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特開2022-78357携帯型情報端末、計測方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078357
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】携帯型情報端末、計測方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019006411
(22)【出願日】2019-01-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】越野 誠也
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB01
4C117XB13
4C117XD05
4C117XE28
4C117XE36
4C117XE43
4C117XF13
4C117XG03
4C117XG06
4C117XH16
4C117XL01
4C117XL13
4C117XP12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】肌の透明度指標を測定するための携帯型情報端末を提供する。
【解決手段】筐体に、光源装置100と、撮像装置200と、情報処理装置と、を備える携帯型情報端末1であって、前記情報処理装置は、前記撮像装置200が撮像した画像情報を取得する画像取得部と、前記画像情報を用いて肌の透明度指標を演算する演算部と、を備え、前記画像情報は、前記携帯型情報端末1の前記光源装置100から光が出射する部分及び前記撮像装置200へ光が入射する部分を肌に接触した状態で前記光源装置100を点灯して前記撮像装置200が撮像した画像の情報であることを特徴とする携帯型情報端末1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に、光源装置と、撮像装置と、情報処理装置と、を備える携帯型情報端末であって、
前記情報処理装置は、
前記撮像装置が撮像した画像情報を取得する画像取得部と、
前記画像情報を用いて肌の透明度指標を演算する演算部と、を備え、
前記画像情報は、前記携帯型情報端末の前記光源装置から光が出射する部分及び前記撮像装置へ光が入射する部分を肌に接触した状態で前記光源装置を点灯して前記撮像装置が撮像した画像の情報であること
を特徴する携帯型情報端末。
【請求項2】
前記光源装置と前記撮像装置は、前記筐体の同一平面上に並んで備えられていること
を特徴とする請求項1に記載の携帯型情報端末。
【請求項3】
前記演算部は、前記画像情報の前記光源装置からの距離に対する輝度値に基づいて、前記肌の透明度指標を演算すること
を特徴とする請求項1~2のいずれかに記載の携帯型情報端末。
【請求項4】
前記演算部は、前記輝度値の傾きを演算し、当該傾きに基づいて、前記肌の透明度指標を演算すること
を特徴とする請求項3に記載の携帯型情報端末。
【請求項5】
筐体に、光源装置と、撮像装置と、情報処理装置と、を備える携帯型情報端末が実行する肌の透明度指標計測方法であって、
前記携帯型情報端末の前記光源装置から光が出射する部分及び前記撮像装置へ光が入射する部分を肌に接触した状態で前記光源装置を点灯し、前記撮像装置が撮像するステップと、
前記情報処理装置が前記撮像するステップにおいて前記撮像装置により撮像された画像情報を用いて肌の透明度指標を演算するステップと、
を備える肌の透明度指標計測方法。
【請求項6】
筐体に、光源装置と、撮像装置と、情報処理装置を備える携帯型情報端末の前記情報処理装置に肌の透明度指標計測を実行させるためのプログラムであって、
前記携帯型情報端末の前記光源装置から光が出射する部分及び前記撮像装置へ光が入射する部分を肌に接触した状態で前記光源装置を点灯して前記撮像装置が撮像した画像情報を取得するステップと、
前記画像情報を用いて肌の透明度指標を演算するステップと、
を備える肌の透明度指標計測を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明度を測定する携帯型情報端末、計測方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の透明度を測定する装置が知られている。特許文献1には、筐体内に、ハロゲンランプと、CCDカメラを備える透明度測定装置の発明が開示されている。
【0003】
先行技術は、筐体の底面を皮膚に接触されることにより、皮膚の透明度を測定する。また、先行技術は、CCDカメラをパーソナルコンピュータに接続して、市販の科学的グラフ解析ソフトを使用して透明度を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-240644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術は、上述のように、パーソナルコンピュータに接続する必要があった。また、先行技術は、肌の透明度を測定するための専用の装置を用意する必要があった。
【0006】
本発明の一実施形態は、肌の透明度指標を測定するための携帯型情報端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の携帯型情報端末は、筐体に、光源装置と、撮像装置と、情報処理装置と、を備える携帯型情報端末であって、前記情報処理装置は、前記撮像装置が撮像した画像情報を取得する画像取得部と、前記画像情報を用いて肌の透明度指標を演算する演算部と、を備え、前記画像情報は、前記携帯型情報端末の前記光源装置から光が出射する部分及び前記撮像装置へ光が入射する部分を肌に接触した状態で前記光源装置を点灯して前記撮像装置が撮像した画像の情報である。
【発明の効果】
【0008】
携帯型情報端末を用いて肌の透明度指標を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係る携帯型情報端末の一例の正面図及び背面図である。
図2】本実施形態に係る携帯型情報端末の一例のハードウェア構成図である。
図3図1のA-A部分断面図である。
図4】本実施形態に係る携帯型情報端末の一例の処理ブロック図である。
図5】本実施形態に係る携帯型情報端末を用いる透明度指標測定方法の全体処理の一例のフローチャートである。
図6】本実施形態に係る携帯型情報端末における透明度指標演算処理のフローチャートである。
図7】本実施形態に係る携帯型情報端末による透明度指標測定を行っている状況を示す図である。
図8】本実施形態に係る携帯型情報端末よる透明度指標測定の処理例を説明する図である。
図9】本実施形態に係る携帯型情報端末とサーバ装置の一例の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して本実施形態について説明する。
【0011】
<ハードウェア構成>
《携帯型情報端末1》
図1は、本実施形態に係る携帯型情報端末1の正面図及び背面図である。携帯型情報端末1としては、携帯電話やスマートフォンなどの通信端末やタブレット型コンピュータなどの情報端末であってもよいが、ここでは本実施形態の携帯型情報端末1として、スマートフォンを例として説明する。携帯型情報端末1は、筐体600を備える。携帯型情報端末1の筐体600の表側には、表示入力装置70を備える。表示入力装置70は、いわゆる、タッチパネルである。携帯型情報端末1の筐体600の裏側には、光源装置100と撮像装置200、を備える。撮像装置200は、カメラである。光源装置100は、カメラで撮影する際に使用するライトである。
【0012】
携帯型情報端末1は例えば図2に示すハードウェア構成の携帯型情報端末により実現される。図2は本実施形態に係る携帯型情報端末の一例のハードウェア構成図である。
【0013】
図2の携帯型情報端末1は、CPU(Central Processing Unit)10、RAM(Random Access Memory)20、ROM(Read Only Memory)30、外部I/F(Interface)40、記録媒体45、無線装置50、音声処理装置60、表示入力装置70、光源装置100、撮像装置200を備える。それぞれは、バスB1により接続されている。
【0014】
CPU10は、ROM30や記録媒体45などの記憶装置からプログラム(アプリ)をRAM20上に読み出し、処理を実行する演算装置である。
【0015】
RAM20はプログラム(アプリ)等を一時保持する揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。
【0016】
ROM30は、電源を切ってもプログラム(アプリ)等を保持することができる不揮発性の半導体メモリ(記憶装置)の一例である。ROM30には、起動時に実行されるBIOS(Basic Input/Output System)などのプログラム、OS(Operating System)設定やネットワーク設定などの各種設定が格納されている。
【0017】
外部I/F40は、記録媒体45などの外部装置とのインタフェースである。図2の携帯型情報端末1は外部I/F40を利用して記録媒体45の読み取り及び/又は書き込みを行うことができる。
【0018】
記録媒体45にはSD(Secure Digital)メモリカード、USB(Universal Serial Bus)メモリなどがある。
【0019】
無線装置50は、無線LAN(Local Area Network)やインターネットなどの外部のネットワークに無線で接続するインタフェースである。無線装置50はアンテナを備え、LTE(Long Term Evolution)などの移動体通信方式、または無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの無線通信方式を用いて外部のネットワークに接続する。携帯型情報端末1は無線装置50を利用し、外部のサーバ装置等と通信を行うことができる。
【0020】
音声処理装置60は、音声等の入出力処理を行う装置である。音声処理装置60には、マイク62とスピーカ64が接続され、マイク62から音声を入力し、スピーカ64から音を出力する。
【0021】
表示入力装置70は、タッチパネル付きディスプレイである。UI(User Interface)や情報等の表示を行う。また、画面のタッチを検出することにより、操作等の入力を行う。
【0022】
なお、後述する情報処理部300として機能する携帯型情報端末1のCPU10、RAM20、ROM30、外部I/F40、記録媒体45等が、携帯型情報端末1の情報処理装置の一例である。
【0023】
光源装置100と撮像装置200の配置について説明する。
【0024】
図3は、図1のA-A部分断面図である。携帯型情報端末1は、筐体600の中に、基板700を備える。基板700上には、光源装置100と撮像装置200を備えられている。なお、図3においては、筐体600以外については、断面ではなく外形を図示している。
【0025】
携帯型情報端末1の光源装置100は、光源110を備える。光源110は、例えば、固体発光素子であって、LED(Light Emitting Diode)、LD(Laser Diode)等である。
【0026】
撮像装置200は、撮像素子210と光学系220とを備える。撮像素子210は、例えばCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)センサ、CCD(Charged-coupled device)センサ等の撮像素子である。光学系220は、絞り、レンズ等を備える。光学系220には、オートフォーカス用の機構を備えるようにしてもよい。また、撮像装置200は、シャッタースピードやISO感度の調整ができることが好ましい。
【0027】
筐体600には、光源装置100から光が出射するように、また、撮像装置200に光が入射するように開口が設けられている。光源装置100の開口には、透明カバー610が備えられている。撮像装置200の開口には、透明カバー620が備えられている。本実施形態の透明カバー610の筐体600の外側の面611が携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分の一例である。また、本実施形態の透明カバー620の筐体600の外側の面621が携帯型情報端末1の撮像装置200へ光が入射する部分の一例である。
【0028】
図1図3のように、本実施形態の面611及び面621、すなわち、携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分は、平面視において円形になっている。その形状については、円形に限らず、例えば、矩形等でもよい。また、透明カバー610、620を備えることに限らず、例えば、光学系220の外側のレンズが筐体600の開口から露出するようにしてもよい。
【0029】
図1図3のように、本実施形態に係る携帯型情報端末1の光源装置100と撮像装置200は、筐体600の同一平面上に並んで備えられている。なお、光源装置100と撮像装置200の両方を肌で密着して遮蔽できる程度に平面上に並んでいればよい。例えば、携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分の一部が筐体600に対して突出していたり、陥没していたりしてもよい。また、撮像装置200の光学系220がレンズ鏡筒を備える場合は、そのレンズ鏡筒が突出していてもよい。ただし、いずれの場合も光源装置100から出射した光が直接撮像装置200に入射しない構成とすることが好ましい。また、いずれの場合も光源装置100から出射した光が他の部材で直接反射して、その反射光が撮像装置200に直接入射しない構成とすることが好ましい。
【0030】
本実施形態に係る携帯型情報端末1は上記したハードウェア構成においてプログラム(アプリ)を実行することにより後述するような各種処理を実現できる。
【0031】
本実施形態の携帯型情報端末1は撮像装置200により撮影された肌の透明度指標を演算する。携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を肌に接触し密着させ、光源装置100を点灯した状態で撮像装置200により撮像する。その撮像した画像情報を用いて肌の透明度指標を演算する。その結果を表示入力装置70に表示する。
【0032】
<ソフトウェア構成>
携帯型情報端末1を例として、本実施形態のソフトウェア構成について説明する。図4は本実施形態に係る携帯型情報端末1の一例の処理ブロック図である。携帯型情報端末1は、情報処理部300と、制御部400と、を備える。
【0033】
情報処理部300は、携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を肌に接触し密着させ、光源装置100を点灯した状態で撮像装置200が撮像した画像情報を取得して、肌の透明度指標を算出する。
【0034】
情報処理部300は、画像取得部310と、演算部320と、透明度指標データベース330と、を備える。
【0035】
画像取得部310は撮像装置200が撮影した画像(画像情報)を取得する。画像取得部310は取得した画像情報を演算部320に提供する。
【0036】
演算部320は、画像取得部310から取得した画像情報から、肌の透明度指標を算出する。
【0037】
演算部320は、輝度値算出部322と、傾き算出部324と、透明度指標算出部326と、を備える。
【0038】
輝度値算出部322は、画像取得部310から提供された画像情報から、光源装置100に近い場所から遠い場所に向けて輝度値を算出する。それによって、画像情報の光源装置100からの距離に対する輝度値を算出する。なお、同様に光源装置からの距離に応じた値が得られるのであれば、輝度値に換えて、例えば、明度や強度等の光の強度に関連する物理量を光源装置100からの距離に対して算出するようにしてもよい。
【0039】
傾き算出部324は、輝度値算出部322が算出した輝度値について、光源装置100からの距離に対する変化度合を算出する。具体的には、光源からの距離を独立変数、輝度値を従属変数として、輝度値算出部322が算出した輝度値から線形関数による回帰分析を行う。回帰分析の結果から、求めた近似直線の傾きを変化度合として算出する。
【0040】
透明度指標算出部326は、傾き算出部324が算出した傾きから肌の透明度指標を算出する。具体的には、傾き算出部324が算出した変化度合(傾き)の絶対値の逆数を透明度指標とする。
【0041】
透明度指標データベース330は、携帯型情報端末1で測定した肌の透明度指標のデータベースである。データベースには、例えば、性別、年齢、地域別の透明度指標が記録されている。例えば、透明度指標算出部326で求めた肌の透明度指標から、透明度が平均より高いのか低いのかを比較することができる。なお、透明度指標データベース330のデータは、RAM20、ROM30、記録媒体45等に記憶される。
【0042】
制御部400は、携帯型情報端末1の全体を制御する。
【0043】
<処理>
《全体処理》
本実施形態に係る携帯型情報端末1は、例えば図5に示すような手順で処理を行う。図5は、本実施形態に係る携帯型情報端末1の全体処理の一例を示したフローチャートである。
【0044】
(ステップS10)携帯型情報端末1の制御部400は、ユーザにより透明度指標計測プログラム(アプリ)が実行されると、撮像装置200に起動するように指示する。撮像装置200は、制御部400からの指示を受けて起動する。
【0045】
(ステップS20)携帯型情報端末1の制御部400は、光源装置100に起動するように指示する。光源装置100は、制御部400からの指示を受けて光源装置100の光源110を点灯する。
【0046】
(ステップS30)携帯型情報端末1は、測定者に光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を測定対象の肌に密着して接触するように指示する。具体的には、携帯型情報端末1の制御部400は、表示入力装置70に、「ライトとカメラを測定したい肌に密着させてください。」等のメッセージやイラストを表示する。なお、音声処理装置60によりスピーカ64から音声で指示してもよい。
【0047】
測定者は、携帯型情報端末1の指示に従って、測定対象の肌に光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を密着させる。具体的には、図3において、筐体600の透明カバー610と620の両方を塞ぐように肌に密着させる。測定対象の肌としては、顔、手、腕、脚、唇、耳、頭皮等の肌である。
【0048】
なお、ステップS20とステップ30については順番を逆にしてもよい。すなわち、先に、携帯型情報端末1は、測定者に光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を測定対象の肌に密着して接触するように指示する。その後に、携帯型情報端末1の制御部400は、光源装置100に起動するように指示するようにしてもよい。
【0049】
本実施形態の携帯型情報端末1は、光源装置100と撮像装置200が並んでかつ同一平面上にある。さらに、撮像の際には、測定者は、光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を肌に接触させる。
【0050】
通常、スマートフォン等の携帯型情報端末で撮像する際は、光源装置や撮像装置から離れた対象を撮像する。例えば、接写する場合であっても、数センチメートル程度離した状態で撮像する。
【0051】
しかし、本実施形態の携帯型情報端末1で肌の透明度指標を測定する際には、光源装置100と撮像装置200を肌に密着させる。そのようにすることによって、撮像の際に、光源装置100から撮像装置200に直接光が入ることがない。また、光源装置100の出射部分を肌で遮ることから、光源装置100から出射して肌の表面で反射する光が筐体600で遮られて撮像装置200に入射することがない。また、撮像装置200の入射部分を肌で遮ることから環境光や照明光等の外部からの光が撮像装置200に入射することがない。したがって、実質、光源装置100から出射して肌の内部を透過し撮像装置200に入射する光を測定することができる。
【0052】
なお、本実施形態の携帯型情報端末1で撮影する際には、携帯型情報端末1を測定対象の肌まで移動させることによって携帯型情報端末1を肌に密着させてもよい。又は、例えば携帯型情報端末1をテーブルの上に置くなどして固定しておいて、携帯型情報端末1に肌を押し当てることによって携帯型情報端末1に肌を密着させてもよい。いずれの場合においても、携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を肌に接触した状態となる。
【0053】
(ステップS40)携帯型情報端末1の制御部400は、撮像装置200に適切に撮像できるようにシャッタースピード、絞り、ISO感度を調整するように指示する。撮像装置200は、制御部400からの指示を受けて適切な画像を撮像できるようにシャッタースピード、絞り、ISO感度を調整する。調整後は、シャッタースピード、絞り、ISO感度を固定する。
【0054】
なお、例えば、測定者は、携帯型情報端末1の指示に従って、測定対象の肌に光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を密着させるが、正しく密着させることができていない場合も考えられる。その場合には、シャッタースピード、絞り、ISO感度を調整することができなかったり、調整した値が標準的な調整値より大きく異なったりする。したがって、そのことを検出して、測定対象の肌に光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分を密着させるように再度指示することもできる。
【0055】
(ステップS50)携帯型情報端末1の制御部400は、撮像装置200に撮像するように指示する。撮像装置200は、制御部400からの指示を受けて撮像する。撮像の際のタイミングについて、例えば、表示入力装置70を測定者がタップしたら、制御部400は撮像装置200に撮像を指示してもよい。また、表示入力装置70の表示や音声処理装置60によるスピーカ64からの音声によりカウントダウンすることによって、カウントダウンが終了したら、制御部400は撮像装置200に撮像を指示してもよい。
【0056】
(ステップS60)携帯型情報端末1の情報処理部300は、撮像装置200で撮像した画像情報を取得して肌の透明度指標を算出する透明度指標演算処理を行う。
【0057】
(ステップS70)携帯型情報端末1は、情報処理部300で演算した結果を出力する。出力としては、例えば、情報処理部300で演算した透明度指標に基づいて、透明度指標データベース330の値と比較して、平均より肌の透明度が高いか低いかを出力する。出力は、表示入力装置70で表示してもよいし、音声処理装置60によりスピーカ64から音声で出力してもよい。また、情報処理部300で演算した透明度指標そのものを出力してもよい。
【0058】
《S60:透明度指標演算処理》
図6は透明度指標演算処理の一例のフローチャートである。
【0059】
(ステップS110)情報処理部300の画像取得部310は、撮像装置200が撮像した画像情報を撮像装置200から取得する。画像取得部310は、取得した画像情報を演算部320に提供する。
【0060】
(ステップS120)演算部320の輝度値算出部322は、画像取得部310から提供された画像情報から、光源装置100に近い場所から遠い場所に向けて輝度値を算出する。それによって、画像情報の光源装置100からの距離に対する輝度値を算出する。
【0061】
(ステップS130)演算部320の傾き算出部324は、輝度値算出部322が算出した輝度値について、光源装置100からの距離に対する変化度合を算出する。具体的には、光源からの距離を独立変数、輝度値を従属変数として、輝度値算出部322が算出した輝度値から線形関数による回帰分析を行う。回帰分析の結果から、求めた近似直線の傾きを変化度合として算出する。なお、回帰分析の際にモデル関数については、線形関数に限らず、非線形関数等を用いてもよい。また、変化度合を算出する方法としては、回帰分析に限らない。例えば、主成分分析等を用いてもよい。
【0062】
(ステップS140)演算部320の透明度指標算出部326は、傾き算出部324が算出した光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合(傾き)から肌の透明度指標を算出する。具体的には、傾き算出部324が算出した光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合(傾き)の絶対値の逆数を透明度指標とする。本実施形態では、透明度指標として、輝度値の変化度合(傾き)の絶対値の逆数を用いたがそれに限らない。例えば、輝度値の変化度合(傾き)を関数(例えば、線形関数、高次関数、等)に代入して求めるようにしてもよい。
【0063】
《処理例》
実際に処理を行った結果について説明する。図7は、本実施形態に係る携帯型情報端末による透明度指標測定を行っている状況を示す図である。図8は、本実施形態に係る携帯型情報端末よる透明度指標測定の処理例を説明する図である。
【0064】
図7(a)は、測定対象の肌(この場合は、手H)を携帯型情報端末1の光源装置100から光が出射する部分及び撮像装置200へ光が入射する部分に密着させて、光源装置100と撮像装置200の両方を塞いでいる状況を示す図である。図7(a)において、光源装置100が点灯している。図7(b)は、光源装置100と撮像装置200に密着している部分を拡大した図である。光源装置100の光が、肌の内部まで入射していることがわかる。
【0065】
図8(a)は、画像取得部310が取得した画像情報である。Aが透明度の高い肌を撮像装置200で撮像した画像情報である。Bが透明度の低い肌を撮像装置200で撮像した画像情報である。図8(a)の左側に光源装置100がある。そのため、画像取得部310が取得した画像情報では、左側、すなわち、光源装置100に近い側の輝度が高く、右側、すなわち、光源装置100より遠い側の輝度が低くなっている。
【0066】
透明度の高い肌を撮像した画像情報に比較すると、透明度の低い肌を撮像した画像情報の方が、特に画像の右側で輝度が低くなっていることがわかる。これは、透明度の低い肌の場合は、肌の内部を光が伝搬する際に、光がより散乱されやすいため光源から遠くに光が伝搬しにくくなっているからである。
【0067】
図8(b)は、光源装置100からの距離に対する輝度値を求めた結果である。Aが透明度の高い肌、Bが透明度の低い肌を撮像した画像情報から光源装置100からの距離に対する輝度値を求めた結果である。横軸は、画像のピクセル位置となっており、光源装置100から距離に相当する。縦軸は、輝度値である。
【0068】
図8(c)は、図8(b)の結果を一つのグラフ中に表した結果である。図8(c)より、透明度の低い肌を撮像した画像情報の方が、光源からの距離に対して、輝度がより低下している。
【0069】
透明度による輝度値の違いを評価するために、光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合として傾きを求める。図8(c)のように、光源からの距離を独立変数、輝度値を従属変数として、輝度値算出部322が算出した輝度値から線形関数による回帰分析を行った。その結果、透明度の高い肌(A)では、光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合(傾き)は-0.0131となった。また、透明度の低い肌(B)では、光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合(傾き)は-0.022となった。
【0070】
次に、透明度指標として光源装置100からの距離に対する輝度値の変化度合(傾き)の絶対値の逆数を求めた。なお、その結果、透明度の高い肌(A)では、透明度指標は76.34(=1/0.0131)となった。また、透明度の低い肌(B)では、透明度指標は45.45(=1/0.022)となった。
【0071】
以上のように、線形関数の回帰分析を行うことによって、線形関数の傾きで透明度を指標化できる。すなわち、傾きが小さい場合は透明度が高く、傾きが大きい場合は透明度が低い。これは、透明度が低い場合は、透明度が高い場合と比較すると光源装置の近くでより光が減衰するためである。
【0072】
また、本実施形態の携帯型情報端末1は、透明度指標データベース330を備えていることから、透明度指標データベース330の値と比較して、例えば、同年代同性の人と比較して肌の透明度が高いか低いかを透明度指標を用いて表すことができる。また、一定の間隔(例えば、月単位)で測定することによって、自己の肌の時間的変化を透明度指標によって計測してもよい。
【0073】
<変形例>
市販のスマートフォンにおいて、フラッシュ等の光源装置とカメラ等の撮像装置の位置関係がスマートフォンの機種等によって異なる場合がある。本透明度指標を算出する際に、スマートフォンの機種情報等から光源装置と撮像装置の位置関係を判別し,光源装置と撮像装置の位置関係による影響を後処理で補正するようにしてもよい。
【0074】
本実施形態では、携帯型情報端末1単体で処理を行ったが、図9のように携帯型情報端末1と、携帯型情報端末1とネットワーク4を介して接続されるサーバ装置5と、を組み合わせることにより処理を行ってもよい。例えば、以下のようにしてもよい。最初に、図5のステップS10~S50の処理を携帯型情報端末1で行う。次に、携帯型情報端末1の撮像装置200で撮像した画像情報をサーバ装置5に送信する。サーバ装置5でステップS60(S310~S330)の処理を行う。サーバ装置5で算出した透明度指標を携帯型情報端末1に送信する。最後に、ステップS70の処理を携帯型情報端末1で行う。
【0075】
また、携帯型情報端末1から、サーバ装置5に測定を行った透明度指標を送信するようにしてもよい。透明度指標を受け取ったサーバ装置5は、複数の携帯型情報端末1から測定結果を集積して統計処理を行うことによって、透明度指標データベース330用のデータを新たに集計するようにしてもよい。また、その集計した結果を携帯型情報端末1に送信して、携帯型情報端末1は送信された集計結果を用いて透明度指標データベース330を更新するようにしてもよい。
【0076】
なお、本実施形態の携帯型情報端末1はスマートフォンであったが、光源装置と撮像装置が隣接している機器を用いるようにしてもよい。例えば、携帯電話、タブレット型コンピュータやPDA(Personal Digital Assistant)、携帯型ゲーム機等でもよい。
【0077】
なお、本実施形態の携帯型情報端末1において、固体やゲル状の物質を測定対象とすることができる。具体的には、例えば、皮膚(地肌)、化粧後の皮膚、人口皮膚などの生体材料、樹脂材料、陶器、ガラス等の透明度指標を測定することができる。例えば、対象が固い場合には、対象と携帯型情報端末1を密着できるように、対象と携帯型情報端末1との間に光源装置と撮像装置のそれぞれの部分に開口を有する柔軟性のある遮光部材を備えるようにしてもよい。当該遮光部材によって、光源装置からの光が測定対象に入射し、測定対象から光が撮像装置に入射することができるとともに、光源装置から撮像装置に直接入射する光や測定対象以外からの環境光等を遮光することができる。
【0078】
本実施形態の携帯型情報端末1を用いることによって、専用の装置を用いることなく、一般的に普及しているスマートフォンによって、肌の透明度指標を測定することができる。例えば、自宅等で簡単に肌の透明度指標の測定を行うことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 携帯型情報端末
100 光源装置
200 撮像装置
300 情報処理部
310 画像取得部
320 演算部
600 筐体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9