(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078466
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】棒材把持装置及び棒材供給機
(51)【国際特許分類】
B23B 13/02 20060101AFI20220518BHJP
B23B 13/10 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
B23B13/02 B
B23B13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189156
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】507351850
【氏名又は名称】育良精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100107537
【弁理士】
【氏名又は名称】磯貝 克臣
(72)【発明者】
【氏名】廣澤 清
(72)【発明者】
【氏名】曽根 栄二
(72)【発明者】
【氏名】中里 幸司
【テーマコード(参考)】
3C045
【Fターム(参考)】
3C045FC04
3C045FC22
(57)【要約】
【課題】「2本掴み」の発生を顕著に抑制できる棒材把持装置を提供すること。
【解決手段】本発明は、棒材収容部に収容された棒材を1本ずつ取り出すための棒材把持装置であって、前記棒材収容部に収容された棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間を間に形成する一対の把持部材と、前記一対の把持部材の少なくとも一方を他方に対して回動させる把持回動機構と、を備え、全閉制御状態において、前記把持回動機構は、前記楔形の空間の開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動することを特徴とする棒材把持装置である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材収容部に収容された棒材を1本ずつ取り出すための棒材把持装置であって、
前記棒材収容部に収容された棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間を間に形成する一対の把持部材と、
前記一対の把持部材の少なくとも一方を他方に対して回動させる把持回動機構と、
を備え、
全閉制御状態において、前記把持回動機構は、前記楔形の空間の開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動する
ことを特徴とする棒材把持装置。
【請求項2】
全閉制御状態において、前記把持回動機構は、前記楔形の空間の開口角度が8°~10°の範囲内である先開姿勢に留まるように作動する
ことを特徴とする請求項1に記載の棒材把持装置。
【請求項3】
前記一対の把持部材の各々は、棒材を把持するための把持面が平坦面として構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の棒材把持装置。
【請求項4】
前記一対の把持部材の回動軸線の方向において、前記一対の把持部材の基端側の領域と部分的に重なるように配置されたストッパ部材
を更に備え、
前記ストッパ部材は、前記回動軸線の方向に見て、前記楔形の空間の基端側を規制するようになっている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の棒材把持装置。
【請求項5】
前記ストッパ部材は、前記棒材収容部内に収容された棒材を前記棒材収容部の側壁から遠ざける機能を有する
を更に備えたことを特徴とする請求項4に記載の棒材把持装置。
【請求項6】
給送軸線に沿って棒材を棒材加工機に給送する棒材供給機であって、
複数の棒材が内部に収容される棒材収容部と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の棒材把持装置と、
前記棒材把持装置によって1本ずつ取り出された後の前記棒材を前記給送軸線に沿って案内するためのガイド部と、
を備え、
前記棒材収容部及び前記一対の把持部材は、揺動機構によって、前記給送軸線と平行な回転軸線回りに一体的に揺動可能となっていて、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材に近接する側に移動して前記楔形の空間内に1本の棒材が把持されることを促す第1揺動位置と、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材から遠ざかる側に移動して前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材を除いた他の棒材が前記一対の把持部材から離間することを促す第2揺動位置と、
の各々において、一時停止できるようになっている
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項7】
前記棒材収容部及び前記一対の把持部材は、前記揺動機構によって、
前記第1揺動位置と前記第2揺動位置との間の揺動位置であって、前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材に適用される負荷を軽減させる第3揺動位置
においても一時停止できるようになっており、
把持した1本の棒材を他の棒材に対して捌く際に、前記棒材収容部及び前記把持部材は、前記第3揺動位置に一時停止される
ことを特徴とする請求項6に記載の棒材供給機。
【請求項8】
給送軸線に沿って棒材を棒材加工機に給送する棒材供給機であって、
複数の棒材が内部に収容される棒材収容部と、
前記棒材収容部内に収容された前記棒材を1本ずつ取り出すための把持装置と、
前記把持装置によって1本ずつ取り出された後の前記棒材を前記給送軸線に沿って案内するためのガイド部と、
を備え、
前記把持装置は、前記棒材収容部内に収容された前記棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間を間に形成する一対の把持部材を有しており、
前記棒材収容部及び前記一対の把持部材は、揺動機構によって、前記給送軸線と平行な回転軸線回りに一体的に揺動可能となっていて、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材に近接する側に移動して前記楔形の空間内に1本の棒材が把持されることを促す第1揺動位置と、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材から遠ざかる側に移動して前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材を除いた他の棒材が前記一対の把持部材から離間することを促す第2揺動位置と、
前記第1揺動位置と前記第2揺動位置との間の揺動位置であって、前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材に適用される負荷を軽減させる第3揺動位置と、
の各々において、一時停止できるようになっており、
把持した1本の棒材を他の棒材に対して捌く際に、前記棒材収容部及び前記把持部材は、前記第3揺動位置に一時停止される
ことを特徴とする棒材供給機。
【請求項9】
前記棒材収容部内に収容された前記棒材の前記把持装置側の端面を規制する規制板
を更に備え、
前記規制板は、前記給送軸線と平行な方向に移動可能であるように、前記揺動機構に支持されている
ことを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の棒材供給機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材収容部に収容された棒材を1本ずつ取り出すための棒材把持装置に関する。また、本発明は、棒材加工機に棒材を供給するための棒材供給機に関する。
【背景技術】
【0002】
棒材供給機として、例えば特許文献1に記載されるように、棒材を載置する材料棚と、棒材加工機に棒材を給送するためのガイドレールと、材料棚から棒材を1本取り出してガイドレールに供給する棒材補給機と、を有するものが知られている。
【0003】
また、本件出願人は、棒材の絡まりや損傷を防止しながら棒材を1本ずつ取り出すことができる棒材供給機について、特許を取得している(特許文献2)。
【0004】
この特許では、棒材収容部及び把持部材が、給送軸線と平行な回転軸線回りに一体的に揺動可能となっていて、棒材収容部内の棒材が一対の把持部材に近接する側に移動して楔形の空間内に1本の棒材が把持されることを促す第1揺動位置と、棒材収容部内の棒材が一対の把持部材から遠ざかる側に移動して一対の把持部材によって把持された1本の棒材を除いた他の棒材が一対の把持部材から離間することを促す第2揺動位置と、の間で揺動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-276102号公報
【特許文献2】特許第5428112号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、棒材収容部に収容された棒材を1本ずつ取り出すための従来の棒材把持装置は、2本の棒材を同時に把持してしまう「2本掴み」という症状が出ることがあった。また、直径1mm以下の細い棒材は把持が難しく、従来の棒材把持装置では把持した瞬間に棒材を曲げてしまうことがあった。
【0007】
更には、特許文献2による棒材供給機では、棒材収容部及び把持部材が第2揺動位置にある状態で分離部材(捌き板)が稼働して1本の棒材が他の棒材から分離されるが、この時に当該1本の棒材にかかる負荷が比較的大きいという問題があった。特に、直径1mm以下の細い棒材は、分離途中に「綾」になって曲がってしまうことがあった。近年では、直径1mm以下の細い棒材を加工する必要性が高まってきており、例えば直径0.3mmといった極細の棒材を棒材加工機に供給する必要がある。
【0008】
本発明は、以上の背景に基づいて創案されたものである。本発明の目的は、「2本掴み」の発生を効果的に抑制できる棒材把持装置を提供することである。また、本発明の目的は、把持した1本の棒材を他の棒材に対して捌く際に当該1本の棒材(特には直径1mm以下の細い棒材)にかかる負荷を低減することができる棒材供給機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、
棒材収容部に収容された棒材を1本ずつ取り出すための棒材把持装置であって、
前記棒材収容部に収容された棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間を間に形成する一対の把持部材と、
前記一対の把持部材の少なくとも一方を他方に対して回動させる把持回動機構と、
を備え、
全閉制御状態において、前記把持回動機構は、前記楔形の空間の開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動する
ことを特徴とする棒材把持装置
である。
【0010】
本発明によれば、全閉制御状態において、楔形の空間の開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動するため、「2本掴み」の発生を効果的に抑制することができる。
【0011】
本件発明者による各種の実験結果によれば、当該開口角度は、8°~10°であることが好ましい。また、先端の開口距離は3.2mm~4.0mm程度であることが好ましい。
【0012】
このような条件下では、φ0.5の棒材について、例えば0.15MPaの把持力で、安定的に1本ずつ把持することができ、「2本掴み」は発生しない。更に、φ4.0の棒材に対しても、例えば0.5MPaの把持力で、安定的に1本ずつ把持することができ、「2本掴み」は発生しない。
【0013】
また、前記一対の把持部材の各々は、棒材を把持するための把持面が平坦面として構成されていることが好ましい。
【0014】
これによれは、棒材に不所望の傷が付くことが、効果的に防止される。
【0015】
また、前記一対の把持部材の回動軸線の方向において、前記一対の把持部材の基端側の領域と部分的に重なるように配置されたストッパ部材を更に備え、前記ストッパ部材は、前記回動軸線の方向に見て、前記楔形の空間の基端側を規制するようになっていることが好ましい。
【0016】
これによれは、回動軸線の方向に見た楔形の空間のサイズを調整することが可能であるため、「2本掴み」の発生を更に効果的に抑制できる。
【0017】
また、前記ストッパ部材は、前記棒材収容部内に収容された棒材を前記棒材収容部の側壁から遠ざける機能を有することが好ましい。
【0018】
これによれは、部品点数を増やすことなく、棒材収容部の側壁に張り付いた状態の棒材が存在する場合に、当該側壁から当該棒材を引き離すことができる。
【0019】
また、本発明は、
給送軸線に沿って棒材を棒材加工機に給送する棒材供給機であって、
複数の棒材が内部に収容される棒材収容部と、
前記棒材収容部内に収容された前記棒材を1本ずつ取り出すための把持装置と、
前記把持装置によって1本ずつ取り出された後の前記棒材を前記給送軸線に沿って案内するためのガイド部と、
を備え、
前記把持装置は、前記棒材収容部内に収容された前記棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間を間に形成する一対の把持部材を有しており、
前記棒材収容部及び前記一対の把持部材は、揺動機構によって、前記給送軸線と平行な回転軸線回りに一体的に揺動可能となっていて、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材に近接する側に移動して前記楔形の空間内に1本の棒材が把持されることを促す第1揺動位置と、
前記棒材収容部内の前記棒材が前記一対の把持部材から遠ざかる側に移動して前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材を除いた他の棒材が前記一対の把持部材から離間することを促す第2揺動位置と、
前記第1揺動位置と前記第2揺動位置との間の揺動位置であって、前記一対の把持部材によって把持された1本の棒材に適用される負荷を軽減させる第3揺動位置と、
の各々において、一時停止できるようになっており、
把持した1本の棒材を他の棒材に対して捌く際に、前記棒材収容部及び前記把持部材は、前記第3揺動位置に一時停止されることを特徴とする棒材供給機である。
【0020】
本発明によれば、一対の把持部材によって把持された1本の棒材を、棒材収容部及び一対の把持部材が第3揺動位置にある状態で他の棒材に対して捌く(例えば分離部材(捌き板)を稼働させて他の棒材から分離する)ことができるため、一対の把持部材によって把持された1本の棒材に適用される負荷を効果的に軽減させることができる。第3揺動位置は、例えば棒材の直径等に応じて、及び/または、棒材の状態を検知する各種のセンサの出力に応じて、棒材の負荷を効果的に軽減できる位置に設定されることが好ましい。
【0021】
また、前記棒材収容部内に収容された前記棒材の前記把持装置側の端面を規制する規制板を更に備え、前記規制板は、前記給送軸線と平行な方向に移動可能であるように、前記揺動機構に支持されていることが好ましい。
【0022】
これによれば、当該規制板は、棒材収容部及び一対の把持部材が揺動する際に、棒材から離れる方向に退避することができる。これにより、棒材収容部及び一対の把持部材が揺動する際に、規制板が棒材の端面を伴って共に揺動して、棒材に不所望の負荷がかかってしまう、という事態の発生を回避することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の棒材把持装置によれば、全閉制御状態において、楔形の空間の開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動するため、「2本掴み」の発生を効果的に抑制することができる。
【0024】
また、本発明の棒材供給機によれば、一対の把持部材によって把持された1本の棒材を、棒材収容部及び把持部材が第3揺動位置にある状態で他の棒材に対して捌く(例えば分離部材(捌き板)を稼働させて他の棒材から分離する)ことができるため、一対の把持部材によって把持された1本の棒材に適用される負荷を効果的に軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の一実施形態に係る棒材供給機の全体を示す平面図。
【
図2】V字レールからガイドレールへの棒材の受け渡し動作についての概略説明図である。
【
図5】φ0.5の棒材を把持する棒材把持装置の概略図である。
【
図6】φ4.0の棒材を把持する棒材把持装置の概略図である。
【
図7】本実施形態の棒材供給機の要部を示す概略平面図である。
【
図8】本実施形態の棒材供給機の要部を示す概略正面図である。
【
図9】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図10】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図11】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図12】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図13】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図14】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図15】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図16】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図17】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図18】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図19】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図20】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図21】本実施形態の棒材供給機の動作状態を示す概略図である。
【
図22】本実施形態の揺動機構を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(全体構成)
以下、本発明の好ましい実施形態を、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る棒材供給機1の全体を示す平面図である。
【0027】
棒材供給機1は、棒材加工機200に隣接して配置され、棒材供給機1及び棒材加工機200を備えて棒材加工システム300が構成されている。棒材加工機200は、例えば主軸固定型のNC旋盤であり、主軸Aを有する主軸台201と、主軸台201に支持された棒材を加工する加工部(不図示)と、を備えている。棒材供給機1は、棒材加工機200に、主軸Aと一致する給送軸線Bに沿って棒材Wを1本ずつ供給する。
【0028】
棒材Wは、棒材供給機1内で棒材加工機200に向かって供給される。棒材供給機1において、棒材加工機200から遠い側を上流側、棒材加工機200に近い側を下流側、と称することがある。
【0029】
棒材供給機1は、給送軸線Bに平行に延びる支持フレーム2と、支持フレーム2に支持され、棒材Wを給送軸線Bに沿って案内するガイドレール4と、ガイドレール4上の棒材Wを給送軸線Bに沿って棒材加工機200に給送する送り矢6と、ガイドレール4に供給される棒材Wを収納する棒材収容部8と、棒材収容部8に収納された棒材Wを1本ずつ把持してガイドレール4に供給する棒材把持装置10と、棒材供給機1の動作を制御するコントローラ(不図示)と、を備える。
【0030】
ガイドレール4は、棒材供給機1の長手方向にわたって給送軸線Bに平行に延びており、上方に開口する断面円弧状に形成され、その内面に棒材Wを保持した態様で棒材Wを案内可能となっている。ガイドレール4の円弧形の形状により、棒材Wがガイドレール4に供給されると、棒材Wの径寸法にかかわらず、棒材Wの中心が常に幅方向に関して同じ位置に安定する。
【0031】
送り矢6は、上流側の端部が羽根部材64に固定されることで片持ち支持されている。羽根部材64は、送り矢6を長手方向に沿って移動させる送り矢駆動機構66に連結している。送り矢駆動機構66は、サーボモータ20及び無端チェーンまたはベルト22を有し、無端チェーン22には羽根部材64が連結している。
【0032】
図2は、V字レール7からガイドレール4への棒材Wの受け渡し動作についての概略説明図である。棒材供給機1の後述する動作によって、1本の棒材WがV字レール7上に分離される。
図2に示すように、V字レール7は、棒材収容部8からガイドレール4に向かって下方に傾斜する傾斜部7aと、傾斜部7aのガイドレール4側の先端部に設けられた係止部7bと、を有している。傾斜部7aの棒材収容部8側の端部は、棒材収容部8の底面の高さ近傍に位置し、後述する分離部材(捌き板)86よりも下方に位置している。傾斜部7aの上面には、棒材収容部8からガイドレール4に向かって延びる複数の棒状の滑りバーが所定間隔で取り付けられている。これらの滑りバーにより、V字レール7上に載置された棒材Wが傾斜部7a上を移動しやすくなっている。
【0033】
係止部7bは、所定間隔で複数形成されており、傾斜部7aに対してほぼ垂直に上方に延びている。傾斜部7aにおいて係止部7b間の下端側領域に、切欠部7c(
図7参照)が形成されている。傾斜部7aの傾斜角度は、棒材Wが傾斜部7a上を転がって係止部7bで係止するときに棒材Wが損傷しないような角度に設定されている。
【0034】
そして、供給案内アーム9が、各係止部7bの間及び傾斜部7aの切欠部7cを通過できる形態で形成されていて(
図2(c)参照)、V字レール7上の棒材Wをすくい上げられるようになっている。また、供給案内アーム9と干渉しない切欠部7cの一部に、棒材検知センサ7sが設けられている(
図7及び
図9参照)。
【0035】
図2(a)の状態(
図9及び
図21も同様の状態を示している)は、棒材供給機1の後述する動作によって、V字レール7上に1本の棒材Wが分離された状態である。棒材Wの分離は、先行する棒材の棒材加工機200による加工が終了するまでに実施される。
【0036】
棒材加工機200の加工が終了すると、棒材交換動作が開始される。当該棒材交換動作においては、送り矢6が端材を持ち帰って排出して、新しい棒材Wの供給がなされる。具体的には、送り矢6の後退動作の開始後、V字レール7が第1揺動位置に傾斜される(詳しくは後述する通り、第2揺動位置(
図10及び
図11参照)を経てから第1揺動位置(
図12参照)に至る)。この状態が、
図2(b)の状態である。
【0037】
図2(b)の状態から、供給案内アーム9が作動して、V字レール7上の棒材Wをすくい上げる。供給案内アーム9の上面は、傾斜案内面9aとなっており、当該傾斜案内面9aの下端部に、フック状部9bが設けられている。V字レール7上にあった棒材Wは、供給案内アーム9の上昇動作により、供給案内アーム9の傾斜案内面9a上を転がりながらV字レール7の係止部7bを越えて、供給案内アーム9のフック状部9bに移動する。この状態が、
図2(c)の状態である。
【0038】
図2(c)の状態から、供給案内アーム9が元の位置に戻ることで、フック状部9bの棒材Wがガイドレール4上に受け渡される。この受け渡し動作のため、ガイドレール4においても、供給案内アーム9と干渉しないように、適宜の切欠部が設けられている。ガイドレール4上に棒材が受け渡された状態が、
図2(d)の状態である。
【0039】
この後、第1揺動位置にあるV字レール7等は、棒材把持動作等のため、第1揺動位置→第2揺動位置→第1揺動位置→第3揺動位置の順に傾斜される(後に詳述する)。
【0040】
(棒材把持動作の概略)
図3は、棒材収容部8を示す概略平面図である。棒材収容部8は、矩形平板状の底面と、当該底面の長手方向の2辺においてそれぞれ当該底面に垂直に設けられた内側(ガイドレール4に近い側)の壁面及び外側(ガイドレール4から遠い側)の壁面と、前記底面の短手方向の2辺においてそれぞれ前記底面に垂直に設けられた一対の壁面と、によって、上部が開口する断面略矩形状の箱形に形成されている。但し、後述する棒材把持装置10の動作と干渉しないように、底面の棒材把持装置10側の一部と外側壁面の棒材把持装置10側の一部とに、切欠部8cが設けられている。
【0041】
棒材収容部8の底面並びに内側及び外側の壁面は、給送軸線Bに平行に配置されている。また、底面上には、棒材収容部8内に収納される棒材Wを当該底面上で移動しやすくするために、複数の滑りバー8bが所定間隔で配置されている。これらの滑りバー8bは、断面略円形、楕円形、矩形等任意の形状を有するL字形に湾曲した棒状に形成されている。また、滑りバー8bは、L字形の長い方の一辺が底面上に配置され、L字形の短い方の一辺が棒材収容部8の外側の壁面上に配置されている。
【0042】
また、棒材収容部8の底面は、支持台36(
図2等参照)に取り付けられている。支持台36は、支持フレーム2に固定された揺動機構38(具体的には駆動シリンダ:
図8、
図9及び
図22参照)によって、給送軸線Bに平行な回転軸40(
図2等参照)回りに揺動可能となっている。これにより、支持台36及び棒材収容部8は、給送軸線Bに平行な回転軸線を中心に揺動可能となっている。
【0043】
本実施形態では、棒材収容部8の内部に収容された棒材Wが棒材把持装置10から遠ざかるように移動する第2揺動位置と、棒材収容部8の内部に収容された棒材Wが棒材把持装置10に近づくように移動する第1揺動位置と、の間で揺動可能となっている。
【0044】
第2揺動位置は、棒材収容部8の底面の外端が内端よりも下方に位置する、という傾斜位置である。この位置では、棒材Wは底面上を移動して、棒材収容部8の外側の、底面と外側壁面との交差部分である角部に集まろうとする。
【0045】
第1揺動位置は、棒材収容部8の底面の外端が内端よりも上方に位置する、という傾斜位置である。この位置では、棒材Wは底面上を移動して、棒材収容部8の内側の、底面と内側壁面との交差部分である角部に集まろうとする。
【0046】
本実施形態では、第1揺動位置と第2揺動位置との間に、第3揺動位置が設定されている。第3揺動位置は、待機位置であり、棒材収容部8の底面が概ね水平となるような位置である。この位置では、棒材Wはほとんど移動せず、その場に留まろうとする。
【0047】
第2揺動位置、第1揺動位置、及び、第3揺動位置(待機位置)における底面の傾斜角度は、棒材Wの径寸法、材質、底面との摩擦係数等を考慮して、適宜に設定することができる。
【0048】
図3(a)は、棒材収容部8内に最後の1本のみの棒材Wがある場合において、第3揺動位置(待機位置)から第2揺動位置へ棒材収容部8が揺動された後の状態を示している。当該棒材Wは、棒材収容部8の外側の(
図3では上方の)、底面と外側壁面との交差部分である角部に移動する。
【0049】
本実施形態では、可動規制板26が、棒材収容部8内に収容された棒材Wの棒材把持装置10側の端面を規制するように設けられている。可動規制板26は、給送軸線Bと平行な方向に移動可能であるように、支持台36(揺動機構38)に支持されている。本実施形態の可動規制板26は、可動規制板用移動機構27(具体的には駆動シリンダ:
図7及び
図8参照)によって可動である。
【0050】
一方、本実施形態では、固定規制板28が、棒材収容部8内に収容された棒材Wの前方側(棒材加工機200側)の端面を規制するように設けられている。
【0051】
そして、
図3(a)の状態では、可動規制板26及び固定規制板28の両方によって、棒材Wの両端の位置が規制されている。
【0052】
図3(a)の状態から揺動機構38を作動する前に、可動規制板26が退避される。本実施形態では、可動規制板26の移動ストロークstは、15mm程度である。これにより、棒材収容部8及び棒材把持装置10が揺動する際に、可動規制板26が棒材Wの端面を伴って共に揺動して、棒材に不所望の負荷がかかってしまう(
図4(b)参照)、という事態の発生を回避することができる(
図4(a)参照)。
【0053】
次に、
図3(b)は、
図3(a)の第2揺動位置から第1揺動位置へ棒材収容部8が揺動された後の状態を示している。棒材Wは、棒材収容部8の内側の(
図3では下方の)、底面と外側壁面との交差部分である角部に移動する。
【0054】
図3(b)の状態から棒材把持装置10を作動する前に、可動規制板26が再び作動して、可動規制板26及び固定規制板28の両方によって、棒材Wの両端の位置が再び規制される。そして、棒材把持装置10が作動され、棒材Wが当該棒材把持装置10によって把持される。その後、可動規制板26が再び退避される。
【0055】
更にその後、第1揺動位置から第2揺動位置へ棒材収容部8が揺動される。棒材把持装置10に把持された棒材Wは、前方側が棒材収容部8の外側へと移動する(棒材Wの先端位置も後方にずれる:
図3(c)参照)。もし棒材収容部8内に他の棒材があれば、それらは、棒材収容部8の外側の(
図3では上方の)底面と外側壁面との交差部分である角部に移動する(
図3(a)参照)。これにより、棒材把持装置10に把持された棒材Wを、他の棒材から分離することができる(後述する捌き板86等が利用される)。
【0056】
ここで、棒材把持装置10による棒材把持動作の失敗等により、正常な棒材分離動作が得られない場合、リトライのため、棒材把持装置10による棒材Wの把持が解放される。この状態が、
図3(d)の状態である。この時、把持されていた棒材Wの先端位置が後方にずれていたことにより(
図3(c)参照)、解放される棒材Wの位置は、全体として、後方側(棒材把持装置10側)にずれることになる。また、正常な棒材分離動作が得られ続ける場合でも、1本の棒材Wの分離後に棒材収容部8内に残された棒材Wは、僅かずつではあるが、後方側(棒材把持装置10側)にずれていく。
【0057】
このため、可動規制板26が再び作動して、可動規制板26及び固定規制板28の両方によって、棒材Wの両端の位置が再び規制される。これにより、
図3(a)の状態に戻る。
【0058】
(棒材把持装置10)
次に、
図5及び
図6を参照して、棒材把持装置10の詳細について説明する。
図5は、φ0.5の棒材を把持する棒材把持装置の概略図であり、
図6は、φ4.0の棒材を把持する棒材把持装置の概略図である。
【0059】
図5及び
図6に示すように、本実施形態の棒材把持装置10は、棒材収容部8に収容された棒材Wを1本ずつ取り出すための棒材把持装置であって、棒材収容部8に収容された棒材Wを受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間WSを間に形成する一対の把持部材11、12を備えている。
【0060】
一対の把持部材11、12は、共通の把持回動機構13(具体的には駆動シリンダ:
図7及び
図8参照)によって、互いに対して対称に回動するようになっている。
【0061】
そして、全閉制御状態において、把持回動機構13は、楔形の空間WSの開口角度が8°~10°である先開姿勢に留まるように作動する。具体的には、一対の把持部材11、12に設けられた当接凸部11p、12p同士が当接した段階でそれ以上の閉鎖動作が生じないように、一対の把持部材11、12が回動されるようになっている(あるいは、当接凸部11p、12pを設けることなく、把持回動機構13の制御系によってそのような動作を実現してもよい)。これにより、棒材把持のための全閉制御状態において、「2本掴み」の発生を顕著に抑制することができる。なお、本実施形態では、当該先開姿勢における先端の開口距離は、3.2mm~4.0mm程度となっている。
【0062】
実際に、本実施形態に従う試作機によって、φ0.5の棒材について、0.15MPaの把持力で、安定的に1本ずつ把持することができた。更に、φ4.0の棒材に対しても、0.5MPaの把持力で、安定的に1本ずつ把持することができた。
【0063】
また、本実施形態では、一対の把持部材11、12の各々は、棒材Wを把持するための把持面11h、12hが、平坦面として構成されている。これにより、棒材Wに不所望の傷が付くことが、効果的に防止される。
【0064】
また、一対の把持部材11、12の回動軸線の方向において、一対の把持部材11、12の基端側(
図5及び
図6の左側)の領域と部分的に重なるように(
図5及び
図6の紙面手前側に重なるように)、ストッパ部材15が配置されている。ストッパ部材15は、前記回動軸線の方向に見て、楔形の空間WSの基端側を規制して、楔形の空間WSのサイズを調整している。
【0065】
また、ストッパ部材15は、
図5及び
図6の下方側に延長部15eを有しており、当該延長部15eが、棒材収容部8内に収容された棒材Wを棒材収容部8の側壁から遠ざける機能を有している(
図21を参照して後述する)。
【0066】
本実施形態の棒材把持装置10は、支持台36に設けられた把持装置昇降機構16(具体的には駆動シリンダA:
図7及び
図8参照)によって、縦ガイド31に沿ってA方向に(
図7及び
図9参照)、支持台36に対して(棒材収容部8に対して)昇降可能となっている。
【0067】
また、本実施形態の棒材把持装置10は、支持台36に設けられた把持装置前後移動機構17(具体的には駆動シリンダB:
図7及び
図8参照)によって、横ガイド32に沿ってB方向に(
図7及び
図9参照)、支持台36に対して(棒材収容部8に対して)前後移動可能となっている。
【0068】
更に、本実施形態の棒材把持装置10は、支持台36に設けられた把持装置揺動機構18(具体的には駆動シリンダC:
図7及び
図8参照)によって、給送軸線Bと平行な回転軸線回りに(
図15参照)、支持台36に対して(棒材収容部8に対して)揺動可能となっている。
【0069】
(棒材供給機1の動作)
図9乃至
図21は、本実施形態の棒材供給機1の動作状態を示す概略図である。本実施形態の棒材供給機1は、各駆動要素(揺動機構38、把持回動機構13、把持装置昇降機構16、把持装置前後移動機構17、把持装置揺動機構18、可動規制板用移動機構27、捌き板用移動機構85)がコントローラ(不図示)によって協調制御されることで、これらの動作を実現する。
【0070】
前記した通り、本実施形態では、第3揺動位置が、待機位置(基本姿勢)であり、棒材収容部8の底面が概ね水平となるような位置である。この状態が、
図9の状態であり、
図2(a)の状態に対応している。ストッパ部剤15(延長部15e)が既に前進位置にあり、棒材収容部8内に収容された棒材Wを棒材収容部8の側壁から遠ざけている。
【0071】
図9の状態から、揺動機構38が作動して、支持台36に固定された棒材収容部8等が第3揺動位置(待機位置)から第2揺動位置へ揺動される。この状態が、
図10の状態である。棒材Wは、棒材収容部8の外側の(
図9では右側の)底面と外側壁面との交差部分である角部に集まるように移動する。
【0072】
図10の状態で、前記したように、可動規制板26が作動して、可動規制板26及び固定規制板28の両方によって、棒材Wの両端の位置が規制される。(この状態が、
図3(a)の状態である。)
【0073】
図10の状態(
図3(a)の状態)から、把持装置昇降機構16(駆動シリンダA)が作動して棒材把持装置10(グリッパー)が下降され、棒材把持装置10の楔形の空間WSが、棒材収容部8に収容された棒材Wを受け入れ可能な向きに開口する。この状態が、
図11の状態である。(棒材収容部8に収容された棒材Wの数が多い時等においては、把持装置昇降機構16(駆動シリンダA)が作動する前に、把持装置前後移動機構17(駆動シリンダB)が作動して棒材把持装置10(グリッパー)が後退され、把持装置昇降機構16(駆動シリンダA)の作動後(棒材把持装置10の下降後)に把持装置前後移動機構17(駆動シリンダB)が再作動して棒材把持装置10(グリッパー)が前進位置に戻されてもよい。)
【0074】
図11の状態で、前記したように、可動規制板26が退避する。これにより、可動規制板26が棒材Wの端面を伴って共に揺動して、棒材に不所望の負荷がかかってしまうことが防止される。
【0075】
図11の状態(可動規制板26が退避した状態)から、揺動機構38が作動して、支持台36に固定された棒材収容部8等が第2揺動位置から第1揺動位置へ揺動される。この状態が、
図12の状態である。棒材Wは、棒材収容部8の内側の(
図3では左側の)底面と内側壁面との交差部分である角部に向かって移動する。この結果、棒材把持装置10の楔形の空間WS内に、棒材Wが移動する。(第1揺動位置に到達する前に棒材把持装置10を受入位置まで移動すれは良いので、把持装置昇降機構16と把持装置前後移動機構17とは同時駆動されても良い。)
【0076】
図12の状態で、前記したように、可動規制板26が再び作動して、可動規制板26及び固定規制板28の両方によって、棒材Wの両端の位置が再び規制される。そして、可動規制板26が再び退避する。
【0077】
その後、棒材把持装置10の把持回動機構13が作動して、一対の把持部材11、12によって1本の棒材Wが把持される。この状態が、
図13の状態であり、
図3(b)の状態に対応している。
【0078】
図13の状態から、揺動機構38が作動して、支持台36に固定された棒材収容部8等が第1揺動位置から第2揺動位置へ揺動される。棒材把持装置10(グリッパー)に把持された棒材Wは、前方側が棒材収容部8の外側(
図14では右側)へと移動するが、後方側は棒材把持装置10に把持されているために内側(
図14では左側)に留まる。一方、棒材収容部8内の他の棒材は、棒材収容部8の外側の(
図14では右側の)底面と外側壁面との交差部分である角部に移動する。
【0079】
その後、把持装置昇降機構16(駆動シリンダA)が作動して、棒材把持装置10(グリッパー)が上昇される。この状態が、
図14の状態である。
【0080】
図14の状態から、本実施形態では、公知の各種のセンサにより、1本の棒材Wが正常に把持されているか否かが判別される。正常な把持が確認されなければ、把持装置揺動機構18(は駆動シリンダC)が作動して、棒材把持装置10が、給送軸線Bと平行な回転軸線回りに、支持台36に対して揺動する(グリッパースイング)。この状態が、
図15の状態である。この揺動動作は、棒材の不所望の張り付き等を振りほどくために、適宜の回数(5回)実施される(棒材Wの直径等に応じて、回数の設定変更が可能であることが好ましい)。油分等によって、棒材把持装置10の把持面11h、12hでは無い部位に棒材が張り付くことがあるが(
図15に一例を図示している)、この揺動動作(グリッパースイング)によって、そのような棒材を振り落とすことができる。
【0081】
図15における揺動動作の後でも、1本の棒材Wの正常な把持が確認されない場合には(当該判断のため適宜のセンサが利用される)、棒材把持装置10の把持回動機構13が作動して、棒材Wの把持が解放され、
図10の状態から(可動規制板26の作動から)リトライされる。
【0082】
図14の状態で、あるいは、
図15における揺動動作の後、1本の棒材Wの正常な把持が確認された場合には(当該判断のため適宜のセンサが利用される)、把持装置前後移動機構17(駆動シリンダB)が作動して、棒材把持装置10が、横ガイド32に沿ってB方向に(
図7及び
図9参照)、支持台36に対して(棒材収容部8に対して)後退する。この状態が、
図16の状態である。これにより、棒材把持装置10(グリッパー)は、把持している棒材Wの後端部を伴って、棒材収容部8の内側壁面より更に内側(
図16の左側)へと移動する。
【0083】
更に、
図16の状態から、揺動機構38が作動して、支持台36に固定された棒材収容部8等が第2揺動位置から第1揺動位置へ揺動される。この状態が、
図17の状態である。この揺動動作を入れることにより、棒材把持装置10(グリッパー)に把持された棒材Wが、他の棒材から効果的に分離される。
【0084】
図17の状態では、棒材把持装置10に把持された棒材Wが、曲がりがきつい状態となっている。従って、本実施形態では、この状態が長時間続くことを回避するべく、この状態で捌き板86を作動させない。(もっとも、棒材の直径が十分に太い場合には、この状態で捌き板86を作動させることも可能である。)
【0085】
すなわち、
図17の状態から、揺動機構38が作動して、支持台36に固定された棒材収容部8等が第1揺動位置から第3揺動位置へ揺動される。この状態が、
図18の状態である。この状態では、棒材把持装置10に把持された棒材Wは、曲がりが比較的緩い状態となっている。
【0086】
図18の状態で、捌き板86が作動される。捌き板86は、捌き板用移動機構85(具体的には駆動シリンダ:
図7及び
図8参照)によって、給送軸線Bと平行な方向に(
図18において紙面の奥側から手前側に向かう方向に)、棒材収容部8の上方の領域を、後方端側(棒材把持装置10側)から前方端側まで、移動する。このような捌き板86の動作により、棒材把持装置10に把持されている棒材Wの前方側が、棒材収容部8の内側壁面を越えて棒材収容部8の外部に出て、V字レール7上に至る。
【0087】
その後、把持装置揺動機構18(駆動シリンダC)が作動して、棒材把持装置10の把持部材11、12がV字レール7側に向けられ、更に、棒材把持装置10の把持回動機構13が作動して、一対の把持部材11、12による1本の棒材Wの把持が解放される。この状態が、
図19の状態である。これにより、棒材把持装置10に把持されていた棒材Wは、V字レール7上に落下する。
【0088】
その後、把持装置揺動機構18(駆動シリンダC)が作動して、棒材把持装置10の把持部材11、12が元の位置姿勢に戻される。この状態が、
図20の状態である。
【0089】
図20の状態から、把持装置前後移動機構17(駆動シリンダB)が作動して、棒材把持装置10が、横ガイド32に沿ってB方向に(
図7及び
図9参照)、支持台36に対して(棒材収容部8に対して)前進する。この状態が、
図21の状態である。
【0090】
この前進動作の際、ストッパ部材15の延長部15eが、棒材収容部8内に収容された棒材Wを棒材収容部8の内側壁面から遠ざける。これにより、部品点数を増やすことなく、棒材収容部8の側壁に張り付いた状態の棒材が存在する場合に、当該側壁から当該棒材を引き離すことができる。
【0091】
図21の状態は、
図9の状態に一致している。すなわち、本実施形態の棒材供給機1の動作状態が、待機位置(基本姿勢)に復帰したことを意味している。
【0092】
なお、
図14の状態(または
図15の状態)から、
図16の状態(棒材把持装置10が後退した状態)及び
図17の状態(棒材把持装置10が後退したまま第1揺動位置へ移動した状態)を経て、
図18の状態(棒材把持装置10が後退したまま第3揺動位置へ移動した状態)に至る代わりに、
図14の状態(または
図15の状態)から、棒材把持装置10が前進位置にあるまま第1揺動位置へ移動し、更に、棒材把持装置10が前進位置にあるまま第3揺動位置へ移動してから、棒材把持装置10が後退して
図18の状態になってもよい。
【0093】
(効果)
本実施形態の棒材把持装置10によれば、全閉制御状態において、楔形の空間WSの開口角度が5°以上である先開姿勢に留まるように作動するため、「2本掴み」の発生を効果的に抑制することができる。
【0094】
特に、本件発明者による各種の実験結果によれば、当該開口角度が8°~10°であることにより、「2本掴み」の発生を顕著に抑制することができる。
【0095】
また、本実施形態の棒材把持装置10によれば、一対の把持部材11、12の各々は、棒材Wを把持するための把持面11h、12hが平坦面として構成されている。これにより、棒材Wに不所望の傷が付くことが、効果的に防止される。
【0096】
また、本実施形態の棒材把持装置10によれば、一対の把持部材11、12の回動軸線の方向において、当該一対の把持部材11、12の基端側の領域と部分的に重なるようにストッパ部材15が配置され、当該ストッパ部材15は、回動軸線の方向に見て、楔形の空間WSの基端側を規制している。これにより、回動軸線の方向に見た楔形の空間WSのサイズを調整することが可能である。
【0097】
また、本実施形態の棒材把持装置10によれば、ストッパ部材15(の延長部15e)が、棒材収容部8内に収容された棒材を棒材収容部8の側壁から遠ざける機能を有している。これにより、部品点数を増やすことなく、棒材収容部8の側壁に張り付いた状態の棒材が存在する場合に、当該側壁から当該棒材を引き離すことができる。
【0098】
また、本実施形態の棒材供給機1によれば、棒材把持装置10が、棒材収容部8内に収容された棒材を受け入れ可能な向きに開口する楔形の空間WSを間に形成する一対の把持部材11、12を有しており、棒材収容部8及び一対の把持部材11、12は、揺動機構38によって、給送軸線Bと平行な回転軸線回りに一体的に揺動可能となっていて、
棒材収容部8内の棒材が一対の把持部材11、12に近接する側に移動して楔形の空間WS内に1本の棒材が把持されることを促す第1揺動位置(
図3(b)及び
図12参照)と、
棒材収容部8内の棒材が一対の把持部材11、12から遠ざかる側に移動して一対の把持部材11、12によって把持された1本の棒材を除いた他の棒材が一対の把持部材11、12から離間することを促す第2揺動位置(
図3(c)及び
図14参照)と、
第1揺動位置と第2揺動位置との間の揺動位置であって、一対の把持部材11、12によって把持された1本の棒材に適用される負荷を軽減させる第3揺動位置(
図18参照)と、
の各々において、一時停止できるようになっており、把持した1本の棒材Wを捌き板86によって他の棒材に対して捌く際に、棒材収容部8及び把持部材11、12は、第3揺動位置に一時停止されるようになっている。
【0099】
これにより、一対の把持部材11、12によって把持された1本の棒材Wを、棒材収容部8及び一対の把持部材11、12が第3揺動位置にある状態で他の棒材に対して捌く(捌き板86を稼働させて他の棒材から分離する)ことができるため、一対の把持部材11、12によって把持された1本の棒材に適用される負荷を効果的に軽減させることができる。これにより、直径1mm以下の細い棒材であっても、分離途中に「綾」になって曲がってしまうことが効果的に防止され得る。
【0100】
また、本実施形態の棒材供給機1によれば、棒材収容部8内に収容された棒材Wの棒材把持装置10側の端面を規制する可動規制板26が設けられており、当該可動規制板26は、給送軸線Bと平行な方向に移動可能であるように、支持台36(揺動機構38)に支持されている。
【0101】
これにより、当該可動規制板26は、棒材収容部8及び棒材把持装置10が揺動する際に、棒材Wから離れる方向に退避することができる。これにより、棒材収容部8及び棒材把持装置10が揺動する際に、可動規制板26が棒材Wの端面を伴って共に揺動して、棒材Wに不所望の負荷がかかってしまう、という事態の発生を回避することができる。
【0102】
なお、
図18の状態における揺動位置(第3揺動位置)は、
図9等の待機位置とは異なる揺動位置であってもよい。
図18の状態における揺動位置は、例えば棒材の直径等に応じて、及び/または、棒材の状態を検知する各種のセンサの出力に応じて、棒材の負荷を効果的に軽減できる位置に設定されることが好ましい。もっとも、
図9等の待機位置と同じ揺動位置において有効な効果が得られるのであれば、両者を同一の揺動位置とすることにより、制御の複雑化を抑制できる。
【符号の説明】
【0103】
1 棒材供給機
2 支持フレーム
4 ガイドレール
6 送り矢
7 V字レール
7a 傾斜部
7b 係止部
7c 切欠部
7s 棒材検知センサ
8 棒材収容部
8b 滑りバー
8c 切欠部
9 供給案内アーム
9a 傾斜案内面
9b フック状部
10 棒材把持装置
11 把持部材
11h 把持面
11p 当接凸部
12 把持部材
12h 把持面
12p 当接凸部
13 把持回動機構
15 ストッパ部材
15e 延長部
16 把持装置昇降機構(駆動シリンダA)
17 把持装置前後移動機構(駆動シリンダB)
18 把持装置揺動機構(駆動シリンダC)
20 サーボモータ
22 無端チェーンまたはベルト
26 可動規制板
27 可動規制板用移動機構
28 固定規制板
31 縦ガイド
32 横ガイド
36 支持台
38 揺動機構
40 回転軸
64 羽根部材
66 送り矢駆動機構
85 捌き板用移動機構
86 捌き板
200 棒材加工機
201 主軸台
300 棒材加工システム
W 棒材
WS 楔状の空間
st 移動ストローク