(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078462
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】矢板引き抜き金具
(51)【国際特許分類】
E02D 9/02 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
E02D9/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189149
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】591267925
【氏名又は名称】日本スピードショア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073689
【弁理士】
【氏名又は名称】築山 正由
(72)【発明者】
【氏名】安藤隆則
(72)【発明者】
【氏名】前田英樹
(72)【発明者】
【氏名】青木実徳
(72)【発明者】
【氏名】笠岡真佐志
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050AA12
2D050DA01
2D050DB01
2D050EE03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】矢板を吊り上げた状態での横移動等が可能な矢板引き抜き金具を提供する。
【解決手段】正面視において略長方形状に形成された板材10と、板材10の上部に取り付けられた吊り金具30と、板材10の上部或いは吊り金具30に板材10に対して所定の間隔を備えて略平行に取り付けられた第二板材20と、板材10の下部に回動自在に設けられるピンと、該ピンに固定された係合離脱防止具と、該ピンが板材から抜けることを防止するための抜け防止機構とにより成る矢板係合部材40とにより構成した。更に、ピンに固定されると共に、ピンの回動に伴って板材10に当接することで、ピンの回動を一定範囲に抑制する抑止金具46を備えても良い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視において略長方形状に形成された板材(10)と、
板材(10)の上部に取り付けられた吊り金具(30)と、
板材(10)の上部或いは吊り金具(30)に、板材(10)に対して所定の間隔を備えて略平行に取り付けられた第二板材(20)と、
板材(10)の下部に回動自在に設けられるピン(42)と、該ピン(42)に固定された係合離脱防止具(41)と、該ピン(42)が板材(10)から抜けることを防止するための抜け防止機構とにより成る矢板係合部材(40)と、
により成る矢板引き抜き金具。
【請求項2】
ピン(42)に固定されると共に、ピン(42)の回動に伴って板材(10)に当接することで、ピン(42)の回動を一定範囲に抑制する抑止金具(46)を備えた請求項1に記載の矢板引き抜き金具。
【請求項3】
抑止金具(46)と、板材(10)或いは板材(10)に固定された部材との間に、ねじりコイルバネ(48)を介在させた請求項2記載の矢板引き抜き金具。
【請求項4】
ピン(42)に孔部(42c)を設けたこと、
ピン(42)が回動自在に挿入される筒状のスペーサ(50)であって、その円周方向に、円周の四分の一の長さを有する長孔(50b)を設けると共に、該長孔(50b)の両端を軸方向に、装着対象の矢板に対して逆方向に90度屈曲させた屈曲部(50c,50d)を備えたスペーサ(50)を装備したこと、
孔部(42c)、長孔(50b)及び屈曲部(50c,50d)に嵌まり込む止めねじ(52)を装備したこと、
止めねじ(52)を屈曲部(50c,50d)に嵌まり込む方向にピン(42)を押圧する圧縮コイルばね(51)を装備したこと、
を特徴とする請求項1に記載の矢板引き抜き金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
水道管埋設工事等で掘削した溝の壁面が崩れ人身事故が発生したり、付近の路面に亀裂、陥没等の悪影響が生じないようにするために、溝の壁面に沿って矢板を打ち込んで土留めとし、掘削した溝の壁面が崩れないようにしている。この矢板は溝を埋め戻した後に引き抜くものである。
【背景技術】
【0002】
前述の矢板を打ち込んだり、引き抜いたりするにはパワーショベルのバケットで矢板を押し込み、該バケットにワイヤーを連結し、該ワイヤーを矢板に連結してバケットを上方に移動して引き抜くといった作業が行われることが多い。
【0003】
特許文献1には、矢板の上部に設けられた吊り上げ用の穴に係合する金具を備えた、土留め用矢板引抜工具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
矢板を吊り上げ、横移動させる時などには、矢板をチャックで挟持したうえで、起重機やパワーショベルなどで移動作業を行うことが多い。
【0006】
ところが、かかるチャックを用いた矢板の吊り上げ横移動作業には、矢板が滑落する恐れがある。
【0007】
他方で、上記特許文献1に記載の引抜工具には、矢板係合部材が矢板に設けられた連結穴から外れやすく、矢板の横移動を行うことが困難という難点がある。
【0008】
そこで本発明は、矢板を吊り上げた状態での横移動等が可能な矢板引き抜き金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成する本発明の構成は以下の通りである。
【0010】
(1) 請求項1に記載の矢板引き抜き金具は、正面視において略長方形状に形成された板材と、板材の上部に取り付けられた吊り金具と、板材の上部或いは吊り金具に板材に対して所定の間隔を備えて略平行に取り付けられた第二板材と、板材の下部に回動自在に設けられるピンと、該ピンに固定された係合離脱防止具と、該ピンが板材から抜けることを防止するための抜け防止機構とにより成る矢板係合部材とにより構成される。
【0011】
(2) 請求項2に記載の矢板引き抜き金具は、請求項1記載の発明において、ピンに固定されると共に、ピンの回動に伴って板材に当接することで、ピンの回動を一定範囲に抑制する抑止金具を備えて構成した。
【0012】
(3) 請求項3に記載の矢板引き抜き金具は、請求項2記載の発明において、抑止金具と、板材或いは板材に固定された部材との間に、ねじりコイルバネを介在させて構成した。
【0013】
(4) 請求項4に記載の矢板引き抜き金具は、請求項1記載の発明において、ピンに孔部を設け、ピンが回動自在に挿入される筒状のスペーサであって、その円周方向に、円周の四分の一の長さを有する長孔を設けると共に、該長孔の両端を軸方向に、装着対象の矢板に対して逆方向に90度屈曲させた屈曲部を備えたスペーサを装備し、孔部、長孔及び屈曲部に嵌まり込む止めねじを装備し、止めねじを屈曲部に嵌まり込む方向にピンを押圧する圧縮コイルばねを装備せしめて構成した。
【発明の効果】
【0014】
上記のように構成される本発明が、如何に作用して課題を解決するかを図面を参照しながら概説する。なお、各図におけるUとは上方を、Dは下方を、Rは右方向を、Lは左方向を意味するものである。
【0015】
図1に示されるように本発明に係る矢板引き抜き金具1は、板材10、第二板材20、吊り金具30及び矢板係合部材40を主な構成要素とする。尚、
図1乃至
図5は請求項1記載の発明に、請求項2記載の発明要素、すなわち抑止金具46を付加したものを作図してある。
【0016】
図6は矢板引き抜き金具1を、矢板2に装着した状態を示すものである。図示されるように、矢板引き抜き金具1は、矢板2の上端部に装着して使用されるものである。
【0017】
具体的には、矢板2の上端近傍に設けられた連結穴2aに、矢板係合部材40を緩挿し、ピン42を回動させることで係合離脱防止具41を回動させて、矢板係合部材40が連結穴2aから抜けないようにしてある。また、後述の通り第二板材20と方形平板13との間に形成される間隙部21に、矢板2の上端部を緩挿してある。
【0018】
図7乃至
図9は、矢板引き抜き金具1を矢板2に装着する工程を示す説明図である。
【0019】
まず、
図7に示すように、矢板2の上端に、矢板引き抜き金具1を傾けながら、間隙部21内に矢板2の上端を緩挿し、矢板2の連結穴2aに対して矢板係合部材40を緩挿可能な位置に、矢板引き抜き金具1を位置せしめる。
【0020】
次いで
図8に示すように矢板引き抜き金具1を反時計回りに揺動させ、連結穴2aに矢板係合部材40を緩挿させる。
【0021】
最後に
図9に示すように、係合離脱防止具41を回動させ、連結穴2aから矢板係合部材40が抜けないようにする。すなわち、係合離脱防止具41を、
図6に示される位置に持ってくる。かようにして矢板引き抜き金具1を矢板2に装着するものである。
【0022】
また、本発明によれば矢板係合部材40により、
図6における左右方向の矢板2の揺れを抑止することが可能であるのみならず、係合離脱防止具41により、
図9における左右方向の矢板2の揺れをも抑止することが可能となる。つまり、本発明によれば、つり上げ時の矢板の揺れを可及的に抑止可能となり、矢板吊り作業のみならず、矢板を吊り下げたまま横方向へ移動することも可能となるのである。
【0023】
請求項2に記載の発明においては、ピン42の回動を一定範囲に抑制するための抑止金具46が設けてある。
図3は抑止金具46が左側の立て板12に当接することで、図示された状態以上に反時計回りに回動できない場合を示している。この状態では、
図2に示されるように、係合離脱防止具41はその長辺が垂直方向(上下方向)に向くよう設けられている。つまりは、係合離脱防止具41を、縦長形状を呈する矢板の連結穴2aに差し込み可能な状態となっている。また、この状態においては、掴み部材47の長辺も垂直方向(上下方向)に向くよう、設けられている。つまりは掴み部材47と係合離脱防止具41の長辺の向きが同一になる。かかる構成とすることで、摘まみ部材47を、反時計回りに回動可能な最大位置までもっていけば、係合離脱防止具41を連結穴2aに差し込み可能、あるいは連結穴2aから取り外し可能となる。
【0024】
図4は抑止金具46が右側の立て板12に当接することで、図示された状態以上に時計回りに回動できない場合を示している。この状態では、
図6に示されるように、係合離脱防止具41はその長辺が水平方向(左右方向)に向くよう設けられている。つまりは、係合離脱防止具41が、縦長形状を呈する矢板の連結穴2aから抜けない状態となっている。また、掴み部材47の長辺も
図4に示されるように水平方向(左右方向)に向くよう設けられている。かかる構成とすることで、摘まみ部材47を、時計回りに回動可能な最大位置までもっていけば、係合離脱防止具41が連結穴2aから抜けない状態となすことが可能となる。
【0025】
かように、抑止金具46を介在させることで、容易に矢板引き抜き金具1と矢板への取り付け・固定作業や取り外し作業を行うことが可能となるのである。
【0026】
請求項3に記載の矢板引き抜き金具は、抑止金具46と、板材或いは板材に固定された部材との間に、ねじりコイルバネ48を介在させてある。
【0027】
具体的には
図10に示すように抑止金具46が右側の立て板12に当接するよう、ねじりコイルばね48により抑止金具46が付勢されている。この状態では上述の通り、係合離脱防止具41はその長辺が
図6における水平方向(左右方向)に向くよう設けられている。
【0028】
つまりは、係合離脱防止具41が、縦長形状を呈する矢板の連結穴2aから抜けない状態が、ねじりコイルばね48により付勢維持されるのである。すなわち請求項3に記載の発明では、不意の力が矢板係合部材40に加わって、矢板引き抜き金具1の矢板への取り付け状態が外れること。つまりは矢板の落下を可及的に抑制することが可能となり、より安全に矢板の引抜や移動を行うことが可能となるのである。
【0029】
他方で
図11に示すように摘まみ部材47を、
図10の状態から反時計回りに回動させ、抑止金具46が左側の立て板12に当接する状態まで持ってくると、上述の通り、係合離脱防止具41はその長辺が垂直方向(上下方向)に向くよう設けられている。つまりは、係合離脱防止具41を、縦長形状を呈する矢板の連結穴2aに差し込み可能な状態となる。
【0030】
かかる動作は、ねじりコイルばね48による付勢に反して作業者が摘まみ部材47を回動させることが必要であり、係合離脱防止具41を連結穴2aに差し込んだ状態で、摘まみ部材47から作業者が手を離すと、ねじりコイルばね48により抑止金具46は
図10に示される状態、つまり右側の立て板12に当接する状態に復帰する。
【0031】
かかる状態は、上述の通り、係合離脱防止具41が矢板の連結穴2aから抜けない状態である。つまりは作業者が意図して係合離脱防止具41が抜けない状態まで摘まみ部材47を回動させる作業を行わなくとも、自動的に抜けない状態に至るものである。すなわち作業者の不注意により、矢板引き抜き金具1の矢板への取り付け状態が外れることが可及的に抑制されるものである。
【0032】
請求項4に記載の発明は、矢板引き抜き金具1を矢板に装着する際、及び矢板引き抜き金具1を矢板に装着した後、矢板の引抜・移動作業を行うときに、係合離脱防止具41の位置を固定することを可能に構成してある。つまりは、装着工程の簡易化及び、装着後の矢板引き抜き金具1の矢板からの脱落を防ぐことが可能となるのである。以下において詳述する。
【0033】
図20は請求項4記載の発明における矢板係合部材40の構成部材を示すものである。各構成部材の関係は、ピン42は方形平板13の孔部13a、固定部44の孔部44a、スペーサ50の空洞部50a、圧縮コイルバネ51及び当て材49の孔部49aに緩挿され、掴み部材47に固定されるている。また、止めねじ52はピン42の孔部42c及びスペーサ50の孔部50bに嵌合されている。また、スペーサ50は方形平板13に固定されている。
【0034】
図22は矢板引き抜き金具1を矢板に装着する際の、矢板係合部材40の態様を示すものである。すなわち矢板の連結穴2aに、係合離脱防止具41を差し込み可能な状態を示すものである。
【0035】
図22Aにおいて、ピン42は圧縮コイルバネ51により、図中左方向に押圧されており、しかも、ピン42の孔部42c及びスペーサ50の長孔50bに嵌め込まれた止めねじ52は、長孔50bの端部に設けられた屈曲部50cに、圧縮コイルバネ51の押圧力により嵌まり込んでいる。
【0036】
かように、止めねじ52が屈曲部50cに嵌まり込んでおり、しかもスペーサ50は方形平板13に固定されていることから、掴み部材47を回動させることは出来ない。つまり掴み部材47に固定されたピン42、及びピン42に固定された係合離脱防止具41は、回動できない状態に固定されることになる。
【0037】
そして、この状態では係合離脱防止具41の長辺は、図中上下方向を向くようピン42に固定されてことから、係合離脱防止具41を矢板2の連結穴2aに差し込み可能な状態が固定されることになるのである。なお、
図22Bは
図22Aを右側面側から見た図であるが、本来不可視であることから点線で作図すべきスペーサ50や止めねじ52を、判別しやすくするために実線で作図してある。
【0038】
図23Aは係合離脱防止具41を矢板の連結穴2aに差し込んだ後、該係合離脱防止具41を、
図23Bにおける反時計回り方向に回動させている状態を示すものである。
図22に示す状態から掴み部材47を、圧縮コイルバネ52の反力に抗して左方向に押圧すると、止めねじ52は屈曲部50cから脱し、長孔50bの位置に移動することになる。
【0039】
そして
図21に示すように、長孔50bはスペーサ50の円周方向に延設されていることから、掴み部材47を回動させると、止めねじ52は長孔50bに摺動する形態で移動可能となる。つまりはピン42は回動可能となるのである。
【0040】
このピン42の回動に伴って、ピン42に固定されている係合離脱防止具41も回動するものである。なお、
図23Bは
図23Aを右側面側から見た図であるが、本来不可視であることから点線で作図すべきスペーサ50や止めねじ52を、判別しやすくするために実線で作図してある。
【0041】
図24は矢板引き抜き金具1を矢板に装着した後、
図23に示される状態から更にピン42を反時計回り方向に回動させ、係合離脱防止具41が矢板の連結穴2aから抜けない状態で固定した状態を示すものである。
【0042】
すなわち、
図23Bの状態から掴み部材47を更に反時計回り方向に回動させると、
図23Aに示すように、止めねじ52は長孔50bの端部に設けた屈曲部50cに、圧縮コイルバネ52の反力により嵌まり込む。
【0043】
図24Aにおいて、ピン42は圧縮コイルバネ51により、図中左方向に押圧されており、しかも、ピン42の孔部42c及びスペーサ50の長孔50bに嵌め込まれた止めねじ52は、長孔50bの端部に設けられた屈曲部50cに、圧縮コイルバネ51の押圧力により嵌まり込んでいる。かかる状態に至ると、掴み部材47を回動させることが出来なくなり、つまりは掴み部材47に固定されたピン42、及びピン42に固定された係合離脱防止具41は、回動できない状態に固定されることになる。
【0044】
この状態において係合離脱防止具41は
図24Bに示すように、その長辺が左右方向に向くことから、矢板の連結穴2aから抜くことは出来ない。つまり矢板に装着後の矢板引き抜き金具1の矢板からの脱落を防ぐことが可能となるのである。なお、
図24Bは
図24Aを右側面側から見た図であるが、本来不可視であることから点線で作図すべきスペーサ50や止めねじ52を、判別しやすくするために実線で作図してある。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図6】矢板引き抜き金具を矢板に装着した状態を示す説明図
【
図7】矢板引き抜き金具を矢板に装着する工程を示す説明図
【
図8】矢板引き抜き金具を矢板に装着する工程を示す説明図
【
図9】矢板引き抜き金具を矢板に装着する工程を示す説明図
【
図12】矢板係合部材を板材に取り付けた状態を示す説明図
【
図14】A 立て板の正面図 B 同、右側面図 C 同、左側面図
【
図17】矢板係合部材を板材に取り付けた状態を示す説明図
【
図18】A 係合離脱防止具の正面図 B 同、右側面図
【
図20】請求項4記載の発明における矢板係合部材40の構成図
【
図21】請求項4記載の発明におけるスペーサの斜視図
【
図22】本発明を矢板に装着する際の矢板係合部材の態様を示す説明図
【
図23】本発明を矢板に装着する際の矢板係合部材の態様を示す説明図
【
図24】本発明を矢板に装着する際の矢板係合部材の態様を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、好ましい発明の実施形態につき、図面を参照しながら概説する。 なお、本発明構成要素の実施形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り、種々の形態を採りうる。
【0047】
本発明に係る矢板引き抜き金具1の主な構成要素である板材10、第二板材20、吊り金具30及び矢板係合部材40それぞれにつき、以下詳述する。尚、各部材はその必要とする強度や使用場所等に鑑み、防錆処理加工した鉄材や鋼材・ステンレス材等で形成するのが好ましい。また鉄材や鋼材を使用する場合には、溶接部や切断部の防錆上、製品の加工形成後にメッキ等の防錆処理を施すのが好ましい。
【0048】
板材10は、
図2に示されるように、正面視において縦長の略長方形状を呈するものであり、方形平板13と立て板12を主な構成要素とする。そして
図1に示すように、方形平板10の両側端の上下方向に一対の立て板12が溶接されている。
【0049】
方形平板13は、
図13に示すように方形の板材であり、その下部に孔部13aが設けてある。この孔部13aには矢板係合部材40が緩挿されるものである。
【0050】
立て板12は、
図14に示されるように細長の平板であり、その上下端には面取り部12aが設けられている。
【0051】
第二板材20は
図2乃至
図5に示されるように、天面22及び23底面が開放された中空の箱状体である。第二板材20は
図5に示すように、その上部が吊り金具30に、板材10との間に間隙21が形成される態様で溶接固定されている。
【0052】
上述の第二板材20の構造はむろん一例であり、板材10との間に間隙21を設けることが可能な構造であれば、任意の態様のものを採用できる。例えば吊り金具30に、箱体ではなく平板状に形成した第二板材20を、溶着固定してもよいし、L型の板材を第二板材20として、間隙21を形成できる態様で方形平板13に溶着固定しても構わない。
【0053】
吊り金具30は
図15に示すように、細長の板状体であり、直角に交差する屈曲辺32,33を備えるものである。
図1に示すように、この屈曲辺32,33の交差部位が、板材10の上端辺に当接する形態で、板材10と吊り金具30は溶接されるものである。
【0054】
また、吊り金具30の上部には孔部31が設けられている。この孔部31は、パワーショベル等に連結したワイヤー等を挿入するために設けられるものである。
【0055】
矢板係合部材40は、
図16及び
図17に示すように、ピン42、係合離脱防止具41、スペーサ43、固定具44、ワッシャ45、抑止金具46及び掴み部材47により構成されるものである。なお、
図16及び
図17は請求項2に記載の発明を示すものであり、請求項1に記載の発明には抑止金具46は存在しない。また後述の請求項3に記載の発明における矢板係合部材40には、ねじりコイルばね48が付加されるものであり、請求項4に記載の発明における矢板係合部材40にはや抑止金具46は存在せず、後述のスペーサ50や圧縮コイルバネ51が存在するものである。
【0056】
ピン42は、円柱部42aと六角柱部42bとにより成る。六角柱部42bの対向する角部を結ぶ直線の長さは、後述の係合離脱防止具41の孔部41aの直径よりも大きく構成されている。
【0057】
また、請求項4に記載の発明におけるピン42には、
図20に示すように円柱部42aに孔部42cが設けられている。
【0058】
係合離脱防止具41は、
図18に示すように正面視において上辺及び下辺が円弧状であり、上辺と下辺をつなぐ中間部が直線状の細長板状体である。また上下方向の中間位置より若干下方に、孔部41aが設けられている。この孔部41aには、ピン42の円柱部42aが挿入されるものである。また、ピン42の六角柱部42bと係合離脱防止具41とは溶接されている。
【0059】
図18に示される係合離脱防止具41の上下方向長さH1は、
図6に示される、矢板2の連結穴2aの左右方向長さH2よりも長くなるよう形成されている。かように形成することで、
図6に示されるように矢板離脱防止具41が連結穴2aに係止され、矢板引き抜き金具1の矢板2に対する係合が維持されるものである。
【0060】
請求項1乃至請求項3記載の発明に用いられるスペーサ43は、中空の円筒体であり、その内部にピン42の円柱部42aが挿入されるものである。
【0061】
図17に示されるように、スペーサ43は板材10を構成する方形平板13の孔部13aと、後述の固定具44の孔部44aに挿入されるものである。また、スペーサ43と方形平板13とは溶接されるものである。なお、
図17に示される方形平板13と係合離脱防止具41との間の空間に、矢板が装入されるものである。
【0062】
固定具44は方形の板材であり、その中央に孔部44aを備えるものである。孔部44a内には、スペーサ43が挿入されるものである。固定具44は、方形平板13に溶接される。
【0063】
図17に示されるように、固定具44に左側には、ワッシャ45を介して抑止金具46が装備される。
図19に示されるように、抑止金具46は上端が尖った板材であり、その下部に孔部46aを備えるものである。この孔部46a内には円柱部42aが挿入されている。また、円柱部42aと抑止金具46とは溶接されている。
【0064】
図19に示されるように、抑止金具46の尖った上端を構成する斜辺46b,46cは、上下方向垂線に対してそれぞれ45度傾斜して形成されている。
【0065】
図3に示されるように抑止金具46は、予め左方向に45度傾けて、後述の通りピン42に溶接されている。つまり、
図16に示されるように、係合離脱防止具41や掴み部材47の長辺が上下方向に垂直となる状態で、抑止金具46は45度傾斜した状態になるよう予め溶接されている。また、抑止金具46の上下方向高さH3は、45度傾斜した状態で
図3に示されるように板材10の左側立て板12に、斜辺46bが当接する長さに形成されている。
【0066】
同様に
図4に示されるように、抑止金具46を右側に45度傾斜した状態で、板材10の右側立て板12に、斜辺46cが当接する長さに形成されている。
【0067】
かように形成することで
図3に示すように掴み部材47を左方向に限界まで回動させた状態、つまり斜辺46bが立て板12に当接する位置まで回動させた状態では、
図2に示すように係合離脱防止具41はその長辺が上下方向に垂直位置となり、縦長である矢板2の連結穴2aに容易に嵌めることが可能となるのである。
【0068】
一方、掴み部材47を
図3に示される状態から右方向に限界まで、つまり90度回動させ、
図4に示される状態、すなわち斜辺46cが右側の立て板12に当接する位置まで回動させた状態では、
図6に示すように係合離脱防止具41はその長辺が上下方向垂線に対して直行する位置となり、連結穴2aから外れない状態となるのである。
【0069】
かように掴み部材47を左右方向に限界まで回動させたそれぞれの状態が、矢板2の連結穴2aへの嵌めこみ及び固定に適した状態となるよう形成されており、使い勝手に富むものとなるのである。
【0070】
図17に示されるように、ピン42の円柱部42aの左端には、丸棒である掴み部材47が溶接されている。この掴み部材47を掴んで操作することで、矢板離脱防止具41を回動させるものである。
【0071】
上記の通りスペーサ43と固定具44が方形平板13に溶接されていることで、矢板係合部材40は板材10に固定支持される。他方でピン42がスペーサ43内に挿入されていることから、ピン42、抑止金具46及び掴み部材47は回動自在となるものである。
【0072】
また、スペーサ43が方形平板13と係合離脱防止具41との間に介在されていることで、ピン42は
図17における左方向への移動が抑止される。抑止金具46がピン42に溶接されることで、ピン42は
図17における右方向への移動が抑止される。
【0073】
上記の矢板係合部材40の構成はむろん一例であり、係合離脱防止具41を板材10に対して回動可能に取り付け可能であれば、任意の構成を採用できる。
【0074】
請求項3に記載の発明では、
図12に示されるように、抑止金具46と固定具44との間にねじりコイルバネ48を介在させてある。固定具44は、板材10を構成する方形平板13に固定されており、請求項3に記載される「板材に固定された部材」に該当する。
【0075】
ねじりコイルバネ48はその両端がそれぞれが反対方向に略90度屈曲された屈曲部48a,48aが形成されており、該屈曲部48aのうちの一方は固定具44に設けられた孔部44aに嵌合されている。他方の屈曲部48aは、
図10や
図11に示されるようにや抑止金具46の左側長辺46dに係止されている。かかる構造とすることで、
図10に示される状態から
図11に示される状態に抑止金具46を反時計回りに回動させると、抑止金具46には
図11の状態から
図10の状態へ、つまりは時計回りに回動する方向への付勢力がねじりコイルばね48により与えられるものである。
【0076】
尚、屈曲部48aの一方は、固定具44に嵌合させずに、方形平板13に孔部を設けて該孔部に嵌合させるようにしても構わない。
【0077】
請求項4記載の発明では、
図20に示すように、ピン42に半径方向に延びる孔部42cが設けられている。この孔部42cには止めねじ52が嵌合されるものである。
【0078】
請求項4記載の発明におけるスペーサ50は、
図21に示すように中空の円筒体であり、その内部にピン42が回動自在に挿入される。スペーサ50には、その円周方向に、円周の四分の一の長さを有し、半径方向に貫通した長孔50bが設けられており、該長孔50bの両端には軸方向に、装着対象の矢板に対して逆方向に90度屈曲し、且つ、半径方向に貫通した屈曲部50c,50dが設けられている。
【0079】
前述の長孔50bが円周の四分の一の長さを有するとは、止めねじ52が屈曲部50cから屈曲部50dまで移動するようピン42を回動させると、掴み部材47が90度回転する長さを表すものである。
【0080】
図22に示すように、スペーサ50にはピン42が、その左側である先端側がスペーサ50の外部に延出する形状で挿入されており、該延出したピン42の先端側は圧縮コイルバネ51内に緩挿される。そしてピン42の先端は当て材49の孔部49a内に嵌合し、掴み部材47に固定されている。
【0081】
スペーサ50は板材10を構成する方形平板13の孔部13aと、固定具44の孔部44aに挿入されるものである。また、スペーサ50と方形平板13とは溶接されるものである。なお、
図22に示される方形平板13と係合離脱防止具41との間の空間に、矢板が装入されるものである。
【0082】
圧縮コイルバネ51は、
図22に示されるように、スペーサ50の左側先端と当て材49との間に、その内部にピン42が緩挿される形態で装備されるものである。
【符号の説明】
【0083】
10・・板材
20・・第二板材
30・・吊り金具
31・・孔部
40・・矢板係合部材
41・・係合離脱防止具
42・・ピン
42c・・孔部
48・・ねじりコイルばね
50・・スペーサ
50b・・長孔
50c・・屈曲部
50d・・屈曲部
51・・圧縮コイルバネ
【手続補正書】
【提出日】2022-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視において略長方形状に形成された板材(10)と、
板材(10)の上部に取り付けられた吊り金具(30)と、
板材(10)の上部或いは吊り金具(30)に、板材(10)に対して所定の間隔を備えて略平行に取り付けられた第二板材(20)と、
板材(10)の下部に回動自在に設けられるピン(42)と、該ピン(42)に固定された係合離脱防止具(41)と、該ピン(42)が板材(10)から抜けることを防止するための抜け防止機構とにより成る矢板係合部材(40)により成る矢板引き抜き金具において、
ピン(42)に孔部(42c)を設けたこと、
ピン(42)が回動自在に挿入される筒状のスペーサ(50)であって、その円周方向に、円周の四分の一の長さを有する長孔(50b)を設けると共に、該長孔(50b)の両端を軸方向に、装着対象の矢板に対して逆方向に90度屈曲させた屈曲部(50c,50d)を備えたスペーサ(50)を装備したこと、
孔部(42c)、長孔(50b)及び屈曲部(50c,50d)に嵌まり込む止めねじ(52)を装備したこと、
止めねじ(52)を屈曲部(50c,50d)に嵌まり込む方向にピン(42)を押圧する圧縮コイルばね(51)を装備したこと、
を特徴とする矢板引き抜き金具。