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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078411
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ホスホジエステラーゼ5阻害用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20220518BHJP
   A61K 36/53 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 36/47 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 36/535 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 36/185 20060101ALI20220518BHJP
   A61K 36/24 20060101ALI20220518BHJP
   A61P 15/10 20060101ALI20220518BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220518BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20220518BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/53
A61K36/47
A61K36/535
A61K36/185
A61K36/24
A61P15/10
A61P43/00 111
A23K10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189078
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】506376849
【氏名又は名称】金氏高麗人参株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】金 慶光
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 昌康
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
2B150AB10
2B150DD32
2B150DD42
2B150DD57
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4C088AB12
4C088AB31
4C088AB38
4C088AB46
4C088AC01
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC06
4C088CA01
4C088NA14
4C088ZA81
4C088ZC20
(57)【要約】
【課題】副作用のおそれがなく、日常的に安心して長期間摂取することができる新たなホスホジエステラーゼ5阻害作用を有する組成物を提供する。
【解決手段】センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマという食品に応用可能な植物種に、これまで知られていなかったホスホジエステラーゼ5阻害作用を見出したことにより、これらから選択される一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を含有するホスホジエステラーゼ5阻害用組成物を提供することが可能となり、例えばサプリメント等として安心して安全に摂取できる新たな精力増強用組成物を提供することができ、下部尿路機能障害、前立腺肥大、肺高血圧症等の予防や改善用としての利用も期待することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマより選択される一種又は二種以上の植物若しくはその加工品を含有することを特徴とするホスホジエステラーゼ5阻害用組成物。
【請求項2】
前記一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を含有し、経口摂取用に剤形調整されたものである請求項1に記載のホスホジエステラーゼ5阻害用組成物。
【請求項3】
前記一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を100~1,000mg/g含有している請求項1又は2に記載のホスホジエステラーゼ5阻害用組成物。
【請求項4】
前記一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を含有する精力増強用組成物である請求項1乃至3の何れかに記載のホスホジエステラーゼ5阻害用組成物。
【請求項5】
前記一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を含有する食品組成物、医薬組成物又は飼料組成物である請求項1乃至4の何れかに記載のホスホジエステラーゼ5阻害用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の植物若しくはその加工物を含有し、安心して服用することができるホスホジエステラーゼ5阻害用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホスホジエステラーゼ5(以下、PDE5と表記する場合がある。)は、血管平滑筋の環状グアノシン一リン酸(cGMP)を選択的に分解する酵素であり、PDE5を阻害することにより血管周辺部のNO(一酸化窒素)作動性神経に作用して陰茎海綿体の平滑筋を弛緩させ局所的な血流量を増大させる。このことから、PDE5阻害用組成物は、男性機能障害治療薬として有用である。また、PDE5阻害用組成物は、膀胱や前立腺の機能低下、肺高血圧症といった症状の改善を目的として活用されている。
【0003】
シルデナフィル(Sildenafil、塩酸塩としてバイアグラ等に配合されている)は、PDE5阻害作用を有する代表的な薬剤である。しかしながらその強い作用により副作用として血圧の急激かつ大幅な低下によりショック状態となることがある。また狭心症発作に見舞われることもある。一方、男性機能改善という用途の関係から、医療機関や処方箋薬局に出向くのにためらいがあり、個人輸入代行業者から購入する人も多く、インターネット上の社会問題にもなっている。なお、シルデナフィルは勿論、食品には使用することはできない。
【0004】
一方、植物由来のPDE5阻害用組成物として、黒ショウガの抽出物等が知られているところではあるが、これらは満足のいく阻害活性を示さないものが多く、種々の植物からPDE阻害作用があるものが探索されてきた(特許文献1、特許文献2参照)。このような事情から、医薬用や食品用及びサプリメントにも使用でき、穏やかなPDE5阻害作用を持ち、安全でしかも効力のある素材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-319191号公報
【特許文献2】特開2018-108946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
PDE5阻害用組成物を含有する植物として、例えば、特許文献1には、インヨウカク、オウゴン、オウバク、ジャショウシ、ホコツシ、エゾウコギ、カイクジン、カイバ、ガラナ、カンゾウ、コトウニン、サヨウ、サンシシ、シャカンゾウ、ジョテイシ、ソウヒョウショウ、チクセツニンジン、チモ、ドッカツ、トチュウヨウ、フクボンシ、ヤクチニン、マオウ、サイシン、カンショウキョウ、ソヨウ、ケイヒ、ガイヨウ、コウボク、チクヨウ、チクジョ、コウブシ、ゴシュユ、オウレン、キジツ(cGMP特異的PDE5阻害剤として)が挙げられており、特許文献2には、キイチゴ属、ザクロ属、シモツケソウ属、ヤマモモ属、エウゲニア属、サルスベリ属、モモタマナ属、アカミノキ属、ソバカズラ属、カギカズラ属(これらを加工物としたものとして)が挙げられている。これらの植物は、これまでにPDE5阻害作用を有する植物種として見出されてきたものであるが、サプリメントを含む食品類に応用されているものが少なく、また容易に入手でき安価で且つ日本人が慣れ親しんだ植物が少なく、安全製も不明なものが多い。さらにこれらの植物は、PDE5阻害活性も弱く、多くの問題を有している。そこで本発明者らは、これらの問題点を解決すれば、より多くのPDE5阻害作用による症状を改善又は予防し、特に男性の悩みを解決できるものと考え、研究に着手した。
【0007】
以上のような観点から、本発明者らは、植物由来のPDE5阻害作用を中心に研究を行い、多数の生薬、医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分、多くの食品素材について鋭意研究し、穏やかなPDE5阻害作用を奏し、副作用等が生じる心配がなく、日常的に簡便且つ安全に摂取することができる植物から有用な組成物を探索した結果、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマに、これまで知られていなかったPDE5阻害活性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係るホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害用組成物は、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマより選択される一種又は二種以上の植物若しくはその加工物を含有するものである。
【0009】
センソウは、中国原産のシソ科Platostoma属の一年草であり、亜熱帯の日当たり、水はけの良い低い海抜地で、気温20~25℃以上の場所で良く生育する。中国では仙人草、涼粉草、薪草とも呼ばれ、暑気あたりの防止、解熱の民間薬、飲料として利用されてきており、糖尿病、高血圧、風邪、関節炎、筋肉痛に対する治療効果があるともいわれている。日本ではセンソウの全草(植物の全部の部分を言う)が「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」(非医薬品リスト、厚生労働省)に区分されており、食品にも応用可能で、センソウゼリー等が市販されている。
【0010】
アカメガシワは、山野や丘陵に自生するトウダイグサ科アカメガシワ属の落葉小高木であり、新芽が紅色のためアカメガシワ(赤芽柏)と言われる。アカメガシワの樹皮はやや苦く、僅かに渋い。その樹皮に含まれる苦味物質ベルゲニンの作用により、生薬として整腸薬、胃潰瘍や十二指腸潰瘍の治療薬として用いられてきた。但し、日本ではアカメガシワの樹皮は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されており、食品にも応用可能である。
【0011】
シソは、中国原産のシソ科シソ属の一年草であり、食用、薬用として栽培される。シソの葉等に含まれるペリルアルデヒド、シソニン、アピゲニン、ルテオリン、ロスマリン酸等により、漢方では鎮咳去痰薬、風邪薬とみなされる処方等に配剤され生薬として利用されている。シソは香辛料や着色料に、シソからの抽出物は日持ち向上剤に、シソ油は着香料に使用される。日本ではシソの枝先、種子、種子油、葉は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されており、食品にも応用可能である。
【0012】
アマチャは、アジサイ科アジサイ属の落葉小低木であり、葉及び枝先が利用される。主要成分として、乾燥物には砂糖の約400倍以上甘いフィロズルシンを含み、他にフラボノイド等が含まれており、主な薬効として、抗酸化、抗潰瘍、利胆、抗アレルギー作用等で生薬として利用される。日本ではアマチャの葉、枝先は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されており、食品にも応用可能である。
【0013】
ラフマは、中国北部・西部原産のキョウチクトウ科バシクルモン属の多年草であり、葉が薬草あるいは引用(羅布麻茶)に用いられる。ラフマには各種フラボノイド類やクロロゲン酸が含まれ、中国では高血圧治療薬として知られているが、日本ではラフマの全草が「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に区分されており、食品にも応用可能である。
【0014】
本発明の原材料として、センソウは全草、アカメガシワは樹皮、シソは枝葉、種子、種子油又は葉、アマチャは葉又は枝葉、ラフマは全草を用いることができ、それぞれの加工物を用いることもできる。そして、これらのうち一種を単独で使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。植物の加工物としては、原料となるこれらの植物の粉砕物、乾燥物、抽出物等が挙げられる。粉砕物は、公知の適宜の粉砕機で粉砕して得ることができ、その粒度は特に問わないが、1.0mm以下とすることが好ましい。
【0015】
乾燥物は、天日乾燥や乾燥機を使用した公知の乾燥方法で得ることができ、乾燥物を粉砕したものを粉砕物として使用してもよく、乾燥物の水分は14%以下とすることが好ましく、より好ましくは7%以下である。抽出物の製造方法は特に限定されず、公知の適宜の抽出方法を用いればよく、植物を必要に応じて粉砕や乾燥した後、溶媒抽出等で抽出物を得たり、植物からその抽出物を直接搾取する方法も採用することができる。
【0016】
溶媒抽出の際に用いる溶媒は特に限定されるものではなく、例えば水やメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールや、プロピレングリコール等の多価アルコール、ケトン類、エステル類等を使用することができる。これらの溶媒は一種単独で使用しても二種以上を混合して使用してもよく、複数回の抽出を経た抽出物を、本発明における植物の加工物として用いることもできる。なお、好ましい溶媒としては、上記のうち、水やメタノール、エタノール、含水エタノールを挙げることができる。得られた抽出物は、そのままの状態で使用してもよく、溶媒を公知の方法で除去した後の抽出残渣を使用してもよい。その際は、抽出残渣を粉砕し粉末にすると使い易い。また、抽出物を凍結乾燥やスプレードライ等の方法で直接粉末化してもよい。なお、植物の加工品としては、市販品を利用したり、その市販品をさらに加工して用いてもよい。
【0017】
このような本発明のPDE5阻害用組成物は、このように食品として日常的に摂取することができる上記のような植物種若しくはその加工品から新たに見出したものであり、後述するように穏やかなPDE5阻害作用を有することが認められたことから、副作用や予期しない作用のおそれなしに日常的に安全に摂取することができるものである。
【0018】
本発明のPDE5阻害用組成物を摂取形態として容易に服用できるようにするには、経口摂取用に剤形調整したものとすることが望ましい。例えば、液状形態として、液剤、乳剤、懸濁剤、エキス剤等、固形形態として顆粒剤、錠剤、カプセル剤、チュアブル剤、半固形形態としてペースト、ゼリー等、種々の形態を取ることができるため、特に形態にとらわれることなく目的に応じて設定すればよい。また、本発明のPDE5阻害用組成物を各種食品に配合して利用することもできる。
【0019】
また、本発明のPDE5阻害用組成物の摂取量は、各植物が食品として利用できるものであることから、本発明の効果が発揮される限り特に限定されるものではないが、好ましくは対象者の体格や年齢、症状等により適宜設定すればよい。本発明のPDE5阻害用組成物は1日当たり1回の服用とすることも複数回服用とすることもでき、例えば体重60Kgの成人を基準とすれば、1日当たり100~10,000mg、好ましくは300~5,000mgの摂取量を例示することができる。このような観点から、本発明のPDE5阻害用組成物では、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマより選択される一種又は二種以上の植物若しくはその加工物の好ましい含有量を、100~1,000mg/g、より好ましくは300~1,000mg/gであるといえる。
【0020】
本発明のPDE5阻害用組成物により得られる作用を目的とした用途としては、精力増強を挙げることができる。この精力増強用組成物は、陰茎勃起機能不全の予防又は改善用として用いることができる。その他、本発明のPDE5阻害用組成物は、膀胱機能障害、前立腺肥大及び肺高血圧症からなる群より選択される少なくとも一種の予防又は改善用としても利用することができる可能性がある。また、本発明は、食品組成物、医薬組成物又は飼料組成物として提供することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べたように、本発明において、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマより選択される一種又は二種以上の植物若しくはその加工物がPDE5阻害作用を持つことを初めて見出したことから、これを精力増強用組成物として適宜服用すれば、陰茎勃起機能不全の予防又は改善に有用であると見込まれる。また、本発明のPDE5阻害用組成物は、下部尿路機能障害、前立腺肥大、肺高血圧症等の予防又は改善にも有用であると期待できる。特にこれらの植物やその加工物は、穏やかなPDE5阻害作用を奏し、副作用等が生じる心配がなく、サプリメントや食品として日常的に簡便且つ安全に摂取することができることが大きなメリットとなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態として、実施例1~5、及び比較例1~7の植物エキス粉末によるPDE5阻害活性試験の結果を一覧表として示す図。
図2】同実施形態として、実施例1~5、及び比較例2、4、5の各植物エキス粉末から調整した錠剤による陰茎勃起機能改善試験(1)の結果を一覧表として示す図。
図3】同実施形態として、実施例1~5の各植物エキス粉末の含有量を変えて調整した錠剤による陰茎勃起機能改善試験(2)の結果を一覧表として示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態並びに実施例を、比較例や試験結果と共に、図面を参照して説明する。
【0024】
[試験例1]ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害活性の測定
以下に示す通り、12種類の植物から以下のような方法で、実施例1~5、及び比較例1~7の各植物のエキス粉末を精製した。
【0025】
<実施例1>センソウ
センソウの葉と茎を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノール(水とエタノールの質量比1:1。以下同じ)を加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0026】
<実施例2>アカメガシワ
アカメガシワの樹皮を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0027】
<実施例3>シソ
シソの葉を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0028】
<実施例4>アマチャ
アマチャの葉と枝先を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0029】
<実施例5>ラフマ
ラフマの葉を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0030】
<比較例1>カンゾウ
特許文献1に開示されたカンゾウの根を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0031】
<比較例2>ケイヒ
特許文献1に開示されたケイヒの樹皮を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0032】
<比較例3>ガラナ
特許文献1に開示されたガラナの種子を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0033】
<比較例4>キャッツクロー
特許文献2に開示されたキャッツクローの葉と茎を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0034】
<比較例5>ブラックジンジャー
一般的に精力増強剤として知られるブラックジンジャー(黒ショウガ)の根茎を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0035】
<比較例6>クコ
一般的に精力増強剤として知られるクコの果実を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0036】
<比較例7>マカ
一般的に精力増強剤として知られるマカの根を乾燥後、粉砕し、それに抽出溶媒として50質量%エタノールを加え抽出した。抽出液を減圧下で抽出溶媒を留去し、抽出残渣を乾燥した後粉砕し、50メッシュ(0.37mm)スルーの粉末を得た。
【0037】
ホスホジエステラーゼ5(PDE5)阻害活性の測定に際し、実施例1~5、比較例1~7で得た各植物エキス粉末のPDE5阻害活性を、以下の方法により測定した。まず、実施例1~5、比較例1~7で得た各植物エキス粉末にそれぞれ50質量%メタノールを添加して抽出し、遠心分離後、上清を回収した。次に各上清を濾過し、不溶成分を除去したものをサンプル溶液とした。
【0038】
測定キットとして、PDE5A Assay Kit(バイオサイエンス社製)、96ウエル(穴)プレート、ピペットマン、蛍光マイクロプレートリーダ(モレキュラーデバイス社製)を使用した。キットに付属の手順書に従った手順にて、PDE5阻害活性を測定した。すなわち、FAM-Cyclic-3’,5’-GMPを25μLずつ各ウエルに添加した。“Blank”のウエルには、PDE assay bufferを25μL添加した。次に、サンプル溶液を“Test Inhibitor”のウエルに5μLずつ添加した。その他のウエルには、PDE assay bufferをそれぞれ5μL添加した。次に、“Test Inhibitor”と“Positive Control”のウエルには、PDE5A(10pg/μL)を、“Blank”と“Substantive Contol”のウエルにはPDE assay bufferを、それぞれ20μL添加し、この状態で、30℃で1時間反応させた。反応後、各ウエルに100μLずつの希釈したBinding agentを添加し、震盪しながら30分間、30℃で反応させた。
【0039】
反応液について、蛍光マイクロプレートリーダで蛍光偏光値を算出した。励起波長は485nm、測定波長は535nmとし、温度30℃の条件で検出した。“Blank”の値をそれぞれの測定値から源氏、蛍光偏光値を算出した。また、IC50値は、サンプル溶液の濃度を変え、阻害率が50%となる濃度を算出した。この結果を、図1にIC50値で示す。
【0040】
図1から明らかなように、比較例1~7の植物のエキス粉末は、全て10μg/mL以上のIC50値を示したが、実施例1~5の植物のエキス粉末では、いずれも10μg/mL未満(実施例1,2では1μg/mL未満)のIC50値であり、全ての比較例よりも優れたPDE阻害活性を示した。この結果より、同じ抽出方法で得た植物のエキス粉末で比較した場合、これまでPDE5阻害活性を有することが報告されていた植物よりも、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマは、優れた阻害活性を有することを、本発明において初めて見出した。
【0041】
[試験例2]人による陰茎勃起機能改善試験(1)
上述したPDE5阻害活性の測定により、各比較例よりも実施例1~5の方が優れた活性作用が認められたことから、実施例1~5及び比較例2、4、5の各植物エキス粉末を錠剤として調整したものを実際に人に服用させ、各錠剤による精力増強用組成物としての利用を想定し、陰茎勃起機能に対する効果を、モニターに対する観察を行い試験した。
【0042】
錠剤の調整に際しては、1錠の重量が300mgの錠剤に、実施例1~5及び比較例2、4、5のエキス粉末を100mg含有した錠剤(計8種類)を作成した。なお、増量剤としてデキストリン、賦形剤としてショ糖エステル、コーティング材としてトウモロコシ蛋白とグリセリンエステルを使用した。
【0043】
人による陰茎勃起機能改善試験(1)に際しては、男性20名(33歳以上、平均年齢46.0歳)のモニターに一種類の錠剤を毎日3粒(服用時間は自由とした)、1週間服用させ、服用前後に医薬品の評価に使用される国際勃起機能スコア(IIEF:International Index of Erectile Function)に基づくアンケートに回答させる形式で行った。なお、1日のエキス粉末の服用量は300mgに相当する。アンケートの回答は、服用前と比べ服用1週間後に、かなり改善、改善、少し改善、変化なし、減退の5項目から選択させた。また、副作用等による体の変調の有無についても回答させた。次に、男性20名のモニターには、2週間のウォッシュアウト期間後に、次の錠剤を上記と同様の方法で服用させ、錠剤の評価を行った。計8種類の錠剤を同様の方法で服用して試験するため、試験スタートから22週間後に全ての観察結果が得られている。以上の陰茎勃起機能改善試験(1)の結果を、図2に上記の5項目のいずれかに該当する改善度として回答された人数で示す。
【0044】
図2の結果から、本実施形態における5種類の植物の加工物であるエキス粉末(実施例1~5)を含有する錠剤の服用により、過半数のモニターに勃起機能の改善が認められた。しかも、これらについては副作用等による体の変調は全く認められなかった。一方、比較対象とした3種類の植物のエキス粉末(比較例2、4、5)を含有する錠剤の服用では、体の変調は認められなかったものの、実施例1~5のエキス粉末を含有する錠剤よりも明らかに勃起機能改善度は小さかった。
【0045】
[試験例3]人による陰茎勃起機能改善試験(2)
以上の結果を受けて、実施例1~5各植物エキス粉末の含有量を変化させた錠剤を人に服用させた場合の精力増強用組成物としての適正量に見当をつけるため、陰茎勃起機能に対する効果を、モニターに対する観察を行い試験した。
【0046】
錠剤の調整に際しては、1錠の重量が300mgの錠剤に、実施例1~5のエキス粉末を20mgと30mgをそれぞれ含有した錠剤(計10種類)を作成した。なお、増量剤としてデキストリン、賦形剤としてショ糖エステル、コーティング材としてトウモロコシ蛋白とグリセリンエステルを使用した。
【0047】
人による陰茎勃起機能改善試験(2)に際しては、男性10名(30歳以上、平均年齢42.0歳)のモニターに一種類の錠剤を毎日3粒(服用時間は自由とした。)、1週間服用させ、服用前後に医薬品の評価に使用される国際勃起機能スコアに基づくアンケートに回答させる形式で行った。なお、1日のエキス粉末の服用量は、エキス粉末20mgを含有する錠剤では60mg、エキス粉末30mgを含有する錠剤では90mgに相当する。アンケートの回答は、服用前と比べ服用1週間後に、かなり改善、改善、少し改善、変化なし、減退の5項目から選択させた。次に、男性10名のモニターには、2週間のウォッシュアウト期間後に、次の錠剤を上記と同様の方法で服用させ、錠剤の評価を行った。計10種類の錠剤を同様の方法で服用して試験するため、試験スタートから28週間後に全ての観察結果が得られている。以上の陰茎勃起機能改善試験(1)の結果を、図3に上記の5項目のいずれかに該当する改善度として回答された人数で示す。
【0048】
図3の結果から、本実施形態における5種類の植物の加工物であるエキス粉末(実施例1~5)の20mg/300mg錠剤と30mg/300mg錠剤では、明らかに30mg/300mg錠剤の服用で陰茎勃起機能の改善が認められたが、20mg/300mg錠剤の服用では改善の効果は殆ど見られなかった。
【0049】
以上の本実施形態における試験結果より、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマ又はそれらの加工物(実施例1~5では抽出液から得たエキス粉末)を100mg/g以上含有する組成物の服用により、少なくともPDE5に起因する人の陰茎勃起機能不全の改善に有用であり、精力増強用組成物であるサプリメントや食品として、副作用のおそれなく安心して服用することができることが明らかとなった。また、同様にPDE5に起因する疾患として、例えば下部尿路機能障害、前立腺肥大、肺高血圧症等についても、副作用の心配なく予防や改善に役立つものと期待できることが分かった。
【0050】
なお、本発明のPDE5阻害用組成物は、上述した実施形態における各実施例に限られるものではなく、センソウ、アカメガシワ、シソ、アマチャ、ラフマ又はそれらの加工物のうち二種類以上を含有する組成物とすることができ、それぞれの含有量は期待される作用や副作用等の副反応の有無を確認しながら適宜調整すればよい。また、服用時の剤形は、錠剤以外にも、公知の各種剤形として目的とする作用や服用者の飲みやすさを考慮して適宜変更することができる。さらに、本発明のPDE5阻害用組成物は、サプリメントや食品又はその添加物といった食品組成物として用いるのが適しているが、医療組成物や飼料組成物としての適用も可能である。
図1
図2
図3