(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078470
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/463 20210101AFI20220518BHJP
H01M 50/60 20210101ALI20220518BHJP
H01M 50/531 20210101ALI20220518BHJP
【FI】
H01M2/18 Z
H01M2/36 101D
H01M2/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189161
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】100153224
【弁理士】
【氏名又は名称】中原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】川上 悟
(72)【発明者】
【氏名】吉竹 伸介
【テーマコード(参考)】
5H021
5H023
5H043
【Fターム(参考)】
5H021AA02
5H021HH10
5H023AA03
5H023AS02
5H043AA02
5H043AA12
5H043AA13
5H043AA14
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA13
5H043CB04
5H043CB09
5H043EA07
5H043JA01E
(57)【要約】
【課題】電極体の損傷を抑制可能な蓄電素子を提供する。
【解決手段】蓄電素子10は、電極体400と、電極体400の周囲に配置され当該電極体400を保持するスペーサ(サイドスペーサ700)と、電極体400及びスペーサを収容する容器100とを備えている。蓄電素子10は、容器100の内部に突出した状態で当該容器100を貫通する栓部材170を備えている。スペーサは、栓部材170における突出部分(カシメ部173)を収容し、当該突出部分により規制される規制部(収容凹部704)を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体の周囲に配置され当該電極体を保持するスペーサと、
前記電極体及びスペーサを収容する容器とを備える蓄電素子であって、
前記容器の内部に突出した状態で当該容器を貫通する栓部材を備え、
前記スペーサは、前記栓部材における突出部分を収容し、当該突出部分により規制される規制部を有する
蓄電素子。
【請求項2】
前記電極体は、本体部と、前記本体部における一端部から突出したタブ部とを備え、
前記栓部材は、前記本体部よりも前記タブ部側に配置されている
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項3】
前記容器は、直方体形状であり、
前記栓部材は、前記容器における短側面に配置されている
請求項1に記載の蓄電素子。
【請求項4】
前記栓部材の前記突出部分は、前記規制部に嵌合している
請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記スペーサは、前記電極体を挟む位置に一対設けられており、
前記栓部材は、一対の前記スペーサに対応して一対設けられており、
一対の前記スペーサのそれぞれの前記規制部は、一対の前記栓部材のそれぞれの前記突出部分により規制される
請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子においては、電極体(発電要素)及び電解液が容器内に収容されている。容器には、電解液を注液するための注液孔が形成されており、その注液孔が栓部材(封止栓)により封止されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電素子によっては、栓部材の先端部が容器の内方に突出したものもある。このような蓄電素子であると、その栓部材の突出部分が容器の内部空間を消費してしまい、電極体を収容するための空間を狭めてしまっていた。これにより、容器内部に電極体を密に収容できず、エネルギー密度を低下させる一因となっている。また、外部からの衝撃を蓄電素子が受けた場合に、容器内部で電極体が移動して損傷するおそれもある。
【0005】
このため、本発明の課題は、電極体の損傷を抑制可能な蓄電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る蓄電素子は、電極体と、電極体の周囲に配置され当該電極体を保持するスペーサと、電極体及びスペーサを収容する容器とを備える蓄電素子であって、容器の内部に突出した状態で当該容器を貫通する栓部材を備え、スペーサは、栓部材における突出部分を収容し、当該突出部分により規制される規制部を有する。
【0007】
これによれば、容器の内部に突出した栓部材の突出部分がスペーサの規制部に収容されているので、当該突出部分が容器の内部空間を消費してしまうことを抑制することができる。したがって、容器内部に電極体をより密に収容することができ、エネルギー密度の低下を抑制することができる。
【0008】
また、スペーサの規制部が、容器の内部に突出した栓部材の突出部分により規制されるので、スペーサと栓部材との相対的な位置ズレを抑制できる。これにより、スペーサに保持された電極体も容器内部で移動しにくくなる。したがって、例えば衝撃を受けた際に電極体が容器内部で移動して損傷することを抑制することができる。
【0009】
これらのことにより、栓部材を起因としたエネルギー密度の低下を抑制可能であり、電極体の損傷を抑制可能な蓄電素子を提供することができる。
【0010】
電極体は、本体部と、本体部における一端部から突出したタブ部とを備え、栓部材は、本体部よりもタブ部側に配置されていてもよい。
【0011】
これによれば、栓部材がタブ部側に配置されることにより、栓部材を容器に挿入する際に電極体への干渉を避けることができる。すなわち、電極体の上部における集電体(電極端子)とタブ部との接続領域の周囲にあるデッドスペースを栓部材の挿入時に活用することが可能とり、容器内部に電極体をより密に収容することができるので、エネルギー密度の向上が期待できる。
【0012】
容器は、直方体形状であり、栓部材は、容器における短側面に配置されていてもよい。
【0013】
ここで、容器の長側面同士を重ねて複数の蓄電素子を配列する場合においては、容器の短側面は他の蓄電素子に干渉せずに露出された状態となる。この露出された短側面に栓部材が配置されているので、容器の長側面同士を重ねて複数の蓄電素子を配列する場合に、各蓄電素子を容易に配列することが可能である。
【0014】
栓部材の突出部分は、規制部に嵌合していてもよい。
【0015】
これによれば、栓部材の突出部分がスペーサの規制部に嵌合しているので、スペーサと栓部材との相対的な位置ズレをより確実に抑制できる。これにより、スペーサで保持された電極体も容器内部でより移動しにくくなり、例えば衝撃を受けた際に電極体が容器内部で移動して損傷することを、より抑制することができる。
【0016】
スペーサは、電極体を挟む位置に一対設けられており、栓部材は、一対のスペーサに対応して一対設けられており、一対のスペーサのそれぞれの規制部は、一対の栓部材のそれぞれの突出部分により規制されていてもよい。
【0017】
これによれば、一対のスペーサのそれぞれが一対の栓部材により規制されているので、各スペーサで保持された電極体の移動をより確実に抑制することができる。これにより、例えば衝撃を受けた際に電極体が容器内部で移動して損傷することを、より確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極体の損傷を抑制可能な蓄電素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態に係る蓄電素子の外観を示す斜視図である。
【
図2】実施の形態に係る蓄電素子の分解斜視図である。
【
図3】実施の形態に係る蓄電素子から、容器本体と絶縁シートとを除いた部位の分解斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るサイドスペーサの一部及びその周辺の部材を拡大して示す断面図である。
【
図5】変形例に係るサイドスペーサの一部及びその周辺の部材を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態及びその変形例に係る蓄電素子について説明する。なお、以下で説明する実施の形態及びその変形例は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態及びその変形例で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、各図は、模式図であり、寸法等は必ずしも厳密に図示したものではない。さらに、各図において、同一または同様な構成要素については同じ符号を付している。
【0021】
また、以下の説明及び図面中において、蓄電素子が有する一対の電極端子の並び方向、電極体の一対のタブ部の並び方向、または、容器の短側面の対向方向をX軸方向と定義する。また、容器の長側面の対向方向、容器の短側面の短手方向、容器の厚さ方向、または、電極体の極板の積層方向をY軸方向と定義する。また、蓄電素子の容器本体と蓋体との並び方向、容器の短側面の長手方向、または、上下方向をZ軸方向と定義する。これらX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向は、互いに交差(本実施の形態では直交)する方向である。なお、使用態様によってはZ軸方向が上下方向にならない場合も考えられるが、以下では説明の便宜のため、Z軸方向を上下方向として説明する。
【0022】
また、以下の説明において、例えば、X軸プラス方向は、X軸の矢印方向を示し、X軸マイナス方向とは、X軸プラス方向とは反対方向を示す。Y軸方向及びZ軸方向についても同様である。さらに、平行及び直交などの、相対的な方向または姿勢を示す表現は、厳密には、その方向または姿勢ではない場合も含む。例えば、2つの方向が平行している、とは、当該2つの方向が完全に平行していることを意味するだけでなく、実質的に平行していること、すなわち、例えば数%程度の差異を含むことも意味する。さらに、単に、「X軸方向」という場合は、X軸に平行な双方向またはいずれか一方の方向を意味する。Y軸及びZ軸に関する用語についても同様である。
【0023】
(実施の形態)
[1.蓄電素子の構成]
まず、
図1~
図3を用いて、本実施の形態における蓄電素子10の全般的な説明を行う。
図1は、実施の形態に係る蓄電素子10の外観を示す斜視図である。また、
図2は、実施の形態に係る蓄電素子10の分解斜視図である。
図3は、実施の形態に係る蓄電素子10から、容器本体101と絶縁シート500とを除いた部位の分解斜視図である。
【0024】
蓄電素子10は、電気を充電し、また、電気を放電することのできる二次電池であり、具体的には、リチウムイオン二次電池などの非水電解質二次電池である。蓄電素子10は、例えば、自動車、自動二輪車、ウォータークラフト、船舶、スノーモービル、農業機械、建設機械、または、電気鉄道用の鉄道車両等の移動体の駆動用またはエンジン始動用等のバッテリ等として用いられる。上記の自動車としては、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)及びガソリン自動車が例示される。上記の電気鉄道用の鉄道車両としては、電車、モノレール、リニアモーターカー、並びに、ディーゼル機関及び電気モーターの両方を備えるハイブリッド電車が例示される。また、蓄電素子10は、家庭用または事業用等に使用される定置用のバッテリ等としても用いることができる。
【0025】
なお、蓄電素子10は、非水電解質二次電池には限定されず、非水電解質二次電池以外の二次電池であってもよいし、キャパシタであってもよい。蓄電素子10は、使用者が充電をしなくても蓄えられている電気を使用できる一次電池であってもよい。また、蓄電素子10は全固体電池であってもよい。また、本実施の形態では、直方体形状(角形)の蓄電素子10を図示しているが、蓄電素子10の形状は、直方体形状には限定されず、円柱形状、長円柱形状または直方体以外の多角柱形状等であってもよい。
【0026】
図1~
図3に示すように、蓄電素子10は、容器100と、電極体400と、絶縁シート500と、一対のサイドスペーサ700とを備える。なお、容器100の内部には電解液(非水電解質)が封入されているが、図示は省略する。電解液としては、蓄電素子10の性能を損なうものでなければその種類に特に制限はなく様々なものを選択することができる。
【0027】
容器100は、開口が形成された容器本体101と、容器本体101の当該開口を閉塞する蓋体110とを有する直方体形状(角形または箱形)のケースである。このような構成により、容器100は、電極体400等を容器本体101の内部に収容後、容器本体101と蓋体110とが溶接等接合されることにより、内部を密封することができる構造となっている。容器100(容器本体101及び蓋体110)の材質は特に限定されないが、例えばステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄、メッキ鋼板など溶接可能な金属であるのが好ましい。
【0028】
容器本体101は、容器100の本体部を構成する矩形筒状で底を備える部材であり、Z軸プラス方向側に開口が形成されている。つまり、容器本体101は、Y軸方向両側の側面に一対の矩形状かつ平面状の長側面を有し、X軸方向両側の側面に一対の矩形状かつ平面状の短側面を有し、Z軸マイナス方向側に矩形状かつ平面状の底面を有している。容器本体101の各短側面において開口側(Z軸プラス方向)の端部には、栓用貫通孔102がそれぞれ1つずつ形成されている。一対の栓用貫通孔102のうち、一つの栓用貫通孔102は、電解液が注がれる注液口である。各栓用貫通孔102は栓部材170によって封止されている。栓部材170の詳細については後述する。
【0029】
蓋体110は、容器100の蓋部を構成する矩形状の板状部材であり、容器本体101のZ軸プラス方向にX軸方向に延設されて配置されている。蓋体110には、容器100の内圧が上昇したときに容器100内部のガスを排出するガス排出弁(図示省略)が設けられている。また、蓋体110には、正極端子200、上ガスケット125及び下ガスケット120が取り付けられる貫通孔110aと、負極端子300、上ガスケット135及び下ガスケット130が取り付けられる貫通孔110bとが形成されている。
【0030】
上ガスケット125、135、並びに、下ガスケット120、130は、絶縁体であり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、または、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の絶縁性の樹脂などによって形成されている。
【0031】
上ガスケット125は、正極端子200と蓋体110とを電気的に絶縁する部材である。上ガスケット125には、正極端子200の締結部が貫通する貫通孔125aが形成されている。下ガスケット120は、正極集電体140と蓋体110とを電気的に絶縁する部材である。下ガスケット120には、正極端子200の締結部が貫通する貫通孔120aが形成されている。
【0032】
上ガスケット135は、負極端子300と蓋体110とを電気的に絶縁する部材である。上ガスケット135には、負極端子300の締結部310(
図4参照)が貫通する貫通孔135aが形成されている。下ガスケット130は、負極集電体150と蓋体110とを電気的に絶縁する部材である。下ガスケット130には、負極端子300の締結部310が貫通する貫通孔130aが形成されている。
【0033】
上ガスケット125、135は、例えば上パッキンと呼ばれる場合もあり、下ガスケット120、130は、例えば下パッキンと呼ばれる場合もある。つまり、本実施の形態では、上ガスケット125、135は、電極端子(200または300)と容器100との間を封止する機能も有している。なお、下ガスケット120、130も電極端子(200または300)と容器100との間を封止する機能を有していてもよい。
【0034】
また、下ガスケット120、130には、サイドスペーサ700に係合する係合部121、131が設けられている。具体的には、係合部121、131は、下ガスケット120、130の外側の一端部から外方に向けてX軸方向に突出している。係合部121、131は、それぞれXY平面に平行な矩形板状に形成されている。係合部121、131がサイドスペーサ700に係合することによって、サイドスペーサ700に対する下ガスケット120、130の位置が決められる。
【0035】
図1~
図3に示すように、正極端子200は、正極集電体140を介して、電極体400の正極に電気的に接続された電極端子である。負極端子300は、負極集電体150を介して、電極体400の負極に電気的に接続された電極端子である。つまり、正極端子200及び負極端子300は、電極体400に蓄えられている電気を蓄電素子10の外部空間に導出するための、また、電極体400に電気を蓄えるために蓄電素子10の内部空間に電気を導入するための金属製の電極端子である。正極端子200は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成され、負極端子300は、銅または銅合金などで形成されている。
【0036】
また、正極端子200には、容器100と正極集電体140とを締結する締結部が設けられている。負極端子300には、容器100と負極集電体150とを締結する締結部310(
図4参照)が設けられている。
【0037】
正極端子200の締結部は、正極端子200から下方に延設された部材(リベット)であり、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。具体的には、正極端子200の締結部は、上ガスケット125の貫通孔125a、蓋体110の貫通孔110a、下ガスケット120の貫通孔120a、及び、正極集電体140の貫通孔140aに挿入されてかしめられる。これにより、正極端子200と正極集電体140とが電気的に接続され、正極集電体140は、正極端子200、上ガスケット125及び下ガスケット120とともに、蓋体110に固定される。
【0038】
負極端子300の締結部310は、負極端子300から下方に延設された部材(リベット)であり、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。具体的には、締結部310は、上ガスケット135の貫通孔135a、蓋体110の貫通孔110b、下ガスケット130の貫通孔130a、及び、負極集電体150の貫通孔150aに挿入されてかしめられる。これにより、負極端子300と負極集電体150とが電気的に接続され、負極集電体150は、負極端子300、上ガスケット135及び下ガスケット130とともに、蓋体110に固定される。
【0039】
なお、締結部310は、負極端子300との一体物として形成されていてもよく、負極端子300とは別部品として作製された締結部310が、かしめまたは溶接などの手法によって負極端子300に固定されていてもかまわない。正極端子200と、その締結部との関係についても同様である。
【0040】
正極集電体140は、電極体400と蓋体110との間に配置され、電極体400と正極端子200とを電気的に接続する部材である。正極集電体140は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などで形成されている。正極集電体140には、正極端子200の締結部が貫通する貫通孔140aが形成されている。
【0041】
負極集電体150は、電極体400と蓋体110との間に配置され、電極体400と負極端子300とを電気的に接続する部材である。負極集電体150は、銅または銅合金などで形成されている。負極集電体150は、負極端子300の締結部310が貫通する貫通孔150aが形成されている。
【0042】
電極体400は、
図3に示すように、正極板と負極板とセパレータとを備え、電気を蓄えることができる蓄電要素(発電要素)であり、容器100の内方に配置される。具体的には、電極体400は、正極板と負極板とがセパレータを挟んで交互に並べられた積層型の電極体である。正極板は、アルミニウムまたはアルミニウム合金などからなる長尺帯状の集電箔である正極基材層上に正極活物質層が形成された極板である。負極板は、銅または銅合金などからなる長尺帯状の集電箔である負極基材層上に負極活物質層が形成された極板である。なお、上記集電箔として、ニッケル、鉄、ステンレス鋼、チタン、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラス、Al-Cd合金など、適宜公知の材料を用いることもできる。また、正極活物質層及び負極活物質層に用いられる正極活物質及び負極活物質としては、リチウムイオンを吸蔵放出可能な活物質であれば、適宜公知の材料を使用できる。また、セパレータは、例えば樹脂からなる微多孔性のシートまたは不織布を用いることができる。
【0043】
電極体400は、発電及び蓄電する部分である本体部401と、本体部401と外部との電力のやり取りを行う部分である正極タブ部415及び負極タブ部425とを有する。正極タブ部415及び負極タブ部425は、電極体400の一端部から突出したタブ部の一例である。
【0044】
本体部401は、全体として略直方体状に形成されている。本体部401の天面及び一対の長側面には、複数の接着テープ370が取り付けられているとともに、本体部401の底面及び一対の長側面には、複数の接着テープ370が取り付けられている。これらの接着テープ370によって、正極板と負極板とセパレータとの位置ズレが防止されている。
【0045】
正極タブ部415は、本体部401の天面において、X軸マイナス方向に寄った箇所から突出している。正極タブ部415は、各正極板において、正極活物質が塗工されておらず正極基材層が露出した部位を束ねることで形成されている。負極タブ部425は、本体部401の天面において、X軸プラス方向に寄った箇所から突出している。負極タブ部425は、各負極板において、負極活物質が塗工されておらず負極基材層が露出した部位を束ねることで形成されている。
【0046】
正極タブ部415は正極集電体140に接合され、負極タブ部425は負極集電体150に接合されている。つまり、正極タブ部415は、正極集電体140を介して正極端子200に電気的に接続され、負極タブ部425は、負極集電体150を介して負極端子300に電気的に接続される。これにより、電極体400は、正極端子200及び負極端子300を介して、外部の装置等との間で電力のやり取りを行うことができる。
【0047】
なお、タブ部と集電体との接合には周知の接合方法を用いることが可能である。接合方法の一例としては、超音波溶接、レーザ溶接などの溶接、カシメまたはネジ止めなどの締結などが挙げられる。
【0048】
一対のサイドスペーサ700は、スペーサの一例であり、
図2に示すように、電極体400の一対の短側面のそれぞれに重ねて配置されている。つまり、容器本体101内では、一対のサイドスペーサ700は、電極体400の周囲に配置されている。一対のサイドスペーサ700は、電極体400とともに容器本体101内に収容されることで、電極体400を挟持して保持している。なお、一対のサイドスペーサ700は、接着テープで電極体400と接着されることで電極体400を保持してもよい。
【0049】
サイドスペーサ700は、例えば、PP、PE、または、PPS等の絶縁性の樹脂によって形成された絶縁部材である。以降、一対のサイドスペーサ700のうち、負極側のサイドスペーサ700の具体的な構造について説明する。正極側のサイドスペーサ700については、負極側のサイドスペーサ700と同様の構造のため、その説明は省略する。
【0050】
図3に示すように、サイドスペーサ700は、全体として概ね平板状に形成されている。サイドスペーサ700は、スペーサ本体701と突部702とを備えており、これらが一体成形されている。
【0051】
スペーサ本体701は、板状に形成されており、電極体400の短側面に対向して配置されている。具体的には、スペーサ本体701は、Z軸方向に長尺でYZ平面に平行な略矩形状に形成されている。スペーサ本体701の上端部(一端部)からは、突部702が容器本体101の内方に向けて突出している。突部702は、電極体400の本体部401と、蓋体110との間に配置される部位である。
【0052】
図4は、実施の形態に係るサイドスペーサ700の一部及びその周辺の部材を拡大して示す断面図である。
図4に示すように、サイドスペーサ700における突部702の先端面には、下ガスケット130の係合部131が嵌合する、X軸方向に長尺なスリット703が形成されている。スリット703は、突部702に対応した形状であり、スリット703に係合部131が挿入されると、係合部131がスリット703に嵌合し位置決めされる。
【0053】
また、スペーサ本体701において、突部702とは反対側の領域には、栓部材170が収容される収容凹部704が設けられている。具体的には、収容凹部704は、スペーサ本体701において、容器本体101の短側面に対向する面に形成されている。収容凹部704は、容器本体101の栓用貫通孔102に対応する位置に配置されている。上述したように、サイドスペーサ700は、下ガスケット130の係合部131により位置決めされている。下ガスケット130は、負極端子300によって蓋体110に固定され位置決めされている。蓋体110は、容器本体101に溶接されることで位置決めされる。つまり、容器本体101の栓用貫通孔102と、サイドスペーサ700の収容凹部704とは、他の部材によって間接的に位置決めされることになる。収容凹部704は、X軸方向に長尺な貫通孔であり、その内部に栓部材170の一部が収容される。具体的には、サイドスペーサ700の突部702には、他の部分よりもスペーサ本体701からの突出長さが少ない段差部706が設けられている。段差部706は、突出部702の下部に相当する部位である。この段差部706に対して収容凹部704が設けられている。収容凹部704は、段差部706をX軸方向に貫通している。
【0054】
栓部材170は、例えばブラインドリベットのリベット本体であり、容器本体101の栓用貫通孔102を貫通した状態で封止している。具体的には、栓部材170は、例えば、PP、PE、または、PPS等の絶縁性の樹脂によって形成された絶縁部材であり、頭部171と、軸部172と、カシメ部173とを備えている。
【0055】
頭部171は、容器本体101の短側面から外方に突出した部位である。軸部172は、栓用貫通孔102内に収容された状態で頭部171とカシメ部173とを連結する部位である。カシメ部173は、容器本体101の短側面から内方に突出した部分である。頭部171、軸部172及びカシメ部173は同軸上に配置されており、頭部171及びカシメ部173は、軸部172よりも外径が大きく形成されている。
【0056】
カシメ部173には、ブラインドリベットのマンドレルのマンドレル頭部174が埋め込まれている。カシメ部173の一部が収容凹部704内に収容されている。カシメ部173の先端部は、収容凹部704から突出しているが、突出していなくてもよい。
【0057】
また、頭部171及び軸部172には、マンドレルの軸体(図示省略)が引き抜かれることで形成された穴部175が形成されている。マンドレル頭部174は穴部175の底を形成している。マンドレルの軸体がリベット本体から引き抜かれることで、リベット本体が塑性変形してその一部がカシメ部173となる。これによりカシメ部173は栓用貫通孔102の周囲に対して全周にわたって密着し封止する。軸体から引き裂かれてカシメ部173内に残存したマンドレル頭部174は、カシメ部173に全周にわたって密着し穴部175を封止する。
【0058】
カシメ部173は、サイドスペーサ700の収容凹部704に収容されている。収容凹部704は、かしめ前のマンドレル頭部174が干渉しない大きさに形成されている。なお、収容凹部704は、かしめ前のマンドレル頭部174に干渉しないのであれば、突部702をX軸方向に貫通していなくてもよい。カシメ部173は、マンドレルの軸体がかしめによって塑性変形してかしめ前よりも大径となることで収容凹部704の全周にわたって嵌合する。このように、収容凹部704にカシメ部173が嵌合しているので、収容凹部704がカシメ部173により位置が規制されることになる。つまり、収容凹部704は規制部の一例である。
【0059】
[2.蓄電素子の製造方法]
次に、蓄電素子10の製造方法について説明する。なお、以降の説明においては、作業者が蓄電素子10を組み立てる場合を例示するが、組立装置が蓄電素子10を組み立てることも可能である。
【0060】
まず、作業者は、電極体400の正極タブ部415に対して、正極集電体140を接合するとともに、電極体400の負極タブ部425に対して、負極集電体150を接合する。その後、作業者は、容器100の蓋体110に対して、正極端子200、負極端子300、上ガスケット125、135、下ガスケット120、130、正極集電体140並びに負極集電体150を組み付ける。
【0061】
次いで、作業者は、電極体400に対して、一対のサイドスペーサ700を取り付ける。具体的には、作業者は、電極体400の短側面に対してスペーサ本体701を重ねるとともに、サイドスペーサ700における突部702のスリット703に対して、下ガスケット120、130の係合部121、131を挿入する。
【0062】
次いで、作業者は、電極体400の底面と一対の長側面とを覆うように絶縁シート500を電極体400に巻きつけた状態で、電極体400、一対のサイドスペーサ700及び絶縁シート500などを容器本体101に挿入する。電極体400が容器本体101の奥まで収容されると、電極体400の本体部401よりも上方に一対の栓用貫通孔102が位置することになる。つまり、一対の栓用貫通孔102は、電極体400の本体部401よりもタブ部(正極タブ部415及び負極タブ部425)側に位置している。次いで作業者は、蓋体110を容器本体101に溶接することで容器100を組み立てる。
【0063】
その後、作業者は、容器本体101の一対の栓用貫通孔102のうち、一方の栓用貫通孔102のみに栓部材170を取り付けて当該栓用貫通孔102を閉塞する。作業者は、他方の栓用貫通孔102から電解液を注入して、容器100内に電解液を充填する。このとき、他方の栓用貫通孔102は、電極体400の本体部401よりも上方に配置され、当該本体部401から離間している。このため、他方の栓用貫通孔102から注入された電解液は、本体部401の一端面からスムーズに浸透される。
【0064】
電解液の注入後においては、作業者は、他方の栓用貫通孔102に栓部材170を取り付けて当該栓用貫通孔102を閉塞することで、蓄電素子10を完成させる。完成後においては、各栓部材170は、電極体400の本体部401よりもタブ部(正極タブ部415及び負極タブ部425)側に位置することになる。
【0065】
[3.効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蓄電素子10は、電極体400と、電極体400の周囲に配置され当該電極体400を保持するサイドスペーサ700(スペーサ)と、電極体400及びサイドスペーサ700を収容する容器100と、容器100の内部に突出した状態で当該容器100を貫通する栓部材170とを備えている。サイドスペーサ700は、栓部材170におけるカシメ部173(突出部分)を収容し、当該カシメ部173により規制される収容凹部704(規制部)を有している。
【0066】
これによれば、容器100の内部に突出した栓部材170のカシメ部173がサイドスペーサ700の収容凹部704に収容されているので、カシメ部173が容器100の内部空間を消費してしまうことを抑制することができる。したがって、容器100内部に電極体400をより密に収容することができ、エネルギー密度の低下を抑制することができる。
【0067】
また、サイドスペーサ700の収容凹部704が、栓部材170のカシメ部173により規制されるので、サイドスペーサ700と栓部材170との相対的な位置ズレを抑制できる。これにより、サイドスペーサ700に保持された電極体400も容器100内部で移動しにくくなる。したがって、例えば衝撃を受けた際に電極体400が容器100内部で移動して損傷することを抑制することができる。
【0068】
これらのことにより、栓部材170を起因としたエネルギー密度の低下を抑制可能であり、電極体400の損傷を抑制す可能な蓄電素子10を提供することができる。
【0069】
また、電極体400は、本体部401と、本体部401における一端部から突出した正極タブ部415及び負極タブ部425(タブ部)とを備えている。栓部材170は、本体部401よりもタブ部側に配置されている。
【0070】
これによれば、栓部材170がタブ部側に配置されることにより、栓部材170を容器100に挿入する際に電極体400への干渉を避けることができる。すなわち、電極体400の上部における集電体(電極端子)とタブ部との接続領域の周囲にあるデッドスペースを栓部材170の挿入時に活用することが可能とり、容器100内部に電極体400をより密に収容することができるので、エネルギー密度の向上が期待できる。
【0071】
ここで、容器100内に電解液を注ぐ際には、電極体400の本体部401では一端面から電解液が本体部401内に進入する。本実施の形態のように栓部材170が本体部401よりもタブ部側に配置されていれば、栓部材170が取り付けられる栓用貫通孔102は、本体部401から離間した位置に配置されている。つまり、当該栓用貫通孔102から電解液が注入されると、本体部401の一端面から電解液をスムーズに進入させることができる。したがって、容器100内に電解液をスムーズに注入することが可能である。
【0072】
容器400は、直方体形状であり、栓部材170は、容器400における短側面に配置されている。
【0073】
ここで、容器100の長側面同士を重ねて複数の蓄電素子10を配列する場合においては、容器100の短側面は他の蓄電素子10に干渉せずに露出された状態となる。本実施の形態では、この露出された短側面に栓部材170が配置されているので、容器100の長側面同士を重ねて複数の蓄電素子10を配列する場合に、各蓄電素子10を容易に配列することが可能である。
【0074】
また、栓部材170のカシメ部173は、収容凹部704に嵌合している。
【0075】
栓部材170のカシメ部173がサイドスペーサ700の収容凹部704に嵌合しているので、サイドスペーサ700と栓部材170との相対的な位置ズレをより確実に抑制できる。これにより、サイドスペーサ700で保持された電極体400も容器100内部でより移動しにくくなり、例えば衝撃を受けた際に電極体400が容器100内部で移動して損傷することを、より抑制することができる。
【0076】
また、サイドスペーサ700は、電極体400を挟む位置に一対設けられている。栓部材170は、一対のサイドスペーサ700に対応して一対設けられている。一対のサイドスペーサ700のそれぞれの収容凹部704は、一対の栓部材170のそれぞれのカシメ部173により規制されている。
【0077】
一対のサイドスペーサ700のそれぞれが一対の栓部材170により規制されているので、各サイドスペーサ700で保持された電極体400の移動をより確実に抑制することができる。これにより、例えば衝撃を受けた際に電極体400が容器100内部で移動して損傷することを、より確実に抑制することができる。
【0078】
[4.変形例]
以上、上記実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、上述した態様とは異なる部位に栓部材が配置されていてもよい。そこで、以下に、蓄電素子10の栓部材についての変形例を、上記実施の形態との差分を中心に説明する。なお、以降の説明において、上記実施の形態と同一部分については、同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0079】
図5は、変形例に係るサイドスペーサ700Aの一部及びその周辺の部材を拡大して示す断面図である。
図5に示すように、栓用貫通孔102を塞ぐ栓部材170aは、カシメ部173aの一部が収容凹部704a内に収容されている。カシメ部173aの先端部は、収容凹部704aから突出している。また、カシメ部173aの一部は、全周にわたって一定の隙間を持って収容凹部704a内に収容されている。このように変形例では、カシメ部173aが収容凹部704aに嵌合していないが、隙間よりも大きくサイドスペーサ700が移動しようとする場合には、収容凹部704aがカシメ部173aの一部に干渉するので、サイドスペーサ700Aのそれ以上の移動が規制される。つまり、この場合においても、サイドスペーサ700Aに保持された電極体400の移動を規制することができる。
【0080】
[5.他の実施の形態]
以上、本発明の実施の形態に係る蓄電素子10について説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されない。つまり、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であり、本発明の範囲は、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれる。
【0081】
例えば、上記実施の形態では、正極板と負極板とがセパレータを挟んで交互に並べられた積層型の電極体400を例示した。しかし、電極体は、正極板と負極板とがセパレータを挟んで蛇腹状に折り畳まれた積層型の電極体であってもよい。また、電極体は、正極板と負極板とがセパレータを挟んで巻回された巻回型の電極体であってもよい。
【0082】
また、上記実施の形態では、一対のサイドスペーサ700のそれぞれが各栓部材170により規制されている場合を例示した。しかしながら、一対のサイドスペーサ700の一方のみが栓部材170で規制されていてもよい。この場合、他方のサイドスペーサ700用の栓部材170及び栓用貫通孔102が不要となるので、製造コストを低減することが可能である。
【0083】
また、上記実施の形態では、電極体400の本体部401よりもタブ部側に栓部材170が配置されている場合を例示したが、栓部材170は本体部401に対向する位置に配置されていてもよい。
【0084】
また、上記実施の形態では、容器本体101の短側面に栓部材170が配置されている場合を例示したが、容器本体101の長側面に栓部材170が配置されていてもよい。
【0085】
また、上記実施の形態では、栓部材170としてブラインドリベットのリベット本体である場合を例示した。しかしながら、栓部材170は、容器100の内部に突出した状態で当該容器100を貫通するのであればその態様は如何様でもよい。例えば、栓用貫通孔102を塞いだ状態で、溶接によって容器本体101に固定される栓部材であってもよい。
【0086】
また、上記実施の形態では、サイドスペーサ700が平板状である場合を例示した。しかし、サイドスペーサは湾曲した曲板状であってもよい。
【0087】
また、上記実施の形態では、一対の栓用貫通孔102のうち、一つの栓用貫通孔102が電解液である場合を例示した。しかしながら、注液口は、栓用貫通孔とは別の箇所に設けられていてもよい。つまり、栓用貫通孔から注液しない場合も本発明に含まれる。
【0088】
また、上記で説明された実施の形態に係る蓄電素子10に関する各種の補足事項は、変形例に係るサイドスペーサ700Aを備える蓄電素子10に適用されてもよい。また、上記実施の形態及びその変形例に含まれる構成要素を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明は、リチウムイオン二次電池などの蓄電素子等に適用できる。
【符号の説明】
【0090】
10 蓄電素子
100 容器
101 容器本体
102、102a 栓用貫通孔
110 蓋体
110a、110b、120a、125a、130a、135a、140a、150a 貫通孔
120、130 下ガスケット
121、131 係合部
125、135 上ガスケット
131 係合部
140 正極集電体
150 負極集電体
170、170a 栓部材
171 頭部
172 軸部
173、173a カシメ部(突出部分)
174 マンドレル頭部
175 穴部
200 正極端子
300 負極端子
310 締結部
370 接着テープ
400 電極体
401 本体部
415 正極タブ部(タブ部)
425 負極タブ部(タブ部)
500 絶縁シート
700、700A サイドスペーサ(スペーサ)
701 スペーサ本体
702 突部
703 スリット
704、704a 収容凹部(規制部)
706 段差部