接着ガラス100の製造工程を実施することで、チャンバ1内の温度が湿気硬化型接着剤を硬化する上で十分に高い場合には、この工程を省略することができる。
【0051】
実施形態に係る製造装置は、チャンバ1に形成された被着体接着ガラス100の挿入部11を閉鎖可能な開閉部材2を備えているので、開閉部材2を用いて挿入部11を閉じることにより、チャンバ1からの過熱水蒸気の漏出を防止できる。従って、実施形態に係る製造装置は、過熱水蒸気の漏出によるエネルギの無駄を防止できて、エネルギ効率の向上を図ることができる。また、過熱水蒸気がチャンバ1外に漏出しないことから、被着体接着ガラス100における凝縮水の付着範囲をチャンバ1内に挿入された部分のみに限定でき、凝縮水の除去に要するエネルギを小さなものにできる。
【0052】
また、過熱水蒸気がチャンバ1外に漏出しないことから、実施形態に係る製造装置は、被着体接着ガラス100を構成するガラス材101とガラスホルダ102との接着部を短時間で所定の温度まで昇温でき、被着体接着ガラス100の製造効率を高めることができる。さらに、開閉部材2はチャンバ1と一体に構成できるので、実施形態に係る製造装置は、エアカーテン装置や被覆幕を備えたる製造装置に比べて、構成の簡略化と小型化とを図ることができる。
【0053】
また、実施形態に係る製造装置は、箱状に形成されたチャンバ1の上面とこれに続く側面の一部とに挿入部11を形成し、チャンバ1の上方より、ガラス材101の下辺部にガラスホルダ102が接着された被着体接着ガラス100を受け入れる構成を有している。従って、実施形態に係る製造装置は、チャンバ1の下方より被着体接着ガラス100を受け入れる従来の製造装置に比べて、被着体接着ガラス100の製造効率を高めることができる。即ち、先に説明したように、被着体接着ガラス100は、未硬化の湿気硬化型接着剤の液垂れに起因するガラス材101の汚れを防止する等の理由から、ガラス材101の下辺部にガラスホルダ102を接着するという方法で作製されるので、チャンバ1の上方より被着体接着ガラス100の下辺部を受け入れる構成にすると、チャンバ1内への挿入に際して被着体接着ガラス100を天地反転する必要がなく、チャンバ1の下方より被着体接着ガラス100を受け入れる従来の製造装置に比べて、被着体接着ガラス100の製造効率を高めることができる。
【0054】
また、実施形態に係る製造装置は、挿入部11を通してチャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100の表面側、裏面側及び下面側に水蒸気噴射管12、13、14を配置したので、チャンバ1内における過熱水蒸気密度を均一化できて、湿気硬化型接着剤の硬化を均一かつ効率的に行うことができる。
【0055】
また、実施形態に係る製造装置は、チャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100の表面側及び裏面側に配置された水蒸気噴射管12、13については、被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部及びその周辺部に向けて水蒸気を噴射するようにノズル孔17を形成し、被着体接着ガラス100の下面側に配置された水蒸気噴射管14については、ガラスホルダ接着部の下方より上方に向けて水蒸気を噴射するようにノズル孔17を形成する構成を有している。従って、実施形態に係る製造装置は、被着体接着ガラス100のガラスホルダ接着部に必要な量の過熱水蒸気を供給できると共に、チャンバ1内の温度分布を均一化でき、ガラスホルダ接着部における湿気硬化型接着剤の硬化を均一化することができる。
【0056】
また、実施形態に係る製造装置は、挿入部11を通してチャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100の表面と対向する位置及び裏面と対向する位置に開閉部材2を備え、挿入部11の閉鎖時には、エアシリンダ25を駆動して開閉部材2を被着体接着ガラス100の表面及び裏面に密着させる構成を有している。従って、実施形態に係る製造装置は、被着体接着ガラス100と開閉部材2との間に隙間が生じることがなく、チャンバ1内からの過熱水蒸気の漏出を防止できる。
【0057】
また、実施形態に係る製造装置は、開閉部材2の被着体接着ガラス100と対向する面にシール部材23を備えたので、開閉部材2と被着体接着ガラス100との間の密着性をより高められると共に、被着体接着ガラス100の保護効果を高めることができる。
【0058】
また、実施形態に係る製造装置は、被着体接着ガラス100を立てた状態で保持し、かつガラスホルダ102の接着部のみをチャンバ1内に挿入するので、ガラス材101に付着した凝縮水は速やかにガラス材101の下辺部から自重で流れ落ち、ガラス材101の表面にはほとんど残らない。従って、実施形態に係る製造装置は、凝縮水の除去工程が不要で、被着体接着ガラス100を高能率に製造できる。
【0059】
また、実施形態に係る製造装置は、チャンバ1の内部に被着体接着ガラス100の保持部材16を備えたので、チャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100を下から支えることができて、被着体接着ガラス100の落下を防止できる。
【0060】
また、実施形態に係る製造装置は、保持部材16として鼓形に形成されたものを備えたので、チャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100の高さ位置及び前後位置を一義的に決定できる。従って、実施形態に係る製造装置は、チャンバ1内に挿入された被着体接着ガラス100とチャンバ1内に備えられた水蒸気噴射管12、13.14及びヒータ16との位置関係を一定に保つことができ、被着体接着ガラス100の良品を高歩留まりで製造できる。
【0061】
本発明に用いる被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法の要旨は、チャンバ1に開口された被着体接着ガラス100の挿入部11を、チャンバ1に備えられた開閉部材2を用いて閉鎖し、チャンバ1からの過熱水蒸気の漏出を防止することにある。従って、それ以外の点については、適宜変更が可能である。
【0062】
以下、本発明に用いる被着体接着ガラスの製造装置及び製造方法の他の実施形態について列挙する。
【0063】
実施形態に係る製造装置は、チャンバ1内に水蒸気噴射管12、13、14とヒータ15との組み合わせからなる過熱水蒸気噴射部を備え、チャンバ1内において過熱水蒸気を発生する構成としたが、これに代えて、チャンバ1外にボイラと過熱器との組み合わせからなる過熱水蒸気発生装置を備え、過熱水蒸気発生装置から供給される過熱水蒸気をチャンバ1内に備えられた過熱水蒸気噴射管から噴射する構成とすることもできる。この場合には、過熱水蒸気噴射管が過熱水蒸気噴射部となり、ヒータ15については設置を省略できる。
【0064】
実施形態に係る製造装置は、チャンバ1内に3つの水蒸気噴射管12、13、14と、片側3本のヒータ15とを備えたが、水蒸気噴射管の数及びヒータの数についてはこれに限定されるものではなく、1以上の任意の数とすることができる。
【0065】
実施形態に係る製造装置は、2つの開閉部材2を備え、これら2つの開閉装置を互いに接近する方向及び互いに離隔する方向に駆動するようにしたが、これに代えて、開閉部材2を1つのみ備え、挿入部11を介して開閉部材2と対向する部分に、開閉部材2と同形に形成された固定部材を取り付ける構成とすることもできる。この場合には、開閉部材2に取り付けられたシール部材23と固定部材に取り付けられたシール部材とによって、被着体接着ガラス100が挟持される。
【0066】
実施形態に係る製造装置は、チャンバ1の上面とこれに続く側面の一部とに被着体接着ガラス100の挿入部11を開口したが、これに代えて、チャンバ1の下面とこれに続く側面の一部とに挿入部11を開口する構成とすることもできるし、チャンバ1の一側面とこれに続く上面の一部及び下面の一部とに挿入部11を開口する構成とすることもできる。チャンバ1の下面とこれに続く側面の一部とに挿入部11を開口した場合には、チャンバ1の下方からチャンバ1内に被着体接着ガラス100が挿入される。また、チャンバ1の一側面とこれに続く上面の一部及び下面の一部とに挿入部11を開口した場合には、チャンバ1の側方からチャンバ1内に被着体接着ガラス100が挿入される。
【0067】
実施形態に係る製造装置は、チャンバ1内に鼓形の保持部材16を備えたが、保持部材16の形状についてはこれに限定されるものではなく、被着体接着ガラス100を保持可能なものであればその他の形状とすることもできる。例えば、図13の例では、1つの保持部材16に複数(図12の例では2個)のガラス材保持部16a、16bが形成されている。本構成によれば、サイズが異なる各種の被着体接着ガラス100を1台の製造装置を用いて製造できる。
【0068】
その他、実施形態に係る製造装置は、ドアガラスの製造装置を例にとって説明したが、本発明の要旨はこれに限定されるものではなく、装飾モールや金属カバーなどの長尺の被着体を備えた被着体接着ガラス100の製造装置にも適用できる。チャンバ1の形状及びサイズは、被着体接着ガラス100の製造に用いられるガラス材101及び被着体102の形状及びサイズに応じて変更できる。
【符号の説明】
【0069】
1…チャンバ、2…開閉部材、3…フレーム、4…起動スイッチ、5…停止スイッチ、11…挿入部、12、13、14…水蒸気噴射管、15…ヒータ15、16…保持部材、16a、16b…ガラス材保持部、17…ノズル孔、21…横桟部、22…縦桟部、23…シール部材、24…LMガイド、25…エアシリンダ、25a…ピストンロッド、100…被着体接着ガラス、101…ガラス材、102…ガラスホルダ、110…挟持部、111…底板、112、113…立壁、120…連結部、121…貫通孔。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図10
図11
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