(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078518
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】電極パッドおよび低周波治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/04 20060101AFI20220518BHJP
A61N 1/32 20060101ALI20220518BHJP
【FI】
A61N1/04
A61N1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189247
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 知之
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB06
4C053BB07
4C053BB36
4C053JJ15
4C053JJ24
(57)【要約】
【課題】透湿性の優れた電極パッドを提供する。
【解決手段】電極パッド100は、生体に接触して使用される低周波治療用の電極パッドであり、電極パッド100が生体に接触した接触状態において使用者の体表面が位置する側とは反対側を向く第1面10aと使用者の体表面を向く第2面10bを有し、透湿性を有する導電体10と、第1面10a上に設けられた絶縁性を有する速乾性部材20と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体に接触して使用される低周波治療用の電極パッドであって、
前記電極パッドが生体に接触した接触状態において、使用者の体表面が位置する側とは反対側を向く第1面と使用者の体表面を向く第2面を有し、透湿性および透液性を有する導電体と、
前記第1面上に設けられた絶縁性を有する速乾性部材と、を備えた電極パッド。
【請求項2】
前記第2面上に設けられた導電性を有するゲル層をさらに備え、
前記ゲル層は、吸湿性および吸液性を有する、請求項1に記載の電極パッド。
【請求項3】
前記ゲル層は、吸湿吸液構造を含み、
前記吸湿吸液構造は、液体を吸収可能に前記ゲル層の厚さ方向に貫通する複数の穴部によって構成されている、請求項2に記載の電極パッド。
【請求項4】
前記ゲル層は、吸湿吸液構造を含み、
前記吸湿吸液構造は、前記ゲル層内に混在する繊維状物質あるいは管状部材によって構成されている、請求項2に記載の電極パッド。
【請求項5】
前記ゲル層は、前記接触状態において使用者の体表面に接触する接触面を有し、
前記接触面には、前記ゲル層の厚さ方向に交差し、前記ゲル層が有する側面に延びる溝部が設けられている、請求項2から4のいずれか1項に記載の電極パッド。
【請求項6】
前記ゲル層には、吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布が、前記ゲル層が有する側面に露出するように埋設されている、請求項2から5のいずれか1項に記載の電極パッド。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の電極パッドを備えた、低周波治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、低周波治療用の電極パッドおよび低周波治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電極パッドとして、特許第4708447号(特許文献1)には、可撓性を有する導体の両面の各々にゲル層を設けた電極パッドが開示されている。生体に貼り付けた状態において、生体とは接触しない側に設けられたゲル層には、絶縁性を有するバッキングが接着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、生体の電位あるいは生理的電位を監視するための生体電極として電極パッドを用いる場合には、乾いた状態にある生体表面に当該電極パッドが貼着される。
【0005】
一方で、低周波治療器として電極パッドを用いる場合には、運動後または入浴後等の湿った状態にある生体表面に電極パッドが貼着されることがある。このような場合には、生体に接触しているゲル層が、汗または体表面に付着したお湯等の液体あるいは体から発せられる蒸気を吸って膨潤する。ゲル層が膨潤した場合には、ゲル層が生体に貼り付きにくくなったり、ちぎれやすくなってしまう。また、液体または蒸気を吸収した状態のゲル層が、肌に接触し続けることにより、肌がふやけたり、かぶれやすくなってしまう。
【0006】
本開示は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本開示の目的は、透湿性の優れた電極パッドおよびこれを備えた低周波治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に基づく電極パッドは、生体に接触して使用される低周波治療用の電極パッドである。当該電極パッドは、当該電極パッドが生体に接触した接触状態において使用者の体表面が位置する側とは反対側を向く第1面と使用者の体表面を向く第2面を有し、透湿性および透液性を有する導電体と、上記第1面上に設けられた絶縁性を有する速乾性部材と、を備える。
【0008】
上記構成によれば、電極パッドが生体に接触した接触状態において汗等の液体あるいは蒸気が生体から導電体に到達した場合であっても、導電体が透湿性および透水性を有することにより、液体および蒸気が速乾性部材に向けて放出される。速乾性部材は、このような液体および蒸気を素早く乾燥させる。この結果、生体からの液体あるいは蒸気が、速乾性部材から外部に向けて放散されやすくなり、電極パッドの透湿性が向上する。
【0009】
上記本開示に基づく電極パッドは、上記第2面上に設けられた導電性を有するゲル層をさらに備えてもよい。この場合には、上記ゲル層は、吸湿性および吸液性を有していてもよい。
【0010】
上記構成によれば、汗等の液体あるいは蒸気を生体からまずゲル層で吸収することができ、当該ゲル層に吸収された液体あるいは蒸気を透湿性および透液性を有する導電体を通して速乾性部材から電極パッドの外部に向けて放散することができる。
【0011】
上記本開示に基づく電極パッドにあっては、上記ゲル層は、吸湿吸液構造を有していてもよい。上記吸湿吸液構造は、液体を吸収可能に上記ゲル層の厚さ方向に貫通する複数の穴部によって構成されていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、ゲル層に設けられた吸湿吸液構造が、ゲル層の厚さ方向に貫通する複数の穴部によって構成されることにより、毛細管現象により、液体等を導電体に向けてより吸収することができる。これにより、電極パッドの透湿性をさらに高めることができる。
【0013】
上記本開示に基づく電極パッドにあっては、上記ゲル層は、吸湿吸液構造を有していてもよい。上記吸湿吸液構造は、上記ゲル層内に混在する繊維状物質あるいは管状部材によって構成されていてもよい。
【0014】
上記構成によれば、ゲル層に設けられた吸湿吸液構造が、ゲル層内に混在する繊維状物質あるいは管状部材によって構成されることにより、ゲル層の吸湿性を高めることができるとともに、液体あるいは蒸気が生体から導電体に向けて移動しやすくなる。
【0015】
上記本開示に基づく電極パッドにあっては、上記ゲル層は、上記接触状態において使用者の体表面に接触する接触面を有する。この場合には、上記接触面には、上記ゲル層の厚さ方向に交差し、上記ゲル層が有する側面に延びる溝部が設けられていてもよい。
【0016】
上記構成によれば、ゲル層の側面に延びる溝部によって、汗等の液体あるいは蒸気をゲル層の側面から放散させることができる。
【0017】
上記本開示に基づく電極パッドにあっては、上記ゲル層には、吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布が、上記ゲル層が有する側面に露出するように埋設されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布によって、汗等の液体あるいは蒸気をゲル層の側面から放散させることができる。
【0019】
本開示に基づく低周波治療器は、上記の電極パッドを備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、透湿性の優れた電極パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施の形態1に係る電極パッドの概略断面図である。
【
図2】実施の形態2に係る電極パッドの概略断面図である。
【
図3】実施の形態3に係る電極パッドの概略断面図である。
【
図4】実施の形態4に係る電極パッドに具備されるゲル層が有する接触面の平面図である。
【
図5】実施の形態5に係る低周波治療器の概略斜視図である。
【
図6】実施の形態5に係る低周波治療器のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合は、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組み合わせることは、当初から予定されている。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電極パッドの概略断面図である。
図1を参照して、実施の形態1に係る電極パッド100について説明する。
【0024】
電極パッド100は、低周波治療器に用いられるものである。電極パッド100は、生体表面に接触した状態で使用される。電極パッド100は、生体の表面(体表面)に貼着可能に設けられている。当該電極パッド100をたとえば、筋肉が緊張して血行が悪くなった部位に接触させ、当該部位に電気的刺激を与えることにより、筋肉を収縮または弛緩させ、これにより、血行を促進し、筋肉疲労を緩和させることができる。
【0025】
図1に示すように、電極パッド100は、導電体10、速乾性部材20、ゲル層30、およびスナップボタン40を備える。
【0026】
導電体10は、互いに表裏関係にある第1面10aおよび第2面10bを有する。第1面10aは、電極パッド100を生体表面に接触させた接触状態において使用者の体表面が位置する側とは反対側を向く。第2面10bは、上記接触状態において使用者の体表面を向く。
【0027】
導電体10は、透湿性および透水性を有する。導電体10には、第1面10aから第2面10bに貫通あるいは連通する複数の穴部が設けられている。
【0028】
導電体10は、たとえば、金網等の導電性を有する金属布、繊維布地の表面に金属メッキ処理を施した導電布、または、複数の細孔が設けられた導電シート等を採用することができる。
【0029】
また、導電体10としては、導電性を有する不織布、透湿性および透水性が高いフィルム部材に導電性ポリマーが分散されたもの、あるいは、透湿性および透水性の高い素材に部分的にメッキされたものを採用することもできる。
【0030】
以上のように、導電体10としては、導電性を有する部材に透湿性および透水性を高める工夫がされたもの、あるいは、透湿性および透水性を有する部材に導電性を高める工夫がされたものを適宜採用することができる。
【0031】
速乾性部材20は、第1面10a上に設けられている。速乾性部材20は、吸湿吸液した液体および蒸気を外部に放散させることができる。具体的には、速乾性部材20は、主として、当該速乾性部材20に対して導電体10が位置する側とは反対側から吸湿吸液した液体および蒸気を放散させる。
【0032】
速乾性部材20は、絶縁性を有する。具体的には、速乾性部材20としては、絶縁性を有する生地、不織布、または多孔質部材を採用することができる。また、速乾性部材20は、シリカゲル等の吸湿乾燥剤を通気性を有する絶縁性部材で覆ったものであってもよい。
【0033】
生地および不織布に、速乾性を持たせる方法としては、たとえば、太さの異なる繊維を組み合わせる方法、吸水性のよい素材と撥水性を有する素材とを組み合わせる方法、吸湿吸液した場合に繊維の編み目が緩むように構成し通気性をよくする方法等を適宜採用することができる。
【0034】
太さの異なる糸を組み合わせる場合には、太さの異なる糸を多層に組み合わせて多層構造にしてもよい。この場合には、それぞれの層によって生地の密度を異なる形にして毛細管現象を発生させるため、液体および蒸気を速やかに移動させ、導電体10が位置する側とは反対側に効果的に放散させることができる。これにより、肌に付着した水分または汗等の液体の不快なべたつきを軽減することができる。
【0035】
吸水性のよい素材と撥水性を有する素材とを組み合わせる方法としては、たとえば、吸水ポリエステルと撥水ポリエステルを組み合わせてもよい。この場合には、大量の汗をかいた場合であっても、電極パッド100内をドライな状態に保つことができる。具体的には、一定量を超える大量の汗については生地の肌側の凸部分に配した撥水糸が液体をはじくため、はじいた汗等の液体を電極パッドの側方に逃がしつつ、速乾性機能を作用させることができる。
【0036】
吸湿吸液した場合に繊維の編み目が緩む生地および不織布としては、たとえば、アセテート繊維を使ったニット素材を採用することができる。このような生地および不織布は、乾燥状態では繊維の持つ捲縮が通気性を抑制し、発汗等による湿潤状態では伸長し、通気性がよくなる。
【0037】
上記の他にも、超極細の化学繊維で構成された生地および不織布、エチレンビニルアルコール(EVOH)とポリエステルを組み合わせた繊維素材で構成された生地および不織布、あるいは、キュプラ繊維で構成された生地および不織布を採用することができる。
【0038】
超極細の化学繊維で構成された生地および不織布は、蒸散面積が拡大され、吸湿性、吸液性、および放散性に優れる。エチレンビニルアルコール(EVOH)とポリエステルを組み合わせた繊維素材で構成された生地および不織布は、は、吸水速乾性と接触冷感性を備える。キュプラ繊維で構成された生地および不織布は、表面にスキン層がなく多孔質であるため、吸放湿性に優れ、蒸れやベタツキを抑えることができる。
【0039】
また、上記多孔質部材としては、たとえば、蒸れにくいように加工されたポリウレタン等の発泡体を採用することができる。また、速乾性部材20は、絶縁性を有する透湿性フィルムであってもよいし、絶縁性のシート部材に複数の孔が設けられたものであってもよい。
【0040】
以上のように、速乾性部材20としては、導電体10を通過した液体および蒸気を放散させるものを適宜採用することができる。速乾性部材20としては、表面積が広く蒸発しやすく、かつ、毛細管現象で液体の拡散が早いものが好ましい。
【0041】
スナップボタン40は、速乾性部材20を貫通するように導電体10に接続されている。スナップボタン40は、第1面10aの略中央に接続されている。スナップボタン40は、防錆性を有する。なお、スナップボタン40の代わりに、導電体10に配線を接続してもよい。
【0042】
ゲル層30は、第2面10b上に設けられている。ゲル層30は、生体表面に対して粘着性を有するとともに、導電性を有する。また、ゲル層30は、吸湿性および吸液性を有する。
【0043】
ゲル層30は、たとえば、アクリル系高分子ゲル、または、電解液を含有するウレタン系ゲルによって構成されている。また、ゲル層30は、ハイドロゲルによって構成されていてもよい。
【0044】
ゲル層30には、吸湿吸液構造31が設けられている。本実施の形態においては、ゲル層30には、吸湿吸液構造31は、液体を吸収可能にゲル層30の厚さ方向に貫通する複数の穴部32によって構成されている。ゲル層30の厚さ方向は、上記導電体10において第1面10aおよび第2面10bが並ぶ方向と平行な方向である。
【0045】
複数の穴部32は、ゲル層30に均一に設けられていてもよい。また、ゲル層30には、穴部32の密度が疎となる疎領域と、疎領域よりも穴部32の密度が密となる密領域を有していてもよい。たとえば、ゲル層30の厚さ方向から見てスナップボタン40の周囲を疎領域として、当該疎領域の周囲を密領域としてもよい。この場合には、スナップボタン40に液体および蒸気が接触することを抑制し、スナップボタン40をさらにさびにくくすることができる。
【0046】
上述のように、複数の穴部32を設けることにより毛細管現象を利用して穴部32によって、生体表面からの液体または蒸気を導電体10に導きやすくなる。
【0047】
導電体10に導かれた液体または蒸気は、当該導電体10が透湿性および透液性を有することにより、速乾性部材20に向けて放出される。速乾性部材20は、このような液体および蒸気を素早く乾燥させる。この結果、生体からの液体あるいは蒸気が、速乾性部材20から外部に向けて放散されやすくなり、電極パッド100の透湿性が向上する。
【0048】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に係る電極パッドの概略断面図である。
図2を参照にして、実施の形態2に係る電極パッド100Aについて説明する。
【0049】
図2に示すように、実施の形態2に係る電極パッド100Aは、実施の形態1に係る電極パッド100と比較した場合に、ゲル層30Aの構成が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
【0050】
図2においては、ゲル層30Aが有する吸湿吸液構造31が、ゲル層30A内に混在する繊維状物質33によって構成されている。
【0051】
繊維状物質33は、ゲル層30Aに吸収された液体または蒸気を吸収しつつ、導電体10側に向けて移動させることができる。これにより、ゲル層30Aの吸湿性をさらに高め、導電体10および速乾性部材20を介して液体または蒸気を外部へより迅速に放散させることができる。
【0052】
なお、上述においては、吸湿吸液構造31が、繊維状物質33によって構成されている場合を例示して説明したが、これに限定されず、管状部材によって構成されていてもよい。管状部材は、当該管状部材が有する軸が、ゲル層30の厚さ方向と略平行であることが好ましい。複数の管状部材は、毛細管現象を利用してゲル層30Aに吸収された液体または蒸気を導電体10側に向けて移動させることができる。これにより、ゲル層30Aの吸湿性をさらに高め、導電体10および速乾性部材20を介して液体または蒸気を外部へより迅速に放散させることができる。
【0053】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に係る電極パッドに具備されるゲル層が有する接触面の平面図である。
図3を参照して、実施の形態3に係る電極パッド100Bについて説明する。
【0054】
図3に示すように、実施の形態3に係る電極パッド100Bは、実施の形態1に係る電極パッド100と比較した場合に、ゲル層30Bの構造が相違する。その他の構成についてはほぼ同様である。
【0055】
ゲル層30Bには、埋設層34が設けられており、埋設層34は、ゲル層30Bが有する側面30cに露出するように設けられている。埋設層34は、吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布によって構成されており、これらは、ゲル層30Bの側面30cに露出するようにゲル層30Bに埋設されている。
【0056】
上記構成とすることにより、実施の形態1のように速乾性部材20側からの液体または蒸気の放散に加えて、埋設層34によって、液体あるいは蒸気をゲル層30Bの側面から放散させることができる。
【0057】
(実施の形態4)
図4は、実施の形態4に係る電極パッドに具備されるゲル層が有する接触面の平面図である。
図4を参照して、実施の形態4に係る電極パッドについて説明する。
【0058】
図4に示すように、実施の形態4に係る電極パッドは、実施の形態1に係る電極パッド100と比較した場合に、ゲル層30Cの構造が相違する。その他の構成についてはほぼ同様である。
【0059】
実施の形態4においては、電極パッドの接触状態において使用者の体表面に接触するゲル層30Cの接触面30aに溝部35が設けられている。溝部35は、たとえば、格子状に設けられている。溝部35は、ゲル層30Cの厚さ方向に交差し、ゲル層30が有する側面に延びるように設けられている。
【0060】
このように溝部35を設けることにより、実施の形態1のように速乾性部材20側からの液体または蒸気の放散に加えて、溝部35によって、液体あるいは蒸気をゲル層30Cの側面に移動させることができる。これにより、ゲル層30Cの側面からも液体あるいは蒸気を放散させることができる。
【0061】
なお、溝部35の形状は、格子状に限定されず、上述のようにゲル層30Cの側面に延びる形状である限り、放射状等であってもよく、適宜の形状を採用することができる。また、溝部35は、直線状でもよいし、波状であってもよい。
【0062】
溝部35は、実施の形態1のみならず、実施の形態2および3にも適用することができる。また、溝部35は、実施の形態1および2のような吸湿吸液構造31が設けられていないゲル層にも適用することができる。
【0063】
(実施の形態5)
図5は、実施の形態5に係る低周波治療器の概略斜視図である。
図6は、実施の形態5に係る低周波治療器のブロック図である。
図5および
図6を参照して、実施の形態5に係る低周波治療器200について説明する。
【0064】
図5に示すように、低周波治療器200は、概略、低周波治療器本体120と、治療部位に貼り付けるための一対の電極パッド100と、コード130とを備える。
【0065】
低周波治療器本体120は、電源のオンオフや各種の設定等を行うために設けられた複数のボタンからなる操作部121や、設定内容や治療時間を表示するための表示部122を含む。低周波治療器本体120は、公知のものを適宜採用することができる。
【0066】
本実施の形態においては、電極パッドとして実施の形態1に係る電極パッド100を用いているが、これに限定されず、実施の形態2から4の電極パッドを適宜採用することができる。
【0067】
コード130は、低周波治療器本体120と電極パッド100とを電気的に接続する。コード130の一端には、低周波治療器本体120に接続するためのプラグ131が設けられている。コード130の他端には、電極パッド100に接続するための接続部材132が設けられている。接続部材132は、たとえば、スナップであり、電極パッド100のスナップボタン40に嵌合可能に設けられている。
【0068】
図6に示すように、低周波治療器本体120の内部には、各種電子部品の動作を制御するCPU123、および低周波パルスを生成し、かつ出力する波形成形・出力部125が備えられている。CPU123に対しては、低周波治療器本体120に設けられた電源部124から電気が供給されるように構成されている。
【0069】
操作部121から送られる信号に基づいて、CPU123は、表示部122に設定内容および治療時間等を表示させ、また、波形成形・出力部125により低周波パルスを生成させる。波形成形・出力部125から出力された低周波パルスは、電極パッド100を介して人体の治療部位に付与される。
【0070】
(他の変形例)
上述した実施の形態1および2においては、ゲル層が吸湿吸液構造31を有する場合を例示して説明したが、これに限定されず、ゲル層が吸湿性および吸水性を有する限り、吸湿吸液構造31を省略してもよい。
【0071】
また、吸湿吸液構造31は、実施の形態1から3の記載のような複数の穴部、ゲル層内に混在された繊維状物質または管状部材、あるいは、ゲル層に埋設された吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布に限定されず、ゲル層の吸湿性および吸水性を向上させるものであれば適宜採用することができる。たとえば、ゲル層に導入された水に不溶な素材であって親水性を有する材料、あるいは、ゲル層に埋設された多孔質材料またはフィラーであってもよい。ゲル層にフィラーを埋設する場合には、フィラーの周囲に空隙を作り、当該空隙によって毛細管現象を発生させてもよい。
【0072】
上述の実施の形態1から4においては、電極パッド100がゲル層30を含む場合を例示して説明したが、これに限定されず、導電体10によって筋肉を弛緩可能に電流を生体に流せる限り、ゲル層を省略してもよい。なお、この場合には、電極パッド100は、ベルト等の固定部材を用いて生体表面に固定されてもよい。
【0073】
[付記]
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0074】
[構成1]
生体に接触して使用される低周波治療用の電極パッドであって、
前記電極パッドが生体に接触した接触状態において使用者の体表面が位置する側とは反対側を向く第1面(10a)と使用者の体表面を向く第2面(10b)を有し、透湿性および透液性を有する導電体(10)と、
前記第1面(10a)上に設けられた絶縁性を有する速乾性部材(20)と、を備えた電極パッド。
【0075】
[構成2]
前記第2面(10b)上に設けられた導電性を有するゲル層をさらに備え、
前記ゲル層は、吸湿性および吸液性を有する、構成1に記載の電極パッド。
【0076】
[構成3]
前記ゲル層(30)は、吸湿吸液構造(31)を含み、
前記吸湿吸液構造(31)は、液体を吸収可能に前記ゲル層(30)の厚さ方向に貫通する複数の穴部(32)によって構成されている、構成2に記載の電極パッド。
【0077】
[構成4]
前記ゲル層(30A)は、吸湿吸液構造(31)を含み、
前記吸湿吸液構造(31)は、前記ゲル層(30A)内に混在する繊維状物質あるいは管状部材によって構成されている、構成2に記載の電極パッド。
【0078】
[構成5]
前記ゲル層(30C)は、前記接触状態において使用者の体表面に接触する接触面(30a)を有し、
前記接触面(30a)には、前記ゲル層(30C)の厚さ方向に交差し、前記ゲル層(30C)が有する側面(30c)に延びる溝部(35)が設けられている、構成2から4のいずれかに記載の電極パッド。
【0079】
[構成6]
前記ゲル層(30B)には、吸湿性および吸液性を有する、織物の生地、編物の生地、または不織布が、前記ゲル層(30B)が有する側面(30c)に露出するように埋設されている、構成2から5のいずれかに記載の電極パッド。
【0080】
[構成7]
構成1から6のいずれかに記載の電極パッドを備えた、低周波治療器。
【0081】
以上、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10 導電体、10a 第1面、10b 第2面、20 速乾性部材、30,30A,30B,30C ゲル層、30a 接触面、30c 側面、31 吸湿吸液構造、32 穴部、33 繊維状物質、34 埋設層、35 溝部、40 スナップボタン、100,100A,100B 電極パッド、120 低周波治療器本体、121 操作部、122 表示部、124 電源部、125 出力部、130 コード、131 プラグ、132 接続部材、200 低周波治療器。