(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078456
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】トンネル監視通路壁の損傷対策工法及び損傷対策構造
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20220518BHJP
E21F 17/00 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
E21F17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189143
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000161817
【氏名又は名称】ケイコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100221855
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 康造
(72)【発明者】
【氏名】山本 佳顕
(72)【発明者】
【氏名】棚田 幸男
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155AA02
2D155BB02
2D155CA04
2D155LA16
(57)【要約】
【課題】トンネル監視員通路の内部が劣化して損壊したコンクリート製縦壁及びコンクリート路盤を更新する。
【解決手段】監視員通路を構成する劣化して損壊した縦壁を、ベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断して水平切断面を形成し、該監視員通路内部を形成する埋め戻し砂上部のコンクリート路盤と共に切断した該縦壁を撤去し、替りに逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁下端部を、縦壁の水平切断面上部に設けた凹部嵌合部にピン支持嵌合固定し、該逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁先端部を、トンネル側壁に支持させ、自動車衝突荷重を、該凹部嵌合部と該横壁先端部からトンネル側壁へと荷重伝達するトンネル監視通路壁の損傷対策工法及び構造。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル監視通路を設けた道路トンネルのトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路のコンクリート製縦壁の損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策において、
前記監視員通路を構成する劣化して損壊した前記縦壁を、ベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断して水平切断面を形成し、前記監視員通路内部を形成する埋め戻し砂上部のコンクリート路盤と共に、切断した前記縦壁を撤去し、
替りに逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を、前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた凹部嵌合部にピン支持嵌合固定し、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を、前記トンネル側壁に支持させ、
前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と前記監視員通路内部を形成するケーブル設備と埋め戻し砂との空間部、及び前記横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填コンクリートを充填し、
自動車衝突荷重を、前記凹部嵌合部と前記横壁先端部から前記トンネル側壁へと荷重伝達する、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁による劣化損壊部分を撤去更新するトンネル監視通路壁の損傷対策工法。
【請求項2】
前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた前記凹部嵌合部が、U字形固定金具である、
請求項1に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策工法。
【請求項3】
前記横壁の横方向位置調整を行う横壁先端部幅調整ボルトを前記横壁先端部に備え、前記横壁を前記トンネル側壁に対し横方向に位置調整して支持させる、
請求項1又は請求項2に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策工法。
【請求項4】
前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁は、前記横壁をトンネル軸方向の前記縦壁に対してトンネル軸直角方向に所定間隔で配置して形成した、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策工法。
【請求項5】
トンネル監視通路を設けた道路トンネルのトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路のコンクリート製縦壁の損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策において、
前記監視員通路を構成する劣化して損壊した前記縦壁を、ベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断し、前記縦壁に形成した水平切断面と、該水平切断面上部に設けた凹部嵌合部と、
前記監視員通路のコンクリート路盤を撤去し、埋め戻し砂上部に逆L形プレキャストコンクリート擁壁を設置する際、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を、前記凹部嵌合部にピン支持嵌合固定し、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を前記トンネル側壁に支持させた、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と、
前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と前記監視員通路内部を形成するケーブル設備と前記埋め戻し砂との空間部、及び前記横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填された充填コンクリートと、から構成された、
自動車衝突荷重を、前記凹部嵌合部と前記横壁先端部から前記トンネル側壁へと荷重伝達する、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁による劣化損壊部分を撤去更新されたトンネル監視通路壁の損傷対策構造。
【請求項6】
前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた前記凹部嵌合部が、U字形固定金具である、
請求項5に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策構造。
【請求項7】
前記横壁の横方向位置調整を行う横壁先端部幅調整ボルトを前記横壁先端部に備え、前記横壁を前記トンネル側壁に対し横方向に位置調整して支持させた、
請求項5又は請求項6に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策構造。
【請求項8】
前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁は、前記横壁をトンネル軸方向の前記縦壁に対してトンネル軸直角方向に所定間隔で配置して形成した、
請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載のトンネル監視通路壁の損傷対策構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
トンネル監視通路を設けた道路トンネルでは、長期間の使用によりトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路の手摺基部から水が入り、監視員通路の路側帯に面したコンクリート製縦壁(以下、トンネル監視通路壁ともいう)の内部が劣化して損壊し、この内部の損壊が監視員通路の縦壁のタイル壁までおよんで破損する。本発明は損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策工法及び損傷対策構造に関し、劣化して損壊したコンクリート製縦壁及びコンクリート路盤を撤去して、逆L形プレキャストコンクリート擁壁により劣化損壊部分を更新するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車専用道路の長大なトンネルにおけるトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路はその路側帯に面したコンクリート製縦壁を有しており、該コンクリート製縦壁の上に監視員の安全をはかる鉄パイプ製の手摺りが立設されている。ところで、長大なトンネルの側壁は、運転者から見たトンネルの内視環境の改善のために、コンクリート壁からなるトンネル側壁にタイルを張りめぐらしてタイル内装としている。このトンネル側壁のタイル内装に合わせて、監視員通路の手摺りの下部の走行車線側のコンクリート製縦壁にも、通常はタイルを張りめぐらし、縦壁の壁面をコンクリート表面とした場合に受ける無味乾燥な感じを解消して、トンネル内を走行する自動車の運転者の心を整ったタイル壁面により和ませて安全運転を図っている。
【0003】
ところで、寒冷地の自動車道路では、路面が凍結して滑り易くなるので、走行中にスリップする危険が極めて高い。そこで、このような路面凍結を防止するために、路面に凍結防止剤、例えば塩化ナトリウムや塩化カルシウムなどの塩分を散布している。このため、これらの凍結防止剤の散布された道路を走行してきた自動車がトンネル内に進入してくると、トンネル外でタイヤに付着した凍結防止剤の塩分をそのままトンネル内に持ち込み、トンネル内の路面に落とす。さらに、落下した凍結材をタイヤで跳ね飛ばし、トンネル側壁ぎわの監視員通路の下部の路側帯側のコンクリート製縦壁や該縦壁の上に立てられている鉄パイプ製の手摺りに凍結防止剤を付着させる。この付着した凍結防止剤にトンネル内の湧水が掛かると、凍結防止剤が徐々に溶解されて手摺りの付け根のベースプレートの部分から監視員通路の中に浸透する。このように凍結防止剤が監視員通路の中に浸透すると、監視員通路下部を構成するコンクリートに埋設の鉄筋が腐蝕され、この腐蝕された部分とその周囲が膨潤して劣化して損壊し、さらにコンクリート製縦壁を劣化し損壊する。このように監視員通路下部のコンクリートの断面破壊が起こってコンクリート製縦壁におよび、遂にはコンクリート壁の表面に張りめぐらしたタイル面に剥離が生じ、タイルが脱落する。
【0004】
一方、トンネルの側壁面にクラックや欠損が生じ、あるいは監視員通路に不陸が生じると、これらに起因してトンネル内に湧水を生じ、上記したように凍結防止剤が徐々に溶解されて監視員通路に浸透して内部のコンクリートを損壊し、監視員通路の縦壁のタイル壁も損壊する。
例えば、特許文献1に記載のトンネル監視員通路4の破損した縦壁5のタイル壁の補修方法は、コンクリートの縦壁5の断面破壊あるいはコンクリートの縦壁表面のタイル壁面5aの剥離の起こった部分をステンレス製L字型タイル補修板9で被覆し、この被覆したステンレス製L字型タイル補修板9の中にモルタルを埋め戻し、さらに埋め戻した部分の監視員通路4のコンクリートの縦壁5の表面を元のタイル壁面と変わらない色彩からなるタイル模様の壁面に補修するものである。
特許文献2に記載の修復パネルを用いるコンクリート構造物の補修方法及び補修構造はトンネル内の監視員通路の側壁等のコンクリート構造物に適用可能であり、コンクリート構造物1 の補修すべき個所の垂直面から上面にかけ、適宜深さではつり、はつり作業の終了したコンクリート構造物1 の補修すべき個所の下部に沿って、修復パネル1 1 の下端部を受け入れる溝4を備えたパネルガイド3 を敷設し、修復パネル1 1の下端部をパネルガイド3 の溝4 内に落とし込み横並びに立込み、修復パネル1 1 の上部をコンクリート構造物1 の上部に固定し、修復パネル1 1 とコンクリート構造物1 のはつり面との間に存する隙間に、モルタル1 4 を注入充填するものである。
特許文献3に記載のトンネル監視員通路の鉄筋コンクリート製縦壁の補修方法は、鉄筋コンクリート製縦壁天端部のコンクリート及び縦壁側面のかぶりをはつり、はつり面の下端部には溝を設け、型枠兼用U F C パネルの下端を溝内に落とし込み、はつり面から所定間隔を空けて互いに隣り合うように配置し、型枠兼用U F C パネルの上端部を縦壁天端部に固定し、U F C パネル5 とはつり面との間隙1 0 に防錆剤含有無収縮モルタルを注入するものである。
特許文献4には、従来技術の新設監視員通路の構造および方法として、側壁部12を、型枠組上げ、所用補強鉄筋組み込み、及び内部空間へのコンクリート打設により構築し、型枠撤去後に埋設管16の設置と裏込め用砂14の充填後に、現場打ち床板13を構築する構造及び工法が記載され、コンクリート打設、及び養生により工期が長くなることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-144869号公報
【特許文献2】特開2016-94747号公報
【特許文献3】特開2020-60012号公報
【特許文献4】特開2005-48532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の破損した縦壁のタイル壁の補修方法は、鉄筋被り欠損部の断面修復と、断面破壊あるいはコンクリートの縦壁表面のタイル壁面5aの剥離の起こった部分の断面修復を目的とし、内部が劣化して損壊したコンクリート製縦壁の欠損部等の一部の断面修復であり縦壁の他の部分の劣化問題は依然として残り、さらにコンクリート路盤の劣化問題は解決されていない。
特許文献2に記載の修復パネルを用いるコンクリート構造物の補修方法及び補修構造は、補修対象のコンクリート構造物の補修すべき個所をはつり、当該はつった部分を修復パネル1 1 とモルタル4で断面修復することを目的とし、特許文献1と同様の問題点が残されている。
特許文献3に記載のトンネル監視員通路の鉄筋コンクリート製縦壁の補修方法は、縦壁天端部のコンクリート及び縦壁側面のかぶりをはつり、当該はつった部分を型枠兼用U F C パネルと無収縮モルタルで断面修復することを目的とし、特許文献1、2と同様の問題点が残されている。
特許文献4に記載の従来技術の新設監視員通路の構造および方法は、監視員通路を場所打ちコンクリートにより新設するものであり、供用中のトンネルにおいては、交通規制及び工期等の点から問題が多い。
以上のように、従来は監視員通路の路側帯に面したコンクリート製縦壁内部が劣化して損壊した際には、該縦壁内部の劣化し損壊したかぶり部分等をはつり、はつり部分の前面に修復パネルを設置して内部空間に充填材を充填して断面修復することを目的としており、縦壁の表面を補修する既存技術では、劣化部分が残る可能性があり長期耐久性での疑問がある。また、取り壊して現場打ちで再構築する既存技術では工事内容が煩雑で工事期間も長くなる難点がある。長期耐久性の確保と工期短縮が解決すべき課題である。
【0007】
このような観点から、本発明は、監視員通路の路側帯に面したコンクリート製縦壁内部が劣化して損壊し、この内部の損壊が監視員通路の縦壁のタイル壁まで及んで破損した際、内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁及びコンクリート路盤を撤去更新する、トンネル監視通路壁の損傷対策工法及び損傷対策構造を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明(請求項1)は、「トンネル監視通路を設けた道路トンネルのトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路のコンクリート製縦壁の損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策において、前記監視員通路を構成する劣化して損壊した前記縦壁を、ベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断して水平切断面を形成し、前記監視員通路内部を形成する埋め戻し砂上部のコンクリート路盤と共に、切断した前記縦壁を撤去し、替りに逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を、前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた凹部嵌合部にピン支持嵌合固定し、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を、前記トンネル側壁に支持させ、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と前記監視員通路内部を形成するケーブル設備と埋め戻し砂との空間部、及び前記横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填コンクリートを充填し、自動車衝突荷重を、前記凹部嵌合部と前記横壁先端部から前記トンネル側壁へと荷重伝達する、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁による劣化損壊部分を撤去更新するトンネル監視通路壁の損傷対策工法」を特徴としている。
【0009】
かかる工法によれば、内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁をベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断することで、コンクリート製縦壁の損壊箇所を撤去できる。さらに同時に内部が劣化して損壊しているコンクリート路盤も撤去できる。その際、監視員通路内部を構成する埋め戻し砂、配管、及びケーブル設備は存置した状態で作業が可能である。
また、形成された水平切断面には凹部嵌合部を設置することで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁下端部を容易にかつ強固にピン支持嵌合固定でき、場所打ちコンクリートによるコンクリート縦壁を施工する場合の水平切断面への鉄筋固定のための削孔が必要でない。そして、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁先端部を、トンネル側壁に支持させることで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁を容易に所定位置に設置できる。さらに、工場で製作された高品質な逆L形プレキャストコンクリート擁壁を使用することで、交通規制の緩和が可能となりさらに高品質な擁壁を形成することができる。そして、凹部嵌合部と横壁と側壁の突合せによる逆L構造の設置方法は既存構造物とのモーメント伝達の必要がなく、よって鉄筋やコンクリートによる連続化の必要がなく大幅な施工の合理化が図れるものである。
また、逆L形プレキャストコンクリート擁壁と監視員通路内部を形成するケーブル設備と埋め戻し砂との空間部、及び横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に充填コンクリートを充填することにより、監視員通路内部の水密性が向上する。そして、自動車衝突荷重を、凹部嵌合部と横壁先端部からトンネル側壁へと荷重伝達することができる。
【0010】
本発明(請求項2)は、「前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた前記凹部嵌合部が、U字形固定金具である」ことを特徴としている。
【0011】
かかる工法によれば、形成された水平切断面にU字形固定金具を設置することで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁下端部を容易にかつ強固にピン支持嵌合固定できる。
【0012】
本発明(請求項3)は、「前記横壁の横方向位置調整を行う横壁先端部幅調整ボルトを前記横壁先端部に備え、前記横壁を前記トンネル側壁に対し横方向に位置調整して支持させる」ことを特徴としている。
【0013】
かかる工法によれば、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁のトンネル側壁に対する横方向位置調整を、横壁先端部に設けた横壁先端部幅調整ボルトにより、容易にかつ正確に所定の位置に位置決めできトンネル側壁に支持させることができる。
【0014】
本発明(請求項4)は、「前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁は、前記横壁をトンネル軸方向の前記縦壁に対してトンネル軸直角方向に所定間隔で配置して形成した」ことを特徴としている。
【0015】
かかる工法によれば、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁のトンネル軸方向の長さが長い場合には、横壁をトンネル軸方向に対して所定間隔で配置することにより、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の重量を低減することができ、作業性が向上する。
【0016】
本発明(請求項5)は、「トンネル監視通路を設けた道路トンネルのトンネル側壁ぎわに設けられた監視員通路のコンクリート製縦壁の損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策において、前記監視員通路を構成する劣化して損壊した前記縦壁を、ベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断し、前記縦壁に形成した水平切断面と、該水平切断面上部に設けた凹部嵌合部と、前記監視員通路のコンクリート路盤を撤去し、埋め戻し砂上部に逆L形プレキャストコンクリート擁壁を設置する際、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を、前記凹部嵌合部にピン支持嵌合固定し、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を前記トンネル側壁に支持させた、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁と前記監視員通路内部を形成するケーブル設備と前記埋め戻し砂との空間部、及び前記横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填された充填コンクリートと、から構成された、自動車衝突荷重を、前記凹部嵌合部と前記横壁先端部から前記トンネル側壁へと荷重伝達する、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁による劣化損壊部分を撤去更新されたトンネル監視通路壁の損傷対策構造」を特徴としている。
【0017】
かかる構造によれば、内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁をベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断することで、コンクリート製縦壁の損壊箇所を撤去できる。さらに同時に内部が劣化して損壊しているコンクリート路盤も撤去できる。その際、監視員通路内部を構成する埋め戻し砂、配管、及びケーブル設備は存置した状態である。
また、形成された水平切断面には凹部嵌合部を設置することで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を容易にかつ強固にピン支持嵌合固定でき、場所打ちコンクリートによるコンクリート縦壁を施工する場合の水平切断面への鉄筋固定のための削孔が必要でない。そして、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を、トンネル側壁に支持させることで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁を所定位置に設置できる。さらに、工場で製作された高品質な逆L形プレキャストコンクリート擁壁を使用することで、交通規制の緩和が可能となりさらに高品質な擁壁を形成することができる。そして、凹部嵌合部と横壁と側壁の突合せによる逆L構造の設置構造は既存構造物とのモーメント伝達の必要がなく、よって鉄筋やコンクリートによる連続化の必要がなく大幅な施工の合理化が図れるものである。
また、逆L形プレキャストコンクリート擁壁と監視員通路内部を形成するケーブル設備と埋め戻し砂との空間部、及び横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填コンクリートを充填することにより、監視員通路内部の水密性が向上する。そして、自動車衝突荷重を、凹部嵌合部と横壁先端部からトンネル側壁へと荷重伝達することができる。
【0018】
本発明(請求項6)は、「前記縦壁の前記水平切断面上部に設けた前記凹部嵌合部が、U字形固定金具である」ことを特徴としている。
【0019】
かかる構造によれば、形成された水平切断面にU字形固定金具を設置することで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁下端部を容易にかつ強固にピン支持嵌合固定できる。
【0020】
本発明(請求項7)は、「前記横壁の横方向位置調整を行う横壁先端部幅調整ボルトを前記横壁先端部に備え、前記横壁を前記トンネル側壁に対し横方向に位置調整して支持させた」ことを特徴としている。
【0021】
かかる構造によれば、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁のトンネル側壁に対する横方向位置調整を、横壁先端部に設けた横壁先端部幅調整ボルトにより、容易にかつ正確に所定の位置に位置決めできトンネル側壁に支持させることができる。
【0022】
本発明(請求項8)は、「前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁は、前記横壁をトンネル軸方向の前記縦壁に対してトンネル軸直角方向に所定間隔で配置して形成した」ことを特徴としている。
【0023】
かかる構造によれば、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁のトンネル軸方向の長さが長い場合には、横壁をトンネル軸方向に対して所定間隔で配置することにより、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の重量を低減することができ、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のトンネル監視通路壁の損傷対策工法及び損傷対策構造によれば、内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁をベースコンクリート上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断することで、コンクリート製縦壁の損壊箇所を完全に撤去できる。さらに同時に内部が劣化して損壊しているコンクリート路盤も完全に撤去できる。その際、監視員通路内部を構成する埋め戻し砂、配管、及びケーブル設備は存置した状態で作業が可能である。
また、形成された水平切断面には凹部嵌合部を設置することで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁の縦壁の下端部を容易にかつ強固に嵌合固定でき、場所打ちコンクリートによるコンクリート縦壁を施工する場合の水平切断面への鉄筋固定のための削孔が必要でない。そして、前記逆L形プレキャストコンクリート擁壁の横壁の先端部を、トンネル側壁に支持させることで、逆L形プレキャストコンクリート擁壁を所定位置に設置できる。さらに、工場で製作された高品質な逆L形プレキャストコンクリート擁壁を使用することで、交通規制の緩和が可能となりさらに高品質な擁壁を形成することができる。そして、凹部嵌合部と横壁と側壁の突合せによる逆L構造の設置方法は既存構造物とのモーメント伝達の必要がなく、よって鉄筋やコンクリートによる連続化の必要がなく大幅な施工の合理化が図れるものである。
また、逆L形プレキャストコンクリート擁壁と監視員通路内部を形成するケーブル設備と埋め戻し砂との空間部、及び横壁先端部に形成された溝の底版を構成する部分に、充填コンクリートを充填することにより、監視員通路内部の水密性が向上する。そして、自動車衝突荷重を、ピン支持構造の凹部嵌合部と支持構造の横壁先端部からトンネル側壁へと荷重伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】トンネル監視通路を設けた道路トンネル1のトンネル側壁1aぎわに設けられた監視員通路4と路側帯3及び走行車線2を示す損傷対策施工前の図である。
【
図2】コンクリート製縦壁5aを、ベースコンクリート5b上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置(地覆6上端部分)で水平切断して水平切断面5cを形成する図である。
【
図3】コンクリート路盤4a及び切断されたコンクリート製縦壁5aを撤去し、水平切断面5c上面には凹部嵌合部5dを形成する図である。
【
図4】縦壁下端部7a2を凹部嵌合部5dに嵌合固定し、横壁先端部7b2をトンネル側壁1aに支持させる図である。
【
図5】凹部嵌合部5dの例としてのU字形固定金具5d2、U字形固定金具5d2を固定する例としてのアンカーボルトの図で、(a)は平面図、(b)は側面図である。
【
図6】縦壁7aと横壁7bとで構成された逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の図で、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図、(d)は縦壁継手7cの構造図である。
【
図7】逆L形プレキャストコンクリート擁壁7と監視員通路4内部を形成するケーブル設備4eと埋め戻し砂4cとの空間部、及び横壁先端部7b2に形成された溝4bの底版を構成する部分7b4に、充填コンクリート4fを充填する図であり、本発明の完成形態である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、トンネル断面において、鉛直方向を縦、鉛直方向に対して直角な水平方向を横といい、さらにトンネル延長方向をトンネル軸方向、トンネル中心線に垂直な前記水平方向(横)をトンネル軸直角方向という。
【0027】
図1は、トンネル監視通路を設けた道路トンネル1のトンネル側壁1aぎわに設けられた監視員通路4と路側帯3及び走行車線2を示す損傷対策施工前の図である。
図1に示すように、一般的なトンネル監視通路を設けた道路トンネル1のトンネル側壁1aぎわに設けたコンクリート路盤4aにより一段と高くなって車の衝突の際の安全をはかった監視員通路4がある。この監視員通路4のトンネル側壁1aぎわには細い溝4bがあり、トンネル側壁1aや監視員通路4に溜まった水を流すようになっている。さらに、この監視員通路4を形成するコンクリート路盤4aの走行車線2及びその路側帯3の側部にはコンクリート製縦壁5aがあり、走行車線2に対面して設けられている。通常、このコンクリート製縦壁5aには、トンネル側壁1aと共にタイルが貼られてタイル壁面(図示せず)となっている。監視員通路4のコンクリート製縦壁5aの近辺の上には手摺り(図示せず)が設けられており、この手摺りは手摺支柱に支持され、手摺支柱の下部はベースプレートにより監視員通路4のコンクリート路盤4a側部のコンクリート製縦壁5aに固定されている。このコンクリート製縦壁5aの下端ぎわには路面下に埋設した円形水路3aがあり、この円形水路3aの上面が路側帯3の一部となっており走行車線に持ち込まれた雨水などを円形水路3aで流下する。
【0028】
このような、トンネル監視通路を設けた道路トンネル1は、開通してから長期間にわたって使用された結果、トンネル内の車の通る走行車線2の路面や、トンネル側壁1aや、トンネル側壁1aぎわに設けられている監視員通路4が傷んでくる。そこで、走行車線2の路面やトンネル側壁1aや上面のトンネル壁は、走行車の安全のために、頻繁に補修されている。ところで、上記したように、走行車線2の路側帯3とトンネル側壁1aの間の路側帯3よりも一段と高い位置には、この位置から走行車線2の路面やトンネル内の状況を監視する監視員が通る監視員通路4が設けられている。ところで、この監視員通路4も長年の間に監視員通路4のコンクリート路盤4aの内部に、冬期にトンネル内を走行する車のタイヤに付着した凍結防止剤が撥ね飛ばされ、トンネル内の漏水と共にその塩分が浸入する。すなわち、トンネル内の漏水と共に凍結防止剤の塩分が路側帯3側の監視員通路4のコンクリート路盤4a及びコンクリート路盤4aの側部のコンクリート製縦壁5a上にかかり、コンクリート製縦壁5a上に立設された手摺の支柱の監視員通路面のベースプレートの部分から下部の監視員通路4のコンクリート路盤4a及び側部のコンクリート製縦壁5aの中に浸潤する。この浸潤した凍結防止剤の塩分によりコンクリート製縦壁5aを形成する鉄筋コンクリートの鉄筋が、腐蝕されて膨潤し、膨潤部となり、さらにコンクリート製縦壁5aの内部構造が損壊されて欠損となる。このようにコンクリート製縦壁5aの内部構造が損壊されると、これらのコンクリート製縦壁5aにタイル壁面が形成されていると、このタイル壁面も破損される。そこで、これらの欠損した監視員通路4のコンクリート路盤4aおよび監視員通路4の側部のタイル壁面5aを有するコンクリート製縦壁5aを補修する必要が生じる。
【実施例0029】
監視員通路の路側帯3に面したコンクリート製縦壁5a内部が劣化して損壊し、この内部の損壊が監視員通路4のコンクリート製縦壁5aのタイル壁までおよんで破損した際、内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁5a及びコンクリート路盤4aを更新するトンネル監視通路壁の損傷対策工法である。そして、監視員通路4のコンクリート路盤4a及びその表面であるコンクリート製縦壁5aの更新に当たっては、トンネル内を走行する車の走行規制の期間を短くして、できる限り影響を及ぼさないようにする必要があるため、逆L形プレキャストコンクリート擁壁によりコンクリート製縦壁及びコンクリート路盤を短期間で更新する。さらに逆L型プレキャストコンクリート擁壁と、コンクリート製縦壁及びコンクリート路盤が撤去された既設トンネル構造物との支持接合構造に、凹部嵌合部5d(U字形固定具5d2)及び横壁先端部7b2の幅調整ボルト7b3・コンクリート充填構造を採用し、迅速で確実な支持を実施し、自動車衝突荷重を逆L形プレキャストコンクリート擁壁からトンネル側壁へと荷重伝達することができるトンネル監視通路壁の損傷対策工法である。そして、ピン支持構造の凹部嵌合部5dと支持構造の横壁先端部7b2からトンネル側壁1aへと荷重伝達することができる。
【0030】
トンネル監視通路を設けた道路トンネル1のトンネル側壁1aぎわに設けられた監視員通路4のコンクリート製縦壁5aの損壊箇所の撤去更新によるトンネル監視通路壁の損傷対策工法の施工手順は、以下のとおりである。
【0031】
監視員通路4を構成する劣化して損壊したコンクリート製縦壁5aを、ベースコンクリート5b上端部以上でかつ劣化損壊状況で決定された所定位置で水平切断して水平切断面5cを形成する(以下、工程Aという)。一例として、劣化損壊状況で決定された所定位置をベースコンクリート5b上端部以上の地覆6上端部分を水平切断面5cとする。
図2参照。なお、特許文献1では、
図10をみると縦壁5の上方部分略2/3を補修の対象とし、特許文献2及び特許文献3では、縦壁の全面を補修の対象としている。
【0032】
監視員通路4内部を形成する埋め戻し砂4c上部のコンクリート路盤4a及び水平切断面5cで切断されたコンクリート製縦壁5aを撤去し、水平切断面5c上面には凹部嵌合部5dを形成する(以下、工程Bという)。
図3参照。凹部嵌合部5dの具体的な例としてはU字形固定金具5d2であり、一例として公知の防錆処理された溝形鋼を使用する。コンクリート製縦壁5aの水平切断面5c上面に所定長さのU字形固定金具5d2をトンネル軸線方向に後述する逆L型プレキャストコンクリート擁壁の縦壁継手の位置に固定する。該固定手段としては、一例として公知のアンカーボルトを使用する。
図5参照。水平切断面5cに凹部嵌合部5dを設置することで、後述する逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の縦壁下端部7a2を容易にかつピン支持嵌合固定でき、場所打ちコンクリートによるコンクリート縦壁を施工する場合に比べて水平切断面5cへの鉄筋固定のための削孔が必要でないため工期が短縮でき、さらに自動車衝突荷重を凹部嵌合部5dに設置した逆L形プレキャストコンクリート擁壁からトンネル側壁へと荷重伝達することができる。
【0033】
縦壁7aと横壁7bとで構成された逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の縦壁下端部7a2を、縦壁5aの水平切断面5c上部に設けた凹部嵌合部5dにピン支持嵌合固定し、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の横壁先端部7b2を、トンネル側壁1aに支持させる(以下、工程Cという)。
図4参照。工程Cにおいては、縦壁下端部7a2を凹部嵌合部5dにピン支持嵌合固定する際、凹部嵌合部5dに高さ調整プレート5d4を設置して縦壁5aの高さ調整を行う。また横壁先端部7b2に設けた横壁先端部幅調整ボルト7b3により、横壁先端部7b2のトンネル側壁1aに対する迅速で確実な横方向設置位置調整を行う。なお、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の設置に際し、該擁壁7のトンネル側壁1a、ベースコンクリート5b及び路側帯3等への仮固定等の施工は、公知の治具等にて安全確実に実施する。
【0034】
トンネル軸方向に形成された所定長さの縦壁7aと、該縦壁7aの上端部にトンネル軸直角方向に形成された横壁7bと、で構成された逆L形プレキャストコンクリート擁壁7は、運搬及び設置を考慮してトンネル軸方向に所定の長さで工場製作される。縦壁7aのトンネル軸方向の長さが長い場合には、所定幅の横壁7bをトンネル軸方向に対して所定間隔で配置することにより、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の重量を低減することができる。
図6に例示するものは、一例として、縦壁7aのトンネル軸方向の長さを略4000mmとし、トンネル軸直角方向の横壁7bは、トンネル軸方向の2カ所に一例として所定間隔略1500mmで一例として所定幅略500mmに形成されている。そして、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の縦壁7aは、
図6の(d)に例示するフランジとボルトナットで構成された縦壁継手7cにより、トンネル軸線方向に縦壁継手7c位置に配置されたU字形固定金具5d2上にて接合される。
図6参照。
【0035】
所定位置に設置された逆L形プレキャストコンクリート擁壁7と監視員通路4内部を形成するケーブル設備4eと埋め戻し砂4cとの空間部、及び横壁先端部7b2に形成された溝4bの底版を構成する部分7b4に、充填コンクリート4fを充填する(以下、工程Dという)。逆L形プレキャストコンクリート擁壁7のトンネル軸方向に間隔を開けて一対の横壁7bが設けられた逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の場合には、一対の該横壁7bの間は該空間部に相当し、該空間部にも充填コンクリート4fが充填され、一対の横壁7bと共にコンクリート版を構成して、監視員通路4を形成する。
図7参照。なお、充填コンクリート4fの空間部等へ充填に際しては、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の設置の際と同様に、該擁壁7自体の移動及び浮き上がり等を考慮して、公知の治具等にて対策を実施する。
【0036】
工程A-Dにより、内部が劣化して損壊していたコンクリート路盤4a及びその表面であるコンクリート製縦壁5aは逆L形プレキャストコンクリート擁壁7及び充填コンクリート4fにより更新され、自動車衝突荷重を、凹部嵌合部5dと横壁先端部7b2からトンネル側壁1aへと荷重伝達することができる。
実施例2は、コンクリート製縦壁内部が劣化して損壊したタイル壁を含むコンクリート製縦壁5a及びコンクリート路盤4aを更新するトンネル監視通路壁の損傷対策構造であり、損傷対策構造の構成は、以下のとおりである。
縦壁7aと横壁7bとで構成された逆L形プレキャストコンクリート擁壁7(以下、構造要素Cという)の縦壁7aの下端部7a2を、縦壁5aの水平切断面5c上部に設けた構造要素Aの凹部嵌合部5dにピン支持嵌合固定し、構造要素Cの逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の横壁7bの先端部7b2を、トンネル側壁1a(以下、構造要素Dという)に支持する。構造要素Cの縦壁下端部7a2を構造要素Aの凹部嵌合部5dにピン支持嵌合固定する際、凹部嵌合部5dに高さ調整プレート5d4を設置して縦壁5aの高さ調整を行う。また、構造要素Cの横壁先端部7b2に設けた横壁先端部幅調整ボルト7b3により、横壁先端部7b2の構造要素Cのトンネル側壁1aに対する迅速で確実な横方向設置位置調整を行う。なお、逆L形プレキャストコンクリート擁壁7の設置に際し、該擁壁7のトンネル側壁1a、ベースコンクリート5b及び路側帯3等への仮固定等の施工は、公知の治具等にて安全確実に実施する。
構造要素A-Eにより構成されたトンネル監視通路壁の損傷対策構造は、内部が劣化して損壊していたコンクリート路盤4a及びその表面であるコンクリート製縦壁5aは構造要素Cの逆L形プレキャストコンクリート擁壁7及び構造要素Eの充填コンクリート4fにより更新され、自動車衝突荷重を、構造要素Aの凹部嵌合部5dと構造要素Cの横壁先端部7b2から構造要素Dのトンネル側壁1aへと荷重伝達することができる構造を構成する。