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特開2022-78566ばねの異音の評価装置及び方法並びにばね
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022078566
(43)【公開日】2022-05-25
(54)【発明の名称】ばねの異音の評価装置及び方法並びにばね
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20220518BHJP
   G01M 17/10 20060101ALI20220518BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20220518BHJP
【FI】
G01H3/00 A
G01M17/10
G01M99/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020189315
(22)【出願日】2020-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】000176833
【氏名又は名称】三菱製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】曽田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】福田 好純
(72)【発明者】
【氏名】江尻 拓人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英幸
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024BA11
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA11
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC41
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】検査員による異音試験を自動化して検査員の安全を確保する。
【解決手段】ばねの異音の評価装置は、自動車のサスペンションに用いるコイルばね101の異音を評価するものであって、荷重試験機10に装着されて荷重により圧縮されたコイルばね101について、コイルばね101から発する音を集音するマイクロホン25と、マイクロホン25で集音されたコイルばね101から発する音の信号に高速フーリエ変換を施して周波数ごとの信号とし、周波数ごとの信号においてコイルばね101の線間接触による異音を特定することにより正常品又は異常品のいずれであるかを判定するデータ解析装置26とを含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車のサスペンションに用いるコイルばねの異音を評価するばねの異音の評価装置であって、
荷重により圧縮されたばねについて、前記ばねから発する音を検出するためのセンサと、
前記センサで検出されたばねの音の信号に高速フーリエ変換を施して周波数ごとの信号とし、前記周波数ごとの信号において前記ばねの線間接触による異音を特定することによりばねが正常品又は異常品のいずれであるかを判定するデータ解析装置と
を含むばねの異音の評価装置。
【請求項2】
前記ばねから発する音を検出するセンサは、前記ばねの音を集音するマイクロホンである請求項1に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項3】
前記ばねから発する音を検出するセンサは、前記ばねの振動を検出する振動センサである請求項1に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項4】
前記周波数ごとの信号は、前記ばねの音の信号に対して前記ばねに加振した時刻を基準として設定されたサンプリング期間について高速フーリエ変換を施したものである請求項1から3のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項5】
前記サンプリング期間は、前記ばねに加振した時刻から所定の時間が経過した時刻から開始され、所定の時間にわたって継続する請求項4に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項6】
前記ばねの線間接触による異音は、前記周波数ごとの信号において所定の周波数範囲に含まれる請求項1から5のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項7】
前記所定の周波数範囲は、可聴周波数範囲に含まれる請求項6に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項8】
ばねを装着し、ばねに荷重を与えて圧縮するばね圧縮装置をさらに含む請求項1から7のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項9】
前記ばね圧縮装置に装着されたばねにハンマリングを加えて加振するハンマリング装置をさらに含む請求項8に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項10】
前記ばね圧縮装置に装着されたばねに加振する振動発生装置をさらに含む請求項8に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項11】
前記ばね圧縮装置に装着されたばねに加えられた荷重を測定するロードセルをさらに含む請求項8から10のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項12】
前記ばね圧縮装置に装着されたばねの高さの変位を測定する変位計をさらに含む請求項8から11のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項13】
前記センサで検出された前記ばねの音の信号を記録する記録装置をさらに含み、前記データ解析装置は前記記録装置に記録されたばねの音の信号を解析する請求項1から12のいずれか一項に記載のばねの異音の評価装置。
【請求項14】
自動車のサスペンションに用いるコイルばねの異音を評価するばねの異音の評価方法であって、
荷重により圧縮されたばねについて、前記ばねから発する音を検出する工程と、
前記検出されたばねの音の信号に高速フーリエ変換を施して周波数ごとの信号とする工程と、
前記周波数ごとの信号において前記ばねの線間接触による異音を特定する工程と、
前記検出した異音に基づいて前記ばねが正常品又は異常品のいずれであるかを判定する工程と
を含むばねの異音の評価方法。
【請求項15】
前記周波数ごとの信号は、前記ばねの音の信号に対して前記ばねに加振した時刻を基準として設定されたサンプリング期間について高速フーリエ変換を施したものである請求項14に記載のばねの異音の評価方法。
【請求項16】
前記線間接触に起因する異音は、可聴周波数範囲に含まれる所定の周波数範囲において検出される請求項14又は15に記載のばねの異音の評価方法。
【請求項17】
前記ばねに荷重を加えて圧縮する工程をさらに含む請求項14から16のいずれか一項に記載のばねの異音の評価方法。
【請求項18】
前記圧縮する工程で圧縮されたばねにハンマリングを加えて加振する工程をさらに含む請求項17に記載のばねの異音の評価方法。
【請求項19】
前記圧縮する工程で圧縮されたばねに振動発生装置で加振する工程をさらに含む請求項17に記載のばねの異音の評価方法。
【請求項20】
請求項14から19のいずれか一項に記載のばねの異音の評価方法において異音を評価された自動車のサスペンションに用いられるコイルばねであって、前記判定する工程において正常品と判定されてその品質が保証されたばね。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動車のサスペンションに用いるコイルばねの異音を評価するばねの異音の評価装置及び方法並びにそのような方法により異音を評価されたばねに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のサスペンションにコイルばねが用いられている。図1は、一例としてマクファーソン・ストラットによるサスペンション100に用いられたコイルばね101を示している。コイルばね101は、ストラット104に沿って設けられたロアーシート102とアッパーシート103の間に挟持され、ストラット104が車軸に対して車両を懸架できるように支持している。
【0003】
サスペンション100のコイルばね101においては、コイルばね101の固有振動に伴い線間接触が発生することがあった。このような線間接触は人間の可聴周波数範囲にある打撃音を発生し、自動車の乗員に異音として聴き取られる。
【0004】
異音発生品の流出を防止するために、異音試験が実施されている。異音試験では、コイルばねを荷重試験機に装着し、荷重を加えてコイルばねの圧縮高さを変えながら検査員がゴムハンマーでコイルばねを連続的にハンマリングして振動音を聴き取り、線間接触により発生する異音を経験的に聴き分けるという官能検査で判定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
異音試験においては、荷重試験機で圧縮されたコイルばねを検査員がゴムハンマーで直接ハンマリングして検査するため、荷重試験機と検査員との間に安全柵を設置することが困難であった。このため、検査員の身体がコイルばねに曝され、圧縮されたコイルばねが装置から外れた場合などを想定すると、不安全な状態となっていた。また、異音試験の判定は検査員の聴覚に基づく官能検査のため、検査員によって判定の基準に個人差が発生する可能性もあった。
【0006】
この発明は、上述の課題を解決するために提供されるものであって、検査員による異音試験を自動化して検査員の安全を確保するとともに、判定の基準を定量化して標準化を図り、コイルばねを基準に従い加振するようなばねの異音の評価装置及び方法、並びにそのようなばねの異音の評価方法によって線間接触が発生しない正常品と判定されたばねを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この出願に係るばねの異音の評価装置は、自動車のサスペンションに用いるコイルばねの異音を評価するばねの異音の評価装置であって、荷重により圧縮されたばねについて、ばねから発する音を検出するためのセンサと、センサで検出されたばねの音の信号に高速フーリエ変換を施して周波数ごとの信号とし、周波数ごとの信号においてばねの線間接触による異音を特定することによりばねが正常品又は異常品のいずれであるかを判定するデータ解析装置とを含むものである。
【0008】
ばねから発する音を検出するセンサは、ばねの音を集音するマイクロホンであってもよい。ばねから発する音を検出するセンサは、ばねの振動を検出する振動センサであってもよい。
【0009】
周波数ごとの信号は、ばねの音の信号に対してばねに加振した時刻を基準として設定されたサンプリング期間について高速フーリエ変換を施したものであってもよい。サンプリング期間は、ばねに加振した時刻から所定の時間が経過した時刻から開始され、所定の時間にわたって継続してもよい。
【0010】
ばねの線間接触による異音は、周波数ごとの信号において所定の周波数範囲に含まれてもよい。所定の周波数範囲は、可聴周波数範囲に含まれてもよい。
【0011】
ばねを装着し、ばねに荷重を与えて圧縮するばね圧縮装置をさらに含んでもよい。ばね圧縮装置に装着されたばねにハンマリングを加えて加振するハンマリング装置をさらに含んでもよい。ばね圧縮装置に装着されたばねに加振する振動発生装置をさらに含んでもよい。
【0012】
ばね圧縮装置に装着されたばねに加えられた荷重を測定するロードセルをさらに含んでもよい。ばね圧縮装置に装着されたばねの高さの変位を測定する変位計をさらに含んでもよい。センサで検出されたばねの音の信号を記録する記録装置をさらに含み、データ解析装置は記録装置に記録されたばねの音の信号を解析してもよい。
【0013】
この出願に係るばねの異音の評価方法は、自動車のサスペンションに用いるコイルばねの異音を評価するものであって、荷重により圧縮されたばねについて、ばねから発する音を検出する工程と、検出されたばねの音の信号に高速フーリエ変換を施して周波数ごとの信号とする工程と、周波数ごとの信号においてばねの線間接触による異音を特定する工程と、検出した異音に基づいてばねが正常品又は異常品のいずれであるかを判定する工程とを含むものである。
【0014】
周波数ごとの信号は、ばねの音の信号に対してばねに加振した時刻を基準として設定されたサンプリング期間について高速フーリエ変換を施したものであってもよい。線間接触に起因する異音は、可聴周波数範囲に含まれる所定の周波数範囲において検出されてもよい。
【0015】
ばねに荷重を加えて圧縮する工程をさらに含んでもよい。圧縮する工程で圧縮されたばねにハンマリングを加えて加振する工程をさらに含んでもよい。圧縮する工程で圧縮されたばねに振動発生装置で加振する工程をさらに含んでもよい。
【0016】
この出願に係るばねは、ばねの異音の評価方法において異音を評価された自動車のサスペンションに用いられるコイルばねであって、判定する工程において正常品と判定されてその品質が保証されたものである。
【発明の効果】
【0017】
この発明によると、異音試験を自動化して検査員の安全を確保することができる。また、コイルばねの線間接触についての判定の基準を定量化して標準化を図るとともに、コイルばねを基準に従い加振するようにすることができる。線間接触が発生しない正常品と判定されその品質が保証されたばねを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】自動車のサスペンションに用いるコイルばねを示す図である。
図2】ばねの異音の評価装置の概略的な構成を示す図である。
図3】ばねの異音の評価方法の一連の工程を示すフローチャートである。
図4】コイルばねから発する音を示すグラフである。
図5】コイルばねから発する音を解析する一連の工程を示すフローチャートである。
図6】線間接触が発生しないコイルばねの音を示すグラフである。
図7】線間接触が発生するコイルばねの音を示すグラフである。
図8】線間接触が発生しないコイルばねから発した音を高速フーリエ変換したデータを示す図である。
図9】線間接触が発生するコイルばねから発した音を高速フーリエ変換したデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態に係るばねの異音の評価装置及び方法並びにばねについて、図面を参照して詳細に説明する。本実施の形態においては、自動車のサスペンションに用いるコイルばねについて線間接触により発生する異音について評価することを想定している。コイルばねは、マクファーソン・ストラット、ダブルウィッシュボーン、マルチリンク、セントラルアーム等のサスペンションに用いることができる。
【0020】
図2は、本実施の形態のばねの異音の評価装置の概略的な構成を示す図である。本実施の形態のばねの異音の評価装置は、装着したコイルばね101に荷重を加えて圧縮する荷重試験機10と、荷重試験機10に装着されたコイルばね101にハンマリングを加えるハンマリング装置21と、コイルばね101の振動音を集音するマイクロホン25と、マイクロホン25で集音された振動音の信号に高速フーリエ変換(FFT)を施して解析するデータ解析装置26とを有している。
【0021】
荷重試験機10には、装着するコイルばね101の下部座巻部101a及び上部座巻部101bをそれぞれ保持する下部チャック11及び上部チャック12が設けられている。上部チャック12は上下に可動であり、下部チャック11で固定されたコイルばね101に荷重を加えることができる。図中の上部の矢印は、上部チャック12がコイルばね101に加える荷重の方向を示している。上部チャック12には、荷重を測定するロードセル15が設けられている。また、荷重試験機10は、装着したコイルばね101の高さの変位を測定する図示しない変位計を有している。荷重試験機10には、万能試験機を利用してもよい。
【0022】
荷重試験機10には、装着したコイルばね101にハンマリングを加えるためのハンマリング装置21が取り付けられている。ハンマリング装置21は、図示しない支持装置によって昇降可能に支持されている。ハンマリング装置21は、ゴム製のハンマーヘッド21aと、ハンマーヘッド21aを支持するアーム21bと、ハンマーヘッド21aがコイルばね101にハンマリングを加えるようにアーム21bを駆動する図示しない駆動装置を有している。
【0023】
ハンマリング装置21は、図示しない加速度センサを有し、ハンマリング開始時間、ハンマリングの打撃力を設定することができる。また、ハンマリングの角度を調整することができる。ハンマリングをする高さは、ハンマリング装置21を支持装置によって昇降することによって調整される。
【0024】
マイクロホン25は、荷重試験機10に装着したコイルばね101から発する音を集音することができるように、コイルばね101に近接する位置にコイルばね101に向けて設置されている。データ解析装置26には、マイクロホン25で集音した振動音の信号がラインを通じて供給されている。データ解析装置26は表示部26aを有し、表示部26aにマイクロホン25から供給された振動音の信号を表示してもよい。データ解析装置26には、パーソナルコンピューターを使用してもよい。
【0025】
コイルばね101から発する音を検出するためには、マイクロホン25に代わって、振動センサを使用することもできる。振動センサは、コイルばね101の振動を検出するために、荷重試験機10においてコイルばね101に隣接して設置されたり、コイルばね101に直接取り付けられたりしてもよい。振動センサからは、検出されたコイルばね101から発する音の信号がデータ解析装置26に供給される。データ解析装置26において、振動センサで検出した音の信号は、マイクロホン25で検出した音と同様に解析される。
【0026】
図3は、ばねの異音の評価方法の一連の工程を示すフローチャートである。図2に示したような構成を有するばねの異音の評価装置は、図3に示すような一連の工程に従いばねの異音の評価を実施する。
【0027】
最初のステップS11においては、荷重試験機10にコイルばね101を装着し、荷重を加えてコイルばね101が所定の高さになるように圧縮する。図2を参照すると、コイルばね101は、下部座巻部101a及び上部座巻部101bがそれぞれ下部チャック11及び上部チャック12によって保持されるように荷重試験機10に装着される。装着されたコイルばね101に加えられる荷重は、ロードセル15によって測定され、コイルばね101の高さの変位は図示しない変位計によって測定される。
【0028】
ステップS12においては、ステップS11によって所定の高さに圧縮されたコイルばね101にハンマリング装置21によってハンマリングを加えて加振する。ハンマリング装置21の図示しない支持装置及び駆動装置は、ゴム製のハンマーヘッド21aが所定の高さにおいてコイルばね101を所定の位置で所定の角度から所定の打撃力によってハンマリングすることができるように、ハンマリング装置21を昇降させ、ハンマーヘッド21aを支持するアーム21bを駆動する。ハンマリングによってコイルばね101は加振され、コイルばね101が音を発する。
【0029】
ステップS13は、ステップS12のハンマリングによる加振によりコイルばね101から発した音をマイクロホン25で集音する。マイクロホン25は、集音したコイルばね101の音を電気信号に変換する。ばねの異音の評価装置がマイクロホン25に代わって振動センサを備える場合には、振動センサにより検出したコイルばね101の振動を介して音の信号が得られる。
【0030】
図4は、マイクロホン25で集音したコイルばね101から発した音を示すグラフである。縦軸は電気信号に変換されて電圧単位で表示された音圧(V)であり、横軸は時間(秒)である。図4(a)は線間接触がない場合を示し、図4(b)は線間接触が発生する場合を示している。コイルばね101は、約0.2秒の間隔、換言すると約5Hzでハンマリングにより加振しているため、音圧の振幅に周期的な振動が見られる。これら図4(a)及び図4(b)の音圧の波形を目視しても、図b(b)に含まれる線間接触による異音を特定するのは困難である。
【0031】
図3のステップS14は、ステップS13においてマイクロホン25で集音したコイルばね101の音の信号をデータ解析装置26で解析する。図5は、データ解析装置26で実行されるコイルばね101の音の解析の一連の工程を示すフローチャートである。
【0032】
最初のステップS21において、データ解析装置26は、マイクロホン25で集音したコイルばね101の振動音を高速フーリエ変換(FFT)により処理する。コイルばね101の振動音に高速フーリエ変換を施すサンプリング期間は、ハンマリングによる加振を加えた時刻から0.03秒が経過してから、0.13秒までの0.1秒の期間に設定している。ハンマリングにより加振を加えた時刻から0.03秒は、コイルばね101のハンマリングによる打撃音が減衰してコイルばね101が固有振動に移行するまで待機するものである。サンプリング期間の0.1秒間において、データ解析のために十分なデータが得られる。
【0033】
図6は、線間接触が発生しないコイルばね101において、コイルばね101から発する音の時間変化を示すグラフである。図6(a)はハンマリングから5秒が経過するまでの振動音の音圧の時間変化を示している。図6(b)は、ハンマリングから0.03秒経過してから0.1秒が経過した0.13秒までの期間を拡大したものである。図6(c)は、ハンマリングから0.03秒経過してから0.01秒が経過した0.04秒までの期間を拡大したものである。これらのうちで、図6(b)に示した期間が、高速フーリエ変換を施すサンプリング期間に相当する。
【0034】
図7は、線間接触が発生するコイルばね101において、コイルばね101が発する音の時間変化を示すグラフである。図7においても、図6と同様の時間軸の範囲について示した。図7(a)はハンマリングから5秒が経過するまでの振動音の音圧の時間変化を示している。図7(b)は、ハンマリングから0.03秒経過してから0.1秒が経過した0.13秒までの期間を拡大したものである。図7(c)は、ハンマリングから0.03秒経過してから0.01秒が経過した0.04秒までの期間を拡大したものである。これらのうちで、図7(b)に示した期間が、高速フーリエ変換を施すサンプリング期間に相当する。
【0035】
図8は、線間接触が発生しないコイルばね101の振動音の音圧をサンプリング期間について高速フーリエ変換した周波数ごとのデータを示すグラフである。図8(a)は高速フーリエ変換したデータを3次元表示したものである。横軸はサンプリング期間にわたる時間であり、手前から奥側に向かう軸は周波数であり、縦軸は音圧である。図8(b)は、図8(a)に3次元表示で示した高速フーリエ変換したデータを図8(a)中の矢印方向に見たグラフである。横軸は周波数であり、縦軸は音圧である。図8(b)には、図8(a)で3次元表示したデータが重ねて表示されている。
【0036】
図9は、線間接触が発生するコイルばね101の振動音の音圧をサンプリング期間について高速フーリエ変換した周波数ごとのデータを示すグラフである。図9(a)は高速フーリエ変換したデータを3次元表示したものである。横軸はサンプリング期間にわたる時間であり、手前から奥側に向かう軸は周波数であり、縦軸は音圧である。図9(b)は、図9(a)に3次元表示で示した高速フーリエ変換したデータを図9(a)中の矢印方向に見たグラフである。横軸は周波数であり、縦軸は音圧である。図9(b)には、図9(a)で3次元表示したデータが重ねて表示されている。
【0037】
ステップS22において、データ解析装置26は、ステップS21における高速フーリエ変換に続いて、高速フーリエ変換した周波数ごとのデータに基づいて、コイルばね101が、線間接触の発生しない正常品であるか、又は線間接触の発生する異常品であるかを判定する。
【0038】
線間接触が発生しない図8のグラフと線間接触が発生する図9のグラフとを対比すると、例えば2kHzから16kHzの周波数範囲において、線間接触が発生しない図8(b)では音圧が略ゼロであるのに対し、線間接触が発生する図9(b)では音圧の発生が見られる。コイルばね101を構成する材料の鉄が互いに衝突したときの打撃音が一般に数kHzの範囲にあることを考慮すると、線間接触が発生する図9(b)の2kHzから16kHzの周波数範囲に見られる音圧は、線間接触による打撃音による異音に相当する。人間が聞き取れる可聴周波数範囲は20Hz~20kHzとされ、特に4kHz付近が敏感とされるため、線間接触は異音として聞き取られる。
【0039】
データ解析装置26は、例えば可聴周波数範囲に含まれる2kHzから16kHzのような所定の周波数範囲において、例えば0.01Vのような所定の音圧を超えるデータを線間接触による異音として特定する。ここで、音圧は、電気信号に変換されて電圧単位で表されている。そして、特定した異音に基づいて、コイルばね101が線間接触の発生しない正常品であるか、線間接触の発生する異常品であるかを判定する。例えば、異音を特定したコイルばね101を異常品であると判定し、異音を特定しなかったコイルばね101を正常品と判定してもよい。
【0040】
ステップS22では、このような判定の結果をデータベースなどの記録装置に格納する。記録装置は、データ解析装置26に備えられていてもよいし、データ解析装置26の外部に設置されていてもよい。これら記録装置に格納された判定の結果は、必要に応じて読み出される。
【0041】
ステップS22で正常品と判定されたコイルばね101は、製品として出荷される。一方、ステップS22で、異常品と判定されたコイルばね101は、正常品から取り分けられ、製品として流出しないようにされる。
【0042】
このように、本実施の形態のばねの異音の評価装置及び方法は、線間接触の発生しない正常品のコイルばね101と、線間接触の発生する異常品のコイルばね101とを検査員が関与することなく自動的に判定することができる。したがって、荷重試験機で圧縮したコイルばね101に検査員の身体が曝されるような異音試験の工程がなくなり、検査員の安全が確保される。
【0043】
また、コイルばね101の正常品又は異常品の判定は、サンプリング期間で高速フーリエ変換したコイルばね101から発した音の周波数ごとのデータに基づいて判定している。したがって、異音試験のように検査員の聴覚に依存する官能検査によることがなく、判定の定量化及び標準化を図ることができ、ひいてはコイルばね101の品質を向上させることができる。さらに、コイルばね101へのハンマリングは、ハンマリング装置21を用いることにより、一定の打撃力でコイルばね101に加振することを可能にしている。
【0044】
本実施の形態のばねは、データ解析装置26によって線間接触が発生しない正常品と判定されたものである。このようなばねは、その品質が保証され、自動車のサスペンションに用いられたとき、線間接触による異音が発生することがないため、静粛で快適な車内環境が実現される。近年普及している電気自動車(EV)では、駆動源がモーターであるため車内環境の静粛性が高まるが、線間接触による異音が発生しないばねは静粛性が確保されているため電気自動車に好適である。
【0045】
なお、本実施の形態のばねの異音の評価装置におけるハンマリング装置21に代わって、荷重試験機10にコイルばね101に加振するためのバイブレーターを設けてもよい。バイブレーターは、荷重試験機10に装着されたコイルばね101に加振することができるように、コイルばね101に取り付けられ、油圧、モーター、エアー、電磁駆動などによりコイルばね101に加振する。バイブレーターは、加振する振動の振幅、振動の周波数、振動の波形などを制御することができる。
【0046】
バイブレーターを使用することにより、加振する振幅、振動の周波数、振動の波形を容易に制御することができ、コイルばね101が自動車のサスペンションに取り付けられたより実使用に近い条件で検査することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明は、自動車のサスペンションに用いるコイルばねの製造に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 荷重試験機
11 下部チャック
12 上部チャック
15 ロードセル
21 ハンマリング装置
25 マイクロホン
26 データ解析装置
101 コイルばね
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9