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  • 特開-変換方法および変換アプリケーション 図1
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  • 特開-変換方法および変換アプリケーション 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078551
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】変換方法および変換アプリケーション
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20220518BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189295
(22)【出願日】2020-11-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-27
(71)【出願人】
【識別番号】000149790
【氏名又は名称】株式会社大気社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】特許業務法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】諏江 勇佑
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS13
3C707BS12
3C707HS27
3C707LS14
3C707LV19
3C707NS02
(57)【要約】
【課題】教示点を記憶する方式が互いに異なる塗装ロボット間で教示プログラムを変換する。
【解決手段】第一教示プログラムを、第二教示プログラムに、コンピュータを用いて変換する変換方法であって、第一教示プログラムに含まれる第一命令から第一種類情報と第一位置情報とを抽出する抽出工程S1と、第一種類情報が表す第一命令の種類に対応する第二種類情報を、第二教示プログラムの仕様に沿って特定する種類情報変換工程S2と、第一位置情報が表す姿勢における第一塗装ロボットのツールの狙い点を第二塗装ロボットのツールが狙うために第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する位置情報変換工程S3と、第二種類情報と第二位置情報とに基づいて、第一命令に対応する動作を第二塗装ロボットに実行させることができる第二命令を生成する命令生成工程S5と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗物に対する塗装を第一塗装ロボットに実行させることができる第一教示プログラムを、当該被塗物に対する塗装を第二塗装ロボットに実行させることができる第二教示プログラムに、コンピュータを用いて変換する変換方法であって、
前記第一教示プログラムに含まれる第一命令から、当該第一命令の種類を表す第一種類情報と、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットが取るべき姿勢を表す第一位置情報と、を抽出する抽出工程と、
前記第一種類情報が表す前記第一命令の種類に対応する第二種類情報を、前記第二教示プログラムの仕様に沿って特定する種類情報変換工程と、
前記第一位置情報が表す前記姿勢における前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する位置情報変換工程と、
前記第二種類情報と前記第二位置情報とに基づいて、前記第一命令に対応する動作を前記第二塗装ロボットに実行させることができる第二命令を生成する命令生成工程と、を含む変換方法。
【請求項2】
前記抽出工程において、前記第一命令から、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットの姿勢を変更する速度を表す第一速度情報をさらに抽出し、
前記第一速度情報が表す移動速度で前記第二塗装ロボットの姿勢を変更できる第二速度情報を特定する速度情報変換工程をさらに含み、
前記命令生成工程において、前記第二種類情報、前記第二位置情報、および前記第二速度情報に基づいて、前記第二命令を生成する請求項1に記載の変換方法。
【請求項3】
前記被塗物は、塗装中に搬送装置によって搬送され、
前記第一塗装ロボットと前記被塗物との相対位置が前記被塗物の移動によらず一定になるように、前記第一位置情報は、前記被塗物の移動に基づいて経時的に補正され、
前記位置情報変換工程において、前記第一位置情報に係る前記補正に基づいて、前記第二位置情報を補正する請求項1または2に記載の変換方法。
【請求項4】
前記位置情報変換工程は、
前記第一命令が実行されるときの前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を、所定のユーザー座標系において表現するステップと、
前記所定のユーザー座標系で表現された前記狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、前記所定のユーザー座標系において特定するステップと、を含む請求項1~3のいずれか一項に記載の変換方法。
【請求項5】
被塗物に対する塗装を第一塗装ロボットに実行させることができる第一教示プログラムを、当該被塗物に対する塗装を第二塗装ロボットに実行させることができる第二教示プログラムに変換可能な変換アプリケーションであって、
前記第一教示プログラムに含まれる第一命令から、当該第一命令の種類を表す第一種類情報と、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットが取るべき姿勢を表す第一位置情報と、を抽出する抽出機能と、
前記第一種類情報が表す前記第一命令の種類に対応する第二種類情報を、前記第二教示プログラムの仕様に沿って特定する種類情報変換機能と、
前記第一位置情報が表す前記姿勢における前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する位置情報変換機能と、
前記第二種類情報と前記第二位置情報とに基づいて、前記第一命令に対応する動作を前記第二塗装ロボットに実行させることができる第二命令を生成する命令生成機能と、をコンピュータに実行させる変換アプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットの教示プログラムを変換するための変換方法および変換アプリケーションに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体などに対する塗装を自動化するべく、塗装ロボットが汎用されている。一般的な塗装ロボットの一態様として、6軸垂直多関節型の産業用ロボットの先端に塗装ノズルを装着した態様のロボットが広く用いられている。この態様の塗装ロボットによる塗装の品質を高めるためには、産業用ロボットの姿勢に係る制御と、塗装ノズルからの塗料の吐出に係る制御と、が求められる。
【0003】
このうち、特に産業用ロボットの姿勢に係る制御について、産業用ロボットの仕様に起因して種々の方式が採用されている。たとえば、特開平8-305423号公報(特許文献1)には、産業用ロボットの六つの軸のそれぞれの回転角を制御することによって産業用ロボットの姿勢を制御する方法が開示されている。また、特開2000-271888号公報(特許文献2)には、産業用ロボットの先端に取り付けられるツールの先端位置(TCP)に応じた制御量を算出し、当該制御量に基づいて産業用ロボットの姿勢を制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-305423号公報
【特許文献2】特開2000-271888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、産業用ロボットの姿勢を制御する種々の方法が用いられており、製造元や機種などによって異なる制御仕様が採用された種々の産業用ロボットが市場に流通している。そのため、塗装ロボットを更新しようとする際に、更新前の塗装ロボットと異なる制御仕様の塗装ロボットを採用しようとすると、更新前の塗装ロボットについて構築した教示プログラムを有効に利用できない場合があった。これによって、塗装ロボットを更新する際の機種選定が限定されたり、塗装ロボットの更新に要する工数が過大になったりする場合があった。
【0006】
そこで、教示点を記憶する方式が互いに異なる塗装ロボット間で教示プログラムを変換できる変換方法および変換アプリケーションの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る変換方法は、被塗物に対する塗装を第一塗装ロボットに実行させることができる第一教示プログラムを、当該被塗物に対する塗装を第二塗装ロボットに実行させることができる第二教示プログラムに、コンピュータを用いて変換する変換方法であって、前記第一教示プログラムに含まれる第一命令から、当該第一命令の種類を表す第一種類情報と、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットが取るべき姿勢を表す第一位置情報と、を抽出する抽出工程と、前記第一種類情報が表す前記第一命令の種類に対応する第二種類情報を、前記第二教示プログラムの仕様に沿って特定する種類情報変換工程と、前記第一位置情報が表す前記姿勢における前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する位置情報変換工程と、前記第二種類情報と前記第二位置情報とに基づいて、前記第一命令に対応する動作を前記第二塗装ロボットに実行させることができる第二命令を生成する命令生成工程と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る変換アプリケーションは、被塗物に対する塗装を第一塗装ロボットに実行させることができる第一教示プログラムを、当該被塗物に対する塗装を第二塗装ロボットに実行させることができる第二教示プログラムに変換可能な変換アプリケーションであって、前記第一教示プログラムに含まれる第一命令から、当該第一命令の種類を表す第一種類情報と、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットが取るべき姿勢を表す第一位置情報と、を抽出する抽出機能と、前記第一種類情報が表す前記第一命令の種類に対応する第二種類情報を、前記第二教示プログラムの仕様に沿って特定する種類情報変換機能と、前記第一位置情報が表す前記姿勢における前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する位置情報変換機能と、前記第二種類情報と前記第二位置情報とに基づいて、前記第一命令に対応する動作を前記第二塗装ロボットに実行させることができる第二命令を生成する命令生成機能と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0009】
これらの構成によれば、教示点を記憶する方式が互いに異なる塗装ロボット間で教示プログラムを変換できる。
【0010】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0011】
本発明に係る変換方法は、一態様として、前記抽出工程において、前記第一命令から、当該第一命令を受けた前記第一塗装ロボットの姿勢を変更する速度を表す第一速度情報をさらに抽出し、前記第一速度情報が表す移動速度で前記第二塗装ロボットの姿勢を変更できる第二速度情報を特定する速度情報変換工程をさらに含み、前記命令生成工程において、前記第二種類情報、前記第二位置情報、および前記第二速度情報に基づいて、前記第二命令を生成することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、異なる姿勢間の姿勢変更速度を含めて、第一塗装ロボットの動作を第二塗装ロボットにおいて再現できる。
【0013】
本発明に係る変換方法は、一態様として、前記被塗物は、塗装中に搬送装置によって搬送され、前記第一塗装ロボットと前記被塗物との相対位置が前記被塗物の移動によらず一定になるように、前記第一位置情報は、前記被塗物の移動に基づいて経時的に補正され、前記位置情報変換工程において、前記第一位置情報に係る前記補正に基づいて、前記第二位置情報を補正することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、被塗物が搬送装置によって搬送される場合であっても、当該搬送を考慮した補正が加えられた第二教示プログラムが得られる。
【0015】
本発明に係る変換方法は、一態様として、前記位置情報変換工程は、前記第一命令が実行されるときの前記第一塗装ロボットのツールの狙い点を、所定のユーザー座標系において表現するステップと、前記所定のユーザー座標系で表現された前記狙い点を前記第二塗装ロボットのツールが狙うために前記第二塗装ロボットが取るべき姿勢を、前記所定のユーザー座標系において特定するステップと、を含むことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、各塗装ロボットの仕様に関わらず本発明を適用できる。これは、狙い点を所定のユーザー座標系で表現することが、各塗装ロボットの仕様に関わらず可能だからである。
【0017】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る塗装ロボットが設置されている塗装ラインの模式図である。
図2】実施形態に係る第一塗装ロボットを示す斜視図である。
図3】実施形態に係る第二塗装ロボットを示す斜視図である。
図4】実施形態に係る変換方法の手順を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る変換方法および変換アプリケーションの実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係る変換方法を、教示点を記憶する方式が互いに異なる第一塗装ロボット10と第二塗装ロボット20との間で教示プログラムを変換するための変換方法に適用した例について説明する。たとえば、コンベアC(搬送装置の例)によって搬送される車体V(被塗物の例)に対して第一塗装ロボット10が塗装を施すように構成されている塗装ライン(図1)において、第一塗装ロボット10を第二塗装ロボット20に置き換える場合に、教示プログラムの変換が必要になる。
【0020】
〔塗装ロボットおよび教示プログラム〕
まず、本実施形態に係る変換方法を説明する前提となる塗装ロボットおよび教示プログラムについて説明する。第一塗装ロボット10(図2)および第二塗装ロボット20(図3)は、いずれも、6軸垂直多関節型の産業用ロボット11、21の先端に塗装ノズル12、22を装着した態様で構成されている。各塗装ロボットは、それぞれ対応する教示プログラムによって制御される。教示プログラムには複数の命令が含まれており、それぞれの命令は、塗装ロボットが取るべき単位動作を表す。ここで、複数の命令のそれぞれに対応する単位動作は、被塗物を塗装するために行うべき一連の動作が細分化されたものである。
【0021】
第一塗装ロボット10は、教示点を各軸パルス(J,J,J,J,J,J)の形式で記憶している。これは、第一教示プログラムにおいて、各段階の命令において第一塗装ロボット10が取るべき姿勢が、第一塗装ロボット10の六つの軸(X1~X6(図2))を制御する各モータを動作させるべく送出されるパルスの強度として記憶されているということである。第一塗装ロボット10は、第一教示プログラムに含まれる各命令に従って、六つの軸を制御する各モータに送るパルスの強度を調整することによって、第一教示プログラムに含まれる各命令を実現する。
【0022】
一方、第二塗装ロボット20は、教示点をワールド座標系空間座標(X,Y,Z,W,P,R)の形式で記憶している。これは、第二教示プログラムにおいて、各段階の命令において第二塗装ロボット20が取るべき姿勢が、特定の原点からのベクトル(X,Y,Z)と、回転角度(W,P,R)との組合せとして記憶されているということである(図3)。より具体的には、ベクトル(X,Y,Z)は、第二塗装ロボット20のツール装着点21aが位置するべき点の座標を表し、回転角度(W,P,R)は当該ツール装着点に装着されたツール(本実施形態では塗装ノズル22)の回転角度を表す。なお、ワールド座標系の原点は、第二塗装ロボット20の第一軸Axと基台とが交わる点21bに設定されている。第二塗装ロボット20は、第二教示プログラムに含まれる各命令に従って、自身のツール装着点の位置およびツールの回転角度が各命令で指定される状態になるように、六つの軸を制御する各モータに送るパルスの強度を調整することによって、第二教示プログラムに含まれる各命令を実現する。
【0023】
また、教示プログラムに含まれる各命令には、当該命令に従って動作する塗装ロボットが実現するべき命令の種類を表す種類情報と、当該命令に従って動作する塗装ロボットの移動速度を表す速度情報と、が含まれている。種類情報は、「移動」、「塗装」などの、塗装作業の実施中に塗装ロボットが実施すべき作業の種類ごとに区分されている。種類情報、あらかじめ用意されたリストから選択されるが、当該リストは教示プログラムの仕様として定められている。
【0024】
たとえば、被塗物上のA点からB点までを直線状に塗装するための教示プログラムは、以下の二つの命令によって構成されうる。
(命令1)
塗装開始点A点を狙い点とする姿勢に移動する。移動中は塗料を吐出しない。
(命令2)
塗装終了点B点を狙い点とする姿勢に移動する。移動中は塗料を吐出し、移動完了後は塗料を吐出しない。
【0025】
命令1では、種類情報は「移動」であり、位置情報は、A点を狙い点とするときに塗装ロボットが取るべき姿勢に対応する。ここで、狙い点とは、塗装ロボットの塗装ノズル吐出ノズルから吐出された塗料が着液する点を表す。ある特定の狙い点を実現するための塗装ロボットの姿勢は、当該狙い点自身を基準として、塗装ノズルの構造や塗料の吐出速度などの諸条件を考慮して特定される。また、命令1における速度情報は任意である。
【0026】
命令2では、種類情報は「塗装」であり、位置情報は、B点を狙い点とするときに塗装ロボットが取るべき姿勢に対応する。また、命令2における速度情報は、A点からB点までを直線状に塗装する際の掃引速度に対応する。より具体的には、A点を狙い点とするときに塗装ロボットが取るべき姿勢と、B点を狙い点とするときに塗装ロボットが取るべき姿勢と、の差を、姿勢変更に費やすべき時間の長さで除したものが、速度情報となる。
【0027】
ここで、速度情報の形式は、位置情報の形式に依存する。第一塗装ロボット10は教示点を各軸パルスの形式で記憶しているので、第一教示プログラムにおける速度情報(第一速度情報)は、各軸パルスの単位時間当たりの変化で表される。一方、第二塗装ロボット20は、教示点をワールド座標系空間座標の形式で記憶しているので、第二教示プログラムにおける速度情報(第二速度情報)は、ワールド座標系空間座標の単位時間あたりの変化で表される。すなわち、ある命令における速度情報は、当該命令の一つ前に実行される命令における位置情報と当該命令における位置情報との差を、当該命令において姿勢変更に費やすべき時間の長さで除したものとして特定され、ここで用いられる位置情報の形式は、当該命令が含まれる教示プログラムの仕様に従う。
【0028】
〔変換方法〕
以上を前提として、本実施形態に係る変換方法について説明する。本実施形態に係る変換方法は、抽出工程S1、種類情報変換工程S2、位置情報変換工程S3、速度情報変換工程S4、および命令生成工程S5、を含み、各工程はコンピュータを用いて実行される。すなわち以下の説明は、本実施形態に係る変換プログラムの説明でもあり、当該変換プログラムは、抽出機能、種類情報変換機能、位置情報変換機能、速度情報変換機能、および命令生成機能をコンピュータに実行させることができるものである。なお、以下の説明では、上記の「命令1」および「命令2」を含む第一教示プログラムを変換する場合を例として説明する(図4)。
【0029】
(1)抽出工程(S1)
抽出工程は、第一教示プログラムに含まれる命令(区別のため、第一命令という。)から、第一命令の種類を表す第一種類情報と、第一命令を受けた第一塗装ロボット10が取るべき姿勢を表す第一位置情報と、第一命令を受けた第一塗装ロボット10の姿勢を変更する速度を表す第一速度情報と、を抽出する。たとえば、上記の「命令1」を対象とする抽出工程では、「移動」である第一種類情報と、塗装開始点A点を狙い点とする姿勢に対応する各軸パルスである第一位置情報と、塗装開始点A点を狙い点とする姿勢に姿勢変更するまでの各軸パルスの単位時間あたりの変化である第一速度情報と、が抽出される。同様に、「命令2」を対象とする抽出工程では、「塗装」である第一種類情報と、塗装終了点B点を狙い点とする姿勢に対応する各軸パルスである第一位置情報と、塗装終了点B点を狙い点とする姿勢に姿勢変更するまでの各軸パルスの単位時間あたりの変化である第一速度情報と、が抽出される。
【0030】
(2)種類情報変換工程(S2)
種類情報変換工程では、第一種類情報が表す第一命令の種類に対応する第二種類情報を、第二教示プログラムの仕様に沿って特定する。具体的には、第一教示プログラムの仕様における種類情報(第一種類情報)の候補リストの各項目と、第二教示プログラムの仕様における種類情報(第二種類情報)の候補リストの各項目と、の対照表をあらかじめ用意しておき、当該対照表に従って、第一教示プログラムの各命令の第一種類情報に対応する第二教示プログラムの仕様における種類情報を特定し、これを第二種類情報とする。
【0031】
第一教示プログラムと第二教示プログラムとの仕様が異なっていても、両者は塗装ロボットを動作させるプログラムであるという点で共通するので、多くの場合、互いに対応する種類情報が存在する。そのため、上記のような対照表を作成することが可能である。たとえば、本実施形態では、以下のような対照表が作成される。下表に示すように、第一教示プログラムと第二教示プログラムとの仕様上、共通する作業内容にそれぞれ異なる名称(種類情報)が割り当てられている。
【表1】
【0032】
上記の表に従って、たとえば上記の「命令1」を対象とする種類情報変換工程では、第一種類情報「移動」を、第二種類情報「塗装準備」に変換する。同様に、「命令2」を対象とする種類情報変換工程では、第一種類情報「塗装」を、第二種類情報「塗装実行」に変換する。
【0033】
(3)位置情報変換工程(S3)
位置情報変換工程は、第一位置情報が表す姿勢における第一塗装ロボット10の塗装ノズル12(ツール)の狙い点を第二塗装ロボット20の塗装ノズル22(ツール)が狙うために第二塗装ロボット20が取るべき姿勢を、第二位置情報として特定する工程である。ここで、前述のように、第一塗装ロボット10は教示点を各軸パルスの形式で記憶しているロボットであり、第二塗装ロボット20は教示点をワールド座標系空間座標の形式で記憶しているロボットであるので、両者の座標系の違いが問題となる。そこで、本実施形態では、第一塗装ロボット10(第一教示プログラム)と第二塗装ロボット20(第二教示プログラム)との仕様の違いに関わらず両者で共通して使用できるユーザー座標系を設定し、位置情報を当該ユーザー座標系(x,y,z,w,p,r)で特定することによって、第一位置情報を第二位置情報に変換する、という手法を取る。
【0034】
たとえば、第一塗装ロボット10用の上記「命令1」を対象とする位置情報変換工程では、まず、命令1から抽出された第一位置情報(各軸パルス(J11,J21,J31,J41,J51,J61))から、A点を表す各軸パルス(J1a,J2a,J3a,J4a,J5a,J6a)を求める。なおここで、第一位置情報は、塗装ノズル12がA点を狙い点とするときに第一塗装ロボット10が取るべき姿勢を表す。
【0035】
次に、A点を表す各軸パルスを、ユーザー座標系におけるA点の座標(x,y,z,w,p,r)に変換する。各軸パルスからユーザー座標系への変換は、たとえば、あらかじめ作成された変換式を用いる方法によって行われうる。
【0036】
続いて、A点(x,y,z,w,p,r)を塗装ノズル22の狙い点とするときに、第二塗装ロボット20が取るべき姿勢を、ユーザー座標系において特定する。ここで特定された座標を(x,y,z,w,p,r)とする。なお、塗装ノズル22の狙い点と第二塗装ロボット20が取るべき姿勢との関係は、第二塗装ロボット20の仕様(塗装ノズルの構造や塗料の吐出速度など)に基づいて既知である。
【0037】
最後に、ユーザー座標系において特定された第二塗装ロボット20が取るべき姿勢を表す座標(x,y,z,w,p,r)を、ワールド座標系に変換して、第二位置情報を得る。ユーザー座標系の原点oのワールド座標系における座標を(X,Y,Z,W,P,R)とすると、第二位置情報は、(X+x,Y+y,Z+z,W+w,P+p,R+r)で表される。
【0038】
以上の手順により、第一位置情報(各軸パルス(J11,J21,J31,J41,J51,J61))を、第二位置情報(ワールド座標系空間座標(X+x,Y+y,Z+z,W+w,P+p,R+r))に変換できる。なお、第一塗装ロボット10(第一教示プログラム)と第二塗装ロボット20(第二教示プログラム)とで共通して使用できるユーザー座標系は、たとえば、車体Vが配置される領域内に原点oを置いて設定されうる(図1)。図1に示すように、コンベアCの搬送方向と、ユーザー座標系の軸のうちの一つ(図1ではx軸)の方向とを一致させておくと、後述するコンベア同期を行いやすくなる。
【0039】
(4)速度情報変換工程(S4)
速度情報変換工程は、第一速度情報が表す移動速度で第二塗装ロボット20の姿勢を変更できる第二速度情報を特定する工程である。第一教示プログラムでは、第一位置情報が各軸パルスの形式で表されるので、第一速度情報は各軸パルスの単位時間あたりの変化として特定されている。一方、第二教示プログラムでは、第二位置情報がワールド座標系空間座標の形式で表されるので、第二速度情報はワールド座標系空間座標の単位時間あたりの変化として特定される必要がある。
【0040】
たとえば、第一塗装ロボット10用の上記「命令2」を対象とする速度情報変換工程では、A点を狙い点とするときの第二位置情報とB点を狙い点とするときの第二位置情報との差を、命令2において姿勢変更に費やす時間で除すことによって、第二速度情報が得られる。なお、A点およびB点のそれぞれを狙い点とする第二位置情報は、位置情報変換工程において特定されている。
【0041】
(5)命令生成工程(S5)
命令生成工程では、上記の各工程を経て得られた第二種類情報、第二位置情報、および第二速度情報に基づいて、変換元の第一命令に対応する第二命令を生成する工程である。第二種類情報、第二位置情報、および第二速度情報を結合すると、変換元の第一命令に対応する第二命令が生成される。第二塗装ロボット20に第二命令を実行させると、第一塗装ロボット10に第一命令を実行させたときと同じ結果が得られる。
【0042】
以上の各工程(S1~S5)による第一命令から第二命令への変換を、第一教示プログラムに含まれる第一命令の全てに対して実行すると、第二命令の集合体としての第二教示プログラムが得られる。すなわち、第一教示プログラムから第二教示プログラムへの変換がなされる。
【0043】
〔コンベア同期〕
これまでの説明では、コンベアCによる車体Vの搬送を考慮せずに説明したが、実際には搬送を考慮する必要がある。車体Vの搬送速度をvとし、車体Vが初期位置を通過した時刻からの経過時間をtとすると、ある時点における車体Vの移動距離はvtで表される。この移動距離vtを加味して教示プログラムに含まれる位置情報を経時的に補正すると、塗装ノズルと車体Vとの相対位置を車体Vの移動によらず一定にできるので、移動する車体Vに対して静止している車体Vに対してするのと同じように塗装を施すことができる。
【0044】
本実施形態に係る変換方法において、上記のようなコンベア同期を考慮する場合は、位置情報変換工程においてこれを考慮すればよい。すなわち、経過時間tの関数で表現される第一位置情報に対して、上記の位置情報変換工程を適用することによって、経過時間tの関数で表現される第二位置情報が得られる。すなわち、位置情報変換工程において、第一位置情報に係る補正に基づいて、第二位置情報を補正することになる。
【0045】
本実施形態では、移動距離vtは第一位置情報において考慮されており、第一位置情報は経過時間tの関数になる。また、コンベアCの搬送方向とユーザー座標系のx軸の方向とを一致させてあるので、第二教示プログラムに含まれる第二命令のそれぞれについて、第二位置情報のX軸の値にvtを加えると、車体Vの搬送を考慮することができる。すなわち、コンベア同期を考慮した第二位置情報は、(X+x+vt,Y+y,Z+z,W+w,P+p,R+r)で表される。
【0046】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る変換方法および変換アプリケーションのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0047】
上記の実施形態では、抽出工程S1、種類情報変換工程S2、位置情報変換工程S3、速度情報変換工程S4、および命令生成工程S5、を含む変換方法を例として説明した。しかし、本発明に係る変換方法は、速度情報変換工程を含まなくてもよい。
【0048】
上記の実施形態では、第一塗装ロボット10は、教示点を各軸パルスの形式で記憶しており、第二塗装ロボット20は、教示点をワールド座標系空間座標の形式で記憶している構成を例として説明した。しかし、本発明に係る変換方法および変換プログラムにおいて、変換元の第一塗装ロボットおよび変換先の第二塗装ロボットの双方について、教示点を記憶する方式は限定されない。また、第一塗装ロボットと第二塗装ロボットとが教示点を記憶する方式は、同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。教示点を記憶する方式としては、上記に例示した各軸パルス形式およびワールド座標系空間座標形式のほか、ユーザー座標系空間座標形式などが例示される。
【0049】
上記の実施形態では、位置情報変換工程において、ユーザー座標系における狙い点A点の座標を介して、第一位置情報を第二位置情報に変換する構成を例として説明した。しかし、本発明に係る変換方法および変換プログラムにおいて、第一位置情報を第二位置情報に変換する方法は限定されない。
【0050】
上記の実施形態では、コンベアCによる車体Vの搬送を考慮する方法(コンベア同期)について説明した。しかし、本発明に係る変換方法および変換プログラムにおいて、被塗物の搬送を考慮した補正を行ってもよいし、これを行わなくてもよい。
【0051】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、たとえば教示点を記憶する方式が互いに異なる塗装ロボット間で教示プログラムを変換するために利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10 :第一塗装ロボット
11 :産業用ロボット
12 :塗装ノズル
20 :第二塗装ロボット
21 :産業用ロボット
21a:ツール装着点
21b:第二塗装ロボット20の第一軸Axと基台とが交わる点(ワールド座標系の原点)
22 :塗装ノズル
C :コンベア
V :車体
o :ユーザー座標系の原点
図1
図2
図3
図4