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▶ 株式会社フローリックの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078435
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】サイディング材
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
E04F13/14 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189114
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】503044237
【氏名又は名称】株式会社フローリック
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】安田 玲子
(72)【発明者】
【氏名】西 祐宜
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110GA26W
2E110GA33W
2E110GB12W
2E110GB23W
2E110GB44W
2E110GB62
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、サイディング材に塗装処理等を行うことなく、吸湿を抑制することができるサイディング材を提供することを課題とする。
【解決手段】水硬性組成物からなるサイディング材であって、該水硬性組成物にアクリル系化合物を含むことを特徴とするサイディング材である。好ましくは、該アクリル系化合物は、中空粒子形状を有しており、さらに該アクリル化合物がアクリル系エマルション化合物であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水硬性組成物からなるサイディング材であって、該水硬性組成物にアクリル系化合物を含むことを特徴とするサイディング材。
【請求項2】
前記アクリル系化合物は、中空粒子形状を有することを特徴とする請求項1に記載のサイディング材。
【請求項3】
前記アクリル化合物が、アクリル系エマルション化合物であることを特徴とする請求項1~2いずれかに記載のサイディング材
【請求項4】
前記アクリル系化合物が、平均粒子径20~50μmの範囲であることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載のサイディング材。
【請求項5】
前記水硬性組成物の固形分量に対し、前記アクリル系エマルション化合物が2~7重量%含まれることを特徴とする請求項1~4いずれかに記載のサイディング材。
【請求項6】
前記水硬性組成物が、セメント組成物及びパルプを含むことを特徴とする請求項1~5いずれかに記載のサイディング材。
【請求項7】
前記水硬性組成物が、軽量骨材をさらに含むことを特徴とする請求項1~6いずれかに記載のサイディング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅内外装に用いることができる窯業系のサイディング材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅内外装壁材としては、近年建築工程の効率化に伴い、建築現場にてモルタルや塗料を調整が必要のない、サイディングボードなどの建築用ボードの使用が増加してきている。その中でも特に使用が多いのが、セメントとパルプなどの木質系成分を主成分とする窯業系サイディング材である。
【0003】
窯業系サイディング材は、使用する原材料や加工方法などの影響により、吸湿などを原因とする反りや寸法変化、凍害によるヒビ割れなどが発生しやすいという問題がある。
これらを防止する手段としては、窯業系サイディング材の表面に、防湿性塗料を塗装することが一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-197391号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1のような塗料の塗装方式での改善方法であると、特に屋外に用いるサイディングボードに使用する場合には、長期間の使用の際に徐々に塗装が劣化し、期待する効果が得られにくくなるという課題があった。
【0006】
そこで本発明では、サイディング材に塗装処理等を行うことなく、吸湿を抑制することができるサイディング材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意検討の結果、以下の(1)~(7)の構成により、本願課題を解決できることを見出した。
(1)水硬性組成物からなるサイディング材であって、該水硬性組成物にアクリル系化合物を含むことを特徴とするサイディング材。
(2)前記アクリル系化合物は、中空粒子形状を有することを特徴とする(1)に記載のサイディング材。
(3)前記アクリル化合物が、アクリル系エマルション化合物であることを特徴とする(1)~(2)いずれかに記載のサイディング材
(4)前記アクリル系化合物が、平均粒子径20~50μmの範囲であることを特徴とする(1)~(3)いずれかに記載のサイディング材。
(5)前記水硬性組成物の固形分量に対し、前記アクリル系エマルション化合物が2~7重量%含まれることを特徴とする(1)~(4)いずれかに記載のサイディング材。
(6)前記水硬性組成物が、セメント組成物及びパルプを含むことを特徴とする(1)~(5)いずれかに記載のサイディング材。
(7)前記水硬性組成物が、軽量骨材をさらに含むことを特徴とする(1)~(6)いずれかに記載のサイディング材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイディング材に塗装処理等を行うことなく、吸湿を抑制することができるサイディング材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、水硬性組成物からなるサイディング材であって、該水硬性組成物にアクリル系化合物を含むことを特徴とするサイディング材である。
【0010】
<アクリル系化合物>
本発明のサイディング材には、アクリル系化合物を含むことが重要である。
本発明のアクリル系化合物とは、特に制限されるものではないが、アクリル系エマルションの形態を含むもの好ましい。本発明のアクリル系エマルションとは、(メタ)アクリル系単量体を乳化重合させることによって得られるものである。アクリル系エマルションの製造方法としては、特に限定されず、グリセリンカーボネートアクレート化合物、(メタ)アクリル系モノマー及び場合により他の不飽和モノマーに、反応性乳化剤を加えて撹拌し、不飽和単量体混合物の乳化物とした後、重合開始剤を添加して、乳化重合させることにより、製造することができる。
【0011】
そのような(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸の炭素原子数1~20の直鎖状又は分岐状のアルキルエステル、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸イソウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸イソドデシル(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸イソトリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル等が挙げられる。
【0012】
本発明で用いるアクリル系エマルションは、中空構造を有することが好ましい。中空構造を有するエマルションを用いることで、内部に複数の空隙が多数存在した構造となるため吸湿などの際に水分の移動余地が存在するため、サイディング材に割れなどの欠点が発生するのを抑制することができる。
【0013】
本発明で用いるアクリル系エマルションは、平均粒子径が20~50μmであることが好ましく、25~45μmであることがより好ましく、25~40μmであることがさらに好ましい。アクリル系エマルションが本範囲であることで、本発明の効果がより発現しやすい。
【0014】
<水硬性組成物>
本発明に用いる水硬性組成物とは、窯業系サイディング材に用いることができる水硬性組成物であれば特に制限されないが、セメントを用いることが好ましい。
【0015】
窯業系サイディング材には、上記セメントとともに、パルプなどの植物繊維を併用することが好ましい。本発明の構成によれば、このような植物繊維を主体とする原料由来の吸湿や吸水について、混合される本発明のアクリル化合物の作用により優れた耐水性を付与することができるため、例えばパルプ量などをより多量に混合し強度を得ることができる。
【0016】
また水硬性組成物には、分散剤や消泡剤などの添加剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜添加することができる。
【0017】
<サイディング材>
上述する水硬性組成物とアクリル系化合物は、水硬性材料(例えばセメント)の固形分量に対し、アクリル系化合物を2~7重量%添加することが好ましい。添加量が本範囲内であることで、本発明の効果を最も効果的に発揮できる。
【0018】
本発明において、アクリル系化合物の添加方法に特段制限はない。水硬性組成物を分散剤等とともに練り上げモルタルを精製した後にアクリル系化合物を添加してもよいし、水硬性組成物に分散剤等とともにアクリル系化合物をともに添加し練り上げても良い。
【実施例0019】
[実施例1~4、比較例1]
セメント、パルプ、軽量骨材を含む水硬性組成物を表1に記載の配合にて、環境温度20℃においてハンドミキサによりパルプ及び水を混合し、次いで、セメント、珪砂、パーライトの順で投入し、モルタルミキサにて資料が均一になるように練り混ぜた。
【0020】
その後アクリル系エマルション(サイデン化学株式会社製、平均粒子径29.4μm)を固形分量に対し表2記載の添加量となるよう添加し、モルタルミキサにて2分間攪拌しセメント組成物を得た。
【0021】
得られたセメント組成物を、40×40×160mmのアクリル製型枠にいれ、厚さ20mmとなるよう突き棒にて均一になるよう充填し、500gの荷重をかけて加圧脱水を行った。1日経過後に型枠を外し、24時間105℃にて乾燥させた供試体の重量を測定した。その後、20℃の水に24時間供試体を水没させ、吸水後の重量を計測し、重量変化に吸水率を算出し、下記の基準にて評価した。結果を表2に示す。
○:吸水率が60%未満であり、吸水抑制の効果が良好である。
×:吸水率が60%以上であり、吸水抑制の効果が得られていない。
【0022】
【表1】
HPC:早強ポルトランドセメント 太平洋セメント社製(d=3.14g/cm3)
珪砂:3号(粒度:1.20~2.40mm)、5号(粒度:0.30~0.80mm)、7号(粒度:0.08~0.30mm)の3種等量混合(d=2.56g/cm3)
パルプ:古紙パルプ(予め、ミキサにて古紙パルプを5分程度かけ、破砕した)
パーライト:真珠岩パーライト 細粒 あかぎ園芸社製
【0023】
【表2】