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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007825
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】自動食器洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/14 20060101AFI20220105BHJP
   C11D 7/22 20060101ALI20220105BHJP
   A47L 15/44 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 5/08 20060101ALI20220105BHJP
   C02F 5/10 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
C11D7/14
C11D7/22
A47L15/44
C02F5/08 E
C02F5/10 620F
C02F5/10 620B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020124058
(22)【出願日】2020-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 孝
(72)【発明者】
【氏名】比気 清隆
【テーマコード(参考)】
3B082
4H003
【Fターム(参考)】
3B082CC05
4H003DA19
4H003EA15
4H003EB28
4H003EB30
4H003EB31
4H003EB32
4H003EB36
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA21
(57)【要約】
【課題】 本発明は、予備洗浄工程から本洗浄工程までを自動で行う洗浄システムにおいて、予備洗浄装置内を衛生的に保ち、洗浄性に優れた最適な洗浄方法を提供する。
【解決手段】
それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、前記予備洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中、(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.001質量%以上、0.04質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることを特徴とする洗浄方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、前記予備洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中に、(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.001質量%以上、0.04質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることを特徴とする洗浄方法
【請求項2】
前記(A)ケイ酸塩を構成するMO(MOは、アルカリ金属酸化物)とSiOとのモル比が、MO/SiO=1~4であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記(B)高分子分散剤が、アクリル酸重合体およびその塩、マレイン酸重合体およびその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体およびその塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸およびその塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体およびその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体およびその塩、アクリル酸-スルホン酸系共重合体およびその塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、1.5~5であることを特徴とする請求項1~3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、本洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中に(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、さらに(C)成分としてキレート剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.005質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(C)成分のキレート剤の含有量が、洗浄液中、0.01質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることを特徴とする請求項1~4に記載の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、前記予備洗浄装置内を衛生的に保ち、効果的に食器を洗浄する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レストランや施設の食堂等には、大量の食器を短時間に洗浄するために、業務用食器洗浄機が使用されている。食器の洗浄においては、食器から残菜を取り除いたり(スクラッピング)、汚れを落ちやすくするために、一定時間お湯に食器を浸漬したり(前浸漬)することが、効率良く汚れを落とすのに重要である。そのため、工場やオフィスの社員食堂や病院の洗浄室、給食センターなどの大規模な人数分の食器を洗浄する現場では、大型の浸漬槽があり、下膳された食器を一定時間浸漬した後に、コンベア式洗浄機にて自動的に連続して食器を洗浄するシステムが確立されている。一方、チェーンレストランや小規模食堂においては、立地によっては厨房スペースが狭いことから、バッチ式の自動食器洗浄機を使用する場合があり、その前工程として、スクラッピングや前浸漬を実施し、前洗いした食器をラックにセッティングして、バッチ式の自動食器洗浄機にセットするまでの工程は、作業員が行わなければならず、その作業に掛かる労力は大きく、大きな問題になっている。
【0003】
作業員の負荷を低減すべく、小規模店舗においても、前洗いを自動で行う洗浄機の開発が、各洗浄機メーカーによって取り組まれている。例えば、特許文献1のように、バッチ式自動食器洗浄機の手前に同じような機構の洗浄装置を組み合わせたものがある。この場合、前洗い用の洗浄機については、食器に付着した残菜のスクラッピングや汚れをふやかすことが目的であるため、洗剤を投入せずに、お湯のみを循環させるか、本洗浄に使用される自動食器洗浄機(以下本洗機という)から食器洗い水を前洗い洗浄機(以下前洗い機という)へ注入し、食器洗い水を再使用する構造が採用されている。
【0004】
このように前洗い機に洗剤が投入されない場合や、本洗機で使用される洗浄液の一部が、前洗い機のタンクに投入される場合、前洗い機内部が汚れたり、水の硬度成分が析出してスケールが付着し、微生物の温床となる所謂ピンクスライムが発生しやすい環境となったりして、前洗い機内部が不衛生となるという問題がある。特に、本洗機で使用される洗浄液の一部が、前洗い機のタンクに投入される機構において、その洗浄液がアルカリ性の場合、前洗い機内で、洗浄液が希釈され、よりスケールが付着しやすいという問題がある。
【0005】
従来から前洗いや前浸漬用途の洗浄剤が提案されているが、前洗いを人が行うことが前提となっているため、洗浄液に触れても問題のないように、安全性を考慮して、界面活性剤を主体とした中性のものが多い。例えば、特許文献2では、特定の非イオン界面活性剤及び溶剤が主成分として組成物に含有され、特許文献3では、作業員の手荒れを考慮し、pHが中性付近に設定されている。
【0006】
また、本洗機として使用される自動食器洗浄機用洗浄剤としては、特許文献4のように、アルカリ剤、キレート剤、ポリマーを含む洗浄剤組成物が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2012-511995号公報
【特許文献2】特開2018-59017号公報
【特許文献3】特開2019-94420号公報
【特許文献4】特開2007-332245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前洗いや前浸漬用途の洗浄剤のように、界面活性剤主体であったり、洗浄液が中性であったりすると、蛋白質汚れに対する洗浄性が劣るという問題がある。また、本洗機用の洗浄剤とは別に、前洗いや前浸漬用途の洗浄剤を自動供給するために、前洗い機に供給装置を設置すると、本洗機用と前洗い機用の2つの洗浄剤の為の供給装置が必要になり、不経済である。
【0009】
また、本洗機のタンクから前洗い機のタンクへ本洗機の洗浄液を送液して、洗浄液を再使用する構造の自動洗浄システムにて、従来の自動食器洗浄機用洗浄剤を本洗機に使用すると、前洗い機にて十分な濃度を維持できない場合に、キレート剤の効果が薄れ、前洗い機内にてスケールが発生したり、アルカリ剤が希釈されて洗浄性が低下したりして、前洗い機内部が汚れて不衛生になるという問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、下記の発明を完成するに至った。
[1]それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、前記予備洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中、(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.001質量%以上、0.04質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることを特徴とする洗浄方法。
[2]前記(A)ケイ酸塩を構成するMO(MOは、アルカリ金属酸化物)とSiOとのモル比が、MO/SiO=1~4である[1]に記載の洗浄方法。
[3]前記(B)高分子分散剤が、アクリル酸重合体およびその塩、マレイン酸重合体およびその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体およびその塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸およびその塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体およびその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体およびその塩、アクリル酸-スルホン酸系共重合体およびその塩から選ばれる1種以上である[1]又は[2]に記載の洗浄方法。
[4]前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、1.5~5であることを特徴とする[1]~[3]に記載の洗浄方法。
[5]それぞれに洗浄液を蓄えるタンクを有する予備洗浄装置及び本洗浄装置を備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構を備えた自動食器洗浄機システムであって、本洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中に(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、さらに(C)成分としてキレート剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.005質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(C)成分のキレート剤の含有量が、洗浄液中、0.01質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10である[1]~[4]に記載の洗浄方法。
【発明の効果】
【0011】
すなわち、本発明は、予備洗浄から本洗浄終了まで全自動若しくは局所的に手動で食器を洗浄し、予備洗浄装置用の洗浄剤の供給装置を別途必要とすることなく、予備洗浄装置においても洗浄力、特に蛋白質汚れに対する洗浄性に優れ、また、本洗機からの洗浄液が予備洗浄装置に流れて、洗浄剤濃度が薄くなっても、予備洗浄装置内を衛生的に保つことができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
【0013】
まず、本発明に用いられる自動食器洗浄機システムは、予備洗浄装置と本洗浄装置を備え、食器を予備洗浄装置から本洗浄装置へ自動的に若しくは手動的に移送させる手段を有する。予備洗浄装置と本洗浄装置は、それぞれ独立した装置しても良いし、マルチタンクのコンベア洗浄機のように、一つの洗浄機内に複数のタンクと洗浄室を併せ持ったものでも良い。マルチタンクのコンベア洗浄機の場合、1槽目のタンクを予備洗浄装置して用い、2槽目以降を本洗浄装置として用いることができる。コンベア式に食器を移送することができるので、食器をラック等にセットすれば、自動的に予備洗浄、本洗浄、すすぎの工程が行え、人が洗浄液に触れることなく、洗浄を完結させることができる。独立した予備洗浄装置としては、特許文献1のように、一般的な自動食器洗浄機と類似の構造をとしても良い、すなわち、開閉式の扉を有し、タンク及びポンプを有し、スプレー手段によって食器を洗浄する手段を有する装置でも良い。この場合、洗浄工程が開放系でないので、予備洗浄工程にて人が洗浄液に触れることがない。予備洗浄装置と本洗浄装置間の食器の移送は、自動であることが好ましいが、食器がセットされたラックを作業者が押すような局所的に手動的な移送によっても良い。また、予備洗浄装置は、浸漬槽であっても良い。人が浸漬槽の洗浄液に触れないよう、食器を掻き揚げて本洗浄装置に送る手段を有しているか、かごやラックに食器をセットし、浸漬槽内にかごやラックごと浸漬後、ラックやかごを本洗浄機に搬送する手段を有していることが好ましい。
【0014】
前記予備洗浄装置も本洗浄装置もいずれも洗浄液を蓄えるタンクを備え、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置のタンクへ洗浄液が流入する機構(以下、洗浄液再利用機構という)を備えていることが好ましい。洗浄液再利用機構としては、予備洗浄装置が独立している場合、本洗浄装置のタンクに洗浄液再利用機構用のポンプを備え、ポンプによって本洗浄装置のタンクから洗浄液を予備洗浄装置に送液しても良い。例えば、特開2004-298621号公報に記載の図1図2図4に示す洗浄装置や前述の特表2012-511995号公報に記載の図6に示す洗浄装置などがある。また、本洗浄装置の洗浄ライン配管から分岐して予備洗浄装置のタンクに配管を導入し、本洗浄装置稼働時に洗浄ライン配管から水圧により洗浄液の一部を予備洗浄装置のタンクに送液しても良い。例えば、特開2004-298621号公報に記載の図3に示す洗浄装置などがある。また、マルチタンクのコンベア洗浄機のように、予備洗浄装置と本洗浄装置が一体となっている場合は、本洗浄装置内のスプレーノズルから噴射された洗浄液の一部を収集し、予備洗浄装置へ流れ込む構造を有しても良い。このような洗浄液再利用機構を備えることにより、本洗浄液がオーバーフローして排水される分を予備洗浄装置の洗浄液の一部として利用することができ、予備洗浄装置の洗浄液の汚れの緩和になり、予備洗浄装置に加温手段がある場合は、連続運転することにより、予備洗浄装置の洗浄液の温度低下防止にもなる。また、別途予備洗浄装置用の洗浄剤を供給する装置が不要となり、経済的である。
【0015】
前記洗浄液再利用機構を利用する場合、前記本洗浄装置から前記予備洗浄装置へ本洗浄装置の洗浄液が流入した結果、予備洗浄装置内の洗浄液が、(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.001質量%以上、0.04質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることが好ましい。
【0016】
前記(A)ケイ酸塩は、MO(MOは、アルカリ金属酸化物)とSiOによって構成される。好ましくはケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムが挙げられる。前記ケイ酸塩は、食器に付着した汚れに対する洗浄性及び予備洗浄装置内の汚れの付着防止の点から、予備洗浄装置内の洗浄液中に、0.001質量%以上、0.04質量%未満であることが好ましい。より好ましいのは、0.002質量%以上、0.02質量%未満である。さらに好ましいのは、0.003質量%以上、0.01質量%である。0.04質量%以上であっても良いが、これ以上の性能の向上が見られず、経済的に不利になる。
また、前記ケイ酸塩を構成するMOとSiOとのモル比が、MO/SiO=1~4であることが、洗浄性、シリカ由来のスケールの抑制の点から、より好ましい。さらに好ましいのは、1~3である。
【0017】
前記(B)高分子分散剤としては、アクリル酸重合体およびその塩、マレイン酸重合体およびその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体およびその塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸およびその塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体およびその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体およびその塩、アクリル酸-スルホン酸系共重合体およびその塩、マレイン酸-スルホン酸系共重合体およびその塩、アクリル酸と2-ヒドロキシー3-アリロキシプロパンスルホン酸との共重合体およびその塩、メチルビニルエーテルとマレイン酸の共重合体およびその塩が挙げられ、スケール抑制の点から、アクリル酸重合体およびその塩、マレイン酸重合体およびその塩、アクリル酸-マレイン酸共重合体およびその塩、ポリ-α-ヒドロキシアクリル酸およびその塩、アクリル酸-マレイン酸系-ポリエチレングリコール共重合体およびその塩、オレフィン-マレイン酸共重合体およびその塩、アクリル酸-スルホン酸系共重合体およびその塩から選ばれる1種以上であることが好ましい。
また、前記(B)高分子分散剤と(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、予備洗浄装置の洗浄液中において、0.5~10であることが、予備洗浄装置内のスケール抑制の点から、好ましい。より好ましくは、1~8であり、さらに好ましくは、1.5~5である。10以上であっても良いが、これ以上の性能の向上が見られず、経済的に不利になる
【0018】
前記予備洗浄装置の洗浄液を前記の状態にするためには、本洗浄装置における洗浄工程において、洗浄液中に(A)成分としてケイ酸塩、(B)成分として高分子分散剤を含有し、さらに(C)成分としてキレート剤を含有し、前記(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.005質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(C)成分のキレート剤の含有量が、洗浄液中に、0.01質量%以上、0.1質量%未満であり、前記(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であることが好ましい。
運転開始時に予備洗浄装置内のタンクに洗浄剤が含有されていない場合、本洗浄装置から予備洗浄装置内のタンクへ洗浄液が流入した際に、流入する洗浄液の量にもよるが、洗浄液が100倍~20倍程度に希釈される。多量の食器を洗浄するために洗浄回数を増やして、本洗浄装置から予備洗浄装置へと流入する洗浄液の量が増えていく毎に、予備洗浄装置のタンク内の洗浄剤濃度が高くなり、理論的には、本洗浄装置内の洗浄剤濃度と限りなく近い濃度に達する。
【0019】
本洗浄装置における洗浄液中において、(A)成分のケイ酸塩の含有量が、洗浄液中、0.005質量%以上、0.1質量%未満であると、本洗浄装置における洗浄性の点で好ましく、本洗浄装置における洗浄液が予備洗浄装置のタンク内に流入し、そこで希釈された場合に、アルカリ緩衝作用により、予備洗浄装置における洗浄液のpHの低下を抑えることができ、予備洗浄装置内の汚れ付着防止の点で有利である。好ましくは、0.01質量%以上、0.08質量%である。0.1質量%以上であっても良いが、すすぎにくくなってしまう点で、不利になる。
また、本洗浄装置における洗浄液が予備洗浄装置のタンク内に流入した際に、本洗浄装置における洗浄液中(B)高分子分散剤の(A)ケイ酸塩に対する質量比率(B/A)が、0.5~10であると、予備洗浄装置内の洗浄液中の(B/A)の比率も同程度の比率になる点で、好ましい。より好ましくは1~8であり、さらに好ましくは1.5~5である。10を超えても良いが、それ以上の効果の向上が望めず、経済的に不利になる。
【0020】
前記本洗浄装置における洗浄液中には、さらに(C)成分としてキレート剤を含有することが好ましい。前記キレート剤としては、アミノトリメチレンホスホン酸ナトリウム、アミノトリメチレンホスホン酸カリウム、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸ナトリウム、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸カリウム、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸ナトリウム、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸カリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸ナトリウム、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸カリウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸ナトリウム、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸カリウム、ニトリロ3酢酸3ナトリウム、ニトリロ3酢酸3カリウム、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸2ナトリウム、ヒドロキシエチルイミノ2酢酸2カリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3カリウム、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸4カリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸3ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸3カリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4ナトリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4カリウム、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸4ナトリウム、L-アスパラギン酸-N,N-2酢酸4カリウム、ジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム、ジエチレントリアミン5酢酸5カリウム、酒石酸2ナトリウム、酒石酸2カリウム、酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。なかでも、経済性および洗浄性の点からニトリロ3酢酸3ナトリウム、ニトリロ3酢酸3カリウム、メチルグリシン2酢酸3ナトリウム、メチルグリシン2酢酸3カリウム、エチレンジアミン4酢酸4ナトリウム、エチレンジアミン4酢酸4カリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4ナトリウム、L-グルタミン酸-N,N-2酢酸4カリウム、が好ましい。
【0021】
前記本洗浄装置における洗浄液中における(C)成分のキレート剤の含有量が、0.01質量%以上、0.1質量%未満であることが、本洗浄装置における洗浄性の点で、好ましい。さらに好ましくは、0.015質量%以上、0.08質量%である。0.1質量%以上であっても良いが、すすぎにくくなってしまう点で、不利になる。
【0022】
そして、前記本洗浄装置における洗浄液中には、任意成分として、界面活性剤、酵素、漂白剤、pH調整剤、有機酸およびその塩、染料、香料、金属腐食抑制剤、殺菌剤、抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤、酸化防止剤等を用いることができる。
【0023】
本発明の洗浄方法は、予備洗浄装置用の供給装置を別途必要とすることなく、本洗機からの洗浄液が予備洗浄装置に流れて、洗浄剤濃度が薄くなっても、洗浄液のpHの低下が抑えられ、予備洗浄工程において洗浄性が良好で、スケール抑制に優れているため、予備洗浄から本洗浄終了まで全自動で食器を洗浄する洗浄システムに最適である。
【実施例0024】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。本発明は、これらに限定されるものではない。
【0025】
まず、組成物を調整するために、下記のとおり、各成分を準備した。各成分の詳細は下記の通りであり、表1~6中の数値は、各成分を純分で示したものである。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準を意味する。また、水は、特に断りのない限り水道水を用いている。
【0026】
(A)ケイ酸塩
下記モル比は、MO/SiOを示す(MOは、アルカリ金属酸化物)。
・ケイ酸塩1:メタ珪酸ナトリウム(モル比:1、純分:42%)
(商品名「メタケイサンソーダ9スイエン」、ADEKA社製)
・ケイ酸塩2:オルソ珪酸ナトリウム(モル比:2、純分:65%)
(商品名「ネオオルソ65」、広栄化学社製)
・ケイ酸塩3:オルソ珪酸カリウム(モル比:2、純分:35%)
(商品名「OK-35」、日本化学社製)
【0027】
(B)高分子分散剤
・高分子分散剤1:ポリアクリル酸ナトリウム
(純分45%、平均分子量5,500)
(商品名「アクアリックYS-100」、日本触媒社製)
・高分子分散剤2:アクリル酸-マレイン酸共重合体のナトリウム塩
(純分35%、平均分子量40,000)
(商品名「Acusol 505N」、ROHM&HAAS社製)
・高分子分散剤3:ポリヒドロキシアクリル酸ナトリウム
(純分40%)
(商品名「ペールプラック250」、保土ヶ谷化学社製)
・高分子分散剤4:オレフィン-マレイン酸共重合体のナトリウム塩
(純分92%、平均分子量15,000)
(商品名「Acusol 460ND」、
ROHM&HAAS社製)
【0028】
(C)キレート剤
・キレート剤1:ニトリロ三酢酸三ナトリウム(純分92%)
(商品名「クレワットPC-C3」、ナガセケムテックス社製)
・キレート剤2:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム(純分87%)
(商品名「ディゾルビンNA」、Nouryon社製)
・キレート剤3:L-グルタミン酸二酢酸四ナトリウム(純分47%)
(商品名「ディゾルビンGL-47-S」、Nouryon社製)
・キレート剤4:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム(純分40%)
(商品名「トリロンMリキッド」、BASF社製)
【0029】
〔実施例1~15、比較例1~3〕予備洗浄装置内での性能評価
後記の表1~4に示す組成(各表の数値の単位は「質量%」である)の洗浄液(予備洗浄装置内洗浄液を想定)を調製し、洗浄性、スケール生成抑制能について評価した。試験方法及び評価基準は、下記に示す通りである。
【0030】
[洗浄性]
・試験方法
各成分適量を業務用の自動食器洗浄機(DW-RD61、三洋電機社製)に投入し、洗浄機内で、表1~4に示す組成になるよう調整した後、下記の運転条件で運転した。下記の被洗浄物である陶器皿を10枚1組として洗浄し、洗浄後の各皿の汚れ除去の程度を目視により観察した。そして、その洗浄性能を後記の評価基準で評価した。なお、汚れとして牛脂、卵黄を用意し、それぞれの汚れに対し洗浄性試験を行った。本試験は、上記の自動食器洗浄機を独立型の予備洗浄装置と見立てて試験を行っている。
【0031】
・運転条件
洗浄温度 :40℃
洗浄タンク容量:50リットル
洗浄時間 :20秒
すすぎ :なし
牛脂汚れ :精製牛脂を用いた。
卵黄汚れ :卵黄のみをとりわけ、よくかき混ぜて用いた。
被洗浄物 :直径 10cmの陶器皿に上記汚れを2g/枚となるように付着させ、常温で1時間乾燥させたものを用いた。
【0032】
・評価基準
◎:90%以上の汚れ除去。
○:60%以上90%未満の汚れ除去。
△:40%以上60%未満の汚れ除去。
×:40%未満の汚れ除去。
【0033】
[スケール生成抑性能]
・試験方法
人工硬水(総硬度:CaCOとして250mg/L)を用いて、表1~4に示す組成の洗浄液を調整し、容量100mlの比色管に50mlを注ぎ、40℃で24時間保持した後、スケールの生成量を目視により観察し、下記の評価基準で評価した。
【0034】
・評価基準
◎:スケール生成が殆どなかった。
○:スケールの生成が若干あった。
×:スケール付着が著しかった。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【表3】
【0038】
【表4】
【0039】
上記表1~表4の評価結果から、実施例1~15は、洗浄性、スケール生成抑制能のいずれの項目においてもほぼ良好な結果が得られていることがわかる。これに対し、比較例1~3は、少なくともいつくかの項目において、実用上の問題があることがわかる。
【0040】
〔実施例16~20、比較例4~6〕全自動洗浄システムを想定した洗浄試験
特開2004-298621号公報に記載の図3に示す洗浄装置を用い、下記の条件に従い、予備洗浄、本洗浄、すすぎの順で、実際に、食器(下記の洗浄対象物)の洗浄処理を行った。なお、予備洗浄には、お湯を貯めておき、洗浄剤がない状態から開始した。洗浄サイクル初回に、本洗浄装置(この場合、自動食器洗浄機)の洗浄タンクから、予備洗浄装置(この場合、浸漬槽)へ洗浄液が流れ込み、浸漬槽に洗浄液が投入される。洗浄サイクル2回目から汚れを付けた食器を用い、洗浄試験を行った。予備洗浄工程は、浸漬のみで擦り洗いせず、食器を本洗浄装置へ移すのは、自動搬送装置の代わりに人が移動させた。予備洗浄、本洗浄、すすぎの洗浄サイクルを1サンプル当たり50回行った(初回を除いた回数)。洗浄性および50回後の浸漬槽の状態を評価した。
後記表5および6に示す組成(各表の数値の単位は「質量%」である)の洗浄液(本洗機内洗浄液を想定)を調製し、試験に供した。
【0041】
〔条件〕
(1)洗浄対象
65℃のお湯で30分加温して作った半熟卵を汚れ1とし、ご飯40gとレトルト食品(牛丼の具、吉野家社製)20gと、牛脂5gとを充分に混合したものを汚れ2とした。そして、汚れ1、2をそれぞれ2g取って、磁器製丼(直径18cm×高さ6cm)の内面にまんべんなく塗布し、60分間放置した。この丼を、10個一組とした。
【0042】
(2)予備洗浄
浸漬槽 : シンク(600mm×450mm×300mm)
予備洗浄液量 : 50リットル(一定液量に保つよう排水口を調整)
浸漬温度 : 40℃(お湯を張った際の温度、その後加温なし)
浸漬時間 : 5分
【0043】
(3)本洗浄
自動食器洗浄機: DW-RD61、三洋電機社製
洗浄温度 : 60℃
洗浄時間 : 50秒
洗浄タンク容量: 50リットル
(4)すすぎ
すすぎ水量 : 4リットル/回
すすぎ水温 : 80℃
すすぎ時間 : 10秒
【0044】
(5)本洗機から予備洗浄装置への洗浄液の流量
流量 : 本洗機1洗浄工程につき2L
【0045】
・洗浄性評価基準
◎:洗浄サイクル50回全てにおいて、90%以上の汚れ除去。
○:洗浄サイクル50回の内、40~49回にて、90%以上の汚れ除去。
および、洗浄サイクル1~10回、80%以上の汚れ除去。
×:洗浄サイクル50回の内、1回以上80%未満の汚れ除去
【0046】
・50回後に浸漬槽の液を抜き、固形物汚れを取り除いた後の状態の評価基準
○:壁面にやや油汚れあり
△:壁面に若干汚れあり
×:壁面に著しい汚れあり
【0047】
【表5】
【0048】
【表6】
【0049】
上記表5および6の評価結果から、実施例16~20は、洗浄性、50回後の浸漬槽の状態のいずれの項目においてもほぼ良好な結果が得られていることがわかる。これに対し、比較例4~6は、少なくともいつくかの項目において、実用上の問題があることがわかる。
【0050】
上記の実施例、比較例の結果より、本発明の洗浄方法は、予備洗浄工程から本洗浄工程終了まで全自動で食器を洗浄するシステムにおいて、最適に洗浄することができ、本洗機からの洗浄液が予備洗浄装置に流れて、予備洗浄装置内で希釈されても、洗浄性とスケール抑制能に優れるため、予備洗浄装置内を衛生的に保つことができるものと判断された。