(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078382
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/615 20140101AFI20220518BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20220518BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20220518BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20220518BHJP
【FI】
H01M10/615
H01M2/10 F
H01M10/643
H01M10/6571
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019064715
(22)【出願日】2019-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104949
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100074354
【弁理士】
【氏名又は名称】豊栖 康弘
(72)【発明者】
【氏名】岡村 健太郎
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC09
5H031KK03
5H040AA20
5H040AA22
5H040AA29
5H040AT01
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC28
5H040DD08
5H040DD26
5H040LL10
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】シートヒーターを利用して電圧検出線を配線することで、複数の電圧検出線を理想的な配置として、簡単かつ容易に、しかも電圧検出線を正確に定位置に配置して、高い安全性を実現する。
【解決手段】電源装置は、両端に正極1Aと負極1Bとを設けてなる複数の電池セル1からなる電池ブロック10と、電池セル1の電圧を検出する電圧検出回路30と、電圧検出回路30を電池セル1の電極に電気的に接続してなる電圧検出線31と、電池セル1を加温するシートヒーター3とを備え、電圧検出線31をシートヒーター3に連結している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に正極と負極とを設けてなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、
前記電池セルの電圧を検出する電圧検出回路と、
前記電圧検出回路と前記電池セルの電極とを電気的に接続してなる電圧検出線と、
前記電池セルを加温するシートヒーターと、
を備える電源装置であって、
前記電圧検出線が前記シートヒーターに連結されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載する電源装置であって、
前記シートヒーターが、
可撓性のある絶縁性の基材シートと、
前記基材シートに連結してなるヒーター線と、
前記基材シートに連結してなる電圧検出線とを備えることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載する電源装置であって、
前記基材シートが不織布であることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載する電源装置であって、
前記電圧検出線が前記基材シートに縫着されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項2ないし4のいずれかに記載する電源装置であって、
前記シートヒーターが、
前記基材シートに積層してなる絶縁シートを備え、
前記電圧検出線と前記ヒーター線が前記基材シートと前記絶縁シートの間に配置されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載する電源装置であって、
前記電圧検出線が、
前記電池セルの電極端子に接続してなるリード板に接続され、
前記リード板を介して前記電池セルの電極に電気接続されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載する電源装置であって、さらに、
前記シートヒーターに接続されて、前記シートヒーターの供給電力をコントロールする温度制御回路を備え、
前記温度制御回路が、
前記シートヒーターの通電電流を、10Hzより低い周期でオンオフに切り換えて供給電力をコントロールすることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項7に記載する電源装置であって。
前記電圧検出回路が、
前記電池セルの電圧を検出してデジタル信号に変換するA/Dコンバータを備え、
前記A/Dコンバータが、
前記温度制御回路が前記シートヒーターの電流をオンオフに切り換える切換タイミングと異なるタイミングで、電池電圧をデジタル信号に変換することを特徴とする電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルを備える電源装置であって、電池セルの電圧を検出する電圧検出回路を備える電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電池セルを備える電源装置は、出力電圧を高くするために電池セルを直列に接続している。この電源装置は、直列に接続している電池セルを同じ電流で充電し、また同じ電流で放電するが、繰り返し充放電すると、各々の電池セルに電圧差が発生してアンバランスになる。電池セルのアンバランスは、特定の電池セルを過充電し、あるいは過放電して電池を劣化させる原因となる。また、特定の電池セルが異常な高電圧になると、安全性を阻害する原因にもなる。この弊害を防止するために、各々の電池セルの電圧を検出してアンバランスを解消する電源装置が開発されている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の電源装置は、電池セルに接続しているリード板に電圧検出線の一端を接続し、この電圧検出線を電圧検出回路の入力側に接続して、電圧検出回路でもって各々の電池セルの電圧を検出している。複数の電池セルを直列に接続している電源装置は、直列に接続している各々電池セルの電圧を電圧検出回路で検出するために、直列接続の各々の電池セルの電極に電圧検出線を接続している。このため、複数の電池セルを直列に接続している電源装置は、複数の電圧検出線を電池セルと電圧検出回路に接続する必要がある。電源装置は、複数の電圧検出線を配線するために、多数の部品を収納しているケース内に配線スペースを設けている。ただ、電源装置は、例外なく外形を小型化することが大切であるので、充分な配線スペースを設けることが難しく、複数の電圧検出線が狭いスペースに配置されているのが実情である。このため、電圧検出線の配線には手間がかかり、さらに狭隘なスペースに電圧検出線を配線することは、高い安全性を確保するのを阻害する原因となる。電圧検出線の絶縁皮膜の損傷が、短絡の原因となるからである。とくに、電圧検出線は電池セルの正極と負極に接続されているので、絶縁皮膜が振動や衝撃で破損して芯線が露出して、リード板や電池セルの導電部に接触すると大きなショート電流が流れて、電池セルの電気特性を低下し、さらに安全性を阻害する原因となる。
【0005】
本発明は、さらに従来の電源装置が有する以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、シートヒーターを利用して電圧検出線を配線することで、複数の電圧検出線を理想的な配置として、簡単かつ容易に、しかも電圧検出線を正確に定位置に配置して、高い安全性を実現できる電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様にかかる電源装置は、両端に正極と負極とを設けてなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、電池セルの電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路を電池セルの電極に電気的に接続してなる電圧検出線と、電池セルを加温するシートヒーターとを備える電源装置であって、電圧検出線をシートヒーターに連結している。
【発明の効果】
【0007】
以上の電源装置は、電池セルを加温するために設けているシートヒーターを利用して電圧検出線を配線することで、複数の電圧検出線を理想的な配置として、簡単かつ容易に、しかも正確に定位置に配線して高い安全性を確保できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる電源装置の概略ブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる電源装置の電池ブロックとシートヒーターを示す概略平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる電源装置の概略断面図である。
【
図4】
図3に示す電源装置の電池ブロックを示す平面図である。
【
図5】シートヒーターから引き出された電圧検出線の接続部をリード板に接続する部分を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。
さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0010】
本発明の第1の態様の電源装置は、両端に正極と負極とを設けてなる複数の電池セルからなる電池ブロックと、電池セルの電圧を検出する電圧検出回路と、電圧検出回路と電池セルの電極とを電気的に接続してなる電圧検出線と、電池セルを加温するシートヒーターとを備える電源装置であって、電圧検出線をシートヒーターに連結している。
【0011】
以上の電源装置は、電池セルを加温するシートヒーターに、ヒーター線と電圧検出線の両方を配線しているので、電池セルの電圧を検出するために必要な複数の電圧検出線を配線する必要がなく、シートヒーターを定位置に配置することで、電圧検出線はシートヒーターを介して正確な位置に配置できる。このため、多数の電圧検出線を配線する手間を省略しながら、電圧検出線を正確に理想的な位置に配置できる特徴がある。とくに、組み立て工程において、作業者が電圧検出線を特定の位置に配置する必要がないので、作業者の技術レベルに影響されることなく、全ての電圧検出線を、簡単で、しかも正確な位置に配置できる。さらに、電圧検出線がシートヒーターを介して定位置に配置されるので、電圧検出線が位置ずれしてショートする等の弊害を抑制して、高い安全性を実現できる特徴もある。
【0012】
本発明の第2の態様の電源装置は、シートヒーターが、可撓性のある絶縁性の基材シートと、基材シートに連結してなるヒーター線と、基材シートに連結してなる電圧検出線とを備えている。
【0013】
以上の電源装置は、電圧検出線を絶縁性の基材シートに連結して配線するので、電圧検出線を正確な位置に理想的な絶縁状態で配線できて、より高い安全性を確保できる。
【0014】
本発明の第3の態様の電源装置は、基材シートを不織布としている。また、本発明の第4の態様の電源装置は、電圧検出線を基材シートに縫着している。この電源装置は、電圧検出線を基材シートに位置ずれしないように正確な位置に確実に配線して、より高い安全性を実現できる。
【0015】
本発明の第5の態様の電源装置は、シートヒーターが、基材シートに積層してなる絶縁シートを備え、電圧検出線とヒーター線を基材シートと絶縁シートの間に配置している。
【0016】
この電源装置は、電圧検出線を基材シートと絶縁シートで挟んで正確な位置に配置するので、電圧検出線をより理想的な状態で絶縁して定位置に配置して、より高い安全性を実現できる。
【0017】
本発明の第6の態様の電源装置は、電圧検出線を、電池セルの電極端子に接続してなるリード板に接続して、リード板を介して電池セルの電極に電気接続している。
【0018】
本発明の第7の態様の電源装置は、さらに、シートヒーターに接続されて、シートヒーターの供給電力をコントロールする温度制御回路を備え、温度制御回路が、シートヒーターの通電電流を、10Hzより低い周期でオンオフに切り換えて供給電力をコントロールしている。
【0019】
以上の電源装置は、シートヒーターの供給電力を大幅に効率よくコントロールしながら、シートヒーターが発生するパルスノイズの影響を少なくて、電圧検出回路で正確に電池セルの電圧を検出できる。
【0020】
本発明の第8の態様の電源装置は、電圧検出回路が、電池セルの電圧を検出してデジタル信号に変換するA/Dコンバータを備え、A/Dコンバータが、温度制御回路がシートヒーターの電流をオンオフに切り換える切換タイミングと異なるタイミングで、電池電圧をデジタル信号に変換している。
【0021】
以上の電源装置は、シートヒーターの供給電力を大幅に効率よくコントロールしながら、シートヒーターが発生するパルスノイズの影響を極めて小さくして、電圧検出回路でより正確に電池セルの電圧を検出できる。
【0022】
(実施の形態1)
本実施形態の電源装置は、シートヒーターで電池セルを加温するので、たとえば、基地局等のように屋外に設置される電気機器であって使用環境が低温となる用途に適している。さらに電池セルの電圧を検出しながら、電池セルの充放電をコントロールするので、各々の電池セルを理想的な状態で充放電でき、さらに、電池セルが設定電圧よりも高く、あるいは低くなることを検出して、充放電をコントロールするので、電池セルの電気特性の低下を抑制しながら、高い安全性が要求される用途に適している。
【0023】
図1は電源装置の概略ブロック図を示し、
図2は電源装置の電池ブロックに積層しているシートヒーターの概略平面図を、
図3は電源装置の概略断面図を、
図4は電池ブロックの平面図をそれぞれ示している。
図1~
図4の電源装置100は、電池ケース20に電池ブロック10を収納している。電池ブロック10の表面には、電池セル1を加温するシートヒーター3を配置している。電池ブロック10は複数のコアモジュール9からなる。各コアモジュール9は複数の電池セル1を備える。複数の電池セル1はリード板2で並列に接続されている。複数のコアモジュール9は、直列に接続されて電池ブロック10を構成している。シートヒーター3はリード板2に熱結合状態に積層されて、リード板2を介して電池セル1を加温する。シートヒーター3は、ヒーター線5と電圧検出線31の両方を、縫着するなどの方法で基材シート4に絶縁して配線している。ヒーター線5は温度制御回路40に接続されて電池セル1を加温し、電圧検出線31は電圧検出回路30に接続されて、電池セル1の電圧を検出する。
【0024】
シートヒーター3は、温度制御回路40で通電状態がコントロールされて、電池セル1を加温する。温度制御回路40は、電池セル1の温度を検出する温度センサ41を備えている。温度制御回路40は、温度センサ41で検出する電池セル1の温度が予め設定している最低温度、たとえば5℃よりも低くなると通電して電池セル1を加温し、電池セル1が所定の設定温度まで上昇すると通電を停止する。さらに、温度制御回路40は、シートヒーター3の供給電力を電池セル1の温度で調整して、電池セル1の加温状態をコントロールする。温度制御回路40は、シートヒーター3に直列に接続しているスイッチング素子42を、所定の周期でオンオフしてシートヒーター3の供給電力をコントロールする。
【0025】
温度制御回路40がスイッチング素子42をオンオフに切り換えて、シートヒーター3の供給電力をコントロールする方式は、切り換え時に過渡的にパルスノイズが発生する原因となる。とくに、電圧検出線31をヒーター線5に接近してシートヒーター3に配線する構造は、ヒーター線5からのパルスノイズが電圧検出線31に誘導される原因となる。この弊害は、スイッチング素子42をオンオフに切り換える周期を低く、たとえば10Hzより低い周期でスイッチング素子42をオンオフに切り換えることで、ヒーター線5からのパルスノイズの電圧検出線31への誘導による弊害を抑制できる。オンオフの周期を低くすることで、単位時間に発生するパルスノイズを少なくして、パルスノイズの発生時間を、パルスノイズが発生しない時間に対して短くして、ほとんどの時間帯においてパルスノイズが発生しないようにできるからである。
【0026】
電圧検出回路30は、電圧検出線31から電池セル1の電圧がアナログ信号として入力される。入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換するために、電圧検出回路30は、入力側にアナログ信号をデジタル信号に変換するA/Dコンバータ32を設けている。この電圧検出回路30は、A/Dコンバータ32でアナログ信号をデジタル信号に変換するタイミングを、スイッチング素子42の切り換えタイミングとずらせることで、ヒーター線5から誘導されるパルスノイズの影響を抑制できる。したがって、電圧検出回路30のA/Dコンバータ32は、温度制御回路40がスイッチング素子42をオンオフに切り換えるタイミングをトリガーとして、アナログ信号をデジタル信号に変換するタイミングを、トリガー信号と異なる時間に設定して、入力される電池電圧をデジタル信号に変換する。
【0027】
温度制御回路40は、スイッチング素子42のオン時間とオフ時間に比率であるデューティーを変更して、シートヒーター3の供給電力を変更できる。温度制御回路40は、スイッチング素子42のオン時間の比率を大きく、すなわちデューティーを大きくしてシートヒーター3の供給電力を大きくし、反対にデューティーを小さくして、シートヒーター3の供給電力を小さくする。温度制御回路40は、電池セル1が最低温度のときはシートヒーター3の供給電力を大きくして、速やかに電池セル1を加温し、電池セル1の温度が設定温度に近づくにしたがって供給電力を小さくして無理なく電池セル1を加温する。温度センサ41は、電池セル1の表面に接近して熱結合状態で配設されるサーミスタである。温度センサ41は、電池セル1の温度で電気抵抗が変化して電池温度を検出する。温度センサ41で検出された電池温度は、温度制御回路40に入力される。温度制御回路40は、温度センサ41で検出される電池温度が最低温度よりも低下すると、シートヒーター3に通電して電池セル1を加温し、加温された電池セル1の温度が設定温度になるとシートヒーター3の通電を停止し、さらに、電池セル1の温度が最高温度よりも高くなると、充放電スイッチ51をオフに切り換えて充電や放電を停止する。
【0028】
電圧検出回路30は、シートヒーター3の基材シート4に配線している電圧検出線31を介して各電池セル1の正負の電極に接続される。
図1の電源装置100は、電圧検出線31をリード板2に接続して、電池セル1の電圧を検出する。電圧検出回路30は、各電池セル1の電圧を検出すると共に、検出された各電池セル1の電圧を制御部50に出力している。制御部50は、充放電スイッチ51を制御して、電池セル1の充放電をコントロールする。充放電スイッチ51は、互いに直接に接続された電池セル1の出力側であって、出力端子52との間に直列に接続されている。充放電スイッチ51は、例えば、FETやトランジスタ等の半導体スイッチング素子である。充放電スイッチ51は、制御部50によってオンオフが制御される。
【0029】
制御部50は、各電池セル1の過充電と過放電を防止するように、充放電の電流をコントロールする。たとえば、充電状態において、何れかの電池セル1の電圧が最大電圧まで上昇すると充電電流を遮断し、あるいは制限して過充電を防止し、放電状態において、何れかの電池セル1の電圧が最低電圧まで低下すると、放電電流を遮断し、あるいは制限して過放電を防止する。制御部50は、充放電スイッチ51をオンからオフに切り換えて充放電電流を遮断する。
【0030】
電圧検出回路30は、均等化回路を設けて、各電池セル1の電圧のアンバランスを解消することもできる。均等化回路は、電池セル1の電圧を検出し、検出する電圧を均等化して電圧のアンバランスを解消する。均等化回路は、各々の電池セル1の電圧を検出して、電圧の高い電池セル1を放電してアンバランスを解消する。
【0031】
図1ないし
図4に示す電源装置は、電池ブロック10を電池ケース20に収納して、電池ブロック10を構成する電池セル1を加温するシートヒーター3を電池ケース20の内側に配置している。電池ブロック10は、複数のコアモジュール9に分割されて、各々のコアモジュール9は、複数の電池セル1を備える。さらに、このコアモジュール9は、複数の電池セル1を互いに平行姿勢に配置して、複数の電池セル1の負極1Bを同一平面に配置している負極表面9Bと、複数の電池セル1の正極1Aを同一平面に配置している正極表面9Aとを対向面に配置している。さらにまた、コアモジュール9は、負極表面9Bと正極表面9Aにリード板2を配置して、負極表面9Bの負極リード板2Bは、複数の電池セル1の負極1Bに接続して、正極表面9Aの正極リード板2Aは、複数の電池セル1の正極1Aに接続されて、電池セル1を並列に接続している。
【0032】
図4の平面図に示す電池ブロック10は、負極表面9Bと正極表面9Aとを交互に同一平面に位置する配列で、複数のコアモジュール9を配置している。この電池ブロック10は、隣接する負極表面9Bの間に正極表面9Aを配置して、隣接する正極表面9Aの間に負極表面9Bを配置している。
図4のコアモジュール9は、複数の電池セル1(鎖線で示している)を多段多列に配置して、負極表面9Bと正極表面9Aを細長い形状としている。電池ブロック10は、複数のコアモジュール9を、細長い負極表面9Bと正極表面9Aとが互いに平行となるように並べている。コアモジュール9は、
図3に示すように、負極表面9Bに1枚の金属板からなる負極リード板2Bを配置し、正極表面9Aには1枚の金属板からなる正極リード板2Aを配置して、電池セル1の負極1Bを負極リード板2Bに、正極1Aを正極リード板2Aに溶着して、全ての電池セル1を負極リード板2Bと正極リード板2Aで並列に接続している。
【0033】
多数のコアモジュール9を備える電池ブロック10は、コアモジュール9を多段多列に配置している。
図4の平面図に示す電池ブロック10は、8個のコアモジュール9を2つの列と、4つの行に配置している。各列に配置された4つのコアモジュール9は、正極リード板2Aと負極リード板2Bを直列に接続して、互いに直列に接続している。各列のコアモジュール9は、負極リード板2Bと正極リード板2Aを交互に配置しているので、隣のリード板2を接続してコアモジュール9を直列に接続できる。2列のコアモジュール9は、互いに直列又は並列に接続される。
【0034】
図において上下2列に配置しているコアモジュール9は、上列のコアモジュール9と下列のコアモジュール9を、負極表面9Bと正極表面9Aとを千鳥に配置して、上列コアモジュール9の負極表面9Bの間には下列コアモジュール9の負極表面9Bを配置して、上列コアモジュール9の正極表面9Aの間には下列コアモジュール9の正極表面9Aを配置している。
【0035】
シートヒーター3は、不織布製の基材シート4にヒーター線5と電圧検出線31の両方を縫着して、基材シート4に、ヒーター線5を保護する絶縁シート6を積層している。基材シート4と絶縁シート6は、たとえば、プラスチック繊維を立体的に方向性なく集合している可撓性とクッション性のある不織布である。ヒーター線5は、表面を絶縁皮膜で絶縁している可撓性のある抵抗線で、電圧検出線31は表面を絶縁皮膜で被覆している銅線である。ヒーター線5は、基材シート4の表面に、全ての電池セル1を均一に加温できるヒーターパターンに縫着され、電圧検出線31は、特定のリード板2を電圧検出回路30に接続できるパターンに縫着されている。
【0036】
ヒーター線5と電圧検出線31は、両端部に基材シート4に縫着されない引き出し部を設けて接続部5x、31x、31yとしている。
図5は、基材シート4から引き出された電圧検出線31の接続部31xをリード板2に接続する部分を示す拡大断面図である。電圧検出線31は、基材シート4に縫着されない部分を絶縁シート6に設けたスリット6aから引き出して、接続部31xを絶縁シート6から表出させている。接続部31xは、絶縁皮膜31bを除去して導電部31aをリード板2の表面にハンダ付けし、あるいは溶着して接続している。リード板2に接続される接続部31xは、リード板2との接続部分の近傍で基材シート4と絶縁シート6から引き出されて、リード板2に接続される。一端をリード板2に接続している電圧検出線31は、他の端部を基材シート4と絶縁シート6の外周縁から引き出して接続部31yを設け、接続部31yを電圧検出回路30の入力端子にハンダ付けし、あるいはコネクタを接続して電圧検出回路30に接続される。ヒーター線5も、両端部を基材シート4と絶縁シート6の外周縁から引き出して接続部5xを設け、この接続部5xをハンダ付けし、あるいはコネクタに接続して温度制御回路40に接続される。
【0037】
シートヒーター3は、クッションシート7でリード板2の表面に弾性的に押圧されて、リード板2を効率よく均一に加温する。クッションシート7は、絶縁材である軟質ウレタンフォーム等の軟質プラスチック発泡体の弾性シートが適している。ただ、押圧して弾性変形するゴム状弾性のシートも使用できる。クッションシート7は、押圧しない状態では、電池ケース20とシートヒーター3の間隔よりも厚いシートで、電池ケース20とシートヒーター3に挟まれて押し潰された状態で、シートヒーター3をリード板2に弾性的に押圧する。クッションシート7は、シートヒーター3の外形にほぼ等しい外形で、表面に積層されてシートヒーター3をリード板2に弾性的に押圧する。
【0038】
図3の概略断面図に示す電池ケース20は、下ケース21の上方開口部を上ケース22で閉塞して、下ケース21に電池ブロック10を収納している。下ケース21と上ケース22は金属製で、ネジ止め等の構造で連結されて、内部を閉鎖構造としている。電池ブロック10のコアモジュール9は、プラスチック製の電池ホルダー8に設けた保持部に電池セル1を配置して、複数の電池セル1を定位置に配置している。電池ホルダー8は絶縁材のプラスチックを成形して製作されるので、コアモジュール9の周囲は電池ホルダー8で絶縁された状態となる。コアモジュール9は、周囲を電池ホルダー8で絶縁しているが、負極リード板2Bと正極リード板2Aを配置している面は、導電部が露出している。
【0039】
図3の概略断面図に示す電池ケース20は、下ケース21の底面23と、上ケース22の内面に、絶縁材のプラスチック板などの絶縁プレート15を配置している。この構造の電源装置100は、絶縁プレート15で下ケース21の底面23と、上ケース22の内面を絶縁して、負極リード板2Bと正極リード板2Aが金属製の電池ケース20に接触するのを防止できる。下ケース21の上方開口部を閉塞する絶縁プレート15は、図に示すように、外周縁にV字状に折り曲げした弾性折り曲げ部15Aを設け、この弾性折り曲げ部15Aを、電池ブロック10と下ケース21の周壁24との隙間に挿入して、下ケース21の上方開口部を隙間なく閉塞できる。下ケース21の上方開口部を閉塞する電源装置100は、シートヒーター3で加温された空気が外部に漏れて循環するのを防止して、シートヒーター3による電池セル1の加温効率を高くでき、さらに加温された内部空気を介して全ての電池セル1を均等に加温できる特徴がある。
【0040】
以上の電源装置は、以下の工程で組み立てられる。
1.電池ブロック10の製造工程
プラスチック製の電池ホルダー8の定位置に電池セル1をセットした後、各々の電池セル1の負極1Bに負極リード板2Bを、正極1Aには正極リード板2Aを溶着して電池ブロック10を製造する。
電池ブロック10は、複数のコアモジュール9に分割しているので、各々のコアモジュール9は、電池セル1の負極1B側には負極リード板2Bを溶着して、正極1A側には正極リード板2Aが溶着される。隣接するコアモジュール9は、負極リード板2Bと正極リード板2Aとが交互に配置しているが、負極リード板2Bと正極リード板2Aとをリード板2で接続して直列に接続される。ただ、隣接するコアモジュール9の反対側のリード板2を接続して、隣接するコアモジュール9を並列に接続することもできる。
【0041】
2.電池ブロック10に、シートヒーター3を積層する工程
電池ブロック10の表面にシートヒーター3を配置する。シートヒーター3は、両面テープ(図示せず)でリード板2に接合して定位置に配置する。シートヒーター3は、基材シート4から引き出しているヒーター線5の接続部5xを温度制御回路40に接続し、電圧検出線31の接続部31xをリード板2に、接続部31yを電圧検出回路30にそれぞれ接続する。
【0042】
3.シートヒーター3にクッションシート7を接合する工程
シートヒーター3の表面に、両面接着テープ(図示せず)を介してクッションシート7を接合する。クッションシート7も位置ずれしないように、シートヒーター3の表面に接合する。
【0043】
4.電池ブロック10を電池ケース20に挿入する工程
下ケース21の底面23に絶縁プレート15を配置する状態で、シートヒーター3とクッションシート7を接合している電池ブロック10を下ケース21に挿入して定位置に配置する。その後、電池ブロック10の上に絶縁プレート15を配置して、絶縁プレート15の外周に設けた弾性折り曲げ部15Aを下ケース21の周壁24と電池ブロック10の間に挿入する。
その後、下ケース21に上ケース22を固定して、下ケース21の上方開口部を上ケース22で閉塞する。上ケース22は、たとえば、ネジ止めして下ケース21に固定される。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、電池セルの電圧を検出する電圧検出回路を備える電源装置であって、とくに、低温環境で電池セルを加温するシートヒーターを備えて、たとえば、基地局等の屋外に設置される電気機器のように、使用環境が低温となる用途で使用される電気機器用の電源装置として好適に使用される。
【符号の説明】
【0045】
100…電源装置
1…電池セル
1A…正極
1B…負極
2…リード板
2A…正極リード板
2B…負極リード板
3…シートヒーター
4…基材シート
5…ヒーター線
5x…接続部
6…絶縁シート
6a…スリット
7…クッションシート
8…電池ホルダー
9…コアモジュール
9A…正極表面
9B…負極表面
10…電池ブロック
15…絶縁プレート
15A…弾性折り曲げ部
20…電池ケース
21…下ケース
22…上ケース
23…底面
24…周壁
30…電圧検出回路
31…電圧検出線
31a…導電部
31b…絶縁皮膜
31x、31y…接続部
32…A/Dコンバータ
40…温度制御回路
41…温度センサ
42…スイッチング素子
50…制御部
51…充放電スイッチ
52…出力端子