(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022007837
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】粒子の製造方法、粒子またはスラリーの塗布方法、2次電池または2次電池の製造方法、全固体電池または全固体電池の製造方法、LEDまたはLEDの製造方法、蛍光体シートまたは蛍光体シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 7/24 20060101AFI20220105BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20220105BHJP
H01M 4/139 20100101ALI20220105BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20220105BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
B05D7/24 301G
B05D1/36 Z
H01M4/139
H01M10/0562
G02B5/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020124760
(22)【出願日】2020-06-27
(71)【出願人】
【識別番号】511097692
【氏名又は名称】松永 正文
(72)【発明者】
【氏名】松永 正文
【テーマコード(参考)】
2H148
4D075
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
2H148AA07
4D075AE03
4D075DC19
4D075DC25
4D075EA10
4D075EC02
4D075EC04
4D075EC22
4D075EC23
4D075EC53
5H029AJ14
5H029AM12
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ09
5H029HJ05
5H050AA19
5H050BA17
5H050DA13
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】すそ野が広い粒度分布の粒子であっても単位面積当たり均一な混合ができる、粒子の製造方法、粒子またはスラリーの塗布方法、2次電池または2次電池の製造方法、全固体電池または全固体電池の製造方法、LEDまたはLEDの製造方法、蛍光体シートまたは蛍光体シートの製造方法の提供。
【解決手段】粒度分布を小さい順から例えば3分割にして、必要によりさらに多くの分割例えば10の群に分割し大きい粒子群のスラリーのみのバインダー量を多くすることでスラリーの粒子の沈殿を防止できる。また中ぐらい或いは小に分割した粒子群はバインダーを少なくできる。それらを複合的に薄膜で交互に塗布すると必然的にバインダーの量を少なくできることになる。また、大きな粒子のみの粒子群の体積は極めて少ないため、バインダーを少なくして溶媒を多くして粘度をさげ、高速で移動または循環することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの粒度分布の粒子群を小さい方からまたは大きい方からの順に複数の粒子群に分割して次の工程に移動させることを特徴とする粒子の製造方法。
【請求項2】
複数の粒度分布の粒子(群)をそれぞれ小さい方からまたは大きい方からの順に複数の粒子群に分割して次の工程に移動させることを特徴とする請求項1の粒子の製造方法。
【請求項3】
前記複数の粒度分布の粒子が異種の複数の粒子の粒度分布であることを特徴とする請求項2の粒子の製造方法。
【請求項4】
前記次の工程がそれぞれの粒子群の塗布装置での(対象物への)塗布、またはそれぞれの粒子群をスラリーにして(塗布装置で対象物へ)塗布することを特徴とする請求項1乃至3の塗布方法。
【請求項5】
前記複数の粒子群または複数のスラリーをそれぞれの複数の塗布装置で対象物に塗布することを特徴とする請求項1乃至4の塗布方法。
【請求項6】
前記塗布は1種類の粒度分布の粒子を複数の粒子サイズに分割した粒子群にし、または異なる種類の粒子を複数の粒子サイズに分割した粒子群にし、またはそれぞれの前記粒子群で製造したスラリーを薄膜で対象物に塗布し積層することを特徴とする請求項5の塗布方法。
【請求項7】
前記粒子またはスラリーは2次電池電極向け活物質であることを特徴とする請求項1乃至6の2次電池または2次電池の製造方法。
【請求項8】
前記2次電池は全固体電池であって、前記粒子またはスラリーは活物質または固体電解質からなることを特徴とする請求項7の全固体電池または全固体電池の製造方法。
【請求項9】
前記対象物がLEDであって、粒子が蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至6のLEDまたはLEDの製造方法。
【請求項10】
前記対象物が(蛍光体シート用)基材であって、粒子が蛍光体であることを特徴とする請求項1乃至6の蛍光体シートまたは蛍光体シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粒子の製造方法、粒子またはスラリーの塗布方法、2次電池または2次電池の製造方法、全固体電池または全固体電池の製造方法、LEDまたはLEDの製造方法、蛍光体シートまたは蛍光体シートの製造方法に係わる。
従来特に付加価値の高い蛍光体などの粒子は価格が高く、底辺が狭いシャープな粒度分布にすることが求められていたが高価になりすぎるため、一般的には底辺の広いブロードな粒度分布の粒子が多かった。更にメジアン径がD25以下更にはD10以下の微粉領域やD75以上更にはD95以上の粗大粒子領域をアンダーカットまたはオーバーカットしたシャープな粒度分布にするには無駄が出ることとコストがかかりすぎ、生産ライン操業時のランニングコストを圧迫することから採用が敬遠されていた。そのため1種類の粒子の場合、粒子群またはスラリーにしてディスペンサーやスプレイなどの一度の塗布では単位面積当たり特に平方ミリメートル以下の塗布重量のばらつきが大きかった。さりとてLED用蛍光体粒子径はD50が10乃至20マイクロメートルと比較的大きい粒子が性能が良いので、むやみに小さくするのは好まれなかった。そのようなことを解決するため本発明人の発明であって、あるいは提案する薄膜で可能な限り多くの層数積層し均しの方法で行うことにより品質を向上させていた。異なる表現では薄膜で幾重にも塗り重ねする均し方で塗膜分布をできるだけ均一にするようにしていた。一方複数の異種の異なる粒子群の混合体は複数のそれぞれの粒度分布が絡み合う構図、つまり複数の異種の粒子群の粒度分布が入り乱れ、薄膜積層方法でも限界があった。そのため本発明者はそれぞれの色の蛍光体からなる独立した別々のスラリーを所望する比率で交互に塗り重ねる特許技術で、LEDの製造あるいはLEDに被覆するための蛍光体シートの製造方法を提案している。一方それぞれの蛍光体の粒度分布は底辺の狭いシャープな粒度分布が要望されているが価格的に折り合いがつかないのが一般的である。
本発明による塗布とは特に限定しないが、理想的な方法がスプレイ方法、更に詳細にはパルス的スプレイ方法が好ましく、特にスラリーでは粒子の細密充填が望まれるためインパクトを持って対象物に打ち当てるインパクトパルス方法が理想であった。それ以外にも薄膜で積層できたら、または塗布時別系列の流路のスラリー等を本発明者が特許文献で過去から提案している方法で合流または理想的な混合が出来たら、ロールコート、スロットノズル(スロットダイ)コート、スラリー等を粒子にして細長いスリット溝から噴出するスリットノズルコート、スクリーンプリンティング、カーテンコート、ディスペンサー塗布、インクジェット、微粒子発生装置で発生させた微粒子をキャリヤーガスで移送し塗布する方法、ベル或いはディスクを高速回転して遠心力で霧にする回転霧化を含む霧化(含む繊維化)施与、静電霧化(含む繊維化)施与等の粒子や繊維を対象物に直接あるいは多孔質物体に間接塗布し、加圧または吸引などを利用して間接的に塗布する工法を含み、本発明者により開発されたマイクロカーテン施与も含む。
マイクロカーテン法とは広角パターンのエアレススプレイノズル等を使用し液体などを0.3MPa前後の比較的低圧でスプレイする際、霧になる前の液膜の部分を使用して被塗物とスプレイノズルを相対移動して塗布する方法であって塗面にオーバースプレイ粒子は発生しない。被塗物を通り過ぎて距離が離れると霧状に変化する特性を利用し、液膜のみで塗布し塗着効率を100%にする方法である。
また霧化(繊維化)施与とはスプレイによる粒子化以外に、固形微粒子を含む液体などを超音波やバブリング法等により液面を飛び出す瞬間微粒子化したり、エレクトロスピニングなどのスピン、回転体による遠心力で粒子化したり繊維化したりして塗布することである。また微粒子で移動して塗布する方法はスプレイやスプレイ流を同種の液面または他の物体に比較的近距離で可能ならパルス的に衝突させ超微粒子をつくりだし、キャリヤーガスなどで運び、そのまま塗布または結露させるあるいはプラスして静電気的に帯電して塗布することができる。粒子等は帯電して塗布することができる。或いは別の圧縮ガスで粒子群を高速で引き延ばしジェット化して極細パターンで施与する方法や、メルトブローン方式などを液体に応用して広幅で高速のラインスピードの対象物に対応した粒子や繊維をつくりだす方法も本発明には含まれる。前記遠心霧化では静電気を利用した塗装でない限り、霧化した粒子は微細で方向性が不安定であるので不活性ガスのアルゴンや窒素など必要によりドライな圧縮エアなどの圧縮ガスの力を借りて(air assist)対象物にそれらを付着あるいは塗布することができる。
あるいは粒子群の微粒子のままエアロゾルディポジション(AD)法等により対象物に成膜することもできる。本発明者の均一な成膜が可能なAD法は特に理想とされているサブミクロン程度の粒子群や衝撃力で壊れて付着しやすい粒子に効果的である。一方材質や径の大きさ形状繊維などに成約があるのでスラリーにして塗布すると選択肢が広がる。
本発明では微粒子を含む粒子にして塗布する方法を総称して以下スプレイとして説明する。
【背景技術】
【0002】
モバイルや電気自動車の増加でリチウム電池を含む2次電池のハイパワー化や急速充電が求められているが、大型電気自動車などでは1時間以上が必要とされている。その時間の長さと安全性のリスク、電池システムの小型化、高性能化等から電解質を液体から固体にする開発が進んでいる。この電池方式では、冷却装置を必要としないなどの理由でトータルスペースを少なくでき、80%充填する時間を数分に短縮するなどを目的としている。その代表格が電解質を固体にした全固体電池でイオンの違いによりリチウム2次電池系やナトリウム2次電池系などがある。
またLED分野では高演色性例えば、CRI90以上では高付加価値製品でかつ高性能化が求められ、例えば、MacAdam 3step、更にはMacAdam 2stepで、高い歩留まり例えば90%以上が求められていた。YAG蛍光体と赤蛍光体、緑蛍光体と赤蛍光体の比較的シャープな粒度分布にして別々にそれらのスラリーを作成し交互に薄膜で積層できる以下の公報例えば再表2011/083841、特開2013-144279、或いは特開2014-1427443等の本発明者による発明を駆使することでMacAdam 3stepで歩留まり90%は達成できていた。しかしシャープな粒度分布の蛍光体にするには価格が高く、製品価格に反映できる蛍光体材料代を削減する要求が高まっていた。
そのため材料費は高価にすることなくMacAdam 3stepで高歩留まり、更にはそれ以上の品質に応える必要があった。
【0003】
従来演色性を上げるために赤色蛍光体とYAG蛍光体または緑色蛍光体を混色で一つのスラリーにしてLEDに塗布したり、蛍光体シート用の基材に塗布して蛍光体シートを作成していた。
しかしそもそも種類が違い比重や粒子径が違いかつ粒度分布が違う蛍光体を一つのスラリーにする場合、いかに優れた撹拌装置や分散装置を使用して均一分散したつもりでもミクロ的な分散状態は異なり、かつ次の工程に移動することで分散状態が変化するので、前記規格に対し歩留まりが極めて低かった。
そのため本発明者により発明され特許文献1の方法では例えば異なる2つの蛍光体を別々のスラリーにして交互に薄膜で塗布するのでそれぞれの蛍光体がシャープな粒度分布でさえあれば高い歩留まりの製品を製造できていた。しかしすそ野の広い粒度分布の蛍光体を使用すると、LEDチップはハイパワーの例えば1Wのチップであっても一般的に一辺は1mm以下が多かった。その場合でも対象とする単位面積が1平方ミリメートル以下当たりの前記2色の混合比率が重要になるので、狭い面積の場合極めて不利で、所望する品質を達成するのは極めて困難であった。同様なことがCSPタイプLEDチップ向けの蛍光体シートでもおきていた。そのため少なくとも0.1平方ミリメートル以下例えば0.04平方ミリメートル以下の小面積での均一性が求められていた。何故ならメジアン径D50が10マイクロメートルでD95以上が50マイクロメートルの場合50マイクロメートルの粒子1個は影響が高く10マイクロメートル125個分と同じ体積であるからである。
一方2次電池の電極でもマイクロメートルサイズの活物質の粒度分布のすそ野が広いとそれに比較して導電助剤の微粉や短繊維はナノサイズであるので特に短繊維の均一分散は極めて難しかった。負極では活物質はカーボンだけでなく性能向上のためシリコン微粒子が採用されるがこちらも微量に均一に分散することは極めて難しかった。
全固体電池の固体電解質粒子、正極活物質層粒子、導電助剤、負極活物質粒子均一分散もシャープな粒度分布にしない限り同じく類似した問題が発生していた。また活物質粒子量を集電体から順に変化させて充放電性能を向上させるための傾斜塗布や同じく全固体電池の活物質粒子と電解質粒子の比率を傾斜的に変化させる簡便な方法も求められていた。
【0004】
特許文献2は同じく本発明者により発明された方法でたとえば2種類のシャープな粒度分布をもつ粒子は比重が違っていても塗布量を計測できるので容易に品質保証につなげることができるが、少なくとも一方の蛍光体のすそ野が広いと、重量変化の要因が絞りづらくそれぞれの調整部位を調整しながら確認を行うトライアンドエラー的な複雑なキャリブレーションを必要としていたため極めて生産性が低かった。
【0005】
文献1や文献2の方法においてはシャープな粒度分布の異種の蛍光体同士の組み合わせは歩留まり向上的にとても有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再表2011/083841
【特許文献2】特開2013-144279
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は従来の例えすそ野が広い粒度分布の粒子であってもまたは複数の異種の粒度分布の粒子の組み合わせであっても単位面積当たり均一に、または仮に複数の異種の粒子のすそ野が広くても均一な混合ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は前述の課題を解決するためになされたもので、本発明の目的はすそ野の広い粒度分布の粒子であっても、それを所望する粒子のサイズごとの所望する数に分割し、その数の粒子群に分級して例えば次工程の塗布装置もそれぞれの粒子群に対応した数でハンドリングすることである。スラリーにする場合でもその数分のスラリーを製造したら良く塗布装置もその数分用意したら良い。
微粒子の分割分級は超音波式振動ふるいでも気流式微粉分級でも良い。
【0009】
本発明は少なくとも一つの粒度分布の粒子群を小さい方からまたは大きい方からの順に複数の粒子群に分割して次の工程に移動させることを特徴とする粒子の製造方法を提供する。
【0010】
本発明は複数の粒度分布の粒子(群)をそれぞれ小さい方からまたは大きい方からの順の複数の粒子群に分割して次の工程に移動させることを特徴とする粒子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明は前記複数の粒度分布の粒子が異種の複数の粒子の粒度分布であることを特徴とする粒子の製造方法を提供する。
【0012】
本発明は前記次の工程がそれぞれの粒子群の塗布装置での(対象物への)塗布、またはそれぞれの粒子群をスラリーにして(塗布装置で対象物へ)塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0013】
本発明の前記複数の粒子群または複数のスラリーをそれぞれの複数の塗布装置で対象物に塗布することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0014】
本発明の前記塗布は1種類の粒度分布の粒子を複数の粒子サイズに分割した粒子群にし、または異なる種類の粒子を複数の粒子サイズに分割した粒子群にし、またはそれぞれの前記粒子群で製造したスラリーを薄膜で対象物に塗布し積層することを特徴とする塗布方法を提供する。
【0015】
本発明の前記粒子またはスラリーは2次電池電極向け活物質であることを特徴とする2次電池または2次電池の製造方法を提供する。
【0016】
本発明の前記2次電池は全固体電池であって、前記粒子またはスラリーは活物質または固体電解質からなることを特徴とする全固体電池または全固体電池の製造方法を提供する。
【0017】
本発明は前記対象物がLEDであって、粒子が蛍光体であることを特徴とするLEDまたはLEDの製造方法を提供する。
【0018】
本発明は前記対象物が(蛍光体シート用)基材であって、粒子が蛍光体であることを特徴とする蛍光体シートまたは蛍光体シートの製造方法を提供する。
【0019】
本発明は粒子の材質、種類、形状、硬度、平均粒子径、粒度分布等を問わない。
【0020】
またスラリーの粒子の材質、種類、形状、平均粒子径、粒度分布、粘度、固形分を問わない。
【0021】
また本発明では対象物または塗布手段または塗布装置の種類、形状、数量、大きさ、重量などを問わない。
【0022】
本発明では2次電池の種類を問わない。リチウムイオン2次電池で良く、リチウムイオンポリマー2次電池でも良い。
また本発明の次世代2次電池は金属空気電池で良く、全固体電池でも良い。更には全固体空気電池で良い。
【0023】
また本発明では固体電解質粒子は硫化物系、酸化物系の種類を問わない。また正極用または負極用活物質粒子の種類、形状を問わない。
【0024】
本発明では全固体電池の性能を向上させるために、負極用の活物質にカーボン粒子、グラフェンなどの鱗片形状、或いは短繊維と酸化シリコン(SiOx)の微粒子を選択できる。
【0025】
本発明ではスラリーにしなくとも特にサブミクロン粒子を対象物に真空下で高速で衝突させ成膜できる。粒子は粒子径がサブミクロンより大きくても衝突エネルギーで壊れ付着しやすい性質が良い。
【0026】
本発明のLEDやLED向け蛍光体シート基材、或いは燃料電池電極形成むけPEMなどの基材、2次電池などの集電体などの基材に粒子をスラリーにしてスプレイし、インパクトを高め、塗着効率を高めるためにスプレイ粒子などを例えば30度以下より好ましくは15度以下のスプレイ角度で対象物との距離を70ミリメートル以下更に好ましくは50ミリメートル以下にしてインパクトを持って対象物に衝突させて付着させることができる。そのため粒子群を大きさごとに分割して所望する順序で塗布できるので超緻密な粒子群での形成が可能である。
【0027】
また本発明の全固体電池製造では正極層、電解質層、負極層の全部を電極用スラリーや電解質用スラリーでスプレイなどにより粒子化し積層して積層体を形成できる。そのため活物質粒子、電解質粒子、導電助剤を選択して充放電の性能を上げるため活物質の比率を変える傾斜分布になるように塗布することができる。傾斜塗布は粒子での吹きつけが良くスプレイ特にパルススプレイ、インクジェット、ディスペンサー、あるいはインクジェットやディスペンサー粒子に圧縮ガスを加えた方法により更に小さい粒子群が形成できる。粒子径の大きさごとにスラリーが分割できているので組み合わせが広がり効果的である。
【0028】
更に本発明ではメインの1種類のブロードな粒度分布をもつ粒子を例えば小さい順に小、中、大の粒子群に分割し、あるいはさらに細分化例えば10の粒子群に分割し、必要によりそれぞれのスラリーにして例えばパルス的にスプレイし積層することで厳密に均一な混合状態を作り出すことができる。また複数種の粒子を混合したスラリーを所望する場合、他の種類の粒子が小さい例えば、ナノサイズで或いは混合比率が少ない場合は、前記分割した粒子との所望する重量比でそれぞれ添加し必要によりスラリーにして塗布することもできる。他の粒子の比率が多くその粒子がブロードな粒度分布を示す場合、前記メインの粒子同様所望するサイズまたは数に分割し、種類の異なる複数のスラリーを作成し、それに対応した複数の塗布装置で前記メインの粒子のスラリーとの所望する混合比で、薄膜でかつ例えば交互に塗布することができる。その場合でもパルスが効果的で、サブミクロン以下の平均粒子径の場合のスラリーは微細な液滴で吐出するディスペンサーやインクジェットを使用することができるし、更に微細化するためそれらの液滴を圧縮ガスで潰すことによるスプレイで、或いは他のエネルギー例えば超音波や例えばフェムト秒あるいはそれより上位機種ののレーザー等で更に微粒子にして塗布分布を広げることができる。前記例えば粒子径順に分割した粒子群はそれぞれの種類の比率に対応できるように例えば大、中、小に分別したもの同士の複数種の粒子群を混合して例えばスラリーにし使用することができる。また別々の独立した塗布装置で薄膜で交互に積層しながら所望する積層での混合状態にすることができる。
【0029】
また特にナノ粒子の導電助剤はスラリーの固形分濃度を下げて、例えば10%以下のスラリー状態で薄膜の分散状態になるようにして前記分割したそれぞれの粒子サイズに応じ幾重にも活物質粒子に絡ませるように積層すればするほど単位面積当たりの塗布量がより均一になるので電池の性能アップにつながる。電解質粒子に更に絡ませることも否定しない。
【0030】
さらに本発明では負極に効果的なシリコンや酸化シリコン粒子の膨張収縮による性能低下を防止するため強力な粘着剤を例えばカプセル化した粒子としてシリコン粒子等に付着させることができる。
【0031】
また対象物は加熱も冷却をすることもできる。特にスラリーの場合溶媒の揮発の面から30乃至200℃が好まく更には50乃至150℃にすることができる。
【0032】
本発明ではスラリーを粒子化して対象物に付着させる際、パルス的に行うことができる。更にインパクトを上げることができる。例えば2流体スプレイ方式ではスラリーもエアもパルス的に行い方向性を持った粒子のみが移動し付着する。
そのため付着する効率も通常のスプレイの30~50%程度に対して95%以上と微粒子化して付着させる場合インクジェットに次ぐ高塗着効率を得ることができる。
更にパルス的スプレイで行うことにより導電助剤などの塗布量を通常のスプレイの10分の1以下の量のスプレイ量にしながら行うこともできるので導電助剤と電極の活物質との比率を調整する際、極めて便利である。
【発明の効果】
【0033】
上記のように本発明によれば塗装などはもちろんのこと性能の高い2次電池や全固体電池、LED、LED用蛍光体シート等を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】 本発明の実施の形態に係るブロードな粒度分布を示粒子の略図である。
【
図2】 本発明の実施の形態に係る、ブロードな粒度分布の粒子を大まかに小、中、大の粒子径に分割した図である。
【
図3】 本発明の実施の形態に係わる3種類の比較的シャープな粒度分布の小、中、大の粒子群の図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は発明の理解を容易にするための一例にすぎず本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加、置換、変形等を施すことを排除するものではない。
【0036】
図面は本発明の好適な実施の形態を概略的に示している。
【0037】
図1において粒度分布はメジアン径D0付近の微粉からD50の粒子径を経由してD100までのブロードな分布を示している。
D50以上のD100付近の粒子径が50マイクロメートル更には80マイクロメートルを超える大きいこの粒子を含む粒子群をスラリーにして塗布する場合、バインダーを多くして大きな粒子が沈降しない比較的高い粘度にしてかつ時間をかけて分散する必要があった。又D50が10マイクロメートルの場合、50マイクロメートルの1個の粒子径の体積は10マイクロメートルの125倍であるので大粒子径の粒子がある部位と無い部位では品質が大きく違うことになる。
【0038】
図2には本発明の一例を示している。
つまりD0付近とD50間のaまでのD0、a間の範囲の粒子径の小さい粒子群21と、D50前後のa、b間の中ぐらいの粒子群22と、b以上の大きい粒子径の粒子群23に3分割している。本発明では分割数を限定するものでなくアプリケーションに応じ適宜決めたら良く、例えば10分割でも良く、それ以上でも良い。更に品質を重要視しない場合分割は2でも良い。
しかし本発明ではスラリーの沈殿を防ぐ為、大きい粒子群のみにバインダーを多くできる。粒子移動速度である循環速度を速くすることでバインダーは少なくすることもできる。
他の多くの粒子群はバインダーを可能な限り少なく、低粘度のスラリーにできる。低粘度でバインダーが少ないと薄膜で積層できるので前記粒子径が大きい粒子群でバインダーが仮に多くても多層積層することでトータルのバインダーを少なくすることができる。粒子径が大きくても本発明の方法では粒子数が少ないので低粘度のスラリーにして高速で移動又は循環して粒子の沈殿を防止できる。
【0039】
図3はシャープな3つの粒子群の粒度分布を示している。
シャープな粒度分布(小)31、シャープな粒度分布(中)32、シャープな粒度分布(大)33で構成されている。
このような粒度分布の粒子やスラリーを本発明の複数の塗布装置で所望する比率で必要により交互に積層できるので理想的であるが、材料コストが高い。
【0040】
本発明ではスラリーにして容器間を圧力差で高速に移動させ沈殿を防止する方法を採用できる。もちろんのことポンプでスラリーを循環させることもできる。スラリーの数だけ移動装置と塗布装置を設ければよく、またスラリーの数だけポンプ装置を設けたら良い。
前記複数のスラリーの塗布は複数のスラリーの数のインクジェットやディスペンサーでよく、それらを印刷のように密に塗布し面塗布できる。特にインクジェットでは装置の構造上小さい粒子群例えば1マイクメートル以下、更にはサブミクロン以下の粒子サイズの粒子群の時優位である。さらにインクジェットやディスペンサーの液滴は圧縮気体などを液滴に衝突させスラリー粒子を更に微細化して薄膜塗布が可能である。また一般塗装分野で使用されているディスクやベルの回転霧化装置でディスクの内側から外側に向かって粒子サイズの違うスラリーのヘッド吐出口を所望する順序にセットしそれぞれを所望する流量にセットして流出させることで円板やディスク等の遠心力で必要により静電気の力も加わって粒子化し理想の大中小の粒子混合体スラリー粒子が製造できるし、対象物に塗布できる。
前記粒子群は粒子のままエアロゾルディポジション(AD)法等により対象物に成膜しても良いが、粒子の材質や径の大きさなどに成約があるのでスラリーにして塗布すると選択肢が広がる。それ以外にバブラーや超音波での霧化、スプレイ流を至近距離の回転するロールあるいは同種の液面に衝突させて微細粒子を製造できるし対象物に塗布できる。
微粒子化させた粒子群はキャリヤーガスで移動させ対象物に付着させたら良く対象物が導電体の場合静電気的に帯電させて付着しても良い。分割した数の複数の微粒子発生装置からの微粒子を対象物に所望する順番であるいは混合して積層塗布できる。
この方法はLED、燃料電池、2次電池の分野だけでなく太陽電池、半導体、エレクトロニクス、バイオ、医薬品の分野等のコーティングや造粒など多岐に応用できる。キャリヤーガス移動はパルス的に行い凹凸面にも均一にコーティングできる。微粒子を帯電することで更に均一性や塗着効率をあげ良い効果を発揮できる。更に微粒子の移動はパルス的に行うと付着効率とインパクトが高まるのでなお良い。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば粒度分布をもつ粒子群を複数に所望する数に分割できる。粒子群は違う種類の粒子群を更にそれぞれ複数に分割できる。それぞれの独立した粒子群あるいはそれぞれの独立したスラリーの塗布装置で所望する比率で例えば交互に薄膜で積層することができる。また種類の異なる粒子群の任意の組み合わせ例えば小さい粒子群同士、あるいは大きい粒子群同士の組み合わせができる。
【符号の説明】
【0042】
1、 粒度分布
21、 分割粒子群(小)
22、 分割粒子群(中)
23、 分割粒子群(大)
31、 シャープな粒度分布(小)
32、 シャープな粒度分布(中)
33、 シャープな粒度分布(大)