(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078345
(43)【公開日】2022-05-24
(54)【発明の名称】免疫療法のための調節粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 45/06 20060101AFI20220517BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220517BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20220517BHJP
A61K 31/4178 20060101ALI20220517BHJP
A61K 31/4439 20060101ALI20220517BHJP
A61K 38/21 20060101ALI20220517BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220517BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20220517BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220517BHJP
A61K 38/19 20060101ALI20220517BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220517BHJP
C07K 14/52 20060101ALN20220517BHJP
C07K 14/55 20060101ALN20220517BHJP
C07K 14/57 20060101ALN20220517BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20220517BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20220517BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20220517BHJP
C07K 5/09 20060101ALN20220517BHJP
C12N 5/0784 20100101ALN20220517BHJP
C07K 17/02 20060101ALN20220517BHJP
【FI】
A61K45/06
A61K9/127 ZNA
A61K9/14
A61K31/4178
A61K31/4439
A61K38/21
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K38/19
A61K38/20
C07K14/52
C07K14/55
C07K14/57
C07K14/725
C07K14/715
C07K14/54
C07K5/09
C12N5/0784
C07K17/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022043714
(22)【出願日】2022-03-18
(62)【分割の表示】P 2020028424の分割
【原出願日】2014-10-31
(31)【優先権主張番号】61/899,080
(32)【優先日】2013-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/040,242
(32)【優先日】2014-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】593152720
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
【氏名又は名称原語表記】Yale University
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】タレク ファーミー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ホースバーグ
(57)【要約】
【課題】免疫療法のための調節粒子の提供。
【解決手段】ナノ粒子組成物が開示される。ナノ粒子組成物は、典型的に、少なくとも1つ、好ましくは2つまたはそれを超える活性薬剤を含み、これらのうちの1つは、送達ビヒクルの中に負荷された、その表面に結合された、および/またはその内に密封された免疫調節化合物である。送達ビヒクルは、ポリマーコアおよび脂質シェルを含むナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などの生分解性ポリマーナノ粒子とすることができる。典型的に、活性薬剤の少なくとも1つは、免疫刺激性の応答を増加させるまたは免疫抑制性の応答を減少させる免疫調節薬である。いくつかの実施形態では、粒子が、免疫刺激性の応答を増加させる免疫調節薬および免疫抑制性の応答を減少させる免疫調節薬の両方を含む。粒子は標的細胞への送達を改善するターゲティング成分により装飾することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2013年11月1日に出願された米国出願第61/899,080号および2014年8月21日に出願された米国出願第62/040,242号の優先権の利益を主張し、これらの出願は、本明細書において参考として援用される。
【0002】
発明の分野
本発明は、一般に、ナノ粒子組成物および免疫療法のためのその使用の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
治療上の処置の効能は、使用される薬剤の作用メカニズムに依存性であるが、他の因子もまた、最適な応答を誘起するのに重要となり得る。例えば、疾患の発病に関する投薬量および投与のタイミングならびに薬物動態学的および薬力学的特質に関する多くの複雑な問題は、考慮すべき重要なこととなり得る。
【0004】
この数年にわたって、様々な研究が、薬物送達のための最適な戦略を確立するために、多くの治療剤により実行されてきた。様々なタイプの疾患のための薬物レジメンが、併用療法に進展した。例えば、いくつかの場合では、組み合わせは、(1)同じまたは異なる疾患標的を有する薬物を組み合わせること、(2)2つの薬物の組み合わせた活性が、それぞれ単独の活性の合計よりも大きいものを組み合わせること、および(3)2つの薬物のうち、一方の薬物は疾患状態に対して直接作用するが、他方は対象の症状を間接的に改善するものの組み合わせによって、効能を改善するために使用される。しかし、疾患の処置における役割の異なるかかる異種薬物は、しばしば、化学的性質が劇的に異なり、併用療法における薬物送達問題は非常に困難であり得る。
【0005】
したがって、本発明は、改善された薬物送達および疾患処置のための組成物および方法を提供することを目的とする。
【0006】
本発明の別の目的は、標的細胞への活性薬剤の送達および効能を改善するための組成物および方法を提供することである。
【0007】
本発明のさらなる目的は、少なくとも2つの活性薬剤を含む併用療法の送達および効能を改善するための組成物および方法を提供することである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、それを必要とする対象において免疫刺激性の応答を誘発または増強するための特異的な併用療法を提供することである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ナノ粒子組成物が、開示される。ナノ粒子組成物は、送達ビヒクルの中に負荷された、その表面に結合された、および/またはその内に密封された1つ、好ましくは2つまたはそれを超える活性薬剤を典型的に含む。送達ビヒクルは、ポリマーコアおよび脂質シェルを含むナノリポゲル、またはPLGAナノ粒子などの生分解性ポリマーナノ粒子とすることができる。活性薬剤は、治療剤もしくは診断剤、ターゲティング成分、抗原、またはアジュバントとすることができる。2つまたはそれを超える活性薬剤のそれぞれの相対濃度および送達ビヒクル上または内のそれらの配置は、標的細胞が受けるであろう好ましい投薬量および提示に適応させるために、組成物の製造の間に操作することができる。同じ送達ビヒクルの中へのまたは上への2つまたはそれを超える活性薬剤の負荷は、2つまたはそれを超える活性薬剤が標的細胞に同時にまたは他の場合には所定の順序で提示されることを可能にする。
【0010】
最も好ましい実施形態では、ナノ粒子組成物が、少なくとも1つの免疫調節物質を含む。免疫調節物質は、免疫刺激性の応答を増加させるまたは増強する薬剤、例えば、T細胞応答を増強する、T細胞活性を増加させる、T細胞増殖を増加させる、T細胞阻害性シグナルを低下させる、サイトカインの産生を増強する、T細胞分化もしくはエフェクター機能を刺激する、T細胞の生存を促進する薬剤、またはその任意の組み合わせとすることができる。免疫刺激性の応答を増加させるまたは増強する例示的な薬剤には、サイトカインならびにインターロイキン-2(IL-2)およびインターフェロンγ(IFNγ)などのケモカインが含まれるが、これらに限定されない。
【0011】
免疫調節物質は、免疫抑制性の応答を減少させるまたは阻害する薬剤、例えば、調節性T細胞(Treg)を排除する;Tregの分化、輸送、エフェクター機能、もしくはその組み合わせをブロックする;エフェクター細胞抑制閾値を上げる薬剤、またはその任意の組み合わせとすることができる。免疫抑制性の応答を減少させるまたは阻害する例示的な薬剤には、SB505124またはロサルタンなどのTGF-β阻害剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0012】
組成物は、ターゲティング成分を含むことができる。好ましいターゲティング成分は、RGDペプチド、CD40アゴニスト、p53抗原を認識するT細胞受容体、およびIL-15/IL-15Rα複合体を含む。
【0013】
活性薬剤の特定の組み合わせもまた、開示される。例えば、いくつかの実施形態では、送達ビヒクルが、ロサルタンと組み合わせて、IL-2またはIFNγを負荷されるか、またはそれにより装飾される。他の実施形態では、送達ビヒクルは、IL-2またはIFNγを負荷し、RGDペプチドまたは抗CD40抗体もしくはその抗原結合断片などのターゲティング成分により装飾される。
【0014】
樹状細胞を模倣する人工樹状細胞および組成物もまた、開示される。特定の実施形態では、人工樹状細胞が、ポリマーコアおよび脂質シェルを有するナノリポゲルまたは生分解性ポリマーナノ粒子から構成される。ナノリポゲルまたはポリマーナノ粒子、例えば、PLGAナノ粒子は、IL-15/IL-15Rα複合体により装飾される。人工樹状細胞は、IL-2、IFNγ、ロサルタン、SB505124、または任意のその組み合わせなどの1つまたはそれを超えるさらなる活性薬剤を負荷することができる。
【0015】
対象の免疫応答を刺激しまたは増強し、癌について対象を処置するための方法もまた、開示される。典型的に、方法は、免疫応答を増加させる、癌細胞を破壊する、癌成長および/もしくは転移に干渉する、ならびに/または癌の1つもしくはそれを超える有害な事象および/もしくは続発症を低下させるために、有効量のナノ粒子組成物を対象に投与するステップを含む。この作用様式は、治療的または予防的なものとすることができる。そのため、投与された粒子を使用する免疫応答の増強、刺激、または干渉は、既知の抗原によるワクチン開発または自己免疫障害の抑制の両方に有用である。
【0016】
さらなる活性薬剤を対象に投与することと組み合わせて、送達ビヒクルの中に、その上に負荷された、または他の場合にはそれと会合された1つまたはそれを超える活性薬剤を有するナノリポゲルまたはポリマー粒子などの送達ビヒクルを含むナノ粒子組成物を対象に投与するステップを含む、それを必要とする対象を処置するための方法もまた、提供される。ナノ粒子組成物およびさらなる活性薬剤は、単一の医薬組成物においてまたは異なる医薬組成物において別々に投与することができる。特に好ましい実施形態では、ナノ粒子組成物が、炎症性サイトカイン(例えば、IL-2)および/またはTGFβ阻害剤(例えば、ロサルタン)を含むナノリポゲルまたは他のポリマー粒子を含み、さらなる活性薬剤が、免疫修飾因子または化学療法剤である。特に好ましい実施形態では、1つまたはそれを超える活性薬剤が、免疫応答刺激剤または促進剤(PD-1アンタゴニスト(例えば、アンタゴニスティック抗PD1抗体、抗-B7-H1抗体など)またはCTLA4アンタゴニスト(例えば、アンタゴニスティック抗CTLA4抗体)、さらに好ましくはその組み合わせなど)である。別の好ましい実施形態では、さらなる活性薬剤が、化学療法剤、例えば、ドキソルビシンである。
【0017】
方法は、免疫応答の増強(例えば、T細胞増殖または活性化などのT細胞応答の増加または誘発)が、所望される対象を処置するために使用することができる。例示的な対象には、癌または伝染病を有する対象が含まれる。免疫応答(例えば、T細胞応答の増加または誘発)は、癌または疾患の抗原に対するものとすることができる。免疫応答は、癌または感染症を処置するのに有効になり得る。いくつかの実施形態では、免疫応答が、癌性および/または疾患感染細胞に対するものであり、癌および/または疾患の1つまたはそれを超える症状(例えば、腫瘍量、腫瘍進行、疾患進行など)を低下させることができる。処置レジメンもまた、提供される。
例えば、本発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
それぞれ送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される免疫調節薬および第2の活性薬剤を含むナノ粒子組成物であって、
前記送達ビヒクルが、ポリマーコア、吸収剤、および脂質シェルを含むナノリポゲルであるか、または生分解性ポリマーナノ粒子であるナノ粒子組成物。
(項目2)
前記免疫調節薬が、T細胞応答を増強する、T細胞活性を増加させる、T細胞増殖を増加させる、T細胞阻害性シグナルを低下させる、サイトカインの産生を増強する、T細胞分化もしくはエフェクター機能を刺激する、T細胞の生存を促進する、またはその任意の組み合わせである薬剤である、項目1に記載のナノ粒子組成物。
(項目3)
前記免疫調節薬が、サイトカインまたはケモカインである、項目2に記載のナノ粒子組成物。
(項目4)
前記サイトカインが、IL-2またはIFNγである、項目3に記載のナノ粒子組成物。(項目5)
前記免疫調節薬が、Tregを排除する、Tregの分化、輸送、エフェクター機能、もしくはその組み合わせをブロックする、エフェクター細胞抑制閾値を上げる、またはその任意の組み合わせである薬剤である、項目1に記載のナノ粒子組成物。
(項目6)
前記薬剤が、TGF-β阻害剤である、項目5に記載のナノ粒子組成物。
(項目7)
前記TGF-β阻害剤が、SB505124またはロサルタンである、項目6に記載のナノ粒子組成物。
(項目8)
前記第2の活性薬剤もまた、免疫調節薬である、項目1に記載のナノ粒子組成物。
(項目9)
ターゲティング成分を含む項目1に記載のナノ粒子組成物。
(項目10)
前記ターゲティング成分が、RGDペプチド、CD40アゴニスト、p53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)、およびIL-15/IL-15Rα複合体から成る群から選択される、項目9に記載のナノ粒子組成物。
(項目11)
それぞれ送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封されるIL-2もしくはIFNγおよびロサルタンを含むナノ粒子組成物であって、
前記送達ビヒクルが、ポリマーコアおよび脂質シェルを含むナノリポゲルであるか、または生分解性ポリマーナノ粒子であるナノ粒子組成物。
(項目12)
それぞれ送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封されるIL-2またはIFNγおよびターゲティング成分を含むナノ粒子組成物であって、
前記送達ビヒクルが、ポリマーコアおよび脂質シェルを含むナノリポゲルであるか、または生分解性ポリマーナノ粒子であるナノ粒子組成物。
(項目13)
前記ターゲティング成分が、RGDペプチド、CD40アゴニスト、p53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)、およびIL-15/IL-15Rα複合体から成る群から選択される、項目12に記載のナノ粒子組成物。
(項目14)
IL-15/IL-15Rα複合体により装飾された、ポリマーコアおよび脂質シェルを含むナノリポゲルであるか、または生分解性ポリマーナノ粒子を含む人工樹状細胞。
(項目15)
1つまたはそれを超えるさらなる活性薬剤をさらに含む、項目14に記載の人工樹状細胞。
(項目16)
前記活性薬剤のうちの1つが、IL-2またはIFNγである、項目15に記載の人工樹状細胞。
(項目17)
前記活性薬剤のうちの1つが、ロサルタンまたはSB505124である、項目15に記載の人工樹状細胞。
(項目18)
IL-2およびロサルタンをさらに含む、項目14に記載の人工樹状細胞。
(項目19)
免疫応答を刺激または増強するための方法であって、免疫応答を上昇させるためにそれを必要とする対象に項目1~18のいずれかの有効量の組成物を投与するステップを含む、方法。
(項目20)
癌を治療するための方法であって、癌の1つまたはそれを超える症状を低下させるために項目1~18のいずれかの有効量の組成物を癌を有する対象に投与するステップを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1-1】
図1Aは、クマリン-6-負荷PLGAナノ粒子による注射の3時間後のマウスの脾臓、肝臓、肺、心臓、および腎臓におけるクマリン-6/組織(ng/g)の分布を示す棒グラフである。
図1Bは、クマリン-6-負荷PLGAナノ粒子による注射の6時間後のマウスの脾臓、肝臓、肺、心臓、および腎臓におけるクマリン-6/組織(ng/g)の分布を示す棒グラフである。
図1Cは、脾臓における細胞サブセット(CD11c
+F4/80
-、CD11c
+F4/80
+、CD11c
-F4/80
-、B220ポジティブ、CD4ポジティブ、およびCD8ポジティブ)内のクマリン-6 PLGAナノ粒子ポジティブ細胞%を示す棒グラフである(C6 PLGAナノ粒子処置(クローズドバー)、非蛍光PLGAナノ粒子処置(オープンバー))。
図1Dは、リンパ節中の細胞サブセット(CD11c
+F4/80
-、CD11c
+F4/80
+、CD11c
-F4/80
-、B220ポジティブ、CD4ポジティブ、およびCD8ポジティブ)内のクマリン-6 PLGAナノ粒子ポジティブ細胞%を示す棒グラフである(C6 PLGAナノ粒子処置(クローズドバー)、非蛍光PLGAナノ粒子処置(オープンバー))。
*は、ANAOVA(器官)および両側t-検定によるp<0.05を示す。
【
図1-2】
図1Aは、クマリン-6-負荷PLGAナノ粒子による注射の3時間後のマウスの脾臓、肝臓、肺、心臓、および腎臓におけるクマリン-6/組織(ng/g)の分布を示す棒グラフである。
図1Bは、クマリン-6-負荷PLGAナノ粒子による注射の6時間後のマウスの脾臓、肝臓、肺、心臓、および腎臓におけるクマリン-6/組織(ng/g)の分布を示す棒グラフである。
図1Cは、脾臓における細胞サブセット(CD11c
+F4/80
-、CD11c
+F4/80
+、CD11c
-F4/80
-、B220ポジティブ、CD4ポジティブ、およびCD8ポジティブ)内のクマリン-6 PLGAナノ粒子ポジティブ細胞%を示す棒グラフである(C6 PLGAナノ粒子処置(クローズドバー)、非蛍光PLGAナノ粒子処置(オープンバー))。
図1Dは、リンパ節中の細胞サブセット(CD11c
+F4/80
-、CD11c
+F4/80
+、CD11c
-F4/80
-、B220ポジティブ、CD4ポジティブ、およびCD8ポジティブ)内のクマリン-6 PLGAナノ粒子ポジティブ細胞%を示す棒グラフである(C6 PLGAナノ粒子処置(クローズドバー)、非蛍光PLGAナノ粒子処置(オープンバー))。
*は、ANAOVA(器官)および両側t-検定によるp<0.05を示す。
【0019】
【
図2】
図2は、皮下A375C15N(p53+HLA-A2/ヒトメラノーマ)異種移植片腫瘍確立およびPBS、TCR粒子(IL-2カプセル化)ナノリポゲル、またはTCR/IL-2(可溶性p53特異的scTCR/IL-2融合タンパク質(Altor 801、Altor Biosciences、Miramar、FL))ナノ粒子による続く処置後の、ある期間にわたる(日数)、ヌードマウスにおける相対腫瘍容積(mm
3)を示す折れ線グラフである。
【0020】
【
図3】
図3は、B16F10メラノーマ細胞の接種のおよそ7日後から始めた、抗CD40により表面修飾した(-▲-)もしくは抗CD40により表面修飾し、IL-2を負荷した(-▼-)5μgのPLGAナノ粒子またはコントロールとしてのブランク粒子(何もない表面および空)(-■-)または緩衝食塩水(1×PBS)(-●-)による処置後の、ある期間にわたる(日数)、マウスにおける腫瘍容積(mm
3)を示す折れ線グラフである。
【0021】
【
図4】
図4は、PLGAナノ粒子がどのように製造されるかならびにIL-15(樹状細胞上に発現される)およびNK細胞上に発現される中程度の親和性のIL-2/15受容体の間の天然に存在する相互作用に基づいてそれがどのようにNK細胞などの標的細胞と相互作用すると考えられるかを含めて、アビジン-ビオチン連結IL-15RαFC融合タンパク質を表示するPLGAナノ粒子を示す図である。
【0022】
【
図5-1】
図5Aは、未処置コントロールにおけるおよびPLGAナノ粒子のみ、IL-15のみ、IL-15負荷ナノ粒子、IL-15/IL-15Rα複合体のみ、IL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のNK増殖(細胞数)を示す棒グラフである。
図5Bは、濃度の関数として、IL-15/IL-15Rα複合体のみおよびIL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のNK増殖(細胞数)を示す折れ線グラフである。
図5Cは、濃度の関数として、IL-15/IL-15Rα複合体のみおよびIL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のIFN-γ(ng/ml)を示す折れ線グラフである。
【
図5-2】
図5Aは、未処置コントロールにおけるおよびPLGAナノ粒子のみ、IL-15のみ、IL-15負荷ナノ粒子、IL-15/IL-15Rα複合体のみ、IL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のNK増殖(細胞数)を示す棒グラフである。
図5Bは、濃度の関数として、IL-15/IL-15Rα複合体のみおよびIL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のNK増殖(細胞数)を示す折れ線グラフである。
図5Cは、濃度の関数として、IL-15/IL-15Rα複合体のみおよびIL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子による処置後のIFN-γ(ng/ml)を示す折れ線グラフである。
【0023】
【
図6】
図6は、PBS(-○-)、ナノ粒子のみ(-●-)、IL-15/IL-15Rα複合体のみ(--□--)、IL-15/IL-15Rα複合体装飾PLGAナノ粒子(-□-)、およびOvaをカプセル化しているIL-15/IL-15Rα複合体装飾ナノ粒子(-■-)により処置したB16.Ovaマウス(マウスにメラノーマ株由来を注射、これらの細胞はオバルブミン表面抗原(OVA)を有する)のある期間にわたる生存パーセントを示すKaplan Meier生存曲線である。
【0024】
【
図7】
図7は、RGDペプチドにより装飾し、SB505124をカプセル化するPLGA-PEGナノ粒子の形成および腫瘍細胞に対するその提唱される作用メカニズムを示す図である。
【0025】
【
図8】
図8は、下記の実施例6において使用されるマウス腫瘍モデルを例証する図である。B16F10メラノーマ腫瘍細胞(500,000細胞)を、0日目にC57BL/6マウスの尾静脈に注射し、後に、溶液中のSB505124およびRGDまたはPLGA-PEGナノ粒子上に負荷した一方もしくは両方の薬剤をIV注射した。マウスを屠殺し、肺を収集し、腫瘍結節を数えた。
【0026】
【
図9】
図9Aは、
図8のアッセイに従って処置したマウスについての、ある期間にわたる腫瘍容積×10
3(mm
3)を示す棒グラフである。コントロール(-○-)、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD(-□-)、SB505124負荷PLGA-PEGナノ粒子(SB/NP -Δ-)、RGD装飾ナノ粒子(NP-RGD(-▽-))、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD(-◆-))。
図9Bは、
図8のアッセイに従って処置したマウスのある期間にわたる生存パーセントを示すKaplan Meier生存曲線である。コントロール(-○-)、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD(-□-)、SB505124負荷ナノ粒子(SB/NP -Δ-)、RGD装飾ナノ粒子(NP-RGD(-▽-))、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(-◆-)。
図9Cは、ナノ粒子(-○-)およびRGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD(-■-))の半減期を示す折れ線グラフである。
【0027】
【
図10-1】
図10Aは、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD)、SB505124負荷PLGA-PEGナノ粒子(SB/NP)、RGD装飾ナノ粒子(NP-RGD)、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD)による処置後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の数を示すドットプロットである。
図10Bは、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD (-○-))またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD (-■-))により処置したマウスのある期間にわたる生存パーセントを示すKaplan Meier生存曲線である。
図10Cは、SB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD)、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD)、SB505124負荷ナノ粒子(SB/NP)、またはTGF-βによる処置後の浸潤細胞の数を示すドットプロットである。エフェクター細胞(NK、CD8+T細胞、CD4+T細胞)および調節性T細胞(CD4+FOXP3+CD25+)細胞をここでアッセイした。
図10Dは、TGF-β、可溶性SB505124およびRGD、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子により処置した細胞の遊走(コントロールのうちの%)を示す棒グラフである。内皮間葉転換(transition from endothelial to mesencyhmal phenotypes)(EMT)で知られている癌細胞(B16F10メラノーマ細胞株)を、TGF-bの存在下でおよびTGF-b阻害剤を負荷したPLGA-PEG NPを追加してここでアッセイし、インテグリンを過剰発現する癌細胞に向けた。
【
図10-2】
図10Aは、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD)、SB505124負荷PLGA-PEGナノ粒子(SB/NP)、RGD装飾ナノ粒子(NP-RGD)、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD)による処置後のマウス腫瘍モデルにおける腫瘍の数を示すドットプロットである。
図10Bは、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD (-○-))またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD (-■-))により処置したマウスのある期間にわたる生存パーセントを示すKaplan Meier生存曲線である。
図10Cは、SB505124負荷RGD装飾ナノ粒子(SB/NP-RGD)、可溶性SB505124およびRGD(Sol SB+Sol RGD)、SB505124負荷ナノ粒子(SB/NP)、またはTGF-βによる処置後の浸潤細胞の数を示すドットプロットである。エフェクター細胞(NK、CD8+T細胞、CD4+T細胞)および調節性T細胞(CD4+FOXP3+CD25+)細胞をここでアッセイした。
図10Dは、TGF-β、可溶性SB505124およびRGD、またはSB505124負荷RGD装飾ナノ粒子により処置した細胞の遊走(コントロールのうちの%)を示す棒グラフである。内皮間葉転換(transition from endothelial to mesencyhmal phenotypes)(EMT)で知られている癌細胞(B16F10メラノーマ細胞株)を、TGF-bの存在下でおよびTGF-b阻害剤を負荷したPLGA-PEG NPを追加してここでアッセイし、インテグリンを過剰発現する癌細胞に向けた。
【0028】
【
図11】
図11Aは、下記の実施例において使用されるマウス腫瘍モデルを例証する図である。B16F10メラノーマ腫瘍細胞を、-10日目にC57BL/6マウスの尾静脈に注射した。0日目に、マウスに、溶液中のロサルタンおよびRGDをまたはPLGA-PEGナノ粒子上に負荷した一方もしくは両方の薬剤をIV注射した。その後、マウスを屠殺し、腫瘍結節を数えた。
図11Bは、
図11Aのアッセイに従って、可溶性ロサルタンおよびRGD(Sol Los+Sol RGD(-○-)、ロサルタン負荷ナノ粒子(Los/NP -Δ-)、またはロサルタン負荷RGD装飾ナノ粒子(Los/NP-RGD(-▲-))により処置した動物におけるある期間にわたる腫瘍容積×10
3(mm
3)を示す折れ線グラフである。
図11Cは、
図11Aのアッセイに従って、可溶性ロサルタンおよびRGD(Sol Los+Sol RGD(-○-)、ロサルタン負荷ナノ粒子(Los/NP -Δ-)、またはロサルタン負荷RGD装飾ナノ粒子(Los/NP-RGD(-▲-))により処置したマウスのある期間にわたる生存パーセントを示すKaplan Meier生存曲線である。
【0029】
【
図12】
図12は、4日間の、様々な濃度(125μg/ml、62.5μg/ml、31μg/ml、15μg/ml)での、空(オープンバー)またはMHC-II Ova提示複合体を表示するIL-12カプセル化PLGAナノ粒子(クローズドバー)による単離CD4+OT-II(Ova特異的)細胞の処置後のIFNγ(ng/ml)レベルを示す棒グラフである。
【0030】
【
図13-1】
図13Aは、可溶性IL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART-1抗原またはIL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART抗原によりパルスした(pulse)樹状細胞と比較した、ヒトPBLCから単離し、HLA-A2との関連でメラノーマ抗原MART-1を含有するPLGAナノ粒子により処置したCD8+T細胞の増加倍数を示す棒グラフである。それぞれの処置グループの結果を、0、7、14、21、および28日目(左から右に)に示す。
図13Bは、可溶性IL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART-1抗原またはIL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART抗原によりパルスした樹状細胞と比較した、HLA-A2との関連でメラノーマ抗原MART-1を含有するナノ粒子による処置後の四量体ポジティブCD8+T細胞%を示す棒グラフである。それぞれの処置グループの結果を、0、7、14、21、および28日目(左から右に)に示す。
【
図13-2】
図13Aは、可溶性IL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART-1抗原またはIL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART抗原によりパルスした(pulse)樹状細胞と比較した、ヒトPBLCから単離し、HLA-A2との関連でメラノーマ抗原MART-1を含有するPLGAナノ粒子により処置したCD8+T細胞の増加倍数を示す棒グラフである。それぞれの処置グループの結果を、0、7、14、21、および28日目(左から右に)に示す。
図13Bは、可溶性IL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART-1抗原またはIL-2(0.1ng/mlもしくは10ng/ml)プラスMART抗原によりパルスした樹状細胞と比較した、HLA-A2との関連でメラノーマ抗原MART-1を含有するナノ粒子による処置後の四量体ポジティブCD8+T細胞%を示す棒グラフである。それぞれの処置グループの結果を、0、7、14、21、および28日目(左から右に)に示す。
【0031】
【
図14】
図14は、マウス転移モデルにおけるB16F10マウスメラノーマに対して試験した様々な処置の組み合わせおよびレジメンの効果を示す散布図を示す図である。「IMM1」は、ロサルタンおよびIL-2を負荷したナノリポゲルを指し、「PD1」は、アンタゴニスティック抗PD-1抗体を指し、「Yervoy」は、アンタゴニスティック抗CTLA4抗体を指し、「Los-NLG」は、ロサルタンを負荷したナノリポゲルを指し、「IL-2」は、遊離または可溶性IL-2を指す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
I.定義
「ナノリポゲル」(nanolipogel)は、本明細書中で使用される場合、単層または二層であり得るリポソームシェル内に、ホスト分子を含むことができるポリマーマトリクスコアを有し、任意選択的にコアとシェルが架橋しているコア-シェルナノ粒子をいう。
【0033】
「ホスト分子」は、本明細書中で使用される場合、活性薬剤と可逆的に会合して複合体を形成する分子または材料をいう。特定の実施形態では、ホストは、活性薬剤と包接複合体を形成する分子である。包接複合体は、活性薬剤(すなわち、ゲスト)または活性薬剤の一部が別の分子、分子群、または材料(すなわち、ホスト)の空隙内に挿入された場合に形成される。ホストは、小分子、オリゴマー、ポリマー、またはその組み合わせであり得る。例示的なホストには、ポリサッカリド(アミロース、シクロデキストリン、および複数のアルドース環を含む他の環状またはらせん状の化合物(例えば、モノサッカリド(グルコース、フルクトース、およびガラクトースなど)の1,4結合および1,6結合を介して形成された化合物)など)およびジサッカリド(スクロース、マルトース、およびラクトースなど)が含まれる。他の例示的なホスト化合物には、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、イオン交換樹脂、カリックスアレーン、バリノマイシン、ナイジェリシン、カテナン、ポリカテナン、カルセランド、ククルビツリル、およびスフェランドが含まれる。
【0034】
「小分子」は、本明細書中で使用される場合、約2000g/mol未満、より好ましくは約1500g/mol未満、最も好ましくは約1200g/mol未満の分子量を有する分子をいう。
【0035】
「ヒドロゲル」は、本明細書中で使用される場合、共有結合架橋または非共有結合架橋によって共に保持された高分子の三次元網目構造から形成された水膨潤性ポリマーマトリクスをいう。これは相当量(重量)の水を吸収してゲルを形成することができる。
【0036】
「ナノ粒子」は、本明細書中で使用される場合、一般に、直径が約10nmから約1ミクロンまで(未満)、好ましくは100nm~約1ミクロンの粒子をいう。粒子は任意の形状を有し得る。球状のナノ粒子を、一般に、「ナノスフェア」という。
【0037】
「分子量」は、本明細書中で使用される場合、一般に、特別の規定がない限り、バルクのポリマーの相対平均鎖長をいう。実際には、分子量を、種々の方法(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)または細管式粘度測定(capillary viscometry)が含まれる)を使用して推定または特徴づけることができる。GPC分子量を、数平均分子量(Mn)と対照的な重量平均分子量(Mw)として報告する。細管式粘度測定により、特定の一連の濃度、温度、および溶媒条件を使用して希釈ポリマー溶液から決定した固有粘度として分子量が推定される。
【0038】
「平均粒径」は、本明細書中で使用される場合、一般に、粒子集団中の粒子の統計的平均粒径(直径)をいう。本質的に球状の粒子の直径は、物理的直径または流体力学直径をいうことができる。非球状粒子の直径は、優先的に、流体力学直径をいうことができる。本明細書中で使用される場合、非球状粒子の直径は、粒子表面上の2点間の最長の直線距離をいうことができる。平均粒径を、当該分野で公知の方法(動的光散乱など)を使用して測定することができる。
【0039】
「単分散」および「均一サイズ分布」は、本明細書中で互換的に使用され、全粒子が同一またはほぼ同一のサイズであるナノ粒子または微粒子の集団を説明する。本明細書中で使用される場合、単分散分布は、分布の90%がメジアン粒径の15%以内、より好ましくはメジアン粒径の10%以内、最も好ましくはメジアン粒径の5%以内にある粒子分布をいう。
【0040】
「PD-1アンタゴニスト」は、本明細書中で使用される場合、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、DC、およびマクロファージの表面上に見つけられるPD-1によって媒介される阻害性シグナル伝達を減弱する任意の分子を意味する。そのようなアンタゴニストは、T細胞上のPD-1分子によって生成されるいかなる阻害性シグナルも破壊する分子を含む。したがって、PD-1アンタゴニストは、PD-1受容体シグナル伝達経路を通しての阻害性シグナル伝達を阻害する、低下させる、停止する、他の場合には低下させる分子とすることができる。そのような減少が生じてもよく、ここで、(i)PD-1アンタゴニストが、PD-1受容体に結合し、シグナル伝達を引き起こすことなく、阻害性シグナル伝達を低下させるか、もしくはブロックするか;(ii)PD-1アンタゴニストが、PD-1受容体のリガンド(例えば、アゴニスト)に結合し、受容体へのリガンドの結合を妨げるか(例えば、前記アゴニストはB7-H1である);(iii)PD-1アンタゴニストが、阻害されなかった場合、PD-1阻害性シグナル伝達を刺激するか、もしくは他の場合には促進する結果をもたらす調節鎖の一部である分子に結合するか、もしくは他の場合にはその活性を阻害するか;または(iv)PD-1アンタゴニストが、とりわけ、PD-1をコードする1つもしくはそれを超える遺伝子または1つもしくはそれを超えるその自然のリガンドの発現を低下させるか、もしくは停止することによって、PD-1受容体の発現もしくはそのリガンドの発現を阻害する。したがって、PD-1アンタゴニストは、PD-1阻害性シグナル伝達の減少に影響を与える分子とすることができ、それによって、1つまたはそれを超える抗原に対するT細胞応答を増加させる。
【0041】
「CTLA4アンタゴニスト」は、本明細書中で使用される場合、T細胞反応のCTLA4媒介性の阻害を低下させる化合物を意味する。例えば、T細胞において、CTLA4は、B7リガンド(B7-1およびB7-2など)の結合に際して阻害性の刺激を伝える。CTLA4アンタゴニストは、活性化T細胞上のCTLA4への前記リガンドの結合を破壊するものである。
【0042】
II.ナノ粒子組成物
それぞれが送達ビヒクルの中に負荷された、その表面に結合された、および/またはその内に密封された1つまたはそれを超える活性薬剤を含むナノ粒子組成物が、開示される。ナノ粒子組成物は、溶液中で標的細胞に活性薬剤(複数可)を送達することにまさって多くの利点を与える。例えば、ナノ粒子組成物は、ナノ粒子上のまたは中の1つまたはそれを超える局所的な濃度の活性薬剤を提示し、ナノ粒子が標的細胞に遭遇した場合に、結合活性の増加に至る。ナノ粒子組成物はまた、数日間継続することができる調整可能な放出反応速度を有する、活性薬剤の貯蔵物として果たすこともでき、薬剤(複数可)の有効全身半減期および効能を延ばす。
【0043】
典型的に、2つまたはそれを超える活性薬剤が、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。2つまたはそれを超える活性薬剤のそれぞれの相対濃度および送達ビヒクル上または内のそれらの配置は、標的細胞が受けるであろう好ましい投薬量および提示に適応させるために、組成物の製造の間に操作することができる。同じ送達ビヒクルの中へのまたは上への2つまたはそれを超える活性薬剤の負荷は、2つまたはそれを超える活性薬剤が標的細胞に同時にまたは他の場合には標的細胞に所定の順序で提示されることを可能にする。
【0044】
A.送達ビヒクル
ナノ粒子送達ビヒクルは、例えば、ナノリポゲル、ポリマー粒子、シリカ粒子、リポソーム、または多層小胞とすることができる。最も好ましい実施形態では、粒子送達ビヒクルが、ナノスケール組成物であり、これは、例えば、10nm~約1ミクロンであるが、約1ミクロンを含まない。しかし、いくつかの実施形態では、またいくつかの使用については、粒子は、より小さいものまたはより大きいものとすることができる(例えば、微粒子など)ことが十分に理解される。本明細書において開示される組成物は、全体を通して、ナノ粒子組成物のことを指すが、いくつかの実施形態では、またいくつかの使用については、粒子組成物が、ナノ粒子よりも多少大きくなり得ることが十分に理解される。例えば、粒子組成物は、約1ミクロン~約1000ミクロンとすることができる。そのような組成物は、微小粒子組成物と呼ぶことができる。
【0045】
癌を処置するための好ましい実施形態では、粒子が、腫瘍微小環境に到達するのに適したサイズであることが望ましい。特定の実施形態において、粒子が、増強された浸透性および滞留(enhanced permeability and retention)(EPR)の効果によって、腫瘍微小環境および/または腫瘍細胞に到達するのに適したサイズをしている。EPRは、あるサイズの分子(例えば、本明細書において議論される粒子組成物)が、それらが正常組織において蓄積するよりもずっと多く、腫瘍組織において蓄積する傾向がある特性を指す。したがって、癌の処置のための組成物では、送達ビヒクルは、好ましくは、約25nmおよび約500nmを含めて約25nm~約500nmの範囲にある、より好ましくは、約50nmおよび約300nmを含めて約50nm~約300nmの範囲にある。
【0046】
1.ナノリポゲル
ナノリポゲルは、活性薬剤の持続送達のためのリポソームおよびポリマーベースの粒子の両方の利点を組み合わせたコア-シェルナノ粒子である。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルが、送達ビヒクルとしてポリマーナノ粒子よりも好まれてもよい。一般に、ナノリポゲルは、生物製剤(例えば、タンパク質、ペプチド、抗体など)と組み合わせて小分子疎水性薬物を共負荷する、疎水性および親水性薬物、単一または組み合わせのサイトカイン、抗体、成長または抑制性タンパク質/ペプチド因子、または細胞全体、その分泌産物、もしくは細胞溶解物などの生物製剤の組み合わせを共負荷するために、ならびに/または粒子の内部移行および活性薬剤(複数可)の細胞内送達が所望される適用のために、選択されてもよい。これらの実施形態および適用のいくつかでは、ナノリポゲルが、従来のナノ粒子組成物と比較して、高分子および分子の組み合わせについて、負荷効率の増加、徐放性の増加、および治療的な効能の改善を示すことができる。
【0047】
以下でより詳細に考察するように、典型的には、ナノリポゲルの外側シェルは、カーゴを保護し、かつ、生体適合性ならびにターゲティング分子での機能付与のための表面を提供する。外側シェルは、所望するまで(例えば、環境条件または刺激に応答して単分散性の再生可能な粒子集団を作製し、所望の細胞型への内在化を媒介するまで)成分が曝露されないように成分をカプセル化する。デンドリマーまたは他のポリマーであり得る内部コアは、その外側シェルとは個別且つ付加的な機能性を有する。例えば、内側シェルは、薬物、ワクチン、または造影薬を二次的に堆積させ、異なる生理化学的特性を有する成分の粒子への負荷を増大させ、粒子から内容物を調整可能に放出させ、エンドソーム破壊によってDNA/RNA、薬物、および/またはタンパク質のサイトゾルでの利用可能性を増大させ、これらすべてによって薬物効果、抗原提示、およびトランスフェクション/サイレンシングが増強される。
【0048】
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くのホスト分子を含むポリマーマトリクスコアを有する。ポリマーマトリクスは、好ましくは、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメント(ポリエチレングリコールなど)および1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメント(ポリ乳酸など)を含むヒドロゲル(架橋ブロックコポリマーなど)である。1種またはそれより多くのホスト分子(シクロデキストリン、デンドリマー、またはイオン交換樹脂など)は、ポリマーマトリクス内に分散しているか、ポリマーマトリクスに共有結合している。ヒドロゲルコアを、リポソームシェルで包囲する。
【0049】
ナノリポゲルを、その後に制御様式で放出することができる種々の活性薬剤を組み込むように構築することができる。活性薬剤を、ヒドロゲルマトリクス内に分散させるか、1種またはそれより多くのホスト分子と会合させるか、リポソームシェル内に分散させるか、リポソームシェルに共有結合させるか、その組み合わせを行うことができる。活性薬剤を、ナノリポゲル内のこれらの各局所に選択的に組み込むことができる。さらに、これらの各局所からの活性薬剤の放出速度を、独立して調整することができる。これらの各局所が異なる特性(サイズおよび疎水性/親水性が含まれる)を保有するので、これらの各局所に独立して組み込まれた化学的実体はサイズおよび組成が劇的に異なり得る。例えば、ナノリポゲルに、ポリマーマトリクス内に分散させた1種またはそれより多くのタンパク質およびホスト分子と会合した小分子疎水性薬物を負荷することができる。
【0050】
例えば、一定の実施形態では、ナノリポゲルコアは2つ以上の活性薬剤を含む。好ましい実施形態では、ナノリポゲルコアは、好ましくは1種またはそれより多くの適切なホスト分子と会合した小分子疎水性活性薬剤およびポリマーマトリクス内に分散された親水性活性薬剤の両方を含む。特定の実施形態では、親水性活性薬剤は、タンパク質(治療サイトカインなど)である。ホスト分子と会合した疎水性活性薬剤およびポリマーマトリクス内に分散された親水性分子の組み込みにより、2つ以上の活性薬剤(多様な生理化学的特徴(溶解度、疎水性/親水性、分子量、およびその組み合わせなど)を有する2つ以上の活性薬剤が含まれる)を制御放出させることができる。
【0051】
好ましい実施形態では、ホスト分子が、化学療法薬などの低分子量化合物を送達するために使用され、ホスト分子が、低分子量化合物およびサイトカインなどのより大きな親水性化合物の放出を遅らせ、その結果、両方の分子の放出がほぼ同じ期間生じる。
【0052】
このような方法で、ナノリポゲルは、化学的組成および分子量が非常に異なる薬剤を同時徐放することができる。非限定的な例では、ナノリポゲルに、ポリマーマトリクス内に分散させたホスト分子に会合した疎水性の小分子抗原および免疫アジュバント(免疫賦活性タンパク質など)の両方を負荷することができる。これらのナノリポゲルは、免疫応答を至適化するためにアジュバントと共に抗原を徐放することができる。
【0053】
特定の例では、免疫賦活性タンパク質であるインターロイキン-2(IL-2)および低分子量有機分子である2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジン塩酸塩(トランスフォーミング成長因子-β(TGF-β)のインヒビター)のナノリポゲルによって同時持続送達が達成される。この構築物は、マウス系において、単独の薬剤または2種の薬剤の組み合わせの溶液での投与によって達成可能な抗腫瘍応答よりもはるかに優れた抗腫瘍応答が得られる。さらに、ナノリポゲルは、好ましくは、ナノリポゲル内にカプセル化させた1種またはそれより多くの活性薬剤の生体内分布を調整することができる。
【0054】
ナノリポゲルは、典型的には、球状であり、平均粒径は約50nmと約1000nmとの間、より好ましくは約75nmと約300nmとの間、最も好ましくは約90nmと約200nmとの間である。一定の実施形態では、ナノリポゲルの平均粒径は、約100nmと約140nmとの間である。粒子は、非球状であり得る。
【0055】
ナノリポゲルのリポソームシェル中に存在する脂質の性質に依存して、陽性、陰性、または中性付近の表面電荷を有するナノリポゲルを調製することができる。一定の実施形態では、ナノリポゲルは中性付近の表面電荷を保有する。一定の実施形態では、ナノリポゲルのζ電位は、約10mVと約-10mVとの間、より好ましくは約5mVと約-5mVとの間、より好ましくは約3mVと約-3mVとの間、最も好ましくは約2mVと約-2mVとの間である。
【0056】
タンパク質などの疎水性活性薬剤をナノリポゲル表面に共有結合的に接続することができるのに対して、親水性活性薬剤をナノリポゲル表面に共有結合的に接続することができるかリポソームシェル内に分散させることができる。一定の実施形態では、リポソームシェルは1種またはそれより多くのPEG化脂質を含む。これらの場合、1種またはそれより多くの活性薬剤を、リポソームシェル表面上に存在する1種またはそれより多くのPEG鎖の末端に結合体化することができる。
【0057】
別の実施形態では、脂質が、アビジン成分を含むように修飾され、ビオチン化されたターゲティング成分、検出可能な標識、または他の活性薬剤が、アビジン成分にカップリングされるのを、そのように所望される場合に可能にする。
【0058】
特定の実施形態では、1種またはそれより多くの活性薬剤を、所望の生理学的局所で活性薬剤の放出を誘発するために外部の化学的刺激または物理的刺激(周囲pHの変化など)に反応して切断する連結基を介してナノリポゲル表面に共有結合的に接続する。
【0059】
a.コア
ナノリポゲルコアは、ポリマーマトリクスから形成される。このマトリクスは、下記でより詳細に議論するとおりの1種またはそれより多くのホスト分子を含むことができる。ナノリポゲルコアは、1種またはそれより多くの活性薬剤をさらに含むことができる。活性薬剤を、ホスト分子と複合体化するか、ポリマーマトリクスを用いて分散させるか、それらの組み合わせを行うことができる。
【0060】
ナノリポゲルのポリマーマトリクスを、1種またはそれより多くのポリマーまたはコポリマーから形成することができる。ポリマーマトリクスの組成および形態を変動させることにより、種々の制御放出特徴を達成することができ、それにより、中程度の一定用量の1種またはそれより多くの活性薬剤を長期間にわたって送達可能である。
【0061】
ポリマーマトリクスを非生分解性ポリマーまたは生分解性ポリマーから形成することができるが、しかし、好ましくは、ポリマーマトリクスは生分解性である。ポリマーマトリクスを、1日~1年間、より好ましくは7日~26週間、より好ましくは7日~20週間、最も好ましくは7日~16週間の範囲の期間にわたって分解されるように選択することができる。
【0062】
一般に、天然ポリマーを使用することができるが、合成ポリマーが好ましい。代表的なポリマーには、ポリ(ヒドロキシ酸)、例えば、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)、ポリヒドロキシアルカノアート(ポリ3-ヒドロキシブチラートまたはポリ4-ヒドロキシブチラートなど);ポリカプロラクトン;ポリ(オルトエステル);ポリ酸無水物;ポリ(ホスファゼン);ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン);ポリ(グリコリド-co-カプロラクトン);ポリカーボネート(チロシンポリカーボネートなど);ポリアミド(合成および天然のポリアミドが含まれる)、ポリペプチド、およびポリ(アミノ酸);ポリエステルアミド;他の生体適合性ポリエステル;ポリ(ジオキサノン);ポリ(アルキレンアルキラート);親水性ポリエーテル;ポリウレタン;ポリエーテルエステル;ポリアセタール;ポリシアノアクリラート;ポリシロキサン;ポリ(オキシエチレン)/ポリ(オキシプロピレン)コポリマー;ポリケタール;ポリホスファート;ポリヒドロキシバレラート;ポリアルキレンオキサラート;ポリアルキレンスクシナート;ポリ(マレイン酸)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン;ポリ(アルキレンオキシド)(ポリエチレングリコール(PEG)など);誘導体化セルロース(アルキルセルロース(例えば、メチルセルロース)、ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロースなど)、アクリル酸、メタクリル酸のポリマーまたはそのコポリマーもしくは誘導体(エステル、ポリ(メチルメタクリラート)、ポリ(エチルメタクリラート)、ポリ(ブチルメタクリラート)、ポリ(イソブチルメタクリラート)、ポリ(ヘキシルメタクリラート)、ポリ(イソデシルメタクリラート)、ポリ(ラウリルメタクリラート)、ポリ(フェニルメタクリラート)、ポリ(メチルアクリラート)、ポリ(イソプロピルアクリラート)、ポリ(イソブチルアクリラート)、およびポリ(オクタデシルアクリラート)(本明細書中で集合的に「ポリアクリル酸)と呼ばれる)が含まれる)、ならびにその誘導体、コポリマー、およびブレンドが含まれる。
【0063】
本明細書中で使用される場合、「誘導体」には、化学基の置換、付加、および当業者によって日常的に作製される上記のポリマー骨格への他の修飾を有するポリマーが含まれる。天然ポリマー(タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、プロラミン(ゼインなど)など)およびポリサッカリド(アルギナートおよびペクチンなど)が含まれる)を、ポリマーマトリクスに組み込むこともできる。種々のポリマーを使用してポリマーマトリクスを形成することができるが、一般に、得られたポリマーマトリクスはヒドロゲルであろう。一定の例では、ポリマーマトリクスが天然ポリマーを含む場合、天然ポリマーは、加水分解によって分解されるバイオポリマー(ポリヒドロキシアルカノアートなど)である。
【0064】
好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスは、1種またはそれより多くの架橋性ポリマーを含む。好ましくは、架橋性ポリマーは、ナノリポゲル形成後にポリマーマトリクスを架橋可能な1種またはそれより多くの光重合性基を含む。適切な光重合性基の例には、ビニル基、アクリラート基、メタクリラート基、およびアクリルアミド基が含まれる。存在する場合、光重合性基を、架橋性ポリマーの骨格内、架橋性ポリマーの側鎖のうちの1つ以上内、架橋性ポリマーの末端の1つ以上で、またはその組み合わせに組み込むことができる。
【0065】
ポリマーマトリクスを、特定の適用に最適な特性(薬物放出速度が含まれる)を有するナノリポゲルを形成するための種々の分子量を有するポリマーから形成することができる。一般に、ポリマーマトリクスを構成するポリマーの平均分子量は約500Daと50kDaとの間の範囲にわたる。ポリマーマトリクスを非架橋性ポリマーから形成する場合、ポリマーの平均分子量は、典型的には、約1kDaと約50kDaとの間、より好ましくは約1kDaと約70kDaとの間、最も好ましくは約5kDaと約50kDaとの間の範囲である。ポリマーマトリクスを架橋性ポリマーから形成する場合、ポリマーは、典型的には、約500Daと約25kDaとの間、より好ましくは約1kDaと約10kDaとの間、最も好ましくは約3kDaと約6kDaとの間の範囲のより低い平均分子量を有する。特定の実施形態では、ポリマーマトリクスを、平均分子量が約5kDaの架橋性ポリマーから形成する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスを、ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーまたは1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメントを含むブロックコポリマーから形成する。ポリ(アルキレンオキシド)ポリマーまたはポリ(アルキレンオキシド)ポリマーセグメントは、8と500との間の反復単位、より好ましくは40と300との間の反復単位、最も好ましくは50と150との間の反復単位を含むことができる。適切なポリ(アルキレンオキシド)には、ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシドまたはPEGとも呼ばれる)、ポリプロピレン1,2-グリコール、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリプロピレン1,3-グリコール、およびそのコポリマーが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、ポリマーマトリクスを、脂肪族ポリエステルまたは1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメントを含むブロックコポリマーから形成する。好ましくは、ポリエステルまたはポリエステルセグメントは、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)PGA、またはポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)である。
【0068】
好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスを、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメント、1種またはそれより多くの脂肪族ポリエステルセグメント、および任意選択的な1種またはそれより多くの光重合性基を含むブロックコポリマーから形成する。これらの場合、1種またはそれより多くのポリ(アルキレンオキシド)セグメントは、得られたポリマーマトリクスが適切なヒドロゲルを形成するようにポリマーに必要な親水性を付与する一方で、ポリエステルセグメントは調整可能な疎水性/親水性および/または所望のin vivo分解特徴を有するポリマーマトリクスを提供する。
【0069】
ポリエステルセグメントの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(純粋なPGAの場合)から数ヶ月(純粋なPLAの場合)まで変化させることができ、ポリエステルセグメント中のPLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作することができる。さらに、ポリ(アルキレンオキシド)(PEGなど)および脂肪族ポリエステル(PGA、PLA、およびPLGAなど)はヒトでの使用の安全性が確立されており、これらの材料はヒトへの臨床適用(薬物送達系が含まれる)において30年を超えて使用されている。
【0070】
一定の実施形態では、ポリマーマトリクスを、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメント、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントのいずれかの末端に結合した隣接脂肪族ポリエステルセグメント、および1種またはそれより多くの光重合性基を含むトリブロックコポリマーから形成する。好ましくは、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントはPEGであり、脂肪族ポリエステルセグメントは、PGA、PLA、またはPLGAである。
【0071】
一般に、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、隣接ポリエステルセグメントの平均分子量より高い。一定の実施形態では、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも3倍、より好ましくは1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも5倍、最も好ましくは1つの隣接ポリエステルセグメントの平均分子量の少なくとも10倍である。
【0072】
いくつかの場合、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は、約500Daと約10,000Daとの間、より好ましくは約1,000Daと約7,000Daとの間、最も好ましくは約2,500Daと約5,000Daとの間の範囲である。特定の実施形態では、中心ポリ(アルキレンオキシド)セグメントの平均分子量は約4,000Daである。典型的には、各隣接ポリエステルセグメントの平均分子量は、約100Daと約3,500Daとの間、より好ましくは約100Daと約1,000Daとの間、最も好ましくは約100Daと約500Daとの間の範囲である。
【0073】
1つの好ましい実施形態では、ポリマーマトリクスを、以下:
【化1】
に示すトリブロックコポリマーから形成し、式中、mおよびnは、それぞれ独立して、1と500との間、より好ましくは10と150との間の整数である。
【0074】
好ましい天然ポリマーの例には、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、およびプロラミン(例えば、ゼイン)など)およびポリサッカリド(アルギナート、セルロース誘導体、およびポリヒドロキシアルカノアート(例えば、ポリヒドロキシブチラート)など)が含まれる。微粒子のin vivo安定性を、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合したポリ(ラクチド-co-グリコリド)などのポリマーの使用によって生成中に調整することができる。PEGを外面上に曝露する場合、PEGは、PEGの親水性によってこれらの材料が循環する時間を増大させることができる。
【0075】
好ましい非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセタート、ポリ(メト)アクリル酸、ポリアミド、コポリマー、およびその混合物が含まれる。
【0076】
マトリクスを、伝統的なイオン性ゲル化技術によって生成されたゲル型ポリマー(アルギナートなど)から作製することもできる。ポリマーを最初に水溶液に溶解し、硫酸バリウムまたはいくつかの生物活性剤と混合し、次いで、いくつかの場合に液滴を分離するために窒素ガス流を使用する微小滴形成デバイスによって押し出す。ゆっくり撹拌させた(およそ100~170RPM)イオン性硬化浴を、形成された微小滴を捕捉するために押し出しデバイス下に配置する。微粒子を、十分な時間でゲル化させるために浴中で20~30分間インキュベートする。微粒子のサイズを、種々のサイズの押出機の使用または窒素ガスの流量またはポリマー溶液の流量のいずれかの変化によって制御する。キトサン微粒子を、ポリマーの酸性溶液への溶解およびトリホスファートとの架橋によって調製することができる。カルボキシメチルセルロース(CMC)微粒子を、酸溶液へのポリマーの溶解および鉛イオンでの微粒子の沈殿によって調製することができる。負に荷電したポリマー(例えば、アルギナート、CMC)の場合、異なる分子量の正に荷電したリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)を、イオン結合させることができる。
【0077】
おそらく、脂肪族ポリエステル、特に、疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、より親水性のポリ(グリコール酸)PGAおよびそのコポリマーであるポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)が最も広く使用されている。これらのポリマーの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化させることができ、PLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作される。第2に、PLGAならびにそのホモポリマーPGAおよびPLAの生理学的適合性は、ヒトでの使用の安全性が確立されており、これらの材料は種々のヒトへの臨床適用(薬物送達系が含まれる)において30年を超える歴史がある。PLGAナノ粒子を、受動的または能動的なターゲティングのいずれかによって薬物の薬物動態学および標的組織への生体内分布を改善する種々の方法で処方することができる。微粒子を、カプセル化または結合された分子が数日から数週間にわたって放出されるようにデザインする。放出持続時間に影響を及ぼす要因には、周辺媒質のpH(PLGAの酸触媒加水分解に起因するpH5およびそれ未満で放出速度がより早い)およびポリマー組成が含まれる。脂肪族ポリエステルは疎水性が異なり、それによって分解速度に影響を及ぼす。特に、疎水性ポリ(乳酸)(PLA)、より親水性の高いポリ(グリコール酸)PGA、およびそのコポリマーであるポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)は、種々の放出速度を有する。これらのポリマーの分解速度、しばしば対応する薬物放出速度を、数日(PGA)から数ヶ月(PLA)まで変化させることができ、この速度はPLAのPGAに対する比を変化させることによって容易に操作される。
【0078】
b.シェル成分
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くの同心円状の脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。シェルは、1種またはそれより多くの活性薬剤、ターゲティング分子、またはその組み合わせをさらに含むことができる。
【0079】
ナノリポゲルは、1種またはそれより多くの同心円状の脂質単層または脂質二重層から構成されるリポソームシェルを含む。リポソームシェルの組成を、in vivoでの1種またはそれより多くの活性薬剤の放出速度に影響を及ぼすように変化させることができる。脂質を、必要に応じて共有結合的に架橋させてin vivo薬物放出を変更することもできる。
【0080】
脂質シェルを、単一の脂質二重層(すなわち、シェルは単層であり得る)またはいくつかの同心円状の脂質二重層(すなわち、シェルは多層であり得る)から形成することができる。脂質シェルを単一の脂質から形成することができるが、好ましい実施形態では、脂質シェルを、1つを超える脂質の組み合わせから形成する。脂質は、生理学的pHで中性、アニオン性、またはカチオン性であり得る。
【0081】
適切な中性およびアニオン性の脂質には、ステロールおよび脂質(コレステロール、リン脂質、リゾ脂質、リゾリン脂質、およびスフィンゴ脂質など)が含まれる。中性およびアニオン性の脂質には、ホスファチジルコリン(PC)(卵PC、ダイズPCなど)(1,2-ジアシル-グリセロ-3-ホスホコリンが含まれる);ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール(PI);糖脂質;スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリンなど);スフィンゴ糖脂質(1-セラミジルグルコシドとしても公知)(セラミドガラクトピラノシド、ガングリオシド、およびセレブロシドなど);脂肪酸、カルボン酸基を含むステロール(コレステロールなど)、またはその誘導体;および1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミンまたは1,2-ジオレオリルグリセリルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジヘキサデシルホスホエタノールアミン(DHPE)、1,2-ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、1,2-ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、および1,2-ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)が含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。これらの脂質の天然の誘導体(例えば、組織由来のL-α-ホスファチジル:卵黄、心臓、脳、肝臓、ダイズ)および/または合成の誘導体(例えば、飽和および不飽和の1,2-ジアシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1-アシル-2-アシル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン、1,2-ジヘプタノイル-SN-グリセロ-3-ホスホコリン)も適切である。
【0082】
適切なカチオン性脂質には、例えば、メチル硫酸塩として、TAP脂質とも呼ばれるN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウム塩が含まれる。適切なTAP脂質には、DOTAP(ジオレオイル-)、DMTAP(ジミリストイル-)、DPTAP(ジパルミトイル-)、およびDSTAP(ジステアロイル-)が含まれるが、これらに限定されない。他の適切なカチオン性脂質には、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、1,2-ジアシルオキシ-3-トリメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオロイルオキシ)プロピル]-Ν,Ν-ジメチルアミン(DODAP)、1,2-ジアシルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、N-[1-(2,3-ジオレイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、1,2-ジアルキルオキシ-3-ジメチルアンモニウムプロパン、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(DOGS)、3-[N-(N’,N’-ジメチルアミノ-エタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol);2,3-ジオレオイルオキシ-N-(2-(スペルミンカルボキサミド)-エチル)-N,N-ジメチル-1-プロパンアミニウムトリフルオロ-アセタート(DOSPA)、β-アラニルコレステロール、セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)、ジC14-アミジン、N-tert-ブチル-N’-テトラデシル-3-テトラデシルアミノ-プロピオンアミジン、N-(α-トリメチルアンモニオアセチル)ジドデシル-D-グルタマートクロリド(TMAG)、ジテトラデカノイル-N-(トリメチルアンモニオ-アセチル)ジエタノールアミンクロリド、1,3-ジオレオイルオキシ-2-(6-カルボキシ-スペルミル)-プロピルアミド(DOSPER)、およびN,N,N’,N’-テトラメチル-、N’-ビス(2-ヒドロキシルエチル)-2,3-ジオレオイルオキシ-1,4-ブタンジアンモニウムヨージド、1-[2-(アシルオキシ)エチル]2-アルキル(アルケニル)-3-(2-ヒドロキシエチル)-イミダゾリニウムクロリド誘導体(1-[2-(9(Z)-オクタデセノイルオキシ)エチル]-2-(8(Z)-ヘプタデセニル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DOTIM)および1-[2-(ヘキサデカノイルオキシ)エチル]-2-ペンタデシル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロリド(DPTIM)など)、および第四級アミン上にヒドロキシアルキル部分を含む2,3-ジアルキルオキシプロピル第四級アンモニウム誘導体(例えば、1,2-ジオレオイル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORI)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DORIE)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル(dimetyl)-ヒドロキシプロピルアンモニウムブロミド(DORIE-HP)、1,2-ジオレイル-オキシ-プロピル-3-ジメチル-ヒドロキシブチルアンモニウムブロミド(DORIE-HB)、1,2-ジオレイルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシペンチルアンモニウムブロミド(DORIE-Hpe)、1,2-ジミリスチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシルエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2-ジパルミチルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DPRIE)、および1,2-ジステリルオキシプロピル-3-ジメチル-ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DSRIE))が含まれる。
【0083】
他の適切な脂質には、上記の中性、アニオン性、およびカチオン性の脂質のPEG化誘導体が含まれる。1種またはそれより多くのPEG化脂質誘導体の脂質シェルへの組み込みにより、その表面上にポリエチレングリコール鎖を示すナノリポゲルを得ることができる。得られたナノリポゲルは、その表面上にPEG鎖を欠くナノリポゲルと比較してin
vivoでの安定性および循環時間が増大し得る。適切なPEG化脂質の例には、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(ethanlamine)-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG)(DSPE PEG(分子量2000)およびDSPE
PEG(分子量5000)が含まれる)、ジパルミトイル-グリセロ-スクシナートポリエチレングリコール(DPGS-PEG)、ステアリル-ポリエチレングリコール、およびコレステリル-ポリエチレングリコールが含まれる。
【0084】
好ましい実施形態では、脂質シェルを、1つを超える脂質の組み合わせから形成する。一定の実施形態では、脂質シェルを、少なくとも3つの脂質の混合物から形成する。特定の実施形態では、脂質シェルを、ホスファチジルコリン(PC)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、およびコレステロールの混合物から形成する。
【0085】
いくつかの実施形態では、脂質シェルを、1種またはそれより多くのPEG化リン脂質および1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールの混合物から形成する。一定の例では、1種またはそれより多くのPEG化脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は、約1:1~約1:6、より好ましくは約1:2~約1:6、最も好ましくは約1:3~約1:5の範囲である。特定の実施形態では、1種またはそれより多くのPEG化脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は約1:4である。
【0086】
いくつかの実施形態では、脂質シェルを、1種またはそれより多くのリン脂質および1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールの混合物から形成する。一定の例では、1種またはそれより多くのリン脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は、約1:1~約6:1、より好ましくは約2:1~約6:1、最も好ましくは約3:1~約5:1の範囲である。特定の実施形態では、1種またはそれより多くのリン脂質の1種またはそれより多くのさらなる脂質またはステロールに対するモル比は約4:1である。
【0087】
好ましい実施形態では、脂質シェルを、リン脂質(ホスファチジルコリン(PC)など)、PEG化リン脂質(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)など)、およびコレステロールの混合物から形成する。特定の実施形態では、脂質シェルを、3:1:1のモル比のホスファチジルコリン、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000](DSPE-PEG)、およびコレステロールの混合物から形成する。
【0088】
2.ポリマー粒子
ナノ粒子送達ビヒクルはまた、ポリマー粒子、例えば、マイクロまたはナノ粒子とすることもできる。
【0089】
粒子は、生分解性または非生分解性である。
【0090】
ポリマー粒子を製造するために使用することができる例示的なポリマーは、ナノリポゲルのポリマーマトリクス構成成分に関して上記に議論される。
【0091】
好ましい生分解性ポリマーの例には、乳酸およびグリコール酸などのヒドロキシ酸のポリマー、PEGとのコポリマー、ポリ酸無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリウレタン、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリ(ラクチド-co-カプロラクトン)、その混合物およびコポリマーが含まれる。好ましい実施形態では、粒子が、1つまたはそれを超えるポリエステルから構成される。
【0092】
例えば、粒子は、1つまたはそれを超える下記のポリエステルを含有することができる:本明細書において「PGA」と呼ばれるグリコール酸単位ならびに本明細書において総称して「PLA」と呼ばれるポリL-乳酸、ポリD-乳酸、ポリD,L-乳酸、ポリL-ラクチド、ポリD-ラクチド、およびポリD,L-ラクチドなどの乳酸単位ならびに本明細書において総称して「PCL」と呼ばれるポリ(ε-カプロラクトン)などのカプロラクトン単位を含むホモポリマー;ならびに本明細書において総称して「PLGA」と呼ばれる乳酸:グリコール酸の比によって特徴づけられる様々な形態のポリ(乳酸-co-グリコール酸)およびポリ(ラクチド-co-グリコリド)などの、乳酸およびグリコール酸単位を含むコポリマー;ならびにポリアクリラートならびにその誘導体。例示的なポリマーにはまた、本明細書において総称して「PEG化ポリマー」と呼ばれる様々な形態のPLGA-PEGまたはPLA-PEGコポリマーのなどの、ポリエチレングリコール(PEG)および前述のポリエステルのコポリマーが含まれる。一定の実施形態では、PEG領域が、切断可能なリンカーによって「PEG化ポリマー」をもたらすために、ポリマーと共有結合する。アルギナートポリマーもまた、使用されてもよい。
【0093】
いくつかの実施形態では、粒子が、PLGAから構成される。PLGAは、安全な、FDAにより承認されたポリマーである。PLGA粒子は、活性薬剤を保護することができ(つまり、カプセルの材料)、長期の放出を促進し、ターゲティング成分の追加に適用可能であるので、有利である。例えば、粒子のポリマーは、構造:
【化2】
を有することができる(ポリ(乳酸-co-グリコール酸)PLGA+H
2O=調節可能な分解(日~週)。
【0094】
粒子は、ポリマーおよびターゲティング成分、検出可能な標識、または他の活性薬剤の間に、末端の間の連結を含有する、1つまたはそれを超えるポリマーコンジュゲートを含有することができる。例えば、修飾ポリマーは、PLGA-PEG-ホスホナートとすることができる。別の実施例では、粒子が、アビジン成分を含むように修飾され、ビオチン化されたターゲティング成分、検出可能な標識、または他の活性薬剤をそれにカップリングすることができる。
【0095】
好ましい天然ポリマーの例には、タンパク質(アルブミン、コラーゲン、ゼラチン、およびプロラミン(例えば、ゼイン)など)およびポリサッカリド(アルギナート、セルロース誘導体、およびポリヒドロキシアルカノアート(例えば、ポリヒドロキシブチラート)など)が含まれる。粒子のin vivoでの安定性を、ポリエチレングリコール(PEG)と共重合したポリ(ラクチド-co-グリコリド)などのポリマーの使用によって生成中に調整することができる。PEGを外面上に曝露する場合、PEGは、PEGの親水性によってこれらの材料が循環する時間を増大させることができる。
【0096】
好ましい非生分解性ポリマーの例には、エチレンビニルアセタート、ポリ(メト)アクリル酸、ポリアミド、コポリマー、およびその混合物が含まれる。
【0097】
3.他の送達ビヒクル
いくつかの実施形態では、送達ビヒクルが、リポソームである。リポソームは、典型的に、ラメラ相脂質二重層から構成される球状の小胞である。リポソームは、例えば、多層小胞(MLV)、小さな単層リポソーム小胞(SUV)、大きな単層小胞(LUV)、または渦巻形の小胞とすることができる。開示されるナノ粒子組成物の調製に有用であるリポソーム、ミセル、および他の脂質ベースの送達ビヒクルは、当該分野で公知である。例えば、Torchilinら、Advanced Drug Delivery Reviews、58(14):1532-55(2006)を参照のこと。
【0098】
送達ビヒクルはまた、シリカ粒子とすることもできる。開示されるナノ粒子組成物の調製に有用に適したシリカ粒子もまた、当該分野で公知である。例えば、Barbeら、Advanced Materials、16(21):1959-1966(2004)およびArgyoら、Chem.Mater.,26(1):435-451(2014)を参照のこと。
【0099】
B.活性薬剤
本明細書において開示されるナノ粒子組成物には、典型的に、ナノリポゲルまたはマイクロもしくはナノ粒子または他の送達ビヒクルが含まれ、1つまたはそれを超える活性薬剤が、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。いくつかの実施形態では、2つ、3つ、4つ、またはそれを超える活性薬剤が、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。2つまたはそれを超える薬剤は、同じ粒子または異なる粒子の中に負荷することができる、その表面に結合することができる、および/またはその内に密封することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、処方物は、粒子と会合した同じまたは異なる活性薬剤(複数可)を有する2つまたはそれを超える異なるタイプの粒子を含む。
【0101】
処方物は、開示される送達ビヒクルの中に負荷されない、その表面に結合されない、および/またはその内に密封されない1つまたはそれを超える活性薬剤を含むことができる。例えば、そのような活性薬剤は、遊離または可溶性活性薬剤(複数可)または異なるキャリアもしくは剤形をした活性薬剤(複数可)とすることができるが、それにもかかわらず、ナノ粒子組成物と同じ医薬組成物の一部である。
【0102】
下記により詳細に記載されるように、いくつかの実施形態では、開示される方法が、1つまたはそれを超える別々の処方物として対象に投与される1つ、2つ、3つ、またはそれを超えるさらなる活性薬剤と組み合わせて、送達ビヒクルの中に負荷された、その表面に結合された、および/またはその内に密封された1つ、2つ、3つ、またはそれを超える活性薬剤を含むナノ粒子組成物をそれを必要とする対象に投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、さらなる活性薬剤が、対象に同時投与されるが、開示される送達ビヒクルの中に負荷されず、その表面に結合されず、および/またはその内に密封されず、例えば、遊離もしくは可溶性とすることができるまたは異なるキャリアもしくは剤形とすることができる。開示される活性薬剤のいずれも、送達ビヒクルの中に負荷され、その表面に結合され、および/またはその内に密封され、ナノ粒子組成物の一部としてそれを必要とする対象に投与することができる。開示される活性薬剤のいずれも、ナノ粒子組成物と組み合わせて対象に投与される遊離もしくは可溶性または別の投薬単位もしくは剤形の一部として対象に投与することができる。
【0103】
例示的な活性薬剤には、例えば、腫瘍抗原、CD4+T細胞エピトープ、サイトカイン、化学療法剤、放射性核種、小分子シグナル伝達阻害剤、光熱アンテナ(photothermal antenna)、免疫学的危険シグナル伝達分子、他の免疫療法薬(immunotherapeutic)、酵素、抗生物質、抗ウイルス薬、抗寄生動物薬(anti-parasite)(蠕虫、原生動物)、成長因子、成長阻害剤、ホルモン、ホルモンアンタゴニスト、抗体およびその生理活性断片(ヒト化、単鎖、およびキメラ抗体を含む)、抗原およびワクチン処方物(アジュバントを含む)、ペプチド薬剤、抗炎症剤、免疫調節物質(自然免疫系を活性化するための、Toll様受容体に結合するリガンド(CpGオリゴヌクレオチドを含むが、これらに限定されない)、適応免疫系を動員し、かつ最適化する分子、細胞傷害性Tリンパ球、ナチュラルキラー細胞、およびヘルパーT細胞の作用を活性化するまたはアップレギュレートする分子、ならびにサプレッサーまたは調節性T細胞を非活性化するまたはダウンレギュレートする分子を含む)、細胞の中への送達ビヒクルの取込みを促進する薬剤(樹状細胞および他の抗原提示細胞を含む)、ビタミンなどの栄養補助食品、ならびにオリゴヌクレオチド薬剤(DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、低分子干渉RNA、リボザイム、リボヌクレアーゼPについての外部ガイド配列、およびトリプレックス形成剤(triplex forming agent)を含む)が含まれる。
【0104】
好ましい実施形態では、1つまたはそれを超える活性薬剤が、免疫応答刺激剤または免疫抑制をブロックする薬剤などの免疫調節物質である。特に好ましい実施形態では、活性薬剤が、腫瘍チェックポイント遮断または共刺激分子を標的にする。本明細書において開示されるナノ粒子組成物および使用の方法は、同じ薬剤を単独で投与するのと比較して、効能を増加させることができるおよび/または毒性を低下させることができると考えられる。例えば、下記により詳細に議論されるように、組成物および方法のうちのいくつかは、従来の癌の処置(例えば免疫シグナル伝達特性に関連する免疫療法または化学療法)と組み合わせて、ナノ粒子アジュバント(典型的に、小分子薬剤および/または生物学的因子をカプセル化する生分解性ナノ粒子組成物)を同時投与するステップを含む。そのような併用療法およびレジメンは、効能を増加させ、毒性を低下させ、投与時の全体的な用量を低下させることができる。特定の実施形態は、下記により詳細に議論される。
【0105】
1.免疫応答刺激剤
1つまたはそれを超える活性薬剤は、免疫応答刺激剤とすることができる。免疫系は、細胞性(駆動されたT細胞)および体液性(駆動されたB細胞)エレメントから構成される。癌について、強力な細胞媒介性免疫応答のトリガリングは、体液性免疫の活性化よりも有効であることが一般に認められている。細胞ベースの免疫は、抗原提示細胞(APC;樹状細胞がその重要な構成成分である)、細胞障害性T細胞、ナチュラルキラー細胞、およびT-ヘルパー細胞を含む、多くの異なる免疫細胞タイプの相互作用および協力に依存する。したがって、活性薬剤は、細胞(駆動されたT細胞)免疫応答、体液性(駆動されたB細胞)免疫応答、またはその組み合わせを増加させる薬剤とすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、薬剤が、T細胞応答を増強する、T細胞活性を増加させる、T細胞増殖を増加させる、T細胞阻害性シグナルを低下させる、サイトカインの産生を増強する、T細胞分化もしくはエフェクター機能を刺激する、T細胞の生存を促進する、またはその任意の組み合わせである。
【0106】
例示的な免疫調節薬には、サイトカイン、キサンチン、インターロイキン、インターフェロン、オリゴデオキシヌクレオチド、グルカン、成長因子(例えば、TNF、CSF、GM-CSF、およびG-CSF)、ホルモン(エストロゲン(ジエチルスチルベストロール、エストラジオール)、アンドロゲン(テストステロン、ハロテスチン(登録商標)(フルオキシメステロン))、プロゲスチン(メガス(登録商標)(酢酸メゲストロール)、プロベラ(登録商標)(酢酸メドロキシプロゲステロン))、およびコルチコステロイド(プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン)など)が含まれる。
【0107】
いくつかの実施形態では、薬剤が、炎症分子(サイトカイン、メタロプロテアーゼ、または他の分子(IL-1β、TNF-α、TGF-ベータ、IFN-γ、IL-17、IL-6、IL-23、IL-22、IL-21、およびMMPが含まれるが、これらに限定されない)である。
【0108】
a.サイトカイン
好ましい実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤が、炎症促進性サイトカインである。サイトカインは、典型的に、ナノ~ピコモル濃度でホルモン調節因子またはシグナル伝達分子として作用し、細胞シグナル伝達を助ける。サイトカインは、タンパク質、ペプチド、または糖タンパク質とすることができる。例示的なサイトカインには、インターロイキン(例えば、IL-1、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-12、IL-15など)、インターフェロン(例えば、インターフェロン-γ)、マクロファージコロニー刺激因子、顆粒球コロニー刺激因子、腫瘍壊死因子、白血球阻害因子(LIF)、ケモカイン、SDF-1α、およびサイトカインのCXCファミリーが含まれるが、これらに限定されない。
【0109】
b.ケモカイン
別の実施形態では、少なくとも1つの活性薬剤が、炎症促進性ケモカインである。ケモカインは、小さなサイトカインのファミリーである。それらの名称は、近くの応答性の細胞において、定方向の走化性を誘発するそれらの能力に由来する。したがって、それらは、走化性サイトカインである。タンパク質は、小さなサイズ(それらはすべてサイズがおよそ8~10キロダルトンである)およびそれらの3次元の形状を形成するのに重要である、保存された場所における4つのシステイン残基の存在などの共有される構造的な特質に従ってケモカインとして分類される。ケモカインは、4つの主なサブファミリーに分類された:CXC、CC、CX3C、およびXC。ケモカインは、Gプロテイン連結膜貫通受容体(つまりケモカイン受容体)に結合することによって細胞シグナル伝達を誘発する。
【0110】
2.免疫抑制をブロックする薬剤
少なくとも1つの活性薬剤は、免疫抑制をブロックする、阻害する、もしくは低下させる薬剤または免疫抑制の一因となる因子の生物活性をブロックする、阻害する、もしくは低下させる薬剤とすることができる。腫瘍関連免疫抑制が、腫瘍進行の一因に大いになるだけでなく、癌免疫療法の活性を制限する重大な因子のうちの1つでもあることがますます明らかになった。抗原特異的T細胞寛容は、腫瘍エスケープの主なメカニズムのうちの1つであり、腫瘍非応答性の抗原特異的な性質は、癌を有するホストが、他の免疫刺激薬に対してなお応答しながらも、腫瘍特異的な免疫応答を維持することができないことを示す(Willimskyら、Immunol.Rev.,220:102-12(2007)、Wangら Semin Cancer Biol.,16:73-9(2006)、Freyら、Immunol.Rev.,222:192-205(2008)、Nagarajら、Clinical Cancer Research,16(6):1812-23(2010))。
【0111】
a.Tregを排除する薬剤
調節性T細胞(Treg)のコンパートメントにおける不足により、重度の自己免疫性疾患に至るので、調節性T細胞(Treg)は、自己寛容を維持するのに不可欠である。しかし、この重要な機能は、腫瘍免疫監視および抗腫瘍免疫に対するそれらの有害作用と対照をなす。腫瘍および癌患者の血行路内でのTregの増加は、癌の病因および疾患進行に関係し、増殖から特異的な輸送ネットワークに及ぶメカニズムは、それらの蓄積の原因となることが同定された。in vitroでの実験は、シクロオキシゲナーゼ-2、CD70、Gal1、TGF-β、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、および他のまだ同定されていない因子を含む、Treg生成の一因となるいくつかの可溶性または接触依存性腫瘍因子を示す。局所的なTreg増殖の増強またはアポトーシスの低下は、腫瘍Treg数の増加の一因となり得る。したがって、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬剤が、特に腫瘍中でまたは腫瘍の近くで、シクロオキシゲナーゼ-2、CD70、Gal1、TGF-β、もしくはインドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼを低下させる、局所的なTreg増殖を低下させる、および/またはTregアポトーシスを増加させる。
【0112】
Tregが及ぼすアンタゴニスティックな影響を改善するための様々な免疫療法アプローチは、Mougiakakos Adv Cancer Res,107:57-117(2010)、De Rezendeら、Arch.Immunol.Ther.Exp.,58(3):179-90(2010)、およびCuriel、Curr.Opin.Immunol.,20(2):241-246(2008)において概説される。
【0113】
いくつかの実施形態では、薬剤は、Tregを排除するか;Tregの分化、輸送、エフェクター機能、もしくはその組み合わせをブロックするか;エフェクター細胞抑制閾値を上げるか、またはその任意の組み合わせである。Tregを排除するまたはそれらの機能をブロックする例示的な薬剤には、抗CD25抗体、シクロホスファミド、デニロイキンジフチトクス(Ontak、IL-2およびジフテリア毒素を融合するタンパク質)、LMB-2(CD25特異的シュードモナス免疫毒素)、CpG処置、ならびに抗CTLA4抗体が含まれる(Curiel、Curr Opin Immunol.,20(2):241-246(2008))。
【0114】
ターゲティング腫瘍抗原特異的Tregもまた、腫瘍が免疫系を逃れる能力を低下させるのに有効であるかもしれない。腫瘍抗原特異的Tregは、天然に存在し、ワクチン接種によって誘発される。葉酸受容体4発現腫瘍Tregは、抗原特異的な細胞について豊富となり得、癌を有するマウスにおいて、それらが除去されると、免疫媒介性の腫瘍拒絶が改善された。したがって、いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、葉酸受容体4発現腫瘍Tregを標的にする。
【0115】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの薬剤が、TGF-β修飾因子である。潜在型TGF-βが腫瘍細胞から放出された後、TGF-βは、腫瘍細胞の表面上のインテグリンと結合して、潜在型TGF-βの活性化に至る。その結果、腫瘍微小環境におけるTGF-β濃度の増加により、調節性T細胞を動員することによって免疫抑制が支持される(Massayoら、Eur J Clin Med Oncol.,(4):27-32(2013)。
【0116】
i.SB505124
TGF-β分子の上昇は、SB505124(2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジンヒドロクロリド)などのTGF-β阻害剤によって阻害することができる。SB505124(SB-505124としても知られ、すなわち、SBと略される)は、TGF-βI型受容体ALK4、ALK5、およびALK7の選択的阻害剤である(DaCostaら、Mol Pharmacol.65:744-52(2004))。特定の実施形態では、SB505124が、シクロデキストリンなどのホスト分子と複合体を形成する。
【0117】
ii.ロサルタン
別のTGF-β修飾因子は、ロサルタン(COZAAR(登録商標)としても知られている)である。アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとして最もよく知られているロサルタンもまた、TGF-βをダウンレギュレートする(Guoら、Zhonghua
Nei Ke Za Zhi,42:403-8(2003))。ロサルタン(2-ブチル-4-クロロ-1-{[2’-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}-1H-イミダゾール-5-イル)メタノール)は、構造:
【化3】
を有する。
【0118】
ロサルタンは、経口投与後によく吸収され、重要な初回通過代謝を受け、EXP3174と示される5-カルボン酸代謝物質を生成する。この代謝物質は、AT1受容体で長時間作用性(6~8時間)の非競合的アンタゴニストとなり、ロサルタンの薬理学的効果に寄与する。ロサルタンは、任意選択で他の抗高血圧剤と組み合わせて、高血圧症、任意選択で低血糖剤と組み合わせて、糖尿病性ニューロパシー、発作の危険性を減少させるためのヒドロクロロチアジド(HCTZ)と組み合わせて、慢性心不全を含む多くの徴候の処置として同定された。カリウム塩は、12.5、25、50、および100mgの強度を有する錠剤ならびにまた懸濁液については2.5mg/mlの粉剤としても処方されている。HCTZ(Hyzaar)とのロサルタンの併用製品もまた、50mg/12.5mg、100mg/12.5mg、および100mg/25mgの強度を有する錠剤として入手可能である。ロサルタンならびにその医薬品の塩およびイミダゾール誘導体を含む組成物および処方物ならびにその使用の方法は、米国特許第5,138,069号明細書、米国特許第5,153,197号明細書、米国特許第5,128,355号明細書、米国特許第5,155,118号明細書、米国特許第5,210,079号明細書、および米国特許第5,354,867号明細書において議論される。
【0119】
いくつかの実施形態では、ロサルタンまたはその医薬品の塩、イミダゾール誘導体、もしくは代謝物質が、送達ビヒクル、例えばポリマーナノ粒子またはナノリポゲルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。好ましくは、第2の活性薬剤もまた、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。第2の活性薬剤は、第2の免疫調節物質、例えばIL-2とすることができる。特定の実施形態では、PLGAナノ粒子またはナノリポゲルに、ロサルタンおよびIL-2が負荷される。いくつかの実施形態では、送達ビヒクルが、RGDペプチドなどのターゲティング成分を含む。
【0120】
ナノ粒子上にこれらの薬剤を負荷する方法は、それぞれ実施例3および7において下記に記載されるものなどのような方法を含むことができる。粒子は、PLGAナノ粒子、ナノリポゲル、または他の生分解性ポリマーとすることができる。
【0121】
活性薬剤の様々な粒子および/または投薬量の抗腫瘍性の効能を試験する例示的なアッセイでは、動物の後肢にB16F10メラノーマ細胞を接種する。腫瘍成長をモニタリングし、およそ7日後に始めて、腫瘍面積が0.5mm2に到達したら、(a)IL-2およびロサルタンを負荷した5ugのナノ粒子、またはコントロールとして、(b)ブランクの粒子の腫瘍周囲の注射のコースを動物に受けさせる(下記の実施例において記載されるアッセイと同様)。
【0122】
b.骨髄由来サプレッサー細胞を排除する薬剤
骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)は、癌における抗原特異的CD8+T細胞寛容の誘発の原因である抗原提示細胞の主な集団に相当し得る。したがって、いくつかの実施形態では、組成物が、MDSCの数または活性を低下させる薬剤を含む。MDSCを排除するために使用することができる例示的な薬剤には、分化誘導剤(オールトランスレチノイン酸)、化学療法薬物、アミノビスフォスフォネート(aminobiphosphonate)、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、スニチニブ)、サイクロオキシゲナーゼー2阻害剤、ならびにホスホジエステラーゼ-5阻害剤(シルデナフィル(sildanefil))および合成トリテルペノイド(例えば、2-シアノ-3,12-ジオキソオレアナ-1,9(11)-ジエン-28-酸のメチルエステル(CDDO-Meおよびバルドキソロンメチルとも呼ばれる)によるMDSC機能の阻害が含まれるが、これらに限定されない((Nagarajら、Clinical Cancer Research,16(6):1812-23(2010))。
【0123】
c.PD-1アンタゴニスト
いくつかの実施形態では、活性薬剤が、PD-1アンタゴニストである。T細胞の活性化は、通常、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)を介して提示された抗原性ペプチドとのT細胞受容体(TCR)の接触後の抗原特異的なシグナルに依存するが、この反応の程度は、様々な共刺激分子からエミネートされる(eminate)正および負の抗原非依存性シグナルによってコントロールされる。後者は、一般に、CD28/B7ファミリーのメンバーである。反対に、プログラム死-1(PD-1)は、T細胞上で誘発された場合に、負の免疫応答を伝える受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD-1およびそのリガンドのうちの1つ(B7-H1またはB7-DC)の間の接触は、T細胞の増加ならびに/またはT細胞応答の強度および/もしくは期間を減少させる阻害性応答を誘発する。適したPD-1アンタゴニストは、米国特許第8,114,845号明細書、米国特許第8,609,089号明細書、および米国特許第8,709,416号明細書において記載され、PD-1のリガンドに結合し、それをブロックして、PD-1受容体へのリガンドの結合に干渉するもしくはそれを阻害するまたはPD-1受容体に直接結合し、ブロックして、PD-1受容体を通しての阻害性シグナル伝達を誘発しない化合物または薬剤を含む。
【0124】
いくつかの実施形態では、PD-1受容体アンタゴニストが、PD-1受容体に直接結合して、阻害性シグナル伝達を引き起こさず、また、PD-1受容体のリガンドに結合して、PD-1受容体を通してのシグナル伝達を低下させるか、またはリガンドがそれを引き起こすのを阻害する。PD-1受容体に結合し、阻害性シグナルの伝達を引き起こすリガンドの数および/または量を低下させることによって、より少数の細胞しか、PD-1シグナル伝達によって伝えられる負のシグナルによって減弱されず、より頑健な(robust)免疫応答を実現することができる。
【0125】
PD-1シグナル伝達は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によって提示されたペプチド抗原の近傍で、PD-1リガンド(B7-H1またはB7-DCなど)に結合することによって駆動されると考えられる(例えば、Freeman、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A,105:10275-10276(2008)を参照のこと)。したがって、PD-1およびT細胞膜上のTCRの同時の連結を妨げるタンパク質、抗体または小分子もまた、有用なPD-1アンタゴニストである。
【0126】
好ましい実施形態では、PD-1受容体アンタゴニストが、PD-1のリガンドまたはPD-1自体に結合することによってPD-1受容体シグナル伝達を低下させるまたはそれに干渉する小分子アンタゴニストまたは抗体であり、とりわけ、TCRとのPD-1の同時の連結が、そのような結合に続かず、それによって、PD-1受容体を通しての阻害性シグナル伝達を引き起こさない。
【0127】
本発明の方法によって企図される他のPD-1アンタゴニストは、PD-1またはPD-1のリガンドに結合する抗体および他の抗体を含む。
【0128】
適した抗PD-1抗体は、下記の刊行物において記載されるものを含むが、これらに限定されない:
PCT/IL03/00425 (Hardy et al., WO/2003/099196)
PCT/JP2006/309606 (Korman et al., WO/2006/121168)
PCT/US2008/008925 (Li et al., WO/2009/014708)
PCT/JP03/08420 (Honjo et al., WO/2004/004771)
PCT/JP04/00549 (Honjo et al., WO/2004/072286)
PCT/IB2003/006304 (Collins et al., WO/2004/056875)
PCT/US2007/088851 (Ahmed et al., WO/2008/083174)
PCT/US2006/026046 (Korman et al., WO/2007/005874)
PCT/US2008/084923 (Terrett et al., WO/2009/073533)
Berger et al., Clin. Cancer Res., 14:30443051 (2008).
【0129】
抗PD-1抗体の特定の例は、好ましくは3mg/kgの用量で投与されるMDX-1106(Kosak、米国特許出願公開第20070166281号明細書(2007年7月19日公開)第42段落を参照のこと)、ヒト抗PD-1抗体である。
【0130】
例示的な抗B7-H1抗体には、下記の刊行物において記載されるものが含まれるが、これらに限定されない:
PCT/US06/022423(国際公開第2006/133396号パンフレット、2006年12月14日公開)
PCT/US07/088851(国際公開第2008/083174号パンフレット、2008年7月10日公開)
米国特許出願公開第2006/0110383号明細書(2006年5月25日公開)
【0131】
抗B7-H1抗体の特定の例は、MDX-1105(2007年1月11日に公開された国際公開第2007/005874号パンフレット)、ヒト抗-B7-H1抗体である。
【0132】
抗B7-DC抗体については、米国特許第7,411,051号明細書、米国特許第7,052,694号明細書、米国特許第7,390,888号明細書、および米国特許出願公開第2006/0099203号明細書を参照のこと。
【0133】
抗体は、B7-H1などのPD-1のリガンドに結合する抗体に架橋された、PD-1受容体に結合する抗体を含む二重特異性抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、PD-1結合部分が、PD-1受容体を通してのシグナル伝達を低下させるか、または阻害する。
【0134】
他の例示的なPD-1受容体アンタゴニストには、B7-DCポリペプチド、これらは、その相同体および変異体を含み、ならびに前述のもののいずれかの活性断片およびこれらのいずれかを組み込む融合タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。好ましい実施形態では、融合タンパク質が、ヒトIgGなどの抗体のFc部分にカップリングされたB7-DCの可溶性部分を含み、ヒトB7-DCの膜貫通部分のすべてまたは一部を組み込まない。
【0135】
PD-1アンタゴニストはまた、好ましくはマウスまたは霊長動物、好ましくはヒト由来の哺乳動物B7-H1の断片とすることもでき、断片が、PD-1に結合し、ブロックするが、PD-1を通しての阻害性シグナル伝達をもたらさない。断片はまた、融合タンパク質、例えばIg融合タンパク質の一部とすることもできる。
【0136】
他の有用なポリペプチドPD-1アンタゴニストは、PD-1受容体のリガンドに結合するものを含む。これらは、PD-1受容体タンパク質またはその可溶性断片を含み、これは、B7-H1またはB7-DCなどのPD-1リガンドに結合し、内因性PD-1受容体への結合を妨げることができ、それによって阻害性シグナル伝達を妨げる。B7-H1はまた、タンパク質B7.1に結合することも示された(Butteら、Immunity,Vol.27、pp.111-122(2007))。そのような断片はまた、天然のリガンドへの結合を増加させるA99L突然変異などの突然変異を含むPD-1タンパク質の可溶性ECD部分も含む(Molnarら、PNAS,105:10483-10488(2008))。B7-H1リガンドに結合し、内因性PD-1受容体への結合を妨げることができ、それによって阻害性シグナル伝達を妨げるB7-1またはその可溶性断片もまた、有用である。
【0137】
PD-1およびB7-H1アンチセンス核酸、DNAおよびRNAの両方、ならびにsiRNA分子もまた、PD-1アンタゴニストとすることができる。そのようなアンチセンス分子は、T細胞上のPD-1の発現ならびにB7-H1、PD-L1、および/またはPD-L2などのT細胞リガンドの産生を妨げる。例えば、ポリエチレンイミンなどのキャリアと複合体を形成したsiRNA(例えば、長さが約21個のヌクレオチドの、PD-1をコードするまたはPD-1リガンドをコードする遺伝子に対して特異的であり、このオリゴヌクレオチドは容易に市販で購入することができる)(Cubillos-Ruizら、J.Clin.Invest.119(8):2231-2244(2009)を参照のこと。PD-1およびPD-1のリガンドを発現する細胞によって容易に取込まれ、これらの受容体およびリガンドの発現を低下させて、T細胞における阻害性シグナル伝達の減少を実現し、それによってT細胞を活性化する。
【0138】
d.CTLA4アンタゴニスト
免疫応答においてT細胞の効果を媒介するのに有用な他の分子もまた、活性薬剤として企図される。例えば、いくつかの実施形態では、分子が、PD-1ではない免疫応答媒介分子に結合する薬剤である。好ましい実施形態では、分子が、CTLA4のアンタゴニスト、例えばアンタゴニスティック抗CTLA4抗体である。本発明の方法における使用が企図される抗CTLA4抗体の一例は、PCT/US2006/043690(Fischkoffら、国際公開第2007/056539号パンフレット)において記載される抗体を含む。
【0139】
抗PD-1、抗B7-H1、および抗CTLA4抗体についての投薬量は、当該分野で公知であり、0.1~100mg/kgの範囲とすることができ、1~50mg/kgのより狭い範囲が好ましく、10~20mg/kgの範囲がより好ましい。ヒト対象についての適切な用量は、5~15mg/kgであり、10mg/kgの抗体(例えばMDX-1106のようなヒト抗PD-1抗体)が最も好ましい。
【0140】
本発明の方法において有用な抗CTLA4抗体の特定の例は、MDX-010またはMDX-101としても知られているイピリムマブ、約10mg/kgの用量で好ましくは投与されるヒト抗CTLA4抗体、約15mg/kgの用量で好ましくは投与されるトレメリムマブ、ヒト抗CTLA4抗体である。2009年12月にオンラインで公開されたSammartinoら、Clinical Kidney Journal,3(2):135-137(2010)もまた参照のこと。
【0141】
他の実施形態では、アンタゴニストが、小分子である。一連の小さな有機化合物は、B7-1リガンドに結合して、CTLA4への結合を妨げることが示された(Erbeら、J.Biol.Chem.,277:7363-7368(2002)を参照のこと。そのような小さな有機化合物は、単独でまたは抗CTLA4抗体と共に投与して、T細胞の阻害性シグナル伝達を低下させることができた。
【0142】
3.アジュバントおよび抗原
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物が、免疫系を刺激するためにワクチン処方物の一部またはアジュバントとして使用される。いくつかの実施形態では、抗原および/またはアジュバントが、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。いくつかの実施形態では、抗原および/またはアジュバントが、送達ビヒクルの中に負荷された、その表面に結合された、および/またはその内に密封された活性薬剤と組み合わせて投与される。抗原および/またはアジュバントは、粒子から遊離することができる。例えば、抗原および/またはアジュバントは、可溶性とすることができる。
【0143】
これらの抗原はまた、投与後に吸収されてもよい。例えば、NLGは、その場で腫瘍抗原を吸収することができるので、NLGは、免疫刺激薬および/または化学療法薬と共に投与されてもよく、その後、腫瘍細胞が死滅する時に腫瘍抗原を吸収する。ペプチド、タンパク質、およびDNAベースのワクチンを使用して、種々の疾患または状態に対する免疫を誘導することができる。細胞媒介性免疫は、ウイルス感染細胞を検出および破壊するために必要である。最も伝統的なワクチン(例えば、タンパク質ベースのワクチン)は、体液性免疫のみを誘導することができる。DNAベースのワクチンが体液性免疫および細胞媒介性免疫の両方を誘導することができるので、DNAベースのワクチンは、ウイルスまたは寄生虫に対してワクチン接種するための固有の手段である。さらに、DNAベースのワクチンは、潜在的に、伝統的なワクチンより安全である。DNAワクチンは、相対的により安定であり、製造および保存の際の費用効果がより高い。DNAワクチンは、2つの主な成分(DNAキャリア(または送達ビヒクル)および抗原をコードするDNA)からなる。DNAキャリアはDNAを分解から保護し、特定の組織または細胞へのDNA侵入および有効レベルでの発現を容易にすることができる。
【0144】
a.アジュバント
粒子と会合することができる免疫学的アジュバントの例には、TLRリガンド、C型レクチン受容体リガンド、NOD様受容体リガンド、RLRリガンド、およびRAGEリガンドが含まれるが、これらに限定されない。TLRリガンドには、リポ多糖(LPS)およびその誘導体、ならびにリピドAおよびその誘導体(モノホスホリルリピドA(MPL)、グリコピラノシルリピドA、PET-リピドA、および3-O-デスアシル-4’-モノホスホリルリピドAが含まれるが、これらに限定されない)が含まれ得る。特定の実施形態では、免疫学的アジュバントはMPLである。別の実施形態では、免疫学的アジュバントはLPSである。TLRリガンドには、TLR3リガンド(例えば、ポリイノシン酸-ポリシチジル酸(ポリ(I:C))、TLR7リガンド(例えば、イミキモドおよびレシキモド)、およびTLR9リガンドも含まれ得るが、これらに限定されない。
【0145】
b.抗原
抗原は、ペプチド、タンパク質、ポリサッカリド、サッカリド、脂質、核酸、またはその組み合わせとすることができる。抗原は、ウイルス、細菌、寄生動物、植物、原生動物、菌類、組織、または癌もしくは白血病細胞などの形質転換細胞に由来し得、細胞全体またはその免疫原性構成成分、例えば、その細胞壁構成成分または分子構成成分とすることができる。
【0146】
適した抗原は、当該分野で公知であり、商業上の政府のおよび科学的な供給源から入手可能である。一実施形態では、抗原が、不活性化または弱毒化有機体全体である。これらの有機体は、ウイルス、寄生動物、および細菌などの感染性有機体であってもよい。これらの有機体はまた、腫瘍細胞であってもよい。抗原は、腫瘍またはウイルスもしくは細菌供給源に由来する精製されたまたは部分的に精製されたポリペプチドであってもよい。抗原は、異種発現系においてポリペプチド抗原をコードするDNAを発現することによって産生される組み換えポリペプチドとすることができる。抗原は、抗原性タンパク質のすべてまたは一部をコードするDNAとすることができる。DNAは、プラスミドDNAなどのベクターDNAの形態をしていてもよい。
【0147】
抗原は、単一の抗原としてまたは組み合わせて提供されてもよい。抗原はまた、ポリペプチドまたは核酸の複合体混合物として提供されてもよい。
【0148】
i.ウイルス抗原
ウイルス抗原は、下記のウイルスファミリーのいずれか由来のウイルスを含むが、これらに限定されない任意のウイルスから単離することができる:Arenaviridae、Arterivirus、Astroviridae、Baculoviridae、Badnavirus、Barnaviridae、Birnaviridae、Bromoviridae、Bunyaviridae、Caliciviridae、Capillovirus、Carlavirus、Caulimovirus、Circoviridae、Closterovirus、Comoviridae、Coronaviridae(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスなどのCoronavirus)、Corticoviridae、Cystoviridae、Deltavirus、Dianthovirus、Enamovirus、Filoviridae(例えば、マールブルグ病ウイルスおよびエボラウイルス(例えば、ザイール、レストン、コートジボアール、またはスーダン株))、Flaviviridae(例えば、C型肝炎ウイルス、デング熱ウイルス1、デング熱ウイルス2、デング熱ウイルス3、およびデング熱ウイルス4)、Hepadnaviridae、Herpesviridae(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、3、4、5、および6ならびにサイトメガロウイルス)、Hypoviridae、Iridoviridae、Leviviridae、Lipothrixviridae、Microviridae、Orthomyxoviridae(例えば、インフルエンザウイルスAおよびBおよびC)、Papovaviridae、Paramyxoviridae(例えば、麻疹、ムンプス、およびヒト呼吸器合胞体ウイルス)、Parvoviridae、Picornaviridae(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、およびアフトウイルス)、Poxviridae(例えば、ワクシニアおよび天然痘ウイルス)、Reoviridae(例えば、ロタウイルス)、Retroviridae(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)1およびHIV2などのレンチウイルス)、Rhabdoviridae(例えば、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど)、Togaviridae(例えば、風疹ウイルス、デング熱ウイルスなど)、ならびにTotiviridae。適したウイルス抗原はまた、デング熱タンパク質M、デング熱タンパク質E、デング熱D1NS1、デング熱D1NS2、およびデング熱D1NS3のすべてまたは一部を含む。
【0149】
ウイルス抗原は、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、すなわち単純ヘルペス1および2;肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎Dウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)、およびG型肝炎ウイルス(HGV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザ、バリセラゾスター、サイトメガロウイルス(Cytomeglavirus)、エプスタイン-バー、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、馬脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱、およびリンパ球性脈絡髄膜炎などの特定の株に由来してもよい。
【0150】
ii.細菌抗原
細菌抗原は、Actinomyces、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、Hemophilus influenza B型 (HIB)、Hyphomicrobium、Legionella、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、BおよびC、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、およびTreponema、Vibrio、ならびにYersiniaを含むが、これらに限定されない任意の細菌に起源を持つことができる。
【0151】
iii.寄生動物抗原
寄生動物抗原は、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida
tropicalis、Nocardia asteroides、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma
pneumoniae、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanosoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalisおよびSchistosoma mansoniに由来する抗原などであるが、これらに限定されない寄生動物から得ることができる。これらは、スポロゾイト周囲蛋白、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓ステージ抗原、頂端膜関連タンパク質(apical membrane associated protein)、またはメロゾイト表面タンパク質のすべてまたは一部などの、胞子虫抗原、マラリア原虫抗原を含む。
【0152】
iv.アレルゲンおよび環境抗原
抗原は、アレルゲンまたは環境抗原(天然に存在するアレルゲンに由来する抗原(花粉アレルゲン(木、ハーブ、雑草、および牧草花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入抗原、唾液、および毒液アレルゲン)、動物の毛およびフケアレルゲン、ならびに食物アレルゲンなど)など、これらに限定されない)とすることができる。木、草、およびハーブ由来の重要な花粉アレルゲンは、すなわちカバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、シデ(Carpinus)、およびオリーブ(Olea)、スギ(Cryptomeriaand Juniperus)、スズカケノキ(Platanus)を含むFagales、Oleales、Pinales、およびplatanaceaeの分類学上の目、すなわちLolium、Phleum、Poa、Cynodon、Dactylis、Holcus、Phalaris、Secale、およびSorghum属の草を含むPoales目、すなわちAmbrosia、Artemisia、およびParietaria属のハーブを含むAsteralesおよびUrticales目に起源を有する。使用されてもよい他のアレルゲン抗原は、DermatophagoidesおよびEuroglyphus属のイエダニ、貯蔵庫ダニ、例えば、Lepidoglyphys、Glycyphagus、およびTyrophagus由来のアレルゲン、ゴキブリ、カ、およびノミ、例えば、Blatella、Periplaneta、Chironomus、およびCtenocepphalides由来のもの、ネコ、イヌ、およびウマなどの哺乳動物、鳥由来のもの、ハチ(Apidae上科)、スズメバチ(Vespidea上科)、およびアリ(Formicoidae上科)を含むHymenopteraの分類学上の目由来のものなどの、刺すまたは噛む昆虫に起源を有するものなどを含む毒液アレルゲンを含む。使用されてもよいさらに他のアレルゲン抗原は、AlternariaおよびCladosporium属由来のなどの真菌由来の吸入アレルゲンを含む。
【0153】
v.腫瘍抗原
抗原は、アルファ-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、ベータ-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、2、および3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ(Triosephosphate isomeras)、Bage-1、Gage 3、4、5、6、7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、2、3、4、6、10、12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、およびTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel 17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGE)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6およびE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA 19-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29/BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50、CAM43、CD68/KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSなどの腫瘍関連または腫瘍特異的抗原を含むが、これらに限定されない腫瘍抗原とすることができる。
【0154】
4.他の活性薬剤
送達ビヒクルの中に負荷することができる、その表面に結合することができる、および/もしくはその内に密封することができるまたはナノ粒子組成物と組み合わせて投与することができる他の活性薬剤には、治療薬、栄養補助薬(nutritional agent)、診断薬、および予防薬が含まれる。活性薬剤は、小分子の活性薬剤または生体高分子(タンパク質、ポリペプチド、または核酸など)であり得る。適切な小分子活性薬剤には、有機化合物および有機金属化合物が含まれる。小分子活性薬剤は、親水性、疎水性、または両親媒性の化合物であり得る。
【0155】
例示的な診断薬には、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種、X線造影剤、および造影剤が含まれる。
【0156】
一定の実施形態では、送達ビヒクルは1種またはそれより多くの抗癌剤を含む。代表的な抗癌剤には、アルキル化剤(シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、メクロレタミン、シクロホスファミド、クロラムブシル、ダカルバジン、ロムスチン、カルムスチン、プロカルバジン、クロラムブシル、およびイフォスファミドなど)、代謝拮抗物質(フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、フルダラビン、およびフロクスウリジンなど)、抗有糸分裂薬(タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル(docetaxel)など)およびビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、およびビンデシンなど)が含まれる)、アントラサイクリン(ドキソルビシン、ダウノルビシン、バルルビシン、イダルビシン、エピルビシン、およびアクチノマイシン(アクチノマイシンDなど)が含まれる)、細胞傷害性抗生物質(マイトマイシン、プリカマイシン、およびブレオマイシンが含まれる)、トポイソメラーゼインヒビター(カンプトセシン(カンプトセシン、イリノテカン、およびトポテカンなど)およびエピポドフィロトキシンの誘導体(アムサクリン、エトポシド、エトポシドホスファート、およびテニポシドなど)が含まれる)、血管内皮成長因子(VEGF)に対する抗体(ベバシズマブ(アバスチン(登録商標)など)、他の抗VEGF化合物;サリドマイド(サロミド(登録商標))およびその誘導体(レナリドマイド(レブリミド(登録商標))など);エンドスタチン;アンギオスタチン;受容体チロシンキナーゼ(RTK)インヒビター(スニチニブ(スーテント(登録商標))など);チロシンキナーゼインヒビター(ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標))、エルロチニブ(タルセバ(登録商標))、パゾパニブ、アキシチニブ、およびラパチニブなど);トランスフォーミング成長因子-αインヒビターまたはトランスフォーミング成長因子-βインヒビター、および上皮成長因子受容体に対する抗体(パニツムマブ(ベクチビックス(登録商標))およびセツキシマブ(エルビタックス(登録商標)など))が含まれるが、これらに限定されない。
【0157】
好ましい実施形態、特に、癌を処置するための実施形態では、1つまたはそれを超える活性薬剤が、免疫シグナル伝達特性を有する化学療法剤とすることができる。
【0158】
5.ターゲティング成分
1つまたはそれを超えるターゲティング成分(本明細書においてターゲティング分子とも呼ばれる)は、送達ビヒクルの中に負荷することができる、その表面に結合することができる、および/またはその内に密封することができる。好ましくは、ターゲティング成分は、送達ビヒクルの外部表面上に表示される。
【0159】
例示的な標的分子には、器官、組織、細胞、または細胞外基質、または特定の型の腫瘍もしくは感染細胞に会合する1種またはそれより多くの標的に結合するタンパク質、ペプチド、核酸、脂質、サッカリド、またはポリサッカリドが含まれる。標的ビヒクルがターゲティングする特異性の程度を、適切な親和性および特異性を有するターゲティング分子の選択によって調整することができる。例えば、抗体は非常に特異的である。これらの抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、フラグメント、組み換え抗体、または単鎖抗体であり得、これらの多くは市販されているか、標準的な技術を使用して容易に得られる。抗原提示細胞が結合するT細胞特異的分子および抗原ならびに腫瘍ターゲティング分子を、ナノリポゲル表面および/またはホスト分子に結合することができる。ターゲティング分子を、粒子の表面上に存在する1種またはそれより多くのPEG鎖の末端に結合体化することができる。
【0160】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分が、悪性細胞(例えば腫瘍抗原)上に専ら存在するか、または上昇した量で存在する腫瘍マーカーを特異的に認識する抗体またはその抗原結合断片である。目的の細胞および組織にナノ粒子を誘導するために使用することができる適切なターゲティング分子ならびに標的分子のナノ粒子への結合体化方法は当該分野で公知である。例えば、Ruoslahti,ら、Nat.Rev.Cancer,2:83-90(2002)を参照のこと。抗体などの抗原結合分子により標的にすることができる例示的な腫瘍抗原は、ワクチン抗原に関して上記に議論される。
【0161】
ターゲティング分子はまた、ニューロピリンならびに内皮ターゲティング分子、インテグリン、セレクチン、および接着分子を含むことができる。
【0162】
いくつかの実施形態では、ターゲティング成分が、抗原提示細胞(APC)に、特に樹状細胞として知られているAPCのサブクラスに粒子を向ける。樹状細胞は、エンドサイトーシスを媒介することができる多くの細胞表面受容体を発現する。全身に分布する抗原提示細胞上の内部移行表面分子に外因性抗原を向けることにより、粒子の取込みを促進し、療法における重大な律速段階を改善する。
【0163】
樹状細胞ターゲティング分子は、樹状細胞の表面上に表示されるエピトープを認識し、結合するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはその断片を含む。樹状細胞ターゲティング分子はまた、樹状細胞上の細胞表面受容体に結合するリガンドも含む。あるそのような受容体、レクチンDEC-205は、体液性(抗体ベース)および細胞性(CD8 T細胞)応答を2~4桁押し上げるためにin vitroでおよびマウスにおいて使用されてきた(Hawigerら、J.Exp.Med.,194(6):769-79(2001);Bonifazら、J.Exp.Med.,196(12):1627-38(2002);Bonifazら、J.Exp.Med.,199(6):815-24(2004))。これらの実験では、抗原が、抗DEC205重鎖に融合され、組み換え抗体分子が、免疫に使用された。
【0164】
マンノース特異的レクチン(マンノース受容体)およびIgG Fc受容体を含む様々な他のエンドサイトーシス受容体もまた、この方法で標的にされ、抗原提示効率が同様に増強した。標的にされてもよい他の適した受容体は、DC-SIGN、33D1、SIGLEC-H、DCIR、CD11c、熱ショックタンパク質受容体、およびスカベンジャー受容体を含むが、これらに限定されない。
【0165】
標的にされてもよい他の受容体は、toll様受容体(TLR)を含む。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、結合する。PAMPは、樹状細胞の表面上のTLRを標的にし、内部に信号を送り、それによって、DC抗原取込み、成熟、およびT細胞刺激性の能力を可能性として増加させる。粒子表面にコンジュゲートされたまたは同時カプセル化されたPAMPは、非メチル化CpG DNA(細菌)、二本鎖RNA(ウイルス)、リポポリサッカリド(lipopolysacharride)(細菌)、ペプチドグリカン(細菌)、リポアラビノマンナン(lipoarabinomannin)(細菌)、ザイモサン(酵母)、MALP-2(細菌)などのマイコプラズマリポタンパク質、フラジェリン(細菌)、ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌)、リポタイコ酸(細菌)、またはイミダゾキノリン(合成)を含む。
【0166】
ターゲティング分子は、当該分野で公知である様々な方法を使用して送達ビヒクルに共有結合することができる。好ましい実施形態では、ターゲティング成分が、PEG化またはビオチン-アビジンブリッジによって送達ビヒクルに結合される。
【0167】
a.CD40アゴニスト
特定の実施形態では、ターゲティング成分が、CD40を標的にする。成分は、CD40アゴニストとすることができる。細胞表面分子CD40は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、免疫、造血、血管、上皮、および広範囲の腫瘍細胞を含む他の細胞によって広く発現される。Vonderheide、Clin Cancer
Res,13(4):1083-1088(2007)。癌療法のための可能性として考えられる標的として、CD40は、免疫活性化の間接的な効果および腫瘍に対する直接的な細胞傷害効果の両方を通して腫瘍後退を媒介してもよく、「1つで2つの」CD40アゴニストの作用メカニズムをもたらす。CD40アゴニストは、当該分野で公知であり、Vonderheide、Clin Cancer Res,13(4):1083-1088(2007)において概説される。例示的なアゴニストには、組み換えCD40L(組み換えヒト三量体)、CD-870、893(完全ヒトIgG2 mAb)、SGN-40(ヒト化IgG1)、およびHCD 122(完全ヒトIgG1 mAb)が含まれるが、これらに限定されない。可溶性アゴニストCD40抗体は、T細胞媒介性免疫のマウスモデルにおいてCD4+リンパ球によって提供されるT細胞の支援の代わりをすることが示された(Khalilら、Update Cancer Ther.,2:61-65(2007))。好ましい実施形態では、ターゲティング成分が、アゴニスト抗CD40抗体、CD40リガンド、またはその抗原結合断片である。
【0168】
b.インテグリンリガンド
別の実施形態では、ターゲティング成分が、インテグリンに対するリガンドである。研究により、インテグリンが、腫瘍細胞の表面上に過剰発現され、したがって、腫瘍細胞および正常細胞を識別するマーカーとして果たすことができることが示される。あるインテグリンはまた、細胞外経路を通してTGF-βも活性化する。潜在型TGF-βが腫瘍細胞から放出された後、それは、腫瘍細胞の表面上のインテグリンと結合して、潜在型TGF-βの活性化に至る。腫瘍微小環境におけるTGF-β濃度の増加により、免疫抑制が支持され、調節性T細胞を腫瘍環境に動員する。
【0169】
RGDペプチドは、二重の機能を果たすことができる:それは単に典型的なインテグリンを標的にするリガンドだけではなく(Ruoslahti E.ら、Annu.Rev.Cell Dev.Biol.,12:697-715(1996))、免疫危険シグナルとしても果たし、APCを活性化する(Altincicekら、Biol Chem.,390,1303-11(2009))。したがって、好ましい実施形態では、RGDペプチドが、送達ビヒクルの中に負荷される、その表面に結合される、および/またはその内に密封される。
【0170】
c.p53抗原を認識するT細胞受容体
特定の実施形態では、ターゲティング成分が、ヒトMHCに関連するp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)である。アルファ、ベータ鎖またはガンマ/デルタ鎖から構成されるT細胞受容体(α/βTCRまたはγ/δTCR)を含む、細菌、真核生物、または酵母細胞に由来するT細胞受容体組み換えタンパク質。例えば、アカゲザルTCRα(TCRAR2 5’CCC0GGCCACTTTCAGGAGGAGG-3’)(配列番号1)およびβ(TCRBR 5’-GTCCTGTCTGCAC-CATCCTC-3’)(配列番号2)に由来する完全長外部ドメイン保存配列。
【0171】
d.IL-15/IL15Rα
別の実施形態では、ターゲティング成分は、IL-15/IL15Rα複合体である。インターロイキン-15(IL-15)は、IL-2とある受容体サブユニットを共有し、したがって、いくつかのオーバーラップする作用メカニズムを有するサイトカインである。IL-15は、樹状細胞によって発現され、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖およびプライミング(priming)の重要なシグナルを提供する。したがって、IL-15/IL-15Rα複合体は、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞にナノ粒子組成物を向けるために使用することができる。
ヒトIL-15:
MRISKPHLRS ISIQCYLCLL LNSHFLTEAG IHVFILGCFS AGLPKTEANWVNVISDLKKI EDLIQSMHID ATLYTESDVH PSCKVTAMKC FLLELQVISLESGDASIHDT VENLIILANN SLSSNGNVTE SGCKECEELE EKNIKEFLQSFVHIVQMFIN TS(配列番号3)
ヒトIL-15受容体:
MAPRRARGCRTLGLPALLLLLLLRPPATRGITCPPPMSVEHADIWVKSYSLYSRERYICNSGFKRKAGTSSLTECVLNKATNVAHWTTPSLKCIRDPALVHQRPAPPSTVTTAGVTPQPESLSPSGKEPAASSPSSNNTAATTAAIVPGSQLMPSKSPSTGTTEISSHESSHGTPSQTTAKNWELTASASHQPPGVYPQGHSDTTVAISTSTVLLCGLSAVSLLACYLKSRQTPPLASVEMEAMEALPVTWGTSSRDEDLENCSHHL(配列番号4)
【0172】
C.ホスト分子
ホスト分子は、活性薬剤と可逆的に会合して複合体を形成する分子または材料である。可逆的に活性薬剤と複合体を形成する能力のために、ホスト分子は複合体化した活性薬剤のin vivoでの放出を調節するように機能することができる。
【0173】
いくつかの場合、ホスト分子は、活性薬剤と包接複合体を形成する分子である。包接複合体は、活性薬剤(すなわち、ゲスト)または活性薬剤の一部が別の分子、分子群、または材料(すなわち、ホスト)の空隙内に挿入された場合に形成される。典型的には、ゲスト分子は、宿主の枠組みや構造に影響を及ぼすことなくホスト分子と会合する。例えば、包接複合体の場合、ホスト分子中の利用可能な空隙のサイズおよび形状は、複合体形成の結果として実質的に不変である。
【0174】
ホスト分子は、小分子、オリゴマー、ポリマー、またはその組み合わせであり得る。例示的なホストには、ポリサッカリド(アミロース、シクロデキストリン、および複数のアルドース環を含む他の環状またはらせん状の化合物(例えば、モノサッカリド(グルコース、フルクトース、およびガラクトースなど)の1,4結合および1,6結合を介して形成された化合物)など)およびジサッカリド(スクロース、マルトース、およびラクトースなど)が含まれる。他の例示的なホスト化合物には、クリプタンド、クリプトファン、キャビタンド、クラウンエーテル、デンドリマー、イオン交換樹脂、カリックスアレーン、バリノマイシン、ナイジェリシン、カテナン、ポリカテナン、カルセランド、ククルビツリル、およびスフェランドが含まれる。
【0175】
さらなる他の実施形態では、有機ホスト化合物または有機ホスト材料には、カーボンナノチューブ、フラーレン、および/またはグラフィーム(grapheme)ベースのホスト材料が含まれる。カーボンナノチューブ(CNT)は、円柱ナノ構造を有する炭素の同素体である。ナノチューブは球状バッキーボールも含まれるフラーレン構造ファミリーのメンバーであり、ナノチューブの末端をバッキーボール構造の半球でキャッピングすることができる。その名称は、グラフェンと呼ばれる1原子の厚さの炭素シートによって形成された壁を有するその長い中空構造に由来する。これらのシートは特異的且つ個別の(「カイラル」)角で丸められ、ローリング角と半径との組み合わせがナノチューブの特性を決定する。ナノチューブを、単一壁ナノチューブ(SWNT)および多重壁ナノチューブ(MWNT)に分類することができる。ナノチューブおよび/またはフラーレンは、例えば、チューブまたはフラーレン内に送達すべき材料(すなわち、ゲスト)のカプセル化または捕捉によってホストとしての機能を果たすことができる。あるいは、チューブおよび/またはフラーレンの外部および/または内部を、送達すべきゲストと複合体化することができる官能基で官能化することができる。複合体化には、イオン相互作用、水素結合、ファンデルワールス相互作用、およびπ-π相互作用(πスタッキングなど)が含まれるが、これらに限定されない。
【0176】
グラフェンは炭素同素体でもある。グラフェンの構造は、ハニカム状の結晶格子中に高密度に充填されたsp2結合炭素原子の1原子の厚さの平面シートである。グラフェンは、いくつかの炭素同素体(グラファイト、チャコール、カーボンナノチューブ、およびフラーレンが含まれる)の基本構造要素である。送達すべきゲストは、ナノチューブおよびフラーレンについて上記のように、グラフェンまたは官能化グラフェンと会合および/または複合体化することができる。
【0177】
ホスト材料は無機材料でもあり得、無機リン酸塩およびシリカが含まれるが、これらに限定されない。
【0178】
適切なホスト分子は、一般に、送達すべき活性薬剤の正体および所望の薬物放出プロフィールを考慮してナノリポゲルまたはナノ粒子に組み込むために選択される。送達される活性薬剤との複合体を形成するために、ホスト分子を、一般に、立体的性質(サイズ)および電子的性質(電荷および極性)の両方の観点から活性薬剤に有利なように選択する。例えば、送達すべき活性薬剤と包接複合体を形成するホスト分子の場合、ホスト分子は、典型的には、活性薬剤を組み込むための適切なサイズの間隙を保有するであろう。さらに、ホスト分子は、典型的には、活性薬剤との複合体形成を促進するのに適切な疎水性/親水性の間隙を保有する。ゲスト-ホスト相互作用の強度は、ナノリポゲルまたはナノ粒子からの活性薬剤の薬物放出プロフィールに影響を及ぼし、ゲスト-ホスト相互作用が強いほど一般に薬物放出が長期になるであろう。
【0179】
一般に、ホスト分子を、ナノリポゲルコアまたはナノ粒子コアを形成するポリマーマトリクス内に分散させる。いくつかの場合、1種またはそれより多くのホスト分子を、ポリマーマトリクスに共有結合させる。例えば、ホスト分子を、ポリマーマトリクスと反応する1種またはそれより多くのペンダント反応性官能基で官能化することができる。特定の実施形態では、ホスト分子は、ポリマーマトリクスと反応してポリマーマトリクスと架橋する1種またはそれより多くのペンダント反応性官能基を含む。適切な反応性官能基の例には、メタクリラート、アクリラート、ビニル基、エポキシド、チイラン、アジド、およびアルキンが含まれる。
【0180】
一定の実施形態では、ホスト分子はシクロデキストリンである。シクロデキストリンは、6個(α-シクロデキストリン)、7個(β-シクロデキストリン)、8個(γ-シクロデキストリン)、またはそれを超えるα-(1,4)連結グルコース残基を含む環状オリゴサッカリドである。シクロデキストリンのヒドロキシル基が環の外側に配向している一方で、グルコシドの酸素および非交換性水素原子の2つの環は間隙の内側に向かっている。結果として、シクロデキストリンは、親水性の外部と組み合わせた疎水性の内部間隙を保有する。疎水性活性薬剤との組み合わせの際に、活性薬剤(すなわち、ゲスト)は、シクロデキストリン(すなわち、ホスト)の疎水性の内部に挿入される。
【0181】
シクロデキストリンを、大環状分子の一級または二級ヒドロキシル基またはその両方のいくつかまたはすべてが1種またはそれより多くのペンダント基で官能化されるように化学修飾することができる。ペンダント基は、ポリマーマトリクス(メタクリラート、アクリラート、ビニル基、エポキシド、チイラン、アジド、アルキン、およびその組み合わせなど)と反応することができる反応性官能基であり得る。ペンダント基はまた、シクロデキストリンの溶解度を改変する働きをすることができる。例示的なこの型の基には、1種またはそれより多くの(例えば、1、2、3、または4つの)ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボニル基、アシル基、オキシ基、およびオキソ基で任意選択的に置換されたスルフィニル、スルホニル、ホスファート、アシル、およびCl~C12アルキル基が含まれる。これらのアルコール残基の修飾方法は当該分野で公知であり、多数のシクロデキストリン誘導体が市販されている。
【0182】
適切なシクロデキストリンの例には、α-シクロデキストリン;β-シクロデキストリン;γ-シクロデキストリン;メチルα-シクロデキストリン;メチルβ-シクロデキストリン;メチルγ-シクロデキストリン;エチルβ-シクロデキストリン;ブチルα-シクロデキストリン;ブチルβ-シクロデキストリン;ブチルγ-シクロデキストリン;ペンチルγ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン;ヒドロキシエチルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルα-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン;2-ヒドロキシブチルβ-シクロデキストリン;アセチルα-シクロデキストリン;アセチルβ-シクロデキストリン;アセチルγ-シクロデキストリン;プロピオニルβ-シクロデキストリン;ブチリルβ-シクロデキストリン;スクシニルα-シクロデキストリン;スクシニルβ-シクロデキストリン;スクシニルγ-シクロデキストリン;ベンゾイルβ-シクロデキストリン;パルミチルβ-シクロデキストリン;トルエンスルホニルβ-シクロデキストリン;アセチルメチルβ-シクロデキストリン;アセチルブチルβ-シクロデキストリン;グルコシルα-シクロデキストリン;グルコシルβ-シクロデキストリン;グルコシルγ-シクロデキストリン;マルトシルα-シクロデキストリン;マルトシルβ-シクロデキストリン;マルトシルγ-シクロデキストリン;α-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;β-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;γ-シクロデキストリンカルボキシメチルエーテル;カルボキシメチルエチルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルα-シクロデキストリン;リン酸エステルβ-シクロデキストリン;リン酸エステルγ-シクロデキストリン;3-トリメチルアンモニウム-2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン;スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルα-シクロデキストリン;カルボキシメチルβ-シクロデキストリン;カルボキシメチルγ-シクロデキストリン、およびその組み合わせが含まれる。
【0183】
好ましいシクロデキストリンには、1種またはそれより多くのペンダントアクリラート基またはペンダントメタクリラート基で官能化されたα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、およびγ-シクロデキストリンが含まれる。特定の実施形態では、ホスト分子は、複数のメタクリラート基で官能化されたβ-シクロデキストリンである。例示的なこの型のホスト分子を以下:
【化4】
に例示し、ここで、RはC
1~C
6アルキル基を示す。
【0184】
さらなる例として、ホスト分子はまた、イオン相互作用を介して活性薬剤と一過性に会合する材料であり得る。例えば、制御薬物放出で用いる当該分野で公知の従来のイオン交換樹脂は、ホスト分子としての機能を果たし得る。例えば、Chen,ら、“Evaluation of ion-exchange microspheres as carriers for the anticancer drug doxorubicin:in vitro studies.”J.Pharm.Pharmacol.44(3):211-215(1992)およびFarag,ら、“Rate of release of organic carboxylic acids from ion exchange resins”J.Pharm.Sci.77(10):872-875(1988)を参照のこと。
【0185】
例示を目的として、送達される活性薬剤がカチオン種である場合、適切なイオン交換樹脂は、生理学的に許容され得る足場上にスルホン酸基(または修飾スルホン酸基)または任意選択的に修飾されたカルボン酸基を含むことができる。同様に、活性薬剤がアニオン種である場合、適切なイオン交換樹脂は、アミンベースの基(例えば、強力な相互作用のためのトリメチルアミンまたは弱い相互作用のためのジメチルエタノールアミン)を含むことができる。カチオン性ポリマー(ポリエチレンイミン(PEI)など)は、複合体オリゴヌクレオチド(siRNAなど)のホスト分子として機能することができる。
【0186】
他の場合では、ホスト分子はデンドリマー(ポリ(アミドアミン)(PAMAM)デンドリマーなど)である。カチオン性およびアニオン性のデンドリマーは、上記のように活性薬剤とのイオン性会合によってホスト材料として機能することができる。さらに、中サイズのデンドリマー(第3世代および第4世代のPAMAMデンドリマーなど)は、例えば、核酸の複合体化によって活性薬剤に適応することができる内部ボイドスペースを保有し得る。
【0187】
いくつかの実施形態では、ホスト分子は、シクロデキストリンと結合体化したデンドリマーである。いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、デンドリマーの第一級アミンを遮蔽する。適切なデンドリマーおよびシクロデキストリンは上記で考察している。未修飾デンドリマー(すなわち、第4世代PAMAMデンドリマー(G4))は、経験的に、エンドソーム破壊において、シクロデキストリン(cyclodexrin)(CD)と結合体化したデンドリマーより優れている(以下の実施例を参照のこと)。理論に拘束されないが、PAMAMデンドリマー上の末端アミン基がプロトンスポンジ効果によってエンドソームを緩衝化し、エンドソームを破壊すると考えられる。したがって、CDが増えることによってエンドソーム破壊が減少する。以下の実施例で考察するように、デンドリマーとシクロデキストリンとの異なる組み合わせを使用して、細胞内でのトランスフェクション効率およびエンドソーム破壊レベルを調整することができる。
【0188】
好ましくは、1種またはそれより多くのホスト分子は、ポリマーマトリクスの約0.1%~約40%w/w、より好ましくは全処方物の約0.1%~約25%w/wの量で存在する。
【0189】
III.製造方法、負荷方法、および薬学的組成物
A.製造方法および負荷方法
1.ナノリポゲル
ナノリポゲルは、核酸、タンパク質、および/または小分子の持続送達についてリポソームおよびポリマーベースの粒子の両方の利点を組み合わせたナノ粒子である。ナノリポゲルは、球状、円板、ロッド、または異なるアスペクト比の他の幾何学的形状であり得る。ナノスフェアは、より大きい可能性がある(すなわち、微粒子)。ナノリポゲルは、典型的には、遠隔負荷によって薬剤をカプセル化可能であり、且つ異なる放出速度を容易にするために特性を調整可能な合成ポリマーまたは天然ポリマーから形成される。放出速度を、ポリマー-脂質比を0.05~5.0、より好ましくは0.5~1.5に変化させることによって調整する。
【0190】
ナノリポゲルを、形成前、形成中、または形成後のいずれかに薬剤を負荷し、その後に薬剤のための制御放出ビヒクルとして機能するようにデザインする。ナノリポゲルに、その後に複数の薬剤が制御放出されるように1つを超える薬剤を負荷することができる。
【0191】
ナノリポゲルに、形成中に1種またはそれより多くの第1の薬剤を負荷し、形成後に第2の薬剤の存在下でのナノリポゲルの再水和過程によって1種またはそれより多くの第2の薬剤を負荷する。例えば、ナノリポゲルに、アジュバントとしての機能を果たす分子を負荷し、その後、形成後に標的抗原と共にアジュバントを制御放出させるための1種またはそれより多くの標的抗原を組み込む。
【0192】
2.ポリマーナノ粒子
a.乳濁液による方法
いくつかの実施形態では、ポリマーナノ粒子は、乳濁液溶媒蒸発方法を使用して調製される。例えば、ポリマー物質を水不混和性有機溶媒に溶解し、薬物溶液または薬物溶液の組み合わせと混合する。水不混和性有機溶媒は、1つまたはそれを超える以下のものとすることができる:クロロホルム、ジクロロメタン、およびアシルアセタート。薬物は、1つまたはそれを超える以下のものに溶解することができる:アセトン、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコール、アセトニトリル、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、これらに限定されない。次に、得られた混合溶液に水溶液を添加し、乳化によって乳濁溶液が得る。乳化技術は、プローブ超音波処理またはホモジナイザーによる均質化となり得るが、これらに限定されない。ペプチドまたはフルオロフォアまたは薬物は、粒子のポリマーマトリクスの表面と会合してもよい、その内にカプセル化されてもよい、それによって囲まれてもよい、および/またはその全体にわたって分配されてもよい。
【0193】
b.ナノ沈殿法
別の実施形態では、ポリマーナノ粒子は、ナノ沈殿法またはマイクロ流体デバイスを使用して調製される。ポリマー物質を、水混和性有機溶媒中で薬物または薬物の組み合わせと混合する。
【0194】
その後、得られた混合溶液を水溶液に添加し、ナノ粒子溶液を得る。
【0195】
c.例示的な調製方法
粒子は、様々な方法を使用して様々なポリマーから作ることができ、当該分野で公知である方法に従って、粒子のポリマー組成、粒子に負荷されているまたは会合している薬剤(複数可)を含む基準に基づいて選択することができる。例示的な方法は、以下に提供する。
【0196】
a.溶媒蒸発.この方法では、ポリマーを、塩化メチレンなどの揮発性有機溶媒に溶解する。薬物(可溶性であるか、または細かい粒子として分散した)を溶液に添加し、混合物をポリ(ビニルアルコール)などの表面活性剤を含有する水溶液に懸濁する。得られた乳濁液を、ほとんどの有機溶媒が蒸発するまで撹拌し、固体粒子を残す。得られた粒子を、水で洗浄し、凍結乾燥器で一晩、乾燥する。様々なサイズ(0.5~1000ミクロン)および形態を有する粒子を、この方法によって得ることができる。この方法は、ポリエステルおよびポリスチレンのような比較的安定なポリマーに有用である。
【0197】
しかし、ポリ酸無水物などの不安定なポリマーは、水の存在により生成プロセスの間に分解し得る。これらのポリマーについては、完全に無水の有機溶媒中で実行される以下の2つの方法が、より有用である。
【0198】
b.ホットメルトマイクロカプセル化.この方法では、ポリマーを、最初に融解し、その後、固体粒子と混合する。混合物を、非混和性溶媒(シリコーン油のような)に懸濁し、連続して撹拌しながら、ポリマーの融点より高い5℃まで加熱する。一旦乳濁液が安定化したら、ポリマー粒子が凝固するまでそれを冷却する。結果として生じる粒子を、石油エーテルによりデカンテーションによって洗浄し、易流動性の粉剤を得る。0.5~1000ミクロンのサイズを有する粒子が、この方法により得られる。この技術により調製された球体の外表面は、通常、滑らかで高密度である。この手順は、ポリエステルおよびポリ酸無水物から作製される粒子を調製するために使用される。しかし、この方法は、1,000~50,000の分子量を有するポリマーに限られる。
【0199】
c.溶媒除去.この技術は、ポリ酸無水物について主としてデザインされる。この方法では、薬物を、塩化メチレンのような揮発性有機溶媒中の選択されたポリマーの溶液に分散または溶解する。この混合物を、有機油(シリコーン油など)中に撹拌することによって懸濁し、乳濁液を形成する。溶媒蒸発と異なり、この方法は、高い融点および様々な分子量を有するポリマーから粒子を作製するために使用することができる。1~300ミクロンの範囲にわたる粒子を、この手順によって得ることができる。この技術により製造された球体の外部の形態は、使用されるポリマーのタイプに非常に依存性である。
【0200】
d.噴霧乾燥 この方法では、ポリマーを、有機溶媒に溶解する。既知量の活性薬物を、ポリマー溶液に懸濁するか(不溶性の薬物)、または同時に溶解する(可溶性の薬物)。その後、溶液または分散液を噴霧乾燥させる。ミニ噴霧乾燥器(Buchi)についての典型的なプロセスパラメーターは、以下のとおりである:ポリマー濃度=0.04g/mL、入口温度=-24℃、出口温度=13~15℃、アスピレーター設定=15、ポンプ設定=10mL/分、噴霧流量=600Nl/時間、およびノズル直径=0.5mm。1~10ミクロンの範囲にわたる微粒子が、使用されるポリマーのタイプに依存する形態で得られる。
【0201】
e.ヒドロゲル粒子.アルギナートなどのゲル型ポリマーから作製される粒子は、従来のイオンゲル化技術により製造される。ポリマーを、水溶液に最初に溶解し、硫酸バリウムまたはいくつかの生理活性薬剤と混合し、その後、いくつかの場合において液滴を切り取るために窒素ガスのフローを用いる微小滴形成デバイスを通して押し出す。ゆっくりと撹拌される(およそ100~170RPM)イオン硬化浴を、押し出しデバイスの下に置き、形成されている微小滴を捕らえる。粒子を、20~30分間、浴槽中でそのままインキュベートし、ゲル化が起こるのに十分な時間を与える。粒径は、様々なサイズの押し出し成形機を使用することによってまたは窒素ガスもしくはポリマー溶液の流速を変動することによってコントロールされる。キトサン粒子は、酸性溶液にポリマーを溶解し、それをトリポリホスファートと架橋することによって調製することができる。カルボキシメチルセルロース(CMC)粒子は、酸性溶液にポリマーを溶解し、鉛イオンにより粒子を沈殿させることによって調製することができる。負に荷電しているポリマー(例えば、アルギナート、CMC)の場合には、様々な分子量の正に荷電しているリガンド(例えば、ポリリジン、ポリエチレンイミン)をイオン結合することができる。
【0202】
B.薬学的組成物
医薬組成物は、非経口(筋肉内、腹腔内、静脈内(IV)、もしくは皮下注射)で、点滴注入で、またはデポー剤での投与のため、投与の各経路に適切な剤形で処方することができる。
【0203】
いくつかの実施形態では、組成物を、標的化細胞への組成物の送達に有効な量で、例えば、静脈内投与または腹腔内投与によって全身投与する。他の経路は、点滴注入または粘膜を含む。
【0204】
一定の実施形態では、組成物を、例えば、処置すべき部位への直接注射によって局所投与する。いくつかの実施形態では、組成物を、1種またはそれより多くの腫瘍または罹患した組織に注射するか、または別様に直接投与する。典型的には、局所注射により、組成物の局所濃度が全身投与によって達成することができる濃度より高くなる。いくつかの実施形態では、組成物を、カテーテルまたはシリンジの使用によって適切な細胞に局所的に送達させる。かかる組成物を細胞へ局所的に送達する他の手段には、注入ポンプの使用または埋没物隣接領域への組成物の徐放に影響を及ぼし得る組成物のポリマー埋没物への組み込みが含まれる。
【0205】
細胞に対して直接的に(組成物の細胞との接触などによる)または間接的に(任意の生物学的過程の作用などによる)組成物を提供することができる。例えば、組成物を、生理学的に許容され得るキャリアまたはビヒクル中に処方し、細胞周囲の組織または流体に注入することができる。組成物は、単純拡散、エンドサイトーシス、または任意の能動輸送機構もしくは受動輸送機構によって細胞膜を横切ることができる。
【0206】
選択される投薬量は、所望の治療効果、投与経路、および所望の処置持続時間に依存する。一般に、ナノ粒子組成物は、投与当たり約0001mg/kg~100mg/kgの範囲で投与することができる(例えば、より詳細に下記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)。投与経路は、同様に、投薬量を決定する際に考慮することができる。例えば、特定の実施形態では、ナノ粒子組成物が、静脈内または自己の解釈に基づく(interpretational)経路によって0.01mg/kg~100mg/kgの範囲で(例えば、より詳細に下記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)または皮下経路(例えば、腫瘍もしくは腫瘍微小環境の中へもしくはその付近への局所的な注射)について0.0001mg/kg~1mg/kgの範囲で(例えば、より詳細に下記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)投与される。より例示的な投薬量は、下記に議論される。
【0207】
1.非経口投与用処方物
好ましい実施形態では、組成物を、非経口注射によって水溶液で投与する。処方物は、懸濁液または乳濁液の形態であり得る。一般に、有効量の1種またはそれより多くの活性薬剤を含む薬学的組成物を提供し、この薬学的組成物は、任意選択的に、薬学的に許容され得る希釈剤、防腐剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/またはキャリアを含む。かかる組成物は、希釈剤(例えば、滅菌水、種々の緩衝液の成分(例えば、Tris-HCl、酢酸塩、リン酸塩)、pH、およびイオン強度の緩衝化食塩水など);ならびに、任意選択的に、添加物(界面活性剤および溶解補助剤(solubilizing agent)(例えば、TWEEN(登録商標)20、TWEEN(登録商標)80、ポリソルベート20または80とも呼ばれる)、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、および防腐剤(例えば、チメロサール(Thimersal)、ベンジルアルコール)など)を含むことができる。非水性溶媒または非水性ビヒクルの例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(オリーブ油およびトウモロコシ油など)、ゼラチン、および注射用有機エステル(オレイン酸エチルなど)である。処方物を凍結乾燥させ、使用直前に再懸濁することができる。処方物を、例えば、細菌保持フィルタを介した濾過、組成物への滅菌剤の組み込み、組成物の照射、または組成物の加熱によって滅菌することができる。
【0208】
2.局所投与、粘膜投与および経口投与のための処方物
組成物を、局所適用または点滴注入(instillation)することができる。局所投与には、肺、鼻、口(舌下、口内)、膣、または直腸の粘膜への適用が含まれ得る。これらの投与方法は、粘膜輸送構成要素でシェルを処方することによって有効となり得る。組成物を吸入中に肺に送達させ、空気動力学的直径が約5ミクロン未満のエアロゾルまたは噴霧乾燥粒子のいずれかとして送達した場合に肺上皮内層を横切って血流に到達することができる。
【0209】
治療用製品の肺送達のためにデザインした広範な機械デバイスを使用することができ、機械デバイスには、噴霧器、定量吸入器、および粉末吸入器(すべて当業者によく知られている)が含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
粘膜投与用の処方物は、典型的には、噴霧乾燥した薬物粒子であり、この粒子を錠剤、ゲル、カプセル、懸濁液、または乳濁液に組み込むことができる。標準的な薬学的賦形剤は、任意の調合者から利用可能である。
【0211】
経口処方物は、チューインガム、ゲルストリップ、錠剤、カプセル、またはロゼンジの形態であり得る。経口処方物は、腸での防御を付与するかGI管(腸上皮および粘膜が含まれる)を介した送達を増強することができる賦形剤または粒子に対する他の改変を含むことができる(Samstein,ら、Biomaterials..29(6):703-8(2008)を参照のこと)。
【0212】
経皮処方物も調製することができる。これらは、典型的には、軟膏、ローション、スプレー、またはパッチであろう。これらの全てを標準的なテクノロジーを使用して調製することができる。経皮処方物は、透過増強剤を含むことができる。化学的増強剤および物理的方法(エレクトロポレーションおよびマイクロニードルが含まれる)は、この方法と併せて役立ち得る。
【0213】
IV.処置方法
A.免疫応答を刺激または増強するための方法
ナノ粒子組成物を、対象における免疫応答を誘発する、増強する、または増加させるために有効量でそれを必要とする対象に投与することができる。典型的に、免疫応答は、免疫刺激応答である。例えば、組成物を、細胞(駆動されたT細胞)免疫応答、体液性(駆動されたB細胞)免疫応答、T細胞活性、および/もしくはT細胞増殖を増加させるために、T細胞阻害性シグナルを低下させるために、サイトカインの産生を増強するために、T細胞分化もしくはエフェクター機能を刺激するために、T細胞の生存を促進するために、またはその任意の組み合わせのために、有効量で投与することができる。
【0214】
いくつかの実施形態では、組成物により、免疫抑制性の応答を低下させるか、または阻害することができる。例えば、組成物を、Tregを排除する、Treg分化、輸送、および/もしくはエフェクター機能をブロックするために、エフェクター細胞抑制閾値を上げるために、またはその任意の組み合わせのために、有効量で投与することができる。
【0215】
送達ビヒクルは、同じ標的細胞への2つまたはそれを超える活性薬剤の同時または順序づけられた送達に特に有用である。例えば、同じ送達ビヒクルの中へのまたはその上への2つまたはそれを超える活性薬剤の共負荷は、両方の薬剤が同じ標的細胞に送達される可能性を増加し得る。使用者は、どの活性薬剤を送達ビヒクルの表面上に提示するかおよびどれをその中にカプセル化するかをコントロールすることができる。したがって、使用者は、それぞれの活性薬剤をどのように、またいつ標的細胞に提示するかを決定することができる(すなわち、細胞の外部の受容体に、エンドサイトーシス後に細胞内で、など)。
【0216】
同時送達はまた、2つの異なる経路への同時のターゲティングも可能にする。例えば、ナノ粒子組成物は、免疫刺激応答を誘発するか、または増加させることができ、同時に、免疫抑制性の応答を減少させるか、または低下させることができる。典型的に、そのような組成物は、少なくとも2つの活性薬剤を含み、第1の活性薬剤は、免疫刺激応答を増加させ、第2の活性薬剤は、免疫抑制性の応答を減少させる。例示的な組成物は、IL-2などの炎症性サイトカインおよびSB505124またはロサルタンなどのTGF-β阻害剤を含む。さらなる実施形態では、粒子は、ターゲティング成分、例えば、RGDペプチドなどの腫瘍ターゲティング成分を含む。
【0217】
別の実施形態では、それぞれの活性薬剤は、例えば、両方の薬剤が、同じ細胞に対して作用するまたは同じ微小環境中に局在化する必要がない場合、一緒にまたは別々に対象に送達される別々の粒子に負荷される。
【0218】
本明細書において開示されるナノ粒子組成物はまた、癌患者において排除され得るおよび/または無効となり得る機能的APCおよびT-ヘルパー細胞を模倣するようにデザインすることができる。ヒトにおける免疫は、2つの進化論的な応答-自然および適応から構成される。通常免疫系に提示されないトリガリング分子、外来性の分子または「自己」をベースにする分子のAPCへの提示は、両方の応答にとって重要である。総称して「危険シグナル」と呼ばれているこれらの分子は、疾患またはおそらく疾患をもたらすであろう状況の存在について特にAPCを介して免疫系に警報する。ナノ粒子は、危険シグナル伝達を促進し、さらに、活性化APCを模倣して、人工APC(aAPC)として果たすために効果的に用いることができる。いくつかの特定の実施形態では、粒子が、樹状細胞を模倣するか、または人工樹状細胞として機能するようにデザインされる。特定の実施形態では、粒子は、それらの表面上にIL-15/IL-15Rα複合体を提示する。
【0219】
ナノ粒子組成物の活性または有効性は、コントロールと比較することができる。適したコントロールは、当該分野で公知である。例えば、コントロールは、処置前の対象とすることができる。組成物の活性または有効性は、処置後の対象の状態または症状における変化とすることができる。
【0220】
コントロールはまた、可溶性形態のまたは異なる送達ビヒクルにおける同じ活性薬剤により並行して処置された同じ状態または症状を有する対象とすることもできる。いくつかの実施形態では、可溶性形態のまたは異なる送達ビヒクルにおける同じ活性薬剤の投与と比較して、より少ない量の活性薬剤を使用するか、活性薬剤をそれほど頻繁に投与しないか、またはその組み合わせである。例えば、いくつかの実施形態では、可溶性形態で投与される活性薬剤と比較して、10、25、50、75、100、500、1,000、5,000、または10,000分の1の活性薬剤をナノ粒子組成物に使用する。
【0221】
典型的に、開示されるナノ粒子組成物は、改善された活性、有効性、または効能を示す。例えば、ビヒクルにより送達される活性薬剤(複数可)の治療的な効力は、送達ビヒクルがない状態での薬剤(複数可)を越えることができる。開示される送達ビヒクルの改善された治療的な効力は、標的細胞に対する薬剤(複数可)の結合活性の増加、2つもしくはそれを超える治療剤の同時の高い局所濃度、同時の抑制性エレメントの減退および免疫系の刺激性エレメントの増強、免疫系の刺激性エレメントの選択的なターゲティング、疾患細胞の直接的なターゲティング、またはその任意の組み合わせによるものとすることができる。
【0222】
B.処置される疾患
ナノ粒子組成物を、疾患もしくは障害またはその1つもしくはそれを超える症状を予防する、遅延させる、処置する、またはその重症度を低下させるために、有効量でそれを必要とする対象に予防的にまたは治療的に投与することができる。開示される組成物は、全身性の半減期および体内分布が重要であり、可溶性形態でまたは他の場合には送達ビヒクルがない状態で投与された場合にそれほど有効でないまたは効果がないかもしれない薬剤による多くの疾患の処置およびコントロールの可能性を提供する。
【0223】
疾患または障害は、例えば、癌または感染症とすることができる。
【0224】
1.癌
開示される組成物は、良性または悪性癌およびその腫瘍を処置するために使用することができる。処置は、癌細胞を直接標的にし、死滅させることができるか、癌細胞に対する免疫応答を増加させることによって癌細胞を間接的に標的にすることができるか、またはその組み合わせである。
【0225】
成熟した動物では、バランスは、通常、ほとんどの器官および組織において、細胞再生および細胞死の間で維持される。体内の様々なタイプの成熟細胞は、所与の寿命を有し、これらの細胞が死滅すると、新たな細胞が、様々なタイプの幹細胞の増殖および分化によって生成される。正常な状況下では、新たな細胞の産生は、調節されるので、任意の特定のタイプの細胞の数は一定のままである。しかし、時々、正常な成長-コントロールメカニズムにもはや応答性ではない細胞が発生する。これらの細胞は、かなりのサイズまで増えることができる細胞のクローンをもたらし、腫瘍または新生物を産生する。無限の成長ができず、健康な周囲の組織に広範囲に侵入しない腫瘍は、良性である。成長し続け、進行的に侵襲性になる腫瘍は、悪性である。癌という用語は、特に悪性腫瘍を指す。コントロールされない成長に加えて、悪性腫瘍は、転移を示す。このプロセスにおいて、癌性細胞の小さな塊は腫瘍から移動し、血液またはリンパ管に侵入し、他の組織に運ばれ、ここでそれらは増殖し続ける。このように、ある部位の原発性腫瘍は、別の部位で二次性腫瘍をもたらし得る。
【0226】
開示される組成物は、対象における腫瘍の成長を遅延させるか、もしくは阻害するか、腫瘍の成長もしくはサイズを低下させるか、またはそれをすべて排除するか、腫瘍の転移を阻害するか、もしくは低下させるか、および/または腫瘍発生もしくは成長に関連する症状を阻害するか、もしくは低下させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、組成物により、ある期間にわたって、対象における腫瘍量を低下させるか、または腫瘍成長を遅らせるか、もしくは予防する。
【0227】
処置されてもよい悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚性の起源に従って本明細書において分類される。癌は、皮膚または内臓および腺の上皮内層などの内胚葉または外胚葉組織から発生する腫瘍である。肉腫は、それほど頻繁に発生しないが、骨、脂肪、および軟骨などの中胚葉結合組織に由来する。白血病およびリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は、単一の細胞として増殖するのに対して、リンパ腫は、腫瘍の塊として成長する傾向がある。悪性腫瘍は、身体の多数の器官または組織に現れ、癌を確立し得る。
【0228】
提供される組成物および方法により処置することができる癌のタイプは、多発性骨髄腫などの血管の癌ならびに骨、膀胱、脳、乳房、頸部、結腸、直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽腔、膵臓、前立腺、皮膚、胃、および子宮の腺癌および肉腫を含む固形癌を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、開示される組成物が、多発癌のタイプを並行して処置するために使用される。組成物はまた、複数の場所の転移または腫瘍を処置するために使用することもできる。
【0229】
投与は、既存の腫瘍または伝染病の処置に限定されないが、個人においてそのような疾患を発症する危険性を予防するまたは低下させるために、つまり予防的な使用のために使用することができる。予防的なワクチン接種についての有力候補は、癌を起こす高い危険性を有する、すなわち、あるタイプの癌の個人的なまたは家族性の病歴を有する個人を含む。
【0230】
2.感染症
組成物は、感染症、例えば、ウイルス感染症、細菌性感染症、真菌感染症、または原生動物感染症に罹患している対象における免疫応答を刺激するために使用することができる。したがって、一実施形態は、感染症に対する免疫応答を増加させるために、有効量のナノ粒子組成物を投与することによって感染症を処置するための方法を提供する。
【0231】
処置することができる代表的な感染症は、Actinomyces、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、Hemophilus influenza B型 (HIB)、Hyphomicrobium、Legionella、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、BおよびC、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、およびTreponema、Vibrio、Yersinia、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroides、Rickettsia ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydial psittaci、Chlamydial trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanosoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalisおよびSchistosoma mansoniを含むが、これらに限定されない微生物によって引き起こされる感染症を含むが、これらに限定されない。
【0232】
C.例示的な疾患処置戦略
活性薬剤の特定の組み合わせもまた、本明細書において開示され、下記の実施例において例証される。
【0233】
1.炎症性サイトカインおよびTGF-β阻害剤
1つの例示的な疾患処置戦略には、炎症性サイトカインおよびTGF-β阻害剤を含むナノ粒子組成物のそれを必要とする対象への投与が含まれる。2つの薬剤は、同じ粒子の中にもしくはその上にまたは別々の粒子の中にもしくはその上に負荷され、同時投与することができる。好ましい実施形態では、炎症性サイトカインおよびTGF-β阻害剤が、同じ送達ビヒクル、例えば、ナノリポゲルまたはPLGAなどのポリマーナノ粒子の中にまたはその上に負荷される。炎症性サイトカインは、IL-2またはIFNγとすることができ、TGF-β阻害剤は、SB505124またはロサルタンとすることができる。特定の実施形態では、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子に、組み換えIL-2およびロサルタンを共負荷する。さらなる実施形態では、送達ビヒクルは、RGDなどのターゲティング成分により装飾される。
【0234】
炎症促進性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤を含有するナノ粒子組成物を作製するための方法は、下記の実施例においてより詳細に議論される。例えば、0.5mg~5mgの投薬量が、マウスにおいて試験された。これらの活性薬剤についての好ましい投薬量範囲は、静脈内または腹腔内注射または注入経路による0.01mg/kg~100mg/kg(例えば、より詳細に下記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)または皮下経路による0.0001mg/kg~1mg/kg(例えば、より詳細に下記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)の粒子またはナノリポゲルである。IL-2およびロサルタンが負荷された5mgのナノリポゲルが、典型的に、約50ngのIL-2および約200μgのロサルタンを含有することが特定された。
【0235】
2.炎症性サイトカインおよびターゲティング成分
別の例示的な疾患処置戦略には、ターゲティング成分および炎症性サイトカインを含むナノ粒子組成物のそれを必要とする対象への投与が含まれる。上記に議論されるように、ターゲティング分子は、例えば、RGDとすることができる。他の実施形態では、ターゲティング成分が、T細胞受容体(TCR)または抗CD40アゴニストである。好ましい炎症促進性サイトカインは、IL-2またはIFNγである。
【0236】
特定の実施形態では、ターゲティング成分は、ヒトMHCに関連するp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)である。
【0237】
別の実施形態では、ターゲティング成分は、CD40アゴニスト、例えば、抗CD40抗体またはその抗原結合断片である。適したCD40アゴニストは、当該分野で公知であり、上記に記載される。
【0238】
したがって、IL-2を負荷し、ヒトMHCに関連するp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)により装飾されたナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子などの送達ビヒクルが、開示される。IL-2を負荷し、CD40アゴニストにより装飾されたナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子などの送達ビヒクルもまた、開示される。IFNγを負荷し、ヒトMHCに関連するp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)またはCD40アゴニストにより装飾されたナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子もまた、開示される。
【0239】
これらの活性薬剤についての好ましい投薬量は、約10mg/kg~100mg/kgの範囲である(例えば、毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)。
【0240】
3.IL-15/IL-15α
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物が、樹状細胞などのAPCを模倣するようにデザインされる。インターロイキン-15(IL-15)は、IL-2とある受容体サブユニットを共有し、したがって、いくつかのオーバーラップする作用メカニズムを有するサイトカインである。IL-15は、樹状細胞によって発現され、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖およびプライミングの重要なシグナルを提供する。IL-15は、IL-15Rαと呼ばれるIL-2によって共有されない受容体サブユニットに密接に結合する。IL-15Rαは、他のサブユニットと独立してIL-15に結合することができる。この特性は、IL-15がある細胞によって生成され、別の細胞によって細胞内に取り込まれ(endocytosed)、その後、第3の細胞に提示されるのを可能にすると考えられる。IL-15/IL-15Rαの可溶性複合体は、調製され、送達ビヒクル上に表示することができ、それらは、人工樹状細胞のように作用する。
【0241】
送達ビヒクルの表面上のIL-15/IL-15Rα複合体の多価の提示は、NK細胞への粒子の接着を促進すると考えられる。実際、ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体は、IL-15単独または可溶性IL-15/IL-15Rα複合体よりも有効にNK細胞を増やした(下記の実施例を参照のこと)。ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体により刺激された場合、これらのNK細胞はまた、著しいレベルの細胞分裂を促進しないナノ粒子濃度でさえインターフェロン-γ分泌のレベルの上昇も示す。ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体はまた、CD8+T細胞の増大も促進する。
【0242】
したがって、いくつかの実施形態では、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子が、IL-15/IL-15Rα複合体により装飾される。ナノリポゲルまたはナノ粒子は、1つまたはそれを超えるさらなる活性薬剤がさらに負荷されてもよい。1つまたはそれを超えるさらなる薬剤は、抗癌剤または免疫調節物質、例えばIL-2またはロサルタンなどのTGF-β阻害剤とすることができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルまたはナノ粒子は、1つまたはそれを超える抗原またはアジュバント、例えば腫瘍抗原がさらに負荷される。
【0243】
これらの活性薬剤の好ましい投薬量は、約1mg/kg~50mg/kgもしくは約1mg/kg~5mg/kg;または約10mg/kg~50mg/kg;または1~5mg/kg~10~50mg/kgの範囲である(例えば、毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)。
【0244】
D.アジュバント戦略および併用療法
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物が、アジュバントとして使用され、開示されるナノ粒子組成物上にまたはその中に負荷されていないさらなる活性薬剤と組み合わせて同時投与される。アジュバントおよび併用療法は、粒子と同じ混和物においてまたは別々の混和物において一緒にさらなる活性薬剤を投与することを含むことができる。
【0245】
好ましい実施形態では、1つまたはそれを超える活性薬剤(TGF-β阻害剤および/または炎症性サイトカインなど)が、ナノ粒子組成物を形成するためにナノリポゲルまたは別の送達ビヒクルの中にまたはその上に負荷され、遊離もしくは可溶性形態であるまたはさらに別々の投薬単位の一部である1つまたはそれを超えるさらなる活性薬剤と組み合わせて対象に投与される。
【0246】
いくつかの実施形態では、医薬組成物が、2つ、3つ、またはそれを超える活性薬剤を含み、これらのうちのいくつかが、粒子の中にまたはその上に負荷され、それらのうちのいくつかが負荷されない。
【0247】
異なる活性薬剤は、同じまたは異なる作用メカニズムを有することができる。いくつかの実施形態では、組み合わせにより、疾患または障害の処置に対して相加効果がもたらされる。いくつかの実施形態では、組み合わせにより、疾患または障害の処置に対して相加効果を越えるものがもたらされる。例えば、特定の実施形態では、ナノ粒子組成物により、免疫刺激または免疫増強療法または化学療法剤を増加させるか、または改善する。
【0248】
ナノ粒子組成物および1つまたはそれを超えるさらなる遊離または可溶性活性薬剤は、処置レジメンの一部として対象に投与することができる。処置レジメンは、典型的に、疾患の処置または抗原もしくは免疫原に対する免疫系に関与する1つもしくはそれを超える細胞もしくは細胞型の数または活性の増加もしくは減少などの、抗原もしくは免疫原に対する免疫系の応答の増加もしくは減少などの所望の生理学的変化もしくはその疾患の症状における変化を実現するための方法を指し、前記処置または方法が、疾患を有効に処置するか、または前記生理学的変化もしくは疾患の症状における変化をもたらすために、十分な量の2つまたはそれを超える化学薬品または前記レジメンの構成成分を哺乳動物などの動物、とりわけヒトに投与するステップを含み、化学薬品または構成成分が、同じ組成物の一部などのように一緒に投与されるか、または同時にもしくは異なる時間に別々にかつ独立して投与される(すなわち、それぞれの薬剤または構成成分の投与が、1つまたはそれを超える薬剤または構成成分から限られた期間、分けられる)。好ましくは、単独でまたは分離して投与された場合、1つまたはそれを超える薬剤または構成成分の投与は、薬剤または構成成分のいずれかよりも優れた結果を実現する。好ましくは、1つまたはそれを超える活性薬剤が、ナノ粒子組成物中にある。
【0249】
ナノ粒子組成物および/またはさらなる活性薬剤(複数可)は、3日以内または5日以内または7日以内または10日以内または15日以内または20日以内または25日以内などの限られた期間、毎日、一緒にまたは別々に投与され、すべて、本発明によって特に企図される。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物および/またはさらなる活性薬剤(複数可)が、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、または31日ごとに投与される。いくつかの実施形態では、投与の頻度が、毎週1回または2週ごとに1回または4週ごとに1回または毎週2回である。いくつかの実施形態では、単一の投与が、有効である。いくつかの実施形態では、2回またはそれを超える投与が、必要である。
【0250】
ナノ粒子組成物のそのような投与のすべてが、さらなる活性薬剤(複数可)の投与の前または後に行われてもよい。あるいは、1回またはそれを超える用量の活性薬剤(複数可)の投与は、処置の一様なまたは多様なコースを形成するためにナノ粒子組成物の投与と時間的にずらされてもよく、それによって、1回またはそれを超える用量の活性薬剤(複数可)が、投与され、その後、1回またはそれを超える用量のナノ粒子組成物が続き、その後、1回またはそれを超える用量のさらなる活性薬剤が続くか、または逆もまた同じであり、薬剤を投与する研究者または臨床医によって選択または所望されるスケジュールがどのようなものであっても、すべてそれに従う。
【0251】
いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物が、さらなる活性薬剤(複数可)の投与の少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24、または30時間前または後に投与される。他の実施形態では、さらなる活性薬剤(複数可)が、ナノ粒子組成物の投与の少なくとも1、2、3、5、10、15、20、24、または30時間前または後に投与される。
【0252】
例示的な戦略では、それを必要とする対象は、1つまたはそれを超えるさらなる免疫応答刺激剤または増強剤と組み合わせて、炎症性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤を含むナノ粒子組成物が投与される。炎症性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤は、同じ粒子の中にもしくはその上にまたは別々の粒子の中にもしくはその上に負荷され、同時投与することができる。いくつかの実施形態では、ナノリポゲルのみまたは炎症性サイトカインを含むもしくはTGF-β阻害剤を含む粒子が、他方がない状態で対象に投与される。好ましい実施形態では、炎症性サイトカインおよびTGF-β阻害剤が、同じ送達ビヒクル、例えば、ナノリポゲルまたはPLGAなどのポリマーナノ粒子の中にまたはその上に負荷される。炎症性サイトカインは、IL-2またはIFNγとすることができ、TGF-β阻害剤は、SB505124またはロサルタンとすることができる。特定の実施形態では、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子に、組み換えIL-2およびロサルタンを共負荷する。
【0253】
1つまたはそれを超えるさらなる免疫応答刺激剤または増強剤は、対象における免疫抑制性の応答を減少させる薬剤とすることができる。例示的な薬剤は、上記により詳細に議論され、例えば、PD-1アンタゴニストおよびCTLA4アンタゴニストを含む。好ましい実施形態では、PD-1アンタゴニストが、アンタゴニスティック抗PD1抗体であり、CTLA4アンタゴニストが、アンタゴニスティック抗CTLA4抗体である。
【0254】
好ましい実施形態では、1つまたはそれを超えるさらなる免疫応答刺激剤または増強剤が、ナノリポゲルまたは他の粒子送達ビヒクルの中にまたはその上に負荷されない。1つまたはそれを超えるさらなる免疫応答刺激剤または増強剤は、遊離もしくは可溶性形態でまたは別の従来の剤形で対象に投与することができる。
【0255】
例示的な好ましい実施形態では、ロサルタンおよび/またはIL-2が、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子の中にまたはその上に負荷され、抗PD-1、抗CTLA4、またはその組み合わせと組み合わせて対象に投与される。
【0256】
理論によって拘束されないが、アンタゴニスティック抗PD-1および/またはアンタゴニスティック抗CTLA4などの1つまたはそれを超える免疫応答刺激剤が、IL-2などの炎症性サイトカインおよび/またはロサルタンなどのTGF-β阻害剤が負荷されたまたはそれと会合したナノリポゲルまたは粒子と組み合わせて同時投与される場合、(1)免疫応答刺激剤(複数可)は、より低用量で投与することができる;(2)免疫応答刺激剤(複数可)は、対象に対する副作用または毒性の低下を示すであろう;(3)免疫応答刺激剤は、効力の増強を示すであろう、および/または(4)負荷されたナノリポゲルまたは粒子と組み合わせて免疫応答刺激剤によって実現された結果は、負荷されたナノリポゲルもしくは粒子がない免疫応答刺激剤(複数可)の投与または免疫応答刺激剤(複数可)がない状態で負荷されたナノリポゲルまたは粒子を投与することと比較した場合に、対象に対して相加効果よりも優れた効果を有するであろうと考えられる。
【0257】
他の例示的な戦略では、それを必要とする対象は、1つまたはそれを超える化学療法剤と組み合わせて、炎症性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤を含むナノ粒子組成物が投与される。炎症性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤は、同じ粒子の中にもしくはその上にまたは別々の粒子の中にもしくはその上に負荷され、同時投与することができる。いくつかの実施形態、ナノリポゲルのみまたは炎症性サイトカインを含むもしくはTGF-β阻害剤を含む粒子が、他方がない状態で対象に投与される。好ましい実施形態では、炎症性サイトカインおよびTGF-β阻害剤が、同じ送達ビヒクル、例えば、ナノリポゲルまたはPLGAなどのポリマーナノ粒子の中にまたはその上に負荷される。炎症性サイトカインは、IL-2またはIFNγとすることができ、TGF-β阻害剤は、SB505124またはロサルタンとすることができる。特定の実施形態では、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子に、組み換えIL-2およびロサルタンを共負荷する。
【0258】
好ましい実施形態では、1つまたはそれを超える化学療法剤が、ナノリポゲルまたは他の粒子送達ビヒクルの中にまたはその上に負荷されない。1つまたはそれを超える化学療法剤は、遊離もしくは可溶性形態でまたは別の従来の剤形で対象に投与することができる。例示的な化学療法剤は、上記に議論される。特定の実施形態では、化学療法剤が、ドキソルビシンである。
【0259】
例示的な好ましい実施形態では、ロサルタンおよび/またはIL-2が、ナノリポゲルまたはPLGAナノ粒子などのナノ粒子の中にまたはその上に負荷され、ドキソルビシンと組み合わせて投与される。
【0260】
免疫応答刺激剤に関して上記に議論されるように、ドキソルビシンなどの1つまたはそれを超える化学療法剤が、IL-2などの炎症性サイトカインおよび/またはロサルタンなどのTGF-β阻害剤が負荷されたまたはそれと会合したナノリポゲルまたは粒子と組み合わせて同時投与される場合、(1)化学療法剤(複数可)は、より低用量で投与することができる;(2)化学療法剤(複数可)は、対象に対する副作用または毒性の低下を示すであろう;(3)化学療法剤は、効力の増強を示すであろう、および/または(4)負荷されたナノリポゲルまたは粒子と組み合わせて化学療法剤によって実現された結果は、負荷されたナノリポゲルもしくは粒子がない化学療法剤(複数可)の投与または化学療法剤(複数可)がない状態で負荷されたナノリポゲルまたは粒子を投与することと比較した場合に、対象に対して相加効果よりも優れた効果を有するであろうと同様に考えられる。
【0261】
併用療法および処置レジメンは、免疫応答を誘発する、増加させる、または増強するためにそれを必要とする対象において使用することができる(例えば、T細胞増殖または活性化などのT細胞応答の増加または誘発)。例示的な対象には、上記により詳細に記載されるように癌または伝染病を有する対象が含まれる。免疫応答(例えばT細胞応答の増加または誘発)は、癌または疾患抗原に対するものとすることができる。免疫応答は、癌または感染症を処置するのに有効になり得る。いくつかの実施形態では、免疫応答が、癌性または疾患感染細胞に対するものであり、癌または疾患の1つまたはそれを超える症状(例えば腫瘍量、腫瘍進行、疾患進行など)を低下させることができる。
【0262】
炎症性サイトカインおよび/またはTGF-β阻害剤を含むナノ粒子組成物についての好ましい投薬量は、上記に議論される。本明細書で記載されるアジュバント組成物および方法などの他の特定の実施形態では、ナノ粒子組成物が、約0.1mg/kg~100mg/kgまたは約0.1mg/kg~1mg/kg;または約10mg/kg~100mg/kg;または0.1~1mg/kg~10~100mg/kgの範囲で投与される(例えば、より詳細に上記に議論されるように毎日;または毎週2、3、4、5回、もしくはそれを超える回数;または月に2、3、4、5、もしくはそれを超える回数など)。
【実施例0263】
実施例1:脾臓へのナノ粒子の輸送および樹状細胞への提示
材料および方法
ナノ粒子を、以前に記載されたプロトコールに従って作製し、特徴づけた(Lookら、J.Clinical Investigation,123(4):1741-9(2013)、Shiraliら、Am.J.Transplant,11(12):2582-92(2011))。PLGA粒子、蛍光プローブ(クマリン6)を、酢酸エチルでPLGAと共に溶解し、超音波処理器のプローブを使用してポリ(ビニルアルコール)およびアビジン-パルミチン酸により乳化した。PLGA粒子を、続いて硬化し、洗浄し、その後、凍結乾燥した。ビオチン化ポリ(エチレングリコール)を、実験に使用する前に、粒子1mg当たり1.33μgの比でPLGA粒子に添加した。
体内分布研究:粒子(動物当たり2mg)を調製し、その後、マウスに腹腔内注射した。器官を回収し、計量し、IVIS画像システムを使用して画像化して、定量的蛍光測定値を得た。組織学的分析のために、脾臓をOCT包埋培地中でスナップ凍結し(snap-frozen)、その後、荷電スライド上でクリオトームで薄片を作った。切片を、10分間、氷冷アセトン中で固定し、続いて、抗体により染色した。組織切片は、Nikon TE-2000顕微鏡で画像化した。
【0264】
結果
APCへの抗原のナノ粒子による輸送は、それらの抗原に対する細胞ベースの免疫応答を動員する際に第1の重要なステップとなる。実験は、in vivoでのナノ粒子の蓄積を追跡するようにデザインした。PLGAから作製したナノ粒子に、蛍光剤、クマリン-6を負荷し、マウスに注射した。結果を、
図1A~1Dに示す。
図1Aは、蛍光剤クマリン-6を負荷したナノ粒子によるマウスの静脈内注射の3時間後を示し、これらのナノ粒子は、多くの組織の中に広く広まったが、6時間で(
図1B)、蛍光ナノ粒子は、脾臓に極度に集中した。免疫細胞の多くの集団は、ある組織、特に脾臓に集中した。
図1C~1Dは、クマリン-6ナノ粒子が、脾臓(1C)およびまた免疫刺激に関与する別の重要な部位であるリンパ節(1D)において抗原提示細胞集団、特に樹状細胞およびマクロファージと顕著に会合したことを示す。
【0265】
実施例2:ナノ粒子はIL-2の抗腫瘍効果を促進する
材料および方法
ナノゲルは、1:2:0.1のモル比のコレステロール:ホスファチジルコリン:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)-2000]の脂質混合物から押し出したリポソームにより作製した。リポソームを凍結乾燥し、その後、アクリル化(acrylated)乳酸-ポリ(エチレングリコール)-乳酸、非メチル化β-シクロデキストリンと複合体を形成した蛍光プローブ(ローダミンB)、およびイルガキュア2959の混合物により再水和した。粒子をUV光下で硬化し、すすぎ、遠心分離し、100ug/mlのヒトIL-2(プロロイキン)をわずかに負荷した。ナノゲルに、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド/1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド(sNHS/EDC)を使用して、アビジンにより官能性をもたせた。ビオチン化T細胞受容体を、1mgのナノ粒子当たり10ugのTCRの濃度で添加した(Lookら、J.Clinical Investigation,123(4):1741-9(2013)、Joshiら、J.Control Release,161(1):25-37(2012)、Danhierら、J.Control Release,161(2):505-22(2012)、Elamanchiliら、Vaccine,22(19):2406-12(2004)、Shiraliら、Am.J.Transplant,11(12):2582-92(2011))。
【0266】
結果
免疫不全(ヌード)マウスに、p53抗原を発現する、10
5細胞のヒトA37C515Nメラノーマ細胞を皮下に異種移植した。
図2において示される時間に(矢印)、マウスに、ヒトMHCに関連するこのp53抗原を認識するT細胞受容体(TCR)にカップリングされ、サイトカインIL-2を負荷したナノ粒子または可溶性p53特異的scTCR/IL-2融合タンパク質(Altor Biosciences、Miramar、FL)を静脈内注射した。
図2は、PBS処置コントロールマウスにおける腫瘍と比較して、キメラタンパク質により処置したマウスにおける平均腫瘍容積がおよそ40%まで低下したことを示す。しかし、研究期間の終わりに、ナノ粒子により処置したマウスにおける平均腫瘍容積は、ナノ粒子中に負荷したIL-2の量がTCR/IL-2キメラタンパク質中の相対的なIL-2濃度と比較しておよそ1000分の1であったのに、およそ70%まで低下した。可溶性融合タンパク質に比べた、ナノ粒子上のIL-2および/またはTCRについての結合活性の増加は、ナノ粒子調製物の優れた抗腫瘍効力を説明することができた。
【0267】
実施例3:ナノ粒子上の抗CD40と組み合わせたIL-2またはIFNガンマは抗癌活性を示す
材料および方法
PLGAナノ粒子は、実施例1に記載されるように調製した。IFNガンマ(100ug/ml)に100mgのPLGAを負荷した。実施例1に記載されるように、アビジンにより表面修飾した1mg/mlのポリマーnpに対して、抗CD40ビオチン(10ug/ml)を添加した。
【0268】
結果
IL-2は、活性化T細胞によって生成され、分泌されるが、抗腫瘍性の効果を誘起するように他の免疫促進剤とナノ粒子上で組み合わせることができる。そのような1つの薬剤は、CD40に対するアゴニスト抗体である(Honeychurch,J.,Glennie,MJ、Johnson,PW、Illidge,TM.:Anti-CD40
monoclonal antibody therapy in combination with irradiation results in a CD8 T-cell-dependent immunity to B-cell lymphoma.Blood 2003;102:1449-1457)。CD40は、APC上に見られる共刺激タンパク質であり、それらの活性化に必要とされる。そのような活性化は、CD40が、活性化T細胞上に主として発現され、分子のTNFスーパーファミリーのメンバーであるタンパク質であるCD40L(CD154)に結合した場合に起こる。アゴニスト抗CD40は、APCを活性化する際にCD40Lの機能を補助し、したがって、アゴニスト抗CD40およびIL-2の組み合わせを有するナノ粒子は、Tヘルパー細胞のある機能的な側面を提供することができる。
【0269】
TNFスーパーファミリーのいくつかのメンバーのホモ三量体化が、活性化の間に起こり、結合価の役割およびシグナル伝達の間の高結合活性による相互作用を示唆する。実際に、形質膜上に予想されるであろう高次オリゴマーが、有効な応答を実現するために必要とされ得る(Grellら、Cell,83:793-802(1995)、Tanakaら、Nat.Med.,4:31-36(1998)、Schneiderら、J.Exp.Med.,187:1205-121(1998))。
【0270】
したがって、実験は、抗CD40を表示するナノ粒子が、標的に対してより高い結合活性で相互作用するかどうかおよび可溶性単量体またはCD40抗体複合体により実現することができない強力なシグナル伝達についての生理学的な要求を再現することができるかを決定するようにデザインした。
【0271】
動物の後肢にB16F10メラノーマ細胞を接種した。腫瘍成長をモニタリングし、およそ7日後に、腫瘍面積が0.5mm
2に到達したら、(a)抗CD40により表面修飾した;(b)抗CD40により表面修飾し、IL-2を負荷した5ugのPLGAナノ粒子;またはコントロールとして、(c)ブランクナノ粒子(何もない表面および空)または(d)緩衝食塩水(1×PBS)により、動物の腫瘍周囲を処置した。非負荷PLGAナノ粒子は、PBSの処置と比較して、腫瘍成長に対して効果がなかった(
図3)。ナノ粒子上にIL-2のみでは、ほとんどまたは全く抗腫瘍性の特性を有しない。ナノ粒子上のアゴニスト抗CD40は、実験の期間、重要な抗癌効果を示し、この抗体が表面に提示されるだけで、治療上の実用性を有し得ることを示す(
図3)。最も強力な応答は、アゴニスト抗CD40およびIL-2を含有するナノ粒子で見られた(
図3)。
【0272】
実施例4:ナノ粒子上のIL-15はNK細胞を活性化する
材料および方法
80kDaの平均分子量を有するラクチド-グリコリド共重合体(PLGA)50/50は、Durect Corporation(Cupertino、CA)から得、ナノ粒子生成に使用した。ナノ粒子を、親水性のカプセルの材料についての水中油型乳濁液の技術または水中油中水型ダブル乳濁液の技術を使用して形成した。乳濁液を、600W
Ultrasonic Processor(Sonics & Materials
Inc、Newtown、CT)プローブ超音波処理器でそれぞれ10秒間3回超音波処理し、ポリ(ビニルアルコール)の0.2%溶液中で1.5~3時間硬化した。ナノ粒子を、上記されるようにアビジン-パルミチン酸コンジュゲートにより表面修飾した。粒子を、dH2Oで洗浄し、凍結乾燥し、-20℃で保存した。
【0273】
ヒトIL-15:IL-15Rαヘテロ二量体は、National Cancer Institute at Frederick(Frederick、MD)の寛大な贈り物であった。IL-15ヘテロ二量体を、NHS-LC-LC-ビオチン(Thermo Scientific、Rockford、IL)と1:10のモル比で反応させ、その後、PBS中で48時間透析し、過剰な未反応ビオチンを除去した。ビオチン化IL-15ヘテロ二量体を、示す濃度でナノ粒子に添加し、室温で15分間、回転板型振とう機上でインキュベートした。
【0274】
結果
インターロイキン-15(IL-15)は、IL-2とある受容体サブユニットを共有し、したがって、いくつかのオーバーラップする作用メカニズムを有するサイトカインである。IL-15は、樹状細胞によって発現され、ナチュラルキラー(NK)細胞の増殖およびプライミングの重要なシグナルを提供する。IL-15は、IL-15Rαと呼ばれるIL-2によって共有されない受容体サブユニットに密接に結合する。IL-15Rαは、他のサブユニットと独立してIL-15に結合することができる。この特性は、IL-15がある細胞によって生成され、第2の細胞によって細胞内に取り込まれ、その後、第3の細胞に提示されるのを可能にすることを示唆する。IL-15/IL-15Rαの可溶性複合体を調製することができるので、IL-15/IL-15Rα複合体の潜在的な抗癌活性を評価することが可能である。IL-15/IL-15Rαのそのような複合体はまた、ナノ粒子上に負荷することもでき、人工樹状細胞としていくつかの点で作用することができる(
図4)。
【0275】
実験は、IL-15/IL-15Rα複合体により装飾したナノ粒子の免疫応答を調整する能力を試験するためにデザインした。結果は、ナノ粒子の表面上のIL-15/IL-15Rα複合体の多価の提示が、NK細胞へのナノ粒子の接着を促進することを示す。ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体は、IL-15単独または可溶性IL-15/IL-15Rα複合体よりも効率的にNK細胞を増やした(
図5A)。ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体により刺激された場合、これらのNK細胞はまた、著しいレベルの細胞分裂を促進しないナノ粒子濃度でさえインターフェロン-γのレベルの上昇を示した(それぞれ
図5Cおよび5B)。結果はまた、ナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体が、CD8
+T細胞の増大を促進したことも示す。
【0276】
実施例5:ナノ粒子上のIL-15は抗腫瘍性の活性を示す
材料および方法
IL-15/IL-15R粒子は、実施例4に記載されるように使用した。B16-OVA細胞(ATCC)をDMEM(Gibco)中で培養し、注射直前に1×PBS(氷上で保持)で2×106細胞/mLに懸濁した。皮下腫瘍研究のために、雌6~8週齢C57BL/6マウスをAErrane(イソフルラン;Baxter)で鎮静し、右後側腹部の剪毛後に50μLの細胞懸濁液を皮下注射した。腫瘍をモニタリングし、平均腫瘍面積が5.5mm2に到達した時に処置を開始した(B16注射から8~10日後;群間で腫瘍サイズを正規化するために、マウスを再配置した)。ナノリポゲル投与のために、マウスをイソフルラン(isofluorane)で鎮静させた。これは、腫瘍内に行われた。各用量は、2mg IL-15/IL-15R NPからなっていた。観察者は、腫瘍面積および生存研究について盲検化された。任意の1つの腫瘍寸法が15mmを超える場合、疾患の任意の徴候を示した時、またはFACS分析研究のための処置から1週間後に二酸化炭素を使用してマウスを安楽死させた。異なる時点で群あたり5匹のマウスを安楽死させ、腫瘍を抽出し、秤量した。
【0277】
結果
強いNK細胞応答を促進するナノ粒子上のIL-15/IL-15Rα複合体の能力を考慮して、実験は、癌モデルにおけるこれらの複合体の有効性を決定するためにデザインした。この実施例において、転移性B16疾患モデルは、IL-15/IL-15Rα複合体がこれらの腫瘍に対する免疫応答における役割を果たすことが知られているので、選択した。細胞がオバルブミン表面抗原(OVA)を持つメラノーマ株由来B16.OVAを使用した。これは、ナノ粒子を介しての腫瘍ターゲティングの効果を評価するためのさらなる可能性を提供する。
【0278】
ナノ粒子を、IL-15/IL-15Rα複合体により装飾し、エンドトキシンなしのオバルブミンタンパク質をさらに負荷した。10
5 B16.OVAメラノーマ細胞を、C57BL/6マウスに注射し、その後1、2、および7日目に、5匹のマウスのグループに、リン酸緩衝食塩水(PBS)、非負荷PLGAナノ粒子、1μg IL-15/IL-15Rαの複合体全体、またはカプセル化したオバルブミンを有するもしくは有していないナノ粒子上に負荷された同量のIL-15/IL-15Rα複合体を注射した。
図6に結果を示す。PBSまたは非負荷ナノ粒子により処置したマウスはすべて、50日未満で死んだ。溶液中またはナノ粒子上に負荷したIL-15/IL-15Rα複合体により処置したマウスは、より長い期間生存した。最も効果的な処置は、IL-15/IL-15Rα複合体プラスオバルブミンを負荷したナノ粒子であり、腫瘍へのナノ粒子のターゲティングが、IL-15/IL-15Rα複合体の抗腫瘍性効果を改善することができたことを実証した(
図6)。
【0279】
実施例6:RGDペプチドを有するターゲティングTGF-β阻害剤SB505124が抗腫瘍活性を示す
材料および方法
RGD/SBナノ粒子の合成および特徴づけ
酸末端PLGAおよびアミン末端PEGのコンジュゲーションは、以下のとおりとした。酸末端PLGA(500mg)ならびに10倍の過剰量のNHSおよびDCCを、10mL無水DCMに溶解した。4時間室温で撹拌した後、反応溶液をPTFEフィルタで濾過し、沈殿物を除去した。冷エチルエーテル中での沈殿により、NHS活性化PLGAを得た。真空下で乾燥させた後、NHS活性化PLGAを、等モル比のNH2-PEG-COOHを有する無水DCMに溶解し、溶液を室温で撹拌した。コンジュゲートを冷エチルエーテル中に沈殿させ、真空下で乾燥させ、収率は90%を超えた。RGDペプチドは、NHSおよびEDCを使用してPLGA-PEG-COOHのカルボキシル基とコンジュゲートした。このブロックコポリマーを使用して、TGF-β阻害薬を、透析方法を使用してナノ粒子の中にカプセル化した。詳細には、薬物およびポリマーをDMSOに溶解し、溶液を、透析膜(MWCO 100,000)に移した。透析は、DI水に対して24時間実行した。その後、水性粒子溶液を遠心分離し、超音波処理し、粒子を濃縮した。
【0280】
ナノ粒子のサイズまたはIDは、Zetasizer(Malvern)を使用し、動的光散乱法(DLS)によって決定した。サンプル濃度は、0.5mg/mLで維持した。SBカプセル化の量は、990mLのDMSOに10mLのSBナノ粒子を溶解することによって、これによりDMSO溶液にSBを放出させ、その吸光度測定値から得た。その後、吸光度を300nmで測定した。その滴定濃度に従ってあらかじめ測定したSB吸光度の検量線を使用して、カプセル化されたSB濃度を計算した。SB放出プロファイルは、異なるプロトコールに従って決定した。1ミリリットルのPBS-SBナノ粒子を、適度に振盪させながらエッペンドルフチューブ中で調製した。それぞれの時点で、チューブを遠心分離して、ナノ粒子をペレットにし、上清を集めた。上清をDMSOで100倍に希釈し、その吸光度を300nmで測定した。
【0281】
結果
研究により、インテグリンが、腫瘍細胞の表面上に過剰発現され、腫瘍細胞および正常細胞を識別するマーカーとして果たすことができることが示された。インテグリンは、さらに、細胞外経路を通してTGF-βを活性化する。潜在型TGF-βが腫瘍細胞から放出された後、それは、腫瘍細胞の表面上のインテグリンと結合して、潜在型TGF-βの活性化に至る。その結果、腫瘍微小環境におけるTGF-β濃度の増加により、調節性T細胞を動員することによって免疫抑制が支持される(Massayoら、Eur J Clin Med Oncol.,(4):27-32(2013)。TGF-β分子の上昇は、SB505124(2-(5-ベンゾ[1,3]ジオキソール-5-イル-2-tert-ブチル-3H-イミダゾール-4-イル)-6-メチルピリジンヒドロクロリド)などのTGF-β阻害剤によって阻害することができる。SB-505124は、SB505124(SBとも略される)としても知られている形質転換成長因子-ベータI型受容体ALK4、ALK5、およびALK7の選択的阻害剤である(DaCostaら、Mol Pharmacol.65:744-52(2004))。
【0282】
この実施例では、SB505124は、上記に記載されるようにPLGA-PEGナノ粒子の中に直接負荷した。
【0283】
RGDペプチドは、二重の機能を果たすことができる:それは単に典型的なインテグリンを標的にするリガンドだけではなく(Ruoslahtiら、Annu.Rev.Cell Dev.Biol.,12:697-715(1996))、免疫危険シグナルとして働き、APCを活性化する(Altincicekら、Biol Chem.,(390)1303-11(2009))。
【0284】
この実施例では、PLGAナノ粒子に、SB505124およびRGDペプチドを負荷した。これらのナノ粒子は、強い抗腫瘍効果を促進し、複数の方法においてTGF-βならびにその活性化および機能の調節を顕著に伴い(
図7)、両方の薬剤はまた、免疫系のエレメントも調整し、その結果、局所的な環境が、抑制性から刺激性に変わった。RGDペプチドは、免疫危険シグナルとしてのその役割によって、APCを活性化することができ、インテグリンとのその相互作用を介して、RGDペプチドは、潜在型TGF-βおよびインテグリンの間の結合をブロックすることができる。SB505124は、TGF-β活性化を阻害することができる。したがって、潜在型TGF-βは、最小限しか活性化されず、Treg媒介性の腫瘍免疫回避が妨げられる。
【0285】
図8および9A~9Cは、B16f10メラノーマ細胞に対するSB505124および/またはRGDの効果を決定する研究を要約する。処置は、腫瘍細胞をマウスに接種した10日後に開始した(
図8)。RGD(100nM)および/またはSB505124(100nM)を溶液でまたはナノ粒子に負荷して投与した。排除の遅延に対する効果(グループ当たり7匹のマウス)。実験の1つのセットにおいて、動物に、毎週4回、腫瘍周囲の注射を与え、容量および生存率の両方を5週間追跡した。
【0286】
図9Aおよび9Bに示されるように、可溶性SB505124およびRGDは、たとえあったとしてもあまり大きくない抗腫瘍性の効果しかなかった。SB505124をナノ粒子に負荷し、マウスに投与した場合も同様であった。RGDを有するナノ粒子は、抗腫瘍効果を有するように思われたが、ナノ粒子上でのSB505124およびRGDの組み合わせは、はるかに優れており、統計的に有意な抗腫瘍効果を有した。RGDを有するまたは有していないクマリンカプセル化ナノ粒子を4匹のマウスのグループに腫瘍周囲に注射し、96時間にわたってスキャンした場合に例証されるように、ナノ粒子の投与を介しての効能の増加の少なくとも一部は、排除の減少によるものであったかもしれない。蛍光強度により、遊離RGDよりも少なくとも4倍優れたナノ粒子結合RGDの半減期が示された(
図9C)。
【0287】
実施例7:RGDペプチドを有するターゲティングTGF-β阻害剤SB505124が抗腫瘍活性を示す
材料および方法
材料は、上記に記載されるとおりとする。in vivoでの研究のために、マウスは、陽圧拘束ラック中に置いたオートクレーブマイクロアイソレーターケージに収容し、Yale University Institutional Animal Care
and Use Committeeの承認プロトコールに従って維持した。マウスは、それぞれ5~7匹の動物の実験およびコントロールグループに無作為に割り当てた。B16F10メラノーマ細胞を上記に記載されるように培養した。メラノーマ異種移植を、マウスの右側の後部脇腹に5×106 B16F10-OvaまたはB16F10細胞を皮下移植することによって開始した。10日後、それぞれのマウスを異なる薬物処方物により処置した。処方物はすべて、腫瘍の中に直接注射した。複数回用量の研究のために、処方物はすべて、1週間に1回注射した。腫瘍阻害活性は、以下の方程式を使用して計算した腫瘍容積によって決定した:V=(w)2×(l)/2、ここで(w)および(l)は、キャリパーによって測定される腫瘍の幅および長さとした。
【0288】
腫瘍体内分布研究のために、マウスを、腫瘍内注射によってクマリン6-カプセル化RGDナノ粒子により処置した。RGDなしのクマリン6-カプセル化ナノ粒子は、コントロールとして使用した。in vivoでの分子イメージング機器(Carestream molecular imaging)を使用して、マウスをスキャンし、注射後の様々な時点での腫瘍におけるクマリン6の蛍光強度を測定した。それぞれのマウスのクマリン6強度は、それぞれの時点でそれぞれの腫瘍面積を包含する関心領域(ROI)において分析した。
結果
【0289】
B16F10メラノーマ腫瘍細胞(500,000細胞)を、0日目にC57BL/6マウスの尾静脈中に注射した。5日目に、マウスに、溶液中のSB505124およびRGDまたはナノ粒子に負荷した一方もしくは両方の薬剤をIV注射した。10日後に、マウスを屠殺し、肺を収集し、腫瘍結節を数えた。
図10Aは、ナノ粒子結合SB505124およびRGDの投与が、溶液中の2つの薬剤の投与に対して、結節の数の著しい減少に至り、一方の薬剤のみを含有するナノ粒子が、中程度の応答を誘起したことを示す。
【0290】
より長い期間にわたる転移性腫瘍に対するこれらの薬剤の効果を決定するために、500,000のB16f10メラノーマ細胞を、0日目に尾静脈を介してi.v.注射した。もう一度、癌を有するマウスに、この場合は、5、12、19、および26日目に、溶液中のまたはナノ粒子に負荷したSB505124およびRGDを注射した。
図10Bは、ナノ粒子結合SB505124およびRGDによる処置が、溶液中の薬剤を受けているマウスと比較した場合、長期生存時間に劇的に至ったことを例証する。
【0291】
ナノ粒子結合SB505124およびRGDが転移性腫瘍モデルにおいて強力な阻害効果を誘起し得る多くのメカニズムがある。説得力のある1つのメカニズムは、転移のプロセスを伴う。蓄積しつつある証拠により、癌細胞の亜分画、癌幹細胞(CSC)が、腫瘍形成および再生を一手にすることができることが示されている(Clarkeら、Cancer Res.,66:9339-9344(2006);Dalerbaら、Annu.Rev.Med.,58:267-284(2007))。固形腫瘍中のCSCは、腫瘍維持を駆動する癌細胞の機能的に均一な集団であると一般に考えられている。上皮腫瘍では、これらのCSCは、腫瘍の上皮の特質を維持するが、遊走する能力を欠き、したがって、転移を確立することができない。小さなサブセットのみが、遊走し、転移形成を開始する潜在能力を有する。この特性は、上皮間葉転換(EMT)を誘発することによって癌転移における重要な役割を果たすことができるTGF-βの発現に関連する。したがって、ほとんどの癌細胞によって分泌されるTGF-βは、転移性の潜在能力を有する癌細胞の形成を誘発するパラクリン方式で機能し得る。
【0292】
実験は、腫瘍微小環境におけるTGF-βの阻害が間葉細胞の発生を予防することができ、したがって転移性腫瘍量を減少させるかどうかを決定するためにデザインした。
【0293】
TGF-β阻害による細胞遊走の低下の可能性を試験するために、スクラッチアッセイ(
図10C)およびスフェロイド形成アッセイ(
図10D)を使用した。前者の場合において、細胞をウェル中で平板培養し、ある領域をt=0にピペットチップでこすった。24時間後、発明者らは、(1)TGF-β、(2)SB505124の混合物、または(3)表面上にRGDを有し、SB505124を負荷したPLGAナノ粒子の存在下で、こすった領域における細胞遊走を比較した。癌細胞遊走における低下を創傷面積比としてプロットした(24時間後の無細胞面積/0時間の無細胞面積)(
図10C)。同様の効果が、in vitroでのスフェロイド形成アッセイにおいて観察され、発明者らは、RGDおよびSB505124による相乗的ターゲティングが、スフェロイド形成の低下の増強を促進したことを観察した(
図10D)。これらの研究は、RGDおよびSB505124の同時局在パラクリン送達が、癌細胞遊走を強く阻害したことを実証し、RGDによるナノ粒子ベースのターゲティングが、腫瘍微小環境における滞留を促進することによってTGF-β阻害剤の抗転移性効果をさらに増大させるという概念を支持する。
【0294】
実施例8:RGDペプチドと組み合わせたTGF-β阻害剤ロサルタンの抗腫瘍効果
材料および方法
材料は、実施例6において上記に記載されるとおりとした。ここで、ロサルタンは、同じ濃度でSB505124の代わりに使用した。
【0295】
結果
RGDペプチドの効果もまた、ロサルタンと組み合わせて試験した。アンジオテンシンII受容体アンタゴニストとして最もよく知られているロサルタンもまた、TGF-βをダウンレギュレートする(Guoら、Zhonghua Nei Ke Za Zhi,42:403-8(2003))。
図11A~11Cは、C57BL/6マウスにB16F10メラノーマ細胞、その後(1)空のナノ粒子、(2)可溶性RGDおよび可溶性ロサルタン、(3)ロサルタンを負荷したナノ粒子、または(4)RGDおよびロサルタンを負荷したナノ粒子を注射した場合、RGDおよびロサルタンを負荷したナノ粒子が、腫瘍成長を低下させ、癌を有するマウスの生存を延ばすのに、他の処置のいずれよりもはるかに有効であったことを実証する。
【0296】
実施例9:IL-12をカプセル化しているナノ粒子は抗原特異的CD4+T細胞を刺激する
材料および方法
アビジンにより装飾し、IL-12をカプセル化するPLGAナノ粒子を作製する方法は、実施例3と同一とする。IL-12は、100mgのPLGA当たり100ug/mlの濃度で使用した。発明者らは、オバルブミンペプチドに対して特異的なビオチン化ペプチド/MHC IIを使用する。
【0297】
結果
より長続きする細胞障害性T細胞応答の発生を促進する1つの方法は、CD4+T細胞支援によるものである。CD4+T細胞は、in vivoにおいて、弱った細胞障害性T細胞を救出し、それらの機能を完全に回復させることが以前に示された(Aubertら、Proc Natl Acad Sci,108:21182-21187(2011))。CD4+T細胞支援は、樹状細胞および細胞障害性T細胞の両方に対してCD40-CD40L相互作用の形態で提供することができ、したがって、間接的および直接的な方式でCD8+抗腫瘍応答をプライミングする(Nesbethら、Journal of immunology,184:5654-5662(2010)、Shafer-Weaverら、Cancer Research,69:6256-626(2009))。これに加えて、CD4+T細胞はまた、癌細胞成長の停止を促進するためにナチュラルキラー細胞およびマクロファージを活性化することもできる(Corthay、Immunity,22,371-383(2005)).Perez-Diez,A.,Blood,109:5346-5354(2007).Braumullerら、Nature,494:361-365(2012))。さらに、CD4+T細胞はまた、MHC-Iがダウンレギュレートした腫瘍細胞に対して死滅を指示することもでき、したがって、ある固形腫瘍上でアップレギュレートされ得るMHC-II分子との相互作用を介しての細胞障害性T細胞破壊を回避する。腫瘍特異的CD4+T細胞の移入が転移性メラノーマモデルにおいて臨床的に長続きする応答を生成したこともまた示された(Hunderら、The New England journal of medicine,358,2698-2703(2008)、Kahn、Journal of immunology,146:3235-3241(1991))。より重要なことには、移入されたCD4+T細胞は、非同種腫瘍抗原に対するT細胞応答を促進した。
【0298】
CD4
+T細胞の分化における駆動因子のうちの1つは、サイトカイン環境であり、IL-12は、Th1 CD4
+T細胞の分化を促進する際に役割を果たす。実験は、IL-12をカプセル化し、MHC-IIペプチド複合体を提示する粒子またはポリクローナルCD4 T細胞を標的にするリガンドが、ナイーブ集団からTh1 CD4
+T細胞の分化を促進するかどうかを試験するためにデザインした。IL-12は、PLGAおよびナノリポゲルナノ粒子の中に効率的にカプセル化することができる。IL-12カプセル化ナノ粒子により処置したCD4
+T細胞は、空のナノ粒子と共にインキュベートされた細胞よりも有意により多くのIFNガンマを分泌した(
図12)。これらの細胞によって分泌されたIL-4のレベルは、アッセイの検出限界未満であり、これらがTh1 CD4
+T細胞であることを示した。そのうえ、IL-12をカプセル化しているナノ粒子は、出発ナイーブ集団および空のナノ粒子により処置した細胞と比較して、CD44、CD25、およびCD27発現のアップレギュレーションを促進した。
【0299】
発明者らのIL-12カプセル化ナノ粒子の表面上のMHC-II Ova提示複合体のレベルを、滴定し、続くCD4 T細胞応答を、空のナノ粒子に曝露した細胞と比較した。細胞トレースヨードバイオレットを使用し、IL-12をカプセル化するナノ粒子と共にインキュベートした、より高いパーセンテージのCD4+OT-II細胞が増殖したことを特定した。そのうえ、これらの細胞は、より高いレベルのCD25およびCD44のそれらの発現ならびに有意により高いレベルのインターフェロンガンマの分泌によって示されるようにCD4
+T細胞よりも高度に活性化された(
図13A)。結論として、CD4標的ナノ粒子におけるIL-12のカプセル化は、CD4
+T細胞の応答性および活性化を押し上げる。
【0300】
実施例10:ナノリポゲルの抗腫瘍効果の免疫学的メカニズム
抗腫瘍効果を示すことができる腫瘍抗原特異的T細胞集団を増やすためにナノ粒子を使用する性能について試験するために、HLA-A2との関連でメラノーマ抗原MART-1を含有するナノ粒子を、生成し、ヒトpBLから単離したCD8
+T細胞に提示した(
図13A~13B)。
図13Aにおいて示されるように、これらのナノ粒子は、培養中28日間T細胞集団を増やすのに非常に有効であり、培養の21日後に最大およそ150倍に増加した。その増大は、可溶性IL-2およびMART-1抗原またはIL-2およびMART抗原によりパルスした樹状細胞にT細胞培養物を曝露することによって得られたものよりも、はるかに目立った(
図13A)。培養の14日目以降、MART負荷ナノ粒子により処置した培養物中の大多数のT細胞が、MARTへの曝露と同時に四量体を形成し(
図13B)、T細胞のうちの増えた集団が、実に大部分が抗原特異的であったことを示す。
【0301】
実施例11:ロサルタン/IL-2ナノリポゲルは抗PD1および抗CTLA4療法の効力を増強するアジュバントである
材料および方法
in vivoでの研究のために、マウスは、陽圧拘束ラック中に置いたオートクレーブマイクロアイソレーターケージに収容し、承認プロトコールに従って維持した。マウスは、それぞれ6~8匹の動物の実験およびコントロールグループに無作為に割り当てた。B16F10メラノーマ細胞を、以下のように培養し、B16F10メラノーマ細胞を、10%FBSを有するDMEM条件培地中で培養した。コンフルエンスに達した後、細胞をトリプシン-EDTAを使用して分離し、2×105細胞を静脈内に注射した(B16F10(200,000細胞/50uL)の尾静脈i.v.注射)(Gorelikら、Nat Med.,7(10):1118-22(2001))。
【0302】
処置は、7~10日後に開始した。5mgナノリポゲルからなる各用量を尾静脈注射を介して静脈内に投与した。抗CTLA4および抗PD1を表において示される用量スケジュールでIP投与した。
・in vivo種-転移モデル
-C57BL/6マウス(グループ1~10)
・処置
-i.v.(グループ10)
・スケジュール
-用量×(繰り返しの数)
・この実施例ならびに表1、
図14、およびそれに関連する説明における「IMM1」は、IL-2およびロサルタンの両方を負荷したナノリポゲル(「NLG」)を指す。ナノリポゲルは、上記の実施例において記載されるナノリポゲルと同じポリマーおよび脂質組成を有する。この実施例ならびに表1、
図14、およびそれに関連する説明における「PD1」は、アンタゴニスト抗PD-1抗体を指す。
・この実施例ならびに表1、
図14、およびそれに関連する説明における「Yervoy」は、アンタゴニスト抗CTLA4抗体を指す。
【0303】
【表1-1】
【表1-2】
-
*肺転移数、肝臓計量のために3匹のマウスを屠殺し、TCRシークエンシングおよびCBCのために血液を取り、肺組織を固定し、腫瘍およびT細胞を染色する。
-
**肺転移数、肝臓計量のために2匹のマウスを屠殺し、TCRシークエンシングおよびCBCのために血液を取り、肺組織を固定し、腫瘍およびT細胞を染色する。
-mAbは7および10日目にIPで与える。
-グループ1~4は、血液、腫瘍、および組織分析のために14日目に屠殺したサブセットに加えて、生存コンポーネントを有する。
-グループ5~12はすべて、血液、腫瘍、および組織分析のために14日目に屠殺する。
【0304】
結果
図14に例証される実験からのデータは、重要な2つのポイントを実証する。(1)頻度および用量は、ナノリポゲルのみにおけるIMM1(ロサルタン-IL2)の治療的な機能にとって重要となり得る。例えば、最高用量で3回投与されたIMM-1は、同じ頻度で投与した10分の1用量よりも良好に転移性機能傷害の数を低下させる。(2)抗PD1および抗CTLA4が、IMM1により相加的に機能するものを越えて機能するおよび/またはIMM-1がそれらの抗体の治療的な応答を補強する(adjuvenate)もしくは増強することもまたを示す。例えば、10分の1の用量で2回投与されたIMM1および抗PD1のみは、両方の薬剤の投与と比較して、より高い肺転移数を有する(治療的な相加効果を越える効果)。同じことが、抗CTLA4(Yervoy)に当てはまる。